ソワレの前に
メインログ/雑談ログ
Trailer
昨日と同じ今日。今日と同じ昨日。
繰り返し時を刻み、変わらないように見える世界。
その裏側で、戦い続ける者達がいる。
既に変貌した、陽の当たらぬ世界で。
狂い咲くのは徒花か、それとも――。
帳市。
古くから大小の劇場や画廊が建ち並び、市内に美大と音大を有する、芸術で栄える街。
そんな街で活動する劇団“ラオペ”は、小規模ながら演出力と確かな演技で人気を集めていた。
だがそんな劇団にはもう一つ、裏の顔があった。
FHセル“ラオペ”。
劇団をカバーとしつつ、戦闘業務代行を主な活動とする小規模セルだ。
半年前、“ラオペ”は劇団という表の顔とFHという裏の顔、どちらを重んじるかという方向性の違いから大きく分裂し、多数の離反者を出す形となった。
セルは空中分解目前となり、劇団も活動休止を余儀なくされた。
そして、現在。
体勢を立て直し、ようやく活動を再開させた“ラオペ”は、新たな公演に向けて一同準備に取り掛かる。
しかし、そんな彼らの行先には、不穏な影が漂いつつあった――。
Double Cross The 3rd edition
Replay Bloom Case03
『ソワレの前に』
ダブルクロス──それは裏切りを意味する言葉。
Index
Opening
【OP/四条幸音・藁科サイカ】
【OP/葛野くるみ・椿尾輪花・四条幸音・藁科サイカ】
【OP/葛野くるみ・椿尾輪花】
【OP/葛野くるみ・御薗橋七葉】
Middle phase
【Middle1】
【Middle first half/四条幸音】
【Middle first half/藁科サイカ】
【Middle first half/椿尾輪花】
【Middle first half/葛野くるみ】
【Middle first half/御薗橋七葉】
【Middle2】
【Middle latter half/葛野くるみ】
【Middle latter half/御薗橋七葉】
【Middle latter half/四条幸音】
【Middle latter half/藁科サイカ】
【Middle latter half/椿尾輪花】
【Middle3】
【Extra scene】
Climax
【Climax/ラオペの前に】
Ending
【ED/“ラオペ”】
【ED/四条幸音・椿尾輪花】
【ED/葛野くるみ・御薗橋七葉】
【ED/藁科サイカ】
Preplay
GM:それでは『リプレイ・ブルーム Case03: ソワレの前に』セッション始めていきましょう
GM:このセッションでは公平を期すためにPCナンバーが存在しません
GM:従って1D100を振り、大きかった人から自己紹介をお願いします
葛野 くるみ:1d100 はあい
DoubleCross : (1D100) → 43
四条 幸音:1d100
DoubleCross : (1D100) → 21
椿尾 輪花:1d100
DoubleCross : (1D100) → 24
藁科 サイカ:1d100
DoubleCross : (1D100) → 17
御薗橋七葉:1D100
DoubleCross : (1D100) → 93
葛野 くるみ:やる気満々な人がいる
四条 幸音:PC間で譲り合い精神が発揮されてる中
御薗橋七葉:私じゃん
椿尾 輪花:元気があるのはよいことです
GM:では御薗橋さんから自己紹介をどうぞ 他の方々は汚い野次を飛ばしてください
御薗橋七葉:
(キャラシート)
御薗橋七葉:御薗橋七葉(みそのばし ななは)です。21歳。
御薗橋七葉:最近セルに入ってきた新入りです。役割は演出家。
御薗橋七葉:舞台は真面目にやりますが、セルの仕事には興味ありません。
御薗橋七葉:舞台に関する意識が高く、リテイクを何度も出して嫌がられることもしばしば。
御薗橋七葉:冷たく苛烈な性格で、馴れ合いも好みません。友達とかいらないし……
御薗橋七葉:また極度の近視で眼鏡が手放せません。寝起きに眼鏡が見つからないと何も出来なくなるタイプ。
葛野 くるみ:誰と寝てるんですか?
藁科 サイカ:百合乱交界隈じゃ最年長は総受けだって法律知らないのか!
御薗橋七葉:一人で寝てます
椿尾 輪花:それで寝起きが悪いなんて、おひとりで忙しいんですね
御薗橋七葉:能力は光学と化学物質による攪乱。性能的には≪ショウタイム≫と≪攻撃誘導≫によるダイスデバフです。
御薗橋七葉:最スケベシンドローム・ソラリスなので痛みも快楽も思いのままです
葛野 くるみ:自分で言いやがった
四条 幸音:能力からしてキメに来てる
藁科 サイカ:構築まで総受けじゃん
御薗橋七葉:お前ら全員抱くから覚悟しとけよな
葛野 くるみ:はいはい
藁科 サイカ:どう考えても四人に四肢それぞれひとつずつ抑えられるのが似合う
椿尾 輪花:抱かれるための人格21年育ててきたみたいな顔してね
御薗橋七葉:以上です。よろしくお願いします。
GM:では次!葛野さんお願いします!
葛野 くるみ:オス!
葛野 くるみ:
(キャラシート)
葛野 くるみ:くずの・くるみ。17歳です!
葛野 くるみ:気楽にくるみちゃんって呼んでね
椿尾 輪花:淫売ちゃん♡
葛野 くるみ:くるみちゃんだって言ってんだろ!
葛野 くるみ:FHにて、武器と人間の融合を目指した実験体シリーズの3号機。
葛野 くるみ:手足が換装可能な義肢になっており、戦闘時は四肢を巨大な剣に変形させて戦います。
葛野 くるみ:戦闘能力は高いのですが、接続不良が多く、欠陥品認定を受けてしまいました。
御薗橋七葉:かわいそう
藁科 サイカ:四肢はあれな玩具にも変形可能ですか?
葛野 くるみ:激しいのが好きなのかしら
葛野 くるみ:通常時の義肢は触感が非常に鈍いため、手足を使ったコミュニケーションがあまり好きではありません。
四条 幸音:手つないだりとか……ピュアなコミュニケーションは……
御薗橋七葉:口で喋れ!
葛野 くるみ:また、激しい衝撃(1d10のダメージ相当)を与えられると、接続不良を起こして動けなくなっちゃいます。
椿尾 輪花:激しいのが好きなのはそっちじゃないか
四条 幸音:押し倒されに来てる
御薗橋七葉:百合乱暴し放題
葛野 くるみ:みんな、くるみに触る時は気をつけてね!くるみ、ドッジとかしないから!
椿尾 輪花:総受け宣言だ
四条 幸音:押すなよ!絶対押すなよ!ってやつですね
椿尾 輪花:淫売だわ
藁科 サイカ:据え置き型か……
葛野 くるみ:誘い受けこそがナンバーワンってことを見せつけてやりますよ
葛野 くるみ:あとここでひとつ特別情報☆
葛野 くるみ:御園橋さんとは、"ラオペ"セルに所属する前に出会い、付き合ってたことがあるんだって~!
葛野 くるみ:これは絶対秘密だからみんな内緒にしててね!
四条 幸音:元カノじゃん
御薗橋七葉:記憶にございません
葛野 くるみ:絶対に隠し通します
御薗橋七葉:隠し通して
葛野 くるみ:あと劇団員らしく《完全演技》を所持しており、恐らくどんな役でも完璧に演じることができます。
椿尾 輪花:これさえなければな……
葛野 くるみ:皆あたしに夢中ってワケ
葛野 くるみ:あと戦闘はバトルマニューバで達成値増やしまくってヴァリポンするよ
葛野 くるみ:以上です!よろしくお願いしま~す!
GM:OK!よろしくお願いします!
GM:汚い野次とは言ったがこいつら本当に汚いな……
椿尾 輪花:どうしろっていうんだよ!!
藁科 サイカ:GMが許可するから……
四条 幸音:推奨しといて!
GM:では次!椿尾さん自己紹介どうぞ!
椿尾 輪花:はい
椿尾 輪花:
(キャラシート)
椿尾 輪花:椿尾輪花です。18歳になります。
椿尾 輪花:表向きはいち劇団員ですが、その実"ラオペ"セルのセルリーダーです。
葛野 くるみ:悪い顔に見えてきましたね
御薗橋七葉:邪悪そう
藁科 サイカ:下級生を侍らせるタイプの顔をしたレズ
四条 幸音:構成員が言えた義理かな
椿尾 輪花:きっと毎朝鏡でそういう顔を見ているからそう思ってしまうのね。
椿尾 輪花:今回のPCの中では珍しく生粋のFHメンバーですね。ただ、セルとしての裏の顔より表の顔、積極的なFHとしての活動よりも潜伏することを重要視しています。
椿尾 輪花:おかげでセル内が荒れたりもしましたが、現在はイニシアチブを取り返し、改めてセルリーダーの座についているわけです。
葛野 くるみ:リーダーの座を略奪してません?
椿尾 輪花:さあ……?
椿尾 輪花:もちろん多くの団員の皆さんはそんなことは露も知らず、大人しく心優しい、気の利く女性劇団員として見ていることでしょう。
藁科 サイカ:何人と寝たんだ!
四条 幸音:どこでイニシアチブ取ったんだろう
葛野 くるみ:自分で気の利くまで言う奴があるか!
椿尾 輪花:年下の子には頼れる姉のように、年上の方にはよくできた後輩のように見られることもあるかもしれませんね。
四条 幸音:自分で心優しいも相当図太さ感じる
御薗橋七葉:これは優しい人に違いない
藁科 サイカ:騙されないで
四条 幸音:もう抱かれたのかな
葛野 くるみ:総受け顔してるだけのことはある
椿尾 輪花:さて、そんな私ですが、能力面は影の糸を用いた支援です。柔軟性は高いですが、特に得意とするのは人の内面への干渉。
椿尾 輪花:戦闘においては仲間の攻撃性を喚起し、あるいは敵の攻撃を掻き乱し、攻防に役立てます。
葛野 くるみ:寝台においてはどうなるんですか?
椿尾 輪花:淫売は股を濡らしすぎて脳がこぼれたのかしら。
四条 幸音:こわ……
椿尾 輪花:構成的には《さらなる力》の難易度を《崩れる大地》で踏み倒している以外は特に変な事はしてないはずです。
椿尾 輪花:また、寝台においては《超人的能力》で本来オーヴァードには効果を発揮しない《快楽の香気》すら、同意を得られれば効果を発揮するようになりますので。
椿尾 輪花:お前ら全員同意させます。
御薗橋七葉:正体見たりって感じだな
藁科 サイカ:キメセク女と呼ぶしかないわね
葛野 くるみ:言ってんじゃん!
椿尾 輪花:脳に直接打ち込んであげるからね。
御薗橋七葉:ソラリスは人を傷つける道具じゃない 私とキメセクバトルで勝負しなさい
四条 幸音:セルを掌握するのに何人の同意を……
椿尾 輪花:あ、オーヴァード相手には同意が必要だけど、非オーヴァードの弱者どもにはそんなもの必要ないんで
椿尾 輪花:男も女も使えそうな奴は籠絡して良いように使い捨てて来ました。自分が一番可愛いからね。
葛野 くるみ:さすが心優しくて気の利くリーダーは一味違うなあ
椿尾 輪花:もちろんこれは表になるとセル運営に障りが出るので、ある程度隠してはいます。<情報:噂話>で難易度11を開けられるかどうかを一目安にしてください。
四条 幸音:まあまあわかりそう
藁科 サイカ:情報固定値5あるのでぶち抜けそう
椿尾 輪花:そもそも情報項目(疑念)が出てくるかというところも踏まえて……ね!
椿尾 輪花:こんなところかな。改めてよろしくお願いします!
GM:よろしくお願いします!
GM:では次は四条さんお願いします
四条 幸音:はい!
四条 幸音:
(キャラシート)
四条 幸音:四条 幸音(しじょう ゆきね)です。17歳、一般劇団員兼一般セル構成員です。
四条 幸音:生まれつきめちゃめちゃ幸運に恵まれており、FHでも"特異点"ではないかと期待されていたのですが、
四条 幸音:任務に失敗して所属部隊が壊滅、自身も死にかけたことで無事に見限られ
四条 幸音:現在は一般的なチルドレンとしてセルに所属しています。
御薗橋七葉:重い……
葛野 くるみ:かわいそうな過去………
藁科 サイカ:つまり「お前のせいだ鬱憤晴らしレズレイプ」の被害者枠
四条 幸音:役たたず認定されたのでやばい扱いから逃れました。これはこれでラッキー
椿尾 輪花:そしてこの落ち着いたセルに来れたんだものね
四条 幸音:落ち着いたセルでイニシアチブの取り合いがあるのか……
四条 幸音:実際単に運が良いわけではなく周囲から運を奪っているのでは?という疑惑を一部から持たれており
四条 幸音:本人もそういった認識が少なからずあるので、周りで起きた不幸に対して罪悪感が強いです
四条 幸音:そのため他人と深く関わることに抵抗があります。防壁を積んでいます。
葛野 くるみ:えっ、非処女なんですか?
椿尾 輪花:何も接続してなくない?
御薗橋七葉:ハァ!?
四条 幸音:もう何回か押し倒された前提で来たよね?
藁科 サイカ:違うんですか?
四条 幸音:確かめたらいいんじゃないですか?
御薗橋七葉:フゥン?
葛野 くるみ:ほほ~ん
四条 幸音:まあ劇団でごたごたがあったら僕のせいかもしれないしね……ごめんとか言わないけど……
四条 幸音:別に一人でも寂しくもないし……
四条 幸音:能力は運勢操作。コインを媒介にしてちょっとした幸運を呼んだり、
四条 幸音:嫌いなやつが何故か不運に見舞われたりシます。なぜか
椿尾 輪花:可哀想……可愛がってあげなきゃね
御薗橋七葉:慰めてあげないと
四条 幸音:どいつもこいつも強者面してるけど見てろよな……
四条 幸音:全員シメ返してやる……
四条 幸音:以上です。
葛野 くるみ:楽しみ♡
四条 幸音:くっ……
GM:よろしくお願いします!
GM:ではラスト!藁科さんお願いします!
藁科 サイカ:いえっさ
藁科 サイカ:
(キャラシート)
藁科 サイカ:わらしな・さいか。19歳、たぶんフリーターとかのカバー持ちな一般構成員です。
藁科 サイカ:169センチの身長。多分靴底が厚かったりコートで肩幅を誤魔化してたり胸元が薄かったりする。
藁科 サイカ:そして一人称は〝俺〟。
葛野 くるみ:な…なんだって…!?
御薗橋七葉:聞いてないぞ!
椿尾 輪花:男かと思った途端に色めき立つんじゃありませんよ。
藁科 サイカ:俺は犯すの犯されるの賑やかな皆とは違って穏健派だからさ。
藁科 サイカ:おてて繋いで横一直線、皆でゴールに駆け込もうぜ。
藁科 サイカ:……という、良く言えば穏健保守派、悪く言えば事なかれ主義です。
藁科 サイカ:セルの構成員が一気に減ったりとかしたの、たぶんよく思ってないんじゃないですかね。
藁科 サイカ:戦歴は長く、長い戦歴相応に身体の消耗は激しい。それを補うように結構いろんな改造が施されてるようで、
藁科 サイカ:具体的には攻撃に対する回避能力が高まってる代わりに余命がそんなに無い筈です。
御薗橋七葉:かわいそう
葛野 くるみ:かっかわいそう
藁科 サイカ:ただ、戦歴が長いとは言っても別にそんな優秀という訳ではないんで、戦果とかもそこまでじゃあないんですが
四条 幸音:体限界な子が多い
椿尾 輪花:かわいそう(切り所を考えないとな……)
葛野 くるみ:あたし達で慰めてあげなくっちゃ
藁科 サイカ:本人は「運が無かったな」とか言って笑って誤魔化すことが多分多い。
四条 幸音:ふ……ふ~~~ん
葛野 くるみ:サイカ様…… まさかあの子に………
御薗橋七葉:許せませんわ……
四条 幸音:あたしそんなつもりじゃ……
藁科 サイカ:目標はルーチン化した平穏な日々。みんな仲良く平和にいつまでも演劇をやり続けようぜ。な?
葛野 くるみ:はあ~い
藁科 サイカ:えー、能力はエグザイル由来の身体操作で体内の内圧を操作して、骨片や毒交じりの体液を撒き散らします。ウルトラボンバーブレインハック餓鬼魂の使いです。
椿尾 輪花:平和に行きましょう ここなら大丈夫です
四条 幸音:毎日を日曜日にしていこ
藁科 サイカ:あとこれはちょっとしたお得情報なんですが、
藁科 サイカ:《写真記憶》を持っているので、誰かが誰かと密会してたみたいな光景は忘れないのと
藁科 サイカ:《異能の指先》があるので、俺の指を受け入れてくれた奴はもれなくセルフ回想演出が出来る特典付きだ。
藁科 サイカ:暴かれたい奴は名乗りでな!
椿尾 輪花:切り所を考えないとな……
四条 幸音:もう隠してすらいない
葛野 くるみ:あっ質問していいですかっ
藁科 サイカ:はいはい
葛野 くるみ:性別に関しては、どういう風な扱いを受けたいとかありますか? 一応男性として接するとかみたいな
藁科 サイカ:本人の性自認は女性であり、それはそれとして男性装を好むくらいではありますが、
藁科 サイカ:これは秘密なんですけど、男性装だと需要というか求められることが増えるらしいんですよ
葛野 くるみ:ハハ~~~ン
四条 幸音:誘ってる
葛野 くるみ:完全に理解しました ありがとうございます
藁科 サイカ:外部の男なんか要らないだろ? スタンスで行きつつ、内面のぐずぐずを出していきたいと思います。よろしくお願いいたします。
GM:よろしくお願いします!
GM:OP……の前に今の皆さんの状況を説明しておきましょう
四条 幸音:はい!
葛野 くるみ:は~い
GM:“ラオペ”セルは基本的には上位セルからの戦闘業務委託を主な活動としているセルです。
藁科 サイカ:下請けの業者さんね
藁科 サイカ:元請けの監督さんとこから大量の書類の押印を要求されそう
四条 幸音:戦闘員が必要になったら呼ばれる感じの
GM:カバーである劇団は小規模ながら知る人ぞ知る人気を博しており、FHとしての顔を知らない劇団員も在籍しています。
四条 幸音:みんながんばってる
GM:このカバーとワークスの不和、具体的にはもう劇団なんてやめてセルとしての活動に専念しようという派閥と、劇団は必要だという派閥に分かれ、半年ほど前にセルは大きく分裂しています。
藁科 サイカ:分裂とか不和とかそういう言葉は良くないなぁ
葛野 くるみ:カバーが大きくなりすぎてしまったのね
GM:人員が減って組織として立ちいかなくなり、セルも劇団もしばらく活動休止を余儀なくされました。
四条 幸音:もう早速平和からとおい
椿尾 輪花:平和のために必要な過程だったの
葛野 くるみ:一体誰がこんな事を…?
藁科 サイカ:ゆるせないぜ
GM:今はようやく再建の目途が立ち、OPの時系列では復帰第一回公演に向けてこの日に集合~という日程だけが伝えられている形になります。
GM:何となく稽古場にたむろってもいいし、普通に休暇を過ごしている感じでも大丈夫です
葛野 くるみ:なるほどなるほど
椿尾 輪花:がんばりました
GM:大体そんな感じです 何か確認しておきたいことはありますか?
椿尾 輪花:大丈夫だと思います
藁科 サイカ:セルの大分裂、人が死んだりはしましたか?
GM:そこまでは無かったですね 相当もめはしただろうけど戦闘とかは無いと思います
GM:普通の劇団が分裂した感じを想像してください
葛野 くるみ:今のセル内の主流ってどっちなんでしょう 劇団としてやっていく派閥?
椿尾 輪花:多分そうならないようにがんばりました
四条 幸音:今セルに残ってるのはみんな劇団派で良いのかな?
藁科 サイカ:なるほど承知しました、邪悪な何者かめ……
GM:今残ってるのはそうですね 劇団をやってく派閥です
葛野 くるみ:なるほどです!
GM:単純に舞台がやりたいのか、カバーとして必要など他の理由なのかはそれぞれでしょうね
GM:後は大丈夫かな?
葛野 くるみ:大丈夫です!
四条 幸音:オッケーです
藁科 サイカ:OK!
椿尾 輪花:問題ありません
GM:OK!ではOPの前に……
GM:誰とOPがやりたいかGMに秘話で送ってください それを元にOPを組みます
GM:あっそうだ 特殊ルールも説明しておきますね
四条 幸音:あっはい!
【ミドルシーン進行】
前半・後半で1回ずつ、計2回の『シーン権』が与えられる。
シーン権を持つPCは、シーンに登場させたい他PCを指名することが出来る。0人から全員まで、人数は自由。
シーンに登場しないPCは、その間サブシーンを行う。
また、クライマックスシーンに入るまで参加者・非参加者を問わず、見学席内で良いロールプレイに対してブーケを与えることが可能。
ブーケはメインシーン🌸サブシーン🌹に分けて与え、それぞれシーン内に登場している全てのPCが受け取ることになる。
ミドルシーン終了時、全ての登場シーンの合計獲得ブーケ数が最も多かったPC1名のみが、好きなPCを指名して時間無制限のエクストラシーンを行うことが可能となる。この際、サブシーンは発生しない。
GM:最強の女が追加シーンを獲得できます
藁科 サイカ:恐ろしいルールだ……
四条 幸音:こわい
GM:それともう一つ
【ロイス取得特殊ルール】
このセッションでは開始時に固定ロイスを1つしか保持することが出来ない。(Dロイスを取得している場合、Dロイスのみとなる)
ロイスの取得が可能なのは、ミドルフェイズのメインシーンとエクストラシーンのみ。
ロイスを取得する際、P/N感情のどちらかを秘匿しておくことが可能。この場合、原則ED終了までに自らのタイミングで公開することとする。
クライマックスシーンではジャーム化・『とどめを刺される』は発生しないが、侵蝕率が200%を越える、または全てのロイスを失うと、その時点で戦闘不能となる。
GM:というわけです
椿尾 輪花:なるほどね
葛野 くるみ:なるほどね
藁科 サイカ:すげえ戦いだ
GM:というわけでOP希望を送ってね
葛野 くるみ:送りました!
藁科 サイカ:送ったぜ
GM:少々お待ちください
GM:うーん……
GM:終わってしまうかもしれんな……
藁科 サイカ:いきなり決着が……?
葛野 くるみ:私の実力にもう怖気づいてしまったのかしら
四条 幸音:何が起きてるの……?
椿尾 輪花:最初から年齢制限は特に気にしないで良いんですよね?
GM:それは大丈夫です
GM:では……こうなりますね
GM:
・四条 藁科
・椿尾 四条 藁科 葛野
・葛野 椿尾
・葛野 御薗橋
椿尾 輪花:ああ……(納得)
葛野 くるみ:やはり時代はあたしに来てるというわけですか♡
藁科 サイカ:後半2シーンでだいたいの決着が付くのでは?
GM:OPの制限時間は各35分です。
【OP/四条幸音・藁科サイカ】
GM:シーンPC 藁科サイカ、四条幸音
GM:登場侵蝕をどうぞ。このセッションでは1D10もしくは1D3+3から選択できます。
四条 幸音:三面でお願いします。
藁科 サイカ:では1D3+3で
四条 幸音:1d3+3+36
DoubleCross : (1D3+3+36) → 1[1]+3+36 → 40
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を1D3+3(→ 6)増加 (36 → 42)
GM:以降シーンの舞台描写は基本的に指名側PCの裁量にお任せします。
藁科 サイカ:──さて、幕が上がるより少し前のこと。
藁科 サイカ:会場は暗く、ブザーは鳴った。どよめきがだんだんと融けていく頃合いだ。
藁科 サイカ:街の片隅。聞き耳を立てる客もいないような寂れたカフェ。
藁科 サイカ:店主には小銭を握らせて、食事とコーヒーの用意だけさせたら席を外させている。
藁科 サイカ:「……という舞台設定だが。お気に召したかい、幸音」
藁科 サイカ:椅子に深く腰掛けて、厚底の靴で長く見せた脚を重ねて、藁科サイカはそう言った。
四条 幸音:「外でまで劇みたいなことしなくても良いだろうに……」
四条 幸音:椅子に腰掛けてプラプラと脚を揺らす。
藁科 サイカ:「餓えてるんだよ、俺は。随分と長くご無沙汰だったろう」
藁科 サイカ:「いったいにして、呼吸や飲食を怠れば人はたちどころに死ぬというのに、娯楽の摂取には無頓着になる人間が多いのは何故だろうな」
四条 幸音:「劇団か。 あんた、ほんとにそっち気に入ってるのね」
藁科 サイカ:「ああ、もちろん。演劇というのはルーチンワークの最たるものだ」
藁科 サイカ:「ロミオとジュリエットが恋に落ちないなんて筋書きは、何回演じたって生まれないだろう?」
藁科 サイカ:「それが安心するんだよ、俺は」
藁科 サイカ:そこまで浪々と〝台詞〟を吐いて、コーヒーカップを手に取る。
四条 幸音:「……ルーチンね。だったらそりゃ苛ついたことでしょうね」
四条 幸音:「こないだの騒動には」
藁科 サイカ:苛立ちを示すような荒っぽい手付きで、ぐうっと傾け、一息に半ばまで飲み干して、
四条 幸音:つられるようにコーヒーに口をつけて、僅かに顔をしかめる。
藁科 サイカ:「ああ。……おっと、ミルクと砂糖はいくつ?」
藁科 サイカ:自分よりに置かれていた角砂糖のポットを開けながら。
四条 幸音:「いらないよ、子供じゃないんだから」
藁科 サイカ:「かと言って大人でもない。難しい年頃だ」
藁科 サイカ:ポットから角砂糖をひとつ、指で取り出す。
藁科 サイカ:自分の口へ。
藁科 サイカ:かりっ。
藁科 サイカ:「……随分と静かになったものだ、ここも」
四条 幸音:「僕は静かなぐらいが好きだよ。あんまりうるさいと、落ち着いてられないし」
四条 幸音:「あんたはそうでもないの? 騒がしいぐらいの喫茶店が”ルーチン”だった?」
藁科 サイカ:「ああ。それで、誰かのコーヒーに角砂糖を入れてやって、ミルクを注いであげるまでがね」
藁科 サイカ:「……まったく、幸音は偉いな」
四条 幸音:「……何よ唐突に」
藁科 サイカ:もうひとつ、角砂糖を取り出す。
藁科 サイカ:それを、許可も得ないままに、対面の相手のコーヒーカップへ放り込んで、
藁科 サイカ:「不平も不満も口にしない。俺とは全く大違いだ」
藁科 サイカ:「俺なんか年がら年中、運が無かった、運が無かったと嘆いてばかりなのにな」
四条 幸音:「……ふん」
四条 幸音:何も文句を言わずにそのままカップを傾ける。先までより甘く飲みやすい。
藁科 サイカ:「ほら、美味しくなったろ」
四条 幸音:「たまには良いわね」
四条 幸音:素直に感想を述べずに、視線をそらす。
藁科 サイカ:「いつもでいいんだぞ、幸音」
藁科 サイカ:「今あるもので我慢するのは、今に満足するのとは違う」
四条 幸音:「さっきのルーチンの話と違うんじゃない?」
四条 幸音:「変わるのは嫌いなんじゃないの」
藁科 サイカ:「ルーチンワークに幸福を感じるのは、その工程に満足しているからだ」
藁科 サイカ:「私はこのコーヒーの味に満足している。ミルクも砂糖も足さないままでね」
藁科 サイカ:「幸音は我慢しただろ」
藁科 サイカ:「それこそ、〝こないだの騒動〟でも」
四条 幸音:「別に、我慢ってわけじゃ……」
藁科 サイカ:手を伸ばす。……コーヒーカップを掴む手を、上から両手で包むように。
四条 幸音:「……っていうか、何が言いたいのよ。もうすぐまた劇団始まるのに、僕一人呼び出して」
藁科 サイカ:「俺はね、幸音。劇団が元の形になればいいなと思ってる。でも、それはたぶん無理だろうから」
藁科 サイカ:「だからせめて、今より壊れてはしまわないようにと願っているんだ」
藁科 サイカ:「……仲良くしようぜ、みんなで」
藁科 サイカ:「旧きよき……ギリシャだったかな、ローマだったかな。そういう民主主義のやり方でさ」
四条 幸音:「これ以上壊れないように、劇団を守るのに協力しろって?」
四条 幸音:触れられた手をすり抜けようとして、上手くいかない。力づくは嫌だ。
藁科 サイカ:「オストラコンに書かれる名前は少ない方がいい」
藁科 サイカ:「問題は、誰の名を書くべきかだ。……俺は幸音の名を書きたくないし、俺の名を書かれたくもない」
四条 幸音:「あんた……」
藁科 サイカ:「幸音はいったい、誰の名前が書かれるべきだと思う?」
四条 幸音:「………」
四条 幸音:ようやく、呼び出された理由に合点がいく。
藁科 サイカ:ぱっ
藁科 サイカ:と、手が離れていく。
四条 幸音:「あんたは」
四条 幸音:「誰の"せい"だと思ってんのよ」
藁科 サイカ:「わからない。……これは芝居じゃなく本心だ」
藁科 サイカ:「が。人の間に不和を生む手段なんて、俺達ファルスハーツは幾らでも知ってる」
藁科 サイカ:「……いや。20年そこそこの歴史に問うまでも無いな。オセローを観ればいい」
四条 幸音:「不和の原因がわかったら、そいつを追放して団を守る……って?」
藁科 サイカ:唇を歪めるような笑顔になった。
藁科 サイカ:自嘲的な言葉を吐く時によく作る、悪辣そうな顔だ。
藁科 サイカ:「それもやむなし……だろ?」
四条 幸音:「嫌な顔」
四条 幸音:「言いたいことはわかったよ。でもあんた」
四条 幸音:「……なんで僕に声をかけた?」
四条 幸音:「そもそもの話だけどさ」
四条 幸音:手の甲をガリ、とかきむしり。
四条 幸音:「僕のせいだ……とは思わないわけ?」
藁科 サイカ:「思わない」
四条 幸音:「運が無いのは嫌なんでしょ、あんた」
藁科 サイカ:「それは当然だ。誰しも人生には幸福が待って居て欲しいと願うものだろう。けれどね」
藁科 サイカ:「……そうだな。さっき俺自身が吐いた台詞を、もう一度再演しようか」
藁科 サイカ:こほん。咳払い。記憶を辿り、全く同じ声音、抑揚、音高で、
藁科 サイカ:「〝ロミオとジュリエットが恋に落ちないなんて筋書きは、何回演じたって生まれないだろう〟」
藁科 サイカ:「ということだ。演劇はアドリブという不確定要素を含みながらも、必ず、絶対に、信用して良い部分がある」
藁科 サイカ:「君は俺にとって、そういう出来事なんだよ」
四条 幸音:ギリ、と。かきむしる手に力がこもる。
四条 幸音:「気づいてるかもしれないけど」
四条 幸音:「僕、君のこと苦手だよ」
四条 幸音:「いちいち気障ったらしいのも、何度訂正しても名前で呼んでくるのも」
四条 幸音:「そうやって……僕のことを信用するなんて言いやがるのも、苦手だ」
藁科 サイカ:「俺は、君が好きだよ。俺のことを苦手にして、するどい棘を見せつけてくるところ」
四条 幸音:「マゾかよ」
藁科 サイカ:「それは君も一緒」と、爪が突き立つ手の甲を指して。
四条 幸音:指摘されて、ぱっと手を離す。
四条 幸音:「……一応、あんたの言うことは分かったよ」
四条 幸音:「本当にあんたの言うところの……意図的に不和を作ってるような奴」
藁科 サイカ:「ああ、覚えておいてくれ。……恐ろしいのは言葉と微笑みだ」
藁科 サイカ:「誰が、それをしているかは分からないけれど」
藁科 サイカ:「……気をつけるんだよ、幸音」
四条 幸音:「そういう奴が居て、居るべきじゃないと思ったら……協力する」
四条 幸音:「……僕も、ここは嫌いじゃないし」
四条 幸音:「それ言うならあんたこそ。気をつけなよ」
四条 幸音:「あるかどうかもわからない不和の種なんかより」
四条 幸音:「抱き込んだ棘の方がよっぽど危ないかもしれないぜ」
藁科 サイカ:笑った。
藁科 サイカ:先ほどのような歪なものでなく、晴れやかにだ。
藁科 サイカ:「それで死ぬなら、まぁいいかなぁ」
四条 幸音:「何がいいんだよ、馬鹿」
藁科 サイカ:「最後の瞬間にはもしかしたら、俺はこう言うかも知れないよ」
藁科 サイカ:「〝君の腕の中で最期を迎えるとは。ああ、なんて幸福な人生だったのだろう!〟」
藁科 サイカ:立ち上がる。
四条 幸音:「……もし」
藁科 サイカ:セルフサービス。コーヒーカップを片付けようと手に取って、
四条 幸音:「ほんとに僕のこと、気に入ってるんだったらさ」
四条 幸音:「……それだけは、やめてよ」
四条 幸音:消え入るようにつぶやく。
藁科 サイカ:鼻歌交じりに歩く。ミュージカルの浪々とした声ではなく。……という、開演前の話。
GM:シーン終了。
【OP/葛野くるみ・椿尾輪花・四条幸音・藁科サイカ】
GM:OP シーンPC 葛野くるみ 椿尾輪花 四条幸音 藁科サイカ
GM:未登場の二人のみ登場侵蝕をどうぞ。
椿尾 輪花:椿尾輪花の侵蝕率を1d3+3(→ 4)増加 (34 → 38)
葛野 くるみ:葛野くるみの侵蝕率を1d3+3(→ 5)増加 (40 → 45)
葛野 くるみ:それは、観客には決して見えない舞台裏の一幕。
葛野 くるみ:我が劇団"ラオペ"の拠点は、街の片隅にある小さな雑居ビルだ。
葛野 くるみ:稽古場、衣装や小道具・大道具が雑多に詰め込まれた倉庫、そして小劇場…。
葛野 くるみ:それと、──日常を生きる劇団員達は、決して知らない。
葛野 くるみ:活動再開に向けて活気づくそのビルに、地下に繋がる階段があることを。
葛野 くるみ:そここそが、真の舞台裏。我がFHセル"ラオペ"の拠点であることを。
葛野 くるみ:「だからー、別に、リュウちゃんと話ししてただけだってば」
葛野 くるみ:セル内に設けられた簡単な応接セットで足を組み、皆の前で駄々をこねるようにしている女がひとり。
葛野 くるみ:「リュウちゃん、幸音ちゃんのこと好きだって言うから。聞いててあげてたんだって」隣に座る四条さんにもたれかかる。
四条 幸音:「君さあ……」 肩に重みを感じながら、逆の手で頭を抱える。
椿尾 輪花:その斜向い。ごく当然のようにソファの中心に腰を下ろした少女が、手を組んで微笑している。
椿尾 輪花:だがその片眉は微かに歪んでいる。大きな苛立ちを感じている証左だ。そうやすやすと本心を表に出す性分ではない。
葛野 くるみ:「ね? 幸音ちゃん、リュウちゃんから連絡あったでしょ?」
藁科 サイカ:「はは……」唇の端を引きつらせながら作り笑いを浮かべている。
四条 幸音:「確かにあったよ。 ……丁重にお断りしたけど」
葛野 くるみ:「えーっ、断ったの~?」
葛野 くるみ:「なんだあ」肩に頭を乗せたまま、今度は腕を絡ます。
四条 幸音:「やけに積極的というか、距離の近い感じに来るなとは思ったよ。君の入れ知恵か……」
四条 幸音:「僕はお叱り側じゃないけどさ、君、もうちょっとこう」
葛野 くるみ:「ん?」
葛野 くるみ:身を近づけると、ほのかに甘い香水の匂いが鼻腔をくすぐる。
四条 幸音:「相手を選んだ方が……誰でも彼でもこういうふうにするのどうかと……思うよ?」
藁科 サイカ:「そうだな。あまり人を焚きつけるものじゃないよ、くるみ」
藁科 サイカ:「君の交友関係に指図をするつもりは無いが……俺達は、ほら。悪目立ちは良くないだろう」
藁科 サイカ:「目立つなら舞台に立つ時だけだ。そういうものだろう、演劇人とは」
葛野 くるみ:「えーっ、待ってよ待ってよ。あたしはリュウちゃんと幸音ちゃんが仲良くなればいいなあって思っただけだって」
葛野 くるみ:「劇団の人間関係を良好にしたかったの!」
藁科 サイカ:額に手を当て、頭痛を堪えるような顔をして首を振る。
四条 幸音:「はあ。で、そのリュウちゃんの相談に乗ったわけ?」
葛野 くるみ:「そーだよー。リュウちゃん良いよ、ああいうオラオラすぎない人なら、幸音ちゃんの心も開けるかなって思ったの」
藁科 サイカ:「はぁ……輪花、君からも言ってあげてくれ。君の言葉の方が染み渡るだろう」
葛野 くるみ:「えーっ、さっきから怖いよー」幸音ちゃんにいっそうしがみつく。
四条 幸音:「なんで君に心配されなきゃいけないのさ……ちょっと、近い重い!」
椿尾 輪花:「現実問題、もしそうであれば、敢えて葛野さんを叱責することはないでしょう」
椿尾 輪花:「でも、その気になれば彼からあなたと会っている間何があったのか……洗いざらいに」
椿尾 輪花:「聞き出すことは可能なんですよ。葛野さん」
椿尾 輪花:「あなたは何かに誓えますか? 自分の言葉を」
藁科 サイカ:「おっと。輪花の舌鋒は今日も鋭い。いや、今日は一際鋭いな」
葛野 くるみ:「え、え、なになに。誓うって何」
葛野 くるみ:「なんであたしが悪いみたいな空気になってるの?」
椿尾 輪花:「あなたが悪い目算がきわめて高いからです」
椿尾 輪花:「積み立ててきたものがありますからね、どうしても」
藁科 サイカ:「……輪花、くるみも悪気は無いんだと思う」
藁科 サイカ:「ただちょっと……いや、かなり……人付き合いが上手くないだけで、さ……」
四条 幸音:「椿尾。怒ってるのは分かるけど、仲間に対して聞き出すとか……そういうのは良くない、と思う」
葛野 くるみ:「幸音ちゃんホント良い子ー!好き!」嬉しそう。
四条 幸音:「それに、隠してるわけじゃないでしょこの子、多分」
藁科 サイカ:強く深く頷いて同意を示した。
葛野 くるみ:「サイカくんもかっこいいから好き!」嬉しそう。
椿尾 輪花:「そうですね。私もそんなことを実際にしたくはありませんし」
椿尾 輪花:「実際やりはしないでしょう。その上で葛野さんの言葉を、きちんと聞いておきたいのです」
椿尾 輪花:目を細める 「悪気がなければ許されるというなら、この世に法はありません」
椿尾 輪花:「そして、法がなければ平和もない。私はこの場所の和を望んでいるだけです」
藁科 サイカ:「……俺達を縛る法というのはなんだい、〝リーダー〟」
椿尾 輪花:「輪を乱さぬこと。……不適切な関係を無思慮に持たぬこと」
椿尾 輪花:「葛野さんが『不適切な関係』の意味を解さない人なのを踏まえて、さらに言うのであれば」
葛野 くるみ:「不適切な関係?」首を傾げている。
椿尾 輪花:「複数の身内と肉体関係を持つなということです」 ふう、と嘆息
椿尾 輪花:「荒れるので。輪。ものすごく」
藁科 サイカ:「は、はは……」冷や汗が頬を伝う。それを何気なく見えるように袖で拭い、咳払い。こほん。
椿尾 輪花:「どうなんですか、葛野さん」
葛野 くるみ:「………あー!」
葛野 くるみ:「セフレ禁止ってことね!」
四条 幸音:濁していた言葉がはっきり口にされて、居心地悪げに目を伏せる。
椿尾 輪花:「そう言っても良いです」
椿尾 輪花:もう一度嘆息
葛野 くるみ:「それはやらかしちゃったかもしんない、あたし!ごめんなさい!」
四条 幸音:「一応言っておくけど」
四条 幸音:「『セフレではないならやってもいい』とか、そういうのもないからね」
葛野 くるみ:「……へえーーー!」目を丸くする。
葛野 くるみ:「よくあたしの考えてること分かるね幸音ちゃん! ねえー、あたしのこと好きなの?」
四条 幸音:「言っておいてよかったよ……言いたくなかったけど……」
藁科 サイカ:「性行為自体が悪いとは言わないけれど……まぁ、ねえ」
藁科 サイカ:「世間的にはそういうことをすると、一対一の交際関係と見做されるものだから──だから、くるみ」
葛野 くるみ:「はあい」
藁科 サイカ:よいしょと手を伸ばして、幸音から引き剥がすように軽く腕を引く。
葛野 くるみ:「って、きゃー、何々?」楽しそうに腕を引かれる。
藁科 サイカ:「誰か一人で満足しなさい。じゃないと怖いリーダーに怒られるよ」
藁科 サイカ:「それからリーダーも」と、首と視線だけを輪花へ向け
椿尾 輪花:「はい。何かご意見が?」
藁科 サイカ:「俺は基本的に、リーダーの提案する法に賛成するよ。俺の理想にかなり近い」
藁科 サイカ:「けど、法っていう言い方は嫌だな。法だと罰則が伴うみたいじゃないか」
藁科 サイカ:「暗黙の了解とか、約束事とかそれくらいにふわっとして、な」
葛野 くるみ:「………」サイカくんの腕の中でじっとサイカくんを見上げている。
椿尾 輪花:「ふわっとしたものに、あなたの腕と同じくらいの力があれば良いんですけどね」
藁科 サイカ:「なぁなぁで行こうよ、気を抜いてさ。……これ以上厳しく締め付けて」
藁科 サイカ:「人を失うのは、お互いに嫌だろ」
椿尾 輪花:「そこは同意見です。……良いですか、葛野さん」
葛野 くるみ:「あたし?」
四条 幸音:「君だよ」
葛野 くるみ:「うふふ」ニコニコとしている。
椿尾 輪花:「あなたの価値観を手取り足取り矯正することは、誰にもできません。あなたが起こすことの全てに先回りすることも」
葛野 くるみ:「うん、うん」コクコクと頷く。
椿尾 輪花:「だからと言って、あなたを縛り付けることも……」 少し俯き 「本意ではない」
四条 幸音:俯いた椿尾をじっと見つめる。
椿尾 輪花:「じゃあ、あなたがこれから……昨日までと、今日から。どのように振る舞いを変えるべきか、分かりますか?」
葛野 くるみ:「……んーー」ぱちぱちと瞬きして。
葛野 くるみ:「劇団の男の子とヤらないのと、えっと…良い子にしてってことでしょ?」
藁科 サイカ:「あははは……」苦笑いしながら腕を解いて、葛野を解放した。
葛野 くるみ:「あ、合ってる? ご褒美にハグして!ハグ!」
葛野 くるみ:両手を広げてサイカくんに飛び込んでいく。
椿尾 輪花:「一応断っておくと、女子ともです。あと、別に1対1で関係を持つなら止めませんから……」
椿尾 輪花:「……聞いてないし」
四条 幸音:「……いつまで聞いてくれるかなあ」
藁科 サイカ:「はいはい」腕を広げて
藁科 サイカ:軽いハグと共に、耳元に唇を寄せる。
藁科 サイカ:「────────」
葛野 くるみ:「………………ふふっ!」抱き着きながら、くすくすと笑っていた。
藁科 サイカ:「約束してくれないと怒っちゃうぞ、俺も」
椿尾 輪花:「この場は終わりにしましょうか。四条さんも藁科さんもお疲れさま。ごめんなさいね、呼び立ててしまって」
葛野 くるみ:その言葉に、場が解散となり。皆が帰ろうとしている中で、
葛野 くるみ:一番後ろにいた幸音ちゃんの袖を引く。
四条 幸音:「葛野?……なに?」
葛野 くるみ:「あのさ、あたし、ほんとに幸音ちゃんが、男の子と付き合って、幸せになってくれたらすごい良いなーって思って…」
四条 幸音:「……うん」
葛野 くるみ:「だからその…うーん、間違えちゃって、ごめんね」
葛野 くるみ:「あたし、ほんとに幸音ちゃんと仲良くしたくて…」
四条 幸音:「……まったく、もう」
葛野 くるみ:「仲良くしてくれる?」
葛野 くるみ:吊り目がちの瞳で、おずおずと見つめる。
四条 幸音:「僕たち、劇団の仲間だろ」
四条 幸音:「そんなに怖がらなくても仲良くするよ、それなりには」
葛野 くるみ:「それなりなんて、嫌だよーっ」そう言いながら、嬉しそうに抱き着いた。
四条 幸音:「……相手は選びなって、ほんとに」
GM:シーン終了。
【OP/葛野くるみ・椿尾輪花】
GM:シーンPC 葛野くるみ 椿尾輪花
GM:登場侵蝕は不要です。
椿尾 輪花:……"ラオペ"は。
椿尾 輪花:ようやく再始動を果たそうとしている。これは私のセルであり、私の居場所であり、私の価値である。
椿尾 輪花:家である。盾である。剣である。……劇団である。
椿尾 輪花:そのすべてであることに価値を見出しているからこそ、手を尽してこれを守った。よってセルリーダーである私はまだ、生存を認められている。
椿尾 輪花:だが、"次"はない。少なくとも、今のうちは。
椿尾 輪花:輪を乱してはならない。成果を出さなければならない。
椿尾 輪花:……ビルの地下室。数時間前、四人が集まっていた応接間。
椿尾 輪花:壁際に立ち、火の点いた煙草を咥えて、呼び出した彼女を待っている。
葛野 くるみ:ノックもせず、ガチャッとドアが開く。その無遠慮さに相反して、恐る恐る顔だけ先に覗かせる。
椿尾 輪花:漂う煙は仄かに甘い香りがする。来訪に気付き、携帯灰皿にそれを押し込む。
葛野 くるみ:きょろきょろと室内を見渡して。「……あ!輪花ちゃん。来たよ!」パッと笑う。
椿尾 輪花:「大丈夫でした? 急に呼んで」
葛野 くるみ:「うん、今日は何も無かったしー。なになに?」
葛野 くるみ:「あたし、また何かやらかしてた…?」バツが悪そうな顔。
椿尾 輪花:「そう。劇団内の男子と寝ることを禁じたから……外の人にでも会いに行ってる所かと」
椿尾 輪花:静かにソファへ腰を下ろす。視線だけで葛野さんにも座るよう勧める。
葛野 くるみ:「えー、えへへ」分かりやすい誤魔化し笑いを浮かべながら、視線を受けて、ソファの向かいに座る。
椿尾 輪花:「図星か。……不和をもたらさないなら止めない、って言いたい所だけど」
椿尾 輪花:「あなたの判断基準、信用なりませんからね。まさしく今日話した通り」
葛野 くるみ:「劇団の男の子じゃないなら良いって感じの話だったじゃーん…」目を逸らして足をぱたぱたと動かす。
椿尾 輪花:「我慢はならないものなんですか。そういう風に誰かと関係を持つのは」
椿尾 輪花:「依存症ならそういうクリニックがありますけど」
葛野 くるみ:「えー、治さなきゃいけないやつなの?」
葛野 くるみ:「あたし、いろんな人と仲良くなって、気持ちいいことして、幸せだねーってしてるだけだよ」
椿尾 輪花:「間違いなく私は楽です。……四条さんや藁科さんも、そういうのは当然のこととして自制しているでしょうから、その方が仲良くはなりやすいんじゃないでしょうか」
椿尾 輪花:「普通はいろんな人と仲良くなって気持ちよくならないんですよ。おわかりです?」
葛野 くるみ:「えー……」身をよじる。身を動かすと、香水が香る。二人きりの空間では、余計に甘い香りが目立つ。
葛野 くるみ:「わかんない……」
椿尾 輪花:ゆっくりと呼吸する。灰に残った煙が、甘えるように漂う香水の香りを追い返す。
葛野 くるみ:「でも、幸音ちゃんともサイカくんとも仲良くなりたいしなー……」
椿尾 輪花:「だったら普通に仲良くすれば良いんです。お茶でもして、お喋りして」
椿尾 輪花:「寝るのはナシで」
葛野 くるみ:「ええ~~!?」駄々をこねる子供のように、ソファにごろんと転がる。
葛野 くるみ:「なんでえ?迷惑かけないよ、劇団の皆にはさ」
椿尾 輪花:わずかに細めた目でその顔を見る 「……あなたがセックス好きなのは分かりました」
椿尾 輪花:「多分それを無理くり止めた所で、あなたは嫌な気持ちになることも」
葛野 くるみ:「うーん……」唸っている。
椿尾 輪花:「現実、嫌なことを強いるつもりはないんです。私だってあなたと仲良くしていたい」
椿尾 輪花:……それは、彼女がセルの活動の面でも、劇団の活動の面でも、花形と言うに相応しい力を持っているから。
葛野 くるみ:「えーっ、本当? あたしも輪花ちゃんと仲良くしたいよー」
椿尾 輪花:「じゃあでも、私のお願いは聞いてくれないんですね?」
葛野 くるみ:「ええっ」叱られた子供のような顔。
椿尾 輪花:表情を見れば分かる。悪意ありきではない、。
椿尾 輪花:悪意ありきではない。サイコパスでもない。短慮なだけなのだ。
葛野 くるみ:「そ、そういうことじゃなくて…。うーん、どうしよう…。 ヤるの禁止令…?」
椿尾 輪花:だから分かる。この手合いに口約束をした所で、いずれ下らない理由で都合よく忘れ去られてしまうものだ。
椿尾 輪花:であれば。 「……そんなに困った顔をしないで」
椿尾 輪花:ソファを立つ 「言った通り、私もあなたと仲良くなりたい。あなたの嫌なことはしたくないの」
葛野 くるみ:「うん。ねー、輪花ちゃん。あたしどうしたらいい?」寝そべったまま、彼女の顔を見上げる。
椿尾 輪花:「だったら代わりに……こういうのはどうでしょう」
椿尾 輪花:頬に手を添えて、上から見下ろす。長く細い黒髪が流れかかる。
椿尾 輪花:「あなたに……」
椿尾 輪花:「……監視をつける」
葛野 くるみ:「…」長い髪がカーテンのように、視界を遮って。あなたの顔を見つめる。
葛野 くるみ:「か、監視……?」
椿尾 輪花:イージーエフェクト《まだらの紐》です。彼女の影に私の影を端末として潜り込ませ、その挙動を監視できるようにします。
椿尾 輪花:「そう。あなたがどこで、誰と……何をしているか」
椿尾 輪花:「それが分かれば、私はフォローしてあげることができる。葛野さんは自由のまま。私も、困ることを減らせる」
葛野 くるみ:「ヤバッ!プレイじゃん」
葛野 くるみ:「でもそれ、輪花ちゃんがあたしのこと助けてくれるってこと?」
椿尾 輪花:「そうね。困ったことが起きてもすぐ分かるようになる」
椿尾 輪花:優しげな眼を作って、彼女の瞳を覗き込む 「助けられるようになります。どう?」
葛野 くるみ:嬉しそうに目を細める。香水の匂いは体温に混じって、より深く甘い香りとなってあなたの鼻腔をくすぐる。
葛野 くるみ:「ちょー嬉しい! いつも見ててくれるってことでしょ?」
椿尾 輪花:「そうなります。あなたが嫌じゃなければ……」
葛野 くるみ:「…あ、でもさ」
葛野 くるみ:「あたしが1人でいる時のことも輪花ちゃんにバレちゃうんでしょ?」
椿尾 輪花:「……? それは嫌?」
葛野 くるみ:「いや、だってさー…。トイレとかさー…、あとあの……」
葛野 くるみ:恥ずかしそうに言う。「オナッてるの分かっても内緒にしててくれる?」
椿尾 輪花:くすりと笑う 「分かりました。じゃあそういうのは聞かないようにする。そういう風にできますから」
葛野 くるみ:「うわっ恥ず~~! でも良かった! ありがとね!」足をパタパタと跳ねさせる。
椿尾 輪花:「誰かと会う時だけ、気を配るようにします。それでどう?」
葛野 くるみ:「うん。誓いのキスする?」
椿尾 輪花:「ごめんね、そういうのは結婚する時まで取っておきたいから」 ちょっと笑って
椿尾 輪花:「目だけ閉じて?」
葛野 くるみ:「はあーい」嬉しそうに、素直に瞼を閉じる。
椿尾 輪花:頬に触れた手から、黒い糸のようなものが伸びる。触れることもできない、質感のない影の糸だ。
椿尾 輪花:冷たい眼差しでそれをそっと、彼女の髪に紛れ込ませる。きらきらとした銀の髪、その影に。
椿尾 輪花:《まだらの紐》を使用。
椿尾 輪花:椿尾輪花の侵蝕率を1増加 (38 → 39)
椿尾 輪花:また穏やかな眼を作る 「……もう良いわ」
葛野 くるみ:ぱちっ、と目を開く。「え、何なに?」
葛野 くるみ:「なんかした?」
椿尾 輪花:「なんかした」 くすりと笑って 「でも大丈夫。気にしないで」
椿尾 輪花:「気にならないで済むようにしたから」
葛野 くるみ:「したんじゃん」けらけらと笑う。「こっわーーー」
椿尾 輪花:「良いって言ったじゃない」 笑いながら離れる 「……用事はこれだけ。ありがとうね」
葛野 くるみ:「あ、終わり? えー、怒られるかと思ってたー。良かった」
椿尾 輪花:「それは昼に済ませたから」
葛野 くるみ:「そうじゃん!」また笑う。「ね、輪花ちゃん。あたし、女優としてもえらいよね?」
椿尾 輪花:「女優としても?」
葛野 くるみ:「そう! あたし、エージェントとしても結構頑張ってるでしょ? それで」
葛野 くるみ:「女優としてもさ。結構やってるから。今度、劇団で集合するじゃん。あれでさ、あたし、良い役もらえるといいなーって思ってて…」
葛野 くるみ:「輪花ちゃん。あたしのこと、どう思う?」瞳があなたを捉える。
椿尾 輪花:……才気に溢れて、自由奔放で、いつも明るく笑っていて、人と肌を重ねる時すら楽しそうで。
椿尾 輪花:甘ったるい匂い。僅かに鼻を鳴らし。
椿尾 輪花:「もちろん」
椿尾 輪花:(……この子)
椿尾 輪花:「偉いと思っています」
椿尾 輪花:(死んでくれないかなあ……)
【OP/葛野くるみ・御薗橋七葉】
GM:OP シーンPC 葛野くるみ 御薗橋七葉
GM:御薗橋さんのみ登場侵蝕をお願いします。
御薗橋七葉:32+1D10
DoubleCross : (32+1D10) → 32+10[10] → 42
御薗橋七葉:劇団の拠点、稽古場の隅。
御薗橋七葉:階段の下のそこには自動販売機の横に幾つかのパイプ椅子が設置され、簡易的な喫煙所兼休憩所のように扱われていた。
御薗橋七葉:小窓から一筋の光が差し込み、きらきらと埃の粒子を照らしている。
御薗橋七葉:その光から逃れるように、薄暗がりの中。椅子のひとつに長い脚を持て余すようにして座っているのは、長身の女。
御薗橋七葉:黒の短髪に分厚い眼鏡。女性的な、しかしやや不健康に痩せ過ぎた肢体を包むのは、タートルネックにジーンズというシンプルな装い。
御薗橋七葉:漂ってくるのはアルコールと煙草の匂い。度数だけ高い安物の缶チューハイを膝の間に挟み、タブレットを見ながら紫煙をくゆらせている。
葛野 くるみ:長い銀髪をなびかせて、甘い香水の匂いを漂わせながらそこを通りかかる。
葛野 くるみ:「…あっれーーー、こんなところで何してるの~?」わざとらしく首をかしげて笑う。
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:ほんの一瞬そちらを見て。
御薗橋七葉:また視線を戻し、タブレットを見ながら酒缶を傾ける。
葛野 くるみ:「無視しないでよー」ミニスカートから、白い太腿が覗く。
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:「……何」
御薗橋七葉:ハスキー気味の声。明らかに嫌そうな。
葛野 くるみ:大股に、あなたの前に歩み寄ってきて、自動販売機にもたれかかる。
葛野 くるみ:「挨拶?」
葛野 くるみ:「コミュニケーション、だよ。普通じゃん? 同じ劇団員なんだもん」
御薗橋七葉:「普通、ね」
御薗橋七葉:タブレットのスリープ音が微かに鳴る。
御薗橋七葉:ぐい、と酒を飲み干して。
御薗橋七葉:「あんたにも『普通のコミュニケーション』なんて概念があるわけ?」
葛野 くるみ:「えーっ、ひどくない? あるある」
葛野 くるみ:「ねーねー、それお酒? あたしも飲みたい」
御薗橋七葉:「ニンフォマニアが良く言うわね」
御薗橋七葉:「そのうえ未成年でしょ、あんた」
葛野 くるみ:「ニンフォ…? って何?」
葛野 くるみ:「いいじゃん。ひとくちちょーだい」
御薗橋七葉:「もう空」
御薗橋七葉:「あんたの歳が昔言ってた通りなら、やってもよかったけど」
葛野 くるみ:「あー。あはは、あたし七葉ちゃんと付き合ってた時、年齢詐称してたもんね」
葛野 くるみ:「なんて言ってたんだっけ? 17くらいだっけ?」
御薗橋七葉:舌打ちをする。
御薗橋七葉:「そうよ」
葛野 くるみ:「あの時はごめんね、七葉ちゃん」
葛野 くるみ:「許してくれる?」身を屈めて、視線を合わせる。
御薗橋七葉:「……」視線が一瞬交錯する。
御薗橋七葉:ぐい、と大儀そうに立ち上がり、回り込むようにして。
御薗橋七葉:ガン!
御薗橋七葉:壁に手を付き、葛野に覆いかぶさるようになる。
葛野 くるみ:「………ん~?怒っちゃった~?」無防備にそれを受け止め、笑みを浮かべたまま見上げる。
葛野 くるみ:「ホント短気。直した方が良いよ?」
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:首元に頭を寄せる。吐息の掛かる距離。すん、と匂いを嗅いで。
御薗橋七葉:「……男の匂い」
御薗橋七葉:「それも一人じゃない」
葛野 くるみ:「だったら~?」
御薗橋七葉:「…………気持ち悪い」
葛野 くるみ:「あっは!」
葛野 くるみ:跳ね返すように笑い飛ばす。
御薗橋七葉:「本当に、少しも変わってない。あの時から」
葛野 くるみ:「良かったね、七葉ちゃん。昔っから、あたしはあたしのままだよ」
葛野 くるみ:ブルゾンのポケットに突っ込んでいた手をするりと動かし、立てた人差し指であなたの腰をするすると撫でる。
葛野 くるみ:「…ね、いま、想像しちゃった?」
御薗橋七葉:「…………」すぐ近くから漂う香水の匂いで、気分が悪くなる。顔を顰める。
葛野 くるみ:「あたしが男の子にどんなことするか、七葉ちゃん知らないでしょ」
御薗橋七葉:「……一度聞いてみたかったんだけど」
葛野 くるみ:「なあに」
御薗橋七葉:「どうして私と付き合ったわけ」
葛野 くるみ:「ん~~~?」
葛野 くるみ:腰をするすると撫でる指が上に上がっていき、
葛野 くるみ:両腕を伸ばして首に絡みついていく。
葛野 くるみ:濃厚な甘い香り。
葛野 くるみ:「ちょーほっそい。羨ましー」
御薗橋七葉:「答えなさいよ」
御薗橋七葉:怒りと苛立ちと、僅かに焦りが滲む声。
葛野 くるみ:「やぁだ」囁く。
葛野 くるみ:腹部と腹部が重なり、柔らかい感触を生む。
葛野 くるみ:「教えたら、七葉ちゃん、満足しちゃうでしょ」
御薗橋七葉:「……クソ女」
葛野 くるみ:「ね、まだあたしのこと好き?」
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:顔を顰め、振り払うように身を引く。
葛野 くるみ:「きゃっ」身を引かれる。
御薗橋七葉:パイプ椅子に置いたままだったトートバックからひとつの紙束を取り出して、叩き付けるように投げ渡す。
葛野 くるみ:「えー、なにー?」
御薗橋七葉:「読んどきなさい」
御薗橋七葉:「次のホンよ。あたしが書いた」
葛野 くるみ:「えーっ、七葉ちゃん音読してくれないのー?」
御薗橋七葉:「自分で読め」
葛野 くるみ:「ひどーい!でもありがと」にこりと微笑む。「あたしのために書いてくれたんだね」
御薗橋七葉:「……」その笑みを受け止めて。「そうよ」
葛野 くるみ:その返事を聞くか聞かないかのタイミングで、大きく足を踏み出して、
葛野 くるみ:あなたを床に叩きつけるようにして押し倒す。
御薗橋七葉:「……ッ……」
葛野 くるみ:馬乗りになるようにして、その顔を覗き込み、
葛野 くるみ:あなたの口内に自分の指を突っ込む。
葛野 くるみ:そのままぐちゅぐちゅと搔きまわした。
御薗橋七葉:「え、ぅ」
御薗橋七葉:一瞬目を見開いて。
御薗橋七葉:それから、がり、と強く歯を立てる。
葛野 くるみ:「え、何? 反抗?」
葛野 くるみ:「ご褒美だよ、七葉ちゃん」
御薗橋七葉:「……!」
御薗橋七葉:身体の下から睨み付け、頬に思い切り平手打ちを見舞う。
葛野 くるみ:「いった!」平手打ちを見舞われて、そのまま指を離す。唾液が糸を引いた。
御薗橋七葉:「……確かに」
御薗橋七葉:「これはあんたを主演に当て書きした脚本よ」
御薗橋七葉:「でもね」
御薗橋七葉:押しのけるように立ち上がる。
御薗橋七葉:「さっきの質問の答えを言うわ」
御薗橋七葉:「あんたなんて、大嫌い」
御薗橋七葉:踵を返し、その場を後にした。
葛野 くるみ:「………ほんと、七葉ちゃんって」それを見送りながら言う。
葛野 くるみ:「きっもちわるーーーい……」悩ましげに。
GM:シーン終了。
【Middle1】
GM:ミドル1
GM:合流シーンです。全員登場。
御薗橋七葉:42+1D10
DoubleCross : (42+1D10) → 42+10[10] → 52
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を1D3+3(→ 4)増加 (42 → 46)
四条 幸音:四条 幸音の侵蝕率を1d10(→ 3)増加 (37 → 40)
御薗橋七葉:助けてくれ
葛野 くるみ:葛野くるみの侵蝕率を1d3+3(→ 4)増加 (45 → 49)
椿尾 輪花:椿尾輪花の侵蝕率を1d3+3(→ 5)増加 (39 → 44)
葛野 くるみ:助けてあげようか~?
藁科 サイカ:生き急ぎすぎじゃない?
四条 幸音:興奮しちゃってる
劇団ラオペ 稽古場
GM:桜の蕾も膨らみ始める春の日。劇団ラオペの面々は、拠点である稽古場に集まっていた。
GM:半年前から随分数を減らしてはいるが、それでも復活公演に向け、現状のほぼ全員が顔を揃えている。
座長:「柳田くんは欠席の連絡があったから、これで全員かな」
座長:三十代半ばの、小太りの男が口を開く。表向き劇団の座長を務めている男。
座長:非オーヴァードではあるが、セルのことに関しても一通り把握している。
葛野 くるみ:「はあーい!いまーす」ニコニコと手を挙げる。
椿尾 輪花:にこにことメンバーと談笑していたが、座長が声を上げればそちらに目を向ける。裏ではセルリーダーでも、ここではちょっと歴のある一団員に過ぎない。
椿尾 輪花:「そうですね。現メンバーは一通りは揃っています」
四条 幸音:周囲を見渡している。 全員集まっているのに、随分広く感じる。
御薗橋七葉:座長の傍らで静かに目を伏せている。
藁科 サイカ:「やぁ、壮観壮観。やはり皆で集まるのは良いものだ」
藁科 サイカ:一般メンバーの前でも、言葉の調子は変わらない。
葛野 くるみ:「そーかんそーかーん」
葛野 くるみ:体育座りしてニコニコしている。
座長:「みんな良く集まってくれたね。まずは何より、こうして無事に再会できたことを嬉しく思います」
GM:一般の劇団員からも拍手や喜びの声が上がる。
葛野 くるみ:「ひゅーひゅー」ポフポフと手を叩いている。
四条 幸音:「ああ、なにより。それで、座長」
四条 幸音:「今日集まったのは、今後の活動についての話……で良いんだよね?」
四条 幸音:「まずは直近の復活公演かな」
座長:「ええ、そうですね。挨拶はこの辺にして、皆さんお待ちかねの本題に入りましょう」
座長:「今回の舞台は、御薗橋さんが脚本から手掛けてくれましたので、お話はそちらから。お願いします」
御薗橋七葉:「はい」
御薗橋七葉:ゆっくりと立ち上がり、冊子を取り出して配っていく。葛野が渡されたものと同じだ。
御薗橋七葉:「今回の演目は『シルヴェストル』。ご存知の方も多いでしょう」
GM:『シルヴェストル』。所謂古典として度々舞台の題材となる戯曲だ。
GM:伯爵家の後継であるシルヴェストルと養子であるフェリクスは、身分の差がありながら仲睦まじい双子のように育つ。
GM:二人は共に騎士となり、シルヴェストルをフェリクスが支える形で次々と武勲を挙げていく。
GM:だがシルヴェストルは、敵将ギヨーム公の策略で命を落としてしまう。
GM:地獄を彷徨うシルヴェストルは、悪魔リュシエラの導きで再び現世に舞い戻る。
GM:だがそこでシルヴェストルが目にしたものは、自らに代わって家督を継いだフェリクスの姿だった。
御薗橋七葉:「筋は概ねそのまま、各所にアレンジを施してあります。各自で目を通しておいてください」
藁科 サイカ:冊子を受け取り、ぱらぱらと捲る。《写真記憶》。それだけでもう、台本は頭の中に残り、
藁科 サイカ:「……楽しみだ!」
藁科 サイカ:「ああ、この面々でまた舞台に立てるなんて……感涙にむせび泣きたいところだとも!」
椿尾 輪花:「いいですね」 微笑する 「復活公演によく合っていると思います」
藁科 サイカ:「ところで、座長に七葉さん。配役は、これは……」
御薗橋七葉:「ええ」頷き
葛野 くるみ:「幸音ちゃんー、あたしどの役だと思うー?」勝手に雑談を始めている。
四条 幸音:「こら、まだ僕も読んでる途中……君の役? 君の実力ならそりゃ……」
御薗橋七葉:「まずフェリクス。これは椿尾さんにお願いします」
椿尾 輪花:「はい。ありがとうございます」 粛々と頷く
藁科 サイカ:「…………へぇ」フェリクスの配役を聞き、唸るように呟く。
葛野 くるみ:「おーっ、輪花ちゃーん」パチパチと拍手。
御薗橋七葉:メインから脇役まで、次々と配役を言い渡していく。
御薗橋七葉:「敵将ギヨーム公を演じて貰うのは、藁科さん」
葛野 くるみ:「え?何?どの役?」
藁科 サイカ:「任せたまえ。憎らしげに歌い上げよう!」
葛野 くるみ:「あはは、カッコよさそー!」幸音ちゃんの返事を聞かず、パチパチとまた拍手。
椿尾 輪花:微笑のまま会釈するような頷きを周囲に返す
四条 幸音:「主役か敵役か、どっちかのメインだと思うけど。ギヨーム公が藁科なら……」
御薗橋七葉:「次。悪魔リュシエラをお願いするのは、葛野さんです」
四条 幸音:「……ん、あれ?」
葛野 くるみ:「……あっ、あたしー!はーい!」
四条 幸音:「……シルヴェストルじゃないんだ。てっきり葛野がやるのかと思った」
椿尾 輪花:(あら……) 四条さんと似たような疑問をかすかに持つが、表には出さない
葛野 くるみ:「たのしみー」目を細めながら、立てた人差し指を口内に突っ込むようにして、にやりと笑う。
御薗橋七葉:「……最後に、シルヴェストルを演じて貰うのは四条さんです」
四条 幸音:「……えっ?」
四条 幸音:思わず大きな声で聞きかえす。
四条 幸音:「ちょ、ちょっと」
葛野 くるみ:「へえーー」ニコニコしている。
葛野 くるみ:「幸音ちゃん、主役じゃーん」
御薗橋七葉:「……何か?」
四条 幸音:「待ってください。主演が……」
四条 幸音:「僕……ですか?」
御薗橋七葉:「そうです」
四条 幸音:「いや、そうです、って……!」
四条 幸音:思わずガリガリと腕をかきむしる。
葛野 くるみ:「なんで~?」腕を絡ませるようにして抱き着く。「喜ぶとこだよ~!」
GM:周囲の劇団員からは、やはり意外そうな反応と、四条を祝う声が半々程度。
椿尾 輪花:「そうですね。私も喜んで良いと思いますよ」
椿尾 輪花:「不安ですか?」
四条 幸音:「それは……だって、」
藁科 サイカ:「……………………」記憶した筈の台本を、また改めてページを捲り、
藁科 サイカ:「幸音」
藁科 サイカ:「俺も、この配役は素敵だと思うよ」
四条 幸音:「でも……!」
御薗橋七葉:「四条さんが相応しいと思ったから配役しました。それ以上でも以下でもありません」
藁科 サイカ:「七葉女史の新解釈は興味深いものがある。読み進めれば分かるさ、幸音」
椿尾 輪花:「そうですね。御薗橋さんの差配があった以上、何もせずに止めてしまうのは勿体ないです」
藁科 サイカ:「俺としてはむしろ、フェリクスとリュシエラの配役に、そう来たかと思ったよ」
椿尾 輪花:「あら。そちらの配役に?」
藁科 サイカ:「普段演じる役柄のイメージなら、二人が逆かなと思ってね」パチン、とウィンクをしながら椿尾へ、
藁科 サイカ:「人を誘う悪魔なんて、輪花の似合い役だと思ったんだ」
椿尾 輪花:「あらあら。私ってそんなに怖いですか? ……元より、演技とは違う人物になるものですから」
葛野 くるみ:「あたしちょー健気な役もできるからねー」サイカくんの言葉に乗るようにして言う。
藁科 サイカ:「くるみは、なんでも出来るだろう。けど、ああ……かわいげのある役が印象深いな」
四条 幸音:「……僕は、藁科や御薗橋と違って小柄だし。葛野みたいに華もない」
四条 幸音:「それでも、僕が主演ですか……?」
御薗橋七葉:「はい」
御薗橋七葉:それだけだ。あまりに簡潔な肯定。
四条 幸音:周囲を見回す。
四条 幸音:くっついてる葛野。こいつは天才だ。
四条 幸音:藁科は多分、誰よりも『演劇』にのめりこんでる。
四条 幸音:椿尾みたいな人を惹きつける色気だってないし……
四条 幸音:……でも。
椿尾 輪花:「イメージと違っていても、やってみれば見えてくるものがあるでしょう。そういうことを考えて下さるのも演出なんですから」
四条 幸音:「……分かりました」
椿尾 輪花:「何事もやってみてから。……ね?」 四条さんを見つつ
四条 幸音:「うん。……内容を一番知ってる人が僕がやるべきだって言うなら、やります」
四条 幸音:「……でも。やっぱりダメだって思ったら、切ってくれていいから」
四条 幸音:「全力は、尽くすけど……それでもよければ」
葛野 くるみ:「おーっ!かっこいいよ幸音ちゃん!」
藁科 サイカ:掌の音も強く、拍手を打ち鳴らす。
葛野 くるみ:「そうそう!無理だったら代役立てればいいしね!大丈夫だよ~」
椿尾 輪花:肯定へ追従するように拍手
GM:藁科につられるようにして、拍手が広がっていく。
四条 幸音:「……うぅ」
座長:「うん、配役はひとまずこれで決定ですね」
座長:「それでは、今日は一度解散にしましょう。明日から本読みに入るので、各自で目を通してきてください」
GM:その言葉に、劇団員たちがまばらに稽古場を出ていく。
藁科 サイカ:「ああ、ああ、実に楽しみだ!」仰々しい口ぶりと共に立ち上がり、舞台の袖へはけるように去っていく。
藁科 サイカ:去り際にちらりと御薗橋へ、視線を流すように向けながら。
四条 幸音:「あの。御薗橋……さん、ちょっと」
御薗橋七葉:「……はい?」顔を上げる。
御薗橋七葉:「何でしょうか」
四条 幸音:冷たい雰囲気に飲まれそうになりながら、顔を見上げる。 入ったばかりのこの女の子とはまだよくわからない。
四条 幸音:「配役の、ことですけど」
御薗橋七葉:「はい」
四条 幸音:「……いつから僕を主演にしようと?」
四条 幸音:「例えば、その……」
四条 幸音:ぎりぎりと、腕をかきむしる
四条 幸音:「本当は他に相応しい子が居た……とか、」
御薗橋七葉:「いつから?」
御薗橋七葉:「おかしなことを聞きますね」
御薗橋七葉:「脚本を書いている時、に決まっているでしょう」
御薗橋七葉:四条の、自らの腕をかきむしるその手を掴む。
四条 幸音:「っ……」
御薗橋七葉:「あなたは主演です」
御薗橋七葉:「身体に傷の残るようなことはしないように」
御薗橋七葉:「もし、まだ納得できないなら、お話しますが。ここでは何ですので」
御薗橋七葉:「後ほど、二人きりで」
四条 幸音:「……はい。すみません、でした」
御薗橋七葉:その顔を一瞥して立ち上がり、迷いのない足取りで去っていく。
四条 幸音:「……最悪」
四条 幸音:……何を言ってほしかったんだ。
四条 幸音:『その脚本を書いたのは、いつのことなのか』
四条 幸音:例えば、半年前の騒ぎで。居なくなったら誰かが
四条 幸音:本当は、その子の席だったんじゃないか?
