
メインログ/雑談ログ
Character
モノ
(キャラシート)(PL:森田)

ヒサギ
(キャラシート)(PL:嗣子)

ヒカリ
(キャラシート)(PL:すきゃっと)

シキ
(キャラシート)(PL:ヤヒロギンジ)

ヒイラギ
(キャラシート)(PL:みつ)

Index
リプレイ・ブルームシリーズ
Case01:『凍て付く夜のヴァルプルギス』
Case02:『円環鎖すはスネグラチカ』
Case03:『ソワレの前に』
Opening
【OP】
【OP/ヒイラギ】
【OP/ヒサギ】
【OP/ヒカリ】
【OP/モノ】
【OP/シキ】
Middle phase
【Middle first half/ヒサギ】
【Middle first half/シキ】
【Middle first half/ヒイラギ】
【Middle first half/ヒカリ】
【Middle first half/モノ】
【Middle1】
【Middle latter half/モノ】
【Middle latter half/ヒサギ】
【Middle latter half/シキ】
【Middle latter half/ヒイラギ】
【Middle latter half/ヒカリ】
【Extra scene】
Climax
【Climax/かたられざるフェアリーテイル】
Ending
【ED】
【ED/モノ】
【ED/ヒサギ・ヒイラギ】
【ED/シキ・ミツキ】
Preplay
GM:それではこれより第四回レズロワクロス 始めていきたいと思います
GM:まずはPCの自己紹介から
GM:このセッションでは公平性のため、PCにPCナンバーが割り振られていません。
GM:ここで1D100をロールして、高かった順に自己紹介をお願いします。
ヒカリ:1D100
DoubleCross : (1D100) → 71
シキ:1d100
DoubleCross : (1D100) → 70
ヒサギ:1d100 えいっ
DoubleCross : (1D100) → 80
モノ:1d100
DoubleCross : (1D100) → 95
モノ:たっか
ヒイラギ:1d100
DoubleCross : (1D100) → 52
GM:何だこのハイレベルな戦いは
GM:それではモノちゃんから自己紹介をお願いします
GM:他の方は汚い野次を飛ばしてください
モノ:あ、はいはい!
モノ:えーっと
モノ:余りに久しぶりすぎて自己紹介で何いうかとか全然覚えてない…
ヒイラギ:おちついて
モノ:このキャラシを作った時のことも全然思い出せない
モノ:俺は一体…?
GM:まずキャラシを貼るといいと古代から言い伝えられていますね
モノ:http://character-sheets.appspot.com/dx3/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEYrfuUpQMM
モノ:従いました、古代の知恵に
モノ:というわけでしなのシリーズ番外編第一号の栄誉に預かりましたモノちゃんです
モノ:量産型工場の中でも最下層!なんか血が毒になるとかいう明らかにキモい規格外れだったので
モノ:めちゃくちゃいじめられて生きてきました、マーキングのために片目もえぐられた
ヒカリ:かわいそう 抱いてあげなきゃ
シキ:慰めてあげなきゃ
ヒサギ:大丈夫…?
ヒイラギ:ふん……
モノ:誰からも望まれず誰からも与えられずに生きてきましたが、生来のスペックが全て肉体に向いているので腕力だけはめちゃくちゃにあります
ヒカリ:コワ~
シキ:求められなくても身体は正直ってわけね
ヒイラギ:猛毒脳筋女め……
モノ:だんだんキャラ作成時の記憶が蘇ったんですが真希パイセンと工藤優作を足したようなイメージだったと思います
モノ:なんでそんなキャラでレズロワとか言ってるんだこいつ
ヒカリ:工藤優作!?
ヒサギ:色々運んだりするときに役にたってくれてそう、っておもったらすごい名前が
ヒカリ:そっちの工藤優作か……
ヒカリ:コナンの父親かと思った
シキ:元ネタの方!
モノ:マジで全くなんの展望も見えてないですがライブ感で全員ぶっ殺してやろうと思います
モノ:よろしくなあ!!
モノ:いじょうです。
ヒイラギ:一番怖い
GM:よろしくお願いします ではヒサギさんお願いします
ヒサギ:はいっ
ヒサギ:http://character-sheets.appspot.com/dx3/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEY-qrhogMM
ヒイラギ:すでにかわいい
ヒサギ:しなのさんちの量産体番外編その二です。
ヒサギ:今回のは、世界に誇る日本のMMOTAINAI精神の顕れか、一杯廃棄処分されてるな~リサイクルしようぜ!っていうノリで作られた子です。
ヒイラギ:最高の妹
シキ:レズは地球にもやさしい
ヒサギ:具体的にはなんかの実験とかで自我喪失になった肉体にRBとかぶち込んで動かしてます。それがわたし、”キルケ”のヒサギというわけで。
モノ:面白いことやってんなあ
ヒサギ:まあ用途からしてそんな強くはないですね。社会的な色々をデータいっぱい使ってなんとかしたりします。
ヒサギ:具体的には≪超越的能力≫≪竹馬の友≫とかで。
ヒサギ:本人自身はまあ気遣いをしたりして上手くみんなが仲良くしていてくれればな~って思っていますよ ほんとだよ?
ヒイラギ:気遣いもできるいい子
シキ:ふーん誰とでも仲良くしちゃうんだ
ヒカリ:そんな気合で生き残れるのかな
モノ:そうだそうだ
ヒイラギ:ヒサギをいじめるんじゃない
モノ:俺の猛毒に耐えられるかな
ヒイラギ:こんなにいい子なんだぞ
ヒサギ:ヒイラギ姉さんとはこう さらに特別に以前から色々会ったりしてたよーという姉妹関係をさせてもらっていますー。ありがたいことで。
ヒカリ:仲良いんだね~
ヒカリ:そろそろ狩るか……
ヒサギ:データもみんな怖いな……仲良くしよ~?っていうデータです カリギュラをエピックポルターしたりする。
シキ:私達とも仲良くしようよ♡
ヒサギ:わ~い
モノ:平和だ
ヒサギ:まあこんなんなので 閉鎖環境だと露骨に疑われたり排除対象になったりするんじゃないですかね
ヒイラギ:させないが……
ヒサギ:知りませんが……
ヒサギ:滅茶苦茶緊張していますがこんなところでしょうか。皆さまどうかよろしくお願いします!
ヒイラギ:よろしくおねがいします
ヒイラギ:うちの妹を
ヒカリ:贔屓ヤバ
ヒサギ:うふふ
ヒイラギ:何か文句でもあるのか
GM:よろしくお願いします では次はヒカリさんお願いします
シキ:じゃあ遠慮なくよろしくしちゃおうかな~
ヒカリ:はい
ヒカリ:http://character-sheets.appspot.com/dx3/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEYq6KHiwMM
ヒカリ:ヒカリです
ヒカリ:穏やかでのんびりした性格です。ダウナーとも言えるかも
ヒカリ:何事もめんどくさがりの性格で、不和を嫌います。
シキ:ヒカリは昔からそういう子だったよね~
ヒカリ:みんな仲良くしようよ~
ヒサギ:わあい 仲良くしましょう~
モノ:平和だ
ヒイラギ:どうだかな……
ヒカリ:仲良くしない奴は殺す
ヒサギ:急に物騒になった……
モノ:偽りの平和だった
ヒイラギ:レズディストピア体制
シキ:レズは決断的だからね
ヒカリ:ドローンや電子機器を扱うのが得意です
ヒカリ:見てください この≪サードウォッチ≫を
シキ:いやらしいエフェクトだぜ
ヒサギ:普段ならネタエフェクトだが……
ヒイラギ:出歯亀する気か……!
ヒカリ:レズロワにおいて最強のエフェクトですね
ヒカリ:性能はHPを増やしてカバーしたり殴ったりします。
シキ:果たして見てるだけで優位に立てるのかしら~?
ヒサギ:見てくださいこの132点っていうhpを ボスかな?
ヒカリ:ちゃんと抱いてあげるから安心しなよ
ヒカリ:そんな感じです。よろしくお願いします
ヒサギ:よろしくお願いします~~ 一杯頼ったりしたいなあ
ヒイラギ:そんな女に頼るのか……?
GM:よろしくお願いします ではシキさん自己紹介お願いします
シキ:はいはーい!
シキ:https://character-sheets.appspot.com/dx3/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEYmOaWpQMM
シキ:コードネーム"クイーン・オブ・ローゼス"、名前はシキ。
シキ:『盤外個体』のリーダーとして養成された最初期の実験体で、みんなのお姉ちゃんです。
シキ:責任感が強く、絶望的な状況を姉妹全員で生き抜くため常に先頭に立って頑張ってきました。
ヒイラギ:姉とは認めないが……
ヒサギ:わ~~(手を振る
モノ:きゃー
ヒカリ:シキは偉いね~
シキ:反面、一人でも多くの姉妹を生かすために、いよいよとなれば非常な判断を下すことも厭いません。
シキ:結果的に多くの姉妹を見捨てざるを得ず、或いは自ら引導を渡すことも多々あり、
シキ:ジャーム化してしまったヒカリの双子の妹も、この手で討ち取っています。
ヒカリ:ふ~ん……
ヒサギ:リーダーですからね……
シキ:言い訳はしないけどちょっと負い目はあるかな……普段は見せないけどね(チラッ
ヒカリ:かわいいね
ヒサギ:大変……
シキ:後レズではありますがかつては研究員の男性と恋仲でした
ヒカリ:バイじゃん
モノ:ふしだら!
ヒサギ:※この設定が来た時に相談窓は震撼したぞ
シキ:そのせいもあって、姉妹のことは同時に娘のようにも思っています
ヒイラギ:娘ではないが……
ヒカリ:あたしがお姉ちゃんだよ
ヒサギ:お母さんでお姉さんでヒカリさんがさらに…?
シキ:あの人との大事な絆だから……
シキ:あとあれですね
シキ:色々口うるさいことも言いますが姉妹間でのセックスは容認しています。
ヒイラギ:風紀
ヒカリ:やらしいんだ~
ヒサギ:まあ、極限状況ですからそういうこともあるのかも
モノ:平和だ
シキ:この状況なら仕方ないよね。みんなで生き残るためにはこういうのも必要だよ
シキ:正面切っての白兵戦を得意とし、統率個体にのみ許された特権的な力も行使するとされますが
シキ:詳しいことは不明です
ヒカリ:特権~?
ヒサギ:すごいんですねえ
シキ:お姉ちゃんだからね
シキ:シンドロームはエグザイル/ウロボロス。戦闘スタイルは氷の茨ドリブラー。
シキ:強制移動・引き寄せエフェクトの組み合わせで《氷の茨》を2回発動させる構成に、
シキ:エラッタで正式に上限突破できるようになった《巨人の影》を重ねて100%時合計16D10のHPを問答無用で失わせます。
ヒイラギ:えぐ
シキ:全部お姉ちゃんに任せといて
ヒカリ:コワ~
ヒサギ:めちゃつよい
モノ:平和じゃねえ
シキ:あと《美しき罪人》で常に顔がいいです。まあこの姉妹みんな顔がいいけどね
ヒサギ:特に美人さんというわけですね。
ヒカリ:シキはかわいいね~
シキ:そんな感じで、姉の役目として全員抱いていきます。よろしくお願いします!
ヒイラギ:姉とは認めないがよろしくおねがいします!
ヒサギ:よろしくお願いいたします。
GM:よろしくお願いします。では最後にヒイラギさん自己紹介お願いします。
ヒイラギ:はい
ヒイラギ:http://character-sheets.appspot.com/dx3/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEYpPCJjAMM
ヒイラギ:コードネーム”バイオレット・カメレオン” ヒイラギです
ヒサギ:わ~~姉さーんっ
ヒイラギ:兵装試験用の個体で、戦闘能力はさほどありません。ほぼほぼ武装依存。
ヒイラギ:口調はかつて自分のいたところの女研究員をトレースしているらしいです
ヒカリ:武器さえ奪えばこっちのもんってわけね
ヒサギ:とっても器用なんですよ~
ヒイラギ:あらゆる兵装を水準以上には使いこなせるけど、フルスペックは発揮できない
ヒイラギ:そういう個体です
シキ:苦手なことも投げ出さないがんばり屋さんなんだね
ヒイラギ:ヒサギに執着していて、他の個体を姉妹じゃないと言い放つくらいです
ヒサギ:姉さんはも~……
ヒカリ:へえ~
ヒイラギ:ヒサギがいればいいんだ
モノ:なかよしなのだなあ
ヒサギ:そんなこといわないっ
ヒイラギ:あと、テスター個体である都合上、自分だけの物を持ったことがなかったりするので
ヒイラギ:そういう部分で初めての自分だけの妹だったから執着してるのもあるとかないとか
ヒサギ:えへへ
シキ:じゃあヒイラギを私のものにしたらヒサギも付いてくるってこと?
ヒイラギ:ちなみに、メガネを外すとすごい近眼です
ヒサギ:シキさんが凄いこと言ってる そして可愛いポイントだ
ヒイラギ:堕ちないが……
ヒカリ:メガネさえ奪えばこっちのもんってわけね
モノ:いいこと聞いたぜ
ヒイラギ:なんかぴっちりしたスーツと白衣型ジャケットをいつも着ていて、肌を見せたがりません
ヒイラギ:これも兵装だからね、取られたら困るからね、しかたないね
ヒサギ:格好よくてすき~
シキ:じゃあスーツの下を知ってるのは私だけだね♡
ヒイラギ:性能はセットアップでパワードスーツもといストライクモービルを呼び出して
ヒイラギ:コラッ
ヒイラギ:高い装甲値でカバー屋をやります
ヒサギ:みんなをまもってくれるんです 頼りになるのですよ
ヒイラギ:あと、過去にあったことで誰かの代わり扱いされることを嫌ったりシます
ヒカリ:いけっモノ バリアクラッカーだ
ヒイラギ:やめろっ!
ヒイラギ:莫大なHPで耐えやがってドローン女め!
モノ:びがぢゅー
ヒサギ:はわわ
ヒイラギ:毒タイプのピカチュウ、嫌すぎる
ヒイラギ:そういう感じです
ヒイラギ:やってやります
ヒイラギ:よろしくおねがいします
ヒサギ:よろしくね、姉さん!
GM:よろしくお願いします
GM:ではサアヤさん自己紹介お願いします
ヒイラギ:!?
ヒサギ:んえっ!?
モノ:はい?
シキ:なんだと……?
サアヤ:はい!
サアヤ:サアヤです。みんなよろしくね
ヒサギ:よろしくお願いいたします……?
シキ:その時脳裏に溢れ出す存在しない記憶……!
サアヤ:研究コードは“ナイトライダー”。
モノ:誰だよオメーはいきなり出てきて好き勝手言ってんじゃねえぞ
サアヤ:性能としては姉妹の中で最も優秀って言われてました。照れちゃうなー
シキ:あーあれねーそんな事もあった気がするー
サアヤ:明るく素直で活発な性格で、実験体姉妹の中でも中心的なポジションでした。
サアヤ:みんな知ってるね
ヒイラギ:既知……
ヒカリ:そうだった気がする
ヒサギ:あっはい、知ってます
モノ:????
シキ:まあ私には負けるけどね
モノ:こいつらボーグバトルか何かキメてるのか
サアヤ:性能は秘密です!後で分かった方が楽しいからね
サアヤ:そういう感じです!みんなよろしくね!
ヒサギ:よ、よろしくお願いいたします……
シキ:わーいよろしく~!
ヒイラギ:よろしく頼む
ヒカリ:よろしくね~
モノ:誰だよこいつ~~~!
GM:では全員出揃ったところで始めていきましょう
【OP】
GM:回想シーン。登場侵蝕は不要です。
GM:FH、研究施設“チェッカード”。
GM:UGNや敵対勢力の目を逃れるため、地下深くに秘匿されたこの施設は、ある実験計画の遂行を目的とした場所だった。
GM:“盤外個体”計画。
GM:それは、いずれ大規模生産に着手するクローン兵士の能力基準を選定するため、様々な能力値をピーキーに調整した実験体たちからデータを採集するという計画だ。
GM:通常ロットでは半ば使い物にならない、あまりにも特異な能力を持つ実験体たち。
GM:彼女らはこの“チェッカード”で生まれ、外の世界を知らぬままに共同生活を営んでいた。
GM:この日、全体での能力測定を終え、実験体たちには束の間の自由時間が与えられていた。
サアヤ:「おっ、何?珍しいメンツ揃ってんねー」
サアヤ:休憩所にたむろする一団のもとに、ドリンクを片手に歩いてくる。
サアヤ:「みんなお疲れー」
シキ:「おつかれー。丁度いいや。サアヤも見てきなよ」
ヒサギ:「サアヤさん。はい、おつかれさまです」タブレットから顔を上げて、柔らかく聞き良い声で。
ヒイラギ:ちらりと見るだけ見て、すぐに手元の図鑑に視線を戻す。
ヒカリ:「……」椅子に深々と腰掛けて、うつらうつら舟を漕いでいる。
サアヤ:「何々?」
シキ:腰まで伸びた黒髪をなびかせた、他の子より一回り長身の女が、抱えていた段ボール箱をドサリと床に置く
シキ:「じゃーん!作ってみました!ユニフォーム!!」
サアヤ:「えーっ!?ユニフォーム!?マジ!?」
シキ:箱の中から蛍光色のラインが入ったジャケットを取り出し広げる。
ヒサギ:「その段ボール、そういうのだったんですか……」反応良い二人に少し苦笑しつつ。
サアヤ:「えー何!どしたの?シキ姉が作ったの?」
シキ:「うん、主任と一緒にねー。人数も増えてきたし、番号のついたタグだけじゃ味気ないでしょ」
ヒサギ:「結構しっかりした作りですし、それぞれ違うなんてまたよく許可でましたね」横から覗き込んで。
シキ:「ほらこれ、ちゃんと一人ひとりパーソナルカラーが違うんだよ」
シキ:「この前のアンケートを元に独断と偏見で選びました」
サアヤ:「え~~!ヤバ!テンション上がるねー!」
ヒサギ:「あれ、そういう意図だったんですか…?」
ヒイラギ:「……」思っていたことをヒサギが言った。
ヒイラギ:「結局、またシキのごっこ遊びに付き合わされるってことか?」
ヒカリ:「うるさい~~」もごもごと抗議する。「寝らんないじゃん~~」
ヒサギ:そっと指でラインをなぞってみる。「姉さん、シキさんが作ってくれたんだって……、あ。ヒカリさん、おはようございます」
シキ:「ほらほらヒカリも。そんな格好で寝てたら風邪引くよ。これでも着ときなさい」
シキ:緑のラインが入ったジャケットを放り投げる
ヒカリ:「え~~」押し付けられて「とか何とか言って、ホントは主任と一緒にいる時間が欲しかっただけじゃないの~?」
シキ:「そんなことありません~。むしろほら、主任の方が何かと理由をつけて会おうとしてくるし?」
ヒイラギ:図鑑を閉じ、苦い顔をしてシキの方を見る。
ヒサギ:「惚気ですか、もう」苦笑しながら見ている。
ヒカリ:「ふ~ん?」
サアヤ:「ラブラブじゃーん」
シキ:「私はお姉ちゃんとして、みんなとの時間も大事にしたいっていうか……」
シキ:「ほら、だからね?ヒイラギも」白衣を手渡す
ヒイラギ:「……」一応受け取る
シキ:「ごっこ遊びでもいいじゃない。今はさ」
シキ:「いつかここを出たときのための練習。そう思って付き合ってみない?」
ヒイラギ:「……着るだけで満足するっていうならな」
シキ:「満足満足!大満足だよ~!」
ヒイラギ:「ヒサギの分は」
シキ:「もちろんあるよ~。ほらこれ!」
シキ:オレンジ色の大きめのジャケットを渡す
ヒサギ:にこにこしながらその様子を見ていた。
ヒサギ:「あ、橙色の……ありがとうございます、シキさん」そっと受け取る。
ヒカリ:「いつか出た時、ねぇ……」ジャケットを毛布のように被りながら独り言ちる。
シキ:「いや~みんなよく似合ってますなぁ。眼福眼福」渋々ながらも羽織る皆の様子を見てご満悦
モノ:その時、軽い駆動音とともに扉が開く。
モノ:「ぁ……」
ヒサギ:「そうです?ならうれしいです…みんなよく似合ってるから、と」そこで扉の方を。
モノ:立っているのは、見るからに痩せ細った異様な風体の実験体。
モノ:肌は青白く、短く乱雑に切り揃えられた髪は毛先がかすれて脱色している。
モノ:何よりも目を引くのは、瞳のない虚ろな右目の眼窩。
シキ:「あ、珍しいねぇ。モノがこっち来るなんて」
ヒイラギ:ジャケットを羽織るだけ羽織り、また図鑑を開く。
ヒサギ:「そうですね…いつもの子たちは」見渡してみるも、特に見つからない。
ヒカリ:「んー?」アイマスクをどけて一瞥する。
モノ:彼女は君たちとは別グループの少女たちから、モノ、と呼ばれている。
モノ:「……」
サアヤ:「あれ、モノちん!どしたの?」
サアヤ:明るく声を掛ける。
モノ:キョロキョロと君たちの顔を見回し
モノ:俯いて黙り込んでしまう。
サアヤ:「うーん?」歩み寄り、屈んで視線を合わせる。
サアヤ:「何か探し物?」
シキ:「どしたー?今日は一人?いつもの子たちが見えないけど……」
モノ:床を見つめながら唇は震えている。
モノ:パニックを起こしているのだ。
モノ:放っておけばこのまま何時間でも部屋の前から動かないだろう。
ヒイラギ:「……用があるならさっさと言えばいい。そこの優しいやつらがどうにかするさ」
ヒサギ:「なにかありましたか?必要なら取次いだり、……ふむむ」
モノ:「……ぁ」
モノ:寄ってくる君たちに後ずさりし
モノ:「か」
モノ:「かー、ど」
モノ:ようやくそれだけ、言葉を紡ぐ。
サアヤ:「カード?」首を傾げる。
シキ:「んーカード……カード……」
ヒカリ:モノの首元を一瞥し「……IDカードじゃないの?」
ヒサギ:「カード、っていうと……どこかのカードキーでも借りて来いって言われたり…あ、ID」
モノ:「も、モノは」
モノ:「かくれんぼ、してるの」
モノ:「モノが、さがすの、オニだって、いわれたから」
モノ:「カードを、さがす、かくれんぼなの」
モノ:「えへ、えへへ」
モノ:「面白い、でしょ?」
サアヤ:「面白くないよ!全然!」
ヒイラギ:「……アイツらまた下らないことを」ため息まじりに
サアヤ:「……それ……」眉間に皺を寄せる。「全然かくれんぼじゃないじゃん」
ヒサギ:「宝探しみたいなゲームですか?いくらなんでも、IDカードを対象にするのは……」
モノ:「くだらなく、ないよ」
モノ:「み、みんなが考えてくれたんだもん」
シキ:「んー、モノ」
シキ:「そのみんなは、どこで何してるの?今は」
モノ:「ぇ……」
モノ:「……しら、ない」
シキ:「そかー、知らないかー」
シキ:「じゃあモノは一人で遊んでるんだね」
モノ:「ち、ちがうよ」
モノ:「みんなと一緒だよ、みんなが考えてくれたんだから」
モノ:「モノは、みんなと一緒だよ」
モノ:泣きそうな顔になる。
ヒカリ:「はー……」呆れたように嘆息し、「ちょっとシキ、あいつら主任に言って何とかなんないの~?」
サアヤ:「私行ってくる!探し出してガツンと言ってやんなきゃ……!」
ヒサギ:「場所なら特定しますよ。少し待ってもらえたら…」
ヒイラギ:「言ってどうする。またコイツが捌け口になるだけだろ」
サアヤ:「だってこんなのおかしいじゃん!」
ヒサギ:「…変わらないまま、ですか。担当官は管理だって仕事でしょうに」
シキ:「ああごめんね~ちょっと意地悪だったね~。いや何回か言って聞かせてはいるんだけどさぁ」
モノ:「ぁ、う……」
モノ:言い争う君たちを前に、みるみる表情が青ざめていく。
モノ:またパニックを起こしつつあるようだ。
ヒカリ:「お……」片目を瞑って「ちょっと待って」
シキ:「ま、その辺は追々考えるよ。手はまだまだあるし……どしたのヒカリ?」
ヒカリ:「んー……」
ヒカリ:少し経って、部屋のドアがひとりでに開く。その向こうには一機のドローン。
ヒカリ:そのマニピュレーターにはIDカードが掴まれている。
ヒカリ:「これでしょ」
モノ:「あっ」
シキ:「おぉ~」
モノ:こくこくと頷いて、カードを受け取る。
ヒサギ:「仕事が早いですね、ほんとに」感嘆の吐息。
モノ:「…………」
サアヤ:「やるじゃんヒカリ!よかったね、モノ!」
モノ:カードを首から提げて、もう一度君たちを見回し
モノ:「……ぁり、がとう」
ヒカリ:「別に~」ひらひら掌を振る。
モノ:一瞬だけ微笑んで、足早に立ち去っていった。
シキ:「ちょっと待った!」
シキ:その腕を後ろから掴む
モノ:「ぅぇ」
モノ:よたよたとつんのめる。
シキ:「おっとっと。……モノ。これで鬼ごっこはおしまいだよね」
ヒイラギ:「かくれんぼだろ」
モノ:「……か、かくれんぼ」
モノ:ささやかな抵抗、もとい訂正。
シキ:転びそうになるのを支えて
シキ:「どっちも大して変わんないでしょ~」
シキ:「ね、次は私達と遊ぼうよ」
サアヤ:「そうそう。あんなヤツらより楽しいよ!」
モノ:「で、でも」
モノ:「モノがいないと、みんな、困るって」
モノ:「モノがいないと面白くないって」
モノ:「みんな、言ってくれるから」
ヒイラギ:「……つくづくくだらない連中だな」図鑑は閉じて膝に置いている。表紙はボロボロだ。
モノ:「みんなの所に、モノは、いかないと、いけなくて」
モノ:「いけ、いけ、ないから」
シキ:「んー、でもそんなにいないと困るならさ」
シキ:「モノを一人にしちゃうのは迂闊だよねぇ」
シキ:「こうやって」
シキ:モノの細い腰を抱き上げる。
シキ:「悪い鬼にさらわれちゃうかもしれないもんね~!」
モノ:「えっ、えっ」
モノ:「うぁわ」
シキ:肩に担いで部屋の中に運んでいく
ヒイラギ:「始まったよ……」うんざりしたような顔をする。
サアヤ:「あーあ、攫われちゃった~」けらけらと笑う。
ヒサギ:「……はあ。あちらの方にはわたしから、色々とお話しておきますね」
シキ:「かくれんぼパート2だよ。今度のお宝はモノでーす」
モノ:味わったことのない暖かさと柔らかな感触に困惑している。
モノ:「な、なんで」
シキ:「モノはお宝なので、鬼さんのところにいないといけないのだ」
モノ:「モノが、お宝?」
モノ:「わかんない、言ってること、モノにはわかんない」
モノ:「なんなの……?」
ヒカリ:「……これ、モノの分はあるの?」ユニフォームの段ボールをつまさきでつつく。
シキ:「チッチッチ」指を振る
シキ:「私を馬鹿にしちゃいけないぜ。全員分あるに決まってるでしょ~」
シキ:「ほらそれ。紫のやつね」
モノ:「何の話なの……」
モノ:「この人たち、怖いよ」
モノ:怯えている。
ヒイラギ:「残念だが、こうなったシキはしばらく止まらないからな」
ヒイラギ:「大人しく捕まってればいい」
ヒサギ:「諦めて、受け入れた方が色々楽ですよ」
ヒサギ:吾ながら大分、すごい悪いこと言っているなと思いながら、取り出したジャケットをシキさんに渡す。
シキ:「はいモノ!バンザイ!」
シキ:言いながら強引にジャケットに袖を通させる。
モノ:「やだ、やだ、やだぁ」
モノ:「やだーーーーーー」
モノ:力なくもがきながら言われるまま
ヒカリ:「おー、あはは。似合ってる似合ってる」
サアヤ:「やだー!可愛いじゃん!」
ヒサギ:「ですね。紫と緑が、よく合ってます」くすり。
シキ:「この色は、モノだけの色だよ」
モノ:「……うぅ」
モノ:着慣れない感覚にむず痒そうに身を震わせ
モノ:「モノは、この人たちのこと」
モノ:「好きじゃない……」
モノ:恨めしそうにつぶやく。
サアヤ:「ねーっ、そういえばみんな聞いた?」最早話は済んだと言わんばかりに。
サアヤ:「この実験、もうすぐ終わるんだって!」
ヒサギ:「もう少し聞いてあげましょうよ………、そうなんですか?」
シキ:「あらら、サアヤは本当耳が早いねー」
サアヤ:「そしたらみんな、やっと外に出られるんでしょー?」
ヒイラギ:「外、か」
サアヤ:「ねねね、みんなは外に出たら何がしたい?」
サアヤ:ずい、と身を寄せて、興味津々というように聞く。
モノ:「そ、と?」
モノ:キョトンとした顔。
ヒカリ:「外ねえ……」頬杖をつく。
ヒサギ:「まあ、自由時間がそんなにあるかはさておくとして…そうですねえ」指を頬に当てて。
シキ:「この研究所の外だよ。もっとたくさんの人がいるの」モノの肩に手を置く
モノ:「……」
ヒイラギ:「人だけじゃない。植物も動物もだ」
ヒサギ:「建物や山とか川、海とかもあるみたいですね」
モノ:「ここじゃない、所」
シキ:「お、ようやくノッて来たね」ヒイラギの方を向いて
シキ:「やっぱりヒイラギは実物を見に行きたいのかな?」図鑑を指差す
ヒイラギ:「……」水を向けられたことに苦い顔をする。
ヒイラギ:「悪いか?」
シキ:「照れるなよ~」
シキ:「悪いわけ無いじゃん。素敵だと思うよ」
ヒイラギ:「暑苦しいんだよ、シキは……」
サアヤ:「私は都会に行きたいなー!服とか、食べ物とか、色んなものがいっぱいあるんでしょ?」
サアヤ:「あと……かっこいい男の子とか……」
サアヤ:「きゃ~~!」自分で言って自分で照れる。
ヒサギ:そう話す皆をにこにこしながら見ている。
シキ:「あんま男に夢見ない方がいいと思うけどな~」
モノ:「よく、わかんない」
モノ:「ここが嫌なの?」
モノ:「……よくわかんない」
サアヤ:「嫌ってわけじゃないけど……外には見たこと無いものがたくさんあるんだよ?」
サアヤ:「どう?わくわくしない?」
モノ:「でも、それ」
モノ:「外の人たちも、モノたちのこと、みたことないよ」
サアヤ:「そうだけど……何か悪いの?」首を傾げる。
モノ:「嫌がられる……よ」
モノ:「怖がられるよ」
ヒカリ:「それはそうかもね~」
サアヤ:「えーっ!そんなことないよ!」
サアヤ:「じゃあ、モノは私と一緒に行こうよ、外!」
シキ:「あ!サアヤズルい!私が連れて行きたかったのに!」
モノ:「モノは……嫌だよ」
モノ:「み、みんなと一緒にいる」
サアヤ:「シキ姉は主任と行けばいいじゃん~」
モノ:「みんな、モノがいないと面白くないって」
モノ:「い、言ってくれるんだ……へへ、へ……」
モノ:「だから……外は、嫌、だな」
サアヤ:「そんなの嘘だよ!」
モノ:「嘘じゃない」
ヒイラギ:モノの様子を見てうんざりしたように首を振る。
モノ:「なんで、なんで、なんで」
モノ:「さっきからみんなの悪口言うの」
モノ:「この人たちのこと……好きじゃない……!」
モノ:段々と敵意が表情に滲み出してきている。
シキ:「まあまあサアヤ。あんまり押し付けても良くないよ。一夕一朝じゃさ」
サアヤ:「だってさあ……!」
シキ:「モノ、いいよ。好きじゃなくても」
シキ:「けど覚えておいて。私は」
シキ:モノの前にしゃがみ込む
シキ:「私も、モノの言う"みんな"の中のひとりになりたい」
モノ:「……どうして?」
シキ:「その方が面白いから」
シキ:「"みんな"は拡がっていくんだよ。いくらでも増えていいの」
シキ:「ずっとここにいられるなら、私だってそうしたい。でも、ずっとみんなが同じところにはいられないの」
モノ:「だから、外に行くの?」
シキ:「そうだよ。外の"みんな"に会いに行くの」
シキ:「最初は怖いかもしれないけど」
シキ:「きっとその後、楽しくなる時が来るからね」
モノ:「……」
モノ:間近に君と向かい合う
モノ:キョロキョロと行き場なくさまよっていた視線が
モノ:不意に、定まって。
モノ:目と目が合う。
モノ:「だったら」
モノ:「最初から助けてくれればよかったのに」
モノ:「……嘘つきだから、嫌い」
モノ:そう囁いて、またいつもの表情に戻り
モノ:後ずさった。
シキ:「あらら……うん、じゃあ今日はこんなところかな」
シキ:一瞬眉をひそめて、後ずさった少女の虚ろな右眼に手を伸ばす。
シキ:「謝れたんなら、私も楽なんだけどね……」
シキ:指先で瞼をそっと撫でて手を離す。
シキ:「いつかその眼にハートを浮かべてやるぜっ」
シキ:指鉄砲のジェスチャーと共に意味不明な捨て台詞を吐いて背を向けた。
モノ:「……」
モノ:「わかんない」
モノ:その背中から視線をそらして、つぶやく。
サアヤ:「……あいつら、やっぱり一回分からせてやんなきゃダメじゃない?」眉間に皺を寄せて
サアヤ:「口で言ったり、一発殴るくらいじゃ駄目だって」
ヒイラギ:「やってどうする。結局その皺寄せは誰に行く」
ヒイラギ:「加えて本人もあの調子だ」
サアヤ:「だってさあ!このままじゃモノだって……!」
ヒイラギ:「ボクらはカウンセラーでも懲罰の執行官でもないんだ」
ヒサギ:「止めに入られて何にもならない、ってなりかねないですからねえ……まあ、本当に」
ヒサギ:「数を重ねて、ある程度絆していったりしないと厳しそう」
ヒサギ:「そんなすぐ人間変われないですし、変わらないですよ。無理に捻じ曲げるのは、どっちにとっても良くないです」
ヒカリ:「まー、大丈夫だよ」
ヒカリ:「あれ以来、ちゃんと見張ることにしたからさ」空洞になったモノの眼窩に視線をやって。
ヒカリ:「何か起きる前に、あたしが止めるよ」
シキ:「ありがとヒカリ。今は頼らせてもらう」
ヒサギ:「手伝いが必要なら言ってくださいね」
ヒイラギ:「ヒサギが出張ることになったら、それこそ最後通牒だろ」
ヒサギ:「やですね、人を物騒ななにかみたいに」
シキ:「それでも、出来るなら姉妹の中だけで解決したい」
シキ:「"上"が動いたら最悪『処分』するとこまで話が大きくなりかねないからね」
シキ:「あの子たちも私の妹であることに変わりはない……ま、甘いと言われたらそれまでだけど」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「癪だが、それには同意してやる。シキ」
ヒサギ:「分かりました。付き合いますよ、シキさん」それはいやですし、と言いながら。「その方が、わたしもよいと思いますから」
シキ:「ありがと……おっし!じゃあこの話は終わり!」
シキ:「ほらほら!サアヤの話が途中だったじゃん!」
シキ:「この研究所を出たら~ってやつ!まだヒイラギとサアヤしか聞いてないんですけど~」
GM:それは束の間、少女たちの穏やかな時間。
GM:かつては確かに存在していた、互いに語らい、未来を描く、そんな希望。
GM:だがそんな希望は、やがてあまりにも脆く打ち砕かれることとなる。
GM:まるで全てが、最初から偽りだったかのように。
---
GM:……大音響のブザーが輪唱のごとく、引っ切り無しに鳴り響き続けている。
GM:“チェッカード”で突如として発生した集団ジャーム化事案は、殺戮と共に瞬く間に施設全体に広がり、僅か数十分の内に、研究所は酸鼻を極める地獄絵図と化しつつあった。
GM:外部から秘匿・隔離された構造が仇となった。数少ない脱出口が大量のジャームに制圧されると、生存者は追い立てられるように地下へ、地下へと逃げる他なく、そして無惨に殺されていった。
GM:実験体たちも例外ではなかった。元より安全性を度外視して設計された能力者たちだ。同スペックを有する姉妹のジャームと戦えば、その末路は二つに一つ。
GM:即ち、敗北して死ぬか、自らも新しいジャームと化すかだ。
ーー:狂騒に包まれる研究所の中で、その一角だけが静謐に支配されていた。
ーー:警報機も防護シェルターも、深い氷に閉ざされその役目を果たすことはない。
ーー:周囲にまばらに屹立する奇怪なオブジェは犠牲となった研究員や実験体の亡骸だ
ーー:常識外の極低温によって体の内側から圧し潰されるように絶命したそれは、血飛沫を空中で凍てつかせて紅蓮の花を咲かせている。
イノリ:「─────────」
イノリ:"クリムゾン・カージナル"の研究コード通りの地獄を体現した少女は、その中心で静かに微笑みながら佇んでいる。
イノリ:すべてが凍りついた世界の中で、ただ一点
イノリ:彼女の左胸だけが、ぽっかりと融解して虚ろな穴を空けていた。
シキ:「………」
シキ:その眼前、氷の悪魔と化した妹の心臓を右手に握り
シキ:「……ごめん」
シキ:一息に握りつぶす。
イノリ:それと同時に、氷像と化した少女の身体もまた、氷の破片となって崩れていった。
ヒカリ:「……ぁ……」
ヒカリ:氷獄の中、力無くへたり込み、呆けたような声を僅か漏らす。
ヒカリ:「…………イノリ……?」
シキ:「イノリは……」顔を背けたまま言葉を紡ぐ
ヒカリ:「イノリ……?ねえ……」
ヒカリ:「どっ……どうしたのさ……ねえ……」
ヒカリ:「なっ……何……」
ヒカリ:「何……してんの……?」
シキ:「この子は、帰還限界を突破して暴走。研究員20名と実験体18体を殺害した」
シキ:「その上で避難ルートを封鎖して更に被害を拡大させる兆しを見せた」
シキ:「だから排除した」
ヒカリ:「イノリ……ねえ……ふざけてる場合じゃないって」
ヒカリ:シキの言葉がまるで耳に入らないように。
ヒカリ:冷気の中を這いずって、変わり果てた妹の残骸を、両手で必死に拾い集めようとする。
ヒカリ:「ほら、起きな……起きなってば」
ヒカリ:「いっ……いい加減にしないと……お姉ちゃん、怒るぞ」
シキ:「……ヒカリ、立って。それはもうイノリじゃない」
ヒカリ:「は……?」
シキ:「もうじき他のジャームが押し寄せてくる。その前に奥に行かないと」
シキ:「アンタまで死ぬ気?」
ヒカリ:「な、何言ってんのさ……」
ヒカリ:「まっ……まだいるじゃん!イノリが!ここに!」
ヒカリ:「置いていく気!?そんな……そんなこと出来ないよ!」
ヒカリ:「あ、あたし……」
ヒカリ:「あたしは……」
ヒカリ:「お姉ちゃんだから……」
ヒカリ:掌から伝わる熱で氷片の表面が溶けだして、両の腕はぬらぬらと血にまみれている。
シキ:「イノリは、最後にアンタの名前を呼んでた」
シキ:「アタシがヒカリを助けるからって……だから」
シキ:「お願い。私の言うことは聞かなくてもいい」
シキ:「けど、この子の……人としてのこの子の願いは、無駄にしないで」
ヒカリ:「……何だよ……」
ヒカリ:「最後?最後って何さ……」
ヒカリ:「妹なんだよ」
ヒカリ:「イノリ……イノリは!あたしの!たった一人の妹なんだよ!!」
サアヤ:「────二人とも伏せて!」
シキ:「───!!」
シキ:ヒカリに伸ばしかけていた手をそのまま押し出して、抱きかかえる形で地に伏せる。
サアヤ:声が届くや否や、シキとヒカリの頭上で、紅蓮の業火が爆発する。
GM:悲鳴が響き、二人に忍び寄っていたジャームが瞬時に消し炭と化して吹き飛んだ。
サアヤ:「何話してるの、こんなところで!」
サアヤ:二人に駆け寄ってきて、引き起こすように。
シキ:「……ごめんサアヤ、助かった。迎えに来てくれたんだ?」
サアヤ:「迎えにって言うか……他に逃げ場無いよ!急がなきゃ……走れる?」
シキ:「私は大丈夫……サアヤはヒカリに手を貸したげて」
ヒカリ:「…………」
ヒカリ:サアヤに抱き起されて、ふらふらと立ち上がる。虚ろな表情で、口を開かない。
サアヤ:その様子を一瞥し、苦い顔をして。「……行こ。地下なら隔壁が下せるはず」
シキ:「……そだね。わかった、急ごう」
シキ:「……ヒカリ、答えなくていい。信じちゃもらえなくてもいいけど」
シキ:「覚えてはおいて。私はイノリのこともヒカリのことも大切な妹だと思ってる」
シキ:「これ以上死なせたくないし、殺したくない」
シキ:「だから、私のためじゃなくていい、イノリの魂のために」
シキ:「協力して」
シキ:一方的に言葉を浴びせて、地下へと歩みを進めた。
---
ヒサギ:びたびたと、血が幾重にも広がっている。赤黒い其れが、だらだらと今も死体から零れ落ちて。
ヒサギ:びちゃりと溜まったその中心に、立っている少女ともう一人。
ヒサギ:赤のセーター生地と黒のジャケット。贈ってもらったそれを、より黒く染め。そうして、まとわりつく血を鬱陶しそうに手で一度払った。
ヒサギ:「大丈夫、ヒイラギ姉さん。こっちに来るのは、片付けたから…」ぱたぱたと雫が零れる。
ヒサギ:噎せ返るような血の匂い。それに饐えた吐瀉物や死臭がする。
ヒサギ:手に持った特殊な信号弾拳銃--無針注射器との兼用--をいじる。
ヒサギ:その死体はすべて、奇妙な死に方をしている。
ヒサギ:己の腕で。脚で。頭や急所を、自ら壊している。
ヒイラギ:血溜まりの外側、部屋の入口に立ち尽くす。隠れ潜んで、ジャームの襲撃をなんとか避け、武器庫で装備をかき集めて。
ヒイラギ:しかし、その装備には、ほんの少しの返り血と、砂埃がついているばかりだ。
ヒイラギ:「……無茶を、しないでくれ」
ヒサギ:「…無茶って。大丈夫だよ、これくらい」
ヒイラギ:「……クソッ」状況が状況だ。わかっている、それくらいやらねば、こちらがやられる。
ヒサギ:「流石に、また何度も、てなると厳しいけど……あと何回かは十分」
ヒイラギ:外装を解除し、ユニフォームとインナースーツのみの姿に戻る。
ヒイラギ:「お前の限界の話だけじゃないんだ、ヒサギ」
ヒサギ:微笑んで。血の黒い雫を零しながら。おかしくなるまで、自分の仲間だったそれに容赦なく打ち込んだことなどなかったように。
ヒサギ:「…ん、そう?まあ、大丈夫だよ。こんな状態、さすがに色々おかしいって上も気づくんじゃない?」
ヒサギ:あえて楽観論を語る。実際にはどうなるか、まるで分らないが。悲観論に飲まれることを防ぐために。
ヒイラギ:「……気づいた上で、見捨てることもあり得る」
ヒイラギ:奇妙な自殺死体たちを一瞥し、すぐに目を伏せる。
ヒサギ:「あー、其れもあるかな…?でも、だとしても色々機密があったし。処分したり回収するのに来るんじゃないかなあ」
ヒサギ:「大丈夫だよ、姉さん」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「お前がどうにかなったら」
ヒイラギ:「ボクが大丈夫じゃないんだよ」
ヒサギ:「……ふふ」目を細めて笑う。
ヒサギ:「うれしい。じゃあ、わたしはきっちりしてないとだね。勿論、ヒイラギ姉さんもだよ?」
ヒイラギ:「あ……」
ヒイラギ:「当たり前だろ」
ヒサギ:「本当?姉さん、ちょっとそこで自信なさそうなのが心配なんだよなー」
ヒイラギ:「っ!今は!……そんな話をしてる場合じゃない」
ヒイラギ:「とにかくここに籠もってはいられない」
ヒサギ:「それもそうだった。そうだね、ここにも来てるってなると……上は厳しそうだから…」
ヒイラギ:「下か」
ヒサギ:「だね。シェルターがいくつかあったはず、だけど…色々通路通るから、二人だと…」
GM:その時、通路の方から複数の足音が聞こえてくる。新手のジャーム──ではない。シキとサアヤ、ヒカリの三人。こちらに向かって走ってくる。
シキ:「ヒイラギ!ヒサギ!」
サアヤ:「あっ……」血に塗れたその様を見て、一瞬警戒の様子を見せる。
ヒイラギ:「正気だ、二人共な」
ヒサギ:腰元に無針注射器を一瞬構え、声を掛けてきた辺りで一度下す。
サアヤ:「……ならそっちに隠れて!すぐに!」
ヒサギ:「シキさんに、サアヤさん、ヒカリさ、」
ヒイラギ:ヒサギを抱え、すぐに隠れる。
シキ:「……!やばっ……!」
ヒサギ:抱えられるまま身を任せて。
ヒカリ:「……」
GM:五人が物陰に隠れると、ほんの僅かな間を置いて、ぞろぞろと人影が現れる。
GM:意味の不明瞭なことを呟いている者、呻き声を漏らしている者。いずれも理性の感じられない、ジャームだ。
GM:その数は十人以上。更に増えていく気配もある。
サアヤ:「……ヤバいね」
サアヤ:「シェルターまで距離がある。これじゃ逃げきれないよ」
ヒサギ:≪声無き声≫を使用。「そうですね。通り過ぎるまで待つ…のは、厳しそう」
シキ:「……通り過ぎる先なんて無いよ」
シキ:「あいつらは一斉に下を目指している。私達と同じでね」
ヒサギ:『……ふむむ。となると……あえて上に行く、のもアリではありますが……』
サアヤ:「あの中を突破して?」ぞろぞろと蠢くジャームを示す。
ヒイラギ:ヒサギを一瞬だけ見て。
ヒイラギ:「無理だな」
ヒサギ:『ごめんなさい、遠慮します』
サアヤ:「あいつらだけじゃない。上にはもっと沢山ジャームがひしめき合ってるよ」
ヒイラギ:「……最悪だ」
ヒカリ:「……」ぼんやりと床を眺めている。
ヒサギ:『うーん、となると。選択肢としては』
シキ:「……一人残って足止めする。しか無いか」
シキ:「私が残る。みんなは先に行って」
ヒサギ:『シキさん……』
サアヤ:「何言ってんのさ、シキ」
ヒサギ:自分が名乗り出たとしても無意味だ。処理しきれず後ろに通してしまう。
シキ:「適任でしょ。戦闘特化の個体は姉妹でもそう多くないもん」
サアヤ:「シキ姉がいなくて、誰が皆をまとめんのよ」
サアヤ:「ヒカリはこんなんだしさ……」
ヒカリ:「……」
シキ:「……大丈夫、ヒカリはその時が来ればちゃんと立ち直るよ」
シキ:「強い子だからさ。それにサアヤもいてくれるなら尚更安心」
ヒイラギ:「シキ……」
ヒサギ:ちらと視線を。この状況でとなれば、ある程度は想像もできる。(……戦力は4人、そしてわたしとヒイラギ姉さんは奇襲ならともかく、戦線を張るのは厳しい)
シキ:「最優の実験体でしょ?私の代わりくらいサアヤなら余裕だって」
サアヤ:「……」
サアヤ:ひとつ、溜息を吐いて。
サアヤ:「……そういやさ」
サアヤ:「覚えてる?ちょっと前に、丁度このメンツでさ」
サアヤ:「休憩所で話したでしょ。途中からモノも来てさ」
サアヤ:「外に出たら何がしたいかって」
シキ:「あったねそんなことも、それどころじゃなくなっちゃったけど」
シキ:懐かしさに僅かに頬を緩めて苦笑する。
ヒサギ:『……ええ、そんな話もしましたけど……サアヤさん?』
サアヤ:「うん。あれさー……あはは」
サアヤ:「すっごい楽しかった、私」
サアヤ:ドン、と勢いを付けて、シキを突き飛ばす。
シキ:「サア───っ!!?」
サアヤ:直後、巨大な火柱が立ち上り、壁のように四人とサアヤとを分断する。
ヒイラギ:「っ!」
ヒサギ:「サアヤさんっ!」
シキ:「ちょ、サアヤ!?馬鹿な真似はやめなさい!!」
サアヤ:「いやー、ごめん、シキ姉」
サアヤ:「褒めて貰って嬉しいけどさ……やっぱ、私には無理だって」
サアヤ:「さっきシキ姉が、自分が足止めするって言った時……」
サアヤ:「私、一瞬。心の中で、喜んじゃったんだよ。私じゃないんだ、って」
サアヤ:「そんな奴、皆を引っ張っていけるわけ……ないじゃん?」
シキ:「サア、ヤ……待って……!駄目……!」
サアヤ:「『戦闘特化の個体は姉妹でもそう多くない』でしょ?」
サアヤ:「私だってそうだよ」
ヒイラギ:見届けることしかできない。
シキ:「違っ……!それでも私が……熱っ!?」
シキ:伸ばした手が灼熱の壁に阻まれる。
GM:炎の向こうから、ジャーム達が近付いてくる物音が聞こえてくる。
サアヤ:「三つ数えたら、全力でシェルターまで走って。私の頑張り、無駄にしないでよね」
サアヤ:「ま…… 運が良ければ、また会おうってことで」
サアヤ:「3、2、1……」
サアヤ:「……行って!」
ヒサギ:「………サアヤさん、ありがとうございます……ええ、待ってますから」立ち上がって。
シキ:「………っ」カウントダウンとともに身体は無意識に動いた。
ヒイラギ:「……すまない」
シキ:「バカ!!」
シキ:「次会ったらその顔ぶん殴ってやるんだからっ!!」
GM:燃え盛る炎を隔てて、爆音と共にジャーム達の絶叫が響き渡る。
シキ:「ヒサギ!ヒカリをお願い!」
ヒサギ:「了解です。ヒカリさん、行きますよ…!」肩を組み、引っ張り上げる。
ヒカリ:「……」
ヒカリ:されるがまま、それでも走り出す。
シキ:「サアヤ……」一瞬、燃え上がる火柱を振り返る。
シキ:「……お願い、もう誰も……死なないで」
シキ:「……私を置いてかないでよ……」
シキ:小さく呟いて3人の後を追った。
---
GM:地響きと共に、巨大な隔壁がゆっくりと降りていく。
GM:元よりこうした事態に備えて作られたシェルターだ。いかなジャームといえど、易々と侵入できるものではないだろう。
GM:非常用電源が作動し、薄暗いシェルターに灯りが灯っていく。
GM:鳴り響く警報も、ジャームの咆哮も聞こえない。耳に痛いほどの静寂が、辺りを包んでいる。
ヒサギ:「……全員無事ですか?」無針注射器を構えつつ。
ヒサギ:荒い息を吐いている。あまり運動能力は高くない。
ヒカリ:「……」
シキ:「なんとか……ね」
ヒカリ:ずりずりと壁に背を預けて座り込み、そのまま子供のように膝を抱える。
ヒイラギ:「一応、全員無事らしい」
ヒサギ:「……とはいっても、一応…クリアリングも、しないと…」
ヒサギ:「もし、先に入り込まれてたら…、大変、ですから……」
シキ:「……」ヒカリの姿に掛ける言葉が見つからず
ヒイラギ:「ヒサギ、お前は休め」
ヒサギ:「…すみません、どうも貧弱で…シキさん?」
ヒイラギ:「……シキ、クリアリングできる余力はあるか」
シキ:「……そだね、私がやっとくよ」
シキ:「避難ルートは幾つかある。他に生き残った子がいれば合流したいしね」
ヒイラギ:「ボクも行く。余力ならあるからな」
ヒサギ:「……まずそうなら、ヒカリさんの護衛を……」荒い息を少し整えて。「……わかりました。ヒカリさんはわたしが見ておきます」
シキ:「……お願い」
モノ:その時、部屋の片隅の闇の中から
モノ:フラフラと、よろつくような足取りで
モノ:一つの影がシキたちへと近づいてくる。
モノ:「えへ、へへ、へ」
モノ:「こんにちは」
シキ:「!」一瞬警戒の姿勢を見せるが
シキ:「……モノ……?」
モノ:「モノだよぉ」
ヒイラギ:「……」
ヒサギ:「…無事でしたか。よかった」
シキ:「私が行く。妙な動きがあったら割って入って」ヒイラギに告げてモノへ近づく
ヒイラギ:「…了解」
モノ:腕の中には、ボーリング玉ほどの大きさのなにかを抱えている。
シキ:「モノ、良かった……!ん?その抱えてるのは……」
モノ:それは、彼女をいじめていたグループにいた少女の首だ。静かに、眠るように目を瞑っている。
シキ:「……!」
モノ:「……」
モノ:右目の昏い穴が、近づくシキを見つめている。
モノ:「み、みんな」
モノ:「みんな、死んじゃったね」
シキ:「モ、ノ……」
モノ:「拡がっていくんじゃなかったの?」
モノ:「えへへ」
モノ:「少なくなっていくよ」
シキ:「………っ」
モノ:「……きみには何も守れない」
モノ:「何も助けられない」
モノ:「何もいいことなんて起きない」
モノ:「だって私たち、偽物だから」
ヒイラギ:「……やめろ」
ヒイラギ:「その辺に……」
シキ:唇を噛む。「……ごめ……」一瞬謝罪の言葉が喉を突こうとする。しかし
モノ:「何も本当のことに触れたことがないのに」
モノ:ヒイラギに視線を送る
モノ:「偽物同士で偽物の言葉で、大丈夫だって」
モノ:「嘘だよ、それ」
モノ:ごとん、と
モノ:生首が地面に落ちた。
ヒイラギ:「……」
シキ:「…………違うよ」
シキ:モノが落とした生首に歩み寄り
シキ:見開かれたままの瞼をそっと閉じる。
シキ:「これからだよ。モノ」
モノ:「これから?」
モノ:「これから、って、なに?」
シキ:「みんな死んじゃった」
シキ:「この子も、イノリも……主任も」
シキ:サアヤの顔を思い浮かべるが、言葉にはせず
シキ:「けど、モノはまだ生きている」
シキ:「私達も、まだ生きてる」
モノ:「……」
シキ:「だから、ここから」
シキ:「ここからもっかい広げよう」
モノ:「えへ」
モノ:「へへ、へ」
モノ:「いひひひひひ、ひひっ」
モノ:がりがりと頭をかく、爪先に血がにじむ
モノ:「じゃあ、連れて行って」
モノ:「そこに連れて行ってよ」
シキ:「いいよ。今度は……ちゃんと約束する」
モノ:「その約束は嘘だったって、自分の目で確かめるんだよ!」
モノ:「それで認めるんだ」
モノ:ぐ、とシキの顎に手を伸ばして
モノ:両手で抑え込む。骨のきしむような強い力。
モノ:「シキは嘘つきだ、って」
モノ:目を細めて、手を離す。
シキ:「……っ!」「……なら」
シキ:「勝負だね。モノと私で」地の滲んだ手を取って
シキ:その指先を包む。
シキ:「……っ」猛毒の血が肌を焼くのも気にせず、指先を温める。
モノ:「……うん」
シキ:「私が絶対、物を助けてあげる」
シキ:「"みんな"で、生きてここを出る」
モノ:自らを傷つけ、痛みに表情を歪めるシキと見つめ合い
モノ:絡めた指が食い込む。
モノ:「楽しいね、シキ」
シキ:「っ……」眉間の皺が苦悶に深まるが、口元の笑みは絶やさない。
シキ:「そう?良かった」
シキ:「モノが楽しいなら、私も幸せだよ」
モノ:こちらも片目を細めて微笑む。
モノ:「えへへ、へ」
ヒイラギ:「……」
ヒサギ:「………ふむ」ホルスターに手を掛けていた手をわずかに外す。
ヒサギ:「中々愉快な状況ですね」
ヒカリ:僅かに視線を上げて二人を見て、それからまた、膝に顔をうずめた。
GM:そうして否応なしに始まったシェルターでの生活は、一日、また一日と過ぎていった。
GM:物資は十分に蓄えられていたが、それも有限だ。ジャームがいつ隔壁を破って侵入してくるかも分からない。
GM:不安と焦燥が募る中、外部との連絡は一向に回復せず────
GM:気付けば、二か月以上が過ぎていた。
GM:ではOPを始める前に、このセッションでの特殊ルールをご説明します。
【ミドルシーン進行】
前半・後半で1回ずつ、計2回の『シーン権』が与えられる。
シーン権を持つPCは、シーンに登場させたい他PCを指名することが出来る。0人から全員まで、人数は自由。
シーンに登場しないPCは、その間サブシーンを行う。いずれも制限時間は75分。
また、クライマックスシーンに入るまで参加者・非参加者を問わず、見学席内で良いロールプレイに対してブーケを与えることが可能。
ブーケはメインシーン🌸サブシーン🌹に分けて与え、それぞれシーン内に登場している全てのPCが受け取ることになる。
ミドルシーン終了時、全ての登場シーンの合計獲得ブーケ数が最も多かったPC1名のみが、好きなPCを指名して時間無制限のエクストラシーンを行うことが可能となる。この際、サブシーンは発生しない。
シキ:過酷な戦いだぜ
GM:最強の女だけが栄光を勝ち取れます
GM:それからもう一つ
【ロイス取得特殊ルール】
このセッションでは開始時に固定ロイスを1つしか保持することが出来ない。(Dロイスを取得している場合、Dロイスのみとなる)
ロイスの取得が可能なのは、ミドルフェイズのメインシーンとエクストラシーンのみ。
ロイスを取得する際、P/N感情のどちらかを秘匿しておくことが可能。この場合、原則ED終了までに自らのタイミングで公開することとする。
クライマックスシーンではジャーム化・『とどめを刺される』は発生しないが、侵蝕率が200%を越える、または全てのロイスを失うと、その時点で戦闘不能となる。
GM:ご質問等ございますか?
モノ:とりあえずは大丈夫!
ヒサギ:今のところ大丈夫ですー
シキ:大丈夫!
ヒイラギ:大丈夫~
GM:ではまずOPをやっていきます OPで誰と何がやりたいか、希望をGMに秘話で送ってください
GM:少々お待ちください
GM:以下のようになりました
ヒイラギ>シキ
ヒサギ>ヒカリ
ヒカリ>ヒイラギ
モノ>シキ
シキ>ヒカリ
GM:ではこの順番でOPをやっていきましょう 制限時間は各35分です。
シキ:やるぞー!
ヒイラギ:うおー!
ヒサギ:よろしくお願いいたします。
モノ:あいあいー
【OP/ヒイラギ】
ヒイラギ:大量のジャームが、機材や施設を破壊し回り、
ヒイラギ:戦闘がそこら中で発生している中
ヒイラギ:「……クソッ」戦闘能力に秀でていない個体であるヒイラギは、隠れながらなんとか生存していた
ヒイラギ:「ヒサギ……」
ーー:ガ ゴ ン ッ ! !
ヒイラギ:「っ……!」
ーー:ヒイラギが隠れる障害物が突如、衝撃に粉砕される。
ヒイラギ:息を殺す。装備はなんとかかき集めた。それでも、
ーー:異形化したかつての姉妹、実験体のジャームが、目ざとくも彼女の姿を見つけ、その肥大化した腕を振り下ろす。
ーー:そこへ───
シキ:「伏せて!ヒイラギ!!」
ヒイラギ:「あ……っ」声とともになんとか伏せる
シキ:槍のような発光体がジャームを背後から貫き、その活動を停止させる。
ヒイラギ:「シ……キ?」
シキ:「……」亡骸となったそれを一瞥し、僅かに目を閉じた後
シキ:「うん。お姉ちゃんだよ、ヒイラギ。無事?」
シキ:何食わぬ表情でウインクを飛ばす。
ヒイラギ:「……」安心したかのようにへたり込む
ヒイラギ:「死ぬところだった」
シキ:「ふふん、死なせないよ。私の目の黒いうちはさ」
ヒイラギ:「……助かった、礼は言っておく」
シキ:「うん、間に合ってよかった。この区画で生き残ってるのはヒイラギだけみたい」
ヒイラギ:「……」
シキ:へたり込んだ彼女に手を差し伸べる。
ヒイラギ:「ヒサギは」
ヒイラギ:「他の、区画にいるのか」手をとって
シキ:「たぶんね……少なくともこの区画にはいなかった」
シキ:「……死んだ子達の中にもね」
ヒイラギ:「……探さないと」
シキ:「姿が変わっても、私にはわかるから。そこは間違いないはず」
シキ:「……うん」「ふふ、しっかし……」
シキ:たまらず吹き出す
ヒイラギ:「な、何がおかしい」
シキ:「ヒイラギはホント、ヒサギがいないとふにゃふにゃになっちゃうんだね~」
シキ:「かわいいな~こいつ~」
ヒイラギ:「言ってる場合じゃないだろ!」
シキ:くしゃくしゃと髪を撫で用途した手を振り払われて
シキ:「おっと、ごめんごめん」
シキ:「うん、ようやくいつものヒイラギだね」
ヒイラギ:「……シキが生きててよかったよ、クソッ」
ヒイラギ:一呼吸つける
シキ:「いつもそのくらい素直だともっとかわいいのになー」
ヒイラギ:「うるさい」
ヒイラギ:「……それより、生存者を探してるんだろう、シキ」
シキ:「うん。ここはもうだめだけど、他の区画にはまだ妹たちが取り残されてるはず」
シキ:「早く行って助けなきゃ……ヒイラギはどうする?」
ヒイラギ:「ヒサギを探す。これは変わらない」
シキ:「そか……」ポケットから端末を取り出す。
シキ:施設内の見取り図。所々に✕印がマーキングされている。
シキ:「ヒカリがリアルタイムで状況を送ってくれてる。今生きている経路は、ここと、ここと、あとここ」
ヒイラギ:自前の端末に同期させる
ヒイラギ:「……助かる」
シキ:「私は一番近いC区画へ行くけど、たしかヒサギは今日、E区画で実験に参加する予定があったから」
ヒイラギ:「シキ」
シキ:「多分そっちに……」
シキ:「ん?」
ヒイラギ:「……ボクらのどっちかがだめだったら」
ヒイラギ:「どっちも諦めてくれって言ったら」
ヒイラギ:「……」
シキ:「断るよ」
ヒイラギ:「……そうだろうな」
シキ:「ヒイラギとヒサギのどっちかがいなくなっても」
シキ:「私はあなた達に生きて欲しい。たとえそれに二人が納得しなくても……」
シキ:「……だからさ」
シキ:「ちゃんと助けてあげて。ヒサギのこと」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「後で合流する。揃ってな」
シキ:「うん。約束だね」
シキ:拳を軽く合わせて、区画の先へ進んでいく。
ヒイラギ:「……ボクには他の奴らを背負えるような力はない」背を見送るように
ヒイラギ:けど、きっとシキならなんとかしてくれるんじゃないか。こんな、地獄のような状況を。
ヒイラギ:そう思って、無事な経路へと歩みを進め──
ヒイラギ:
ヒイラギ:目が覚める。ぼやけた視界越しでも、状況が変わらないことはわかる。
シキ:「───ラギ」「───イラギ」
シキ:「───ヒイラギ。起きた?」
シキ:耳元で優しげな声が響く
ヒイラギ:「……シキか」
シキ:「大丈夫?うなされてたよ」
シキ:「よくない夢でも見た?」
ヒイラギ:毛布代わりにかぶっていたジャケットからメガネを引っ張り出す
シキ:その顔は思いの外近くにある。
ヒイラギ:「……離れろ、暑苦しい」
シキ:それもそのはず、シェルターで申し訳程度に割り当てられた個室の粗末なベットの上で
シキ:子供をあやすように、隣に寝そべって彼女の寝顔を見つめていた。
シキ:「えー!つれないな~!」
ヒイラギ:起き上がり、メガネを掛けて顔をそらす。
ヒイラギ:「近いんだよいつもお前は」
シキ:「用が済んだらポイなんてさー、ひどい女だなーヒイラギはー」
シキ:唇を尖らせながらベッドから降りる。
ヒイラギ:「人聞きの悪いことを言うな」
シキ:「ふふ、ごめんごめん。ヒイラギからかうとかわいいからついね」
ヒイラギ:「人を玩具にするんじゃないよ……」やれやれ、とため息をつきながら
シキ:「その寝顔と同じくらいにはさ」「朝ごはん作ってくるね。二度寝すんなよ~」手を降って部屋を出ていく。
ヒイラギ:その背中に、つかの間の安心感を覚えていることも事実だった。
【OP/ヒサギ】
ヒサギ:シェルター内にあったパイプ椅子を広げて、配線に端末をかざしている。ちかちかと、彼女の瞳色のような淡い赤が舞っている。
ヒサギ:≪イージーフェイカー:機械の声≫。外へ繋げて、上手く監視カメラなどから情報を取得しようとする。
ヒサギ:「………んん」
ヒサギ:個室としてあてがわれた部屋。さほど広くもない、コンクリ風の建材打ちっぱなし。
ヒカリ:「ヒサギ~」
ヒサギ:「んん……ここをこう……えーと迂回して…」
ヒサギ:「わ」
ヒカリ:ノック……がほぼ意味を成さないほど同時に、ドアを開けて入ってくる。
ヒサギ:何とかつなげようとしていたそれが崩れる。
ヒサギ:「……あ、ヒカリさん。すみません、時間でしたか」
ヒカリ:「やーやー。調子どう?」
ヒサギ:「どうにも。わたしの能力はまあ、さほど機械に強いわけじゃないので…」苦笑している。
ヒサギ:「ヒカリさんの手伝いくらいはできればと、思ったんですが」
ヒカリ:「ふふ。ヒサギはいい子だね~」
ヒサギ:「掛けてください。ベッドの方が柔らかいから、そっちでもいいですけど」パイプ椅子を広げて。
ヒサギ:「そうです…?そう見えているなら、よいのかな」
ヒカリ:「うん」パイプ椅子に腰掛けて、そのままガタガタと引っ張って、ヒサギの真横まで距離を詰める。
ヒカリ:「そうだよぉ」
ヒサギ:其れには少し苦笑するだけだ。
ヒサギ:「そうですか。なら、受け入れておきます」
ヒカリ:「こっちでも見てみたけど、監視カメラもほとんどイッちゃってんね」
ヒカリ:「残ってるのも……ほら」
ヒサギ:「まあ、やっぱりそうですよね…」溜息。
ヒカリ:ノートPCの画面を見せる。
ヒサギ:覗き込む。
ヒカリ:そこには無数のジャームが徘徊する様子が映し出されているばかりだ。
ヒカリ:「これだもんねー」
ヒサギ:「……活動が落ち着いて、数が減るなり上方に移動するかと思ったんですけど、期待できそうにないですね…」
ヒサギ:ふむ、と口元を覆って少し考えこむ。
ヒカリ:「待ってても、こっちが先に干からびちゃいそうだよねえ」
ヒカリ:ははは、と笑って。
ヒサギ:「もう60日以上ですからねえ……」笑うしかない、という感じだ。
ヒサギ:「……ヒカリさんは、色々大丈夫です?こういう閉鎖環境に閉じ込められるとまあ、人間ストレスですから」
ヒカリ:「え~?あたしは大丈夫だよー」へらへらして。
ヒサギ:そういう少女は、ここに入る前とさほど変わらないように見える。
ヒカリ:「モノとかヒイラギはそろそろヤバそう~って感じだけど」
ヒサギ:「ふむむ……いや、寧ろ持ってる方ですよね…」
ヒカリ:「そういうキミはどうなのさ?」
ヒサギ:「わたしですか?」
ヒカリ:「キミ以外いないでしょ」
ヒサギ:変わらない微笑み。変わらない声のトーン。
ヒサギ:「そうですね、それなりにストレスたまってるなとは思いますよ」
ヒカリ:「へぇ、見えないね」
ヒカリ:顔を傾けて、じろじろと覗き込む。
ヒサギ:「そういうのは得意なタイプですし」
ヒサギ:にこやかなままだ。
ヒカリ:「ふふ……確かにそうだったねー、『昔から』」
ヒサギ:「………」
ヒサギ:「ええ、わたしはいつもの通りです」
ヒサギ:「それに、そういうのを扱える能力者でもあります」だから、と置いて。
ヒサギ:「ストレスとか、溜まってるものがどうしてもこらえがたいなら」
ヒサギ:「受け入れてもらえれば、オーヴァードでも処置は出来ますよ」
ヒカリ:「えぇ~?」
ヒサギ:彼女の双子の妹のこと。それを聞いたわけでもない。聞けなかった。
ヒカリ:大きく仰け反って、そのままパイプ椅子をぎこばたと揺りかごのように行儀悪く揺らす。
ヒサギ:それは、傷になっていることに触れて、関係の悪化などを危惧したのもある。
ヒサギ:「もちろん、いらないなら構いませんよ。信頼できないのも、仕方のないことですし」
ヒサギ:「ただ、」
ヒサギ:「こういう逃げ道もあるってだけです」
ヒカリ:「信頼できないっていうかさー……」ゆらゆら揺れていたが、ぴたりと止まって。
ヒサギ:”私”を知っている人。そんな人と、一対一で真向から向かい合ったら。
ヒサギ:”わたし”は、いったいどうなるのだろう?
ヒカリ:「……あたしは、キミとこうやって話してるだけで結構楽しいんだけど……」
ヒカリ:「……キミはそうでもない?」
ヒサギ:「……………」少し目を見開く。
ヒサギ:こほん、と咳をして。
ヒサギ:「いえ、嬉しいですよ。わたしも」
ヒカリ:「んふふ。そっかそっか」
ヒカリ:嬉しそうににこにこと笑う。
ヒサギ:「正直、………ヒカリさんには。一杯頼ってるので、わたしが役に立てるならうれしいですから」
ヒカリ:「役に立ってるってー。立ちまくりだよ」
ヒサギ:少し目を細めて笑う。普通の少女のような。
ヒカリ:「ヒサギはいい子だし、優秀で、すごい助かってるよー。いなかったら困るな、あたし」
ヒサギ:「そうですか?それはヒカリさんにこそふさわしい気もします」からかうような口調。
ヒサギ:「みんな、頼りにしてます。…だから、本当。小さなことでもいいので、何でも言ってくださいね」
ヒカリ:「え~?照れますなー、そんなに言われると」くすくす笑って
ヒカリ:「んー……じゃあさー……」
ヒサギ:こうなる前からも、通信といい彼女が担当してきたことは多く、不可欠で。そして、ずっと皆を気遣っている人だからだ。
ヒサギ:「はい」
ヒカリ:「キミがいてくれて助かるのは本当だよ。キミはいい子だし、きっと皆もそう思ってる」
ヒカリ:「だからさー……」
ヒカリ:「もうあんま、気にしなくていいんじゃない?」
ヒサギ:「………、?」目をしばたたかせる。
ヒカリ:じっと目を見つめて、笑みを浮かべ。主語を省いて言う。
ヒサギ:「何を……」目を丸くして。
ヒカリ:「あたしと話してれば……」
ヒカリ:「『前のヒサギ』と比べられるとか」
ヒカリ:「手掛かりになるんじゃとか」
ヒカリ:「思った?」
ヒサギ:「、それは………」
ヒサギ:「…比べられるんじゃないかとは…思ってます。わたしが…原因で嫌な思いをさせるんじゃないか、とも」
ヒカリ:「何であたしが嫌な思いすんのさ?」首を傾げる。
ヒサギ:「……ええと。もし知り合いの死体を使って、別のだれかが何かをするなら。冒涜的ー、とか。そういう拒否感があったりしませんか?」
ヒカリ:「えぇ!?」
ヒカリ:「あははははは!えー何、そんなこと思ってたの~!?」
ヒカリ:「そんなわけないじゃん。繊細だなー、キミ」
ヒサギ:「そういう実例の記憶を見たり、サンプル事例を読んだり、実際そういう風に言われたこともあるからですよっ」少し怒った風に。
ヒカリ:「んー……だってさぁ……」
ヒカリ:少し考え込んで。
ヒカリ:「前のヒサギと今のヒサギ、あたし、別の人だと思ってるし」
ヒサギ:「………そですか」
ヒサギ:腕で少し顔を覆う。
ヒカリ:「すっごい似てるけど、でも割と思うよ?両方知ってる側からすると。あっ違うな~って」
ヒサギ:「……ん……よかった、とも。うれしい、とも。なんか違うんですが……」
ヒカリ:「……ほら、双子って、すっごいそっくりでも、性格とか好きなものとか違うじゃん?」
ヒカリ:「そんな感じ」
ヒサギ:「そんな感じ、ですか」
ヒカリ:「んー……それでもやっぱり気になる?」
ヒサギ:「………どうでしょう。ちょっとほっとしたというか、胸のつかえが墜ちた気はしますけど…」
ヒサギ:くすりと笑う。
ヒサギ:「まあ、どうなのかなと思うことも、まだあるので」
ヒカリ:「う~ん……そっかぁ……」顎に手を当て考え込んで。
ヒカリ:「……あ、そうだ」
ヒカリ:「ヒサギ」
ヒサギ:「はい」膝の上に手を置いた、綺麗な姿勢。
ヒカリ:こちらを向いたその唇に、唇を重ねる。
ヒサギ:「…………」目を見開いて。
ヒサギ:「……、ぅ、急にびっくりします……」
ヒカリ:「……前のキミとは────」
ヒカリ:顔を離して。
ヒカリ:「これはしてなかったよ」
ヒカリ:悪戯っぽく笑う。
ヒサギ:「…………ヒカリさんのこと、一つ分かった気がします」
ヒサギ:「いじわるなひとですね」
【OP/ヒカリ】
ヒカリ:シェルターに備え付けられた物資倉庫は、5人が生活していくに十分な量の備蓄を有していた。
ヒカリ:だが当然、それも無限ではない。水も食料も日を追うごとに着実にその数を減らしつつあり、
ヒカリ:いつからか自然と、物資は厳格に管理され、計画的な運用が義務付けられるようになっていた。
ヒカリ:「や~、結構減ったねぇ」
ヒカリ:ドローンのセンサーで食料の数をチェックしながら言う。
ヒイラギ:「……籠もってられるのもそう長くはない、か」
ヒカリ:「このラーメン食べていい?」
ヒカリ:毒々しい赤色のインスタントラーメンを手に取る。
ヒイラギ:「他に食うやついたか?」
ヒカリ:「んー……いないかも」
ヒイラギ:「じゃあ食えばいい。ボクは別のにする」
ヒカリ:「やった~。へっへっへ」両手に激辛ラーメンを抱えながら
ヒカリ:「ヒイラギも食べればいいのに~」
ヒイラギ:「……」よくそんなのが食べられるな、と言いたげな顔
ヒカリ:「何だよ~、もっとお話ししようぜー」
ヒカリ:「コミュニケーション。わかる?」
ヒカリ:「せっかく一緒に生き残った姉妹じゃんか」
ヒイラギ:「……コミュニケーションなら他を当たればいい」
ヒイラギ:「ボクは苦手だ、そういうの」
ヒカリ:「ふぅん……」
ヒイラギ:「ヒサギなら得意だろうがな」
ヒカリ:目を細める。
ヒカリ:「あー、出た。いまヒサギ関係あった~?」
ヒイラギ:「……コミュニケーションに秀でるのはヒサギ、ってだけだ」
ヒカリ:「シキだってそうでしょー?」
ヒカリ:「それさぁ……」
ヒカリ:「キミがヒサギ以外とは仲良くする気ないってだけじゃないの?」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「楽しいお話とやらを求めるなら、ボクは不適格ってだけだ」
ヒイラギ:「それともなんだ、5人揃って仲良しこよしがいいのか」
ヒカリ:「駄目なわけ?」
ヒカリ:「こんな状況で更にギスギスするの、あたしならやだけどなぁ」
ヒイラギ:「……現状、大きな不和が起きているわけじゃないだろ」
ヒイラギ:「だったらそれで構わない。ボクはそう思っているが」
ヒカリ:「キミのせいでそうなりかねない、って言ってるんだよ」
ヒカリ:口元はへらへらと笑っているが、瞳の色は冷たい。
ヒカリ:「それにねえ、ヒイラギ」
ヒイラギ:「……」
ヒカリ:「あの子はキミの抱き枕でも、ダッチワイフでもないよ」
ヒイラギ:「なんだと?」
ヒイラギ:「……どういう意味だ、ヒカリ」
ヒカリ:「ん~?何?」人を舐めたような態度で。「もう一回言わなきゃ分かんない?」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「お前は、”前”のヒサギについて知ってるそうだな」
ヒカリ:「そうだけど~?」
ヒイラギ:「でもな、それは今のヒサギとは、関係ない。どれだけ知っていようとだ」
ヒカリ:「は?話をすり替えんなよ」
ヒイラギ:「ボクとヒサギの関係にどうこう言う権利は、お前にはないって言ってるんだよ」
ヒカリ:「いい加減、あの子に依存するのやめたら?」
ヒカリ:「……って言ってるんだけど~?」
ヒイラギ:「依存だと?」
ヒカリ:「えー、何?」
ヒカリ:「まさか自覚無いとか言うんすか?」
ヒカリ:「それは流石にウソでしょぉ」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「ヒカリ、お前は不和がどうとか言っていたが」
ヒイラギ:「……お前とは仲良くできない。それはハッキリしてる」
ヒカリ:「えぇ~、ショックだな~」
ヒカリ:「あたしは仲良くしたいと思ってるのになぁ」
ヒカリ:ドローンの上部を掌で撫でる。
ヒイラギ:あからさまに無視するように、食料や飲料水の目視確認に戻る。
ヒカリ:「ちょいちょい、無視すかー?」
ヒカリ:「そういうの結構傷つくタイプなんですけど~」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「……ヒサギとは」
ヒイラギ:「仲良くしてやってくれ。ボクとはどうでもいいが」
ヒカリ:「してるよ?言われなくても」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「だろうな」
ヒカリ:「キミ以外とは仲良くしてるって」
ヒカリ:「キミにその気がないだけでしょ~?」
ヒイラギ:「わざわざ不和を起こす気もない。それで充分だろうが」棚をいじって整理しながら
ヒカリ:「人付き合いってそういうのじゃないと思うんですがー」
ヒカリ:「他人ならともかく、姉妹じゃん。一応さ」
ヒカリ:「そういうことになってるでしょ」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「ボクの妹はヒサギだけだ。最初からそう言ってる」
ヒカリ:「はー……」
ヒカリ:深々と嘆息して。
ヒカリ:「キミさあ、本当に……」
ヒカリ:「あたしにそっくりだよ」
ヒイラギ:少しだけ手を止め、すぐに作業を再開する。何も返すことなく。
【OP/モノ】
モノ:かちゃり かちゃり かちゃり
モノ:錆びたネジやなにかの部品、プレートなどのガラクタを
モノ:ほとんどミイラ化している頭蓋骨の前に積み上げていく。
モノ:「えへへ」
モノ:「み、み、みぎに積んだよ」
モノ:「う、うん……じゃあ、これから、ひだりに積むね」
モノ:独りでしゃれこうべに頷いて
モノ:また金属片を積み直していく。
モノ:かれこれ数時間、飲まず食わずだ。
シキ:「モーノッ」
モノ:「?」
モノ:「どうしたの、シキ」
シキ:「あっと、振り向くの速いよ~」
シキ:後ろから手を回して視界を塞ごうとしていた
モノ:「あ、あ、それ」
モノ:「それ、知ってるよ、モノは、知ってる」
モノ:「そのまま目の中に指を入れて、爪でしゅっとする、やつ」
モノ:「いいよ、する?」
モノ:ぺたんと座って首を差し出す
シキ:「もー、そんなことしないってば」苦笑する
シキ:「今のはね、後ろから目を塞いで『だ~れだ?』ってするやつ」
シキ:「映像資料で見たこと無い?恋人同士とかのさ~」
モノ:「それで」
モノ:「シキは、楽しいの?」
モノ:「面白い?」
シキ:「ん~、まあ、そりゃおもしろいよ」
シキ:「モノとじゃれ合うのは面白い。モノは面白くない?」
モノ:「も、モノは」
モノ:「みんなと、遊ぶのが好き」
モノ:しゃれこうべに視線を移す
シキ:「………」
シキ:「そか……ねえ、今は何の遊びしてたの?」
モノ:「み、みぎからひだりゲーム!」
シキ:何度か、彼女が話しかけている首を埋葬しようとしたが、その度にモノは激しく抵抗した。
モノ:「こっちのやまを、こっちのやまに、する」
モノ:「それを、ずーっと、するの」
モノ:「み、みんなが教えてくれたんだ、へへ、へへへへ」
シキ:仕方がなく、今は最低限の防腐処理を施してそのまま彼女に持たせている。
モノ:「それを、モノがしてると」
モノ:「みんなは嬉しいんだって、必要なんだって」
モノ:「モノは、みんなの、役に立つ」
モノ:ニコニコと笑う。
シキ:「そっか……ねえモノ」
シキ:「私も一緒にやっていい?みぎからひだりゲーム」
モノ:「……」
モノ:すっと、一瞬だけ真顔になり。
モノ:「い、いいよ。えへへ」
モノ:「2人でするのは、はじめて」
モノ:また笑顔に戻る。
シキ:「二人じゃないでしょ」
シキ:「みんなでやるんじゃないの?ねー」
モノ:「そうだね」
シキ:物言わぬ首に微笑みかける。
モノ:「みんなと、シキで」
モノ:かちゃかちゃと、機械的に金属片を積み上げ直す。
モノ:「シキ」
シキ:「んー?」
モノ:「モノは、みんなが好きだったよ」
モノ:「大好きだった」
シキ:その隣で同じように金属片を積んでいく。
モノ:「だって」
モノ:「みんなの言うことは本当だったから」
モノ:「寂しくて、苦しくて、怖くて」
モノ:「モノがこうしてるだけで、みんなにはそれがよかったって」
シキ:「………」押し黙ったまま耳を傾ける
モノ:「それは本当だったから」
モノ:「シキは、何が本当なの?」
モノ:「どうしてみんなでいたいの?」
シキ:「私の本当、か……」
モノ:「それはシキが本当に、そう思うの?」
モノ:「いま、やってることも、いつも」
モノ:顔を上げる
モノ:「シキは、嘘っぽい」
シキ:「………それは……」
モノ:昏い穴は何も移さない、ただ君へと向けられている。
シキ:言葉に詰まる。しかしすぐに口元を吊り上げて
シキ:「モノは、嘘つきな子は嫌い?」
モノ:「嫌い」
モノ:「嫌い、嫌い、嫌い」
シキ:「私がもし、モノのことぶったり、無視したり、だっきらいだーって言って何日もごはん抜きにしても」
シキ:「それが本当なら、その方がいい?」
モノ:「へへ、へへへ」
モノ:こてん、と
モノ:糸の切れた人形のように、シキへともたれかかる
モノ:「そうだよ」
モノ:「シキの本当を見せて」
シキ:「……そっか」
シキ:パ チ ン ッ
シキ:モノの頬を平手で思いっきり叩く
モノ:「……ぃひ」
モノ:表情が喜悦に歪む。
シキ:「私、モノが好きだよ。妹だもの。それは本当」
シキ:「けど、モノのそうやって人を見透かし下記になってるところは嫌いだし、嘘つき呼ばわりされるのはムカつく」
シキ:「だから、今のも私の本当」
シキ:すかさずモノを抱き寄せて、腫れ上がった頬に口づけする。
シキ:「どう?信じてくれる?」
モノ:「!」
モノ:「……」
モノ:「これは、何?」
シキ:「何って……チューのこと?」」
モノ:「可哀想だなんて、思わなくていいんだよ」
モノ:「ムカつくなら」
モノ:「もっと強く叩かないと」
モノ:「もう一度、叩かないと」
モノ:「折角本当の気持ちでしたことを、誤魔化しちゃだめだよ、シキ」
モノ:ずい、ともう一度顔を近づける。
シキ:「……モノはさ」
シキ:その顔を左手でガシリと、力強く掴む
モノ:「え、へへぇ」
モノ:体を震わせる。
シキ:いつか彼女にそうされたように、潰れるほどに力を込める。
モノ:「い、痛いよ?」
モノ:頬を紅潮させ、潤んだ瞳で見上げる。
シキ:「痛いのが好きなんでしょ?」
シキ:「モノはさ、"本当"が一つしか無いって思ってるんだね」
モノ:「本当は1つだよ」
シキ:彼女の顔を掴んだまま、今度は唇を奪う。
モノ:「たった、1つだけ」
モノ:「ん……」
モノ:なされるがまま、唇を奪われ
シキ:同時に、彼女の唇を強く噛む。
シキ:「本当、馬鹿な子」
【OP/シキ】
シキ:早朝。シェルターの内部を柔らかな日差しが照らし、微かに小鳥の囀りが聞こえてくる。
シキ:無論、全て作り物だ。太陽光を模した照明と合成された環境音。
シキ:閉鎖されたシェルターの中で可能な限り健全な生活を営むためのプログラムに過ぎない。
シキ:幾つかに区分けされた部屋の中でも特に広いスペース。会議室や食堂として利用されている部屋から
シキ:油の弾ける、小気味いい音が響いてくる。
シキ:「たっめーいっきのーでっるよーなー♪」
シキ:ガスコンロの前で鼻歌交じりにフライパンを揺らす。
シキ:「あっなーたのっくっちーづけーにー♪」
シキ:5人分の朝食。今日のメニューはベーコンエッグと簡単なフレッシュサラダ
シキ:シェルター内の殆どの食料は簡素なレトルト食材だが、長期収容に耐えうるよう、ごく小規模ではあるが食料プラント施設がシェルター内に併設されていた。
ヒカリ:「シキ~~」
シキ:「ま、ゆーてレタス以外は合成食品だけど、やっぱ料理は心の洗濯だからねー」
ヒカリ:寝起きであることを隠さない顔と寝癖で、素足でぺたぺたと歩いてくる。
ヒカリ:「ご飯はぁ~?」
シキ:「あ、ヒカリいいところに!」
シキ:「そこのお皿持ってきてー」
ヒカリ:「ん~」
シキ:「それ終わったらお湯沸かしてスープ作って。そこのパックのやつ」
ヒカリ:自分は動かないまま、ドローンがマニピュレーターで皿を持っていく。
ヒカリ:「んぇぇ」
ヒカリ:「やだ~~」
ヒカリ:「朝から動くなんて無理~」
シキ:「こーら、ちゃんと運動しないと頭すっきりしないでしょー」
シキ:「何でもドローンに頼らない。バッテリーだって無限じゃないんだから」
ヒカリ:「自分で充電できるもん~」
シキ:皿を持ってきたドローンを直接操作して電源を切る。
ヒカリ:「えーんえーん……シキがいじめるよ~」
ヒカリ:わざとらしく泣き真似をして、椅子にだらりと身を預ける。
シキ:「いじめてませんー愛の鞭ですー」
シキ:ベーコンエッグを更に盛り付け、ヒカリのいるテーブルに並べていく。
ヒカリ:「あたしSMなんてやだ~」
ヒカリ:くんくんと匂いを嗅いで、もぞもぞ顔を上げる。
ヒカリ:「やた。美味しそう」
シキ:「まだ手ーつけちゃ駄目だよ。ちゃんとみんな呼んできてから」
ヒカリ:「う゛ぇぇ」
ヒカリ:苦虫を嚙み潰したような顔をする。
シキ:「ヒイラギは起きてたから、後はヒサギとモノだね」
ヒカリ:「やだやだやだ~~」
シキ:「モノはまーた夜ふかししてたから、今頃二度寝してるかも」
ヒカリ:「出来立てが美味しいのにー!」
シキ:「そう思うならさっさと起こしてー。こういうときこそドローンの出番でしょ」
ヒカリ:「さっきは使うなって言ったくせに~」
ヒカリ:「ドローンづかいが荒いんだからな~」
ヒカリ:自分のことは棚に上げて言って、部屋の外に向けてドローンを放つ。
シキ:「ヒカリほどじゃないっての……しっかし」
シキ:食堂を見回す。部屋の隅には捨てるところのないゴミがまとめられている。
シキ:「かれこれ2ヶ月かー。時が過ぎるのは速いねえ」
ヒカリ:「ね~」
ヒカリ:「どうなる事かと思ったけど、意外と何とかなるもんだね」
ヒカリ:「それもリーダーが頑張ってるお陰かな~」
シキ:「ンなこと無いって。なんだかんだみんな協力してくれたおかげだよ」
シキ:「特にヒカリは、色々やってくれてるみたいじゃん?」
ヒカリ:「謙遜すんなって~」
ヒカリ:「それも、シキほどじゃないよ」
シキ:「私、あんまりキツイこと言うの苦手だからさ。助かってるよ。マジで」
ヒカリ:頬杖をついて微笑する。
ヒカリ:「シキは頑張ってるよ、ほんと」
シキ:「ほんと~?」
ヒカリ:腕を伸ばして、頭を撫でる。
ヒカリ:「えらいえらい」
シキ:「ん……もー!」
シキ:イヤイヤをするように首を振って
ヒカリ:「照れんなよ~」
シキ:「私の方がお姉ちゃんなんだからね!そういうのは私がするのー!」
ヒカリ:「え~?お姉ちゃんなら妹の言うこと聞くもんでしょ~」
ヒカリ:「大人しく撫でられてなって。うりうり」
シキ:「やーめーろー!」
ヒカリ:わしゃわしゃと頭を撫でる。
ヒカリ:「ういやつよな~」
シキ:ジタバタしながらも強くは振りほどかない。
シキ:「ん~~~!」
シキ:「とうっ!!」
シキ:大きくジャンプしてその手を逃れる。
ヒカリ:「あー、逃げられた」
シキ:「ふー……ま、いい朝の運動にはなったかもね」
シキ:「しっかし遅いなあいつら……」
ヒカリ:「もう訓練も実験も無いしねぇ」
ヒカリ:「起きてたってやる事無いし。そりゃー寝てたくもなるって」
ヒカリ:コップから水をちびちび飲む。
シキ:「そもそも昔っからみんな朝弱すぎなんだよ。オリジナルからの遺伝かしらないけどさー」
シキ:「ちゃんと起きてたのは私とサアヤとイノリぐらい……」
シキ:「………」
ヒカリ:「みんなそうだったよね~。それも遺伝するもんなのかなあ」
シキ:「……ねえ、ヒカリ」
ヒカリ:特に気にする様子もなく、にこやかに笑っている。
ヒカリ:「ん~?」
シキ:にやけていた表情を戻して、座っている少女に尋ねる。
シキ:「前にサアヤが言ってたこと覚えてる?」
ヒカリ:「どれのこと?」
シキ:「この研究所を出たら、何がしたいか?ってやつ」
ヒカリ:「あー、アレかぁ」
ヒカリ:「うん。覚えてるよ」
シキ:「ヒカリ、結局あの時寝ちゃって答えなかったじゃない?」
シキ:「今、聞いてもいい?ここを出たら何がしたいか」
ヒカリ:「え~?何さ、急に改まっちゃって」
ヒカリ:「不治の病でも見つかった?」
シキ:「健康そのもの。でも大事でしょ?私はみんなで生き残ることを諦めてない」
ヒカリ:「希望ってやつ?」
シキ:「そうだよ。希望」
ヒカリ:「なるほど、そりゃ大事だ」
ヒカリ:「んー、そうだなぁ……」口元に手をやって考え込み
シキ:「───私は、さ」
ヒカリ:「うん」
シキ:それを遮るように
シキ:「私は、みんなで無事にここを出たら」
シキ:「ヒカリに殺されてもいいと思ってる」
ヒカリ:「……」
ヒカリ:「は?」
ヒカリ:顔を顰める。
ヒカリ:「何言ってんの」
シキ:「そのまんまの意味だよ」
シキ:「あるでしょ、私には。殺される理由が」
ヒカリ:「……無いでしょ、そんなの」
シキ:「あるよ。イノリを殺したのは私だもん」
ヒカリ:「……も~……」
ヒカリ:「逸らしたじゃんかよ、話……」
ヒカリ:「察しろよな~……」
シキ:「空気読めないの、知ってるでしょ?」苦笑する
シキ:「私、主任の死に際には立ち会えなかったけど」
シキ:「もし仮にさ、姉妹の誰かが主任を殺したのなら、その子のこと憎んじゃうと思う」
ヒカリ:「……それがシキのいう、シキにとっての希望なわけ?」
ヒカリ:「あたしにはそうは思えないけど」
シキ:「……どうだろ、自分でもわかんないから聞いてんのかもね。私は……」
シキ:「ヒカリの、本当の気持ちが知りたいだけだよ」
ヒカリ:「……それなら、そうだね」少しだけ目を伏せて、感情の読み取れない微笑を浮かべて。
ヒカリ:「……シキは何も、気にしなくていいよ」
ヒカリ:そんな、答えにならない答えを返した。
GM:ではOPが終了し、ミドルシーンに入っていきます。
GM:まずはミドルシーン前半の手番を決めるダイスを振っていただきます。
GM:全員1D100で判定し、出目の高かった人から1~5番目の好きな手番を選ぶことが出来ます。
GM:というわけで判定をどうぞ!
シキ:1d100
DoubleCross : (1D100) → 63
ヒカリ:1D100
DoubleCross : (1D100) → 52
ヒサギ:1d100 やっ
DoubleCross : (1D100) → 16
ヒイラギ:1d100
DoubleCross : (1D100) → 83
ヒサギ:マジで???
モノ:1d100
DoubleCross : (1D100) → 86
ヒサギ:嘘だろ……
ヒイラギ:ヒサギ……
モノ:おらー!
GM:ではまずモノさんから
モノ:当然5番目です
シキ:こやつ……
GM:へ~……
GM:臆したな
GM:次にヒイラギさんどうぞ
モノ:アアン!?
ヒイラギ:う~んどうするか
ヒイラギ:3番で
シキ:安牌確保に行ったわね
ヒイラギ:丸く行く
ヒサギ:一番準備もしやすいとこだ
GM:OK ではシキさんです
シキ:私は2番で
GM:やはりか……ではヒカリさん
ヒカリ:とはいえ流石に4かな……
ヒサギ:さっき臆したなとか言ってたくせに!!!!!
GM:ではヒサギさんは1番になります
ヒサギ:はい…
ヒイラギ:ヒサギ……
GM:結果はこのようになりました
1:ヒサギ
2:シキ
3:ヒイラギ
4:ヒカリ
5:モノ
【Middle first half/ヒサギ】
GM:ではミドル前半 1手番目 シーンPCはヒサギさんです
GM:誰を指名しますか?
ヒサギ:はいっ
ヒサギ:ヒイラギ姉さん、おねがいします!
ヒイラギ:ヒサギ……
GM:ではメインシーンはヒサギさん ヒイラギさん サブシーンはシキさん モノさん ヒカリさんになります
GM:また、ミドルシーンでは判定に挑戦することができます
GM:クリアしなくても問題はありませんが、様々なメリットを得ることができます。
判定項目
難易度はいずれも9
・脱出路調査
任意の≪情報≫
戦闘中全達成値+3
・模擬戦
≪白兵≫≪射撃≫≪RC≫≪交渉≫
経験点+5
・人力発電
≪肉体≫
戦闘中全判定ダイス+2
・倉庫捜索
任意の≪情報≫ もしくは≪感覚≫
財産点+5
・料理
≪芸術:料理≫
侵蝕率-1D10
ヒサギ:えっつよ……
ヒイラギ:メチャつよいな
ヒイラギ:一つ質問です
ヒサギ:一応先に脱出路調査を希望しますね。マイナーも使って大丈夫かな…
ヒサギ:”Lătīnŭs”≪オリジン:サイバー≫。社会達成値+10。
GM:メイン/サブシーン毎に判定できるのはひとつずつになります
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を2(→ 2)増加 (34 → 36)
ヒサギ:了解です~ 情報fhで判定。
ヒサギ:3dx+11>=9
DoubleCross : (3DX10+11>=9) → 6[2,3,6]+11 → 17 → 成功
ヒサギ:成功。
ヒイラギ:えらいぞヒサギ
シキ:判定ダイスがほしいんで人力発電しようかな
シキ:肉体判定はどの肉体技能使っても大丈夫ってことでいいですか?
モノ:わいも発電!
モノ:えへ……お揃いだね
GM:いや 技能なしで肉体ダイスですね
シキ:一緒に自転車漕ごうね
シキ:あ、そうなるのか
ヒイラギ:素振りだ
シキ:ちょっと怖いな。やっぱり模擬戦にしよ
ヒイラギ:倉庫捜索します
ヒカリ:モノいれば大丈夫じゃない?
GM:待って~~
モノ:1d10+32
DoubleCross : (1D10+32) → 4[4]+32 → 36
ヒイラギ:まつ
モノ:役に立つよ!
ヒイラギ:一旦待とう
GM:メイン/サブシーン毎に判定できるのはひとつずつになります
モノ:おおっとぉ
ヒイラギ:あっそういうことか
ヒイラギ:オッケイ
モノ:そう来たか
シキ:そうじゃん
ヒイラギ:一人一つかと思ってたけどシーン一つ、了解
シキ:モノ頼んだ
モノ:じゃあやっぱ電気やるよ!
モノ:任せときな!
GM:1シーンで終わっちゃうよ!
ヒイラギ:それもそうだ
モノ:10dx
DoubleCross : (10DX10) → 10[1,1,5,7,8,8,9,10,10,10]+1[1,1,1] → 11
モノ:おらよ!
シキ:えらいぞ~!
モノ:クリ出目ひっでえ!
ヒサギ:すごーい
ヒサギ:中々ない
シキ:勝てばよかろうよ
モノ:厄払いになったと思おう
GM:では2項目達成になります
GM:メインシーンに登場するヒサギさん、ヒイラギさんのみ登場侵蝕を振ってください。
ヒイラギ:ヒイラギの侵蝕率を1d10(→ 5)増加 (40 → 45)
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を1d10(→ 7)増加 (36 → 43)
ヒカリ:≪サードウォッチ≫
ヒイラギ:あっこいつ
GM:ヒカリの侵蝕率を2増加 (38 → 40)
ヒサギ:!?
シキ:のぞき魔!
ヒサギ:打ちっぱなしの床と壁。洗面化粧台の鏡の前で。
ヒサギ:自分の能力を起動する。幾人幾重にも連なる記憶の情報を呼び出だす。
ヒサギ:それは何人もの、いくつもの場面と事実、そしてそれの解釈の塊だ。男もいれば女もいる。幼いものも老いたものも、病んだものもそうでないものも。
ヒサギ:そしてその中には、当然。己のそれも存在する。
ヒサギ:
ヒサギ:”Ulysseus”≪超越的能力≫≪竹馬の友≫。
ヒサギ:そして≪声なき声≫に≪原初の赤:水晶の剣≫を、自分、そしてカリギュラに使用します。 自分の認識を操作する。
ヒサギ:そしてこの効果に同意。効果を起動。
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を5(→ 5)増加 (43 → 48)
ヒサギ:
ヒサギ:自然な作用としては、それは親しいものとして認識させるものだ。
ヒサギ:では、それを己に対して使うなら。
ヒサギ:人格とはなんだろうか。性格とはなんだろうか?
ヒサギ:それに、ヒサギーー”キルケ”を冠する彼女は一つの答えを見出した。
ヒサギ:外部刺激に対する認識と反応のパターン、その累積であるのだと。
ヒサギ:二年間の今迄、己が根付き今迄過ごした記憶。それを読み出し、”当時と同じとなるように”意味付けていく。
ヒサギ:同じように。健やかであったときのように。冷静で、現実を常に見据えて、
ヒサギ:揺らがずに。 どんな状況下でも、為すべきことを為せるように。
ヒサギ:
ヒサギ:「っ、」無針注射器を、こめかみに当てる。一瞬指が躊躇うように震えて、
ヒサギ:引き金を引く。
ヒサギ:頭の中に淡い赤が入り込む。ぐずりと脳内の血管が蠢く感覚。
ヒサギ:「けほ、」瞳が充血する。胸から込み上げるものを吐き出しそうになる。
ヒサギ:「……大丈夫。だいじょうぶ」譫言のように繰り返す。テープをダビングするように。
ヒサギ:慣れたものだ。もう何度目だろうか、数えることをやめたくらいには。
ヒイラギ:「ヒサギ、いいか」ノックを三度。
ヒサギ:「、」すぅ、と息を強く吸う。
ヒサギ:震える手でホルスターに無針注射器を戻す。
ヒサギ:「……、うん。どうぞ」
ヒイラギ:返答のすぐ後、ドアを開ける。
ヒイラギ:「……いや、特には」
ヒサギ:「ん。何かあった?」
ヒイラギ:「様子を見に来ただけだ」
ヒサギ:もういつも通りの、にこやかな表情で。
ヒサギ:「そう?心配性だなあ、ヒイラギ姉さんは」くすりと笑う。
ヒイラギ:「放っておくと無茶をするヒサギも悪い」つられて笑う
ヒサギ:「そう?そんなにしてないと思うんだけどなあ……」
ヒイラギ:「……お前の肉体は特殊だからな。自覚している以上の負担はあるかもしれない」
ヒイラギ:「それに」
ヒサギ:むにむにと自分の顔をマッサージするように揉む。
ヒサギ:「まあ、それもそうかなあ。調整用の薬剤だって、そうあるわけじゃないし…」
ヒイラギ:「ボクはお前の姉さんだからさ」
ヒサギ:「………ん」少し力の抜けたような笑みで。
ヒイラギ:「力になれる事があるなら、なんでもする」できることは、そう多くないが、と付け加え。
ヒサギ:「どしたの。いつもはそう言わないのに~」わたしは嬉しいけど、と。
ヒイラギ:「……別に、たまには言葉にしたっていいと思っただけだ」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「ああ、そうだな」
ヒサギ:「助けてもらってるし、寧ろ本番は外に出る時だって思うから……、」
ヒサギ:「……そっか。うん、じゃあわたしも言っておこうかな~」
ヒイラギ:「……?」言っておくこととはなんだろうか、と
ヒサギ:「ありがとうね。わたしと、前からずっといてくれて」へにゃりと微笑む。
ヒイラギ:「……」
ヒサギ:「前はこう、もっとさ。機械機械してたというか。表情の作り方とかも大分上手くあってなかったから、不気味の谷状態だったもの」
ヒサギ:こんな感じ?と、唇を奇妙な形に指で持ち上げる。
ヒイラギ:「……ふっ」
ヒイラギ:「随分笑うのがうまくなった」
ヒサギ:笑みのようにも、怒っているようにも、泣きだしそうにも見えるような。
ヒサギ:「ふふふ。練習に付き合ってもらったおかげです~」
ヒイラギ:「いくらでも付き合うさ。姉さんだから」
ヒサギ:「というわけで、いつも思ってる感謝の気持ちでした」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「なんというか」
ヒサギ:「そう?嬉しいな……」
ヒイラギ:「改まって言うと、照れるな」
ヒサギ:「……?」こてん、と首を傾げる。
ヒサギ:「そう?わたしは嬉しいんだけどもなあ」どこか幼い表情で。
ヒイラギ:「ボクだって嬉しいさ、嬉しいけどだな」
ヒイラギ:「……まあ、その」
ヒイラギ:「不調がないならよかったよ」
ヒサギ:少し床が開けたところに柔軟をするように座って。
ヒサギ:「かんぜんかんぺき、なんて言わないけど。大丈夫だよ~、まだまだ動けますとも」むん、と力こぶを作るような動作。
ヒイラギ:「……外に出てもその調子が続くといいんだけどな」
ヒイラギ:隣に座る
ヒサギ:「状況が分からないから~、なんとも言えないな~~」ぐいー、と体を伸ばす。
ヒイラギ:「……ヒサギに何かあったら、って思うとさ」
ヒサギ:伸ばした状態のまま、右足に上体をくっつけた姿勢で見上げる。
ヒイラギ:ぽつぽつと口を開く
ヒイラギ:「耐えられなくなる」
ヒサギ:「ん」
ヒイラギ:「あの日だってそうだった」
ヒサギ:じ、と見つめたまま。
ヒイラギ:「お前が生きてたから、後のことなんてどうでもよくなった」
ヒイラギ:「その時は」
ヒサギ:「……ああ。ひどかったね」ぽつりと。
ヒイラギ:「……いや、正確には、今も変わらないのかもしれない」
ヒイラギ:「ヒサギにさ、見せたいものはたくさんある」
ヒサギ:「………うん」
ヒイラギ:「空はどこまでも続いてるらしいし」
ヒイラギ:「海だってそうらしい」
ヒイラギ:「昼と夜はチャイムなんかじゃ区切られてないらしいし」
ヒイラギ:「……図鑑で見せたものが、本当に全部あるらしいんだ」
ヒサギ:ゆっくりと身を起こす。
ヒサギ:「ふふ、そうだねーー一緒に見られたらいいな」
ヒサギ:広がる空も、深い海も、
ヒサギ:昼と夜と、その淡いも。
ヒサギ:わたしは記憶しているーー正確には、それを見た誰かのそれを、持っている。
ヒサギ:「外でしたいことは、そうやって」
ヒサギ:「図鑑が、本当なのか…一緒に、確かめられたらな、っておもうの」
ヒイラギ:「……そうできるなら、そうしたいな」
ヒサギ:知っていても、それは。だれかのものでしかないから。
ヒイラギ:「ん」
ヒサギ:「…ね、姉さん」そっとわずかに肩を寄せる。
ヒサギ:「何がしたい?どういうことをしたくないのかな」
ヒイラギ:「……ボクは」
ヒサギ:「わたし…わたしも。出来ることなら、したいって思うから」
ヒイラギ:「お前が無事でいてくれることだけを願ってる」
ヒイラギ:「それだけだ、今は」
ヒサギ:「それだけ?」
ヒイラギ:「その先の事は、今はいいんだ」
ヒサギ:「……そっか。じゃあ、そういうことにしよっか」
ヒサギ:「いつでもいいからね」
ヒイラギ:「……」
ヒサギ:にこにこ笑っている。
ヒサギ:人懐こいような雰囲気の表情と振舞いをしているようで、
ヒサギ:どこか深いところでどうしようもなく他者と交わらないような。
ヒイラギ:そっと手を伸ばし、抱き寄せる。インナースーツ越しの、少し冷たい感触。
ヒサギ:彼女がこうも無防備にいるのは、きみの前くらいだろう。
ヒサギ:抵抗せず、そのまま腕の力に身をゆだねて。
ヒイラギ:「……また少し痩せてる」
ヒサギ:「……ん。どしたの?」
ヒサギ:「食料は有限だもの」
ヒサギ:「姉さんこそ、きちんと食べてる?」
ヒイラギ:「ちゃんと必要量は食べているさ。お前こそ、譲ったりしてないだろうな……」
ヒサギ:頬に手をそっと当てる。
ヒサギ:「言われないとしないよ」苦笑ぎみに。
ヒイラギ:「言われたりしてないか?……と思ったが」
ヒイラギ:「言うようなやつらでもないか」
ヒサギ:「でしょ」
ヒサギ:「じゃあ、きちんと食べてる姉さんは、心労とかかな。そういうのなら、わたしも力になれるけど?」
ヒイラギ:「心労なら、全員そうだろ。ボクだけじゃない」
ヒサギ:すこし頬骨が出ているようになった頬を撫でながら。
ヒサギ:「そうだけどね~。素直に言ってくれないから」
ヒイラギ:「……これでも必要なことは話してるつもりだが」
ヒサギ:「必要とか不要とかだけで、人間は出来てるわけじゃないでしょ?」
ヒイラギ:「……」
ヒサギ:「それだけで、判断したりするようなものじゃない…んじゃないかな、って。前言われたことを言ってみるのです」
ヒイラギ:「……ああ、そうだな。そうだった」
ヒイラギ:以前いた場所、兵装試験部においては、必要か不必要かだけが判断基準だった。
ヒサギ:「ふふーん」
ヒイラギ:「なあ、ヒサギ」
ヒサギ:「うん」
ヒイラギ:お前にとって、ボクは必要かな。と、ほんの少しだけ脳裏に過る。
ヒイラギ:「……他のやつらとは仲良くできてるか」
ヒサギ:「できてるとは思うよ~?一応普通に会話は出来てるから…」
ヒイラギ:ボクはうまくやれてないんだ、とは口にしない。
ヒサギ:「まあ、どう思ってるかまではわたしには分からないんだけど……」
ヒイラギ:「……いや、それなら充分だろう」
ヒサギ:ふ、と少し唇を緩めて。
ヒイラギ:「……ん」
ヒサギ:さらと流れる姉の前髪を払って、額をくっつける。
ヒサギ:「心配性だなあ。大丈夫だよ」
ヒサギ:「ここまでうまくやってきたんだもの。これからも、上手くやってける」
ヒイラギ:「……そうだな、きっとそうだ」
ヒサギ:「そして、今まで分からなかったことも、きっとわかってくれてるよ」
ヒイラギ:「ヒサギが言うなら……そんな気がしてくるよ」
ヒサギ:「わたしと姉さんだって、そんなにすぐ今みたいに上手くできてたわけじゃないじゃない」
ヒイラギ:「そうだったな」
ヒイラギ:「どうしたらいいものか、全然わからなかったんだ」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「ああ、そうだな」
ヒサギ:「だから、きっと良くなってくよ。そうしようと思って、そう動いていってるんだからさ」
ヒサギ:「表情が硬い~~」
ヒイラギ:「なっ、おいぐにぐにするな」
ヒサギ:「姉さん、そこで止まったりするから、シキさんとかヒカリさん…、とかと比べて」
ヒサギ:「なんか固まったりしちゃうんだろうけどさ」
ヒサギ:「大丈夫だよ。姉さん、すてきなひとだもの」
ヒイラギ:「……ありがとう、ヒサギ」
ヒサギ:今はいない、明るい声が一瞬過ったのを、わずかに淡い痛みと共に胸に沈める。
ヒサギ:「というか、最初のわたしがグイグイ来られたら絶対ひどいことなってたからね」
ヒサギ:「だから、悪いことばっかなんかじゃないよ。そうあることは、絶対」
ヒイラギ:「そうか。……そうか」
ヒイラギ:ふと、また表情がゆるむ
ヒサギ:「そうなのです」大きくうなずく。
ヒサギ:その表情を、眩しそうに見つめて。
ヒサギ:「ほら、その顔。見てたら絶対放っておかないだろうなー」
ヒイラギ:「……シキあたりが飛びついてくるのが目に浮かぶな」
ヒイラギ:「暑苦しいんだよ、あれ」
ヒサギ:「あはは、やりそう」
ヒサギ:「なつかれてるんだって思ってればいいんじゃないかな~?」くすくすと笑いながら。
ヒイラギ:「あいつは誰にでも、『妹だーっ』て言ってそうするだろう」
ヒサギ:「まああれで色々あるみたいだからなあ」
ヒイラギ:「……それでも立ってるのがあいつの強いところだろ」
ヒイラギ:ボクとは違って。
ヒサギ:「ん。そうだね、本当そこは尊敬する」自分にはできないことだーーやろうとも思わないと感じる。
ヒサギ:「ま、でもさ」
ヒサギ:「姉さんが、シキさんに遠慮する必要はないって思うな」
ヒイラギ:「……」
ヒサギ:「それで自分のしたいこととか、色々なもの潰しちゃったら」
ヒサギ:「その方がよくないから……、と。不肖このわたしは思うわけです」
ヒイラギ:「ヒサギは」
ヒサギ:「もちろんシキさんに迷惑かけろって意味じゃないからね?姉さんはしないだろうけど…!」
ヒイラギ:「生意気を言うようにもなったか」
ヒイラギ:ふっ、と笑う
ヒサギ:「え~、そんなにあれだったかな~……」
ヒイラギ:「ボクにとって一番大事なのはヒサギなんだよ。それはきっと、どこまで行ったって変わらない」
ヒイラギ:「……ただ、なんだ」
ヒサギ:「……へへ。嬉しい」
ヒイラギ:「誰にしたって、一人で抱えすぎるのはいただけない……とは思ってる」
ヒサギ:じ、と見つめている。
ヒイラギ:「シキもそうだ。ヒサギもだ」
ヒサギ:「………ふふふ、もう」
ヒサギ:「姉さんはやっぱりすてきなひとだな~って思いますよ~」
ヒサギ:”姉”ヒイラギ 〇親愛/不安 を取得します。
ヒイラギ:「……ボクの妹は、ヒサギだけだ」
ヒサギ:「増やしてもいいんだよ~?」からかうような口調。
ヒイラギ:「するわけないだろ、そんなこと」
ヒイラギ:それより多くのものを抱えることは、ボクにはできないから。
ヒサギ:「そっか~~……」ぽすんと肩口に頭をうずめて。
ヒサギ:あまりよくないのだろうな、と思うのだけれど。
ヒサギ:そう言ってくれることが、本当にうれしい。
ヒイラギ:「……硬いぞ、そこは」何度もしたやりとり。スーツ越しに重みを感じる。
ヒサギ:「硬いのがこう、額のツボに効くんだよ~~」
ヒイラギ:「なんだそれ」
ヒサギ:硬い感触。でも、これがずっと彼女が触れてきた、触れてよいのだと教えてくれたひとの感触だから。
ヒサギ:「知らない?こう、東洋医学とか中華系のセクションでやってたやつで…」
ヒイラギ:「あの部署、早々に解体されてなかったか」
ヒサギ:「データベースにはあったし、結構なんていうのかな……、参考にしてやってあげると喜ばれるんだよ~」
ヒイラギ:「ふぅん、そういうものなのか」
ヒサギ:「そうそう。たとえばここなら、眼精疲労に効くとか……」
ヒイラギ:「視力回復とかもあるのか」
ヒサギ:「どうだろ。そこまで効くかはわらかないけど、そういうのを謳ってるデータはあったような…」
ヒイラギ:「……」
ヒサギ:くだらない会話を続ける。こうすることで、身体の奥に溜まるなにかがゆっくりと圧を下げるような感覚がある。
ヒイラギ:「なあ、ヒサギ」
ヒサギ:「ん」額を上げて。
ヒイラギ:「……」言葉を探るように逡巡し
ヒイラギ:「見たいな、外」
ヒサギ:「うん。見たいね」
ヒイラギ:”妹”ヒサギ ○慈愛/偏愛 で取得
モノ:「これを動かすの?」
モノ:錆びついた巨大な予備発電装置の前で
モノ:シキ達を振り返る。
ヒカリ:「そだよ~。どう?行けそう?」
シキ:「上の様子見るには電源足りなくてさ」
ヒカリ:大型の歩行ドローンに跨って、くつろいだ体勢。
モノ:「シキと、ヒカリが、そうしてほしいなら」
モノ:「モノは、そうするね」
モノ:「えへへ、見ててね」
モノ:「モノは、役に立つ」
ヒカリ:「頑張ってね~、モノ」
シキ:「うん、お願い!がんばれモノ!」
モノ:「がんばるよぉ」
モノ:骨ばったか細い腕が、タービンの羽を掴む。
モノ:「えゃ」
モノ:ぎし めき べぎん!!
シキ:「おお……!」
ヒカリ:「なんかヤバい音してない?」
モノ:金属のへし折れる轟音とともに、タービンはゆっくりと回りだした。
シキ:「いいぞー!モノー!もうひと踏ん張り!!」
ヒカリ:「いいよいいよ~」
モノ:「こ、これでいい、かな」
モノ:「えへへ」
モノ:「役に、立った?」
ヒカリ:複数の小型ドローンを操作し、タービンの動作を安定させにかかる。
シキ:「うんうん!とっても助かっちゃった!!」
ヒカリ:「うんうん。すっごい助かったよ~」
シキ:「えらいぞーモノ~」
ヒカリ:「ハモんないでよ~」
シキ:「被せてきたのはそっちでしょ~」
モノ:「も、モノは、たくさん役に立ちたいな」
モノ:「だって!」
ヒカリ:「だって?」首を傾げる
モノ:「シキと、ヒカリと、ヒサギと、ヒイラギ」
モノ:「モノと、すっかり、友達だもんね」
モノ:無垢な笑みを浮かべる
モノ:あの日、シキがモノと口づけを交わして以来
モノ:かつての暗い表情は影を潜め、こうした笑顔を見せることが多くなった。
モノ:「ねえ、そうだよね」
ヒカリ:「確かにね~。前はそんなに話してなかったもんね」
シキ:「うん、そだね……お友達だ」少し間があって
シキ:「けどけど~」
シキ:「お友達もいいけど、私はお姉ちゃんって呼んでほしいな~」
シキ:「ねえモノどうどう?言ってみ?お姉ちゃんって」
ヒカリ:「うわ、出た~」
モノ:「お姉ちゃん?」
シキ:「はぁ~~~~~っ……!!」
シキ:くらりとのけぞる
モノ:不思議そうに首を傾けて、オウム返し
シキ:「かわいすぎる……」
ヒカリ:「重症ですなぁ」
モノ:「な、なんか、おもしろい、ね」
シキ:「だってヒサギもヒイラギも言ってくれないんだもーん」
モノ:「お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん」
シキ:「もちろんヒカリも」
モノ:シキの周りをぴょんぴょんと跳ねながら繰り返す
シキ:「はぅっ!ふぐっ!!はぁんっ……!!!」
シキ:銃弾で撃たれたように崩れ落ちて
モノ:「えへへ、はぁーん、だって」
ヒカリ:「あははは。ヤバいなこいつ」
モノ:「ヒカリはお姉ちゃん?」
ヒカリ:「うーん?まあ、そだねー。モノより長生きはしてるねぇ」
ヒカリ:「でもあたしは友達がいいな~」
モノ:「どうして?」
モノ:「お姉ちゃんって、呼んであげるよ」
モノ:跳ねるのを止めて
モノ:じっとヒカリを見ている
ヒカリ:「うーんとねぇ……」口に指を当てて。
モノ:「お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん」
シキ:「………」床に倒れたままヒカリの表情を見上げている
ヒカリ:「シキは嬉しいみたいだけど、別にお姉ちゃんが友達よりも上とか、良いってわけじゃないんだよ」
モノ:「えへへ、へ」
モノ:「嬉しい?」
ヒカリ:「気持ちは嬉しいけど~」ドローンの上で身体を揺らし
ヒカリ:「姉妹だと出来ないことも、結構あるしね」
モノ:「モノがお姉ちゃんって呼んだら、いけない?」
モノ:「他の人が、いい?」
モノ:「お姉ちゃん」
ヒカリ:「うぅん」
シキ:「モーノッ」後ろから抱きつく
モノ:「あぅ」
シキ:「その辺にしときなさい。ヒカリも困っちゃうでしょー」
モノ:「え、あ」
モノ:「ご、ごめん、なさい」
ヒカリ:滑らかな機体の表面を滑るようにして、モノの眼前に着地する。
シキ:「当分の間モノのお姉ちゃんはー、私だけってことで」
シキ:「ね?」
モノ:しゅんと肩を落とす
ヒカリ:「え~?別に、困ってなんかないよ~」
モノ:「はぁい、シキお姉ちゃん」
ヒカリ:「いい子だねー、モノは」
ヒカリ:髪を梳くように頭を撫でる。
モノ:「えへへ、モノは、いいこ」
ヒカリ:「そうだよ~。よしよし」
ヒカリ:手を伸ばし、豊かな胸元に抱きすくめるようにする。
シキ:「あっコラ!」ハッとして
ヒカリ:「いい子、いい子~」わしわしと頭を撫でる。
モノ:「やぅーーー」
モノ:身を捩りながら人懐っこそうに目を細める
モノ:その眼窩は、なお昏い。
シキ:「やーめーろーよー!私だって我慢してんのにー!過剰なスキンシップ禁止ー!!」
ヒカリ:「何でシキに禁止されなきゃいけないんですか~?」
ヒカリ:「可愛いねー、モノは」
モノ:「モノは、かわいい?」
ヒカリ:猫でもかわいがるように顎を撫でさする。
ヒカリ:「うん、可愛いよ」
シキ:「もちろんだよね~」
モノ:「モノ、かわいいより」
モノ:「役に立つが、いい」
モノ:「シキと、ヒカリは、どっちが、うれしい、かな」
モノ:「モノは、そっちに、なるよ」
シキ:「んー……」少し考えて
ヒカリ:「どうして役に立つがいいの?」首を傾げて目を合わせる。
シキ:「そりゃどっちも嬉しいけど」
シキ:「私は、モノがやりたいようにやってるのが一番嬉しいな」
モノ:「かわいいは、よくわかんない」
モノ:「知らないから」
モノ:「やりたいこと……」
モノ:「役に立つこと!」
ヒカリ:「あたしは別に、無理して役に立ってくれなくてもいいと思うけどな~」
ヒカリ:頭の後ろで腕を組む。
シキ:「ね、モノ。逆に聞くけど」
シキ:「私やヒカリはどんなことでモノの役に立ってるのかな?」
モノ:「?」
モノ:「モノの役に立つ?」
モノ:「モノは、モノだから」
モノ:「よくわかんない、それよりも、モノを、役に立てて」
モノ:「なんでも、するよ」
ヒカリ:「ん~……」
ヒカリ:「モノ」
ヒカリ:屈んで目を合わせる。
ヒカリ:「あたし、モノの友達?」
モノ:「友達だよ」
モノ:「なんでも、するよ」
ヒカリ:「んふふ。そっかそっか」
ヒカリ:「でもねえ、友達とか姉妹って、役に立つかどうかじゃないと思うんだよね、あたしは」
ヒカリ:「可愛いかどうかでもなくて……だから、まあ、何ていうのかな」
モノ:「?」
ヒカリ:「何でもするとか、役に立ててとか……」
ヒカリ:「そういうの無くても、もしモノが何の役にも立ってくれなくても、あたしはモノの友達だよ」
モノ:「……じゃあ」
モノ:「モノが何かを壊しても?」
モノ:「ひ、ヒカリは、友達で」
モノ:「いてくれる?」
ヒカリ:「壊すものにもよるけどね。まあ、花瓶を割ったりとか、間違えてあたしの腕折っちゃうくらいならね」
モノ:「じゃあ、もっと」
モノ:「大事なものを、壊したら?」
モノ:「絶対に壊されたくないものを、壊したら」
モノ:「友達は、終わり?」
ヒカリ:一瞬目を逸らす────否。視線をほんの僅か、シキに向けて。すぐに元に戻す。
モノ:「戻ってこないよ」
モノ:「大事なものは、壊れたら」
モノ:「も、も、戻らないよね」
モノ:「それで、ずっと」
モノ:「友達で、いられる、の?」
シキ:「──────モノ」言葉を遮る。
モノ:「シキ」
シキ:或いは、それに応えるヒカリの言葉を遮りたかったのかもしれないが
モノ:「ヒカリに聞いてるの」
モノ:顔を向けない、ひとつの視線がヒカリの方をじっと見ている。
ヒカリ:「……そうだね」
ヒカリ:僅かに目を伏せる。
ヒカリ:「大事なものは、戻ってこない」
ヒカリ:「ねえ、モノ?」
ヒカリ:「モノはいい子だよね」
モノ:「い、いい子!えへへ」
ヒカリ:「それじゃあ」
ヒカリ:「わざと物を壊したり……何も悪いことしてない人を、一方的に傷付けたり」
ヒカリ:「殺しちゃったり」
シキ:「…………」
ヒカリ:「そういうこと、モノはしないよね?」
ヒカリ:ヒカリの表情は、シキの視点の角度からは伺い知れない。
モノ:「モノは、みんながしてほしいことだけ、するよ」
モノ:「本当にしてほしいこと、するよ」
モノ:「本当の、ことだけ」
ヒカリ:「……そっか」
ヒカリ:「それなら、そうだね」
モノ:「本当に、役に立ちたいから」
ヒカリ:手を伸ばし、モノを抱き上げるようにして。
ヒカリ:「きっとあたし達、ずっと友達でいられるよ」
モノ:「えへへ」
シキ:「ヒカリ……」その後ろ姿を、どこか不気味なものを見るように見つめる。
モノ:「モノは、役に立つ、よ」
ヒカリ:「……ふふ」
ヒカリ:笑って、モノを下ろして。
ヒカリ:シキを振り向いた時には、その顔はいつも通りの薄ら笑いを浮かべていた。
ヒカリ:「どしたのさ、シキ」
ヒカリ:「そんなとこで固まっちゃって」
シキ:「…………」
シキ:「………ううん、何でもない」取り繕ったように笑顔を浮かべる。
シキ:「やっぱヒカリについてきてもらって正解だったね」
シキ:「私、こうやって根気よく言い聞かせるの苦手だからさ」
ヒカリ:「え~?そんなことないでしょ~」
ヒカリ:「いつも頑張ってるじゃん、シキは」
シキ:「あるよそんなこと」苦笑して
シキ:「頑張るだけじゃ、何の役にも立たないこともある……」
ヒカリ:「でも、役に立つことだってあるよ」
シキ:「例えば?」
ヒカリ:「そういうの見てると、支えてあげたいって思う人もさ、出てくるもんじゃない?」
ヒカリ:「どこかの誰かとかね」
ヒカリ:くすりと笑う。
シキ:「……そか」疲れたような笑みを返して
シキ:「なら、寄りかかってもいいのかもね」
ヒカリ:「あ~、余計なこと言ったかも」
ヒカリ:「これ以上仕事増やされたら死んじゃうよ~」
モノ:「じゃあ、モノにやらせて!」
モノ:「役に立つ!役に立つ!」
モノ:ぴょんぴょんしている
シキ:「お、まだまだ元気だねーモノ」
ヒカリ:「お、助かるな~」
ヒカリ:「ハモんないでよ~」
シキ:「被せてきたのはそっちでしょ」
モノ:「えへへへへ」
ヒカリ:「実際、ここもモノがいなかったら動かせなかったしねぇ」
シキ:「そうそう。とーっても役に立ったよモノは」
ヒカリ:「お手柄だよー、モノ。ご褒美何がいい?」
シキ:「なんでもあげちゃうよー。ここにあるものならだけど」
モノ:「ご、ご褒美!ご褒美知ってる!」
モノ:「殻」
モノ:「卵の殻」
モノ:「それを、くれる、えへへ」
ヒカリ:「え~、嬉しいの?それ」
ヒカリ:「肥料とかにはなるだろうけど……」
モノ:「みんなは嬉しそう」
シキ:「モノは?」
モノ:「みんなの前で、食べる」
モノ:「役に立つ!」
モノ:満面の笑み
ヒカリ:「あたしはあんまり好きじゃないけどな~。殻食べるの」
ヒカリ:「あ、そうだ。シキ」
シキ:「そだね、私も。……うん?」
ヒカリ:「中身は?目玉焼きとか、スクランブルエッグとか」
ヒカリ:「作ってあげようよ」
シキ:「おっいいね~!とっておきのがまだ残ってるんだー」
シキ:「今夜はごちそうってことで」
シキ:「それでいい?モノ」
シキ:「私達は、その方が嬉しいんだけどな」
モノ:「いいよ」
モノ:「シキとヒカリが嬉しいなら」
モノ:「モノは、そうするね」
ヒカリ:「モノのご褒美なんだけどなぁ」
ヒカリ:困ったように首を傾げる。
シキ:「ま、今回はこれで良しってことで……けどモノ、覚えといてね」
シキ:「もし本当に欲しい物があるなら、早く言わないと」
シキ:「無くなっちゃうこともあるからさ」
【Middle first half/シキ】
GM:ミドル前半 2手番目 シーンPCはシキさんです
GM:誰を指名しますか?
シキ:モノちゃんとヒサギちゃんを指名します。
ヒサギ:なんと。
GM:ではメインシーンはシキさん モノさん ヒサギさん サブシーンはヒイラギさん ヒカリさんになります
モノ:ほー
GM:残っている判定項目はこちらです
判定項目
難易度はいずれも9
・模擬戦
≪白兵≫≪射撃≫≪RC≫≪交渉≫
経験点+5
・倉庫捜索
任意の≪情報≫ もしくは≪感覚≫
財産点+5
・料理
≪芸術:料理≫
侵蝕率-1D10
モノ:腕力以外なんにもできねえ
ヒサギ:交渉技能と社会にはつよいです 残りは雑魚
シキ:ここは長女の私が有り余る白兵技能で模擬戦を判定しようかしら
ヒサギ:どぞどぞ
モノ:オネエチャン!
シキ:いくぞ~
シキ:4dx+6>=9 模擬戦判定 技能:白兵
DoubleCross : (4DX10+6>=9) → 8[2,5,6,8]+6 → 14 → 成功
ヒサギ:つよい
モノ:流石よ
ヒイラギ:これはさすシキ
ヒカリ:ヒイラギ判定して~
ヒイラギ:ふん、仕方ないな
ヒイラギ:感覚で倉庫捜索しよう
ヒイラギ:4dx>=9
DoubleCross : (4DX10>=9) → 6[1,3,5,6] → 6 → 失敗
モノ:ひいらぎくん!
ヒカリ:ふ~ん……
ヒサギ:あわわ
シキ:あらあら
ヒイラギ:……
ヒサギ:ば、バディムーブを飛ばせる人……いない……
ヒカリ:まあ見てなって
シキ:儂らFHやけん…
ヒカリ:2DX>=9
DoubleCross : (2DX10>=9) → 5[3,5] → 5 → 失敗
シキ:ちょっとヒカリ~
ヒカリ:まあこんなもんだよね~
ヒイラギ:何を見てろって?
モノ:ぐだぐだ
GM:では模擬戦のみ成功になります。
シキ:お姉ちゃんに抜かりはないのだ
シキ:シキの侵蝕率を1D10(→ 8)増加 (34 → 42)
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を1d10(→ 9)増加 (48 → 57)
モノ:1d10+36
DoubleCross : (1D10+36) → 10[10]+36 → 46
ヒカリ:≪サードウォッチ≫
GM:ヒカリの侵蝕率を2増加 (40 → 42)
モノ:「えへ、えへへ」
シキ:普段使用していない格納スペースを利用しての模擬戦。
モノ:「あったかい水って、なんだか、変なかんじ」
シキ:戦闘力の維持向上のため定期的に行っているルーチンを終えて
シキ:シキ、モノ、ヒサギの三人はシャワールームで汗を流していた。
シキ:「モノが電源起こしてくれたからね~。これからはいつでもお湯が出るよ」
ヒサギ:細く白い身体が水に濡れ、髪から滴る。
ヒサギ:「助かりました。やっぱり、お湯がないと色々不便なので…」
シキ:長い黒髪を後ろに流して、顔の真正面から思い切り水を浴びる。
モノ:病的に白い素肌、肉付きの極端に薄い肉体に、骨格が僅かな陰影をつけている。
ヒサギ:スポンジでよく擦る。いくつか訓練で着いた軽い痣。
モノ:「シキ、と、ヒサギは」
シキ:薄っすらと筋肉が浮き出た健康的な肌が水を弾く
モノ:「てつだって、くれ、ないの?」
ヒサギ:「手伝った方がいいですか?…結構、一人でやりたい人もいますから。そうなのかなと…」
シキ:「手伝う?なになに~?お姉ちゃんにシャンプーしてほしいのかな~」
モノ:「えへへ、みんなは、いつも」
モノ:「てつだって、くれたよ」
モノ:「モノは、みんなよりも、きたなくて、みっともないから」
モノ:「たくさん、シャワーを、しないとだめだから」
モノ:「それで、てつだってくれたの」
モノ:部屋の隅に置かれている
モノ:備品清掃用の高水圧ホースを引っ張ってくる
モノ:「てつだって、くれる、の?えへ」
ヒサギ:「………ふむ」指の間から丁寧に汚れを落とすように。
シキ:「それで洗えって?」
ヒサギ:「それは、備品用のやつのような……」
モノ:「えへへ」
モノ:ホースを2人に差し出す
ヒサギ:「……」一瞬どうしたものかな、とシキさんの方に視線を。
シキ:「んー」差し出されたホースを受け取って
ヒサギ:こちらも一応受け取る。ずっと持っていそうなので。
シキ:すぐに放り投げる。「今のモノはそんなんことしなくても綺麗だと思うよ?」
モノ:「……」
モノ:「え、えへへ」
モノ:「そう、かな」
シキ:「だいたいこんなの使ったらせっかくシャンプーした髪がゴワゴワになっちゃうし」
ヒサギ:「少なくともこれは人間を洗うのには向いてないですね……」
モノ:ぎゅ、と
モノ:おもむろにシキの腕を掴む
シキ:「お、こんどはどうした~?」
ヒサギ:「あれならきちんとした洗い方も教えて……、」
モノ:細い指だが、力では抵抗できない。万力のような圧力がこもっている。
シキ:しゃがみこんで目線を合わせる
モノ:「えへへ」
モノ:「モノは、血が毒」
モノ:「体の中に、きたないものがいるから」
モノ:「みんなと違うものがある、から」
モノ:「痛いよ?」
モノ:指先が食い込む。シェルターに来た日、絡ませた指の痛みと
モノ:同じものを思い起こすだろう。
モノ:「きれいに、しなくて、いいの?」
モノ:「それは、本当?」
シキ:「本当だよ」むに、と
シキ:モノの頬をつねる。力いっぱい、千切れそうなほどに
モノ:「はぅ」
モノ:目を細める
シキ:「痛いのは、汚いものが中に流れてるせいじゃない」
シキ:「ほら、私がつねったのもめっちゃ痛いでしょ?これも一緒」自分の握られた手を見て
シキ:「そもそも中身がドロドロしてるのなんてみんな一緒なんだよ~?ヒカリとか見てみなよ」
ヒサギ:「ヒカリさん怒りますよ……」
モノ:「シキも、そうなの?」
シキ:「いいのいいの。どうせどこで言ったって聞こえてんだから」
モノ:「みんなと、おなじ?」
ヒサギ:「だからって…もう……」溜息をつきつつ、二人の会話の邪魔にならないよう口を閉じる。
シキ:「んー、まあそこはおんなじかなぁ」
シキ:「完全無欠のお姉ちゃんだって、言えないことのひとつやふたつはあらあな」
モノ:「ヒサギも?」
モノ:「ドロドロ、してる?」
ヒサギ:「まあ、そうなんじゃないでしょうか。少なくとも、平均よりは大分そうなんじゃないかなと」
ヒサギ:「……あとそうですね、毒があるから汚い、っていう意見もありますけれど。実際の水を保存するときに、薬を入れますよね。あれ、そのまま口に入れたら毒になるんですよ」
ヒサギ:「毒が綺麗にする、ということもありますよ」慰めにもならないかもですが、と。
モノ:「そっか」
モノ:「じゃあ汚いものが汚いものを消して」
モノ:「やっぱり、1つしか残らないね」
モノ:「ねえ、シキ」
モノ:「心のなかに、たくさん本当があっても」
モノ:自分の唇を指先でなぞる
モノ:「選べるのは1つだけだよ、きっと」
モノ:「き、きっと、最後は、そう」
シキ:「たくさんあるままなら、たしかにそうかもね」
シキ:「でもさ。違うものがぶつかりあったらどっちかが負けてなくなるってものでもないと思わない?」
シキ:「混ざりあって違う何かになるってこともあるかも」
シキ:「一つを選ぶとこと、一つになることって、ちょっと違うことだよね」
モノ:「えへへ、それで毒が混ざっても、いいの?」
モノ:「混ざった人は、死んじゃうよ」
シキ:「いいに決まってんじゃん。"本当の本当"がひとつしかないとしても、最初からそこにあるとは限らない」
シキ:「嘘から出た真っていうでしょ?最初はニセモノしかなかったとしても」
シキ:「その中から本物が生まれることはあるよ。きっとある」
シキ:「ヒサギもそう思わない?」
モノ:「……」
ヒサギ:少し息をつめていたのを吐き出して。
モノ:ぎょろり、と見開かれた片目がヒサギに向く。
ヒサギ:「ええ、わたしもそう思いたいですね……だって」
ヒサギ:「わたしたちが造られたこと自体、そういうことを目指していたわけでしょう」
ヒサギ:「生まれたことさえ自分で否定するの、不毛ですし。……モノは、違う考えを持ってるかもしれませんけど」
ヒサギ:虚のようになった方と、こちらを見つめる瞳を見つめ返す。
モノ:「モノは」
モノ:にこっと、表情が変わる
モノ:「モノは、ヒサギたちと、いっしょだよ」
モノ:「友達、だよね、えへへ」
モノ:先程までの問答が嘘のように、気の抜けた表情でまたシャワーを浴びる。
シキ:「そうそう、友達だよ~!私はお姉ちゃんだけどっ!」
ヒサギ:「あなたがそうだと思うなら、わたしはそうですとも。……シキさんも、風邪ひきますし身体温めてくださいね」
モノ:「おねえちゃ~~ん」
シキ:「けどさ」その隣のシャワーから水を出して
モノ:ひしっ
シキ:「モノは本当に一緒でいいの?」
モノ:「あぅっ」
モノ:「えへへ、一緒、だよ?」
モノ:上目遣いに首をかしげる。
シキ:「モノのその眼」虚ろな瞼を優しく撫でる
シキ:「あの子たちに抉られたってのは知ってるけど、本当にそれだけなのかな」
モノ:「……?」
シキ:「他の子と間違えないように、なんて苦しい言い訳してたけど」
シキ:「実際の所、モノもそうなってよかったって思ってたりしない?」
モノ:「!」
シキ:「他の奴らと違うってのがひと目で分かるの、良かったと思ってないかな?」
モノ:「モノは」
モノ:「も、モノは、よかったとか、思わない」
モノ:「なんにも、思わない」
シキ:「なんにも?本当に?」
モノ:「これは、みんなが開けた穴だから」
モノ:「……」
モノ:「えへ、へ」
モノ:「だって、そのための穴だから」
モノ:「みんなはモノと違う」
モノ:「モノとみんなは違う」
モノ:「みんながそれを、喜んでくれたから」
モノ:「モノも、それが、嬉しい」
モノ:「最初に、なんて思ってたか」
モノ:「えへへ」
モノ:「もう覚えてない」
シキ:「……そっか」シャワーを止めてしゃがみ込む。
シキ:「私ね。実を言うと、モノと話すのが怖い」
モノ:「どうして?」
モノ:「本当のこと、言ってくれればいいだけだよ」
シキ:「モノが言う通り、私は嘘っぽいでしょ?」
モノ:「してくれればいいだけだよ」
モノ:瞼の傷をなぞらせる
シキ:「そりゃそうだよ。私にもわからないもん。何が本当なのかわかんない」
モノ:「だから、怖いの」
モノ:「シキは」
モノ:「怖いのに、触ってくる」
モノ:「変な人、だね」
シキ:「きっとみんなそうだよ。お姉ちゃんなのも、者たちのリーダーなのも、何もかも最初からあっただけだもん」
シキ:「ここの姉妹は大なり小なりね。ヒサギはなんとなくわかってくれるんじゃない?」
ヒサギ:「……まあ、そうですね」きゅ、とこちらも栓を絞って。
ヒサギ:「よくわからないまま、わたしはこうだと、こうしろって言われて。そうやって、手探り手探り」
ヒサギ:「なんで自分はそうなのかとか、分からないままなんとか答えを見つけたり、また見失ったりして……」
シキ:「自分の中身がニセモノだと認めるのはとても怖い。そのうちニセモノの自分が見ているものまで疑いたくなっちゃう」
シキ:「この前ヒカリとモノが仲良くしてたときもさ、実はめっちゃ怖かったんだ」
モノ:「……」
シキ:「こいつらなんか通じ合ってんなー。私の言うことはなんか薄っぺらいって思われてんだろなーって」
モノ:「じゃあ、本当のことを決めないと」
シキ:「裏切られることじゃなくて、軽蔑されてるって自覚することがとても怖い」
モノ:「モノが怖いのが本当なら」
モノ:「その、本当を」
モノ:「シキがしなくちゃ」
モノ:「さあ」
モノ:「しなくちゃ」
シキ:「うん、だからさ」モノの左手首を掴む
シキ:「まずは知りたいなって思ってさ。モノがあの時どう思ったのか」
シキ:その手を自分の顔、右眼の上へ持っていく。
シキ:「潰して」
モノ:「……」
シキ:モノの指を自分の右眼の上に沿わせる。
ヒサギ:「シキさん…!」
モノ:「本気?」
シキ:「本気だよ?私は嘘っぽいかもしれないけど」
モノ:感情の薄い視線で、シキを見上げている。
シキ:「出てくる言葉は、全部本気」
モノ:「えへ」
シキ:「知りたいんだ。モノの気持ち」
モノ:「えへへへ」
シキ:「私を、モノといっしょにしてよ」
ヒサギ:「…二人とも………っ本気ですか!?」手に赤い霧を纏わせて
モノ:肩を震わせて、笑みを浮かべて
モノ:次の瞬間には
モノ: ぶ ち っ
モノ:指先の力だけで、その目をえぐっている。
シキ:「……っ……ぁ゛……っ!!」
ヒサギ:間に合わない。二人の間に割って入る。
モノ:「シキっ、」
ヒサギ:「本気でやりますか…!何考えてるんです!?」
モノ:「シキぃ!」
モノ:ヒサギのことは見えていない、押しのけられながら
シキ:パタタッ……と、タイルの上に赤色が滴り、すぐにシャワーに流されていく。
モノ:「面白いね!シキは!」
ヒサギ:「止血を……、オーヴァードだからって何でも治るわけじゃないし、医療品もないっていうのに…!」
シキ:「ふ……っ……ふ、くく……あはは……!」
シキ:心配するヒサギへ左手を上げて制する。
ヒサギ:「ああもう……!」歯嚙みしながら一度手を止める。
シキ:「喜んでくれた……?モノ」右眼を押さえながら少女を見上げる。
モノ:「シキがそうされたかったんでしょ」
モノ:「シキが言わないと」
モノ:「何が見える?」
モノ:一つの目と一つの目で、視線は交わされる
シキ:「んー」その左目を閉じて、うつろな空洞でモノを見る。
シキ:「なーんも視えない」
シキ:「真っ暗だわ」
ヒサギ:「あったり前でしょう…!ああもうなんでこんなこと……!」
シキ:「ふふ、ごめんてヒサギ。けどさ」
シキ:「一つだけわかったこと、あるよ。」
シキ:左目を開き、今度は両の眼でモノを見据える。
シキ:片方は澄んだ翡翠、片方は虚ろな空洞。しかし……
シキ:「私は、モノと同じにはならない」口元が挑発的に歪む。
シキ:同時に、抉られた右眼。あまつさえモノの指先から滴る毒によって
シキ:今尚焼け爛れている傷口が、夥しい勢いで蠢き始める。
シキ:───オーヴァードを不死身の超人たらしめる《リザレクト》。しかしその再生能力は決して万能ではない。
シキ:《リザレクト》が保証するのはあくまで最低限の生命維持に支障がない状態への復帰であり
シキ:侵蝕超過状態での負傷によって、自身のレネゲイド出力不足によって、或いは回復を阻害する薬物の投与によって、
シキ:或いは当人が無意識下で「治癒の必要性を感じていない」場合などは、肉体の一部が欠損したまま安定する事態も起こりうる。
シキ:モノの右眼がいつまでも虚ろな空洞のままであることが、その何よりの証。
シキ:しかし、シキの場合は───
シキ:イージーエフェクト《美しき罪人》
シキ:エフェクトの効果により、完全な容姿の状態へと再生します。
シキ:「私はお姉ちゃんだからさ、みんなのいい所をちょっとずつ持ってんだよね」
シキ:「戦闘とか、諜報とか、電子戦とかまあ性格的な得手不得手はあるけど」
シキ:「あと例えば、愛玩用とかね」
シキ:右眼の再生が完全に完了する。傷一つ残ってはいない
シキ:「やっぱり決めたよ。モノ」
シキ:「私はあなたと同じにはならない。あなた私から、何も奪うことはできない」
シキ:「可愛そうなモノ。私が……」
シキ:モノにロイスを取得します
シキ:モノ 救済○/憐憫/ロイス
シキ:「私があなたを、救ってあげる」
モノ:「……」
モノ:「本当かな?」
モノ:シキにロイスを取得します
モノ:興味/軽蔑○/ロイス
ヒサギ:「………一つだけ言っておきますが」
ヒサギ:「二人とも一回拘束しますからね……!」
GM:
ヒカリ:うずたかく荷物の積まれた倉庫を、歩行ドローンの背に乗って進んでいく。
ヒカリ:「ねえ~」
ヒカリ:「何か言ってよ~」
ヒカリ:だらけ切った姿勢のまま、もう一人の同行者に声を掛ける。
ヒイラギ:「……ないだろ、言うことが」横を歩きながら呆れたように返す
ヒカリ:「それじゃ会話になんないじゃんか」
ヒカリ:「何ー?怒ってんの?」この前のこと
ヒイラギ:「別に、怒ってない」
ヒカリ:「ウソだぁ」
ヒカリ:「めっちゃ不機嫌そうな顔してんじゃんか~」
ヒカリ:小型ドローンが飛んできて、正面からヒイラギの顔にカメラを向ける。
ヒイラギ:「……」むっとした顔をする
ヒイラギ:「バイタルはそう変わってない」
ヒカリ:「メンタルの話っしょ~?」
ヒカリ:ドローンの上で頬杖をつく。
ヒカリ:「あたしのこと嫌い?」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「正直、よくわからん」
ヒカリ:「なんじゃそりゃ」
ヒカリ:「自分のことじゃんねー?」
ヒイラギ:「ここまで深く他人と生活空間を共有した経験がない」
ヒカリ:「え~?じゃあ何?」
ヒイラギ:「けど、こないだお前が言ったとおり、不和をわざわざ撒くのはよくないってことくらいわかる」
ヒカリ:「それってさぁ……」
ヒカリ:目を細める。
ヒカリ:「やったことないからビビってるってこと?」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「どういう意味だ」
ヒカリ:「言った通りの意味だけど~?」
ヒカリ:するりとドローンから滑り降りて、ヒイラギの眼前に着地する。
ヒカリ:僅かに小首を傾げて、顔を寄せて。
ヒカリ:「ヒサギ以外を姉妹じゃないって言うのも」
ヒカリ:「他の皆と距離を取ろうとするのも」
ヒカリ:「結局、上手くやれるか分からなくて、怖いだけじゃないの?」
ヒカリ:「ビビってんじゃん。自分がヒサギ以外に受け入れてもらえるのか、って」
ヒイラギ:「……」何か言いたげに口を開きかけ、目をそらす。
ヒカリ:「言い返さないの?」
ヒイラギ:「……ボクはボクで考えてることがある、ってだけだ」絞り出すように
ヒイラギ:「お前には関係ない」
ヒイラギ:目をそらしたまま
ヒカリ:「関係なくないよ」
ヒカリ:「少なくとも、今は一緒に暮らしてるわけじゃん」
ヒカリ:「キミがそんなんだと、あたしも皆も困るし──」
ヒカリ:「あたしは、ヒイラギと仲良くしたいって思ってるよ?」
ヒカリ:薄笑いを浮かべて言う。
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「お前が何を考えているのか、わからない」
ヒイラギ:「協力はする。だがなぜそれ以上を求めるんだ?」
ヒカリ:「勘ぐりすぎだって、そりゃ~」くすくす笑って
ヒカリ:「全部、言ってる通りだよ?あたしはただ、皆と仲良くしたいだけ」
ヒカリ:「それに──」
ヒカリ:瞬間、笑みが固まり、ヒイラギの背に手を回し、抱き寄せる。
ヒイラギ:「っ」
ヒカリ:直後、頭上から降ってきた大きなケースが、けたたましい音を立てて床に激突する。
ヒカリ:「あぶなー……」ヒイラギを胸元に抱き寄せたまま。
ヒカリ:「だいじょぶだっ……」
ヒカリ:「あ」
ヒカリ:ケースの落下でバランスを崩した棚がぐらりと傾き、二人に向けて倒れてくる。
ヒカリ:「伏せて!」
ヒイラギ:「なんだっていうんだ、今日は……!」
ヒイラギ:言う通りに伏せる
ヒカリ:金属音と衝撃。二人に向けて大量の物資が降り注ぐ。
ヒカリ:ドローンが支えになって、棚が直撃するのは免れたが、二人の周囲は大量の荷物で完全に固められた。
ヒカリ:「ありゃ~……参ったね、こりゃ」
ヒイラギ:「……全くだ、クソッ」メガネが外れてしまっている
ヒイラギ:物資の中に紛れてしまったようだ
ヒカリ:「ん~……無理やりどかすと、貴重な物資がダメになりそうだしなあ……」
ヒカリ:「応援呼ぼっか……ありゃ」顔を顰める。
ヒカリ:「……お風呂入ってる。しばらくは無理そう」
ヒイラギ:「……いい趣味をしてるよな、お前」手探りでメガネを探しつつ
ヒカリ:「やだな~、人のこと覗き魔みたいに」
ヒカリ:「でもどうしようね。イノリは……」
ヒカリ:言い掛けて、すぐに口を閉ざす。
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「いないヤツの名前を呼んでも、仕方ない」
ヒイラギ:「そうだろ」
ヒカリ:「……分かってるよ、そんなの」
ヒカリ:不貞腐れたように、ばつが悪そうに言う。
ヒイラギ:「……」メガネを探すのを諦め、倒れた棚にもたれかかる
ヒカリ:「はー……」
ヒカリ:脱力したように、こてん、と首を傾げる。
ヒカリ:「……前に言ったこと、覚えてる?」
ヒカリ:そちらに目を向けずに口を開く。
ヒイラギ:「……どれのことだ。激辛ラーメンならお前に譲る」
ヒカリ:「それじゃなくてぇ……」
ヒカリ:「……キミさぁ、あたしに似てるんだよ」
ヒカリ:「そっくり」
ヒイラギ:「パーソナリティの部分で、か?」
ヒカリ:「そーだよ」
ヒカリ:「信じらんない?」
ヒイラギ:「……半分くらいはな」
ヒカリ:「へぇ、半分も信じてくれるんだ」くすりと笑い
ヒカリ:「……ヒイラギはさ、ヒサギ以外は姉妹じゃないって言うでしょ」
ヒイラギ:「ああ、そうだな」
ヒカリ:「あたしもそうなんだ」
ヒイラギ:「……イノリ、か」
ヒカリ:沈黙の内に肯定する。
ヒカリ:「心の底では、あの子以外は本当の姉妹じゃないって思ってた……」
ヒカリ:「……ううん。多分、今も思ってる」
ヒカリ:「あの子以外に、あたしのことを理解なんて出来ないと思ってたし──」
ヒカリ:「そうしてもらう必要もないって思ってた」
ヒカリ:狭い空間の中で手を伸ばし、その指先を眺める。
ヒイラギ:「ボクにとってのヒサギと同じか」
ヒカリ:「そうだね」
ヒカリ:自嘲気味に笑って
ヒカリ:「でもさ、結局それって……」
ヒカリ:「ただあたしが、都合よく依存してるだけだったんだよね」
ヒカリ:「こうなって、初めて分かったよ」
ヒカリ:「あの子はあたしの抱き枕でも、ダッチワイフでもなかったのにね」
ヒイラギ:「……」
ヒカリ:「……だから、まあ、何て言うのかな」
ヒカリ:「自分を重ねてるのでも、あの子の代替品を求めてるわけでもないんだけど──」
ヒカリ:「キミのこと、何となく放っとけないんだよ」
ヒイラギ:顔をヒカリの方へ向ける。目は見えにくそうに細めながら。
ヒイラギ:「……どんなヤツだったんだ、イノリは」
ヒカリ:「んー……そうだなぁ……」
ヒカリ:「……手の掛かる、生意気な妹だったよ」
ヒカリ:少しだけ寂しそうに笑う。
ヒカリ:「ヒサギとは、全然違うかも」
ヒイラギ:「……それは、そうだろうな」
ヒイラギ:「ヒサギは、別方向に心配な子だった」
ヒカリ:「そうなの?」
ヒイラギ:「出自は知ってるだろ。だから、そうだな。人間味ってやつが薄かった」
ヒイラギ:「素直過ぎた。……今はそうでもないがな」
ヒカリ:「なるほどねぇ」笑って「ヒサギはヒサギで、キミのこと心配だと思ってるだろうけどね~」
ヒイラギ:「心配するなっていつも言っているんだがな……」
ヒカリ:「無茶でしょ、そりゃあ」
ヒイラギ:「ヒサギは頑固に育ってしまった」
ヒイラギ:少し嬉しそうに言う
ヒカリ:「それはそうかもだけどね~」
ヒカリ:「それはそれとして、頑固じゃなくても、ヒイラギ見てたら誰だって心配になるって」
ヒイラギ:「……そんなにか」
ヒカリ:「そうだよぉ」愉快そうに笑う。
ヒカリ:「放っとけないって」
ヒイラギ:「ヒカリにまで言われるとは思わなかった」
ヒカリ:「シキとかだってそうでしょー」
ヒイラギ:「あいつはいつもそうだろ」
ヒカリ:「言えてる」
ヒカリ:笑って、それから狭い中を這いずるように身を寄せて、ヒイラギの首元に僅か触れる。
ヒカリ:「……あたしのこと、まだ姉妹だとは思えない?」
ヒイラギ:「……」少し狼狽える
ヒイラギ:「……ああ、思えない」
ヒカリ:「別にいいよ、それでも」
ヒカリ:後ろ手に、床に転がったヒイラギの眼鏡を、彼女から見えないように物陰に滑らせる。
ヒイラギ:「ヒカリ……?」
ヒカリ:倒れ込むように身を寄せて、不意打ち気味に唇を奪う。
ヒイラギ:「っ」
ヒカリ:「……ん……」
ヒカリ:眼前、目を細める。
ヒカリ:ゆっくりと顔を離して、赤い舌が唇を舐めた。
ヒカリ:「……こういうこと」
ヒカリ:「姉妹じゃ出来ないでしょ」
ヒイラギ:「な」視線が泳ぐ。
ヒカリ:「……嫌だった?」
ヒイラギ:唇に残る感触は、不思議と嫌じゃなかった。
ヒイラギ:「……わからない」
ヒカリ:「……ふふ」
ヒカリ:その表情を見て、もう一度唇を重ねる。
ヒイラギ:拒絶することなく、されるがままになる
ヒカリ:今度は先程より長く。そして、結ばれた唇の間に舌を侵入させる。
ヒカリ:「ふ、……」
ヒカリ:戸惑うようなヒイラギの舌を、無理やり押さえつけるように絡ませて、口内を好き放題に蹂躙する。
ヒイラギ:「っ、……ふ」
ヒイラギ:口内で唾液が混ざり合う。されるがままに。
ヒカリ:呼吸が苦しくなる頃になって、ようやく口を離した。笑みを浮かべた口元が、互いの唾液で濡れている。
ヒカリ:「……はー……」
ヒイラギ:「……っは、はぁ」
ヒカリ:上気した顔で、至近距離からヒイラギを見据える。殆ど覆いかぶさるようにして、獲物を眺めるように。
ヒカリ:「……助け呼ぶの、もうちょっと先にしようか」
ヒカリ:嗜虐的な色の滲む声。
ヒイラギ:その一言に、張り詰めていた糸が切れたかのように息を吐き
ヒイラギ:「……好きにしろ」
ヒカリ:「あはは」くつくつ笑って
ヒカリ:「ヤだったら言ってね」
ヒカリ:そうして、胸元に手を這わせた。
【Middle first half/ヒイラギ】
GM:ミドル前半 3手番目 シーンPCはヒイラギさんです
GM:誰を指名しますか?