四条 幸音:そんなことを聞いても、「そうだ」なんて言えるわけないのに。
四条 幸音:渡された台本を見る。輝かしい席、彼女達が立つ輝かしい席、自分は望んでいなかったと言い切れるのか。
四条 幸音:また腕をかきむしろうとして、止める。
四条 幸音:「……やってやる」
四条 幸音:奪った場所だなんて、言わせない。
---
GM:それから数十分後。
GM:劇団の大道具倉庫。普段は人気の少ないそこに、幾つかの人影があった。
GM:君達5人と、座長。ラオペのFHセルとしての顔を知る面々だ。
座長:「集まってもらってすいませんね」
座長:先程までと同じ、穏やかな物腰。
座長:「少し、話しておきたいことがありまして」
椿尾 輪花:「いいえ、いつもお疲れさまです。上々の再始動になったでしょう」
椿尾 輪花:セルとしての場になっても、柔らかな物腰は変わらない。ただ、部屋の上座には立っている
椿尾 輪花:「それで、ご用件は?」
座長:「上々……と、言えるかどうか」
座長:やや表情を曇らせる。
四条 幸音:「良いニュース……じゃ、ないのかな」
藁科 サイカ:「おやおや、それは全く運が無いな」
四条 幸音:「……藁科の運だけの話でもないでしょ」
葛野 くるみ:「えーっなになに?あたし何もしてないよ?」
四条 幸音:「葛野は昨日の今日でなにかされてても困る」
座長:「先程、大道具の柳田くんは欠席と言いましたね?」
GM:柳田。劇団員であり、セルメンバーでもある男だ。オーヴァードではあるが殆どリザレクトとワーディング程度しか出来ないため、セル業務への関わりは座長と同程度。
葛野 くるみ:「えっへー」へらへら笑う。「うん、言ってたねー。ざーんねん」
藁科 サイカ:「……次に会える日はいつだ?」
四条 幸音:「……なにかあったんですか」
座長:「……彼、実は今、大怪我をして入院中なんです」
椿尾 輪花:「怪我を」
椿尾 輪花:続きを促す
座長:「オーヴァードの彼が、です。それも、どうも誰かに襲われたようなんです」
葛野 くるみ:「死んではないんだー」
藁科 サイカ:「……………………」
四条 幸音:「誰か……」
座長:「命に別状は無いらしいんですが……しばらくは意識が戻らないだろう、ということで……」
藁科 サイカ:「……手がかりは?」
座長:「分かりません。警察に頼るわけにもいきませんし……」
四条 幸音:「UGNに見つかった、とか?」
椿尾 輪花:「UGNだとすれば、大人しく病院に放り込まれているでもないでしょうね」
葛野 くるみ:「普通に入院してんのなんかウケんね」
藁科 サイカ:「こら、くるみ」
葛野 くるみ:「あはー、ごめんなさーい」
座長:「はい。発見されたのも、路上で死にかけていたところですから。UGNなら逮捕されていたでしょうね」
椿尾 輪花:「事故か、あるいは作為か。判断材料はない、ですか」
藁科 サイカ:「……彼は、そう強力なオーヴァードじゃなかったよな」
藁科 サイカ:「それが〝リザレクト限界を超えるまで〟の状態になったってことか?」
椿尾 輪花:「まあ、限界にも個人差はありますからね。ただ、オーヴァードの手によらない攻撃であれば」
椿尾 輪花:「そもワーディングで逃れられる。オーヴァードの敵はオーヴァードだけです」
座長:「……余程長い間いたぶられたようでした。見ていられませんでしたよ」
座長:「単なる通り魔的犯行ならいいんですが……もう一つ、気がかりなことがあるんです」
葛野 くるみ:「えー、カワイソー。お見舞い行ってあげないとねー」
葛野 くるみ:「気がかりって何ー?」
座長:「ラオペに関する、よくない噂が広がっているんです。セルでなく、劇団のほうですが」
椿尾 輪花:片眉が上がる
藁科 サイカ:「おや」
御薗橋七葉:「……」ずっと興味のない顔をしていたが、ぴくりと眉を動かす。
葛野 くるみ:「えーー」目を細める。
四条 幸音:「よくない噂って、具体的には?」
四条 幸音:「半年前のこと……?」
座長:「いえ。ほとんどは噂やネットの書き込みで、客観的に信憑性も薄いんですが……」
座長:「内容が問題なんです」
椿尾 輪花:「どういった?」
葛野 くるみ:「あたし撮られてないよー?」
四条 幸音:「……やってないとは言えないわけ?」
葛野 くるみ:「やってるからなー」
座長:「ラオペのメンバーと口論になって、触れもせず気絶させられた、だとか。劇団員が目の前で大怪我をしたのに、何事も無かったように起き上がった、とか」
座長:「UGNの目に触れれば疑われるようなことが多くて。それから……」
座長:一瞬葛野に目をやり。
座長:「……内部の人間でなければ知らないような噂もあってですね……」
藁科 サイカ:座長の視線を追いかけるように葛野を見る。
御薗橋七葉:「……」不快そうに眉根を寄せる。
椿尾 輪花:「なるほど」
葛野 くるみ:「ちょっとちょっと!待ってよー、あたしホント気をつけてるってばー」
葛野 くるみ:「ヤッてるときに動けなくなってヤバくなった時はちゃんとすぐ報告してるもん」
四条 幸音:「……よくある中傷にしては具体的すぎるとか、そういうこと?」
藁科 サイカ:「盗撮の技術は進歩してるらしいからなぁ……って、そうじゃなくって」
藁科 サイカ:「そうだ、幸音の言うとおり。……オーヴァードの存在を知ってる奴じゃなければ、そんなピンポイントな噂は流せないだろう」
御薗橋七葉:「“ラオペ”を害そうとしている相手がいるかもしれないと」
椿尾 輪花:「そうですね。明白な悪意がある」
藁科 サイカ:「UGNの情報網は厄介だからな……もう俺達は睨まれてる、くらいには思った方が止さそうだ」
四条 幸音:「それに……葛野の素行も問題だけど、それよりも」
四条 幸音:「内部の人間じゃなきゃ、って……」
椿尾 輪花:「もっともありそうなのは、休止前後の件で切った元メンバー」
椿尾 輪花:「もちろん今この"ラオペ"の内部に裏切り者が潜んでいる可能性も無いとは言えないでしょうね」
御薗橋七葉:周囲に視線を巡らせる。
藁科 サイカ:「仲間割れは良くないという手痛い学びを得られたかも知れないな、俺達は」
葛野 くるみ:「ヤバー。敵の人いますかー?」けたけたと笑う。
四条 幸音:「居たとしても言うわけないでしょ……」
座長:「ま、まあ、今すぐこの場で犯人捜しをしたいわけじゃないんだ」掌を振って
座長:「とにかく、僕達を狙っている誰かがいるかもしれないから、気を付けてってこと」
座長:「言いたかったのはそういうことです」
椿尾 輪花:「同意見です。向こうの打ってきている手も、まだ浅い」
椿尾 輪花:「こちらの動揺を誘う意図もあると思います。警戒は必要ですが、過剰に神経質になるのは敵の術中でしょうね」
葛野 くるみ:「そうだよね、幸音ちゃんも敵かもだもんね」
葛野 くるみ:「って、こういう事言うのがダメなんだよね。ごめんなさい!」
藁科 サイカ:「こら、くるみ」二度目。
椿尾 輪花:「葛野さん」 たしなめるように
葛野 くるみ:「あはー」
御薗橋七葉:呆れたように息を吐く。
四条 幸音:「……良いよ。葛野の場合、そうやって緊張感持ってくれてた方が良い」
藁科 サイカ:「……ひとまず、正体不明の敵が最低ひとりないし1グループ。加えて、」
藁科 サイカ:「その〝信憑性のない情報〟のせいで、UGNの調査もおそらく始まってる。本腰じゃあないだろうけど」
藁科 サイカ:「警戒度は、作戦行動前くらいには想定した方がいいか?」
四条 幸音:「少しでも妙な素振りは見せられない、ってことね……」
椿尾 輪花:「ええ。単独行動、人目のつかない場所、勘のない場所、その他イレギュラーな行動は避ける。するのであれば、事前に連絡を」
座長:「幸い今はセルの仕事も入っていませんから、とりあえずは留意しつつ、なるべく舞台に集中しましょう」
椿尾 輪花:笑って見せる 「そうね。こういう時のためのカヴァーだもの。しっかりと進めていきましょう」
藁科 サイカ:「ふむ、事前連絡か。……なら、そうだな」
藁科 サイカ:「リーダー」挙手
椿尾 輪花:「はい」
藁科 サイカ:「今度、くるみをデートに誘おうと思ってたんだけど問題は無いか?」
四条 幸音:「……は?」
葛野 くるみ:「えーっ!あたし~?」
御薗橋七葉:「……」藁科に目をやる。
椿尾 輪花:「はあ」
四条 幸音:「いや藁科、デートってあんた……」
葛野 くるみ:「なになに?」嬉しそうにサイカくんに飛びつく。「幸音ちゃんから浮気しちゃう?」
藁科 サイカ:「ははは、しないしない」
四条 幸音:「浮気ってなんだよ!藁科も、そこはしないじゃなくてそういうのじゃない、だろ!」
藁科 サイカ:「けど、しばらくブランクもあるからな。幸音の事は良く分かってるけど」
藁科 サイカ:「くるみや輪花とは、まだお互いの理解が足りない気がする。順番にデートに誘おうと思ってるんだ」
藁科 サイカ:まぁまぁ、と片手は幸音を宥めつつ、片手は葛野を受け止めつつ、
椿尾 輪花:「あら。私もですか。それは楽しみですね」
椿尾 輪花:面々の反応を見て 「私から止めることはありません。お二人とも能力は高いですし」
藁科 サイカ:「ありがとう。二人分、ロマンチックなデートコースを考えておくよ。……ああ、それと七葉さん」
葛野 くるみ:「いいもーん。あたしがサイカくんと二人きりのときは、サイカくん独り占めしちゃうもん」
御薗橋七葉:「……。……何でしょうか」
藁科 サイカ:「輪花の鋭さも怖いが、あなたも怖い。……ああ、才能の話だよ」
藁科 サイカ:「あの配役の妙! 俺じゃあまったく思いつきもしなかった!」
藁科 サイカ:「機会があればゆっくりと、演劇論でも語り明かしたい──と、賞賛したかった。それだけさ」
御薗橋七葉:「そうですか」
葛野 くるみ:「七葉ちゃん、絶賛じゃーん」目を細める。
御薗橋七葉:「別に、最適だと思える配役をしたまでです」
御薗橋七葉:「あなたならギヨームを、四条さんならシルヴェストルを最大限演じられると思った」
御薗橋七葉:「それだけです」
椿尾 輪花:「ふふ。稽古が楽しみね」
藁科 サイカ:「光栄だ。……ちなみに、七葉さん自身は」
藁科 サイカ:「あなたは今、どの配役なのかな」
御薗橋七葉:「……私?」
御薗橋七葉:「私は出ませんよ」
御薗橋七葉:「私はあくまで演出家ですから」
藁科 サイカ:「誰しも皆、生きているからには役者なのだよ」
藁科 サイカ:「そして俺はこの場面、十分に浪々と歌いきった。故にどなたかに舞台の中央を譲り渡して」
藁科 サイカ:「颯爽と下手へ向かおうと思うけれど、誰か次の主役希望はいるかい?」
椿尾 輪花:「……つまりこの場で何か確認したいことがある人が他にいるかと」
椿尾 輪花:「そういうことです。どうですか?」
四条 幸音:「相変わらず、言ってることがわかりにくい」
御薗橋七葉:「……シェイクスピアが好きなことしか伝わりませんでしたが」
座長:「あはは……」苦笑する。
葛野 くるみ:「超かっこいいのにねー」けらけらと笑っている。
四条 幸音:「僕からは特になし……いや、」
四条 幸音:「座長……椿尾も。確認だけど」
椿尾 輪花:「はい。どうぞ?」
座長:「どうしました?」
四条 幸音:「UGNや誰かわからない敵が居るなら、今はちょっとでも疑われるようなことはできない……だったら」
四条 幸音:「今度の公演も、失敗できないってことだよ、ね」
椿尾 輪花:「あら」「私は公演、いつだって失敗できないものだと思っていますけど?」
四条 幸音:「……そうだね。ごめん。僕が甘かった」
椿尾 輪花:くすりと笑って 「あまり不安がらないで。いつも通りで良いのよ」
座長:「ええ。そしてその為には、劇団の全員が揃っていなければいけませんから」
座長:「力を合わせて頑張りましょう!」熱っぽく握りこぶしを作る。
椿尾 輪花:「ええ。一緒に頑張りましょうね、座長」
四条 幸音:安心させるような椿尾の笑みに薄ら寒いものを感じ。
四条 幸音:「分かってる。……全員、無事に乗り切ろう」
GM:斯くして、“ラオペ”は再始動に向け動き出した。
GM:開演のベルは、まだ遠い。
GM:シーン終了。
GM:ではここで、ミドルシーンのシーン権行使の順番を決めようと思います
GM:1D100で判定し、出目が大きかった人から順番に1~5番目までを選ぶことができます
GM:ということで判定どうぞ!
四条 幸音:1d100
DoubleCross : (1D100) → 71
椿尾 輪花:1d100
DoubleCross : (1D100) → 96
葛野 くるみ:1d100
DoubleCross : (1D100) → 45
御薗橋七葉:1D100
DoubleCross : (1D100) → 53
藁科 サイカ:1d100
DoubleCross : (1D100) → 60
椿尾 輪花:勝ちに行っちゃったな
椿尾 輪花:3番目にしましょう
GM:では椿尾さんから!どこを取りますか?
GM:3番!
GM:続いて四条さんです
四条 幸音:あーっとなると……
四条 幸音:1番もらいます
GM:ほう……
GM:意外な選択ですね
GM:少し掛かっているかもしれません 大丈夫でしょうか
椿尾 輪花:4番 息を入れるタイミングがあれば良いのですが
四条 幸音:大逃げしていきます
GM:では藁科さん!
藁科 サイカ:2番!
GM:2番ね!
GM:次に御薗橋さん
御薗橋七葉:5かな……
葛野 くるみ:ということで4番!
GM:では葛野さんが4番ですね
椿尾 輪花:順番まで総受け
葛野 くるみ:
1 四条
2 藁科
3 椿尾
4 葛野
5 御園橋
GM:あっありがたい
葛野 くるみ:私のインテリジェンスシステムによるとこういう順番だそうです
GM:そういうことになりました
藁科 サイカ:なんかバランスの良い感じな並びになった
四条 幸音:ありがとうございます!
椿尾 輪花:すさまじいシステムだ 32GBくらいある
【Middle first half/四条幸音】
GM:ではここで改めて今回のルールを確認していきます
四条 幸音:はい!
葛野 くるみ:オッス!
藁科 サイカ:ヤー
椿尾 輪花:聞きましょう
【ミドルシーン進行】
前半・後半で1回ずつ、計2回の『シーン権』が与えられる。
シーン権を持つPCは、シーンに登場させたい他PCを指名することが出来る。0人から全員まで、人数は自由。
シーンに登場しないPCは、その間サブシーンを行う。
また、クライマックスシーンに入るまで参加者・非参加者を問わず、見学席内で良いロールプレイに対してブーケを与えることが可能。
ブーケはメインシーン🌸サブシーン🌹に分けて与え、それぞれシーン内に登場している全てのPCが受け取ることになる。
ミドルシーン終了時、全ての登場シーンの合計獲得ブーケ数が最も多かったPC1名のみが、好きなPCを指名して時間無制限のエクストラシーンを行うことが可能となる。この際、サブシーンは発生しない。
GM:シーンPCは一緒に出たいPCを指名してください。
GM:この際に指名しなかったPC同士はがサブで一緒になってしまうことに注意しましょう
四条 幸音:私ですかね!
藁科 サイカ:怖いルールだ
椿尾 輪花:なってしまうて
四条 幸音:読み合いみたいになってる
【ロイス取得特殊ルール】
このセッションでは開始時に固定ロイスを1つしか保持することが出来ない。(Dロイスを取得している場合、Dロイスのみとなる)
ロイスの取得が可能なのは、ミドルフェイズのメインシーンのみ。
ロイスを取得する際、P/N感情のどちらかを秘匿しておくことが可能。この場合、原則ED終了までに自らのタイミングで公開することとする。
クライマックスシーンではジャーム化・『とどめを刺される』は発生しないが、侵蝕率が200%を越える、または全てのロイスを失うと、その時点で戦闘不能となる。
GM:ロイスの取り忘れは頻繁に見られるのでこちらも注意してください
葛野 くるみ:ロイスはひとりに対し複数個取得できるんでしたっけ
GM:そうですね 6個まで取れます 一応……
四条 幸音:前例がある
葛野 くるみ:重い感情のこれ以上ない体現
藁科 サイカ:なんで前例があるんだ
GM:また、今回はなんと情報収集ができます
四条 幸音:なんだって!?
葛野 くるみ:情報収集が…!?
【情報項目】
劇団
情報:噂話/FH
0/50
脱退メンバー
情報:噂話/FH/裏社会
0/50
市内他セル
情報:FH/裏社会
0/60
UGN
情報:噂話/UGN
0/60
椿尾 輪花:バカな……レズセックスしてればすべてが終わる卓ではなかったのか。
藁科 サイカ:累積型……?
GM:今回はだいぶ特殊な形式となっており
GM:達成値がそのまま累積していき、一定値を越えたところで情報が明かされる形となっています
GM:ただし、他PCとその情報を共有しないという選択が可能であり
GM:その場合、自分の稼いだ達成値は他のPCには累積されません。
椿尾 輪花:たいへんなことになってきたぞ
藁科 サイカ:つまり
藁科 サイカ:最後の1ポイントを自分で稼いで共有を拒否すると自分だけがそれを知ることができる……?
四条 幸音:情報ハイエナ
GM:そうなりますね 後から稼げば他の人も知れますが
藁科 サイカ:なるほど
藁科 サイカ:後から稼いで知ることができる
GM:ゲージは基本個別であって、共有した場合のみ他のPCにも同じだけ入るという考えが分かりやすいかな
四条 幸音:えっ……みんな
四条 幸音:隠し事なんてないよね……?
藁科 サイカ:でも累積型とはいえ、項目4つの合計が220だからな……
椿尾 輪花:そうだぞ 沈黙なんて私が怪しいと告白するようなものだぞ
椿尾 輪花:擬態型かァ~?
四条 幸音:実際協力しないと情報抜けなさそうなとこはある
葛野 くるみ:フゥン……
GM:この情報収集はサブシーンでも行えます。なお、情報共有ロールは話の種になればいいという感じなので
GM:基本的にはこれに縛られずにやりたいことをやってください
四条 幸音:はーい
葛野 くるみ:はあーい
四条 幸音:省略したければ裏でさらっとやったことにして良いということですね
椿尾 輪花:情報などより大切なことがあるぜ
四条 幸音:場面は縛られず好きにしろと
GM:そういうこと!
葛野 くるみ:そうだ 俺達はレズセックスがしたい
GM:というわけでまずは最初のシーンPC,四条さんからです
四条 幸音:はーい!
GM:誰を指名しますか?
四条 幸音:藁科さんを指名します
藁科 サイカ:よろしい覚悟の上だ
GM:ではメインシーンは四条さん、藁科さん。サブシーンは葛野さん、椿尾さん、御薗橋さんになります。
GM:情報収集がある方はここでどうぞ
藁科 サイカ:なら、今どれか抜いてしまおう
四条 幸音:どれ行こうかな……
四条 幸音:これはメインサブ出てる人がやれるんですよね
藁科 サイカ:幸音に合わせるよ(まずどれかひとつを早めに抜いてみたい)
GM:全員できます
椿尾 輪花:とりあえず私は劇団について調べましょう。まずは身内よ……<情報;噂話>
葛野 くるみ:私も劇団でいこう 情報:FHで
葛野 くるみ:コネつかいまーす
四条 幸音:これ、ポイント累積させるかどうかはいつ宣言ですか?
四条 幸音:累積というか、共有というか
GM:えーとね
GM:判定後ですね
四条 幸音:了解!
葛野 くるみ:3dx+1
DoubleCross : (3DX10+1) → 10[2,10,10]+4[2,4]+1 → 15
葛野 くるみ:めちゃ回った!
四条 幸音:いきなり身内や元身内調べるのもちょっとだし、市内他セルについて調べようかな
椿尾 輪花:フゥン……
四条 幸音:情報:FHで調べます
四条 幸音:4DX+1+0@10 情報(FH )市内他セル
DoubleCross : (4DX10+1) → 9[2,2,4,9]+1 → 10
藁科 サイカ:では同じく劇団を。情報:FHだけど《生き字引》を使って意志判定にしつつAIDAと思い出の一品が乗るぜ
藁科 サイカ:7dx+5 劇団
DoubleCross : (7DX10+5) → 10[1,2,3,5,5,7,10]+3[3]+5 → 18
GM:オイオイ
葛野 くるみ:すごい
椿尾 輪花:コネ:噂好きの友人 を使用。さらにFHセルリーダーのエンブレム、バッドフレンド!
椿尾 輪花:8dx 対象は劇団!
DoubleCross : (8DX10) → 8[2,4,4,4,5,8,8,8] → 8
御薗橋七葉:3DX+4 脱退メンバー
DoubleCross : (3DX10+4) → 7[3,4,7]+4 → 11
GM:では各自に空いた情報を渡します
GM:その後で共有するか宣言してもらいます それで新しい情報が空いた場合は共有した全員に流れることになります
四条 幸音:はい!
GM:各自の情報を照らし合わせたら新しいことが分かったイメージですね
藁科 サイカ:ほほう
葛野 くるみ:どうしようかな
葛野 くるみ:いや 共有します~
藁科 サイカ:受け取りました。共有で
椿尾 輪花:共有しません
GM:ホホホ……
四条 幸音:リーダー……?
椿尾 輪花:?
御薗橋七葉:共有しません
椿尾 輪花:あらあら
葛野 くるみ:まあまあ
藁科 サイカ:罪人が二人いるぞ!
GM:では現在はこのようになりました
劇団
情報:噂話/FH
33/50
椿尾 41/50
脱退メンバー
情報:噂話/FH/裏社会
0/50
御薗橋 11/50
市内他セル
情報:FH/裏社会
10/60
UGN
情報:噂話/UGN
0/60
GM:公開していきます
GM:劇団
10/50
・劇団は演劇ファンから一定の評価を得ており、固定ファンが付いている。
復帰公演となる今回の舞台は、ファンからも大きく期待されているようだ。
小さな劇団らしくファンには団員の身内や知人も多く、中にはオーヴァードも含まれている。
GM:共有によって新しい項目が公開されます。
30/50
・劇団ラオペへの注目は密かに高まりつつあり、舞台以外の映像業界からも視線が集まっているようだ。劇団員の一部に、大手芸能事務所からスカウトがあったらしい。引き抜きに近い形であり、受ければほぼ脱退と同義であるだろう。
・情報の流れに不可解な点がある。内部の情報を外に漏らした者が、劇団内部に存在している可能性が高い。
GM:市内他セル
10/60
・市内には複数のセルが活動しているが、現在“ラオペ”が注目すべきは主にひとつ。上位セル“メルクリア”からの依頼受注を“ラオペ”と二分する商売敵たるセル、“衣笠”だ。“ラオペ”の活動休止中、邪魔するもののない“衣笠”は大きく勢力を伸ばしたようだ。
GM:公開情報は以上となります。
四条 幸音:街の片隅の小さな公園。
四条 幸音:日中は騒がしい子供達の声も、夜も更けたこの時刻にはすっかり消え去っている。
四条 幸音:スポットライトには頼りない外灯が照らすのは二人だけ。
四条 幸音:「こんな時間に呼び出して悪かったね」
四条 幸音:謝罪のような言葉を、さして悪びれもせずに口にする。
藁科 サイカ:「気にするなよ。幸音からの呼び出しなら、時間も場所も気にならないさ」
藁科 サイカ:街灯の照らす下で、くるり
藁科 サイカ:踵を起点に一回転。
四条 幸音:「目の前で他の女をデートに誘っといてよく言えたもんだ」
四条 幸音:呆れたように苦笑する。
藁科 サイカ:「妬いてくれてる?」
四条 幸音:「自惚れんな」
藁科 サイカ:「拗ねるなよ」
四条 幸音:「拗ねてないし」
四条 幸音:ぷいと、顔をそむける。
四条 幸音:「……大体、」
四条 幸音:「ただのデートと思うには、状況が剣呑じゃないか」
藁科 サイカ:くくっ、と喉奥を鳴らすような笑い声。
四条 幸音:声に緊張がまじり始める。
藁科 サイカ:「やっぱり俺、うぬぼれてもいいんじゃないかな」
四条 幸音:「なんでそうなる」
藁科 サイカ:「なにせ幸音にこんなにも心配して貰えてるんだ」
藁科 サイカ:「不幸続きの俺だが、なるほど! この一瞬ばかりは幸福者として名乗りをあげても良いのだろう!」
藁科 サイカ:街灯の光の下、存在しない観客席を向いて、胸に手を当てた。
四条 幸音:「心配……ね」
四条 幸音:己の不幸を語りながら、光に照らされた彼女には自虐するような雰囲気は感じられない。
四条 幸音:光の遠い暗い場所からその素振りをじっと見つめる。
四条 幸音:「……ああ。心配だよ」
藁科 サイカ:光の中でサイカが微笑む。目をいっぱいに細めて、口角を左右とも、ぐっと持ち上げる。手本のような笑顔だ。
四条 幸音:ぽつりとこぼす。
藁科 サイカ:「君の懸念は、はたして何だね」
藁科 サイカ:はっきりと訊ねる。
四条 幸音:「……」
四条 幸音:口ごもる。
四条 幸音:「ねえ。まだその気は変わらない?」
藁科 サイカ:「ん?」
四条 幸音:「劇団を守る為に、危険分子を見つける……って」
四条 幸音:「葛野達との”デート”も、そのさぐり?」
藁科 サイカ:「ああ……」手本のような笑顔から、苦笑いへ。
藁科 サイカ:「そう、そのつもり」
藁科 サイカ:「で、安全そうな方から先に……ってことだ」
藁科 サイカ:「くるみは、性根の悪い子じゃないと思うんだよ。……いや、そりゃあ中々に問題は抱えているけど」
藁科 サイカ:「人格的な問題なら、俺達は一人残らず抱えてるだろう?」
四条 幸音:「それは……そうだね」
四条 幸音:「それで葛野から、か……あの子が大丈夫かはともかく」
四条 幸音:「椿尾は怖いとは、僕も思うよ。……できれば敵に回したくもない」
藁科 サイカ:ぴたり、動きが止まっている。光の中で、彫像のように。
藁科 サイカ:台詞を喋らない登場人物となって、幸音の言葉を聞いて、
藁科 サイカ:「全くだ。けれども」
藁科 サイカ:言葉と同時に、大きく頷く。
藁科 サイカ:「俺はどうにもね。彼女が鋭すぎて、怖い」
藁科 サイカ:「彼女と俺の目指すものは同じ筈なのに、そこへ至るアプローチが違いすぎるのもまた、怖い」
藁科 サイカ:「よく言うだろう。人間はよく分からないものに恐怖する」
四条 幸音:「……!」
藁科 サイカ:「輪花は自分をあまりひけらかさないからな。だから怖いんだ」
藁科 サイカ:「俺を見ろよ。隠すところなぞ何もない──衣服はこの際除外して考えるが──潔白そのものだ!」
四条 幸音:「見ろよって言われてもね。あんたの見たままを信じろ、って?」
藁科 サイカ:「ダメか?」口元に指先を当て、かくんと首を斜めに傾ける。
四条 幸音:「……その前に、さ」
四条 幸音:藁科の手を掴んで引き、
四条 幸音:自分の華奢な体躯に押し当てさせる。
藁科 サイカ:「ん」腕を引かれながらも軽く頷いて──
四条 幸音:「見る気はないの。……僕のことは」
四条 幸音:「あんたなら僕が考えてること、知ってること」
藁科 サイカ:「……ん?」ぴしっ、と、身を強ばらせる。
四条 幸音:「読むぐらい、できるんじゃないの?」
藁科 サイカ:「……………………」
藁科 サイカ:言葉を探すように沈黙が続く。
藁科 サイカ:布越しに触れた体。温度、筋肉、骨格。そういうものがいやに思考に割り込んでくる。
四条 幸音:心臓が痛いほど高鳴る。 緊張と、恐怖。
藁科 サイカ:それを、溜息で無理矢理に追い出して、
藁科 サイカ:「……勘弁してくれよぉ」
藁科 サイカ:泣き言のように呟いた。
四条 幸音:「……なにさ。急に情けない声」
四条 幸音:「いつもの気取った調子はどこいったのかしらね?」
藁科 サイカ:「出来るよ、そりゃあ。君が受け入れる限り、君の記憶のどこまでも」
藁科 サイカ:「無論、解像度も君に依存するがね。うろ覚えの記憶は、うろ覚えの光景になる。寝起きの頭で夢を振り返るように」
藁科 サイカ:「……けれども。逆に言えば、君が鮮明に覚えていることはだいたい見られるんだぜ?」
藁科 サイカ:「風呂場で体を洗う時、幸音は鏡を見ないでいられる?」
四条 幸音:「……? はあ?」
四条 幸音:こわばった顔が一瞬緩み、思わず間の抜けた声が漏れる。
藁科 サイカ:「幸音が記憶してれば、そういう光景だって見えるってこと。……あんまり気分のいいものじゃあないだろう」
四条 幸音:「いや、そりゃそうだけど、あんた……」
藁科 サイカ:つっ
藁科 サイカ:不意を打つように、指を滑らせる──あてがわれた箇所から、真下へ滑らせるように。
四条 幸音:「んっ……」
藁科 サイカ:華奢な体の曲線を、布越しになぞる手は迷いが無い。
藁科 サイカ:肋の、一番下の一本より、ほんの少し下で指が止まって。
藁科 サイカ:「それに。俺の〝これ〟はね、指を経由して俺の神経の一部を、他者の体の中へ忍ばせるものだ」
藁科 サイカ:「素肌の上から触れないと意味が無いんだよ」
藁科 サイカ:「……分かってるか?」
四条 幸音:「何を?」
藁科 サイカ:「お前は」
藁科 サイカ:口をついて出た、〝役柄らしからぬ〟二人称。
藁科 サイカ:「今まで誰に触れてきたとも分からない手で、撫で回されたいのか?」
四条 幸音:「………」
四条 幸音:平時の芝居がかった様子とも、先の気を抜いた雰囲気とも違う。
四条 幸音:自分が彼女の『知らないこと』へ、少し触れた気がして。
四条 幸音:「それじゃ、まるで」
四条 幸音:「僕に嫌な思いをさせたくないから、できないって」
四条 幸音:「……そう言ってるように聞こえるけど」
藁科 サイカ:「そう言ってるんだよ」
藁科 サイカ:両腕で、痩躯を引き寄せた。
藁科 サイカ:腕の中に捕らえ、閉じ込めるようにだ。
四条 幸音:「藁科……?」
藁科 サイカ:自分の腕と背で、観客席からは、この小柄な少女の表情は見えるまい。
藁科 サイカ:「幸音、俺はな」
藁科 サイカ:「俺が求められる役が男役だったら、それに応えてきたよ」
藁科 サイカ:「あまり綺麗な体とは言い難い。物理的な意味でも概念的な意味でもだ」
四条 幸音:「……」
藁科 サイカ:「そういう生き物が、お前に触れるというのを考えると、俺はどうにも我慢がならなくなる」
藁科 サイカ:「けどな」
藁科 サイカ:「お前が何かを俺に見せたいって言うなら」
藁科 サイカ:背に回した腕が、裾から忍び入る。
藁科 サイカ:左手は、背に。
藁科 サイカ:右手は、腰に。
藁科 サイカ:指を鉤の様に曲げて、肌に突き刺すように。
四条 幸音:冷たい感触が触れる。
藁科 サイカ:「あのな」
藁科 サイカ:「お前が悪いんだぞ」
藁科 サイカ:《異能の指先》
藁科 サイカ:触れ合う肌から、熱く融けた肉が流れ込むような、異質な感覚。
四条 幸音:拒む力は、ない。
藁科 サイカ:自分でない何かが、自分の体に入り込む。
藁科 サイカ:それは本来、悍ましいことなのだと思い出させるような。
藁科 サイカ:ほんの僅かな痛みを伴う接触の後に──〝読み取り〟は始まる。
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を3増加 (46 → 49)
藁科 サイカ:「……………………」
四条 幸音:「ふ、うっ……」
藁科 サイカ:抱擁のままに、唇を耳元へ寄せた。
四条 幸音:「あーあ」
藁科 サイカ:言葉にならない呻き声が、少しの間続いていた。
四条 幸音:「……ばれちゃった」
藁科 サイカ:明かした方が、あんがいにあっけらかんと聞こえる響きを伴うのに対して、
藁科 サイカ:知らされた方はまるで、鉛の枷でもつけられたようだ。
藁科 サイカ:「……俺なら、輪花に……いや……」
藁科 サイカ:「どうしたらいい」
藁科 サイカ:「どうしたらいいんだ……」
四条 幸音:「……あんたはさ。運がない、運が無かった、って。いつもいつも口癖みたいに漏らすくせに」
藁科 サイカ:「ああ」
四条 幸音:「僕のせいだとは、言わなかったよね」
藁科 サイカ:「そうだな、だって」
藁科 サイカ:「本当は幸音の方が、ずっと運が悪いと思ってたから」
藁科 サイカ:「けどなぁ」
藁科 サイカ:膝の力が抜ける。
藁科 サイカ:体重を預けるように、公園の土の上に膝を落として、
藁科 サイカ:「なんだってお前、ここまで運が無いんだろうなぁ……!」
四条 幸音:「……馬鹿言わないでよ」
四条 幸音:「これは僕のせいで、僕の責任」
四条 幸音:「これだけは……僕の幸運も、あんたの不運も、関係ない」
四条 幸音:「……僕が弱かっただけだよ」
四条 幸音:灯りを背にして自分の顔を隠す。
四条 幸音:「あんたが不運を呪っても、僕を責めることはなくて」
四条 幸音:「僕にはそれが、本当に、本当に」
四条 幸音:「──苦しかった」
四条 幸音:気持ち悪い。 自分でも怖気のする感情を吐き出す
四条 幸音:「お前のせいだって」
四条 幸音:「全部お前が悪いんだって、言ってほしかった」
四条 幸音:「……本当は何が悪いのか、『分からなかったから』」
四条 幸音:──『人間はよく分からないものに恐怖する』
四条 幸音:「自分のせいかもしれなくて、そうじゃないかもしれなくて」
四条 幸音:「『わからないまま』、お前は悪くないって言われるのが気持ち悪くて」
四条 幸音:「はっきり誰かに僕のせいだって言われて、楽になりたかったんだ。 最低だろ?」
藁科 サイカ:「そうだな」
四条 幸音:「だから僕は、あんたが苦手で」
四条 幸音:「苦手で、苦手で、苦手で」
四条 幸音:「感謝、してる」
藁科 サイカ:ふらふらと、立ち上がる。
四条 幸音:「もしこの苦しさから逃げたら」
四条 幸音:「きっと今よりもっと、自分のこと、許せなかったから」
藁科 サイカ:幸音の腕へ、荒々しく手を伸ばす。
四条 幸音:「……ありがと」
藁科 サイカ:灯りの下ではなく、影へ、闇へ。引きずり込むように彼女の腕を引く。
藁科 サイカ:目は、空を観ていた。
藁科 サイカ:何も描かれていない空を見るのは、思考を纏めるのに都合が良い。
藁科 サイカ:足を運ぶ先は、公園の片隅にある、古めかしい公衆トイレで、
藁科 サイカ:「礼なんか言うなよ」ようやく、言葉を絞り出した。
四条 幸音:「……そっか」
四条 幸音:「うん。聞かなかったことにして良い」
藁科 サイカ:人の目が無い場所。人の耳が無い場所。
四条 幸音:「どうしたらいい、って言ったっけ」
藁科 サイカ:その奥の壁まで来て、ようやく足を止めた。
藁科 サイカ:「言ったよ。けどな……」
藁科 サイカ:「隠し通すのは無理だ。俺達ラオペは、そういうのを暴くのは得意分野だ」
藁科 サイカ:「俺が隠蔽に協力したところで、ほんの少し、発覚までの時間を遅らせる程度だろ」
四条 幸音:「分かってる。それに」
四条 幸音:「協力して欲しいわけじゃない」
藁科 サイカ:「幸音、わかってないな」
藁科 サイカ:がん。
四条 幸音:「何を?」
藁科 サイカ:強く力を込めて、掴んだ腕を壁へ押し付ける。
四条 幸音:「痛った……!」
藁科 サイカ:「俺が一方的に、お前を助けようとしてるだけで」
藁科 サイカ:「そうする理由は、俺がお前を欲しいと思ったからだ」
藁科 サイカ:「……はっ。これでもな、台本は考えて来てたんだぞ。お前に言われそうなことを想定して」
藁科 サイカ:「〝本当に好きな相手だからこそ穢したくない〟なんて、抑揚まで検討して来たんだ」
四条 幸音:「……」
藁科 サイカ:「責められないから苦しかった、だって?」
藁科 サイカ:「じゃあ、今からでも望」
藁科 サイカ:「今からでも望みの通りにしてやるか?」
藁科 サイカ:最初に、彼女から試みたアプローチと同じ箇所へ、手を触れた。
藁科 サイカ:違うのは、相手の意志によるものでないこと。……許可を得ようともしなかったこと。
藁科 サイカ:そこから、先の再演のように手を下へと滑らせるが、
藁科 サイカ:手指に込められた荒々しさは、これは芝居ではないのだと示すようだ。
四条 幸音:「……それは」
四条 幸音:「やめてほしい、かな。……今は」
四条 幸音:今度はその手を止める。
藁科 サイカ:「やだって言ったら?」
藁科 サイカ:止められた手は、だがまだ引かれることも無く。
藁科 サイカ:「俺を狂わせたお前が悪いって、俺が言ったらどうする?」
四条 幸音:「大声あげて逃げる。……だって、」
四条 幸音:「……この先とか、どうでもよくなっちゃいそうだから」
四条 幸音:「今は、だめ」
藁科 サイカ:「じゃあ、逃げろ。そのまま何処かへ行っちまえ」
藁科 サイカ:「ラオペの内情はガタガタだ。脱走者を追い回す余裕も無いだろうさ」
四条 幸音:「それも、だめ」
四条 幸音:「昼に話したでしょ。いますこしでも怪しい動きは、見せられない」
四条 幸音:「僕はね。逃げる為でも、協力してもらうためでもなくて……」
四条 幸音:「あんたに嘘つきたくなかったから、見せただけなんだよ」
藁科 サイカ:「……本当は、お前」
藁科 サイカ:「こんな風に苦しむ俺が見たいから……なんて、言わないよな?」
四条 幸音:「……それぐらい言えれば、幻滅する?」
藁科 サイカ:「できないから、困ってる」
藁科 サイカ:手が、力なく離れていく。
四条 幸音:「それは……困った、ね」
四条 幸音:「藁科」
藁科 サイカ:背を向け、ゆらゆらと。亡霊のような足取りで距離を取って、
藁科 サイカ:ぴたり……とは止まらない。じわっと、自然な動きで止まって振り返る。
四条 幸音:「僕は逃げない。逃げたくない」
四条 幸音:「自分で思ってたより、僕。ここが好きだったみたいだ」
四条 幸音:「だからさ。壊されたくないんだよ」
四条 幸音:「……あんなもの見せといて、説得力ないかもしれないけど」
藁科 サイカ:「幸音」
藁科 サイカ:割り込むように、名を読んだ。
藁科 サイカ:外の、星やら月やら、街やら、街灯やら。
藁科 サイカ:色々の光が藁科サイカを、背後から照らす。
藁科 サイカ:背筋が伸びた。
藁科 サイカ:ふたたび舞台に上がったのだ。
四条 幸音:「僕は」
四条 幸音:「君に、劇団を守って欲しい」
藁科 サイカ:「幸音」
藁科 サイカ:「その願いは決して叶わない」
藁科 サイカ:もう一度、名を呼ぶ。
藁科 サイカ:そうして浪々と、告げるのだ。
藁科 サイカ:「『シルヴェストル』がたぶん、俺の最期の舞台だ」
藁科 サイカ:「たぶん俺、そろそろ死ぬよ」
四条 幸音:「……それ、は」
藁科 サイカ:「俺は19歳だ。大拡散の、かなり初期の先天性オーヴァード」
藁科 サイカ:「まだ技術解明が進んでない時点で、結構な無茶をされたらしくてさ。覚えてないけど」
藁科 サイカ:「耐用限界まで、そう日数は残ってないらしい」
藁科 サイカ:「だからさ。……せめて俺が生きてる間だけでも」
藁科 サイカ:「ラオペは幸せな、平穏な場所であって欲しかった。セルが割れて、人が減るなんて、考えたくもなかった」
藁科 サイカ:外から差す光の中へ歩き始める。背筋を真っ直ぐに伸ばして。
藁科 サイカ:「酷い話だなぁ」
四条 幸音:「……あんたも、さ」
四条 幸音:「本当に」
藁科 サイカ:「俺が一番好きだった奴が、最後の引き金を引いたなんて」
四条 幸音:「運がない、ね」
藁科 サイカ:「ああ」
藁科 サイカ:「最後の最期に、運が無いな」
藁科 サイカ:舞台袖へとはけていく。
藁科 サイカ:女優が一人、逃げるように、はけていく。
四条 幸音:「……でもね、藁科」
四条 幸音:「僕と君は、そこにはいないかもしれないけど」
四条 幸音:「……僕は守りたいよ」
藁科 サイカ:四条 幸音 幸福感/○偏愛でロイスを取得
藁科 サイカ:Sロイスに指定します
四条 幸音:ロイス 藁科 サイカ ◯P:秘匿/N:執着
葛野 くるみ:日常では公演の準備が始まり、劇団としての練習も本格化してきた。
葛野 くるみ:一面鏡張りになった稽古場。本読みの休憩中、劇団員たちが思い思いに過ごしている。
葛野 くるみ:その片隅で、あたしは七葉ちゃんと輪花ちゃんと三人で話していた。
葛野 くるみ:「でね、ふたりに相談したいことがあるの。いつものやつ」
椿尾 輪花:「はい。いつものね」
葛野 くるみ:「あたし、演じる役柄がどういう人か、よく分かんないと演じられないからー」
葛野 くるみ:要は《完全演技》のモデルとなる、模倣用の仮想人物の構築だ。
御薗橋七葉:「……ホンは目通したんでしょ?少しは自分で考えられないの?」
葛野 くるみ:「考えるより二人に教えてもらった方が早いんだもん」
葛野 くるみ:「あたし一人で考えた方が七葉ちゃんは嬉しいー?」
御薗橋七葉:「自分の頭で考えた方が血肉にはなるでしょ」
御薗橋七葉:「他人に与えられるより」
椿尾 輪花:(……考えてるんですね。葛野さんの血肉になるように、ということを)
御薗橋七葉:意味ありげな視線で葛野を見る。
椿尾 輪花:(まあ、ただならぬ仲ではなさそうだとは思っていましたが……) 《まだらの紐》越しに垣間見た二人のやり取りを想起している
椿尾 輪花:「まあまあ。一人で詰めて歪んでしまうよりはということで。私としても、まず演出の考えは知っておきたいところです」
椿尾 輪花:「どうでしょう、御薗橋さん?」
葛野 くるみ:「うんうん」七葉ちゃんに目を細めて返す。
御薗橋七葉:「……」息を吐く。セルリーダーに直談判してセルに加入した立場上、椿尾は邪険に出来ない。
御薗橋七葉:「……リュシエラは、従来の解釈では人の運命を弄び、破滅に誘う悪魔として捉えられているけれど」
御薗橋七葉:「今回の舞台は違う」
葛野 くるみ:「へえー、違うの?」
椿尾 輪花:「ふむふむ」 その態度は熱心な劇団員そのものだ
御薗橋七葉:「私は今回のリュシエラを、もっと人間らしく葛藤する、生きた感情を持ったキャラクターとして描いた」
椿尾 輪花:「葛藤を……」
葛野 くるみ:「かっとう~~~?」すっとんきょうな声を上げる。
御薗橋七葉:「シルヴェストルとの関係は、単なる悪魔と契約者のものではなく……」
御薗橋七葉:よく分かっていない様子の葛野に嘆息して。
御薗橋七葉:「一人の女ってことよ」
葛野 くるみ:「えーっ、なになに?」クスクス笑う。「女?」
椿尾 輪花:「女、ですか」
葛野 くるみ:「あたし女だよ!」
椿尾 輪花:「知ってますよ」
御薗橋七葉:「知ってる」
葛野 くるみ:「話終わっちゃうじゃ~ん」けらけらと笑う。
御薗橋七葉:「愛に焦がれて、立場も忘れ、自分の感情に振り回される女」
御薗橋七葉:「そういう風に書いた……この程度でいいでしょう?後はあんたが自分で解釈して」
葛野 くるみ:「へー、情緒不安定っぽい人だねー」
椿尾 輪花:「なるほど……」 かすかな違和感。彼女の解釈に、ではない。その配役に葛野を宛てたことだ
葛野 くるみ:「もう、この映画のあの女優みたいに演じろー、って言ってくれればいいのに」唇を尖らす。
椿尾 輪花:確かに彼女の能力であれば、繊細なバランスの上に成り立つその役柄も見事に演じきれるだろう。それを御薗橋が知っていることも不思議ではない。
御薗橋七葉:「そんなの、役を殺すのと同義よ」唾棄するように。
椿尾 輪花:(……でも、振り回される女、か)
御薗橋七葉:「あんたが考えて、あんたが演じるの」
御薗橋七葉:「そうじゃなきゃ意味が無い」
葛野 くるみ:「ふうん? それがいいんだ」
葛野 くるみ:「七葉ちゃんがそう言うなら、あたしはそうしてみよっかなあ」
椿尾 輪花:そんな配役に葛野くるみという女を割り当てることには、何となく含みがあるような気がする。……同時にそれは、演出家としての彼女を疑う下卑た勘繰りだ。表には出さない。
椿尾 輪花:「まあ、葛野さんなら最終的には良いところに着地できますよ。何でもできちゃいますからね」
葛野 くるみ:「えへへー、ありがとう輪花ちゃん」屈託なく笑う。
椿尾 輪花:「とはいえ、御薗橋さんの言う通り、きちんと咀嚼して、理解する手順は必要になりそうです。これは今後、じっくり進めていきましょう」
葛野 くるみ:「え? 練習に付き合ってくれるってこと? 嬉しいなー」
葛野 くるみ:「そしたらあたしも輪花ちゃんの練習に付き合うからね」
椿尾 輪花:「ありがとう。お互い、一人で考えるよりきっと良くなりますよ」 葛野に笑いかけて
椿尾 輪花:御薗橋さんに向き直る 「……私のフェリクス役については、苦悩の人という印象です」
葛野 くるみ:輪花ちゃんの笑みにニコニコと笑い返す。
御薗橋七葉:「……そうですね」煙草を取り出してから禁煙だと思い出し、指先で箱を叩く。
椿尾 輪花:「シルヴェストルを支えることの誇りと、支える者でしかないことの嫉妬。これが反転し、脚光を浴びることになった喜びと、そもそれを喜ぶ自分の浅ましさ」
葛野 くるみ:「……」七葉ちゃんが箱を叩く動作を見ている。
椿尾 輪花:「立場につきまとう光と陰。そういったものを意識して行くべきかと思っています。……見せ方にも気を配りたいですね」
椿尾 輪花:「それから……あ、吸います? 外、出ましょうか」
御薗橋七葉:「ああ、いえ。お気遣いなく」
御薗橋七葉:かぶりを振って、お前もこれくらい出来ないのか、と言いたげな視線を葛野に送る。
葛野 くるみ:「タバコ没収しちゃお」その視線をするっと流し、手を伸ばす。
椿尾 輪花:「我慢は毒ですよ。非常階段に出ても平気な季節に……あら」
御薗橋七葉:「あ」煙草を取られて。「……ちょっと」
椿尾 輪花:くすりと笑って 「未成年が持ってたら面倒ですよ」
葛野 くるみ:「ふふふ。練習が終わったら返してあげるー」
葛野 くるみ:箱を撫でながら微笑み、ポケットに突っ込む。
御薗橋七葉:「……」伸ばし掛けた手を引っ込める。自分はそんなお遊びには付き合わない、とでもいうように。
御薗橋七葉:「……今回のフェリクスは、特に後半……シルヴェストルの帰還以降の感情に焦点を当てています」
椿尾 輪花:「はい。救われるような気持ちと、奪われるような気持ち」
御薗橋七葉:「はい。一度手に入れたものを奪われる心情……抑圧されてきたフェリクスが我を出していく過程がこの舞台の見所のひとつです」
椿尾 輪花:頷きながら、脚本の該当部に軽くメモを走らせつつ、ちらりと目を送る 「……お二人は」
葛野 くるみ:「二幕はじまってすぐにさ、すごい長台詞言うとこあったよねー」
椿尾 輪花:「いつからのお知り合いで? すみません、気になっちゃって」
葛野 くるみ:その脚本を覗き込もうとして、その言葉にぱちぱちと瞬き。
葛野 くるみ:「いつだっけ? えっとねー」
御薗橋七葉:「……」片目を強く結ぶような苦い顔になる。
葛野 くるみ:「けっこう前、あたしがまだこの劇団に入る前でー」
葛野 くるみ:「……あれ?入ってたっけ?入った後かも?」
御薗橋七葉:「……入った後」
御薗橋七葉:嫌そうに補足する。
椿尾 輪花:「あら。ご存知だったんですね」
葛野 くるみ:「あっそっか! あっ、なんかファンレターくれたよね」
御薗橋七葉:「…………」
御薗橋七葉:渋面を隠そうともしない。
御薗橋七葉:「何でそんなことばっかり覚えてるわけ?」
葛野 くるみ:「嬉しかったんだもーん」
椿尾 輪花:「あら」 見ようによっては白々しくくすりと笑い 「お恥ずかしい?」
御薗橋七葉:「若気の至りです。考えられない」
御薗橋七葉:「その時は知りませんでしたから。中身がこうとは」
椿尾 輪花:「まあまあ。最初から葛野さんは華がありましたからね。気持ちが惹かれて当然です」
葛野 くるみ:「えーっ、輪花ちゃんまで褒めてくれるー。嬉しいー」
椿尾 輪花:「なるほど。でも今はこうやって、彼女と役者対演出をやろうと思ってるんですね」
御薗橋七葉:「……。……まあ、そうなりますね」少し目を逸らす。
葛野 くるみ:「うん!あたしも良い子にならなきゃ期間だから頑張るよー」
葛野 くるみ:「輪花ちゃんにまた怒られたくないし」クスクス笑う。
椿尾 輪花:目を細める。その苦々しい表情は、まさしく
椿尾 輪花:(……シルヴェストリとフェリクス)
椿尾 輪花:「そうですよー。あなたは確かに華があるけど」
椿尾 輪花:「それで人が欠けたりしたら大変ですからね」
椿尾 輪花:「良い子でいるんですよ。ちゃんと見てますから」
椿尾 輪花:言いながら、口元に指を当てつつ……『秘密』のサイン……葛野さんを撫でるように、その銀髪に手を滑らせる。
葛野 くるみ:「うん」両瞼を閉じてその仕草を受け入れ、くすぐったそうに笑う。
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:目を逸らすように稽古場を眺める。胸の内のそれは、ニコチンが足りないだけのものだと自分に言い聞かせる。
御薗橋七葉:自分は葛野くるみとはもう終わっている。この女のプライベートがどうだろうと、知ったことではない。
葛野 くるみ:「輪花ちゃんがちゃんと見ててくれるなら、あたしも頑張らなきゃって思うしね」
葛野 くるみ:軽く口元に指を当て、サインを返し…悪戯っぽく笑った。
椿尾 輪花:そっと髪の毛先まで指を滑らせて 「ふふ。どうぞそう思ってね」
葛野 くるみ:「あっそれならさー、輪花ちゃん、七葉ちゃんが来てくれて良かったよね」
葛野 くるみ:「人が増えたよー」
椿尾 輪花:「だからって減らして良いってわけじゃありませんからねー」
葛野 くるみ:「あたし減らしたい訳じゃないのになー? 仲良くしたいだけなのになー」
椿尾 輪花:「愛に焦がれて、立場を忘れちゃうのよ」
葛野 くるみ:「ふうん…?」輪花ちゃんをまじまじと見る。
椿尾 輪花:「で、立場を失ってしまうと、元のようにはいられない。だから、立場を忘れないように……愛に焦がれないようにする」
御薗橋七葉:椿尾に目をやる。
葛野 くるみ:「………」
葛野 くるみ:「輪花ちゃんもそういう感情知ってるの?」
椿尾 輪花:「え? 私……」
御薗橋七葉:この女はFHとして、セルリーダーとして信頼できる。その有能さは、同時に人としてはまるで信用が置けないということでもある。
椿尾 輪花:きょとんとした表情をして 「あっ、ふふ」
椿尾 輪花:「ふふふ、違う違う! そういうんじゃなくて」 手を振る
椿尾 輪花:「リュシエラの話! 言ってたでしょ御薗橋さん」
御薗橋七葉:「……もう忘れたの?」
葛野 くるみ:「えー? 言ってたけどさー」
椿尾 輪花:「人間らしく、愛に焦がれ、立場も忘れ、自分の感情に振り回される女でしょ? 葛野さんはやっぱり想像できてなさそうだなって思ったから。ちゃんと考えなきゃダメよ、って言おうとしたんです」
椿尾 輪花:笑いが落ち着くと、流し目を作って見せる 「それとも聞きたいの? 私の愛の話」
葛野 くるみ:納得しきれてなさそうな顔をしていたが、その言葉に目の色を変える。「えっ、聞きたい聞きたい!」
葛野 くるみ:「あたし恋バナ好きだもーん」
椿尾 輪花:「自分は恋に適してなさそうなにねぇ」
葛野 くるみ:「あはは!ひどーい」
御薗橋七葉:「……椿尾さんの話なら、私も興味がありますね」
御薗橋七葉:純粋に演出家として言う。
椿尾 輪花:「あらあら、御薗橋さんまで。モテ期でしょうか」
御薗橋七葉:「あまりイメージもありませんし」
葛野 くるみ:「わかるー、わかるー」
椿尾 輪花:「食いつくなぁ。もちろん私だって、気になる人がいることもあるけど……」
椿尾 輪花:笑いながら、脳は冷えている。純粋無垢に愛なぞというものを信じる少女の自分は、もうずっと心の奥底に閉じこもったままだ。
椿尾 輪花:籠絡。支配。相手の心臓を掴むか、掴まれるか。椿尾輪花にとって人間関係とはそういうものであり、愛と名付けられた情動反応も、それに伴う現象情報に過ぎない。
椿尾 輪花:……そういったものの支配から逃れられるのは、私が私を演じる必要がない場所。
椿尾 輪花:舞台の上だけだ。
椿尾 輪花:「……恥ずかしいから今度。そういうのってお酒とか入った場でする話でしょ?」
御薗橋七葉:「未成年でしょうに……」
椿尾 輪花:「二人が素面で話してくれるなら私も考えますけど~?」 悪戯っぽく笑う。普通の少女のように
葛野 くるみ:「えーっ、ずるいー!気になるー」
葛野 くるみ:「あたし素面でもぜんぜん話せるよ! 七葉ちゃんも話せる?」
御薗橋七葉:「話せますけど。無いから、そういうの」
葛野 くるみ:「うそー!嘘でしょーっ」
椿尾 輪花:「ふふ。これはどちらを信じたほうが良いかしら」
椿尾 輪花:「葛野さんに御薗橋さんのぶんも話してもらう?」
葛野 くるみ:「あ、いいねそれ!」
御薗橋七葉:「……何でそうなるんですか……?」
葛野 くるみ:「え? だって知ってるし」
椿尾 輪花:「あら」
御薗橋七葉:「…………」苦虫を嚙み潰したような顔。これ以上何も言うな、という目で葛野を睨む。
葛野 くるみ:「七葉ちゃん、あ………」「………」口を両手で押さえる。
椿尾 輪花:笑みを浮かべたまま二人を交互に見て 「どうかいたしました?」
葛野 くるみ:「ううん!ごめんね輪花ちゃん、言えなさそうー」
御薗橋七葉:「……」溜息を吐いて「別に、何も」
葛野 くるみ:「幸音ちゃんとかサイカくんはどうなのかなー」
葛野 くるみ:「恋バナするって言ったら来てくれるかな~?」
椿尾 輪花:「どうなんでしょう。四条さんも藁科さんも、それぞれ別の層から人気がありそうですけど」
御薗橋七葉:「……その話、そんな大人数でする気なの?」
葛野 くるみ:「女子会したいのー!あたしなんか、呼ばれないんだよね。なんでだろー」
御薗橋七葉:「嫌われてるからでしょ」
椿尾 輪花:「なかなか道は遠そうですね、リュシエラ」
葛野 くるみ:「おお、見よ!フェリクスは民草からの人気も厚い!」劇中の台詞を借りて言う。
椿尾 輪花:「シルヴェストル。我が友であればこうしたはずだ。そうだろう?」 即興で薄暗く声を作って
葛野 くるみ:「ふふっ」クスクス笑う。
御薗橋七葉:微かに緩んだ口元を隠そうと、煙草を咥えようとして。それも葛野に取られているのを思い出した。
【Middle first half/藁科サイカ】
GM:ミドル前半 二手番目 シーンPCは藁科さんです
GM:誰を指名しますか?
藁科 サイカ:葛野 くるみさんを指名します
藁科 サイカ:二人きりになれる場所に行こうや……
葛野 くるみ:ドキッ…… どこだろう どのホテルにする?
GM:ではメインシーンは藁科さん 葛野さん サブシーンは椿尾さん 四条さん 御薗橋さんになります
藁科 サイカ:ホテルは詳しくないから任せよう
葛野 くるみ:きゃっ
藁科 サイカ:ということでたぶんホテルの一室スタートになるんじゃないかと思います
葛野 くるみ:あっ本当にそうなんだ!?w ヤッタ~~~
GM:情報項目はこちらです
劇団
情報:噂話/FH
33/50
椿尾 41/50
脱退メンバー
情報:噂話/FH/裏社会
0/50
御薗橋 11/50
市内他セル
情報:FH/裏社会
10/60
UGN
情報:噂話/UGN
0/60
葛野 くるみ:どうしようかな~
藁科 サイカ:劇団いきます 情報:FHで《生き字引》を使用。そして1回目の侵蝕
四条 幸音:特になければ引き続き市内他セル行こうかなあ
藁科 サイカ:1を上げ忘れてたっぽいので合計で2上昇させます
御薗橋七葉:3DX+4 脱退メンバー
DoubleCross : (3DX10+4) → 9[5,6,9]+4 → 13
藁科 サイカ:7dx+5 劇団
DoubleCross : (7DX10+5) → 10[4,5,6,6,8,10,10]+7[1,7]+5 → 22
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を2増加 (49 → 51)
四条 幸音:4DX+1+0@10 情報(FH )市内他セル
DoubleCross : (4DX10+1) → 6[2,3,5,6]+1 → 7
四条 幸音:雑魚い!
椿尾 輪花:御薗橋さんの動きが気になる。脱退メンバーを調べます。コネ:噂好きの友人+バッドフレンド
椿尾 輪花:8dx 脱退メンバー
DoubleCross : (8DX10) → 7[1,1,4,4,5,5,6,7] → 7
四条 幸音:どうしよう、妖精の手とか財産点……
椿尾 輪花:財産点使って良いです?
GM:財産は使えます!
椿尾 輪花:3点支払って達成値10。財産点は残り8
葛野 くるみ:市内他セルいってみよ コネ使って情報:FHで調べます
葛野 くるみ:3dx+1
DoubleCross : (3DX10+1) → 8[4,5,8]+1 → 9
四条 幸音:では私も財産3使って10にします。財産点残り3
四条 幸音:あ、待てよ
葛野 くるみ:財産点1点はらって10にします~
椿尾 輪花:椿尾輪花の財産を3減少 (11 → 8)
葛野 くるみ:残り財産点2→1
四条 幸音:四条 幸音の財産を3(→ 3)減少 (6 → 3)
四条 幸音:あ、失礼オッケーです!
GM:では渡していきます
藁科 サイカ:んんんんんんんんんんん
藁科 サイカ:おんのれえぇい
藁科 サイカ:……リーダーに!
藁科 サイカ:どこかで会ったら! 言う!
藁科 サイカ:今は伏せる!
葛野 くるみ:なんだなんだ~
椿尾 輪花:気になる~
四条 幸音:了解しました!
葛野 くるみ:受け取りました! 今回は共有しません
四条 幸音:なんにぃ~
四条 幸音:みんな秘密主義……
藁科 サイカ:自分が口を閉じたから他人を責められないぜ……
椿尾 輪花:クハハハ
葛野 くるみ:オホホホ
四条 幸音:あ、私は共有します
四条 幸音:みんな仲良くしようよ~
藁科 サイカ:仲良くしたいよ!
葛野 くるみ:したいよ~
椿尾 輪花:フゥン……これはいいや。共有します。
GM:ではこのようになります
劇団
情報:噂話/FH
33/50
藁科 50/50
椿尾 41/50
脱退メンバー
情報:噂話/FH/裏社会
10/50
御薗橋 34/50
市内他セル
情報:FH/裏社会
20/60
葛野 30
UGN
情報:噂話/UGN
0/60
GM:で、ちょっと待ってね
葛野 くるみ:待つわ
四条 幸音:はーい!
GM:え~それでは……
GM:明かされた情報は……今回1個だけですね
脱退メンバー
10/50
・脱退メンバーは殆どが他セルに流れたようだ。
劇団不要派が離脱しただけあって、その殆どは戦闘能力を持つオーヴァードであり、市内FHの勢力図が一時的に混乱したらしい。
最も目立っているのは“ブラックハイド”山科三重。高い戦闘力を持つオーヴァードで、劇団では葛野に次ぐ人気俳優でもあった。
藁科 サイカ:──書き割りの板にするには殺風景な、さしたる特徴も無いホテルの一室だった。
藁科 サイカ:ダブルベッドがひとつ
藁科 サイカ:テレビがひとつ、冷蔵庫がひとつ。
藁科 サイカ:最寄りの駅まで徒歩で数分ということもあって、仕事絡みでの宿泊客も、旅行客も相応に多い。
藁科 サイカ:そういう、人がどれ程に歩いていても目立たぬような場所で、さらに──
藁科 サイカ:「盗聴器や隠しカメラが無いかは、俺が事前に確認した」
藁科 サイカ:「俺が仕掛けてるって場合もあるかも知れないけど、どうする。確認するか?」
葛野 くるみ:「えーー? あー、この間、内部に裏切者いるかもって話したから?」
葛野 くるみ:迷わずダブルベッドに腰かけて足をぷらぷらと揺らす。
藁科 サイカ:「ああ。そうでなくても、よからぬ目的の為に」
藁科 サイカ:ぎっ、とベッドのバネを軋ませて、足を揺らす彼女の隣に腰を掛け、
藁科 サイカ:「くるみはかわいいからね。映像に残しておこうなんて気を起こす奴も、出るかも知れない」
藁科 サイカ:パチン、とウィンクをしてみせた。
葛野 くるみ:「あは」彼女の顔を見上げてクスクス笑う。「やさしいー」
藁科 サイカ:「さて、それはどうだろう。或いは一見すると紳士的で、しごく真っ当な人物に見えるけれども」
藁科 サイカ:「布地一枚の下には獣の本性が牙を備えていて、女の喉元に食らい付かんとしているのだ」
藁科 サイカ:「……と、いうこともあるかもよ?」
葛野 くるみ:「それって、相手はあたしでいーの?」言いながら、サイカくんの手に自分の手を絡ませる。
葛野 くるみ:「あたしはサイカくんがあたしを求めてくれるなら、なんだって嬉しいけど」
藁科 サイカ:「もちろん。……むしろ、そういう言い方をされると少し悲しいかも知れないな」
藁科 サイカ:「俺は、くるみともっと仲良くなりたいから、くるみを誘ったのに」
藁科 サイカ:絡みつく手を迎え入れる、長さの異なる指。
藁科 サイカ:しゅるりと蛇の様に巻き付いて、手の甲の血管に指先で戯れる。
葛野 くるみ:「じゃ、仲良くしよ」
葛野 くるみ:近寄ると、いつも身に着けている甘い香水がより明確に香る。
藁科 サイカ:ぐらっ
藁科 サイカ:そんな音が、頭の中で聞こえたような気がした。
藁科 サイカ:道を踏み外す音。油断はしていなかったのに、突然足下が崩れる音。
藁科 サイカ:香りを吸い込むだけでも、体の奥に火を入れられたような想いがする──
藁科 サイカ:「──俺さ、思うんだよ」
葛野 くるみ:「なあに?」微笑む。ピンクのグロスを塗った形の良い唇が、艶めいて光る。
藁科 サイカ:「別にくるみは、だらしないとか、誰でもいいとかじゃあなくって」
藁科 サイカ:「自分を好きになって欲しいとか、好きになってくれた人を喜ばせたいとか」
藁科 サイカ:「そういう当たり前のことに、人よりちょっと積極的なだけなんじゃないかって」
葛野 くるみ:「……うん」
藁科 サイカ:絡め取られた指が、逃げるように離れた。……それから、薄紅の艶を追うように、彼女の唇へと運ばれる。
藁科 サイカ:「誰かと誰かの仲を悪くさせたい、とかじゃなくってさ」
藁科 サイカ:「ただ、皆に喜んでもらいたいし、自分も嬉しくなりたいから、出来ることを頑張ってるんだよな」
藁科 サイカ:「他の人に分かってもらうのは、ちょっと難しいかも知れないけど」
葛野 くるみ:「うん」今にも泣きだしそうな子供のようにも聞こえる、微かな相槌。
葛野 くるみ:「サイカくん、優しいんだね」
藁科 サイカ:「誰にでもじゃないよ。俺が好きなひとにだけ」
葛野 くるみ:「ねえ、それ。あたしだけに言ってくれる?」
藁科 サイカ:「……そうだなぁ、くるみがそうして欲しいって言うなら」
藁科 サイカ:「他の子には、別な台本を用意する。この言葉はくるみだけのものにするよ」
藁科 サイカ:つん──指先で、彼女の唇をつつく。
葛野 くるみ:「台本なんて、やだ」
藁科 サイカ:「じゃあ、本心にさせてくれ」
葛野 くるみ:「うん。あたしの全部、サイカくんが暴きたいなら」
葛野 くるみ:「あたしだって、サイカくんの本当が知りたいもん」
葛野 くるみ:つつかれた指先を、こちらからついばむように唇で触れて返す。
藁科 サイカ:「……………………」くすっ、と小さな笑い声の後に、芝居ではない、どこか心地よさそうな笑み。
藁科 サイカ:「やっぱり、くるみは賢いなぁ」
葛野 くるみ:「えっ、初めて言われた」
藁科 サイカ:「俺がやりたいことを全部分かってるし、俺が言われたら弱いことだって分かってる」
藁科 サイカ:「こんな良い子の傍にいたら、嫌なことなんて全部忘れてさ」
藁科 サイカ:「ずっとずっと幸せに生きてられるかも、って想っちゃうよな」
藁科 サイカ:「それに」
藁科 サイカ:「リーダーは心配してるかも知れないけど、結局のところ」
藁科 サイカ:「何人もと〝仲良く〟してること、実はそんな広くはバレてないだろ?」
葛野 くるみ:「た…たぶん…」
藁科 サイカ:「いいや、そうだよ。そうじゃなきゃあ」
葛野 くるみ:「?」困ったような顔をしている。
藁科 サイカ:ついばまれる指先が、唇からほんの少しだけ引き剥がされて、
藁科 サイカ:「スカウトなんて、来る筈も無い」
葛野 くるみ:「あ!」
葛野 くるみ:目を丸くする。
藁科 サイカ:「ふっふっふ、凄いだろう。くるみより先に、俺の方がくるみの事を知っちゃったぞ」
葛野 くるみ:「えーっ、凄い、凄い! なんで? 何であたしの事知ってるの?」
藁科 サイカ:「調べるツテは色々あるんだ。けど、一番役に立ったのは、この──」
葛野 くるみ:嬉しそうに身を乗り出して、サイカくんの顔を覗き込む。
藁科 サイカ:一度、手を掲げる。彼女の視界に、これがあるのだと見せるようにして。
藁科 サイカ:それから──降ろす。ベッドの縁で揺れている、彼女の足の上へ。
藁科 サイカ:「指、かな」
葛野 くるみ:「指?」
藁科 サイカ:「その人が知ってるいろんなことを、俺にそのまま見せてくれる、魔法の指」
葛野 くるみ:「えっ、今あたしがチューしたからバレたってこと?」
藁科 サイカ:「ううん、そうじゃない。俺の指はね、ちゃんと相手に受け入れてもらわないとダメなんだ」
藁科 サイカ:「だから、くるみと会ってた人の流れを辿って──そこの事務所の、事務員の子と、ちょっとね」
藁科 サイカ:「〝仲良くなって〟教えてもらった」
葛野 くるみ:「へええ……」首を傾げる。「………」
葛野 くるみ:ここで、RHOを開示します。
・Rハンドアウト
葛野 くるみ:君は現在、大手芸能事務所からの勧誘を受けている。映像業界に強い影響力のある事務所であり、移籍すれば今とは注目・待遇・収入などどれも比較にならないだろう。
だが、この劇団と両立することは出来ない。移籍は同時にセルからの脱退を意味することになる。少なくとも答えが出るまで、この秘密を守り通さねばならない。
葛野 くるみ:「なんかね、スカウトされた人からも、劇団の人とはシンチョーに相談した方がいいかもって言われたんだけど」
葛野 くるみ:「それでとりあえず皆には秘密にしてて。隠しててごめんね?」
藁科 サイカ:「いいんだよ。こんなこと、すぐには決められないし……相談も難しいよな」
藁科 サイカ:「けどさ。ここで大事なのは、これは、くるみが秘密にしてたことで、俺が知っちゃったことで」
藁科 サイカ:「つまり俺は、くるみを脅迫できちゃったりもするんだよな──ってこと」
藁科 サイカ:脅迫、などと物騒な言葉を吐き出しながら、
藁科 サイカ:浮かべる笑みの質は変わらず。足の上に置いた手を、少しだけ体の中央へ近づけるよう滑らせる。
葛野 くるみ:無防備に、ベッドの縁に座っている。その笑みに吸い込まれるように、瞳をじっと見つめながら。
葛野 くるみ:「うん、知られちゃった……し。サイカくんがあたしのこと呼び出した理由も、なんか分かってきた」
藁科 サイカ:「やっぱりくるみは賢いね。……じゃあ、俺の事も教えなきゃ」
葛野 くるみ:「うん」
藁科 サイカ:座る箇所を、腰を浮かせて近づけた。
藁科 サイカ:香水の甘い匂いまでが近くなって、また思考の陶酔が深まるようだ。
藁科 サイカ:どこまでが芝居でどこまでが自分か、普段はもう少し線引きが明瞭だと言うのに、
藁科 サイカ:今はどちらもが本心であるような、そういう心地がしている。
藁科 サイカ:「俺はね、ちょっと前から、誰が裏切りものなのか探してたんだ」
藁科 サイカ:「座長に色々知らされるよりも前から」
葛野 くるみ:「どうして?」瞬きする。
藁科 サイカ:RHOを対抗して開示します。
・Rハンドアウト
セル内に内通者がいる。情報の流れの不自然さからその事実に気付いた君は、密かに裏切者を探し出そうとしている。
内通者は何人居るかも分からない。気取られぬように、紛れ込んだ敵を炙り出さねばならない。
藁科 サイカ:「……俺達しか知らない筈の情報の漏洩は、実は少し前からちらほらと見えてた」
藁科 サイカ:「誰が悪いのかなんて犯人捜しは嫌だったけどさぁ。俺、ラオペの事は大好きで」
藁科 サイカ:「だから……ラオペを守る為なら仕方ないって、頑張ろうとしたんだぜ」
葛野 くるみ:「…………」手を伸ばして、サイカくんの髪を梳く。
葛野 くるみ:「そっか。犯人、見つかったの?」
藁科 サイカ:髪に通る手指の、暖かな感触に目を細める。心地良い。気持ちいい。
藁科 サイカ:きっと他の連中も、こういう、恋人と母親と妹と、全部を一度に出来る少女に、
藁科 サイカ:自分から勝手に飛び込んで、勝手に惚れ込んで焼け落ちたのだろう。
藁科 サイカ:「ひとり、少なくともね。それで俺はもう」
藁科 サイカ:「滅茶苦茶に疲れちゃってさ。本当はもっと格好よく、くるみをエスコートしようとしてたんだけど」
藁科 サイカ:「……今はくるみに甘やかされて、どろどろに融けちゃうくらいになりたい」
葛野 くるみ:「うん。いいよ」
葛野 くるみ:「あたしのこと脅迫して、あたしのこと無茶苦茶にして」
葛野 くるみ:「何もかも分かんなくなってよ」
葛野 くるみ:あなたの髪を梳いている手を離して身を起こすと、
葛野 くるみ:ベッドの縁に座るあなたに跨るように、唇を合わせる。
藁科 サイカ:唇を重ねられる瞬間に、目は閉じなかった。
藁科 サイカ:目を閉じようと考える余裕など消え失せて、ただ、目を奪われていた。
藁科 サイカ:くらくらとする甘い香りの元。ひとを惑わす魔性の悪魔。
藁科 サイカ:男の役を普段から演じているせいだろうか。
藁科 サイカ:彼女の毒の回りは、驚くほどに速い。
藁科 サイカ:「────────」
藁科 サイカ:両脚の上に感じる重さへ沿わせて、手を触れる。
藁科 サイカ:体の曲線をなぞるように、脚を這い上がり、腰に届いて、そこから衣服の隙間に指を掛けて、
藁科 サイカ:「……くるみ。全部上げるから、全部教えてよ」
葛野 くるみ:「んう……」触れられた途端、唇が離れて嬌声が上がる。
藁科 サイカ:「最近会った人、会った場所。話したこと、されたこと、全部」
藁科 サイカ:「俺が奪い取れるように、全部教えて」
葛野 くるみ:「……本当に? 本当に、サイカくんの全部くれるの?」
葛野 くるみ:「あたしの言う事、なんでも聞いてくれる?」
藁科 サイカ:「出来るだけの事は、したいな。……俺が生きてられる間は」
葛野 くるみ:「そんな返事、やだ」ぐずるように言うと、首筋を何度も口づける。
葛野 くるみ:「あたしのこと好きって言って、あたしのものになってくれないとやだ」
藁科 サイカ:「そう言うなって。半年か、もうちょっとは一緒にいてやれるってば」
藁科 サイカ:ぐずる子供をあやすように、片手が彼女の背を撫でて、
藁科 サイカ:……そうしながら、腰に滑り落ちた手は、艶めかしい女の肌の感触を求めて、布地の内を這う。
藁科 サイカ:「俺はどうしたらいい。……くるみの〝言う事〟って、例えば、なに?」
葛野 くるみ:「あっ…」喘ぎながら、頬を染めて笑う。「あたしね……あたしを求めてくれる人を、探してるの」
藁科 サイカ:「そんな人、たくさんいただろ?」
葛野 くるみ:「やぁだ。サイカくんが、あたしの一番になってくれないと、やだ…」
藁科 サイカ:俺だって、と囁く声には湿った吐息が混ざって。
藁科 サイカ:つ……と滑らせた指先は、戯れでは触れるべきでない場所まで。
藁科 サイカ:「じゃあ、こういう約束はどう?」
藁科 サイカ:「俺も、くるみも、お互いとしかセックスしない」
藁科 サイカ:「そういう約束が出来るなら、いいよ」
葛野 くるみ:「んぅ…っ」声が漏れる。「え……?」
葛野 くるみ:「それって、あたし達、恋人になるってこと?」
藁科 サイカ:「どうかな。……恋人じゃなくたって、体を重ねることはできると思うけど」
藁科 サイカ:「くるみが、ただの二人じゃなくって恋人が良いって言うなら……俺は喜んで受け入れるよ」
葛野 くるみ:「なんで、そんなこと言うの…」あなたの頬を両手で包んで、寂しそうな顔をする。
藁科 サイカ:「俺は、くるみを縛りたくないんだ」
藁科 サイカ:「君は自由に、君のままで生きているのが一番綺麗だ。……でも俺だって、独占欲はあるんだよ」
葛野 くるみ:「あたしだって…!」
藁科 サイカ:「だから、俺から〝恋人になってくれ〟なんて頼むのは難しい」
藁科 サイカ:「けど、そっか」
藁科 サイカ:指を這わせる。
藁科 サイカ:少しだけ、奥の方へ。
葛野 くるみ:「はっ…んあう」敏感な部分に触れられて、熱い吐息が否応なく漏れ出る。
葛野 くるみ:「なあに、なあに」急かすような声。
藁科 サイカ:「ごめんね。お姫様から求めさせようなんて言うのは心得違いだ」
藁科 サイカ:「大事な子のことだから、大事に、意志に反することはしないように思ってたけど──」
藁科 サイカ:「俺は、脅迫もしてるんだっけな」
藁科 サイカ:背を撫でる手が、脚の〝継ぎ目〟へと触れる。
藁科 サイカ:力尽くではなく──そうっと、優しく。
藁科 サイカ:身体との結合を、正規の手順で外そうと。
葛野 くるみ:「ん……」
葛野 くるみ:そこは、激しい衝撃を与えられるか──もしくは専用の器具が無ければ、外すことは難しい。
葛野 くるみ:しかし…自分の意志で持って、生体電流の流れを止めるなら話は別だ。
葛野 くるみ:あなたがいくばくか脚部に触れていると、その手順はどうあれ、ゴトン、と鈍い音がして、脚の義肢が外れるだろう。
藁科 サイカ:「……ありがとう。女の子を脱がすのに手間取るなんて、初めての時みたいだな」
葛野 くるみ:「ふふ。可愛いね、サイカくん」
藁科 サイカ:「ちょっと拗ねるぞ、もう」
藁科 サイカ:口の先を尖らせて溢した不平。
藁科 サイカ:そのままに──唇を、奪うように重ねた。
藁科 サイカ:それから、
藁科 サイカ:「俺の恋人になってください、いや」
藁科 サイカ:「その体も心も、俺だけのものになってください」
葛野 くるみ:「はっ………」何も抵抗なんかせず。あなたを受け入れる。
藁科 サイカ:「寂しい時に縋り付く相手も、嬉しい時に相談する相手も、全部俺で」
藁科 サイカ:「気持ちよくなりたい時に慰める指だって、俺だけで──ああ」
藁科 サイカ:「義肢にだって、俺は嫉妬するかも知れない。くるみの指が、くるみの体に触れるなんて、ってさ」
葛野 くるみ:少女のように頬を染めて、あなたの声をひとつも漏らさぬよう聞いて。
葛野 くるみ:「うん。いいよ。あたしを、全部あげます。あたしのことも、誰にも渡さないようにする。……だから」
葛野 くるみ:「サイカくんの体も心も、あたしだけのものになってね」
藁科 サイカ:「……だから、教えてくれ」
藁科 サイカ:胎の奥へ届くように、指を──
藁科 サイカ:《異能の指先》
葛野 くるみ:「いいよ」笑う。
藁科 サイカ:他者の記憶を読み取る、異形の力を、忍ばせた。
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を3増加 (51 → 54)
葛野 くるみ:抵抗はしない。異形の力に任せて、自らを暴かせる。
藁科 サイカ:神経と神経が絡みつく。感覚が混ざり合うような違和感。異物が体内に割り入る、淫蕩な悍ましさ。
藁科 サイカ:その内に、指の戯れはきっと、ただ快楽だけを与える奉仕者の者になるのだろうが、
藁科 サイカ:「──そうか」
藁科 サイカ:「そんなことが有ったんだね、くるみ」
葛野 くるみ:熱い指先が体内を掻きまわせば、背中を反らして嬌声を上げる。
藁科 サイカ:「じゃあね、俺からも教えてあげる」
葛野 くるみ:「うんっ、教えて、サイカくんの全部……」荒い息混じりにねだる。
藁科 サイカ:少し痛みがあるくらいに、指先を曲げて──〝そそる〟歌声を鳴らす喉元に、軽く歯を食い込ませて。
藁科 サイカ:それから、睦言の甘さで、
藁科 サイカ:「幸音だよ」
藁科 サイカ:「彼女が、情報を漏らした」
藁科 サイカ:藁科サイカは言って──顎の力を強めた。
葛野 くるみ:ロイスを取得します。 藁科サイカ/恋情:〇/不安/ロイス
御薗橋七葉:その日の稽古が終わり、陽も落ちた頃。丁度居合わせた面々で食事に出た。
御薗橋七葉:稽古場近くの回転寿司店。家族連れで賑わう店の片隅、ボックス席に女三人で掛けていた。
四条 幸音:「はぁっ……」
四条 幸音:椅子に深く体を預け、大きく息をつく。
四条 幸音:「練習でこんなへっとへとになるの、いつぶりだろ……」
椿尾 輪花:三人分のお茶を作り、回している 「おつかれさまです」
御薗橋七葉:「どうも。皆さんお疲れさまでした」
四条 幸音:「あっ……ごめん。椿尾も疲れてるのにありがと」
椿尾 輪花:「いいえー。席が近かっただけですから」
四条 幸音:「お疲れさまです……僕だけミス多くてすいません」
椿尾 輪花:「欲しいものあったら言ってくださいね」 わくわくしながら注文用のタブレットを操作している
御薗橋七葉:「シルヴェストルは出番自体が多いですからね」
御薗橋七葉:レーンからエンガワを取る。
四条 幸音:「やけに楽しそうね、椿尾……あんまりこういうとこ来たことないの?」
御薗橋七葉:「それを考えれば特段ミスが多いわけでもないかと」
四条 幸音:「そう言ってもらえるとありがたいですけど……同じように出番の多い椿尾達はしっかりこなしてますから」
椿尾 輪花:「そうでもないですよ。叱られる時は叱られますし」
椿尾 輪花:「それ以前に、注意の数が少なければ偉いって訳でもないですからね。結局は仕上がった所が大事なんですから」
御薗橋七葉:「プレッシャーも程々なら良い糧になりますが、過ぎれば身を崩しますよ」
椿尾 輪花:アラ汁をオーダーしている
四条 幸音:「それは……そうですね、うん」
御薗橋七葉:「特に貴方はそういうタイプに見えます」コハダを口に運ぶ。
四条 幸音:「うっ……」
四条 幸音:たまごを口に運ぼうとしていた手が止まる。
椿尾 輪花:慎重にアラ汁を啜りつつ、ちらりと様子を伺う。
四条 幸音:「……正直に言うと、」
椿尾 輪花:セルリーダーだ。その性分の近因たる彼女の過去についてはよく知っている。
四条 幸音:「ここまで重圧を感じるものとは思ってませんでした」
四条 幸音:「単純に演じる時間が桁違いに長いっていうのもあるけど」
四条 幸音:「観客からより印象的に映る……注目される、っていうのが」
四条 幸音:「練習でも皆から見られてる、って感覚が全然違うし」
御薗橋七葉:「不安ですか?」
椿尾 輪花:「ほう……」 温かい味わいに息をつきつつ、頷く 「そうね。まさしく舞台の中心になる……そういう時間が多くなるわけだから」
御薗橋七葉:「それとも、怖い?自信が無い?」
四条 幸音:「……正直に言うと、はい」
四条 幸音:「怖いし、不安です。 ……そもそも僕で良いのか、って今でも思うし」
四条 幸音:「でも、もう逃げようもありませんからね」
御薗橋七葉:「はい」タブレットでアジの握りを注文して。
御薗橋七葉:「何が起きようと、2ベルは鳴ります。幕は上がります」
御薗橋七葉:「それに、四条さん。言った筈です」
御薗橋七葉:「私は、貴方なら出来ると思ったからこそシルヴェストルに起用したんです」
四条 幸音:「……はい」
椿尾 輪花:「まあ。逃げちゃうことはできると思うけど」
椿尾 輪花:「私たちがものすごーく困るだけで……四条さんが逃げることはできる」
四条 幸音:「って、ええ……?」
御薗橋七葉:「まあ、それはそうですね」
椿尾 輪花:もちろん、そうはしないだろうという目論見も込みで言っている 「だから、どう? 私たちももうちょっと、四条さんが自信を持てるようにしてあげるのは」
四条 幸音:「いやその、二人共……こっちが逃げられないって肚決めてる時にそんなこと言われても……」
御薗橋七葉:いわしを手に取って小首を傾げる。
御薗橋七葉:「例えば?」
椿尾 輪花:御薗橋さんを見て 「『貴方なら出来る』の辺りをもう少し説明してあげたら? ……実際、今の配役を不思議に思っている人は、四条さんだけじゃありません」
四条 幸音:「自信持てるように、って……こういうの、そんな簡単じゃないと思うんだけど」
四条 幸音:「あっ……そういうこと」
椿尾 輪花:「主演といえば葛野さん、って思っていた人も、それなりにいますしね。どうかしら?」
御薗橋七葉:「成程。そうですね」
御薗橋七葉:煙草が吸いたくなって、お茶を飲んで我慢する。
四条 幸音:「僕もてっきり、葛野がやるものだと思ってたけど……」
四条 幸音:「ただ、うん」
椿尾 輪花:流れてきた赤身とエビマヨネーズ軍艦をえいっと取り、交互に食べる
四条 幸音:「演じてみて、今は少し……分かるような、気もしてる」
椿尾 輪花:「あら」
四条 幸音:「御薗橋さんの意図と合ってるかは分からないけど」
御薗橋七葉:「まずはそちらを聞きましょうか」
四条 幸音:「はい」
御薗橋七葉:食が細く、既にだいぶ満腹になってきている。流れる寿司を取るでもなく眺める。
四条 幸音:ふっ、と一つ息をついて、自分の中にあった考えをまとめる。
四条 幸音:「劇の後半……シルヴェストルの帰還」
四条 幸音:「シルヴェストルがフェリクスに、どんな思いを持っていたのか……ということなんですけど」
四条 幸音:「フェリクスがシルヴェストルに嫉妬を抱いていたように」
四条 幸音:「シルヴェストルもフェリクスに、嫉妬や憎悪のようなものを抱えていた」
椿尾 輪花:「うん」 相槌を打ちながら特に見ず新たな寿司を取る。つぶ貝
四条 幸音:「支えるものであるフェリクスが、どれほど努力しても光を浴びられなかったように」
四条 幸音:「支えられるものであるシルヴェストルは……」
四条 幸音:「『自分一人では何もできない』『自分の栄光は、貰い物だ』」
四条 幸音:「そんな劣等感を感じていたんじゃないか……と」
御薗橋七葉:黒縁の眼鏡の奥から四条を見て、頷く。
御薗橋七葉:「……見えてきたようですね。四条さんなりのシルヴェストル」
四条 幸音:「正しいんでしょうか、って」
四条 幸音:「聞くものじゃないんですよね、多分」
椿尾 輪花:くすりと笑う 「真面目ね」
四条 幸音:「答えを受け取るんじゃなくて、僕の中に答えを見つけないと……」
御薗橋七葉:「まあ、そうですね」僅かに視線が柔らかくなる。
四条 幸音:「……椿尾ほどかは知らないけどね」
御薗橋七葉:「役作りはともかく、もっとメタ的な話なら出来ますよ」
四条 幸音:照れくさくなって椿尾から視線を反らす。
四条 幸音:「メタ?」
四条 幸音:首を傾げる。
御薗橋七葉:「今回のキャスティングで出したかったのは、新しいラオペの形です」
御薗橋七葉:「主要メンバーが抜けて、この劇団はいま変わらざるを得ません」
御薗橋七葉:「復帰公演では、従来のファンにこれまでとは違うラオペの舞台、その形を示す必要があると思います」
四条 幸音:「それは……」
四条 幸音:去っていった仲間たちの顔が浮かび、目を伏せる。
御薗橋七葉:店員が運んできたビールジョッキを受け取る。
御薗橋七葉:「それに……」
御薗橋七葉:「主演に抜擢され、その重圧と役割に戸惑い、悩んでいる今の四条さん」
御薗橋七葉:「ぴったりだと思いませんか?」
椿尾 輪花:またくすりと笑う
御薗橋七葉:何に、とは言わず、枝豆をつまむ。
四条 幸音:「そういう意図もあるんですね……」
四条 幸音:なんとなく予想はしていたものの、口に出されて苦笑する。
椿尾 輪花:「演技っていうのはどうしたって人のするものだからね」
椿尾 輪花:「演劇ならなおさらです。……そこまで踏まえて考えてくれていたなんて、御薗橋さん」
御薗橋七葉:「……この程度、演出家なら当然ですよ」ジョッキに口を付け、半分ほどを一気にあおる。
御薗橋七葉:(……一握りの役者のみが持つ、観客を捉える『華』)
御薗橋七葉:(それとは少し形は違えど、四条幸音の演技にも、人を引き付けるものがある)
御薗橋七葉:(常に目を離せないような、どこか滲み出る危うさ。壊れ物を見ているような)
御薗橋七葉:口元を拭い。
御薗橋七葉:(……彼女なら、葛野の演技を最大限に引き出せる)
椿尾 輪花:「それでも、ここに来てからすぐ、そこまで考えて配置をしてもらえるというのは、大したものだと思います」
四条 幸音:「そこまで考えなきゃいけないのね……演出とか、人を配置するのって」
御薗橋七葉:「ああ、それは……」
御薗橋七葉:日本酒を追加で注文して「単純ですよ。目線が違うんです」
御薗橋七葉:「椿尾さんには言いましたよね」
御薗橋七葉:「ファンなんですよ、ラオペの」
御薗橋七葉:ジョッキの残りを飲み干して、ゴトン、とテーブルに置く。
椿尾 輪花:「ああ、なるほど……ふふ」
四条 幸音:「そう……言われると、なんか」
四条 幸音:「照れるな……」
四条 幸音:「いや、僕個人が褒められたわけじゃないけど……む、むずむずする」
御薗橋七葉:「あまり観客と接する機会は無いですか?」
御薗橋七葉:「四条さん、人気ある方だと思いますが」
椿尾 輪花:「四条さんはやっぱりちょっと、引っ込みがちですからね」
四条 幸音:「……『小さいのによく頑張ってる』みたいな褒められ方が多いんだよ」
四条 幸音:「椿尾や葛野と年、変わらないのに……」
椿尾 輪花:「葛野さんや藁科さんみたいに、自分から前に出て、きゃあ、みたいな感じとは少し違いますし」
椿尾 輪花:「そうそう。どうしてもそういう、見守られる感じになりがちですよね」
椿尾 輪花:どこか楽しそうに四条さんの頭を撫でる
御薗橋七葉:「それなら、この舞台で変えましょう」
御薗橋七葉:「シルヴェストルを演じ切って見せれば、四条さんもきゃあきゃあ言われるようになりますよ」
四条 幸音:「椿尾、それも子供扱いみたいなんですけど……!」
椿尾 輪花:「きゃー」
四条 幸音:「演じきれば……」
四条 幸音:「そう、ですね」
四条 幸音:「っていうか、さ。椿尾もなんか……もうちょっと照れたりとか、しないわけ」
椿尾 輪花:「え? 照れたりしますよ、私も」
椿尾 輪花:「舞台から降りても、演者としての私を求められる……応援されたりするのは、なんだかくすぐったいですし」
椿尾 輪花:「照れくさく思います。まあ、あまり表には出しませんけど……イメージ、ありますから」
四条 幸音:「……」
椿尾 輪花:「?」
四条 幸音:「今までもなんとなく思ってはいたんだけどさ」
四条 幸音:「おつかれさま。いつもありがと」
椿尾 輪花:「……」 目を丸くして 「……えと」
椿尾 輪花:ちょっと困ったような笑み 「ありがとうございます、かな?」
四条 幸音:「ん……変だったかな、ごめん」
御薗橋七葉:「いえ。椿尾さんには皆、お世話になっていますから」
御薗橋七葉:「私からも、ありがとうございます」
椿尾 輪花:「あ、違うの。別に変じゃなくて……ちょっと、御薗橋さんまで」
椿尾 輪花:「私、一応怖いセルリーダーやってるつもりだから、そんなにお礼言われるのは、その、あんまり」
椿尾 輪花:手元の湯呑をもじもじと回す 「想定していなかったというか……」
御薗橋七葉:「……何だか今日は、椿尾さんの意外な一面がよく見られる日ですね」
御薗橋七葉:日本酒を傾け「来て良かったです」
椿尾 輪花:ふう、と息を吐き、僅かに緩んでいた表情を引き締める 「……よし落ち着いた。駄目ですよ。あまり私をからかっちゃあ」
椿尾 輪花:「あとで怖いぞ」
四条 幸音:「ふふ、怖いのは知ってる」
四条 幸音:「だからお疲れ様、なんだけど。 たしかに珍しいわね、そういう照れ方」
椿尾 輪花:「そういう時もあるのです。もしかしたら演技かもですよ?」
御薗橋七葉:「あながち冗談とも言い切れないのが怖いですね」
椿尾 輪花:タブレットでアイスクリームを注文し 「四条さんこそ、私にそんなこと言ってくれるなんて」
椿尾 輪花:「もっと怖がられてると思ってたのに」
四条 幸音:「正直言うと今も怖いけどね。あんた、怒らせたくないし」
椿尾 輪花:「……直に言われるとそれはそれで」
椿尾 輪花:「じゃあいるんですか。怒らせても良いやっていう人」 少し拗ねるように
四条 幸音:「……」
四条 幸音:「秘密」
【Middle first half/椿尾輪花】
GM:
GM:ミドル前半 3手番目 シーンPCは椿尾さんです
GM:誰を指名しますか?
椿尾 輪花:これは当初の予定通りですね。四条さんです。
四条 幸音:あっはい……
四条 幸音:よろしくお願いします
GM:ではメインシーンは椿尾さん 四条さん サブシーンは葛野さん 藁科さん 御薗橋さんになります
GM:情報収集はこちらになります
劇団
情報:噂話/FH
33/50
藁科 50/50
椿尾 41/50
脱退メンバー
情報:噂話/FH/裏社会
10/50
御薗橋 34/50
市内他セル
情報:FH/裏社会
20/60
葛野 30
UGN
情報:噂話/UGN
0/60
四条 幸音:そういえば僕妖精の手レベル5あります
葛野 くるみ:使っていこう使っていこう
四条 幸音:でも自分以外に使うと共有してもらえないかもしれないのよね……
藁科 サイカ:情報を隠蔽できる関係上、自分の判定に使うのが良いのでしょうな
御薗橋七葉:3DX+4 UGN
DoubleCross : (3DX10+4) → 7[2,6,7]+4 → 11
椿尾 輪花:引き続き脱退メンバー行きまーす。<情報:噂話>+バッドフレンド!
椿尾 輪花:8dx
DoubleCross : (8DX10) → 10[2,3,4,7,7,8,8,10]+1[1] → 11
葛野 くるみ:市内他セル調べよう 情報:FHでコネ使用します
葛野 くるみ:3dx+1
DoubleCross : (3DX10+1) → 10[3,4,10]+6[6]+1 → 17
葛野 くるみ:やった~メチャ高
藁科 サイカ:こちらも脱退メンバー行こうかな、《生き字引》+AIDA+思い出の一品
藁科 サイカ:7dx+5 脱退メンバー
DoubleCross : (7DX10+5) → 10[1,3,3,5,7,8,10]+6[6]+5 → 21
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を1増加 (54 → 55)
四条 幸音:UGN行くか!
四条 幸音:4DX+0+0@10 情報(UGN)
DoubleCross : (4DX10) → 8[3,5,6,8] → 8
四条 幸音:全然回らねえなお前ん家!
四条 幸音:一回回って1とかが出たときが一番使いやすいんだけど…・・・
四条 幸音:温存しすぎても仕方ないか、妖精の手一回目使います
椿尾 輪花:共有します。脱退メンバーに+11よ。
四条 幸音:ありがとうリーダー!
葛野 くるみ:引き続き共有しません!
藁科 サイカ:さすがリーダー!
藁科 サイカ:そしてくるみぃ!
葛野 くるみ:えへへ
四条 幸音:四条 幸音の侵蝕率を4増加 (40 → 44)
藁科 サイカ:まぁ「何か分かったら教えて」って言わなかった俺が悪いな
四条 幸音:1DX+10+0@10
DoubleCross : (1DX10+10) → 8[8]+10 → 18
四条 幸音:お、10上がった
藁科 サイカ:つよいぞ
葛野 くるみ:おおすごい
四条 幸音:ついでに財産点2点入れます
四条 幸音:四条 幸音の財産を2減少 (3 → 1)
藁科 サイカ:さらにつよいぞ
葛野 くるみ:えらいぞ~
四条 幸音:こちらの行動は以上、情報をマチます
藁科 サイカ:ふむ、情報受け取りました。共有します!
四条 幸音:わーい
葛野 くるみ:サイカくん~♡
葛野 くるみ:立ち絵もどそう
御薗橋七葉:共有します
四条 幸音:受け取りました、共有します
GM:このようになりました
劇団
情報:噂話/FH
33/50
藁科 50/50
椿尾 41/50
脱退メンバー
情報:噂話/FH/裏社会
42/50
御薗橋 50/50
市内他セル
情報:FH/裏社会
20/60
葛野 47
UGN
情報:噂話/UGN
31/60
藁科 サイカ:情報整理お疲れ様です……
葛野 くるみ:ありがとうございます~!
四条 幸音:めちゃめちゃ大変……お疲れさまです
市内他セル
30/50
・"衣笠"は敵である“ラオペ”が弱体化している間に、一気にシェアを奪って潰そうとしているらしい。
ただ、それほどの力が“衣笠”にあったかは疑問に感じるかもしれない。
“衣笠”セルリーダーは“天眼”との名だけが知られており、姿を表舞台に晒さないことで有名だ。
UGN
10/60
・帳市UGNではここ最近、FH検挙率が向上している。長年の捜査が実を結んだ為としており、市内FHでは緊張が高まっている。
“ラオペ”に対する捜査の手に対しても、注意が必要だろう。
30/60
・他セルにUGNによる検挙・捕縛の被害が多発しているにもかかわらず、“ラオペ”に対しては不自然なほどそれが無い。
また、情報の流れから、FHの情報がUGNに流れている可能性があり、“ラオペ”に対してUGNに何らかの思惑がある、もしくは何らかの工作・取引が予想される。
GM:公開情報は以上です。
椿尾 輪花:お疲れ様です……!
椿尾 輪花:ビル地下の応接スペースは、"ラオペ"セルの中心である。
椿尾 輪花:弱小セルである。元よりそう大きな拠点を構えられる訳ではない。その小さなセルとしてのスペースの中で、満足に人が集まれるのはそこだけという話。
椿尾 輪花:そして、ここの主は椿尾輪花だ。主はその夜、少女を一人その場に呼び寄せていた。四条幸音。
椿尾 輪花:ゆっくりと呼吸するように煙草を吸う。肺を紫煙が満たす。その痺れるような感覚は心地良いが、味はそこまで好きではない。
椿尾 輪花:それでもこれを愛飲するのは、喫煙者との口吻による嫌悪感を少しでも減らすための習慣だからだ。
椿尾 輪花:他人にその味をねじこまれることに慣れるよりは、自分から舌を慣らす方が楽であった。
椿尾 輪花:……時計を見る。じき幸音が来るだろう。少々惜しいが、まだ十分に残っている煙草を携帯灰皿に押し込める。
椿尾 輪花:換気扇の回る音だけが、薄暗い空間に鳴っている。
四条 幸音:軽い足音。
四条 幸音:「来たよ、椿尾。……待たせて悪かったね」
椿尾 輪花:書類の並ぶラックの傍に立っていた 「いいえ。大丈夫」
椿尾 輪花:「待つって言っても、元々ここにいますしね。座って?」
四条 幸音:かすかな煙草の匂い、気づかないふりをする。
四条 幸音:「ん。……僕に何のよう?」
四条 幸音:「こっちに呼び出すってことは、劇とは別の話かな」
椿尾 輪花:「……お寿司って」 おもむろに切り出す
椿尾 輪花:「元々、職人の出す食事ってものでしょ? 今だって、高価な所はとことん高価で。私も、会員制のお店に行ったことがあるけど、すごく緊張させられるような場所だった」
四条 幸音:「……うん」
椿尾 輪花:「でも、回転寿司って、ほら。職人が精魂込めてお客様にお出しする、みたいなお寿司も、機械の上で流れてて」
椿尾 輪花:「最近はタブレットなんかで注文するようになって。ものすごくぞんざいよね」
四条 幸音:「雑すぎてびっくりした?」
椿尾 輪花:「……否定しそこねましたけど、回転寿司自体に行ったことは普通にあるのよ」
椿尾 輪花:「でもそういうこと考えると、つい楽しくなっちゃって。本来尊ばれるものが、どんどん道具みたいになる場所」
椿尾 輪花:「好きなの、回転寿司」
椿尾 輪花:浮かべる微笑みはどこか冷たい
四条 幸音:「……そっか」
椿尾 輪花:四条さんの正面、ソファに腰を下ろす
椿尾 輪花:「四条さん」
四条 幸音:「僕は……そこまで考えたこと、なかったけど」
四条 幸音:「楽しかったよ。こないだは」
四条 幸音:遮るようにそれだけ伝える。
椿尾 輪花:「そうね。だけど違うのよ。今ここにいる私は」
椿尾 輪花:「尊いものを機械の上に流す側の人なの」
四条 幸音:「………」
椿尾 輪花:「そんな、今この瞬間の私に、話すことはある?」
四条 幸音:「そう、だな」
椿尾 輪花:知っている。葛野の髪に紛れ込ませた端末を経て、あの藁科が口にしたその情報は。真か偽か、裏付けは取っていないが、たしかに『そういうもの』の存在は把握していた。
椿尾 輪花:だから彼女を呼び立て、その言葉を待つ。慈悲の類ではない。それが確実な手順だからだ。
四条 幸音:「少なくとも僕の知る限り、関わってるのは僕だけ」
椿尾 輪花:「何に?」
椿尾 輪花:微笑む唇から出る言葉は、金属のように冷たい。
四条 幸音:「情報を漏らした」
椿尾 輪花:「どこへ?」
四条 幸音:「うちを出ていった連中……正確にはその一人に」
四条 幸音:「……確認に余計な手間、取らせて悪かったね」
椿尾 輪花:「……」
椿尾 輪花:ここまでは確認。ここからは疑問だ。
椿尾 輪花:「どうして?」
四条 幸音:RHOを開示します。
四条 幸音:君はセルを脱退したメンバーの一人と仲が良く、今でも隠れて連絡を取り合っている。
互いの近況報告をする中で、君は脱退した元メンバー達がセルに良からぬ企みをしているらしいと知ることになる。
だが、その企ての一部には君が話したセルの近況も利用されていた。明かせば周囲からの非難は避けられないだろう。君はこの秘密を守り通さねばならない。
四条 幸音:「……どうして、か」
四条 幸音:「また」
四条 幸音:「一緒にやりたいって……思っちゃったんだ」
四条 幸音:「あいつらとも」
椿尾 輪花:目を細める 「……一緒にやりたい、か」
四条 幸音:「仲の良かった子と連絡取って、互いの様子を話しあってさ」
四条 幸音:「昨日はこんなことがあった、今日はあいつが何をした……って」
四条 幸音:「くだらない話でこそこそ盛り上がって」
四条 幸音:「そうして繋がりを保っていたら、いつか」
四条 幸音:「もう一度、皆で集まれるんじゃないか、って」
四条 幸音:「……勝手に、馬鹿なことを考えてたんだ」
椿尾 輪花:目を閉じる 「……ふふ」
椿尾 輪花:「それなら、別に"ラオペ"を憎ましく思ってのことじゃないのよね。あなたが疎んでいるのは、分裂してしまったことそのもの」
椿尾 輪花:「……言うなれば部隊の維持。集団の維持。仲の良い人と離れたくないなんて、当たり前の考え。そういう理解で良い?」
四条 幸音:「……うん」
椿尾 輪花:微笑みを浮かべたまま、自分の髪をそっと撫で付ける
椿尾 輪花:「隣に座って良い?」
四条 幸音:「どうぞ」
椿尾 輪花:スカートを抑えながら、四条さんの隣に腰を下ろす。沈み込むソファ。微かな煙草の匂いと、それ以上の少女……あるいは女性らしい香り。
椿尾 輪花:「責めないとは言いません。あなたには相応の罰が必要です」
椿尾 輪花:「でもそれ以上に、理解はしてる。仲良くなれた人と別れることは、不安で悲しいこと」
椿尾 輪花:「あなたの身の上を踏まえれば、尚更ね。そういう繋がりを求めることは理解してるつもり」
四条 幸音:「椿尾……」
椿尾 輪花:笑いかける 「……もっと怒られると思った?」
四条 幸音:「正直に言うと」
四条 幸音:「殺されると思った」
四条 幸音:「……それとも、今はまだ殺せないってだけかな」
椿尾 輪花:「そうね。そういうことをするセルもあるし、そういうことをする選択肢もある」
椿尾 輪花:「でもそれ以上に……私だって同じ。私はこのセルを維持したい。セルを維持するっていうことは、メンバーを維持するということ」
椿尾 輪花:「理解し合えなくて、分裂があって、力を失って。その現状で、更にいたずらにあなたを処断するようなことなんてしません」
椿尾 輪花:「主演と、……今後の看板俳優がいなくなってしまうのも、困りものですし」
四条 幸音:「そう……か」
四条 幸音:天井を見上げる。
四条 幸音:「椿尾」
四条 幸音:「ごめんね」
椿尾 輪花:「良いんですよ。私、単純に貴方のことは好きですし。真面目で、臆病で、それでも頑張っていて」
椿尾 輪花:そっと髪に触れる 「ああ、好きって言っても」
椿尾 輪花:「藁科さんと葛野さんみたいな性的なものでなくて、単純に人として、ですけど……」
四条 幸音:「……きっと君が、僕よりずっと」
四条 幸音:「痛かった、はずなのに」
四条 幸音:「君が一番、我慢しているのに」
四条 幸音:「僕は、君が耐えてる痛みから、逃げた」
四条 幸音:「……ごめん」
椿尾 輪花:「……私だって、そんなに立派ではないですよ」
椿尾 輪花:「滅ぼされることが怖い。どんな手でも使う。貴方が持っていた、殺されるかもしれない、という恐怖は、それはそれで正しいものです。そういうことをすることもある」
椿尾 輪花:もう一度頭を撫でる。慈しむように
椿尾 輪花:「それでも、私はこのセルを守るために、するべきことを全部しているだけです。それも立派な志じゃなくて……」
椿尾 輪花:「私がそうしたいからってだけです」
椿尾 輪花:その小さな頭を抱く。優しく手指を滑らせながら
四条 幸音:「椿尾は」
四条 幸音:「ここが、好き?」
椿尾 輪花:「はい」
椿尾 輪花:「演劇が……好きで。それで、生きていられるから」
椿尾 輪花:「四条さんは?」
四条 幸音:「……僕も、好きだ」
四条 幸音:「気づいたのは、本当に最近で……全部、なくしてしまいそうになってからだけど」
四条 幸音:「この場所と、ここの皆が、好き」
四条 幸音:「……僕はもう、一度死んだ。死んだつもりでいた。だからさ、椿尾」
椿尾 輪花:「ええ」 頭から背中を、優しく撫で続けている
四条 幸音:「好きに使ってくれ」
椿尾 輪花:「……駄目よ、そんな言い方」
椿尾 輪花:「道具みたいに扱うつもりはありません。大事なメンバーなんだから」
椿尾 輪花:「四条さんがそう思っているって分かっただけで、私は十分。……こちらが内通を把握している、っていうだけでも、イニシアチブにはなるしね」
椿尾 輪花:「あなたにはこの場所を好きでいれば良い」
四条 幸音:「……ごめん」
四条 幸音:「また、きついこと考えさせる言い方した」
四条 幸音:「……ありがとう」
椿尾 輪花:「ふふ。別に良いんだけど……でも、そうね」
椿尾 輪花:その頬に手を添えて、顔を上げさせる 「それなら、罰、しちゃおうかな?」
四条 幸音:「?」
椿尾 輪花:《快楽の香気》は本来エキストラにしか通用しませんが、《超越的能力》により、同意する相手には有効です。
椿尾 輪花:同意してください。
四条 幸音:はい……
椿尾 輪花:手を添えた頬とは反対の耳元に、唇をそっと近付け、甘く囁く 「……幸音」
四条 幸音:「あっ……な、」
椿尾 輪花:頬に添えた手からは、影の糸が伸び、その脳に滲んでいる。快楽の中枢をくすぐる糸だ。……まだそっと、撫でる程度。
四条 幸音:「に、これ……僕、なに、が」
椿尾 輪花:「あら。名前を呼ばれただけでドキッてしちゃった?」
椿尾 輪花:「それとも、抱っこされて安心してた?」
四条 幸音:「分からない……知らない、こんなの……」
四条 幸音:顔が火照る。未知の感覚に翻弄される。
椿尾 輪花:優しい手付きが、流れるように背中を撫で続けている。囁く唇が頬に触れる。
椿尾 輪花:一つ行為を変えるごとに、少しずつ、少しずつ影の糸が、快楽を司る中枢をじわじわと締め付けていく。
椿尾 輪花:「私の罰はね……」
椿尾 輪花:「……ちょっと恥ずかしいくらい、幸音を甘やかすこと。大丈夫よ、誰にも教えない」
四条 幸音:「それが……罰……?」
椿尾 輪花:耳を甘く噛む。また快楽が強まる 「私たちだけの秘密にするから」
四条 幸音:頭がぼうっとする。まともに思考できない。
椿尾 輪花:「そう。罰。甘い罰」
椿尾 輪花:「幸音が良い子だったから、とびきり甘くしてあげるの」
椿尾 輪花:背を撫でていた手で腰を抱き寄せる。なだらかな起伏の、しかし柔らかな肢体に捕まえるように。
椿尾 輪花:影の糸は脳をくすぐり続けている。既に、本来そんな行為では発生し得ないほどの快楽を与えている。
四条 幸音:「ん、」
椿尾 輪花:幸音、とたびたび甘く名前をささやきながら、細い手指がそこかしこに触れる。腋。首筋。胸元。そのたびに増す快楽。
四条 幸音:何も考えられなくなる。ダメ。ダメ。
四条 幸音:「つばき、お」
椿尾 輪花:「輪花」
四条 幸音:「りんか……だ、め」
椿尾 輪花:背筋に指が滑る。先程までとの違いは、それが直であることだ。
椿尾 輪花:「だめ? 違うでしょ」
椿尾 輪花:「罰なんだから」
四条 幸音:「そう、だけど……そうじゃなくて」
椿尾 輪花:首筋へ唇が吸い付く。くちゅ、という音。快楽が強まる。
四条 幸音:「サイカと」
四条 幸音:「けんか、してほしくない……」
椿尾 輪花:「……」
椿尾 輪花:行為を止めて、その顔を見る。
椿尾 輪花:「……あなたも藁科さんと、そうなの?」
四条 幸音:「わかんない……」
四条 幸音:「したわけじゃないし、こばんだし」
椿尾 輪花:「こばん?」
四条 幸音:「拒ん、だ。 ……迫られて」
椿尾 輪花:「……へえ」
椿尾 輪花:「でも言ったでしょ。これは罰。今のあなたは、拒んじゃダメ」
椿尾 輪花:「それに、藁科さんなら大丈夫。あの人、葛野さんと寝てるみたいだし……」
四条 幸音:「……あいつ、今、どうしようとしてるのか」
四条 幸音:「僕にもわかんない……」
椿尾 輪花:「どうしようとしているか、ね」
四条 幸音:「ちゃんと、なかよくできる……?」
椿尾 輪花:「……もちろん」
椿尾 輪花:「少なくとも藁科さんとは、仲良くできると思ってます」
椿尾 輪花:「……あなたがこれ以上、この場であの人のことを口にしなければ」
四条 幸音:「……こわいよ、もう」
椿尾 輪花:また影の糸が、四条さんの快楽を一段深める。
椿尾 輪花:「怖くても良いの」
椿尾 輪花:「だから見せて、全部……あなたのこと」
四条 幸音:「……うん」
椿尾 輪花:――当然、この行為は罰である。快楽により全ての膜を剥がしこれ以上の秘密がないかを確かめるための。
椿尾 輪花:彼女への好意にそこまでの偽りはない。だが……信用するためには、信用できるということを確かめずにはいられない。
椿尾 輪花:椿尾輪花はそういう生き方をしている。
椿尾 輪花:四条 幸音/○好意/憐憫
椿尾 輪花:唇を塞ぐ。初めは浅く、優しく。
四条 幸音:ロイス 椿尾 輪花 ◯P:好意 N:悔悟
椿尾 輪花:だがすぐにそれは深く交わり、舌と舌との戯れになる。……快楽を一気に強める。
椿尾 輪花:「……ほら。見せて、幸音。全部ぜんぶ」
椿尾 輪花:「拒ませなんかしないわ」
葛野 くるみ:帳市の繁華街は、我がラオペの稽古場ともそう遠くない場所にある。
葛野 くるみ:地方都市の繫華街らしく、一歩路地裏に足を延ばせば歓楽街ともつながっており、ネオンにぎらぎらと彩られたホテルや風俗の看板が目立つ。
葛野 くるみ:そんな路地裏にも近い繫華街の一角で、ばったりと出会ってしまった。まるで何かのドラマみたいに。
葛野 くるみ:こちらはサイカくんと腕を組んでいる。どこにでもいるカップルのように。
藁科 サイカ:「……おや」片腕と体温をくるみに差し出して歩いていた、その矢先だった。
御薗橋七葉:「……」
葛野 くるみ:「あ、七葉ちゃんじゃない?」組んでない方の手で、通り過ぎる女を指さす。
御薗橋七葉:こちらは一人。コンビニ帰り、片手に缶ビールでごつごつと歪に膨らんだビニール袋を提げて、咥え煙草で歩いていた。
藁科 サイカ:「これはまた、幸運な偶然だ! お出かけの最中かな、七葉さん?」にこやかに、組んでいない方の手を掲げて。
御薗橋七葉:視線が二人に、次いで二人の組んだ腕に移る。
御薗橋七葉:「……そうですが」
御薗橋七葉:「お二人は、こんなところで何を?」
藁科 サイカ:「宣言した通りの、デートの続き。名残惜しくってね」
葛野 くるみ:「ふふふ。そうそう」紅潮した頬で、クスクス笑う。
藁科 サイカ:舞台上の声の出し方、抑揚。さらりと吐き出した台詞には、サイカ自身のものでない香水の匂いが混ざる。
御薗橋七葉:「……そうですか」
御薗橋七葉:鼻腔を混ざり合った香水の匂いがくすぐる。
藁科 サイカ:「けれども、この巡り会いには感謝したい! 思えば俺達、お互いのことを聞いてはいたけれど」
藁科 サイカ:と、くるみの方へ視線と笑みを、観客席の印象に残るような緩慢さで向けて、
藁科 サイカ:「つい熱が入ってと言うか……台本の読み合わせなんかは、まだでね」
藁科 サイカ:「そこへ七葉女史が現れたのはこれはもう、運命と言っても良いのではないだろうか!」
御薗橋七葉:「はぁ」気の抜けた返事を返す。
葛野 くるみ:「うんっ、運命だねー」くすくすと、蕩けるような笑みでもってその視線を受け入れる。
御薗橋七葉:恐らく寝たのだろう。特段珍しいことではない。元より行きずりの相手に平気で抱かれるような女だ。
御薗橋七葉:胸の内を何かが蝕むのも、あまりにも無意味なことだ。ただ、二人の姿は焦点から外す。
葛野 くるみ:「どうするどうする、台詞の練習する? あっちに公園あるよ」
藁科 サイカ:「それは良い案だよくるみ!」ず、と半歩踏み出す。意図してずらした焦点をまた狂わせるようにして。
藁科 サイカ:「台詞練習もそうだが、俺は、そうだな……折角だ。七葉さんと語り合うことも楽しみたい」
御薗橋七葉:「……私、帰るところなんですが」露骨に嫌そうな顔をして見せる。
葛野 くるみ:「あははっ」自分より背の高い彼女に半ば振り回されるような格好になっているのが楽しく、けらけらと笑う。
御薗橋七葉:「お二人ですればいいでしょう」
葛野 くるみ:「あたしも七葉ちゃんとお話ししたーい」
藁科 サイカ:「俺としては、残念に思いつつその提案を呑むのも手だと思うが──」
藁科 サイカ:きゅっ、と表情を引き締めて。
藁科 サイカ:「リュシエラは果たして、シルヴェストルが死を迎えるように仕向けたと思うかい?」
葛野 くるみ:「…?」首を傾げる。
藁科 サイカ:「つまりだ。シルヴェストルがリュシエラの領域に至るには、死を迎えねばならなかった」
藁科 サイカ:「その為に、傲慢で愚かなギョームを誑かすことは、悪魔リュシエラなら容易いのではないだろうか!」
藁科 サイカ:「……と思うのだが、どうだろうね」
御薗橋七葉:藁科の芝居がかった口調も、葛野の笑みも、何もかもが神経を逆撫でする。肌寒い春の夜だというのに、熱帯夜に置かれたような不快さ。
御薗橋七葉:吐き気がする。お前達のセックスと、私の舞台を混同するな。
御薗橋七葉:二の腕に鳥肌が立ち、腹の底の方から重いものが込み上げてくる気分だ。
葛野 くるみ:「へーっ、そもそも、シルヴェストルに会えるようにリュシエラが企んでたってこと?」
藁科 サイカ:「俺にはそう思えた、ってこと。傲慢なギヨームは己の栄達にしか興味が無い。シルヴェストルの立場は疎ましく思っても、命にまでは拘泥しないだろうに」
藁科 サイカ:「それでも、執念と慎ましい策謀の才知で彼を殺したからには、誰かの手引きがあったのではないかとね」
藁科 サイカ:「だってそうだろう。ギヨームはなるほど見目良い悪党だが、シルヴェストルを殺せるほどの大器ではあるまい!」
葛野 くるみ:「へええ…」思案するように唇を指でなぞる。ピンクのグロスが落ちている。
葛野 くるみ:「悪魔リュシエラって、本当にシルヴェストルを愛してるんだねー」
葛野 くるみ:「こないだ、七葉ちゃんと輪花ちゃんとも、そういう話したもんね?」
藁科 サイカ:「ほう? それは興味深いね、どのような話をしたんだい七葉さん」
藁科 サイカ:かくっ、と小首を傾げて、腕を抱く恋人の方へ耳を寄せるように。
御薗橋七葉:カシュ、とプルタブの開く音。泡が溢れるのも気にせず、苦酒を喉に流し込む。
葛野 くるみ:「あたしじゃなくて七葉ちゃんに聞いてるんでしょー」クスクスと笑っている。
御薗橋七葉:「……大したことでは無いですよ」
御薗橋七葉:「役作りの相談をしただけです」
御薗橋七葉:すぐさま踵を返して、この場から立ち去りたい衝動に駆られる。
御薗橋七葉:どうして?そんな必要は無い筈だ。
御薗橋七葉:分かっている。葛野くるみがこういう女だと、元から、ずっと前から分かっていたはずだ。
御薗橋七葉:誰と寝ようが、誰と付き合おうが、どうでもいい。私には関係のないことだ。
御薗橋七葉:握り締めた酒缶が、パキン、と固い音を立てる。
葛野 くるみ:「そうそう、役作りの相談でね。リュシエラはどういう人物なのかって話をしたの」
藁科 サイカ:「ほう。悪魔に対して人物像を読み解くのは、中々に面白いアプローチだね」
葛野 くるみ:「そこで話したのは、立場も忘れるくらい愛に生きる女っていう……。だってあたし、モデルがいた方が演じやすいからさ」
葛野 くるみ:「でも七葉ちゃんに、それは自分で解釈しなきゃ意味ないって言われちゃったんだけどね」
葛野 くるみ:ねー、と笑いかける。
藁科 サイカ:「なるほどなぁ。……その人物像だと、中々モデルを探すのは難しそうだ。そうまで情熱を誰かに傾けられる人というのは」
藁科 サイカ:「だが、どうだろうか、くるみ」
藁科 サイカ:「今の君は、君自身をモデルにしてリュシエラを演じられそうかい?」
葛野 くるみ:「……」ぱちぱちと瞬きして、サイカくんを見る。
葛野 くるみ:それがふっと、嬉しそうな少女の笑みに変わる。
葛野 くるみ:「立場を忘れるくらい、愛に振り回されて、誰かに夢中になる……」
葛野 くるみ:「うんっ。できる気がしてきた、よー?」
藁科 サイカ:スポットライトの真ん中に立つような、眩い笑顔を浮かべた。
藁科 サイカ:そして感慨深そうに、一度、大きく頷いた。
葛野 くるみ:パッとサイカくんから手を離して、七葉ちゃんに寄る。
葛野 くるみ:「ねえ、七葉ちゃん。七葉ちゃんはさー、皆にぴったりの役だと思って配役してるんでしょ?」
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:流し見の映画のように、午睡に見る夢のように。会話が思考の表面を滑っていくのは、きっとアルコールとニコチンのせいだ。
御薗橋七葉:その身体の奥を、彼女とのセックスを知っている者がいくらいても、その笑顔を、心を知っているのは自分一人だけなのだと。
御薗橋七葉:かつて──二年前の私は、そう本気で信じていた。
葛野 くるみ:ネオンを浴びて、長い銀髪と切れ長の瞳が、爛々と輝く。
葛野 くるみ:あなたの返答を待つこの瞬間、間違いなく、あなただけを見つめている。
御薗橋七葉:あまりにも愚かだった。お伽噺を信じている子供にも等しい、無知で蒙昧な、ただの夢想を現実だと思いたがる馬鹿だった。
葛野 くるみ:世界にあなたしかいないような顔で。他者の匂いを混じらせながら。
藁科 サイカ:嫉妬の色など、何処にもない。
藁科 サイカ:そこにいる二人が会話することは、別になんでもないのだ。そう思っているかのように、
藁科 サイカ:今はライトの外にいる役者は、ポーズだけを取って、綺麗な微笑みを浮かべて、じっと立っている。
御薗橋七葉:かつて褥で見たのとあまりにも変わらないその視線、その目、その顔に。
御薗橋七葉:「っ、ぐ……!」
御薗橋七葉:口元を抑えて、蹲る。
葛野 くるみ:「っえ、大丈夫?」
藁科 サイカ:「っと──具合が悪いのかい、七葉さん」
藁科 サイカ:思わず一歩、役柄を忘れて踏み出そうとする。
御薗橋七葉:激しく咳き込み、黒髪が乱れる。ビニール袋を握り締め、ガサガサと音が鳴って。
御薗橋七葉:「……何とも、無いわ」
御薗橋七葉:唸るような低い声が漏れる。
御薗橋七葉:「少し、飲み過ぎただけ」
藁科 サイカ:「無理をしちゃいけないよ、あなたは大事なラオペのメンバーだ」
藁科 サイカ:「なんなら、俺達で送っていこうか? いや、その方がいいな……くるみ、そっちの腕を支えてあげられるかい?」
藁科 サイカ:そう良いながら、恋人同士のように絡ませていた腕を解いて、七葉の脇へ立とうと。
葛野 くるみ:「はあい」素直に頷いて、自分に近いほうの腕を取る。
藁科 サイカ:「状況が状況だ。襲撃の危険もある」声を潜め、真実、心配しているような響きを伴って、
藁科 サイカ:「誰かに目をつけられる前に、輪花達と早めに合流しよう。……苦しいかも知れないけど、歩くよ」
御薗橋七葉:「ッ……!」
御薗橋七葉:触れられようとした瞬間、二人の腕を乱暴に払いのける。
藁科 サイカ:「──っと」
葛野 くるみ:「あっ」腕を払いのけられ、声を上げる。
御薗橋七葉:「触らないで」
藁科 サイカ:腕を取って歩きだそうとした、まさにその時。
藁科 サイカ:手を振り払われ、一瞬だけ驚くような表情を見せたが、
御薗橋七葉:息を荒げ、自らの身を抱くようにして。
藁科 サイカ:「あ、ああ……すまない。そこまで具合が悪いとは思ってなかったんだ……」
御薗橋七葉:「……ごめんなさい。でも」
御薗橋七葉:「……吐きそうなの。服、汚すと悪いから」
御薗橋七葉:そう言いながら、込み上げる二人への嫌悪感を押し殺す。
葛野 くるみ:「……」その様子をじっと見て、「あたし、お水買ってくるよ!」
葛野 くるみ:「そのままじゃ心配だし。サイカくん、七葉ちゃんの様子見ててくれる?」
藁科 サイカ:「ああ、頼む。……気をつけるんだよ、くるみ」懐に手を入れ、引き出した財布を投げ渡す。
葛野 くるみ:「はあい。ありがとー」ニコッと受け取って、ぱたぱたと近くのコンビニに走っていく。
藁科 サイカ:そうして自分は、手を触れこそはしないけれども、七葉の傍に立ったままで、
藁科 サイカ:「……無理はしないで。苦しかったら、セルの皆を呼ぼう」
御薗橋七葉:「……そこまでのことじゃないです。お構いなく」
藁科 サイカ:あくまでもこの心配は、本心なのだ。演義ではない。それがくっきりと分かるほど、藁科サイカは〝わかりやすい〟。
御薗橋七葉:微かに震える手でライターを取り出し、煙草に火をつける。
御薗橋七葉:煙草を吸い始めたのは、葛野くるみと別れた後のことだ。
藁科 サイカ:「それならいいんだけど……どうしたんだい、本当に。そこまで体調を崩すほど飲むなんて」
藁科 サイカ:「……もし、もし俺で力になれる事ならさ。いや、そうでなくても……話してどうにかなる愚痴くらいなら」
藁科 サイカ:わかりやすく、善意なのだ。
藁科 サイカ:「何も覚えてないような顔をして、聞くことはできるよ」
御薗橋七葉:ぽっかりと胸に空いた穴を満たすものが必要だった。何でもいいから、思考を鈍らせてくれるものが必要だった。
御薗橋七葉:だが今、煙が肺を満たしても、思考が止まってくれることはない。
御薗橋七葉:その善意が、余りにも苦しい。
御薗橋七葉:不快。気持ちが悪い、と言っても良かった。
御薗橋七葉:元々潔癖症の気があった。清潔さというより、人に対して。
御薗橋七葉:肉体関係を持ったのも、持っていいと思ったのも、葛野が最初で最後だ。
御薗橋七葉:屈み込んだまま、藁科のその手を見る。
御薗橋七葉:(葛野を、抱いたその腕で)
御薗橋七葉:(私に触るのか)
藁科 サイカ:「……七葉さん?」
藁科 サイカ:膝を曲げる。
御薗橋七葉:「……」
藁科 サイカ:立っていれば、ほとんど視点の高さは変わらない──彼女の方が少しだけ高いか。
藁科 サイカ:今はかがみ込んでも背中が真っ直ぐなだけ、僅かに高くから見下ろしている。
御薗橋七葉:黙り込む。今この場で藁科を罵倒して、平手打ちの一発でも喰らわせてやれば、少しは気が晴れるだろうか。
藁科 サイカ:「俺にとって、あなたは──あなたも、大切なひとなんだ」
御薗橋七葉:……否だろう。結局のところ、自分はそこまで吹っ切る事すら出来ない凡人だ。
藁科 サイカ:「ラオペがあんなことになって、みんな居なくなって、そんな仲で」
藁科 サイカ:「俺達の傍に居てくれて、目が覚めるような素敵な脚本を作ってくれた」
藁科 サイカ:「俺じゃあ頼りないかも知れないけど、でもさ。出来る事なら……」
藁科 サイカ:「あなたの力になりたい……って思うのは、ダメ……かな?」
御薗橋七葉:公園の街灯が、藁科サイカを照らしていた。
御薗橋七葉:スポットライトのような灯は、真実、喝采を浴びるべき彼女を照らし出し。その姿は、残酷なほど美しく。
御薗橋七葉:私だけがその外。舞台にも立てず、暗がりの中にいた。
御薗橋七葉:「……優しいですね、藁科さんは」
藁科 サイカ:「違うよ、自己中心的なだけだ。……だから俺はギヨームなんだろう?」
藁科 サイカ:「自分が、その領地の王になりたいだけ。民から愛されたいだけ。喝采の中心にいたいだけ」
藁科 サイカ:「その為にシルヴェストルを殺してしまえる男こそ、俺にはお似合いなんだ」
藁科 サイカ:「……だから俺、本心から七葉さんをすごいと思ってるんだぜ」
御薗橋七葉:「……はい?」
藁科 サイカ:「あなたは、ひとを凄く良く見てる。……腹の底の底まで。綺麗な部分も、汚い部分も」
藁科 サイカ:「もしかしたら、だからあなたは……大変なのかもな」
藁科 サイカ:「こうやって俺が傍に立ってる時も、俺の汚い部分が見えたりして。……それで、俺が苦しめてるのかな」
御薗橋七葉:──逆ですよ。
御薗橋七葉:そんなことは、口には出さない。
御薗橋七葉:「……ギヨームは……確かに自己中心的なキャラクターです」
御薗橋七葉:「でも、それは悪いことですか?」
藁科 サイカ:「時と場合によるし、人の上に立つ器量ではないだろうが」
藁科 サイカ:「一個人として幸せを追求するならば、否、と答えようか」
御薗橋七葉:「でも、それが人の在り方です」
御薗橋七葉:「自らの身を滅ぼすとしっていても──手を伸ばさずにはいられない」
御薗橋七葉:「あるいは権力。上昇志向」
御薗橋七葉:「あるいは──愛」
藁科 サイカ:「……………………」
藁科 サイカ:左側の口角だけを吊り上げる、歪な笑み。
藁科 サイカ:「本当に、良く見てるなぁ……」
藁科 サイカ:「それとも俺が分かり易すぎるだけか?」
御薗橋七葉:「時に観客は、主役よりも悪役に惹かれるものです」
藁科 サイカ:「なら、あなたにも惹かれて欲しいな。……今、心底そう思った」
葛野 くるみ:その辺りで、遠くからブンブンと手を振って走り寄ってくる。
御薗橋七葉:「……それは、彼らの心情が、綺麗ごとよりもずっと人らしい心に寄り添うものだから」
御薗橋七葉:「貴方なら、他の誰よりも良いギヨームが演じられます」
葛野 くるみ:「買ってきたよーーっ」コンビニの袋をぶら下げて。
藁科 サイカ:「最も愚かで傲慢な男、俺の最期のはまり役──」
藁科 サイカ:「──おっ」歪んだ笑みは消え失せて、足音の方へ、嬉しそうな顔になって振り返る。
藁科 サイカ:「おかえり、くるみ。危ないことはなかったかい?」猫撫で声にも近い甘ったるさで、〝恋人〟を迎えた。
葛野 くるみ:「うんっ、ただいまー」嬉しそうに笑みを浮かべて、出迎えられる。
葛野 くるみ:「お水とポカリにしたけど、七葉ちゃんどっちがいい?」
御薗橋七葉:「……水でいいわ」
葛野 くるみ:「はいはい」ミネラルウォーターのペットボトルを渡し、財布をサイカくんに返し。
葛野 くるみ:「二人とも、なんの話してたの?」首を傾げる。
御薗橋七葉:「ただの、役作りの話」ボトルを受け取って立ち上がり、それを飲むでも無く踵を返す。
藁科 サイカ:「ギヨームという男についての解釈を聞いてたんだ。さすがに七葉女史、大変に参考になったよ」財布を受け取り懐へしまって、
御薗橋七葉:「……ご迷惑おかけしました。それでは」
藁科 サイカ:「気にしないでくれ。俺達はみんな、あなたを大事に思ってるんだから」
藁科 サイカ:「そうだろう、くるみも」
葛野 くるみ:「うん! もちろん」
御薗橋七葉:返す言葉は無い。二人に背を向け、夜の闇へと去っていく。
葛野 くるみ:言いながら、サイカくんに再び身を寄せる。ただ目を細めて、その後姿を見送った。
【Middle first half/葛野くるみ】
GM:ミドル前半 4手番目 シーンPCは葛野さんです
GM:誰を指名しますか?
葛野 くるみ:はーい これも予定通りなんですけど
葛野 くるみ:御園橋さんを指名します
藁科 サイカ:キャー
GM:ではメインは葛野さん 御薗橋さん サブは椿尾さん 藁科さん 四条さんになります
四条 幸音:はーい
GM:情報項目はこちらです
劇団
情報:噂話/FH
33/50
藁科 50/50
椿尾 41/50
脱退メンバー
情報:噂話/FH/裏社会
42/50
御薗橋 50/50
市内他セル
情報:FH/裏社会
20/60
葛野 47
UGN
情報:噂話/UGN
31/60
葛野 くるみ:劇団いこうかな 情報:FHでコネ使います
葛野 くるみ:3dx+1
DoubleCross : (3DX10+1) → 9[8,8,9]+1 → 10
椿尾 輪花:脱退メンバー開けきろ。コネとバッドフレンドの組み合わせ!
椿尾 輪花:8dx 脱退メンバー
DoubleCross : (8DX10) → 10[1,4,5,5,7,9,10,10]+5[3,5] → 15
椿尾 輪花:そういうのは溢れない所でなあ
葛野 くるみ:あと8だったんだ…w
御薗橋七葉:3DX UGN
DoubleCross : (3DX10) → 8[2,7,8] → 8
藁科 サイカ:では、UGNをやってみよう
藁科 サイカ:7dx+5 UGN
DoubleCross : (7DX10+5) → 10[2,6,7,9,10,10,10]+9[4,6,9]+5 → 24
四条 幸音:すご
藁科 サイカ:あっと、《生き字引》使用です!
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を1増加 (55 → 56)
葛野 くるみ:UGN幹部と一体何を…?
四条 幸音:市内他セル行きます
四条 幸音:4DX+1+0@10 情報(FH)市内他セル
DoubleCross : (4DX10+1) → 7[2,2,6,7]+1 → 8
四条 幸音:君、出目弱くない……?
葛野 くるみ:幸運………?
四条 幸音:全然10でねえなお前
藁科 サイカ:リアルラックが安定のサムトーさんだからか……
四条 幸音:それは言わない約束でしょ!?
四条 幸音:妖精の手は一回使用済みで100%込であと5回……
四条 幸音:まだ温存で良いかなあ
四条 幸音:以上!
葛野 くるみ:ふむふむ これは共有します~
四条 幸音:わぁい!
藁科 サイカ:ステイ!
四条 幸音:確認しました ポイント共有で!
藁科 サイカ:あっそうか、ポイント製だ
藁科 サイカ:申し訳ない、ポイント共有します! 明言してなかった!