ヒイラギ:シキとヒサギを
ヒサギ:あわわ 一杯御呼び貰って……
GM:ではメインシーンはヒイラギさん シキさん ヒサギさん サブシーンはモノさん ヒカリさんになります
シキ:おもしれーじゃん
ヒイラギ:抱くんだろ……全員
シキ:ほしがりさんめ
モノ:タイマン上等
GM:残りの判定はこちらになります
判定項目
難易度はいずれも9
・倉庫捜索
任意の≪情報≫ もしくは≪感覚≫
財産点+5
・料理
≪芸術:料理≫
侵蝕率-1D10
GM:判定どうぞ!
ヒイラギ:料理をやります
ヒイラギ:4dx>=9
DoubleCross : (4DX10>=9) → 9[2,6,9,9] → 9 → 成功
ヒサギ:流石~おいしいごはん!
シキ:結婚したい妹第一位
ヒカリ:やるじゃん
ヒイラギ:シキにはカロリーバーだ
ヒサギ:ひどいw
ヒイラギ:油の焼ける匂いと音が部屋中に響く。
ヒイラギ:簡易な炒めものくらいは、この生活をやっているうちに覚えた。
ヒイラギ:本で読んでいたこともあり、知識としてはぼんやり知っていたが、実践するのはここに来てからだった。
ヒイラギ:「……で、ヒサギ。シキとモノが何をやらかしたのか」
ヒイラギ:「もう一度説明してくれ」
ヒサギ:「ええ、そうですね。わたしも一回きちんと整理するべきと思いますので…」
ヒイラギ:フライパンを振りながら、不機嫌な顔で。
シキ:「あっこの匂い!倉庫に残してた高級ベーコンでしょ!」
シキ:「なになに~?ヒイラギなんかいいことあった?」
ヒサギ:「模擬戦後、シキ、モノ、ヒサギの三名で洗浄の為シャワー室に入室。そうして色々と話していたわけですが…」
ヒサギ:「シキさん」
シキ:明らかに話題をそらそうとしている
シキ:「はい……」
ヒイラギ:「……続けて、ヒサギ」
シキ:そんな中でも姿勢はソファの上で正座したまま。こころなしか小さくなって頭を下げる。
ヒサギ:「こほん。先程なんとか取れた音声データを再生しましたけれど、モノさんとシキさんが互いの意見を色々とぶつけあっていました」
ヒサギ:「その中で、モノさんに対してシキさんが自分の目に手を当てさせて……」
シキ:「ぶつけていたといいますか……あくまで建設的な議論の一環として……」
ヒイラギ:「……なるほどな」火を止め、料理を3つの皿に盛る。
ヒサギ:「まあ、挑発に合わせてモノさんが手指でシキさんの目を抉ったわけです」
ヒイラギ:一つの皿には、野菜しか入っていない。
ヒサギ:「建設的な議論というものは、暴力や身体的な損傷が伴うものとは知りませんでした」
シキ:「あうぅ……」ヒサギの視線に縮こまる
ヒサギ:「……別段、動機に対してわたしは怒っているわけではありません」
ヒサギ:「……モノさんもこれ、理解してくれるかな……無理だろうな……」
シキ:「はい……あの……ヒイラギちゃん?」
ヒサギ:大きくため息をついている。
シキ:「おかしいですね……?お二人の皿に乗ってる厚切りベーコンは何処に?」
ヒイラギ:「……さ、できたぞ。冷めないうちに食べるか」
ヒイラギ:「ベーコンは2人前だが……?」
シキ:「そんな……!?」
ヒサギ:「……はぁ」
ヒサギ:「いいよ、姉さん。分けてあげて」
ヒイラギ:「まあ待てヒサギ」
ヒサギ:「ん…」
ヒイラギ:「シキ、お前は強い」
シキ:「お、横暴だー!圧政!これは査問委員会にかけなければいけませんぞ!」
ヒイラギ:「……故に、ことの重大性を甘く見積もることがある」
ヒサギ:じぃっと普段より強い視線。
ヒイラギ:「今裁判官のマネごとをするなら、被告の席に座るのはお前だぞ」
シキ:「う……そこを突かれると弱る……」
シキ:「ぐぬぬ……」
ヒイラギ:「……眼球の見た目の方は治ったろうがな」
ヒイラギ:「機能の方も完全に回復したのか」
シキ:「……わかったよ。わかりました。おとなしく裁判長の御沙汰を拝聴します」どさっとソファにもたれて
シキ:「8割くらいはね。生活に支障はないよ」
シキ:「もう少しあれば本調子に戻るって感じ」
ヒサギ:「……一応、調整用の薬剤もいくつか備蓄があったはずです。能力と合わせれば、ある程度は補正が効くはずなので、経過が良くない場合は言ってくださいね」
シキ:視界がぼやけているのか、しきりに目を細めて二人を見る。
シキ:「ありがと。無茶できるのもヒサギがいてくれるおかげだよ~」
ヒイラギ:「………」
ヒイラギ:「だから無茶していいわけじゃないだろ」
ヒサギ:「無茶が効くからと言ってしていいなんてことはないはずなんですけれどね…」
ヒイラギ:同時に言う
シキ:「うぐぐ……!ハモらなくてもわかってます!」
シキ:「次から!次から気をつけるから!」
ヒサギ:「……ヒイラギ姉さんが言った方がみんな聞いてくれるのかしら」
ヒイラギ:「なら、なおさらヒサギの言うことをもっと真剣に聞くべきだと思うがな」
ヒイラギ:「……ただ」
ヒイラギ:「あれがお前なりのモノへの向き合い方なんだろ」
シキ:「ん……」顔を上げて
シキ:「まあね……ああいう子だから。生半可なやり方じゃわかってくれないでしょ」
シキ:「いやまあ、あれでもちゃんと響いてるのか自信はないんだけどさ」
ヒサギ:「…そうだろうこともわかりますし、シキさんが決して何の考えもなくしているわけでないのも、分かっているつもりです」
ヒサギ:「だからと言って、ああいう風に、身体を傷つける方法を用いて欲しくはない、というのがわたしの見解」
ヒサギ:「事故があり得ること、リソースの限界…色々ありますし。それに」
シキ:「ん……ごめんね。ヒサギには本当心配させちゃった」
ヒサギ:「外に出るんでしょう。外に出たとき、ああいう触れ合い方に頼るようになれば……」
ヒサギ:「……別に、責めたりしたいわけじゃないんです」
ヒイラギ:「同意見だ。……まあ、ボクだって他に方法が思いついたわけでもない」
ヒイラギ:「今は単純に、ヒサギとボクらを心配させたことに怒ってるだけだ」
シキ:「それはもちろん、外に出た時のことだって考えてないわけじゃないよ?」
シキ:「それでも今は、モノにああしてみせるのは必要だったと思う」
ヒサギ:「ええ、まあ……そういう相手が必要で、ああまでしないと無理なのも、分かります」
ヒイラギ:「……お前が必要だって言うなら、そうだったんだろうな」
シキ:「あの時あの子に言えた言葉は、本当のものだったから」
ヒサギ:「………」
シキ:「ん……けど本当に、心配させたのはごめんなさい」
シキ:「なので!」
ヒサギ:「……はあ。本当とか大切なものとか、そんなにすごいものなのかって思ってしまいます」
ヒサギ:「はい」
シキ:立ち上がって二人の肩を抱く
シキ:「次から無茶する時は二人にちゃんと言ってからするからね」
ヒイラギ:「……」
ヒサギ:「……………どうしましょう、姉さん。これ、まだ進歩だって喜んでいいのかしら」
ヒイラギ:「まあ、シキだからな……無茶するのは多分かわらん」
ヒサギ:「まあ、それもそうだね……」
シキ:「ふふ~ん、そうだぞよ~。お姉ちゃんの手綱をちゃーんと握っててくれたまえよ~」
ヒイラギ:自分の野菜炒めからベーコンを少しずつ分ける
ヒサギ:「わたしの手にはあまりそうな気がしてたまらないです」そう言いながら、こちらも大きく分けていく。
ヒイラギ:「少しは自分でコントロールしてくれ」
シキ:「わっ!!やったー!ヒサギ、ヒイラギ、だーい好き!!」
ヒイラギ:「暑苦しいな……!」
ヒサギ:「……はあ。きちんと味わえるように、毒の影響は出来る限り抜きますよ」そっと一度潰れた眼球の方に指をあてて。
シキ:「む~わっ」両隣の二人の頬に順番にフレンチキスしてからテーブルに付く
ヒサギ:”Agrios”≪原初の赤:水晶の剣≫。キーンナイフに使用しますね。
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を5(→ 5)増加 (48 → 53)
ヒサギ:痺れや鈍化していた感覚が和らぐのが分かると思います。
シキ:「ん……あ~やっぱ効くわ~」
ヒサギ:「実際に解毒してるわけじゃない、というのは本当に念頭に置いてくださいね」
ヒイラギ:「……」横目で見つつ野菜炒めを食べ始める
ヒイラギ:「……モノのことは」フォークで野菜をつつきながら呟く
ヒイラギ:「よくわからないままだ」
シキ:「わかった。ありがとヒサギ!普段はヒイラギばっかり独占してるんだからズルいよな~」口を尖らせる。
シキ:「よくわからないってのは?」
ヒイラギ:「……何もかもだ。接し方から、言ってることまで」
ヒサギ:「虐待された人に特有の不信感などがあるのと、まあわたしはあまりよくみられてないのかな、という事くらいですね。わたしも」
ヒサギ:ゆっくりと野菜炒めを口に運ぶ。
シキ:「不信感、というか……何ていうのかな」
シキ:「むしろモノの中には確固たる信念があるようにも思えるんだけどね」
ヒイラギ:「信念」鸚鵡返しのように
ヒサギ:「……まあ、それはそうですね…」少し溜息。
シキ:「世の中に善人なんていない、悪意こそが人間の本音で、真実だ。みたいな」
シキ:「私もお前もみんなそうなんだぞーって」
ヒイラギ:「……」
シキ:「それを何が何でもわからせてやるっていう信念?みたいな」
ヒサギ:「妥協だとか、そういうものはあまりないのかな、とは思いますけども。そういう感じですか…」
ヒイラギ:「……悪意が人間の真実だとしたら」
ヒイラギ:「……例えば、ヒサギはきっと今こう言うふうに話してはいない」
ヒサギ:少しその言葉にくすぐったそうな表情をして。
ヒイラギ:「善意だけなら、そもそもボクらが生まれたとも思えないがな」
ヒサギ:「まあ、人間にそんな真実とか大きくて揺らがないものなんて無いってことなのかなと」
シキ:「ふふ、もー!わかってるって!私だってそんなの信じてない!」
ヒサギ:「良くしたいと思うときもあれば、気に入らないって蹴とばしたくなる時もある。フラフラしてどっちつかず」
ヒサギ:「……ふふ。ある意味で純粋で、羨ましくなりますね」
シキ:「うん……けど、きっとあのまま外に出たら、モノは不幸になる」
ヒサギ:「……まあ、上手くいかないことの方が多いでしょうし…もし、上手くいっても」
ヒサギ:「自分の手で、壊さないでいられないでしょうね。勝手な予想ですけれど」
シキ:「そうだね。あの子はそれを信じられない。いつかあの子自身が、本当の意味でこの世界の毒になってしまう」
シキ:「そうならないために、今無理する必要があるのなら私はするよ。私にできることなら、ね」
ヒイラギ:「……」
シキ:「何よりこれからはー」
ヒサギ:「……物好きですよね、シキさん」しょうがないなとでもいうような笑い。
シキ:「あ~むっ」二人からわけてもらったベーコンをまとめて飲み込む
シキ:「ヒサギとヒイラギも手伝ってくれるもんね!」
ヒサギ:「あてにされてしまいましたね、姉さん」
ヒイラギ:「……やる気なら、年単位でやることになるだろうな」
ヒイラギ:「あいつの”お姉ちゃん”をやるってことなら、な」
ヒイラギ:ほんの少しだけ、妹と出会ったときのことを思い出す。
シキ:「ま、そんなに長くこの地の底で暮らす訳にも行かないけど」
ヒイラギ:「……まったくだ」
シキ:「別にほら、外出てからも一緒に暮らせばいい話だしね」
ヒサギ:「本当ですよ。何もかも足りなくてしょうがないです」
シキ:「少なくとも私はあの子を見守るつもり。まあ後はヒカリがどう言うかだけど……」
ヒサギ:かつての、無感情な、機械音声の方がまだ抑揚とひとらしさを纏っているような声とは違う声。
シキ:「二人はどうする?」
ヒサギ:ヒイラギ姉さんの方を見る。
ヒイラギ:「……出たら決めるさ」
シキ:「えー!計画性が無いなー!」
ヒサギ:「まあ、ということなので。手伝いくらいはわたし、しますよ」苦笑しつつ。
ヒイラギ:「シキほど能天気になれないだけだ」
シキ:「前向きって言ってよー!もう……」
ヒサギ:くすくすと笑いながら二人のやり取りを見ている。
シキ:「けど本当に、決めておいたほうがいいよ。変わったら変わったでいいんだしさ」
シキ:首にぶら下げた指輪を触って「私も変わってるしね」
ヒイラギ:「……」
ヒサギ:「ん。姉さんはしたいことして、いいと思うからさ」
ヒサギ:「気を遣わなくたっていいんだよ」
ヒイラギ:「……だったら」
ヒイラギ:「外に出る、が今一番したいことだ」
ヒイラギ:「ヒサギに外の世界を見せる。ずっと前からそうだ」
ヒサギ:「真面目だな~、嬉しいけど」少しからかうような口調と、少し弾んだ声。
シキ:「えー。じゃあその先はー?」
ヒイラギ:「……まだ考え中。これでいいだろ」
ヒサギ:「見つかるのが楽しみだねえ」
ヒイラギ:「ボクはお前ほど……その、能天気じゃないんだ」
シキ:「んも~!まあいいけどさ、今はこのくらいにしときますか」
シキ:「けどヒイラギ、本当に、ちゃんと考えておいてね」真剣な表情になって
シキ:「ヒイラギのその望みは……」
シキ:「例えヒイラギがヒサギの隣にいなくても、叶えられちゃうことなんだから」
ヒイラギ:「……」
ヒサギ:「そうなるとわたしはすごい困るよ~」
ヒイラギ:「……ヒサギが困るのは、困るな」
ヒサギ:「ん」
ヒイラギ:「大丈夫だ、別にボクだって、無意味に死ににいくつもりはないんだから」
ヒサギ:その言葉にふやっと笑う。
シキ:「ん!わかればよろしい!!」二人の表情を見て大笑する。
ヒイラギ:その笑いにつられ、表情が緩む
ヒイラギ:「お前は強いよ、シキ」
シキ:「な、なにさ藪から棒に・それさっきも聞きましたー!」
シキ:照れ隠しなのか顔をそむける。
ヒサギ:「照れてますねこれは。珍しい」
ヒイラギ:「思ってることを言っただけだがな……」少し白々しく
シキ:「むー、珍しく素直だと思ったらこれだもんなあ……」
シキ:どかっと後ろに倒れ込み、クッションに頭を預ける。
シキ:「そだ、ヒイラギあれまだ持ってる?」今さっきひらめいたという様子で、天井を眺めたまま
ヒイラギ:「どれだ」
シキ:「図鑑。昔からよく読んでたでしょ」
ヒイラギ:「……あの日に焼けた」
シキ:「ほら、前にサアヤが言ってた、この研究所を出たら~って時」
シキ:「ああそっか……残念。久々に読みたかったのに」
ヒサギ:「じゃあ、外の本屋で探してみましょうか」
ヒイラギ:「……そうだな」
シキ:「お、いいね~。新しい目標発見だ」
ヒサギ:「代わりになんてならないでしょうけど、思い出を偲んだり、実際のものと見比べてみるにはちょうどいいでしょうしね」
ヒイラギ:「答え合わせ、か」
ヒイラギ:考えることは、未来のことよりも、
ヒイラギ:あの日のことと、もしものことばかりだ。
ヒイラギ:ここに居るのが、自分でなければならない理由が
ヒイラギ:ヒサギが生きてそこにいる以外に、一つも思いつかない。
ヒイラギ:自分じゃなければ、もっとうまくやれていたんじゃないか?
ヒイラギ:自分じゃなければ、今頃外に出られているんじゃないか?
ヒイラギ:そんな、不毛な問い。
ヒイラギ:「……シキ、頼むよ」
ヒイラギ:「みんなお前が必要だ」
ヒイラギ:お前の役割は、換えが利かない。
ヒイラギ:ボクとは違う。
ヒイラギ:「今回みたいな無茶は、二度とゴメンだぞ」
ヒイラギ:"リーダー"シキ/尽力○/嫉妬 ロイス を取得します
シキ:「もう……わかったって。気をつけます」両手を上げて
シキ:「けど忘れないでね。そもそも私が無茶するのだって」
シキ:二人を交互に見て、柔らかな表情で微笑む。
シキ:「私には、みんなが必要だからだよ。どっちか片方がいなくなっていいなんてことは絶対にない」
シキ:ヒイラギにロイスを取得 庇護○/不安
シキ:「生きてここを出よう。みんな一緒に」
モノ:空になった倉庫のひとつ、施錠された扉の中で
モノ:ぼんやりと空中に浮かぶほこりを見ている。
ヒカリ:「モ~ノ~?」
ヒカリ:コンコン、とノックの音。
モノ:「?」
モノ:「こ、こんにちは」
ヒカリ:施錠などまるで最初からなかったかのように、自然に扉を開けて入ってくる。
モノ:「ヒカリ」
ヒカリ:「や」ひらりと片手を上げて。
モノ:「え、えへへ、どうしたの」
ヒカリ:「どうしたのはこっちだよ~」隣に腰を下ろし
ヒカリ:「怒られちゃってんじゃん」
モノ:「お、怒られちゃった、ね」
ヒカリ:「『見た』よ~。びっくりしたわ~」
モノ:「ヒカリも、怒りに来た?」
ヒカリ:「え?何であたしが怒るのさ」
ヒカリ:「モノが心配だから見に来ただけだよ」
モノ:「モノは、今、怒られてるから」
モノ:「怒ってもいい、誰でも、怒ってもいい」
モノ:「えへへ、誰でも」
モノ:「知らない、人でも」
ヒカリ:「でも、怒らなくてもいい」
ヒカリ:「でしょ?」
モノ:「そう?」
モノ:「えへへ」
モノ:いつもの調子で笑っている
ヒカリ:「ほら、モノ」
ヒカリ:『いつものように』寝かせた膝をぽんぽんと叩いて。
ヒカリ:「おいで?」
モノ:「いいよ」
モノ:『いつものように』、その膝の上に
モノ:頭をつけて横倒しになる
モノ:「えへへ、ここ、好き」
ヒカリ:片手で髪を梳かすように撫で、もう片方の手でゆったりと肩のあたりを撫でる。
ヒカリ:「そう?良かった」
ヒカリ:「……それで~?」
ヒカリ:囁きに近い、小さな子供を寝かしつける時のような声で。
ヒカリ:「なんであんなことしたの?」
モノ:「同じだよ」
モノ:「モノの答えは同じ」
モノ:「シキがしてほしいって言ったから、したよ」
モノ:「でも、シキってやっぱり変」
モノ:クスクスと笑う
ヒカリ:「変?」
モノ:「も、モノと同じになりたかったんだって」
モノ:「知りたかったんだって」
ヒカリ:「へぇ……」脇腹のあたりをぽんぽんと叩く。
ヒカリ:「シキっぽいね」
モノ:「そうでしょ」
モノ:くすぐったそうに身を捩る
モノ:「し、シキはどうなるのかな」
モノ:「誰のこと、選ぶのかな」
ヒカリ:「さあ、今頃怒られてると思うけど…… ……選ぶって?」
モノ:「選べるのは、1つだよ、ひ、1つだけ」
モノ:「本当に大事なものしか、残らない」
ヒカリ:「そうなの?」
モノ:「そうじゃないの?」
モノ:「ヒカリは、見つかった?」
モノ:「イノリの代わりは、見つかった?」
ヒカリ:自分の最も大事なもの。そう言われて思い浮かべるものは、もう、どこにも無い。
ヒカリ:「んー……どうかなぁ……」
ヒカリ:首を捻る。
モノ:「み、見つからないよ」
モノ:寝転んだまま腕を伸ばす
モノ:ヒカリの頬に触れる、心底に愛おしそうに
モノ:「穴が開いてるから」
モノ:「もう、戻らない」
ヒカリ:「穴ねぇ……」
ヒカリ:膝の上にあるモノの顔を見下ろして、その空洞の眼窩を覗き込む。
ヒカリ:「そうなのかなぁ」
モノ:「……ヒカリも、ちょっと変」
モノ:「ここに来たばっかりのときと」
モノ:「ちょっと、違う、ね」
ヒカリ:「え~?そう?変じゃないよ~」
ヒカリ:猫にそうするように、モノの顎の下を撫でる。
モノ:「ゃう」
モノ:目を細めてなされるがまま
ヒカリ:「……モノはどうなの?」
ヒカリ:「モノの一番大事なものって、何?」
モノ:「同じだよ」
モノ:「モノはずっと同じ」
モノ:「本当のこと」
ヒカリ:「本当のことって?」
モノ:「嘘が嫌なだけ」
モノ:「嘘、つかれたくない」
ヒカリ:「ふぅん……」
ヒカリ:「じゃあ、モノは嘘をつかないの?」
モノ:「えへへ」
モノ:「つくよ」
モノ:「嘘をつくひとには、嘘、つく」
モノ:「ヒカリおねえちゃん」
モノ:「シキおねえちゃん」
モノ:「友達の、ヒサギ、友達の、ヒイラギ」
モノ:「みんなの本当が、はやく、見れるといいな」
ヒカリ:「結局あたしもお姉ちゃんなの?友達じゃなくて~」
ヒカリ:「本当のことなんて、結局誰かを傷付けるだけだと思うけどなあ」
ヒカリ:「それを隠しておくのって、優しさじゃない?あたしはそう思うけどな」
モノ:「最後まで、隠すの、無理だよ」
モノ:「それまで嘘ついてたのは」
モノ:「その時に、全部、い、い、意味なくなる、から」
モノ:「本当のことが、いいよ」
ヒカリ:「そうかなぁ……」
ヒカリ:「例え隠せなくても、見ないことは出来るでしょ」
ヒカリ:モノのひとつ残った眼を、掌で覆う。
モノ:「傷がついても?」
モノ:「傷は痛むんだよ?」
ヒカリ:「そうだね」
ヒカリ:「治らない傷だってあるよね」
モノ:「我慢する?」
モノ:「な、なんのために?」
ヒカリ:「いつか……」
ヒカリ:目を細め、口元を微かな笑みの形に歪める。
ヒカリ:「忘れられる時のために」
ヒカリ:「治らない傷だって、きっと忘れることは出来るから」
モノ:「えへへ」
モノ:こちらも、片目を隠された魔m
モノ:まま
モノ:暗闇の中へと笑みを返す。
モノ:「来ないよ」
モノ:「そんな時は」
ヒカリ:「来るよ」
ヒカリ:「来てほしい、かな」
ヒカリ:「これは本当のことじゃないかもしれないけど、嘘じゃない」
ヒカリ:「そうあってほしいって、あたしは思うな。……だから、これは……」
ヒカリ:「……祈り……かな」
ヒカリ:誰にも見えない、泣きそうな笑みを浮かべて。
ヒカリ:それから、元の薄笑いに戻って、モノの目から手をどける。
モノ:見開いたままの目が、光を写す。
モノ:たったひとつの虚ろは、それでも昏いままで。
モノ:「そっか」
モノ:「じゃあ確かめれば、いいよ」
モノ:「モノは、ここにいるから」
モノ:「もうずっと、ここにいる」
モノ:「これからも」
ヒカリ:「……どうして?」
ヒカリ:「出ようよ、一緒に」
モノ:「も、もう1人いたよね」
モノ:「あの子、名前、なんだっけ」
モノ:「同じこと、言ってたよね」
ヒカリ:「……サアヤのこと?」
モノ:「サアヤ、サアヤ……そう、そう」
モノ:「あの子も、ヒカリも、なんでそれがいいことだって思うの」
ヒカリ:「出たくないの?モノは」
モノ:「だって」
モノ:「外の世界には、本物があるかもしれないから」
ヒカリ:「モノは、それが怖いの?」
モノ:「きっと腐らせちゃうよ、偽物の嘘つきがそこに入っていったら」
モノ:「……うん」
モノ:「怖いよ」
モノ:「さっぱりさせないと」
モノ:「本物をだめにしたくない」
ヒカリ:「それは見解の相違ですなぁ」
ヒカリ:「もし外の世界に、本当の本物なんてものがあるとしたら……」
ヒカリ:「きっと、嘘や偽物くらいで、駄目になんてならないよ」
モノ:「そうかな」
モノ:「やっぱりヒカリは、ちょっと変」
モノ:「……ち、ちがう、ね」
ヒカリ:「そう、違うんだよ」
モノ:「ここに来たときのほうが、変だった?」
ヒカリ:「……そうかもね」ぐしぐし、とモノの頭を撫でて
ヒカリ:「あたしとモノは違う人間だから、おかしくて当然なんだよ」
ヒカリ:「シキはそれが分かってないんだ」
ヒカリ:「あの子は、全部曝け出せば、モノに証明できるって思ってる。自分が『本物』だって」
モノ:「うん」
ヒカリ:「それこそ、眼なんかじゃなくて。お腹の中身掻っ捌くまでやめないと思う」
モノ:「本物に、なりたいって」
ヒカリ:「バカなんだよ、あいつ」
モノ:「シキは、どうしてそんなこと思うのかな」
モノ:「バカ」
ヒカリ:「そう。勝手に自分を追い込んで、そうしなきゃいけないって思いこんでる」
ヒカリ:「だからさぁ……あんま虐めないでやってよ」
モノ:「……」
モノ:「自分が本物にはなれない」
モノ:「モノたちみんな、偽物にしかなれないって」
モノ:「先に分かったほうが、そのほうが」
モノ:「シキもきっと、楽なのに」
ヒカリ:「あたしは、そうは思わない」
ヒカリ:「外になんて出なくたって」
ヒカリ:「ここにだって、『本当』はあるよ」
ヒカリ:「嘘にまみれて、傷だらけだって」
ヒカリ:「その中にだって、きっと本当のことはある」
モノ:「これ以外に?」
モノ:抉られた眼窩と痣を指す
ヒカリ:「あたしは、モノのこと好きだよ」
ヒカリ:「大事に思ってるし、出来ることはしてあげたい」
ヒカリ:「でも、その為に自分の目を抉るのは嫌だし──」
ヒカリ:「言えないことだって、沢山あると思う」
ヒカリ:「それって、嘘なのかな」
ヒカリ:「それは本当の気持ちじゃない?」
モノ:「……」
モノ:「気持ちが変わっちゃったら」
モノ:「本当のことも、その時に嘘になる」
モノ:「さっきまで、本当だったのに」
モノ:「さっきまで、信じてたのに」
モノ:「そんなの、嫌だよ」
モノ:「モノは、嫌」
ヒカリ:「変わらない」
ヒカリ:「……って、シキあたりなら言い切るのかもしれないけど」
モノ:僅かに、膝の上で視線を反らす
ヒカリ:肩を竦める。「あたしはそうは言えないな」
ヒカリ:「人は変わるものだから。モノだってそうでしょ?」
ヒカリ:「誰かがモノに嘘をついてるって知ったら、モノだって嫌いになるでしょ?」
モノ:「うん」
モノ:「だから、本当が欲しい」
モノ:「最初から、本当なら」
モノ:「嫌いにならなくていいから」
モノ:「モノも、ずっと本当でいられるから」
ヒカリ:「本当なら、あるよ」
ヒカリ:「誰かがモノを想って、モノが誰かを想うその瞬間」
ヒカリ:「その瞬間だけが、本当のことなんだよ」
モノ:ふと思い出す
モノ:貯蔵庫に最後に残った卵
モノ:不格好なオムレツの味
ヒカリ:「たとえそれが嘘だったとしても。いつか、全部無くなったとしても……。それはきっと、絶対変わらないことなんだ」
ヒカリ:「……あたしはそう思うよ」
ヒカリ:モノを抱き起こすように立たせて、頬に軽くキスをする。
ヒカリ:「もう行くね。そろそろヒイラギたちが来るみたい」
ヒカリ:「来てたってバレたら、二人で余計に怒られちゃう」
モノ:「ヒカリ」
モノ:その背中へ声をかける
ヒカリ:「ん?」振り返る。
モノ:「いいことが、あるといいね」
モノ:部屋を去っていく姿に
モノ:寂しそうな笑顔で、そうつぶやいた。
モノ:その瞬間だけの、本当のことを。
【Middle first half/ヒカリ】
GM:ミドル前半 4手番目 シーンPCはヒカリさんです
GM:誰を指名しますか?
ヒカリ:ヒサギさんを指名します
ヒサギ:えっ!?
ヒサギ:滅茶苦茶指名貰ってて本当びっくりする よろしくお願いします
GM:ではメインシーンはヒカリさん ヒサギさん サブシーンはヒイラギさん モノさん シキさんになります
GM:ヒカリの侵蝕率を1D10(→ 8)増加 (42 → 50)
GM:残りの判定項目はこちらのみ
・倉庫捜索
任意の≪情報≫ もしくは≪感覚≫
財産点+5
GM:判定どうぞ
シキ:ここはお姉ちゃんが手本を見せてやりますか
シキ:2dx>=9
DoubleCross : (2DX10>=9) → 9[5,9] → 9 → 成功
ヒサギ:おお つよい
シキ:成功しちゃった
ヒイラギ:さすシキ
シキ:ぶいぶい!
モノ:おねえちゃん♡
ヒカリ:やるじゃん
GM:ではこれにて判定は全項目クリアとなります
ヒカリ:「やー、呼び出しちゃってゴメンね~」
ヒカリ:ヒカリの個室として与えられたスペース。我が物顔で好き勝手に扱っているらしく、簡素なベットの周りは既に散らかり放題になっている。
ヒサギ:「いえ、構いませんよ。いつもお世話になってるわけで…」
ヒサギ:「それで、何かありましたか?」
ヒカリ:「ん?」首を傾げる。
ヒカリ:「特に何も無いけど……」
ヒサギ:「片付けの人手としてかな、とか思ったのですが」少し笑って。
ヒカリ:「ヒサギに会いたかったから、じゃ、迷惑だった?」
ヒサギ:「いえ?そんなことはないですけど……」首を少し傾げて。
ヒサギ:「わたしより、他の皆の方が話し相手としては楽しいと思いますけれど」
ヒカリ:「え~?そんなこと無いよ~」
ヒカリ:「ほら、座って座って」
ヒカリ:乱雑に散らばった諸々を、ざーっと手で雑に払いのける。
ヒサギ:「そうでしょうか……ええ、失礼して」
ヒサギ:ぽふりと椅子に座る。近くの物を少し並べて置いておく。
ヒサギ:(後で片付けておいた方がよさそうだなあ…)
ヒカリ:「そういえば、シキがやらかしたらしいじゃん」
ヒカリ:「ごめんね?お説教してもらっちゃって」
ヒサギ:「ああ……見てました?それともモノさんから聞いたのかな……」少し溜息。
ヒサギ:「いえ、わたしが出しゃばった真似をしたのも確かなので……それに、何か変わったかといえば、そうでもないでしょうし」
ヒカリ:「そんなことないと思うけどなぁ。少なくとも、必要なことではあったよ」
ヒカリ:「あたしが言っても、素直に聞かないし……や、逆か」
ヒカリ:「あたしが言うと、あの子、素直に聞きすぎちゃうからさ」
ヒカリ:少し苦笑ぎみに笑う。
ヒサギ:「そうですか…?ああ」
ヒサギ:「ヒカリさんだと、そうなりますか」
ヒサギ:「そういう意味ならまあ、何か考えるきっかけにでもなればと思ったので。悪者にでも思ってでも、なら。わたしでよかったのかな」
ヒサギ:「……本当、軽いし何にもならないですけど。少しでも役に立つようなら、いいんです」
ヒサギ:微かに苦笑を浮かべながら。
ヒカリ:「うん、助かっちゃった。ありがとうね」
ヒカリ:「世話の焼ける子だよ、まったく~」
ヒカリ:頭の後ろで手を組んで。
ヒサギ:「それはどっちですか…、って。まあ、聞くのも野暮ですね」
ヒカリ:「あはは」
ヒカリ:ぐい、と後ろに身を傾け、それから反動で前に俯くようにして。
ヒカリ:上目遣いにヒサギを見る。
ヒサギ:「まあ、そう簡単に変わるものでもないですし。上手く、なんとか出来れば……」
ヒカリ:「ホントいい子だねー、ヒサギは」
ヒサギ:「……」視線を合わせて少し口元をゆがめる。
ヒカリ:「いつも他の皆のことばっかり。もう少し、自分のことも考えていいのに」
ヒカリ:「それともキミ自身、そうあろうとしてるのかな」
ヒサギ:「そういう子がいないと、色々不味そうだな…って思ったからですよ。回り巡って、自分の為になります」
ヒサギ:「できているかは結構、不安ですし。色々お手数をお掛けもしちゃってはいるんですが」
ヒカリ:「ふぅん……」
ヒカリ:少し考えるようにして。
ヒカリ:ぱっと思い出したように口を開く。
ヒカリ:「この前のこと、ヒイラギに話した?」
ヒサギ:「この前、というと……」
ヒカリ:す、
ヒカリ:と、ヒサギの唇を人差し指で塞いで。
ヒサギ:一瞬、思い出すような空白。
ヒカリ:それから、自らの唇を同じようにする。
ヒサギ:「……なるほど。言ってないですよ」
ヒサギ:「もしかしてですが、……言った方が良かったですか?」
ヒカリ:「まさか」くつくつ笑って「バレたら殺されちゃうよ、あたし」
ヒサギ:こちらも自分の唇をそっと指でなぞり。
ヒサギ:「そうですかね…?あれで、結構ヒカリさんのことも気に入ってると思いますけどね、姉さん」
ヒカリ:「んー……」目を細める。「どうかな。そうだといいけど」
ヒサギ:「……?何かありました?」
ヒカリ:「いや、別に~?」ごろん、とベッドに寝転んで。
ヒサギ:「そうですか…?まあ、ひどいこととかじゃないなら、いいんですけど…」
ヒカリ:「……ねえ、ヒサギに一個、聞いてみたいことがあったんだけど」
ヒカリ:天井を見上げたまま口を開く。
ヒサギ:「はい、なんでしょう?」
ヒカリ:「……」
ヒカリ:「……変わらないのって」
ヒカリ:こめかみに手を当て、注射器のジェスチャー。
ヒカリ:「そんなに大事?」
ヒサギ:「…………見てました?」
ヒサギ:「…参ったな。死角に入ってやってたつもりだったんですが…」
ヒカリ:「たまたまだけどね」悪びれもせずに。
ヒサギ:「そうですね………」こちらも椅子から、天井を見上げて。
ヒサギ:「これでわたし、すごく不安になったり苛立ったり、当たり散らしたくもなったりするんです」
ヒカリ:「へぇ……」
ヒカリ:「意外、というか。それをあたしに言ってくれるのが意外、かな」
ヒサギ:「そこまでばれちゃってますしね」くすりと笑って。
ヒサギ:「嘘は付けますよ。全然平気ですとか、きっと希望があるとか、そういうの」
ヒサギ:「……で、そういうつまらない嘘。ヒカリさん、聞いてていやになりませんか?」
ヒサギ:「脱出路は中々あてが突かないし。物資はどんどん減っていきますし。このままならあと何日何時間くらいで破綻して、みんなおかしくなるだろう……って。想像もできるわけで」
ヒカリ:「ん~。別に、嫌ではないけどね。そういう嘘にだって、意味と価値はあると思うし」
ヒカリ:「まあ、でも。あたしに必要かって言われたら、そうでもないかな。……続けて?」
ヒサギ:「まあ、そうですけどね。シキさんとかならともかく、わたしが言っても信じられないので…、はい」
ヒサギ:「まあそういう不安や、障害やリミットが見えて。そのことをただ当たり散らして……それ」
ヒサギ:「何の解決にもならないですし、寧ろ有害です。生きていくのに」
ヒカリ:「まあ、一面的にはそうかもねぇ」
ヒサギ:「……別に、不安そのものとかが悪いんじゃなくて。それを紛らわせるために、わたし、ヒサギという一人のオーヴァードが行いかねないことが危険だったので」
ヒサギ:「そしてそれを防ぎつつ、わたし自身の精神も健常でいるために出来ることがあるなら…そしてそれが、誰の負担にもならないなら」
ヒサギ:「わたしはそれを実行するべきだし、そうせずに被害を出すような事こそ、許せなかったから」
ヒサギ:「……少し、熱くなりすぎましたね。すみません」苦笑して。
ヒカリ:「なるほどねー……」独り言ちるように呟いて。
ヒカリ:「理屈は大体分かったよ。確かにヒサギの言ってる事は正しいと思う」
ヒカリ:「でも、ホントにいいのかな、それで」
ヒサギ:「…、と言いますと?」
ヒカリ:「それは自分の感情や在り方を、無理やり矯正するってことでしょ?」
ヒサギ:「そうですね。そうなります」こくんと頷く。
ヒカリ:「それじゃ、自分を歪めるのと一緒だよ。こんな状況じゃ、不安になったり苛立ったり、当たり散らしたくなるのが当然なんだから」
ヒカリ:「そういうことを繰り返してると……」
ヒカリ:「いつか、戻るべき自分がどこかに行っちゃうよ」
ヒサギ:「そうかもしれないですね」少し笑って。
ヒサギ:「……そして、心配してくれてありがとうございます」にこりと笑う。
ヒカリ:「……ホントに分かってる~?」
ヒサギ:「分かってる…つもりです。少なくとも、あまり続けようとは思ってないですよ」苦笑い。
ヒサギ:「外に出れた後まで、そういう無理をするつもりはないですし」
ヒサギ:あまり声を立てず、小さく楚々と笑う。
ヒカリ:「……たとえここに閉じ込められてなくってもさ」
ヒカリ:「キミは昔のキミのこと、気にする必要なんてどこにも無いと思うよ」
ヒサギ:「そういってくれるのは、本当にうれしいです。……あ、これは作ったりしてるわけじゃないですよ?」
ヒサギ:「でも……そうですね。その人になれるなんて、そんなことを思ってるわけじゃないんですが……」
ヒサギ:「”もし今いるのが、わたしじゃなくてその人なら”……」
ヒサギ:「実際に今いるのが、わたしなんだから。より良くなるようにしてみせないと、とは思ってます」
ヒサギ:「……ちょっと生意気かもしれませんけどっ」
ヒカリ:「なるほどね」笑って。
ヒカリ:「……あたしさ、昔、甲殻類嫌いだったんだよ」
ヒカリ:「分かる?カニとか、エビとか」
ヒカリ:唐突にそんなことを言い出す。
ヒサギ:「そうなんですか?……ええ、見たこと…というか、記憶ライブラリの中に」
ヒカリ:「見た目がキモくてさー……ほぼほぼ虫じゃん、アレって」
ヒサギ:「実際近縁の生物なんでしたっけ…」
ヒサギ:手で空中にこんな感じの、と作ってみる。
ヒカリ:「でもね、イノリが……妹が好きだったんだよね」
ヒサギ:「それは…また。なんというか…」
ヒカリ:「困るでしょ。それで仕方なく食べてたら……」
ヒカリ:「……いつの間にか平気になって、あたしの方が好きになっちゃってたんだよね」
ヒサギ:「……ああ」
ヒサギ:「ちょっとわかる気がします。わたしも」
ヒカリ:「ヒイラギ?」くすりと笑う
ヒサギ:「…分かります?まあ、わたしもまあ…人間とかすごく苦手になってた時期があって…」
ヒサギ:「なんとか時間を掛けて色々触れていくうちに、ちょっとずつ今見たくできるようになっていったんですよね。…懐かしいなあ」
ヒカリ:「結局さ……そういうことだと思うんだよね」
ヒカリ:「よく話す人の口癖が移ったり。一緒に居る人と同じものを好きになったり」
ヒカリ:「そういう風にして、ちょっとずつ今の自分が出来ていくわけでしょ」
ヒカリ:「生きるのってさ、変わっていくことだと思うんだよ、あたしは」
ヒサギ:「…」少し目を閉じて。
ヒサギ:「分かる、なんて言えないです。わたしは、そこをきっと分かってないから」
ヒサギ:「でも……大事なことなのは、分かると思います」
ヒカリ:「もし昔のキミがここに居たら、どうなるか……」
ヒカリ:「そんなこと、誰にも分かんないと思う。あたしにも、キミにも」
ヒカリ:「だってそれはきっと、2年前のヒサギとも、今のキミとも違う、変わっていたはずのあの子だからさ」
ヒサギ:「そうですね………うん」
ヒサギ:「……わかったらいいのにな。でも、分からないんだからしょうがないんですけれど」
ヒカリ:「少なくともあたしは、今の……分かろうとするヒサギのこと、好きだよ」
ヒサギ:「………そうです?ふふ」
ヒカリ:「そうだよ」
ヒカリ:笑って、身を寄せる。
ヒカリ:「……ね」
ヒカリ:「キスしていい?」
ヒサギ:「嬉しいです。………うん」
ヒサギ:少し苦笑する。
ヒサギ:「わたしでいいのです?わたしは、まあ嬉しいですけれど」
ヒカリ:「キミがいいんだよ」
ヒサギ:「……ほかのひとにもそういってないですか?なーんかそういう気がしますね…」くすりと笑って。
ヒカリ:ベッドから身を起こして、椅子に座るヒサギのもとに、少し屈んでキスをする。
ヒサギ:「、ん」
ヒサギ:そのまま合わせて受ける。唇はこんな中でも手入れを欠かさず、リップクリームの匂いがした。
ヒカリ:「……ふふ」
ヒカリ:口付けはほんの数秒。笑って、手を引くようにベッドに倒れ込む。
ヒサギ:「…ぁ、もう」そのまま身を任せる。
ヒカリ:「……当然だけど」
ヒカリ:ベッドに横になったまま、すぐ近くの顔に笑い掛ける。
ヒカリ:「昔のキミとも、こういうことしたこと無かったよ」
ヒサギ:茶色の髪が、あなたのそれと交じり合う。
ヒサギ:「……それ、どういう顔で聞いたらいいんでしょう?ちょっと困っちゃいますよ」少し笑いながら。
ヒサギ:腕を広げる。そっと彼女を包むように腕の中に。
ヒサギ:「……まあ、こういう風になるのは想像してなかったですが……そうですね」
ヒサギ:「ヒカリさんは、すごいひとです。そうして、わたしもとてもよくしてもらいました。だから、うん」
ヒサギ:「お好きにどうぞ。あなたにとって、ひと時でも癒しとなりますよう、がんばらせてもらいます」
ヒカリ:「何か、固くない?ノリがさ~」
ヒカリ:「あたしだって、ヒサギの癒しになれたらいいなと思ってるんだけど?」
ヒサギ:「悪いですか?わたしだって緊張してるんですよ、もう」
ヒサギ:「女性相手は初めて…というか。助けてもらうのはさっきので十分以上にしてもらったと思っているのですが…」
ヒカリ:「……そう?緊張してるんだ?」悪戯っぽく笑う
ヒサギ:「個人的にきちんと友好を持った方と、後からこういうことをしたのは無いので……」
ヒカリ:「じゃ、お互い楽しめるといいね」
ヒサギ:「………こほん。ええ、よろしくお願いします」
ヒカリ:冗談めかして言って、ヒサギのジャケットを脱がせに掛かる。
ヒサギ:そっと脱ぎ捨てて、畳む。赤のノースリーブが白い肩を覗かせて。
ヒサギ:ヒカリさんの腕を追うようにそっと指を這わせる。
ヒカリ:「ん……」くすぐったそうに僅かに眉を動かす。
ヒカリ:「……キレーだよね、ほんと」
ヒサギ:「ちゃんと綺麗にしないと……って言いますけど」
ヒサギ:「本当は、綺麗な方が見てて気分がいいからです。ふふ」
ヒサギ:ジャケットとセーターの境にまで指を添わせ、なぞるように。
ヒカリ:「……言えてる」
ヒサギ:「ヒカリさんも、本当綺麗ですよ」
ヒサギ:肩を通り、顎から耳元に抜けるようになぞって。
ヒカリ:「そう?お世辞でも嬉しいな」
ヒカリ:ヒサギの腕と交差させるようにして、ノースリーブの淵まで手を這わせる。
ヒサギ:「……少し、気分がいいかもです」耳に寄せた口で。掻き揚げた髪に一度口づけて。
ヒサギ:「お世辞なんて言いませんよ。……ヒカリさんが、言ってなければですけれど」ん、と手に合わせるようにわずか身体を動かしながら。
ヒカリ:「……まさか」
ヒカリ:くすりと笑って、その証のようにキスをした。
ヒカリ:ロイス取得 ヒサギ ○尽力/不安
ヒサギ:「なら、そういうことです。……野暮は、これきり」唇を合わせる。…後は、言葉の出番ではない。
ヒサギ:ロイス取得。 ヒカリ 〇好意/不安
シキ:「しっかしまた散らかしたねーヒイラギ」
ヒイラギ:「ボクらのせいじゃないぞ」
シキ:倉庫。ヒカリとヒイラギが崩したままの荷物の山を持ち上げる。
ヒイラギ:「ああいうのは積んだやつが悪いんだ」
シキ:「はいはい。けどまーこのまんまじゃ探せるもんも探せないし」
シキ:「大変だけどまた積み直さなきゃっと……ん?」
ヒイラギ:「なんだ、破損か?」
シキ:「いや、なんかここだけ不自然な……」荷物をどけた先、床の一区画だけが妙に目新しい。
シキ:「今まで暗くてわかんなかったけ……どっ!?」
ヒイラギ:「おい、どうした」シキに駆け寄る
シキ:踏んだ瞬間、ガコンと音を立てて床板が抜け落ち
シキ:小さな階段と、その下に広い空間が見ええてくる。
シキ:「わ、わ!ヒイラギこれってあれじゃん!隠し部屋!!」
ヒイラギ:「……新しい物資があるかもしれないな」
モノ:「ごはん、あると、いいね」
モノ:いつの間にか、2人の後ろに立っている
シキ:「悪の総帥の日記帳とか隠してあるかもよ~」
シキ:「わっ、モノ」
ヒイラギ:「……っ!」驚いて振り向く
シキ:「モノも手伝いに来てくれたの?」
モノ:「こ、こんにちは」
モノ:「そ、そう、モノは、役に立つ」
モノ:「……」
モノ:シキに微笑みかけて、右目をなぞるジェスチャー
シキ:「よーし、じゃあ一緒に探検しよっか!」
シキ:その仕草を見て、不敵に笑みを返す。
モノ:「た、たんけん、だね」
モノ:「がんばる、よぉ」
シキ:「ほらヒイラギも。行こ行こ!」
ヒイラギ:「……あ、ああ」
シキ:意気揚々と階段の先へ通りていく。
ヒイラギ:勢いに押されてうなずく
シキ:階段はそう長くない。すぐに開けたスペースに出る。
モノ:こちらも軽い足取りでシキについていく
モノ:「わ、な、なんだろ、これ」
モノ:「ヒイラギが、持ってたのと、一緒」
モノ:「いっぱい、あるね」
シキ:「これは……」数秒遅れてセンサーが作動し、小さな電球が部屋を照らす。
モノ:照らされた部屋の中を見回す。
ヒイラギ:「……書庫、か?」
モノ:ハードカバーの本が無数に収まった書棚
モノ:片隅の机には昆虫の標本や地球儀、彫像のようなものも乗っている
ヒイラギ:棚にゆっくりと顔を近づけ、恐る恐る背表紙を撫でる
シキ:「姉妹で熱心に本読むのなんてそれこそヒイラギくらいだったし、研究員の誰かの隠し書庫かー」
モノ:「これ」
モノ:「シキだよ」
モノ:机の上の写真立てを拾い上げる
シキ:「一体誰の……え?私?」
モノ:「ここに、来たこと、あるの?」
モノ:「シキの、部屋?」
シキ:「いやいやいや、ないない!私本とかラノベしか読まないし」
シキ:そう言いながらモノが指した写真を手に取る。
シキ:「あ……これ」
シキ:「……主任だ」
ヒイラギ:「……」
シキ:写真に写っていたのは数年前の自分と、恋仲だった主任研究員。
シキ:周りには、既に亡いかつての姉妹達の顔もある。
モノ:「しゅ、主任と、シキは、なかよし」
モノ:「モノは、覚えてる、前に言ってた、から」
モノ:「主任の、部屋、だね」
シキ:「……そういうことになるね」
シキ:「しっかし」辺りを見回す。
シキ:文学全集や詩集、難解ではあるが研究分野とはさほど関係ない書物が多く並ぶ。
ヒイラギ:「……主任は、よほど変わり者だったんだな」
モノ:「くるくるーくるくるくるー」
シキ:「あの人の部屋も本だらけだったからねー。さしずめ仕事に関係ない本を置いてた第二書庫ってやつかも」
モノ:地球儀を意味もなく回している。
シキ:「それ、部屋に持ってったら?モノ」
シキ:「気に入ったんならさ。どうせ持ち主はもういないんだし」
シキ:「ヒイラギも、読みたい本あったら持ってていいよ」
シキ:「いまからここはみんなの共用図書室ってことで」
ヒイラギ:「……ないな」何かを探していて、ふと呟く
モノ:「いいの?じゃ、じゃあ、そうする」
モノ:ひょい、と地球儀を抱えて
モノ:「ない?何、ないの」
ヒイラギ:「あの図鑑だ」書庫の抜けたところを指差して
シキ:「え!もしかしてアレ、主任の本だったの!?」
ヒイラギ:「あの本、ここから来たんだな」
モノ:「?」
モノ:「本なら、た、たくさん、ある」
モノ:「あるよ」
ヒイラギ:「ボクのところに来た時は、もう擦り切れかけてたが……」
ヒイラギ:「ああ、本はある。けど、あの本はない」
ヒイラギ:「書いてあることが違う」
モノ:「そう、なの?」
シキ:「けど良かったんじゃない?せっかくできた外出た後の目標が無くなっちゃわずに済んだし」
ヒイラギ:「……別に、あの図鑑がここにあったって外に出なくなるわけじゃないだろ」
シキ:「お楽しみはいっぱいあったほうがいいってこと!まあそれでもさ」
シキ:「他に気になる本があったら読んでみなよ」
シキ:「主任曰く、知識欲に際限はない。一つの物語を読めばその続きが」
ヒイラギ:「……だったらお前も読んでみたらどうだ」
シキ:「一つの理論を知ればその応用が知りたくなるってね」
シキ:「本屋で探す本が増えるかも……って、うーんそうだな~」
ヒイラギ:「これだけジャンルが揃ってるんだ。あるだろ、お前でも読みたくなるやつ」
シキ:「漫画があればよかったんだけどな~」
シキ:「ページの中で絵より文字の面積が多いと眠くなっちゃうんだよね」
ヒイラギ:「……絵本ならお前の後ろだぞ」
シキ:「もー!子供扱いして!」起こりつつも後ろを向く
シキ:「んーでもこのラインナップは中々……おっ」
シキ:背の高い本棚の中から一冊の絵本を手に取る。
シキ:「なつかしー!これちっちゃい時に読んでもらったやつ!」
モノ:「?」
モノ:隣からそれを覗き込む
シキ:その表紙には、水彩画で鮮やかなサンゴ礁と、底を泳ぐ赤い小さな魚の群れが描かれている。
ヒイラギ:「……」
シキ:「ヒイラギも読んだことあるんじゃない?」
シキ:「っていうか私が読み聞かせてあげたかも!本当に小さいときだったけど」
ヒイラギ:「……覚えてないな」
シキ:「えー!かわいくないなー!」口をとがらせて
ヒイラギ:「ボクが図鑑を読んでたのは、誰も読まなくて余ってたからだ」
ヒイラギ:「そんなことより、モノに読み聞かせてやればいいだろ。ボクは他の本も見てみたい」
シキ:「……あ、そっか」
シキ:「そういえばモノが生まれたころは管轄が違ったから、読んであげたこともなかったかも」
モノ:「これは、絵」
モノ:「なんの絵?」
シキ:「お魚さんだよー。モノ、この本気になる?」
モノ:「魚……さ、魚って、何?」
ヒイラギ:「水中に住んでる生物だ」
モノ:「水の、中に、住んでるの?」
モノ:「息が止まっちゃわないの?」
ヒイラギ:「……エラって器官で呼吸するから、水の中でしか息ができない」
シキ:「図鑑があればわかりやすかったんだけどねー」
モノ:「水の中なのに、水の中でしか?」
モノ:「よ、よくわかんない」
ヒイラギ:「缶詰にもいくつかか魚はあったな……まあいい。そういう生物がいるんだ」
シキ:「実際に見ればすぐわかるよ。外には海があって……」
シキ:「って、海の説明もしないといけないか」
モノ:「あ、あ、サーディン」
モノ:「サーディンは、知ってる。サーディンが、魚?あれが、これ?」
モノ:「なんで、あれが、これ?」
モノ:ふむむむという顔になる
モノ:「モノには難しい……」
ヒイラギ:「サーディンも魚の一種だな。捕まえて食えるように加工……料理されて、缶に突っ込んだやつだ」
ヒイラギ:「最初は難しいもんだろ」また本の背表紙を眺め始める
シキ:「ふふ、よくわかんないものをあれこれ想像するのもいいもんだよ」
シキ:「いつか実際見てみたいって思うでしょ」
シキ:「そういうのの積み重ねが、生きる希望になってくんだから」
シキ:「ま、私も水槽の中にいるやつだけで、海で泳いでるのは見たことないんだけどねー」
ヒイラギ:「C棟のネオンテトラか」
シキ:「そうそう。ヒイラギあそこ好きだったもんね」
ヒイラギ:「静かだったからな」
ヒイラギ:「……スイミーって結局、どういう話なんだ」諦めてシキの近くの壁により掛かる
シキ:「使う人いなかったからね。研究用とはいえ、殆ど趣味で育ててたみたいだから」
シキ:「お、ヒイラギちゃん懐かしくなっちゃった~?」
シキ:「それじゃあ、お姉ちゃんが読んであげちゃおっかな~」
シキ:「モノもお魚さんのこと想像しやすくなるだろうしね」
ヒイラギ:「モノに読み聞かせてやるって話じゃなかったか……?」小声でつぶやきつつ
モノ:「魚……」
シキ:「んじゃ行くよ~」表紙をめくる
シキ:「広い海の中、楽しく暮らす小さな赤い魚の兄弟たちに混ざって──────」
シキ:それは魚の群れの物語だ。
シキ:赤い小魚の群れの中で、一匹だけ生まれた黒い小魚は
シキ:群れの中で一匹だけ、仲間の誰よりも泳ぎが速かった。
シキ:大きな大きな群れの中で、小魚はいつもその先頭をたった一匹で泳いでいた。
モノ:「……」
シキ:「しかしある日、仲間たちはついに大きな魚にみな食べられてしまいました」
モノ:じっと、絵本を見つめている
シキ:「たった一匹残った黒い魚は──────あれ?」
シキ:「……続きのページ破れちゃってる」
シキ:「もー!ここからがいいとこだったのに!」バタンと絵本を閉じる。
モノ:「黒い魚は」
シキ:絵本のクライマックスから先のページはごっそりと抜け落ちてしまっていた。
モノ:「ひとりぼっちに、なっちゃったね」
モノ:「だけど」
モノ:「最初からひとりぼっちだったから、変わってない」
モノ:「これからも、ずっと」
ヒイラギ:「どうかな」
シキ:「んー、そうかな?」
シキ:「お、ハモった」
モノ:「ち、違うの?」
モノ:不思議そうに首をかしげる
ヒイラギ:「……スイミーはあそこでは終わってない。続きがある」
シキ:「この子は確かに、赤い魚の群れの中で一匹だけ黒い魚で」
シキ:「一匹だけとっても速く泳げた。だから、一匹だけ食べられなかった」
シキ:「確かに一人だったのかもね」
シキ:「けど、これからも一人とは限らないんじゃない?」
モノ:「黒い魚は」
モノ:「どこに、いくの?」
シキ:「どこにだっていけるよ。海に国境なんてないしね」
シキ:「黒い魚がこの先どうなったか、気になる?」
モノ:「どうなったの?」
シキ:「ふふ」ニッコリと笑って
シキ:「今はおしえな~い」
モノ:「そんなぁ」
シキ:「モノが黒い魚にどうなってほしいのか、ちゃんと考えて教えてくれたら」
シキ:「その時は、答え合わせしてもいいよ」
シキ:「けどそうだなー。できれば」
シキ:「外に出て、自分で続きをよんで見てもいいんじゃないかな」
モノ:「……」
モノ:「それが言いたかったの?」
モノ:「シキは本当に好きだよね、外」
シキ:「私はいつだって言いたいことしか言わないよ」
モノ:「嘘っぽい」
ヒイラギ:「……」他の絵本をパラパラと見て戻す
シキ:「私は外に出たいし、みんなを外に連れていきたい」
モノ:「えへへ」
モノ:「黒い魚なのに」
モノ:「どこにも行けないよ、きっと」
ヒイラギ:「黒い魚だからだろ」 そう呟いてまた別の棚へ行く
シキ:「行けるよ。どこにだって」
シキ:「勝負だねモノ。どっちが嘘をついてるか」
シキ:「いつか、答え合わせしようね」
【Middle first half/モノ】
GM:ミドル前半 最後の手番 シーンPCはモノさんです
GM:誰を指名しますか?
モノ:シキ~~
モノ:以上です
GM:ではメインシーンはモノさん シキさん サブシーンはヒサギさん ヒイラギさん ヒカリさんになります
シキ:やってやるぜ
モノ:消灯時間が過ぎて、真夜中。
モノ:節電のために非常用ランプさえも切った、暗闇の中
モノ:降ろされた隔壁の前に、1人腰掛けている。
モノ:「こ、こんばんは、シキ」
モノ:「どうしたの」
シキ:「あれ?モノじゃん」
シキ:懐中電灯を持って、通路の奥から歩いてくる。
シキ:「どうって見回り。今日は私の当番だから」
モノ:「ゃう」
モノ:光を当てられて眩しそうに身を縮める
シキ:「モノこそどうしたの?消灯時間とっくに過ぎてるよ?」
モノ:「……しーっ」
モノ:「し、し、しずかに」
モノ:人差し指を唇の前に
シキ:「しー?」同じ仕草をしながら首を傾げる
モノ:暗闇の中、隔壁の先から
モノ:微かな音が聞こえてくる
モノ:がり ごり
シキ:「………」
モノ:硬い何かを、壁や床と擦り合わせるような音
モノ:「みんなが、いるよ」
モノ:「モノたちのこと、ま、ま、待ってる」
モノ:「た、食べ物、少なく、なってきたね」
シキ:「……そだね。待ちきれずに開けようとしちゃってるみたいだけど」
モノ:「も、もうすぐ、会えるね」
シキ:「モノは会いたい?あの子たちに」
モノ:「うん、あ、会いたい」
モノ:「嘘、つかない、から」
モノ:「シキは、会いたい?」
モノ:「大事な、家族、だよ?」
モノ:目を細めて笑う
シキ:「会いたくない。あの子たちは家族だけど」
シキ:「会ったら、きっとモノたちのこと殺そうとする」
モノ:「じゃあ、モノが殺されそうになったら」
シキ:「私は家族を守りたい。少なくとも、この手が届く範囲は」
モノ:「みんなのこと、殺すんだ」
シキ:「そうなるね」
モノ:「じゃ、じゃあ、じゃあ」
シキ:「あの子たちは、もう私の手は届かなくなっちゃった。モノにはまだ届く」
モノ:「ヒカリが、モノを殺そうとしたら?」
モノ:「ヒサギが、ヒイラギを、殺そうとしたら?」
シキ:「そんなこと、あの子たちがすると思う?」
モノ:「えへへ」
モノ:「みんながああなるって」
モノ:「シキは思ったこと、ある?」
モノ:隔壁の向こうへ視線を送る
シキ:「………」同じように隔壁の先を見る
シキ:「想像した事があるか、って意味なら」
シキ:「ないことはないよ。オーヴァードだもん。可能性で言えば、いつかジャームになる可能性は誰にだってある」
シキ:「モノも、私もね」
シキ:「確かに、ジャームは自分の衝動に素直にしか生きられない」小さくため息を付いて
モノ:「そう」
シキ:「思ったまま、欲望のまま。でもそれって」
モノ:「あの子達は、本当、本当しか、言わない」
シキ:「本当に嘘をついてないって言えるのかな」
モノ:「シキ」
シキ:「ん?」
シキ:隔壁から視線をモノへ戻す
モノ:「それは、本当に、いけないこと?」
モノ:「壊れちゃったのは、あの子たちじゃなくて」
モノ:「シキや、ヒカリの方じゃないって、どうして、思うの」
モノ:「あの子達と一緒なら」
モノ:「もう苦しいことなんて、ない」
モノ:「相手の心、怖がらなくてもいい」
モノ:「シキは、どうして、嫌なの?」
モノ:「それは、本当?」
シキ:「んー、どうしてだろ。そう言われると自信なくなっちゃうけど」
シキ:「信じられないから、かな」
モノ:「何、を?」
シキ:「相手のこと」
モノ:「信じ、られるよ」
モノ:「本当のことしか、ないから」
シキ:「違うよ、最初から裏も表もなくて、何もかもわかりきってたんなら」
モノ:「あの子達、嘘を、つかないから」
シキ:「そこに私の気持ちが入る隙間がない。相手の言うままを、ただ受け入れなきゃいけない」
シキ:「それじゃあ、先がないでしょ?」
シキ:「もしその子が私のこと嫌いだったら、ずっと嫌いなまま。そこで終わり」
シキ:「けど相手の考えてることがわからなかったらさ」
シキ:「『この子は私のことが好きに違いない!』って信じることができる」
モノ:「信じても」
モノ:「本当じゃないのに」
シキ:「そのうち本当になるかもしれないじゃん」
モノ:「本当じゃないことを信じても、い、い、いいこと、ないよ」
モノ:「……」
シキ:「その時は嘘かもしれないし、勘違いかもしれない」
シキ:「けど、人の心って変わるものだよ。大っきらいだった人のこと、大好きになることもある」
シキ:「そうあってほしいって気持ちに嘘がなかったらさ」
モノ:「そんなの」
シキ:「いつか本当になるまで、その子に向き合っていられる」
モノ:「出来ないよ」
シキ:「どうしてそう思うの?」
モノ:「だ、だって、だって」
シキ:いつの間にか、モノが腰掛けていたパイプの隣へと腰を下ろしている。
モノ:「絶対に本当のことが、何もないのに、それを信じないと、いけないって」
モノ:「……怖いから」
モノ:「怖いよ」
シキ:「ふふ」モノの頭に手を置く
シキ:「バカだなーモノは。私だって怖いよ」
モノ:「シキも、怖い?」
シキ:「怖いに決まってる」
シキ:「私がこうやって、次から次へと薄っぺらいこと言う度に、モノが軽蔑してるんじゃないか」
シキ:「ヒサギとヒイラギの結びつきは、私達とはやっぱり違う。いつか二人で一緒にどっかに消えちゃうんじゃないか」
シキ:「……ヒカリには私のこと恨んでいいって言ったけど」
シキ:「本当は、どこかで許してくれてるんじゃないかって思ってる」
シキ:「そんな都合のいいことないってわかるのも、やっぱり怖い」
モノ:「だけど」
シキ:「全部怖いよ。怖いことだらけ」
モノ:「シキは、モノに触る」
シキ:「うん」
モノ:「みんなに、触れる、ね」
シキ:モノの髪を優しく撫でる「うん、そうだね」
シキ:「だってさ、寂しいんだもん」
モノ:「……そっか」
モノ:髪を撫でる指へと、指を絡ませる
モノ:静かに、ためらいがちに、傷つけないように
モノ:「シキ」
モノ:「モノのこと、見える?」
モノ:頬を寄せ合って、お互いの体温を確かめる
シキ:「見えるよ」懐中電灯を取り落とす。明かりが路地の奥を照らす。
シキ:「こんなに暗くたって、ちゃんと見える」
モノ:「……」
モノ:間近に微笑みを向ける、そして
モノ:どこっ!!
モノ:片腕で軽々と、隔壁にシキの体を叩きつけ
シキ:「……っ……!!」
モノ:押さえつける。
モノ:「えへ、へ」
モノ:枯れ枝のような腕が、シキの胸を押さえつける
シキ:「ぐ……」強烈な力で押さえつけられるままになる
モノ:肋骨がきしむ。激しい痛みを与える。
シキ:「ぐ……モノ……ったら」
モノ:遥かに体格で劣る相手の腕力を、シキが覆すことは出来ない。
モノ:「嫌いだよ」
シキ:「私、優しいほうが好みなんだけどな」
モノ:「嘘つきで、薄っぺらくて、怖がりのシキ」
モノ:「き、嫌いな相手に、優しくなんて、しない」
モノ:そして爪先立ちで背伸びして
モノ:静かに唇を奪う。
シキ:「ん……」
モノ:「……好きだよ」
シキ:「……いけないんだ」
モノ:「優しいシキが好き」
シキ:「モノも嘘つきになっちゃうよ」
モノ:「ふふ、えへへ、ひひ」
モノ:「嘘、つくよ」
モノ:「モノは嘘つきには、嘘をつく」
モノ:「嫌い、嫌い、嫌い」
モノ:「好き、好き、好き」
モノ:何度も口づけを交わして、囁く
シキ:「良いよ。嘘でも本当でも」それを何度も受け入れて
シキ:「こうして触れてくれるなら、私は」
シキ:「モノの言葉より、自分の気持ちを信じられる」
シキ:「相手が本当のことしか言わないんだったら、きっと私は触れもしない」
シキ:「それは、怖くはないけど」
シキ:「その代わり、とても寂しいことだから」
シキ:「ね、モノ」
モノ:「なあに、シキ」
モノ:唇にかかった唾液の糸を、短い舌で拭って
モノ:上目遣いにシキを見つめる
シキ:押さえつけられたまま、首を伸ばしてモノの耳元に近づける。
シキ:「一つだけ、私の本当を教えてあげる」
シキ:「誰にも言ったことないけど、私がいつも思ってること」
シキ:「私の祈りを、モノに聞いてほしい」
モノ:「聞かせてよ、シキ」
モノ:「聞いて、あげるね」
シキ:「ありがと」モノに体を預けて
シキ:「私を……」
シキ:「"私を一人にしないで"」
シキ:《影絵芝居》
シキ:繋ぎあった二人の手に、糸のように伸びた影が絡まって
シキ:しっかりと固定する。モノの力でも引きちぎれないほどに
モノ:「……シキ」
シキ:「叶えてくれる?」
モノ:「くく、ふふ」
モノ:「いいよ、シキ」
モノ:「モノとシキは、ずっと一緒」
モノ:シキの腰に腕を回して、抱き寄せて、
モノ:力をこめる、また痛みとともに骨がきしむ
シキ:「ふ……っ、う……」
モノ:肉と肉が密着する
シキ:自然と息が漏れる。しかしその表情は穏やかなまま
モノ:お互いの吐息と、血の流れの一拍ずつさえも感じ合う
モノ:「毒が全身に回って、腐り落ちても」
モノ:「離れられない……離さない」
モノ:「たくさん怖がってね……シキ」
シキ:「いいね。とっても素敵」
シキ:「けど私は、死にも腐りもしない」
モノ:「お姉ちゃんだから?」
シキ:「違うよ」不敵に笑う
シキ:今度は自分から、モノの唇を奪い
シキ:そのまま舌を胸元へと這わせて
モノ:「ぁ……」
シキ:モノのジャケットのジッパーを口で摘んで、器用に下ろす。
シキ:彼女の薄い胸元に頭を預けて
シキ:「モノのことが好きだから」
シキ:「好きな人と一緒なら、意地でも幸せにならなきゃ嘘でしょ」
モノ:「幸せに、なれるのかな」
モノ:「黒い魚は、どこかに行ける?」
シキ:「行けるよ。どこだって行ける」
シキ:「だって黒い魚は、ひとりじゃないんだもん」
シキ:「私はそう信じてる」
モノ:「そんなの嘘」
モノ:「嘘だけど」
モノ:「モノも、信じる」
モノ:抱きしめる、今度は柔らかく
モノ:ただ腕の中にいるひとに、愛情を込めて
モノ:「連れて行ってね、シキ」
シキ:「うん。任せて」その腕の中で目を閉じる
シキ:「約束、だからね」
ヒカリ:「や~、二人してわざわざ悪いね~」
ヒカリ:ベッドの上にごろごろと寝転んでいる。
ヒカリ:「あたしは別にこのままでもいいんだけどな~」
ヒサギ:「人手が必要そうですからね。いつもお世話になってるお返しです」
ヒサギ:「後で、虫が湧いたとかなっても知りませんよ……?」
ヒカリ:「うぇ、それはヤダ~」
ヒイラギ:「だいたい、物が多すぎないか……どれだけ溜め込んでるんだお前」
ヒサギ:「じゃあやってきましょう。まずはいらないものを捨てるのが大事です」大きいゴミ袋を何枚か広げる。
ヒカリ:「あぁ~、それは使い掛けなのに~」
ヒサギ:「使います?」
ヒカリ:「そっちもまだ中身入ってるよぉ」
ヒイラギ:「使い切ってから開けろ!」
ヒサギ:「後で抜いてそれはそれで纏めます」
ヒカリ:「計算され尽くした配置なのに……」
ヒカリ:ろくに動かず、文句ばかり言っている。
ヒサギ:「実際あとでガサガサあさったりしてませんでした……?」
ヒカリ:「記憶にございませんなぁ……」
ヒサギ:てきぱきと完全に捨てるもの、中身を抜くもの等で分けていく。
ヒサギ:「まあいいんですけど…あまりしたくはないですが燃料として使えなくはないものもあるっちゃありますし…」
ヒサギ:ざざーっと空間を作っていく。
ヒカリ:「うわ~、あたしの部屋が~~」
ヒカリ:「どんどん綺麗になっていく……」
ヒイラギ:「……お前、この散らかった部屋にヒサギを呼んだのか」呆れながら捨てそうなものを独断で選り分けていく
ヒカリ:「ヒイラギだって片付け出来なそうな顔してるのに!」
ヒイラギ:「……ボクの部屋にこんなに物はない」
ヒサギ:「そのおかげで掃除とかはまあ楽ですよね」ざっと空間を作り、それから箒塵取りで掃いていく。
ヒイラギ:「というか、お前も動け。部屋の主だろうが」マットレスをポンと叩く
ヒカリ:「あー、あたしの部屋……」
ヒカリ:「こんなに広かったとは……」
ヒサギ:「いや本当二か月でここまで出来るの、なかなかですね…?」
ヒカリ:「えへへ……」
ヒイラギ:「褒めてないぞ」
ヒサギ:まずごみを取り、棚などの収納に仕舞うものを仕舞い、その中も改めて。
ヒカリ:ごろごろと寝転がりながら「ヒサギはすごいね~」
ヒサギ:「色々やってた人の記憶がありますからねえ…」
ヒカリ:「ヒサギと結婚できたら幸せだろうなぁ」
ヒサギ:「相手がいませんてば」そう苦笑しつつ、用途別にさっさと分けていく。
ヒサギ:収納のしまい方自体も整理していく。
ヒカリ:「え~?分かんないじゃんか」
ヒカリ:「外に出たら相手なんていっぱいいるし……」
ヒイラギ:「……引く手数多だろうな」なぜか自分が得意気
ヒカリ:「もしくは、ほら。あたしでもいいじゃん」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:手が止まる
ヒサギ:「まあそうかもしれませんけど……ん?」
ヒサギ:「世話させようとしてません?いや、頼まれればやる程度には思ってはいますけど」
ヒカリ:「そんなことないよぉ」
ヒカリ:「奥さんが家政婦替わりとか、前時代的だし~。エンジョーするよ、エンジョー」
ヒイラギ:「……あくまで部屋の掃除を手伝いに来ただけだぞ」
ヒイラギ:「手伝いだ。わかるか。主体は本来お前だぞヒカリ」
ヒカリ:「ヒイラギにはいま言ってないじゃんか~」
ヒイラギ:「ヒサギが気を遣って言わない分だ」
ヒカリ:「ちぇ。ヒサギの前ではお姉ちゃんぶるんだからな~」
ヒサギ:「ヒイラギ姉さんはそうやって頑張るとこが良いと思うのですけど」
ヒサギ:てきぱき。雑巾掛けもしていく。
ヒサギ:「まあわたしは構いませんけど、そう気軽に決めるようなものでもないと思いますよ」さらっと。
ヒサギ:「ヒカリさんだって、また素敵な出会いとかあるかもですしね」
ヒイラギ:纏めようとしていたゴミを取り落し、慌てて拾い直す
ヒカリ:「えー、構わないって!」後半は無視して「やった~。相思相愛じゃん」
ヒイラギ:「ま、待て、構わないだって」動揺で後半が聞こえていない
ヒサギ:「……?」
ヒサギ:「なんでまた二人とも……もし、本気でわたしを選ぶような好意とかをお持ちなら、ということですよ」
ヒサギ:「社会にも出てないどころか、こうした地下の中なんですし。前提の前提にだって達してないじゃないですか」
ヒイラギ:「……」
ヒカリ:「そうだよー。ヒイラギは関係なくない~?」
ヒイラギ:「関係……なくはないだろ……ないが……」
ヒイラギ:「ないか……?」動揺している
ヒサギ:「………??」
ヒカリ:「あ、もしかして」
ヒカリ:ヒイラギの方へ寝返りをうって
ヒカリ:「嫉妬しちゃった?ごめんね」
ヒイラギ:「……」咳払いをひとつ
ヒカリ:「あーでも、この場合どっちに?」
ヒイラギ:「ゲホッ」
ヒカリ:「ヒサギに?それともあたしに?」
ヒサギ:「また変な話を……」
ヒサギ:収納やクロゼットに大体の物を収め、綺麗にすっきりさせつつ。
ヒイラギ:「……ヒカリ、お前も掃除に参加しろ。ベッドの下とかもあるだろ」
ヒカリ:「あ~、逃げた~~」
ヒカリ:けらけらと笑って指を差す。
ヒイラギ:「お前だって掃除から逃げてるだろ!」話をあからさまにそらしている
ヒカリ:「ヒイラギはかわいいねー」
ヒサギ:「姉さんは素敵な人ですからねえ」全体の箒掛けを始めている。
ヒイラギ:「ぐ……」
ヒサギ:「ベッドの布団も入れ替えた方がいいかな……?」
ヒカリ:「あー、そうしよっかー」
ヒカリ:一瞬ヒサギに視線を送る。
ヒサギ:「はーい……、?」こてんと首を傾げる。
ヒサギ:反応が以前より随分早いような。
ヒカリ:「使ったばっかりだしねー」
ヒカリ:言って、布団を抱え上げる。
ヒサギ:「いっつも寝転がってますもんね」
ヒサギ:まずはフレームをざっと箒掛けし、雑巾で拭く。
ヒイラギ:「……?」二人の様子を怪訝な顔で見ながら片付けを続ける
ヒサギ:「乾燥機のとこ出しますか。一度外に出しましょう」
ヒカリ:「そうだねー」
ヒサギ:「わたしが持っていきますので」率先して持っていこうとする。
ヒカリ:「いやぁ、悪いね~」
ヒサギ:「よいしょっ、と。いえ、さっきも色々してくれましたし」くすりと柔らかく笑って。
ヒイラギ:「……」ずれたメガネを直す
ヒカリ:ドアを開いてヒサギを見送り、部屋にヒイラギと二人残される。
ヒカリ:「ヒサギはいいお嫁さんになるね~」
ヒカリ:うんうん頷いている。
ヒイラギ:「……なあヒカリ」
ヒカリ:「んー?」
ヒイラギ:「この間の事は、ヒサギには言ってないよな」
ヒカリ:「……ん~?」
ヒカリ:とぼけた顔で首を傾げる。
ヒカリ:「この間のことって?」
ヒイラギ:「っ、白々しいな」頭をかく
ヒイラギ:「倉庫での……だな……」
ヒカリ:「……あ~!」さも今気付いたかのようにわざとらしく。
ヒカリ:「え~?まさかぁ」
ヒカリ:「言うわけないじゃん、そんなのー!」
ヒカリ:面白そうにけらけら笑う。
ヒイラギ:「……だよな」
ヒカリ:「どうしてそんなこと聞くのさ?」
ヒカリ:「……あ、またシたくなっちゃった?」
ヒイラギ:「い、いや……そうじゃなくて」
ヒイラギ:ドアのほうをちらっと見る
ヒカリ:「んー?」目を細める。
ヒイラギ:「……間違っていたら謝るから、正直に答えてほしいんだが」
ヒイラギ:「シたのか?ヒサギと」小声で
ヒカリ:「……」
ヒカリ:ヒイラギの顔をじっと見て、ひどく楽しそうに。
ヒカリ:「……えぇ?」
ヒカリ:「……そう見える?」
ヒイラギ:「…………いや、ああ、その」
ヒカリ:戸惑うヒイラギを見つめて、くすりと笑んで。
ヒカリ:ぱし、と手首を掴んで、壁際へと押し付けるようにキスをする。
ヒイラギ:「っ!」
ヒカリ:「……ん……」
ヒカリ:「んー……ふふ……」
ヒカリ:舌を突き入れて、有無を言わさず貪るように。
ヒイラギ:「……っ、ん」
ヒイラギ:視線はヒカリとドアの間を泳ぐように往復する
ヒカリ:舌を絡ませ、無理やり引きずりだすようにして、甘噛みして。
ヒカリ:顎をぐい、と掴んで、無理やり視線を向かせる。
ヒイラギ:前とは違って、はっきりと見える。瞳の色も、前髪も
ヒカリ:「……ぷぁ…… ……く、ふふ」
ヒカリ:ゆっくりと唇を離す。顔はまだ吐息の掛かる距離のまま。
ヒカリ:「……怖い?」
ヒイラギ:「……は、急に……何を」唾液に濡れた唇を動かす
ヒイラギ:「怖い?……何が」
ヒカリ:「今、気にしてたでしょ」
ヒカリ:「ヒサギのこと」
ヒイラギ:「……」目の前のヒカリから目を逸らせない
ヒイラギ:「それ、は」
ヒカリ:「どうする?」
ヒカリ:ちろりと赤い舌が、濡れた唇を舐める。
ヒカリ:「怖いなら、やめておく?」
ヒイラギ:「……」心音がやけにうるさく聞こえる
ヒイラギ:「……」こちらからゆっくりと顔を近づけようとする
ヒカリ:「ふ……」
ヒカリ:それを見て、笑みを深めて。迎えるように唇を重ねる。
ヒサギ:「今戻りました~~」
ヒサギ:どこか呑気な声が、開いていた扉から。
ヒイラギ:「っ」ヒカリから、弱々しい力で離れようとする
ヒサギ:「二人とも、どんな感、じ、で………わあ」
ヒカリ:離れようとするヒイラギの後頭部に手を回し、逃さぬようにキスをする。
ヒカリ:「……ん……」
ヒイラギ:されるがままに、受け入れる
ヒサギ:「………ええと、」困ったような。「無理やりではない……感じかな…?」
ヒカリ:そのまま十秒近くもキスをして、それから顔を離し、ヒサギを振り返る。
ヒカリ:「やー、ごめんね。お疲れー」
ヒカリ:「新しい布団、あった?」
ヒサギ:「ええはい。この流れで自然と声掛けられるのにわたしびっくりしてますが」
ヒサギ:「ありましたし、持ってきましたよ。だからちょっと遅れたんです、が」
ヒイラギ:「……」脱力して壁に寄りかかっている
ヒサギ:「………ええと、お邪魔ならわたしは帰りますけれど」
ヒカリ:「ええ?何で邪魔なのさ」
ヒサギ:「こういう時、二人で雰囲気に浸りたいという事例が多いらしいので…?」
ヒサギ:持ち込んできた布団をベッドにセットしている。
ヒカリ:「あたしはそんなに気にしないよ?」
ヒカリ:「それに、ヒイラギもヒサギが気になってたみたいだし」
ヒサギ:「いやまあいつ戻ってきてもおかしくなかったですからね……」
ヒサギ:ちょっとぐったりしてる感じのヒイラギ姉さんのそばに寄って。
ヒサギ:「大丈夫、姉さん?」
ヒイラギ:「大丈夫、別に、無理矢理とかじゃない……心配はいらない……」ヒサギの目を見られない
ヒカリ:「いやいや、その前からだよ?」
ヒサギ:「ん。それは良かった……あ、その前……?」
ヒカリ:「あたしとヒサギが、したのかって」
ヒサギ:「…………う、うーん。いやまあゴシップは好奇心をくすぐるものだもんな…」
ヒイラギ:「……悪かった、ヒサギ」
ヒサギ:「……?なんで姉さんが謝るんです?」
ヒイラギ:「いや……」
ヒカリ:「そういう方面の興味かなぁ……」渦中の中心にいながら、他人事じみた顔。
ヒサギ:「心配してくれた……と思ってたのですが。違いましたか…?」
ヒサギ:きょとんとしたような表情。君が自分を傷つけようとはしないのだという、無垢な信頼がそこにある。
ヒカリ:「うーん……ていうか」
ヒカリ:新しい布団に腰を下ろす。
ヒカリ:「ヒサギはヒサギで、怒ったりしなくていいの?」
ヒサギ:「……え。だって、姉さんは姉さんで、したいようにしていいって思います。しばりつけようなんて思ってないですよ」
ヒサギ:「…………あれ。いつも、したいようにしていいよ、って言ってたのに……」
ヒカリ:「あたしには?」
ヒサギ:「姉さんに色々強制したりしました?」
ヒカリ:「いや?」かぶりを振る。
ヒサギ:「姉さんはしてない、って言いましたし、ヒカリさんもそういうことはしてない。なら、わたしが口を挟んでいいことじゃないと思う……のですけど」
ヒカリ:「でも一応、したじゃん。ヒサギと」
ヒサギ:「はい」
ヒサギ:「……あ、なるほど」
ヒサギ:「そういえばそういう倫理もありますね……?」
ヒカリ:「……あー、要するに気にしてないと」
ヒカリ:「じゃあいいんだ。全然オッケー」
ヒイラギ:「いいのだろうか……」頭を抱えながら
ヒサギ:「なんというか、”そういう”対象になったことがなくて……」
ヒサギ:「実感が追い付いてないのかも」
ヒカリ:「んー……でもどうしよっか、これ」
ヒカリ:頭を抱えるヒイラギを見て
ヒサギ:「ヒイラギ姉さん、大丈夫……?」
ヒカリ:「……」
ヒカリ:「……皆でする?」
ヒイラギ:「……」
ヒサギ:「はええ」素で変な声が出た。
ヒイラギ:「ボクはその」
ヒイラギ:「ヒサギがいいなら……構わないが……」
ヒサギ:「まあ、わたしは出来ますけど……」
ヒカリ:「え、じゃあ問題ないじゃん」
ヒカリ:「それが一番手っ取り早くない?悩むより」
ヒイラギ:「……そうかもしれない」
ヒイラギ:「わからないんだよ、こういうの……」
ヒサギ:「はあ……まあ、そうすれば和らぐなら、どうぞ」幼いとさえ見える表情で。
ヒイラギ:「お前の方が詳しいんだろう、ヒカリ……」
ヒカリ:「そう言われると人聞き悪いけど……まあ、そうだね」
ヒカリ:「じゃ、しよっか」
ヒサギ:「ん。……じゃあ、力を抜いてくださいね…?」
ヒカリ:「布団も丁度新しくしたしねー」
ヒカリ:ヒイラギの目の前で、ヒサギと唇を重ねる。
ヒサギ:「ん、」そっと受け入れる。そうしながら、腰元に手を這わせ。
ヒイラギ:「……」その光景から目をそらせない
ヒサギ:「姉さんも、どうぞ?」少し紅潮した、どこか蕩けたような声。
ヒカリ:「ん……ふふ、そうだよ」
ヒカリ:「おいで、ヒイラギ」
ヒイラギ:ふらふらと、惹かれるように二人の元へ
GM:ミドル前半が終了しました。
GM:獲得ブーケ数の中間経過を発表します。
GM:現在獲得数1位はヒカリさんで226個、次点がモノさんの219個になっています。
モノ:ぐえーー!
モノ:ギリ負けか…!
シキ:ヒカリめ……
モノ:こいつやっぱ潰さないとだめだよ
ヒイラギ:カウンセリング力の賜物
ヒサギ:お二人ともすごい。
GM:ミドルシーン後半が終了した時点で最もブーケを獲得していたプレイヤーがエクストラシーンの権利を獲得できるので、各位頑張ってください。
GM:そして、次のシーンに移る前に全員2回分の購入判定が行えます。
ヒサギ:おお、ありがとうございます。
シキ:やった~
ヒカリ:1DX+1>=8 応急手当キット
DoubleCross : (1DX10+1>=8) → 6[6]+1 → 7 → 失敗
モノ:アームドスーツ!
ヒカリ:財産1で購入
ヒサギ:あれならトランク買いましょうか。
ヒカリ:4>3
ヒカリ:1DX+1>=8 応急手当キット
DoubleCross : (1DX10+1>=8) → 6[6]+1 → 7 → 失敗
モノ:1dx
DoubleCross : (1DX10) → 9[9] → 9
ヒカリ:財産1で購入
モノ:もいっちょ
モノ:1dx
DoubleCross : (1DX10) → 8[8] → 8
ヒカリ:買って買って買って~~~~
モノ:以上だ
ヒカリ:3>2
ヒサギ:財産+5されてますけど、それでも足りないです?>モノちゃん
シキ:応急買うよ~
モノ:あ、みんな+5されるの?
GM:全員されてます
モノ:全員でじゃなくて
モノ:やべーな
シキ:すごいぜ
ヒイラギ:おいしい~
シキ:1dx+1>=8
DoubleCross : (1DX10+1>=8) → 3[3]+1 → 4 → 失敗
モノ:じゃあいける!9に自前の財産1と追加財産5で購入!装備!
ヒイラギ:応急かっとこハム太郎
ヒサギ:つよい。まずは”Lătīnŭs”≪オリジン:サイバー≫。社会達成値+10する。
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を2(→ 2)増加 (53 → 55)
ヒイラギ:1dx+4>=8
DoubleCross : (1DX10+4>=8) → 8[8]+4 → 12 → 成功
ヒサギ:医療トランクに挑戦。
モノ:完全武装フルアーマーモノ太郎の誕生だ
シキ:他に買うものもないし財産4使って買おう
ヒサギ:3dx+10>=20
DoubleCross : (3DX10+10>=20) → 4[1,4,4]+10 → 14 → 失敗
シキ:残り財産1
ヒサギ:数字がひど過ぎないですか?財産が4+5で9あるので、6使用して購入。残が3.
ヒイラギ:もう一個はせっかくだから照準器とか狙っちゃお
ヒサギ:後欲しいものとかある人いますかな。
ヒイラギ:1dx+4>=15
DoubleCross : (1DX10+4>=15) → 1[1]+4 → 0 (ファンブル) → 失敗
GM:ヤバ
ヒイラギ:爆発した
シキ:強化素材買っちゃお
ヒサギ:シキさんがスティンガー使えなくなっちゃってるから、強化素材かアームド買っておくべきかしら。
ヒサギ:ね、ねえさん
ヒイラギ:ボクは弱い……
シキ:1dx+1>=15
DoubleCross : (1DX10+1>=15) → 6[6]+1 → 7 → 失敗
シキ:だめだった
ヒサギ:アームドか強化素材どっちがいいです?
シキ:強化素材ほしいな~
ヒサギ:了解。強化素材に。
ヒサギ:3dx+10>=15
DoubleCross : (3DX10+10>=15) → 9[7,7,9]+10 → 19 → 成功
シキ:すごーい!
ヒイラギ:えらいぞ
ヒサギ:さっき子の出目欲しかったな~~!シキさんに渡します。
シキ:ヒサギありがとう!
ヒサギ:いえいえ。以上です。
シキ:強化素材と水晶の剣でキーンナイフの攻撃力が12になりました
ヒイラギ:強いーンナイフ
モノ:bouryoku
シキ:以上!
【Middle1】
GM:ミドルシーン 全員登場を推奨します。
モノ:1d10+46
DoubleCross : (1D10+46) → 9[9]+46 → 55
ヒイラギ:ヒイラギの侵蝕率を1d10(→ 4)増加 (45 → 49)
シキ:シキの侵蝕率を1D10(→ 5)増加 (42 → 47)
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を1d10(→ 6)増加 (55 → 61)
GM:ヒカリの侵蝕率を1D10(→ 7)増加 (50 → 57)
GM:幾度となく行われた脱出路の調査によって、隔壁を迂回してシェルターの外に出る経路が発見された。
GM:通気用のダクトを通り、施設内の通路まで抜けるルート。君達は慎重に行軍し、何とかその行き当たりまで辿り着いた。
GM:まだ地上までは遠い地点だが、シェルターの外には違いない。今のところ、周囲に動くものの気配は無い。
ヒカリ:「……生体反応は無いね」
ヒカリ:小型のドローンを呼び戻し、操作しつつ口にする。
ヒサギ:「ありがとうございます。……今のところ安全、でしょうか」周囲を見渡しつつ。
ヒカリ:「うん……安全、だとは思うけど……」
シキ:「んじゃ、ちょっと降りてみる?」
ヒサギ:「できればある程度のバリケードを張ったり、使えるものとかがあれば持っていきたい所ですが…」
ヒカリ:「そうだね。見てみるしかないか……」
シキ:ダクトのフィルターに足をかけ、蹴飛ばす構え
ヒイラギ:「……」
モノ:「モノが、するよ」
ヒサギ:「いやいやいや静かに外しましょうよ!」小声で焦りつつ。
モノ:ぬっと顔を出す
ヒサギ:「ってうわっ」
ヒカリ:「普通に出てこられないわけ~?」
ヒイラギ:「心臓に悪いんだよ……」
シキ:「モノは恥ずかしがり屋さんだからな~」
ヒサギ:「び、びっくりした……間違えて攻撃しかねないですから、できれば普通にしてくださいね…」
モノ:「えへへ、へ」
GM:フィルターが破られる。やはり周囲に気配は無い。
モノ:ぼこん!
モノ:下に降りる
モノ:「だ、だ、だいじょぶ、そう」
ヒカリ:「……気を付けて」
ヒカリ:「あれだけジャームがいたのに、全然反応が無いってのは……ちょっと引っ掛かる」
ヒサギ:「……もう…!いや、先行役を買って出てくれるのは助かりますけど…!」
ヒイラギ:「別のところにたまたま偏ってるのか、あるいは」
シキ:「たしかにねー。みんな隔壁の方に行ってくれてるならそれでいいんだけど」
ヒサギ:「………そんなに偏りますか?あんなにランダムだったのに…」
ヒカリ:「ジャームの考えることなんて、分かるわけないけど……」
シキ:「とにかく、モノをあのままにもしてられない。警戒を厳にしつつも周囲を探索ってことで」
GM:通路に降りてみても、他に動くものはないが──
GM:少し進むと、幾つもその残骸が見つかる。
GM:……死体だ。
ヒイラギ:「……」眉をひそめる
モノ:「こ、こんにちは」
モノ:ひょい、と拾い上げて
モノ:二人羽織のように背負う
モノ:「え、へへ、こんにちは」
ヒサギ:「……生体反応はないですよ?」続けて降りつつ、無針注射器を構えながら周囲を警戒。
ヒイラギ:「モノ、死体で遊ぶんじゃない」
モノ:そのまま四人へ手を振る。
GM:最初の混乱で死んだと思しき、腐敗の進んだ死体たち。そして、もう少し新しいように見える、ジャームの死体。
GM:それがそこかしこに、無数に転がっている。
シキ:「モノ、ゆっくり寝かしたげて」
ヒカリ:「……死んでる……?」ジャームの死骸に眉を顰める。
モノ:「はぁい」
シキ:腐乱して顔も識別できなくなった死体に近寄る。
モノ:死体をぽいと転がす。
ヒサギ:「…少し新しいですね。死亡した時間が大分違う気がします」
GM:死骸は切り裂かれたようなものや、黒焦げになったようなものが多い。
ヒイラギ:「……ジャーム同士で殺し合いが起きたのか?」
ヒサギ:「それにしては、パターンが類似して…」
ヒカリ:「こっちにとっては都合がいいけど……」
シキ:「どうだろうね……可能性はあると思うけど……あった」
シキ:幾つかの遺体から、かろうじて残っていた識別用のタグを剥ぎ取る。
ヒサギ:「複数同士の食い合いなら、もっと傷の種類が増えるはずですから…、」簡単にメモ帳へ地図や状況を書きつける。
シキ:「せめてこれくらいは連れてってあげなきゃね」
ヒイラギ:「こいつらを狩れる程のジャームが居る……って事か?」険しい表情で
モノ:「寂しく、ないように、ね」
ヒサギ:「……後でまとめておきますか」少し嘆息。
ヒカリ:「まあ……ここで考えてても仕方なくない?」
モノ:にこりとシキに微笑む
ヒカリ:「とりあえずモニタールームに行きたいな。少しは状況が把握できるはず……」
シキ:「そういうこと」ぽんぽんとモノの頭をたたく
ヒカリ:そこで、言葉が途切れる。
ヒカリ:「……」
ヒイラギ:「そうだな……、ヒカリ?」
ヒサギ:「ですね。…脱出口とかも載ってる詳細なマップが…、ヒカリさん?」
シキ:「どったの?」
ヒカリ:無言のまま、通路の先を凝視する。
ヒカリ:「……ドローンが死んだ」
ヒカリ:「何か来る」
ヒイラギ:「……!」
シキ:「……ま、やっぱ一筋縄じゃいかないか」
GM:周囲の死骸が、かたかたと一斉に震え出す。
モノ:「わぁ」
シキ:「みんな、訓練通り、落ち着いて対応しよう」腰からナイフを抜き放って通路の先を見る。
ヒサギ:じゃき、と腰のホルスターから無針注射器を抜く。周辺警戒態勢で待つ。
GM:やがて、内側から凄まじい勢いで炎が噴き出す。
ヒイラギ:ホルスターから銃を抜く。
モノ:だらりとした前傾姿勢になり、周囲を観察する。
GM:死骸が松明のように燃え上がり、更に空中にいくつも火の玉が灯り、辺りを照らし出す。
GM:鋼鉄の壁や天井が、高温に晒され見る間に歪み、ひしゃげていく。
シキ:「この炎……」顔を顰める。
ヒサギ:「………これは」見覚えがある気がする。この高熱。
モノ:「き、きれい」
???:ひた ひた ひた
???:煌々と照らし出された通路の先から、静かな足音が響いてくる。
???:乱れた髪。落ち窪んだ瞳。飢えた獣を思わせるその表情に、理性の灯は感じられない。
シキ:「……ったく」
シキ:「次あったらぶん殴るっては言ったけどさ……」
シキ:「もうそれどころじゃ済まないじゃん。勘弁してよ……」
シキ:「サアヤ」
サアヤ:「……」
サアヤ:君達を目にして、犬歯を剥き出しに獰猛な笑みを浮かべる。
モノ:「いひっ、えへへ」
モノ:「えへへへへへへっ、へっ」
モノ:パシパシと、手のひらを叩いて笑う
モノ:「ねえ、あれをどうするの、シキ」
モノ:「シキが言わないと」
モノ:「さあ」
サアヤ:ゆらゆらと身体を揺らしながら、周囲に凄まじいレネゲイドの奔流が解き放たれる。
シキ:「……どうって、言ったでしょ。訓練通りに」
モノ:「訓練通りに?」
シキ:「ヒサギ、安定剤散布お願い。ただ暴走してるだけなら、多少は効果があるはず。その隙を突いて拘束」
シキ:「効果がない場合は」
シキ:「当該実験体"ナイトライダー"をジャームと断定」
シキ:「排除する。みんなOK?」
ヒカリ:「……そう簡単にいけばいいけど……」
ヒイラギ:「……ああ。やるしかないんだろ」
モノ:「いひひ、わか、った!」
ヒカリ:珍しく余裕の無い表情で。
ヒカリ:「ヤバいよ、アレ」
ヒサギ:「”キルケ”、了解」無針注射器へ込めて置いた赤ーー彼女が有する影であり媒介物を安定剤へ切り替える。
サアヤ:「……ぎひっ」
モノ:「殺すね」
サアヤ:「ギッ、ギッ、ギッ、ギッ」
サアヤ:笑い声とも、喉を鳴らしているだけともつかない、不吉な声を漏らし、ぎりぎりと歯を噛み合わせる。
サアヤ:「くひ……ひひひひひっ……」
サアヤ:歪んだ笑みを満面に湛えるその姿は、最早君達の知っている少女ではない。
サアヤ:“盤外個体”計画、数多の実験体の中で最強とされた個体。
“ナイトライダー”:コードネームは────“ナイトライダー”。
GM:戦闘を開始します。
エンゲージ []内は行動値
ヒイラギ[13]ヒサギ[7]シキ[6]ヒカリ[6]モノ[0]
(10m)
“ナイトライダー”[14]
GM:セットアップから!
ヒサギ:なしです。
“ナイトライダー”:≪氷の茨≫ 自身エンゲージから離れた対象はHP3D10ロスト
シキ:『RED CROWN』《原初の黄:氷の茨》自身エンゲージから離れた対象はHP5D10ロスト
シキ:シキの侵蝕率を3増加 (47 → 50)
ヒイラギ:コーリングシステム使用。ストライクモービルに搭乗
モノ:こいつ!!
モノ:なし!
ヒカリ:なし。
GM:ではイニシアチブ14、“ナイトライダー”の手番です
“ナイトライダー”:マイナー ≪ブラッドコントロール≫ メジャーダイス+5個
“ナイトライダー”:≪コンセントレイト:ブラム=ストーカー≫+≪紅の刃≫+≪魔王の覇気≫+≪斥力の槌≫+≪虚空の陥穽≫+≪蝕む赤≫+≪ブラッドボム≫+≪鮮血の修羅≫+≪血の宴≫です
“ナイトライダー”:命中でランク5邪毒付与 自身エンゲージへ引き寄せ 対象が次に行う攻撃の攻撃力-10
“ナイトライダー”:ダメージで10m移動 更にHP3D10ロスト クリンナップ時HP30ロスト
“ナイトライダー”:対象はPC全員。
“ナイトライダー”:13DX7+8
DoubleCross : (13DX7+8) → 10[1,2,2,5,5,5,6,6,6,7,7,7,10]+10[2,6,7,8]+10[4,10]+6[6]+8 → 44
GM:リアクションどうぞ
ヒサギ:なんですかその何度であろうが殺すっていうコンボは!?怖すぎる ドッジします……
シキ:ドッジ!
モノ:回避!!
ヒイラギ:ドッジ!
ヒサギ:1dx+1>=44
DoubleCross : (1DX10+1>=44) → 9[9]+1 → 10 → 失敗
モノ:10dx-1
DoubleCross : (10DX10-1) → 10[1,2,2,2,4,5,6,8,10,10]+4[3,4]-1 → 13
モノ:ぐえー
シキ:判定ダイス2個増えてるの忘れないようにね
ヒサギ:忘れてました…二個振り足します…
ヒカリ:ガード、≪マグネットフォース≫でシキをカバーします
シキ:6dx+1>=44
DoubleCross : (6DX10+1>=44) → 10[1,1,7,9,10,10]+6[4,6]+1 → 17 → 失敗
ヒサギ:2dx+1+3
DoubleCross : (2DX10+4) → 8[4,8]+4 → 12
GM:ヒカリの侵蝕率を2増加 (57 → 59)
モノ:2dx-1
DoubleCross : (2DX10-1) → 3[2,3]-1 → 2
モノ:散々!
シキ:サンキューヒカリ
ヒイラギ:3dx+4
DoubleCross : (3DX10+4) → 9[7,9,9]+4 → 13
ヒイラギ:で《マグネットフォース》、ヒサギをカバー
ヒイラギ:ヒイラギの侵蝕率を2増加 (49 → 51)
ヒサギ:ありがとう、姉さん……!
“ナイトライダー”:まず命中したヒイラギ、モノ、ヒカリはランク5邪毒付与 自身エンゲージへ引き寄せ 次に行う攻撃の攻撃力-10
“ナイトライダー”:ダメージ算出
“ナイトライダー”:5D10+10
DoubleCross : (5D10+10) → 25[7,4,4,3,7]+10 → 35
“ナイトライダー”:ダメージが通った場合10m移動 更にHP3D10ロスト クリンナップ時HP30ロスト
モノ:装甲で10弾いて25
ヒイラギ:装甲で21弾いて14点を2倍の28点 ……ギリ死
ヒサギ:ね、姉さーん!!
ヒイラギ:ヒイラギの侵蝕率を1d10(→ 10)増加 (51 → 61)
ヒイラギ:ヒイラギのHPを10に変更 (27 → 10)
GM:ヒカリのHPを97に変更 (132 → 97)
ヒカリ:いたい~~
モノ:かった
ヒサギ:hpメチャ覆い
シキ:肉の壁じゃん
ヒイラギ:カチカチの女
“ナイトライダー”:ブラッドボムのダメージ
“ナイトライダー”:3D10
DoubleCross : (3D10) → 17[6,7,4] → 17
モノ:こんのやろう!
モノ:リザレ!
モノ:55+1d10
DoubleCross : (55+1D10) → 55+5[5] → 60
ヒイラギ:死じゃ
モノ:ダイスボーナスげっつ!
GM:ヒカリのHPを80に変更 (97 → 80)
ヒイラギ:ヒイラギの侵蝕率を1d10(→ 1)増加 (61 → 62)
ヒイラギ:ヒイラギのHPを1に変更 (10 → 1)
ヒイラギ:あっ、茨ダメージまだだった
“ナイトライダー”:3人はそれぞれ10m右 左 後ろに移動させます
エンゲージ []内は行動値
ヒサギ[7]シキ[6]
(10m)
ヒイラギ[13] (10m) “ナイトライダー”[14] (10m) ヒカリ[6]
(10m)
モノ[0]
“ナイトライダー”:三人には氷の茨のダメージが発生
“ナイトライダー”:3D10
DoubleCross : (3D10) → 18[9,4,5] → 18
ヒイラギ:どのみち死ぬのでもう一回リザ
ヒイラギ:ヒイラギの侵蝕率を1d10(→ 8)増加 (62 → 70)
ヒイラギ:ヒイラギのHPを8に変更 (1 → 8)
GM:ヒカリのHPを62に変更 (80 → 62)
モノ:りざれー
モノ:1d10+60
DoubleCross : (1D10+60) → 3[3]+60 → 63
“ナイトライダー”:三人分の反動ダメージを受け、まだ健在です。
“ナイトライダー”:“ナイトライダー”の全身から、無数の血の鞭が伸びる。
“ナイトライダー”:血液は空気に触れると同時に燃え上がり、君達を拘束し、篝火めいて燃え盛る火柱に叩き込む。
モノ:「ああっ、が、ぐっ!!」
ヒサギ:「、っ…!」安定剤の散布を開始しようとしていた。当然避け切れるようなものではない。(自分の痛覚制御ーー)
“ナイトライダー”:その炎は体内に浸透し、身を焼き尽くすまで消えずに燃え盛り続ける。
ヒイラギ:ヒサギを引き、入れ替わるようにして攻撃を受ける。
ヒサギ:「姉さん……っ!」唇を一瞬噛む。
“ナイトライダー”:「ぎ、ヒヒッ!ヒィッ……ヒヒヒッ!!ヒィハハハハハッ!!」
シキ:「みんな……!くっ……」自らはその炎に包まれていない。何故なら
シキ:「ちょっとヒカリ!!無事!?」
ヒカリ:「……ッ……」
ヒカリ:シキの前に盾となって立ちはだかり、全身を炎に焼き焦がされる。
シキ:身代わりに絡め取られた姉妹へ叫ぶ
ヒカリ:盾として用いたドローンが、次々に溶解し墜落していく。
シキ:「なんで……!」
ヒイラギ:「っ……あ、ぐ」咄嗟に展開した装備越しに、臓腑が燃やされる。唇から血が垂れ、焦げたような匂いが立ち込める。
ヒカリ:「っ、あ、あ……!」シキに答えを返すことはない。ただ背を向けたまま、苦悶の声を漏らす。
シキ:「……っ」姉妹達の悲鳴に顔を顰めた後
モノ:「いい、よ」
モノ:「サアヤのしたいこと、してくれて」
モノ:「えへ、へ」
シキ:「サアヤ……!」ナイトライダーを睨みつける。
モノ:炎の中、もがきながら”ナイトライダー”を見据える。
GM:イニチアチブ13 ヒイラギさんの手番です
ヒイラギ:マイナーで10m移動、接敵します
ヒイラギ:メジャー、《コンセントレイト:モルフェウス》《ペネトレイト》
ヒイラギ:対象は”ナイトライダー”
GM:判定どうぞ!
ヒイラギ:8dx7+4
DoubleCross : (8DX7+4) → 10[1,2,3,4,5,6,9,10]+6[1,6]+4 → 20
“ナイトライダー”:ガード。
ヒイラギ:ダメージ
GM:ダメージどうぞ -10されているのをお忘れなく
ヒイラギ:3d10+10-10
DoubleCross : (3D10+10-10) → 20[10,4,6]+10-10 → 20
ヒイラギ:装甲無視!
“ナイトライダー”:まだまだ元気です
ヒイラギ:くっ
ヒイラギ:「……っぐ、う」肉体が焼け焦げる。全身が苛まれる。ただ、支援装甲を纏っていれば、戦闘行動は続行できる。
ヒイラギ:どんな雑兵でも、装備することで戦闘力が飛躍的に上がる”デバイス・デルタ”。
ヒイラギ:「……ああっ!」叫ぶ。走り出す。”ナイトライダー”へ向けて。銃を向けながら接近する。
“ナイトライダー”:避けようともしない。ただ首を傾げてそれを見ている。
ヒイラギ:視界に脆弱な部分が表示される。そこを狙って撃つだけ。ヒイラギの権限ではそこまでの機能しかアンロックされていない。
ヒイラギ:走りながら、何発も引き金を引く。
ヒイラギ:「……言ったろ、お前」
ヒイラギ:「『私の頑張り、無駄にしないで』って」
“ナイトライダー”:弾丸は狙いを過たず急所を撃ち抜く。だが噴き出した血は一瞬で燃え上がり、傷口は即座に塞がっていく。
“ナイトライダー”:「……ヒュー……ヒヒッ……」
ヒイラギ:「……クソッ」
“ナイトライダー”:その言葉も、届いているのかどうか。白濁した目を細める。
ヒイラギ:ヒイラギの侵蝕率を4増加 (70 → 74)
GM:イニシアチブ7、ヒサギさんの手番です。
ヒサギ:はい。マイナー、”Lătīnŭs”≪オリジン:サイバー≫。社会達成値+10。
ヒサギ:メジャー。”Telegonus”≪絶対の恐怖≫。サアヤさん対象に、カリギュラを使用。
GM:判定どうぞ!
ヒサギ:6dx+22+3
DoubleCross : (6DX10+25) → 9[1,4,5,6,8,9]+25 → 34
ヒサギ:よし、いい出目
“ナイトライダー”:ガード。
GM:ダメージどうぞ
ヒサギ:ダメージ。
ヒサギ:4d10+35 装甲無視。
DoubleCross : (4D10+35) → 22[8,3,6,5]+35 → 57
ヒサギ:57点装甲無視ダメージです。
“ナイトライダー”:まだ健在です
ヒサギ:むぐぐ
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を2(→ 2)増加 (61 → 63)
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を5(→ 5)増加 (63 → 68)
ヒサギ:姉の様子を、そしてそれを受けての彼女を見た。
ヒサギ:考えるな。まずは、為すべきを為せ。
ヒサギ:「ーー安定剤の散布を開始」ぶわ、と赤が周囲に広がっていく。”Ulysseus”≪超越的能力≫≪竹馬の友≫。
ヒサギ:同意するなら、認識を操作し戦闘状態を解除するだろう赤い粒子が舞い散る。
ヒサギ:止まってほしいと思う。今は暴走状態で、理性を取り戻して、そうしてーー
“ナイトライダー”:「……」
“ナイトライダー”:まるで、反応しない。
“ナイトライダー”:火勢は衰えず、鮮血の刃が周囲を次々に切り裂いていく。
ヒサギ:(そして、そんなことがあるものか)歯をかみしめる。分かっていたはずだろう。夢想に何を預ける?
“ナイトライダー”:そも、今の彼女に敵味方の区別が、認識そのものがあるのかも怪しい。
ヒサギ:「……効果の無効を確認。第二行動に移ります」
シキ:「……」暫し瞑目、直ぐに意を決して
シキ:「うん、お願い」
ヒサギ:そして、それでも行うのは。
ヒサギ:「はい」儀式のようなものだ。受け入れるために、そうやって作られてきたプロトコル。
ヒサギ:それをなぞる。滑稽でも、することに意味はある。
ヒサギ:装填。媒体の濃度を跳ね上げる。致死に至りかねない量。
ヒサギ:「”生きる間は輝きてあれ”ーー」安定剤、活動停止用の薬剤として使用する際の制御コードを呟く。趣味人が造ったそれ。
ヒサギ:彼女の開発コード、”キルケ”に合わせた洒落かなにかか、ギリシア語の。
ヒサギ:赤い赤い粒子が広がる。広がる。己を覆う。媒体へ通じて送り込むために。
ヒサギ:「”思い悩むな。かくも短き生をみよ”ーー」それは、記憶の集積である。
ヒサギ:「”時間、かのクロノスが振るう鎌の切れ味に、いったいなんぴとが抗い得よう”」
ヒサギ:そして、それを編纂し、改竄し、創作さえするための。
ヒサギ:記憶情報、鎮圧用コード案プロセス:034215を実行。
ヒサギ:能力を制御し、秩序だって運用するならば。
ヒサギ:そこに制御するためのプログラムがある。
ヒサギ:それと、人間が持つ記憶は、同列のものだ。ーーなら、彼女はそれを操ることができる。
ヒサギ:”ナイトライダー”の血の刃が己を貫き、弾け飛ぶ。
ヒサギ:…追加制御のためのアドオンはないため、それ以上のことは起きない。
“ナイトライダー”:「……!?」
ヒサギ:「……、対象健在。追撃を」冷えた感情のない声。事実だけを伝えるように。
“ナイトライダー”:予想外の挙動に戸惑ったような反応。ふらふらとよろめき、火の粉と血を撒き散らす。
GM:行動値6 シキさん、ヒカリさんの手番です
ヒカリ:では私から
ヒカリ:マイナーで戦闘移動、接敵
ヒカリ:使っちゃうか……
ヒカリ:メジャーでコンボ【黒絶】
ヒカリ:≪コンセントレイト:ブラックドッグ≫+≪アームズリンク≫+≪雷鳴の申し子≫
ヒカリ:対象はナイトライダー
ヒカリ:6DX8+6
DoubleCross : (6DX8+6) → 10[2,2,4,5,6,8]+10[9]+10[9]+4[4]+6 → 40
ヒカリ:こんな回る?
シキ:やるじゃん
“ナイトライダー”:ガード。
GM:ダメージどうぞ
ヒカリ:ダメージ!
ヒカリ:5D10-5+132-59-10
DoubleCross : (5D10-5+132-59-10) → 34[5,8,7,10,4]-5+132-59-10 → 92
シキ:すごーい!
ヒサギ:つよい!
“ナイトライダー”:ぐぇ~~~~
“ナイトライダー”:まだ生存
GM:ヒカリの侵蝕率を9増加 (59 → 68)
ヒカリ:HP0になり、リザレクト
ヒカリ:68+1D10
DoubleCross : (68+1D10) → 68+3[3] → 71
ヒカリ:「んー……」
ヒカリ:高熱で揺らめく陽炎の中、サアヤ──“ナイトライダー”の姿を見据える。
ヒカリ:「シキ、ヤバいよ、あれ」
シキ:「ヤバいのは見りゃわかるけど……そういうことじゃなくて?」
ヒカリ:頷く「あたしの考えが正しければ、アレはただのジャームじゃない」
シキ:「ただのジャームじゃない……って、どゆこと?」
ヒカリ:「まァ……ここでゆっくり話してる暇はないね。言えるのは……」
ヒカリ:「ここで何とかしないと、あたし達全員死ぬってこと」
ヒカリ:砕け、溶け落ちた無数のドローン。その残骸から微細な赤色の電流が走り、床を伝ってヒカリの脚を這い上がり、収束していく。
ヒカリ:「ちょっと頑張ってみようか」
ヒカリ:ざり、と爪先が床を擦る。半身に構え、深い前傾姿勢。
ヒカリ:ドローン群からヒカリへと集まった膨大な電流が、狂乱するように弾ける。
ヒカリ:紅の雷光が束の間、炎よりも眩く辺りを照らし出し──
ヒカリ:
ヒカリ: ば
ヒカリ: ヅ
ヒカリ: ん
ヒカリ: !!
ヒカリ:
ヒカリ:巨大で硬質なものが無理やり引き千切られたかのような、異常な轟音。
ヒカリ:瞬きの間よりも迅く。
ヒカリ:ヒカリの周囲、床も壁も天井も、まるで巨人の掌に握り潰されたかのようにグシャグシャに歪みひしゃげ、
ヒカリ:既に、"ナイトライダー"の身体は吹き飛ばされている。
“ナイトライダー”:「────!?」
“ナイトライダー”:床をバウンドして転がり、血の鞭を突き立てて勢いを殺す。
ヒカリ:「……ふー……」
ヒカリ:バチバチと音を立てて荒れ狂う赤色の電流が消えていき、息を吐く。
ヒカリ:「ギアが足りなかったな。殺し切れてない……」
ヒカリ:独り言ちるように呟いて、ぶすぶすと白煙を上げるブーツを脱ぎ捨てる。
ヒカリ:つい先程まで綺麗に保たれていたはずのそれは、見る影もなく焼け焦げ、分解していた。
GM:同じく行動値6、シキさんの手番です。
シキ:はい!
シキ:マイナーで戦闘移動。ナイトライダーへ接敵。ウェポンケースからキーンナイフを装備。
シキ:メジャーコンボ『PURPLE SCEPTER』《原初の赤:吹き飛ばし》《コンセントレイト:ウロボロス》
シキ:ナイトライダーへ攻撃。ダメージが通った場合、モノの方向へ4m移動させます。
GM:判定どうぞ!
シキ:8dx7+9
DoubleCross : (8DX7+9) → 10[2,2,5,6,7,9,9,10]+10[2,6,10,10]+10[8,9]+10[1,7]+10[9]+1[1]+9 → 60
シキ:すごいぜ
“ナイトライダー”:ガード。
GM:ダメージどうぞ!
シキ:出します。強化兵の効果でダメージダイス+2
シキ:7d10+12+2d10 装甲-5
DoubleCross : (7D10+12+2D10) → 47[9,9,4,8,2,8,7]+12+8[4,4] → 67
“ナイトライダー”:超瀕死です
シキ:ダメージが入った瞬間
シキ:コンボ『WHITE ORB』《巨人の影》
シキ:《原初の黄:氷の茨》のLVを+2。現在LV7にします。
シキ:シキの侵蝕率を3増加 (50 → 53)
GM:うわっそういうことかよ
GM:やめろ~~~~っ
シキ:ナイトライダーを4m移動させます。エンゲージから離れた瞬間7d10のHPを失ってもらいます。
シキ:7d10
DoubleCross : (7D10) → 34[1,6,3,10,4,4,6] → 34
“ナイトライダー”:HP0
シキ:シキの侵蝕率を6増加 (53 → 59)
“ナイトライダー”:≪???≫を使用して復活します
シキ:何ぃ~~~!?
ヒサギ:えっエフェクト!?分からないの怖すぎるんですけど……!
ヒイラギ:こわっ
GM:戦闘を終了します。
シキ:「……っ、ヒカリ……アンタねえ」耳鳴りが残る中、ふらつく頭を振って
シキ:「全員死ぬのはそりゃ論外だけど、だからって無茶しすぎでしょ」
シキ:「みんなで生き残るってお姉ちゃん言ったよね」
ヒカリ:「別に?そんなことないよ」
ヒカリ:裸足になった足を振って。
ヒカリ:「やれることやってるだけじゃん」
シキ:「もー、ああ言えばこう言う。……いいよ、今は」
シキ:「私も、私のやるべきことをする」
ヒカリ:「……ん、そうだね」目を細める。
ヒカリ:「シキは、それが出来る奴だよ」
シキ:ナイフを手に、回復しきっていない"ナイトライダー"へと歩みを進める。
ヒイラギ:装備を解除しないまま壁にもたれかかって見ている。
“ナイトライダー”:「……フー、ッ……」
“ナイトライダー”:息を吐き、獣のような唸り声を上げる。
シキ:一歩一歩、足をすすめる度に、シキの足元の影が沸騰するように蠢き
シキ:少しずつ周囲を侵食していく。はじめ糸のように細かった影は寄り集まって無数の茨となり
シキ:"ナイトライダー"の炎を貪り、それを養分とするかのように成長していく。
シキ:「サアヤ。アンタは確かに最強の実験体だったけど」
シキ:「実験体である限り、私には勝てないよ」
シキ:前触れもなく駆け出す。同時に、影の茨が"ナイトライダー"を絡め取り動きを止める。
“ナイトライダー”:「……!?」
“ナイトライダー”:「……アァアアアッ……!!」
“ナイトライダー”:炎と血の刃を振るい、拘束を解こうとする、が──。
シキ:「遅いっての」一瞬で懐に入り、手に持った小さなナイフを"ナイトライダー"の胸に突き立てる。
シキ:致命傷とはなりえないささやかな疵、しかし
シキ:ぐじゅ……
シキ:突き立てた刃が黒く染まる。
シキ:影の茨が、傷口から"ナイトライダー"の体内へと侵入し、血管を通じて全身へと張り巡らされ
シキ:更に成長した漆黒の棘が、"ナイトライダー"を内側から串刺しにする。
“ナイトライダー”:「ぎ、ぁ……」
“ナイトライダー”:全身から噴き出した血が一瞬で燃え上がり、己の身体を焼き焦がしていく。
シキ:「騎士の首を落とすのも」
シキ:脱力した"ナイトライダー"の体を蹴り飛ばす。
シキ:怪物の体が弾き出されると同時に、それをズタズタに引き裂きながら影の茨が引きずり出され
シキ:その茨に包まれた宝物を、女王の手に運んでくる。
シキ:かつて、"ナイトライダー"no
シキ:かつて、"ナイトライダー"の心臓だったもの
シキ:燃え盛りながら未だ鼓動を続けるそれを握る手に力を込め
シキ:「女王の役目だよ」
シキ:一息に砕き潰す。
“ナイトライダー”:「……」
“ナイトライダー”:全身を引き裂かれ、完全に炭化し、床に転がって動かなくなる。
シキ:「……」空虚な目でしばらくそれを眺めて
シキ:「状況終了。各自損害を……」
ヒカリ:「……一応、全員無事……」
ヒカリ:「……だよね?」周囲を見回す。
ヒイラギ:「……なんとかな」
ヒサギ:「…はい、わたしは被害なしで、」再装填の手を一度緩めて。
モノ:「おわり?」
シキ:「……うん、終わったよ」
シキ:「さて、どうするかねここから。全部サアヤが片付けてくれてたってんなら話は速いんだけど」
ヒカリ:「そうだね……ドローンもあらかた使い切っちゃったし、一度仕切り直して……」
ヒカリ:“ナイトライダー”の死体を一瞥し
ヒカリ:「……」
ヒカリ:「……待って」
ヒサギ:「……?どうしました」
シキ:「……あー、その前に後片付けか。このままにしとくのはかわいそうすぎ……」同じ方向を見ようとして
“ナイトライダー”:完全に黒く炭化していたはずの死体が、白い肌に再生しつつある。
シキ:「……る……?」
ヒイラギ:「……」
“ナイトライダー”:ずたずたに引き裂かれた傷跡が見る間に塞がっていき、その指先がぴくり、と動く。
モノ:「……」
モノ:「おわり?」
モノ:もう一度、シキの方を見る
“ナイトライダー”:頭を振って、ゆらりと立ち上がる。
“ナイトライダー”:「……」
シキ:「……普通はね。核を潰したの見たでしょ」
ヒサギ:「ジャーム特有の再生能力……?」入れ替えたシリンダーを収め、構えなおす。
モノ:「じゃあ」
モノ:「ふつう、じゃない、ね」
“ナイトライダー”:「……あれ……」
“ナイトライダー”:目を瞬く。
“ナイトライダー”:「……みんな……?」
ヒサギ:「………………え。サアヤ、さん……意識が?」
ヒサギ:先程の安定剤散布時の感覚では、そうしたものは感じなかった。
ヒイラギ:「どういう、ことだ……?」
“ナイトライダー”:「……?どしたの、そんな顔して」
“ナイトライダー”:君達を見回す。
モノ:「シキ、どうする?」
モノ:「も、もう1回、殺す、の?」
シキ:「……待って」
ヒカリ:「……」
“ナイトライダー”:「あれ、ていうかここ、どこ……?何でこんなとこいるんだっけ?」
“ナイトライダー”:「てか昨日どこで寝たっけ……?ヤバ、思い出せないんだけど……」
ヒサギ:「……記憶の混濁…一応、ジャーム化しても一部のみにとどまる”ファイトクラブ”症例はありますが…」
シキ:「サアヤ、私達のことわかる?」
“ナイトライダー”:「え、シキでしょ?」
“ナイトライダー”:「ヒイラギとヒサギ、モノ、ヒカリ」
モノ:「モノだよぉ」
モノ:手を振る
“ナイトライダー”:「そりゃ分かるっしょ。いくら何でもそこまで寝ぼけてないって!」
モノ:「ね、寝ぼけてるより」
モノ:「もっと、よくない、かも」
モノ:「ねえ、シキ?」
モノ:ニコニコとシキを振り向く
シキ:「どうだろ」小さくため息を付いて
シキ:「夢なら良かったんだけどね」
ヒサギ:「……説明などが必要なら、わたしからしても……一番損耗が少ないのはわたしでしたし」
ヒサギ:その時に再暴走などがあるなら、という含みを持たせて。
“ナイトライダー”:「あー、お願いできる?いや、マジで私何して……」
“ナイトライダー”:「げ」
“ナイトライダー”:「えぇえええッ!」
“ナイトライダー”:突然表情を歪め、吐瀉物をぶちまける。
シキ:「サアヤ!?」
“ナイトライダー”:「あ」
“ナイトライダー”:「ぁ」
ヒサギ:「サアヤさん……!?」腰元で握っていた無針注射器を握りしめる。
“ナイトライダー”:「あ?」
“ナイトライダー”:「な、な……何」
“ナイトライダー”:「シキ?ヒサギ?」
“ナイトライダー”:「わ、私?私……何?何して……」
“ナイトライダー”:「……だ、誰……?」
“ナイトライダー”:怯えた顔で頭を抱え、君達を見て後ずさりする。
シキ:「サアヤ、落ち着いて!無理に考えなくていいから!」
ヒサギ:「落ち着いてください。暴走状態にあったようなものですから……」
ヒイラギ:「一体どうなってる……!」
“ナイトライダー”:「誰、誰よあんた達……」
シキ:彼女に駆け寄って肩を抱く。
ヒサギ:「……?シキさん、あまり近づかないで……、」
“ナイトライダー”:「誰なのよ!ここ……私……何、何……!?」
シキ:「でも……」
モノ:「……」
モノ:「サアヤはジャームになったんだよ」
モノ:「たくさん、仲間を殺した」
モノ:「焼いて殺したよ」
“ナイトライダー”:サアヤがかぶりを振り、周囲に火柱が上がる。
ヒサギ:「………モノさん!断定は……!」
ヒカリ:「いや……」
ヒカリ:「残念だけど、モノが正しいよ」
ヒサギ:「、っ……」火の粉に
ヒサギ:顔をかばって、苦虫を嚙み潰したような顔に。
モノ:「ねえサアヤ」
モノ:「サアヤはどうしてここにいたの?」
モノ:「外に出たいって言ってたのに」
モノ:「シキと、みんなを、ま、待ってたの」
モノ:「……寂しかった、の?」
“ナイトライダー”:「違う……私……」
“ナイトライダー”:「殺す……殺した?誰を……誰に……」
“ナイトライダー”:「うぁあああぁあっ?ああ……?あぁああああ……!?」
???:「……おやおや……」
???:「ひどい有様じゃないか」
GM:サアヤの悲鳴を縫って、声が響く。
モノ:「?」
モノ:「だぁれ?」
シキ:「……」声の方向へと振り向く
ヒサギ:「錯乱状態、もう安定剤、を………」赤い粒子を打ち込もうとして。
GM:ゆっくりとこちらに歩いてくる人影。
ヒイラギ:息を入れ、銃を握り直す。
シキ:「止まりなさい」震える声を張り上げる。
シキ:「この施設に今更外から誰か侵入するなんてあり得ない」
シキ:「実験体か研究員。どちらでもいい。所属と名前を……」
GM:荒れ果てた通路を、滑るような、重力を感じさせない足取りで。長い白衣を纏ったその姿は、さながら亡霊のように見える。
GM:だがその姿、その声に、君達は覚えがある。
GM:特に誰より──シキには。
シキ:「──────ぁ……」
???:「何だい」
???:「少し合わない間に、もう忘れられてしまったのかな?」
主任:「シキ」
主任:人影が──男が柔らかな微笑を浮かべる。
シキ:「う……そ……」
シキ:男を警戒しながらもサアヤを支えていた手が、だらりと脱力する。
主任:それは“チェッカード”における“盤外個体”計画を主導していた研究員。
主任:草薙圭吾。実験体と研究員たちから『主任』と呼ばれていた男だ。
ヒカリ:「……」無言のまま、苦虫を嚙み潰したような顔。
モノ:「ああ」
モノ:「本の部屋の、ひと?」
ヒイラギ:「……」眉をひそめたまま主任とシキを見ている。
ヒサギ:「草薙主任……!?とにかく、一度サアヤさんを鎮静して……」状況はもうよく分からないが…いや、分かりたくないかもしれないが、やるべきことを。
主任:「“ナイトライダー”。ああ……残念だな」
主任:震えるサアヤのもとに屈み込んで、肩に手を置く。
主任:「まだ調整が必要かな……。やっぱり、パーツが足りないか」
主任:「いや……むしろ、取り除くべきかな……」
主任:君達をよそに、一人でぶつぶつと呟く。
ヒサギ:「か、ら………何を」
シキ:「………」男の顔を見て、しばらくの間放心していたが
シキ:ヒュン
シキ:その言葉を聞いて、即座にナイフを男に突きつける。
シキ:「圭吾。説明して」
主任:「うわっ」殆ど表情を変えずに、口だけで驚いたように。
主任:「どうしたんだい、シキ」
主任:「今日は機嫌が悪いじゃないか」
シキ:「ごまかさないで。私がどういう女か、そっちも忘れたの?」
シキ:「説明しなさい。順番に、全部」
シキ:「なんで貴方が生きてるのか。なんでサアヤをこんな風にしたのか」
主任:肩を竦める「必要があるかな」
シキ:「あるに決まってるでしょ!!」声を荒げる。
シキ:「場合によっては……いえ、現状ほぼ間違いなく」
シキ:「貴方は私達の敵になるってことなんだよ」
主任:まるで恋人のヒステリーに呆れでもしたかのように息を吐く。
モノ:「敵、なら」
モノ:「いいよね」
ヒイラギ:「まだ、待て。モノ」
モノ:主任に向けて飛びかかる
モノ:頭部に向けて枯れ枝のような腕を振るう。
ヒイラギ:「モノ!」制止しようにも届かない
主任:「おっと」
主任:見せざる障壁に阻まれたかのように、攻撃が防がれる。
モノ:ば ぎ ん!!
モノ:ばぎん!ばぎん!!
モノ:へし折れた腕を、そのまま構わず数度叩きつけて
シキ:「……モノ」
シキ:「モノ!!」
モノ:「……ちッ」
モノ:「やめるよぉ」
モノ:主任を睨みつけたまま腕を降ろす
主任:「……可哀想に。まるで狂犬だ」
主任:悲しげにかぶりを振り「自主性を持たせ過ぎるのも考え物だな」
主任:「さて……シキ」向き直り
主任:「どうして僕が生きていて、サアヤがこうなっているか、だったね」
主任:「逆だよ」
シキ:「……逆?」険しい表情で睨み返す
主任:「君達が生き延びているほうが、予想と計画の外なんだ」
シキ:「………」
シキ:「………は?」
ヒカリ:舌打ちをする。
シキ:「き、聞き間違いかな……それって」
シキ:「私達は殺すはずだった。って聞こえるんだけど」振るえる声で問い返す。
主任:「それで合ってるよ。よく分かってるじゃないか」
主任:「聞き間違いじゃない」
シキ:「……っ」
ヒカリ:「……やっぱりね」
ヒカリ:「『最初から』、あの計画はどこかおかしかった」
ヒカリ:「計画全体を統括するあんたが、気付かないはずはないと思ってたけど……」
ヒカリ:「そもそも、歪ませてたのはあんただったんだ、主任」
主任:「へえ。盤外の更に盤外からなら、物事が俯瞰して見えるのかな」
ヒイラギ:奥歯を噛みしめる
モノ:「そ、それが」
モノ:「モノたちの、本当の、こと」
モノ:「あなた、が、考えた、の?」
主任:「君達の『本当』?」
モノ:「そう」
モノ:「も、モノは」
モノ:「私たちって、何?」
主任:「捨て駒だよ」
モノ:「捨て、駒」
主任:「ただ一つの『本物』────」
主任:蹲る少女を抱き起こす。
主任:「“ナイトライダー”の為のね」
モノ:「サア、ヤ、が」
モノ:「本物」
シキ:「………っあああ!!!!」ガ ゴ ン !!!!
シキ:""捨て駒"という言葉と同じくして、先程のモノのように主任へと殴りかかる。
シキ:しかしその拳は、当然のように不可視の障壁に阻まれる。
主任:「おいおい……」
主任:呆れ顔で。
ヒサギ:「、シキさん……!」肉体上はひどく脆弱だ。間に合わない。
モノ:「……」
主任:「この程度で取り乱すなよ、シキ」
主任:「そんな風に育てた覚えはないな」
シキ:「お……まえ!もう一度言ってみろ!!!!」
モノ:今度は真横で、ただその姿を見ている。
シキ:「この程度!?これ以上の侮辱がある!?」
シキ:「最初からって……ホントに最初から嘘だったのかよ!!」
主任:「人聞きが悪いことを言わないでくれよ」
シキ:「いつか海を見せてくれるって言ったじゃん……!」
シキ:「"みんな"でここを出た時のことを考えとけって」
シキ:「お姉ちゃんの君が助けてやれって言ったじゃん!!」
主任:「ははははっ!」
主任:「海、海ね」
主任:「人気なんだよな、海の話って。実験体だとか、チルドレンにさ」
主任:「UGNでもそうらしいよ?どこでも情緒の不確かな子供の考えなんて、そう変わらないもんだよな」
主任:「そう大したもんじゃないぜ、実際見るとさ」
シキ:「そん、な……」空中に叩きつけた拳から、血の跡を引きずりながら
シキ:その場に膝から崩れ落ちる。
ヒサギ:「そこまでにして頂けますか」思い切り顰めた表情で無針注射器を突きつける。
ヒサギ:「あなたの下劣な本性や性格はどうでもよいですが、シキさんを貶める言葉は聞くに堪えません」
主任:「貶める?そんなつもりは無いよ」
主任:「むしろ、感謝してほしいくらいだね」
主任:「本当の最初、僕が主任研究員になった頃にはね」
主任:「“盤外個体”計画の末は、もっと単純だった」
主任:「データ採集の終わった実験体は、全て終了処分の予定だったんだよ?」
ヒサギ:「殺処分かそれともバラバラにでもしてホルマリン漬けにでもしてた、と。そうしなかったから感謝しろと?」
主任:「ああ。機密の塊である君達が、普通の人間のように外に出られるだなんて……そんなことを本当に信じてたのかい?」
主任:「少なくとも、“スカーレッド・スパロウ”は知ってたはずだけどね」
ヒカリ:「…………」
シキ:「ヒカリ……?」泣きそうな顔で彼女を見上げる。
ヒイラギ:「ヒカリが……?」
ヒカリ:僅かに唇を噛んで、俯く。
ヒサギ:「まあ、後で聞かせてもらいたいですが、何より」
ヒサギ:「手ひどく扱って、まだ殺さないだけマシだという言って、ひとが不快にならないなんて、そんな想像力程度はあるでしょう」
モノ:「えへ、へ」
モノ:「嘘つき」
主任:「ただ無為に終わるだけだったはずの君達の死を、僕が意味あるものに変えてあげるんだ」
主任:「感謝されこそすれど、怒られる筋合いはないと思うけどなあ」
ヒサギ:「………バカバカしい」吐き捨てる。
ヒサギ:「死はただの死です。それに意味?」
ヒサギ:「勝手にラベルを張って、張ったことに感謝しろ、なんてよく言えたものですね」
主任:「やれやれ……カリキュラムで宗教でも学ばせておくべきだったかな?」
主任:「……ともあれ、“ナイトライダー”はまだ調整が必要だ」
主任:「君達を片付けるのは、また今度にしよう」
主任:主任の背後の空間が歪み、≪ディメンジョンゲート≫が開く。
シキ:「待ち、なさい……待て!!」
ヒサギ:強く強く睨みつけたまま見送る。今の状態で戦っても、無理な状態なことくらいは分かる。
主任:「それまではくれぐれも、妙なことをして勝手に死んだりしないでくれよ?」
主任:「それじゃあ、また会おう」
主任:そうして、サアヤと共に姿を消した。
GM:≪瞬間退場≫です。
シキ:「圭吾!!!!」かける言葉が見つからず、ただ様々な感情と共にその名を背に投げつけた。
ヒサギ:見送ってから、腰のホルスターに無針注射器を収める。
シキ:「圭……吾……」俯き、言葉を繰り返す。
モノ:「……」
モノ:てとてと、シキの傍にしゃがみ込む
モノ:「ねえシキ」
モノ:「まだ、見てるよ」
モノ:ただ、震える背中を見下ろしている。
シキ:「………」顔を上げず、ただその言葉を聞く
ヒカリ:「……行こう」
ヒカリ:「とりあえず……シェルターに戻らないと」
ヒサギ:「ええ、物資とかでも集められればと思いましたが……難しそうですしね」
ヒカリ:ひどく冷静にも思える態度と言葉。
ヒイラギ:「……聞かなきゃいけないことも、山程あるからな」
ヒイラギ:「だろ、ヒカリ」
ヒイラギ:感情を押し殺したような声色で。
ヒカリ:「……そうだね」
ヒカリ:眉根を寄せ、ほんの僅かに苦笑を浮かべた。
GM:シーン終了。
GM:
GM:ここからミドル後半に入っていきます。
GM:前半と同じように、1D100のダイスロールで手番の順番を決めていきます。
GM:ということで判定をどうぞ。
モノ:1d100
DoubleCross : (1D100) → 48
モノ:うぐ
ヒイラギ:1d100
DoubleCross : (1D100) → 17
シキ:1d100
DoubleCross : (1D100) → 94
ヒサギ:1d100
DoubleCross : (1D100) → 48
ヒサギ:同値ww
ヒカリ:1D100
DoubleCross : (1D100) → 8
ヒカリ:嘘??
ヒイラギ:ヒカリーッ!!
ヒサギ:急に平均下がってきたな!?
GM:同値のお二人はGM・チョイスで決めます
ヒサギ:あっ了解です
モノ:ええで
GM:choise[モノ,ヒサギ]
GM:スペルミス
GM:choice[モノ,ヒサギ]
DoubleCross : (CHOICE[モノ,ヒサギ]) → モノ
モノ:しゃ!
GM:モノさんが先ですね
GM:ではまずシキさんから
GM:何番目の手番を選びますか?
シキ:3番!
GM:安牌を選んできたな
シキ:王道こそが証明だぞ
GM:ではモノさんどうぞ
モノ:1
モノ:逆にそれ以外あるのか?
ヒサギ:突っ込んできたなあ……!
ヒイラギ:アクセル
GM:やる気だな……
GM:ではヒサギさんどうぞ
ヒサギ:んんんん
ヒサギ:ここは……2番貰います。
GM:ではヒイラギさん どうしますか?
ヒイラギ:4番
ヒイラギ:いただきます
GM:では後半戦の手番は以下のようになりました。
GM:
1:モノ
2:ヒサギ
3:シキ
4:ヒイラギ
5:ヒカリ
【Middle latter half/モノ】
GM:ミドル後半 1手番目 シーンPCはモノさんです
GM:誰を指名しますか?
モノ:当然シキおねえちゃんとのタイマンを指定します
モノ:シチュとしてはこう
GM:ではメインシーンはモノさん シキさん サブシーンはヒイラギさん ヒサギさん ヒカリさんになります
GM:メインの二人は登場侵蝕をお願いします
モノ:1d10+63
DoubleCross : (1D10+63) → 3[3]+63 → 66
シキ:シキの侵蝕率を1D10(→ 8)増加 (59 → 67)
GM:---
GM:リミット 23:13
GM:---
モノ:「……」
モノ:シェルターの隅で塞ぎ込むシキを
モノ:半日近く、ただじっと見つめている。
モノ:声もかけず、音も立てず、ただ、じっとそこにいる。
シキ:「……」その視線に気づいているのか否か
シキ:分厚い壁に背を預け、膝を抱えている。
シキ:シェルターに戻ってからずっと、顔を上げないままだ。
モノ:「ねえ、シキ」
シキ:「………」
モノ:ぽつりと、言葉を発する。
モノ:「あ、あの時は、違うって、シキ、言ったよね」
シキ:「……」反応しない。
モノ:「も、モノが、目を取ったとき」
モノ:「い、今も、違う?」
モノ:「ち、ち、ち」
シキ:「………」顔を上げず、暗闇の中で濁った目だけをモノの方へ向ける
モノ:「違わない」
モノ:「ねえ、シキ」
モノ:「傷は、残るんだよ」
モノ:「本当に、大事なものが、壊れたら」
モノ:「え、へへ」
モノ:「治ったり、しない」
シキ:「………」
モノ:「シキにも、穴が空いた」
モノ:す、と身を乗り出す
モノ:「モノと、おなじ」
モノ:「ヒカリと、おなじ」
モノ:頬に骨ばった指先を当てる
シキ:「………の」掠れた声を絞り出す。
モノ:「シキ」
シキ:「モノ……の」
シキ:「大事なものって、なに……?」
モノ:「本当の、こと」
モノ:指先が、頬をなぞる
モノ:瞳の傍をなぞる
モノ:敵意ではなく、今度は、しずかないたわりをもって
モノ:「シキの、本当のこと」
モノ:「お姉ちゃんは、もう、おしまい」
モノ:「シキ、もう、いいよ」
モノ:「シキはお姉ちゃんじゃない」
モノ:「ど、ど、どんな風に、なっても」
モノ:ぴったりと身を寄せる
モノ:「モノは、見てる、から」
モノ:「もう、いいよ、シキ」
モノ:「みんな」
モノ:「やめちゃおう」
シキ:「……」モノに預けられた体重を、そのまま受け止めて
モノ:耳元で囁く、透き通った少女の声で、誘うように。
シキ:彼女の小さな肩を両手で抱く。
シキ:「………」
モノ:「えへ、へ」
シキ:「………っ」
モノ:「シキが好きだよ」
モノ:「お姉ちゃんじゃなくていい」
モノ:「モノは、シキが、好き」
シキ:「………ふ……ぅうっ!!」
シキ:突然、抑えきれなくなったかのように
シキ:バタンッ!!