椿尾 輪花:共有しましょう。物事ははっきりさせなきゃね
GM:ではこのようになりました
劇団
情報:噂話/FH
43/50
藁科 50/50
椿尾 41/50
(済)脱退メンバー 50/50
市内他セル
情報:FH/裏社会
28/60
葛野 47
UGN
情報:噂話/UGN
55/60
御薗橋 39
脱退メンバー
50/50
“ブラックハイド”は現在、“衣笠”セルに移籍している。セルリーダーである“天眼”の信頼を得る為に、古巣である“ラオペ”を潰そうとしているようだ。
計画には他の脱退メンバーも加わっているらしく、セルメンバーへの襲撃や情報漏洩に警戒する必要があるだろう。
葛野 くるみ:"ラオペ"セルよりそう遠くない場所にあるオートロックマンション。それが葛野くるみの住居だった。
葛野 くるみ:少女らしい調度品が揃えられているが、それ以上に目立つのは、収納を越えて溢れかえった大量の服飾品や雑貨品だ。
葛野 くるみ:他人に贈られてきたものが中心だが、自分で衝動的に買ったものもある。
葛野 くるみ:それらが葛野くるみの心を満たすことはなかったことは、乱雑に品々が積まれた惨状が如実に語っていた。
葛野 くるみ:そんな中で部屋の主である葛野くるみは、床に突っ伏すように倒れ込んでいた。
葛野 くるみ:日中、無理やり義肢を外した弊害か、突然四肢の神経接続が断ち切れ動けなくなった。
葛野 くるみ:這いずりながらスマートフォンを舌で引き寄せ、音声認識ソフトを使って…御園橋七葉を呼び出す。
葛野 くるみ:返事は聞かなかった。用件だけ伝えて、あとは黙り込んだ。
葛野 くるみ:彼女が来ると分かっていたから。
御薗橋七葉:……それからしばらくがして。玄関のドアが開く音。
御薗橋七葉:静かな足音。次いで、パチン、という小さな響きと共に、部屋の灯りが点されて葛野を照らし出す。
御薗橋七葉:「…………」
葛野 くるみ:「………」いつもの笑みはどこにも浮かんでいない。
御薗橋七葉:しばし無言で、突っ伏したその姿を見下ろす。
葛野 くるみ:明らかに不機嫌そうなことが見て分かる。
御薗橋七葉:「……またなの?」
葛野 くるみ:「………そうだよ」這いずりまわって、乱れた髪や服を直すこともできず。
葛野 くるみ:さながら、暴れてそのまま突っ伏したような格好で、あなたを見つめている。
葛野 くるみ:「何?文句?」
御薗橋七葉:「思っただけよ」
御薗橋七葉:「無様だなあって」
葛野 くるみ:「はあ?!」苛々と言う。「あんたの方がよっぽど無様だと思うけど!?」
葛野 くるみ:「さっきの…あたしとサイカくん見てたときの、七葉ちゃんの顔!」せせら笑う。
葛野 くるみ:「面白かったなー…すごいショックだったんだよね?ね?」
御薗橋七葉:「……そう」見下ろしたまま言う。普段から身長差があるが、今は文字通り見上げる高さから。
御薗橋七葉:「そうよね」
葛野 くるみ:「なに。ひとりで勝手に納得するのやめてよ」
御薗橋七葉:奇妙に落ち着いていた。不思議な納得があった。
御薗橋七葉:嫌気が差していた。葛野くるみのデリカシーの無さに。
御薗橋七葉:そして何より、この状況に僅かばかりの嬉しさを感じずにはいられなかった自分自身に。
御薗橋七葉:でも、やはり。その言葉を聞けば、この女はこうなのだと納得できる。
御薗橋七葉:葛野に罵倒される度、安心できる。やはりこいつは見るべきところなど何も無い、最悪のクズなのだと。
御薗橋七葉:「藁科さんを呼べば良かったでしょ」
御薗橋七葉:「何で私なの」
葛野 くるみ:「…………」顔を背ける。
葛野 くるみ:「ねえ、早く。起こしてよ」答えず、ねだる。
葛野 くるみ:「行きたいの、あれ。あそこ」
御薗橋七葉:「……何?」答えが分かっていながら、しらばっくれる。
葛野 くるみ:「ねえ…!何で分かんないの?分かってるでしょ…!」焦るような声。
御薗橋七葉:「さあ?分からないわ」
御薗橋七葉:「さっきの質問、答えないなら帰る」
葛野 くるみ:「はあ…!? ふざけないでよ……」
葛野 くるみ:「トっ…トイレ!トイレだってば……ねえ!」
御薗橋七葉:無言のまま葛野を見下ろし、背を向け、本当に帰ろうとする素振りを見せる。
葛野 くるみ:「七葉ちゃんっ……」焦った声がそれを追いかける。「やだ………」
葛野 くるみ:「……七葉ちゃんしか、頼めないもん…!こんなの………」
御薗橋七葉:ドアノブに手を掛けたところで、背にそれを聞く。
葛野 くるみ:「やだぁ……あたしのこと、お漏らしさせて放置するの…? それ、他の人に見せるの…?」
御薗橋七葉:凍り付いたように動きを止め、そのまま十秒近く、葛藤と逡巡の間があって。
葛野 くるみ:「良いよ、良いもん、そうするから…。お漏らしして、そのまま、男の人呼ぶから。助けてって言うから」
御薗橋七葉:「……チッ……」
御薗橋七葉:舌打ち。苛立ちと諦観の。
御薗橋七葉:物に溢れた部屋をずかずかと歩いて、葛野の身体を抱き上げる。
御薗橋七葉:「風呂?トイレ?どっち」
葛野 くるみ:「あっ」力が抜けた分、いつもより重いものの、それでも軽々と抱えられる。
葛野 くるみ:「トイレ」恥ずかしそうな声。
葛野 くるみ:「玄関のそば、右手のドア」
御薗橋七葉:「知ってる」
御薗橋七葉:そのまま抱えていき、二人では窮屈なトイレに入る。
葛野 くるみ:「うん……」可愛らしい柄のトイレマットが置かれている。
葛野 くるみ:二年前のまま。
葛野 くるみ:「脱がせて」
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:服に手を掛ける。スカートを脱がせて、下着も剥ぎ取って。
葛野 くるみ:白い裸身が露わになる。秘部が晒され、恥ずかしそうに目を伏せ。
葛野 くるみ:「ん……」
葛野 くるみ:身動ぎすれば、そのまま水音が叩く音がする。
御薗橋七葉:普通に便座に座らせると落ちるので、後ろから抱える。男性が小用を足すような形を取らせて。
葛野 くるみ:「やだぁ、この格好……」
葛野 くるみ:「全部、七葉ちゃんに見られちゃう……」
御薗橋七葉:「便座にハマってもいいならそっちにするけど」
葛野 くるみ:秘部を曝け出すような格好で、一番恥ずかしい行為をしながら泣き言を言う。
葛野 くるみ:「なんで意地悪言うの」
御薗橋七葉:「事実でしょ」
葛野 くるみ:「はやく拭いてってばぁ」
御薗橋七葉:「ん」
御薗橋七葉:濡れたそこを丁寧に拭く。なるべく意識しないように。ただの介護と変わらない、と自分に言い聞かせて。実際、そうでもあるのだが。
葛野 くるみ:「んっ…、あう、やだ」
葛野 くるみ:ゆるゆると首を横に振っている。「やだぁ……」
御薗橋七葉:その姿に、嗜虐心が首を擡げないと言えば嘘になる。傍若無人な、悪魔のような女が、今自分の前で赤子にも等しい無力さで屈辱を味わっている。
御薗橋七葉:だがそれに身を任せれば、またこの女に溺れるのも同じことだ。
御薗橋七葉:耳から脳に響いてくるようなその声を、理性でシャットアウトする。
御薗橋七葉:「ほら、終わったわよ」
葛野 くるみ:「ん……」
御薗橋七葉:抱えて立ったままでは両腕が塞がり、服が着せられない。トイレのドアを開き、胡坐をかいてその上に葛野を座らせる。
葛野 くるみ:「ありがと」小さな声で、もじもじと礼を言って。しかし、やはりあなたに身を任せたまま。
葛野 くるみ:「安心するー、この姿勢」クスクスと笑う。
葛野 くるみ:「なんか懐かしくない?」
御薗橋七葉:「……」肯定はしない。否定も。
御薗橋七葉:幼児にそうするように、下着とスカートをまた着せて。
御薗橋七葉:「……いつ頃直りそうなの?」
御薗橋七葉:あくまで事務的に言う。
葛野 くるみ:「……直る?」スカートから伸びる白い足が、廊下に放り出されている。
葛野 くるみ:「直らないと思うよー、ずぅっとこのまま」
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:「……は?」
葛野 くるみ:あなたに身を預けて、腹式呼吸が身に着いた身体は、胸から腹がすうすうと動くのが分かるだろう。
葛野 くるみ:「へ?」
葛野 くるみ:「あたしの接続不良のハナシでしょ? 初期不良だから直らないって…言ったことなかったっけ?」
御薗橋七葉:「そこまでは言ってない……」息を吐く。
御薗橋七葉:「人並にまともに動けるようになるのは、いつ?」
御薗橋七葉:「このまま泊まり込みであんたの世話しなきゃいけないの?」
葛野 くるみ:「あっ、えっとねー。いっつもお願いしてるフリーの整備屋さんがいるから、その人呼べば……」
葛野 くるみ:「……してくれないの?」
葛野 くるみ:「あたし、七葉ちゃんといろんなお話したいよ」
御薗橋七葉:「……何よ、今更」
葛野 くるみ:「もー。あたしのこと拒否ってたのは、七葉ちゃんじゃん」
御薗橋七葉:そう、今更だ。何もかもが遅すぎる。
御薗橋七葉:決定的な歯車がズレて、何もかもが終わり果ててしまっている。
御薗橋七葉:それが御薗橋七葉と葛野くるみの関係だ。
御薗橋七葉:……その筈だ。
御薗橋七葉:「当たり前よ。言った筈でしょ」
御薗橋七葉:「あんたの事、嫌いだもの」
葛野 くるみ:「………そう?」笑う。「ほんとに?」
葛野 くるみ:「だったら、なんでラオペに来たの?」
御薗橋七葉:「あんたとは関係ない」
御薗橋七葉:定型句のように、感情の乗らない言葉が口から漏れる。
葛野 くるみ:「ねえ、七葉ちゃん。あたし、大手の芸能事務所にスカウトされてるんだよ」
御薗橋七葉:「……え?」
御薗橋七葉:その言葉に、僅かに瞠目する。
葛野 くるみ:その瞳を逃さぬように、限界まで振り向いて。「オッケーしたら…ねえ、あたしなら、結構いいとこまでいけると思わない?」
葛野 くるみ:蠱惑的な笑みがそこにある。
御薗橋七葉:「……何、それ」
葛野 くるみ:「七葉ちゃんが、あたしのことどうでも良いなら…オッケーしてもいいかなあ」
御薗橋七葉:隙を突かれて、捕らえられる。その笑みに。
御薗橋七葉:ずっと直視しないようにしてきたのに。
御薗橋七葉:「……は……」
御薗橋七葉:汗が滲む。声は吐息混じりに震えていた。
御薗橋七葉:「なん……」
葛野 くるみ:「そしたら、あたし、どんどん有名になって、色んな人に知られるよね? どんどん立派になって」
葛野 くるみ:「ねえ、こんな小劇団のことなんかどうでもよくなって…本当の女の子みたいに、幸せになれるのかなあ?」
葛野 くるみ:目が輝いて、あなたを見る。
御薗橋七葉:「出来ない」
御薗橋七葉:出来るだろう。
御薗橋七葉:「無理よ」
御薗橋七葉:決して無理ではないだろう。
葛野 くるみ:「なんで?」
葛野 くるみ:「どうしてそう思うの?」
葛野 くるみ:先ほどとは打って変わって、微笑みは崩れない。
御薗橋七葉:彼女の才能は本物だ。多くの人の目に留まる機会を得るだけで、成功は約束されているも同然だ。
御薗橋七葉:だが、それは。その機会を作るべきなのは────。
御薗橋七葉:「本気なの?」
御薗橋七葉:「本気で、捨てる気なの?」
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:「ラオペを」
御薗橋七葉:縋りつき、懇願するような声色。子供より無力な、四肢の萎えた女に向かって。
葛野 くるみ:「………」目を細める。「そうかもね」
葛野 くるみ:「七葉ちゃんが、あたしに嘘をつくなら」
葛野 くるみ:「ラオペなんかどうでもいいや」
御薗橋七葉:「何が」
御薗橋七葉:「何が、嘘だっていうのよ」
御薗橋七葉:「何で私なの」
御薗橋七葉:「何で……」
葛野 くるみ:あなたに身を委ね、天使のような可愛らしい微笑みを浮かべて、朗々と告げる。
葛野 くるみ:「あたしのこと、好きでしょ?」
葛野 くるみ:「世の中の何よりも、ぜーんぶ、どうでもよくなっちゃうくらい」
葛野 くるみ:否定は許さない。
御薗橋七葉:「…………」
御薗橋七葉:ひゅ、と、絞られた喉の隙間から呼気の漏れる音。
葛野 くるみ:それは終わりを示す。
御薗橋七葉:暫く、息をすることすら忘れていた。激しく咳き込み、背を折って蹲る。
御薗橋七葉:視界が滲んだ。それでようやく、葛野くるみの笑みから逃れられる。
葛野 くるみ:「わっ…大丈夫? 七葉ちゃん」本心から心配するような声が聞こえてくるだろう。
御薗橋七葉:荒く息を吐き、その白い腹を、頸を見る。
御薗橋七葉:──殺してやろうか。
御薗橋七葉:今ならあまりにも容易く、それが出来る。
葛野 くるみ:「七葉ちゃん……可哀想」
葛野 くるみ:優しい声色があなたに絡みつく。「あたしに怒った? ごめんね」
御薗橋七葉:いくらオーヴァードであっても、首を落とせば死ぬだろう。腹を開いて、内臓を引きずり出せば。その様をリアルに想像する。
御薗橋七葉:それでこの女から逃れられるなら。それで私の一生が救われるなら。
御薗橋七葉:今、未練を断ち切るべきではないのか──。
葛野 くるみ:「でもね…あたし」
葛野 くるみ:「嬉しかったよ? 七葉ちゃんに、悪魔リュシエラの役もらって」
葛野 くるみ:身を投げ出したまま、微笑む。
御薗橋七葉:その首元に伸ばし掛けた手が、ぴたりと止まる。
葛野 くるみ:「みんな、主役じゃないっていっぱい言ってたけどさ」
葛野 くるみ:「でも、七葉ちゃんがあたしを思って用意してくれた役…あたしが、一番きれいに演じられる役でしょ?」
葛野 くるみ:「なら、あたし的には別に、いいの。どんな役だって」
葛野 くるみ:「七葉ちゃんが望むリュシエラを見せてあげる」
御薗橋七葉:「…………」
御薗橋七葉:その顔を──見ない。目を背ける。
御薗橋七葉:代わりに──
御薗橋七葉:≪七色の直感≫で感情を読み取ります。
御薗橋七葉:意志で対抗可能。
葛野 くるみ:意志で対抗します。
御薗橋七葉:3DX 知覚
DoubleCross : (3DX10) → 7[4,5,7] → 7
葛野 くるみ:4dx
DoubleCross : (4DX10) → 9[6,7,8,9] → 9
葛野 くるみ:勝ちました
御薗橋七葉:その感情を、能力で読み取ろうとして。
御薗橋七葉:……分からない。
葛野 くるみ:そこにあるのは、しかし、強烈なあなたをとらえようとする意志。
葛野 くるみ:その本心は────心の奥にある葛野くるみの本心は、誰にも分からないだろう。
葛野 くるみ:御園橋七葉さんにロイスを取得します。
葛野 くるみ:御園橋七葉/執着:〇/不快感/ロイス
葛野 くるみ:御園橋七葉/秘匿/執着:〇/ロイス
葛野 くるみ:以上です。
御薗橋七葉:輝きに目を焼かれるように、顔を背ける。
葛野 くるみ:「あたし、ラオペにいるよ」
葛野 くるみ:「ねえ……だからさ、七葉ちゃん」
葛野 くるみ:「七葉ちゃんも、あたしの元にいてよ」
葛野 くるみ:ねだる声。
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:ほんの数分で憔悴しきった顔。当然だろう。数年分の過去に追いつかれたのだから。
御薗橋七葉:「どうして」
御薗橋七葉:もう何度目か分からないその問いを、また口にする。
御薗橋七葉:「どうして、私なの」
葛野 くるみ:「なんでかなあ…」
葛野 くるみ:「なんでこんなに、あたし、七葉ちゃんの全部が欲しいんだろ…?」
葛野 くるみ:「……でも」
葛野 くるみ:優しい微笑みで。嬉しそうな少女の微笑みで。「あたしと、ずうっと一緒にいてくれる、でしょ?」
御薗橋七葉:「…………」
御薗橋七葉:返事は無い。だが。
御薗橋七葉:凍り付いた彫像のように、いつまでもその場から動けないことが、何より明確な答えとなっていた。
葛野 くるみ:場違いなキャラクターもののトイレマットを視界の端におさめ、童女のように笑った。
椿尾 輪花:ビル地下、応接スペース。
椿尾 輪花:明るすぎない照明と、換気扇の音。地下特有の、少し湿った空気で満ちたそこに
椿尾 輪花:今は三人がいる。
椿尾 輪花:「お茶でも入れましょうか? この人数ならそれほど手間じゃないし」
藁科 サイカ:「いやいや、そこまでの手を煩わすこともないさ。そうだろう、幸音」
四条 幸音:「……うん」
藁科 サイカ:ソファのひとつに悠々と脚を組んで、だが、何処か普段よりも影の強い、
藁科 サイカ:悪役の芝居というなら相応しいのだろう面構えと声音で、そこにいた。
椿尾 輪花:「そう? 欲しくなったら言ってね」
椿尾 輪花:にこやかに藁科さんを振り返る。自分と四条さんと情交したソファに、迫力を持って座る彼女を。
藁科 サイカ:「俺達が欲しいものは、君の意図の説明かも知れないよ」
藁科 サイカ:「……と同時に。君が欲しいものも或いは、そういうものかも知れないが」
椿尾 輪花:「意図?」
椿尾 輪花:「私の思いってことかしら。私が何を欲しているか。私が何を求めているか」
椿尾 輪花:「別に、そう隠しているつもりはないのだけど……」
藁科 サイカ:「戯れるなフェリクス、恐ろしいやつめ」
藁科 サイカ:「いったいにして俺もひとかどの悪党だと思うが、ならばおのれはなんなのだ」
椿尾 輪花:口元の笑みがにわかに鋭くなる 「戯れているのはあなたじゃない」
椿尾 輪花:「こんな所で、舞台の役を借りて喋らずにはいられない」
椿尾 輪花:「ここは"ラオペ"セルよ。地上階とは違う」
藁科 サイカ:「俺か!? 俺が欲しいものの一切は、お前でなくシルヴェストルが持っていたのだ! フェリクス!」
藁科 サイカ:咎められても尚、浪々と、〝台詞〟で応じながら、
四条 幸音:「……藁科」
椿尾 輪花:目を細める。何も言わず。
藁科 サイカ:「誰もが俺を讃えて愛し、誰もが俺に敬服する! 俺の王国! ……伯爵領という肩書きにだけは不満が残るが」
藁科 サイカ:「なあに、それも満たされずにいた俺の腹を顧みれば、まあ、なんと豪勢な皿ではございませぬか。新たなる伯爵様?」
椿尾 輪花:「不毛だと思っているの」 藁科さんの言葉に乗ることはない
椿尾 輪花:「身内同士、仲間同士で疑い合い、争うこと。腹の探り合いをしなければいけない状態を」
椿尾 輪花:「だから活動を一時止めてでも、セルの中からにらみ合う必要のあるメンバーを排除した」
藁科 サイカ:「その結果が、今のこの有様というわけだ」
藁科 サイカ:ふぅ──と息をついて、組んでいた足を解く。
藁科 サイカ:両足の裏とも床につけて、膝に肘を重ねる前のめりになった。
椿尾 輪花:「ましになった。なったと思っている。皆が信じ合える可能性があるもの」
藁科 サイカ:「争いが不毛であるというのは、俺も同じ思いだ。もう数ヶ月早く」
藁科 サイカ:「その真理に辿り着けていたら、〝皆〟の数が変わったかも知れない」
椿尾 輪花:「ふふ」
椿尾 輪花:「演技ごっこの次はたらればの揚げ足取り」
椿尾 輪花:「怖がっているの? ……四条さんがそうだったみたいに。だったらそんな必要はありません」
椿尾 輪花:「私はこれで寛容よ。……ね?」
椿尾 輪花:ソファに座る四条さんの頭を、後ろから撫でてあげる。
四条 幸音:「……よして。ごめん、僕が早く言うべきだった」
藁科 サイカ:「待てよ、幸音」
藁科 サイカ:眉間に皺を寄せながらも、つとめて常のような声音を作り、
藁科 サイカ:「俺が、輪花にバラそうとした」
藁科 サイカ:「……輪花は輪花で、自分で辿り着いたかも知れないけどな」
椿尾 輪花:「何を?」
藁科 サイカ:「幸音が、意図的ではないにせよ外へ情報を漏らしてしまったこと」
四条 幸音:「……うん。椿尾は、もう知ってる」
椿尾 輪花:「ええ。直接聞きました。そして私は、これを許します。正直に話してくれましたからね」
椿尾 輪花:「それでもまだ、他に何か、怖いことはある?」
藁科 サイカ:「あるとも。あるさ。俺が一番怖いことが、まだまだ現実味を持って残っている」
藁科 サイカ:「それは過去の実績が故の、拭いきれない疑心暗鬼に過ぎないのかも知れないが」
藁科 サイカ:「本来、俺と輪花の理想は同じであった筈なのに、その懸念が故に、俺は君が恐ろしくてならない」
四条 幸音:「……その、懸念って?」
藁科 サイカ:「今以上の制裁が、内部に行われることだ」
藁科 サイカ:「或いは制裁の根拠を得る為の、今以上の監視が──でも、あるな」
椿尾 輪花:「ふうん」
四条 幸音:「それは……でも、」
四条 幸音:「その理屈なら、僕が真っ先に処分されるはずだろ?」
四条 幸音:「理由が必要なら、もう十分すぎる」
藁科 サイカ:「いいや、幸音は最後まで手元に置くんじゃないかな。……輪花、どう思う?」
藁科 サイカ:「幸音は、多少軽率な点が有ったにせよ、セルに対する悪意も私心も無く」
藁科 サイカ:「セルリーダーが信を置くものとして、最後まで残る候補じゃないか?」
椿尾 輪花:「あら。それを私に聞く?」
椿尾 輪花:「私がここで、そんなことはない、私は皆を等しく信頼している、誰も欠けさせたくはない……と言えば」
椿尾 輪花:「ギヨーム公は信じてくださるのかしら」
藁科 サイカ:「誤解を解く為に言うんだがね、輪花。俺は君に嫉妬こそしていても、憎悪はしていないぞ」
藁科 サイカ:「俺はお前の持ち物を奪いたいとは思わぬ。互いの領土を永く守ろうではないか、と」
藁科 サイカ:「誓ってもいいが、それはそれ。……内部の不穏分子に、君があまり恩情を向けてくれるとは信じられないな」
藁科 サイカ:そこで初めて、藁科サイカは笑みを浮かべた。
藁科 サイカ:浪々と台詞を吐く時に比べて、絶望の陰りが張り付いた笑みだった。
藁科 サイカ:「けど、まぁいいんだ」
藁科 サイカ:「俺が死んだ後だったら、どうしてくれたって構わない」
椿尾 輪花:「なら私もはっきりさせます。藁科さん。私は……」
椿尾 輪花:四条さんの隣に腰を下ろす
椿尾 輪花:「……あなたの人格の『善良で、常識的な部分』をそれなりに信用しているし、セルメンバーとしても重用したいと思っている」
椿尾 輪花:「あなたの好きそうな冷たい言い方をするなら、『得難い手駒』とね。……あと一年は持つのだったかしら?」
四条 幸音:「そんな言い方……!」
藁科 サイカ:「もう少し短いな。半年から一年未満……それも、今後の運用次第で短縮されるだろう──」
藁科 サイカ:「──幸音、いいんだ。むしろこの話に関しては、輪花の口ぶりの方がありがたい」
藁科 サイカ:「俺が使い物にならなくなるまでは、手元で有効活用したいという意志が見える。喜ばしいことだ」
四条 幸音:「……藁科をそんな扱いにしたくないし」
四条 幸音:「椿尾にそういう言い方、させたくもないよ……」
椿尾 輪花:そっと四条さんの頭を撫でて 「ごめんなさい、でもこうした方が、藁科さんには信じてもらえそうだったから」
椿尾 輪花:「私はこのセルを保持したい。そのために手を尽くす。色々なことをしています」
藁科 サイカ:「全く、腹芸をやらせたら俺じゃ敵わないな。真っ先にくるみに狙いを定めたあたりは大した手際だよ」
藁科 サイカ:天井を仰いで嘆息する。声の険は徐々に薄れている。
椿尾 輪花:「四条さんを許したのは、あなたの言う通り彼女に悪意がなく、その行いによってセルに大きなダメージもなく、またこれ以上の二心がないと、私も確信できたからです」
椿尾 輪花:「別にただ冷たかったり、甘かったりするわけじゃない。一応、そういう風に計算して、判断しているのよ」
四条 幸音:「もしも僕に……また同じことをすると、そんな疑いがあったら」
四条 幸音:「……処理してた?」
椿尾 輪花:「それも軽率。まあ……」
椿尾 輪花:唇に指を当てる 「『罰』は厳しくなってたかも」
藁科 サイカ:天井を仰いだまま、踵を浮かせて降ろした。
椿尾 輪花:それこそ、激しい依存をきたすレベルの快楽を強引にでも与えて、奴隷のようにしていただろう。……そこまではしていない。依存されるのも、それはそれでリスクだ。
藁科 サイカ:二度、三度、バタバタと床を打つ音が鳴る。
椿尾 輪花:「藁科さんは、どう? まだ案じることがある?」
藁科 サイカ:「ああ……リーダー。俺の耐用期間の間だけでいいんだ」
藁科 サイカ:「少しだけ、主義を曲げてもらう訳にはいかないかな」
椿尾 輪花:「主義?」
藁科 サイカ:「もしそれが、セルに大きな痛みを齎す傷だったとしても、悪意から生まれた咎だったとしても」
藁科 サイカ:「それがラオペのメンバーによる物なら全て受け入れて、全てを許して欲しい」
藁科 サイカ:「例えば、くるみが不特定の誰かに抱かれて、睦言から漏洩した情報が俺達を追い詰めたとしても」
藁科 サイカ:「例えば幸音がまた、昔の仲間と語らって、そのせいで俺達が滅ぶのだとしても」
藁科 サイカ:「セルの存続の為に抗うのは当然だ。けれどもその行程で、誰一人取りこぼさないで欲しいんだよ……俺が生きてる間はね」
椿尾 輪花:微笑を浮かべる。蒙昧の子供を見るような、冷たい慈しみをたたえて。
椿尾 輪花:「駄目に決まってるでしょう」
四条 幸音:「……」
椿尾 輪花:「順序が逆じゃないかしら、藁科さん。あなたがそんな素敵で優しいことを言えるのは……」
椿尾 輪花:「……無責任だからでしょ。『自分が死ぬまで』。死んだあとはどうなっても良いと思っていなきゃ、そんな言葉は出てこない」
藁科 サイカ:「手厳しいが、正しい。その通りだとも」
藁科 サイカ:「俺は諦めたんだよ。真っ当に幸福になることをさ」
椿尾 輪花:「私は責任を持ちたい。このセルの、私についてこようというメンバー、あるいは劇団"ラオペ"のメンバーに」
藁科 サイカ:「責任を持つって言うのは、監視の目をつけて」
藁科 サイカ:「例えば誰かとのセックスまで覗き見することを指すんじゃないだろ?」
四条 幸音:「それ、って……まさか、」
四条 幸音:「葛野に……?」
藁科 サイカ:「……ちなみに今、くるみは何をしてるんだい、リーダー」
椿尾 輪花:「気付いたのね」 薄く笑う 「責任を持つということは」
椿尾 輪花:「リスクを減らすということよ。彼女がそういうリスクを呼び込む可能性であれば、当然耳目を着ける。……念押ししておきますけど」
椿尾 輪花:「合意の上よ。直接確認してくれても構わない。今はそれどころではないでしょうけど」
椿尾 輪花:「何をしているのかは、……秘密。彼女もそう知られたくはないだろうしね」
四条 幸音:「そこまで……」
藁科 サイカ:「輪花。君が信頼できる人間は、いったい今、どれだけいるのかな」
四条 幸音:「そこまで、しなきゃいけないの」
藁科 サイカ:「俺のような、挙動がある程度推測できる駒ではなく、だ」
四条 幸音:「……僕たちは、そこまで、君にさせていたの」
椿尾 輪花:「信頼という言葉を定義しないと、多分すれ違うでしょうね、その話。でもはっきりさせるなら」
椿尾 輪花:「私は今、葛野さんを信頼しています。すべてを明らかにしてくれているから」
椿尾 輪花:「四条さんのことも信頼してる。二心がないことを明らかにできたから」
椿尾 輪花:「そこまで私にさせた、なんて言わないで。すべては私がこのセルを生かすためにやっていること」
椿尾 輪花:「生きるという私の欲望のための手段よ」
藁科 サイカ:「……生かす、かぁ。……ふふ、ふふふふ……」
四条 幸音:椿尾の言葉を、やり方を、否定しようもない。
四条 幸音:事実、自分はセルに危険をもたらしたのだ。
藁科 サイカ:「幸音」縋るような、弱々しい声。
四条 幸音:「……な、に」
藁科 サイカ:両手で顔を覆った。……肩が小刻みに震えている。
藁科 サイカ:鼻を啜る音。
椿尾 輪花:「……」
藁科 サイカ:舞台の上ということを忘れたように、役者が泣いている。
藁科 サイカ:「ラオペはさ」
藁科 サイカ:「……本当に生きてるのかなぁ」
藁科 サイカ:「本当はもう死んでて、俺達は死体の皮だけ被って」
藁科 サイカ:「生きてるようなお芝居を……ずっと続けてるだけなんじゃないかなぁ……」
椿尾 輪花:目を細める。悲嘆にくれたその言葉を、あまり理解できていない。
椿尾 輪花:(生きているじゃない。芝居ができているなら。……それとも、何)
椿尾 輪花:(生きるということが、そんなに等身大でなければならないとか思っているのかな)
四条 幸音:「……わからない」
四条 幸音:「わからないよ……」
四条 幸音:「でも……でも、さ」
四条 幸音:「僕は……ここに、居たい」
四条 幸音:「たとえ芝居でも……偽物でも」
四条 幸音:「生きてるんだって、まだ思ってたい」
藁科 サイカ:「俺だって、そうだった」
藁科 サイカ:「ここでずっと生きてられるんだって、思い違いをしたまま死にたかった……!」
藁科 サイカ:絞り出すような声の後に、手を避けると、
藁科 サイカ:頬こそ涙で濡れていたが、その顔は、舞台の上に立つものに変わっていた。
藁科 サイカ:「輪花。……俺にも、くるみと同じ〝目〟をつけることはできるか?」
椿尾 輪花:「え? ええ。可能だけど……」
四条 幸音:「……待って」
藁科 サイカ:「なんだい、幸音。仲間はずれは嫌? ならお揃いにするようお願いしてみようか」
四条 幸音:「違う……!」
椿尾 輪花:(あんまりいろんな人に着けると、処理が大変で結局取りこぼしが出ちゃうんだけど……) 口にはしない
四条 幸音:「椿尾。さっき、言ったよね」
四条 幸音:「僕のことは、今は信頼できるって」
椿尾 輪花:「ええ。大体のことは聞かせてもらったから」
四条 幸音:「僕が藁科に、危険なことはさせない」
椿尾 輪花:「……でも、あなたの担保を常に信じろというなら」
椿尾 輪花:「定期的に、あれをしてもらうことになるけど」
椿尾 輪花:「それでいい?」
藁科 サイカ:「……幸音、俺はね」
藁科 サイカ:「俺の目と耳を通して触れた景色が、輪花にはどんな風に映るか。それを知りたいんだよ」
椿尾 輪花:口にしながら、既に指先から、影の糸が伸び始めている。
藁科 サイカ:「要求の代わりという訳じゃないが、くるみの制御は出来るだけ力になろう。……俺で抑えきれる子とも思えないけど」
藁科 サイカ:「……さあ、頼む」
椿尾 輪花:《まだらの紐》。糸状の影の端末を、藁科さんの髪に紛れ込ませる
椿尾 輪花:「そんなに言うなら、見せてもらいます」
椿尾 輪花:「あなたの得ようとしている生を」
四条 幸音:「(……どうして)」
椿尾 輪花:それは請われたからばかりではなく、僅かばかりの好奇心も伴って――
四条 幸音:声にならない音を飲み込む。
【Middle first half/御薗橋七葉】
GM:ミドルシーン前半 最後の手番 シーンPCは御薗橋さんです
GM:誰を指名しますか?
御薗橋七葉:葛野さんを指名します
GM:メインシーンは御薗橋さん 葛野さん サブシーンは四条さん 椿尾さん 藁科さんになります
葛野 くるみ:はーい
四条 幸音:はい……
椿尾 輪花:OK
藁科 サイカ:いえっさー
GM:情報収集はこちらになります
劇団
情報:噂話/FH
43/50
藁科 50/50
椿尾 41/50
(済)脱退メンバー
情報:噂話/FH/裏社会
50/50
市内他セル
情報:FH/裏社会
28/60
葛野 47
UGN
情報:噂話/UGN
55/60
御薗橋 60
GM:こちらでした どうぞ
藁科 サイカ:ふーむ
椿尾 輪花:市内他セル開けるかなあ
椿尾 輪花:コネ:情報屋+バッドフレンド!
椿尾 輪花:8dx 市内他セル
DoubleCross : (8DX10) → 10[2,4,5,5,5,7,10,10]+7[4,7] → 17
椿尾 輪花:どやどや
藁科 サイカ:同じく他セルに突っ込もうかなと
葛野 くるみ:私は劇団いこう 情報:FHでコネ使います
葛野 くるみ:3dx+1
DoubleCross : (3DX10+1) → 10[5,8,10]+3[3]+1 → 14
葛野 くるみ:ンナ~なぜこんな…高い出目を…
藁科 サイカ:《生き字引》+AIDA+思い出の一品
藁科 サイカ:7dx+5 他セル
DoubleCross : (7DX10+5) → 9[1,4,5,6,7,8,9]+5 → 14
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を1増加 (56 → 57)
四条 幸音:UGN残り5の為に振りに行くの悲しいけど……御薗橋さんが教えてくれるかわからないし行きますか
四条 幸音:UGNについて情報振ります
四条 幸音:4DX+0+0@10 情報(UGN)
DoubleCross : (4DX10) → 6[1,2,3,6] → 6
四条 幸音:よっわ……足りたけど
椿尾 輪花:財産1あれば60になるな他セル……
藁科 サイカ:jaa
藁科 サイカ:こっちが1使いますか
藁科 サイカ:どうせ1しかないし、纏めて使えないんならここで吐き出す
椿尾 輪花:判定順序的にそうなりますねえ お願いします
藁科 サイカ:いえっさ
藁科 サイカ:ということで財産点1を支払って達成値15。財産点は0になったぜ
藁科 サイカ:宵越しの銭が無いからヒモにならないとな
葛野 くるみ:しょうがないな~
四条 幸音:しょうがないね……
藁科 サイカ:二人ともありがとうな
葛野 くるみ:幸音ちゃん…?
葛野 くるみ:スッキリしました 共有します~
四条 幸音:わぁい
藁科 サイカ:いいこいいこ
椿尾 輪花:共有しまーす
四条 幸音:ありがとう!
葛野 くるみ:やったー
藁科 サイカ:共有で!
四条 幸音:皆やさしい……
四条 幸音:やっぱり僕たち仲間だよね
葛野 くるみ:サイカくん~♡
葛野 くるみ:そうよそうよ
椿尾 輪花:そうですよ 私たちみんな"ラオペ"の仲間だもの
藁科 サイカ:いつまでも皆で一緒にいような
椿尾 輪花:隠すことなんて何もないわ
椿尾 輪花:~HAPPY END~
四条 幸音:すいませんちょっと
四条 幸音:ちょっとまってくださいね
藁科 サイカ:えっ
葛野 くるみ:幸音ちゃん……?
GM:ワハハ
椿尾 輪花:どうかしたのかしら
藁科 サイカ:幸音……?
藁科 サイカ:やっぱりリーダーの手でもっと深く分からせる必要があったのでは……
椿尾 輪花:そうするしかないのかしら……?
葛野 くるみ:なるほど "罰"をね…
椿尾 輪花:あまり困るなら保留でも良いんですよ
四条 幸音:ちょっと……これは……
椿尾 輪花:どうせ全部開くし……
四条 幸音:最終的に伝えるとは思うんだけど……一旦保留で……
四条 幸音:ごめん……
葛野 くるみ:おやおや
椿尾 輪花:ふふ
藁科 サイカ:へぇ
四条 幸音:うう……
GM:ではこうなります
(済)劇団 50/50
(済)脱退メンバー 50/50
(済)市内他セル 60/60
UGN
情報:噂話/UGN
55/60
四条 60
御薗橋 60
劇団
50/50
・葛野くるみは現在、大手芸能事務所からの勧誘を受けている。
・四条幸音はセルを脱退したメンバーと個人的に仲が良く、休止中も連絡を取り合っていた。その際に話した内情が、劇団への嫌がらせに使われている可能性が高い。
他セル
60/60
現在、“衣笠”をはじめとする複数のセルが、“ラオペ”を潰す為に動いている。
直接のライバルである“衣笠”以外のセルもリスクを買ってまで参加しているのは、何らかの理由があるだろう。
中には“ブラックハイド”を中心に、“ラオペ”を脱退した元メンバーも多数含まれるようだ。
椿尾 輪花:他セルの情報抜けてません? 私に開示してくれたやつ……
GM:あっそうそう
GM:30/30
・"衣笠"は敵である"ラオペ"が弱体化している間に、一気にシェアを奪って潰そうとしているらしい。
ただ、それほどの力が"衣笠"にあったかは疑問に感じるかもしれない。
"衣笠"セルリーダーは"天眼"との名だけが知られており、姿を表舞台に晒さないことで有名だ。
GM:これなんか間違えて一回開示してました
葛野 くるみ:前シーンでチラッと見ちゃった
椿尾 輪花:なるほどね
藁科 サイカ:うちと同程度の小企業だと思ってたのに
藁科 サイカ:企業共同体になって襲ってくるつもりなのね
藁科 サイカ:共同企業体か
葛野 くるみ:怖いぜ
椿尾 輪花:どうしてそんなことをしようとするのかしらね
御薗橋七葉:ロイスを取得します 葛野くるみ ○執着/憎悪
御薗橋七葉:Sロイスに指定します。
御薗橋七葉:
御薗橋七葉:その日、劇団の一部メンバーでの飲み会が解散になった頃には、既に日付が変わっていた。
御薗橋七葉:珍しく飲み過ぎた御薗橋を送ることになったのは、折しもその場で唯一彼女の自宅を知っていた葛野だった。
御薗橋七葉:葛野のそれとは異なり、ごく普通のこじんまりとしたマンション。その一室が御薗橋七葉の部屋だった。
御薗橋七葉:綺麗に片付いてはいるが、圧迫感のある部屋。
御薗橋七葉:室内を埋め尽くすのは大量の本や映像ディスクの山。そのどれもが、舞台や映画に関するものだ。
御薗橋七葉:「……ぅ……」
御薗橋七葉:葛野に支えられるようにして、酒臭い息と共に呻く。
葛野 くるみ:「くさいーっ、重いーっ」肩を抱くようにして、壁にぶつかりながらずるずるここまで辿り着いた。
葛野 くるみ:そう言うこちらも、いくばくか頬が火照っている。
葛野 くるみ:大人びた外見のため、居酒屋にいて未成年と咎められたことはない。当然、飲酒もしている。
御薗橋七葉:「頭痛い……」ハスキーの声を更に掠れさせて。「水……」
葛野 くるみ:「はいはい。ちょっと座っててねー」
葛野 くるみ:決して丁寧ではない所作で七葉ちゃんを床に下ろし、慣れた調子で台所へと向かう。
御薗橋七葉:下ろされた姿勢のままぐったりしている。
葛野 くるみ:「うわーっ、冷蔵庫、お酒ばっかじゃん」
葛野 くるみ:「あはは!これ飲んじゃおー」
御薗橋七葉:「高い声で騒ぐな……脳に響く……」
葛野 くるみ:楽しそうな声を響かせた後、コップになみなみと水を注いで帰ってくる。
葛野 くるみ:「はあい」ようやくコップを渡す。
御薗橋七葉:「ん……」
御薗橋七葉:覚束ない手つきでコップを受け取り、喉を鳴らして一気に飲み干し。
御薗橋七葉:それが見覚えのある自宅のコップだと気付くと、ようやく頭が動き出す。
御薗橋七葉:「……葛野……?」
葛野 くるみ:ぷしゅ、と缶チューハイのプルタブを開け、くぴくぴと喉を鳴らす。
御薗橋七葉:「何で……うっ……」
御薗橋七葉:頭を押さえて。
葛野 くるみ:「わー、大丈夫~?もう一杯お水飲む~?」
御薗橋七葉:「最っ悪……」
御薗橋七葉:「あんたに面倒見られるなんて……私も終わりだわ」
葛野 くるみ:「なんで! 言っておくけどー?さっき、葛野~って甘えてきたのは七葉ちゃんだからね~?」
御薗橋七葉:「そんなことするわけないでしょ」
葛野 くるみ:「どうかな~? タツくんもミサキさんも知ってるよ~?」
葛野 くるみ:先ほどまで飲み会にいたメンバーの名前をちらつかせて笑う。
御薗橋七葉:「…………」
御薗橋七葉:しただろうか。したのかもしれない。最悪だ。
御薗橋七葉:自分の部屋に葛野くるみが居る光景を、ころころと変わるその表情を見る。
葛野 くるみ:すでに興味は部屋に積まれた映像ディスクに写っており、楽しげにそれを見ている。
葛野 くるみ:「ねー、これ勝手に見ていい?」缶チューハイを揺らしながら笑う。
御薗橋七葉:「……勝手にすれば」
御薗橋七葉:こんな部屋には似合わない横顔だな、と思う。安物の缶チューハイを片手にしたその姿すら、嫌になるほど絵になっている。
御薗橋七葉:葛野くるみ ○憧憬/隔意
葛野 くるみ:「うん。ねー、あたしのパンツってまだこの部屋置いてある?」
御薗橋七葉:「…………」
御薗橋七葉:更に酔いが醒める気がする。
御薗橋七葉:「……何で?」
葛野 くるみ:「え、だってこんな時間に家帰るのめんどくさいもん」
葛野 くるみ:「泊まっていいでしょ?」
御薗橋七葉:黙り込む。
御薗橋七葉:断るのは簡単だった。
御薗橋七葉:断ったところで葛野が私の言うことなど素直に聞くはずがない、と自分に言い訳をするのは、もっと簡単だった。
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:「……別に、いいけど」
葛野 くるみ:「やった!ありがと、七葉ちゃん」
葛野 くるみ:「この部屋、いろいろ見るのあって面白いから好き」
御薗橋七葉:「何よそれ。子供?」
葛野 くるみ:結局ディスクを見ることもなく、七葉ちゃんの隣に座りこむ。
葛野 くるみ:「子供だよ?」
葛野 くるみ:悪戯っぽく、缶チューハイに白い喉を鳴らしながら笑う。
御薗橋七葉:虚を突かれたように少し黙って。
御薗橋七葉:「……そうね」
御薗橋七葉:「そうだったわね」
葛野 くるみ:「やだ、そんな顔しないでよー」
葛野 くるみ:「いま、そんな子供がいるかーって言われようと思ってたのにー」
御薗橋七葉:「うん……」
御薗橋七葉:舞台の上でどんな演技をしようと、こうして安酒を煽っていても。
御薗橋七葉:葛野が4歳も下の少女なのだと、今更ながらに思い出す。
葛野 くるみ:「………」
葛野 くるみ:切れ長の瞳で、じっと七葉ちゃんを見つめて。
葛野 くるみ:その手に自分の手を重ねる。「ねえ…」
葛野 くるみ:「あたし、大人の方が良いなら、七葉ちゃんの前でだけ大人になるよ」
御薗橋七葉:その体温にびくりと身体が跳ねそうになるのを、何とか堪える。
御薗橋七葉:「……何よ、それ……」
葛野 くるみ:「だって、今の七葉ちゃん、ほっといたら死んじゃいそうだったし…」
葛野 くるみ:困ったように首を傾げる。「そういう事じゃない?」
御薗橋七葉:理性は警鐘を鳴らしていた。聞こえないのは酒のせいか。それとも、聞こえない振りをしたのか。
御薗橋七葉:「……そんなの、誰にでも言ってるんでしょ」
御薗橋七葉:何とか精一杯の拒絶の言葉を吐く。
葛野 くるみ:「……七葉ちゃんまで」
葛野 くるみ:「七葉ちゃんまで、そんなこと言うんだ」
葛野 くるみ:寂しそうに言葉を漏らす。
御薗橋七葉:「……!」
御薗橋七葉:気付いた時には、床に押し倒していた。
葛野 くるみ:「………」
葛野 くるみ:長い銀髪が床に流れて、照明を浴びて色を跳ね返す。
御薗橋七葉:腰の上に跨って、馬乗りになり。自分より小さな身体を見下ろす。その顔に影が落ちる。
葛野 くるみ:「七葉ちゃん」
葛野 くるみ:抵抗しようと思えば、抵抗できる。白兵戦用にプログラムされた実験体だ。
葛野 くるみ:でも、しない。
葛野 くるみ:無防備にすべてを曝け出すことを、あなたに許している。
葛野 くるみ:「あたし、いつでも真剣だよ」
葛野 くるみ:アルコールがまわり、火照ったからだが、潤んだ瞳が、体温を交えて匂いたつ甘い香りが。
葛野 くるみ:あなたを誘う。
御薗橋七葉:「…………」
御薗橋七葉:「あんたに」
御薗橋七葉:「あんたに、会って」
御薗橋七葉:「葛野くるみの舞台を、初めて見て」
御薗橋七葉:「こんなに綺麗な世界があるのか、って、思った」
御薗橋七葉:葛野くるみ 信仰/○憤懣
葛野 くるみ:「………」影の落ちた表情からは、きっと真意は読めないだろう。
御薗橋七葉:「私も、いつかそんな世界に携わる人間になりたいって」
御薗橋七葉:「いつか……あんたを私の舞台に立たせたいって」
御薗橋七葉:「そう、思って。全部、全部。何もかも注ぎ込んできた」
御薗橋七葉:部屋を埋め尽くすそれが、何者でも無かった御薗橋七葉の人生の全てだ。
葛野 くるみ:「うん」
葛野 くるみ:七葉ちゃんの頭越しに見える、天井のライトが眩しかった。
葛野 くるみ:それはどこか、スポットライトの光に似ていた。
御薗橋七葉:「……あんたの才能は本物よ」
御薗橋七葉:「舞台に立てば、どんな人間でも魅了できる」
御薗橋七葉:「私はそんな天才に、少しでも近付きたかった。ただ純粋に……それだけだったのに……」
御薗橋七葉:葛野くるみ 陶酔/○恐怖
御薗橋七葉:「どうして、あんたなのよ」
御薗橋七葉:「どうしてその才能を持ってるのが、あんたなの?」
葛野 くるみ:でも、ここは舞台じゃなくて、七葉ちゃんの部屋だった。
葛野 くるみ:演じる必要はない。
葛野 くるみ:目の前の女に、答えをくれてやる必要は、無いのだった。
御薗橋七葉:腕を動かして、柔らかな腹に触れる。
葛野 くるみ:「ん……」
御薗橋七葉:「どうして、誰にでも抱かれるの」
御薗橋七葉:「どうしてそんな風に、平気でルールを破って……」
御薗橋七葉:「デリカシーが無くて。すぐに機嫌悪くして……子供みたいで……」
葛野 くるみ:「やだ、やだ……」声を上げる。
御薗橋七葉:するすると服を捲り上げて、白い肌を外気に曝す。
葛野 くるみ:「七葉ちゃん…、ダメだってば…」
葛野 くるみ:白い肌、柔らかくも細く引き締まった腹、形の良い乳房が外気に触れる。
御薗橋七葉:「どうして……私なんかと付き合ったのよ……」
御薗橋七葉:肋骨を撫でるように指を這わせる。かつて──二年前によくしていた動作。
葛野 くるみ:「んっ…」だから、そこで声を上げる。
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:胸に伸ばした手が、ぴたりと動きを止める。
葛野 くるみ:「七葉ちゃん……?」濡れた瞳で見上げる。
御薗橋七葉:深く俯き、ワンレングスの黒髪が暗幕のように表情を隠す。
御薗橋七葉:「……どうして……」
御薗橋七葉:葛野の白い腹に、ぽたぽたと雫が落ちる。
御薗橋七葉:「どうして」
御薗橋七葉:「まだ」
御薗橋七葉:「好きなのよ……」
御薗橋七葉:葛野くるみ ○恋慕/不安
葛野 くるみ:「………」
葛野 くるみ:その表情をじっと見つめる。
葛野 くるみ:そして、自分でも無意識のうちに浮かぶ表情がある。
葛野 くるみ:母性すら秘めた、心から嬉しそうな…相手を慈しむような笑み。
葛野 くるみ:「あたしも好きだよ、七葉ちゃんのこと」
御薗橋七葉:「……好き」
御薗橋七葉:「好きなの……」
葛野 くるみ:「うん」
葛野 くるみ:「たくさん言って」
御薗橋七葉:自分より小さな、年下の少女に跨って。それ以上何をすることも出来ず、ただ涙を零し続ける。
御薗橋七葉:「……くるみ……」
御薗橋七葉:「どうしようもないくらい、好きなのよ……」
御薗橋七葉:「もう、嫌なの」
御薗橋七葉:かぶりを振って。
御薗橋七葉:「こんなの、嫌……」
葛野 くるみ:「そう?」
葛野 くるみ:「いいの、七葉ちゃん? あたしのこと、突き放して」
葛野 くるみ:「それなら、あたし、サイカくんのところに戻るだけだよ」
葛野 くるみ:組み伏せられたまま、事も無げに言う。
御薗橋七葉:返事は無い。
御薗橋七葉:代わりに、噛み付くように唇を奪う。
葛野 くるみ:「────っ……」何か言いかけていた言葉が塞がれる。
御薗橋七葉:舌を絡ませて、甘噛みして。歯列をなぞり、口内の形を確かめるように。
葛野 くるみ:「んっ、うぅ……! んん!」七葉ちゃんの背中に、縋りつくように両腕が回る。
御薗橋七葉:誘われているのは分かっている。この女の常套手段だと。思う壺だと。
御薗橋七葉:分かっていても、今は溺れていたかった。
御薗橋七葉:「くるみ」
御薗橋七葉:「くるみ……」
御薗橋七葉:切羽詰まった声で、何度も繰り返し名前を呼ぶ。
葛野 くるみ:「七葉ちゃん…っ、七葉ちゃん…!」その声色に、だんだんと喜びの色が交じってくる。
御薗橋七葉:身体も、息遣いも、体温も。そのどれもを覚えていて。そのどれもが二年前とは違っていた。
御薗橋七葉:埋めがたい空白を埋めるように、突き動かされるように身体を貪る。
御薗橋七葉:それが自分の意思なのか、くるみに操られているのか、最早知るすべは無かった。
葛野 くるみ:嬌声を上げ、背中を反らし、全てを飲み干すかのように愛されることを望む。
葛野 くるみ:触られることを望む。なぞられることを望む。掻きまわされることを、明かされることを望む。
御薗橋七葉:下腹に手を伸ばし、そこに触れる。
葛野 くるみ:「はあっ……」ひときわ熱い息を吐く。
御薗橋七葉:「……もう濡れてる」
葛野 くるみ:「……ばか…」恥じらうように身をよじる。
葛野 くるみ:「七葉ちゃん、あのさ……」
御薗橋七葉:「……なに?」
葛野 くるみ:「この間…トイレの時」
葛野 くるみ:「あれ、おしっこだけで濡れてたと思った?」
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:手を止め、目を瞬く。
御薗橋七葉:「……そうだったの?」
葛野 くるみ:「だって……あんな体勢とらされたら」
葛野 くるみ:「変な気分になっちゃうじゃん……」
葛野 くるみ:もじもじと太腿をすり合わせれば、余計にあなたの手を挟み込む。
御薗橋七葉:「……心配してたのに」
御薗橋七葉:「悪い子」
葛野 くるみ:「ごめんなさ…っ、んん…!」もどかしい場所に擦ったのか、喘ぎ声に変わる。
御薗橋七葉:骨ばった長い中指は、くるみのどこにでも余すことなく届き得る。
御薗橋七葉:かつての逢瀬で知り尽くした弱い部分を、焦らすように指の腹で撫でる。
葛野 くるみ:「あっ…」腹に宿るもどかしい熱が、快感を手繰り寄せる。
御薗橋七葉:「……欲しい?」
葛野 くるみ:「うんっ…なんで…止めちゃうの…っ、やだぁ…」じらすような声で急かす。
葛野 くるみ:「ほ…欲しいもん…!」
御薗橋七葉:じりじりと理性が焦がされていく。深みに嵌っていく感覚。
御薗橋七葉:かつてと同じ過ちを、今また繰り返そうとしている。
御薗橋七葉:きっと後悔することになる。必ず。それは分かっている。嫌というほど分かっている。
御薗橋七葉:それでも。
御薗橋七葉:「……可愛い」
御薗橋七葉:「好きよ、くるみ」
御薗橋七葉:「……大好き」
葛野 くるみ:「あたしも…っ、あたしも…!」
葛野 くるみ:「…好き…!七葉ちゃんっ…」
御薗橋七葉:白い指が別の生物のように動き、弱点を責め立てる。
御薗橋七葉:或いは積もった憤懣をぶつけるように。或いは捕食するように。或いは睦まじい恋人のように。
葛野 くるみ:「んやぁっ…」動作の度に敏感に声を漏らし、あるいは生娘のように恥じ入り、
葛野 くるみ:その動き回る指を熱い肉体で受け入れて、奥底まで暴かせる。
御薗橋七葉:義肢の外し方なら知っているが、そうはしない。いつでも抵抗出来るということを、免罪符にでもするように。
御薗橋七葉:嬌声が鼓膜を震わす度に、思考が溶けていく。
葛野 くるみ:「七葉ちゃん……」両腕が伸びた。
葛野 くるみ:「ぎゅってして…」
御薗橋七葉:「うん……」
葛野 くるみ:やがて頂点に達する快感の波に怯えるように、潤んだ瞳で。
御薗橋七葉:この二年間、悪夢でしか無かった光景が目の前に広がっている。
御薗橋七葉:だがそれは、悪夢というにはあまりにも────。
葛野 くるみ:「あたし、いま、すごい幸せ」甘く、とろけそうな声で囁く。
御薗橋七葉:「……くるみ」
御薗橋七葉:「……私も、幸せだよ」
葛野 くるみ:「うん」
御薗橋七葉:その一言が、真実自分にとって決定的なものだった気がした。
御薗橋七葉:中に一際強い刺戟を与えると同時、小さな身体を強く抱き締める。
葛野 くるみ:「あっ……!」背中が反る。快感の波に全身を溺れさせながら。
葛野 くるみ:七葉ちゃん、と、あなたを求める嬌声を上げた。
御薗橋七葉:葛野くるみ ○秘匿/秘匿
椿尾 輪花:応接スペースには、結局紅茶の匂いが立っている。
椿尾 輪花:「どうぞ。安物ですけど」 ティーポットに、人数分のカップを出して、順々に注ぎ入れていく
四条 幸音:「……ありがと」
四条 幸音:カップに両手を添えて、冷え切った指に熱を込める。
藁科 サイカ:「貰うよ」涙の痕も乾いて、平常時の顔を取り戻している。
藁科 サイカ:中指をカップの持ち手に絡めて、ずっ……と紅茶を幾分か飲んだ後で、
藁科 サイカ:「……摘まんだ方がいいんだっけ? これ」
藁科 サイカ:「指を通すんじゃなくってさ」
椿尾 輪花:「そうね。ここに作法を気にする人なんていないと思いますけど」 微笑する
椿尾 輪花:「四条さんは気になる?」
四条 幸音:「どうだっていいよ。僕は」
椿尾 輪花:「ですって」
四条 幸音:「……マナーを気にするような仲じゃないと思ってるし」
藁科 サイカ:「礼節は衣服の上から纏うものということか、なるほどね」
四条 幸音:「二人とも、さ」
四条 幸音:「お互いに、引くきはないし……」
四条 幸音:「譲れない、んだよね」
藁科 サイカ:「だからファルスハーツなのだろう、俺達は」
藁科 サイカ:「なあ、輪花」
椿尾 輪花:「そうね。別に、欲望ありきで動くのはFHばかりじゃないと思うけど」
椿尾 輪花:「私は結構、物分りが良い方だと思っていますし。その上で、今のスタンスは譲りませんけどね」
四条 幸音:ちら、と椿尾へ視線を送る。
椿尾 輪花:「気になることでもあるの?」 四条さんへ笑みを見せる
四条 幸音:「……いや、今はいい」
藁科 サイカ:「出し渋るじゃないか、幸音。悪い報せかい?」
四条 幸音:「急かさないでよ。……僕だって、分からないんだ。どうするべきなのか」
椿尾 輪花:「ふうん」
藁科 サイカ:「俺なら、よほど隠しておきたい話でも無い限り、輪花に判断を投げてしまうけどね」
四条 幸音:「……椿尾」
藁科 サイカ:「思うところは多々有るが、それでも一番平和裏に解決できる可能性はそれだろう?」
椿尾 輪花:その様子を見て、その言葉を聞き、少しどこか楽しげに笑みを浮かべている
椿尾 輪花:「うん。なあに?」
四条 幸音:「君が例えば、メンバーを監視したり……危険を排除したりするのは」
四条 幸音:「あくまで、セルに危険が及ぶと考えたら、だろう」
椿尾 輪花:「そうね。基本的には」
椿尾 輪花:「もちろん、個人的に付け狙われている、みたいなことを感じたら、別で手を動かすこともあるでしょうけど」
四条 幸音:「そういう手を取らざるをえないのは、今のラオペが危険な状況だから、だよね」
椿尾 輪花:「ええ。"ラオペ"は弱体化し、帳市には複数のFHセルがひしめいている」
椿尾 輪花:「油断のならない状態だもの。周到に手を回さなきゃ」
藁科 サイカ:「幸運にもUGNの矛先は俺達に向いていないが、時間の問題かも知れない」
藁科 サイカ:「修羅場、鉄火場とはこのことか。……後者は少し違う?」
四条 幸音:「今の状況……当面の危機を乗り越えられれば」
四条 幸音:「君も、しばらくは安心できる?」
椿尾 輪花:「……ふふ。何。私を気遣ってくれてるの? 四条さん」
椿尾 輪花:「まあ、現状よりは安心できると言えるでしょうね。だからといって油断はできないけど……」
椿尾 輪花:「睡眠時間は増やせるかも」
四条 幸音:「心配するのは当たり前だろ」
四条 幸音:「ともかく……分かった」
四条 幸音:「今起きてる事件、この状況を、取りこぼさずに乗り越える」
四条 幸音:「……二人ともが納得するには、そうするしかないってことでしょ」
椿尾 輪花:微笑を浮かべたまま、紅茶を口にする。この弱々しい香りは嫌いじゃない。
藁科 サイカ:「あまり勿体ぶるものではないよ、幸音。観客だっていつまでも糸を張り詰めてはいられない」
藁科 サイカ:床に置いた踵が、ぱたぱた、小刻みに上下している。
四条 幸音:「もったいぶってなんてないよ。別に僕だって、なにか良い考えがあるわけじゃないんだ」
四条 幸音:「ただの宣言。あんたら二人共、喧嘩したまま終わらせたくないってだけ」
椿尾 輪花:「ふふ。先生に叱られてるみたいね」
藁科 サイカ:「あまり楽しい気分でないことは確かだ、うん」
四条 幸音:「……ただの子供のワガママよ。分かってる」
四条 幸音:「とにかく、僕はラオペを守りたい……し」
四条 幸音:「そのために何かを切り捨てるとか、させる気もないから」
藁科 サイカ:「ならば、幸音」
藁科 サイカ:「君はその為に、どこまでの代償を支払おうと言うんだい」
藁科 サイカ:「或いは、今からいったい何を始めるつもりなのか、と問うべきか?」
四条 幸音:「……代償を、払わせたくないって言ってるんだけどね」
四条 幸音:「僕のやれることは全部やるつもりだよ。……その上で」
四条 幸音:「椿尾」
椿尾 輪花:「ええ」
四条 幸音:「……僕のことも藁科のことも」
四条 幸音:「信頼は、してくれてるんでしょう?」
四条 幸音:「だったら、ちゃんと話して欲しい」
四条 幸音:「君の口から、隠してること」
椿尾 輪花:「……その言い方だと、思い当たることはまだいくつかあるんだけど」
椿尾 輪花:「四条さんが私の口から聞きたいことは分かります」
椿尾 輪花:「UGNのことでしょ」
四条 幸音:「……うん」
椿尾 輪花:・Rハンドアウト
君はセルの為、秘密裏かつ個人的にUGNエージェントと取引をしている。UGNによる検挙を免れる代わりに互いの情報を交換し、時には他セルを売り渡す形でセルの安全を確保してきた。
このことが他セルに知られれば、セルの信頼は失墜し、立場は非常に危うくなるだろう。君はこの秘密を守り通さねばならない。
椿尾 輪花:さらりと、悪びれることもなく、UGNとの関わりについて告げる。
藁科 サイカ:ぱたぱたと床を叩いていた踵が動きを止めて、
藁科 サイカ:「ふぅん」
藁科 サイカ:「まぁ、そういうこともあるか」
椿尾 輪花:「FHの最大の敵は、UGNよ」
藁科 サイカ:幾分かの驚きこそ示したものの、その声に批難の色は無い。
椿尾 輪花:「だったらそれと手を結ぶのが、一番セルの安全に繋がるでしょう。もちろん、秘密裏に」
椿尾 輪花:「私にはその機会があった。だから手を結んだ」
椿尾 輪花:「藁科さんは別に、格段UGNに対して思うところがあるでもないでしょう?」
藁科 サイカ:「ああ」
藁科 サイカ:「普通なら出来ないが、バレずにやれるならそれが最善の策だろう。それを隠してたことは、俺から不満は無いよ」
四条 幸音:その機会、に。どのような取引があったのか
四条 幸音:今まで想像もしなかった自分に腹が立つ。
椿尾 輪花:「葛野さんもきっとね。御薗橋さんも多分そう……いえ、ちょっと危うんでいることはあるけど、多分問題はない」
椿尾 輪花:「……四条さんは?」
椿尾 輪花:「嫌悪感がある? それとも軽蔑する?」
藁科 サイカ:「そんなことはしないさ。なぁ、幸音?」
椿尾 輪花:誘うような言葉だ。彼女がそんなことを思わないのは、半ば確信している。
四条 幸音:「……UGNに、思うところはない。ただ、」
四条 幸音:「あんたには、あるよ。言いたいこと……ねえ」
椿尾 輪花:「ええ。何?」
四条 幸音:「ちゃんと、話してよ。……そんなこと」
四条 幸音:「一人で全部やろうとしないでよ……!」
四条 幸音:「君がそういうこと、できる立場じゃなくて」
椿尾 輪花:「……え?」 その言葉に、わずかに目を丸くする
四条 幸音:「僕がそんなこと、言える立場じゃないの、分かってるけどさ」
四条 幸音:「仲間が頑張って、傷ついて、泥受けて、」
四条 幸音:「必死に守ろうとしてくれてたのに」
四条 幸音:「何も知らなかったんだぞ、僕は……君のこと、ずっと怖いって思ってたんだぞ」
椿尾 輪花:「……ええと……」
椿尾 輪花:瞬きをしている。向けられた言葉を飲み込めていない 「……それは、その」
椿尾 輪花:「何て言ったら良いのか……」 誤魔化すような笑みを浮かべて、目をそらす
藁科 サイカ:「……くく、ふふ……ふ、ははっ、あははははっ」
藁科 サイカ:耐えきれない、というように、腹を抱えて笑い出した。
椿尾 輪花:「ちょ、ちょっと。藁科さん」
藁科 サイカ:「いやはや、輪花。たじたじじゃないか!」
藁科 サイカ:「どうしたんだい。こんな情熱的な〝おねだり〟、君なら艶やかにあしらってみせると思うのだがね!」
椿尾 輪花:「何……何笑ってるのよ。さっきまであんなだったのに、あなた」
椿尾 輪花:「……」 ふう、と息を吐いて 「……別に、私は」
椿尾 輪花:「怖がられていたって構わないんです。その方がセルの統率……支配。支配がしやすいんなら」
椿尾 輪花:「底知れない、怖ろしい女だって思われてた方が都合が良いし」
椿尾 輪花:「っていうか、セルを守るためだったら私はあなたたちだって切り捨てるんですよ」
椿尾 輪花:「わ、分かってるんですかその辺り」 少し怒ったような語調
四条 幸音:「分かってる。君にとってのそれが、君が生きるためのことで」
四条 幸音:「いつか、僕も必要になったら切り捨てたとしてもさ」
四条 幸音:「僕はずっと、君に守られてきた」
四条 幸音:「どんな理由でも過程でも、それは事実だろ?」
椿尾 輪花:「っ……」 言葉に詰まる
椿尾 輪花:「……だから? だからってそれで、恩義を感じでもしてるんですか」
四条 幸音:「そうだよ」
椿尾 輪花:「いつか撃つために弾を取っておくのは当然で……」
椿尾 輪花:口にしかけて、こめかみを押さえる。首を振る。違う違う。相手がそう都合よく思っているなら
四条 幸音:「君さ」
椿尾 輪花:微笑んで感謝の言葉を口にして、いつか引き金を引く時まで、きちんと弾丸のままにしておくのが"インプレサリオ"のやり方だ。
四条 幸音:「多分自分で思ってるよりは、情が深いぜ」
椿尾 輪花:「な……」
四条 幸音:「……まあ、僕がそう思いたいだけかもしれないけど。友達のことだし」
椿尾 輪花:「……何、ですか。このっ……分かったようなこと言ってっ……!」
椿尾 輪花:口調もそぞろだ。何か言おうとしては口が空転し、空気を噛んでいる。
四条 幸音:「ねえ、藁科」
四条 幸音:「こいつ、こっちの方が可愛いだろ?」
藁科 サイカ:「なんだい、感動的な君」
四条 幸音:「さっきみたいな怖い顔より、さ」
藁科 サイカ:「そうだな、どう答えようか。……ふむ」
藁科 サイカ:笑いすぎて涙が零れた目元を拭い、腕組みをして、首を捻った。
藁科 サイカ:ほんの一瞬、酷く残酷な顔になって、唇が声を発さぬまま「い」の形に開き、
藁科 サイカ:「そうかも知れないな、うん」舞台上の鮮やかな笑顔で、そう言ってみせた。
椿尾 輪花:「やめ……やめなさい! 藁科さん! 四条さんも!」
藁科 サイカ:「諦めたまえよリーダー。フェリクスとシルヴェストル、いずれが人の心を惹きつけたかは明白だ」
椿尾 輪花:「このっ、ついこの前までキスだってしたことなかったようなくせに……!」
椿尾 輪花:「生意気よ……!」
藁科 サイカ:「鉄壁を誇る我らがリーダーもついに──ん?」
藁科 サイカ:「……………………」
藁科 サイカ:「……したの?」
四条 幸音:「よ、余計なことを……」
椿尾 輪花:「え?」
四条 幸音:赤面してそっぽを向く。
椿尾 輪花:「……あ! いや、え……っと」
藁科 サイカ:「へえ、俺にはさせなかったのに。いやはやいつの間にか情熱的な間柄だったとは、ついぞ気付かなかった!」
椿尾 輪花:「…………」
四条 幸音:「いや、そういうのじゃないから……!お仕置きされただけだし……!」
四条 幸音:「っていうか、あんたにさせなかったのは、その」
藁科 サイカ:「しかし、これは好奇心をそそられるな。はたしてどちらから誘いを掛けたのか。二人ともそういうことに積極的とは──」
四条 幸音:「あのままやっちゃうと、こう、ぐちゃぐちゃになりそうだったからっていうか……!」
藁科 サイカ:「──ほう、お仕置き!」
藁科 サイカ:楽しげだ。
椿尾 輪花:その隙に目を閉じて、ぐいと紅茶を飲み干し
椿尾 輪花:「はーっ…………」 深く俯き、長く息を吐いて
四条 幸音:「ちょ……ちょっと一旦、ストップ! 話を戻して!」
四条 幸音:「とにかく、さ。……藁科」
四条 幸音:弛緩していた気持ちをもう一度引き締めて。
椿尾 輪花:完璧な微笑を浮かべ、顔を上げる 「……ふう」
四条 幸音:「協力、してくれない? ……こいつがまた怖い顔しなくて済むようにさ」
四条 幸音:「……『元の形』よりそっちの方が、良いと思うんだ。僕」
藁科 サイカ:問いかけに応じる顔は、
藁科 サイカ:口角を片方だけ吊り上げた、歪な唇の笑み。
藁科 サイカ:「君は欲深いマゾヒストだな、幸音。適切に罰して、適切に甘やかしてくれる相手が欲しいのだろう」
四条 幸音:「う……」
藁科 サイカ:「自罰的な傾向こそはあるが、それも都度都度程よく罰されることで、後で大きな不幸に対面せずに済むからではないのかな」
四条 幸音:「ううっ」
藁科 サイカ:「俺は君を甘やかしたが、罰することはしなかった。それが居心地が悪くて、輪花は理想的なサディストだったという訳だ」
四条 幸音:「……怒って、る?よね」
藁科 サイカ:「なるほど、君は確かに幸運だ。夢に見た主人がこんな近くに。青い鳥を探す旅程よりよほど短い迷走だな!」
藁科 サイカ:「……さて、どうだろう。俺は君の配偶者ではないし、怒りを覚える筋合いはないが」
藁科 サイカ:「だがようやっと君という人間の輪郭を掴めてきたかも知れない。そう思っているところだよ」
藁科 サイカ:「──脱線したな。協力の話か。とは言うがまさか、俺に、〝UGNの女性職員をひっかけて誑かしてきて〟とは言わないだろうね?」
椿尾 輪花:「……別に、あなたたちに協力してもらう義理などありません。ことUGNに関しては」
椿尾 輪花:「ただ、じき来るFHセルからの挟撃に関しては……大いに働いてもらうことにはなると思いますが」
藁科 サイカ:「それは無論、大いに力をふるうとも。我らが領地、我らが国土だ」
椿尾 輪花:「それこそ、犠牲が出るかもしれない戦いですよ。そこに命を懸けて貰えれば、それで十分です」
藁科 サイカ:「それも無論。例え死んだところで、耐用限界が数ヶ月早まるだけのことだよ」
四条 幸音:「……できれば、その後のラオペの存続で」
四条 幸音:「椿尾が一人で頑張らなくても良いように、なんとかしたいけど……」
四条 幸音:「具体的な方法は、って言われると……わかんない。すいません……」
藁科 サイカ:「建設的な案を言おうか? 輪花より優秀になるか、優秀なメンバーを引き入れるか」
椿尾 輪花:「四条さんにはどちらも難しいでしょうね」
藁科 サイカ:「そうでなければ敵対するセルを全てこちらから叩き潰して、下請けじゃなく元請けの側に鞍替えすることだ」
椿尾 輪花:「正直、それもだいぶ難しいです、別の危険は生えてきますが……」
椿尾 輪花:「……その辺りは私も思案しているところです。とりあえず、気持ちだけ受け取っておきます」
椿尾 輪花:「ありがとう、四条さん」
椿尾 輪花:いつもどおりの落ち着いた笑みを向ける。
四条 幸音:「……うん」
四条 幸音:「ごめん。……結局、わがまま言ってばっかりだ」
椿尾 輪花:「本当にね」
椿尾 輪花:紅茶を飲もうとして、カップが空になっていることに気付き、自分で注ぎ足す
椿尾 輪花:「とんでもないことを言ってばかりです、あなた」
椿尾 輪花:「身の程知らずの世間知らず」
四条 幸音:「……困らせたよね」
椿尾 輪花:「ええ。ここまで困ったさんだったなんて、全く」
椿尾 輪花:つんとした顔で紅茶を飲む
椿尾 輪花:「言うまでもありませんが、今日ここで話したことは内密に」
椿尾 輪花:「いずれ他のメンバーにも知れる所にはなると思いますが……」
椿尾 輪花:「必要な対応は私がします。たとえどんな理由があれ、私が発端の問題ですから」
藁科 サイカ:「座長は知ってるだろうとして……七葉さんにも言うのかい?」葛野をはなから除外している。
椿尾 輪花:「言うつもりです。不安がないと言えば嘘になりますが」
椿尾 輪花:「時間の問題でしょうしね。四条さんも気付いたことですし」
藁科 サイカ:「あのひとは中々に怖いぞ、輪花とは別の形で」
四条 幸音:「……下手したらもう気づいてるかも。流石に口にはしないだろうけど」
藁科 サイカ:「輪花はひとの思考を見るが、あのひとはひとの心の形を見ている」
椿尾 輪花:「……どうだか」 影の端末越しに伝わってくる、二匹の雌犬の発情声を聞き流しながら
藁科 サイカ:「興味の置き所の違いかも知れないが。さほど会話した訳でもないのに、俺はあのひとに見透かされた気分だったよ」
藁科 サイカ:「………………・」
藁科 サイカ:「……恋は盲目って言葉も、まぁ……あるけどさ……」
四条 幸音:「ともかく、さ」
藁科 サイカ:何かを悟ったように、そう付け加えた。
四条 幸音:「方針にしろ行動にしろ……考えてるとか、やってることあるなら」
四条 幸音:「できるだけ、話してよね。……僕も、そうするから」
椿尾 輪花:「……考慮しておきます。話す必要と理由があることであればね」
四条 幸音:「……理由になるぐらい、頼れるようになれば良いんでしょ」
四条 幸音:「やってやるさ」
椿尾 輪花:「そうですね」 笑みを浮かべる。少し意地悪い 「もしそうなれば好都合ですから」
椿尾 輪花:「期待してますよ。四条さん」
藁科 サイカ:拍手。
藁科 サイカ:主演女優へ捧げる拍手は、乾いた音がした。
GM:ミドル前半が終了しました。
GM:全員1回分の登場侵蝕をお願いします。また、購入判定を行うことができます。
四条 幸音:四条 幸音の侵蝕率を1d10(→ 8)増加 (44 → 52)
御薗橋七葉:1D10+52
DoubleCross : (1D10+52) → 6[6]+52 → 58
葛野 くるみ:葛野くるみの侵蝕率を1d10(→ 9)増加 (49 → 58)
椿尾 輪花:椿尾輪花の侵蝕率を1d3+3(→ 4)増加 (44 → 48)
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を1d3+3(→ 6)増加 (57 → 63)
椿尾 輪花:購入どうしよっかな
葛野 くるみ:購入 応急手当ねらいます
葛野 くるみ:1dx+2>=8
DoubleCross : (1DX10+2>=8) → 7[7]+2 → 9 → 成功
葛野 くるみ:やった買えた
藁科 サイカ:誰か欲しいものありますかしら
四条 幸音:シューターズジャケットでも狙いましょうか
御薗橋七葉:3DX+1 応急キット
DoubleCross : (3DX10+1) → 10[3,10,10]+8[5,8]+1 → 19
御薗橋七葉:めっちゃ買えた
四条 幸音:4DX+0+0@10>=13 調達
DoubleCross : (4DX10>=13) → 6[1,2,3,6] → 6 → 失敗
四条 幸音:お前ほんと回らねえな!以上です
葛野 くるみ:こちら欲しいものは大丈夫~
椿尾 輪花:ボルトアクションライフル~(ドラえもん)
四条 幸音:特別これが欲しいって感じはないかなあ
椿尾 輪花:4dx+2=>15
椿尾 輪花:4dx+2>=15
DoubleCross : (4DX10+2>=15) → 8[3,4,4,8]+2 → 10 → 失敗
藁科 サイカ:じゃあフレーバーとしてセーフハウス狙おう
藁科 サイカ:6dx+4>=15 AIDA適用
DoubleCross : (6DX10+4>=15) → 8[1,2,5,5,7,8]+4 → 12 → 失敗
藁科 サイカ:以上!
椿尾 輪花:別にメッチャ欲しいってわけじゃないし良いかな……以上です 一応取ってこう
四条 幸音:全員終わりかな?
葛野 くるみ:そんな気がします!
GM:OK!
【Middle2】
GM:choice[藁科,御薗橋,四条,葛野,椿尾]
DoubleCross : (CHOICE[藁科,御薗橋,四条,葛野,椿尾]) → 四条
GM:
GM:ミドル戦闘シーンです 全員登場を推奨します。
椿尾 輪花:椿尾輪花の侵蝕率を1d3+3(→ 4)増加 (48 → 52)
葛野 くるみ:葛野くるみの侵蝕率を1d3+3(→ 5)増加 (58 → 63)
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を1d3+3(→ 5)増加 (63 → 68)
御薗橋七葉:1D10+58
DoubleCross : (1D10+58) → 9[9]+58 → 67
四条 幸音:四条 幸音の侵蝕率を1d10(→ 2)増加 (52 → 54)
GM:"ラオペ"拠点から離れた、建設途中のビル。四条幸音は完全に敵に囲まれていた。
GM:何者かの尾行に気付き、仲間に連絡を入れたのも束の間。襲ってきた多数の敵に追い立てられ、辛うじてここに逃げ込んだ。
GM:視界内に敵は十人ほど。ワーディングが通用しないところを見るに、全員がオーヴァード。何人か他セルの構成員として知っている顔もあるかもしれない。
"ブラックハイド":「久し振りね、幸音ちゃん?」
"ブラックハイド":その中の一人が歩み出て、君に声を掛けてくる。
"ブラックハイド":"ブラックハイド"山科三重。元"ラオペ"のメンバーだ。
"ブラックハイド":嗜虐の色を滲ませた余裕の表情で、狩られる獲物の立場にある君を見ている。
四条 幸音:「山科……」
四条 幸音:仲間で、友人と思っていた。 見たくない表情を向けられている。
四条 幸音:「道、開けてくれないかな」
"ブラックハイド":「聞いたわよ?今度の舞台、幸音ちゃんが主役なんですって?」
"ブラックハイド":「びっくりしちゃったぁ。意外過ぎて。ちょっと信じらんないなー」
四条 幸音:「……何が、言いたいの」
"ブラックハイド":「幸音ちゃん、大丈夫なの?私が演技、教えてあげようか?」
"ブラックハイド":「ん?」
"ブラックハイド":ニヤついた笑み。
四条 幸音:「戻ってきてくれるんなら」
四条 幸音:「僕は、教わりたいよ」
"ブラックハイド":「バァーッカじゃないの?誰があんなとこ戻るかっての」
"ブラックハイド":「演技も舞台もくそったれよ。ようやく解放されてせいせいしたわ」
"ブラックハイド":「幸音ちゃんも災難よね。あんなセルに残ったばっかりに」
"ブラックハイド":「私が拾ってあげようか?あんた、部下としては良さそうだし。だから椿尾の奴にも気に入られてたんでしょうけど」
四条 幸音:「……馬鹿言うなよ」
四条 幸音:「僕なんか部下にしたら、苦労するぜ」
四条 幸音:「頭悪くて、我儘で、優柔不断で」
四条 幸音:「……察しも悪いしさ。友達がいのないやつだって、自分でも思うよ」
四条 幸音:「それでも」
四条 幸音:「ラオペに居られたのは、僕の幸運だ」
四条 幸音:「いつも間が悪くて、ろくでもない僕の幸運が、唯一もたらしてくれた本物だ」
四条 幸音:「災難なんかじゃない。撤回しろ」
"ブラックハイド":「るっせェェーなァ!メンヘラがヘラんなら鍵アカでやれよ!」
"ブラックハイド":"ブラックハイド"の周囲、圧縮重力による黒色の武具が生成されていく。
"ブラックハイド":「要するに私の誘いは拒否するってわけよね?」
"ブラックハイド":「そのくっっだらない……何?プライド?義理?なんかのために、ここで死んでもいいのよね?」
四条 幸音:「死んでもいい、とは言わないよ」
四条 幸音:「裏切るのは、死ぬより嫌なだけ」
"ブラックハイド":「アハハッ!この状況でイキっても惨めなだけよ!」
GM:四条を取り囲む敵が、一斉に武器を構える。
四条 幸音:「……幸運だったよ」
四条 幸音:「君が狙ってきたのが、僕で」
"ブラックハイド":「じゃあね幸音ちゃん。あんたの死体は"ラオペ"の真ん前に飾ってあげる」
"ブラックハイド":「最高の主演女優賞が貰えるでしょうよ!アハハハッ!」
四条 幸音:「あんたのそれは、助演には安っぽいね。それに──」
四条 幸音:「時間、かけすぎ」
"ブラックハイド":「は──?」
"ブラックハイド":"ブラックハイド"が眉を顰めた、その時。
椿尾 輪花:コンクリートの足元、その亀裂から、糸のように細い影が無数這い出てくる。
"ブラックハイド":「ッ!!」「これ……っ……!」
椿尾 輪花:それらは生き物のように蠕動しながら、しかし機敏・精確な動きで、取り巻きの武器とそれを持つ腕に絡みつき、動きを縛り付ける。
椿尾 輪花:同時、"ブラックハイド"の対角に、柱のように影が編み込まれ
椿尾 輪花:それが解ければ、椿尾輪花がそこに立っている。
椿尾 輪花:「こんにちは、ええと……」
椿尾 輪花:「……二番手さん」
椿尾 輪花:「久しぶりですね。"衣笠"の情報を持ってきてくれたんですか?」
"ブラックハイド":「椿尾ォッ……!」
椿尾 輪花:微笑を浮かべながらも、影の糸は依然、戦闘員を縛り上げている。
"ブラックハイド":額に青筋を立て、憎悪の表情でかつての上官を見る。
四条 幸音:「……助かった。 ありがと、椿尾」
四条 幸音:「結構ギリギリだった」
椿尾 輪花:「セルメンバーを守るのは当然ですから」 落ち着いた様子だ。先日見せた狼狽は影もない
葛野 くるみ:更にブラックハイドを牽制するように、生体電流を纏った武骨なナイフが四本、鉄骨を破壊しながら飛来する。
葛野 くるみ:極彩色のピンクを塗りたくったような、派手なカラーリング。
"ブラックハイド":「……!」それを見ただけで、明らかに顔色が変わる。
"ブラックハイド":「あんた……!」
葛野 くるみ:"さかはぎサード"の何よりの目印。
葛野 くるみ:遅れて本体が、鉄骨を飛び移るようにして────にっこりと笑う。
葛野 くるみ:「幸音ちゃんにひどいことしちゃだめだよーっ、……ええと」
葛野 くるみ:「………誰だっけ?」
"ブラックハイド":「こ……の……腐れビッチが……!」
椿尾 輪花:「人を見る目は最低限あるみたいですね」
葛野 くるみ:「えーっ、そんな怒ることないじゃーん」
"ブラックハイド":「丁度いいわ……!よく来てくれたわね……あんただけはこの手でぶっっ殺してやりたかった……!!」
藁科 サイカ:盛大な拍手が一人から送られる。まだドアを取り付けられていない、壁の四角い枠からだ。
葛野 くるみ:「えーっ、なんでなんで……」首を傾げていたが、すぐに興味が移る。「…あ!」
藁科 サイカ:「くるみ、山科三重さんだ。君を引き立てる役をよくやってくれたじゃあないか!」場違いの朗々たる声音。場の目を引き寄せる声量。
葛野 くるみ:「へええ、そうだったっけ…? それはありがとー?で、いい?」
四条 幸音:「君たちさ……もうちょっと、言い方……」
藁科 サイカ:「君が鷹なら彼女は夜鷹だ、虫を喰らって夜を飛ぶ!」
藁科 サイカ:「いやぁ、嬉しいな! 君はついぞ変わらない、本当に好ましい!」
藁科 サイカ:心底からの賞賛と歓喜に満ちた声で、藁科サイカは〝ブラックハイド〟へ拍手と笑みを捧げ続ける。
"ブラックハイド":「あんたには前々からムカついてたのよ、藁科……!」
椿尾 輪花:「まあ、敵ですしね……」
藁科 サイカ:「俺は君が好きだったんだけどなぁ。俺を置いて勝手に成長したりしないだろ、君」
"ブラックハイド":「黙れッ!!」激怒と共に、空間を歪ませて重力の刃が放たれ──
"ブラックハイド":明後日の方向へと飛んでいき、壁に大穴を穿つ。
"ブラックハイド":「……!?」
葛野 くるみ:「おっ」目を丸くする。
藁科 サイカ:「……おお。これはこれは、さてはおいでになられたか。俺達だけでも手強かろうに」
"ブラックハイド":「誰か……いるわね……!?」
藁科 サイカ:「いよいよ君達には望みが無くなったなぁ──さて、真打ちの名を、」
藁科 サイカ:「くるみ、呼んであげて?」
葛野 くるみ:「うん」鉄骨の上に獣のように跨って、その名を叫ぶ。
椿尾 輪花:(別に存在を明かす必要はないと思うんですけどねえ) 思いつつ、言っても無駄なので言いはしない。どうせあの女も悦ぶだろう
葛野 くるみ:「舞台に来てよ」「───"レジスタ"!」
御薗橋七葉:光と影の屈折の境界、ほんの一瞬、そのシルエットだけが垣間見える。
御薗橋七葉:影絵のように映し出される、すらりとした長身の女の姿。眼鏡のレンズだけがほんの一瞬、光を反射して。
御薗橋七葉:「……"レジスタ"は、舞台に立つものではないでしょう」
御薗橋七葉:陽炎、あるいは万華鏡のように揺らぐ景色の中から、声だけが聞こえる。
御薗橋七葉:「こういうのは得意じゃないんです」
御薗橋七葉:「早く終わらせてください」
藁科 サイカ:「だが、様になってる登場だ。そうは思わないか、皆」
葛野 くるみ:「照れ屋なんだよねー」
四条 幸音:「……来てもらっちゃってごめんなさい。助かりました」
椿尾 輪花:「分を弁えていることは悪いことじゃありません」
椿尾 輪花:"ブラックハイド"を見て 「あなたもそうなら良かったのにね」
"ブラックハイド":「……ああ、そう。新メンバーってわけ……」苛立たし気に身体を揺らす。
"ブラックハイド":「やっぱり来たのね。"ラオペ"のクソ共……」
"ブラックハイド":「まあ、いいわ。好都合よ」
"ブラックハイド":「ここであんたらを全員殺せば、それで終わりってわけだもの!」
GM:"ブラックハイド"の号令と共に、敵が一斉に動き出す。
GM:戦闘開始です。
GM:PC (5m)FHエージェント1/2/3 (5m) ブラックハイド
GM:工場は狭いので左右は封鎖されています。(迂回できません)
藁科 サイカ:地の利を得られたぜ
GM:ではセットアップから。エネミーはありません。
葛野 くるみ:ありません!
藁科 サイカ:無し!
四条 幸音:なし!
椿尾 輪花:ないぞっ
御薗橋七葉:えーと……
御薗橋七葉:コンボ【ウェルメイド・プレイ】
御薗橋七葉:≪攻撃誘導≫+≪ショウタイム≫+≪タブレット≫+≪多重生成≫
御薗橋七葉:対象は敵全員
御薗橋七葉:自身を対象に含まない攻撃ダイス-を12個します
葛野 くるみ:ヒエ~~
藁科 サイカ:えぐいわぁ~
四条 幸音:助かっちゃう
GM:御薗橋七葉の侵蝕率を12増加 (67 → 79)
GM:こいつ本当に何?
四条 幸音:あなたのPCですよ
椿尾 輪花:助かっちゃう
GM:では行動値10、藁科さんの手番です。
藁科 サイカ:ヤー
藁科 サイカ:マイナーアクション、戦闘移動で5m前進。FHエージェント達と同じエンゲージに入ります
藁科 サイカ:そしてメジャーアクションは《ウルトラボンバー》とFHキーンナイフによる射撃攻撃。対象は範囲の為にFHエージェント1から3まで全員だ。
GM:オイオイオイオイ
藁科 サイカ:判定……行くぜ!
GM:どうぞ!
藁科 サイカ:3dx+2
DoubleCross : (3DX10+2) → 9[4,8,9]+2 → 11
藁科 サイカ:リアクション不可です
GM:ほぎゃ~~~
GM:ダメージどうぞ!
藁科 サイカ:2d10+15 対象の装甲値-5してダメージ計算
DoubleCross : (2D10+15) → 4[2,2]+15 → 19
藁科 サイカ:出目が……おのれい!
GM:オッ
GM:全員生きてる~~
四条 幸音:おのれい!
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を4増加 (68 → 72)
葛野 くるみ:オヨヨ
藁科 サイカ:そして自爆した分のリザレクト
藁科 サイカ:1d10
DoubleCross : (1D10) → 3
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を3増加 (72 → 75)
GM:演出どうぞ!
藁科 サイカ:──戦いの手順は決まっている。手に何も持たずにかけ出し、躊躇い無く間合いに入った。
藁科 サイカ:攻撃動作は無い。手も足も目立った動きが無いまま──胴が爆ぜる!
GM:敵から戸惑いの声、そして悲鳴が上がる。
藁科 サイカ:体内に埋め込んだ金属片、或いは骨の破片。或いは病毒に冒された肉や血といったものが、無造作に撒き散らされる!
GM:「がぁあああ……!」「何が……!」「痛、痛え……!」
藁科 サイカ:「痛みに弱いな。乙女ばかりならもう少し優しくして差し上げるべきだだったか」
藁科 サイカ:「……ところで三重。君は処女かい?」
GM:いずれも重篤なダメージを負ってはいるが、雑兵とはいえオーヴァードだ。手足を吹き飛ばされ、内臓が損傷しようと、簡単に絶命はしない。
"ブラックハイド":「……はぁ!?」
藁科 サイカ:砕けた肉や骨が、リザレクトで再生する。真っ先に修復された声帯から発せられたのは、
"ブラックハイド":「頭おかしいの!?」
藁科 サイカ:「そうだったら言ってくれ。優しくするようにリーダーに言うから」
藁科 サイカ:自分の血で濡れた顔で、ぱちんとウィンク。
"ブラックハイド":「どこまでもコケにしやがって……!!」
GM:行動値8、御薗橋さんの手番です。
御薗橋七葉:マイナーなし。メジャーで26m後退します
GM:同じく行動値8、FHエージェントの手番です
GM:choice[藁科,御薗橋,四条,葛野,椿尾]
DoubleCross : (CHOICE[藁科,御薗橋,四条,葛野,椿尾]) → 御薗橋
GM:choice[藁科,御薗橋,四条,葛野,椿尾]
DoubleCross : (CHOICE[藁科,御薗橋,四条,葛野,椿尾]) → 四条
GM:choice[藁科,御薗橋,四条,葛野,椿尾]
DoubleCross : (CHOICE[藁科,御薗橋,四条,葛野,椿尾]) → 椿尾
GM:御薗橋以外への攻撃はダイスが0になるので……失敗します……
椿尾 輪花:かわいそう
四条 幸音:やったー!
葛野 くるみ:かわいそう
四条 幸音:ありがとう御薗橋さん!
GM:死ね御薗橋!
GM:≪コントロールソート≫+≪スキルフォーカス:射撃≫
GM:6DX+10
DoubleCross : (6DX10+10) → 9[2,2,3,4,4,9]+10 → 19
御薗橋七葉:1DX+1>=19 ドッジ
DoubleCross : (1DX10+1>=19) → 10[10]+5[5]+1 → 16 → 失敗
御薗橋七葉:お 惜しい
葛野 くるみ:七葉ちゃん~~!
GM:死ね~~~ッ
GM:2D10+4
DoubleCross : (2D10+4) → 9[8,1]+4 → 13
GM:全然死なねぇ
葛野 くるみ:良かった~
四条 幸音:ほっ
GM:御薗橋七葉のHPを11に変更 (24 → 11)
御薗橋七葉:敵の視界が揺らぎ、味方の姿を捉えさせない。
御薗橋七葉:光と影の幻惑に加え、ソラリス能力によるもっと直接的──暴力的といってもいい作用が、認識に重篤な阻害効果を及ぼしている。
GM:「何なんだ、これ……!」「ふざけやがって……!」
御薗橋七葉:だが、当てずっぽうに放たれた銃弾が、脇腹を抉る。
御薗橋七葉:「っ……」
葛野 くるみ:「あ」鉄骨の上からそれに気付く。
葛野 くるみ:「あーあ」
御薗橋七葉:血の噴き出る腹を抑え、よろめきながら、能力は解除しない。
御薗橋七葉:一度幕が上がれば、舞台を途中で止めることは出来ない。
御薗橋七葉:スポットライトは、灯され続けなければならない。
御薗橋七葉:「……やっぱり」
御薗橋七葉:「向いてない、こういうの」
御薗橋七葉:苦々しい顔で毒づく。
椿尾 輪花:「ごめんなさいね、ちょっと相手の出方を見ておきたかったから……」
椿尾 輪花:「早めに終わらせましょう。お願いね?」
葛野 くるみ:「…そうだね」返事はこちらがした。
GM:行動値6、四条さん、葛野さんの手番です。
葛野 くるみ:いってもいい~?
四条 幸音:どうぞ!
葛野 くるみ:じゃあこちらの手番!いきます
葛野 くるみ:まずマイナーで5m移動。FHエージェントと接近。
葛野 くるみ:メジャー。コンボ【はなひらいてウラハラ】
葛野 くるみ:《コンセントレイト:ノイマン》《マルチウェポン》《ヴァリアプルウェポン》。FHエージェントAに攻撃します
葛野 くるみ:《ヴァリアプルウェポン》の効果でキーンナイフを選択、攻撃力を+5、更に対象の装甲値を-5してダメージを算出します。
GM:来い!
葛野 くるみ:8dx+12
DoubleCross : (8DX10+12) → 7[1,2,2,2,5,6,7,7]+12 → 19
GM:コンセ!
葛野 くるみ:あっC値わすれてた
葛野 くるみ:振り直します!
GM:どうぞ!
葛野 くるみ:8dx7+12
DoubleCross : (8DX7+12) → 10[1,4,4,4,8,8,9,9]+10[3,4,9,10]+10[3,10]+6[6]+12 → 48
葛野 くるみ:?
GM:ギェーッ
藁科 サイカ:すっごい
四条 幸音:強い
葛野 くるみ:48じゃよ
GM:イベイジョン12で命中します
GM:ダメージどうぞ!
葛野 くるみ:5d10+21 装甲-5
DoubleCross : (5D10+21) → 17[5,2,3,4,3]+21 → 38
GM:当然死ぬ!
葛野 くるみ:よかった~ ダメージダイスは微妙だった
GM:一人死にました 残り2体です
葛野 くるみ:侵蝕63→71
葛野 くるみ:糸が切れた人形のように鉄骨からひらりと舞い降り、着地までの間に通常義肢から戦闘義肢へと換装する。
葛野 くるみ:空中を漂っていた極彩色のナイフが生体電流にて引き寄せられ、武骨すぎるそれが手足の代わりとなる。
葛野 くるみ:スプリングを付属した脚部のナイフでコンクリートを荒々しく突き刺しながら跳ね、さながらバッタのように強襲した。
葛野 くるみ:「お前っ」
葛野 くるみ:その矛先は───偶然か、意図的にか。先ほど七葉ちゃんを傷つけた男に向いた。
葛野 くるみ:歯車が回るように、巨大刀で掻きまわし、掻き撫でて。脳天から胴を逆剥ぐ。
GM:「が、ばッ」噴水のように鮮血を噴き出し、前衛的なオブジェのようになって絶命する。
葛野 くるみ:「あはっ」飛び散る血潮をベールのように纏い、浮かんだのは笑顔だった。
葛野 くるみ:「ひとりやったよー!」
藁科 サイカ:「お見事!」
御薗橋七葉:その様に、凄惨な光景に、無邪気すぎる笑みに、思わず目を奪われていた。
四条 幸音:「……うん」
四条 幸音:ぞくりと背筋に冷たいものを感じる。
GM:同じく行動値6、四条さんの手番です。
四条 幸音:はい!
四条 幸音:マイナーアクション、ストライクチップの効果起動。メジャーの命中ダイス+2
四条 幸音:メジャーアクション、<コンセントレイト:オルクス>+<ディストーション>、コンボ:欠けた願い
四条 幸音:対象は残ったFHエージェントの一体、対応なければ判定します
GM:どうぞ!
四条 幸音:6DX+5+0@7 欠けた願い
DoubleCross : (6DX7+5) → 10[1,2,2,5,6,7]+1[1]+5 → 16
四条 幸音:そろそろ幸運の座返上シたほうが良くない?
葛野 くるみ:幸音………
四条 幸音:まあ命中ダイス少ないから仕方ないか……
椿尾 輪花:自分が不運を背負い周りに幸運をもたらすエンジェル幸音になるというのか
GM:しかしイベイジョンでギリ命中
四条 幸音:あぶなーい
GM:ダメージどうぞ!
四条 幸音:ダメージはサイドリールでダイス一個追加、固定値7!
四条 幸音:2d10+1d10+7
DoubleCross : (2D10+1D10+7) → 18[10,8]+10[10]+7 → 35
四条 幸音:お前……
葛野 くるみ:ダメージダイスはすごい良い
GM:死!
GM:残り一体です
四条 幸音:殺っちまう気だけはある
四条 幸音:よし!
四条 幸音:四条 幸音の侵蝕率を4増加 (54 → 58)
四条 幸音:両面に青い鳥をあしらったコイン。左手で弾く。
四条 幸音:弾かれたコインが飛翔しながら、エフェクトに反応して形を変える。鳥の姿に変貌──
四条 幸音:──しきる前に、その姿が消失する。同時、葛野に気を取られていたエージェントに着弾。
四条 幸音:標的に鋭い嘴の傷跡を残し、コインは四条の手元に戻っている。
四条 幸音:コインにあしらわれた絵柄は、青い鳥から黒い鴉へと。
四条 幸音:「……一人、落とした」
葛野 くるみ:「あっはっは!」着弾の様子を見てケラケラと笑っている。「頭っ、爆発したー!」
四条 幸音:つとめて冷静に……言える自分が嫌になる。
四条 幸音:葛野の笑顔に恐れを抱く権利など、ありはしないのに。
藁科 サイカ:「今日の舞台は中々に過激な演出だな! 素敵じゃあないか!」
四条 幸音:「まだ残ってる。油断しないで」
GM:頭部を失った一人が血だまりに倒れ伏すと、いよいよ周囲に恐怖の色が伝染していく。
GM:行動値5、椿尾さんの手番です。
椿尾 輪花:「良い調子です、葛野さん」 そっと声をかけて
椿尾 輪花:しかし攻撃手段はないのだ……こんな展開になるなら無理にでもライフル確保するべきだったな
椿尾 輪花:ということで待機します
葛野 くるみ:「ふふっ、ありがとー!」嬉しそうに笑う。
葛野 くるみ:「あたし偉いとこ見ててねー」大振りのナイフをぷらぷら振った。
GM:では行動値5、"ブラックハイド"の手番です。
"ブラックハイド":《コンセントレイト》《黒の鉄槌》《増加の触媒》《暗黒の槍》《因果歪曲》《パラドックス》
"ブラックハイド":対象は5体、PC全員!
四条 幸音:きゃーっ全体攻撃!
藁科 サイカ:派手だぜ
"ブラックハイド":4dx7+9
DoubleCross : (4DX7+9) → 10[4,6,8,9]+10[7,9]+6[3,6]+9 → 35
椿尾 輪花:頑張りやがる
四条 幸音:け、結構回すじゃない ダイス4つで
藁科 サイカ:おおっと手強いぞ?
葛野 くるみ:すごい
御薗橋七葉:1DX+1 ドッジ
DoubleCross : (1DX10+1) → 7[7]+1 → 8
椿尾 輪花:1dx ドッジ
DoubleCross : (1DX10) → 3[3] → 3
葛野 くるみ:4dx+1 ドッジ
DoubleCross : (4DX10+1) → 9[8,8,8,9]+1 → 10
藁科 サイカ:3dx+1 ドッジ
DoubleCross : (3DX10+1) → 9[5,8,9]+1 → 10
四条 幸音:まだダイスボーナスもらえてないや ダイス一個で回避
四条 幸音:1DX+1 ドッジ
DoubleCross : (1DX10+1) → 10[10]+5[5]+1 → 16
椿尾 輪花:ウーン
四条 幸音:変なところで半端に頑張るな!ほんと間が悪いなお前の幸運!
葛野 くるみ:よしよし
椿尾 輪花:四条さんにメジャー放棄カバー
四条 幸音:まあ妖精使っても36はきついし温存します
四条 幸音:マジか
葛野 くるみ:ほぉ~ん
"ブラックハイド":ダメージ!
"ブラックハイド":4D10+21 装甲無視
DoubleCross : (4D10+21) → 11[5,2,3,1]+21 → 32
椿尾 輪花:フゥン?
椿尾 輪花:《隆起する大地》+《浮遊する大地》+《異形の加護》 対象は藁科さんと葛野さん
藁科 サイカ:おおっ
葛野 くるみ:リーダー~!
椿尾 輪花:6d10+6
DoubleCross : (6D10+6) → 33[10,2,9,10,1,1]+6 → 39
葛野 くるみ:ヤバ
藁科 サイカ:リーダーかっこいい~
椿尾 輪花:やったぜ39点軽減
藁科 サイカ:いやマジでか
GM:何だとぉ…………
藁科 サイカ:リーダーすげえ……
葛野 くるみ:つよ~~~~
御薗橋七葉:1D10+79 リザレクト
DoubleCross : (1D10+79) → 5[5]+79 → 84
椿尾 輪花:でリザレクト
椿尾 輪花:1d10
DoubleCross : (1D10) → 9
椿尾 輪花:椿尾輪花の侵蝕率を10増加 (52 → 62)
椿尾 輪花:椿尾輪花の侵蝕率を9増加 (62 → 71)
椿尾 輪花:椿尾輪花のHPを9増加 (25 → 34)
椿尾 輪花:椿尾輪花のHPを9に変更 (34 → 9)
"ブラックハイド":「頭茹ったクソ女共……!」
"ブラックハイド":光を吸い込む重力の刃が高速で回転を始め、空間が歪む。
"ブラックハイド":「全員!!」
"ブラックハイド":「ブッッ死ね!!」
葛野 くるみ:「わーっ、ヤバそー!」
椿尾 輪花:「ふふ。相変わらず荒々しいですこと」
椿尾 輪花:掌を下に、両の手を組む。その指先から影の糸が伸び、冷たい地面を走る。
"ブラックハイド":風鳴りにも似た異様な音を響かせて、漆黒の刃が四方八方に解き放たれた。それぞれが追尾ミサイルめいて"ラオペ"の面々へと飛来する。
椿尾 輪花:それらが手繰るのは、藁科さんが傷つけ、葛野さんが斬り刻み、四条さんが撃ち抜いた敵の死体だ。
椿尾 輪花:『汝(なれ)らは観客である。汝らは観客である』
椿尾 輪花:『汝らに舞台へ上がる途なし。汝らに演者へ触れる由(よし)なし』
椿尾 輪花:静かに目を閉じ、唄うように言葉を連ねる。影の糸が、敵だったものを繋ぎ合わせ、人型を組み上げる。
椿尾 輪花:『弁え、省み、座し、喝采せよ。それを知らぬならば』
椿尾 輪花:『その行いの一切、無為と帰すであろう』
椿尾 輪花:人型が躍る。本来葛野、藁科両名へと向けられていた攻撃を、その身を以て受け止め、反らす。
椿尾 輪花:(……が、もう一手)
四条 幸音:「(避けられない……!)」
椿尾 輪花:次いで影の糸の数本を自らの身体に繋ぎ、身を任せる。これは隣の四条さんを庇うため。
椿尾 輪花:「く……!」
四条 幸音:「椿尾……!?なんで……!」
椿尾 輪花:目論見通りに攻撃を受けながら、残る刃を捌くために尚も糸を繰るろうとするが、想定よりも負傷が大きい。声を上げる。
椿尾 輪花:「すみません御薗橋さん、そっちまでは……!」
御薗橋七葉:「ッ、あぁっ……!」椿尾の糸の範囲外にいる。重力の刃が骨をへし折り、肉を切り裂く。胸を抉られ、夥しい血を零してたたらを踏む。
御薗橋七葉:「気に、しないでください」
御薗橋七葉:口端から血を垂らし、咳き込む。
御薗橋七葉:「私は、裏方なので」
葛野 くるみ:「あーあー」もはや藻屑と化した死体を視界の端に入れつつ、後方を見やる。
藁科 サイカ:「ふふ」
藁科 サイカ:「相変わらず禍々しいですこと」守られた女が、守った側を皮肉るように声音を真似た。
四条 幸音:「くっ……!」
椿尾 輪花:「……」 返事を聞いて少し頷くと、四条さんを顧みる 「何でって」
椿尾 輪花:「……馬鹿ね。あなたのことが好きだからとか言えば、納得するの?」 薄く笑う。受けた負傷を、影の糸が編んで塞ぎながら
椿尾 輪花:「敵は残存していて、私は攻撃が不得意で、あなたも葛野さんも藁科さんも攻撃は得意。だから守った」
椿尾 輪花:「ちゃんと敵を見て。ここは舞台じゃない。観客を慮る必要はないわ」
四条 幸音:「分かったから、無理しないで。……次は僕が受ける」
葛野 くるみ:「……」後方を見たまま、瞬き。
四条 幸音:「全部一人でやるなって、言ったでしょ」
椿尾 輪花:「はいはい。じゃあちゃんと自分の分のお仕事はなさって?」
葛野 くるみ:「……ん?」首をひねるものの、すぐに戦闘へと意識は逸れた。
GM:クリンナップは……無いですね 省略!
GM:2ラウンド目、セットアップから!
椿尾 輪花:なし!
四条 幸音:こちらはなし!
藁科 サイカ:無し!
葛野 くるみ:なし!
御薗橋七葉:≪攻撃誘導≫+≪ショウタイム≫
御薗橋七葉:自身を対象に含まない攻撃ダイス-15個
四条 幸音:増えた……
GM:御薗橋七葉の侵蝕率を7増加 (84 → 91)
葛野 くるみ:七葉 いいぞ
藁科 サイカ:輝いてるよ!
四条 幸音:侵食もだいぶ増えてきてる
椿尾 輪花:次のシーン休んだ方が良いんじゃない?
御薗橋七葉:誰が休むか!
GM:イニシアチブ 行動値10、藁科さんの手番です。
藁科 サイカ:ヤーハー
藁科 サイカ:マイナーは無し、メジャーはキーンナイフを用い他白兵攻撃で残りのエージェントの一体を
藁科 サイカ:あれ
葛野 くるみ:イニシアチブ表から消えてる
椿尾 輪花:ほんとだ
四条 幸音:あらら
藁科 サイカ:まあ、たぶん2番か3番だろう! 攻撃します
GM:あっ間違えた
GM:どうぞ!
藁科 サイカ:2dx+2 射撃技能での判定
DoubleCross : (2DX10+2) → 9[4,9]+2 → 11
藁科 サイカ:おっと、イベイジョンがあるから1足りないな……!
四条 幸音:あ、藁科さん侵食ボーナス
藁科 サイカ:あっそうだったごめん!
藁科 サイカ:1dx 侵蝕分
DoubleCross : (1DX10) → 5[5] → 5
四条 幸音:オーケー
藁科 サイカ:結果は同じ!
四条 幸音:妖精の手を使用します。コンボ:青い鳥
GM:イベイジョン12だから避けちゃうな~~
GM:何だとぉ……
四条 幸音:四条 幸音の侵蝕率を4増加 (58 → 62)
四条 幸音:ダイス目ひとつ10にして振りたしどうぞ!
葛野 くるみ:いいぞいいぞ~
藁科 サイカ:ありがたいねえ……では
藁科 サイカ:1dx+12
DoubleCross : (1DX10+12) → 3[3]+12 → 15
藁科 サイカ:ということさ!
GM:ギャーッ
GM:命中です ダメージどうぞ
藁科 サイカ:2d10+5 装甲-5計算
DoubleCross : (2D10+5) → 6[2,4]+5 → 11
藁科 サイカ:dakara
藁科 サイカ:出目!!!
GM:瀕死だったので死ぬ!
葛野 くるみ:よっよかったー!
藁科 サイカ:良かった!
椿尾 輪花:よかった
四条 幸音:よしよし
藁科 サイカ:「さて、哀れなブラックハイド!」唐突に、仰々しく飾り立てたそぶりで名を呼んだ。
藁科 サイカ:「もはや君の手駒は大きく損なわれ、君自身も」手が、
藁科 サイカ:「その命運は」まだ塞がりきらない胴部の傷口から、一振りの刃物を引き抜いた。
藁科 サイカ:「ふ」視線をブラックハイドへ向けたまま、その刃物を、
藁科 サイカ:「う」身振りの中に紛れさせて、あらぬ方向へと投げた。
藁科 サイカ:「前の灯火というわけだ!」
藁科 サイカ:……台詞が終わったころ。哀れな兵士の喉元に、大振りのナイフがひとつ、突き刺さっていた。
GM:短い悲鳴が上がり、兵士が血の泡を吹いて絶命する。
"ブラックハイド":「く……ぐっ……!」
"ブラックハイド":怒りと屈辱に身を震わせ、藁科を睨み付ける。
GM:行動値8、御薗橋さんの手番です。
御薗橋七葉:マイナーで13m後方に移動
御薗橋七葉:メジャーで隠密状態になります
御薗橋七葉:敵兵の数が減り、光と幻惑の霧が“ブラックハイド”一人に集中していく。
御薗橋七葉:重度のトリップ系ドラッグでも服用したかのような幻覚と多幸感が“ブラックハイド”を包み込み、逆に味方の位置に近付こうとすれば、全身に激痛が走る。
御薗橋七葉:それはいくら意識しようと、反射レベルで人の行動を縛り付け、規定する。
"ブラックハイド":「ふざけッ……!」
御薗橋七葉:「葛野」
御薗橋七葉:姿は無く、声だけが響く。
葛野 くるみ:「わはっ」霧を視認し、目を輝かせていた。「ん?なに?」
御薗橋七葉:「ここはもう貴方の舞台よ」
御薗橋七葉:「踊って見せて」
葛野 くるみ:「……そう? あはははっ!そうなんだ!」
葛野 くるみ:「いいよ!」
GM:イニシアチブ6 葛野さん、四条さんの手番です。
四条 幸音:はい!
葛野 くるみ:はあい!
四条 幸音:ご要望あったけど葛野さんから動きます?
葛野 くるみ:どうしよう…そうしていいですか?
四条 幸音:私は大丈夫です
葛野 くるみ:じゃあお言葉に甘えて…ありがとうございます
葛野 くるみ:ではこちらから動きます。
葛野 くるみ:マイナーで更に5m前進しブラックハイドに接近。
葛野 くるみ:メジャー。コンボ【さきみだれてハラワタ】
葛野 くるみ:《コンセントレイト:ノイマン》《マルチウェポン》《ヴァリアプルウェポン》《ハイマニューバ》。
葛野 くるみ:ブラックハイドに白兵攻撃。
葛野 くるみ:《ヴァリアプルウェポン》の効果でキーンナイフを選択、攻撃力を+5、更に対象の装甲値を-5してダメージを算出します。
葛野 くるみ:8dx7+22
DoubleCross : (8DX7+22) → 10[3,4,5,6,6,7,8,10]+10[3,4,9]+1[1]+22 → 43
GM:何だこの固定値は~~~
葛野 くるみ:よっしゃ~ 達成値43です
四条 幸音:固定値えっぐい
"ブラックハイド":ドッジ!!!!!
"ブラックハイド":4DX+1>=43
DoubleCross : (4DX10+1>=43) → 7[1,2,6,7]+1 → 8 → 失敗
"ブラックハイド":ちくしょう~~~~~ッ
葛野 くるみ:いえ~~~い
GM:ダメージどうぞ!
葛野 くるみ:5d10+21 装甲-5
DoubleCross : (5D10+21) → 19[2,2,1,7,7]+21 → 40
葛野 くるみ:ダメージダイスがふるわねえ~~~~~
"ブラックハイド":痛すぎる
"ブラックハイド":まだ生きてます
四条 幸音:まだダメージ支援送れないの……ごめんよ……
葛野 くるみ:だいじょうぶ あとは任せたからね
葛野 くるみ:侵蝕71→83
葛野 くるみ:「それじゃあねー!えぇっと」ブラックハイドを見やる。
葛野 くるみ:「そうだ、さっき聞きたかったんだけど、あたし、あなたに何かしちゃった?」
"ブラックハイド":「はぁ……!?」
葛野 くるみ:「え、だってなんか、あたしに怒ってたじゃん」
"ブラックハイド":「ま、まさか……」
葛野 くるみ:「?」
"ブラックハイド":肩を震わせて「本当に覚えてないっていうの……!?」
葛野 くるみ:「………うん」首を傾げる。
葛野 くるみ:「なんだろー…オーディション?とかは、別に、あたしのせいじゃないし…」
"ブラックハイド":「…………!!」
"ブラックハイド":「人の彼氏!!寝取っておいて!!」
"ブラックハイド":「覚えてねえじゃねーーだろ!!クソ女ァーーーッ!!」
"ブラックハイド":重力の刃を乱打する。だが、どれも葛野には掠りもしない。
葛野 くるみ:「えー? あたし、寝取ったりなんかしないよー」
葛野 くるみ:「男の子と仲良くなって、流れでエッチしちゃうこともあるけど、付き合うわけじゃないし…」
葛野 くるみ:「…聞いてないじゃん! もーいいよね。この話終わり!」
御薗橋七葉:「……」微妙な顔。
"ブラックハイド":「あぁあああぁあッ!!どこよ!!どこにいんのよッ!!殺してやる!!」
藁科 サイカ:「……すまない、輪花。笑っていいと思うかい?」
椿尾 輪花:「位置がばれるから小声でね」 ちょっとだけ引きつった微笑のまま
葛野 くるみ:脚部の義肢に仕込まれたスプリングが、アスファルトを削りながら大きく跳ねる。
四条 幸音:「笑い事じゃないだろ……」
葛野 くるみ:極彩色の刃が空を飛んだ。
葛野 くるみ:「ここだよ────」
葛野 くるみ:「……あたしをっっっ」
葛野 くるみ:四連の刃が。
葛野 くるみ:「見て!」
葛野 くるみ:ギロチンのように襲い掛かる。
"ブラックハイド":「う、あぁあああッ!!」深々と切り裂かれ、血飛沫と共に悲鳴。
"ブラックハイド":「葛野……葛野ぉおッ!!」
葛野 くるみ:「うんっ、葛野だよぉっ!」
葛野 くるみ:「まだ殺さない…殺さないからっ!」
葛野 くるみ:「いいよっ、どんどんあたしを見てねっ!」
"ブラックハイド":「あぁああぁああッ!!」闇雲に剣を振り回すが、虚しく空を切る。
GM:行動値6、四条さんの手番です。
四条 幸音:はい!
四条 幸音:マイナーアクション、ストライクチップの効果起動。メジャーの命中ダイス+2
四条 幸音:メジャーアクション、<コンセントレイト:オルクス>+<ディストーション>、コンボ:欠けた願い
四条 幸音:対象は"ブラックハイド"、対応なければ判定
GM:どうぞ!
四条 幸音:7DX+5+0@7 欠けた願い
DoubleCross : (7DX7+5) → 10[1,1,5,5,8,9,10]+10[4,5,8]+10[8]+10[10]+2[2]+5 → 47
四条 幸音:やっと回った!47です
"ブラックハイド":4DX+1>=47 ドッジ
DoubleCross : (4DX10+1>=47) → 10[2,6,7,10]+10[10]+3[3]+1 → 24 → 失敗
葛野 くるみ:がんばったのに!
"ブラックハイド":回ったのに……
GM:ダメージどうぞ
四条 幸音:5d10+1d10+7
DoubleCross : (5D10+1D10+7) → 24[1,7,4,5,7]+5[5]+7 → 36
四条 幸音:ダメージは微妙か!36点です
葛野 くるみ:十分すごいよ!
四条 幸音:四条 幸音の侵蝕率を4増加 (62 → 66)
"ブラックハイド":倒れます。
四条 幸音:よしっ!
"ブラックハイド":≪蘇生復活≫で復活
葛野 くるみ:復活した!?
GM:しますが、戦闘終了です
四条 幸音:ふう……
葛野 くるみ:よかった
四条 幸音:四条の攻撃手段は、エフェクトをまとわせた弾丸を飛ばす、ただそれだけ。
四条 幸音:因子による空間の歪みや転移によりタイミングをずらす程度。タネの割れた相手にはそうそう通用しない。
四条 幸音:コインを弾く。変貌しながら消失──先と同じ攻撃パターン。
四条 幸音:"ブラックハイド"の背後、瓦礫が崩れる音。 レネゲイドの蠢く気配。
"ブラックハイド":「──!」咄嗟に振り返る。
四条 幸音:──弾丸は、来ない。
四条 幸音:黒い鴉が、倒れたエージェントたちの死体に群がっている。
四条 幸音:鴉は"ブラックハイド"を振り向き、その身を溶かし消えながら、
四条 幸音:愉快そうに、嗤う。
"ブラックハイド":「ひ……」
四条 幸音:──着弾。 不吉な鳴き声が命中を示す。
四条 幸音:「……タイミングをずらした、だけなんだけどね」
四条 幸音:「ほんとに、なんなんだか」
葛野 くるみ:「あはっ、あはははは……あは?」
"ブラックハイド":「……づッ……あぁあああ……!!」腹部を穿たれ、激しく苦悶する。
四条 幸音:「山科……動かないで」
葛野 くるみ:「あれぇ、もう終わりー?」
"ブラックハイド":「ざっっ……けんな!!四条ッ……!!調子に乗りやがって……クソガキが……!!」
"ブラックハイド":震える脚で立ち上がろうとして、ぼたぼたと夥しい血を零す。
四条 幸音:「動くなって言ってるでしょ……! その傷でそれ以上動いたら、あんた……!」
"ブラックハイド":「見下してんじゃあないわよッ!!クソ共が!!」
"ブラックハイド":再び重力の武具を展開しようとした、その時。
“天眼”:『そこまでだ、“ブラックハイド”』
椿尾 輪花:「……あら」
“天眼”:山科のみならず、君達の携帯端末から、一斉に声が響く。
四条 幸音:「っ、なに……!?」
“天眼”:僅かにずれた、輪唱めいた機械音声。
藁科 サイカ:「……故人端末の番号を調べるとは、随分熱心なファンだな」
椿尾 輪花:自分のポケットを見下ろす 「今どきのプライバシー意識に欠けますね」
葛野 くるみ:「なになに?えっ、なになになに?」胸元に突っ込んだ携帯端末に耳を澄ます。
“天眼”:『既に目標は達成した。これ以上の交戦は許可しない』
"ブラックハイド":「でっ……でも……!」
“天眼”:『すみやかに帰還しろ、“ブラックハイド”。これは命令だ』
"ブラックハイド":「…………!!」
"ブラックハイド":僅かな逡巡。君達を睨み付ける。
"ブラックハイド":「……まあいいわ……あんた達はどうせ死ぬんだから、結果は変わらない……」
"ブラックハイド":「せいぜいお遊戯会でも頑張ってなさい。もっとも……」
"ブラックハイド":「もう、帰るところも無いけど」
"ブラックハイド":ゲートが開き、“ブラックハイド”を呑み込んで消失する。
椿尾 輪花:「……」 目を細める
四条 幸音:「え……」
藁科 サイカ:「……不穏な捨て台詞だな」
葛野 くるみ:「ええーっ?」
椿尾 輪花:スマートフォンを取り出し、座長に連絡をする
GM:椿尾が端末を取り出すと、大量の着信履歴が一気に表示される。
椿尾 輪花:「……っ、そうか、ここに来た時点で通信の妨害を……!」
GM:座長をはじめ、劇団関係者からだ。先程の様子も見るに、“天眼”のクラッキングによるものか。
四条 幸音:「陽動……じゃあ、あいつらの狙いは……」
藁科 サイカ:「決まってる」
座長:『……椿尾さん!良かった、やっと通じた……!』
四条 幸音:「目標は達成した、って……!」
座長:『今どちらですか!?』
椿尾 輪花:「状況を手短に。まずいことになっているのは分かっています」
座長:『……』僅かな沈黙が落ちる。
椿尾 輪花:「黙れ、考えろ、なんて言っていません」
椿尾 輪花:「報告しなさい」
座長:『……稽古場に放火されました。同時にワーディングを受け、避難が遅れました。重軽症合わせて5名』
椿尾 輪花:「向かいます。……あなたは無事?」
座長:『小道具の弥生さんは……亡くなりました。消防はすぐに来ましたが、稽古場はほぼ全焼です』
椿尾 輪花:苦々しい表情 「……そう」
座長:『……私は、何とか。すみません、何も出来ず』
椿尾 輪花:「いえ、構いません。元より荒事への対応はあなたの仕事の範囲じゃない……引き続き、表向きの座長としての仕事をお願いします」
座長:『……はい。私は病院の方に向かいます。詳しい話はそちらで』
椿尾 輪花:「分かりました。身辺には一層気をつけて」
GM:短い通話は終わり、静寂が帰ってくる。
椿尾 輪花:「……」 軽く髪を掻き、遠くに目線を送る
椿尾 輪花:ほどなく目を閉じて 「……さて」
椿尾 輪花:「ここからが大変ね」
藁科 サイカ:「……輪花、どうするつもりだい」
椿尾 輪花:「何も変わりやしません。私は"ラオペ"を維持するために動く」
椿尾 輪花:「打てる手がある限りはね。……あなたたちも、暫く稽古は休みになるだろうけど、感覚は鈍らせないようになさい」
藁科 サイカ:「ああ。……くやしいなぁ」
藁科 サイカ:「どうして俺達、揃いも揃って運が無いんだ」
葛野 くるみ:「ふうん…幸音ちゃん、せっかく主役だったのにねー」
四条 幸音:「……僕は」
四条 幸音:「(僕が、助けを呼んだせいで…・・・)」
御薗橋七葉:「……リーダー」
御薗橋七葉:「やりますよね?舞台」
御薗橋七葉:「中止にしませんよね?」
四条 幸音:大きく頭を振って、弱い考えを頭から追い出す。……自分を責めて楽になっていい場面じゃないんだ。
椿尾 輪花:「やります。そこは安心して」
椿尾 輪花:「……というか、それができなきゃ、そもそも劇団を表にしたセルとして機能するなんて言えないもの」
椿尾 輪花:薄く笑みを見せる 「負けたりなんかしない。絶対に」
GM:“ラオペ”の拠点は焼失し、劇団員にも大きな被害が出た。
GM:セルとしても劇団としても甚大な打撃を受け、舞台稽古は一時休止を余儀なくされた。
GM:負傷者には役者も混ざっていた。規模の小ささゆえに代役・兼役を立てるのも容易ではなく、結局は台本を理解している御薗橋が務めることとなった。
GM:事件から数日。“衣笠”を始めとする他セル達から狙われる中、“ラオペ”は寄る辺もなく市内を転々としながら、辛うじて稽古を再開することとなる。
GM:開演日まで、あと二週間を切っていた。
GM:シーン終了。
GM:購入のみ可能です。
葛野 くるみ:応急手当欲しい人いますか~~
四条 幸音:僕はダメージ受けてない!
藁科 サイカ:大丈夫~
椿尾 輪花:ムニャムニャ ボルトアクションライフル……クライマックスはさらなる力できるとは思うけど
藁科 サイカ:リーダー用の念のために武器を狙っておこう
御薗橋七葉:まず自分の応急使います
椿尾 輪花:回復して防具固めた方がまだ1HIT耐える可能性あるかな
御薗橋七葉:2D10+5
DoubleCross : (2D10+5) → 9[5,4]+5 → 14
御薗橋七葉:くるみ……頂戴……
葛野 くるみ:七葉ちゃんにあげる~
御薗橋七葉:ありがとう……
御薗橋七葉:2D10+14
DoubleCross : (2D10+14) → 10[1,9]+14 → 24
御薗橋七葉:ちょうど最大まで回復しました
四条 幸音:手当キットはこれで全部でしたっけ
葛野 くるみ:じゃあリーダー用の応急手当も狙うか
葛野 くるみ:3dx+2>=8 応急手当
DoubleCross : (3DX10+2>=8) → 6[2,5,6]+2 → 8 → 成功
葛野 くるみ:ちょうど買えた!リーダーにあげます
椿尾 輪花:ありがと~ つかう
椿尾 輪花:2d10+9
DoubleCross : (2D10+9) → 12[10,2]+9 → 21
椿尾 輪花:御薗橋さんより回復したわ
四条 幸音:言い方が怖いよ
椿尾 輪花:防御を固める方針にします。クリスタルシールドを購入 コネ:手配師を使用
御薗橋七葉:何よ……!
椿尾 輪花:バッドフレンドの効果もある!
御薗橋七葉:3DX+1>=12 UGNボディアーマー
DoubleCross : (3DX10+1>=12) → 9[1,3,9]+1 → 10 → 失敗
椿尾 輪花:9dx+2>=25 クリスタルシールド
DoubleCross : (9DX10+2>=25) → 10[1,2,3,3,3,4,5,6,10]+9[9]+2 → 21 → 失敗
御薗橋七葉:財産2点払って買います UGNのものを
椿尾 輪花:財産点4注いで購入。装備
藁科 サイカ:リーダーすげえや……
四条 幸音:じゃあ私もボディアーマー狙います
藁科 サイカ:リーダーあと防具欲しいもんあります?
椿尾 輪花:椿尾輪花の財産を4減少 (8 → 4)
葛野 くるみ:クリシー買えちゃうのすごいな
椿尾 輪花:手頃にUGNボディアーマーかしらん 一段上を狙うなら戦闘用着ぐるみでも良いけど
四条 幸音:4DX+0+0@10>=12 UGNボディアーマー
DoubleCross : (4DX10>=12) → 4[2,3,3,4] → 4 → 失敗
椿尾 輪花:あと応急手当はもう一個欲しいかも
四条 幸音:弱いんだよ……出目が……!
四条 幸音:あ、すいません侵食ボーナスでもう一個ダイスある!
葛野 くるみ:大丈夫だよ幸音
四条 幸音:1DX+0+0@10>=12 UGNボディアーマー
DoubleCross : (1DX10>=12) → 4[4] → 4 → 失敗
藁科 サイカ:ふむふむ
四条 幸音:結局!
椿尾 輪花:へなちょこゆきね
四条 幸音:ごめん……異常です……
四条 幸音:以上です
藁科 サイカ:じゃあきぐるみ14を狙ってみるぜ
藁科 サイカ:6dx+4>=14
DoubleCross : (6DX10+4>=14) → 7[2,2,4,6,6,7]+4 → 11 → 失敗
藁科 サイカ:失敗で以上!
GM:ではここから後半戦に入っていきましょう
GM:後半の手番を決めるダイスロールを行います。
葛野 くるみ:ドキドキ
GM:1D100で大きかった人から順番を選ぶ権利が得られます。
藁科 サイカ:こわいぜ
藁科 サイカ:1d100
DoubleCross : (1D100) → 98
四条 幸音:つよ
葛野 くるみ:wwww
四条 幸音:1d100
DoubleCross : (1D100) → 55
藁科 サイカ:ぶはははははは
葛野 くるみ:1d100
DoubleCross : (1D100) → 31
GM:なんだこいつ
椿尾 輪花:1d100
DoubleCross : (1D100) → 17
御薗橋七葉:1D100
DoubleCross : (1D100) → 91
葛野 くるみ:wwww
椿尾 輪花:ヒエェ
葛野 くるみ:何の順番これ?
椿尾 輪花:競り合いが激しすぎるッピ
御薗橋七葉:これで負けるとは……
GM:では一番大きかったのは藁科さんです 何番目を選びますか?
藁科 サイカ:4番で!
藁科 サイカ:ラストは怖いが出来るだけ後ろがいい……安全策……
GM:ほう……
GM:では次は御薗橋さん
御薗橋七葉:うーん……
御薗橋七葉:2番かな……
GM:次は四条さんです
四条 幸音:じゃあ……3番で
GM:では葛野さんどうぞ
葛野 くるみ:どうしようかな~~
葛野 くるみ:よし1番いきます
GM:OK
GM:では椿尾さんが5番目ですね
椿尾 輪花:ヒェー 承ります
GM:
1:葛野
2:御薗橋
3:四条
4:藁科
5:椿尾
GM:このようになりました
葛野 くるみ:ホエ~
藁科 サイカ:開幕から恐ろしいことになってる
【Middle latter half/葛野くるみ】
GM:ミドル後半 1手番目 シーンPCは葛野さんです
GM:誰を指名しますか?
葛野 くるみ:四条さんと藁科さんを指名します
四条 幸音:僕たち
葛野 くるみ:来なさい
四条 幸音:はい……
椿尾 輪花:ヤハ
藁科 サイカ:わあ
藁科 サイカ:OK
GM:ではメインシーンは葛野さん 四条さん 藁科さん サブシーンは椿尾さん 御薗橋さんになります
藁科 サイカ:幸音には覚悟を決めてもらおう……
四条 幸音:がんばる……
GM:残りの情報は既に明かされているこれ
・帳市UGNは、“ラオペ”セルから情報を得て市内の他セルを検挙している。その見返りとして“ラオペ”に目こぼしをするという取引のようだ。
取引をしているのはセルリーダーである椿尾輪花。この情報が割れれば“ラオペ”と取引相手の立場は危ういものとなるだろう。
GM:なので省略します。
GM:すいません脱退メンバーの30が抜けてました!こちらでした
・脱退メンバーも一枚岩ではないらしく、様々な考えを持つ人員がいるらしい。
ラオペのメンバーと事を荒立てたくない者も多いようだが、そういった者に対しては一部メンバーから圧力が掛けられているようだ。
葛野 くるみ:藁科サイカ/恋情:〇/不安
葛野 くるみ:タイタス化します。
葛野 くるみ:また、《完全演技》を使用。シナリオ開始時の自身を模倣します。
葛野 くるみ:
葛野 くるみ:"衣笠"の襲撃から数日。敵襲に備え、なるべく単独行動は避けることが暗黙の了解となった。
葛野 くるみ:夜、自宅を避けようと男友達の元を訪ねれば、当然のように抱かれた。
葛野 くるみ:そんな折。
葛野 くるみ:藁科サイカと四条幸音を誘い、市内でも有数のホテルに泊まることにした。
葛野 くるみ:新しくできたばかりのホテルの売りは、上階から夜景を見下ろせる広いバスルームだ。
葛野 くるみ:女子3人で入浴していても、窮屈さを感じることはない。
葛野 くるみ:「サイカくんー、夜景撮影できた~?」
葛野 くるみ:幸音ちゃんの背中をスポンジで洗いながら、湯船につかるサイカくんに声をかける。
藁科 サイカ:「……………………」暫しの間、無言でスマートフォンを操作していた役者の印象は、
藁科 サイカ:日頃より随分と華奢な、か細い体とも見えるだろう。
藁科 サイカ:肩幅を誤魔化すような衣服を剥いでしまえば、女性であることを疑いようもない骨格が露わになる。
藁科 サイカ:表出しているのは、その内心の方もだ。なんの表情もなく、ただスマートフォンの画面に視線を落としていた彼女は──
藁科 サイカ:「──ああ、もちろん。とは言え夜景なぞ、被写体としては物足りないな」
藁科 サイカ:衣装は無いが、舞台に上がった。
葛野 くるみ:「じゃあ、あたし達撮る~?」クスクスと笑いながら、幸音ちゃんの肩に頭を乗せる。
葛野 くるみ:ボディソープの泡越しに、乳房が背中に柔らかく沈んだ。
藁科 サイカ:「はっはっは、愉快な提案だ。承諾してしまったらどうするつもりだい?」
四条 幸音:「撮ってどうすんのさ。見直されても恥ずかしいんだけど」
葛野 くるみ:「二人して同じこと言うー!」ケラケラ笑う。
四条 幸音:「そもそも、なんで皆で入ってるんだっけ……?」
四条 幸音:言いながら葛野のされるがままに背中を預ける。
藁科 サイカ:「くるみの提案だろ、たぶん」流し聞きを示唆する言葉。
葛野 くるみ:「そー!あたし憧れだったの!みんなでお風呂入るの!」
葛野 くるみ:「あっ、ていうかサイカくん。幸音ちゃんにはもう話した?」
葛野 くるみ:「あたし達付き合ってること」
四条 幸音:「……」
藁科 サイカ:「どうだったかなぁ。けど、わざわざ言う必要があるかな」
四条 幸音:ぴく、と体を少し硬直させて、
四条 幸音:「……どうなの?」
藁科 サイカ:「どう、というのは?」
葛野 くるみ:「なになに?」
藁科 サイカ:「事実かどうかを問われているなら、事実だと答えよう──が!」
藁科 サイカ:「実質的なことを問われると悩むな。交際関係というのは、果たして何を根拠に成り立つものか」
四条 幸音:「その……二人には悪いんだけど、さ」
四条 幸音:「前に、二人が……そういうことしたっていうのは、聞かされて……わっ」
葛野 くるみ:「なんでそれだけ知ってるのー」くすくす笑いながら、スポンジで滑らかな背中を洗っている。
藁科 サイカ:「もしこれが相互の契約によるものであれば。ああ、くるみ。くるみ。君は約束を守ってくれているかなぁ?」
葛野 くるみ:「………」目を細める。
葛野 くるみ:「それなんだけどねー」
葛野 くるみ:「ごめんなさい、サイカくん。あたし全然だめだった」
藁科 サイカ:くくっ。楽しげな笑声が零れる。
四条 幸音:「えっ……だめ、って?」
葛野 くるみ:「七葉ちゃんとヤッちゃったし、昨日も友達のとこ行ったらそういう流れになっちゃってー」
葛野 くるみ:「断れなかったの」
藁科 サイカ:「ぷっ」
四条 幸音:「七葉ちゃん……って、御薗橋さんと……!?」
葛野 くるみ:「うん。ねーっ、ごめんなさいーー」
藁科 サイカ:「ふ、くくっ……く、はは、はははっ」
藁科 サイカ:足がぱしゃぱしゃと水面を叩いて、首を仰け反らせて、
四条 幸音:「ちょ、ちょっと」
四条 幸音:「藁科、何笑ってんの……!」
藁科 サイカ:「いやぁ、くるみ!」
葛野 くるみ:「はあい」しょんぼりしている。
藁科 サイカ:「君は本当に……最高だなぁ!」
葛野 くるみ:「ほんとにね、サイカくんだけを好きになろうって思ってたのに…」
葛野 くるみ:「ほんとだよ?」
藁科 サイカ:「ああ、違う、違うよくるみ。責めてるんじゃない、俺は嬉しいんだ!」
藁科 サイカ:本心だ。……これは、全く嘘偽りの無い、
藁科 サイカ:「だってくるみは、いつまでも変わらないでいてくれるってことだろう?」
藁科 サイカ:停滞を望む本心からの悦びであった。
葛野 くるみ:「………そういうことかも?」首を傾げる。
藁科 サイカ:「そうだよ。俺が知ってるくるみはね、約束は守らないし、誰か一人と真剣に交際するなんて似合わない」
藁科 サイカ:「不特定多数の誰かと体を重ねて、その視線を貪り絶頂を求める、そういう恐ろしい生き物じゃあないか!」
四条 幸音:「あんた……」
葛野 くるみ:「ねーっ、幸音ちゃん、これ褒められてなくないー?」
四条 幸音:「……褒められてないよ。藁科にとっては、喜ばしいことなのかもだけど」
藁科 サイカ:ロイスを取得します。
藁科 サイカ:葛野 くるみ ○幸福感/憐憫
藁科 サイカ:葛野 くるみ 優越感/○侮蔑
藁科 サイカ:「信じてたよ、くるみ。君は俺を置いていったりしないって」
藁科 サイカ:「いつまでも俺と同じ場所で足踏みをし続けてくれるって、さ」
葛野 くるみ:「あーっ、そうだよそうだよ。サイカくんだって、あたしとの約束守ってたの?」
藁科 サイカ:「おっと心外だな。俺は約束は守る方だぞ──えーと、たしか、うん」
藁科 サイカ:指折り日数を数えるようにして、
藁科 サイカ:「それとも。もう一つの方の約束?」
葛野 くるみ:「どっちも!ヤッてないかと、ちゃんとあたしのこと好きだったか!」
藁科 サイカ:「なら、どちらも守ったさ。そして今、これまでよりずっと君のことを好きになった!」
藁科 サイカ:「ああ、くるみ。くるみ。君は理想的な悪魔だ! これからも俺が死ぬまで、決して俺を見捨てないでおくれ!」
葛野 くるみ:「え~っ、いいの? あたしはいいけど…」瞬きする。
葛野 くるみ:「ねえ、幸音ちゃん」
四条 幸音:「……なに」
葛野 くるみ:「サイカくん、めちゃくちゃあたしのこと好きなんだけどー」
葛野 くるみ:「あたし、てっきりサイカくんと幸音ちゃんが付き合ってるんだと思ってたのにー」
藁科 サイカ:「──────」笑声が止む。声が冷える。
藁科 サイカ:「無いよ、それは無い」
葛野 くるみ:幸音ちゃんを包んでいたもこもこの泡をシャワーで流していく。
四条 幸音:「そう思ってた上で、藁科と付き合い始めたの、あんた……」
藁科 サイカ:「他人のものって分かったら欲しくなる、ってこともあるだろ?」
葛野 くるみ:「断られなかったしー」
葛野 くるみ:「え、じゃあ幸音ちゃんはリーダーと付き合ってるの?」
四条 幸音:「それは……」
藁科 サイカ:「体だけの関係、ということもあるかも知れないな」
藁科 サイカ:「実際のところはどうなんだい。この前は聞きそびれたな」
葛野 くるみ:「えーっ!幸音ちゃん、そういうことする子なんだー!」
四条 幸音:「そういうこと、って……いや、否定できる立場なのかも分かんないけどさあ…・・・」
四条 幸音:「椿尾と付き合ってるわけじゃない……よ、少なくとも僕の認識では……ただ」
四条 幸音:「もう二人共知ってるよね。僕が、劇団の情報を……そのことについて」
四条 幸音:「確認されて、それでその時……うう」
四条 幸音:申し訳無さそうに俯いて、赤面し
四条 幸音:「拒めなくて……」
葛野 くるみ:するすると手を伸ばし、幸音ちゃんの胸元に触れる。
葛野 くるみ:その手をやわやわと動かす。
四条 幸音:「あ、やっ、何……!?」
葛野 くるみ:「こういうのされちゃったー?」
葛野 くるみ:くすくすと笑う。「かわいい、幸音ちゃん」
四条 幸音:「それ、は……ばか、やめて……!」
藁科 サイカ:湯船に身を沈めたまま、上半身だけを捻った。
藁科 サイカ:洗い場の二人の方へ体を──まだ手の中にあるスマートフォンのカメラを向けて、
藁科 サイカ:「動画で撮っちゃお」
四条 幸音:「へっ?……なっ、」
藁科 サイカ:ぴこっ ……特徴的な動作音。
葛野 くるみ:「変態ー!」言いながら、それを見て興が乗る。
四条 幸音:「君、なに考えて……やめて、とるな!」
葛野 くるみ:にこにこと笑いながら、泡の少し残る胸を優しく揉んでいる。
四条 幸音:「葛野、やめてよ……!なんで、」
藁科 サイカ:「くるみ、こういうの好きなくせに。……ああそうそう、幸音」
藁科 サイカ:「君さぁ、俺のことが苦手だったとか、色々言ってたろ?」
四条 幸音:「んぅっ……! 藁、科?」
藁科 サイカ:「ああやって自分の鬱屈を吐き出して、ついでに適度に咎めてくれる新しいよりどころも見つけて」
藁科 サイカ:「そうやってお前は、〝人間として成長できた〟なんて結果を手に入れて、先へ歩いていくんだろう」
藁科 サイカ:「そういうの、俺、やだなって思ってさ」
四条 幸音:「……っ!」
藁科 サイカ:「……くるみ。乱暴にしてあげたほうがいい。逃げられないようにしっかりと捕まえて」
葛野 くるみ:「ふうん?」
藁科 サイカ:「逃げられるのに逃げなかった、は、幸音の好きな痛みの範囲から外れてる」
藁科 サイカ:「二人がかりで襲われて逃げられなかった、の方が優しいと思わない?」
葛野 くるみ:「………」幸音ちゃんの白く小さな耳に唇を寄せ、ぺろりと舐める。
葛野 くるみ:「いいよ」
四条 幸音:「藁科……葛野」
四条 幸音:「ねえ、ほんとに……ほんとうに」
四条 幸音:「やめてよ」
葛野 くるみ:小柄な体を後ろから抱き抱えるようにして、湯船に連れていく。
葛野 くるみ:サイカくんが待つ場所へ。
藁科 サイカ:「やだよ、話はまだ終わってないんだ──っと」
藁科 サイカ:「おいおい、確かに広くはあるけれど、それでも三人は窮屈じゃないか?」
藁科 サイカ:脚を畳んで空間を開ける。カメラは──インカメラに切り替えて、腕を伸ばした。
葛野 くるみ:「狭い方が楽しいよー」
四条 幸音:「だめ」
四条 幸音:「このままじゃ……だめ」
葛野 くるみ:有無を言わせぬ力で、幸音ちゃんの上半身を押さえ。
葛野 くるみ:足先から、サイカくんの元に。
四条 幸音:「離して……!」
藁科 サイカ:「……なぁ、くるみ。リーダーが普通の女の子みたいにうろたえるとこ、見た事あるかい?」
葛野 くるみ:「ううん?ないよ」
藁科 サイカ:腕の位置を調整する。インカメラの画角の中に、三人全員が収まるように。
藁科 サイカ:「幸音の前だと、リーダー、そういう顔もしたんだよな」
藁科 サイカ:「俺、あのリーダーの顔がなんか嫌でさぁ」
藁科 サイカ:「だって、あのリーダーに可愛げまで備わったら、それも〝成長〟だろ?」
四条 幸音:「藁科……!」
四条 幸音:「君は……君は、」
四条 幸音:「そこまで、変わりたくないの……!?」
藁科 サイカ:「そうだよ」
藁科 サイカ:無造作に片手を、獲物の胸元へ伸ばした。
藁科 サイカ:背後から抱きしめる彼女とは違う。痛みすら覚える程、指に力を込めて、
四条 幸音:「どうして!?」
藁科 サイカ:「置いていかれたくないからさ」
藁科 サイカ:「本当の本当はさ。俺」
藁科 サイカ:「俺が死ぬ時、皆にも一緒に死んで欲しいんだ」
藁科 サイカ:「でもそれはあんまり無茶だと思うから、そこまでの我が儘は言わない」
四条 幸音:「……っ、な、」
葛野 くるみ:「そうだよー、それはワガママ」手持ち無沙汰に、幸音ちゃんの耳をついばんでいる。
藁科 サイカ:「くるみに言われるのは中々だなぁ。世界中から愛を貰って、自分の愛は自分にだけ、そういう子だと思ってたのに」
葛野 くるみ:「だってあたし、死ぬ時は自分で選びたいもんー」
藁科 サイカ:「俺は慎ましいからさ。俺が一番幸せだったと思う時間を、出来の悪い模倣でもいいから、保つ努力をして欲しくってさ」
藁科 サイカ:「……まぁ、つまり。構って欲しいのかなぁ」
葛野 くるみ:「ふうん、でも、そっか。幸音ちゃんはどう?」
四条 幸音:「どう、って……」
葛野 くるみ:「サイカくんは、このままでいて、一緒に死んでほしいんだって」
葛野 くるみ:「幸音ちゃん、みんなで幸せになりたいんでしょ?」
藁科 サイカ:「ダメダメ、幸音は俺のものにはならないってさ」
藁科 サイカ:「実は一度、もうフラれてるんだ。……おまけにその事をリーダーにバラされてる」
葛野 くるみ:「えーっ、修羅場じゃん」
四条 幸音:「……葛野」
葛野 くるみ:「え?どうするの?これこのままヤッてていいの?」
四条 幸音:「なにが、言いたいの」
葛野 くるみ:「へ?あたしみんなで楽しくお風呂入りたかっただけだけど…」
藁科 サイカ:「ヤっちゃえって」
藁科 サイカ:「じゃなきゃここまでの動画、君がスカウトされてる事務所に送っちゃうぞ」
葛野 くるみ:「ヤバー! ねー、サイカくんが脅迫してきたー!」
藁科 サイカ:「あっはっはっはっは。そうだ、俺は酷い奴なのさ!」
葛野 くるみ:「普段はあんなに優しいのにねー」
四条 幸音:「藁科……あんた、」
四条 幸音:「怒ってるの?」
四条 幸音:「それとも、焦ってるの?」
藁科 サイカ:「どっちかって言うと、あれかなぁ」
藁科 サイカ:「諦めてる」
藁科 サイカ:「ここから劇的に事態が改善するとは思ってない。だから死ぬまでの間」
藁科 サイカ:「せめて俺のできる限り、おもしろおかしく生きていこうってね」
葛野 くるみ:「それって、今の関係続けるってことでしょ?」サイカくんに触れられていない方の胸を弄びだす。
葛野 くるみ:「なら別に、サイカくんの言うことだって間違ってないんじゃないの?」
藁科 サイカ:「そうだな。くるみは今まで通りに誰彼構わず手を出して、リーダーは今まで通りに胃の痛そうな顔でガミガミとやってもらおう」
藁科 サイカ:「幸音も、今まで通り」
藁科 サイカ:「自分のせいで周りが不幸になってると思い込んで、後ろ向きで、下ばっかり向いてて、俺に励まされて少しだけ前を向いて」
藁科 サイカ:「自分が主演になるなんて考えもしない日陰者。俺がいなきゃあ生きていけないんじゃないかってくらいのか弱い──」
藁科 サイカ:ロイスを取得します。
藁科 サイカ:四条 幸音 ○執着/憐憫
藁科 サイカ:「いつまでも先へ進めないで、俺に守られるばっかりの幸音で居てくれればいい」
藁科 サイカ:「……ああ、やっとお前が欲しがってた台詞をプレゼントできそうだよ」
葛野 くるみ:「ねー、ほら、やっぱ好きなんじゃーん」
四条 幸音:「………」
藁科 サイカ:「お前のせいだ」
藁科 サイカ:「全部お前が悪いんだ」
藁科 サイカ:「……って」
四条 幸音:「……藁科」
四条 幸音:「それはさ」
四条 幸音:「遅すぎるよ」
葛野 くるみ:「んー、サイカくんがそういう考えなのは分かったけどさー」
葛野 くるみ:「幸音ちゃんの考えとは違うんじゃないのー?」
四条 幸音:「……僕は」
四条 幸音:「今までずっと、君たちに守られて、励まされて」
四条 幸音:「なのに俯いてばっかりで、何も知らなくて」
四条 幸音:「……君たちの事も、今でも本当に、全然分かんなくて」
四条 幸音:「変わりたい、って思っても、ほんとは何も変わってないのかも」
四条 幸音:「成長した気になって、気持ちよくなってるだけなのかもしれないけどさ……!」
四条 幸音:「今更、そんなこと言われたって」
四条 幸音:「折れられるわけ、ないだろ」
葛野 くるみ:「ねー!これあたし巻き込まれてるだけじゃーん!」
葛野 くるみ:「もーやだー!喧嘩するなら二人でしてよー!」
藁科 サイカ:「……ふ」
葛野 くるみ:「あたしお風呂あがるよー」
四条 幸音:「葛野……ねえ」
四条 幸音:「僕、君のことも、まだ」
四条 幸音:「本当に、わからないんだよ。……ちゃんと、見れてないんだ」
葛野 くるみ:「だから~?」
葛野 くるみ:不機嫌になっている。
四条 幸音:「教えてよ……君は、どうしたいの?」
四条 幸音:「何が欲しくて、どうなりたいの?」
葛野 くるみ:「それ、自分に言ってない?」
葛野 くるみ:笑みのない、興が覚めた顔で見返す。
四条 幸音:「……葛野?」
葛野 くるみ:「何が欲しいとかどうなりたいとか」
葛野 くるみ:「そう言う幸音ちゃんはどうなの?」
四条 幸音:「僕は……」
葛野 くるみ:「あたし、そんなの考えたことないよ」
葛野 くるみ:「周りの人と仲良くなって、楽しいこといっぱいして、それじゃだめなの?」
四条 幸音:「……その、後は?」
葛野 くるみ:「その後?」
四条 幸音:「君にとって仲良くしたり、楽しいことして」
葛野 くるみ:「……」微笑む。
葛野 くるみ:「幸音ちゃん」
葛野 くるみ:優しく微笑んで、頬に口づける。
葛野 くるみ:「ラオペは終わらない舞台だよ」
葛野 くるみ:「ねえ、どうして輪花ちゃんが、いろんな人に抱かれてでも、ラオペを守ってくれてるんだと思う?」
葛野 くるみ:「終わらせたくないからじゃないの?」
葛野 くるみ:「…それとも、幸音ちゃんは知ってるの?」
葛野 くるみ:「輪花ちゃんに教えてもらった? ラオペの、終幕の仕方」
四条 幸音:「終幕……」
葛野 くるみ:「ていうかサイカくん、マジで今日の嫌いになったからねー!」
葛野 くるみ:立ち上がる。「データ、送るなら送れっつーの!ばーか!」
葛野 くるみ:「じゃあねー!あとは二人でやってて!」そう言って。
葛野 くるみ:ひとりで風呂から出て、部屋から出て、結局そのまま戻ることはなかった。
葛野 くるみ:四条 幸音/秘匿/隔意:〇
葛野 くるみ:藁科サイカ/同情/隔意:〇
四条 幸音:「僕が……どう、したいか」
四条 幸音:今のラオペを守って
四条 幸音:……皆が少しでも、良い未来に行けるように
四条 幸音:あといくつ、知れば良いんだろう。……どうすれば。
御薗橋七葉:稽古場が使えなくなり、稽古のみならず打ち合わせの場所も各所に移ることとなった。
御薗橋七葉:ホテルやカフェ、様々な場所が用いられたが、この日は御薗橋と椿尾の二人だけということもあり、椿尾が御薗橋の部屋を訪れるという形になった。
御薗橋七葉:深夜。小さな机を前に、二人は向かい合っている。
椿尾 輪花:「ふー……っ」
椿尾 輪花:腰を下ろし、長くくたびれた息を吐く。普段よりもきつい香水と酒の匂いが漂っている。化粧も少し濃い。
御薗橋七葉:「それで、舞台袖までの距離が……」
御薗橋七葉:「……疲れてます?」
椿尾 輪花:「……ええ。正直、そうね」 珍しい、弱ったような笑み 「ちょっと久しぶりに重労働だったから」
椿尾 輪花:「何なら分裂した頃より大変かも。今回、速度も命だからね」
御薗橋七葉:「……この状況ですしね。お疲れさまです」
御薗橋七葉:「コーヒーでも飲みます?インスタントだけど」腰を浮かせる。
椿尾 輪花:「ごめんなさい、ありがとう。……水で良いかな。冷たいの」
椿尾 輪花:「水道水で大丈夫だから」
御薗橋七葉:「ありますよ、ミネラルウォーター」冷蔵庫からペットボトルを取り出し、コップに注いで。
御薗橋七葉:「……何かありますか?手伝えること」それを手渡す。
椿尾 輪花:「助かるー」 受け取り、半分ほどを一息で飲んで
椿尾 輪花:「んん、大丈夫。御薗橋さんは舞台のことを考えてください」
椿尾 輪花:「それが私は一番助かります」
御薗橋七葉:「舞台のことを考えているから、心配なんです」
御薗橋七葉:「椿尾さんのこともね」
椿尾 輪花:「……ふふ。それもそうね。大丈夫、体調崩すラインは弁えてるつもりだし……」
椿尾 輪花:「どうせほら……結局私がやるのが一番効率良いっていうか。根回しでもなんでもね」
椿尾 輪花:足を伸ばす 「自分がもうひとり欲しいです」
御薗橋七葉:「……それは、まあ」掌を組んで握る「そうなんでしょうけど」
椿尾 輪花:「ごめんなさいね。それでええと、舞台上での動きについて……」
椿尾 輪花:そう言いながら、コップをテーブルに置いた所でぴたりと身体が止まり
椿尾 輪花:「……っはあ……」
椿尾 輪花:「葛野さん……」 溜息混じりにその名を吐く
御薗橋七葉:「……また何かやらかしました?彼女」
御薗橋七葉:思い当たる節はありすぎて、驚きもしない。
椿尾 輪花:……本来であれば、そんなことはしない。自分の能力について無闇に他言するようなことは。たとえ身内であっても……それが『身内』でなくなるケースを身にしみて知っている。
椿尾 輪花:だが、油断があった。重圧からの解放。演劇のことを考えられる喜び。目の前にいる相手が……演出家としては信頼のおける相手ということ。
椿尾 輪花:そして、疲弊があった。肉体を酷使し、精神をすり減らし、慣れぬアルコールまで、倒れる程に飲まされて。
椿尾 輪花:だからついこぼす 「やらかしたっていうか……」
椿尾 輪花:「ヤり始めた……」
御薗橋七葉:「……はい?」
御薗橋七葉:言葉の意味が理解できず、怪訝な顔。
御薗橋七葉:「何を?」
椿尾 輪花:「セックス。男と」
御薗橋七葉:「…………」
椿尾 輪花:目を細めて、端末から伝わる情報に集中する 「……前も話してた相手かな……確か……ストリートミュージシャンだっけ……居酒屋で働いてる……そうだそうだ」
椿尾 輪花:「語尾が気持ち悪い上がり方する感じ……まあ、敵とかではないはず……何回かヤってたし……」
御薗橋七葉:当然、分かっていた。二年振りに関係を持とうと、葛野くるみが変わるはずなど無いと。
御薗橋七葉:あれはそういう女だ。分かっていたはず、だがそれでも、褥で見た姿と、他の男に抱かれている想像の姿が重なって、吐き気が込み上げてくる。
御薗橋七葉:いや、今はそれよりも。
御薗橋七葉:「……どうしてそこまで?盗聴器でも仕込んであるんですか」
御薗橋七葉:彼女ならばあるいはやりかねないと、怪訝な顔で椿尾を見る。
椿尾 輪花:「……あー、思い出してきた、思い出してきました。めちゃくちゃ耳舐める男でしたね。音が気持ち悪い……」
椿尾 輪花:「え。ああ。端末……て言ってもわかんないか。私の分身みたいのをね、紛れ込ませてるんですよ」
椿尾 輪花:「葛野さんに。同意の上ですよ? あの子が問題行動起こさないように、って」
御薗橋七葉:「……そんなことまでしてるんですか?リーダーも──」
御薗橋七葉:言い掛けて、固まる。
御薗橋七葉:「……いつからですか?」
椿尾 輪花:「え。御薗橋さんが来た後くらい……あの、劇団再始動で、顔合わせしたじゃないですか」
椿尾 輪花:ぼんやりした目で唇を摘んでいる。口寂しいのだ 「その前くらいで……」
椿尾 輪花:「あ」
御薗橋七葉:ガタン、と机が揺れる。
椿尾 輪花:ぱちりと瞬きして御薗橋さんを見る
御薗橋七葉:目を見開いて椿尾を見つめている。じわじわと嫌な汗が噴き出てくる。
御薗橋七葉:見てたんですか?そう口に出すことすら出来ない。
椿尾 輪花:視線が泳ぐ。視線を泳がせたこと事態が、ある種の答えになっていたのに気付くのはほんの2、3秒あとのことだ。
御薗橋七葉:「う……」
椿尾 輪花:「……すう……」 目を閉じてゆっくり呼吸する
椿尾 輪花:そして、厳かに言う 「私は気にしてません」
御薗橋七葉:「私は気にします」
椿尾 輪花:「や、やっぱりそうですよね」 困ったような笑み
御薗橋七葉:葛野との情事。その葛野が今まさに他の男とセックスをしていること。その全てを目の前の椿尾に知られていたこと。
御薗橋七葉:動悸がする。胸と腹はひどく熱いのに、手足の先は凍えるように冷たい。
御薗橋七葉:「……」
椿尾 輪花:「いや、でも、えっと……私はあれで却って安心できたんですよ」
椿尾 輪花:「正直、状況的には一番新顔の御薗橋さんを内通者としては疑っていた所はありますし……」
椿尾 輪花:「その御薗橋さんが、葛野さんに、その」
椿尾 輪花:「ねえ? なので、ね?」 手を合わせて笑う 「そういうことはなさそうだな、って、思ったので」
椿尾 輪花:「……ね?」
御薗橋七葉:「……」フォローを重ねられる度に、余計に惨めな気持ちになってくる。
御薗橋七葉:「……あの子」
御薗橋七葉:「どれくらいの頻度でしてるんですか?」
椿尾 輪花:「最近……劇場を焼かれてからは毎日ですよ」
椿尾 輪花:「それ以前も、まあぼちぼちと。わざわざ数えてはいませんけど……」
御薗橋七葉:「……そうですか」
御薗橋七葉:そうだろうな、と思った。必死に考えないようにしていただけだ。
御薗橋七葉:結局のところ、いくら睦まじい恋人のような情事を重ねようと、自分では葛野くるみを変えることなど出来ないのだ。その在り様に、爪跡を残すことすら出来ない。
御薗橋七葉:彼女にとっては、遊びで彼女を抱く行きずりの男も、彼女に全てを狂わされてきた自分も、所詮は同程度の存在でしかないのだろう。
椿尾 輪花:「昔っからそうですしね。何が楽しいんだか知りませんが」
椿尾 輪花:「病気みたいなものですよ。求められるのが好きな病気」
椿尾 輪花:御薗橋がそこまで取り乱さなかったので、また肩の力を抜く
御薗橋七葉:急に全てが虚しく、そして馬鹿らしくなってきて、乾いた笑いが漏れる。
御薗橋七葉:「……ふふっ……」
御薗橋七葉:「それ、ずっと聞かされてたんですか?」
御薗橋七葉:「本当、椿尾さんも大変ですね」
椿尾 輪花:「これがいわゆる死ななきゃ治らないっていう……」
椿尾 輪花:「まあ、そうですね。慣れれば雑音みたいなものですから」
椿尾 輪花:「神経使わなきゃ行けないのは事前事後くらいで、あとはもう、騒音です、騒音。気にするだけバカみたいだってなります」
御薗橋七葉:「隣の部屋で盛られるだけでも、私ならキレそうになりますけどね。はは」
御薗橋七葉:くつくつ笑って、煙草に火をつける。一服だけして、ほとんど吸わないまま灰皿に押し付けて。
椿尾 輪花:「キレても壁蹴っても治りませんよ。ふふ」
御薗橋七葉:「……」ぼんやりと中空を眺めて、押し黙る。
椿尾 輪花:「葛野くるみですからね。あー……」
椿尾 輪花:傍らのポシェットから煙草のケースを取り出し、這うようにして御薗橋さんの隣へ
椿尾 輪花:火を点けて、それを吸う 「……ふー」
椿尾 輪花:微かに甘く、鼻に抜ける刺激。灰が痺れて、全身の神経が震えるような感覚。
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:部屋に漂う二種の煙の匂いが混ざり合う。そちらを見ないまま、ぽつりと口を開く。
御薗橋七葉:「椿尾さん」
椿尾 輪花:煙を吐きながら視線だけを向ける
御薗橋七葉:「セックスしましょうか」
椿尾 輪花:「ふっ」
椿尾 輪花:鼻で笑う 「いいんですか。好きなんでしょ? あの……淫売が」
椿尾 輪花:「私は嫌いですけどね」 塊のような煙を吐く 「死んで欲しい」
御薗橋七葉:「別に、良くないですか?あの淫売が毎日やってることでしょう?」
御薗橋七葉:「嫌なこと忘れたい気分なんです」
御薗橋七葉:「バカになりたい」
御薗橋七葉:「貴方もそうなんじゃないですか?」
椿尾 輪花:「くく」
椿尾 輪花:煙草を灰皿に押し付ける 「一緒にしないで欲しいですね」
椿尾 輪花:「私は一番欲しいものを諦めて、痴呆みたいになるつもりはありませんよ」
椿尾 輪花:ゆらりと身体をもたれかからせる 「……あなたを痴呆よりひどいことにはしてあげられますけど」
御薗橋七葉:「諦めたいんですよ」
御薗橋七葉:「それから」
御薗橋七葉:「貴方の事も知りたいですし」
椿尾 輪花:「嘘吐きの目」
椿尾 輪花:「私に向けて、優しい言葉を並べ立てて……」
椿尾 輪花:頬に手を添え、眼を覗き込む 「……乱暴する人と同じ目をしてる」
椿尾 輪花:「暗くて引きつってるのよ」
御薗橋七葉:「要りませんか?」
御薗橋七葉:「私は欲しいです。慰めだって、そういうのが」
椿尾 輪花:唇を押し付ける。遠慮の一つもなく、舌を捩じ込む。柔らかな感触が重なり、ニコチンの臭う唾液が音を立てる。
御薗橋七葉:「んぅ、ふ……っ」
御薗橋七葉:反射的に、僅かな抵抗。それも一瞬のこと。
椿尾 輪花:頬に添えた手は耳まで滑り、細い指がそれを愛撫する。眼鏡も取り去り、劣る体格を物ともせず、床へと押し倒す。
椿尾 輪花:僅かな衝撃で、積まれた演劇の資料、あるいはディスクが、音を立てていくばくか崩れる。意にも介さない。ねぶるように舌を絡ませながら、耳を抑え込む。
椿尾 輪花:「っふあ……」 唇を離せば、細い橋のように唾液が伸びる。浮かべる笑みはどこか嗜虐的だ
椿尾 輪花:「……緊張してるの?」
椿尾 輪花:「大人みたいな顔をして」
御薗橋七葉:身体が強張っている。葛野以外の相手とするのは初めてのことだ。緊張というより、無意識の拒絶というほうが正しいかもしれない。
御薗橋七葉:だがそれも、捨て鉢な意識と与えられる快楽がじわじわと溶かしていく。
御薗橋七葉:「……随分慣れてるんですね」
椿尾 輪花:「誕生日がなくてね。適当に決めて良いって言われたから」
椿尾 輪花:「"教育係"に処女を奪われた日にしたの」
椿尾 輪花:「私はそういう生き物」
椿尾 輪花:「ぶち壊してあげる」
椿尾 輪花:唇が頬に、耳に吸い付く。空いている手が服越しに胸を、掴むように揉む。
椿尾 輪花:ひどく大雑把だ。痛みも走る。だが快感を阻害するその手前のものだ。耳たぶを噛む。
御薗橋七葉:「ん、んんんっ……!」声が漏れるのを抑える。シーツを握り締めて、徐々に高まってくる快感に耐える。
御薗橋七葉:椿尾の顔は、逆光と近視とでぼんやりとしか伺えない。
椿尾 輪花:「大人みたいな顔をして、下着を着けて、化粧をしたところで。結局あなたは、葛野くるみに恋い焦がれる乙女なのよ」
椿尾 輪花:「失恋したばかりの乙女。そんなの、腰軽の淫売より安いわ」
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:ぐい、と身体の下から押しのけるような腕。
椿尾 輪花:「ん?」 服を剥ごうと捲りあげた所だった
御薗橋七葉:息を荒げながら、椿尾を睨む。
御薗橋七葉:「最中に他の女の名前なんて、出さないで」
御薗橋七葉:「それくらい、私でも分かる」
椿尾 輪花:「ふふ、ふふふ」 笑っている。面白そうに
椿尾 輪花:「あなたが忘れたいくらい想っていたところで、あの子は今も、」
椿尾 輪花:「あの子が好きな食べ物すら知らない男とまぐわって、猫みたいににゃあにゃあ喘いでるのよ」
椿尾 輪花:「それでも人間のフリをしてたいの?」
御薗橋七葉:「そんなこと知ってるわよ」
御薗橋七葉:「貴方よりずっとよく知ってる」
御薗橋七葉:かぶりを振る。泣きそうになる。それが怒りなのか悲しみなのか分からない。
御薗橋七葉:「椿尾さん、女を抱いたことは?」
椿尾 輪花:「人類の半分は女よ」
椿尾 輪花:「相手できなくてどうするの」
御薗橋七葉:「じゃあ、抱かれたことは?」
椿尾 輪花:「あります。奉仕させられたことの方が多いけど」
椿尾 輪花:目を細めて、値踏みするような視線 「何?」
御薗橋七葉:「別に」
御薗橋七葉:「貴方もあの女も、そう大して変わるのかって思っただけ」
椿尾 輪花:「……」
椿尾 輪花:片眉がぴくりと吊り上がる
椿尾 輪花:「……違うわよ」
御薗橋七葉:「何が?」
椿尾 輪花:「あいつは楽しんでる。流すことも流されることも。私は違う」
椿尾 輪花:「楽しんてなんかいない。これは手段。私の望むもの……望む場所を守るための道具」
御薗橋七葉:「だから葛野を嫌うんですね」
御薗橋七葉:「結局は同族嫌悪じゃないですか。自分と似て非なるものだから、認めるわけにはいかない」
椿尾 輪花:「……」 返事はないが、苛立たしげな眼がそれに等しいかもしれない
御薗橋七葉:「今はどうなの?」
椿尾 輪花:「……何ですって?」
御薗橋七葉:「嫌々やってるんですか?セルの仕事として、リーダーとして部下を身体で飼い慣らそうとしてるんですか?」
御薗橋七葉:「快楽を与えて、首輪を着けて?」
御薗橋七葉:「私は“インプレサリオ”に抱かれるつもりは無いですよ」
椿尾 輪花:「…………」
椿尾 輪花:「御薗橋……」
椿尾 輪花:指を噛む 「良くぞ分かった風な口を利くじゃないですか」
椿尾 輪花:「淫売に人生捧げて何も得られなかった女が」
椿尾 輪花:「私に……」
椿尾 輪花:「…………」
椿尾 輪花:立ち上がる。苛立たしげに髪を掻き上げて
御薗橋七葉:「……」その顔を見つめる。
椿尾 輪花:努めて平静に抑え込んだ声で 「……演出の話は日を改めて」
椿尾 輪花:「今日は適当に何とかします。……それと、何で貴女を抱いてやろうと思ったのか」
椿尾 輪花:唇を歪める 「嫌いな奴のためなら、嫌なこともしようって思える」
椿尾 輪花:「それだけですよ」
御薗橋七葉:何も言わず、出ていく椿尾を見送る。部屋にはまだ、混ざり合った煙草の煙が漂っていた。
【Middle latter half/御薗橋七葉】
GM:ミドル後半 2手番目 シーンPCは御薗橋さんです
GM:誰を指名しますか?