シキ:肩を掴んだまま、物を押し倒す。
モノ:「いひっ」
モノ:なされるがまま、床に抑えつけられる。
モノ:微かにも、押し返そうとさえしない
モノ:ただ卑屈な笑みで、肩を震わせて
モノ:怯えるように、期待するように、シキを見つめる。
モノ:「いい、よ」
モノ:「ここ、から、だと」
モノ:「よく、見えるから」
モノ:「シキの、孔」
モノ:「きれいだよ」
モノ:「本物だ」
シキ:「……うる、さい」
シキ:「モノに……アンタになにがわかるんだよ……」
モノ:「え、へへ」
モノ:「わかんない」
モノ:「お、おしえて」
モノ:「くれる、の?」
モノ:媚びるように唇を歪める
シキ:声が震える。あの男と会ってから頑なにこらえ続けた涙が、その唇に数滴落ちる。
シキ:「私は、お姉ちゃんだから」
シキ:「みんなの面倒を見てあげて、助けてあげて」
シキ:「守ってあげて……」
モノ:「嘘、嘘、嘘ばっかり」
モノ:「最初から」
モノ:「渡されたときから、もう、にせもので」
モノ:「シキ、もういいんだよ」
シキ:「……やだ……」
シキ:「やだやだやだ……!」
モノ:「大丈夫」
モノ:「怖くないよ」
シキ:「嘘でも作り物でも、私がちゃんとしたらみんな見てくれたもん」
モノ:子供をあやすように、背中に手を回して
モノ:とんとん、とんとん
シキ:「みんな頼ってくれた、煙たがってくれた」
モノ:手のひらで静かにリズムを繰り返す
モノ:「モノは、そんなのいらない」
モノ:「そんなの、なくても」
モノ:「ずっと、見てるよ」
シキ:「……圭吾も」
モノ:「怖くない、怖くない」
シキ:その腕の中で背を丸める。
シキ:「主任も、そう言ってくれた」
モノ:「モノのこと、怖い?」
シキ:「君のこと見てるよって、いつも頑張ってる君の姿を見せてくれって」
モノ:「じゃあ」
モノ:「壊していいよ、シキ」
モノ:「さ、さっきのひとが、させてくれなかったこと」
モノ:「さっきのひとに、出来なかったこと」
モノ:「シキがするの」
モノ:「モノに孔をあけて、たくさん孔をあけて」
モノ:「そ、それで、こわしちゃうの」
モノ:「ずっと、モノが」
モノ:「シキのモノで、い、いられるように」
モノ:「ぜんぶ、モノのぜぇんぶ」
モノ:「シキが、ダメにして」
シキ:「……そんなの、困るよ」
モノ:「いいよ」
シキ:「モノのことダメにしちゃっても……私」
モノ:「モノは、シキが好き」
シキ:「何も返せない……背負ってやれない」
モノ:その表情を見つめる、爛々と瞳が輝いている
シキ:「私は……」
モノ:「シキ、シキ、しき、しき」
モノ:「シキを見せて」
モノ:「シキの本当の顔、すごく、すごく」
モノ:「きれいだから」
シキ:その瞳に、そして反対側の暗闇に吸い込まれるように
シキ:ゆっくりと顔を近づけ、唇を奪う。
シキ:最初は優しく、柔らかく、やがて貪るように
モノ:「ん……ぁ……」
モノ:血液は猛毒。
モノ:僅かでも、犬歯が唇をかすめれば
モノ:それだけで全身が壊死をはじめるほどの。
モノ:しかしどれだけ唇を重ねても、決してそうはならない。
モノ:ゆびさきひとつで骨と肉を引き裂くような膂力を振るうこともない。
シキ:彼女の血のことなど初めから頭に無いかのように、乱暴に舌を絡める。
モノ:ただ非力で無害な、虐げられるために産まれてきたような、そんな生き物のように
モノ:欲望を受け入れる。
シキ:そのまま舌を這わせ、少女の首筋へと何度も吸い付き
モノ:「シキっ、シキぃ」
モノ:「これっ、ずっと、探してたのっ」
モノ:「シキのこと、ずっと」
シキ:青白い肌に幾つも痣を刻みつける。
モノ:「モノは、いひひっ」
モノ:恍惚とした表情で痛みに身を震わせる
モノ:「ずーっと」
モノ:「シキのこと、探してたんだ」
シキ:「……私は」
シキ:「モノのこと、大っ嫌い」
モノ:「えへへ」
モノ:「もっと、もっと嫌いになって」
モノ:「モノは、見てる」
モノ:「モノのこと、嫌いって言うたびに」
モノ:「くしゃくしゃになるシキのこと」
モノ:「すっごく、大好きって思うから」
シキ:「嫌い、嫌い、嫌い」モノの言葉通りに、表情を歪めて
シキ:「いじけてるだけのくせに、愛されなかっただけのくせに」
シキ:「全部わかってる気になって、本当のことを知ってる気になって」
シキ:「何も知らないくせに、私のいうこと聞かないモノなんて大嫌い」
シキ:「嫌い……」
モノ:「知らないけど、わかるよ」
モノ:「シキにも、孔が空いたから」
モノ:「嘘であけられた、孔」
シキ:「一緒にしないでよ……!」
シキ:「私にはあったんだ」
シキ:「私がお姉ちゃんでいれば、圭吾は褒めてくれた」
シキ:「ヒイラギも、ヒサギも、頼ってくれた。ヒカリだって……」
モノ:「……」
モノ:言葉を繰り返すシキの背中をなぞる。
シキ:「嬉しかった。嬉しいって気持ちが」
シキ:「確かに、ここにあったのに……」自分の胸元を強く握り
モノ:「大丈夫だよ、シキ」
モノ:「シキが、どんな風になっても」
モノ:「……なっても」
シキ:「ふ……っ……う……っ」嗚咽する。
モノ:ふと、手が止まる
モノ:「……あれ」
モノ:表情が変わる、何か遠くの過去を
シキ:「………」少女の胸に頭を預けたまま、その顔を見上げる。
モノ:思い返すように。
モノ:「ああ、そっか」
モノ:「シキ」
モノ:「モノは、わかった」
シキ:「……なにを?」
モノ:「モノは、どうなっても、好き」
モノ:「シキが、どうなっても」
モノ:「だから、ね」
モノ:「まだ、まだ終わらないよ、シキ」
モノ:おもむろにシキの体を押しのけて立ち上がる
シキ:「……なにそれ」どこか呆れたように笑う。
シキ:「ぜーんぜん嬉しくない」
モノ:「えへへ」
シキ:「嬉しくないけど」
モノ:「なんでもしてね、シキ」
シキ:モノと並ぶように立ち上がり、虚ろな右の瞼に
シキ:優しくキスをする。
シキ:「ありがと、モノ」
モノ:「シキがなんでもするとこ、見たいよ」
シキ:モノにロイスを取得します
モノ:微笑み返す。昏い闇と澄んだ瞳が、それぞれに目の前のシキを写して。
シキ:憧憬○/嫌悪/ロイス
ヒサギ:コンクリートが見える、重苦しさを覚える部屋。
ヒカリ:「……いやぁ……」
ヒサギ:隔離やある程度の懲罰などのに用いるために、といつの間にか決めたそこに、いま人影がある。
ヒカリ:拘束こそされていないが、ここに囚人がいるとすれば間違いなくヒカリだ。
ヒカリ:「物々しいね、どうも」
ヒイラギ:「事情が事情だからな」
ヒイラギ:淡々と言い放つ
ヒカリ:「あたしが悪いことしたみたいじゃんか~」
ヒサギ:「まあ、あまりよくはないのかな、とは思うんですけど…こうするのが一番まだマシかなあと思いまして」こつこつと足音がしてから、入ってくる
ヒイラギ:「お前が知っていること、とりあえず全て話してもらう」
ヒサギ:「勿論、主任が言ったことを丸ごと信じるとか、そういう事ではないですけど」
ヒカリ:「知ってることねえ……」ゆらゆら身体を揺らして。
ヒサギ:持ってきていた色々なものを置く。
ヒカリ:「ヒイラギの寝顔が可愛いこととか?」
ヒイラギ:「今は」顔を近づける
ヒイラギ:「ふざけている場合じゃない」
ヒカリ:肩を竦める。
ヒカリ:「……分かった、分かったよ」
ヒカリ:「何が聞きたいのさ?」
ヒサギ:「……まあ、言いたくないとか。言いづらい、という程度には察せるつもりです」二人の前に焼き菓子を置いて。
ヒイラギ:「……ボクら実験体の行く末を、お前だけがなぜ知っているか」
ヒイラギ:「納得はできる。処分されることは、許し難いが筋は通る」
ヒイラギ:「……なんでお前は知っていた?」
ヒカリ:「そりゃ、単純な話だよ。まずあたしは──」
ヒカリ:指先に羽虫ほどの大きさのドローンが止まる。
ヒカリ:「事情通だしね。それともう一つ」
ヒカリ:「“盤外個体”計画の実験体は、製造された時期に差があるでしょ」
ヒカリ:「シキがお姉ちゃんを気取ってるみたいにさ」
ヒイラギ:「……そうだな」促すように
ヒカリ:「あたしは結構な古参ってこと。だから計画の全容について、後に製造された子達よりよく知ってる」
ヒサギ:「…そうですね。シキさんたちと、モノさんに、それからずっと下ってわたしになるみたいに」
ヒイラギ:「……”以前”のヒサギを知っているようにか」
ヒカリ:「そうだね」
ヒサギ:「…」かりかりとペンを走らせる音が一瞬だけ止まって、すぐ動き出す。
ヒカリ:「納得した?」
ヒサギ:「"どうして”かは。あとは……」
ヒサギ:ちらりとヒイラギ姉さんに視線を。「姉さんはどうですか?」
ヒイラギ:「……どんな気持ちで黙っていた」
ヒカリ:「……それ、理由の話?あたしの感情の話?」
ヒイラギ:「両方だ。言ったろ、聞きたいことは山程あると」
ヒカリ:「……そうだねぇ……」
ヒカリ:口元に、僅かに諦観の微笑を浮かべて。
ヒカリ:「理由は……まあ、分かるでしょ?」
ヒカリ:「あたし達みんな、結局最後には殺されて、外になんて出られない……」
ヒカリ:「そんなこと明らかにしたところで、何にもならないでしょ」
ヒカリ:「残りの人生を絶望して過ごすか、反乱でも起こして施設ごと処分されるか……」
ヒカリ:「あたしは、そんなのどっちも嫌だなって思った。それだけだよ」
ヒイラギ:「……」
ヒサギ:きゅ、と唇を一文字に引き結ぶ。
ヒイラギ:「それでお前は、一人で抱えることを選んだ」
ヒカリ:「ま……そういうことになるねぇ」
ヒイラギ:「……ボクに話してくれればよかった、とは言わない。そんなことを言う資格はボクにはない」
ヒイラギ:「けど、今からどうしたいかは話せるはずだ」
ヒカリ:「……今から?」顔を上げる。
ヒイラギ:「……ボクは外に出たい」
ヒイラギ:「バカバカしいかもしれないがな。それでもまだ、出たい」
ヒイラギ:「……ヒサギに外を見せてやりたい」
ヒサギ:「……わたしも、殺されて実験のための礎とやらになるのはごめんです」少し頬を染めて。
ヒサギ:「……やりたいことがあるとか、そういうのじゃないけど。でも、このまま何もしないまま、地の底だけで知らないままなんて言うのは」
ヒカリ:「……」
ヒサギ:「わたしも、わたしが知ってる人がそうなのも、嫌です」
ヒカリ:僅かに目を細める。眩しいものを見るように。
ヒカリ:「あのサアヤを見て、まだそれが言えるんだね……」
ヒカリ:「すごいな、二人は。皮肉とかじゃなくさ。マジで」
ヒイラギ:「……自分でも、バカみたいなことを言ってると思ってるさ」
ヒイラギ:「調整が済めば、サアヤ……”ナイトライダー”には太刀打ちできないかもしれない」
ヒサギ:「そりゃ、怖いとか色々思いますよ。でも」唇を一度噛んで。「わたしは、サアヤさんに、みんなに、あんなことをする人達の思うままなんて、嫌だ」
ヒカリ:「あたしは……」
ヒカリ:壁に背を付ける。
ヒカリ:「……正直、どうだろうな」
ヒカリ:「死にたくないとは思うよ。だからこうして脱出にも協力してる」
ヒカリ:「でも、生きたいとか、外に出て何かをしたいとか……」
ヒカリ:ヒイラギとヒサギに目を向ける。
ヒカリ:「そういうの、今、無いんだ」
ヒカリ:「無くなっちゃった」
ヒカリ:目を伏せ、口元に笑みを浮かべ、零すように言う。
ヒサギ:「……別に、ヒカリさんに強制しようとかそういうつもりは、わたしはないです。好きにしてくれていいって思う」そういいながら、どこかもどかしいような表情で。
ヒサギ:「でも……なんだろな。やっぱり、そういう風にしているのは、それを見てるしかないのは、どうなんだろうとも思って……」
ヒカリ:「……優しいね、君は」
ヒカリ:「それが優しいってことなんだよ」
ヒサギ:「優しいわけじゃないです。放っておくと、勝手にいやな気持ちになるから、それがいやだってだけで」
ヒサギ:「むう………」困ったような表情でどうしようとヒイラギ姉さんを見る。
ヒカリ:「ヒトは行動で形作られるものでしょ」
ヒカリ:「あたし達が作り物でも、その中身が何であっても」
ヒカリ:「君の優しさは君だけのものだよ、ヒサギ」
ヒカリ:「誰かのコピーでも、紛い物でもない」
ヒサギ:「………じゃあ、そう言って優しさを見出せるヒカリさんも、きっと優しいひとなんです」
ヒカリ:「ありゃー、こりゃ一本取られたね」
ヒカリ:あはは、と笑う。
ヒサギ:「優しくて、ずっと大事にしていたひとを思い続けるくらいに」
ヒサギ:ふ、と小さく笑って。
ヒサギ:そっと肩を並べて。
ヒカリ:「ん……」重なる手に視線を落として、それからヒサギの顔を見る。
ヒサギ:「したいことが無いって言いましたよね」左手に、己の手を重ねて。
ヒサギ:「なら、どうしてこうやって自分の方が聞かれたりしてるのに。わたしたちのことを慰めたりしたんですか?」
ヒカリ:「…………?」
ヒカリ:目を瞬かせる。
ヒサギ:すべらかな感触。指を絡めるように。
ヒカリ:「どうしてって……」
ヒカリ:「……どうしてだろ?」小首を傾げる
ヒイラギ:「……”姉妹”だから、じゃないか」少しそっぽを向きながら
ヒサギ:「やりたいことが、小さいことでもいいです」笑って。
ヒサギ:「誰かがいないさみしさを、慰めるものでもかまいません」
ヒイラギ:「どう思ってようが、どうしようもなく、ボクらは」
ヒカリ:「……そっか……」
ヒカリ:「……そうだねぇ」深く息を吐く。
ヒカリ:「まだ、モノも放っておけないし……」
ヒカリ:「シキにも、まだ言ってないことがある」
ヒカリ:「……二人といると、楽しいしね」
ヒカリ:ヒサギとヒイラギに笑い掛けて。
ヒサギ:「ほら、まだまだありますね。……、」最後の一言に少しはにかんだように笑って。
ヒサギ:「わたしも、ヒカリさんといると楽しいですよ」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「悪くない、と思ってる」
ヒカリ:「え~?珍しく素直になっちゃって」くすくす笑う。
ヒサギ:「ですって」
ヒイラギ:「……正直に言うと」
ヒイラギ:「みんなと仲良くなるのは、怖かった」
ヒカリ:「……うん」
ヒイラギ:「……実験の時だって、ボクには沢山の物を与えられたけど、……手に残ったものなんて、あの図鑑とヒサギだけだった」
ヒサギ:静かに姉の言葉を聞いている。
ヒイラギ:「得た物はまた取り上げられて、ボクのものじゃなくなる。それの繰り返しだった」
ヒイラギ:「それに、ヒカリ」
ヒカリ:「……あたし?」
ヒイラギ:「お前を見てると、何度も思うんだよ。あの日、もしかしたら失っていたのはボクの方だったのかもしれないって」
ヒカリ:「……」
ヒイラギ:「……だから、怖かった。仲良くなったって、また、ボクの手から離れていく気がして」
ヒイラギ:「もう、沢山だ、そんなのは」
ヒイラギ:声が震える
ヒカリ:「……そっか……」
ヒカリ:「困ったなぁ」
ヒカリ:ヒイラギの手を握って、眉を下げて笑う。
ヒカリ:「やらなきゃいけないこと、一つ増えちゃったじゃん」
ヒカリ:そして、その頭に軽く手を置く。
ヒカリ:「……あたしは、いなくならないよ。ヒイラギ」
ヒカリ:「ヒサギも、そうでしょ?」
ヒサギ:一度だけ目を閉じて、
ヒサギ:「……ええ。勿論です」ふわりと笑う。
ヒカリ:「……だってさ」
ヒカリ:幼い妹にそうするように、ヒイラギの頭を撫でる。
ヒイラギ:「……っ」
ヒサギ:その様子を見て、少し安心したように唇を綻ばせて。
ヒイラギ:涙がぽろぽろと溢れる
ヒカリ:「ありゃ」
ヒイラギ:「離れたく、ないんだよ、みんなと」
ヒイラギ:「本当は、ずっと」
ヒサギ:「……安心してくださいね、ヒイラギ姉さん」柔らかく囁く声と、それがきちんと伝わるように、思念のそれも同時に。
ヒカリ:ヒイラギの涙を指の甲で拭う。
ヒカリ:「大丈夫、言ったでしょ。ずっといるって」
ヒカリ:「泣かないでよ、だから」
ヒサギ:重ねていない方の手で、そっと背中をさする。
ヒカリ:困ったように笑う。
ヒカリ:「慣れてないんだよ、こういうの……」
ヒイラギ:「……クソッ、泣くつもり、なんて」
ヒイラギ:「なかったんだよ、ボクだって……!」
ヒサギ:「じゃあ、慣れていきましょう」
ヒサギ:「これから、きっとずっと一緒だっていうなら」
ヒカリ:「……そう……そうだね」
ヒカリ:ヒイラギをゆっくり撫でながら。
ヒサギ:「こうやって、泣いたりするときも、きっとあるんでしょうから」
ヒカリ:「これまでずっと……サボってたからね」
ヒカリ:「もう、あの子にだけ押し付けられないな……」
ヒカリ:独り言ちるようにそう言って、嘆息する。
ヒイラギ:「……あいつだって」涙声のまま
ヒイラギ:「泣いてるかもしれない」
ヒサギ:「なら、聞いてあげないと」
ヒサギ:「……大変なら、手伝ってあげますよ。それが、一緒にいるってことですよね?」
ヒカリ:「あーあ……」苦笑して
ヒカリ:「やらなきゃいけないこと、山積みじゃんか」
ヒカリ:その笑みは、しかしどこか嬉しげでもあった。
【Middle latter half/ヒサギ】
GM:ミドルシーン後半 二手番目 シーンPCはヒサギさんです
GM:誰を指名しますか?
ヒサギ:はい。
ヒサギ:ヒイラギさんを。
ヒイラギ:はい
GM:ではメインシーンはヒサギさん ヒイラギさん サブシーンはモノさん シキさん ヒカリさんになります
ヒイラギ:ベッド以外の大きな家具のない、質素な部屋。しかし、小物などは少ないながら、床に置かれている。
ヒイラギ:あまり誰かを部屋に入れることはなかった。
ヒイラギ:会議室から持ってきた椅子を適当に並べる。
ヒサギ:そこに、こつこつと扉をノックする音がする。
ヒイラギ:「……ああ、どうぞ」
ヒサギ:「ヒイラギ姉さん、入るね?」音をあまりたてぬように扉を開き、体重を感じさせない動きで。
ヒサギ:「物、少な目だなあ。もっと色々持って行っていいのに」少し苦笑ぎみ。
ヒイラギ:「……まあ、今はいいんだよ。これで」
ヒサギ:「まあ、そうかも。仮宿だもんね」
ヒイラギ:「ああ」
ヒサギ:「椅子、座るよー?」
ヒサギ:他のひとといる時よりも、遠慮が少ない。
ヒイラギ:「……菓子くらいなら、ストックしていてもよかったかもしれないな」
ヒサギ:「そういうと思って、持ってきました~」焼き菓子だ。
ヒイラギ:「ヒサギはえらいな……」
ヒサギ:あまりゼリーやチョコレートなどは携行食に使えるので手を付けていない。
ヒサギ:「わたしから言ったしねえ」くすくす笑いながら、簡単なテーブルにお茶と一緒に広げる。
ヒサギ:ふわりと笑って、のんびりと言葉少なにお菓子を食べたりする。
ヒイラギ:「気遣いができるのはいいことさ」柔らかな表情でお菓子をつまむ
ヒサギ:普段と違って、行儀悪くも見えるような、背もたれを前にしての座り方。
ヒサギ:「まあ、いっつもそうしてたから根付いちゃったのかな~~」
ヒサギ:背もたれに頬杖をついて、あなたを見ている。
ヒイラギ:「……そんなに気遣われてばっかりだったか」
ヒイラギ:「あまり、かっこがつかないな」
ヒサギ:「そういうわけじゃないよ。わたしが勝手に、伝えない方がいいな、とか。あとにしよう、とか。そんなことを考えてただけ」
ヒイラギ:「……」
ヒサギ:「………」ボトルを傾けて一口。
ヒサギ:「聞かないの?」
ヒイラギ:「……お前が、話したいなら、聞く」
ヒイラギ:「ただ、……聞きたい気持ちはある」
ヒサギ:「……ん。そっか。そっか……」
ヒサギ:少し眩しいものをみたように、眼を細めて。
ヒサギ:「じゃあ、ちょっと。言わないでいたこと、言っておくね」
ヒサギ:「いいかな?」
ヒイラギ:「……ああ」
ヒサギ:「ん、じゃあまず大きく二つ…いや、結局一つのことに繋がるんだけど。まずは」
ヒサギ:ごとん、と無針注射器をテーブルに置く。
ヒサギ:シリンダーは、打ち込んだ後のように内容物が減っている。
ヒイラギ:「……それって」ヒサギの目を見る
ヒサギ:「あの時からもう二か月、ずっとわたしはあまりストレスもそれからくる異常行動や言動のおかしなとこもなかったと思いますが」
ヒサギ:「つい最近まで……そうだね、あのサアヤさんに会った時まで、ちょくちょく自分に能力を使用して性格、精神の調整をしてました」
ヒサギ:「あ、今はまあ先が見えたし、怒ったりして頼ってないよ」
ヒサギ:「これが、まず一つの言わないでいたこと」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「もう、一つは」
ヒサギ:「……ん。怒ったりしていいんだけど……いいのかな」
ヒイラギ:「……まとめて判断する」
ヒサギ:「うん。あまりいいことじゃなくてごめんね」
ヒイラギ:「いや、怒ってはいるが……今は聞きたい」
ヒサギ:その言葉に、寧ろどこか嬉しそうにくすりと笑って。
ヒサギ:「二つ目は、さっきヒカリさんといた時に、ずっと一緒にいるよ、って言ったけどさ」
ヒサギ:「わたしは、あの言葉を守れるかどうか、自信がない……いや、なんていうのかな」
ヒサギ:くるくると指をこめかみに当てて回す。
ヒイラギ:「……」片手をそっと握る
ヒサギ:「………いつか、いろんなことが起きて、それがどうしようもなかったり、間に合わなかったりして」
ヒサギ:「そうなったときに、あなたが望むようにいられるのか、確約できないな…ってこと。きちんと言っておきたくて」
ヒイラギ:「……それは」
ヒイラギ:「……なあ、ヒサギ」
ヒサギ:「……本当、いや酷いなあって思うんだけどね。でも、嘘はつきたくないし、もしものことを、考えないといけないから……」
ヒサギ:「……うん。なあに、ヒイラギ姉さん」
ヒイラギ:「それならボクも、謝らなくちゃいけない事がある」
ヒサギ:「ん…なんでしょ。いいよ、わたしも結構ぶっちゃけちゃってるし」
ヒイラギ:「……ボクらでヒカリと話した時、その、言ったろ。……いろいろ」
ヒサギ:「ん。外を見せたいとか言ってくれたよね」くす、と笑う。
ヒイラギ:「……ああ。それに、失うのが怖かったとも」
ヒサギ:「うん」きちんと憶えている。
ヒイラギ:「失う側になるのが怖かった。……だから」
ヒイラギ:「失われる側になるならいいって、前まで思ってた」
ヒサギ:「…………もぅ」ふ、と息を吐きながら。「今は、違うの?」
ヒイラギ:「……怖いのは変わらないけど、失われる側になったって」
ヒイラギ:「それは誰かに怖さを押し付けてるだけだって」
ヒイラギ:「弱さは、そうしていい理由にはならない……そう思ったんだよ」
ヒサギ:焦げ茶色の髪の奥、朱のような赤色がひた、と見据えて。
ヒサギ:「……そっか。うん、すごいし、なんだろな」
ヒサギ:「うれしい」綻ぶように微笑んで。
ヒサギ:ロイス取得。 ヒイラギ/〇憧憬/思慕。
ヒイラギ:「……ヒサギ」
ヒサギ:「なあに、ヒイラギ姉さん」柔らかい微笑みを浮かべながら。
ヒイラギ:「……ボクは、お前の姉さんでいられてよかった、って思うんだ」
ヒサギ:「……わたしもね、あなたの妹になれてよかった、って思ってる」
ヒイラギ:「……ふ」
ヒサギ:「なに、何かおかしかった?」
ヒイラギ:「……これが似たもの姉妹ってやつか、と思ってさ」
ヒサギ:「本当だからね。そりゃ、歳のわりに生意気なのは記憶情報の関連付けのせいであって、……」
ヒサギ:「…そう?」
ヒイラギ:「ああ、多分ボクら」
ヒイラギ:「二人共この二ヶ月間、ずっと無理を隠し合ってた」
ヒサギ:「………まあ、見栄っ張りですから?」
ヒイラギ:「……ああ、そのくせ頑固だ」
ヒサギ:「わたしが頑固なのは一本きちんとした自我というか、判断基準がないと記憶情報の位置づけ変更での異常を防止するための設計上の仕様ですー」
ヒイラギ:「あっ、設計上の仕様にするのはズルいだろ」
ヒサギ:「本当だもん。設計書見たし」
ヒイラギ:「くっ、尚更たちが悪い……!」
ヒサギ:「………全部見られたわけじゃないけどね。でも、わたしは少なくとも設計書から出られてないと思う」
ヒイラギ:「……別にそれでもいいさ」
ヒイラギ:「きっと、外に出た時の反応一覧までは、作られちゃいないはずだ」
ヒサギ:「そんなの、保証外だろうしねえ」けらけら笑う。
ヒサギ:「………ね、姉さんさ」
ヒイラギ:「……ん」
ヒサギ:頭を背もたれの上にそのまま載せて。
ヒサギ:「もし、もしもだよ。もしも、わたしが死んだり、いなくなってもさ」
ヒサギ:「外に出て、幸せになってほしいって思ってる」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「……それは、ボクだってそうだ」
ヒサギ:「うん。だから、約束ね」
ヒサギ:指を伸ばす。
ヒイラギ:「……どっちの約束だ」伸ばしかけた指を引っ込めて。
ヒイラギ:「死んでも幸せになってね、の方か?」
ヒサギ:「どっちも。もし、わたしたち二人どっちがいなくなっても、きっちり幸せになることと」
ヒサギ:「そうならないように、きちんと二人でがんばろうね、って」
ヒイラギ:「……それなら」もう一度指を伸ばし、絡める
ヒイラギ:「約束できるかな」
ヒサギ:「じゃあ、そうしよ。こうしたらさ」
ヒサギ:「もしも離れても、一緒にいても。約束をしたときのわたしたちは、ずっとそこにいるから」
ヒサギ:小指を絡める。
ヒサギ:わらべうたのような約束の仕方を、謳うように。
ヒイラギ:「……そうだな」
ヒイラギ:きっと、この約束を忘れることはないだろう。
ヒサギ:ロイスを取得します。
ヒサギ:”やくそく”/ヒイラギ/〇契約/執着。
ヒサギ:「忘れたら、もしかしたら祟るかもしれないね?」くすくすと笑いながら。
ヒイラギ:「……祟るくらいなら、怒ってくれよ」
ヒイラギ:ロイスを取得します。
ヒイラギ:”やくそく”/ヒサギ/誠意○/執着
ヒサギ:「夢枕に立つくらいは頑張ろうかな~~?きちんと聞いてよ?」
ヒイラギ:「逆の立場になった時、そっくりそのまま返してやるからな」
ヒサギ:「ひどいなあ」
ヒサギ:「わたしが、ヒイラギ姉さんの言う事聞かなかったのなんて、無いでしょ~?」
ヒイラギ:「まったくお前は……」呆れるように首をすくめる。声色は優しく、柔らかい。
ヒサギ:へにゃりと笑う。
ヒサギ:
ヒサギ:設計書を見たと言った。勿論、見られたのは自分のもの、それも一部。
ヒサギ:自分の人格、行動原理、そしてどのような能力を発現させるかの概要程度。
ヒサギ:そんなものでも、見たとなればペナルティがあるだろう。重大な違反だ。
ヒサギ:どうして、そんなことをしたのかと言えば、
ヒサギ:この身体。”わたし”の為に用いられた、彼女のことに触れられていないかと思ったからだ。
ヒサギ:ヒイラギ姉さんと触れ合って、人間というものらしさを獲得していったわたしは、
ヒサギ:本来、わたしのものでない”彼女”のことが気になって仕方なかった。
ヒサギ:担当官や、他の実験体などよりも、そして一番わたしが好きなヒイラギ姉さんよりも、なお近い、”自分”という他者。
ヒサギ:わたしの力は、運用すれば語らせることが出来る。知ることが出来るーーそのひとが、語ることが出来るならば。
ヒサギ:でも、そこにいながら語ることが出来ない彼女は?
ヒサギ:
ヒサギ:文書を覗き見た。
ヒサギ:電子データを見られるように機械に働きかけられないか、能力で試したこともある。
ヒサギ:周りのひとびとに、訪ねたこともいくばくか。
ヒサギ:その時に、この身体を求められたのは申し訳なさがあったけれども。
ヒサギ:そして、そうしてもーー
ヒサギ:どこにもなかった。なにも。
ヒサギ:彼女がどんなひとで、どんなことをして、どんな風に生きて、
ヒサギ:どんな風に死んだのかも。
ヒサギ:
ヒサギ:今ならわかる。”死”を理解されたくなかったのだということ。そうする必要があったということを。
ヒサギ:だが、寧ろ。この”情報”にこそ宿るレネゲイドビーイングであるこのわたしには、
ヒサギ:この情報の”欠落”こそが、何よりも”死”を暗示させた。
ヒサギ:ーー彼女のことを、わたしは知らない。
ヒサギ:だけれど、今のわたしにはとても大切なものがある。
ヒサギ:外を見てみたいと思った。ヒイラギ姉さんと一緒に過ごしてみたい。
ヒサギ:シキさんはどこに行っても、誰かを引っ張っているのだろうか。ヒカリさんは、あれで面倒見がいいから、気にしてくれているのだろうか。
ヒサギ:モノさんは、彼女が求めるという本当を見つけて、それを大事に出来るだろうか。
ヒサギ:明るかったあの子、サアヤさんはどう思うだろう?
ヒサギ:そんな実感からしたら、彼女のことはわたしにとって小さすぎて。
ヒサギ:
ヒサギ:「………わたしは幸せですよ。貴方の身体を使って、のうのうと」
ヒサギ:
ヒサギ:死にたくない。
ヒサギ:あんな風になりたくない。
ヒサギ:まだ、見たいものがある。いっしょにいたいひとがいる。
ヒサギ:いやだ。
ヒサギ:例え相手が及ばなかろうが、それでも。わたしは死にたくない。消えたくない。
ヒサギ:だからごめんなさい、ヒイラギ姉さん。わたしもずっと覚えていますから、絶対に絶対に絶対に、忘れたりなんてしないから。
ヒサギ:わたしのことを覚えていて。
ヒサギ:
ヒサギ:わたしは本当に、薄汚れて見栄っ張りなやつだ。
ヒサギ:それでも、まだと。そう願っても、いいでしょうか。
ヒサギ:最後に、Sロイス指定します。
ヒサギ:”やくそく”/ヒイラギ/〇契約/執着 こちらをSロイスに指定。以上です。
ヒカリ:「……お~い」
ヒカリ:「ちょっと?二人ともー」
シキ:「うぅ~~~ん……」早朝。シェルター隔壁前の通路。
ヒカリ:眠りこけるシキの頬を指でつつく。
モノ:すぅすぅと寝息を立てて
モノ:その隣で蹲るように眠っている
ヒカリ:「何してんの、こんなとこで」
ヒカリ:「風邪引くよ?」
シキ:「あと5分……」
ヒカリ:「却下しまーす」
シキ:毛布を被る仕草をするが、体の上には何もかけられていない。
ヒカリ:小型のドローンが二人の頭をホールドして、強烈なバイブレーションを掛ける。
モノ:「ひゃぁ」
ヒカリ:(ヴヴヴヴヴヴヴ……)
モノ:小さな叫び声をあげて、のったりと起き上がる
シキ:「あ゛ばばばば」
モノ:「あれぇ」
モノ:「ヒカリ、だぁ」
モノ:「お、お、おはよ」
シキ:「ふぇ?……朝?」
ヒカリ:「ヒカリですよ~」
ヒカリ:「おはよ。朝だよ。朝の光」
モノ:へろへろと片手をあげて、挨拶
モノ:「おはよ、シキ」
シキ:「おはよ……ん?……あっ!」辺りを見回して
シキ:「しまった!昨日の夜あのまんま……!」
モノ:「えへへ」
モノ:そのままシキの首に腕を回して、頬に軽く口付け
モノ:「どの、まま?」
シキ:モノと二人、ここで思いの丈をぶつけ合ったまま、眠りについてしまったことを思い出し
モノ:「シキの、ほんと」
シキ:「んん゛!!なんでもない!」そそくさと乱れた服を正す。
モノ:「モノの中に、たくさん、残ってる、の」
ヒカリ:「……」じっとりとした視線。
シキ:「な、なにさヒカリその眼は……!」
モノ:「シキ~~」
モノ:「すき~~」
ヒカリ:「別にぃ……?」
モノ:スリスリと体を擦り付けている
シキ:「お~よしよし」モノの頭を撫でて
ヒカリ:「どうでもいいけどさぁ……寝るならベッドで寝なよ?」
ヒカリ:「リーダーが体調崩してちゃ、皆に示しが付かないでしょ」
シキ:「それはその通りだと思うけど」バキバキになった体をほぐして
シキ:「……」
シキ:「……てか」
シキ:「まだリーダーだと思ってくれるんだ」
ヒカリ:「?」片目を細め、怪訝そうな顔。
ヒカリ:「まだって、何が?」
ヒカリ:「……ああ!」
シキ:「いやだってほら……」
ヒカリ:ぽん、と掌を叩いて
ヒカリ:「趣味がバレたって気にしてるの?」
ヒカリ:モノとくっ付くシキを見て、口だけを動かす。
ヒカリ:(ロ)
ヒカリ:(リ)
ヒカリ:(コ)
シキ:「は、はぁ~~~!?」
ヒカリ:(ン)
シキ:「なんでそうなんの!?」
モノ:「えへへ」
モノ:「ちがう、の?」
ヒカリ:「別に、個人の嗜好とリーダーの資格は関係ありませんし?」わざとらしく肩を竦めて
モノ:「モノは、シキの、趣味じゃ、ない?」
ヒカリ:「ええ。他の皆に迷惑を掛けないようにしていただければ。ええ」目を瞑ってうんうん頷く。
シキ:「う……アンタ達打合せでもしてんのか……」
シキ:「勘違いしないでほしいんだけど、元々私達の間で」
モノ:「モノのこと、好きじゃない?好きじゃないのに……あんなこと、する……」
シキ:「そういう事するの、止めないって私前から言ってるし……ああもう!」
モノ:「モノ、かなしい、よぉ……」
モノ:わざとらしいうるうる目
シキ:「好き好き!!モノのこと大好きに決まってんじゃん~!!」
モノ:「ゃうーーー」
シキ:「そんな顔しないで~」小さな頭を抱きしめる。
ヒカリ:「はー……」嘆息して
ヒカリ:「だから、迷惑掛けない程度にって言ってんじゃん」
モノ:「……ぇへ」
ヒカリ:「別に、あたしには関係ないしね」
モノ:「嘘」
ヒカリ:「ん?」
モノ:「嘘、つくのダメだよ」
モノ:「ヒカリ」
モノ:シキに抱かれたまま、笑みを向ける
ヒカリ:「えぇ?」笑って
ヒカリ:「何がウソなのさ」
モノ:「シキと、ヒカリは、関係ない?」
モノ:「本当?」
シキ:「……ヒカリ」立ち上がり、ヒカリの正面に立つ
モノ:「し、し、シキは好きにするん、だって」
モノ:「ヒカリ、は」
モノ:「どうする、の?」
モノ:ぺたんと座ったまま、2人を見つめている
ヒカリ:「……はぁ~?」
ヒカリ:「何、それ。意味わかんなーい」
シキ:「ヒカリが部屋から出てきてるってことはさ」
シキ:「ヒサギとヒイラギとは話がついたってことでしょ」
ヒカリ:「ま、そうだね」
シキ:「この先どうするのか、ヒカリ達は決めたんだよね」
ヒカリ:「うん。決めたよ」
シキ:「そか……」
シキ:「あのね、ヒカリ」
シキ:「ヒカリがもう私達と関係ないっていうなら、私はそれを止められない」
シキ:「今まで全部知った上で、私達に付き合ってくれてたんだもん」
ヒカリ:「……」
シキ:「けどさ、もしもまだ私達のこと」
シキ:「私の事、愛想つかしてないなら」
シキ:「私はもう一度、みんなで地上を目指したい」
モノ:「モノは、ね」
モノ:「見てることにした」
モノ:「シキを見てることにした」
モノ:「嘘つきのシキでも、シキの、嘘には」
モノ:「本物が、あるから」
モノ:「どっちでも、いいって」
モノ:「わかったから、見てる」
モノ:絡みつくように、おぶさるように腕を回す
モノ:「シキが、好き」
シキ:「もう……昨日からずっとこれなんだよ。重たいやらくすぐったいやら……」ぽんぽんと腕を叩いて
シキ:「ま、お姉ちゃんとしては……」
シキ:「……っと、違った」
シキ:「私さ、しばらくお姉ちゃんお休みするから」
ヒカリ:「……何それ?」
シキ:「そういうので自分を騙すのはやめるってこと」
ヒカリ:「……」
ヒカリ:無言のままシキの顔をじっと見つめ、それから嘆息して。
シキ:「私は、"盤外個体"のリーダーとしてでも」
シキ:「押し付けのお姉ちゃんとしてでもない、ただのシキとして」
シキ:「みんなの力になりたい。みんなと一緒に生き残りたい」
ヒカリ:むに
ヒカリ:シキの頬を引っ張る。
シキ:「だか……ふぁ?」言葉の途中で頬を引っ張られ
ヒカリ:「ふーん」ぐにぐにと頬を弄び
シキ:「ふぁにふんふぁよ~?」
ヒカリ:「シキはそれを選んだんだ」
ヒカリ:ぺち、と離して。
ヒカリ:「別に、言われなくても、もう決めたよ」
ヒカリ:「あたしは皆と外に出る。それがやるべきことだと思うから」
ヒカリ:「ヒサギもヒイラギもほっとけないし……」
ヒカリ:「モノは危なっかしいし」
ヒカリ:「リーダーも頼りないしね…… あ、もうリーダーじゃないのか」
シキ:「いや、お姉ちゃんやめてもリーダーはやめないし」
ヒカリ:「じゃあ猶更じゃん」
ヒカリ:「腫れてますけど」目の下をこすってみせる。
シキ:「む……じろじろ見んなよ~」顔を手で隠して
ヒカリ:「嘘だけど……マジで泣いてたんだ」
モノ:「そうだよ」
シキ:「騙された!?」
シキ:「く……いや、まあ」
シキ:「でもこれからはさ、そういうとこも隠さないようにしよっかなって」
モノ:「ずーっと泣いてたの、泣いてたのに……いひひ」
モノ:「シキいいよね、いい」
モノ:「そこがいい、の」
シキ:「泣きたいの我慢するより、一回思いっきり吐き出した方がさ」
シキ:「スッキリするじゃん、今みたいに」
ヒカリ:「ま……シキがそれでいいなら、いんじゃない?」頭の後ろで手を組んで
ヒカリ:「痛々しかったしね、アレ」
シキ:「え~、そう思ってたんだったら言ってよ」
ヒカリ:「いや、皆思ってたね。気ぃ使ってただけだよ」
ヒカリ:「ヒサギとヒイラギにも聞いてみなよ。絶対そうだから」
シキ:「うわ~~やだ~~!聞きたくない~~~!!」
モノ:「ヒカリ、は嘘つき、だから」
シキ:耳を抑えてしゃがみ込み
モノ:「言ってないこと、いっぱい、あるよ」
モノ:「言えば?」
ヒカリ:「え~?何だよ、それ~」
モノ:くっ、と身を乗り出して、覗き込む
モノ:「ほら、ほら」
ヒカリ:眼窩の空洞を間近にして、顔色一つ変えない。
モノ:「それ!」
モノ:人差し指を立てて
モノ:その薄笑みの唇、端をくいと持ち上げる
ヒカリ:「どれよ?」
モノ:「モノは、見てるだけだから、いいのに」
モノ:「言わないの?」
ヒカリ:「言うべきことがあるなら、言うよ」
ヒカリ:両の掌を上に、呆れるジェスチャー。
ヒカリ:「別にいらないから、言わないだけ」
モノ:「……そう?」
モノ:指を降ろす。
シキ:「モ~ノ」モノの脇を抱えて持ち上げヒカリから引き離す。
ヒカリ:「家族や恋人だって、トイレに入ってるとこまで全部見せあってるわけじゃないでしょ」
シキ:「今日はその辺でいいんじゃない?ヒカリってば恥ずかしがり屋だからさ」
ヒカリ:「言わなくていいことだってあるんだよ。その方がお互いにいい関係でいられることだって」
モノ:「うん」
モノ:「モノ、も、わかってきた」
モノ:「言わないのも、ほんと」
モノ:「言わなくて、も、えへへ」
モノ:「本当は、出てくるから」
モノ:「だから、見てる」
シキ:「そうだね」モノを降ろして
シキ:「……けど、さ。ヒカリ」
モノ:「シキのことも、ヒカリも」
ヒカリ:「随分懐かれたみたいじゃん…… ……ん?」
シキ:「ヒカリが、みんなのためにそうするべきだと思って何も言わないことがあるの、知ってる」
シキ:「抱え込んだ方が最善だって思うの、わかるよ。私もそうだったから」
ヒカリ:「……」
シキ:「そのおかげで助けられてたこと、きっと今までいっぱいあったと思う」
シキ:「けど私はさ、それでもやっぱり」
シキ:「ヒカリが泣きたくなった時は、ちゃんと受け止めてあげたい」
シキ:「私がそうするんだから、じゃないと不公平じゃん?」
ヒカリ:「ふ……」
ヒカリ:口元に笑みを浮かべて。
ヒカリ:「あー、はいはい。じゃあその時はお願いしましょうかね~」
ヒカリ:「まったく、おばかさんだね~、シキは」
ヒカリ:「あたしなんてそんな大したもんじゃないのにさ」
シキ:「ばかとはなんだばかとはー!言質取ったかんなー!!」
ヒカリ:「それに、気にする必要なんてないんだよ」
ヒカリ:「だって、あたしは……」
ヒカリ:そこで言葉が途切れて。
ヒカリ:「……」
ヒカリ:「……あ、そうだ」
ヒカリ:「何で呼びに来たのか忘れてた。もう完全に朝ごはんの時間過ぎてるんだけど」
ヒカリ:「ほらほら、さっさと作ってよー、シキ」
シキ:「ええ……?今の流れで話反らす……?」
シキ:「まあいいけど……私もお腹減ったし」
モノ:「えへへ」
モノ:「ふ、ふ、2人に」
モノ:「いいことが、あると、いいね」
ヒカリ:「……何か明るくなった?モノ」
モノ:「楽しいから」
モノ:「楽しいよ、シキは」
ヒカリ:「ふーん。良かったね」
ヒカリ:モノの頭をぐしぐしと撫でて
ヒカリ:「ま、いいや。先行くから、早いとこ来てよねー」
ヒカリ:踵を返し、キッチンへと向かっていく。
ヒカリ:(……そんなこと)
ヒカリ:(言えるわけ、ないじゃんか)
ヒカリ:顔色一つ変えず、足取りに淀みも無く。
モノ:ただその背中を、シキに寄り添いながら
シキ:「よし!んじゃあ景気づけにパーッとごちそうにしますか!!」それを追って歩き出す。
モノ:じっと、見つめている。
モノ:「ごち、そう!」
シキ:「ごちそうだよ~。モノは何食べたい?」
モノ:「りんごの、種」
モノ:「みんなの前で……」
モノ:「し、舌の上に残ってないか、ちゃんと、見せる」
シキ:「えー、それ楽しくないー」
シキ:「みんなも食べれるものにしようよー」
モノ:「じゃあ、シキの、くれるもの」
モノ:「なんでも」
シキ:「ほんとになんでも?」
モノ:「なんでも」
モノ:「それが、好き」
シキ:「いいよ。じゃあ私が選んであげる」
シキ:「胸を張って、私が、私の好きなものを」
シキ:「モノにも好きになってもらえるように、頑張るからね」
モノ:「うん」
モノ:「好きに、なりたい」
モノ:きゅ、とひっついて歩く。
モノ:「これは……どっち、かな?」
モノ:試すように笑う。
【Middle latter half/シキ】
GM:ミドル後半 3手番目 シーンPCはシキさんです
GM:誰を指名しますか?
シキ:ヒカリさんを指名します。
GM:ではメインシーンはシキさん ヒカリさん サブシーンはヒサギさん ヒイラギさん モノさんになります
シキ:コンコンコン、小気味良いノックの音が響く
シキ:「ヒカリ、開けてー」
シキ:他の部屋なら気にせずズカズカと入り込むところだが
シキ:各種電子ロックで施錠されたヒカリの部屋だけは別だ。このレベルの防壁を破るスキルは持っていない。
ヒカリ:丁度、ノックの音に重なるように。
ヒカリ:……ガシャン!!
ヒカリ:扉の向こうから、何かが倒れるようなけたたましい音が響いてくる。
シキ:「ヒカリ?おーいヒカリー?大丈夫?」
ヒカリ:「っ……く……」
ヒカリ:微かに、苦悶するような声。
シキ:「ヒカリ……?」
ヒカリ:表示を見ると、外から戻ったばかりなのか、電子ロックは外れている。
シキ:「まさか……」自分たち極端な調整を施された実験体だ。原因不明の体調の悪化というリスクは常に考えられる。
シキ:「ヒカリ!!」慌てて扉を開け放ち、部屋の中へ駆け込む。
ヒカリ:「……っ……」
シキ:「ちょ、ヒカリ!大丈夫!?」
ヒカリ:部屋の中、床に這いつくばるように、ヒカリが倒れ込んでいる。
シキ:「な……!」
ヒカリ:「……っとに……間が悪い……」
ヒカリ:顔に汗を浮かべ、苦い顔をして呟く。
シキ:「ヒカリ!!しっかりして!今ヒサギを呼ぶから……」
ヒカリ:何度も立ち上がろうとして、その度に体勢を崩す。
シキ:ヒカリの元へ駆け寄り、肩を支える。
ヒカリ:脚が震えている。まるで力が入っていない。
ヒカリ:「いいよ、そんなの……」
ヒカリ:「人の部屋、勝手に入んなよな……」
ヒカリ:俯きがちに恨み言を吐く。
シキ:「言ってる場合じゃないでしょ……!」
ヒカリ:「ホントに、いいんだって……」
ヒカリ:シキを支えに立ち上がろうとして、がくん、と体勢を崩す。
ヒカリ:結局、抱えられるような形になって。
ヒカリ:「……は……」荒い息を吐きながら、苦い笑みを浮かべる。
ヒカリ:「……まいったな……」
ヒカリ:「こんなの、見せるつもりなかったのに……」
シキ:「……ヒカリが隠してたのって、このことなの?」
シキ:「……とりあえず、横になったほうがいい」ヒカリの体を支えながら
シキ:ベッドへと向かう「そのあとで詳しく話してもらうから」
ヒカリ:「あー、最悪……」
ヒカリ:言いつつ、抵抗らしい抵抗も出来ず、ベッドに横たえられる。
シキ:薄い毛布を一枚その上にかけて
シキ:「冷蔵庫開けるよ」
ヒカリ:「ん……」
ヒカリ:寝かされたまま頷く。
シキ:冷蔵庫の中からペットボトルに入った水を取り出し、タオルと一緒に持ってくる。
シキ:「……いつから?」
シキ:タオルでヒカリの汗を拭きながら
ヒカリ:「……はは……」
ヒカリ:「……一番聞かれたくないこと聞くね」
ヒカリ:笑っているのか、嫌がっているのか、よく分からない顔をして。
シキ:「誰だって聞くよ。突然具合悪くなったわけじゃないんでしょ」
シキ:「いつからそんな事になってんの」
ヒカリ:「……あたしの能力は、単なる電子機器操作じゃないんだ」
ヒカリ:「自分の生体電流を増幅して、電子機器に通して操作することで、速度も精度も通常とは比較にならないパフォーマンスを発揮できる」
ヒカリ:「その増幅した生体電流を身体に戻せば、一時的に限界を越えた身体能力も出すことが出来る……」
シキ:「……」先の戦闘で見せた強大な出力の一撃を思い出す。
ヒカリ:「でも、安全性は度外視されててね」
シキ:「……つまり」
ヒカリ:「……無理をする度に、過剰な電流に神経が焼かれて、手足が少しずつ動かなくなっていく」
ヒカリ:「こんな風にね」自分の萎えた足を撫でる。
ヒカリ:「これまでは、ドローンを操作するのと同じ要領で自分の身体を操作してたんだけど……」
ヒカリ:「今、ちょっと全部外に出しててね。都合悪い時に来たね、ホント」
シキ:「……っ!ばか!!」
シキ:「なんでそういうことを最初っから言わないんだよ!」
ヒカリ:「……最初からだからだよ」
ヒカリ:息を吐く。
シキ:「まさか、ヒカリ……」
シキ:「ホントの最初から?」
シキ:「上にいる時からそうだったってこと?」
ヒカリ:「いやぁ……」
ヒカリ:くつくつと笑う。
ヒカリ:「多分、もっと前から」
ヒカリ:「……」
ヒカリ:「濃縮体(エンリッチト)って知ってる?シキ」
シキ:「……まあ、ね」忌々しげに
ヒカリ:「チルドレンや実験体同士を戦わせて、一握りの生き残りだけを抽出する実験」
ヒカリ:「FHでは割とよくある手法なんだけど……」
ヒカリ:「"チェッカード"でも、それをやってたことがあるんだよ」
シキ:「な……嘘、でしょ……?」
ヒカリ:「一対一じゃなく、二人一組。オーヴァードの持つ精神的な繋がりがどうとかって話だったかな……それはどうでもいいんだけど」
シキ:「そんなの一度も聞いたことない!一番最初に生まれた私が……!」
シキ:「……」
ヒカリ:「過去にどこかで結構な成果を挙げたクローン部隊があったらしくてね」
ヒカリ:「そのクローンを模倣して、能力の一部をチューニングした実験体たちに殺し合いをさせたんだ」
ヒカリ:「……ま、もう勘付いてると思うんだけど……」
ヒカリ:「あたしとヒカリは、その生き残りだった」
シキ:「そんな、ことって……」呆然とヒカリの顔を眺めている。
シキ:「……それも、あいつが主導してたの?」
シキ:首に下げた指輪を握り込む。
ヒカリ:「いいや?別の奴だよ」肩を竦める
ヒカリ:「“盤外個体”計画の前の話だからね。知らないのも当然」
ヒカリ:「あたし、それで一時は生き残りとして外で暮らしてたんだよ」
ヒカリ:「イノリと一緒にね」
シキ:「……え?」
シキ:「え、え?どういうこと……?」
シキ:「一度は外でって、それに"盤外個体"の前……?」
シキ:「つまり、それって……」
ヒカリ:「うん……実はあたし、知ってるんだよね、外のこと。黙ってて悪かったけど」頭を掻いて
ヒカリ:「その後、セル内の政変か路線変更かで、あたしも“盤外個体”計画に組み込まれることになってね」
ヒカリ:「また地下に戻されて、皆と暮らすようになったんだ」
シキ:「いや、待って。それ以前に」ひどく狼狽した様子で
シキ:「"盤外個体"計画の前ってことは、つまり私が生まれる前ってことで……」
ヒカリ:「……うん……」
ヒカリ:「だから……まあ……ね……?」
シキ:「……私より、ヒカリの方が……」
ヒカリ:やや気まずそうに笑って
シキ:「おね……お」
シキ:「お姉……」
ヒカリ:「お姉ちゃんなんだねー、これが」
シキ:「うあーーー!!!やだーーーーー!!!!言いたくないーーーーーーー!!!!!!」
シキ:「やめろ!!言うな!!!」
ヒカリ:「何だよ、失礼だな~」
ヒカリ:「あたしのが年上だぞ」
シキ:「ふざけんなよお前~~~!!!!」ベッドの脇でジタバタと身を捩る。
ヒカリ:「あはははは。面白~~」
シキ:「だってズルじゃんそれはさあ……!」
ヒカリ:それを見てひとしきり笑って
ヒカリ:その笑みが、ふっと消える。
ヒカリ:「……まあ、実際、そうなんだよ」
シキ:「ヒカリ……?」
ヒカリ:「……本当はね、そうしなきゃいけないはずだったんだ」
ヒカリ:「あたしがさ……。『お姉ちゃん』でなきゃいけないはずだったんだよ」
ヒカリ:「でも、あたしは……その責任から逃げた」
シキ:「……」
ヒカリ:毛布を頭まで被って、顔を隠す。
シキ:「それは、私達に対して?それとも……」
シキ:「イノリに対して?」
ヒカリ:「……どうかな……」
ヒカリ:「……だって……あたしの妹は、イノリだけだったんだよ」
ヒカリ:「一緒に生まれて、一緒に戦って、生き残って……」
ヒカリ:「そんな絆で結ばれた、本当の妹は……あの子だけだったんだ」
ヒカリ:ロイス取得 イノリ 庇護/○喪失
ヒカリ:タイタス化します。
ヒカリ:「他の子のことなんて、他人にしか思えなかった」
ヒカリ:「あたしにはあの子さえいれば良かったんだ。だから……」
シキ:「……」言葉がない。
ヒカリ:「……だから、シキに全部押し付けた」
シキ:当然だ。何かを言う資格など、自分にあるはずがない
ヒカリ:「あたしが負うべきものも、責任も、全部、全部、あんたに……」
ヒカリ:「……ごめんね、シキ」
ヒカリ:「今まで、ごめん……」
ヒカリ:消え入りそうな声で呟く。
シキ:「……なんでヒカリが謝るんだよ」
シキ:「ずるいじゃん、何もかもさ」声が震える。
ヒカリ:「ごめん」
ヒカリ:「ずるいんだよ、あたしは」
ヒカリ:「本当に、どうしようもなく卑怯な奴なんだよ……」
シキ:「本当だよ……」シーツの上に涙が溢れる。
シキ:「私、今日ここに来たのはさ」
シキ:「謝りに来たんだよ。ヒカリに」
ヒカリ:「……」
シキ:「あの日から……」
ヒカリ:毛布から顔を覗かせる。
シキ:「イノリを殺した日から、私、一度もヒカリに謝らなかった」
シキ:「謝っちゃいけない、許されちゃいけない。それが私の責任だと思った」
シキ:「ヒカリにちゃんと憎んでもらわなきゃって」
ヒカリ:「……」
シキ:「そう思って、敢えて無神経に接してきた」
シキ:「私はお姉ちゃんだから……」
シキ:「ヒカリの大事なものを奪ったシキのままでいなきゃって」
ヒカリ:「……ずっと、シキに」
ヒカリ:「言わなきゃならないことがあった」
ヒカリ:ベッドの上、シキの手に手を重ねる。
ヒカリ:「……あたしは」
ヒカリ:「ずっと逃げてきた。自分の責任から。本当にやるべき、やらなきゃならないことから」
ヒカリ:「……あの時も、そうだった」
ヒカリ:「本当はさ。あたし……分かってた」
ヒカリ:「分かってたんだよ」
シキ:「ヒカリ……」
ヒカリ:双眸から、透明な雫が流れる。
ヒカリ:「あの子がもう、あたしの知ってるあの子じゃないって」
ヒカリ:「そんなこと、あたしが一番分かってたんだ」
ヒカリ:「分かってて、逃げてたんだよ。知らない振りをしてたんだ」
ヒカリ:「本当は、あたしが……」
ヒカリ:「誰より、あたしが。決着を付けなきゃいけないことだったのに」
ヒカリ:シキの手を握り締める。ぽつり、ぽつりと雫が落ちて。
ヒカリ:「見ない振りをしてたんだ」
ヒカリ:「逃げたんだよ」
ヒカリ:「誰かが────」
ヒカリ:「────シキが。何とかしてくれる、って」
シキ:「私、が………」その言葉を噛みしめるようにして
ヒカリ:縋りつくことも出来ずに、ただ身を寄せて、肩を震わせる。
ヒカリ:「シキ……」
ヒカリ:「……あの子を」
ヒカリ:「……イノリを……」
シキ:「ヒカリ……やめてよ……」
シキ:「言わないでよ……」
シキ:「そんなこと言われたら……私……」
シキ:小さく振るえる肩を抱きしめる。
ヒカリ:その抱擁に応え、しかしその言葉は拒むように、弱々しい力で背中を抱く。
ヒカリ:「……あの子を……」
ヒカリ:「……救ってくれて、ありがとう」
シキ:「……っ!!」
シキ:「……ぅ……うぅ……!!」
シキ:「ごめん、なさい」
シキ:弱々しい身体が折れそうな程抱きしめて、嗚咽を漏らす。
シキ:「ごめんなさい……!ヒカリ……ごめん……!!」
ヒカリ:「……謝ら、ないでよ……」
シキ:「だって……私……今……」
シキ:「安心……しちゃってる……」
ヒカリ:「……いいんだよ」
ヒカリ:「シキは……何も悪くないんだから」
ヒカリ:泣き濡れた顔をくしゃくしゃにして、不器用に過ぎる笑みを浮かべて。
ヒカリ:「……ごめんね」
ヒカリ:抱き合ったまま、シキの頭をゆっくりと撫でる。
ヒカリ:幼い妹にそうするように。
ヒカリ:「どうしようもないお姉ちゃんで、ごめんね……」
シキ:「ぐす……やめろぉ……っ」
シキ:いやいやをするように首を振って
シキ:「私……は」
シキ:「私は……!」
シキ:ヒカリの手を取って、その顔を正面に見据える。
シキ:「私は、ヒカリの妹になんてならない」
シキ:「ヒカリは……逃げてなんかないよ」
ヒカリ:「……え……」
シキ:「例え手は出さなくても、ずっと目を逸らさなかった」
シキ:「あの時も、全部見ないふりだってできたのに」
シキ:「ちゃんと最後まで、イノリのことを見ててくれた」
ヒカリ:「……っ……」
シキ:「今だって、そんなになるまで」
シキ:「私達のこと、見守っててくれた」
ヒカリ:潤んだ瞳を隠すように、シキの胸元に顔をうずめる。
ヒカリ:「……バカ……」
ヒカリ:「そんな都合いいことばっか言って……」
ヒカリ:「……甘えたくなっちゃうじゃんか……」
シキ:「甘えてよ」
シキ:「私だって甘えてるんだから、不公平じゃん」
ヒカリ:「……」
ヒカリ:ぎゅう、としがみつくようにして。
ヒカリ:「……じゃあ、一つお願い」
ヒカリ:「……聞いてくれる?」
シキ:「聞くよ。なんでも聞く」
シキ:「私は認めない、諦めない。ヒカリのこと、ちゃんと背負わせてよ」
ヒカリ:「……」
ヒカリ:「……名前」
シキ:「ヒカリの、名前?」
ヒカリ:「うん……」
ヒカリ:「あたしの、この名前」
ヒカリ:「元になったクローンの個体から、そのまま付けられただけの名前なんだ」
ヒカリ:「イノリと二人で居た時のあたしは、それでいいと思ってたけど……」
ヒカリ:「でも、もう」
ヒカリ:「あたしは……他の誰かじゃない、あたしでいたい」
ヒカリ:「だから……」
ヒカリ:身を離して、じっとシキの顔を見て。
ヒカリ:「……名前」
ヒカリ:「シキに付けてほしい。あたしの名前」
ヒカリ:「あたしだけの、名前」
ヒカリ:ロイス取得 シキ 尽力/○罪悪感
ヒカリ:ロイス取得 シキ ○秘匿/秘匿
シキ:「……」小さく頷いて
シキ:ロイス取得 ヒカリ 尽力○/責任感
シキ:「うん。約束する」
モノ:「……」
モノ:きょろきょろと、目まぐるしく視線をさまよわせながら
モノ:廊下を歩いている。
ヒサギ:「モノさん?…どうしましたか?」ひょこ、と電気室から顔を覗かせて。
ヒイラギ:「……、モノか」壁にもたれながら
ヒサギ:スパナを工具入れに戻し、油汚れで顔を黒くして。
モノ:「あ、あ」
モノ:「ヒサギ、ヒイラギ……こ、こんにちは……え、へへ」
ヒサギ:「ええ、こんにちは。どうかなさいました?」
モノ:怯えたように肩を縮めて、視線を泳がせている
ヒイラギ:「……こんにちは」挨拶をされたので返す
モノ:「な、なんでもないよ」
モノ:「モノは、なんでも、ない」
ヒサギ:怯えられたので参ったな、という様子で手を肩口くらいまであげる。
ヒイラギ:「……こっちは、メンテナンス中だ」
モノ:昨日までと
モノ:まるで態度が違う。
ヒサギ:「………む」
モノ:崩壊前、最初に更衣室で見かけたときのことを
モノ:君たちは思い出すかもしれない。
モノ:「……」
モノ:パニックを起こして立ちすくんでいる。
ヒサギ:「なんでもない、って。そんな様子でそんなわけはないでしょう……、」と、そこで強く言いかけたところで、思い出して言葉を切る。
ヒイラギ:「……」そのへんにある空き箱を裏返し、椅子代わりにする
ヒサギ:「~~~~」こういう風にパニックになられるとどうも弱い。別段気にせず何でもありで、というわけにもいかないからなおさら。
ヒイラギ:「……とりあえず、座ったらどうだ」
モノ:「……あ、うぇ」
ヒイラギ:同じように空いた箱を裏返したものを近くに滑らせる。
モノ:言われるがまま、ヒイラギの傍に座る。
ヒサギ:「………」姉さんの言う事は聞くんだ……って一瞬思ったことを打ち消しつつ、片付ける。
モノ:「シキ」
モノ:「シキ、いないの」
ヒイラギ:「……探してるのか」
ヒサギ:「シキさん、ですか?……??」前見た時とあまりに違う様子に目を白黒させる。
モノ:こくりと頷く
モノ:「い、いたのに、さっきまで、一緒にいたのに」
モノ:「いなく、て、いなくなって」
モノ:「シキは、どこ?」
ヒサギ:「あれで、色々自分からする人ですから…何か仕事とかでもしに行ったのかな…?」まあともあれ、困っているならと思考を切り替える。
ヒイラギ:「部屋で待っ……いや」
モノ:「見えない」
モノ:「シキが、見えない、モノは、見てるって、言ったのに」
モノ:「見えないよぉ」
ヒイラギ:「とりあえず、シキはここにはいないが……」ポケットからチョコバーを取り出す。
ヒイラギ:「……落ち着け」渡す
モノ:「い、いらない!」
モノ:弾き落とす。
ヒイラギ:「……っ、そうか」
ヒサギ:「…………、」一瞬でそうになった言葉を抑える。シキさんへの対応の違いに混乱していたけれど。
ヒイラギ:「シキがそばにいないのが嫌なんだな」
ヒサギ:(これは……あの、”みんな”への依存的な執着が、シキさんの方に…?)あの目を傷つけた後から何があったかはわからないけれど。
モノ:「わ、わかん、ない」
モノ:「モノは、シキが、なんでもしてて、いいって」
モノ:「そう思った」
モノ:「シキ、だったら、いいよって」
モノ:「モノのこと、叩かなくても、怒鳴らなくても、唾を吐かなくても」
モノ:「シキの、本当は」
モノ:「そうじゃなくても、わかるから」
ヒイラギ:「……」腕を組みながら聞いている。
モノ:「そう、思って、だから」
ヒサギ:「………ふ、む」本当のこと……そこがキーだろうか、と考えを進めつつ聞く。
モノ:「シキを、見てるだけで」
モノ:「いいって」
モノ:「でも、見えない、今は見えない」
モノ:「な、なんで、こんなに」
モノ:「見えない、だけなのに」
ヒイラギ:「モノ」目線をあわせるようにする。
モノ:「……シキ……」
モノ:膝を抱えて蹲る
モノ:「あぅ」
ヒイラギ:「……シキがそばにいないことが、多分お前は嫌なんだろう」
モノ:覗き込まれて、顔を隠そうとする
ヒイラギ:「ボクにはそう見える」
モノ:「でも」
モノ:「シキが、いないのが」
ヒイラギ:強引に触れようとせず、執拗に近づこうとせず、ただ距離を保って、目線だけを合わせる。
モノ:「も、モノに、シキのこと見せたくないのが」
モノ:「本当、だったら」
モノ:「それでいいよ、モノはいいよ、だって本当だから!嫌じゃない!」
モノ:「嫌じゃないのに……」
モノ:「嫌……」
モノ:「なんでぇ……」
ヒイラギ:「……シキの本当と、モノの本当が、ぶつかってるからじゃないか」
ヒイラギ:「だから苦しい」
モノ:「モノの、本当」
モノ:「……モノは」
モノ:「みんなの、役に立つ」
モノ:「みんなの、してほしいこと、するよ」
モノ:「え、へへ、へ」
モノ:刷り込まれた、染み付いた卑屈な笑みをヒイラギに向ける
モノ:「苦しく、ないよ」
ヒイラギ:「じゃあ今はどうだ」
ヒイラギ:「……シキはここにはいないぞ」
モノ:「ぜ」
モノ:「全然、平気だよ!」
ヒイラギ:「シキがお前と会いたくないのが、本当だったとしたら?」
モノ:「平気!」
モノ:「本当のことは、苦しいから」
モノ:「苦しいけど、本当のことだから」
モノ:「平気、平気なの」
モノ:「ずっと、モノは、知ってる」
モノ:片目が薄く涙ぐんでいる
ヒイラギ:「……ボクは、もしヒサギと離れることになったら」
ヒイラギ:「多分平気じゃいられない」
ヒサギ:二人の邪魔にならないように小さくしていたが、少しぴくりと反応する。
モノ:「……」
ヒイラギ:「……シキのことが大事なんじゃないか。ボクにはそう見えてるが」
モノ:2人を見つめて、胸を抑える。
モノ:「ヒサギと、ヒイラギが、一緒にいるの」
モノ:「いつもと、同じなのに」
モノ:「見てるだけで……モノ、うぅ……」
モノ:「大事……?」
モノ:「シキが、大事、でも」
モノ:「モノは、大事にされなくてもいい」
モノ:「それが本当だったら、いい」
モノ:「いいのに」
モノ:「いいのに、いいのに」
モノ:「いいのに!いいのに!いいのに!」
モノ:ガツガツと床に頭を叩きつけている
モノ:「いいのに……」
ヒサギ:肩からぶつかって、止めるように抱き着く。
ヒサギ:「………モノさんは、シキさんのことを見ていたいですか?」
モノ:「約束」
モノ:「約束、した」
モノ:「1人にしないでって、言ったのに」
モノ:「いなく、なって」
モノ:肩を震わせている
ヒサギ:「……、じゃあ、シキさんにどうしてって聞いてみませんか」
ヒサギ:「今、見えてないなら」
ヒサギ:「確かめましょう。そうしていいと思います。約束っていうのは、大事なことだから」
モノ:「……いや」
モノ:「嫌、だ」
モノ:「だって」
モノ:「嫌い、って言われる、言われたら」
モノ:「……怖い」
モノ:「本当のことなのに、本当のことが」
モノ:「嘘よりも怖い」
ヒサギ:「………、」ここで勇気を出して、とか。そういうことを言うのは簡単だけれど。それは言っちゃいけないことだと思った。
モノ:「こんなの、モノは、知らなくて」
モノ:「おかしい、おかしくなる」
モノ:「嫌いって言われるの、怖い」
モノ:「好きって嘘つかれるの、怖い」
モノ:「シキが、怖いよ」
ヒサギ:「……、う~~」困った。大事な人に、好きな人に、相手からはそうでないと思われることはおそろしい。
ヒサギ:それは、自分もどうしようもなく分かることだから。
ヒイラギ:「……多分、モノは」
ヒイラギ:「本当に初めて、誰かを大事に思ったんだと思う」
モノ:「ひ……ぐ……」
モノ:ヒサギの腕の中でうずくまって
ヒサギ:そっと背中をさする。
モノ:もはやとめどなく、涙を流している。
ヒイラギ:「……誰かを大事に思うことは、怖いことだよ」
ヒイラギ:「その人を失うかもしれない、その人に嫌われてしまうかもしれない」
ヒイラギ:「……だったらいっそ、誰も大事になんて思わないほうがいい……なんて思う、かもしれない」
モノ:「……」
モノ:「ちがう、の?」
ヒイラギ:「ああ」
ヒイラギ:「……ボクは、ヒサギがいてくれてよかったと思ってる。時々喧嘩もしたけど、それでも」
ヒイラギ:「今こうして、一緒にいて、よかったって」
ヒイラギ:「……モノ、その、なんだ」
ヒイラギ:「シキがお前にとって、そういう存在であるなら、それはきっといい事なんだって、ボクは思う」
ヒサギ:「………わたしも、後追いになりますけど」
ヒサギ:「そうやって、一緒にいたいと思えるひとがいて、そうできるのは……本当に、素敵なことで、奇跡みたいに貴重なものだって、思います」
モノ:「いいことじゃない、よ」
モノ:「大事とか、奇跡とか」
モノ:「全部嘘で」
モノ:「相手を傷つけるのが、傷ついてる相手を見て喜ぶのが本当のことで」
モノ:「モノは、だから」
モノ:「何も信じないことにしたのに」
モノ:「祈ったりしないことにしたのに!」
モノ:「どうして……」
ヒサギ:「………本当に、深く深く、一生掛かっても消えない傷のつけ方は」
ヒサギ:「殴ったりすることじゃないんです。そんなことじゃ、こころの、魂の奥底までは届かない」
モノ:「……あ」
モノ:「そ、っか」
モノ:「これが……」
モノ:「シキのつけた、孔」
ヒサギ:「大事にすること。愛すること。そうして、与えること。それが」
ヒサギ:「こころのかたちさえ変える、そういう傷になるから」
モノ:胸を抑える
モノ:「えへへ、へ」
モノ:片目に涙を滲ませたまま、笑みを浮かべる
モノ:「シキ、シキ、ねえ」
モノ:「本当に、楽しい、よ」
モノ:ふら、と立ち上がり
ヒサギ:ぎゅ、としっかりと深く抱きしめる。
ヒサギ:そうして、立ち上がろうとするのに合わせて離す。
モノ:「ぁう」
ヒサギ:「ごめんなさい。つい、そうしたくなって」
モノ:「いいよ」
モノ:「ヒサギ、ヒイラギ」
モノ:「教えてくれて、よかった」
モノ:「ありがとう」
ヒイラギ:「……よかったなら、ボクらもよかった」
ヒサギ:「……ほとんどヒイラギ姉さんでしたけど、まあ。少しでも役に立ったならよかった」
ヒサギ:「…あとそうだ。おでこ、傷になっちゃってるから。絆創膏と、消毒液です」
ヒサギ:ぱぱっと消毒して、絆創膏を張る。
モノ:「ありがと、ありがと」
モノ:フラフラとまた歩き出す
モノ:「シキのこと、探す」
ヒイラギ:「……早く見つかるといいな」
ヒサギ:「じゃあ、こっちで見かけたら、お伝えしますから。…あまり無理はしないで」見送る。あれでよかったのかな、と引っかかるものを抱えて。
モノ:「シキが何考えてるのか、わからない、けど」
モノ:「わからないから」
モノ:「信じられる」
【Middle latter half/ヒイラギ】
GM:ミドル後半 4手番目 シーンPCはヒイラギさんです
GM:誰を指名しますか?