御薗橋七葉:葛野さんを指名します
葛野 くるみ:おっしゃこいッ
御薗橋七葉:「……遅かったわね」
御薗橋七葉:自室のドアを開き、葛野を出迎える。
葛野 くるみ:「べっつにーー」すり抜けるようにしてずかずかと部屋に入っていく。
御薗橋七葉:煙の漂う部屋。積まれた資料やディスクが崩れたままになっている。
御薗橋七葉:「お風呂湧いてるけど。入る?」
葛野 くるみ:「………」苛々がにじんだ顔で振り向く。
葛野 くるみ:「七葉ちゃんってさー…ほんとタイミング悪いよね…」
御薗橋七葉:「は?」
御薗橋七葉:眉間に皺を寄せ
御薗橋七葉:「何がよ」
葛野 くるみ:「なんでもない!ねーっ、今日はさっさとしよ」
葛野 くるみ:「……ねーってば!」返事が待てなくなったのか。
御薗橋七葉:「……」明け透けな言い草に嘆息する。
御薗橋七葉:「……いいけど」
葛野 くるみ:振り向いて、大股で近づいて唇を塞ぐ。
御薗橋七葉:「少しはムードってものが……ん……」
葛野 くるみ:奪うような乱雑な口づけ。生ぬるい舌を絡み合わせ、唾液を交わらせる。
御薗橋七葉:「……」抗議するように間近から顔を顰める。
御薗橋七葉:「ふ……っは……」
葛野 くるみ:「はぁっ……」唇が離れれば、顎を舐め取り、そのまま首に移る。
葛野 くるみ:「んっ、ね……なんでこんなキスしにくい服着てるの…」
葛野 くるみ:首筋を覆うタートルネックに文句を言う。
御薗橋七葉:「逆、よ……」息を荒げ、顔を上気させながら。
御薗橋七葉:「あんたが、やたらと跡付けるからでしょ……」
御薗橋七葉:ゆるゆると背に手を回し、絡み合ったままゆっくりと身体を沈めていく。
葛野 くるみ:「ふ……!」たまらないといった調子で笑うと、それに身を委ねる。
御薗橋七葉:「……何、今日」いつになく余裕の無い様子を怪訝に思って。
御薗橋七葉:「嫌なことでもあった?」
葛野 くるみ:「うるさい!」図星。
葛野 くるみ:「ねえ、早くして。早く」
御薗橋七葉:「ん……」文句のひとつでも言おうとして、結局はそれに応える。
御薗橋七葉:抱えるようにして葛野をソファに横たえ、タートルネックを脱いでいく。
御薗橋七葉:不健康なほど白く、骨張った裸身。張りのある乳房。長い腕を伸ばしてくるみの身体に這わせる。
葛野 くるみ:「あはっ……!んぅ、良い、そこ、……あっ……」たまらないといった調子で背中を反らし、
葛野 くるみ:気持ちを発散させるように床に手を伸ばせば、そこに落ちた長い髪が指にまとわりつき────
葛野 くるみ:……長い髪?
葛野 くるみ:「………」ソファに横たわったまま、指に絡んだそれを見ている。
御薗橋七葉:「……くるみ?」
葛野 くるみ:「………七葉ちゃん」
葛野 くるみ:「誰か来たの?この部屋」
御薗橋七葉:くるみの手元を目にして、心臓が跳ねる。
御薗橋七葉:動揺は隠せず、表情に、視線に透ける。
御薗橋七葉:「……別に。椿尾さんが来ただけ」
葛野 くるみ:「……だけ?」
葛野 くるみ:残念ながら。
葛野 くるみ:それを逃さない。
御薗橋七葉:「舞台の打ち合わせを、して……」
葛野 くるみ:「して?」
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:くるみのその目を直視できない。
御薗橋七葉:「……それだけよ。何?」
葛野 くるみ:「え、何?ヤッたの?」
御薗橋七葉:「……何でそうなるのよ!?」
御薗橋七葉:声を荒げる。動揺を隠すように。
葛野 くるみ:「今の反応、完全にヤッてる時のじゃん」
葛野 くるみ:対して、どんどんと声が低くなる。
御薗橋七葉:「してない」
御薗橋七葉:かぶりを振って。
御薗橋七葉:「……途中でやめたから。キスしただけ」
葛野 くるみ:「……はあ!?」
葛野 くるみ:「キスしてんじゃん!」
御薗橋七葉:「…………」口を結んで、無言。
葛野 くるみ:「なんで!?なんでなんで!なんで七葉ちゃんが……」
葛野 くるみ:「はああ!?何!?誘われでもしたわけ!?」
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:「違う。私から誘った」
葛野 くるみ:「………!」
葛野 くるみ:ソファから立ち上がり、その頬に思いきり平手を飛ばす。
御薗橋七葉:「……ッ……!」
御薗橋七葉:カシャン、と軽い音を立てて眼鏡が床に転がる。
御薗橋七葉:「……何よ……!」
葛野 くるみ:「意味わかんない。意味わかんないんだけど」
葛野 くるみ:「で?何?輪花ちゃんにフラれたから、しょうがないってあたしのことノコノコ待ってたの?」
御薗橋七葉:「そういうわけじゃない……!」
葛野 くるみ:「じゃあなんでそういうことするわけ!?」首元を掴むようにして、床に引きずり倒す。
御薗橋七葉:強かに頭を打ち付け、うめき声を漏らす。
葛野 くるみ:「なんで七葉ちゃんが……!最悪…!あっ…あたしだけのじゃなくなっちゃったら……」
御薗橋七葉:「……何で……?何でって……」
御薗橋七葉:「あんただってヤってたじゃない。居酒屋で働いてる、ミュージシャンの男、だっけ?」
葛野 くるみ:「…………」
葛野 くるみ:《完全演技》は、もはや完全に解けていた。
御薗橋七葉:「そいつだけじゃない。毎日、毎日。違う相手にバカみたいに股開いて」
御薗橋七葉:「それがどうして、私の時だけ責めらんなきゃならないのよ!?おかしいでしょ!」
葛野 くるみ:「じゃあ七葉ちゃんもそいつにヤられてみる?」
葛野 くるみ:七葉ちゃんに跨ったまま口を開く。
御薗橋七葉:「何言って……」
葛野 くるみ:「…誰でもいいよ。じゃあ、ヤられてきたらいいじゃん。あたしのことが羨ましいなら」
葛野 くるみ:「同じことしてきたらいいじゃん。そしたら、そしたら、もう」
葛野 くるみ:「そしたらそれでもう、あたし、七葉ちゃんのこと解放してあげるよ」
葛野 くるみ:「いいじゃん。それが良いんでしょ?あたしから離れたいんでしょ?」
御薗橋七葉:見たことがないくるみの表情に当惑し、動揺する。
御薗橋七葉:「……私が……」
御薗橋七葉:「私があんただけのものじゃなくなったら、もういらないってこと……?」
葛野 くるみ:「………うるさい」
葛野 くるみ:首元を締めるようにして叫ぶ。
葛野 くるみ:「うるさいうるさいうるさい!」
御薗橋七葉:「ふざけんなっ!」
御薗橋七葉:長髪を引っ掴み、乱暴に引き倒す。
葛野 くるみ:「…………っ!」嫌悪感の滲む表情。
御薗橋七葉:「……どうしてよ!」
御薗橋七葉:「ずっと前から!ずっと!ずっと!」
御薗橋七葉:「どうしてそんな風に、誰とでも寝るわけ!?」
御薗橋七葉:「信じらんない……頭おかしいんじゃないの……!?」
葛野 くるみ:「そんな女に惹かれたのは七葉ちゃんじゃん」
葛野 くるみ:「………」
葛野 くるみ:もういいや、と思った。
葛野 くるみ:「……なんで誰とでも寝るのか教えてあげようか?」
御薗橋七葉:「……」
葛野 くるみ:「それはね。あたしが異性愛者だからで」
葛野 くるみ:手を伸ばして、七葉ちゃんの頬に触れた。
葛野 くるみ:「こんな風にして触られても、あたしは何にも触感が伝わってこなくて」
葛野 くるみ:「それなら、男に突っ込まれてた方がよっぽど、……」
葛野 くるみ:頬から手を離した。「あたしが人と触れ合ってるからって分かるから」
葛野 くるみ:「………」
葛野 くるみ:「がっかりした?」
御薗橋七葉:離れていくその手を追いそうになって。宙を掴むに留まる。
御薗橋七葉:「……」
葛野 くるみ:「結構、共感できる理由だったでしょ」
葛野 くるみ:笑う。「セックス依存症って言った方が嬉しかった?」
御薗橋七葉:「……足りないの?」
御薗橋七葉:「私だけじゃ、足りないの?」
御薗橋七葉:「あんたをただの都合の良い女だと思ってる連中、全部合わせたより愛してやっても」
御薗橋七葉:「それでもまだ、足りないの?」
葛野 くるみ:「…………」
葛野 くるみ:「……」
葛野 くるみ:「逃げたじゃん」
葛野 くるみ:「逃げたじゃん…………」
御薗橋七葉:手を伸ばす。くるみの頬に触れる。その触感も、伝わってはいないのかもしれないけれど。
御薗橋七葉:「……逃げたよ」
御薗橋七葉:「逃げきれなかった」
御薗橋七葉:困ったように笑う。
葛野 くるみ:「……指、つめたい」
葛野 くるみ:「ほっぺなら分かるよ。…手足が、分かんないだけ…」
御薗橋七葉:「……そっか」
御薗橋七葉:軽く頬を撫でて。
葛野 くるみ:「…………」
葛野 くるみ:身をよじる。
葛野 くるみ:部屋を照らすスポットライトから逃げたかった。
葛野 くるみ:「やだ…やだよもー……」
葛野 くるみ:「分かんないよ、あたしのことなんか…。あたしがそれで、七葉ちゃんと幸せになれると思う…?」
御薗橋七葉:「……分かんない。でも……」
御薗橋七葉:「多分、私。死ぬまでくるみから逃げられない」
葛野 くるみ:「……」
御薗橋七葉:「私が死ぬまでね。あんたが先に死んだとしても、きっと忘れられないと思う」
葛野 くるみ:「嘘」
御薗橋七葉:「嘘じゃない」
葛野 くるみ:「ガッカリする…平凡で、つまんない女だって…」
葛野 くるみ:「絶対、いつかあたしからいなくなる……」
御薗橋七葉:「そんなことない」
御薗橋七葉:腕を伸ばして、抱き寄せる。恋人というより、泣きじゃくる子供にそうするように背を撫でる。
葛野 くるみ:「あたしだって、すぐどっかの男のところに行ったりして……」
葛野 くるみ:「そうやって…」
葛野 くるみ:されるがまま、抱き寄せられる。
御薗橋七葉:「……くるみ」
葛野 くるみ:「………やだ…こんなのやだ…」
葛野 くるみ:首を横に振り、視線から逃げようとする。
御薗橋七葉:「私ね、貴方と一緒にいられるだけで幸せ」
御薗橋七葉:「なんて」
御薗橋七葉:「そんな優しいこと、言うつもりない」
御薗橋七葉:真っ直ぐにその目を見据える。
葛野 くるみ:「………」
葛野 くるみ:弱り切った顔で、おそるおそる視線を受け止める。
御薗橋七葉:「私の人生、全部くるみにあげるから」
御薗橋七葉:「くるみも、私に全部頂戴」
葛野 くるみ:「ううううう………」
葛野 くるみ:「ううううううう………!」
葛野 くるみ:御園橋七葉/秘匿/執着:〇
葛野 くるみ:開示します。御園橋七葉/愛情/執着:〇
葛野 くるみ:「なんで……」
葛野 くるみ:「なんで」
葛野 くるみ:「なんで、あたしなの………」
御薗橋七葉:「くるみだから」
御薗橋七葉:「好きだから。あなたの全部が」
御薗橋七葉:迷いなく口にする。
葛野 くるみ:「……あたしは」
葛野 くるみ:「七葉ちゃんじゃなくても、良かったよ」
御薗橋七葉:「知ってる」
御薗橋七葉:「でも、私は。あんたじゃなきゃ駄目なの」
葛野 くるみ:「………」
葛野 くるみ:「もうやだ……」
葛野 くるみ:「何言っても返ってくる………」
葛野 くるみ:ねだるように七葉ちゃんを見る。
葛野 くるみ:唇を求めた。
御薗橋七葉:「言ったでしょ。全部あげるって」
御薗橋七葉:「一緒に来て、くるみ」
葛野 くるみ:「………全部いらない」
葛野 くるみ:「あたしが二人いるみたいで、つまんないから」
葛野 くるみ:「あたしのこと好きな七葉ちゃんだけちょうだい」
御薗橋七葉:「我儘」
葛野 くるみ:「うん」
御薗橋七葉:唇を重ねる。ごく短い、触れ合うだけの。何かを確かめるようなキス。
葛野 くるみ:初めて口づけたように、静かに目を伏せて、体温を感じる。
御薗橋七葉:「……私の舞台に立って。くるみ」
御薗橋七葉:「セックスより気持ちいいこと、いくらでも教えてあげる」
葛野 くるみ:「ふふ」目を細めた。
葛野 くるみ:「つまんなかったら、ヤるからね」
御薗橋七葉:「そんなこと、すぐに忘れるわ」
御薗橋七葉:「退屈させないから」
葛野 くるみ:「………」
葛野 くるみ:唇を重ねて、それが頬に移る。
葛野 くるみ:「…………今のは」
葛野 くるみ:「嬉しいのチューだから…………」
御薗橋七葉:「……ん」
御薗橋七葉:乱れた銀髪を整えるように撫でる。
葛野 くるみ:「………ねー」
葛野 くるみ:「楽しくてもヤるのはだめ?」
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:「私と?」
葛野 くるみ:「ばかじゃん」
葛野 くるみ:「………がっかりしないよね」
葛野 くるみ:困ったような、確かめるような顔で七葉ちゃんを見る。
葛野 くるみ:「七葉ちゃんだけって言っても」
御薗橋七葉:「……ふ、ふふっ……!」いつになく楽しそうに、くすくす笑って。
御薗橋七葉:「……好き、は何度も言ったけど。これは言ったことなかったわね」
御薗橋七葉:返答の代わりに、もう一度唇を重ねる。
御薗橋七葉:「愛してる、くるみ」
葛野 くるみ:御園橋七葉/恋慕:〇/不安
葛野 くるみ:Sロイスに指定します。
椿尾 輪花:当然ながら、その晩に藁科、四条、葛野の間であったことは把握していたし
椿尾 輪花:たとえ何も言われなくても、セルリーダーとして少し動く必要があるかな、と思わされるようなことだった。
椿尾 輪花:普段どおりに身なりを整え、シトラスの香水を気持ち程度につけて。
椿尾 輪花:「……四条さん!」
椿尾 輪花:待ち合わせ場所に指定したカフェの前で、彼女に向けて手を振る。
四条 幸音:「椿尾……」
四条 幸音:少し疲れた面持ちで、手を振り返す。
椿尾 輪花:「はい。椿尾です。こんにちは」 常通りの、落ち着き払った笑み
四条 幸音:「忙しいのにごめん。待たせたかな」
椿尾 輪花:「いいえ、今来た所です。入りましょう?」
四条 幸音:「……ん、そうだね」
椿尾 輪花:「ここ、フラペチーノのクリームに綿あめとかマシュマロとか乗ってるとかで、最近にわかに人気らしいです」
四条 幸音:「ひえっ……甘そうだけど、カロリー凄そう」
四条 幸音:「練習で消化できるかなあ」
椿尾 輪花:「あら。気にするんですか? カロリー」
椿尾 輪花:「四条さん、全然綺麗なのに」
四条 幸音:「きれっ……別に、そんなことはないけど」
四条 幸音:さらりと放たれた言葉に照れて、少し横を向き
四条 幸音:「太りやすいんだよ。その……ちっちゃいから」
四条 幸音:「動いてもあんまり消費してくれないの」
四条 幸音:「もう舞台も近いんだから……お腹出た主演なんて笑えないでしょ」
椿尾 輪花:「ふふ……そうなんだ。ごめんなさいね」
椿尾 輪花:浮かべる笑みは楽しげだ。そして、店内ボードの一点を指差す
椿尾 輪花:「でも安心してください。ほら」
四条 幸音:「ん?」
椿尾 輪花:『カロリーオフ あります』
四条 幸音:「おおっ……!」
四条 幸音:ぱぁっと顔が明るくなる。
椿尾 輪花:「何でしたっけ、ほとんど砂糖と変わんなくて、カロリーのない……甘味料? のがあって」
椿尾 輪花:「だから人気なんですよ。まあ、ちょっとお高いですけど……」
椿尾 輪花:「経費で行けますので」
四条 幸音:「さすが椿尾……抜かりない!」
椿尾 輪花:「ふふ」 ちょっと得意げな表情
椿尾 輪花:そして注文を終えて、どこかポップな雰囲気の店内の、丸いテーブルにつく。
四条 幸音:「経費……良いの?流石に食費ぐらいなら、僕もちゃんと出すけど」
椿尾 輪花:「良いんですよ。こういう時くらいズルしなくっちゃ」
椿尾 輪花:「偉い意味がないんです」
四条 幸音:「そっか。じゃあその……ごちそうになります」
四条 幸音:手を合わせて軽くおがむ。
椿尾 輪花:「ふふふ。どうぞどうぞ」
四条 幸音:「……ありがとね、椿尾」
四条 幸音:「気、使わせてる」
椿尾 輪花:「本当ですよ」
四条 幸音:「……やっぱり聞いてた?」
椿尾 輪花:ずうずうとレモンソ―スとコットンキャンディが乗せられたバニラフラペチーノを飲みながら
椿尾 輪花:「聞いてました」
四条 幸音:「藁科と、葛野と……三人で話してたこと」
椿尾 輪花:「四条さんが声をかけてこなくても、私が声をかけてました」
四条 幸音:「……そっか」
椿尾 輪花:「まあ、結局四条さんから声をかけてきてくれたのは、少し嬉しかったですけど」
四条 幸音:「手間が省けた?」
椿尾 輪花:「……あら」
椿尾 輪花:「四条さんに頼ってもらって嬉しくなる私は、想像できません?」
四条 幸音:「……」
四条 幸音:「どう、だろう」
椿尾 輪花:ドリンクを吸いつつ 「……それで」
椿尾 輪花:「何のお話をしたいんですか?」
四条 幸音:「ん、いくつか。 まずは、確認」
椿尾 輪花:「はい」
四条 幸音:「藁科のあの言い分……僕も、君も、葛野も皆、変わってほしくない、成長してほしくない、って」
四条 幸音:「僕は、そこまでとは思ってなかった。……あいつが恐れてるのは、変わることで壊れてしまうことで」
四条 幸音:「変わることそのものを、あそこまで恐れてるなんて……気づけなかった」
椿尾 輪花:「人の機微は複雑ですからね」
四条 幸音:「それは、僕のミス。また見てるつもりで、見てなかった。でも、その上で」
四条 幸音:「僕は、あいつの言い分を聞かない」
四条 幸音:「……君は、どうするつもり?」
椿尾 輪花:上目がちにドリンクをストローで吸っている
椿尾 輪花:「私は」
椿尾 輪花:「そもそもそうなのかな、って思っています。変わることを恐れているから、藁科さんがああなのか」
四条 幸音:「……まだ、隠してるってこと」
椿尾 輪花:「本質的にはもっとこう、単純なんじゃなのかもしれません」
椿尾 輪花:「自分が死んだ後で、自分の生きていたときのものが変わっていくのが、忘れられてしまうみたいで怖い、とかね」
四条 幸音:「……言ってたね、あいつ」
四条 幸音:「構って欲しい……それから」
四条 幸音:「置いていかれたくない、って」
椿尾 輪花:少し視線を横に逸らす 「まあこれは、邪推ですし余談です。藁科さんの本音を知りたいなら、憶測するより、服を着て、お茶でも飲みながら話すのが一番ですよ」
椿尾 輪花:「そもそも私はメンバーの意見は聞きますが、セルの方針をそれでふらふらと変えるつもりはありません」
椿尾 輪花:「そういう意味では、あなたと同じ。彼女の願いを叶えてあげるために、化石になってあげるつもりはない」
椿尾 輪花:「"ラオペ"は進みます。必要に応じて変わりながらでも」
椿尾 輪花:「……どう? 良い感じの答えでしたか?」
四条 幸音:「……ん、そうだね」
四条 幸音:「変わりながら、って。そう言ってくれたのは、安心した」
椿尾 輪花:「変わることを嫌ってたら、半年前に完全消滅ですしね」 ちょっと苦笑い
四条 幸音:「僕も、変わりたいって思ってるから。……藁科が言ったように、まだ全然かもだけど」
四条 幸音:「それは……そうだね」
四条 幸音:釣られるように苦笑する
四条 幸音:「もうひとつ、聞いていいかな」
椿尾 輪花:「はい。どうぞ」
四条 幸音:「葛野に言われたんだ」
四条 幸音:「ラオペは終わらない舞台だ。……終幕の仕方を知っているのか、って」
椿尾 輪花:「ああ、言っていましたね、そんなことも。……気になるんですか?」
四条 幸音:「うん。……椿尾、君は」
四条 幸音:「ラオペを守って、時には変わっても進み続けて……それで」
四条 幸音:「……どんな終わりを、迎えたい?」
椿尾 輪花:「…………」
椿尾 輪花:ストローでカップの中身を掻く。白いドリンクに、綿飴が溶けて沈んでいく
椿尾 輪花:沈黙が流れる。ず、とドリンクをストローで吸い
椿尾 輪花:「……教えてあげてもいいですけど」
椿尾 輪花:「条件があります。……幸音さん」
四条 幸音:「……なに?」
椿尾 輪花:ちらりと視線を上げて 「デートしてください」
四条 幸音:「へ?」
椿尾 輪花:「デート」
四条 幸音:「……デート?」
椿尾 輪花:「…………」
椿尾 輪花:「ご存じない?」
四条 幸音:「いや、そりゃ……存じておりますけども……」
四条 幸音:「それが、条件?」
椿尾 輪花:「じゃあ聞き返すこと、ないでしょ」 唇を尖らせる。どこか椿尾らしくない、子どもっぽい表情
椿尾 輪花:「はい。……駄目ですか?」
四条 幸音:「いや、それは……えっと。僕は、構わないけど……」
四条 幸音:「椿尾はそれで良いの……?」
椿尾 輪花:「やった」
椿尾 輪花:「……私が誘ったんですけど、それで良いも何もあるんでしょうか」
四条 幸音:「あ、いや。ごめん。そう……だね」
四条 幸音:「えっと、じゃあ……よろしくお願いします?」
椿尾 輪花:「よろしい」 頷き、ずっ、とまたドリンクを飲む
椿尾 輪花:「それじゃあ行きましょう。ちゃんとプランは立ててありますから」
四条 幸音:「準備してたの!?」
椿尾 輪花:「良いでしょ? 実際受けてくれたんですから」
椿尾 輪花:……それから……
椿尾 輪花:幸音を連れて、私は色々な所に行った。駅に併設されたモールの服屋に行った。ちょっと話題のセレクトショップに行った。
椿尾 輪花:道端のアクセサリー露店にしゃがみこみ、ゲームセンターで下手くそにゲームを遊び、プリクラを取った。
椿尾 輪花:フードキャビンでクレープを買って、それを食べながら歩いた。見晴らしの良い穴場だと聞いた公園まで、いくつも階段を登って。
椿尾 輪花:普通の生き方をしている、普通の女の子みたいな、普通のデートをして。
椿尾 輪花:「……わーっ、確かに」
椿尾 輪花:「良い景色ですよ、ほら!」
椿尾 輪花:幸音の手を引いて、夕方の街並みを望む公園を進む。
椿尾 輪花:「ちょ……っとロマンチック感はないですけど、風景は確かに良いですね」
椿尾 輪花:「人も少ないし……」
四条 幸音:「人が多いと疲れちゃう?」
椿尾 輪花:「苦手でもないですけど。デートの締めくくりが雑踏でざわざわって」
椿尾 輪花:「微妙な気がします。……そうでもないですかね?」
四条 幸音:「どうなんだろう……全然経験ないし、分かんないや」
四条 幸音:「でも……僕は、うん。楽しかったかな」
四条 幸音:「椿尾は?」
椿尾 輪花:「ふふ」 目を細めて笑う 「私もです」
四条 幸音:「……ほんとに?」
椿尾 輪花:「こんなデートは初めてで。……楽しかった」
四条 幸音:「だったら、良いんだけど……」
四条 幸音:「なんか……計画用意してくれたことといい、さ」
四条 幸音:「僕を楽しませることばっか優先して、疲れちゃうんじゃないかって」
椿尾 輪花:「じゃあ次は、幸音さんが考えてくれますか?」
四条 幸音:「……僕が?」
椿尾 輪花:「この場に幸音さんはあなたしかいません」
四条 幸音:「……君が好きなとことか、楽しめるとことか」
四条 幸音:「君みたいにちゃんと選べるか、分からないけど」
椿尾 輪花:「もしダメでも、次のチャンスを差し上げます」
椿尾 輪花:「私は寛容なリーダーですから」
四条 幸音:「……ん、分かった。それで良いなら」
四条 幸音:「つまんなかったら、ちゃんと言ってよ?」
椿尾 輪花:「遠慮なく言います。私の採点は厳しいですよ」
四条 幸音:「だったら良いんだけど……」
椿尾 輪花:「ふふ……」 公園の柵に身を預ける。遠く街並みに沈む夕陽に、目を細めて
椿尾 輪花:「…………」
椿尾 輪花:「……楽しかったです」
四条 幸音:「……うん」
椿尾 輪花:「楽しかったですけど」
椿尾 輪花:「頭のどこかで、ずっとセルのことは考えてた」
四条 幸音:「……そっか」
椿尾 輪花:「まあ、セルそのものが大変な状態ですしね。元々のスタートはセルの話だったし……」
椿尾 輪花:「もしかしたら端末を二人に埋め込んでたせいかも」
椿尾 輪花:「もし今日、一瞬でもセルのことをすっきり忘れられそうだったら……」
椿尾 輪花:「……幸音さんを誘拐して、もっと遠くまで逃げていたかも」
四条 幸音:「……できなかった、か」
椿尾 輪花:くすりと笑う 「そうはなりませんでしたけど」
椿尾 輪花:柵を背に立つ。その姿はまっすぐとしていて、先ほどまで楽しそうに笑っていた少女のものではない。
椿尾 輪花:「"ラオペ"の終わりは分かりません」
椿尾 輪花:「百年先まで続くかもしれないし、明日終わるかもしれない」
椿尾 輪花:「きっと私は、それを決められません」
椿尾 輪花:「だって私は……自分で進む先を決めて、思い切り飛び立てるような人じゃない」
椿尾 輪花:「FHという組織から……不要とされるのが怖い。棄てられるのが怖い」
椿尾 輪花:「生きていられなくなるのが怖い」
椿尾 輪花:「"ラオペ"は私が生きるために作ったセルなんですから」
椿尾 輪花:「生きられないんですよ、普通の女の子みたいには」
四条 幸音:「椿尾……」
椿尾 輪花:「藁科さんはちょっと……追い詰められてましたけど、でも、気持ちは分かります」
椿尾 輪花:「変化は怖ろしい。明日から"ラオペ"を合唱団にします、なんてできる訳がない」
椿尾 輪花:「生きていけなくなってしまう。……変化は私にとって、死の可能性でもある」
椿尾 輪花:「そんな私がやっている"ラオペ"ですから。終わりなんて分からないし、決定的な変化なんて来たりはしませんよ」
椿尾 輪花:「昨日と変わらない今日。今日と変わらない明日」
椿尾 輪花:「どうせ明日も、藁科さんはまた舞台にもいないのに演者みたいなことを言って……」
椿尾 輪花:「あなたは控えめで……」
椿尾 輪花:「……葛野さんはまたよくわからない男と寝て」
椿尾 輪花:「御薗橋さんは神経質にしている」
椿尾 輪花:「そうに決まってると思いませんか? ……それで良いと思いませんか?」
四条 幸音:「それで……皆、生きていけるなら?」
椿尾 輪花:穏やかに笑う 「生きていけます」
椿尾 輪花:「私がそうします」
四条 幸音:「椿尾」
四条 幸音:「今日は楽しかったって、思ってくれたんだよね」
椿尾 輪花:「ええ」
四条 幸音:「次のデートも、楽しみにしてくれる?」
椿尾 輪花:「……っ」
椿尾 輪花:「ふふ、ふふ」 くすくすと笑い
椿尾 輪花:「してます。楽しみに」
四条 幸音:「……そっか」
四条 幸音:「椿尾。……僕も、楽しみなんだ」
四条 幸音:「今日は楽しかったし、次のデートも、きっと楽しい」
四条 幸音:「昨日と変わらないように見えても、今日は変わっていて」
四条 幸音:「明日もきっと変わっていく。それを、楽しみだって思える」
四条 幸音:「……いつか、僕たちに終わりが来たとして」
四条 幸音:「その時に、悔しい、悲しいって思いたい」
四条 幸音:「明日を迎えたかったって、そう思いたい」
四条 幸音:「それが今の、僕の望む終幕」
四条 幸音:「……君にだけ言わせるのはずるいと思うから」
椿尾 輪花:目を細める 「そうですね」
椿尾 輪花:「きっと……きっとそう思えることが……普通という舞台に立つ」
椿尾 輪花:「ということなんでしょう」
【Middle latter half/四条幸音】
GM:ミドル後半 3手番目 四条さんのシーンです
GM:誰を指名しますか?
四条 幸音:う~
四条 幸音:藁科さんを指名します!
藁科 サイカ:覚悟はいいんですか?
四条 幸音:やります
GM:ではメインシーンは四条さん 藁科さん サブシーンは椿尾さん 葛野さん 御薗橋さんになります
四条 幸音:街の片隅の小さな公園。
四条 幸音:夜も更けた時刻、外灯が照らす影は一つだけ。
四条 幸音:「………」
四条 幸音:小さな影が、もう一人の演者の登場を待っている。
四条 幸音:既に約束の時間は過ぎた。 ……待ち人は、やってこない。
四条 幸音:「襲われた、とかじゃないでしょうね……」
藁科 サイカ:──音声通話。
四条 幸音:「……!もしもし?」
四条 幸音:端末のコール2つで通話をとる。
藁科 サイカ:私用の端末だ。〝仕事〟用と分けているのではない。
藁科 サイカ:番号登録さえ済んでいれば、発信者の名前はすぐにも知れただろう。
藁科 サイカ:通話が繋がる。
藁科 サイカ:街の喧騒が背後にうっすらと聞こえて、少しの間、呼吸音ばかりが続いて、
藁科 サイカ:『ああ、幸音』
藁科 サイカ:『今どこに居た?』
四条 幸音:「……まだ公園に居る」
藁科 サイカ:『公園……』
藁科 サイカ:「……………………」
藁科 サイカ:『あー、そっちか。そっち、なるほど。そっちかー』
藁科 サイカ:いやに、ふわふわと、漂うような声音。
藁科 サイカ:普段の口ぶりに比べて間延びした口調。
四条 幸音:「は……?そっち?どういうこと?」
四条 幸音:「あんた、無事?どこに居るの?」
藁科 サイカ:『えーとなー』
藁科 サイカ:『……どこだ、ここ。えーと……ああ、繁華街の、表通りから入ってちょっと歩いてから右の──』
藁科 サイカ:ぼんやりとした口ぶりの、その後。
藁科 サイカ:「……う」
藁科 サイカ:酷い音がした。
藁科 サイカ:胃袋の中身をまるごとその場に引っ繰り返した音で、
藁科 サイカ:それで、通話は切れた。
四条 幸音:「あいつ……」
四条 幸音:呆れたようなため息。
四条 幸音:仲間たちに短文で事情と行き先を伝え、藁科の示した場所へと走り出す。
藁科 サイカ:──つまりは、飲み屋街だ。
藁科 サイカ:大きなチェーン店やらが並ぶところから一本ばかり脇に入った、背の低い建物ばかりの道の脇。
藁科 サイカ:閉店したらしい店のシャッターにもたれかかって、藁科サイカは座っていた。
藁科 サイカ:衣服が酷く汚れていた。赤やら、黄色やら。
藁科 サイカ:とうてい舞台に立てるような姿をしてはいなかった。
四条 幸音:「……藁科。藁科、起きてる?」
四条 幸音:ひどい匂いに顔をしかめながら近づき、声をかける。
四条 幸音:「どんだけ飲んだのよ、あんた……!?」
藁科 サイカ:「あー」
藁科 サイカ:目は開いているし、反応もある。起きているのは間違い無い──と、認識できる頃合いか。
藁科 サイカ:突然、その手がいやに俊敏に動いて、幸音の腕を引き、
藁科 サイカ:下から噛み付くような荒っぽさで、唇を重ねようとした。
四条 幸音:「やめて……!」
四条 幸音:腕を力の限りはねのけ、拒絶して
四条 幸音:頬を叩く。
藁科 サイカ:背をしたたかにシャッターに打ち付けた。頬を打つ乾いた音。
藁科 サイカ:眠たげな目は一瞬、幾分か大きく開かれて──それから、平常の形に戻るも、
藁科 サイカ:「どんだけ飲んだって言うから、教えてやろうって思ったのに」
藁科 サイカ:路上に唾を吐き捨てた。……口の中は、酷い味がしたからだ。
藁科 サイカ:血と吐瀉物とアルコールの混ざった、掃きだめの屑の味だ。
藁科 サイカ:「酒ってさ、不味くはないけどそんな美味くもないな」
四条 幸音:「……何があったのよ」
藁科 サイカ:「役作り、って言ったら納得するか? ギヨームもシルヴェストルが死ぬまでに、こういうこともしただろうさ」
藁科 サイカ:「行きずりの相手で妥協して体を満たし、喧嘩をして、酒に溺れて。……正直、どれもあんまり楽しくはないけど」
藁科 サイカ:「でも、この……酩酊感、って言うのか? これはいいな。オーヴァードなのが残念なくらいだ、すぐに終わっちゃう」
藁科 サイカ:「こうやってずっとフワフワ浮かんだ感じが続いてたらさ、俺、死ぬまで幸せに生きられるかも知れないよ」
四条 幸音:「……ずっとそうやって、溺れている気なの」
藁科 サイカ:「芸術家らしいとは思わないかね、この末路は」
藁科 サイカ:案外に確りした足取りで背をシャッターから放し、公園の方角へ歩き始める。……付いてこい、とも言わずに。
藁科 サイカ:そのくせに、語りかけは続けるのだ。
藁科 サイカ:「芸術家がどんどん壊れていくのは、自分を見つめすぎるからなんだって気がしてきたよ、俺は」
四条 幸音:「あんたも今日、また壊れたって言いたいの?」
四条 幸音:「自分を見つめてしまって」
藁科 サイカ:「そうだとして、はたしていずこに咎があろうや!」
藁科 サイカ:声を張り上げる。……繁華街の夜、人出は相応にあるが、
藁科 サイカ:それらの視線は、薄汚れた衣服を着た様子のおかしな女を見れば、すぐにまた逸れていく。
藁科 サイカ:「ふはは」
藁科 サイカ:「見ろシルヴェストル。お前に似ても似つかぬ悪鬼王こそ俺なのだ」
藁科 サイカ:……そうしてようやく、本来遭遇するべきであった公園に辿り着くのだ。
四条 幸音:「ギヨーム……」
四条 幸音:返すべき演技が、見つからない。
藁科 サイカ:水飲み場へと向かう。子供が手を掛ける為の、コンクリート製の縁に腰掛けた。
藁科 サイカ:蛇口を思いっきり捻って、飲み口は空へ向ける。水が空へと舞い上がって、ぱらぱら、粒になって落ちてくる。
藁科 サイカ:それを藁科サイカは頭から浴びながら、コートを肩から落とし、シャツを脱いだ。
藁科 サイカ:指の動きがまだおぼつかないのか、ホックを外すことを怠けて、ブラジャーは引き千切るようにして捨ててしまった。
藁科 サイカ:即席の噴水の下、上半身を夜風に晒して、作り物の雨に身を打たせるのだ。
藁科 サイカ:「──で」
藁科 サイカ:「なにか用があるんだろ、幸音」
藁科 サイカ:土埃も吐瀉物も汗も、自分の血も誰かの血も、水に混ざって流れ落ちていく。
藁科 サイカ:作り物の雨の中で、藁科サイカのかたちは女優へと戻っていく。
四条 幸音:「……ああ」
四条 幸音:呼吸を整える。
四条 幸音:背の高い彼女へ向けて、きっと見上げて視線を合わせる。
四条 幸音:「藁科。藁科サイカ」
四条 幸音:「僕は君に、今日、別れを告げに来た」
四条 幸音:「……いや、」
四条 幸音:「フラれて、フりに来たんだ」
藁科 サイカ:「……ふーん」
藁科 サイカ:口を閉じる。言葉を探しているのだ。……台詞ならば思い出すだけでよい。
藁科 サイカ:明確な意図を持って、次の言葉は発せられる。
藁科 サイカ:「そうか。じゃあ、俺はひとりぼっちで死ぬんだろうなぁ」
四条 幸音:「……」
藁科 サイカ:「どうした、もう黙っちゃうのか?」
藁科 サイカ:「主演だろう。アドリブにも強くなきゃあ」
藁科 サイカ:「俺の論理の瑕疵を丁寧に突き刺して、俺を叩きのめしてくれるつもりじゃないのか?」
四条 幸音:「そうしてほしいの?」
藁科 サイカ:「できるつもりか?」
四条 幸音:「……わからないよ。でも、そもそも」
四条 幸音:「前にも言った。僕はただ、君に」
四条 幸音:「嘘をつきたくないし、ごまかしたくもないだけ」
四条 幸音:「だから……僕は、君の望むようにはなれない」
四条 幸音:「それを、伝えにきた」
藁科 サイカ:「そうか」
四条 幸音:「……ねえ、藁科」
四条 幸音:「ひとりぼっちで死ぬって、さっき言ったよね」
四条 幸音:「あんたにとって、生きるってどういうこと?」
藁科 サイカ:「ほほう。これはまた演劇の命題になりそうな問いかけじゃあないか」
藁科 サイカ:「なら、俺は答えようか。そんなことを考えられる程、俺は幸運な生き方をしてこなかったと」
藁科 サイカ:片脚を軸にして、くるりと、水道水の雨の中で踊る。
藁科 サイカ:スポットライトと呼ぶには遠すぎる街灯が、濡れた白肌を照らしている。……その曲線がどうしても、
藁科 サイカ:これは、演じると演じないとに関わらず、人間の雌として生まれた生き物だと知らしめる。
藁科 サイカ:「先天性のオーヴァードで、最初からFHの側にいたんだ。俺は。両親だとか家族だとか、そういうものをまず知らない」
藁科 サイカ:「一番、家族に近い単位は──あれかな、同世代、同性のチルドレンを集めて突っ込んでたタコ部屋」
藁科 サイカ:「同性ばかりの匣の中で、紛い物の異性が求められて、そうして俺のこういう難儀な性格は仕上がったんだよ」
藁科 サイカ:「今いるその場で、自分が一番ちやほやされて過ごすにはどうしたらいいか。そんな事ばかり考えるアタマがさ」
藁科 サイカ:水を飲む。口を濯いで水を吐き出す。喉奥が湿って、声の艶と張りが戻る。
藁科 サイカ:「生きるって言葉の意味を無理矢理ひねり出すなら、俺のそれは〝もてはやされる〟って事だ」
藁科 サイカ:朗々と、その言葉を奏でた。
四条 幸音:「……椿尾と三人で話した時。君は僕に、聞いたよね」
四条 幸音:「ラオペは、本当に生きているのかって」
四条 幸音:「……今の僕にとって、生きるってことは」
四条 幸音:「明日に希望があるってことだ」
四条 幸音:「今日が楽しいから、明日はもっと楽しい。今日は辛かったけど、明日はきっと楽しくなる」
四条 幸音:「そう信じて、そうできるように戦うのが、それが今の僕の、生きるってこと」
四条 幸音:「ねえ、藁科。……君の感じてる怖さとか、寂しさとか」
四条 幸音:「見ていて欲しい、側にいてほしいって気持ちとか……もっと他の思いとか」
四条 幸音:「僕はきっと、分かってないと思う。でも」
四条 幸音:「君の言うことに従うのは、ずっと昨日に居るってことだ」
四条 幸音:「今日が、明日が良い日になるって、少しも信じられなくて諦めて」
四条 幸音:「悪くなかったって知ってる昨日、悪くても終わらなかったって知ってる昨日を、ずっと続ける」
四条 幸音:「僕にとってそれは、君の言った」
四条 幸音:「『死んだ人間が、生きてる芝居を続けてる』」
四条 幸音:「そういうことだとしか、思えない」
藁科 サイカ:「……………………」
藁科 サイカ:蛇口に手を伸ばし、水を止めた。
藁科 サイカ:少しばかり寒さを感じたのは、体よりもきっと、心が凍て付いているからだ。
藁科 サイカ:理性と感情の動きは、必ずしも合致しない。
藁科 サイカ:理性は常に、どちらの言い分が建設的であり、それを受け入れる事が自分に不利益を齎しはしないと、適切な解を導き出している。
藁科 サイカ:だが。
藁科 サイカ:「それは、恋人が出来て幸せです、って自慢かい?」
藁科 サイカ:感情は、別なのだ。
四条 幸音:「……それは、ずっと自分のものだと思ってたものが離れていく恐怖?」
藁科 サイカ:「そこまで自惚れられるのは、少し羨ましいな。……幸音」
藁科 サイカ:「俺は君を、実は幸運でもないんだろうと評した気がするが、あれはやはり訂正しないでおくよ」
藁科 サイカ:「君は運こそさほど無いが、縋るべき相手と切るべき相手を正しく弁えている」
四条 幸音:「縋る……か」
藁科 サイカ:「ああ。君は俺を拒絶した。だから俺は君を呪おうか」
藁科 サイカ:「君は、過ちを犯して沈んでいく者に見切りをつけ、正しく先へ進める者の手を取る術を覚えた」
藁科 サイカ:「さて」
藁科 サイカ:「俺が死んだ後で、次は誰に見切りをつける?」
四条 幸音:「……優しいね、君は」
藁科 サイカ:「そして君は、俺が感激してしまう程に残酷だ」
藁科 サイカ:「お前が悪いと言われたがるくせに、悪いやつにはなろうとしないのだから」
藁科 サイカ:地面に落ちたシャツを拾い上げた。
藁科 サイカ:……先の汚れに加えて、水が土をふやかして、泥の汚れまでこびり付いている。
藁科 サイカ:「要らないや、これは」
藁科 サイカ:投げ捨てて、コートだけに袖を通した。
四条 幸音:「藁科」
四条 幸音:「僕は、君に恋していたよ」
藁科 サイカ:「感謝しよう。だが俺達は明日以降も、劇団員として顔を合わせる身だ」
藁科 サイカ:「だからお互いに、相手を殺す最後の一歩は踏み出さないようにしないか?」
四条 幸音:「……ああ」
四条 幸音:「おやすみ。また、明日」
藁科 サイカ:「幸いなことに」
藁科 サイカ:とんとん、とこめかみを指で示し、
藁科 サイカ:「今夜の顛末は輪花が知っている。……こういう時が来るだろうとは思ってたからな」
藁科 サイカ:「君から余計な説明はしなくていい。しても構わないが」
藁科 サイカ:──理性は、十分に働いている。
藁科 サイカ:彼女の言葉は、言葉そのままの意味合いだと。曲解する理由は無く、合理性も無い。
藁科 サイカ:だからきっと、こちらも皮肉を交えずそのままに受け取って、互いに気持ちよくこの場を去るのが、美しい脚本というものだろう。
藁科 サイカ:……感情は、どす黒く蠢いている。
藁科 サイカ:俺はね。
藁科 サイカ:お前をずっと見下してたんだよ。
藁科 サイカ:S四条 幸音 幸福感/○偏愛 をタイタス化します。
四条 幸音:さようなら。
四条 幸音:僕が死ぬまで、君のことを忘れない
四条 幸音:藁科さんへのロイスの秘匿感情を公開し、感情を反転させます。
四条 幸音:藁科 サイカ P:恋慕/◯N:執着
葛野 くるみ:駅近くにある、ビジネスマンが会食に使うような少し高級な焼肉屋。
葛野 くるみ:黒を基調とした個室。既に、注文した肉が何皿か机の上に並べられていた。
葛野 くるみ:「ね~、こういう打ち合わせ代みたいなの、経費で落ちないの?」
椿尾 輪花:「打ち合わせ代なんですかね、これは」
椿尾 輪花:「どちらにしてもダメですよ。そういう使い方は」
葛野 くるみ:手慣れた仕草で網の上にタンを並べながら口を開く。
葛野 くるみ:「はーい。聞いてみただけー」
御薗橋七葉:「その辺りはきっちりしないと」野菜の盛り合わせを網に並べていく。
椿尾 輪花:「今回はご馳走になります」 御薗橋さんに笑みを向ける。ちょっと迫力がある
御薗橋七葉:「……いえ。一応、年上ですし」
御薗橋七葉:やや気まずそうに、網の上に視線を注ぐ。
葛野 くるみ:「えー、あたしも出すよ? 輪花ちゃん呼んだの、あたし達二人だし…」
御薗橋七葉:「お金あるの?あなた」
葛野 くるみ:「あるよー!貯金してないだけ!」ケラケラと笑う。
御薗橋七葉:「それは無いって言うのよ……」
椿尾 輪花:「まあ、私も用はありましたからね。用というか、確認というか」
椿尾 輪花:遠慮なく焼き上がったタンを頬張る。何もつけない派
葛野 くるみ:「うん」焼けたタンを、輪花ちゃんの皿に載せる。
御薗橋七葉:シーザーサラダを口に運ぶ。「確認?」
葛野 くるみ:「輪花ちゃん、あたしのしてること、全部聞こえちゃってるもんね」
葛野 くるみ:焼けたタンにレモンをかけて口に運んでいる。
椿尾 輪花:「……そう。そういう風にしてる。それで、その上で」
椿尾 輪花:「何を確認したいかも私の口から一部始終説明しなきゃダメですか?」
御薗橋七葉:「…………」
御薗橋七葉:「いや……」
御薗橋七葉:「その……」
御薗橋七葉:頬を染め、視線を逸らす。その先にはくるみがいる。
葛野 くるみ:「えへへ」視線に気づいて微笑む。
葛野 くるみ:「ごめんねー、マジで話してるの聞かせちゃったしさ」
椿尾 輪花:「よかったです。私の言いたいことが伝わって」
椿尾 輪花:「本当に……んぐ。良かった」 遠慮なく肉を取っている
葛野 くるみ:「えっ、良かったって言ってくれるの?」
葛野 くるみ:話しながら、空いた網に肉を並べていく。
椿尾 輪花:「温まってるんじゃないですよ、葛野さん。私が良かったと言ったのは」
葛野 くるみ:「うん」頷く。
椿尾 輪花:「私からあなたたちの青くて酸っぱい、未熟な梅の実みたいな」
椿尾 輪花:「そういう事情に切り込んでいかなくて済むということです」
椿尾 輪花:ぐび、とビールを飲んで
椿尾 輪花:「で?」
椿尾 輪花:「聞きますよ、お話?」
葛野 くるみ:「えー、お祝いしてくれてるんじゃないのー?」
葛野 くるみ:不満げにそう返した後。
葛野 くるみ:「うん、でね、そういうわけで、あたし、今後はちゃんと七葉ちゃんだけとお付き合いしようと思ってー」
葛野 くるみ:「いるので!」
椿尾 輪花:「はい」
葛野 くるみ:「輪花ちゃんの監視は、もう必要ないはず……です!」敬語。
椿尾 輪花:「……そう言ってますけど? この人は」
椿尾 輪花:「どう思いますか。御薗橋さん」
葛野 くるみ:首を傾げて、まじまじと七葉ちゃんを見る。
御薗橋七葉:気まずそうに冷麺の鉢を無意味に箸でかき混ぜていたが、その手を止めて。
御薗橋七葉:「……私からは……」
御薗橋七葉:「くるみを信じている、としか言えません」
葛野 くるみ:嬉しいような不安そうなような顔をしている。
椿尾 輪花:もう一口ビールを飲む
椿尾 輪花:「嫉妬とかした方が良いとこですかね、これ」
御薗橋七葉:「……ええと……」
御薗橋七葉:掌を組んで、どう言っていいか迷う。
御薗橋七葉:「……ですが、ええ。事実なので」
御薗橋七葉:「もう、くるみは私のものです」
御薗橋七葉:「絶対に離しませんから」
御薗橋七葉:結局はそのまま言い切る。
椿尾 輪花:「はあ……」
葛野 くるみ:「えへへへへ……」照れ笑いを浮かべている。
椿尾 輪花:「なんか……んぐ」 また肉を頬張る 「葛野さんと寝た人何人かもそう思ってそうですけどね」
葛野 くるみ:「あ、それはそうなんだよねー」
椿尾 輪花:「ほら」
葛野 くるみ:「や!でも、あたし、ストーカーみたいになったらヤだなと思って」
葛野 くるみ:「その辺マジで軽い感じの人としか繋がってなかったから大丈夫じゃないかなとは思うんだけど…」
御薗橋七葉:「……………………」苦みに満ちた顔。
椿尾 輪花:「……まあ、それも一理あります」
葛野 くるみ:「やーっ、でもでも、連絡先消したよ~? 携帯見ていいよ~?」
椿尾 輪花:「そうなると今度はなんで御薗橋さんとつながってるんだと、そう言いたくもなりますが……」
葛野 くるみ:「えっ」
葛野 くるみ:「七葉ちゃんが一番好きだから…………」
椿尾 輪花:「…………」 半目
御薗橋七葉:「……ちょっと……」
御薗橋七葉:「くるみ……」嬉しさと恥ずかしさが同時に込み上げてきて目を瞑る。
葛野 くるみ:「…………」もじもじし始める。「……もーやだー!」
葛野 くるみ:「今ヘンなこと言ったあたし!忘れて忘れて!」
葛野 くるみ:「あっ、やっぱ忘れちゃだめ!これ監視外してってお願いだから!」
葛野 くるみ:「えーこれあたしめちゃくちゃ恥ずかしいじゃんー」両手で顔を覆い出す。
椿尾 輪花:焼けたハラミを2枚まとめて口に入れて、もぐもぐもぐと噛み続ける
椿尾 輪花:「そう言ってますけど」
椿尾 輪花:「大丈夫なんですか、この人は。御薗橋さん」
椿尾 輪花:「なんか寄ってきた男と寝てうっかり情報漏らしたり、また身内と寝て人間関係をスリリングにしたり」
椿尾 輪花:「そういうことは二度とないと」
椿尾 輪花:「言い切ってくれるんですか」
椿尾 輪花:「ああ、いや、情報漏らしたことは一度も確認してませんけど……」
椿尾 輪花:「人間関係はめちゃくちゃスリリングにされてるのでトントンですよ」
椿尾 輪花:「御薗橋さん」
御薗橋七葉:「……その節は、申し訳ないとしか言えませんけど……」焼けたピーマンを口に運んで。
葛野 くるみ:「あーーーーねえこないだあたしがやらかしたのもバレてるんだよね~?やだーごめんなさいー」わめいている。
椿尾 輪花:「やらかしたって御薗橋さんに赤ちゃんだっこされてトイレさせられて発情した件ですか?」
椿尾 輪花:「それとも藁科さんと四条さんとの乱交未遂?」
御薗橋七葉:「は!?乱……!?」
椿尾 輪花:ビールをぐびぐび飲み 「ちゃんと具体的に話しなさい」
葛野 くるみ:「やーーっ」
椿尾 輪花:「分かっているんですか。立場」
椿尾 輪花:「やーっじゃないんですよやーっじゃ……もう……!」
葛野 くるみ:「ごめんなさいってばあ……」しょぼしょぼしている。
御薗橋七葉:「乱交って何……!?」
椿尾 輪花:「ああ、まあ……御薗橋さんは気にしなくて良いですよ」
椿尾 輪花:「一応、あなたたちがあの目眩のするラブラブ告白ショーをする前のことなんで……」
椿尾 輪花:ジョッキのビールを飲み干す 「はーっ」
御薗橋七葉:「ラブ…………。 …………」
葛野 くるみ:「ねええ、幸音ちゃん大丈夫かな~?」
葛野 くるみ:「ラオペ辞めないよね?」
御薗橋七葉:「何したのよ、あんた……」
葛野 くるみ:「あたしは皆で仲良くお風呂入りたかっただけで~……」
葛野 くるみ:「ついでに、幸音ちゃんから輪花ちゃんとのこと聞けるかな~って思ってただけで~…」
椿尾 輪花:「人の心配をできる余裕がありますとはね……」
椿尾 輪花:「その件は後で知りたければ本人に直接聞きなさい。……で?」
葛野 くるみ:「はあい」顔を上げる。
椿尾 輪花:「私が確かめたいのは、本当に葛野さんの面倒を見ることを止めて良いのか。御薗橋さんに任せて大丈夫なのか」
椿尾 輪花:「それで今後問題が発生しないのかということですよ」
椿尾 輪花:ジョッキを振って 「どうです、御薗橋さん。葛野さんのこと、任せて良いんですか?」
御薗橋七葉:「……。……そうですね……」
御薗橋七葉:「……くるみ」横から呼ぶ。
葛野 くるみ:「うん」横を見る。
御薗橋七葉:振り向いたところに、顎に手をやり、不意打ち気味に唇を重ねる。
葛野 くるみ:「!」目を見開く。
椿尾 輪花:「げっ」
御薗橋七葉:息が苦しくなるまで長々とキスをして、ようやく口を離す。
御薗橋七葉:「……ということなので」
葛野 くるみ:「……えっ、えっ…………」分かりやすく頬を染めて硬直している。
御薗橋七葉:「二度と無いです、そういうことは」
御薗橋七葉:「私がさせません」
葛野 くるみ:「えっ……………」
葛野 くるみ:珍しく、分かりやすく狼狽えている。
椿尾 輪花:焦げた脂身を飲み込んだかのような、げんなりした顔
御薗橋七葉:「そうよね?くるみ」
葛野 くるみ:「うっ……うん」
葛野 くるみ:一拍遅れてコクコクと頷く。「し、しない……しないよ……」
椿尾 輪花:(心拍数上がってることまで伝わって来てるんですけど……)
椿尾 輪花:(……まあ、だからこそこれが猿芝居じゃないってことは分かるか……)
御薗橋七葉:「……ということです」瞑目して、焦げ目の付いたたまねぎを齧る。
椿尾 輪花:「……演出やってると言葉が少なくなるんですかね?」
御薗橋七葉:「台詞で見せるのは役者の仕事ですから」
椿尾 輪花:「まあいい、いいですよ。言いたいことは伝わりましたから……」
葛野 くるみ:「うええ……なんであたしこんな…やだーー」照れている。
葛野 くるみ:照れている自分に戸惑ってもじもじしている。
椿尾 輪花:「もはやあなたたちのラブラブに疑う余地はないので、脳のフワフワした葛野さんのことも」
椿尾 輪花:「しっかり御薗橋さんが監督できると」
椿尾 輪花:「もしそれで何かあったら、その時はもう……」
椿尾 輪花:「……もうですからね」
椿尾 輪花:不機嫌そうにカルビを頬張る
御薗橋七葉:「……はい」重く頷く。「分かっています」
御薗橋七葉:「ありがとうございます、椿尾さん」
葛野 くるみ:「あっ…ありがとうございます!」遅れてぺこりと頭を下げる。
椿尾 輪花:「私としても仕事が減ってせいせいします」
椿尾 輪花:「ふん」
葛野 くるみ:「うん、ありがとね、輪花ちゃん」
葛野 くるみ:「あたしの面倒見てくれてて」
御薗橋七葉:「……ええ。それに、ありがとうございます」
御薗橋七葉:「信用してくれて」
椿尾 輪花:軽く手をふると、ぷつりと毛の抜けるような感覚と共に、一本の影の糸が葛野さんの髪の合間から離れ
椿尾 輪花:椿尾の手指の影にするりと滑り込む。
葛野 くるみ:「……」瞬きしながら、感覚のあった箇所に手をやっている。
椿尾 輪花:「構いません。メンバーの監督も仕事のうち。あなたに一番手を焼いたのは間違いないですけど」
椿尾 輪花:「結構です」
椿尾 輪花:「信用半分、疑ってこれ以上ラブラブ説得を受けたら胸焼けで死ねるな、という危機感半分ですから」
御薗橋七葉:「……」今更恥ずかしくなってきて、耳が赤くなっていく。
葛野 くるみ:「輪花ちゃんもラブラブ話していいよ~?」
椿尾 輪花:「ありません。あったとしてもしません」
椿尾 輪花:手を伸ばして御薗橋さんのチューハイの入ったコップを奪い、ごくごくと飲む
御薗橋七葉:「あっ」
葛野 くるみ:「あー」
御薗橋七葉:「……それ度数高いですよ」
葛野 くるみ:(……ていうか二人チューしたんじゃん………今のも間接チューじゃん……)
椿尾 輪花:「いいです。飲まなきゃやってられない……」
椿尾 輪花:「……飲まなきややってられないっていうやつなんですよ。今この席」
御薗橋七葉:「それは……その……まあ……」くるみの皿にピーマンを乗せる。
椿尾 輪花:「それに、私が注文する訳には行きませんし……未成年ですからね。品行方正の」
葛野 くるみ:「あはは、お酒もタバコもしてるのにー」
御薗橋七葉:「……何か頼みます?」
椿尾 輪花:「ビールお願いします」
葛野 くるみ:「あたしも!」
御薗橋七葉:「あんたは駄目」
葛野 くるみ:「えー」
御薗橋七葉:一人分のビールと日本酒を追加で注文して。
御薗橋七葉:「実際、無いんですか?そういうの、プライベートで」
椿尾 輪花:「はあ……あなたまでそんなことを」 嘆息
椿尾 輪花:「付き合うと脳の密度が均等になったりするんですか……?」
葛野 くるみ:「いいじゃん、言っちゃいなよ~」
椿尾 輪花:「言っちゃいなよじゃない。ないって言いましたでしょ」
御薗橋七葉:「一人もですか?」キャベツを口に運び、くるみの皿に焼けたたまねぎを乗せる。
椿尾 輪花:「私は"ラオペ"セルリーダー。このセルは私が生きるために立てて作って守ってるんです」
葛野 くるみ:「えー、幸音ちゃんの特別扱いはなんでー?」ピーマンは食べていないがたまねぎは食べる。
椿尾 輪花:「そんなだのにのんきに誰かと遊んでる暇なんてありますか。……四条さん?」
椿尾 輪花:「してません。特別扱いなんて。メンバーを誰か特別扱いなんて、したらダメでしょ」
葛野 くるみ:「幸音ちゃんの前だと普通の女の子みたいになるって聞いたけど~」
椿尾 輪花:「ただ四条さんはちょっと気弱で体格も小さいし、変に真面目で色々思い悩むところがあって……」
葛野 くるみ:「この間もさ、ブラックハイドのとき、二人で話してたじゃん」
椿尾 輪花:「……葛野さんみたいにお気楽でもなければ藁科さんみたいに振り切れたりもできず、いろんなことを抱え込みがちで……」
葛野 くるみ:「あたし覚えてるんだからね!幸音ちゃんから全部ひとりでやるなーって言われて、輪花ちゃんが嬉しそうに……」
葛野 くるみ:「………」
御薗橋七葉:「……よく見てるんですね、彼女のこと」
椿尾 輪花:「…………」
葛野 くるみ:「ね!ほら!今の!超見てるじゃん!」
椿尾 輪花:「……必要なことをしているだけです」
椿尾 輪花:「セルリーダーとして! セルメンバーに!」
葛野 くるみ:「ねー?これ絶対好きなやつだよねー?」七葉ちゃんの腕をくいくい引く。
椿尾 輪花:御薗橋さんのものだったチューハイをぐぶぐぶと飲んでいく
葛野 くるみ:「あっ」
御薗橋七葉:「いや、それ悪酔いしますって……」
葛野 くるみ:「えー、あたし達協力するよ~?ダブルデートしようよ」
椿尾 輪花:「あなたたちっ……あなたたちみたいな堕落依存レズカップルと一緒にしないでください!」
御薗橋七葉:「堕落依存レズカップル!?」
葛野 くるみ:「めちゃくちゃ言われてるじゃん」ケラケラと笑っている。
御薗橋七葉:「そんな風に見られてたの……?」
椿尾 輪花:「四条さんはそんな人じゃない……私も。私もです」
椿尾 輪花:くったりとテーブルに顔をつけて 「そんなんじゃないです……」
葛野 くるみ:「えっ、でもエッチなことしたんじゃないの?」
御薗橋七葉:「え、そうなの?」
葛野 くるみ:「なんかそんな話聞いたけど……」
椿尾 輪花:「……しましたよ。しましたし、しましたからです」
葛野 くるみ:「……」輪花ちゃんを見やる。「幸音ちゃん、ちょーガード固いもんね」
椿尾 輪花:ぶつぶつと危うい呂律 「私はそういう人間なんですから。FHセルリーダーで……人の心も体も……利用するような」
御薗橋七葉:「椿尾さん?ちょっと……大丈夫ですか?」顔の前で掌を振る。
椿尾 輪花:「利用できるものは何だって利用して……頭の中を弄くって……私の思うままに支配する」
葛野 くるみ:「お冷、お冷」注文に走る。
椿尾 輪花:「うー」 べっと御薗橋さんの手を押さえ込む 「そんな人が……普通に恋人作ってとか……馬鹿みたいじゃないですか……」
椿尾 輪花:「……葛野さんもそうだと思ってたのに」
御薗橋七葉:「……」押さえ込まれた手を、そのまま握る。
御薗橋七葉:「……何が馬鹿みたいなんですか?」
御薗橋七葉:「いいじゃないですか、普通に恋して、好きになって」
御薗橋七葉:「まだ18でしょう、あなた」
椿尾 輪花:「経験人数はそれを十倍しても足りないですけどね。ふふ」
御薗橋七葉:「くるみだってそうですよ」
御薗橋七葉:「でも、私の大事な恋人です」
御薗橋七葉:「それに……椿尾さん、あなたは」
御薗橋七葉:「もう少し、馬鹿になってもいいと思いますよ」
御薗橋七葉:チューハイを取り返して、自分で飲む。
椿尾 輪花:「……」 しょげたような顔で、テーブルのひんやりした感覚に甘えている
椿尾 輪花:手は握られたままだ
葛野 くるみ:「はい、輪花ちゃん」テーブルにお冷を置く。
椿尾 輪花:「あー」 口を開く
葛野 くるみ:「ん?」
椿尾 輪花:「飲ませて」
葛野 くるみ:「……口移し……」
御薗橋七葉:「何でよ」
葛野 くるみ:「あっ、だよね!えへへ…」
椿尾 輪花:「ふふ……」
椿尾 輪花:笑いながら身を起こし、コップを取ってごくごくと飲む
葛野 くるみ:「ねー、輪花ちゃん」
椿尾 輪花:「はい……?」
葛野 くるみ:「あたしね、バカみたいなんだけど、今すごく生きてて楽しい気がするの」
葛野 くるみ:「恋愛とか、そういうことじゃなくて」
葛野 くるみ:「いや、それもなんだけど……でも、なんか、それより」
葛野 くるみ:「はやく舞台やって、みんなの前で演技したいんだよね」
葛野 くるみ:等身大の少女のように、照れくさそうに語る。「………なんか、そんなこともあるんだね、人生」
椿尾 輪花:「……」
御薗橋七葉:「……」少し驚いたように、感慨深そうにくるみに目をやる。
椿尾 輪花:「……ふん……」
椿尾 輪花:ごくごくと水を飲んで
椿尾 輪花:「……葛野さん。私、あなたのこと嫌いよ」
葛野 くるみ:「え!」ショックを受ける。
椿尾 輪花:「私より演技が上手で、私より見た目が良くて、私とおんなじで誰とでもヤるくせに……自由で、楽しそうで、いつも笑ってて」
椿尾 輪花:「でもまあ、今は……」
椿尾 輪花:「誰とでもヤることはなくなったみたいだから、そこを引いて……」
椿尾 輪花:「……もっと良い演技をするようになった気がするし、恋人までいるから」
椿尾 輪花:「さらに嫌いだわ」
葛野 くるみ:「………」
葛野 くるみ:「……………」フッ、と噴き出す。
葛野 くるみ:「あっはっはっは!結局嫌いなんじゃん!ウケる!」
椿尾 輪花:「何笑ってるのよ。嫌いって言ったのに」 こちらも薄く笑っている
葛野 くるみ:「ねー仲良くしようよー!ダブルデートしよ!ダブルデート!」
椿尾 輪花:「余裕なんだから。恋人いるから?」
葛野 くるみ:「うん」
椿尾 輪花:「最悪」
葛野 くるみ:「あはははは!ダブルデートしようよー!」
椿尾 輪花:「うるさい。いない。いないって言ってんでしょバカ」
椿尾 輪花:「ちょっと御薗橋さん! この子なんとかしなさいですよ!」
椿尾 輪花:「責任持つって言ったでしょ! 神妙な顔で!」
葛野 くるみ:「ねー、幸音ちゃん暇かなー?呼ぼ~よ~~」
御薗橋七葉:「いやぁ。もうこうなったら……」肩を竦める。
椿尾 輪花:「持ててないし、責任……!」
御薗橋七葉:「……そろそろ行きましょうか。立てます?椿尾さん」
御薗橋七葉:言いつつ、抱え上げて背に負う。
椿尾 輪花:「や、ちょ。立てる。立てますからあ……」
御薗橋七葉:「くるみ、あんたはピーマンも食べなきゃ駄目」
葛野 くるみ:「えー。めちゃ見てるしー」
【Middle latter half/藁科サイカ】
GM:ミドル後半 4手番目 シーンPCは藁科さんです
GM:誰を指名しますか?
藁科 サイカ:椿尾 輪花さんを指名します
藁科 サイカ:おいでおいで
椿尾 輪花:よっしゃ やったる
GM:ではメインシーンは藁科さん 椿尾さん サブシーンは四条さん 葛野さん 御薗橋さんになります
椿尾 輪花:初公演の日が決まった。
椿尾 輪花:まだ調整の可能性があるので、内々でのことだ。知っているのは自分と座長、一部の事務系人員のみ。団員にもセルメンバーにも知らせていない。
椿尾 輪花:だがそれでも、『初公演の日が決まる』、という所までこぎつけたことには、劇団として大きな意味があった。
椿尾 輪花:無論、それまでにしなければならないことは山積みだ。劇団"ラオペ"としても、"ラオペ"セルとしても。
椿尾 輪花:……今日は久方ぶりの全体練習である。団員のほとんどが参加する。
椿尾 輪花:椿尾輪花も、今日ばかりはきちんと体調を整えて、練習に向けた準備を整えている所であった。
藁科 サイカ:この日の練習場は、貸し会議室。……時間単価の安さとアクセスの良さが魅力だ。椅子もある。
藁科 サイカ:長机は少々邪魔だが、畳んで部屋の端に寄せてしまえばいい。
藁科 サイカ:その前準備を見込んだ集合時間より、更に幾分か早い時間──つまり、今。
藁科 サイカ:会議室の中央には椅子が二組だけ、向かい合うように置かれている。
藁科 サイカ:「どうぞ、どうぞ。……掛けたまえ、と促そうかと思ったのだが」
藁科 サイカ:「ギヨームはそこまで丁寧な男ではないな。座れ、と雑に言う方がいいかな?」
藁科 サイカ:心なしか頬がこけ、目の下に色濃い隈。……アルコールの匂い。
藁科 サイカ:そのくせに眼光だけはぎらぎらとするどい女が、ひとつの椅子に腰掛けていた。
椿尾 輪花:「先に予習を始めたかったの?」
椿尾 輪花:長いスカートの腿を押さえて腰を下ろす 「あなたに今必要なのは、休息のように思うけど」
藁科 サイカ:「そういう輪花はどうなんだい。他人の三倍は面倒ごとを抱えるような気性で」
椿尾 輪花:「面倒ごとばかりです。でも、一番大変な時期に比べれば、今は大丈夫」
椿尾 輪花:「何だってそう。一番肝心で、力が必要で、方向を間違えちゃいけないのはスタート地点。そこを切り抜けられれば、割合どうにかなるものです」
藁科 サイカ:「方向ねぇ」
藁科 サイカ:両足を広く床に置いて、膝に肘を重ねて前のめりになった。
藁科 サイカ:「俺達は間違えずにやって来れたと思うかい、輪花」
椿尾 輪花:少し笑って小首を傾げる 「どこからの話?」
藁科 サイカ:「こけら落としから、ではどうだい」
藁科 サイカ:同じ方向に、がくん、と首を傾けた。
藁科 サイカ:真似たというには少し、操り人形のような動きだった。
椿尾 輪花:「だったら、ええ。間違いはあったでしょうね」
椿尾 輪花:「半年前の分裂は一番大きな間違いの結果。そこまでにいくつもの間違いが積み重なってきた」
椿尾 輪花:「今だって、私の気付けない『間違い』が積み重なっているのかも」
藁科 サイカ:「誤解しないで欲しいが──そして、別に意外じゃないかも知れないが」
藁科 サイカ:「俺はたぶんラオペの中でも、特に輪花を信用してる側だと思うぜ」
藁科 サイカ:「いや、信仰してると言った方がいいのかな」
椿尾 輪花:「信仰」
藁科 サイカ:戯れるように両手を合わせ、伏し拝むように額まで掲げた。
藁科 サイカ:「理解とか共感とかは、人間が人間に向けるものだろう。俺はどうにも」
藁科 サイカ:「君を同じ人間じゃあなくて、失敗などしない完璧な、なにか別の生命体であると信じていたような気がするよ」
椿尾 輪花:「それは」 また笑う 「評価してくれていたのね」
藁科 サイカ:「しかりだとも。だが、俺は──」
藁科 サイカ:拝む手が解かれて、コートのポケットを探る。
藁科 サイカ:コンビニで売られているような、どこのブランドとも付かぬウイスキーの小瓶を引きずり出し、蓋を開けて飲み口を咥える。
藁科 サイカ:ぐっ
藁科 サイカ:と、傾けて喉を鳴らして、
藁科 サイカ:「──幸音との顛末は見てたと思うけど。感想はあるかい?」
椿尾 輪花:「辛そうでした」
椿尾 輪花:「あなたも、四条さんも。あの日も、その前も、その後も、あなたは……」
椿尾 輪花:「彷徨っているように見える」
藁科 サイカ:「亡霊だからだろうなぁ、それは」
藁科 サイカ:「ふわふわと浮かんで、大地を踏みしめる事がない。よすがが無いのさ」
椿尾 輪花:「比喩でしょう。まだあなたには膝から先がちゃんとあります」
藁科 サイカ:「ならば無いのは踏むための地面だな」
藁科 サイカ:「……輪花。君はどうだい。俺は聞いてみたい」
藁科 サイカ:小瓶の蓋を閉める──ふと思いついたように、手を伸ばして瓶を差し出してみる。
椿尾 輪花:それを受け取る。蓋は開けない
椿尾 輪花:「……現実として、私は計算や死を超越した神様みたいなものではありませんから」
椿尾 輪花:「単純なんですよ。私の方向性は」
椿尾 輪花:「生きたい。死にたくない。獣みたいに駆り立てられて、獣みたいに持っているものを全て使って……」
椿尾 輪花:「……ほんの少し、私が救われるものでそれを飾って。できたのが"ラオペ"です」
椿尾 輪花:「私は救われているんですよ。ここで。だから迷わず歩くことも、できているのかもしれない」
藁科 サイカ:「ならば君が踏みしめて立つ大地は、ラオペなのだろう」
藁科 サイカ:帰って来ない酒へ、ほんの少し未練の目を向けながら、
藁科 サイカ:「……俺達みんなが愛した居場所だ」
藁科 サイカ:美女に恋焦がれた男のように、せつなく言葉を吐いた。
椿尾 輪花:「ええ。そうでれば私も嬉しい」
藁科 サイカ:「たぶん、ここまでなら俺と君とは、正しくわかり合って肩を組み……ということも出来たのだろうなぁ」
藁科 サイカ:「けど、ここから先だ。俺達はたぶん、ラオペという存在の定義を別にしてしまった」
藁科 サイカ:「家族を構成しうる最低人数は二人だと、俺は考えている。一人じゃあ家族じゃなく、ただの個人じゃないかってね」
藁科 サイカ:「……俺の方ばかり質問して申し訳ないね。飲むかい、それ」
藁科 サイカ:顎をしゃくるようにして、小瓶を示す。
椿尾 輪花:「ここ、飲酒禁止です」 にべなく返す
藁科 サイカ:「ちぇっ。こんなところでまで方向性が会わない」けらけらと笑って仰け反った。……酔人に特有の上機嫌。
藁科 サイカ:反った背が、ぐうっとしなって戻ってくる。
椿尾 輪花:「……あなたは大地だと言いましたが」
椿尾 輪花:「本当に失っているのは、立って歩くための筋力なんじゃないんですか」
椿尾 輪花:「しかも、それは本当に綺麗に消えてしまったわけではなくて……」
椿尾 輪花:「痺れているだけなのかもしれない。……もちろん、正しくはどうなのか、私には分かりません」
椿尾 輪花:(きっとあなたにも) 最後の言葉は、口には出さない
藁科 サイカ:「ははっ、手厳しいなぁ。けれど何処か、今までより甘やかされてるような気もするよ」
藁科 サイカ:「俺としてはさ、偏らせてるつもりなんだ。その、筋力って奴を」
藁科 サイカ:「人間としちゃあ、見てられないようになったかも知れないが。役者としてはだいぶ研ぎ澄まされてきたと思う」
藁科 サイカ:「けど、もう少しなんだよなぁ……。もう少しで俺、完全にギヨームになれそう」
藁科 サイカ:「……ああ。言っておくけど、シルヴェストルを殺そうとかはしないぞ。そこは誤解するなよ」
椿尾 輪花:「…………」 目を細める
藁科 サイカ:「あのな、リーダー。君に人間の心理を説くのは、それこそ釈迦に説法か、関羽の前で薙刀を振るうようなものかも知れないが」
藁科 サイカ:「人間って奴には理性と感情の二つがあって、この二つは必ずしも同じ方向を見ちゃくれないようなんだ」
椿尾 輪花:「ええ、そうですね。それは人間の持つ根本的な苦しみの一つだと思います」
藁科 サイカ:「今は割と理性の方が働いてるから、君の思いやりも良く分かる。君の正しさも。だがね」
藁科 サイカ:「明日には俺は、同じ口から君を罵るかも知れないよ。……そう心を砕くものじゃあない」
藁科 サイカ:「いくらなんだって疲れるだろ、君」
椿尾 輪花:「構いませんよ、別に」 酒瓶を弄ぶ 「今は割と、それを聞いてあげる余裕もありますし」
藁科 サイカ:「なんだい。恋人でも出来たの?」
椿尾 輪花:「言ったでしょう。"ラオペ"が動き出したって。だから余裕があるっていう、それだけです」
椿尾 輪花:「……でも、感情の操り人形になるような方は、舞台には上げられない」
椿尾 輪花:「舞台を回すのは脚本です。舞台に立つのは俳優です」
椿尾 輪花:「『完全にギヨームになれそう』?」
椿尾 輪花:「私が、御薗橋さんが、"ラオペ"が求めるのは、藁科サイカという演者であって、ギヨームごっこをする女じゃあない」
椿尾 輪花:「その辺り、あなたはどう思っているんですか?」
藁科 サイカ:「そこはもう、芸術論の解釈の問題だな。きっと何年も掛けて討論するべき話題だろう」楽しげに両脚を組んだ。
藁科 サイカ:背筋が伸びる。目の隈が無ければ、普段と同じ姿なのだろうに。
藁科 サイカ:「少なくとも、今、ラオペの中で俺よりギヨームを上手くやれる奴はいないよ」
藁科 サイカ:「これだけは、くるみでも無理だ。無論君だろうとも」
椿尾 輪花:「そうでしょうね」 首を傾げ、その目を覗き込む 「今までずっとあなたがギヨーム役を練習してきたんですから」
藁科 サイカ:「ははっ、甘く見られたなぁ」
藁科 サイカ:「そんな生ぬるい事は言わないさ。練習期間が同じだったとして、或いはその誰かが、俺より倍も練習してたとして」
藁科 サイカ:「それでも今の俺は、勝つよ」
藁科 サイカ:「そういうつもりで、今を生きてる」
椿尾 輪花:「自負があって良いことです。あなたが演者であれるなら」
椿尾 輪花:「何も変わることはない。劇団内での人間トラブルなど些末です。『シルヴェストル』は予定通り公演されるでしょう」
椿尾 輪花:「そのために必要なことが、私に対する憂さ晴らしくらいであれば、お付き合いします。お酒だって飲みましょう」
椿尾 輪花:「飲酒が禁止されていない所で」
藁科 サイカ:「おいおい、憂さ晴らしとは物騒な言い草だな。……まあ否定できないところはあるから仕方がないが」
藁科 サイカ:「これでも俺は今日、珍しく、俺が死んだ後のことを考えて君を呼び出したんだぜ」
藁科 サイカ:「君が生み出したラオペの先行きを予想する、たった一つの、本命の問いの為だけに」
椿尾 輪花:「"ラオペ"の先行きか……」
椿尾 輪花:「良いですよ。何ですか?」
藁科 サイカ:「さっきの話の続きになるかな。ラオペという存在の定義の食い違いだ」
藁科 サイカ:「つまり──君が定義する、ラオペと呼べるものの最小単位とは何か?」
藁科 サイカ:「これは、ラオペはどこまでを失っても尚ラオペであると呼べるのか。そう言い換えても良いのだろうね」
椿尾 輪花:「劇団"ラオペ"であれば」
椿尾 輪花:「明白ですね。公演です。なにせ劇団ですので。公演を成立するための人員・資金・社会的信用。そういったものを充足していれば、これは劇団"ラオペ"と定義し得るでしょう」
椿尾 輪花:「ただし、あなたが"ラオペ"というセルのことを話したいのであれば……」
藁科 サイカ:頷く。歌劇を鑑賞する客のような、鷹揚なそぶりで。
椿尾 輪花:「……」 目を閉じる。黙考する。演技演出の類ではなく、そんな定義なんて日々から考えている訳ではなかったからだ
椿尾 輪花:椿尾輪花の生は獣である。生きるための選択肢として、己の能力を使い、死を遠ざけるように動いてきた。
椿尾 輪花:そのための結実が"ラオペ"であるのなら、その定義は『椿尾輪花を生かす』ことだけだと言えるだろう。いや、スタート地点では現実、そうだったに違いない。
椿尾 輪花:だが、今は。
-:『……今の僕にとって、生きるってことは』
-:『明日に希望があるってことだ』
椿尾 輪花:「……希望を」
椿尾 輪花:「持てていることです。この場所にいて……劇団に関わることで」
椿尾 輪花:「それが何だって良い。舞台の上に立つことでも、舞台を作ることでも、あるいは単純な戦闘要員としてですら」
椿尾 輪花:「このセルにいる限りは、そうであって欲しい。だから、はい。聞かせてください」
藁科 サイカ:「出来うる限り正直に、誠実に答えようとも」
椿尾 輪花:「今、あなたは何を希望できますか?」
藁科 サイカ:「……………………」
藁科 サイカ:両腕を組み、首を捻る。
藁科 サイカ:脚を組んだまま、片方の踵が床をぱたぱたと打つ。
藁科 サイカ:「俺が〝希望する〟ことは、何もかも幸せな瞬間のままで固まってしまうこと」
藁科 サイカ:「だけど」
藁科 サイカ:「〝希望できる〟かぁ……そうだなぁ」
藁科 サイカ:「リーダー。君と俺とは、こう……思想やら哲学やらが、驚くほど噛み合わないだろう?」
椿尾 輪花:「ええ」
藁科 サイカ:「だからさ。俺と全く気が合わない奴は、君と仲良くやってけると思うんだよ」
藁科 サイカ:「どうも最近、俺は皆に嫌われてばかりでね。だから」
藁科 サイカ:「きっと君は、皆と仲良くやっていけるさ」
藁科 サイカ:「俺が綺麗さっぱりいなくなった後に、俺が欲しかった形とはちょっと違うものになってるんだろうけど」
藁科 サイカ:「それでも、穏やかで変わらない日常みたいなものの中で、君達が生きてけるというなら……たぶんそれは、希望なんじゃないか?」
藁科 サイカ:「……というのが、今日の俺の考え。明日の俺のことは保証しない。どう?」
椿尾 輪花:「一つだけ修正しなければいけない所があるとしたら」
椿尾 輪花:「あなたは別に、嫌われはしていませんよ。今は、まだ、おそらく」
藁科 サイカ:「君は安楽死用の毒薬だなぁ、輪花」
藁科 サイカ:「あんまりに優しすぎて、むしろ不安になるじゃないか。……悪いものでも食べたかい?」
椿尾 輪花:「神様ではありませんからね。死後のことなんて約束できません」
椿尾 輪花:「私はずっと優しいですよ。変わってなんかいない。ただ、必要な時にしかそれを表に出さないだけです」
藁科 サイカ:「ちぇっ。だったらもう少し早く、君に甘えておくんだった」
藁科 サイカ:「……だが、まあ。手遅れにならなくって良かったよ」
藁科 サイカ:ロイスを取得します。
藁科 サイカ:椿尾 輪花 ○幸福感/脅威
椿尾 輪花:「……死にたくない。生きたい。それが私のスタート地点ではありますけど」
椿尾 輪花:「それでも私がいずれ死ぬことは分かっています。本当に恐れているのは、望みのない死」
椿尾 輪花:「……努力しますよ。死の手前までの間なら、あなたに、希望を」
藁科 サイカ:「ありがとう、輪花。……それじゃあ、俺ももう少し頑張るよ」
藁科 サイカ:ロイスを取得します。
藁科 サイカ:〝演劇〟 ○幸福感/決死
藁科 サイカ:「最期の舞台を」
葛野 くるみ:どんな状態でも稽古は続いている。その日も稽古を終えた後、居合わせたメンバーで食事をすることになった。
葛野 くるみ:市内に何店舗かあるファミリーレストラン。その片隅のボックス席に、3人で腰掛けていた。
御薗橋七葉:「はぁ……」疲れた様子で息を吐く。
葛野 くるみ:「え、何、お疲れ?」その横で顔を窺う。
四条 幸音:「お疲れさまです。……大丈夫ですか?」
御薗橋七葉:「……元々、演技までやる予定じゃなかったもの。当然だけど……」
御薗橋七葉:シーフードサラダをつついて。「分かってはいたつもりだけど、本当に大変ね、これ」
四条 幸音:「……なんだか、前と逆ですね」
御薗橋七葉:「逆?」
葛野 くるみ:「何がー?」オムライスをスプーンですくいながら。
四条 幸音:「ほら、前にもご飯食べに行ったじゃないですか。椿尾と三人で」
葛野 くるみ:「へー、あたし知らない、その話ー」
御薗橋七葉:「ああ、回転寿司」
御薗橋七葉:「椿尾さんがはしゃいでた時」
四条 幸音:「そうそう」
四条 幸音:思い出してクスクスと笑う。
四条 幸音:「あのときは僕が御薗橋さんに心配されてる側だったので……」
御薗橋七葉:「そうね。確かに逆かも」微笑する。以前より表情が柔らかくなった。
葛野 くるみ:「えーー」くすくす笑う。「ねえそれ幸音ちゃん、自慢?」
四条 幸音:「……へ?自慢って、何が?」
葛野 くるみ:「え、だってそれ。輪花ちゃんがはしゃいでたのって、絶対幸音ちゃんとゴハンできてたからでしょ」
四条 幸音:「僕としてはその、前にこういう感じでお世話になったから」
四条 幸音:「今度は僕がお返ししますね、ってつもりだったんだけど……ええ?」
葛野 くるみ:「やーん、幸音ちゃんやっぱ超良い子ー」ニコニコしている。
御薗橋七葉:「……どうかしらね。あの時からもう?」
御薗橋七葉:赤ワインをぐいぐい飲む。
四条 幸音:「いや、もうって……何の話ですか、二人共」
葛野 くるみ:「えー大丈夫だよー、あたし達も付き合ってるからー」
葛野 くるみ:「女同士だからどうこう、とか全然言わないからー」
葛野 くるみ:「ねー」機嫌よく足をぷらぷら揺らしながら七葉ちゃんに言う。
御薗橋七葉:「んん……」
御薗橋七葉:「……まあ、そうね。そういうことになりました」
御薗橋七葉:少し居心地悪そうに視線を泳がせる。
四条 幸音:「別に椿尾は、そういうつもりじゃ……ん、へ?」
四条 幸音:「あっ……えっ」
四条 幸音:パスタをつついていた手が止まる。
四条 幸音:「そっ……そうなんですか?」
葛野 くるみ:「そうー!えへへ、付き合うことになったのー!恥ず~」
四条 幸音:「そういえばやけに二人、やけにこう……近いというか……」
四条 幸音:「えらいくっついてるな、とは思ってたけど……」
御薗橋七葉:「……そんなことは……」咳払いして。
御薗橋七葉:「……別に……劇団に関して何かが変わるわけじゃないから、四条さんが気にすることはないですよ」
御薗橋七葉:言いつつ、頬が少し上気している。
葛野 くるみ:「えー、見てるとこがエッチー」
四条 幸音:「だ、誰がっ!」
四条 幸音:「……ええっと」
四条 幸音:「その、こういうこと聞くのは本当に失礼だと思うんだけど」
葛野 くるみ:「ふふー」くすくすと笑う。「ん?なに?」
四条 幸音:「葛野。それは……」
四条 幸音:「ずっと御薗橋さん一人と……ってことで、良いの?」
葛野 くるみ:「うーん」
葛野 くるみ:視線を七葉ちゃんに動かす。
御薗橋七葉:こちらもくるみを見たところだった。視線がぶつかる。
葛野 くるみ:「ずっと、いてくれる?」
御薗橋七葉:「何回言わせるのよ」
葛野 くるみ:「うふふふふ」少女のように、パッと笑う。「ずーーーっと言ってもらう!」
御薗橋七葉:やわやわと机上の手を触れ合わせ、一本ずつ指を絡ませ合う。
御薗橋七葉:「もう……」困ったように、幸福そうに笑う。
葛野 くるみ:「……あっ、……」瞬きして、頬を赤らめる。「えへ」
四条 幸音:「わ、わっ」
四条 幸音:想像していた以上の光景に両手で顔を覆う。
四条 幸音:「ご、ごめん。ごめんなさい。よく……よーくわかりました」
四条 幸音:「無粋だったね……うん」
四条 幸音:「じゃあ、えっとその、改めて」
四条 幸音:「二人共、おめでとう。……末永くお幸せに」
御薗橋七葉:「……ありがとうございます、四条さん」
葛野 くるみ:「うんっ、ありがとー、幸音ちゃん」頬を赤く染めて、はにかんで笑う。
御薗橋七葉:「……ごめんなさい、何か……その……」恥ずかしそうに、申し訳なさそうに手を離して「目の前でいちゃついてしまって……」
御薗橋七葉:「そういうつもりでは……」
四条 幸音:「いえ。……二人共、前よりずっと柔らかくて、楽しそうだから」
四条 幸音:「僕は嬉しいですよ。お気遣いなく」
葛野 くるみ:「あ、でも、でもだよ」
四条 幸音:「……ん、なに?葛野」
葛野 くるみ:「…………」唇を尖らせて、机の下で、自分の足先を七葉ちゃんの足に絡ませる。
葛野 くるみ:「…あ、えっとね」
御薗橋七葉:何事かと一瞬くるみを見る。
葛野 くるみ:「舞台上では、あたしはシルヴェストルにメロメロになるから」
葛野 くるみ:七葉ちゃんには視線を向けず、机の下で求めるようなスキンシップを続ける。
葛野 くるみ:「だからホントに、幸音ちゃんと仲良くなりたいんだよー、あたし」
四条 幸音:「僕と……?」
四条 幸音:机の下の絡み合いには気づかず、きょとんとした顔をする。
葛野 くるみ:「うん…ダメ?」こちらも首を傾げる。
御薗橋七葉:「……」こちらもそれ以上視線は向けず、さりげなく片手を椅子の上に下ろして、くるみをつつく。
葛野 くるみ:(や)柔らかい太腿がぴくんと揺れる。(触られて分かるとこ触る……)
四条 幸音:「それは、えっと……その。僕でよければ……」
四条 幸音:「あっ、でも」
葛野 くるみ:「…なに?」
四条 幸音:「その……我儘だし、あんまり変わらないって言われたらそうかもなんだけど」
四条 幸音:「舞台やお芝居のこと抜きにしても、仲良くなりたいよ、僕」
四条 幸音:「葛野とも、……御薗橋さんも、良ければ」
葛野 くるみ:「………」
御薗橋七葉:「……ふふ」笑う。
葛野 くるみ:「……ホント?」
四条 幸音:「う、うう……ホント!」
四条 幸音:「やだ、これ、結構恥ずかしいんだけど……!」
葛野 くるみ:「えーーっ」嬉しさを押さえきれず、七葉ちゃんにしがみつく。「あたしは超嬉しいー!」
御薗橋七葉:それを受け止めて「私もですよ、四条さん」
四条 幸音:「御薗橋さん……」
御薗橋七葉:ほうれん草とベーコンのソテーを注文して「……くるみは意外と予防線張るのよね」
葛野 くるみ:「え、え、なにそれなにそれ」
四条 幸音:「予防線?ですか?」
御薗橋七葉:「理由なんて無くても、世の中の99%の人は舞台もセックスも無しで仲良くなってるの」
葛野 くるみ:「………」
葛野 くるみ:「そう言われてもさあ…」言葉に詰まったようにオレンジジュースを口に運ぶ。
四条 幸音:「……ああ、そっか。さっきのも」
四条 幸音:「僕の方にも仲良くなりたい理由がなきゃ……って、思ってくれてたの?」
葛野 くるみ:「……うん」間違いを指摘された子供のような顔。
葛野 くるみ:「やじゃん?好きになって裏切られるのとか、そういう事気にしてマジになるのとか」
四条 幸音:「……うん」
葛野 くるみ:「友達って、そういうのも良く分かんないし。それなら、ヤってお互い楽しいねーみたいな方が」
葛野 くるみ:「あたしは楽だったし、分かりやすかったの」
四条 幸音:「安心できる?」
葛野 くるみ:「それかもー」
四条 幸音:「でも、過去形なんだね」
葛野 くるみ:「…そうだけど、…んん、分かんないよ、あたしが丸っきり何もかも変わったかなんて」
御薗橋七葉:「……変わってるよ、くるみは」
御薗橋七葉:「変わってるし、これから変わっていくと思う」
御薗橋七葉:穏やかな表情で髪を撫でる。
葛野 くるみ:「ねーこれ超恥ずー」照れたように七葉ちゃんの手を押しのけようとする。
四条 幸音:「うん、僕もそう思う。……でも自分だとわかんないし、怖いよね」
四条 幸音:「変わろうとしてるって自分に言い聞かせてるだけなのかも……って不安になったりとかさ」
葛野 くるみ:「……体験談?」
四条 幸音:「……うん。葛野の感じてるのとは、ちょっと違うのかもしれないけど」
四条 幸音:「実は僕もさ。さっき、結構怖かったよ。二人となかよくなりたい……って言うの」
四条 幸音:「自分にちゃんと良い友だちやれるのか、とか。拒絶されないかとか……」
御薗橋七葉:「私もですよ。友達少ないし……」
葛野 くるみ:「分かるよー。あたし友達欲しいのになんか嫌われるからさー」
四条 幸音:「正直僕も予防線とか、張りたくなった。……でも」
四条 幸音:「葛野さ。昔から僕にもよく話しかけてくれたじゃない」
四条 幸音:「くっつくなって言ってもすぐべたべたしてきたし」
葛野 くるみ:「してたー」照れ笑う。
四条 幸音:「あれね。面倒だなーって思ってた」
四条 幸音:「怖かったからさ、人と話すのとか、関わるの」
葛野 くるみ:「ふふ」
葛野 くるみ:「過去形じゃん?」
四条 幸音:「……そうだね」
四条 幸音:「うん。それも、半分本当だけど」
四条 幸音:「嬉しかったよ。僕、寂しかったから」
四条 幸音:「葛野にそのつもりがあったのかわかんないけど……一杯救われてたなー、って思って」
葛野 くるみ:「……」ぱちぱちと瞬き。
四条 幸音:「きっと、他にも一杯あるんだ。知らないうちに助けられて、支えられてたの」
四条 幸音:「だから皆と仲良くなって、そういうこと一杯知って」
四条 幸音:「恩返ししたいの」
御薗橋七葉:「四条さん……」
御薗橋七葉:「こんなソドムのような劇団でよく……」
葛野 くるみ:「ソドムってなに?」
四条 幸音:「そ、そんな、ひどっ……」
四条 幸音:「……い、と言えなくもないかもですけど!」
葛野 くるみ:「あのさー、こないだお風呂でさー、幸音ちゃん、あたしに聞いたじゃん」
四条 幸音:「……ん?」
葛野 くるみ:「これからどうなりたいんだーって」
四条 幸音:「……うん」
葛野 くるみ:「あの時、あたし、幸音ちゃんがあたしに何を聞きたいのかホントわかんなくて」
葛野 くるみ:「だから、自分でもわかんないことあたしに聞くなって思って…超怒ったんだけど……、でも」
葛野 くるみ:「見つかったんだね。幸音ちゃんの、やりたいこと的なやつ」
四条 幸音:「うん」
葛野 くるみ:「なんだー」ケラケラと笑う。
葛野 くるみ:「あたし達みんな、変わっちゃうじゃん」
四条 幸音:「きっと、そうだね。……怖い?」
御薗橋七葉:「くるみは、変わるのが嫌?」
葛野 くるみ:「ふふふ」同時に同じこと聞かれて、面白そうに笑う。
葛野 くるみ:「んーん!みんな変わっちゃうなら別に良いんじゃない」
四条 幸音:「……うん」
四条 幸音:視線を落とす。
四条 幸音:「みんな……か」
御薗橋七葉:「……四条さん?」
葛野 くるみ:「だいじょぶ?」
四条 幸音:「ん……ごめん」
葛野 くるみ:「…サイカくん?」
四条 幸音:「……うん」
御薗橋七葉:二人を見て「藁科さんが、何か?」
葛野 くるみ:「うんとね、サイカくんは、みんな変わらないでいたいんだって」
葛野 くるみ:「サイカくん、一年後くらいに死んじゃうらしくて、それまでは今の関係のままでいたいって言ってて」
御薗橋七葉:「一年後って……」まるで知らなかった事実に動揺する。
御薗橋七葉:「……本当なの?」
四条 幸音:「……はい」
四条 幸音:「見ましたよね、あいつの戦い方。……あんな無茶をしてるから」
四条 幸音:「戦いが続けば、もしかしたらもっと早く……」
御薗橋七葉:「……そんな……」
御薗橋七葉:言葉を失う。藁科サイカのことは、セルに入る以前から“ラオペ”の俳優として知っていた。
葛野 くるみ:「…あたし、あれから全然喋ってないんだけどさ」
葛野 くるみ:「幸音ちゃんは、サイカくんと何か話した?」
四条 幸音:「……こないだ、思いっきり喧嘩した」
四条 幸音:「僕は、あいつの言うように……変わらないことはできない、って」
葛野 くるみ:「えー」目を丸くする。「幸音ちゃん、喧嘩とかするのー?」
御薗橋七葉:「四条さんと藁科さんが……」
四条 幸音:「ああ……そうだね。喧嘩とか、すごい久しぶりかも」
四条 幸音:「でも、譲れなかったから。……それに、」
四条 幸音:「嘘ついたり、ごまかしたり……そういうのも、したくなかった」
四条 幸音:「変わるのが嫌だ、ってあいつは言ってたけどさ」
四条 幸音:「もしかしたら、その先の……希望とか、願いとか。そういうのは違うかもしれなくて」
四条 幸音:「それを見つけて、向き合って……できれば良いと、思うんだけど」
葛野 くるみ:「うーん」首を傾げる。
御薗橋七葉:「……難しい、ですね」
四条 幸音:「……うん。難しいね」
葛野 くるみ:「サイカくん、皆にも一緒に死んで欲しいって言ってたくらいなんだよー」
御薗橋七葉:「……そこまで?」
葛野 くるみ:「言ってたよねー」幸音ちゃんに。
四条 幸音:「うん。本当は一緒に死んでほしいけど、それはできないだろうから……って」
御薗橋七葉:「気持ちは、分からなくもないけどね……」ワインをくゆらせる。
御薗橋七葉:「うぅぅううん……」唸る「大丈夫かな、舞台……」
葛野 くるみ:「あはははは」ケラケラと笑う。「そこかよー」
四条 幸音:「あぁっ……ごめんなさい、ただでさえ大変なのに、また負担を」
御薗橋七葉:「いえ。私より大変な人は他にいますしね」
四条 幸音:「……椿尾ですか?」
御薗橋七葉:頷く。
葛野 くるみ:「ふっ……」面白そうな顔。
御薗橋七葉:「……藁科さん本人の為にも」
御薗橋七葉:「成功させたいな、舞台」
四条 幸音:「やりましょう」
葛野 くるみ:「うん」笑う。「楽しみ」
四条 幸音:「……うん」
四条 幸音:「楽しみ、だね」
【Middle latter half/椿尾輪花】
GM:ミドル後半 最後の手番 シーンPCは椿尾さんです
GM:誰を指名しますか?
椿尾 輪花:おっと、すみません
椿尾 輪花:四条さんを指名します
四条 幸音:よろしくお願いします
GM:ではメインシーンは椿尾さん 四条さん サブシーンは葛野さん 藁科さん 御薗橋さんになります
四条 幸音:葛野 くるみ ◯P:友情 N:隔意
四条 幸音:御薗橋七葉 ◯P:信頼 N:劣等感
四条 幸音:ラオペ ◯P:尽力 N:不安
四条 幸音:地下へと降りる階段を軽い足取りで降りていく。
四条 幸音:"ラオペ"セルの中心、応接スペースの扉の前で停まり、控えめにノック。
四条 幸音:「お邪魔します。来たよ、椿尾」
四条 幸音:自分を呼び出したこの部屋の主へと声をかけ、中に入る。
四条 幸音:……返事は来ない。静かな部屋に換気扇の音だけが響く。
四条 幸音:「……椿尾?」
四条 幸音:もう呼び出された時間のはずだ。 そも常の彼女なら、時間に余裕を持って待っているはず。
四条 幸音:「……まさか」
四条 幸音:「(ずっと忙しかったし、どこかで倒れでもしてるんじゃ……)」
四条 幸音:逸る足取りで姿を探し……案外に楽にその姿を見つける。
椿尾 輪花:休憩室、と名打たれたその部屋には、小さなテーブルとソファだけが置いてある。
椿尾 輪花:倉庫にするような小さな空間だったが、椿尾がそこを休憩、あるいは緊急医療のためのスペースにしたのだ。
椿尾 輪花:「すう…… …………」
椿尾 輪花:その部屋で、少女が、浅い寝息を立てている。古いソファに横たわり、身体にタオルケットだけを掛けて。
椿尾 輪花:人形のような寝顔だ。穏やか、とは言い難い。しかしうなされているような様子もない。
椿尾 輪花:ただ眠っている。
四条 幸音:「……はあ、もう」
四条 幸音:力が抜けて、胸を撫で下ろす。
四条 幸音:「……休んでるのは良いことだけど。もうちょっとちゃんとしたとこじゃないと、身体痛めるぞー」
椿尾 輪花:「ん……」
椿尾 輪花:言葉にならない声を漏らしながら、もぞりと身じろぎする。
四条 幸音:「せめてもうちょっと暖かくしなさいよね……」
四条 幸音:小さく小さくつぶやきながら、引っ張り出した毛布をかける。
椿尾 輪花:「……ん、ん」 そうされると、少しだけ穏やかな表情になって
椿尾 輪花:それから、長い睫毛が重たげに、うっすらと目を開く
四条 幸音:「……ん」
椿尾 輪花:「あ……」
椿尾 輪花:「しじょう、さん」
四条 幸音:「ごめん。起こしちゃった?」
椿尾 輪花:ぼんやりと瞬きしながら 「いえ……えと……」
四条 幸音:「まだ寝てていいよ、急ぐことじゃなければ」
椿尾 輪花:徐々に状況を把握していく 「いえ……いえ。その、ごめん……ごめんなさい」
椿尾 輪花:「待たせてしまいました、ですか」
四条 幸音:「いいって。いつもは僕の方が待たせてるでしょ」
椿尾 輪花:「いえ。いいえ、ごめんなさい……ちょっと油断、してましたね」
椿尾 輪花:まばたきしながら軽く首を振って、それから四条さんの顔を見上げる 「……ふふ」
椿尾 輪花:「なんか、新鮮です。四条さんを見上げるの」
四条 幸音:「そりゃ、いつもは僕のほうが見上げてますからね」
四条 幸音:拗ねたような口ぶりで顔をそむける
椿尾 輪花:「ふふ。ごめんなさい、四条さん。謝りますから」
椿尾 輪花:腕を伸ばす 「もっと見せて」
四条 幸音:「もっと……? うん」
四条 幸音:伸ばされた手を受け入れる。
四条 幸音:「……ねえ、別に僕、怒ってないよ?」
椿尾 輪花:「……怒ってないですか?」 指先で頬を撫でながら
四条 幸音:「ん、いや……見上げるどうこうの話」
四条 幸音:「なんていうか、冗談ですねてみたつもりだったんだけど……」
椿尾 輪花:「それかあ」 くすりと笑って 「心当たり、たくさんあって分からなかった」
椿尾 輪花:「じゃあ、四条さんのこと、小さくて可愛いって言っても良いですか?」
四条 幸音:「難しいや、こういうのも。もっと上手くできたら良いんだけど……」
四条 幸音:「……小さいは余計。可愛いは……」
四条 幸音:「……その」
四条 幸音:「ダメじゃないけど、照れる」
椿尾 輪花:「……」
椿尾 輪花:「可愛い」
四条 幸音:「むう……」
四条 幸音:照れ隠しに、不機嫌そうな声を演じてみる。
椿尾 輪花:「それも可愛い」 やっぱり楽しそうに笑う
椿尾 輪花:「……私ね……」」
四条 幸音:「もう、なにさ。いつまで見てるのよ……」
四条 幸音:「……ん?」
椿尾 輪花:飽きもせず、目の前の少女の頬を撫でている。その瞳を見ている。
椿尾 輪花:「自分のこと、もっと難しい女だと思ってた。気難しい……」
椿尾 輪花:「……人を見る時も、その人がどれくらい役に立つのか、どれくらい自分に肩入れするか、そういうことを考えられるような人間で」
椿尾 輪花:「それで、その人をどう思うのか計算して決めて、その通りに扱える人間だと思ってた」
四条 幸音:「……過去形?」
椿尾 輪花:「ええ。何ていうか、私はもっとそういう奴だって……思ってたのに。駄目なのよね。計算なんて吹っ飛ばして、結果が来ちゃって……」
椿尾 輪花:「つまり、その」
椿尾 輪花:目を逸らす。にわかに紅潮して
椿尾 輪花:「やっぱりあなたが好き」
四条 幸音:「………」
四条 幸音:硬直。
四条 幸音:「す、き?」
椿尾 輪花:「あなたが……あなただって、このセルに来る前、そんなに幸せな人じゃなかった。なかったのに」
椿尾 輪花:「あんまり私に優しいことを言って、辛い時でも希望を口にして」
椿尾 輪花:「……馬鹿みたいでしょう。そんな、本当に簡単なことで、私もう、あなたのことばかり考えてる」
椿尾 輪花:「自分がこんなに、単純な……単純っていうか、その……」
椿尾 輪花:「……」
四条 幸音:「椿、尾……」
椿尾 輪花:手を引っ込めて、もぞもぞと毛布を被る
椿尾 輪花:「どうしてくれるんですか……」
四条 幸音:「う、え……その、」
四条 幸音:「ごめん……じゃ、ない。じゃなくて……」
四条 幸音:胸が痛い、頬が熱い。 なんだろう、これ。知らない。
椿尾 輪花:「……」
椿尾 輪花:ちらっと目から上を出して
椿尾 輪花:「……困ってます?」
四条 幸音:「違う」
四条 幸音:「違う……んだけど、分かんなくて、でも、僕」
四条 幸音:頭がぐちゃぐちゃで、全然分からないけど、きっと
四条 幸音:「嬉しい」
椿尾 輪花:「……!」
四条 幸音:「……って、思ってる」
椿尾 輪花:返された言葉に目を見開いて、またぼすっと毛布の中に引っ込む。
四条 幸音:「ちょ、ちょっと」
四条 幸音:「隠さないでよ」
椿尾 輪花:「だ、だって」
椿尾 輪花:「私、これ……どうすれば良いのか分からない」
椿尾 輪花:「嫌なことはいくらでも我慢して、隠せますけど、こんな、私……」
椿尾 輪花:「顔、見られたくない……」
四条 幸音:「……僕も、全然分かんないけど」
四条 幸音:「君の顔、見たいよ」
椿尾 輪花:「…………」
四条 幸音:「きっと可愛いよ。今の椿尾」
椿尾 輪花:しばしもぞついていたが、やがてゆっくりと身を起こす。タオルケットも毛布も剥がれて落ちて。
椿尾 輪花:長い黒髪は乱れ、顔は両手で隠され、目の辺りだけが少しだけ覗いている。
椿尾 輪花:隠しきれていない耳は真っ赤だ。
椿尾 輪花:「……どうです」
四条 幸音:「……さっきの寝顔もレアだったけど」
四条 幸音:「君のそんな顔、初めて見た」
椿尾 輪花:「可愛いですか」
四条 幸音:「うん」
椿尾 輪花:「うー……っ……!」
椿尾 輪花:顔を隠すようにうつ伏せになる 「信じられない……!」
椿尾 輪花:「こんな、こんな私……私、こんな風になるなんて」
四条 幸音:自分がされたように手を伸ばして、頬に触れる。
椿尾 輪花:「さんざん……ひどいことして。葛野さん並にふしだらなのに……っ」
椿尾 輪花:頬に触れられると、ぴくりと硬直する
四条 幸音:視線を合わせて、じっと見つめて
四条 幸音:「僕は……」
四条 幸音:「僕も、好きです」
椿尾 輪花:「っ」
椿尾 輪花:詰まったように息を呑む。怯えるように目をそらして、またちらりと視線を四条さんへ向けて
椿尾 輪花:「……無理」
椿尾 輪花:「しなくて良い、んですよ。全然……私」
椿尾 輪花:「そんな、四条さんが……四条さんみたいな子に、好かれる人間じゃない……」
四条 幸音:「……無理して言ってるように見える?」
椿尾 輪花:「……分からない」
椿尾 輪花:「してないように見えるけど。そう思いたいという私の、勝手な思い込みかも」
四条 幸音:「……僕も、いつもそう思ってる。自信、ない」
四条 幸音:「おんなじだよ。……君に好かれていいほど、立派な人間なのかって、こわい」
椿尾 輪花:「そんなの……っ……」 言いかけて、止まる。彼女と私、対称して、同じことを口にしている
四条 幸音:「僕も……さ」
四条 幸音:「理由とか、過程とか……計算、上手くできてないんだけど」
四条 幸音:「『生きたい』って思ってる君が、好き」
四条 幸音:「他にもきっとたくさん、たくさんあるけど……それが最初、かな」
椿尾 輪花:困ったように笑って 「そんなの……」
椿尾 輪花:「ずるい……私。それは、それだけは」
椿尾 輪花:「否定、できないじゃないですか」
四条 幸音:「自信、持ってくれた?」
椿尾 輪花:「……もう一個だけ」
椿尾 輪花:「その……」
椿尾 輪花:視線を迷わせて 「……抱きしめてください」
四条 幸音:「……うん」
四条 幸音:腰に手を回して、引き寄せる。優しいというより、弱々しく。
椿尾 輪花:「ああ……」
椿尾 輪花:溜息のように声を漏らして、そっと私を抱きしめる少女の背に、手を回す。
四条 幸音:「んっ……」
四条 幸音:触れ合って、互いの熱が伝わる。
四条 幸音:「……やっぱりもっと、身長欲しかったかな」
四条 幸音:「お互いに立ってたら、こんなふうにするの、大変かも」
椿尾 輪花:すすり泣くように息をしながら、抱きしめる。体温。香り。呼吸。鼓動。その他ありとあらゆる、四条幸音の発するものを感じながら。
椿尾 輪花:「……その時は私が上から、ですね」
椿尾 輪花:「頭をぎゅって。ふふ」
四条 幸音:「うん。……じゃあ、今は僕が」
四条 幸音:「ずっと、ぎゅっとしてるから」
四条 幸音:少しだけ、腕の力を強める。
椿尾 輪花:「……はい」
椿尾 輪花:「そうしてください……そうして」
椿尾 輪花:応じるように、ぴったりと身体を寄り添わせて。
椿尾 輪花:「……好き。好き……四条さん……」
椿尾 輪花:キスもそれ以上の行為もない。有り触れた、幼稚園児でもできるような抱擁に、今はただすがりつく。
四条 幸音:「僕も……好き。好きだよ、椿尾……」
四条 幸音:「……輪花」
椿尾 輪花:「っ……」 ひゅ、と耳元で息を呑む音。ぎゅ、と抱きしめる力がわずかに強まる
椿尾 輪花:そして、誤魔化すような、だけど喜色滲む言葉 「馬鹿……」
四条 幸音:「駄目、だった?」
椿尾 輪花:「……それも馬鹿」
椿尾 輪花:「でも、二人きりの時だけにして」
椿尾 輪花:「頭がおかしくなっちゃいます」
四条 幸音:「うん。……二人で、秘密」
椿尾 輪花:「秘密……秘密です」
椿尾 輪花:「……だから、もう一回言って」
四条 幸音:「あまえんぼ。……輪花」
椿尾 輪花:「……はい」
椿尾 輪花:「輪花です。私」
椿尾 輪花:……幼い日。
椿尾 輪花:初めて見た演劇だった。舞台の上で、男の人が、下賤な生まれの女性を抱きしめて、好きだ、と言っていた。真に迫っていた。
椿尾 輪花:自分もあそこに立てば、そう囁かれることが叶うと知って驚いた。演劇というものへの原初の希望がそれだ。
椿尾 輪花:あれからもう随分と時間が経って、その全てが計算された脚本で、演者と登場人物には何の相関もないことだって理解できて。
椿尾 輪花:それでも、舞台の上に立つことへの希望だけは残った。舞台の上では自分以外のものになれる。自分の生から解放される。夢のようだった。
椿尾 輪花:……だから。だから分からない。
椿尾 輪花:舞台から降りた私が、舞台の上の少女のようになってしまったら、どうして良いか。
椿尾 輪花:本当に何も分からなくて。ただ。
椿尾 輪花:希望の叶うこの舞台を、この劇を止めたくないという確かな熱だけが、赤く、激しく鼓動している。
椿尾 輪花:御薗橋 七葉/○信頼/軽視
椿尾 輪花:葛野 くるみ/○共感/侮蔑
椿尾 輪花:藁科 サイカ/○尽力/隔意
椿尾 輪花:"ラオペ"/○誠意/恐怖
椿尾 輪花:四条 幸音/○幸福感/恐怖
椿尾 輪花:四条 幸音の2個目のロイスをSロイスに指定。
四条 幸音:椿尾 輪花 ◯P:幸福感 N:心配
四条 幸音:Sロイスに指定します。
御薗橋七葉:路地裏に数人の男女が倒れ伏し、呻いている。
御薗橋七葉:“ラオペ”メンバーに対する襲撃は、日に日に苛烈さを増しつつあった。
御薗橋七葉:昼夜も場所も問わず、他セルのオーヴァードからの襲撃が頻発し、面々にはゆっくりと息つく暇も貴重になりつつあった。
御薗橋七葉:この日もレンタルスペースを出てすぐに襲撃を受けたが、幸いにも居合わせたのは3人。無傷で撃退し、返り討ちにしたところだった。
藁科 サイカ:倒れ伏したうちの一人を椅子代わりに腰掛けて、呼吸を整えている。
葛野 くるみ:「ふううーーっ」手足を刃に変えた、歪な姿で息を吐く。「あっはは…終わった!」
藁科 サイカ:「刺客、刺客、刺客だ! ……おお、疎ましい。何処の村の野良犬だ、首輪に名などはあるまいな」
御薗橋七葉:「……二人とも、怪我は?」霧が晴れるように、光の屈折の中から輪郭が現れていく。
葛野 くるみ:「あたしは無いよ~」
藁科 サイカ:「ああ、七葉女史よ案ずるな。俺はなるほど幽鬼のようであろうが、この程度の牙は鎧を通さぬとも」
御薗橋七葉:「……そうですか」藁科を見る。
御薗橋七葉:本番に向け、藁科の演技は更に研ぎ澄まされていくようだった。剥き身の刃を思わせるそれは、どこか恐ろしく、そして痛々しい。
藁科 サイカ:「案ずるなら寧ろ、この犬共であろうな。……気に食わぬ面構えだ。どれ、戯れに皮でも剥いでやろうか」
藁科 サイカ:眼光鋭く、目の下は落ちくぼみ、頬は見て分かる程にこけて肌が白い。
藁科 サイカ:口ぶりは舞台の上に立つ時と同等。手にしたナイフを弄ぶ様も、存在せぬ観客席を意識したものだ。
葛野 くるみ:「えー、マジで言ってるの、それ」
藁科 サイカ:「苛立ちを紛らわす程度にはなろうさ。だがオーヴァードとは厄介なもので、すぐに傷が塞がるでな」
藁科 サイカ:「傷が塞がるということはつまり、もう一度傷つけられるということでもある。一人の人間から一度に40枚の爪が剥がせるなど誰が信じようか!」
御薗橋七葉:「……やめておきましょう。余計な恨みを買うだけです」
御薗橋七葉:「この事態を切り抜けても、“ラオペ”は続くのですから」
藁科 サイカ:「それは失敬。縁の無いこと故に忘却の彼方へ追いやっていた」
藁科 サイカ:ナイフを畳み、コートの中へ戻す。
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:鬼気迫る演技を見せる彼女の変貌ぶりは、演出家としては本来、大いに喜ぶべきところなのだろう。だがそれ以上に────。
御薗橋七葉:「……大丈夫ですか、藁科さん」
御薗橋七葉:「食事、ちゃんと摂ってます?」
藁科 サイカ:「もう2kg程減量したいところだね。膨らます分には綿を含めば良いだけだ」
藁科 サイカ:人間の椅子に手を置いて立ち上がり、路地裏の壁にもたれ掛かる。
葛野 くるみ:会話の後ろで生体電流を放ちながら、通常用義肢へ換装。
葛野 くるみ:落ちていた自分の上着を羽織り直す。
葛野 くるみ:「…サイカくんってさー」
葛野 くるみ:「死にたくてやってるの?それ」
藁科 サイカ:「まさか。死にたいだけならもっと楽な手段があるさ」
藁科 サイカ:「ただ、ギヨームという男のことを考えるに、シルヴェストルを殺した後、彼はろくに食事も取れない日々を送るだろうと思ってね」
御薗橋七葉:「……全て役作りの為だとでも?」
藁科 サイカ:「俺は役者だぜ、二人とも」
御薗橋七葉:「それ以前に、人間でしょう」
藁科 サイカ:「……びっくりする程、研ぎ澄まされてる気分なんだ。ギヨームって奴の考えることが全部分かるみたいでさ」
藁科 サイカ:「少しでも緩めたら逃がしてしまいそうで、それが怖い」
葛野 くるみ:「ふうん……」首を傾げる。「ねえ、今のサイカくんには、あたしはどう見えるの?」
葛野 くるみ:「悪魔リュシエラに見える?」
藁科 サイカ:「んー………………まだだなぁ」
藁科 サイカ:「ちょっとリュシエラとしては可愛げがありすぎる。もう少しあれは悪辣で、だから魅力的な女だろう」
藁科 サイカ:「君はまるで、シルヴェストルと結ばれたリュシエラじゃあないか。なんだい、幸せな出来事でもあった?」
葛野 くるみ:「うふふ。うん。ごめんね、サイカくん」
葛野 くるみ:「あたし、やっぱ七葉ちゃんと付き合うことにしたの。だからサイカくんとの恋人はもうナシね」
藁科 サイカ:「あっはっはっはっは。今、少しリュシエラとしての解像度が上がったなぁ!」
御薗橋七葉:「……」居た堪れなくなって目を伏せる。
葛野 くるみ:「あたし、本当にギヨームを誑かしちゃったもんね」目を細める。
藁科 サイカ:「全くだ。俺の勝手な解釈だったと言うのに。あのあたりの話をしてた時の七葉さんの表情を覚えてるか?」
藁科 サイカ:「まるで俺達に呪詛をかけ、腐らせてしまうんじゃないかって迫力だった。今だから言うけど、ちょっと怖かったぞあれ」
葛野 くるみ:「えー?そうだったっけ?」
御薗橋七葉:「……分かってたんですか、あの時」
御薗橋七葉:「まるで気にならないような顔をしていたのに」
葛野 くるみ:「あたし、あの時は本当にサイカくんのこと好きだったからなー」
藁科 サイカ:「くるみは本当にくるみだなぁ、はっはっは」
藁科 サイカ:「七葉さんは、あれが七葉さんなのだと思ったからね。ならば向けられる感情も、俺にとっては心地良いものだった」
葛野 くるみ:「うん。でも変わっちゃった」
藁科 サイカ:「……君は賢いな、言葉の選び方は特に」
葛野 くるみ:「えー、サイカくんのが難しい言葉遣いとかたくさんできてすごいよー」
藁科 サイカ:「そうは言うがね、七葉さんに聞いてみるといい」
藁科 サイカ:「名台詞とは往々にして、短く、それでいて一撃で人の心臓を抉るものだ」
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:『変わるのが嫌だ、ってあいつは言ってた』
御薗橋七葉:四条の言葉を思い返す。目の前の藁科を見ると、頷ける気がした。
御薗橋七葉:結果的にくるみを藁科から奪い取る形になったことに、微塵も後悔は無い。
御薗橋七葉:だが今の彼女を見ていると、まるで自分が彼女の人としてのよすがを断ち切ったように思えてくる。実際、それは事実でもあるのだろう。
御薗橋七葉:「……貴方が憑依型の俳優というのは承知の上ですが、それにしてもやりすぎです」
御薗橋七葉:「戻ってこられなくなりますよ、ギヨームから」
藁科 サイカ:「戻る必要は無いさ」
葛野 くるみ:「ずっとギヨームでいるの?」
藁科 サイカ:「……いや、否定する場所を間違えたかな。そんなつもりは無いさ」
藁科 サイカ:「だが、ギヨームのままで居たところで、俺には特に差し支えが無い」
藁科 サイカ:「どうしたんだい七葉さん。案ずるより寧ろ誇りたまえよ」
藁科 サイカ:「君の書いた脚本に、俺はここまで惚れ込んでるんだぜ?」
御薗橋七葉:「……それは」
御薗橋七葉:「これを最後の役にしようと思っているから?」
藁科 サイカ:「……まぁ」
藁科 サイカ:「そういうとこもある、けどさ」
葛野 くるみ:「ねー、サイカくん」
葛野 くるみ:「あたしサイカくん死んじゃったら…悲しいなーって思う」
葛野 くるみ:「かもしれないけど」
藁科 サイカ:「……けど?」
葛野 くるみ:「でもすぐ忘れちゃうと思う」
葛野 くるみ:「あたし、そういう人間だもん。でも、だからさー」
葛野 くるみ:「あたし今ラオペが楽しいから、サイカくんにはなるべく生きてて欲しいんだよね」
藁科 サイカ:「君は本当に最高の悪魔だな、くるみ」
藁科 サイカ:「どうかそんな風に、天使みたいな顔で祈りを捧げないで」
藁科 サイカ:「綺麗さっぱり俺を忘れるとだけ約束してくれた方が嬉しい」
藁科 サイカ:「……とは言っても、くるみがちゃんと約束を守ったためしが……あったっけ……?」
葛野 くるみ:「うーーん」
葛野 くるみ:「今回もダメな気がするーー。だって無理でしょ。あたし一人ならともかくさー」
葛野 くるみ:「ラオペにいる以上、みんなサイカくんのこと知ってるし。みんなは優しいしさー」
藁科 サイカ:「はぁ……」苦笑いを浮かべての溜息。いつも通りのやりとりだ。
藁科 サイカ:「気付いてるかい、君」
藁科 サイカ:「まるで今の雰囲気、告別式か何かだぜ」
葛野 くるみ:「えっ!なんで、死なないでって言ってるのに!?」
藁科 サイカ:「いやいや。棺にお別れする時の台詞だろ、どっちかって言うと」
葛野 くるみ:「そうだった?」七葉ちゃんを向く。
御薗橋七葉:「棺、ね……」
御薗橋七葉:「……藁科さん。貴方の言う通りになれば、貴方は残りの人生をギヨームとして生き、そして最期もギヨームとして死ぬことになる」
御薗橋七葉:「誰も貴方を、『藁科サイカ』として看取れない」
御薗橋七葉:「それとも貴方、舞台の上で死ぬつもり?」
御薗橋七葉:「私の舞台は、棺桶でも葬式場でもない」
藁科 サイカ:「舞台の上で死ぬのはなぁ。場面転換の時に困りそうだ」
藁科 サイカ:「……ふむ」
藁科 サイカ:急に腕を組んで、こく、こくと頷き、
藁科 サイカ:「くるみは、まだ俺が理解できる。相手が欲しい言葉をついつい言っちゃうところは本当に、俺が知ってるそのままだ」
藁科 サイカ:「だが、七葉さん。俺達はお互い、相手のことを良く知らないままだったな」
御薗橋七葉:「……ええ、そうですね」
藁科 サイカ:「そもそも俺は、『藁科 サイカ』って役を演じてた、本当の名前も良く分からないオーヴァードだ」
藁科 サイカ:「そういう風に思ってくれればいいんだよ。実際のところ、出生時の名前とかは知らないし」
藁科 サイカ:「……おいおい。妙なことに気を遣ってくれるより、俺はあなたの講評を聞きたいんだぜ」
藁科 サイカ:「あなたの脚本を俺は上回れているのか、下回っているのか、それともぴたりと合致しているのかをさぁ」
葛野 くるみ:会話に入れないので、唇を突き出し、しゃがんで二人を見上げている。
御薗橋七葉:「……」
御薗橋七葉:「……確かに、貴方のギヨームは完璧です。それ以上と言ってもいい」
御薗橋七葉:「予想を上回る冴えです。演出家としては喜ぶべきところなのでしょうね」
藁科 サイカ:「俺も喜ばしいよ、その評価ならば」
御薗橋七葉:「でも、藁科さん。貴方には言ってませんでしたか?」
御薗橋七葉:「私ね、“ラオペ”のファンなんですよ」
御薗橋七葉:藁科を見据える。
藁科 サイカ:「目を合わせた状態で聞くのは初めてだ、と思うね」
藁科 サイカ:〝なっている〟時に比べれば弱々しい眼光が、その視線を受ける。
御薗橋七葉:「私、藁科サイカという俳優が好きなんです」
御薗橋七葉:「それが貴方の演じた役のひとつに過ぎないのならば。過ぎないのだとしても──」
御薗橋七葉:「この劇でギヨームを演じた後は、もう一度また、演じてください」
御薗橋七葉:「見たいんですよ、貴方のその演技が」
御薗橋七葉:「それが、一人のファンとしての意見です」
藁科 サイカ:「────────」
藁科 サイカ:理屈と感情を切り分け、双方を見つめる。
藁科 サイカ:珍しく今回は、双方の結論が一致した。
藁科 サイカ:「なるほど、そう来たか」
藁科 サイカ:「俺は」
藁科 サイカ:藁科サイカと名乗るオーヴァードは、
藁科 サイカ:「役者だからな。演じろって言われたら、そりゃあ」
藁科 サイカ:「やる、と答えるしかないよな」
藁科 サイカ:自分でも驚くほど、抑揚も何もない、ただ会話の中で当たり前に吐き出されたような声音になった。
藁科 サイカ:当たり前に。引き受けるかどうかなど、迷うこともなく。
御薗橋七葉:「約束ですよ」
藁科 サイカ:「俺はくるみと違って、約束は守る方だよ。……守ろうとする方、か?」
葛野 くるみ:「あたしと付き合ってる時、サイカくんは約束守ってくれてたよ」
葛野 くるみ:「サイカくん、優しいもん」
御薗橋七葉:「軽やかで、自信に満ちて、愛想を振り撒いて」
御薗橋七葉:「格好良くて、あと、そう。健康的で!」
葛野 くるみ:「健康的、大事ー」くすくす笑う。
御薗橋七葉:「ちゃんとまめにSNSも更新してください。ファンにも個別でリプライ返すのが貴方でしょう」
藁科 サイカ:「……ふむ、困ったな」
藁科 サイカ:これも、嘘偽りの無い本音だ。
藁科 サイカ:演義も何もかも切り捨てた後の言葉は、自分で聞いていても感情の起伏が薄く、何を考えているのか良く分からなくなる。
藁科 サイカ:とは言え、事実、自分の思考ではあるから、その隅々まで見渡せるのだ。
藁科 サイカ:「どうも俺は、〝次〟に前向きになってるようだ」
藁科 サイカ:「公演の時期も決まってない、脚本も仕上がってない舞台に」
藁科 サイカ:「七葉さん。脚本はいつ仕上がる?」
葛野 くるみ:「来年とかにしちゃお」笑いながら野次を飛ばす。
藁科 サイカ:「それはダメ、俺が死んじゃう」
葛野 くるみ:「なんとかしてよー」
藁科 サイカ:笑う。あまり快活とした笑い方ではなく、口元を僅かに曲げる程度だ。
御薗橋七葉:「そう言って頑張ってくれるなら、いくらでも伸ばしますけど」
御薗橋七葉:「……何とかならないんですか。本当に」
藁科 サイカ:「俺はね」
藁科 サイカ:「死にたくて死のうとしてる訳でもなくって、暗くなろうと思って暗くなってるわけでもないんだ」
藁科 サイカ:「ロミオとジュリエットが平穏無事に結ばれて、両家から祝福を受ける筋書きなんてものはないだろう?」
御薗橋七葉:「ありますよ!」
御薗橋七葉:「今なら、あります。そういう筋書きだって、書けますよ」
御薗橋七葉:「面白いじゃないですか。私、脚本家ですから。いくらだって書けます」
藁科 サイカ:「ほうほう、言い切ったね。ならば書いてもらおうじゃないか」
藁科 サイカ:「次の芝居は『ロミオとジュリエット』! ただし新解釈の為にハッピーエンドだ!」
藁科 サイカ:「これはお客さんの目が厳しいぜ。さて、配役はどうするつもりだい?」
葛野 くるみ:「えっと」あんまり知らない。「まず、ロミオとー、ジュリエットでしょー?」
葛野 くるみ:「あ、サイカくんがジュリエットやったら?」
葛野 くるみ:「美人なんだしさー、髪伸ばしてさ。面白そうじゃないー?どう~?」
藁科 サイカ:「長身で男性的なジュリエットか……なるほど目新しさはあるかも知れないな……」生真面目に頷く。
御薗橋七葉:「確かに面白そうかも……」会話も忘れて考え込んで。
御薗橋七葉:「……分かりました。書きますよ、貴方の為に」
御薗橋七葉:「脚本も配役も、これから考えます。ただ一つ」
御薗橋七葉:「藁科さんがジュリエット。これは決まりです」
藁科 サイカ:「やれやれ、恐ろしい試みが決まってしまったな」
藁科 サイカ:「だが急ぎたまえよ、人生は短い! 少年老いやすく学成り難し!」
葛野 くるみ:「えー、なに、どういう意味?」瞬きしている。
藁科 サイカ:「加えるに当座の問題は眼前に山積みだ。満員御礼の札を掲げたら観客席が衣笠の貸し切りだなんて、そんな笑い話は勘弁──」
藁科 サイカ:「えーとね、くるみ。……うっかりするとすぐに歳取っちゃうぞって意味」
藁科 サイカ:テンションの高低が忙しい。
葛野 くるみ:「へええー」子供のように頷いている。
御薗橋七葉:笑って「……ええ。最高の舞台にしますから」
御薗橋七葉:「だから、それまでは……ちゃんと『藁科サイカ』で居てください」
藁科 サイカ:「ギヨームをやりきってから、の話にはなるがね」
藁科 サイカ:「おおよそ今の俺にとって最大の興味ごとと言うのは、いったい俺自身がどこまでの悪辣さを極められるかという点にあるのだ」
藁科 サイカ:「あのシルヴェストルが敷いた善政を踏み躙り! フェリクスの如き雄略も持たぬままの俺が!」
藁科 サイカ:「どれほどのものでいられるかという点をこそ、俺は重んじるのだよ。今はね」
藁科 サイカ:「ということで幸せなご婦妻よ。陰鬱な話はやめにしようではないか!」
御薗橋七葉:「ごっ……ご婦妻って……」
藁科 サイカ:「二人の角出を祝う形でも、舞台の成功を願うものでもいい。宴を開き、贈り物を捧げなくては俺の気が晴れぬ」
葛野 くるみ:「えー、なにー、お祝いしてくれるのー」嬉しそうにしている。
藁科 サイカ:「ふむ」
藁科 サイカ:ふと思いついたようにポケットを探り、スマートフォンを取り出して、
藁科 サイカ:それを、ぽうんっと、くるみの方へと放り投げる。
葛野 くるみ:「えっ、なになに」受け取ります。
藁科 サイカ:「買い換えようと思ってたとこだし、それはあげる」
葛野 くるみ:「……」
葛野 くるみ:スマートフォンを見る。あの時の撮影データが残っているだろう。
藁科 サイカ:「次の奴は48回割賦で買ってやるのさ。携帯会社め泣きを見るがいい」
葛野 くるみ:「あはー、じゃあ、全部とっとこー」
葛野 くるみ:「ありがと!じゃあ、もらうからね」
葛野 くるみ:「ねー、宴の方は?奢ってくれなくてもいいからさ、ゴハンいこうよー」
御薗橋七葉:「いいわね。稽古の上に動いて、お腹空いたし」
藁科 サイカ:「汗もかいた。筋肉も使った。塩分と蛋白質、それにエネルギー補給の炭水化物……となると……」
藁科 サイカ:「……牛丼屋?」
葛野 くるみ:「えーあたしもっとお洒落なとこ行きたいー」
御薗橋七葉:「お洒落なとこって言っても、この時間じゃね」腕時計に目をやって
御薗橋七葉:「牛丼屋ね……私カレーにしようかな」
御薗橋七葉:言って、歩き出す。
葛野 くるみ:「あー、待ってよー」ついて行く。
藁科 サイカ:「うーむ」
藁科 サイカ:「七葉さんが俺達を先導するのは、なんとも」
藁科 サイカ:斬新な光景だ、と思った。
葛野 くるみ:サイカくんにもらったスマートフォンをポケットにしまう。
葛野 くるみ:撮影データは消さない。連絡先も、写真アルバムも、アプリケーションもそのまま。
葛野 くるみ:そうすれば、いずれ彼女が居なくなった時に、それを見返して、
葛野 くるみ:思い出すことくらいはできるかも、しれないだろう。
GM:ミドルシーン後半が終了し、ブーケの集計が完了しました。
GM:最も多くのブーケを獲得し、エクストラシーンの権利を得たPCは……
GM:葛野くるみさんです!おめでとうございます。
GM:というわけで今後好きなタイミングで時間無制限のエクストラシーンが可能となります。
葛野 くるみ:ワ~~~~イ
葛野 くるみ:かしこまりました!