ヒイラギ:ヒサギを
ヒサギ:はわわ 了解です
GM:ではメインシーンはヒイラギさん ヒサギさん サブシーンはモノさん シキさん ヒカリさんになります
ヒイラギ:ふとしたきまぐれだったのかもしれない。
ヒイラギ:いつもは、誰も起きていない時間に、あるいは他の誰もが作業をしている間にシャワーを済ませる。
ヒイラギ:肌を見られたくないのは、羞恥からだけではなく
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:肌に走るいくつもの傷をなぞる。金属や樹脂のような、かさぶたというには無機質なそれ。
ヒイラギ:背骨に沿うように貼り付けられた、支援兵装と直結するための装置。
ヒイラギ:見られても、余計な心配を買うだけだ……と、そう思っていたから。
ヒサギ:そこに、ぺたぺたと歩く音とから、と軽いものを引く音がする。
ヒサギ:「……少し汚れちゃったな、洗わないと……って。あれ」目を少し見開いて。
ヒサギ:「……珍しいね、姉さん。いつもならもっと人が遅かったり、早いのに」油汚れを幾か所かに付けた、白い肌の少女。
ヒイラギ:「……ヒサギか」
ヒサギ:「はい、ヒサギですよー」
ヒサギ:そう言いながら、隣のシャワーヘッドを取る。
ヒサギ:「姉さん、水とか洗剤大丈夫?後のがいいならそうするけど…」
ヒイラギ:「いや、構わない」
ヒサギ:「ん。ありがとね……、って。こうすると結構前のこと思い出すな~」人間の身体、というものの感覚にそもそも戸惑っていた時。
ヒサギ:「あの時は洗ってもらったんだっけ。……今度は、わたしが洗ってあげよっか?」くすくす笑いつつ。
ヒイラギ:「あったな、そんなことも」目を細める。
ヒサギ:「そうそう。今思うと介護かってレベルだったよね……お手数おかけしました…」
ヒイラギ:「いいさ、別に」
ヒイラギ:シャワーを止める。水滴が滴る。
ヒサギ:「ん」ちょっとくすぐったそうに笑って。
ヒサギ:「あ、もう上がる?もう少し早く来ればよかったかなあ」一杯泡立ててスポンジを使いごしごしと擦っている。
ヒサギ:結構深くまで身体を入れたりしたため、少し手間取りつつ。
ヒイラギ:泡だらけのヒサギにゆっくりと近づいて、そのまま抱きしめる。
ヒサギ:「………わ、」目をまるくして。
ヒサギ:「な、なになに。どうしたの」
ヒイラギ:「……温かいな」
ヒサギ:「……ん。当然だよ、生きてるもの」そっと抱き締める手に己の手を重ねる。
ヒイラギ:自分から直接触れたのは、いつぶりだろう。
ヒサギ:へにゃ、と笑いながらそのままに。すべらかな白い肌は、今は洗い流す洗剤と、まだ残る油の匂いがする。
ヒイラギ:「なあ、ヒサギ。聞いてくれるか」
ヒサギ:「姉さんも、あったかいね。それに、ちょっとごつっとしたりつるつるしてる」くすっと笑って。
ヒサギ:「ん。なあに?」
ヒイラギ:「……やっとあいつらのことを、姉妹だって認められた気がするんだ」
ヒサギ:「……うん」
ヒイラギ:「それでさ」
ヒサギ:力を抜いて、あなたの声に耳を澄ませている。
ヒイラギ:「……そう認めたって、ヒサギのことが一番大事なのは、変わらない」
ヒサギ:「…いいのに。大事なのがいっぱいあってもいいんだよ?」
ヒイラギ:「大事なのものが増えても、お前が変わらず大事なんだ……ってことさ」
ヒイラギ:「それに気づくのに、だいぶ時間が掛かったが」
ヒイラギ:きゅっ、と。抱きしめる力を強くする。
ヒサギ:「そう?……でも、結構前からそう思って動いてたんじゃないかな、って、……んぅ」
ヒサギ:「、流したのに…泡とか、汚れ着いちゃうよ」
ヒイラギ:「また洗えばいいよ」
ヒサギ:「みんなが、後から来るかもっ……」
ヒイラギ:「少し恥ずかしいかもな」
ヒサギ:「ま、前は見せたがらなかったのに……!」
ヒサギ:どこかこちらの方が慌ててしまっているような。
ヒサギ:でも、急に動くと色々と危ないかもしれない、と動けない。泡で滑りやすくなっているから、巻き込むと思うと。
ヒイラギ:「……花言葉ってのがある」
ヒイラギ:「ボクの名前も、お前の名前も、植物から由来していて」
ヒサギ:「う、うん」
ヒイラギ:「ヒサギの花言葉は”澄んだ心”、らしい」
ヒサギ:「………な、なんか恥ずかしいな……」
ヒサギ:頬を染めてあわあわとしている。
ヒサギ:「そ、そうだ。姉さんの、ヒイラギはどうなの」
ヒイラギ:「……」頬を染める妹に、ぐっと顔を近づける。
ヒサギ:「あわわわ」
ヒイラギ:「”用心深さ”と”先見の明”だった」
ヒサギ:「………、姉さんらしいんじゃないかな?と思う、んだけど……」
ヒサギ:混乱したまま。
ヒイラギ:「……話を逸らすのは、ボクの悪い癖だな」
ヒイラギ:「ボクは、お前のことが大事で」
ヒイラギ:「お前をずっと守りたくて」
ヒイラギ:「お前が好きなんだ」
ヒサギ:「うえ、え、えと、嬉しいけど、前からも」姉妹として、そうしていたような。
ヒサギ:自分がどうして混乱しているのだろう。そもそもそうなら、別にそう慌てる必要もない、ような。
ヒイラギ:「……ヒサギ」
ヒサギ:「え、うん、何かな」
ヒイラギ:「いや、なんというか……」
ヒイラギ:「……急かすようで恥ずかしいんだが、お前はどう思ってるのかな……って」
ヒサギ:「ええ!?」
ヒサギ:「え、いや、その……わたしも大事だし、幸せになってほしいなって思ったりするよ…?」
ヒサギ:眼がぐるぐるしている。
ヒイラギ:「お、お前を幸せにしたい……って言ったら?」
ヒサギ:「ほえ」
ヒサギ:「い。いや、嬉しいよ?嬉しいけど、その」
ヒサギ:「わたしより、きっと、その…上手くできるひととか、色々考えが変わることだって、きっと先には、あるはずだから」
ヒサギ:「だから、………」
ヒサギ:言葉に詰まる。
ヒサギ:その先を唇に乗せようとして、どうしてもその先に行けない。
ヒイラギ:「……」二人分の鼓動が、流れる水の音に混ざる
ヒサギ:身体がこわばる。それが伝わる。
ヒサギ:「だから、」
ヒサギ:「わたしのことは、」
ヒサギ:「憶えて、………、憶えていてくれれば、それで……、」
ヒイラギ:塞ぐように、唇を重ねる。
ヒサギ:「んぐ、んぅ……!?」
ヒサギ:驚いたように目を見開く。
ヒサギ:硬く強張ったまま、そのままに。
ヒサギ:唯一になろうなんて思わない。好きで愛して、そうでいたとして。それで、もしも亡くしてしまったなら。
ヒサギ:そしてなによりもーーそうなった後に、そうでなくなってしまうことが恐ろしい。
ヒサギ:ぬるま湯のように、”大事なもの”の中に入れておいて、その中にいられれば良い。
ヒサギ:みんなのこともそうしたように。
ヒサギ:「ね、ぇさ、」
ヒイラギ:「……外に出るまで、黙ってようって思ってた」
ヒイラギ:「でも、我慢できなかった」
ヒサギ:「………ひどいよ」
ヒイラギ:「ああ」
ヒイラギ:「ひどい、な」
ヒサギ:「……わたしは……、わたしは。全然もらった名前に、相応しくなんてないのに」
ヒサギ:肩口に埋めて。
ヒサギ:「……死んだりしたくない。消えたくないよ」
ヒイラギ:「……ああ」
ヒサギ:「やだよ……、みんなのことも、この二か月で、そんな程度会わないだけで、わたしのなかから薄くなったりしてるのが分かるんだ」
ヒサギ:「嫌だ……わたしが、そうなるのも」
ヒサギ:「みんなが、そうなるのも……」
ヒサギ:「……姉さんが、そうなったりするかもしれないって思ったら、本当におかしくなりそうで…」
ヒサギ:おそるおそる手を伸ばす。抱き締めるというより、なんとか捕まるように。
ヒイラギ:「……だから、お前と外が見たいんだ。たくさんの物を見て、お前と」
ヒイラギ:「……思い出を作りたいんだ」
ヒイラギ:優しく包むように抱き返す。
ヒサギ:「………わすれないで」
ヒイラギ:「忘れないさ」
ヒサギ:「わたし、わたしは……、ああ、いやだ……こんな、こんなときも、自分のこと、ばかりで…」
ヒイラギ:「忘れる暇なんてないくらい、全部を思い出で詰め込んで」
ヒイラギ:「……そうしたら、最後の最後になったって、一つくらいは残ってるはずさ」
ヒサギ:「……ひとつだって、落としたくないよ…」少し、笑ったようなトーン。
ヒサギ:「……姉さん、ヒイラギ姉さん……、あなたに」
ヒサギ:「あなたのとなりに、いられるようにいたい。しばりつけたくなんてないのに」
ヒサギ:溢れるように手のひらから、赤い粒子が零れだす。
ヒサギ:それが、あなたに触れるのを恐れるように握りつぶす。
ヒイラギ:「ボクがそれを選びたいんだ。お前のとなりに、ずっと居ることを」
ヒサギ:きゅ、と唇を引き結ぶ。
ヒサギ:「……わたしの、コードの”キルケ”は……」
ヒサギ:「フェアリィピースの、コマの復活ルール。……だけど、もっとその前は」
ヒサギ:「帰らんとする英雄のオデュッセウスを、島に縛ろうとする魔女の名前」
ヒサギ:ぶつけるように、唇を合わせて。
ヒサギ:「……離さないよ。そう言ったんだもの」泣き笑いのような表情で。
ヒサギ:”Agrios”≪原初の赤:水晶の剣≫。赤い粒子が、あなたの中に刻まれる。
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を5(→ 5)増加 (68 → 73)
ヒサギ:ストライクビークルの攻撃力を増強してください。
ヒイラギ:銃のほうじゃなくていいかな
ヒサギ:あ、好きな方で……w
ヒイラギ:「……ああ、望むところさ」
ヒサギ:「その赤は、あなたの心とからだを支えます。……わたしから、離れない限りは」
ヒイラギ:「なら、ずっと支えてくれるんだな」
ヒサギ:「………信じますから」答えになっていないような答えで。
ヒイラギ:胸の奥に、温かななにかが確かにある。
ヒイラギ:「ふ」
ヒイラギ:「……ボクも、信じてる」
ヒイラギ:”これからもずっと”ヒサギ/秘匿○/秘匿 取得してSロイス指定します
ヒサギ:その言葉に、まるで日に向かうひまわりのように微笑んで。
ヒサギ:” ”/ヒイラギ/〇秘匿/恐怖 を取得。
ヒイラギ:ただ、腕の中にある温もりを。
ヒイラギ:これからもずっと、続くようにと。
シキ:「そんなわけで、今日からヒカリにはきっちり休み時間を取ってもらいます」
シキ:倉庫の奥、草薙圭吾の隠し書庫。
シキ:小さな黒板に手作りの表を貼って、ヒカリへ何かを説明している。
ヒカリ:「え~~~~~~」口を尖らせる。
ヒカリ:「無理しなきゃ平気だって言ってんじゃんかー」
ヒカリ:「てかバラさないでよ!乙女の秘密を……」
シキ:「前科が多すぎて信用できませーん」
ヒカリ:「横暴だー」
ヒカリ:「職権乱用だー」
シキ:「別に大事に抱えることでもないでしょ。みんなの協力も必要なんだから」
ヒカリ:「別にいらないって言ってんのに……」
ヒカリ:「これまで一人で何とかなってきたんだし。シキ一人知ってれば十分でしょ」
シキ:「普段の哨戒とか施設の点検はみんなで分散して対応するようにローテを組み直します」
シキ:黒板の表をとんとんと叩く
シキ:「ヒカリには基本的に再脱出のためのルート探索に専念してもらうってわけ」
ヒカリ:「話聞けよ~……」
シキ:「今までの私ならそうしてたかもだけどねー」
シキ:「もう無理して抱えないって言ったでしょ」
ヒカリ:「ちぇ……」
シキ:「どうでもいいわけじゃない。大切だから、無くしたくないから」
シキ:「頼れるときにはみんなに頼るって決めたんだ」
シキ:「なのでヒカリも見習うように」
ヒカリ:「生意気な妹だな~」
シキ:「それにヒカリに気を使ってるだけじゃないんだからね。ここを脱出するには、もう一回サアヤと戦うのは避けられない」
シキ:「その時にバテバテで動けません~じゃ話にならないってこと。合理的な理由です」
シキ:「納得した?」
ヒカリ:「ふん……」
ヒカリ:へそを曲げつつ、特に反論は無い。
ヒカリ:「シキがシェルター中抱っこして歩いてくれるならいいけど~」
シキ:「別にそのくらいはいいけど?」
ヒカリ:「はぁ……?」
シキ:「今からやってあげようか?ほら」
シキ:ヒカリの腰へ手を回して持ち上げる。
ヒカリ:「……冗談だし!本気にすんなし!」
ヒカリ:シキの額を指ではじく。
シキ:「んー、抱っこだと手が塞がっちゃうな。おんぶで……あだ!」
シキ:「照れなくてもいいのに~」
ヒカリ:「照れてないし」僅かに頬を染めて
ヒカリ:「ったく油断も隙も無い奴だな……」
ヒカリ:嘆息して「……てか」
シキ:「ヒカリにだけは言われたくないわ」文句を言いながらヒカリを椅子に下ろす。
シキ:「ん?」
ヒカリ:「何でわざわざこんなとこ来たのさ?」
シキ:「ああ、ちょっと調べ物しようかなって」
ヒカリ:「調べ物?」
シキ:「圭吾の持ち物ってのは癪だけど、ちゃんとした本置いてあるのここだけだし」
シキ:「私そんなに頭よくないからさ、ちゃんと意味のある言葉にしたいでしょ」
シキ:「ヒカリの新しい名前」
ヒカリ:「施設の脱出路とか、ジャームの弱点の本があるわけでも……」
ヒカリ:「……」
ヒカリ:シキの顔を見て
ヒカリ:「……ああ、そう」
ヒカリ:「考えてくれてるんだ、ちゃんと」
シキ:「そりゃ考えるよ。約束したんだもん」
ヒカリ:「んー……そっか」
ヒカリ:指先を意味も無く動かして。
ヒカリ:「……あたしはてっきり、二人きりになりたかったのかと思ったけど~」冗談めかして言う。
シキ:「は、はぁ~?意味がわかりませんけど!」
ヒカリ:「え~、図星っぽい反応……」
ヒカリ:「冗談で言ったんだけど~?」
シキ:「知ってますー!」そっぽを向いて
シキ:「大体二人じゃないでしょ。私だけじゃこの部屋になんの本あるかわかんないし」
ヒカリ:「二人じゃない?」首を傾げる
シキ:「一番詳しいのはヒイラギだけど、結構ここに入り浸ってる子は他にもいて……」
シキ:「あれ、そういえばどこまで行ったんだろモノ。いい感じの本探してくるって言ってたのに」
モノ:その時
モノ:ぐらり、とシキの頭上のシャンデリアが揺れて
モノ:脳天に向けて落下する。
シキ:「おわーーーっ!?」
ヒカリ:「……シキ!」
ヒカリ:咄嗟にドローンを盾にし、シキを突き飛ばす。
ヒカリ:一緒になって床に倒れて。
モノ:がしゃん!!
モノ:砕け散ったガラスの破片の中を駆けてくる
モノ:床に倒れた2人に向けて、細い腕を振る
シキ:「っ……てて……なに……?」状況を把握できない様子でシャンデリアの方に目を向ける。
ヒカリ:「ッ……」
モノ:間一髪で狙いが逸れるが
モノ:ごりゅ、という異音とともに、掘削機を当てられたように床がえぐれる
モノ:「じ、じっとしてないと」
モノ:「ダメ、だよ」
シキ:「モノ……?」
ヒカリ:蜂の羽音のような音を立てて、周囲にドローンが集まってくる。
モノ:僅かな蝋燭の灯りが揺らめく中に立っている
ヒカリ:「……何のつもり?」
モノ:ひとつの瞳で見つめている
シキ:砕けたシャンデリア、抉られた床、幽鬼のように立つモノを順に見て。
シキ:「説明してくれる?モノ」
モノ:「さ、寂しくなくて」
モノ:「よかったね、シキ」
シキ:「え……?」
モノ:「ずっと、寂しいって、言ってたから」
モノ:「ヒカリがいて、よかったね」
モノ:がしゅっ!!
モノ:黒板をねじ切る。
シキ:「……えと、つまり」
モノ:「それがシキの本当なら、いいよ」
モノ:「モノはいいよ、それで」
モノ:ぶぉん!!
モノ:投げつけた机が、壁に当たって大破する
シキ:「モノ……!やめなさい!!」
ヒカリ:「……思ってたんだけど」
ヒカリ:「見境なしにセックスする方針、こうなるからやめたほうがいいって」
モノ:「うるさい!!」
モノ:「シキは誰でもよかったのに、なんでもよかったのに」
モノ:「モノは、もう」
モノ:胸を抑える
モノ:「じっとして」
モノ:「じっとしててよ」
モノ:ゆっくりシキへと歩いてくる
ヒカリ:「……」ドローンを待機させたまま
シキ:「ああもう……!」モノの言うことは聞かず、自分から距離を詰める。
ヒカリ:「どうすんのさ、シキ」
シキ:「ヒカリ、いいって言うまで手は出さないでよ」
シキ:「なんとかする」
ヒカリ:「分かってるけどさー。ヤバくなったら止めるからね」
ヒカリ:「キミが撒いた種でしょ。何とかしなよ」
シキ:小さく頷いて
シキ:「モノ、怒ってるんだね」モノの眼前で止まる。
モノ:「は?」
モノ:「モノは、怒ってない」
モノ:「怒ったことなんてない!!」
シキ:いつものようにしゃがんで目線を合わせることはしない。
モノ:「一回もない!!みんながいいならいいよ!!」
シキ:「嘘」
モノ:「来ないで!」
モノ:「モノに触らないで!」
ヒカリ:「……モノ」小さく呟く。
シキ:「モノはずっと怒ってたじゃん。"みんながいいならいい"なんてのはさ」
モノ:子供のように腕を振り回して後退りする
シキ:「怒り疲れてふてくされた子の台詞だよ。モノはずっとそうだった」
モノ:「分かったようなこと言わないでよ!」
モノ:「シキは、な、なんにも、わかってないのに!」
シキ:「そだね、私はなんもわかってなかった」自嘲するように微笑む
シキ:「わかった気になってただけ。今だってそう」
モノ:「フーッ、フーッ」
シキ:「だから、モノの本当をちゃんと教えて」
シキ:一歩ずつ、後ずさるモノとの距離が縮まっていく。
モノ:「……!」
モノ:壁際に追い詰められて、身をすくめる
シキ:「モノ、私は、前に言ったことが間違ってるとは思ってない」
シキ:「"本当"は一つじゃない。たった一つの本当以外はどうでもいいなんて、私には思えない」
シキ:「私はモノに私を見ていてほしい。モノに、黒い魚は一人じゃないって証明したい」
モノ:「……シキ」
モノ:うつむき、首を振る
モノ:「どうだっていい、いい、よ、そんなの」
モノ:「モノは」
モノ:「モノはぁ」
モノ:怯えるような動きで細い腕をシキの腰に回す
モノ:「シキのこと、渡したくない」
シキ:「モノ……」それに応えるように、モノを抱きしめる。
モノ:「み、見えないとこに、いてほしくない」
モノ:「うぅううううう」
ヒカリ:「……」二人を見つめる。
モノ:「誰かのこと、特別とか」
モノ:「思いたくなかったのに」
シキ:「……ごめんね。寂しかったね」
モノ:「ヒトは、モノと、モノじゃない人、だけで」
モノ:「それが、よかったのに」
モノ:「寂しい」
モノ:「モノは、寂しいなんて、思わない」
モノ:「思ったこと、なかったのに……」
モノ:「嫌だよぉ……こんなの嫌だよぉ……」
モノ:シキの胸に顔を押し付けて泣いている
シキ:「それでも……」
モノ:「シキが好きなのも、シキが嫌いなのも……全部……捨てたいよ……」
シキ:「それでも、私は嬉しいよ。モノ」震える背中を優しく撫でる。
モノ:「も、モノでいいって言って」
モノ:「言ってよ」
ヒカリ:「…………」僅かに目を細める。
モノ:「言ってくれたら、いいのに」
シキ:「……言えないよ」
モノ:シキを見つめる
モノ:闇の中で、ただ一筋の細い道筋を見つめるように
シキ:「モノは、私のものじゃない」
モノ:僅かな希望、信じようとする恐怖と高揚が表情に浮かんでいる
シキ:「私だけのものになったら、だめだよ」
モノ:「あ……」
モノ:「ああ」
モノ:瞳孔が開く。
モノ:心臓を握りつぶされた瞬間のように、身を震わせ、よろめき
モノ:そのまま、破壊の残骸で散乱した部屋を出ていく。
ヒカリ:「……モノ……」
ヒカリ:後を追おうとして数歩歩み出し、足を止める。
モノ:「ヒカリ」
モノ:振り返る
モノ:静かに微笑んでいる
モノ:「いいことがあって」
モノ:「よかった」
ヒカリ:「……」
ヒカリ:「……あたしは」
ヒカリ:「モノと一緒に、ここから出たいと思ってるよ」
モノ:「……」
モノ:言葉は返さない、ただ唇の端を曲げて答え
モノ:去っていく。
シキ:「……」その背中を言葉もなく見つめている。
ヒカリ:追うことは出来ない。今の自分が何を言ったところで、モノには逆効果になるだろう。
ヒカリ:「……シキ……」
シキ:「………っ」一瞬、何かを飲み込もうとして、しかし
シキ:「……モノ!!!!」
シキ:去っていく背に、一方的に言葉を浴びせる。
シキ:「渡したいものがあるの」
シキ:「できれば、二人だけで……時間と場所は後で伝える」
シキ:「もしもまだ、私のことを少しでも信じてくれるなら」
モノ:聞こえているのかいないのか
シキ:「信じたいと思ってくれるなら」
シキ:「来て」
モノ:ゆらりゆらりと、細い背中は離れていく。
シキ:「待ってるからね!モノ!」
ヒカリ:「……人には無茶するなって言っといてさ」
ヒカリ:溜息を吐いて。
ヒカリ:「こんなことばっかしてるんだから、世話無いよね」
シキ:「……ごめん」バツが悪そうに目を逸らす。
シキ:「けど、やっぱりさ」
シキ:「これが私だから。綺麗事も嘘もワガママも」
シキ:「全部本当にしたいじゃない」
ヒカリ:呆れたように肩を竦めて。
ヒカリ:「……本当に」
ヒカリ:「支え甲斐のあるリーダーだよ」
【Middle latter half/ヒカリ】
GM:ミドル後半 最後の手番 シーンPCはヒカリさんです
GM:誰を指名しますか?
ヒカリ:シキさんを指名します
シキ:来たか……
GM:ではメインシーンはヒカリさん シキさん サブシーンはヒサギさん モノさん ヒイラギさんになります
ヒカリ:──鳥の話を聞いたことがある。
ヒカリ:
ヒカリ:実験を生き残った私とイノリに与えられた、束の間の生活拠点。それは閉店した小さな書店だった。
ヒカリ:私は本なんて興味無かったけれど、イノリ暇さえあれば読んでいて。私もよくその感想やあらすじを聞かされた。
ヒカリ:その内のひとつに、奇妙な鳥の話があった。
ヒカリ:それは、一つの翼と一つの眼しか持たない鳥。
ヒカリ:隣り合い、お互いに支え合わなくては飛ぶことも出来ない、出来損ないの存在。
ヒカリ:初めて聞いた時に、思った。それはきっと、私とイノリのことだと。
ヒカリ:誰かに造られて、戦うことしか知らない、出来損ないの人形。
ヒカリ:だけど、それでもいいと思った。私にはイノリがいるから。
ヒカリ:彼女を守りたかった。笑顔で居てほしかった。幸せにしたかった。
ヒカリ:イノリは私の全てだった。この世界で、私が生きる理由だった。
ヒカリ:二人ならきっと、どこまでも行けると思った。
ヒカリ:不揃いな翼でも。歪んだ瞳でも。
ヒカリ:きっと、どこまでも高く、飛んでいけると思っていた。
ヒカリ:
ヒカリ:……けれど、そうだ。
ヒカリ:もう一つ、イノリに聞いた話があった。
ヒカリ:どうして、ずっと忘れていたのだろうか。
ヒカリ:人に造られた、偽物の羽。蝋で固めた翼では──
ヒカリ:どれだけ高く飛んだところで、最後には墜ちるだけなのだと。
ヒカリ:
ヒカリ:半身を失った比翼の鳥は──
ヒカリ:もう二度と、飛ぶことは出来ない。
ヒカリ:青空を失い、祈りは届かず。
ヒカリ:ただ、闇の中へと墜ちていく。
ヒカリ:
ヒカリ:「……シキの部屋、初めて入ったかも」
ヒカリ:ベッドに身を投げ出し、ごろんと横たわる。
シキ:「その割にはくろいでんな……もうちょっと遠慮してもいいんだよ?」
ヒカリ:「遠慮してほしいわけ~?」
シキ:ベッドを専有され、古ぼけた椅子に腰掛けている。
ヒカリ:寝返りをうつ。ゆるくウェーブの掛かった髪が揺れる。
シキ:「あーはいはい。無理すんなって言ったのは私でしたね」
シキ:「いいよいいよ。好きなだけくつろげ」
ヒカリ:「へへ。言質とったかんね~」
ヒカリ:シキの前では遠慮する必要など無いと言わんばかりに、その脚はだらりと脱力している。
シキ:「おーこわ。後でなに要求されるかわかったもんじゃないわ」
ヒカリ:「入り浸ってやろうかな~」
シキ:「んー、まあいいよ」
シキ:「この前みたいに知らないとこで倒れられるよりはマシ」
ヒカリ:「えへへ。言質いっこ追加ね~」
ヒカリ:仰向けになって、ベッドから半分落ちかけるような体勢になり。逆さまにシキを見上げる。
ヒカリ:「……ねー」
シキ:「んー?」
ヒカリ:「……考えてくれた?アレ」
シキ:椅子の背もたれに体を預けて、ギコギコと揺らしている。
シキ:「ほれ」机の上のメモの束を指差す。
ヒカリ:「んぇ」視線を動かし
ヒカリ:「あれ全部?」
シキ:書庫から借りてきた本の山と一緒に、何枚も書いては破り書いては破りしたものが積み重なっている。
シキ:「意外と凝り性なんだよね。私」
シキ:「あーでもないこーでもないってやってたらさ。おかげで寝不足」
ヒカリ:「や~……そんなマジになんなくてもよかったのに。ごめんね~?」
ヒカリ:「嬉しいけどさ……」少し声を潜めて
ヒカリ:「……それで?決まったの?」
シキ:「……まあ、ね。私なりに、色々考えたっていうか……」
シキ:「文学とか詳しくないから、そんなに、その」
シキ:「かっこよかったり、かわいかったりはしないかも?だけど……」歯切れ悪く応える。
ヒカリ:「予防線張らないでいいって~」
ヒカリ:ぐいと身を乗り出し。
シキ:「緊張するんだよ……こんなの初めてだから」
ヒカリ:微笑を湛え、シキの顔を覗き込む。
ヒカリ:「……聞かせて?」
シキ:「……」チラチラとその顔を見て
シキ:「……うん」
シキ:まだ白紙のメモを取り出し、ペンを走らせる。
シキ:「……外に出たら、戸籍も必要でしょ」
シキ:「今までやってなかったけど、字も当てといたほうがいいかなって」
シキ:「で、これが名前」
ヒカリ:肩を寄せ、紙を覗き込む。
シキ:メモに書かれた名は、漢字で二文字。
シキ:『海』と『月』。
シキ:「ミツキ」
ヒカリ:「……」
シキ:「……魚」
ヒカリ:その文字を、じっと食い入るように見つめる。
シキ:「身体を寄せ合って泳ぐ魚の群れが、いつでも見上げられるように」
シキ:「どんな時も、その光を目印にできるように」
シキ:「……祈りが届くように」
ヒカリ:「……」
シキ:「遠くにいても、違うところで生まれても」
シキ:「一緒に海に浮かべるように」
シキ:「だから、海の月で、ミツキ」
シキ:「どう、かな……?」そこまで言って、恥ずかしさに耐えられなくなったように
シキ:「あ、後は……!」
シキ:「クラゲみたいにぼんやりプカプカ怠けんぼうさんだからってのもあるけどねっ!」
ヒカリ:「……」瞑目し、小さく息を吐く。
ヒカリ:「最初に見てそっちかと思ったよ~」けらけら笑う。
シキ:「は~、ヒカリにはこの私の溢れる詩情は理解できなかったか~」
ヒカリ:それから、シキの掌を握る。
シキ:「ん……」
ヒカリ:「……ううん」
ヒカリ:「……気に入ったよ。すごく」
ヒカリ:「ありがとね、シキ」
ヒカリ:そうして嬉しそうに、目を細めて笑う。
シキ:「ヒカ……」言いかけて、首を振る。
シキ:「……なら、呼んでもいい?」
ヒカリ:「……あ……」
ヒカリ:「……うん」
ヒカリ:頷いて。
ヒカリ:「……呼んで?」
シキ:「……ミツキ」
シキ:コツン、と額を合わせて
シキ:「ミツキ、ミツキ、ミツキ」
:「……」
:深く息を吸って、吐く。
:ほんの少し、躊躇うような間があって。
:やがて、ゆっくりと口を開く。
ミツキ:「……うん」
ミツキ:「ありがとう。シキ」
ミツキ:照れたように笑って、首を傾げる。
シキ:「……どういたしまして」
シキ:初めて、素直にその気持を受け取って
シキ:「これからもよろしくね。ミツキ」
ミツキ:「うん……」くすぐったそうな顔をして
ミツキ:「前にね……イノリが言ってたんだ」
シキ:「イノリが……?」
ミツキ:「……うん」
ミツキ:「名前っていうのは、その人の在り方を示して、定める……一番大切なものなんだって」
ミツキ:「貰っちゃったなぁ、シキに」
ミツキ:くすくすと楽しそうに笑う。
シキ:「……それ、ちょっと違うよ」柔らかな笑みを返して。
シキ:「やっと一つ返せたんだよ。私から、ミツキに」
ミツキ:「言ったでしょ。借りてたのはあたしの方だって」
ミツキ:「……ねえ、シキ」
ミツキ:「お返しに、何をあげたらいい?」
ミツキ:「あたしの持ってるものなら、何でもあげるよ」
シキ:「……じゃあ」
シキ:言いかけて、目を閉じる。
シキ:「……ううん、いらないよ」
シキ:「ミツキが今持ってるものは、ミツキだけのものじゃん」
ミツキ:「……ねーっ……」
ミツキ:非難するような声を上げて。
シキ:「私が貰っても抱えきれない……なにさ」
ミツキ:「……もー……」
ミツキ:「……言わせないでよ」
ミツキ:「……あげたいの。あたしが」
シキ:「……ばか」
シキ:「急に素直にならないでよ……そんなさ」
シキ:「ちょっと……ドキドキしちゃうじゃん」頬を染めて目を逸らす
ミツキ:「させようと思って」
シキ:「……いじわる」
ミツキ:悪戯っぽく笑う。その顔も、僅かに朱に染まっている。
シキ:「……じゃあ、借りるだけね」
シキ:「どっちかが抱え込んだりしない。そう決めたばっかりなんだから」
ミツキ:「あたしがあげたいって言ってるのに~」
ミツキ:「ははーん」
ミツキ:「ビビってんの?」
シキ:「は、はぁ~!?」
シキ:「ビビってないし!なんでそういう話になるわけ!?」
ミツキ:「だってそうじゃんか~」
ミツキ:「受け止めるのが怖いんでしょ?あたしのこと」
ミツキ:「しょうがないな~……お姉ちゃんがリードしてあげようかな?」
ミツキ:挑発するように目を細める。
シキ:「んなっ……こいつ言わせておけば……!!」
シキ:その挑発に乗ろうとして「……いや」
シキ:「うん、まあ、そうだね。ちょっと怖いのも本当」
ミツキ:「……ふふ」
シキ:「ミツキが背負ってきたもの。なんだかんだで私にはまだ想像できてないもん」
シキ:「怖いよ。ちゃんと支えられるのか。私だけ潰れちゃったらどうしようって思う」
シキ:「けど……だからこそさ」
シキ:ミツキの肩を掴んで、ベッドの上に押し倒す。
ミツキ:「……ぁ……」
ミツキ:ほんの僅かに瞠目する。
シキ:「私が受け止める。私が手を引いてみせる」
シキ:「だから、ミツキはちゃんと見てて」
シキ:薄い笑みを貼りつけた唇に、優しく口付ける。
ミツキ:「……」
ミツキ:口付けを受け入れて、静かに目を閉じる。
ミツキ:「……うん」
ミツキ:「見てるよ。隣で」
ミツキ:「シキのこと、支えるから」
シキ:「……約束、だからね」
ミツキ:「うん」
ミツキ:翠玉のような目が開き、間近に視線が合う。
ミツキ:「約束」
ミツキ:するりと腕が伸びて、シキの首の後ろに回る。
ミツキ:「……ねえ……」
ミツキ:「シキは、皆のお姉ちゃんはやめるんでしょ?」
ミツキ:「それで……あたしの妹になるのも、ヤなんだよね」
シキ:「うん」ミツキの腰に腕が絡みつく。
ミツキ:「じゃあさ……」
シキ:折れそうな身体を支えるように、優しく抱きしめる。
ミツキ:「……あたし達って、何なのかな?」
ミツキ:試すような微笑を見せる。
シキ:「それは……」一瞬、キョトンとした顔をして
シキ:「……一言で言わないとダメ……?」
ミツキ:「え~~~」
ミツキ:「あえて言うもんでしょ?こういうのは」
ミツキ:「分かってないな~~、シキは」
シキ:「う、うるさいなあ……!」
シキ:「緊張するんだよ!いざこういう時って……」
ミツキ:「……言って」
ミツキ:「言ってよ」
シキ:「………」
ミツキ:吐息の掛かる距離で、シキから目を逸らさない。
シキ:「……もう、ワガママな奴め」
シキ:意を決して一度目を閉じて
シキ:再び開ける。真っ直ぐにミツキを見据えて
シキ:「………」
シキ:しかし、やはりその視線には耐えられずに彼女を抱き寄せ
シキ:その耳元で、ぽつぽつと言葉を紡ぐ。
シキ:「ミツキは、私にとって」
シキ:「一緒に……助け合う、仲間で……一緒に戦う、戦友で……」
シキ:「ほっとけない……けど頼っちゃう……先輩で」
シキ:「……ずっと一緒にいたい……」
シキ:「こ……」
シキ:「……好きな、人」
シキ:「……かな」
ミツキ:「……」
ミツキ:「一言じゃないじゃん」
ミツキ:「最後逃げたし」
シキ:「ぜ、全部本当だもん!逃げてないし!!」
ミツキ:その口を塞ぐように、不意打ち気味にキスをする。
シキ:「んっ……ぅ」
ミツキ:「……えへへ」
ミツキ:「ま、及第点にしといてあげましょうかね~」
ミツキ:「頑張ったみたいだし。今後に期待ということで?」
シキ:「こ、こいつ……」頬を染めながら睨む。
シキ:「な、ならミツキはどうなのさ!」
ミツキ:「へ?私?」
シキ:「私ばっかり恥ずかしい思いするのは不公平じゃないんですか~」
ミツキ:「……ん~……」
ミツキ:少し考え込んで。
ミツキ:「誰にも渡したくない」
ミツキ:シキの耳元で囁きかけて
ミツキ:「……かな?」
ミツキ:くすりと笑う。
シキ:「……っ」ビクリと肩を震わせて「もう……!」
シキ:ミツキにロイスを取得 秘匿○/羞恥
シキ:「いつか見てろよな……ミツキ」小さく笑った。
ミツキ:ロイス取得 シキ ○愛情/不安
モノ:ーード ッ グォン!!
モノ:廊下の一部が爆炎でえぐれる。
モノ:警報がけたたましく鳴り響く。
モノ:『ヒサギ』
モノ:『ヒイラギ』
モノ:『邪魔、どいて』
モノ:きゅおぉおおん
モノ:3m近い全長の大鎧めいた駆動機械が
モノ:がりがりと壁や床を削りながら、君たちへと迫ってくる。
ヒサギ:爆炎から手で顔を守りつつ、無針注射器を抜いている。「出来ると思いますか……!ああもう、どこから引っ張り出したんだか!」
モノ:『えへへ』
モノ:『地下で見つけたの、拾ったの』
モノ:『モノの、友達』
モノ:『最後の、友達!!』
ヒサギ:「ええまあ見つけたのは偉いですけど、こういうことに使わないで欲しかったですね!」赤の粒子のが空間に広がっていく。
ヒイラギ:「チッ、あのガラクタの動きを止めないと話にならないな……!」
ヒサギ:「動作プログラムに介入を開始します…!完璧には止められないですけど…!」
モノ:研究ブロックでサンプルとして開発されていた拠点制圧用の補助駆動四肢。
ヒイラギ:「……ああ、充分だ。とにかくあのガラクタを止めて、アイツにお灸を据えてやらなきゃだ」
ヒサギ:情報をこそ起源とするヒサギからすれば、プログラムも記憶も、どちらも差異はない。事実、動作記憶さえ操作することも可能であるから。
モノ:機体コードは”アマゾーン”。
モノ(アマゾーン):『ッ!』
ヒサギ:「まずは、脚を…!」トリガー。直撃はしないが、脚部へ濃い赤の霧が覆う。
モノ(アマゾーン):足回りの動きが鈍くなり、前進が遅くなる
ヒサギ:機械も生体も、各種様々な部品がかみ合って稼働するものだ。そのタイミングをずらした。
ヒイラギ:合わせるように、脚部関節を狙った射撃。支援兵装の演算込みの、正確なもの。
ヒサギ:赤い霧のようになった粒子が、その射撃を邪魔することはない。
モノ(アマゾーン):しかし筋肉の動きをもとに動かす単純な構造故に、完全に回路をハックすることはできない。
モノ(アマゾーン):『きかない、よ!そんなの!』
モノ(アマゾーン):関節を抉られた片足を引きずるように
ヒサギ:「……っ、強化外骨格、それも本当に単純なやつ…!効果は微弱!」シリンダーを入れ替える。
モノ(アマゾーン):進んでいく。目指している方向はシキの私室へ。
ヒイラギ:「中身を引きずり出さなきゃどうしようもなさそうだな……!」
モノ(アマゾーン):『シキ、シキ』
ヒサギ:「一番苦手なんですけどねそういうの…!」
モノ(アマゾーン):『びっくりするかな』
モノ(アマゾーン):「びっくりしてくれるかな、えへへ」
ヒイラギ:「するだろうな!」
モノ(アマゾーン):『じゃあ!』
ヒサギ:「~~~、シキさん好きなのはいいですけど、こう真向から無視されるとムカッとしますね!」
モノ(アマゾーン):『モノだけのこと、見てくれるの!?』
ヒイラギ:「……どうかな?」
モノ(アマゾーン):『モノじゃなくてもいいなんて、もう、思ったりしない、かな』
ヒサギ:その言葉にわずか表情を歪めつつ、再度装填していく。
モノ(アマゾーン):『どうして、どうして』
モノ(アマゾーン):『モノには孔が空いてるのに』
モノ(アマゾーン):『ヒイラギ、ヒサギ』
モノ(アマゾーン):『自分だけのこと、見てくれる相手がいて』
モノ(アマゾーン):『よかったね』
モノ(アマゾーン):『き、き、きっと』
モノ(アマゾーン):『嬉しいよね』
ヒサギ:「っ……」
ヒイラギ:「……ああ、そうだ」
ヒイラギ:「けどな、”自分だけ”じゃダメだ」
ヒイラギ:銃を構えたまま。
ヒイラギ:「……相手だけじゃダメなんだ」
モノ(アマゾーン):『どうして』
モノ(アマゾーン):『こんなに、こんなに』
モノ(アマゾーン):『モノは、いっぱいになってるのに』
モノ(アマゾーン):『なんで、シキは……!』
モノ(アマゾーン):がぉおおおん!!
ヒサギ:「………嫌ですよね。大事な相手なら、自分だけを見て欲しい。目を逸らさないでほしい」風に髪を靡かせながら。
モノ(アマゾーン):両腕のブレードが、床を深々と両断する
ヒサギ:機動力はそうない。もとから戦闘自体を想定した設計でなく、攻撃能力も能力の転用にすぎない。
ヒイラギ:「本気で殺すつもりか……?まだ侵蝕限界に至ってはいないはずだが」
ヒサギ:「………でも、それだけ?あなたが好きになったシキさんは、それだけでしたか?」なんとかローリングでギリギリ直撃はしない位置に。
ヒサギ:「色々いっぱいいっぱいになってるんでしょう。元から、戦闘用に訓練されていれば、どうしてもそこのトリガーは低くなるから、……っ」
モノ(アマゾーン):『うぁああああッ!』
モノ(アマゾーン):巨大なアームクローがヒサギへと向かう!
ヒサギ:床の断片で頬に切り傷ができる。さて、本当に不味いことになってきた。
ヒイラギ:「クソッ、だが、まだ向こうに行っちゃいないことを祈るしか……ヒサギッ!」叫ぶとともに突き飛ばす
ヒサギ:リザレクト前提で一撃を受けて、武器の中枢を掌握ーー
ヒサギ:「姉さ、」
ヒイラギ:バギッ
ヒイラギ:装甲の砕ける音
ヒイラギ:だが、その装甲は見る間に修復されていく。
ヒサギ:「、」がり、と口の中で音がした。鈍い鉄の匂い。
ヒイラギ:「……今、だっ!」
モノ(アマゾーン):『い、ひひッ』
モノ(アマゾーン):『ヒイラギ!そんなにヒサギが大事なの!』
ヒイラギ:「……大事さ、ああ、そうとも!」肉体のリザレクトを全て装備修復に回す。
ヒサギ:飛び出す。アマゾーン、そのすぐ近くまで。
モノ(アマゾーン):『嘘だ、嘘、嘘』
ヒイラギ:試験用個体としての調整。故に連撃は致命打になりかねない。
モノ(アマゾーン):『大事なんて、愛なんて、好きなんて』
ヒサギ:傷も構わない。ただ速く。
モノ(アマゾーン):『本当のことじゃない!!』
モノ(アマゾーン):ヒイラギにトドメを刺すべく、ブレードを振り上げる
ヒサギ:がちゃ、と装甲の可動部。搭乗者保護のシートに覆われるところに突き付けられる音。
ヒサギ:「………充填完了。対処コード:034289を執行します」無針注射器だ。
ヒイラギ:「嘘から始まったってな」
ヒイラギ:「──本当になることもあるんだよ」
ヒサギ:がぁん、と杭を打ち付けるような音がした。
ヒサギ:その媒体は内部に浸透し、強制的に固定させる。指令は一つ。
ヒサギ:「……”動くな”。……ええ、まったく」
ヒサギ:「……本当じゃなきゃ、好きになることも出来ないなんて」
ヒサギ:「そんなの、人間の認知機能として無いんですよ」
モノ(アマゾーン):『あ、あ』
モノ(アマゾーン):がしゃん
モノ(アマゾーン):駆動兵器の両腕が力なく崩れ落ち、床を割った
モノ(アマゾーン):『……』
ヒサギ:「………ふぅ」額から血を流しつつ。
モノ(アマゾーン):操縦者が外に出てくる気配はない。
ヒサギ:「無事ですか、二人とも」
ヒイラギ:「……全く」
ヒイラギ:「ボクは無事だ。……とりあえず、少し休めばな」
ヒサギ:ぽたぽたと血を何か所かから零している。さほど深くはない。すぐに治る程度だ。
ヒイラギ:「モノ」コクピットに呼びかける。
ヒサギ:「……本当によかった。じゃあ、あとはモノさんですね……」
モノ(アマゾーン):返答はない。
モノ(アマゾーン):操縦席のロックは外れている。
ヒサギ:ふらふらと装甲に手をついて。
ヒイラギ:「なんでこんなことを……は、まあいい。だいたい想像がつく」
ヒイラギ:「……そもそも、よく見つけたし、よく動かせたな。こんなもの」
ヒサギ:「……まったく、もう。本当ですよ……どこでそんなの憶えて…」
モノ(アマゾーン):『……』
モノ(アマゾーン):装甲の殻の中で、黙り込んでいる。
ヒイラギ:息を整え、コクピットのドアに手をかける
ヒイラギ:「話さなきゃわからないだろ」ほら、と手をのばす
モノ:「……」
モノ:座席の上でただぼんやりと、ヒイラギ、そして
モノ:差し出された手を見ている
モノ:「いいよ」
モノ:「もう、いい」
モノ:「ヒイラギも、ヒサギも」
モノ:「い、嫌だよね」
モノ:「置いていって」
ヒサギ:「…………」ぐしゃぐしゃと自分の髪をかき回す。
モノ:「モノは、いらないって」
モノ:「言ってよ……」
ヒイラギ:「……お前は今、変わりつつある」
ヒイラギ:「それに多分、戸惑ってるんだ」
ヒイラギ:「……なあ、モノ。今、お前は自分が自分でわからないんじゃないか」
モノ:「……うん」
モノ:「みんなと、一緒の時は」
モノ:「もっと、もっと、わかりやすかったのに」
モノ:「頭の中、ぐちゃぐちゃ」
モノ:「胸が、苦しくて」
モノ:「……わかんない」
モノ:「わかんないよ……」
ヒイラギ:「わからないままにしておきたくない。……だから、こんなことをしたんじゃないか」
モノ:「シキが」
モノ:「シキが、いなくなったら」
モノ:「モノは、モノに戻れるって」
モノ:「そう、思った、から」
ヒイラギ:「……戻りたいか?本当に」
モノ:「!」
モノ:「怖いよ」
モノ:「自分がわからないのも、こうなったらいいなって信じそうになるのも」
モノ:「こんなに怖いなら、怖いこと、無くしたい……」
モノ:「モノは、最初のモノは、何も怖くなかったから」
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「きっと、シキがいなくなっても」
ヒイラギ:「……怖いままだと思う。その恐怖は、きっとなくならない」
モノ:「じゃあ」
モノ:「殺してよ!」
モノ:「ヒイラギ!ヒサギ!」
モノ:「モノを消してよ!」
ヒサギ:「………本当にそうされたいです?」
モノ:「怖いのも、苦しいのも、なくなるなら」
モノ:「そうしてよ……!」
ヒサギ:ぽたぽたと血を零す掌でそっと撫でて。
ヒサギ:「……そうなったら、大事だと思うことも、そうやって浮き立つこともなくなりますし、それに」
ヒサギ:「きっと、シキさんもみんなも、だんだんモノさんのこと、忘れていってしまうと思います」
ヒサギ:「どんなことを言っていたのか。どんな見た目で、どんな声をしていて……そんなことを、考えもしなくなる」
ヒサギ:「……わたしはいやですよ、絶対。でも、それでもいいっていうなら」じゃき、と無針注射器を取り出して。
ヒサギ:「やりますか?」
モノ:「……」
モノ:腕を広げて、微笑む
モノ:「モノは、大丈夫」
ヒサギ:「…………悟ったような顔して、もう」
ヒイラギ:「……バカ」
ヒイラギ:「モノ。大馬鹿だぞ、それは」
モノ:「?どうして」
モノ:「みんないなかったのに」
モノ:「いなかった時に、戻るだけ」
ヒイラギ:「戻らないんだよ」
ヒイラギ:「似たような形になっても、決して元通りじゃない」
ヒイラギ:「それに、モノ。お前はさ」
ヒイラギ:「まだ始めたばっかりなんだよ、きっと」
モノ:「……」
モノ:「始めたことは」
モノ:「続けなきゃ、いけないの?」
ヒサギ:「やめることはできますよ。でもね」
ヒイラギ:「……どうしてもやめたいなら、止めはしない。けど」
ヒサギ:「一度始めた、という事は消えません。そうしたことと、それを、無意識にでも選んだことは」
ヒイラギ:「なかったことにはならない」
モノ:「……シキ」
モノ:「シキに、会いたい」
モノ:「く、悔しかった、から」
ヒイラギ:「……悔しかったんだな」ふ、と微笑む
モノ:「モノは、自分ばっかり、シキのこと、忘れられなくて」
モノ:「シキは、モノがいなくなっても、いいって」
モノ:「そう、思ったら」
モノ:「悔しかった……」
ヒイラギ:「そうか」
ヒサギ:「まあ……いやですよね。自分ばっかり、みたいな。不公平ですもの」
モノ:「……ヒイラギ、ヒサギ」
モノ:「も、もうちょっとだけ、続けても、いい?」
ヒイラギ:「……ああ、構わないさ」
ヒサギ:「いいんじゃないですか。あなたが、モノさんが始めたことだから。どうするかは、あなたが決めていいんです」
ヒイラギ:「お前が続けたいと思ったなら、ボクらは背中を押すくらいならできる」
モノ:操縦席から立ち上がる
ヒサギ:「もし、色々抱えきれなかったり、大変だっていうなら。相談されたり、愚痴を聞いたりとかはいつでもいいですよ」
モノ:2人の肩に手を回して、抱き寄せる
モノ:「ご、ごめん、なさい」
モノ:「……ありがと」
ヒサギ:「ぉ、わっ」ふらついたまま。「………ええ、いいです。許しますし、どういたしまして」
ヒイラギ:「……いいさ。気長にやればいいんだ」
モノ:「えへ、へ」
モノ:「みんな、死んじゃうかもしれないのにね」
モノ:「サアヤに、殺されちゃうかもしれないのに」
ヒイラギ:「そうだな。……でも、生き残って、外に出られるかもしれない」
モノ:「なんでかな……こんなこと、して……」
モノ:「ヒイラギは」
モノ:「信じてる?」
ヒイラギ:「……ああ。信じたいから」
GM:以上でミドルシーンは終了となります。
GM:ここまでのシーンで最も多くブーケを獲得したPCが、エクストラシーンの権利を獲得します。
GM:まずは次点から発表します。
GM:獲得数2位は……
GM:シキさんです!
シキ:くっそ~~~惜しかった!!
GM:ブーケ獲得数は481個でした。
GM:そして1位は……
GM:ヒカリさんです!
GM:ブーケ獲得数は505個でした。
ミツキ:神に感謝
シキ:くっミツキに負けた……!
GM:まずはミドルシーン後半の処理からしていきましょう
GM:全員1回分の登場侵蝕ダイスを振ってください
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を1d10(→ 9)増加 (73 → 82)
シキ:シキの侵蝕率を1D10(→ 1)増加 (67 → 68)
モノ:1d10+66
DoubleCross : (1D10+66) → 5[5]+66 → 71
GM:ミツキの侵蝕率を1D10(→ 7)増加 (71 → 78)
ヒイラギ:ヒイラギの侵蝕率を1d10(→ 7)増加 (75 → 82)
GM:それからミドルシーン前半で獲得した侵蝕率-1D10を振ることが出来ます。これは振りたい人だけですね
シキ:私は振らなくていいかな~一番低いし
ヒイラギ:カバーやるし振っとこ
ヒイラギ:82-1d10
DoubleCross : (82-1D10) → 82-6[6] → 76
モノ:私もいっかな~
モノ:パス
ミツキ:振っとくか……
ミツキ:78-1D10
DoubleCross : (78-1D10) → 78-4[4] → 74
ヒサギ:振りますー。
ヒサギ:82-1d10
DoubleCross : (82-1D10) → 82-3[3] → 79
GM:それから2回分の購入判定が行えます。
ミツキ:とりあえず回復しよ……
ミツキ:応急手当キット2つ使います
ヒサギ:あ、医療トランクあるんですが これは何回使用出来る感じでしょう 1回ですかね
ミツキ:3+2D10+2D10
DoubleCross : (3+2D10+2D10) → 3+9[6,3]+12[9,3] → 24
GM:う~ん
シキ:私HP満タンだから回復したいひと使っていいよ~ 応急一個
モノ:あ、じゃあいただく!
GM:使えるとこ無かったですからね 2回くらい使えることで
モノ:いやどうなんだろ
モノ:ミツキに集中のほうがいいのかしら
ミツキ:私HPカバーだから欲しいかも
モノ:そですね、そっちに
シキ:つかいな!
ヒサギ:ありがとうございます。ミツキさんに二回分渡した方がよさそうですね。どうぞー
ミツキ:有難く使わせてもらいます
ミツキ:24+2D10+2D10+2D10
DoubleCross : (24+2D10+2D10+2D10) → 24+12[9,3]+13[5,8]+12[5,7] → 61
ヒイラギ:ボクも1個持ってるけど渡すのは回復量見てからでいいかな
ミツキ:これだけやって半分も回復してない……
ヒイラギ:あと1個使いな!
モノ:やばすぎ
シキ:ヤバすぎ
ミツキ:ありがと~~
モノ:ハッピーアイスクリーム
ミツキ:61+2D10
DoubleCross : (61+2D10) → 61+6[1,5] → 67
ヒサギ:手術キット二個挑戦した方がいいかな それとも別のやつ買うべきか
ミツキ:とりあえず自分で2個買います
ミツキ:2DX+1>=8
DoubleCross : (2DX10+1>=8) → 5[5,5]+1 → 6 → 失敗
ミツキ:財産2
ミツキ:2DX+1>=8
DoubleCross : (2DX10+1>=8) → 4[1,4]+1 → 5 → 失敗
ヒサギ:まず”Lătīnŭs”≪オリジン:サイバー≫。社会達成値+10して。
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を2(→ 2)増加 (79 → 81)
ミツキ:+5されてるからギリ足りる筈……
ミツキ:67+2D10+2D10
DoubleCross : (67+2D10+2D10) → 67+12[7,5]+13[6,7] → 92
ミツキ:92/132まで来ました
モノ:こっちでも買っとく?
ヒイラギ:とりあえずヒサギに手術キット買ってもらうかな
モノ:がんばえ~~
ヒサギ:4dx+10>=18 簡易手術キットをまず一個。
DoubleCross : (4DX10+10>=18) → 10[6,7,8,10]+3[3]+10 → 23 → 成功
ヒサギ:成功しました。
ヒイラギ:最高
モノ:つえ~~
シキ:えらい
ヒサギ:4d10回復して!
ミツキ:ちゅよすぎる……
ミツキ:ありがとうございます
ミツキ:92+4D10
DoubleCross : (92+4D10) → 92+26[4,4,10,8] → 118
ミツキ:かなり回復しました
シキ:ようやくここまで来たな
ヒサギ:これはかなり行けてるのでは。 あと何か防具とかほしいのある人います?
モノ:ないはず
ヒイラギ:防具は自前のがあるよ~
ヒサギ:アームドスーツとかもいらなさそうかしら
シキ:移動距離さがるからあんまりいい防具着れないのよね
モノ:ミツキちゃん全快目指す方ででいいんじゃないかしら
ヒイラギ:よさげ
ヒサギ:じゃあもう一回簡易手術狙ってみますねー
ヒサギ:4dx+10>=18
DoubleCross : (4DX10+10>=18) → 8[2,5,6,8]+10 → 18 → 成功
ヒイラギ:えらすぎ
ヒサギ:よしぴったり。使ってね~
シキ:すごい
ミツキ:くそちゅよい……
モノ:っしゃ!
ミツキ:118+4D10
DoubleCross : (118+4D10) → 118+23[10,1,3,9] → 141
ミツキ:お陰様で全快しました
ヒイラギ:やったー!
ヒイラギ:じゃあ自前応急買おう
ヒサギ:よし~ わたしとミツキさんが終わりですね
ミツキ:ヒサギと結婚しよ
ヒイラギ:は?
ヒサギ:シキさんはどうするんですか
ヒイラギ:まだ認めんが……
シキ:ミツキがいいならいいよ
モノ:じゃあこっちも回復しとこう
モノ:応急手当~
モノ:2dx
DoubleCross : (2DX10) → 5[5,5] → 5
シキ:私は一人でも大丈夫だから…
モノ:もいっちょ!
モノ:2dx
DoubleCross : (2DX10) → 5[2,5] → 5
モノ:くそざこ!
ミツキ:そんなこと言わせてゴメンな……
シキ:財産残ってる?
ヒサギ:財産+5入ったあと全部つかいました?
モノ:アームドスーツ買う時に全部吐いちゃった…
ヒサギ:あらら…
ヒイラギ:2dx+4>=8
DoubleCross : (2DX10+4>=8) → 7[1,7]+4 → 11 → 成功
ヒイラギ:もう一個
ヒイラギ:2dx+4>=8
DoubleCross : (2DX10+4>=8) → 10[2,10]+2[2]+4 → 16 → 成功
シキ:えらい
ヒイラギ:財産余っちゃった
ヒサギ:つよい
ヒイラギ:ま、ええやろ!
モノ:やりおる
ミツキ:調達姉妹
ヒイラギ:2個使って回復
シキ:じゃあモノの分は私が買ってあげるよ
ヒイラギ:外に出ても安心
シキ:2dx+1>=8
DoubleCross : (2DX10+1>=8) → 5[2,5]+1 → 6 → 失敗
ヒイラギ:8+2d10+2d10
DoubleCross : (8+2D10+2D10) → 8+7[4,3]+6[5,1] → 21
シキ:2dx+1>8
ヒイラギ:ヒイラギのHPを21に変更 (8 → 21)
シキ:2dx+1>=8
DoubleCross : (2DX10+1>=8) → 10[10,10]+6[2,6]+1 → 17 → 成功
シキ:よっしゃ!一個買えた
シキ:モノにあげるね
モノ:ありがとぉ~~!
モノ:2d10+3
DoubleCross : (2D10+3) → 16[6,10]+3 → 19
モノ:シキだいすき!
モノ:以上!
GM:獲得した5点分の経験点についてもここで使用してください。
シキ:《妖しの招き》のLVを1→2に増やします。これで5点使用
シキ:フルコンボの使える回数を増やすぜ。
モノ:バリアクラッカーのレベルを1→「2
モノ:以上です
ヒサギ:うーん…イリーガルしかとれぬので、ここは交渉技能を11→12に成長させます。ちょうど5点。
ミツキ:あっそうだ ≪雷鳴の申し子≫のレベルを上げておこう
ミツキ:最強になっちまったな……
ヒイラギ:エンブレムの玩具使いを取得しましょう
ヒイラギ:もはやヴィークルで殴る道は捨てていく
シキ:倉庫地下。草薙圭吾の隠し書庫。
シキ:先日の大暴れで崩れた書棚や抉られた床はそのままになっている。
シキ:薄っすらと埃が舞う中、豆電球の明かりの下で
シキ:大量に重なった本の山に腰掛け、黙々と誰かを待っている。
シキ:「……」
シキ:モノは夕食には来なかったが、端末にはここの場所と待ち合わせの時間を伝えてある。
シキ:指定時刻は21:00。対して現在時刻は深夜0:00
シキ:「そりゃあ来るわけないか……」
シキ:膝を抱える。
シキ:「はぁ……まずったなぁ」
シキ:結局の所、自分はどこまでもモノのことを理解してあげられなかったのか
シキ:彼女の眼差しに、その剥き出しの心に。それは、場合によっては狂気だったのかもしれないけど
シキ:一度は救われていながら、それを裏切ってしまったのか。
シキ:「それでも……私は……」
シキ:渡したいものがあると言った。
シキ:彼女にとっても、自分にとっても、どうしても必要なけじめだと思ったから
シキ:……それも、会うことができなければどうしようもない。
シキ:大きく嘆息する。まだ立ち上がる気配はない。
シキ:ここまで待ったなら、朝まで待つのも一緒だ。
シキ:今夜が駄目なら明日。再脱出計画の決行までそう猶予はないが、それまでには……
ミツキ:その時。
ミツキ:小さな音がして、書庫の扉が開く。
シキ:「モノ!?」咄嗟に立ち上がり
シキ:「……なんだ、ミツキか」また座る。
ミツキ:「何だはないでしょ~?」
ミツキ:「あからさまにガッカリすんなよな~。失礼なヤツ」
シキ:「ごめんごめん。で、こんなとこに何しに来たの?」手を上げて
シキ:「お夜食の差し入れなら間に合ってるけど?ダイエット中なの」
ミツキ:すたすたと歩いてきて、抉られた床をひょいと飛び越えて。
ミツキ:シキの隣に腰を下ろす。
ミツキ:「何しに来たって……」
ミツキ:「探しに来たに決まってんじゃん。何時だと思ってるわけ?」
シキ:「今ちょうど日付が変わったね」時計を見て
ミツキ:「カメラが届くとこ、全部探してもいないから。ひょっとしたらと思ったけど……」
ミツキ:「やっぱりこんなとこにいた」
シキ:「まだ夜はこれからじゃん~」
シキ:「0時丁度に迎えに来るなんてさー。シンデレラの魔女でもそこまで過保護じゃないっての」
ミツキ:「……」
ミツキ:シキの頬を指でつつく。
シキ:「あぅ」
シキ:頭が後ろに押されて妙な声を漏らす。
ミツキ:「空元気が見え見えすぎ」
ミツキ:「全然上手くならないよね~、演技」
ミツキ:「ちょっとはあたしを見習いなよ」
シキ:「……ミツキのは演技とかじゃなくてあれじゃん」
シキ:「詐欺じゃん。割と悪質な」
シキ:額を抑えて恨めしげに彼女を見る。
ミツキ:「人聞きが悪いことを仰いますなぁ……」
ミツキ:「良い女ってのはそういうもんなの」
ミツキ:「良質だよ、良質」
シキ:「かぁ~!これだよ。ちょっと人生経験豊富だからってさあ」
ミツキ:「実際豊富ですし~?」
ミツキ:笑って、それから抱えた膝に頭を乗せて、シキを横向きに見上げるようにする。
ミツキ:「……モノのこと?」
シキ:「ん……」その表情から少し目を逸らして
シキ:「……まあね」
ミツキ:「……ずっとここで待つつもり?」
シキ:「まあ、ここを出てくまではね」
シキ:「外に出たら、どっか行っちゃうかもしれないし」
シキ:「そもそも、その機会があるかもわかんないし」
シキ:「確実に渡すなら、今、ここにいるうちかなって」
ミツキ:「にしたって、もっとマシな方法があるでしょ、普通」呆れ顔で
シキ:「……だって、無理強いするようなもんでもないし」
シキ:「しちゃいけないと思うし……」
シキ:「だったら、私にできるのは待つだけじゃん?あの子が向き合ってくれるのをさ」
ミツキ:「……なんか、シキ、そういうとこあるよね」
ミツキ:「よく言えば乙女っていうか……」
ミツキ:「悪く言えばヘタレっていうか……」
シキ:「ヘタッ、はぁ~~~!?」
シキ:「私のどこがヘタレだっていうのさ!!」
シキ:「ねえねえどのへん!?具体的事例を挙げて三百文字以内で述べよ!」
ミツキ:「いつものウザいくらいにぐいぐい押し付けてくるのはどこに行っちゃったわけ~?」
シキ:「うっ……」
ミツキ:「こんなとこでただ待ってても、来るわけないじゃんか」
ミツキ:「アレですか?相手から告白されるの待ってるタイプ?」
シキ:「そん……!なこと……」
シキ:「やってみなきゃわかんない……じゃん……」だんだん声が小さくなっていく。
シキ:「別に、いっつも待ってるわけじゃないし」
ミツキ:「尚更悪くない?それ~」
ミツキ:「中途半端に、やるだけやったって自分を納得させたいのが見え見えじゃんか~」
シキ:「んなことないもん!」顔をあげようとして
シキ:「ないもん……たぶん」
ミツキ:溜息を吐いて。
ミツキ:「……あの子、カメラが届くとこにはいないよ」
ミツキ:「多分、地下に潜ってる。ここで待ってても無駄だよ」
シキ:「そか……」視線を足元に落として。
シキ:「教えてくれてありがと。ミツキ」
ミツキ:「……」
シキ:「……でも、やっぱり待つよ。ここで」
ミツキ:「何でさ」
シキ:「自己満足かもしれないけどさ、自分すら納得させられないんじゃ」
シキ:「二度とあの子の前で胸を張れないじゃん」
シキ:「嘘つきにも、嘘を吐き通す意地くらいはあるよ」
ミツキ:「……」
ミツキ:「人にはいちいち無理するな~とか、抱え込むな~とか言っといてさ……」
ミツキ:「分かってる?めっちゃダブスタやってるの」
シキ:「あーあー聞こえなーい」
シキ:両耳を抑える。
ミツキ:「ほんとキミ、そういうとこだからね」
ミツキ:じっとりとした視線で見つめる。
シキ:「……う、いや、悪いとは思ってるけどさ」
シキ:「結局そこんとこも、似た者同士ってことじゃない?私達」
ミツキ:「あ、いい感じに締めようとしてんな!こいつ!」
ミツキ:「あたしは違うかんね!」
シキ:「はぁ~!?だってサラッと流すとこだったけどさ、また監視カメラ使ったでしょ!!」
シキ:「この時間はヒイラギの担当だって知ってんだからね!ローテ組んだの私だもん!」
ミツキ:「別に普段使いなら問題無いって言ってんじゃんか~~」
ミツキ:「てかそれ、誰の為に使ったと思ってんの?」
シキ:「う、ぐぅ~~~……!」
シキ:「使ってくださいなんて頼んでないもん!」
ミツキ:「へ~。ほっとけばよかった?」
シキ:「誰もそこまで言ってない!ありがとうって言ってんじゃん!!」
シキ:「ばかばかばか!ミツキのいじわる!!」
ミツキ:「そうだよ~。あたしは性根の曲がった意地悪女だからね。よくご存じで~」
ミツキ:「……別に、シキがそういう奴だって知ってるけどさ」
ミツキ:「あんま心配させないでよ」
シキ:「う……」勢いを削がれて
シキ:「……わかってる。悪かったってば……」
ミツキ:「ホントに分かってんのかな~……」
シキ:「……そんなに心配?」
ミツキ:「そうだねー……」
ミツキ:「二つあるからね」
シキ:「二つ?」
シキ:長い髪を所在なさげに弄る。
ミツキ:「一個は姉として。もう一個は……」
ミツキ:目を細めて笑んで
ミツキ:「え~、言いたくないな~」
シキ:「は、はぁ~~!?ふざけんなよおまえ~!」
シキ:「気になるじゃん!言ってよそこは最後までー!」
ミツキ:「そこは察してほしいとこだな~」
ミツキ:「……てか、あたしもあたしだわ、マジで」
ミツキ:「何でわざわざ他の女のことでこんなに相談乗ってんだろ……」
ミツキ:神妙な顔。
シキ:「……急にどしたの?真面目な顔しちゃって」
ミツキ:「何でも~?」かぶりを振る。
シキ:「ミツキってそういうとこあるよね。急に冷めるっていうか。オンオフ切り替えるの早すぎっていうか」
ミツキ:「え~?そんなことないでしょ~」
ミツキ:「サイコパスみたいな言い方すんなよなー」
シキ:「あるでしょ……他の子にも聞いてみなって」
シキ:「うん……でも、まあ」
シキ:「なんとなく気が楽になったのは本当かな。ミツキのおかげで」
ミツキ:「……そ?」
ミツキ:「それなら良かった。わざわざ来た甲斐があったってもんだね~」
シキ:「そうだよ。感謝してる」膝に頭を載せて
シキ:上目遣いにミツキを見る「心配かけてゴメンね。ミツキ」
ミツキ:「ん……」
ミツキ:小さく頷く。「分かればいーの」
シキ:「うん、よーくわかりました」
シキ:そのまま身体を傾けて
シキ:ミツキの肩に頭を預ける。
シキ:「そんなに心配ならさ、もうしばらくこうしててくれる?」
シキ:「どこにも行かないからさ……」
ミツキ:「もー……」
ミツキ:穏やかな顔で、つむじに沿うようにして頭を撫でる。
ミツキ:「甘えん坊だなー、シキは」
シキ:「あー、そこ気持ちいー」ふにゃりと表情を崩して
シキ:「撫でんの上手いねミツキ」
シキ:「もしかしてイノリもこうされるの好きだったりした?」
ミツキ:「んー、……まあね」
ミツキ:シキの髪を梳くように撫でつつ、瞳の色に僅かに寂寞が滲む。
シキ:「そか……」
シキ:「じゃあもっと甘えちゃおー」
シキ:身体を倒して、ミツキに膝の上に頭を乗せる。
ミツキ:「ぅわ」
シキ:「ごろにゃーん」
ミツキ:「……もー……どしたのさ」
ミツキ:拒みはせず、そのまま頭を撫でる。
シキ:「別にー、なんとなくこうしたかっただけー」
ミツキ:もう片方の手で顎の下をくすぐるようにして、それから無防備な喉元を撫でる。
シキ:緩みきった瞳で膝の上からミツキを見上げる。
ミツキ:「あーあ。こんなとこ、他の皆が見たら何て言うかな~」
シキ:「くぅ~ん……」むず痒そうに身を震わせる。
シキ:「ふーんだ、誰も来ないって言ったのはミツキじゃん」
シキ:「それに、別に見られたってぜーんぜん恥ずかしくないし」
ミツキ:「ホントかな~」
シキ:「ホントホント。正直に生きるのがモットーの女ですから」
ミツキ:「あ、ヒサギ」
シキ:「え!?ちょっ!!??違うのこれはミツキが!!!」
シキ:「あだっ!!」
シキ:慌てて起き上がろうとして、ミツキの顎に頭をぶつける。
ミツキ:「ぎゃふ」
シキ:「痛ったぁ~~~~~……!」
ミツキ:「痛~~~~~……」
ミツキ:「……ウッソ~~」からから笑う。
シキ:「く……っそ~こいつ……!」
シキ:頭を擦りながら恨めしげに見上げて
シキ:「あーあー、いいですよー。そっちがその気なら」
シキ:瞬間、猫のように身を弾ませて飛びかかり、本の山にミツキを押し倒す。
ミツキ:「うわ」
シキ:「おりゃっ」
ミツキ:そのまま押し倒されて、積まれた本がばさばさと崩れ落ちる。
シキ:「もっと恥ずかしいことしてあげちゃう」
シキ:ミツキの腕を抑えて、嗜虐的な笑みを浮かべて見下ろす。
ミツキ:「え~……何……」
ミツキ:「放せ~~」
ミツキ:じたじたと弱々しく抵抗する。
シキ:「ふははは、よいではないか~」
シキ:形だけのそれを軽くいなしながら、ミツキの上着に手をかけて
シキ:ふと、それが目に入る。
シキ:「あ……」
ミツキ:「……?」視線を追う。
シキ:「……ね、ミツキ」
シキ:「見てる奴、いたわ。一人」
ミツキ:「え?」
シキ:視線の先には、机の上に飾られた一枚の写真。
シキ:この部屋の本来の主である草薙圭吾と、かつての自分が写った古ぼけた写真だ。
ミツキ:「……」
シキ:「……ったく。なんであんなの飾ってたんだか」
シキ:「捨て駒なんかの写真をさ……」
シキ:声を震わせて目を伏せる。
ミツキ:「……シキ」
ミツキ:ぐい、と身体を寄せて、唇を重ねる。
シキ:「ミツキ?……んっ」
シキ:「ん……ぁ……」一瞬体をこわばらせるが、直ぐに受け入れる。
ミツキ:逃げられないように、頭の後ろに手を回して。
ミツキ:何度も口付けを重ねて、やがて、より深く。舌を口内に侵入させる。
シキ:「ん……ふ……っ」
シキ:もとより逃げる素振りはなく、段々と自らミツキの唇を求めて
シキ:貪るように舌を絡ませる。
ミツキ:舌と舌を絡ませ、外からは見えない形を確かめるように口内をなぞる。
ミツキ:「ふー、……っ……」
シキ:「ぷ……ぁ……ミ、ツキ」
シキ:不規則な息継ぎ。呼吸を乱しながらも小さく笑って
ミツキ:互いの唾液が混ざり合い、おとがいから垂れ落ちる。睦まじい恋人のようであると同時、獣めいて荒っぽい口付けを続けて。
ミツキ:酸欠で朦朧としてくる頃になって、ようやく口を離した。唇の間、細い銀糸の橋が掛かり。
シキ:「は……あ……」
ミツキ:「……あたしがいるでしょ」
ミツキ:「シキ。あたしがいるよ」
ミツキ:乱れた呼吸のまま、間近で口にする。
シキ:弛緩した口の端から、顎を伝って二人の混ざりあった涎が胸元へと落ちる。それを掬い取ってひと舐めして
シキ:「……うん」
シキ:「離れないでね。ミツキ」
シキ:「ひとりにしないで」
ミツキ:「……うん」
ミツキ:掌をシキの首元にそっと当てて、撫でるように動かす。
シキ:「ホントにだよ?私、今まで言ってなかったけどさ……んっ……」
ミツキ:するすると肌の上を這うように動いて、鎖骨の窪みの辺りで止まる。
ミツキ:「……なに?」
シキ:その感触に身体を震わす。小さく目を閉じて
シキ:「すっごく、寂しがりやなんだ」
シキ:「ひとりにされたら泣いちゃうかも」
ミツキ:「……」
ミツキ:目を瞬いて。
ミツキ:「……ふっ……ふふ……!」
ミツキ:それから、くつくつと笑いだす。
シキ:「……んん?」首をかしげる
シキ:「ちょっとー、今笑うとこ?一世一代の泣き所でしょ今のは~」
ミツキ:「ごめんごめん」
ミツキ:「……知ってるよ、そんなの」
ミツキ:「だって……」
ミツキ:「……あたしと同じだもん」
ミツキ:小さく笑って、もう一度口付けをする。
シキ:「んっ……」同じように、目を瞬かせて
シキ:やがて、納得したように目を閉じる。
シキ:言葉は返さない。ただ、そこにある温もりを確かめるように、身体を重ね続けた。
シキ:草薙圭吾にロイスを取得。恋慕○/依存
シキ:これをタイタスに。
シキ:ミツキへの取得済みロイス、秘匿○/羞恥を親愛○/対抗心に変更。
シキ:Sロイスに指定します。
ミツキ:ロイス取得 シキ 尽力/○独占
ミツキ:シキへのロイス ○秘匿/秘匿
ミツキ:Sロイスに指定します。
【Climax/かたられざるフェアリーテイル】
GM:クライマックスシーン
GM:全員登場です。
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を1d10(→ 8)増加 (81 → 89)
ヒイラギ:ヒイラギの侵蝕率を1d10(→ 3)増加 (76 → 79)
GM:ミツキの侵蝕率を1D10(→ 5)増加 (74 → 79)
シキ:シキの侵蝕率を1D10(→ 3)増加 (68 → 71)
モノ:1d10+71
DoubleCross : (1D10+71) → 10[10]+71 → 81
モノ:guaa
シェルター内 ダイニング
ミツキ:「……ていうことで」
ミツキ:もぐもぐと食事を頬張りながら
ミツキ:「今度からミツキになったから。よろしくね~」
シキ:「イエーイイエーイ!!ヒューヒュー!!」
シキ:手作りの紙吹雪を辺りにばらまく
ヒサギ:すこし口をぽかんと開けて二人を見ている。
ヒイラギ:「……テンションが高いな」
ヒサギ:「え、と。姉さんそれね、あとそう。なんで急にその……?」
ミツキ:「も~、散らかさないでよ~」紙吹雪を片付けている。
シキ:「何言ってんのさ~。名前を決めるってのはね」
シキ:「私らにとっては生まれ直すみたいなもんなんだよ?元々誕生日も定かじゃないんだから」
ヒイラギ:「まあ……そういうことなら、祝ってもいいかもしれないが」
ヒサギ:「まあ、そう、なのかな…?いや、それは良いこととしまして、だからなんで急にと……」
シキ:「二人は覚えてないだろうけど、ヒイラギとヒサギの名前をつけた時もこうやってお祝いしたもんよ」
シキ:「よっ!ハッピーバースデー!ミツキ!!」
ミツキ:「やめろぉ~~~」
ミツキ:「ウザすぎる~~~~」
ヒサギ:「大分押し切られる流れを感じていますがどうでしょうこれ」
ヒイラギ:「……ここまで来たらただのお祭り好きだな」
ヒサギ:「というかひか……、じゃなくてミツキさんあれで楽しそうですね…?」
ヒイラギ:「満更じゃなさそうだ。いいんじゃないか?……ミツキ」
シキ:「うんうん、素直でよろしい」
ミツキ:「名前自体は気に入ってるけどさ~……」不貞腐れた顔で。
シキ:「まあ、真面目な話をするとね」ようやく落ち着いて席に座る。
ヒサギ:「あ、はい」こちらも真面目な顔に。
シキ:「二人ともミツキの身体のことはもう知ってるでしょ」
ヒイラギ:「生体電流の操作……負担を度外視したもの、だったか」
ヒサギ:「ええまあ、集束時の神経部位への負荷が特に問題、でしたね」
シキ:「それも私達が生まれる前からずっと蓄積してきた、ね」
ミツキ:「ちょっと……」
ミツキ:シキの袖を引く。
ミツキ:「言わないでいいってば」
シキ:「もう言っちゃったもーん」
ヒサギ:目をぱちくりさせつつ。「わたしだと、あくまで痛覚などの低減までしかできませんから、根治にはまたきちんとした施設とかが必要ですね…」
ヒイラギ:「……この調子だと、隠し事の数は100じゃきかないんじゃないか」
ミツキ:「も~~、何~~?あたしを糾弾する場なの~?これ~~」
ヒイラギ:「……祝の場じゃなかったか。シキ」
シキ:「グダグダ言わない。とにかくさ」
シキ:「今まではミツキ……"ヒカリ"は、私達とはちょっとだけ遠くにいた」
シキ:「でも、これからは違う。一緒に、家族として」
シキ:「同じものを目指して、生き残る。この名前は、その覚悟の証ってことで」
ミツキ:「………………」むず痒そうな顔で耳を赤くしている。
シキ:「改めて、仲良くしてあげてね。ヒイラギ。ヒサギ」
ヒサギ:ふ、と微笑んで。「では、改めて。よろしくお願いしますね、ミツキさん」
ヒイラギ:「ああ、よろしく」
ヒイラギ:「……生まれ直したってことは」
ヒイラギ:「この中で一番妹ってことか」冗談めかして
シキ:「おっヒイラギくん、良いところに気づいたねえ」
ミツキ:「え~~!?そうはなんないでしょ!?」
ヒサギ:「え、え。いや、たしかに名前になってからの時間なら一番短い……?」
ミツキ:「余計なこと言わないでよ~!こいつの前で~~!」
ヒイラギ:「ふ」少しだけ、したり顔をする
シキ:「じゃあみんなにひとりずつ『お姉ちゃん』って言ってもらおうかな~」
ヒイラギ:「……なんでそうなるんだ」
ミツキ:「お姉ちゃんやめるんじゃなかったんですか~~?」
ヒサギ:「仲が良いですねえ」のほほんとした口調。
シキ:「いや私にじゃなくて、ミツキが、みんなに、ってことね」
シキ:「もちろんモノにも……って」
シキ:部屋を見回す。
シキ:「えと……モノ、今日も来てない?」
ミツキ:「そんなんやるわけな…… ……あれ、そうだね」
ミツキ:「いつもならこの辺で、いきなりヌッと出てくるのに」
ヒイラギ:「シキが呼んでも来なかったのか?」
ヒサギ:「……んん。そうですね…」
シキ:「……私が呼んだら来てくれないよ、今はさ」
シキ:「今日はミツキから伝えてもらった。再脱出計画の仕上げについても打合せなきゃだしね」
ヒイラギ:「……ボクらは”アマゾーン”の件以来会ってない」報告はしていた
ヒサギ:「です、ね。あの後に会いに行ったのかな、と…」
シキ:「……」
GM:その時、唐突に。けたたましい警報音が辺りに鳴り響く。
ミツキ:「……ヤバ……!」
ミツキ:顔色を変えて、手元の端末を操作する。
シキ:「……まさか、侵入者?」表情が引き締まる。
シキ:「けど、あの隔壁はあと数ヶ月は保つって……」
ミツキ:「サアヤか、他のジャームが入ってきたのかも──」
ミツキ:ドローンに備え付けられた小型のモニターに、隔壁を映す監視カメラの映像が入る。
モノ:カメラに写り込んでいるのは
モノ:隔壁の残骸を踏んで歩き進む、駆動機械の姿
モノ:ヒイラギとヒサギが見たものとは、機体色がわずかに違う。
シキ:「内側から!?ていうかこれ乗ってるのって……!!」
ヒサギ:「ダクト側じゃなくてですか?あっちなら……、」と、そこでそれを見て息を呑み。「あの子は………!」
ヒイラギ:「……もう一機あったっていうのか」
モノ:地上の、サアヤたちがいたはずの方向へと進んで、見えなくなる。
ヒサギ:「今までどこに行ったかと思ったら、また地下を探索して……!」
シキ:「モノ!!待ちなさい!!モノ!!」
シキ:声が届いてないと知りつつも、画面に向かって叫ぶ。
ミツキ:「……シキ」
ミツキ:「どうするの?」
シキ:「……決まってるでしょ」
シキ:「ヒサギ、ヒイラギ、ミツキ」順に視線を合わせる。
シキ:「上に上がるよ。隔壁が壊れた以上、もうここに篭もってはいられない」
シキ:「モノを迎えに行って」
シキ:「そのまま、外に出る」
ミツキ:「ま……そうなるよね」
ミツキ:「いいよ。ここの食事も、もう飽きてきたとこだしね」
ミツキ:「早いとこ外に出て、カニでも食べよっか」
ヒイラギ:「……遅かれ早かれ、か。覚悟なら、もう済ませてる」
ヒサギ:「……了解しました。戦闘用のそれはまとめてありますから、すぐに行けます」
シキ:「さっすがヒサギ。ならすぐに向かおう」
シキ:「私達は絶対に生き残る。これ以上、誰一人欠けさせない」
シキ:「外に出よう。みんなで」
ヒイラギ:「ああ。……みんなで」
ヒサギ:「はい、みんなで!」
ミツキ:「うん。みんなでね」
---
GM:“チェッカード”内、メインフロア。
GM:地下でありながら広々とした空間に植樹や噴水が備え付けられ、かつては多くの実験体の憩いの場となっていた場所。
GM:今やそこは、業火が渦巻き、破壊の撒き散らされる地獄絵図と化していた。
"ナイトライダー":「あは────」
"ナイトライダー":「アハハハハッ……ヒヒッ……ひひははっ……!」
"ナイトライダー":巨大な金属片を素手でへし折って、哄笑する。
モノ:ごばん!!
モノ:投げ捨てられた機械の片腕が
モノ:床を転がり、噴水を潰し砕いた。
モノ:「え、へへ……」
モノ:「強いね、サアヤ」
モノ:「あの人は、どこ?」
"ナイトライダー":「……は、ァ……」
"ナイトライダー":恍惚の表情で身を震わせる。周囲の炎がさらに火勢を増す。
"ナイトライダー":「誰……誰……?」
モノ:「草薙、主任」
モノ:「近くには、いない?」
モノ:「サアヤは、ひとり?」
"ナイトライダー":「……ぎ、ひッ」
"ナイトライダー":少女の姿が掻き消える。
モノ:「!」
"ナイトライダー":身を沈め、巨大な駆動機械の下部に滑り込み
"ナイトライダー":その装甲を鷲掴みにする。
"ナイトライダー":「一人じゃないよぉ」
"ナイトライダー":「私、わた、私、私」
"ナイトライダー":「みんなと、一緒に……」
GM:爆音。
GM:凄まじい業火が至近距離から解放され、機動兵器を内部から焼き焦がし、装甲を吹き飛ばす。
モノ:「うわわわ、わっ」
モノ:「ふぎゃうっ」
モノ:かろうじて脱出、飛び散る装甲と一緒に地面を転がり
モノ:炎を背に、サアヤと向かい合う。
モノ:「サアヤ」
"ナイトライダー":「アハハハッ……は……はぁ……」
"ナイトライダー":「………………」
モノ:「モノにも、言ってくれた」
モノ:「一緒に行こうって」
モノ:「わかんなかったけど」
モノ:「嬉しかった、と思う」
モノ:「でも」
モノ:「今のサアヤは、邪魔」
モノ:「あの人も、邪魔」
"ナイトライダー":ぱちりと目を瞬く。
"ナイトライダー":「……」
"ナイトライダー":「……モノ?」
モノ:「……そう」
モノ:「モノだよ、サアヤ」
"ナイトライダー":「あぇ……?」
"ナイトライダー":ふらふらと覚束ない足取りで周囲を見渡す。
"ナイトライダー":「モノ、一人?」
"ナイトライダー":「他のみんなは?」
"ナイトライダー":「あれ……ていうか、傷だらけじゃん」
"ナイトライダー":「大丈夫……?」
モノ:「みんなも、もうすぐ来るよ」
モノ:「でも、その前に」
モノ:「モノと遊んで」
モノ:「一緒に、遊んでくれる?サアヤ」
"ナイトライダー":「え、いいけど……」
"ナイトライダー":「何して遊ぶの?」
モノ:「サアヤは、いいひと」
モノ:「好きだよ」
モノ:微笑んで、前傾姿勢になる
モノ:「遊ぶのは……鬼ごっこ」
モノ:たたっ、と
モノ:バランスを崩してつんのめるように走り出し
モノ:「モノが」
モノ:「おにっ!!」
モノ:空中に跳躍、腕をサアヤに向けて振り下ろす。
"ナイトライダー":「……!」
"ナイトライダー":「や……」
"ナイトライダー":首が引き千切れそうな勢いで、モノの顔面が鷲掴みにされる。
"ナイトライダー":「やめてよ!!」
モノ:「っ!」
モノ:「えへ、へ」
"ナイトライダー":「モノ……!どうして……!」ぐい、とモノを掴んだまま腕を振り上げ
"ナイトライダー":凄まじい膂力で、床に叩き付ける。
"ナイトライダー":「やめてよ!!」
モノ:「がっ!……うぅッ!!」
モノ:叩きつけれながら、腕を離さない、毒を流し込む。
"ナイトライダー":「やめてよ!やめてよ!!やめてよ!!やめてよ!!やめてよ!!やめてよ!!」
"ナイトライダー":何度も何度も、容赦なく頭を打ち付ける。硬質の床が陥没し、蜘蛛の巣状のヒビが走る。
モノ:「サアヤの、したい、こと……ぎっ!」
モノ:「してくれて……いいよ……」
モノ:「だけど」
モノ:「代わりに、ちょうだい」
モノ:「サアヤのいのち」
"ナイトライダー":「なんで……」
"ナイトライダー":「何でそんなこと言うの、モノ……」
"ナイトライダー":「ジャームになっちゃったの……?」
モノ:「えへへ、へ」
モノ:「シキが死んじゃったら、困る、から」
モノ:「サアヤがシキを」
モノ:「殺しちゃったら、嫌だから」
"ナイトライダー":「しないよ……」
モノ:「するよ」
モノ:「ジャームは、サアヤだよ」
"ナイトライダー":ぢり、と、モノの顔面を掴んだ掌に、熱が灯る。
"ナイトライダー":「そんなこと、しないよ……!」
モノ:「えへへ、へ」
モノ:「するよ」
モノ:「サアヤのフリしてる、けど」
モノ:「もうサアヤじゃ、ないから」
"ナイトライダー":爆炎が、モノの頭部を吹き飛ばさんとして──
:ちら、と赤い靄のようなものが舞った。
:かすかに視界が遮られる。ほんのわずかに。
"ナイトライダー":「……?」
ヒイラギ:銃声。モノを掴む手首に向けた銃弾。
"ナイトライダー":「あっ」
"ナイトライダー":鮮血が舞い、空気中で燃え上がる。モノを手放して、銃声に目を向ける。
モノ:「ゃう」
モノ:地面に尻もちをつく。
モノ:「あーーー」
モノ:「時間、なくなっちゃった」
モノ:こちらも銃声の方を見つめる
ヒイラギ:「……遊びは、ここまでだ」銃を構えて、立つ。
ヒイラギ:「無事か、モノ」
モノ:「も、もっと、サアヤと遊びたかった、のに」
モノ:「早いよ、ヒイラギ」
"ナイトライダー":「ヒイラギ……」
ヒイラギ:「……サアヤ」
ヒサギ:「今のうちに、速くこちらへ……っ」モノとサアヤを遮るようにさらに赤の靄が広がる。
シキ:「モノ!!」ヒイラギの横から弾丸のように飛び出す。
シキ:「おばか!どうしてこんなになるまで……!」
シキ:モノを抱き起こす。滴る猛毒の血が掌を焼くが、構わず後方に連れて行く。
モノ:「あうう」
モノ:「だって、邪魔だったから」
モノ:「サアヤと、あの人がいたら」
モノ:「生き残るためのことと、そうじゃないことが」
モノ:「わかんない……から」
モノ:「2人がいなくなってから、シキに、会いたかった、の」
シキ:「わかんないのはこっちだよ……!そんなことで……」
シキ:「モノが死んだら意味ないじゃない……!」
モノ:「シキ……」
ミツキ:駆動音と共に大小、形状も様々な無数のドローンが飛来し、“ナイトライダー”の周囲を包囲する。
ミツキ:「やー、サアヤ。この前振り」
"ナイトライダー":「ヒサギ……。シキ、ヒカリも……」
ミツキ:「今は改名したけどね~」
"ナイトライダー":「みんな……どうして……?」
シキ:モノを下ろして立ち上がる。
モノ:「でも、でも」
モノ:「じゃあ、殺せるの?」
モノ:「サアヤの声で、サアヤみたいにしゃべるよ」
シキ:「……けど、サアヤじゃない」
モノ:「く、草薙主任は?」
シキ:「あいつは……」
シキ:「……わかんない。あいつが何考えてるのか、今も」
シキ:「ほんの少しだけ、まだ期待してるのかもしれない」
シキ:「……けど」
シキ:モノの眼を見る。その空洞を。
シキ:続いてヒサギ、ヒイラギ。最後にミツキを。
シキ:「それでも、なにを選ぶかはもう決めてるから」
シキ:「約束したから。モノと、みんなと」
シキ:「だから、ちゃんと選べる。迷ったりしない」
モノ:「シキ」
モノ:「シキが死んだら、嫌だよ」
シキ:「死なないよ」
モノ:「それがシキの本当にしたいことでも、シキがそれで死んじゃったら」
モノ:「嫌だよ」
モノ:恐怖で震える声で言う。
シキ:「私は死なない」
シキ:「信じて。モノ」
モノ:「……うん」
モノ:「信じる。シキ」
モノ:シキと、そしてミツキとヒサギとヒイラギと
モノ:同じ方向を向く。
シキ:「……」ふっと笑って
シキ:「……そういうわけだから、サアヤ」
シキ:「いや、"ナイトライダー"」
シキ:「そこを通してもらうよ。私達は」
シキ:「みんなで、外に出る。」
"ナイトライダー":「な、何で……?」
"ナイトライダー":「私は……?」
"ナイトライダー":「私も、みんなと……!」
主任:「……酷いことを言うね、君達」
主任:サアヤのすぐ隣の空間が歪み、白衣の男が姿を現す。
シキ:「……やっぱ見てたんだ。圭吾」
主任:「ああ。わざわざ出向いてくれるとはね。こちらから向かう手間が省けたよ」
主任:“ナイトライダー”の顎を持ち上げるようにして。
主任:「彼女はジャームなんかじゃない」
主任:「正真正銘、君達の知っているサアヤ本人だよ」
"ナイトライダー":「……主任……?」きょとんとした顔で君達と主任とを見ている。
シキ:「ふざけんのも大概にしろよ……」
シキ:「サアヤがアンタの言いなりになんかなるもんか」
モノ:「サアヤ、は」
モノ:「モノを焼いたり、しないよ」
主任:「オーヴァードが最も強い力を発揮する時が、どんな時か知っているかい?」
シキ:「……悪いけど、もうアンタの考察に付き合ってあげる時間はないの」
主任:「高侵蝕状態の時か?ジャーム化が進行した時か?」
主任:「残念ながら、どちらも違う」
主任:「オーヴァードが真の力を発揮する時というのはね」
主任:口元を歪める。
主任:「他者との絆を力にする時だよ」
シキ:「……」ぎり、と奥歯を噛む。
モノ:「き、きず、な?」
モノ:「でも、ジャームは」
モノ:「あれ?」
主任:「これは精神論じゃあない。本当の話さ」
主任:「オーヴァードは他者との交流の中で絆を育むことで、時に限界を越えたレネゲイド出力を発揮する」
ヒイラギ:「……お前、サアヤに何をしたんだ」
ヒサギ:「………確かにわたしたちを見て、名前を呼びましたね。だけれど、躊躇なくモノさんに攻撃もしていた」
主任:「何、理論自体は簡単なものだよ」
主任:「サアヤの記憶能力には、こちらで少しばかり手を加えてあってね」
主任:「一定の条件で保存され、定期的にリセットが掛かるようになっているんだ」
主任:「人の感情というのは、記憶に依存するものだからね。オーヴァードでもそれは同じだ」
主任:「分かるかい?サアヤは失い、燃やし尽くした絆の力を、何度でも再利用することが出来るんだ」
主任:「これが、“盤外個体”計画で生まれた、唯一の『本物』……」
主任:「僕の作った、最強のオーヴァードだよ」
"ナイトライダー":「……主任……?何……何を言ってるんですか……?」
シキ:「ふ……っざけんなよ……」
シキ:肩を震わせ叫ぶ「どうしてそこまで、人の心を弄べるの……?」
主任:「弄ぶだなんて心外だな……」
主任:「僕ほど真剣に人の心に向き合っているヤツはいないよ」
ヒサギ:「……ええ、最も素材として向き合っていらっしゃいますね」思い切り表情を歪め、吐き捨てるように。
シキ:「……詭弁に付き合う気はないから。胸糞悪くなるだけだもん」
シキ:「仮に、アンタの言ってることが本当だとして」
シキ:「それならサアヤを元に戻して。今すぐに」
主任:「元に戻す?何を言ってるんだい、シキ」
主任:「サアヤは初めから、こうなる為に生まれてきたんだよ」
主任:「それが実験体というものだろ?」
シキ:「……っ!違う!!私達は……!!」
シキ:「私達にだって、やりたいことがあったんだよ……?」
シキ:「サアヤは、楽しそうに話してたんだ」
シキ:「ここを出たら何がしたいのかって」
シキ:「都会に行って、服とか、食べ物とか」
シキ:「カッコイイ男の子とも出会いたいって……」
モノ:「し、し、知らない、でしょ」
モノ:「わかんない、よね」
モノ:「それが、サアヤの、本当」
モノ:「サアヤの見つけた、本物、だよ」
主任:「うーん……」困ったように
主任:「僕もそれは、可哀想だなとは思うよ?」
主任:「でも……仕方ないだろう?」
主任:「そういうものなんだよ、元々。必要なことなんだ」
主任:動物実験に用いるモルモットについて問われたような表情で語る。
モノ:「えへへへっ、違う違う」
モノ:「あなたの言ってる本当だけが」
モノ:「本物じゃないよ」
モノ:「だって」
モノ:「今から、その薄っぺらい、サアヤの頭の中だけで考えた嘘が」
モノ:「本当になるから」
モノ:「同じこと、考えてる、シキたちが」
モノ:「今から、いちばん強い、サアヤを」
モノ:「そう作られてる、サアヤを」
モノ:「シキたちが、やっつけたら」
モノ:「そうなったら、あなたの言ってること、嘘になる、でしょ?」
モノ:「実験体は、あなたのために、産まれてない」
モノ:「そういうものじゃ、ない」
主任:「まあ……君達からすればそうだろうね」
主任:肩を竦める。
主任:「元々、分かり合えるとも思ってないよ」
モノ:「いらないでしょ、そんなの」
モノ:「きっとみんな」
モノ:「あなたのことが嫌い」
ミツキ:「……皆。あれはただ、上辺を取り繕ってるだけ」
ミツキ:「一度ジャームになったら、二度と元には戻らない……それは変わらない」
ミツキ:「サアヤはもういない。……迷わないで」
ヒサギ:「……はい。ええ、記憶をどんなに弄っても。そうして作ったものに……クオリアは生じない」
ヒイラギ:「眠らせてやらなきゃ、だな」
シキ:「……わかってる」
シキ:「サアヤは、生き返っているわけじゃない。死の瞬間を、何度も繰り返しているだけ」
主任:「……君達には理解できないか。それも仕方ない」
主任:嘆息して、“ナイトライダー”の肩に手を置く。
主任:「君達を殺すことで、“ナイトライダー”は真の意味で完成を迎える」
主任:「どうか抵抗せず、生まれた役目を果たしてくれ」
"ナイトライダー":「う……う……うぅぁああああ……?」
"ナイトライダー":苦悶するように頭を振り、周囲に巨大な火柱が灯っていく。
シキ:「……役目、役目ね」嘲るように笑う。
シキ:「良いよ、圭吾。私もいい加減諦めがついたとこ」
シキ:腰からナイフを引き抜き、眼前に突きつける。
シキ:「鬼ごっこはここでおしまい。その先は」
シキ:「ボードゲームで決着を付けましょう。あなたの育てた駒と、捨て駒で」
シキ:「けど、気をつけてね。私達は"盤外個体"」
シキ:「運命通りに動く奴なんて、ひとりもいないんだから」
主任:「……残念だが」
主任:「君達は、既に」
主任:「詰んでいるよ」
GM:クライマックス戦闘を開始します。
エンゲージ
ヒイラギ[15]ヒサギ[7]シキ[6]ミツキ[6]モノ[3]
(10m)
ナイトライダー[14]主任[10]
GM:“ナイトライダー”から、物理的圧力すら感じる程の膨大なレネゲイドが解き放たれる。
GM:人とジャームの狭間、その波長が君達の衝動を喚起する。
GM:衝動判定、難易度12です。
モノ:たかい!
ヒサギ:5dx>=12 高いなあ!
DoubleCross : (5DX10>=12) → 10[2,6,9,9,10]+3[3] → 13 → 成功
ヒサギ:足りた!
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を2d10(→ 9)増加 (89 → 98)
モノ:3dx
DoubleCross : (3DX10) → 9[4,5,9] → 9
モノ:だめ!
モノ:2d10+81
DoubleCross : (2D10+81) → 17[10,7]+81 → 98
モノ:ヒエ~ッ
ヒイラギ:2dx-3>=12
DoubleCross : (2DX10-3>=12) → 3[1,3]-3 → 0 → 失敗
シキ:3dx-5>=12 強化兵の効果で意思判定-5
DoubleCross : (3DX10-5>=12) → 7[4,5,7]-5 → 2 → 失敗
シキ:シキの侵蝕率を2d10(→ 10)増加 (71 → 81)
ヒイラギ:変異暴走:破壊
ヒイラギ:ヒイラギの侵蝕率を2d10(→ 15)増加 (79 → 94)
ミツキ:3DX+3>=12
DoubleCross : (3DX10+3>=12) → 10[8,9,10]+2[2]+3 → 15 → 成功
ミツキ:79+2D10
DoubleCross : (79+2D10) → 79+10[9,1] → 89
GM:セットアップから!
モノ:フルパワーアタック!侵蝕102に!
ヒサギ:セットアップなしです。
ヒイラギ:コーリングシステム
シキ:『RED CROWN』《原初の黄:氷の茨》
シキ:エンゲージから離れたキャラクターは5d10のHPを失う。
シキ:シキの侵蝕率を3増加 (81 → 84)
"ナイトライダー":≪氷の茨≫ 自身エンゲージから離れた対象はHP3D10ロスト
主任:≪虚無の城壁≫ ラウンド間ガード値+12
GM:ではイニシアチブ。
GM:行動値15、ヒイラギさんの手番です。
ヒイラギ:マイナーで一旦暴走解除
ヒイラギ:メジャーで《コンセントレイト:モルフェウス》《ペネトレイト》 対象は”ナイトライダー”
GM:判定どうぞ!
ヒイラギ:11dx7+7
DoubleCross : (11DX7+7) → 10[1,1,1,1,2,3,4,5,5,5,7]+5[5]+7 → 22
主任:≪カバーディフェンス≫
主任:ガード、≪グラビティガード≫
ヒイラギ:硬いな
GM:ダメージどうぞ
ヒイラギ:3d10+10+3+6 装甲無視です
DoubleCross : (3D10+10+3+6) → 12[2,4,6]+10+3+6 → 31
主任:31-12-3D10
DoubleCross : (31-12-3D10) → 31-12-23[5,9,9] → -4
主任:弾きました
ヒイラギ:カッチカチかよ
ヒイラギ:ヒイラギの侵蝕率を5増加 (94 → 99)
GM:
GM:行動値14、ナイトライダーの手番です
"ナイトライダー":マイナー ≪ブラッドコントロール≫ メジャーダイス+5個
"ナイトライダー":メジャー≪コンセントレイト:ブラム=ストーカー≫+≪紅の刃≫+≪魔王の覇気≫+≪斥力の槌≫+≪虚空の陥穽≫+≪蝕む赤≫+≪ブラッドボム≫+≪鮮血の修羅≫+≪血の宴≫
"ナイトライダー":命中でランク5邪毒付与 自身エンゲージへ引き寄せ 対象が次に行う攻撃の攻撃力-10 ダメージで10m移動 更にHP3D10ロスト クリンナップ時HP30ロスト
"ナイトライダー":対象はPC全員
"ナイトライダー":13DX7+8
DoubleCross : (13DX7+8) → 10[1,2,2,3,3,3,3,4,6,7,9,9,10]+10[1,3,6,7]+2[2]+8 → 30
モノ:暴走リア不!
シキ:暴走!
GM:モノくん一応クリアしてるはず +3で
モノ:ん?ああ
モノ:衝動判定も戦闘中扱いね!
モノ:じゃあクリア!
ヒサギ:ドッジ。
モノ:一応回避しまーす
ヒイラギ:とりあえずドッジしてみよう
ヒサギ:3dx+3>=30
DoubleCross : (3DX10+3>=30) → 9[2,4,9]+3 → 12 → 失敗
ヒサギ:まあせやな…
ミツキ:7DX+1>=30 ドッジ
DoubleCross : (7DX10+1>=30) → 10[2,3,5,6,8,10,10]+8[5,8]+1 → 19 → 失敗
モノ:15dx-2
DoubleCross : (15DX10-2) → 10[1,2,2,4,4,4,5,5,6,6,7,7,8,9,10]+10[10]+9[9]-2 → 27
モノ:ぐえー惜しい!
ヒイラギ:7dx+7>=30
DoubleCross : (7DX10+7>=30) → 9[2,3,4,4,5,9,9]+7 → 16 → 失敗
ヒイラギ:おしみ
ヒサギ:達成値+3乗っても足りないか
モノ:あ
シキ:成功してない?
モノ:回避も+3だから
ヒイラギ:全達成値ですねえ
シキ:やったじゃん
モノ:通ります!同値回避!!
モノ:やったー!
ヒサギ:あ、引いた値だから成功!すごい
GM:避けやがった……
ミツキ:≪マグネットフォース≫でシキをカバーします
シキ:ありがと~!
ミツキ:侵蝕89>91
ヒイラギ:そのまま受けます
GM:ではカバーされたシキ以外にランク5の邪毒付与、次に行う攻撃の攻撃力-10
"ナイトライダー":ダメージ算出
"ナイトライダー":4D10+10
DoubleCross : (4D10+10) → 21[3,5,9,4]+10 → 31
ヒサギ:倒れます。リザレクト。
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を1d10(→ 8)増加 (98 → 106)
ミツキ:C(132-31-31)
DoubleCross : 計算結果 → 70
ヒイラギ:装甲で21引いて10点、生存
ヒイラギ:ヒイラギのHPを10に変更 (21 → 10)
ヒイラギ:ヒイラギのHPを11に変更 (10 → 11)
GM:失礼、命中時点でエンゲージに引き寄せ入ってましたね
"ナイトライダー":ミツキ、ヒサギ、ヒイラギをそれぞれ左右後に移動。
エンゲージ
シキ[6]モノ[3]
(10m)
ミツキ[6] (10m) ナイトライダー[14]主任[10] (10m) ヒイラギ[15]
(10m)
ヒサギ[7]
GM:ミツキ、ヒイラギ、ヒサギには≪氷の茨≫で3D10ダメージが入ります
ミツキ:70-3D10
DoubleCross : (70-3D10) → 70-18[8,8,2] → 52
ヒイラギ:11-3d10
DoubleCross : (11-3D10) → 11-11[1,8,2] → 0
ヒサギ:8-3d10
DoubleCross : (8-3D10) → 8-21[8,4,9] → -13
ヒイラギ:ぴったり死 リザレクト
ヒサギ:ぎゃあ
ヒサギ:ヒカリ 〇好意/不安 もう名前も変わったしここでロイス昇華、復活します。
ヒイラギ:ヒイラギの侵蝕率を1d10(→ 7)増加 (99 → 106)
ヒイラギ:ヒイラギのHPを7に変更 (11 → 7)
"ナイトライダー":3人は更に≪鮮血の修羅≫の効果でクリンナップ時にHP30ロストします。
GM:
GM:イニシアチブ10、主任の手番です
主任:マイナー ≪盾なる力場≫ 武器作成
主任:メジャー ≪アドヴァイス≫ 対象メジャーダイス+6個 C値-1
主任:対象“ナイトライダー”。
GM:
GM:イニシアチブ7、ヒサギさんの手番です
ヒサギ:一度ここは待機します。
GM:ではイニシアチブ6、シキさん、ミツキさんの手番です。
シキ:こちらは待機します。
ミツキ:待機します
GM:ではイニシアチブ0、モノさんの手番……
GM:の前に
主任:≪ブリッツクリーク≫
ヒイラギ:野郎~~
主任:“ナイトライダー”を再度行動させます
"ナイトライダー":choice[ヒイラギ,ヒサギ,ミツキ,シキ,モノ]
DoubleCross : (CHOICE[ヒイラギ,ヒサギ,ミツキ,シキ,モノ]) → モノ
"ナイトライダー":マイナー ≪ブラッドコントロール≫ メジャーダイス+5個
"ナイトライダー":メジャー≪コンセントレイト:ブラム=ストーカー≫+≪紅の刃≫+≪魔王の覇気≫+≪斥力の槌≫+≪蝕む赤≫+≪ブラッドボム≫+≪鮮血の修羅≫
"ナイトライダー":命中でランク5邪毒付与 対象が次に行う攻撃の攻撃力-10 ダメージで10m移動 更にHP3D10ロスト クリンナップ時HP30ロスト
"ナイトライダー":対象はモノのみ
モノ:とりあえず回避
"ナイトライダー":19DX6+8
DoubleCross : (19DX6+8) → 10[1,1,1,1,1,1,3,3,5,6,6,7,7,7,8,9,9,10,10]+10[1,5,6,7,7,8,8,8,10,10]+10[2,3,4,5,7,8,8,9]+5[1,1,2,5]+8 → 43
モノ:15dx+1-3+3
DoubleCross : (15DX10+1) → 10[1,2,3,4,4,4,5,6,6,6,7,8,9,9,10]+6[6]+1 → 17
モノ:ぐええー
モノ:すまん!死んだ!
GM:命中時点でランク5邪毒付与 対象が次に行う攻撃の攻撃力-10になります
シキ:モノを行動放棄カバーします。
GM:ではシキに上記の効果が適用されます
"ナイトライダー":ダメージ算出
"ナイトライダー":5D10+10
DoubleCross : (5D10+10) → 31[1,9,3,10,8]+10 → 41
シキ:HP0に。《リザレクト》
シキ:シキの侵蝕率を1D10(→ 6)増加 (84 → 90)
シキ:HP6で復活
シキ:どの方向に移動します?
"ナイトライダー":≪斥力の槌≫で10m移動させます
"ナイトライダー":こっちにエンゲージさせようかな
シキ:ぐえ~
エンゲージ
モノ[3]
(10m)
ミツキ[6] (10m) ナイトライダー[14]主任[10]シキ[6] (10m) ヒイラギ[15]
(10m)
ヒサギ[7]
"ナイトライダー":更に≪ブラッドボム≫で3D10ダメージ
"ナイトライダー":3D10
DoubleCross : (3D10) → 16[2,6,8] → 16
"ナイトライダー":こちらも同じだけHPロストします
シキ:再びHP0。《リザレクト》
シキ:シキの侵蝕率を1D10(→ 8)増加 (90 → 98)
モノ:おねえちゃん…!
シキ:HP8で復活
"ナイトライダー":≪鮮血の修羅≫の効果でクリンナップ時にHP30ロストする状態を付与します
GM:
GM:ではイニチアチブ0、モノさんの手番です
モノ:敵をとってやる
モノ:マイナーで猛毒の雫、メジャーでコンセ+獣の力+獣王の力+飛礫+バリアクラッカー
モノ:対象は主任へ
GM:判定どうぞ!
モノ:15dx7+6+3
DoubleCross : (15DX7+9) → 10[1,2,2,3,3,6,6,6,8,8,9,9,9,10,10]+10[4,4,5,6,8,9,9]+10[4,5,10]+5[5]+9 → 44
モノ:ぼちぼち
主任:ガード≪グラビティガード≫
GM:ダメージどうぞ!
モノ:あ、バリクラなので
モノ:ガー不!
主任:そうだ まあどうぞ!
モノ:ダメージロール寸前にシキをSロイス指定し、そのまま昇華!
モノ:ダメージを+5d10します
モノ:5d10+5d10+4+20+20+3
DoubleCross : (5D10+5D10+4+20+20+3) → 30[2,10,7,3,8]+24[1,3,5,6,9]+4+20+20+3 → 101
モノ:装甲ガード値貫通!
主任:ゲェェェッ
モノ:更に邪毒ランク+5を付与します
主任:HP0
主任:同時にオート≪ワームホール≫
主任:101ダメージを返します
モノ:いいね
モノ:最高だ
モノ:倒れます、ロイスを全て切ってるので復帰も不能
GM:
ヒサギ:その戦闘不能時に、”Odyssea”≪奇跡の雫≫。hp10で復活してください。
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を6(→ 6)増加 (106 → 112)
GM:野郎~~~~
モノ:ありがと~~!
GM:
GM:ではイニシアチブ6、ミツキさんの手番です。
ミツキ:マイナーで戦闘移動、ナイトライダーにエンゲージ
ミツキ:メジャーで……う~ん……
ミツキ:やりましょう コンボ【黒絶】
ミツキ:≪コンセントレイト:ブラックドッグ≫+≪アームズリンク≫+≪雷鳴の申し子≫
ミツキ:対象ナイトライダー
ミツキ:10DX8+6+3
DoubleCross : (10DX8+9) → 10[2,2,4,4,5,5,7,9,9,10]+10[6,8,10]+10[1,8]+2[2]+9 → 41
"ナイトライダー":ガード。
ミツキ:ダメージ
ミツキ:5D10-10-5+132-52
DoubleCross : (5D10-10-5+132-52) → 21[1,6,3,8,3]-10-5+132-52 → 86
"ナイトライダー":生存しています
ミツキ:侵蝕率91>100
ミツキ:≪雷鳴の申し子≫の効果でHP0に。
ミツキ:シキへのSロイス ○秘匿/秘匿 を昇華して復活します
ミツキ:HP132に。
シキ:すごーい!
モノ:すっごーい!
ヒイラギ:さすミツ
GM:
GM:待機していたヒサギさんの手番です。
ヒサギ:はい。
ヒサギ:マイナー”Ithaca”≪原初の黒:ポルターガイスト≫≪オリジン:サイバー≫。社会達成値+12、カリギュラを破壊し武器攻撃力分攻撃力増大。
ヒサギ:破壊効果を、カスタマイズ:エピックで無効化。
ヒサギ:”Telegonus”≪絶対の恐怖≫。ナイトライダーへ、カリギュラを使用し攻撃。
GM:判定どうぞ!
ヒサギ:8dx+13+12+3
DoubleCross : (8DX10+28) → 9[1,1,2,3,5,8,9,9]+28 → 37
"ナイトライダー":ガード。
GM:ダメージどうぞ
ヒサギ:4d10+38+22 装甲無視。
DoubleCross : (4D10+38+22) → 26[6,3,9,8]+38+22 → 86
ヒサギ:86点装甲無視攻撃です。
GM:ヤバ
"ナイトライダー":まだ耐えます
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を8(→ 8)増加 (112 → 120)
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を5(→ 5)増加 (120 → 125)
ヒサギ:あ
ヒサギ:すみません!ロイス昇華忘れてた!
ヒサギ:”姉”ヒイラギ 〇親愛/不安 をタイタス昇華。不利な効果を解消し、バステや攻撃力マイナス、クリンナップダメージを解消します。
ヒサギ:これを先に…!
GM:
GM:ではクリンナップ。
GM:邪毒を受けているPCはHPを15減らしてください。
ヒイラギ:”妹”ヒサギ ○慈愛/偏愛 をタイタス化して昇華、不利な効果を解消します
ミツキ:C(132-15)
DoubleCross : 計算結果 → 117
シキ:タイタス昇華 草薙圭吾 恋慕○/依存 不利な効果をすべて解除します。
GM:ではミツキさんにのみ≪鮮血の修羅≫の効果が発生します。HPを30減らしてください。
ミツキ:C(117-30)
DoubleCross : 計算結果 → 87
GM:
シキ:ナイフを逆手に持ち替え、自らの掌を薄く斬りつける。
シキ:腕を振り抜くと、滴る血が広間の床に飛び散り、タイルの溝に沿って流れていく。
シキ:それはほんの数滴。であるにも関わらず、その赤いラインはどこまでも伸びていき、瞬く間に広間を碁盤目状に区切る。
シキ:「私はシキ。"クイーン・オブ・ローゼス"。"盤外個体"の統率者」
シキ:「最初の実験体で、草薙圭吾の恋人で、みんなのお姉ちゃん」
シキ:「……そんな肩書は、どれもこれも嘘っぱちだったけど」
シキ:「けどね、圭吾。それでも私はここにいる。貴方に与えられたものじゃなく」
シキ:「みんながくれたものに報いるために、もう一度」
シキ:「私はこの王冠を被る」
シキ:"ナイトライダー"の炎に満たされた広間の地面を割って、黒い影の茨が生えてくる。
シキ:それはタイルに刻まれた血のラインに沿って、規則正しく交互に仕切られていく。
シキ:まるで互いの陣地を主張するかのような、赤と黒の市松模様(チェッカード)。
シキ:その盤上に立つシキが手をかざす。影の茨が寄り集まって、冠のごとく頭上を飾る。
シキ:「もう少しだけ待っててね、サアヤ」
シキ:「"お姉ちゃん"が、眠らせてあげる」
"ナイトライダー":「……シキ、ねえ……?」
主任:「……“薔薇の女王”か。何とも忌々しい名だ」
主任:戸惑う“ナイトライダー”の視界を掌で覆い、一歩踏み出す。
主任:「“盤外個体”計画か。全く、くだらないな。この僕の仕事としては、あまりに発展性が無い」
主任:「シキ。君はかつての計画の象徴だ。僕が作り替えた以前の、誰に顧みられることのない、つまらないプロジェクトの神輿に過ぎない」
主任:「だが、所詮は実験体だな。滑稽だよ。盤上でどれだけ女王を気取ろうが────」
主任:「僕の“ナイトライダー”は、盤面などひっくり返して、燃やし尽くす」
"ナイトライダー":「あ、ァア、あ……!」
"ナイトライダー":頭を抱えて苦悶する。周囲で業火が噴き上がり、影の茨を焦がしていく。
主任:「さあ、行っておいで。サアヤ」
主任:耳元で囁く。
主任:「くだらない遊戯(ゲーム)は終わりにしよう」
"ナイトライダー":「ぎ、あ、ッ────」
"ナイトライダー":君達に向け、大きく腕を広げる。
ヒイラギ:「サアヤ!」叫びながら、撃つ。同時に5発。弾丸は影の茨をくぐり抜け、”ナイトライダー”へ殺到する。
主任:「邪魔を……」
主任:“ナイトライダー”を捉える寸前で、弾丸は重力の壁に阻まれて落ちる。
主任:「しないでくれるかな?」
主任:「ヒイラギだったかな。君を見ているとつらくなってくるよ」
ヒイラギ:有効打にはならない。”ナイトライダー”に届きすらしない。
主任:「君の担当の……何と言ったかな。城崎くん?」
主任:「ハハッ……喋り方も何も、まるで彼女の猿真似じゃないか」
ヒイラギ:「……」主任の言葉に眉をひそめる。
主任:「実験体というのは、それだけ自己が薄いのかな。それにしたって、まるで子供だ。見ていて可哀想になってくるよ」
ヒイラギ:「……子供っていうのは」
ヒイラギ:「あんたの見てないうちに、成長してるもんだ」
ヒイラギ:「……今のボクのことを、きっとあんたは知らないさ」
ヒイラギ:その射撃は、いわば嚆矢。
ヒイラギ:「ボクだけじゃない」
ヒイラギ:「」
ヒイラギ:「ここにいる全員、だ」
主任:「生餌の個体差になんて、興味は無いね」肩を竦める。
主任:「刈り取れ。“ナイトライダー”」
"ナイトライダー":「────」
"ナイトライダー":甲高い絶叫と共に、“ナイトライダー”の全身から鮮血が迸る。
"ナイトライダー":それは空気に触れると同時に燃え上がり、鮮血の鞭として君達に殺到する。
"ナイトライダー":血の棘が、骨肉を焦がす業火が、身を引き裂き焼き尽くしていく。
ミツキ:「……シキ、下がって」
ミツキ:盾とした大型のドローンが、次々に貫かれ、溶解していく。
モノ:「ああああッ!ぎぃっ!!」
シキ:視界を埋め尽くす鮮血の鞭を前に、微動だにしない。先の戦いから見ても、サアヤに有効打を与えられる手段は限られている。
モノ:肉と溶断され、地面に転がる。
シキ:自分はその一人。だからこそ……
シキ:「うん。お願い。ミツキ」ただ冷徹に、合理的に、戦場にあっては最適解を積み上げる。
ヒサギ:「ず、ーーぐ、ぁ」子供が投げたボールのように跳ね飛ばされて焼き焦がされ。ゴロゴロと転がって何とか消火し、膝で何とか立つ。
ヒイラギ:「あ、ぐ……っ!」装甲越しに焼き切られ、跳ね飛ばされる。壁を支えになんとか立ち上がる。
モノ:「えへ、へぇ」
モノ:ふらつき、よろめくような奇妙なステップと重心移動で
モノ:最小限に敵の攻撃を回避する。
主任:「……避けたか」
主任:「サアヤ。次はあれを狙いなさい」
主任:「分かるかい?モノだ」
主任:「ちゃんと殺してあげないと」
主任:“ナイトライダー”の肩に手を置き、穏やかに語り掛ける。
"ナイトライダー":「……ぁ……はい、主任……」
モノ:「いいよ、サアヤ」
モノ:「遊ぼうよ」
"ナイトライダー":「モノ……大丈夫だよ」
"ナイトライダー":「ちゃんと……」
"ナイトライダー":「一緒に、外に、連れて行って……」
モノ:「うん」
モノ:「連れて行って、くれるんでしょ」
"ナイトライダー":モノに向けた腕から、鮮血の槍が放たれる。
"ナイトライダー":一直線に飛来し、モノを串刺しにせんとして──。
モノ:足を止め、腕を広げてそれを迎え入れる。
モノ:(これなら)
モノ:(シキと、ヒサギと、ミツキで)
モノ:(どっちか、殺せる)
シキ:かくして、槍は駒を貫いた。
シキ:「か……っふ……!」
モノ:「シキ!?」
シキ:しかしそれはモノではない。その眼前に身を投げだしたシキの脇腹を、鮮血の槍が抉る。
シキ:既に満身創痍のモノと、未だ無傷であり"盤外個体"への特攻手段を持つ自分。
主任:「……おいおい」呆れたように
主任:「クイーンでギャンビットをするのかい?」
シキ:この状況でどちらの命を優先すべきは明らかだ。もとより普段の訓練から、自分が盾役になるプランは存在しない。
シキ:「……さっき、言ったでしょうが」
シキ:「定石(ルール)なんて知ったことか!私達の勝利条件は!」
シキ:「みんな揃って外に出ること!!ひとりでも死んだら負けなんだよ!!」
モノ: が っ !!
モノ:その声が響いた時、既に
モノ:主任の喉元へ、骨ばった指は食い込んでいる。
モノ:「えへ、へ」
主任:「ぐ、が……!?」
モノ:「シキだなあ」
主任:「こい、つ……!」
モノ:状況を把握すると同時に、弾丸のように
モノ:ノーマークとなった主任の懐へと飛び込んでいた。
主任:重力の障壁を展開し、モノを弾き飛ばそうとする。
モノ:「ねえ」
シキ:「がふっ……!」炎が内蔵を焼く。全身の血管が沸騰するような不快感。それでも
シキ:叫ぶ「やっちゃえ!!モノ!!!!」
モノ:相貌に空いた昏い孔が、間近から主任を覗き込む
モノ:べきべきと、重力場に肉を割かれ、骨をきしませながら
モノ:掴む力は微動もしない。
主任:「出来損ない、が……!」
モノ:「か、か、簡単、だよね」
モノ:「全部嘘って、言うの」
モノ:「自分の知ってることだけ、本当って、笑うの」
モノ:掴んだ腕から血が吹き出す
モノ:食い込んだ傷口からその血が染み込み
モノ:喉笛に突き立てられた指先から、激痛とともに肉を腐らせていく。
主任:「ぎゃぁあああぁあッ!!」
モノ:「みんな、みんな、嘘つきだって笑ってる」
モノ:「だから」
モノ:「みんな、あなたのことが」
モノ:「だいっきらい」
モノ:愛おしそうに微笑み、機械のように力を込める
モノ:「えへへ、へへへへっ」
モノ:「モノと、一緒だね」
モノ:「遊ぼう」
モノ:「友達になろうよ」
モノ:べぎ、べぎ、べぎ
モノ:主任の肋にもう片方の腕を突っ込み
モノ:内臓を掻き回す
主任:「この……死に損ないの……腐れゴミ虫……がァアアぁあッ!!」
主任:苦痛に満ちた絶叫と共に、極大の重力場が展開され、モノを吹き飛ばす。
モノ:「ダメだよ」
モノ:「あなたのしたいことは」
モノ:「させて、あげない」
モノ: ぐ ぶぎっ!!
モノ:脊髄を引き抜く。
主任:「あ゛」
モノ:全身を重力場で打ち据えられ
モノ:夥しい血を流しながら
モノ:なお両の脚で立って、かつて自分たちを生み出した肉の塊を
モノ:床に放り捨てる。
モノ:「……さようなら」
主任:「……ざ」
主任:「サアヤ……」
主任:汚染された黒い血に塗れながら、襤褸雑巾のようになって呻く。
主任:「殺せ……」
主任:「全、部……」
主任:「殺…………」
主任:「………………」
モノ:「……」
モノ:その声を聞きながら
モノ:(みんなが)
モノ:(生きて、幸せになれますように)
モノ:初めての祈りを捧げて、意識を失った。
ヒサギ:その身体が、床に落ちる前に支える腕がある。
ヒサギ:がちん、という音。染み渡る暖かい感触。
ヒサギ:「、”そはテイレシアス、言の葉を予てより得る賢者の血なれば”っ……”他なる霊よ、死よ、遠ざかれ”ーー……っ!」荒い息交じりの、途切れ途切れの声。
モノ:「あ、れ?」
ヒサギ:「”こは太陽の娘、キルケのまじないなるぞ”!」
モノ:「……?」
モノ:「え、へへ」
モノ:「何やってるの、ヒサギ」
ヒサギ:「……こ、の……おバカ……!」
ヒサギ:「久々に、血の気が引く感触がしましたよ!無茶ばかりする!本当に、自分を大切にしなさい…!」
ヒサギ:「……立ちなさい!勝手に休んで、すやすや眠っているなんて許さない!」
ヒサギ:「二か月の生活で精製し、貯蔵しておいたとっておきの活性剤です。いいです?まだ何にも終わってないですからね!」
ヒサギ:「無駄にしたら許しませんよ!」
モノ:「……」
モノ:「ヒイラギに、とっとかないの?」
モノ:「もったいないよ」
ヒサギ:「あなたがそうしたら死んでたかもしれないでしょうが!」
ヒサギ:ずっとおとなしく、気弱にも見える微笑みをたたえていた顏からは、まっすぐな激情だけがある。
モノ:「ヒサギ……」
モノ:その表情を覗き込んで
ヒサギ:真っ直ぐ睨み返す。
モノ:「うん」
モノ:「……うん」
モノ:「また、ごめんなさい、だね」
モノ:「それに、ありがと」
ヒサギ:「後で聞いてあげます。だから今はしゃきっとしなさい!行きますよ!」立ち上がらせて、自分も立つ。
"ナイトライダー":「あ、あれ……」
モノ:「はぁい」
"ナイトライダー":「主任……どこ……?」
"ナイトライダー":きょろきょろと辺りを見回して
"ナイトライダー":「何で……あたし……」
"ナイトライダー":「ここで……何……何を……?」
シキ:「よかった、モノ……」ようやく炎の槍を引き抜く。影の茨が傷口に纏わりつき、欠けた肉を取り繕う。
モノ:「一緒に、行く」
シキ:彼女の無事に安堵した後、亡骸となった草薙圭吾を一瞥して
モノ:「ヒサギ、ヒイラギ、シキ、ヒカリ」
シキ:「……最後まで一言もなしじゃあ、流石に諦めもつくよ」
モノ:「一緒だ」
"ナイトライダー":「あ……あぁあ……」
シキ:「さよなら、圭吾。大好きだったよ」
シキ:「もちろん嘘だけどね。嘘つきのアンタにはお似合いでしょ」
"ナイトライダー":「あぁああああぁああ…………!」
モノ:ぎゅ、と握りこぶしにまた力をこめる。
"ナイトライダー":血塗れの、燃え盛る両手で顔を覆う。
"ナイトライダー":コントロールを失ったことで、炎は更に煌々と燃え上がり、荒れ狂う。
ミツキ:「……」
ミツキ:その姿と、次いで、モノを。ヒサギとヒイラギを見つめ。
ミツキ:小さく溜息を吐く。
ミツキ:「……約束、しちゃったもんなぁ」
ミツキ:苦笑して、足を踏み出す。
ミツキ:「少しくらい、お姉ちゃんらしいこと……しないとね」
ミツキ:そして、腹部に傷を負ったシキの隣に立つ。
ミツキ:「……まーた無茶してる」
シキ:「ミツキにだけは……言われたくない」
シキ:「……っていうか」周りを見回して
シキ:「みんな誰かさんに似たんじゃないの。姉妹だからさ」
ミツキ:「え~?それだけは無いよ」笑って。
ミツキ:「みんな、あたしなんかより、ずっといい子じゃん」
ミツキ:溶解し、砕かれたドローンの残骸から、ミツキへと電流が収束していく。
ミツキ:「それとこれで、お互い無茶1だから」
ミツキ:「言いっこなしね」
シキ:「もー……」苦笑して
シキ:「んじゃあお手本見せてよ。お姉ちゃん」
ミツキ:「いいよ。でも一個だけお願い良い?」
シキ:「いいよ。一個だけね」
ミツキ:「ん」
ミツキ:「ごめん。外出られても──」
ミツキ:「一生、抱っこしてもらうかも」
ミツキ:答えを待つより先に、その姿が掻き消えた。
ミツキ:紅の閃電が走り、“ナイトライダー”へ向かう。
"ナイトライダー":「────!」
シキ:「それって──────っミツキ!!!」
シキ:音速を超えた背が、叫ぶ声を置き去りにしていく。
ミツキ:先の戦いで壁や天井を破壊したのは、何も特別な能力を行使した訳では無い。
ミツキ:過負荷状態の“スカーレッド・スパロウ”の武器は、至極単純に過ぎる、身体能力の強化。
ミツキ:音の壁を越えた蹴撃が、“ナイトライダー”に突き刺さり──
ミツキ:その身体が吹き飛ぶより先に、床面を陥没させて着地。もう一度地を蹴って、空中の敵を捉える。
ミツキ:蹴る。蹴る。蹴る。蹴り続ける。紅の電影のみがその存在を示し。
ミツキ:ジャームの知覚能力すら越えた、執拗にして刹那の連撃。それら全てが、1秒にも満たぬ瞬間に行使され。
ミツキ:異様な、巨大な雷撃にも似た音となって、辺りに轟いた。
"ナイトライダー":「ッ、ア……!」
"ナイトライダー":全方位からの衝撃に、その身体は一瞬、空中で静止しながらへし折れて。
"ナイトライダー":やがて、錐もみ状態で吹き飛んで床に転がる。
ミツキ:「……ッ……」
ミツキ:自らも攻撃を受けたかのように、地面に転がる。手足からは血が噴き出し、異常な摩擦熱で煙が立っている。
シキ:「ミツキ!!」
シキ:地に伏せるミツキへと駆け寄り、抱き起こす。
ミツキ:「ゲホッ……!うぇ……あー……」
シキ:「ばか!全然お手本になってないじゃん!!みんなが真似したらどうすんの!!」
ミツキ:「……だいじょぶだいじょぶ。まだイケるって」
ミツキ:ひらひらと掌を振る。
ミツキ:「それに……ここで無茶せずに、いつするのって話でしょ」
シキ:「それは……そうだけど……」
シキ:「あーもうわかった!わかりました!!」
シキ:「私だってこれ以上はガタガタ言わない。例えどんなことになっても……」
シキ:「死なない限りは、一生面倒見続けてあげる」
シキ:「絶対離してあげないから。後から逃げたくなった時に動けなくても知らないんだからね」
ミツキ:「……へへ」ふにゃりと笑って
ミツキ:「怒るより褒めてよ、シキ」
ミツキ:「キミの為なら、あたし」
ミツキ:シキに抱かれるようにして、再び立ち上がる。
ミツキ:「何度だって飛んでやる」
ミツキ:ロイス開示 ○秘匿/秘匿
ミツキ:→ ○比翼/依存
ヒサギ:それを横目で見つつ、微かに溜息。
ヒサギ:「ああもうっ……誰もかれも、無茶と無理ばかり」とはいえ、早期に片付けねばならないのは確かだ。
ヒサギ:自分のこめかみに無針注射器を突き付ける。ーー己は情報集積体をこそ起源とするレネゲイド・ビーイング。故にこそ。
ヒサギ:処理媒体の超過駆動によって、その干渉力を一時、跳ね上げることができる。
ヒサギ:「エイリアス、生成開始…散布界を複層化」
ヒサギ:「ーー”かのもののことを、われらに語り下さい、ムーサよ”ーー”数多くの苦難と相対し、ついに帰り来るかのもののことを”」
ヒサギ:ギリシア語のコード。彼女が一番好きな物語。
ヒサギ:オデュッセイア。遠くへ行った英雄が、長い長い時と、辛く苦しい試練の果てに、
ヒサギ:行きて帰りしものがたり。
ヒサギ:広がる。広がる。広がる。赤が、彼女、レネゲイドビーイングとしての彼女ーー情報の影が。
ヒサギ:それでも、最強を謳われたその炎と血の前に、幾度となく吹き散らされて。
ヒサギ:
ヒサギ:「今なら」それでも。
ヒサギ:「それ、で。いいんですよ…”触り”、ましたね」その赤色は、既に周囲全てを掌握している。
ヒサギ:「ーーDescript-No:04、症状再現。処理コード、034004実行」それは彼女の中の記憶と記録にあるものだ。
ヒサギ:特殊なレネゲイドに与えられるナンバー、その症状の記憶。それを打ち込んだ相手の中で”再現/ふっかつ/させる”。
ヒサギ:その記憶の名前は、”対抗種”。レネゲイド殺しのレネゲイド。自己内での相殺、その相克再現。
ヒサギ:絆であろうとなんであろうと。
ヒサギ:それはレネゲイドによる力だ。
ヒサギ:なら、それ自身に殺させる。
"ナイトライダー":「…………!?」
"ナイトライダー":「ギ、ぎひっ……!」
"ナイトライダー":「あ、あぁア゛ッ……!?」
ヒサギ:顔を顰める。オーバークロック状態でも、そう長く続けられるものではない。特異性とは、ただしく唯一ユニークなものであるから。
"ナイトライダー":踊り狂うかのように悶絶し、血の鞭が周囲を手当たり次第に切り刻む。
ヒサギ:「……、コード終了…っ、ああもう、まだまだ元気か…!」
"ナイトライダー":苦しんでいる。炎に身を焼かれ、切り刻まれても動じなかった“ナイトライダー”が、その存在を喰らわれるかのような感覚に、のたうち回っている。
"ナイトライダー":「ひぃ……ヒィッ……ひひひひ……!」
"ナイトライダー":怯えているのか、笑っているのか。ぼろぼろと血の涙を流しながら、君達を見据える。
エンゲージ
モノ[3]
(10m)
ミツキ[6] (10m) ナイトライダー[14]シキ[6] (10m) ヒイラギ[15]
(10m)
ヒサギ[7]
GM:2ラウンド
GM:セットアップから!
ヒイラギ:なし
"ナイトライダー":≪氷の茨≫ 自身エンゲージから離れた対象はHP3D10ロスト
ヒサギ:セットアップなしです。
ミツキ:なし
シキ:『RED CROWN』《原初の黄:氷の茨》自身エンゲージから離れた対象はHP5d10ロスト
シキ:シキの侵蝕率を3増加 (98 → 101)
シキ:100%超えたので氷の茨のレベルが上がり、6d10ロストに。
モノ:フルパワーアタック!攻撃力+20!
モノ:侵蝕124
GM:ではイニシアチブ15、ヒイラギさんの手番です
ヒイラギ:メインプロセスの前に
ヒイラギ:イニシアチブ、《マグネットムーブ》
ヒイラギ:対象”ナイトライダー”でヒイラギの場所まで移動させます
GM:何だとぉ……
GM:移動させられます
ヒイラギ:やったあ
ヒイラギ:ヒイラギの侵蝕率を3増加 (106 → 109)
モノ:よかったのかいホイホイついてきちまって
エンゲージ
モノ[3]
(10m)
ミツキ[6] (10m) シキ[6] (10m) ヒイラギ[15]ナイトライダー[14]
(10m)
ヒサギ[7]
シキ:シキのエンゲージから離れたことで《原初の黄:氷の茨》の効果が発動。
シキ:HPを6d10失ってください。
"ナイトライダー":やだ~~
"ナイトライダー":6D10
DoubleCross : (6D10) → 29[7,3,3,3,4,9] → 29
シキ:フハハハハ
"ナイトライダー":痛い
ヒイラギ:いたそう
GM:では改めてヒイラギさんの手番です
ヒイラギ:はい
ヒイラギ:マイナーなし メジャー《コンセントレイト:モルフェウス》《ペネトレイト》
ヒイラギ:対象は”ナイトライダー”
GM:判定どうぞ!
ヒイラギ:12dx7+7
DoubleCross : (12DX7+7) → 10[1,2,3,3,4,4,4,5,5,6,8,10]+10[4,9]+1[1]+7 → 28
"ナイトライダー":ガード。
GM:ダメージどうぞ!
ヒイラギ:3d10+10+3+8
DoubleCross : (3D10+10+3+8) → 19[6,3,10]+10+3+8 → 40
ヒイラギ:装甲無視!
"ナイトライダー":えっ……痛……
シキ:いいぞ~
ヒイラギ:姉妹パワーだ
"ナイトライダー":かなりヤバくなります
ヒイラギ:ヒイラギの侵蝕率を5増加 (109 → 114)
GM:イニシアチブ14 “ナイトライダー”の手番です
"ナイトライダー":マイナー ≪ブラッドコントロール≫ メジャーダイス+5個
"ナイトライダー":メジャーで……
"ナイトライダー":≪コンセントレイト:ブラム=ストーカー≫+≪紅の刃≫+≪魔王の覇気≫+≪斥力の槌≫+≪虚空の陥穽≫+≪蝕む赤≫+≪ブラッドボム≫+≪鮮血の修羅≫+≪焦熱の弾丸≫+≪極死の地≫
"ナイトライダー":命中でランク5邪毒付与 自身エンゲージへ引き寄せ 対象が次に行う攻撃の攻撃力-10
"ナイトライダー":ダメージで10m移動 更にHP3D10ロスト クリンナップ時HP30ロスト
"ナイトライダー":対象はPC全員です。
"ナイトライダー":13DX7+8
DoubleCross : (13DX7+8) → 10[2,3,3,4,5,5,6,6,7,7,8,9,10]+10[1,8,10,10,10]+10[1,4,6,9]+6[6]+8 → 44
シキ:まじかよ…
ヒイラギ:ヤバ
ヒサギ:うーんドッジするしかねえ~~
モノ:かわす!
シキ:ドッジ!
ヒイラギ:ドッジ!
ヒサギ:4dx+3>=44
DoubleCross : (4DX10+3>=44) → 7[4,4,6,7]+3 → 10 → 失敗
モノ:15dx+1
DoubleCross : (15DX10+1) → 10[1,3,3,4,4,5,5,6,7,7,8,9,9,9,10]+1[1]+1 → 12
モノ:しゃあねえ!
ミツキ:10DX+4 ドッジ
DoubleCross : (10DX10+4) → 10[1,2,4,5,5,6,8,8,9,10]+10[10]+5[5]+4 → 29
シキ:5dx+1>=44
DoubleCross : (5DX10+1>=44) → 9[4,5,6,7,9]+1 → 10 → 失敗
ヒサギ:ミツキさんめっちゃ回ってる
ヒイラギ:8dx+7
DoubleCross : (8DX10+7) → 7[2,3,5,5,5,6,6,7]+7 → 14
ミツキ:≪マグネットフォース≫でシキをカバーします
シキ:ミツキ……!
ミツキ:侵蝕率100>102
"ナイトライダー":この時点でシキ以外にランク5邪毒付与 自身エンゲージへ引き寄せ 対象が次に行う攻撃の攻撃力-10
"ナイトライダー":ダメージ算出
"ナイトライダー":5D10+16
DoubleCross : (5D10+16) → 18[6,3,2,4,3]+16 → 34
ミツキ:C(87-34-34)
DoubleCross : 計算結果 → 19
ミツキ:死んじゃう~~~
モノ:死んだ!
シキ:ミツキ~!モノ~!
モノ:後は…頼む!
ヒサギ:死ぬので、ヒイラギ/〇憧憬/思慕を昇華復活。
ヒイラギ:c(34-21)
DoubleCross : 計算結果 → 13
ヒイラギ:死ぬわこれ
"ナイトライダー":≪斥力の槌≫の効果で全員をシキのエンゲージに移動させます
エンゲージ
ヒイラギ[15]ヒサギ[7]シキ[6]ミツキ[6] (10m) ナイトライダー[14]
"ナイトライダー":≪氷の茨≫で3D10ダメージ
"ナイトライダー":3D10
DoubleCross : (3D10) → 13[6,6,1] → 13
"ナイトライダー":低い~~
ヒイラギ:”やくそく”/ヒサギ/誠意○/執着を昇華復活するとちょうどHPが13で死
ヒイラギ:”これからもずっと”ヒサギ/秘匿○/秘匿→”これからもずっと”ヒサギ/希望○/不安 感情開示、Sロイス昇華し完全復活
ミツキ:C(19-13)
DoubleCross : 計算結果 → 6
ヒサギ:これでも死んじゃう……
ヒサギ:やりたくはないが ”やくそく”/ヒイラギ/〇契約/執着 Sロイスを昇華し完全復活を選択します。
ヒサギ:hp25、バステなどを解除し復活。
"ナイトライダー":≪ブラッドボム≫の効果で3D10ダメージを追加で与え、同じだけ自傷します
"ナイトライダー":3D10
DoubleCross : (3D10) → 11[1,6,4] → 11
ミツキ:死んだ~~
ミツキ:ヒサギ ○尽力/不安 を昇華して復活します HP15
ヒサギ:11点受けて、hp14で生存。hp25→14に。
ヒイラギ:ここでブラッドボム受けて27→16
ヒイラギ:ヒイラギのHPを16に変更 (7 → 16)
シキ:うわ~みんな~!
"ナイトライダー":こちらも≪ブラッドボム≫の自傷ダメージで死亡
シキ:死んでる…
"ナイトライダー":≪燃える魂≫で復活します
シキ:うぎゃー!
ヒイラギ:サアヤ……
ヒサギ:なるほど…
"ナイトライダー":3人には更に≪鮮血の修羅≫の効果でクリンナップ時にHP30ロスト状態を付与します
"ナイトライダー":行動終了時に≪夜魔の領域≫
"ナイトライダー":行動値0になり、未行動状態になります
GM:イニシアチブ7、ヒサギさんの手番です
ヒサギ:はい。マイナーで、せめてということで上に10m移動。
ヒサギ:メジャー。”Telegonus”≪絶対の恐怖≫、カリギュラでナイトライダーへ攻撃。
GM:判定どうぞ!
ヒサギ:8dx+13+12+3
DoubleCross : (8DX10+28) → 9[1,2,4,5,5,6,7,9]+28 → 37
"ナイトライダー":ガード。
ヒサギ:ダメージ…!
ヒサギ:4d10+38+22
DoubleCross : (4D10+38+22) → 19[3,1,7,8]+38+22 → 79
ヒサギ:79点装甲無視です。
"ナイトライダー":HP0。
"ナイトライダー":≪不死不滅≫で復活します。
ヒサギ:ぎゃ~~
ヒサギ:ヒサギの侵蝕率を5(→ 5)増加 (125 → 130)
GM:イニシアチブ6 ミツキさん、シキさんの手番です。
ミツキ:マイナーで戦闘移動、“ナイトライダー”にエンゲージ
ミツキ:メジャーでコンボ【黒絶】
ミツキ:≪コンセントレイト:ブラックドッグ≫+≪アームズリンク≫+≪雷鳴の申し子≫
ミツキ:対象はナイトライダー
ミツキ:12DX7+8
DoubleCross : (12DX7+8) → 10[1,1,2,3,4,4,5,7,7,9,9,10]+10[1,2,5,6,9]+4[4]+8 → 32
"ナイトライダー":ガード。
ミツキ:ダメージ
ミツキ:4D10+132-15-5-10
DoubleCross : (4D10+132-15-5-10) → 13[7,3,2,1]+132-15-5-10 → 115
シキ:すっごーい!
"ナイトライダー":HP0。
"ナイトライダー":Eロイス≪不滅の妄執≫
"ナイトライダー":HP50で復活
"ナイトライダー":解除条件は「一度でもこのEロイスを使用させる」です。
ミツキ:侵蝕率102>111
ミツキ:≪雷鳴の申し子≫の効果でHP0に。シキ 尽力/○罪悪感 のロイスを昇華して復活します。
GM:同じくイニシアチブ6 シキさんの手番です。
シキ:マイナーで戦闘移動。"ナイトライダー"のエンゲージへ。
シキ:メジャー。これが手向けだ!『BLUE BLOOD』《原初の赤:吹き飛ばし》《妖しの招き》《原初の白:斥力の槌》《ジャイアントグロウス》《コンセントレイト:ウロボロス》
シキ:"ナイトライダー"へキーンナイフで攻撃。
GM:判定どうぞ!
シキ:11dx7+9
DoubleCross : (11DX7+9) → 10[1,3,5,6,6,7,7,9,9,9,10]+10[2,3,7,7,8,9]+10[1,4,6,9]+10[10]+5[5]+9 → 54
"ナイトライダー":ガード。
GM:ダメージどうぞ!
シキ:6d10+14+4d10 装甲-5
DoubleCross : (6D10+14+4D10) → 22[3,6,1,6,5,1]+14+31[8,6,9,8] → 67
シキ:一点でもダメージを与えた場合、4m移動させ、エンゲージに引き寄せ、もう一度4m移動させます。
"ナイトライダー":HP0。
"ナイトライダー":復活エフェクトはありません。
GM:戦闘終了です。
ヒイラギ:「……サアヤ」血の涙を流す”ナイトライダー”を見て、眉をひそめる。
ヒイラギ:自分ひとりの火力など、たかが知れている。
ヒイラギ:戦闘用個体ではない。それ故に、あの日に装備をかき集めた。
ヒイラギ:使える機能は制限され、火力は通常兵器に毛が生えた程度のもの。
ヒイラギ:だが、
ヒイラギ:「こっちだ」
ヒイラギ:左腕を向ける。手首から、ワイヤーが放たれる。
"ナイトライダー":「!」
ヒイラギ:両足からアンカーが打ち込まれ、床に食い込む。
ヒイラギ:背中が、脊髄が熱く熱く焼ける。
ヒイラギ:「……こっちだ!!」大きく叫ぶ。
ヒイラギ:──この場の”女王”に聞こえるように。
"ナイトライダー":ワイヤーに拘束され、藻掻く。爆炎で諸共に焼き切ろうとして。
シキ:しかし、その炎は燃え拡がる前に霧散する。
シキ:ワイヤーの拘束に混じって、"ナイトライダー"に絡みつく黒い茨。
"ナイトライダー":「ウ、あ……!?」
シキ:その棘が、彼女が流す灼熱の血液を、燃え上がる前に吸い取っていく。
シキ:故に咲いたのは爆炎ではなく、赤黒い真紅の薔薇の花。
シキ:その花弁は咲いた瞬間燃え落ち、灰となって戦場に舞う。
シキ:「ヒイラギが呼んでるでしょうが……おとなしく」
シキ:地面から伸びた影の茨が、バネのように撓って"ナイトライダー"を弾き飛ばす。
シキ:「行って来い!」
"ナイトライダー":「が、あァアッ!?」
"ナイトライダー":血の鞭を地面に突き立てるが、勢いを殺し切れずに吹き飛ばされる。
ヒイラギ:勢いのまま”ナイトライダー”をワイヤーで引きずり込む。
ヒイラギ:ぶつかるほどのスピードを、そのまま受け止めるように。
ヒイラギ:「ぁああああっ!!」至近距離、焦げるほどの熱を受けながら、
ヒイラギ:撃つ、撃つ、撃つ。
ヒイラギ:狙いもなにもなく、ただ、銃口を直に突きつけて。
"ナイトライダー":「ぎっ……ぁあッ──あぐゥぁああァアッ!!」
"ナイトライダー":銃声と共に悲鳴が上がる。鮮血と火の粉を撒き散らし、“ナイトライダー”がよろめく。
"ナイトライダー":「う……あぁああああ────」
"ナイトライダー":顔を覆っていた腕の隙間から、ぎょろりと見開かれた眼が覗く。
"ナイトライダー":耳をつんざく甲高い絶叫。同時にその周囲、爆発するように血液の刃が放たれる。
"ナイトライダー":全方位に襲い来る血液の触手が、君達の身体を貫く。
ミツキ:「……シキ!」
ミツキ:最早ドローンも残っていない。シキの盾となり、自らが穿ち貫かれる。
シキ:「ばっ……ミツキ!」
モノ:「サアヤ!」
モノ:全身を刺し貫かれながら、サアヤに飛びつき
モノ:腕を回してネックロックをかける。
モノ:「うぅうううッ!」
モノ:「……サアヤ」
モノ:かすれた声が、耳元でささやく。
モノ:「違うよサアヤ」
モノ:「サアヤのしたいことは、それじゃない」
モノ:「それがサアヤの本当じゃない」
"ナイトライダー":「…………」
モノ:「人を傷つけて喜ぶ人じゃない」
モノ:「サアヤは、そうでしょ」
モノ:「サアヤ……みんなの声を聞いて……」
"ナイトライダー":「……う」
"ナイトライダー":「あぁ……ああああぁあぁあッ!!」
"ナイトライダー":かぶりを振り、絶叫する。血の触手が君達を貫いたまま、別の生き物のように暴れ回り、振り回されて。
"ナイトライダー":同時に、体内で変形。夥しい血の棘が臓腑を貫き、更に空気と反応して凄まじい爆発を引き起こす。
モノ:「かッ」
モノ:吹き飛ばされ、地面に転がる。
モノ:「シキ……」
モノ:「役に……立ちたかったな……」
モノ:気を失う。
シキ:「モノ!!ミツキ!!」目の前の少女に手を伸ばす。せめて支えようと伸ばした手は空を切り
シキ:血の触手が姉妹達を引きずり回すのを、ただ立ち尽くして見ている。
ミツキ:「ッ……は……」
ミツキ:全身を引き裂かれ、焼き焦がされ、血に塗れて崩れ落ちる。破れた服の下、胸元からは白骨が覗いている。
ヒイラギ:「が……ぐ」膝をつく。高熱で装甲と皮膚が癒合する。肺からは焦げたような匂いが吐き出される。
ヒサギ:「モノ、さ…ぐづ、ぎーー」勢いに吹き飛ばされながら、貯蔵したシリンダーを傷口に直接叩き付ける。
ヒサギ:思い出を焼き付けたもの。自身の一部ともいえるそれで強引に修繕する。黒く焼けた肉と皮を内側から引きはがすように赤色が噴き出す。
シキ:「……」倒れた4人とサアヤの間に立つ。
シキ:モノへと一度視線をやって
シキ:「おつかれ、モノ。……目が醒めたら、いっぱい褒めてあげるからね」
シキ:「役に立つかどうかじゃない。生きててくれてありがとうって、何回だって言ってやる」
シキ:続いて、すう、と息を吸い込む。
シキ:「ミツキ。ヒイラギ。ヒサギ」
シキ:「まだ立てるでしょ」
ヒサギ:「かふ、っ、ぇえ……まだ、いけます…」よろよろと身を起こす。
ヒイラギ:「無茶を……言ってくれるな、うちの女王は」
ミツキ:「ホント……人遣いが荒いったら無いよね」
ミツキ:ぼたぼたと血を流しながら、起き上がる。
シキ:「もう無理すんななんて言わない。この先に行くには、みんなの力がまだ必要だもん」
ミツキ:「ふん……バカ言うなよ」
ミツキ:「キミさえ立ってれば、あたし達の勝ちだ」
ミツキ:「最後まで守ってやる……だからしっかり決めなよ、シキ」
シキ:「……わかってる。ミツキ」
シキ:「私は最後まで倒れない。必ず……」
シキ:「必ず、みんなを連れて行く。」
シキ:「だから、ちゃんと見ててね」
ヒサギ:「見放せるくらい、おとなしい人じゃ、無いでしょ……けほ、」せき込みつつ笑いながら。
ヒサギ:「じゃあ、その露払いくらいは、させて、貰いますか……!」
ヒサギ:がちゃりと貯蓄したシリンダーを再度装填する。あとそう数もない。焦りがある。
ヒサギ:だが、それに飲まれて勝てる相手でもない。ーー郷愁にも、また。
ヒサギ:腕を持ち上げる。
ヒサギ:「げほっ、…”セイレンの歌に惹かれてはならぬ。”は、”かのものらの歌は、記憶をそぎおとし、怪物たる彼女らの贄となすから”ーー」赤が広がる。空気を巻き込む。
ヒサギ:「Descript-No:17、症状再現。処理コード:034017実行……ッ」
ヒサギ:ーー最も己が深く再現できるものとはなにか。それは、最も慣れ親しんだ特異性である。
ヒサギ:赤が縁取るように、広がる。鳥を、草木を、花々を。
ヒサギ:「……外が見たいと。言っていましたよね」それは、彼女自身の影/エイリアス。
ヒサギ:其れの名前は、”奇妙なる隣人”。共生型レネゲイド・ビーイングと意識結合を起こした症例。
ヒサギ:「記録と記憶からの再現ですが、見てください」≪声無き声≫。
ヒサギ:外の風景。それを見て、美しいと感動したひとの想いがこもったもの。それを投影しーー
ヒサギ:内部レネゲイドを操作する。共生型レネゲイド・ビーイングは、別人格でありながら、それは宿主と同一の存在として振舞う。
ヒサギ:それを再現する。同一の存在でありながら、他者であるもの。
ヒサギ:それは、”キルケ”、ヒサギの最も多用する攻撃手段。他者を、他者自身にこそ傷つけさせる、裏切りを捻じ込む手法。
ヒサギ:「……いい夢を」
ヒサギ:血の刃が、ナイトライダーの内部を引き裂いた。
"ナイトライダー":「……!?」
"ナイトライダー":防ぎようがない自分自身の攻撃が、“ナイトライダー”の半身を分かつ。
"ナイトライダー":上半身と下半身が泣き別れとなり、崩れ落ちそうになって。
"ナイトライダー":「ぎ……ぃぃいいあぁああぁあッ!!」
"ナイトライダー":自らの身体を血の刃が貫き、強制的に縫い留める。
ヒサギ:「……ッ、まだ……」
ミツキ:「……」
ミツキ:変わり果てたサアヤの姿がぼやける。何度も薄れそうになる意識を、必死に繋ぎ止める。
ミツキ:既に手足の感覚は無い。夥しい血が滴って、今こうして立っているのも、殆ど意地と気力によるものだ。
ミツキ:(……もう少しなんだ)
ミツキ:鮮赤の電光が瞬き、四肢へと通電する。死んだように動かぬ自らの手足を、電気信号と反射を用いて強制駆動させる。
ミツキ:(皆で……一緒に……)
ミツキ:肉が、神経が焼けていく。正気を蝕むほどの激痛。絶叫しそうになるのを耐え、片脚を引いて半身に構える。
ミツキ:視界の中、血に塗れた掌を見る。
ミツキ:あの時、何も成せなかった腕。何も掴めなかった手。
ミツキ:かつて地に墜ち、折れた羽根。
ミツキ:「……あたし達は」
ミツキ:「……行くんだよ……」
ミツキ:死に向かう訳では無い。望みを捨てた訳では無い。
ミツキ:「外へ」
ミツキ:遥かな空を見据え。この地の底から抜け出さんと。
ミツキ:もう一度、血染めの燕が翼を広げる。
ミツキ:(限界を)
ミツキ:紅蓮の雷光が弾け、輝く。
ミツキ:(超えて────)
ミツキ:血液が沸騰し、真紅の蒸気が噴き出す。
ミツキ:(飛べ!!)
ミツキ:大気の震える音と共に、ミツキの姿が消失する。
ミツキ:地から天へと昇る雷の如く、赤色の残影が"ナイトライダー"へと殺到。
ミツキ:少女の身体を、刹那の内に空中へと吹き飛ばし──
ミツキ:雷轟となって、号砲のように。この奈落へと響き渡った。
"ナイトライダー":「……!!」
ミツキ:「……」
ミツキ:全てを使い果たして、自らもゆっくりと墜ちていく。
ミツキ:光が消えていく。空が遠退いていく。
ミツキ:何もかもが失われていくような感覚。
ミツキ:けれどもう、怖くはない。
ミツキ:自分には、掛け替えのない片翼がいると知っているから。
ミツキ:何度地に墜ちても、また飛び立つことが出来ると、そう信じているから。
ミツキ:地に墜ちる寸前、すう、と、深く息を吸い込んで。
ミツキ:その名を叫ぶ。
ミツキ:「────シキーーーーーーっ!!」
シキ:地に墜ちる翼とすれ違うように、空へ向かって駆け出す影がある。
シキ:手の内でナイフを回す。影の茨が巻き付き、杖のように伸びたそれを振るう。
シキ:その動きに導かれるように、地面から生えた茨が急激に成長し、辺りに蜘蛛糸の如く張り巡らされていく。
シキ:茨の蔓は鞭のように、落下してくる"ナイトライダー"へと巻き付き、空中に磔にする。
シキ:それと同時に
シキ:茨の階段を"ナイトライダー"へ向けて駆け上がったまま、ナイフに巻き付いた茨を後方に伸ばす。
シキ:「勝手に……!」今まさに地面に激突しようとしていたミツキを拾い上げ
シキ:自らの元へと引き寄せる「満足……してんじゃないっての!!」
シキ:「一緒に飛ぶんでしょ!」
ミツキ:「うぇっ……えっ?」
ミツキ:抱き寄せられて、目を丸くする。
シキ:血と肉を失い幾分軽くなった彼女の身体を片手で抱き上げ、更に歩を進める。
シキ:「当てにしてくれるのは嬉しいけど」
シキ:「ちゃんと見ててくれないと、すぐ駄目になっちゃうんだよ。私」
シキ:「だから行こ。ミツキ」
シキ:「私のこと、一番近くで見てて」
ミツキ:「……」
ミツキ:「……もー……」
ミツキ:「しょうがないなー、シキは」
ミツキ:腕の中、胸元に顔を寄せて。
ミツキ:「……うん」
ミツキ:「ずっと見てるから」
ミツキ:頷いて、花が咲くように笑う。
シキ:その言葉に、口元だけで笑みを返して
シキ:今一度、全霊を込めて茨を振るう。
"ナイトライダー":「グ……ッが……!」
"ナイトライダー":茨に拘束され、藻掻き。爆炎で影を焼き払おうとする。
シキ:「"王冠は朱く濡れている"」
シキ:「"王笏が示すは紫幻の記憶"」
シキ:「"黒白の宝珠は汝の罪を暴き立てる"」
シキ:統率個体としての特権を振るうための解除コード。
シキ:王権を保障するレガリアになぞらえたそれを唱える度、影の茨は"ナイトライダー"を中心に幾重にも張り巡らされ
シキ:やがて奇怪なオブジェを形成する。それはまさに、天に咲いた巨大な薔薇の花。
シキ:「"尊きものは血に非ず"」
シキ:それは、女王としての断罪の権能。こと"チェッカード"の領域内である限り
シキ:"盤外個体"へと一方的な誅戮を下す処刑場。それこそが今天に咲いた薔薇の園だ。
シキ:一度鞭を振るえば、罪人を串刺し、引きずり回し、八つ裂きにし、最後は首を落とす。
シキ:如何に死の瞬間を繰り返す特異なジャームとて、それを上回る速度で殺され続ければひとたまりもない。
シキ:「これで……」
シキ:「王手」
シキ:"ナイトライダー"に絡みついた鞭を引き寄せる。
"ナイトライダー":「────!!」
シキ:こちらが振るうのは最初の一撃のみ。
シキ:一度その身を薔薇の園へと弾き出せば、後は自動的に
シキ:一切の容赦も呵責もなく、処刑は実行される。
シキ:それ故に───
シキ:ト ス ッ
シキ:驚くほど軽い音を立てて、それは終わった。
シキ:"ナイトライダー"……サアヤの心臓へ、ただ一突き、ナイフを突き入れただけ。
シキ:その身体を処刑場へ落とすことはなく
シキ:ただ、背に手を回して抱きしめる。
"ナイトライダー":「……ぁ……」
"ナイトライダー":急速に進行しつつあった“ナイトライダー”の再生が、ぴたりと停止する。
シキ:「……サアヤ」
シキ:「ごめん」
シキ:「……ごめんね」
"ナイトライダー":「……」
"ナイトライダー":「ううん」
"ナイトライダー":人としての意識を取り戻しなど、したわけではないだろう。
"ナイトライダー":恐らくはただの、記憶の残滓。それがただ、都合よく表出しただけに過ぎないものだが──
"ナイトライダー":その顔に、小さな笑みを浮かべる。
"ナイトライダー":「ありがとね」
"ナイトライダー":そうして目を閉じ、シキの腕の中で脱力し。
"ナイトライダー":もう二度と、起き上がることはなかった。
シキ:「……」同時に、空中に咲いた薔薇が枯れ落ちる。
シキ:広間を覆った茨も、撒かれた炎も瞬く間に消え失せ。
シキ:残ったのは、ただの一輪。
シキ:「忘れないよ。ずっと」
シキ:亡骸の胸に咲いた青い薔薇だけが、いつまでもその死を悼んでいた。
GM:特殊システムにより、バックトラックは自動帰還。
GM:経験点はいつもの5点+シナリオ10点+侵蝕分5点にEロイス分1点を合わせた21点を一律で配布します。
GM:お疲れさまでした!
ヒサギ:お疲れさまでした~~!
シキ:パクパク!おつかれさまでした!!
モノ:お疲れさまでした~~!
ヒイラギ:おつかれさまでした~!!
【ED】
国内某所 無人島
GM:激闘を生き延びた君達は、応急処置を終え、最低限の物資と共に“チェッカード”を脱出した。
GM:上方へと続く長い長い通路を抜け、ハッチを開き、地上へと出る。
GM:そこは、小さな島だった。
GM:満月の夜。人の気配は無く、辺りにはただ潮騒だけが響いている。
GM:随分前に打ち捨てられた島らしく、森に埋もれるような廃墟や田畑の跡のほかには、何も無い。
GM:水平線の先、ほんの僅かに光って見えるのは、遠くの街の灯りだろうか。
シキ:鈍い音を立てて、錆びついたハッチの蓋を地面に落とす。
ヒサギ:ざあ、という音。潮の匂い。白く煌々と光る月。それと、それ以外の諸々を聞き、嗅ぎ、見て。呆然とその感覚に魅入られる。
モノ:「すー……すー……」
モノ:シキにおぶられて眠っている。
ヒサギ:記憶情報の、”誰か”の視座が入ったものでない、その情景を見つめる。
ミツキ:ドローンを飛ばし、辺りを探索しつつ。
ミツキ:「いやー……」
ミツキ:「シャバの空気はおいしいねえ」
ヒイラギ:「……」
シキ:「……」すぅ、と深く空気を吸う。潮の香りが鼻の奥を撫でる。
ヒイラギ:「……外だ」ぼそり、と
ヒサギ:「ええ………」どこか上の空に。
シキ:「あれが……月」空を指差して
シキ:「あれが……砂浜」隣のミツキに確かめるように指を動かす
ミツキ:「うん。そうだよ」
ミツキ:「もうしばらく待ってれば、太陽が昇ってくる」
シキ:「でもってあれが……」指先は砂浜の先へ
ミツキ:「うん」
シキ:「……い……」
シキ:「ぃやったーーーー!!!!!海だーーーーーーー!!!!!!!!」
シキ:突然大声を出し、モノを担いだまま海へ向けて走り出す。
ヒサギ:「わっ」大声に耳と、風に揺られる髪を抑えて。
ヒサギ:「あ、ちょ、シキさん!?ちょっとお!!」
ヒイラギ:「……ははっ」
ヒイラギ:「海か。あれが」
シキ:走りながら器用にブーツを脱ぎ、そのまま浅瀬へと飛び込んでいく。
モノ:「……んー」
モノ:突然の揺れにも揺るがない安眠
ミツキ:「あんまりはしゃぐと転ぶよー」呆れたように笑う。
ヒイラギ:「ヒサギ、海だ。空もあるし、あれは星だ……あっちには森もある」
ヒサギ:「ええ、うん…すごい、ね………」二人の様子を見て。なんとなく、肩から力が抜けて。
シキ:「うはー!!冷べた!!しょっぱ!!!!」
シキ:海水をバシャバシャと飛ばしながら子供のように砂浜ではしゃぐ。
モノ:「ごぽごぽ」
モノ:スムーズに水中に沈んでいく。
ヒサギ:「……あれがアルタイルで、ベガで……って、ちょっと!モノさん沈んでます!!」
ミツキ:「モノ!モノが!」
ヒイラギ:「お、おい!大丈夫か!」
シキ:「いっけない!?ほら!モノも起きて!!海だぞー!!」
シキ:モノを砂浜に引き上げて耳元で騒ぐ。
モノ:「ごぽごぽ……ぴゅるー」
モノ:引っ張り上げられ、海水を吐き出し
モノ:「…………。」
モノ:「すやー」
モノ:元の通りに安眠。
ヒサギ:「まだ寝てる」
ミツキ:「起きそうにないね~」
ヒイラギ:「……頑張ったからな」
シキ:「あらら、もったいない奴めー」
ヒサギ:「………ええ……?溺れかけて置いてっ……はあ。波が掛からないところに少し寝かせてあげますか?」
ミツキ:「そうだねー」屈んで枝を拾い集めながら
シキ:「……くしゅっ!」
シキ:「……そだね、夜の海、結構冷えるわ」鼻水をすすりながら
ヒサギ:「ああもう、はしゃぐから……絞って水抜いて、タオルで拭いてくださいね」持ってきておいた荷物からタオルを引っ張り出して。
ミツキ:「いつも空調があるわけじゃないからねえ、外は」
ミツキ:「この感じだと、5月か6月くらいかな……」
ミツキ:目を閉じて、夜の空気を感じて。
ミツキ:「きっと、これから夏が来る。そうしたらもっと暑くなるよ」
ヒイラギ:「季節が変わるってやつか」ゆっくりと辺りを見回しながら
ヒサギ:「服装も色々変えていかないとですね…」淡く口元を緩めながら。
シキ:「……そっか、そうだよね」
シキ:昔サアヤが語っていた夢を思い出しながら
シキ:「これからはオシャレできるんだもんね」
ミツキ:「このジャケットともお別れか~」
ヒサギ:「これはこれで好きですけど、夏は暑いでしょうしねえ」笑って星と月、それが交わる海の水平線を見つめながら。
ヒイラギ:「……肌面積が増えるのか、そうだよな」
ミツキ:腕を広げる。過酷な生活と戦いで、シキが配ったジャケットはあちこち傷んでボロボロになっている。
シキ:「す、捨てちゃうの……?」
シキ:潤んだ瞳でみんなを見る。
ヒサギ:「肌を隠す格好は、わたしも考えるよ」そこから、シキさんの言葉を聞いてくすと笑う。
ミツキ:「もー、捨てやしないって」
ミツキ:「大事な思い出だもん。でしょ?」
ヒサギ:「ええ、もちろん」あはは、と笑いながら。
シキ:「え……えへへ、だよねー!!よかった!!」
シキ:「ちゃんと冬になったら着れるように直しとくからね!!任せといて!!」
ヒイラギ:「外に出ても暑苦しさは変わらないな……」
ヒサギ:「どうやってするんですか、もう」
ヒイラギ:「街とかにあるんじゃないのか、そういう事ができる店とかが」
ミツキ:「なーんだ、シキがお裁縫するのかと思った」
ミツキ:ライターで集めた枝に火を点ける。小さな灯が夜闇を照らし出す。
シキ:「おお~!」その灯りに目を奪われて
ヒサギ:「どうなんでしょう。結構しっかりしてるから、お金掛かったり、中々見つからないのかな」
ミツキ:「そーそー、お金のことも考えないとね~」
シキ:「もちろんわかってるよ。何でもかんでもお金で解決しない!」
ミツキ:海中に潜っていたドローンが魚を捕まえてきて、一匹ずつ串を差していく。
ヒサギ:「どうしましょうか。色々大変なことが沢山ありそうで……おお」火と、その魚の様子に目を輝かせる。
ヒイラギ:「魚だ」
ミツキ:「え~?そっちなの、シキ?」
ミツキ:「お金の使い方も良く知らないんじゃないの~?」
シキ:「なっ……!バカにしてー!!」
シキ:「ちゃんとできますー!まずは月々のお小遣い配分からね!」
ミツキ:「まあ、出る時にありったけちょろまかしてきたからね。しばらく何とかなると思うけどね~」
ヒサギ:「いつの間に……とはいえ、頼りにしています」
ヒイラギ:「とりあえず、しばらく頼りになるのはミツキだな」
シキ:「このカードね」荷物の中から特殊な加工が施されたキャッシュカードを何枚か取り出す。
シキ:「んじゃー私はこれで、みんなにはこれ、これ、これ、ほいおしまい!」
シキ:カードをまるごとみんなに渡す。
ヒサギ:「これ、外の普通のお店で使えるのかな…?あ、ありがとうございます」
ヒサギ:「え、全部。いいんですかこれ。取っておくとかそういうやつは…」
シキ:「なんか裏に書いてる……限度額……?」
シキ:「毎月この額まで使い切れってことだよね。たぶん」
ヒイラギ:「これだけ使えるってことか……?」
ヒイラギ:「毎月使い切るのか……!?」
ヒサギ:「いやいやいや」
ミツキ:「……」
ミツキ:魚を火に掛ける。ぱちぱちと薪の爆ぜる音。
ミツキ:「やっぱあたしが管理しようかな……」
シキ:「いや~経済回してるって感じしてきたな~」呑気に笑う。
ミツキ:「お金のことは、まあいいとして……」
ヒサギ:「いや絶対これそんなに使っていい奴じゃない気がしてきた……はい」
ミツキ:「実際のとこ、これからどうすんの?みんな」
シキ:「うーんそうだなー」上着を絞って焚き火に当たりながら。
ヒサギ:「ですねえ……あ、こっち干せそうです」適当な棒を木に渡して。
シキ:「おっありがと。ヒサギはホント気が効くな~」
シキ:「とりあえずだけど、FHの中では私達は死んだことになってるはず」
シキ:「別のセルに保護してもらうのも手ではあるけど、どこに行ったところで」
シキ:「"チェッカード"とそうやることは変わんないと思う。結局の所、FHにいる限り、私達は"盤外個体"としてしか扱われない」
シキ:「せっかくの足抜けのチャンスだし、ありがたく死んだままにしといてもらいましょ」
ヒサギ:「……まあ、そうなりますね。外部とのコネクションも特になし、そもそもの常識や経験もないとなれば」
ミツキ:「じゃあいっそ、UGNに行くのは?」魚をひっくり返して、熱そうに手を振る。
ミツキ:「あっちなら保護してもらえるかもよ」指をふーふーと吹いて冷ます。
シキ:「UGNか~。それもありかもね」くんくんと魚の焼ける匂いを嗅ぎながら
ヒイラギ:「本当に大丈夫なのか?……一応、敵対してる組織だろ」
ヒサギ:「んん……どうなんでしょ。あまり知らないですが……敵対的組織の技術情報の取得、そもそものオーヴァード戦力としても希少ですし…」
ヒサギ:「あと、そうだ。基本国家権力とかと結びついてるから、あまりFHほど好き勝手無法なことはできないはず…?」
ヒサギ:「悪くはなさそうじゃないかな…?ってわたしは思います」
ミツキ:「まー、いずれは身の振り方を考えるにしても……しばらくは自由の身を楽しみたいな~」
ミツキ:「せっかく外に出られたんだしね……お、もういいかな」
ミツキ:「はい。塩とか無いけど」こんがりと焼けた魚を順番に配っていく。
ヒサギ:「あ、焼けました?……おお、なんだろ…すごい美味しそうに見える」
シキ:「やったー!おっさっかな!!おっさっかな!!」
ヒイラギ:「……ど、どうやって食べるんだこれ」ミツキの方を見る
ミツキ:「そりゃあかぶりつくしかないっしょ~」
ミツキ:「ほらモノ、ご飯だよ~」ゆさゆさ揺さぶる
モノ:「……くん」
モノ:鼻を数回ひくひくさせて
モノ:「もしゃ」
モノ:「もしゃもしゃ」
モノ:寝ながら焼き魚にかぶりつく
モノ:「……けぷ」
シキ:「器用な奴……」
ミツキ:「寝ながら食べてる……」
モノ:「すー……すー……」
モノ:安眠。
ヒサギ:「ここまでくると感心しますね…?」
ヒイラギ:「……よほど疲れてるらしいな?」
ヒサギ:「これ疲れてるで済ませていいのかなあ……」
ヒイラギ:「心配にはなるが……その、食べたし」
ミツキ:「食べる元気があるなら大丈夫じゃない~?」
シキ:「うん、栄養は摂ったし。朝になれば起きるでしょ」
ヒサギ:「……まあ、そうですね!」考えることを放棄した顔。
シキ:「よし!そんじゃあ私達も」
シキ:「いったっだっきまーす!!」
シキ:魚の腹に豪快にかぶりつく。
ヒサギ:「いただきます」はむ、と手で口元を隠しながら一口。
ミツキ:「もぐ」焼けた魚にかじりつく。パリパリに焼きあがった皮に、柔らかくほぐれた身。白い湯気が立つ。
ヒイラギ:「……いただきます」小さめに一口かじる
ミツキ:「んー、イケる。何の魚か知らないけど」
ヒサギ:「……、」こくん、と飲み込んで。「ですね。美味しい」
ヒイラギ:「美味いな」
シキ:「ん~!ふひっはらがふんほひみわはふは~!(空きっ腹にガツンと染み渡るわ~)」
ミツキ:「食べてから喋りなよ~」
ヒサギ:「ですよ。色々飛んじゃうかもしれないですから」そう言いながらもうひとくち。
シキ:「はっへ~(だって~)」はふはふと口の中を冷ましながら
ヒイラギ:無言でかじっては咀嚼している。湯気で軽くメガネが曇る。
ヒサギ:「姉さんも、見づらくない?眼鏡拭きもあるからよかったら使ってね」膝の上に置いて、自分は自分で食べ続ける。
ヒイラギ:「……あ、ああ。ありがとう」無心で食べていた。
シキ:「んぐ……っ……ぷはー!美味しかったー!!」
シキ:一瞬のうちに骨まで食べて「ねーねーもっとないの~?」
ヒサギ:串にささったものを丁寧に食べきって。「美味しかったです。ミツキさん、ごちそうさまでした」
ミツキ:「いえいえ。お粗末様でした~」
シキ:「次カニ食べたいなーカニ!ミツキも好きだって言ってたじゃん!」
ミツキ:「え~、カニはその辺にいるもんじゃないよ~」
ミツキ:「お金も高いんだよー。それに、食べると無口になるしね」
シキ:「食べると無口に……?毒でもあんの……?」怪訝な顔
ヒイラギ:「……」同じく怪訝な顔
ヒサギ:「本当なんですかそれ…?」
ミツキ:「そういうもんなんだよ……不思議なことに……」
ヒイラギ:「よくそんな得体の知れないものを好き好んで……」
シキ:「そ、そうなんだ……」
シキ:「んー、でもまあ高いならしょうがないか」
シキ:「カニは誕生日パーティーまでお預けだね」
ミツキ:「え、何それ?」
ミツキ:「聞いてる?」ヒサギとヒイラギに
ヒサギ:「初耳のような」頬に指をあてて思い出しつつ。
ヒイラギ:「……いつものシキの思いつきじゃないか?」
シキ:「そりゃあ、研究所にいた時は誕生日のお祝いなんてしなかったからね」
シキ:「みんな自分が何月何日に生まれたのかも知らないんじゃない?」
シキ:「もちろん、私も知らない」胸を張る。
ヒサギ:「……んん……」自分の誕生日はそもそもいつなのだろう。レネゲイドビーイングの竣工日、植え付けられた日、意識が稼働を開始した日…?
ヒイラギ:「……気にしたこともなかったな」
ミツキ:「そだね。記録漁れば分かるかもだけど……」
シキ:「いいよ。殆ど燃えちゃってるし、そこまでして確かめなくてもいいでしょ」
シキ:「なので!」立ち上がる。
シキ:「今日この日を、私達の誕生日とします!!」
ミツキ:「え、今日?」
ヒサギ:「お、おおー……」目を丸くしている。
シキ:「そう、今日」
シキ:「お祝いするならみんな一緒の方が楽しいでしょ。お金もかかんないし」
ミツキ:「え~、そんな理由~?」
モノ:「すぴすぴ……」
シキ:「切実な理由じゃん!それに……」
シキ:寝ているモノの頭を撫でる。
シキ:「この先、私達がどんな道を歩んでもさ、一年に一回くらいなら集まれるでしょ」
シキ:「みんなでさ」
ヒイラギ:「……そうだな」
ヒサギ:「………ん。まあ、もし別れても、ってことですね。良い気がします」
ミツキ:「んー」頭の後ろで腕を組み
ミツキ:「ま、そうだね。いんじゃない?賛成ー」
シキ:「なにさ、珍しく素直じゃん」
シキ:「いつもならこの3倍くらいタラタラ文句言ってくるくせに~」つんつんとミツキの頬をつつく
ミツキ:「は~?何さ、あたしはいつだって素直でしょー」
ミツキ:「別に……いいかもって思っただけ」
シキ:「ふふん。でしょー?」
シキ:「私達は、今日、あの地の底からこの世界に生まれ落ちた」
シキ:「誰かに造られた駒じゃなく、自分の足で歩く人間として」
シキ:「私達は、どこへだっていける」
GM:砂浜に佇む君達に向け、不意に光が差し込む。
GM:見ると水平線が白んで、巨大で眩しい光が顔を覗かせている。
GM:朝陽だ。
ヒサギ:「……わ」目を、その眩しさに細めて。ふ、と微笑み。「……いいですね。素敵です」
ヒイラギ:「……綺麗、だな」
ミツキ:「……」束の間、その輝きに目を奪われて。それからふっと笑みを浮かべる。
ミツキ:「……シキ。どこへ行きたい?」
シキ:「まずは街へ。住む所を見つけて、仕事も探して」
シキ:「そしたら、たくさん買い物して、たくさん美味しいもの食べて」
シキ:「そのあとは……」
シキ:朝日を見つめたまま、ミツキの手を握る。
ミツキ:「ん……」
ミツキ:握られた掌に視線を落とす。
モノ:「んぅ」
モノ:まぶたをこすりこすり、体を起き上がらせる。
モノ:「……あれ?」
シキ:「お、モノも起きた」仕方がなさそうに笑って
モノ:ぼーっとした視線で、朝日にきらめく海原を見つめている。
モノ:「シキ……ここ、どこ?」
モノ:「これ、何?」
シキ:「ここは外で、これは海」
シキ:「あれが朝日で、今は朝」順に指差す。
モノ:「海……朝日……」
モノ:「すごい、ね」
モノ:目を見開く。
モノ:地下で見たどんなものよりもまばゆく美しい、その光に。
モノ:「……シキ」
モノ:「サアヤも見てるかな」
モノ:死んだ人間はどこにもいない。
モノ:ただの気休めにさえならない欺瞞、そんな言葉が
モノ:涙のようにこぼれ落ちる。
シキ:「見てるよ、きっと」
シキ:「私は信じる。」
モノ:「そっか」
モノ:「じゃあ……よかった」
モノ:膝を抱えて、あとは無言で
モノ:光をただ見つめる。その偽りを愛して、抱きしめるように。
シキ:「……信じるよ。だって……」
シキ:繋ぎあった手から伝わるそれを、大切に確かめる。
シキ:降り注ぐ朝日から伝わるそれを、全身で受け止める。
シキ:「こんなにあったかいんだもん」
GM:斯くして、狂った遊戯は終わりを告げ、偽りの盤面は崩れ落ちた。
GM:盤上の駒は自由の身となり、妖精の羽根は抜け落ちて。やがて自らの脚で歩き出す。
GM:それは、誰にも知られることのない物語。稚気じみた御伽噺。そう笑われるものかもしれないが────
GM:その瞬間、その朝陽はきっと。
GM:彼女達だけが知る、誰にも騙られざる真実だった。
【ED/モノ】
モノ:数カ月後。
モノ:黄昏時のビルの屋上から、遠方の街明かりを眺めている。
モノ:この数ヶ月、改善された栄養状態と生活環境で
モノ:施設で暮らしていた頃から、見違えるように血色は良くなり、表情も豊かになった。
モノ:「綺麗だねえ」
モノ:柵から身を乗り出して、微笑んでいる。その笑顔はどこにでもいる少女のようだ。
モノ:ただ一点、その右目に開かれた孔を除けば。
シキ:「こーら、あんまり寄りかかると落ちちゃうよ。ボロっちいんだからその柵」
シキ:その後ろから声をかける。
モノ:「大丈夫だよぉ」
モノ:「へーきへーき、シキは心配性」
シキ:「モノが危なっかしいのが悪いんですー」
モノ:「ミツキもそう思うよね?」
ミツキ:「うーん、どっちもどっちかなー」
ミツキ:シキの隣で歩いてくる。
ミツキ:「やー、見違えたね~、モノ」
モノ:「……みんなのお陰だよ」
モノ:「色んな所に連れて行ってくれて」
モノ:「色んなもの、食べさせてくれて」
モノ:「色んなこと、教えてくれたから」
モノ:「みんなのお陰で、モノは、わかった」
モノ:街明かりを見つめて、目を細める。
モノ:光と影が入り混じった、曖昧な世界。
モノ:「いいことばっかりじゃない……けど、悪いことばっかりでもないって」
シキ:「まだまだこれからだよ」
シキ:「もーっと連れていきたいとこも、もーっと一緒に食べたいものもたくさんあるのに」
シキ:「……本当に行っちゃうの?」
モノ:「うん」
モノ:「モノは沢山見たよ」
モノ:「外の世界のことだけじゃなくて」
モノ:くるりと振り返って
モノ:シキの顎の先に、すっと人差し指を添える。
モノ:「あなたのことも」
モノ:くすりといたずらっぽく笑って
シキ:「む……」少し頬を染めて
シキ:「もー、どこでそんなセリフ覚えたのさ」
モノ:「ネットフリックス」
モノ:「タイトルは覚えてないよ」
ミツキ:「あははは」
ミツキ:「成長著しいねー、モノは」
ミツキ:「シキよりお姉ちゃんになるのも遠くないかもねー」
モノ:「えへへ」
モノ:照れくさそうに頭をかいて
シキ:「こいつら……」
モノ:「あのね、シキ」
シキ:「……うん、なに?モノ」
モノ:「……シキは、ミツキと一緒のときが」
モノ:「1番、幸せそう」
シキ:「そ、そうかな……」照れくさそうに頬を掻く
モノ:「シキの真ん中には、ミツキがいるよ」
ミツキ:「……」
シキ:「も、もーこの子はホントマセちゃってー。ミツキのせいだからね!だからキッズチャンネルに限定しとけって行ったじゃん……」ぶつぶつと呟いている。
モノ:「モノがそこにいられないの、本当はすーーーっごく悔しいけど」
モノ:「それはモノの見た、本当のこと」
モノ:「だから行くよ」
モノ:「モノも……ううん」
モノ:「私も、幸せになりたいから」
モノ:「ちょっとだけ、お別れなの」
モノ:2人の間を抜けて、歩き出す。屋上の出口へと。
シキ:「モノ……」その表情に、少しの驚きと、確かな安堵を感じて
ミツキ:「……モノ!」
ミツキ:その背を呼び止める。
モノ:「?」
モノ:「なあに?」
ミツキ:「また……会えるよね……?」
ミツキ:僅かな不安を滲ませて口にする。
モノ:「……ミツキ」
モノ:その表情を見て
モノ:「ふふ、ふ」
モノ:くすくすとおかしそうに笑う。
モノ:「シキの心配性、うつっちゃったね」
モノ:「大丈夫、また会えるよ」
モノ:「そう」
モノ:「誕生日とかに、ね」
モノ:シキへ微笑む。
モノ:「その時は私が1番お姉ちゃんになってるから」
モノ:「お楽しみに、ね」
モノ:扉の前で2人に手を振る。
シキ:「おーおー言ったな~?」
シキ:「ちゃんと忘れんなよー?遅れてきてもカニ残しといてあげないかんね」
ミツキ:「……元気でね、モノ」
モノ:「えへへ、元気元気」
シキ:「……」その姿を見て、暫し俯いて
シキ:「………」
モノ:「……」
モノ:「シキ?」
シキ:意を決したように、一歩踏み出す。
シキ:「モノ、発つ前に一つだけ、いいかな」
モノ:「ど、どうしたの」
モノ:「本当に、なんでもないよ」
モノ:「そんな、真剣な」
モノ:その張り詰めた表情を見上げている
モノ:戸惑った瞳と
モノ:あの地下で刻みこまれた、消えない虚ろ。
シキ:「ばか、わかってるって」意識的に表情を崩して
シキ:モノの目の前にしゃがみこんで視線を合わせる。
シキ:「シェルターにいた時さ、モノに渡したいものがあるって言ったでしょ」
シキ:「あの時は結局来てくれなかったから、渡せなかったけど」
シキ:「きっと、これからのモノにこそ必要になると思うから」
シキ:「今、渡したい」
シキ:「受け取ってくれる?」
シキ:小さく首を傾げる。
モノ:「……う、うん」
シキ:「うん、ありがと」ニッと微笑んで
シキ:「んじゃ、ちょっとの間目を閉じて」
モノ:「ん」
シキ:「絶対開けちゃ駄目だよー。恥ずかしいから」
シキ:そう言って、後ろのミツキへと一度振り返る。
ミツキ:「?」
ミツキ:首を傾げる。
シキ:「ミツキ、お願いがあるんだけど」
シキ:「私が良いって言うまで絶対止めないでね」
ミツキ:「え~……」
ミツキ:「……また何か変なこと考えてない?」
シキ:「変なことじゃないけど……」
シキ:「とにかくお願い!愛してるから!!」
ミツキ:「も~~~……それ言ったらいいと思ってない?」
ミツキ:「善処はするけど……本当に無茶するなら止めるかんね」
ミツキ:訝し気な顔のまま、一歩下がる。
シキ:「ありがと。ミツキ」
シキ:「ごめんね。もう無茶はしないのが信条だけど」
シキ:「やっぱこうしないと、私が私に胸を張れないから」
シキ:次の瞬間、モノの右眼の空洞に
シキ:まるで焼けた杭を突きこんだかのような、激しい熱が生じる
モノ:「あッ!?ううううっ!」
ミツキ:「……!?」モノの異様な反応に、思わず駆け寄りそうになって、堪える。
シキ:ドクン、ドクンとなにかが脈動し
シキ:次第に、血液が通ってくる感覚が、暗闇の中で伝わってくる。
モノ:「うあああああああああッ!?」
シキ:「モノ……いいよ。目を開けて」
モノ:激痛にうずくまり、全身を痙攣させてから
モノ:ゆっくりと、顔をあげる。
モノ:「シ、キ……?」
シキ:モノの眼に写ったのは、まるで自分と鑑写しのように
シキ:右眼を失ったシキの顔。
モノ:空洞だった眼窩に収まった、シキの瞳で
モノ:それを見つめている。
ミツキ:「ッ……!?」
ミツキ:「……シキ……!何して……!」
シキ:「約束……覚えてる?」
モノ:「約束……?」
モノ:呆然と尋ね返す。
シキ:「赤い魚の群れを守る、黒い魚のお話」
シキ:「黒い魚が最後にどうなったのか、答え合わせするって言ったじゃない」
モノ:「……うん」
モノ:「覚えてる」
モノ:「モノとシキの、勝負だって」
モノ:「……覚えてるよ」
シキ:「黒い魚は、群れの眼になって、新しい仲間を助けてあげるの」
シキ:「これが、私の答え」
シキ:「私がモノの眼になってあげる」
モノ:「だけど」
モノ:「だけどっ、シキにはもう」
モノ:「あんなに沢山、もらったのに」
モノ:「私ばっかり……」
モノ:「……ずるいよ」
シキ:「だから、これからは私に見せて」右眼の孔から血の流しながら、ニコリと笑って
シキ:「モノが見る景色を、一緒に見てあげる」
シキ:モノの頭をポンポンと撫でる。
シキ:「いつでも一緒にいるからね」
モノ:「……」
モノ:その手のひらの感触に
モノ:右目に宿った、誰かから愛されたという証に。
ミツキ:「…………」
モノ:2つの瞳が、一緒に涙を零した。
モノ:「……負けちゃったな」
シキ:「………えと……」刺すような視線に、恐る恐る振り向く。
シキ:「……………怒ってる?」
シキ:本来、シキの《リザレクト》には眼球の欠損程度は容易く癒やす出力と精度がある。
シキ:しかし、右眼の虚ろが塞がる気配はない。発症者が無意識にしろ意識的にしろ「これでいい」と認識しているなら
シキ:欠損した状態で安定する事例は、儘あることだ。
ミツキ:「…………」
シキ:「あ、あの………」
ミツキ:つかつかとシキに歩み寄って。
シキ:「無言は普通に怖……?」
ミツキ:その頭を、握り拳で思い切り殴りつける。
シキ:「いっっっっ!!!!??」
ミツキ:「バカ!!!!!!!!!!」
ミツキ:これまでに聞いたことのないような声で怒鳴りつける。
シキ:「あぅ……」この声に気圧されて
シキ:「ご、ごめ……」
シキ:「………」
シキ:謝罪の言葉を飲み込んで立ち上がる。
ミツキ:「ふざけんなよ、お前……!」
ミツキ:胸倉を掴み上げ、至近距離で睨み付ける。
シキ:「あ、謝らないから」
ミツキ:「はあ!?」
モノ:「……ふふっ」
モノ:言い合う2人の姿を見つめながら
シキ:「これは、私が決めたことで、モノのために、自分ができる最後のこと」
シキ:「私が、私の信じたものがこの子に負けなかったって胸を張るために、必要なこと」
シキ:「ミツキの隣に立ち続けるために」
ミツキ:「…………」
ミツキ:「……そう」
ミツキ:「ああ、そう」
ミツキ:「そっか…………」
シキ:「私ができること、一度でもしなかったら、私きっと、ミツキの……」
ミツキ:もう一度、その顔を力いっぱい殴りつける。
シキ:「……っ」
シキ:大きく後ろにのけぞるが、脚を退くことはしない。
ミツキ:ドン、とぶつかるように身を寄せて、その胸に顔をうずめる。
ミツキ:「……ふざけんな……」
ミツキ:背中が震える。
ミツキ:「ふざけんな、このバカ……!」
ミツキ:胸元が濡れる感触。静かにすすり泣く声と、嗚咽が聞こえ始める。
シキ:「バカ……だよね。私もそう思う」ミツキの震える肩を抱く。
シキ:「これからは、ミツキのこと泣かせたりしないから」
シキ:「ちゃんと二人で笑い会えるように、私頑張るから」
シキ:「だから……」
モノ:「……」
モノ:2人の姿を、どこか羨ましそうに見つめて
モノ:静かに、後ろ手に扉を閉めて
モノ:屋上を後にする。
モノ:数秒、立ち尽くして、ぱちんと自分の頬を叩く。
モノ:前を向いて。
モノ:「よし、行こう」
モノ:いいことも、悪いことも
モノ:この両の瞳で見つめるために。
モノ:ごく普通の少女のように、明日を期待する気ままな足取りで
モノ:彼女は歩き出した。
【ED/ヒサギ・ヒイラギ】
ヒサギ:わたしたちが旅に出るはじまりは、シキさんとミツキさんがやる、ジャンク屋稼業の出品や仕入れをしようとしたことだった。
ヒサギ:とにかく廃品だから、品質が安定しない。必要な部品がない、誤魔化しも効かないとあっては、もうそれこそ数を当たるしかない。
ヒサギ:そうやって、近場の大きいところをやっていけば、まあもっと遠くへ、遠くへとなっていくわけで。
ヒサギ:……その中で、色々なものがあった。
ヒサギ:寂れた工場とかの近くにあった、トタン屋根。こんなものがまだ残ってるのかと目を丸くして。
ヒサギ:流れる川と、その堤防。それが注ぐ海には、夕暮れと夜明けだけじゃなく、よくよく目を奪われて。
ヒサギ:ひっそりと誰もいないような神社を見た時もある。また遠くに出て、一転して人が沢山いるところで、眼を回したことも。
ヒサギ:人がほとんどいないような村や山も、
ヒサギ:逆に人にあふれるビルが立ち並ぶ市街も。
ヒサギ:どれひとつとっても、わたしたちにとっては物珍しくてたまらなかった。
ヒサギ:だからだろうか。二人して、あんなことを言ったのは。
ヒサギ:
ヒサギ:「旅に出てみたい。いろんなところを見て回ってみたいんだ」
ヒサギ:
ヒサギ:どこか高いような低いような、そんな雑多な音が耳に入る。
ヒサギ:「……ん、んん~~~……」
ヒサギ:身体を伸ばす。固まった身体をぐいとひねって。
ヒサギ:「ぁ~……大分寝ちゃったかな…?姉さん、どれくらい寝てた……?」寝ぼけ眼を擦って。
ヒイラギ:「……まあまあ寝てたな」慣れた手付きでハンドルを握りながら
ヒサギ:「あふ……ごめんごめん。交代は早めでいいから」あくびを掌で隠しつつ。
ヒサギ:助手席の中で小器用に体をほぐしていく。
ヒイラギ:「いいさ。……それに、結構景色いいぞ」二人を載せた車は、山道をゆったりと進む。
ヒサギ:「お。ほんとだ」山の斜面、その高いところから、広く下に森に、町が広がっているのが見える。
ヒイラギ:「似たような所は何回か見たけど、やっぱりちょっとずつ違うんだな……」
ヒサギ:「写真とっとこ」ぱしゃ、と携帯のカメラで軽く撮った。
ヒサギ:「まあそりゃ、どこも同じ土地も人間もいないんだもんねえ。こう見てると、そんなに違いわかんないけど」
ヒサギ:軽く笑って。「後で比較とかしたら分かるかな~……」
ヒイラギ:「並べてみるか、帰ったら」
ヒサギ:「そうだねえ。そろそろアルバムももう一冊作れそうなくらい溜まった気がするし、それもいいかも」
ヒサギ:今度はどういう風に作ろうかなあ、と楽し気に呟く。
ヒイラギ:「アルバムな……最初の頃のを見るの、少し恥ずかしいんだよな」
ヒイラギ:「証明写真みたいなのあったろ」
ヒサギ:「あれね~~」
ヒサギ:「最初、本当すごいもんね。コメントも論文か何かかな?ってなるよね」
ヒイラギ:「……見返したくないし、あいつらに見せるのはもっと嫌だな……」
ヒサギ:「経度緯度とか入れてるもん。前見た時笑っちゃった」
ヒサギ:「まあ、最初のは見せたくないけどさ~」足をぶらぶらとさせて。
ヒサギ:「さっきも言ったけど、見返すのは楽しくない?」
ヒイラギ:「……そうだな。楽しい」
ヒサギ:「ほら!」
ヒイラギ:「2冊目のコメントはもう少し上手く書けるはずだが……」
ヒサギ:「そりゃ、今作ってるのもいつか見たらうわあってなるかもしれないけどさ。絶対見返したらまた楽しいはずだよ」
ヒサギ:「そうだねえ。今度は一応作り方の本も買ってみたし。参考に色々してみよう」
ヒイラギ:「……そうだな。そろそろ雑誌なんかも溜まってきたし」
ヒサギ:「だねえ。ファッションセンスがないなんてもう言わせないぞ~」
ヒイラギ:「ヒサギの腕なら、古着のリファインも店のメニューに入れられるんじゃないか」
ヒイラギ:「シキもやりたがるだろ、裁縫」
ヒサギ:「どうだろ。そもそもスペースあったっけ……ああ、それはそうかも」
ヒサギ:「それなら、適当に手直しの看板とか立てて、戻ったときとかトレーラーでやってみようかな…」
ヒイラギ:「ミシンなら売り物にあったはずだしな……だいぶ古かったが」
ヒサギ:「シキさんも出来るようになったら、色々お金も節約できそうだし」
ヒサギ:「ああ、あのちょっとガタついてるやつ…。最近のってさ、足踏みする奴ないんだってね」
ヒサギ:びっくりしちゃった、と前廃品引き取りの際に聞いた時のことを話す。
ヒイラギ:「そうなのか……ミシン業界も進んでるんだな」
ヒサギ:「というか足踏みするのがすっごい古いんだって」
ヒサギ:「廃品でくれたおばあちゃん、そんなこと言わなかったからなー……」
ヒイラギ:「……長いこと大事にされていたんだな」
ヒサギ:「うん。30年くらい使ってたんだって」流れる風景を愛で楽しみながら。
ヒイラギ:「……この車もさ、ガレージの隅っこで錆びついてたけど」
ヒイラギ:「今はこうして元気に走ってる」
ヒサギ:「ん。随分拗ねたりしてくれたけどね~……、今や居ないと本当に困っちゃうもん」くすくす笑いながら。
ヒイラギ:「ああ。パーツは寄せ集めだし、なんだかんだオンボロだけどな」つられて笑う
ヒサギ:「一回試しに動かしたらハンドル取れた時本当びっくりした」
ヒサギ:「頭真っ白になっちゃってもう……」
ヒイラギ:「あの時は慌てたな……二人してミツキに泣きついたし」あいつの専門外なのに、と付け加えつつ
ヒサギ:「まさかハンドルのシャフトがおかしくなってたとは思わなかったな~~……」けらけら笑いつつ。
ヒサギ:「ミツキさんも本当にこう、色々やってもらっちゃったな~~~」
ヒイラギ:「またジャンクの山からパーツ漁って……油まみれになってな」
ヒイラギ:「電装系、頼りっぱなしだったもんな」
ヒサギ:「分かんないもん……、いや、それだけじゃいけないんだけど!」
ヒイラギ:「……そうだな、外のこと知ってたの、ミツキだけだったし」
ヒサギ:「そうだね~……、わたしはあくまで記憶アーカイブだけでしかないから、わたしとして動いてもそれと同じようには中々いかないし……」
ヒイラギ:「あのスーツのまま外出ようとして止められたの、今になったら理由がよくわかる」
ヒサギ:「まあ、目立つからね……」
ヒイラギ:「日常生活を全く想定していない装備だったからな……」
ヒサギ:「勿論、あの姿は好きだけど。ちょっと体のラインとかすごい感じだから、うん……」
ヒイラギ:……今あの服、ちゃんと入るんだろうか。と一瞬考えたが、恥ずかしいので黙っておく。
ヒサギ:「まあ、性能はいいし。上手く使えるように改修とか……あ」こっちも思い至る。
ヒサギ:「うん、それはまた後にしよう」自分の装備は、基本携行しやすいのでつい忘れがちだ。
ヒサギ:「……まあでも、身長とか伸びたもんね。前より脚がすらっとして見えるし」
ヒイラギ:「……栄養状態がよくなったからな、格段に」
ヒサギ:「モノちゃんも凄かったもんな~~……、ってみんなそれ言うよね!」
ヒサギ:「全然わたし延びてないんだけど……!くそ~~~っ」
ヒイラギ:「……ふふ、ヒサギはそのくらいでも充分かわいいさ」
ヒサギ:「いやズルいって!わたしだけ太ってるっておかしいよ!」
ヒサギ:ぶすくれつつ、席に再度座りなおす。
ヒイラギ:「抱き心地はよくなったからいいんじゃないか」しれっと言う
ヒサギ:「こ、ここは天下の公道だよ姉さん!」
ヒサギ:自分の身体を抱きしめつつ。
ヒイラギ:「車の中だぞ。ボクらしかいない」
ヒサギ:「船舶みたいに船長の権限っていうんですか……」分かりづらいボケを零しつつ。
ヒサギ:「そして……抱き心地良くなったっていうの、いや…贅肉が着いたってコトじゃないのかな……!女の子としては色々こう……あれだよ!」
ヒイラギ:「雑誌にあったぞ、ふわふわ系だかなんだかって」
ヒイラギ:「マシュマロだっけ」
ヒサギ:「に、似合わない……!」ひきつった表情になる。
ヒサギ:「かなり辛い交渉とかもやってるのに、マシュマロって……!」
ヒイラギ:「いいじゃないか、マシュマロ。かわいいし」
ヒサギ:「姉さんとかシキさんミツキさんはいいよね……!脚長くて立ち姿格好良く綺麗だし……!」
ヒサギ:「わたしも身長があと15センチ欲しい…」
ヒイラギ:「その分ほら、かわいらしい格好が似合うだろ」
ヒサギ:「ヒラヒラしてるとジャンク品持ってく時邪魔なのに~……」
ヒイラギ:「お出かけする時に着るんだよ」
ヒイラギ:「仕事着はほら、まあシキに言えばノリノリで用意するだろ」
ヒサギ:以前は考えられないようなことをぐちぐちと零して。
ヒサギ:「んん~~……、またなんか痛いっていうか、ズレてるって感じにならないかな~~」
ヒイラギ:「ヒサギはもう少し自分の可愛さに自信を持て」
ヒイラギ:「フリッフリのやつを着ても多分似合うだろ、ヒサギだし」
ヒサギ:「というか可愛い系なんだわたし……!という思いがあります。デキる子だと思ってたから…!」
ヒイラギ:「デキて可愛い、最高の妹だよ」
ヒサギ:うぎゃー、と手で赤くなった顏を覆いつつ。
ヒイラギ:「……」
ヒイラギ:「もしかして、また恥ずかしいこと言ったか?」
ヒサギ:「にゃ~~~っ………、」
ヒサギ:「うんそうだよ!ヒイラギ姉、そういうとこ!」
ヒサギ:どこかやけっぱちな声。隠した顏は、耳元まで真っ赤だ。
ヒイラギ:「……難しいな、塩梅が。ボクはヒサギを褒めたいだけなんだが」
ヒサギ:「いや嬉しいよ!嬉しいんだけどね……!?」
ヒサギ:変な唸り声を上げつつそんなことを言って。
ヒイラギ:「……そろそろ着くな」
ヒサギ:「……ぅ~~、えっと。そういえばどこだっけ、今日止まるとこは」
ヒイラギ:「キャンプ場みたいな所らしい。……だからまあ、今日はキャンプだな」
ヒサギ:「了解~。じゃあ、ちょっと外で色々できるかな……あまり、トレーラーの中だと狭くて中々できないし」
ヒイラギ:「……使うだろうと思って買ったが、案外匂いが残るからたまにしか使わないアレを使うときか」
ヒサギ:「今残ってるのが、ニンジンにじゃがいも、豚バラ肉に……あとネギに葉物で……」
ヒサギ:「まあ、サバイバルの時にあれがあると本当にメチャクチャ便利だからね……!」
ヒサギ:「そしてそういえば今日は金曜日!明日は土日で休みだって取引先のおじさんも言ってたし」
ヒイラギ:「やるか……!」
ヒサギ:「作っちゃいますか、カレー……!」
ヒサギ:説明しよう!旧帝国海軍からの伝統で、金曜日にはカレーを作るのだ。曜日感覚を保つためともいわれているが、諸説ある。
ヒサギ:其れにあやかって、結構金曜日だと作る気分になったりならなかったりする。
ヒサギ:今日はそういう気分になった。つまりそういうこと。
ヒサギ:
ヒサギ:キャンプ場に入り、止めて。そこから、ガスコンロに鍋、簡易キッチンを広げて。
ヒサギ:トレーラーの中でごはんを炊き、外で具やルーを作る。そういうことになったのだ。
ヒサギ:「というわけで、色々切ったりしていくね」ジャガイモにニンジンを刻んでいく。
ヒイラギ:「ああ、頼むよ」車から水のボトルを出したりしつつ
ヒサギ:「~~♪」小声で小さく料理歌を歌いながら、さくさくと手慣れた様子で用意していく。
ヒサギ:玉ねぎの千切りも、以前は眼が痛い……と涙をこぼしていたけれど、今は平気だ。
ヒサギ:さほど上手いというわけでなく、ただレシピやその他の注意事を丁寧に守っていく手つき。
ヒイラギ:虫除けやランタンを用意して、お湯も沸かす。ティーパックをマグに入れ、その様子を眺める。
ヒサギ:豚バラ肉を一口サイズにまで刻み、まずは固い野菜から煮込み始める。
ヒサギ:「~~、と。あとはゆっくり時間を待ちつつ…」タイマーを複数セットする。それごとに新しいものを入れて煮込むのと、全体の終了時間。
ヒサギ:「姉さん、お待たせ。あとは時間を待ちつつやってくだけだよ」
ヒイラギ:「……相変わらず、手際が良いな」
ヒサギ:「レシピ本と、あと食品会社のHPのおかげだよ。その通りに作ってるだけで、姉さんみたいにアレンジしたり凝ったりは全然できないもん」苦笑して。
ヒイラギ:「まあ、凝るのも良し悪しさ。たまに失敗もするし……。ん、とりあえず一息入れるか」温かい紅茶の入ったマグを渡す。
ヒサギ:「そう?いつもおいしいけど…、ありがと」受け取って、かぐわしい香りに表情を緩めてひとくち。
ヒサギ:「ふう~~……、今日もお疲れ様」
ヒイラギ:「ああ、お疲れ様……あっちはカニ食ってるらしい」紅茶を一口飲みつつ携帯を見る。
ヒサギ:「え、二人してずるいな~~、記念かな」
ヒイラギ:「……しまった、今日はクリスマスだったか」日付は12月24日だ
ヒサギ:身を乗り出して覗き込みつつ。
ヒサギ:「えっ」
ヒサギ:「あ、あ~~~~っ………!」
ヒサギ:「なんか妙にクリスマスソングとか流れてるな~~、って思ったけど……そういうこと……!」
ヒイラギ:「チキンでも買えばよかったかもな……」
ヒサギ:「そこはケーキじゃないの?」
ヒイラギ:「……それもそうか」と顔を見合わせ
ヒイラギ:ふっ、と吹き出す
ヒサギ:けらけらと笑う。
ヒイラギ:「ま、いいじゃないか、クリスマスカレー」
ヒサギ:「そう?まあ、実際カレーはおいしいもんねっ」
ヒサギ:弾けるように笑いながら。 かつては、こんな風に笑うことも、料理を作ることも、日付を気にすることもなかった。
ヒサギ:それは、とても楽しいことだ。でも、こうすることが出来ることが、とても貴重なことで、どうにかなってしまうこともまた、すぐそばにあるのかもしれない。
ヒサギ:「じゃあ、ふたりのとこ戻るときに、クリスマスケーキだって買っていってあげよ」
ヒイラギ:「年末前ケーキにならないか、時期的に」
ヒサギ:「いいんだよ!あの二人だってクリスマスケーキ食べてないんだし」
ヒイラギ:「わからないぞ、後でクリスマスケーキの写真送ってくるかもしれん」
ヒイラギ:「……だからアレだ、先手を打ってこっちも写真を送る。ほらヒサギそこでピースして」
ヒサギ:「モノちゃんには写真になっちゃうかもだけど……え、え~~?そうかなあ。そうしたらどうしよう…?」
ヒイラギ:パシャリ
ヒサギ:「ん?おお、はい」ぴーす。
ヒイラギ:「よし、よく撮れてるな」メリークリスマス、そろそろ帰る、との文面を添えて
ヒサギ:「綺麗に撮れてる?じゃ、今度はヒイラギ姉の番っ」えい、と背中を押して、こちらも撮って送信する。
ヒサギ:クリスマスケーキを買って帰るので、そこのとこよろしく、と。
ヒサギ:「じゃあ、そろそろ煮込むのもいい感じかな?」
ヒイラギ:慌ててキメ顔。慣れたものだ。写真を撮るのも撮られるのも。
ヒイラギ:「……だな、お腹も減ってきたし」
ヒサギ:「かっこいいよ~~」へらっとからかうような声を掛けつつ、ルーとごはんをよそっていく。
ヒサギ:どろりとルーの中に、色鮮やかな具材のジャガイモ玉ねぎニンジンに肉が乗って。
ヒサギ:ほかほかのご飯と、カレー独特の香辛料の匂い。
ヒサギ:「はい、どうぞ。きっとおいしいよ~」
ヒイラギ:「ああ、美味しそうだ」
ヒサギ:「ん」嬉しそうにうなずいて。
ヒサギ:二人で座れるテーブルについて、手を合わせる。
ヒイラギ:「いただきます」
ヒサギ:「いただきます!」
ヒイラギ:
ヒイラギ:キャンプ場備え付けの水道で食器を洗う。
ヒイラギ:冬の冷たい水にも慣れたように、スポンジでゴシゴシと。
ヒイラギ:「なあ、ヒサギ」
ヒサギ:「ん~、なあに?」こちらも、料理に使った調理器具を洗っている。
ヒイラギ:「5人全員揃うといいな……来年のクリスマスは」
ヒサギ:「そうだね~~………」
ヒサギ:「うん。きっとみんな揃うよ。どうなってるか、楽しみだな」笑いながら。
ヒイラギ:「だな」笑い返して
ヒイラギ:「……今年は二人きりだ」
ヒサギ:「最初からバラバラだあ」
ヒイラギ:「まあそれは……ボクらが旅に出たいって言ったのもあるが……」
ヒサギ:「あはは、責めてるわけじゃないよ!」
ヒサギ:「わたしだってヒイラギ姉と一緒に行きたいって言ったしね。それに、ただずっと一緒にいるより、外に出て、もう一回それでも集まれるって」
ヒサギ:「きっと、本当に素敵なことだって思うな」
ヒイラギ:「……そうだな」
ヒイラギ:「帰る場所があるってことだ」
ヒサギ:「うん、そういうことそういうこと」こくこく頷く。
ヒイラギ:「……土産は沢山あるしな、物も話も」
ヒサギ:「うんうん。これで注文取れる奴も増えると思うし、似合いそうな服も用意できたしねえ」
ヒサギ:「……よし!洗い物もいい感じだ」
ヒイラギ:「さっさと拭いて車に戻るか。流石に寒い」
ヒサギ:「そうですねえ。やっぱり冷え込む……」セーターを擦るように。
ヒサギ:「うう、ダウン着て置けばよかったかな…」
ヒサギ:なんとかそうしながらトレーラーへしまい込んで、寝台がある車内に入る。
ヒイラギ:二段ベッドの下側は、冬に入ってからはもっぱら荷物置きになっている。
ヒイラギ:「……暖房つけたぞ、しばらくしたら温まる」
ヒサギ:「うう~ありがと~姉さん~~……」ひしっとくっついている。
ヒサギ:「……ええと、それで……」
ヒサギ:目を伏せて、少し恥ずかしそうに。
ヒイラギ:「……ん」
ヒサギ:「あの、姉さん……今日も、いいかな」
ヒイラギ:「……ふふ」愛おしそうに頭を撫でる
ヒサギ:「……んぅ……」目を細める。
ヒイラギ:メガネを寝台の横に置いて、二人で大きめの寝袋に入る。
ヒサギ:もぞりと着込んだ衣類を脱ぎ落して、そのまま伴われるように。
ヒイラギ:「……温かいな」抱き合うように密着する。
ヒイラギ:「それに、柔らかい」
ヒサギ:「そう……?わたし、冷たくない?」姉の体温と、肌、そして混ざる固くすべらかな感触を感じながら。
ヒイラギ:ゆっくりと、確かめるように、身体に手を這わせる。
ヒサギ:「も、もう……」
ヒサギ:「ひゅ、」
ヒイラギ:「温かいさ。ちゃんと」
ヒサギ:空気が漏れるような、笛にも似たような高い声。
ヒイラギ:「なあ、ヒサギ」
ヒサギ:「ん………なら、いいけど……」闇の中で、もぞと顔をそむけるように。
ヒサギ:「………なあに?」
ヒイラギ:後頭部に軽く手を添え、顔をこちらに近づける。
ヒサギ:手の力に抗わず、従うようにそのまま。
ヒイラギ:「……ずっと一緒だ」そう囁いて
ヒイラギ:唇を重ねた。
ヒサギ:「、ぁ……」重ねられる。柔らかい感触。瞳が自然と閉じる。
ヒサギ:そのままに、舌の動きだけでこたえをかえす。
ヒサギ:それがわかるのは、あなただけだ。
ヒサギ:
ヒサギ:夜が過ぎてゆく。
ヒサギ:昨日と同じように、そして明日も同じように。
ヒサギ:それが偽りで、本当はそうでないのだとしても。
ヒサギ:いまここに、こうして穏やかで平和なひとときがあることは、損なわれることはない。
ヒサギ:雪に覆い隠される足跡のように、日の光に溶ける雪のように消えたとしても、それでも。
【ED/シキ・ミツキ】
シキ:海岸線を朱色に染めて、夕日が沈む。
シキ:すっかり冷たくなった潮風に吹かれて、かじかんだ手を擦りつつ、ガレージのシャッターを閉める。
シキ:この街に来てすぐ、運良く手に入れた住処は、海沿いの小さな一軒家と、その隣に建てられた古い工場。
シキ:廃業した町工場らしいが、所謂訳あり物件らしく格安で借りる事ができた。
シキ:簡単な改装を施し、今はガレージ部分を小さな店舗として運営している。
シキ:中に置かれているものは多種多様。骨董品や雑貨、型落ちの家電製品、あるいは一般に流通していない機械部品
シキ:骨董屋と言うには品格に欠け、リサイクルショップと言うには物騒で
シキ:ジャンク屋、と言うのがしっくりくる。そんな店だった。
シキ:「う~寒っ……早く中入ろ……」
シキ:季節は冬。モノが旅立ってからさほど日は経っていない。
シキ:建付けの悪い戸を引いて家の中へ入る。
シキ:玄関には、売り物の筈の盆栽が不格好に電飾で飾られている。
シキ:モノと同じように、ヒサギもヒイラギも旅立っていった。
シキ:残ったのはミツキと二人のみ。それでも、今日の空気はどこか浮足立って、賑やかなものだった。
シキ:季節は冬。今日は、外の世界で迎える初めてのクリスマスだ。
シキ:「ミツキ~、店の方閉めてきたよー」
シキ:コートを脱ぎながら居間の方へ声をかける。
ミツキ:「……」
ミツキ:浮かれた飾り付けの施された室内、ぐつぐつ煮え立つ鍋を前に、炬燵に脚を入れて黙っている。
ミツキ:例の一件から数日が経つが、あれ以来まともな会話らしい会話を交わしていない。
シキ:「ミツキ~?」
シキ:「ちょっとー、炬燵入ってないで手伝ってよ」
シキ:その様子にどう声をかけたものかと一瞬思案したが、結局いつもの調子で台所へと向かう。
シキ:用意していたカセットコンロと鍋を持って、直ぐに居間へと戻ってくる。
シキ:「カニ食いたいって言ったのミツキなんだからね。ほらこれ」
シキ:鍋の蓋を開ける。旬の野菜と大きなタラバガニがいっぱいに敷き詰められている。
ミツキ:「……」
ミツキ:眉一つ動かさない。炬燵の天板から鍋に視線だけを動かす。
シキ:「ネットのレシピ通りだけど結構美味そうじゃん。ヒイラギにも写真送ってやろっと」
シキ:手元のスマホで鍋の写真を撮る。
ミツキ:カニの脚を皿に取り、甲殻に鋏を入れる。
ミツキ:シキの声しかしない部屋に、パキン、といやに大きく音が響く。
シキ:「あっちょっと!いただきますくらい言えないわけ!?」
シキ:「まだ準備するもんあるんだから、もうちょっと我慢してってばー」
シキ:非難するような視線をミツキへと送る。
シキ:その両目は、左右で僅かに色が違う。
シキ:左は深い碧。右眼は淡い琥珀色。
シキ:右は義眼だ。
ミツキ:「……」
ミツキ:再び鋏の音。僅かに顔を上げ、ひどく冷ややかな視線でシキの片方残った瞳を見据える。
シキ:「………」
シキ:「……あのさ、ミツキ」
シキ:「ミツキがなんで怒ってるのかはわかるよ?私のせいだってのもわかってる」
シキ:一旦手を止め、眉を垂らして炬燵の中へ入り込む。
シキ:「けどせめてなんか喋ってよ」
ミツキ:「……」
ミツキ:からん、と音を立て、鋏とカニを半ば投げ出すようにして。
ミツキ:「……別に」
ミツキ:「怒ってないし」
シキ:「……」
シキ:「……いや、怒ってるでしょ」
ミツキ:「怒ってない」
シキ:「怒ってるって!怒ってるやつはみんなそういうの!」
ミツキ:「怒ってないって言ってんじゃん」
シキ:「えっホント?本当に怒ってない!?」
シキ:「じゃあこのカニ全部私が食べても怒んない?」
シキ:煮立ち始めた鍋をミツキから引き離す。
ミツキ:「は?」
シキ:「だって怒ってないんでしょ?それなのにそんな辛気臭い顔するってことはさ」
シキ:「食べたくないってことじゃん!カニ!」
ミツキ:「何でそうなるわけ?」
シキ:「だってそうじゃん!違うの?」
シキ:「違うんならなんでそんな仏頂面してるわけ?言ってみなよ!」
ミツキ:「……」
ミツキ:暫くの沈黙があって。やがてぽつりと口を開く。
ミツキ:「……あたしが」
ミツキ:「あたしが、勝手に」
ミツキ:俯き、目を伏せる。
ミツキ:「怖くなっただけ」
シキ:「え……?」ぽかんと口を開ける
シキ:「怖くなったって……何を?」
ミツキ:「……」
ミツキ:「……君が」
ミツキ:「勝手に、どこか」
ミツキ:「……いなくなっちゃうんじゃないかって」
シキ:「私が、勝手に……?」
シキ:「………ぷ」
シキ:「あははは!!なにそれ!?ありえないって!」
シキ:大げさに笑い飛ばす。
シキ:「私がミツキを置いてどっか行くわけ無いじゃん」
ミツキ:「……」
ミツキ:ごつん、と音を立て、大笑するシキの額に小型のドローンがぶつかる。
シキ:「自分で言ったんだよ?一生抱っこしてもらうって……あだっ!?」
ミツキ:「……笑えないから」
ミツキ:冷え切った声色。
ミツキ:「全然、面白くない」
シキ:「ん……」額を擦りながら
シキ:「……悪かったって。なんか予想してなかったからつい、さ」
シキ:炬燵の中で少し姿勢を正して。
シキ:「もうすこし詳しく聞いていい?」
ミツキ:「……」静かに息を吐く。
ミツキ:「……だって、そうでしょ?」
ミツキ:「あたしに何も言わず、相談もせず、あんな事するってことはさ」
ミツキ:「シキは結局、大事なことは自分一人で決めて、自分一人で背負い込んでるってことでしょ?」
ミツキ:「それって、あたしのことを信頼してないってことじゃん」
シキ:「……」
シキ:「……それは……」
シキ:「違う。それは違うよ。ミツキ」
ミツキ:「何が違うの?」
ミツキ:「教えてよ、シキ。何が違うのさ」
シキ:「その……なんていうか……」ミツキの勢いに少し気圧されながら
シキ:「……確かに、ミツキに何も相談しなかったのは悪かったと思うよ」
シキ:「自分で勝手に決めたのも本当。あの時、ミツキがいきなりあんなの見せられて」
シキ:「どんな気持ちになるか、きっとわかってたのに、私は自分の意地を通すのを優先した」
シキ:「けど、違うんだよ」
ミツキ:「だから、何が?」
シキ:「私は……」右の義眼に手をかざす。
シキ:「私は、この傷をひとりで背負い込もうなんて思っちゃいない」
シキ:「私だってさ……結構怖かったんだよ。目ン玉抉んの」
シキ:「けど、これからあの子が……モノが生きてくにはさ」
シキ:「何か確かめられる物が必要だと思った。ひとりじゃないって、いつでも確かめられる」
シキ:「温かいものが必要だと思った」
シキ:「私にはもうあるから」
シキ:「ミツキ、サアヤと戦った時言ってたよね」
シキ:「外出られても一生抱っこしてもらうかもって。それってさ」
シキ:「私のこと信じてくれたからじゃないの?」
シキ:「……私はモノに、モノの眼になってあげるって言った」
シキ:「それは、ミツキが私の眼になってくれるって信じてたからだよ」
ミツキ:「……」
シキ:「私は、私達は、どこにでもいける。今もそう信じてる。けどさ」
シキ:「ミツキが隣にいないなら、私はどこにも行きたくないよ」
シキ:「ずっと……一緒にいたいよ……」
ミツキ:ガン、と音を立てて炬燵に乗り上げ、シキの胸倉を掴み上げる。
ミツキ:「……信じてるから、何も言わずにあんなことしたって?」
ミツキ:「ふざけんなよ」
シキ:「ふざけてない」
シキ:「なら教えてよ。私はどうすれば良かったのか」
ミツキ:「……あたしは」
ミツキ:シキを睨み付ける瞳が潤んで、水滴が零れ落ちる。
ミツキ:顎を伝い、ぽたぽたと床を濡らしていく。
シキ:「ミツキ……?」
ミツキ:「……あたしは、意地だとか、誇りだとか」
ミツキ:「そんなの、どうだっていい。これっぽっちも大事じゃない」
ミツキ:「どんなにかっこ悪くたっていい」
ミツキ:「シキに、あたしの隣にいてほしい」
ミツキ:「一緒にいてほしいんだよ」
ミツキ:「……それだけなのに……」
シキ:「……」
シキ:「……ごめん」ミツキの頬を伝う涙を拭う。
シキ:「……ごめんね。わかってる。……バカみたいだよね」
ミツキ:俯いてかぶりを振る。
ミツキ:「……あたし、シキのこと信じられない」
ミツキ:「シキが、かっこつけて、あたしに何も言わずに……」
ミツキ:「勝手にどこか行っちゃうんじゃないかって。そう思えて」
ミツキ:「それが、怖くて仕方ないんだよ」
ミツキ:「シキまで……」
ミツキ:「あたしの隣から、いなくなるんじゃないかって」
シキ:「そんなわけない」
ミツキ:「何で言い切れるの」
シキ:「私は絶対にミツキをひとりにしない。私は確かに、無茶ばっかするし、カッコつけだけど」
シキ:「言い切れるよ。私がする無茶は全部」
シキ:「ミツキの側にいるためにやってるんだもん。いなくなったら意味がない」
ミツキ:いじけた子供のように、嗚咽を漏らし泣きながらシキを睨み付ける。
ミツキ:「やらかしたばっかりのくせに。現に」
シキ:「だからごめんって……わかってる。私の悪いとこだってわかってるよ」困ったように眉を寄せて
シキ:「つまらない意地張ってさ。ミツキに心配かけてたら世話ないよね」
ミツキ:「……」
ミツキ:「……駄目。信じられない」
ミツキ:「信じさせてよ」
ミツキ:「君がずっと、あたしの傍にいるって」
ミツキ:「あたしに信じさせてよ」
シキ:「……」
シキ:ミツキの泣きはらして赤くなった瞳を見つめる。
シキ:「……わかった」
シキ:ぐい、とミツキの顎を掴み
シキ:目の前に引き寄せて、唇を重ねる。
ミツキ:「……」
ミツキ:静かに目を閉じて、それを受け入れる。
ミツキ:目尻に溜まった涙が、もう一度零れ落ちる。
シキ:抱き合ったまま、何十秒もの静寂の後、一度唇を離して。
シキ:「私の全部をミツキにあげる」
シキ:「くっついて、くっついて、もうどうやっても離れられないんだって」
シキ:「ミツキがわかってくれるまで、何度だって教えてあげる」
シキ:「だから、ね?ミツキ」腕をミツキの腰に絡ませる。
シキ:「ミツキも私に教えて。私が無茶しすぎないように。ミツキのこと、いつでも一番に考えられるように」
ミツキ:「……あたし達は、違う人間だよ」
ミツキ:「寄り添うことは出来たって、一緒になんて、なれない」
ミツキ:「ほんの少しのことで、きっとこの手も、すぐに離れてしまうような……」
ミツキ:「そんな、脆い繋がりでしかない」
シキ:「その時は」
シキ:「もう一度握り返してあげる。どんなに離れたって、すぐに迎えに行ってあげる」
シキ:「例え腕がもげても、歩けなくなっても、ミツキもきっとそうしてくれるって、私は信じてる」
ミツキ:「……約束だよ」
ミツキ:手を繋いだまま、心臓の鼓動を聞くように、耳をシキの胸にあてる。
ミツキ:「……離さないで」
ミツキ:「ずっと」
シキ:「うん、約束」ミツキの頭を優しく撫でて
シキ:「大丈夫。きっと私達は、大丈夫だから」
ミツキ:「……うん……」
ミツキ:静かに呟いて、抱いた手に力を籠めて。
ミツキ:「……」
ミツキ:「……はーっ……」
ミツキ:身を離し、息を吐く。
シキ:「お……?」
シキ:手持ち無沙汰になって
ミツキ:「……らしくないことしちゃったじゃん。シキのせいでさ」
シキ:「……え~?それも私のせい~?」
ミツキ:涙の跡のほかはまるでいつも通りの笑みを浮かべ、炬燵に潜り込む。
ミツキ:「全部シキのせいに決まってんじゃん。あたし何か悪い要素あった?」
ミツキ:「ほら、何でもいいからさっさとカニ食べよーよ~」
シキ:「ん~~~」どう言い返したものかと考えながら自分も炬燵へ座る。
シキ:「ま、いっか。そだね!食べよう食べよう!!」
シキ:「ミツキの悪いとこは、食い意地だけってことで!今回は良しとしますか!」
ミツキ:「あたしはいつだっていい子じゃんか~」
ミツキ:「……えへへ。いただきまーす」
シキ:「いっただっきまーす!!」
シキ:「ん……?んんーーーっ!!??ヤバッ……美味っ……!!??」
ミツキ:「ほら~、言ったじゃん。カニは美味しいんだって」
シキ:「カニ美味っ!!??なにこれヤバっ!!??」
シキ:「えーもう毎日これにしようよ~!」
ミツキ:「いいね~、これから毎日カニ食べよっか」
ミツキ:「だから言ったじゃん…… ……」真剣に殻を切り始める。
シキ:「えっ!?いいの!?やったー!!」
ミツキ:「…………」黙々とカニを食べ始める。
シキ:「なに作ろっかなー。炊き込みご飯でしょ?ちらし寿司にー、グラタンにー」
シキ:「カニクリームコロッケもいいよね!ねえミツキ、何が食べた……」
シキ:「……あれ?ここにあったカニは?」
ミツキ:「……」もぐもぐカニの身を頬張る。
シキ:「カニ……」鍋の中にできた空白を箸で掬う。
ミツキ:「……言ったでしょ、シキ」
ミツキ:「カニを食べるとね……」
ミツキ:「無口になるんだよ」
ミツキ:「無駄話してたシキが悪い」
シキ:「な……」
シキ:「ふざけんなーーーっ!!私のカニ返せーーーっ!!!!」
ミツキ:「もう食べちゃったから返せませんね~。いや~、申し訳ないですね~」
シキ:「吐け!吐き出せ!!うぅ~私のカニ~~~!!」
ミツキ:「はっはっは、まだまだ修行が足りないな~」
シキ:「~~~~っ!」声にならない唸りを上げて
シキ:「あーもうわかりました。そっちがその気なら私も考えがあります」
ミツキ:「へ~、何だろ~?」
ミツキ:嘗め腐った態度でカニの身を啜る。
シキ:カニを咥えたままのミツキの顎をくいとこちらに向けて
シキ:「いっただっきまーす」
ミツキ:「は?」
シキ:まるごと咥えこむように唇を奪う。
ミツキ:「ん、──~~~!?」
シキ:そのまま舌先を口の中へと押入れ
シキ:舐め取るように歯の上を這わせて、唾液ごとその中身を啜る。
ミツキ:「っ、じゅ…… ……んん~~っ……!」
ミツキ:抗議するように唸って、負けじと舌で反撃する。
シキ:ごくりと喉を鳴らす。口の端から混ざりあった二人の雫が顎を伝って溢れていく。
ミツキ:「……ぷはっ……はぁ……!」
ミツキ:何とか口を離し、「ちょっと~~~……」
シキ:「ん、ぷぁっ……!」
ミツキ:「最悪~~。何考えてんのさー。信じらんない~……!」
シキ:「えへへ~ごちそうさまでしたー」
ミツキ:「こいつ~……」
シキ:「ミツキが意地悪するから悪いんだよー。でもまあ」
シキ:「味は悪くなかったから、また食べてもいいけどね」舌で口の端を舐め取る。
ミツキ:ずいと身を寄せ、覆いかぶさる様に。
ミツキ:「生意気」
ミツキ:「あったま来た。3倍にして返してもらうから」
シキ:「上等じゃん」挑発的に口を歪めて相手を見上げる
シキ:「お腹いっぱいになってもやめてあげないから。覚悟してよね」
シキ:首の後ろに手を回す「どうぞ、召し上がれ」
ミツキ:その言葉に答え、口を塞ぐように。小さく笑って、唇を重ねた。
シキ:海沿いの古びた一軒家。窓から覗く小さな明かりは
シキ:時に賑やかに、時に頼りなく明滅しながらも、夜遅くまで灯り続けた。
シキ:海岸沿いの道には薄っすらと、今年最初の雪が積もり出している。
シキ:特別な夜もやがて過ぎ去り、いつも通りの朝が訪れる。
シキ:ほんの少し地面に積もっただけの、日が昇りきれば溶けて消えてしまうような
シキ:見るものは誰もいない、悪戯染みた雪化粧。
シキ:そこに刻む足跡を、自分たちだけは知っている。
シキ:永遠に白紙のページの中に、確かに残るものがあったことを、自分たちだけは覚えている。
シキ:信じている。きっと、それこそが───
Double Cross The 3rd edition
Replay Bloom Case04
『かたられざるフェアリーテイル』
GAME END