【Middle3】
GM:集合シーンです。全員登場です
椿尾 輪花:椿尾輪花の侵蝕率を1d3+3(→ 5)増加 (71 → 76)
葛野 くるみ:葛野くるみの侵蝕率を1d3+3(→ 4)増加 (83 → 87)
四条 幸音:四条 幸音の侵蝕率を1d10(→ 5)増加 (66 → 71)
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を1d3+3(→ 6)増加 (75 → 81)
GM:御薗橋七葉の侵蝕率を1D10(→ 9)増加 (91 → 100)
GM:本番は既に三日後に迫っていた。諸々の事態からギリギリとなった小屋入りを済ませ、翌日にゲネプロを控えた頃。
GM:FHセルとしての“ラオペ”は、ここに来て予想外の状況にあった。頻発していた他セルの襲撃が、ぴたりと止んだのだ。
GM:劇団全体でのミーティング後、君達と座長は楽屋のひとつに集まり、セルとしてのミーティングを行うこととなった。
座長:「……諦めたということでしょうか?」
座長:面々に不安そうな表情で視線を送る。
椿尾 輪花:「それが一番良い顛末ですね」
椿尾 輪花:「一番可能性が低い話だとも思います」
葛野 くるみ:「えー、どういうことー?」パイプ椅子に体育座りしてポッキーの包装を開けている。
四条 幸音:「何度も襲撃をかけてきて、拠点まで焼いてきたぐらいだもん」
四条 幸音:「よほどの事情でもない限り、諦めるとは思えない」
藁科 サイカ:「俺が連中なら、そうだな。力を溜めて油断させ本番当日に、というところか」
藁科 サイカ:「不幸の最たるものを与えたいのならば、幸福の最中にこそ訪れるだろうよ」
椿尾 輪花:軽く手を組んで 「そうね。今までの襲撃が威力偵察で、藁科さんの言う通り、公演日を狙った最後の攻撃の準備に取り掛かっている……というのがありそうな所だと思います」
葛野 くるみ:「サイアクー」ポッキーをぽりぽり食べる。
四条 幸音:「もちろん、それまでもその後も油断できるわけではないけど……」
御薗橋七葉:「稽古場が焼けて以降、全員揃っての稽古も中々出来ませんでしたからね」
御薗橋七葉:「劇場入りしてからなら、メンバーが揃わざるを得ない。そこを叩くのはありそうな線かと」
四条 幸音:「そっか。今までは襲撃に備えてできるだけバラけてたものね」
藁科 サイカ:「可能ならばこちらから仕掛けて、公演までに向こうが動けないようにしたいが──」
藁科 サイカ:「──現実的に考えて難しいか、それは」
葛野 くるみ:「ポッキー誰かいるー?」
御薗橋七葉:「……」ポッキーを齧り、考え込むように眉間に皺を寄せる。
四条 幸音:「ん、僕も一つ……ううん」
四条 幸音:ポッキーを口に咥えてむうと考え込む。
藁科 サイカ:手で遠慮を示し、前より細くなった脚を組む。
椿尾 輪花:「できればこちらから行動を仕掛けてイニシアチブを取りたいけれど、焦って半端な行動を取ることが一番良くない」
藁科 サイカ:「やるなら一撃で鏖にしろとの仰せか、流石は血統書の無い虎だ」
椿尾 輪花:「"天眼"の手腕が確かなのは分かりきっていますから。可能な限りの警戒を続けつつ、ぎりぎりまで糸口を探り続けるしかないですかね」
御薗橋七葉:「……ずっと考えていたんですが」
御薗橋七葉:「多分、この一連の襲撃……裏で糸を引いているのは“メイルストロム”です」
GM:椿尾にのみ聞き覚えのある名だ。
葛野 くるみ:「えー、誰それー」ポッキーをくるくると回す。
葛野 くるみ:「あたし初耳」
GM:君と関わりのある帳市UGN幹部。そのコードネーム。
椿尾 輪花:「……」 腕を浅く組む
椿尾 輪花:「UGNね。どうしてそう思うの?」
四条 幸音:「御薗橋さん、なにか知っているの?」
御薗橋七葉:「…………」悩むように視線を彷徨わせ。「いや……もういいか」
御薗橋七葉:「“天眼”の正体は“メイルストロム”です」
椿尾 輪花:「あら」
葛野 くるみ:「えー、何、七葉ちゃん、その感じ」
四条 幸音:「……!?」
藁科 サイカ:「……UGNの構成員が、FHのセルのリーダー?」
葛野 くるみ:「ねー今の何、もういいかって何ー?」不機嫌そう。
御薗橋七葉:「“メイルストロム”はFHとして潜入……と言えるかどうか……とにかくその立場から、この街のFHの動向を把握、場合に応じて介入し調整しています」
御薗橋七葉:「FHとして利益も得ていて、未だに潜入捜査と言えるかは限りなく黒に近いグレーですね」
四条 幸音:「どっちにとっても裏切り者……ってことね」
藁科 サイカ:「衝撃的な事実だが、合理的ではあるな。この街の勢力闘争を己の裁量で左右できる立ち位置だ」
藁科 サイカ:「……が。事情通だねぇ随分と」
御薗橋七葉:「……まあ、私」
御薗橋七葉:「元UGNチルドレンですから」
椿尾 輪花:「あらあら」
葛野 くるみ:「えーー?!」
藁科 サイカ:「わぁお」大げさに肩を竦めた。
葛野 くるみ:「嘘!知らないんだけど!」
四条 幸音:「葛野も知らなかったんだ……」
葛野 くるみ:「知らなかったけどぉ」拗ねる。
四条 幸音:「でも、その、さ」
四条 幸音:「教えてくれたのは……今はそういう立場じゃないってこと、ですよね?」
御薗橋七葉:「……ええ」くるみの頭を撫で。
御薗橋七葉:「チルドレンとしての経歴は全て抹消済み。カバーを隠れ蓑にFH側に潜入するのが私の任務だったの」
葛野 くるみ:拗ねた顔で頭を撫でる手をはたく。
御薗橋七葉:「まあ、でも……結局全然働かないまま辞めちゃったのよね」
御薗橋七葉:「経歴も抹消されたままだから、二度と向こうには戻れない」
藁科 サイカ:「〝メイルストロム〟が〝天眼〟となるように、か……UGNは組織的にFHへ人員を送り込んでいるのか……?」
藁科 サイカ:「……しかし物好きも居たものだ。俺に言わせればUGNにいた方が、FHに与するより幸せに生きられただろうに」
椿尾 輪花:「物好きなのは分かっていたでしょう」 ポッキーを齧る 「女性の趣味とか」
御薗橋七葉:「それはそうでしょうね。こんなギリギリで存続してるようなセルにいるよりは、余程」
藁科 サイカ:「…………」反論できず、ただ頷く。
御薗橋七葉:「でも、言いましたよね?」
御薗橋七葉:「私、ファンなんですよ。ラオペの」
椿尾 輪花:「そこは」「物好きでないことにしておきましょう」 都合が良いことを言う
四条 幸音:「……えへへ」 照れくさそうに下を向く
葛野 くるみ:「あたしはぁー?」
御薗橋七葉:「ほら、くるみも……機嫌直してよ」困ったように笑う。
葛野 くるみ:「知らない。いいからその"メイルストロム"の話しててよー」
御薗橋七葉:「うん……私は“メイルストロム”の直属だったから知ってたけど、この話を知っているのはUGNでもごく限られた人数しかいない」
御薗橋七葉:「明るみになれば本人にとっても都合が悪いってこと。それは多分、椿尾さんと関わりについても同じことが言えるはず」
御薗橋七葉:「そんな彼にとって、一番都合の良い展開って……何だと思います?」
四条 幸音:「……ええっと」
椿尾 輪花:「……FHがひとり残らず倒れること」
椿尾 輪花:「私たちも、私たちを倒そうとしている連中も、全員」
御薗橋七葉:椿尾に頷く。「はい」
藁科 サイカ:「ははぁん。さては〝メイルストロム〟は、気高い理想の持ち主ではなかったりするのかい?」
四条 幸音:「自分のことを知ってる連中含めた仲間割れで、共倒れ……が狙い?」
葛野 くるみ:ポッキーをヤケ食いしている。
御薗橋七葉:「証拠も証人も消えて、帳市担当である“メイルストロム”には手柄だけが残る」
御薗橋七葉:「彼にとっては良いこと尽くしです」
椿尾 輪花:「暗い手を回したことも悟られずに済む……そうなると」
椿尾 輪花:「敵の方にもそれほど過剰な戦力があるわけではない、ですかね。後始末に困るようでは本末転倒ですから」
藁科 サイカ:「主戦力は当人と〝ブラックハイド〟、後はワーディングが効かないくらいの戦力が幾らか……というところだろうか」
御薗橋七葉:「はい。丁度“ラオペ”と共倒れになる程度の駒を揃えてきているはず……」
御薗橋七葉:「といっても、かなりの戦力でしょうね。“ラオペ”がセルとして独立を維持出来ているのは、戦力の高さも要因ですし……」
御薗橋七葉:「それが分裂にも繋がったんですが……」
四条 幸音:「……山科たちも、騙されてのせられてる、のかな?」
椿尾 輪花:「まあ、こちらへの恨みは騙される以前の本物でしょうけど……」
藁科 サイカ:「……どうにか〝ブラックハイド〟を口説けないかなぁ。幸音あたりが」
四条 幸音:「僕?……そりゃもちろん、止められるならそうしたいけど」
四条 幸音:「あれだけ派手に戦ってしまったし、流石に……難しい、かな……」
御薗橋七葉:「実際、向こうはそこまで手加減を考える必要は無いと思います。共倒れなら最高。最低でも“ラオペ”を弱らせれば“メイルストロム”がトドメを刺し、向こうが大幅に残っても“ラオペ”だけ倒れればそれはそれで良いですからね」
葛野 くるみ:「つーかメイルストロムやっつけないと意味なくない?」
葛野 くるみ:「セル同士で争っててもメイルストロムが良い思いするだけじゃん」
四条 幸音:「……そうなるね。仮に今回の襲撃を抑えきっても」
四条 幸音:「メイルストロムが残ってる限り、またいつ同じような手を使ってくるか分からない」
御薗橋七葉:「そうね。ただ……奴も今回は“天眼”として現場に出てくるはず」
葛野 くるみ:「え、なんかいっつも出てこないって話じゃなかった?」
御薗橋七葉:「遠隔で火力を出せるタイプじゃないから。大事な局面は自分の手で動く主義でもあった」
御薗橋七葉:「他の部下に任せられることでもないしね。実際、“ブラックハイド”は既に一度、返り討ちにしてる」
藁科 サイカ:「出たという話が残っていない、ということか」
椿尾 輪花:「詰めどころは見誤らないか。……そうなると、千載一遇の機会にもなりますね」
四条 幸音:「戦場に出てくるなら倒すチャンスでもある。……そういうこと?」
藁科 サイカ:「そういうことにはなるだろうが、厄介だぞ。向こうが出てくるのは、俺達が一番戦い難いタイミングだ」
御薗橋七葉:「ええ。本番中に襲撃でもされれば最悪です」
藁科 サイカ:「観客一人にでも、かすり傷でも負わせれば、生き残ったとしても俺達に悪評が残る」
藁科 サイカ:「……ああ、やっぱり受けて立つ案を練るのは苦手だ! 俺達から仕掛ける術に心当たりは無いのかね、誰か!」
四条 幸音:「ううん。……本番で来られるのが最悪なら、せめて別のタイミングに誘導とかできないかなあ」
椿尾 輪花:「……安定的に関係を持てているFHセルを潰そうとする動き、重要な局面では自分が動くという性質。根本的にあまり他人を信用できず、不安を抱えている」
椿尾 輪花:「動くなら綿密に、確実に詰めるタイプ。逆に言えば、こちらがその計画を破るように、逆に打って出るようなことをすれば、付け入る隙も見えてきそう」
御薗橋七葉:「人員が各セルに散らばったままでは“天眼”といえど統率できない。今頃、どこかに戦力を集めているはず。本番までに何とかそこを探り当てましょう」
御薗橋七葉:「私も昔のコネを辿ってみます。皆さんも各自よろしく頼みます」
御薗橋七葉:「決着は、ソワレの前に着けましょう」
椿尾 輪花:「ええ。多少無理をしてでも、額面以上に叩く意義はありそうね」
椿尾 輪花:少し笑って 「ありがとう。でも御薗橋さんは、練習もお忘れなく。この中ではあなたが一番、新人なんだから」
御薗橋七葉:「う……分かってます」困り顔で眉を下げる。
葛野 くるみ:昔のコネという言葉に不機嫌になっている。
藁科 サイカ:「……新人、か」
藁科 サイカ:「そうだよな、七葉さんが一番キャリアが浅い──劇団員としても、FHとしても」
四条 幸音:「ちゃんと御薗橋さんを支えてあげてね、葛野」
藁科 サイカ:「なぁ、くるみ」ふと、思いついたように。
葛野 くるみ:「んん~?」
藁科 サイカ:「君、七葉さんとデート中に襲撃されたとして、七葉さんを守り切れる自信はある?」
葛野 くるみ:「えー? 何それ」
藁科 サイカ:「いや、ふと思ってさ。〝天眼〟がリーダーの言うような人物像なら、七葉さんの存在は疎ましいだろうって」
御薗橋七葉:「……」懸念していたことだ。くるみに目を向ける。
藁科 サイカ:「自分の素性を知ってる上に、敵方に付いてるんだもの。最悪でも七葉さんだけは──って思ってるんじゃないかって」
藁科 サイカ:「万が一にラオペの戦力を削ることに失敗したとしても、七葉さんだけは殺したいだろう。向こうは」
四条 幸音:「……御薗橋さんが隙を見せれば、確実を期す為に狙ってくる、ってこと?」
藁科 サイカ:「俺ならそうする。罠の可能性を加味したとしても」
葛野 くるみ:「じゃあ、あたしと七葉ちゃんがずっと一緒にいればいいでしょ」
御薗橋七葉:「……くるみ……」
葛野 くるみ:不機嫌そうな表情のまま。「ひとりでいるよりはマシじゃん。あたし達まとめて死ぬかもだけどさ」
御薗橋七葉:「……ありがとう、くるみ」
御薗橋七葉:「嬉しい」
葛野 くるみ:「べっつにー」体育座りのままゆらゆらしている。
椿尾 輪花:「まあ、先んじて御薗橋さんを叩くつもりなら、もう動いているでしょうからね。どちらにしてもまとめて叩く算段がついているのかも」
椿尾 輪花:「もちろんこれからという可能性も……葛野さん」
椿尾 輪花:「機嫌悪いの?」
葛野 くるみ:「はあー?べつにー?」
椿尾 輪花:(機嫌が悪い時の受け答え……) 「……調子が悪いとかあったら遠慮なく言ってくださいね。大事な戦力なんですから」
四条 幸音:「……その、葛野。勘違いだったらごめんだけど」
四条 幸音:「心配しなくても、御薗橋さんの一番は君だよ」
葛野 くるみ:「えー?何、次から次にー」
四条 幸音:「ですよね?」
葛野 くるみ:「はあーーーー?」
椿尾 輪花:「……」 曖昧な笑みを浮かべている
御薗橋七葉:目を瞬いて頷く。「そうだけど……」
御薗橋七葉:「……もしかして、妬いてくれてるの?くるみ」
葛野 くるみ:「妬いてないけど。やめてよもう!」
四条 幸音:「ち、違ってたならごめん……なんか、不安なのかなって」
藁科 サイカ:「はっはっはっはっは。この有様を見れば三重も毒気を抜かれるかも知れないなぁ」
椿尾 輪花:「では、ひとまずの方針は御薗橋さんの情報に沿って動きましょう。気をつけつつ、情報を探る、で」
椿尾 輪花:「葛野さんは御薗橋さんの身辺もお願いします」
藁科 サイカ:「そして承知した。警戒、情報収集。つまりは今まで通りのルーチンワーク」
葛野 くるみ:「はあーい」
御薗橋七葉:「了解です」
四条 幸音:「分かった」
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四条 幸音:「椿尾」
椿尾 輪花:「ん?」 解散後、スマートフォンを見ていた所、声をかけられ顔を上げる 「なあに?」
四条 幸音:「さっき話に出た〝メイルストロム〟……君がコンタクト取ってた相手、だよね」
椿尾 輪花:「ええ、そうね。まさかそこまで器用な動きをするとは思っていなかったけど」
四条 幸音:「この後の戦いが上手く行って、〝天眼〟を……倒せたとして」
四条 幸音:「今まで君がラオペを守ってきた、UGNとの関係も……なくなる?」
椿尾 輪花:「ほとんどゼロにはなるでしょうね。……どうして?」
四条 幸音:「ん……ごめん。ちゃんと確認して、知っておきたかった」
四条 幸音:「また、変わることになるね。ラオペは」
椿尾 輪花:「……そうね。彼がいなくなったとして、次に関わってくるUGNがどんな姿勢で来るかは完全に未知数だもの」
椿尾 輪花:「もっと苛烈な人が来るかもしれない。だとしても」
椿尾 輪花:「私はこの場所を守ります」
四条 幸音:「君だけじゃない」
四条 幸音:「僕も居る。……僕達も居るから」
椿尾 輪花:「……」 微笑する 「そうね。あなたはそう言ってくれるんだものね」
椿尾 輪花:「ありがとう。守りましょう。皆一緒で、皆の場所を」
四条 幸音:「……うん」
四条 幸音:「一緒に、だよ、輪花。約束」
椿尾 輪花:少しくすぐったそうな顔で 「もう。今そう言ったでしょ」
椿尾 輪花:「約束します。一緒です。四条さん」
四条 幸音:隣に腰掛けて、手を握る。小指を絡ませる。
椿尾 輪花:目を瞬かせて、絡ませた小指を見る 「……もう」
四条 幸音:「……ふふ」
椿尾 輪花:その手を軽く縦に揺らし 「約束です。指切った」
四条 幸音:「指、きった」
四条 幸音:彼女が一人で無理しないか心配で、釘をさすだけのつもりだったのに。
四条 幸音:困ったな。こんなに、幸せ。
御薗橋七葉:セルでのミーティングを終え、その日の深夜。
御薗橋七葉:葛野と御薗橋は市内のホテルに宿泊していた。警護の為、二人同室。
御薗橋七葉:清潔な、然程広くはない部屋に響いていたシャワーの音が止まった。
御薗橋七葉:「……くるみ?」湿った髪をバスタオルで拭きつつ、浴室から顔を出す。
御薗橋七葉:「上がったけど、入る?」
葛野 くるみ:「………」裸足になって、ベッドの隅に体育座りしている。
葛野 くるみ:聞こえているが、無言のまま。
御薗橋七葉:「くるみ~?」
御薗橋七葉:ナイトガウンを纏って、ケトルでお湯を沸かす。
御薗橋七葉:「聞こえないの?」
葛野 くるみ:ジャケットだけ脱いで、タンクトップとスカートだけ着た薄着の状態で、
葛野 くるみ:むっとした表情で七葉ちゃんの言葉を無視する。
御薗橋七葉:「ほら」両手にマグカップ。自分はブラック、くるみにはミルクと砂糖をたっぷり入れて差し出す。
葛野 くるみ:「………」
葛野 くるみ:顔を背ける。
御薗橋七葉:「もう……」
御薗橋七葉:コトリと小さな音。サイドデスクにカップを置いて。
御薗橋七葉:ベッドに上がる。スプリングが軋み、くるみを揺らす。
葛野 くるみ:「……」じっと体育座りして、視界に七葉ちゃんを認める。
御薗橋七葉:「よいしょ」ベッドの隅まで行って、くるみの傍らに腰を下ろした。
御薗橋七葉:「……怒ってる?」
葛野 くるみ:「……怒ってない」
御薗橋七葉:「嘘」
葛野 くるみ:「嘘じゃないし」
葛野 くるみ:「意味わかんない」
御薗橋七葉:「くるみ……」
御薗橋七葉:困ったように、小さく苦笑して。
御薗橋七葉:「私がUGNだったこと?」
葛野 くるみ:七葉ちゃんがいない方を向いている。
葛野 くるみ:「…………」
御薗橋七葉:「ていうか……」
御薗橋七葉:「それをくるみに黙ってたこと、かな」
葛野 くるみ:「はあ………?」
葛野 くるみ:「何なの……」
葛野 くるみ:「…………」
御薗橋七葉:「……ごめんね」
御薗橋七葉:「だって……言ったらくるみ、怒ると思って」
御薗橋七葉:「今とは別の意味だと思ってたけど」
葛野 くるみ:「…決めつけないでよ。謝れとか言ってないし……」
葛野 くるみ:「怒ってないし。何で謝るの」
御薗橋七葉:「んん……」
御薗橋七葉:肩を寄せる。
葛野 くるみ:「やだ」逃げる。
御薗橋七葉:「くるみが笑っててくれないと、私、嫌だな」
葛野 くるみ:「……」数センチ、もぞもぞと離れて蹲るような体育座りをしながら。
御薗橋七葉:背から肩に手を回して、抱き寄せるようにして。
御薗橋七葉:「ね……。どうしたらいい?」
葛野 くるみ:「………」抱き寄せられて、そこからは逃げない。
葛野 くるみ:「知らない……」
葛野 くるみ:「自分で考えれば…」
御薗橋七葉:「……ん……」
御薗橋七葉:湿った黒髪から水滴が滴って、シーツを濡らしている。
葛野 くるみ:「ねえ、やだ、服濡れる」
御薗橋七葉:「だから、シャワー浴びて着替えたら?」
葛野 くるみ:「やだ、あたし、今日ずっとこのままでいる」
御薗橋七葉:「どうして」
葛野 くるみ:「警護でしょ」
葛野 くるみ:「じゃあ、その方がいいじゃん…」
御薗橋七葉:「……誰も来ないよ、今更」
御薗橋七葉:「来たって、私なら怪我なんてしない」
葛野 くるみ:「………」
葛野 くるみ:「なんで……」
葛野 くるみ:「分かんないじゃん……」
御薗橋七葉:「分かんないけどね」少し笑って
御薗橋七葉:「でも、私よりも、くるみに無理してほしくないから」
御薗橋七葉:「警護って言っても……そうやって一晩中起きてる気じゃないでしょ?」
葛野 くるみ:「起きてるし……」
葛野 くるみ:「このまま朝まで起きてるもん」
御薗橋七葉:「明日起きられないよ?」
葛野 くるみ:「起きれるし……起きたままでいるもん……」
葛野 くるみ:「子供扱いするのやめて」
御薗橋七葉:「子供じゃない」
葛野 くるみ:「ちがう」
御薗橋七葉:「違わない」
葛野 くるみ:「…意味わかんない…」
葛野 くるみ:「放っておいてよもうー」
葛野 くるみ:体育座りしたまま、もぞもぞと頭を埋める。「七葉ちゃんなんか嫌い……」
御薗橋七葉:「放っておけるわけないでしょ」
御薗橋七葉:サイドテーブルからコーヒーを取って、一口啜る。
御薗橋七葉:「私は好きだから」
葛野 くるみ:「……嫌いだし」
御薗橋七葉:「でも、私は好き」
葛野 くるみ:「………」
御薗橋七葉:「くるみ」
御薗橋七葉:「顔見せてよ」
葛野 くるみ:黙り込んでいた。「………やだ」
葛野 くるみ:駄々をこねるように返事をする。
御薗橋七葉:「どうして」
葛野 くるみ:「やだから……」
御薗橋七葉:「そっか……」
御薗橋七葉:愚図る子供にするように、その背を軽く叩くように撫でる。
御薗橋七葉:「見たいなあ、くるみの顔」
葛野 くるみ:小さくなった身体が、もう意地になってどうにもならないことを示している。
葛野 くるみ:「………嘘つき」
御薗橋七葉:「ん?」
葛野 くるみ:「噓つきじゃん、七葉ちゃんなんか……」
葛野 くるみ:「あたしが怒るとか、勝手に決めつけて…」
葛野 くるみ:「意味分かんないから嫌い…」
葛野 くるみ:「嫌いだもん…」
葛野 くるみ:子供のようにそう言っては七葉ちゃんから逃げることもなく、むしろ七葉ちゃんの言葉を待つように。
御薗橋七葉:「……ごめん」
御薗橋七葉:「ごめんね、くるみ」
御薗橋七葉:「もう他には、何も隠してること、無いから」
葛野 くるみ:「………」
御薗橋七葉:「これで本当に、全部」
葛野 くるみ:「ほんとに?」
御薗橋七葉:「うん」
御薗橋七葉:「全部くるみにあげちゃった」
葛野 くるみ:「…全部いらないってば」
葛野 くるみ:「七葉ちゃんのバカ」
御薗橋七葉:「そうだったわね」笑って
御薗橋七葉:「顔、見せてくれる?」
葛野 くるみ:「…………」
葛野 くるみ:少しもぞもぞと動いて、七葉ちゃんの隣側の瞳だけ覗かせて。
葛野 くるみ:「………やだ」甘えるようにまた言う。
御薗橋七葉:視線に気付き、覗き込むようにして。
御薗橋七葉:「くるみ」
御薗橋七葉:「キスしたいな、私」
葛野 くるみ:「ふうん」
葛野 くるみ:少し、楽しそうな色が滲む。
葛野 くるみ:「すればいいじゃん」
御薗橋七葉:「意地悪しないでよ」
葛野 くるみ:「七葉ちゃんだって」
葛野 くるみ:「言わせないでよ」
葛野 くるみ:瞳が合う。無防備な姿勢のまま。
御薗橋七葉:その細い手首を掴んだ。柔らかなシーツに押し倒して、ベッドが大きく揺れる。
葛野 くるみ:銀髪が扇のようにシーツに広がり、じっとりと汗のかいた首筋や肩が露わになる。
御薗橋七葉:覆いかぶさるようにして、キスを落とす。ついばむような、短くて儚い触れ合い。
葛野 くるみ:「んっ…んぅ」
葛野 くるみ:瞳を閉じたまま、瞬きのような瞬間だけ唇を塞がれ、もどかしさに声が漏れる。
御薗橋七葉:何度も繰り返す内に、少しずつ長く、深く。
葛野 くるみ:「ふっ………」
御薗橋七葉:やがては、吐息と視線が熱情の色を帯び始める。
御薗橋七葉:舌を突き入れ、口内に侵入し、蹂躙するように。
御薗橋七葉:「ふ……ぅ……っ」
御薗橋七葉:「……っ、は……くるみ……」
葛野 くるみ:襲ってきた熱い舌には、こちらの舌を絡み合わせて応えた。
葛野 くるみ:咥内に襲う圧迫感に、支配しようという情念を全て感じ取る。
葛野 くるみ:「…………っ、ふ……」グロスのとれかけた唇を舐めた。
葛野 くるみ:瞳が合う。「……コーヒー」
葛野 くるみ:「苦いの嫌い」
御薗橋七葉:昂揚を押し殺すように深く息を吐く。眉間に皺を寄せた余裕の無い表情は、殆ど睨むかのようで。
御薗橋七葉:顔に張り付く湿った黒髪をかき上げて、くしゃりと握る。
御薗橋七葉:「……ごめん、今日」
御薗橋七葉:「優しく出来ないかも」
葛野 くるみ:「いいよ…」うっとりと返事をして、七葉ちゃんに両腕を伸ばす。
葛野 くるみ:「七葉ちゃんが、獣みたいになってるの、見たい」
御薗橋七葉:くるみの頬を撫でる掌が、徐々に下方へと滑っていく。白い首を撫で、圧迫するように。
葛野 くるみ:「あたしを、好きに扱ってみてよ…」
葛野 くるみ:それが良い。それが良かった。
御薗橋七葉:文字通り肉食の獣がそうするように、細い喉に歯を立てる。
御薗橋七葉:血が出ない程度に、だが甘い痛みが走るくらいに強く。
葛野 くるみ:「…っう…っ」
葛野 くるみ:くぐもった、嬌声というには色の少ない声が漏れる。
御薗橋七葉:背に手を回し、指先を立ててきつく抱き寄せる。ネイルもマニキュアも無い、深爪するほどに短く切り揃えられたその手元も、すべてくるみの為のものだ。
葛野 くるみ:人体の急所に与えられた刺激に、感覚は鋭敏に研ぎ澄まされ、本能が呼び覚まされていく。
葛野 くるみ:「七葉ちゃ……」
葛野 くるみ:彼女にされることは全て快楽で、彼女がすることは全て快感に繋がるのだと、教え込まれる。
御薗橋七葉:肩甲骨と背骨の生み出す起伏をなぞるように、密着させた掌を滑らせる。
御薗橋七葉:喉から口を離すと、僅かに歯形が残されている。
葛野 くるみ:「っあ……」背中の刺激が、痛みを快感に変えていった。
御薗橋七葉:普段、くるみの身体に痕が残るようなことは極力避けてきた。それは女優である彼女の為でもあり、自分が彼女を穢し、証を刻み込むことへの背徳でもあった。
御薗橋七葉:だが今は、それを気にする余裕も無い。背徳感はむしろ、更に興奮を煽る材料に過ぎなかった。
御薗橋七葉:掌が胸元まで降りてきて、タンクトップの下の乳房に五本指が沈み込む。
葛野 くるみ:「んぅ……」いつもよりずっと強い刺激に声が漏れる。
御薗橋七葉:愛撫と呼ぶには些かに乱暴に過ぎる手つき。握り、押し潰すように双丘を蹂躙する。
葛野 くるみ:彼女の触れ方もそうだけれど、何より自分自身が彼女の指先に夢中になっていた。
葛野 くるみ:「やっ…んんっ…」
葛野 くるみ:両腕を七葉ちゃんの背中に回しながら、知れず腰が動いて擦りつける。
御薗橋七葉:顔を沈めて、固くなった先端を舌で弄ぶ。舌先で転がし、側面でねぶり、唇で吸い付き、絶え間なく刺戟を与え続ける。
御薗橋七葉:熱に浮かされたように、くるみの身体に耽溺する。
葛野 くるみ:「っあ…」
葛野 くるみ:耐えきれず七葉ちゃんの頭をかき抱きながら、弄ばれ生まれる刺激に反応して声を上げ続ける。
葛野 くるみ:「っや、好き、良い、そこ、好き……」
葛野 くるみ:本能のまま声を上げ続ける。
葛野 くるみ:「んあ…、はあ、七葉ちゃん、七葉ちゃん…」
御薗橋七葉:「は……っふ……」
御薗橋七葉:散々弄び、痛いほどに敏感になったそこに、糸切り歯で甘噛みして不意に鋭い刺戟を与える。
葛野 くるみ:「んあっ!」
葛野 くるみ:痕の残る喉仏を晒して声を上げた。
御薗橋七葉:つぅ、と銀糸の橋を引いて顔を離し、荒く熱い息を吐く。
御薗橋七葉:「……やばい」
御薗橋七葉:「頭おかしくなりそう……」
葛野 くるみ:刺激を与え続けられて高まった快感に、一気に熱を与えられて弾けたような、頭が真っ白になる感覚。
葛野 くるみ:火照り切った息を吐きながら、茫然と目の前の彼女を見やる。
葛野 くるみ:全身が湯だったように熱く、心地良く、急いていた。
葛野 くるみ:「………なってよぉ」
葛野 くるみ:「頭、おかしくなって……」
葛野 くるみ:「もっと、もっと欲しいの…、七葉ちゃんが…!」
葛野 くるみ:腹ごと擦りつけて続きをねだる。
葛野 くるみ:触れられたところが気持ち良くて、熱を持って、どうにかなってしまいそうだった。
御薗橋七葉:「……くるみ……っ……」
御薗橋七葉:誘われるがままに身体を重ねる。掌が胸から肋骨から臍、下腹を滑って、やがてその入り口に触れる。
葛野 くるみ:「んん…っ」
葛野 くるみ:既にショーツはしとどに濡れて、続きを誘うように熱い蜜を漏らしている。
御薗橋七葉:湿った水音と共に、指が秘部に触れる。最初は探るように表面をなぞり、やがて掻き分けるように内側へと入っていく。
御薗橋七葉:「……熱い……」
葛野 くるみ:待ちきれないほど昂っていた秘溝は、触れられるたびに強い快感をもたらす。
葛野 くるみ:「んぁ、あ…あたしも、あたしも……」
葛野 くるみ:分け入ってくる指先と、侵される圧迫感につい腰が浮く。
御薗橋七葉:反射的に快感から逃れようとする身体をを捉えるように、上から密着して拘束する。
葛野 くるみ:「七葉ちゃん、七葉ちゃん……っ、あ!うぁっ…」
葛野 くるみ:先程まで刺激を与えられ続けた胸元が、密着してまた圧迫されて。
葛野 くるみ:それだけでまた快感が呼び起こされる。熱い吐息が絶え間なく漏れた。
御薗橋七葉:長い指が複雑に蠢いて、撫で、摘まみ、ひっかき、抽挿し、慣れるより先に別の刺戟を与え続ける。
御薗橋七葉:「……可愛い」
御薗橋七葉:「今日のくるみ……すごく可愛い」
葛野 くるみ:与えられる刺激、迫りくる快感にもどかしさを感じ、たまらなくなってしまっていた。
葛野 くるみ:目を潤ませ、何も考えられなくなってしまいながら、七葉ちゃんだけを感じている。
葛野 くるみ:「七葉ちゃんの………」
葛野 くるみ:「七葉ちゃんのせい………」
葛野 くるみ:熱い吐息を吐きながら、ねだるようにして言葉を続ける。
葛野 くるみ:「……ねえ、七葉ちゃんも脱いで…」
葛野 くるみ:動かすたびにぐちゃぐちゃと水音を漏らす秘部を晒すように、脚を開いて。
葛野 くるみ:「ここ、七葉ちゃんのと、合わせようよ…」
御薗橋七葉:「……」ふらふらと灯に誘われるように、ガウンの帯を解き、乱暴に脱ぎ捨てる。
御薗橋七葉:白くしなやかで、少し骨ばった裸体を晒すと、既に太腿まで液体が伝っている。
葛野 くるみ:みだらな体勢をとりながら、恋人の姿に淫猥に笑う。
御薗橋七葉:くるみの足を持って、沈み込むように身体を密着させる。ひどく熱を帯びたそこが触れ合うと、湿った水音が響いた。
御薗橋七葉:「っ、ぁ……」
葛野 くるみ:「っあ……っ!」ひときわ大きな声が響く。
御薗橋七葉:快楽と熱に背を震わせて、思わず目を瞑る。
御薗橋七葉:「……や、これ、ちょっと……」
御薗橋七葉:「やばい、かも……」
葛野 くるみ:「んあ…うん……うん……!」
葛野 くるみ:ぬるぬると滑らすように、自然と腰が揺れる。
御薗橋七葉:「ふぁ、……っ……!」高い声が漏れる。
葛野 くるみ:いやらしく水音が響き、自分達ではどうしようもできない快感を呼び覚ましていく。
葛野 くるみ:「ふふ……っ」
御薗橋七葉:「待って、これ……ひぅっ……!待って……!」
葛野 くるみ:「やだ…、…んっ……あっ…やっ……」
葛野 くるみ:制止を聞くことなく、本能に突き動かされるままに腰を動かし、どんどん快楽を高めていく。
御薗橋七葉:「やぁ、っ、あぁあぁっ……!」
御薗橋七葉:常からは想像も出来ない嬌声をあげて、身体を跳ねさせる。
御薗橋七葉:言葉では困りながらも、身体は更に快感を求めて腰を擦り付ける。
葛野 くるみ:「あはっ……七葉ちゃんも、可愛い………っ」
御薗橋七葉:熱に浮かされながら、殆ど無意識にくるみを抱き寄せる。
御薗橋七葉:痛いほど強く、苦しいほどきつくその身体を抱き締め、密着する。
葛野 くるみ:「え、あ、っうぅ………っ」
御薗橋七葉:手足の感覚の鈍い彼女でも分かるように、全身で。熱を分かち合い、身体を確かめ合い。二人の境目を失くそうとするかのように、強く抱き締める。
御薗橋七葉:「くる、み……」
御薗橋七葉:「好き、大好き……」
葛野 くるみ:下半身から頭まで気持ち良くて、2人ごと溶けて、どちらかなのかわからなくなりそうだった。
葛野 くるみ:「あはっ…」
葛野 くるみ:耳元で囁かれる声だけが、あたしと七葉ちゃんの境界線を思い出させてくれた。
葛野 くるみ:「知ってる……」
御薗橋七葉:「わた、し……もう……」
御薗橋七葉:潤んだ瞳、上気した顔でねだるように甘い声を漏らす。
御薗橋七葉:「くるみ、一緒に……」
葛野 くるみ:「うん…っ、一緒に、いこ……」
葛野 くるみ:そう言うと同時、よりいっそう強く、下半身を擦りつけて刺戟を与えた。
葛野 くるみ:全身に揺蕩い、押し寄せていた快感が最高潮にまで達して、弾ける。
御薗橋七葉:「っ、あ、は……────っ」
御薗橋七葉:引き金が引かれたように、思考が真っ白に塗り潰される。熱に焼かれる意識の中で、くるみの声だけを聞いて、その身体を抱き、その手を必死に握り締める。
葛野 くるみ:「あぁっ────…………っ!」
葛野 くるみ:視界が明滅するように曖昧な意識の中で、秘部から飛沫が漏れて、触れ合った箇所を濡らす。
御薗橋七葉:背が弓なりに跳ね、全身が快楽に震えながらぴんと張り詰める。溺れる魚のように口をぱくぱくさせて。
御薗橋七葉:「……ぁ……う……」
御薗橋七葉:やがて、ぐったりと脱力してくるみに凭れかかる。
葛野 くるみ:「…………」
葛野 くるみ:抱き寄せられながら、手のひらを強く握りしめられているのを緩慢に見ていた。
葛野 くるみ:「……っはあ………」熱い息を零しながら、七葉ちゃんを受け止める。
御薗橋七葉:胸元に顔を埋めたまま、乱れた息を漏らす。
葛野 くるみ:「……気持ち良かったね……」うっとりと言う。
御薗橋七葉:「……私も」顔を上げないまま言う。
葛野 くるみ:「うふふ…っ」くすくすと笑う。「七葉ちゃん、可愛かった……」
御薗橋七葉:「嘘。くるみの方が可愛かった」
葛野 くるみ:「ん~?ありがとー」胸元にある七葉ちゃんの頭に、口づけを落とす。
御薗橋七葉:「ん……」快楽の余韻で火照った身体。鎖骨や胸元にキスをする。
葛野 くるみ:「や、ん……」呼吸を鎮めるため、ゆっくりと胸元は上下している。
御薗橋七葉:「ふー……」
御薗橋七葉:徐々に身体ごと動いて、キスは顎の下、頬へと上がっていき、じゃれるように耳を食む。
葛野 くるみ:「ちょっと、もー…、やだぁ…」
葛野 くるみ:「ん、ふふ…」
御薗橋七葉:「……駄目ね、これ」
御薗橋七葉:「こんな時なのに……またしたくなっちゃう」
葛野 くるみ:「ん」
葛野 くるみ:返事の代わり、七葉ちゃんを押し倒すようにして唇を塞ぐ。
御薗橋七葉:「……」ほんの少し瞠目して、だがそれを受け入れる。
御薗橋七葉:「んん……」
御薗橋七葉:「……んー?」目線だけで問い掛ける。
葛野 くるみ:舌先だけを絡ませ、すぐにのいた。
葛野 くるみ:押し倒した状態のまま、口を離して悪戯っぽく笑う。
葛野 くるみ:「しないの?」
御薗橋七葉:「……もう……」
御薗橋七葉:「ずるいわよ、それ」
御薗橋七葉:背に手を回し、ごろんとひっくり返す。
葛野 くるみ:「ふふっ!」
御薗橋七葉:そのままくるみを抱き上げて、立ち上がる。
葛野 くるみ:「え、なに、何?」
御薗橋七葉:「シャワー浴びましょ、一緒に」
御薗橋七葉:「続きはその後」
葛野 くるみ:「はあい」くすくす笑いながら、顔を摺り寄せる。
御薗橋七葉:「明日ちゃんと起きられるかな……」抱いたままシャワールームへ歩き出す。
葛野 くるみ:「寝なきゃいいんだよー」
御薗橋七葉:「それじゃ明日寝ちゃうでしょ」
葛野 くるみ:「寝ないもんー」
御薗橋七葉:「本当かな……」
葛野 くるみ:「本当ー」
葛野 くるみ:じゃれ合うような言葉が響き合い、シャワールームの扉が閉じた。
【Climax/ラオペの前に】
GM:クライマックスシーンです。全員登場!
四条 幸音:四条 幸音の侵蝕率を1d10(→ 3)増加 (71 → 74)
椿尾 輪花:椿尾輪花の侵蝕率を1d3+3(→ 5)増加 (76 → 81)
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を3増加 (81 → 84)
葛野 くるみ:葛野くるみの侵蝕率を1d3+3(→ 6)増加 (87 → 93)
GM:御薗橋七葉の侵蝕率を1D10(→ 5)増加 (100 → 105)
GM:君達が突き止めた敵の集合地点は、十年以上前に閉館した廃劇場だった。
GM:踏み込むと、内部には既にかなりの戦力が集結しつつあった。辺りには一気に複数人の≪ワーディング≫が展開され、一触即発の空気が張り詰める。
"ブラックハイド":「あんた達……!何でここが……!」
"ブラックハイド":予想外の事態に動揺した様子の山科が、君達を睨む。
GM:周囲には他にも数人、元劇団のメンバーの姿がある。
葛野 くるみ:「あはー!驚いてるのダッサくないー?」
椿尾 輪花:「それを知ることには何の意味もないと思いますけど……」 自分の口許に指を立てて
藁科 サイカ:「しかしながら、〝タネ明かし〟は舞台の楽しみの一つではあるまいか! そうだろう、悪党諸君!」
四条 幸音:「どうやって、はともかくさ」
四条 幸音:「何のためにか、は……分かるよね」
オールドローズ:「……」一人の小柄な少女が歩み出る。
オールドローズ:元“ラオペ”メンバー。分裂後も四条と連絡を取り合っていた友人でもある。
オールドローズ:「……四条さん……」
四条 幸音:「……」
オールドローズ:「……ごめんなさい。私……」
オールドローズ:「…………」
オールドローズ:目を逸らし、俯く。
オールドローズ:だが、この場に居るということは、“ラオペ”を襲撃する敵の一人ということだ。
四条 幸音:「恨み言を言うつもりはないよ」
四条 幸音:「僕が一人で無茶をして、失敗した。それだけ」
四条 幸音:「あんたが悪いなんて、言ってやらないから」
オールドローズ:「…………」
四条 幸音:「でも……僕は、“ラオペ”を守りたい」
四条 幸音:「そっちに居るなら……邪魔するなら、容赦しない」
"ブラックハイド":「チッ……!どうすんのよ、これ……!」
"ブラックハイド":「聞いてないわよ、こんなの!ふざけんな!」
藁科 サイカ:「仰向けになって腹を見せるのが得策ではあるまいかね、黒毛の野良犬殿?」
藁科 サイカ:「何も我々、水に落ちた犬を棒もて打つような真似は好まないのだよ!」完全に〝そういう役〟に入りきった台詞回し。
椿尾 輪花:「ええ。一番犠牲が少なく済むのは、まさしくそれ」
椿尾 輪花:「大人しく恭順いただくか、それとも"天眼"の手駒として猛々しく捨て鉢になるか……」
"ブラックハイド":「やかましいッ!黙りなさいよ雌犬共!」
"ブラックハイド":「“天眼”!どうすればいいの!見てるんでしょ、“天眼”!!」
葛野 くるみ:「ちょーキレてる」くすくす笑う。
“天眼”:「『居る』とも」
“天眼”:虚空から声が響く。何も無い空間にブロックノイズが走り、偽装が剥がれていく。
“天眼”:姿を現したのは、ダークグレーのスーツに身を包んだ長身の男。オールバックに撫でつけた黒髪。悠然とした態度だが、目元に神経質な色が隠しきれていない。
“天眼”:「狼狽えるな。“ラオペ”殲滅という目標に変更はない」
“天眼”:「むしろ好都合だと思え。獲物が自分から死地に飛び込んできたのだからな」
四条 幸音:「こいつが……!」
椿尾 輪花:「あら。こんにちは、"天眼"。面倒見が良いんですね」
“天眼”:「…………」目を細める。椿尾には“メイルストロム”として見覚えのある相手だ。
椿尾 輪花:「陰謀家ぶらず、UGNの方でもそういう風に振る舞っていれば、わざわざこんな風に手を回すこともなかったでしょうに」
"ブラックハイド":「UGNの方……?」
"ブラックハイド":「何よ、何言ってんの、こいつ?」
“天眼”:「……」
藁科 サイカ:「……なるほど、見た目ばかりは優れたる官僚。だがどうも、どうにも文弱の気配は──」
椿尾 輪花:「あら。話してあげていないんですね。可哀想に。となると次の言葉は……」
椿尾 輪花:「『敵の言葉に耳を貸すな』?」 分かった風に笑っている
“天眼”:「殺せ」
椿尾 輪花:「まあまあ」
椿尾 輪花:「存外追い詰められていますね。吉報です」
椿尾 輪花:にこやかな表情で、辺りには既に影の糸が伸びている
GM:“天眼”の指示で、動揺していた敵達が一気に戦闘態勢に入る。
“天眼”:「どこから情報が……いや……」
“天眼”:「貴様の仕業か、“レジスタ”……!」
御薗橋七葉:返答は無い。ただ“ラオペ”を取り囲む空間が歪んでいく。
“オールドローズ”:「……っ……」
“オールドローズ”:褪せた赤茶の短髪が燃え上がり、煌々たる炎として周囲を照らす。
"ブラックハイド":「“ラオペ”……!ここで潰してやる!」
"ブラックハイド":重力の刃が展開され、古びた座席を巻き込んで破砕していく。
葛野 くるみ:「あは来た!動いていいよね?」ホットピンクで彩った大型ナイフが身の回りを旋回し、生体電流を撒き散らす。
藁科 サイカ:「……官僚の顔、将の顔。兵は動揺こそあれ構えは迅速。ギヨームより余程の大敵ではないか」
藁科 サイカ:「しかし、ここで身の程を知るようでは悪党では居られぬ! 俺は身の程知らずにも前へ進もうとしよう!」
藁科 サイカ:徒手空拳──否。体内には既に、多重の武装を〝装着〟している。……両手を開き悠々と歩み出す。
四条 幸音:「退かないよ。舞台が待ってる」
四条 幸音:「僕らの明日の、邪魔はさせない……!」
GM:クライマックス戦闘を開始します。
エンゲージ
葛野 椿尾 四条 藁科 御薗橋
(10m)
ブラックハイド オールドローズ シャンデル・ド・グラス フェアリーテイル
(5m)
天眼
GM:廃劇場に満ちる≪ワーディング≫が、君達の衝動を喚起する。
GM:衝動判定、難易度9です
葛野 くるみ:7dx>=9
DoubleCross : (7DX10>=9) → 10[4,5,5,6,6,9,10]+3[3] → 13 → 成功
葛野 くるみ:2d10+93
DoubleCross : (2D10+93) → 14[6,8]+93 → 107
四条 幸音:3DX+2+0@10>=9
DoubleCross : (3DX10+2>=9) → 7[3,7,7]+2 → 9 → 成功
四条 幸音:良かった成功
四条 幸音:四条 幸音の侵蝕率を2d10(→ 6)増加 (74 → 80)
四条 幸音:侵食全然上がらない!
椿尾 輪花:5dx+1>=9
DoubleCross : (5DX10+1>=9) → 10[1,7,7,8,10]+5[5]+1 → 16 → 成功
椿尾 輪花:2d10
DoubleCross : (2D10) → 8[3,5] → 8
椿尾 輪花:椿尾輪花の侵蝕率を8増加 (81 → 89)
御薗橋七葉:2DX>=9
DoubleCross : (2DX10>=9) → 9[2,9] → 9 → 成功
御薗橋七葉:成功した……
御薗橋七葉:105+2D10
DoubleCross : (105+2D10) → 105+15[6,9] → 120
藁科 サイカ:8dx+4>=9 衝動判定
DoubleCross : (8DX10+4>=9) → 9[2,3,3,6,6,7,8,9]+4 → 13 → 成功
藁科 サイカ:2d10 侵蝕
DoubleCross : (2D10) → 11[1,10] → 11
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を11増加 (84 → 95)
GM:ではセットアップから!
四条 幸音:セットアップなし!
葛野 くるみ:ありません~
椿尾 輪花:ない!
藁科 サイカ:無し!
“フェアリーテイル”:≪攻撃誘導≫
“フェアリーテイル”:ラウンド中、自身を対象に含まない攻撃判定ダイスを-12個
藁科 サイカ:げっ
四条 幸音:ひえーっ!
椿尾 輪花:死にたいようだな
“シャンデル・ド・グラス”:≪苛烈なる火≫+≪先陣の火≫
“シャンデル・ド・グラス”:攻撃力上昇し行動値+10
四条 幸音:ひーっ速い速い
御薗橋七葉:コンボ【ウェルメイド・プレイ】
御薗橋七葉:≪攻撃誘導≫+≪ショウタイム≫+≪甘い芳香≫+≪タブレット≫+≪多重生成≫
葛野 くるみ:やれー七葉ちゃん!
御薗橋七葉:対象は敵全員
御薗橋七葉:自身を対象に含まない攻撃ダイス-18個、行動値-8
GM:いやマジで言ってるこいつ?
椿尾 輪花:アライグマタスカル
四条 幸音:めちゃめちゃ助かっちゃう
葛野 くるみ:好き~~♡♡
GM:御薗橋七葉の侵蝕率を16増加 (120 → 136)
“天眼”:≪オーバーウォッチ≫ 自身以外のメジャー判定ダイス+3個
GM:ではイニシアチブ 行動値16で“シャンデル・ド・グラス”の手番です
“シャンデル・ド・グラス”:待機します
四条 幸音:なんと……?
葛野 くるみ:なんだなんだ
GM:同じく行動値16 “天眼”の手番です
“天眼”:メジャー ≪ポイズンフォッグ≫+≪戦乙女の導き≫+≪狂戦士≫+≪オーバードーズ≫
“天眼”:自身以外のメジャー判定ダイス+15個 C値-1 攻撃力+5
藁科 サイカ:やってくれるぜ!
四条 幸音:やっやろうっ
椿尾 輪花:ハチャメチャが押し寄せてくる
四条 幸音:凄まじいバフデバフ合戦
“フェアリーテイル”:攻撃誘導対象
“フェアリーテイル”:choice[葛野,藁科,四条]
DoubleCross : (CHOICE[葛野,藁科,四条]) → 藁科
藁科 サイカ:貴様ーっ!
葛野 くるみ:サッサイカくん
“フェアリーテイル”:藁科さんです
四条 幸音:藁科ーっ!
藁科 サイカ:こちとら攻撃ダイスが4個とか5個なんだぞ!!!
“シャンデル・ド・グラス”:大柄な男が駆け出す。元々“ラオペ”で衣装とメイクを担当していた男。
“シャンデル・ド・グラス”:甲高い音を立て、両腕から凶悪な氷柱が無数に伸びる。
“シャンデル・ド・グラス”:「悪いわね。個人的にはやりたくないんけど……」
“シャンデル・ド・グラス”:「こっちにも生活ってもんがあるから…… ……!」
“シャンデル・ド・グラス”:脚を止める。
“シャンデル・ド・グラス”:視界を覆いつくす、万華鏡めいた光の屈折。敵が見えないどころか、味方とも分断され、上下左右も分からない。
“シャンデル・ド・グラス”:「何よ、これ……!?」
御薗橋七葉:「貴方も元劇団員なら、ご存知無いですか?」
御薗橋七葉:揺らめいて変化し続ける光の帳の向こうから、低い声が響く。
御薗橋七葉:「演者に手は触れないよう、お気を付けください」
“シャンデル・ド・グラス”:「誰……! 新入りさん……!?」
“天眼”:「……チッ……」
葛野 くるみ:「えー、カッコいいー」
椿尾 輪花:「私たちも生きなければいけませんからね」
椿尾 輪花:「刃を向け合って、容易く済むとは思わないことですよ」
“シャンデル・ド・グラス”:「あの日劇団を出た時から、そんなの覚悟の上だっての……!」
“天眼”:忌々し気に舌打ちをし、劇場の床に手を触れる。不可視の電流が走り、敵の身体を這い上がる。
“天眼”:強制的に強化された生体電流が、感覚と身体能力を著しく活性化させる。対象への負荷を顧みないそれは、駒を使い捨てにする能力だ。
GM:行動値10、藁科さんの手番です。
藁科 サイカ:オーケー。力の法則が無いのは残念だがやむを得まい!
四条 幸音:ごめんよ~
藁科 サイカ:マイナーアクション、戦闘移動で10m前進してエネミーとエンゲージするよ
藁科 サイカ:そしてメジャーアクションは《ウルトラボンバー》。対象は自分を覗く範囲なので、
藁科 サイカ:ブラックハイド オールドローズ シャンデル・ド・グラス フェアリーテイル が対象だ
GM:ゲ~ッ
藁科 サイカ:という訳でいくぜ!
GM:どうぞ!
藁科 サイカ:4dx+2 命中判定、リアクション不可
DoubleCross : (4DX10+2) → 10[6,7,9,10]+3[3]+2 → 15
GM:あっすいません
GM:どうぞじゃなかった
藁科 サイカ:む
“オールドローズ”:≪孤独の魔眼≫
葛野 くるみ:何~ッ
藁科 サイカ:こいつら……ほんとこいつら……
藁科 サイカ:俺にメタ張ってる……
“オールドローズ”:対象を自身一人に変更します
四条 幸音:なんだとぉ……
椿尾 輪花:止めようがないな……
藁科 サイカ:いいだろう、ならば
藁科 サイカ:葛野 くるみ 優越感/○侮蔑 のロイスをタイタス化し昇華、不利な効果を消去します
GM:何ィ~~
藁科 サイカ:不利な効果、はGM裁量だから何処まで消せるかは委ねる形になるが……!
藁科 サイカ:どこまで行けるかな!
GM:孤独の魔眼が消えるかどうかってことね……
藁科 サイカ:≪攻撃誘導≫もですわね……
GM:そっちは消えると思うけど……
藁科 サイカ:それは助かる……
GM:効果は≪攻撃誘導≫のみで!
藁科 サイカ:よろしい、ならばオールドローズにリア不でさっきの攻撃だ!
藁科 サイカ:ダメージ判定行きます
GM:どうぞ!
藁科 サイカ:2d10+15 装甲-5して計算
DoubleCross : (2D10+15) → 12[7,5]+15 → 27
“オールドローズ”:痛いけど……まだ生きてる!
藁科 サイカ:deha《餓鬼魂の使い》
藁科 サイカ:HPダメージを受けたオールドローズちゃんに邪毒3をプレゼントします
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を3増加 (95 → 98)
藁科 サイカ:sosite
“オールドローズ”:イヤ~~
藁科 サイカ:そしてメインプロセス終了でHPが0になって、《リザレクト》
藁科 サイカ:1d10 リザレクト
DoubleCross : (1D10) → 8
藁科 サイカ:最大HPが7しかないので回復は
藁科 サイカ:回復は7、よって侵蝕上昇も7だ!
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を7増加 (98 → 105)
GM:演出どうぞ!
藁科 サイカ:──彼ら、彼女らは知っているだろう。舞台を降りて観客となった者達も。
藁科 サイカ:このメンバーでラオペが〝公演〟を行う時、開幕のブザーは常に。
藁科 サイカ:たん
藁科 サイカ:踏み込む足音と、良く仕上がった舞台用の笑顔。そして、
藁科 サイカ:エグザイル能力により肉体の内圧を極端に高め、内側から自らを爆ぜさせ、骨肉や体内の金属片を撒き散らす、
藁科 サイカ:〝グレネード〟の投擲である──
藁科 サイカ:ごうっ!
“オールドローズ”:飛散する大量の破片を、包み込むように爆風が巻き上がる。
“オールドローズ”:中心点に居るのは小柄な少女。元小道具担当、コードネームは“オールドローズ”。
藁科 サイカ:「──むっ!?」
“オールドローズ”:「あ、ぎ……!」
“オールドローズ”:無数の凶器に身体を引き裂かれながらも、その全てを抑え込み、受け止める。
藁科 サイカ:「……驚いた。君にそこまでの力があったとは──見くびっていたと素直にこうべを垂れるべきか」腹が裂け、血肉が零れた人の形が、掠れた声で台詞を吐く。
藁科 サイカ:だが
藁科 サイカ:「……だが、それは浴びるべきではあるまいよ。悪徳にむせび泣く俺の血であるぞ」
藁科 サイカ:飛散した破片に付着した血肉は、病毒に冒された藁科サイカのもの。
藁科 サイカ:それはあまりの即効性を以て、オールドローズの骨肉をさえ蝕み始める。
藁科 サイカ:……古典の名作にはつきものの、肺病のような吐血を伴って。
“オールドローズ”:「う、うぅう……!」
“オールドローズ”:呻き、血を吐きながらも、君達を睨み付ける。
“オールドローズ”:「舞台が……貴方たちだけで回ってるだなんて……思わないで……!」
GM:行動値8 御薗橋さんの手番です。
御薗橋七葉:マイナーで13m後方に移動
御薗橋七葉:メジャーで隠密状態になります。
御薗橋七葉:以上です
GM:行動値6 四条さん、葛野さんの手番です。
エンゲージ
御園橋
(13m)
葛野、椿尾、四条
(10m)
藁科
ブラックハイド オールドローズ シャンデル・ド・グラス フェアリーテイル
(5m)
天眼
葛野 くるみ:先にこれ貼っておくね
四条 幸音:ありがとうございます!
藁科 サイカ:親切さんだ
GM:ありがたい……
葛野 くるみ:幸音ちゃん先に動いちゃって良いですよ~
四条 幸音:了解!
藁科 サイカ:(ウルトラボンバーの侵蝕4をあげ忘れてたので105+4de)
藁科 サイカ:109だぜ
四条 幸音:では手番もらいます!
四条 幸音:マイナーアクション、ストライクチップの効果起動。メジャーの命中ダイス+2
四条 幸音:メジャーアクション、<コンセントレイト:オルクス>+<ディストーション>、コンボ:欠けた願い
四条 幸音:対象はダメージ受けてるオールドローズだ!
四条 幸音:対応なければ判定します
GM:判定どうぞ!
四条 幸音:8DX+5+0@7 欠けた願い
DoubleCross : (8DX7+5) → 10[1,2,4,4,5,5,5,9]+3[3]+5 → 18
四条 幸音:ちょっと低い!ここは使うか……
四条 幸音:妖精の手を使います!
四条 幸音:四条 幸音の侵蝕率を4増加 (80 → 84)
四条 幸音:これで3回目!出目一つを10にして振りたし!
四条 幸音:1DX+25+0@7
DoubleCross : (1DX7+25) → 6[6]+25 → 31
四条 幸音:31!
葛野 くるみ:すごい増えた!
“オールドローズ”:5DX+1>=31 ドッジ
DoubleCross : (5DX10+1>=31) → 10[4,6,6,9,10]+3[3]+1 → 14 → 失敗
四条 幸音:できればもうちょっと回ってほしかったけど……!とりあえず30!
“オールドローズ”:くっ……
GM:ダメージどうぞ!
四条 幸音:4d10+1d10+7
DoubleCross : (4D10+1D10+7) → 23[6,6,2,9]+6[6]+7 → 36
四条 幸音:36点!
“オールドローズ”:ギャーッ
“オールドローズ”:HP0。復活エフェクトありません
四条 幸音:倒れた……!
四条 幸音:前を見据え、狙いを定める。今狙うべき相手、倒すべき敵は。
四条 幸音:「………」
四条 幸音:弱気で、いつも人の影に隠れていた小柄な少女。
“オールドローズ”:座席の合間、喀血しよろめきながらも立っている。
“オールドローズ”:「……四条さん……」
四条 幸音:言いたいことは山程ある。恨み言は言いたくないけど、何も思うところがないって言えば嘘。
四条 幸音:……でも。
四条 幸音:仲間が居なくなって。悲しくて。寂しくて。
四条 幸音:皆に隠れて連絡取ったのを咎めながら、それでも僕を受け入れてくれたのは、君だった
四条 幸音:「……ありがとう、若木」
四条 幸音:君にも、助けられた。
四条 幸音:けれど。
四条 幸音:「言ったよ。容赦、しない」
四条 幸音:コインを弾く。黒い鴉が飛び出していく。
四条 幸音:不吉な羽音を鳴らしながら、真正面から体当たり。
“オールドローズ”:「く、ッ……!」
“オールドローズ”:爆炎の壁を展開するが、鴉はそれを擦り抜けた。
四条 幸音:「……あんたは避けない。防ごうとする」
四条 幸音:分かってる。自分がかわすことで、他の誰かが傷つくことを恐れて。
四条 幸音:「……ほんとに、馬鹿」
四条 幸音:だから、友達だった。
四条 幸音:「おやすみ」
四条 幸音:着弾。もう、そちらは振り返らない。
“オールドローズ”:「……あ、あ……」
“オールドローズ”:戻らないものを掴もうとするかのように、伸ばした手が空を切る。
“オールドローズ”:「どう、して……こんな……」
“オールドローズ”:力無く崩れ落ち、燃え盛っていた炎が消える。
“天眼”:「……火力役が真っ先に落ちてどうする……」
“天眼”:「使えん駒が。これだからFHチルドレンは練度が足りん」
“天眼”:吐き捨てるように言って、顔を顰める。
四条 幸音:「黙れ」
四条 幸音:「あんたが、知ったように語るな……!」
四条 幸音:四条 幸音の侵蝕率を4増加 (84 → 88)
GM:同じく行動値6、葛野さんの手番です。
葛野 くるみ:はあーい
葛野 くるみ:マイナーで10m前進。PCにエンゲージ。
葛野 くるみ:メジャーで【さきみだれてハラワタ】
葛野 くるみ:《コンセントレイト:ノイマン》《マルチウェポン》《ヴァリアプルウェポン》《ハイマニューバ》。
葛野 くるみ:ブラックハイドに攻撃します
GM:判定どうぞ!
葛野 くるみ:《ヴァリアプルウェポン》の効果でキーンナイフ×2を選択、攻撃力+10、更に対象の装甲値を-5してダメージを算出します。
葛野 くるみ:10dx7+22
DoubleCross : (10DX7+22) → 10[3,4,4,5,5,5,7,7,9,9]+10[7,7,8,9]+10[5,7,8,10]+10[5,6,8]+10[10]+3[3]+22 → 75
四条 幸音:えっ……?
GM:????????
椿尾 輪花:なにそれ
葛野 くるみ:おっ おおお
藁科 サイカ:えっっぐ
葛野 くるみ:これが光のレズパワーだ
四条 幸音:幸運の称号譲って良くない_
四条 幸音:?
葛野 くるみ:これが光の幸運レズパワーだ
四条 幸音:称号つけてパワーアップした
御薗橋七葉:流石よくるみ……
"ブラックハイド":4DX+1>=75 ドッジ
DoubleCross : (4DX10+1>=75) → 6[2,5,5,6]+1 → 7 → 失敗
"ブラックハイド":葛野ォ~~~~~ッッ
葛野 くるみ:イエ~~イ
GM:ダメージどうぞ!
葛野 くるみ:8d10+26 装甲値を-5してダメージ算出 装甲有効
DoubleCross : (8D10+26) → 55[10,7,7,10,8,9,1,3]+26 → 81
葛野 くるみ:ひっ光の幸運レズパワー!
GM:嘘だろ……
四条 幸音:これが光のレズ……
"ブラックハイド":死にました
四条 幸音:し、しんだ
藁科 サイカ:そりゃね……
藁科 サイカ:死ぬよね……
葛野 くるみ:やったああ
葛野 くるみ:葛野くるみの侵蝕率を12増加 (107 → 119)
葛野 くるみ:「幸音ちゃん、泣かないでよ」
葛野 くるみ:「シルヴェストルは、どんな時も立ち上がってくれなくちゃ」
四条 幸音:「……大丈夫。分かってる」
四条 幸音:瞳に溜めたものを必死にこらえて。
葛野 くるみ:「…うん」
葛野 くるみ:(いなくなった子のこと気にしてもしょうがないし)
四条 幸音:「力を貸して、葛野……リュシエラ」
葛野 くるみ:「うんっ、あたし、道を開いてあげる!」
葛野 くるみ:四条 幸音/秘匿/隔意:〇
葛野 くるみ:秘匿感情の公開及び感情変更を行います。
葛野 くるみ:四条 幸音/友情:〇/隔意
四条 幸音:「……期待してるから。僕らの花形」
葛野 くるみ:プリマ・バレリーナのように高く飛び上がると、手足の換装が一瞬で完了する。
葛野 くるみ:胴体から二艇の鋏を伸ばしたような歪な女が、戦場を舞い踊る。
葛野 くるみ:剪定先は、たまたま…目の前にいた、ブラックハイド。
葛野 くるみ:「いくよぉ!」
"ブラックハイド":「葛野ォッ……!」怒りに顔を歪める。重力の剣を幾本も放ち、迎撃せんとする。
葛野 くるみ:身体を回し足を回し、縦横無尽に動いて、刃の歯車と化し、剣を弾き返しながらブラックハイドの身体を切り払っていく。
葛野 くるみ:切除。
葛野 くるみ:切断し、裁断し、横断し、縦断し、
葛野 くるみ:切除し裁断し横断し切断し縦断し切除し切断横断縦断切断切除切断横断縦断切断切除切断横断縦断切断切除
葛野 くるみ:切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除
葛野 くるみ:切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除切除
"ブラックハイド":「がっ……ぎゃっ……ぎ……」
葛野 くるみ:「────────あははははははああっ!」
"ブラックハイド":「やめっ……や……べっ……」
葛野 くるみ:「楽しい…楽しいねっ!楽しい………」
葛野 くるみ:「………終わり?」
"ブラックハイド":「…………」
葛野 くるみ:「なんだぁ……えっと………」
葛野 くるみ:「また名前忘れちゃった」
葛野 くるみ:頬にかすめた鮮血をぺろりと舐めた。
"ブラックハイド":切り刻まれ、真っ赤な襤褸雑巾のようになった“ブラックハイド”が、重力の刃を生み出そうとして。
"ブラックハイド":結局、恨み言のひとつすら吐けずに崩れ落ちる。
葛野 くるみ:「次いこっ、次!」
藁科 サイカ:「……美しくも悍ましき悪魔、その名はリュシエラ」
藁科 サイカ:「悪魔に魅入られたものに、栄光の未来など無いのだよ」
椿尾 輪花:(……まあ、原型残ってるなら良いですか……)
四条 幸音:「(……山科)」
四条 幸音:僅かな悔いを噛み殺し、前を向く。
御薗橋七葉:「……くるみ」
御薗橋七葉:血肉に塗れたその姿にも、美しく愛おしいものを見るように目を細めた。
GM:行動値5 椿尾さんの手番です。
椿尾 輪花:《狂戦士》+《さらなる力》+《崩れる大地》
椿尾 輪花:対象を未行動にし、さらに対称が次に行うメジャーアクションの判定ダイスを+2、C値を-1、ただしシーン間ドッジダイス-1。
椿尾 輪花:本来《さらなる力》の難易度は20ですが、《崩れる大地》により対決に上書きされています。
GM:だっ脱法コンボ
GM:対象は!
椿尾 輪花:15点でRC達成値を安定20出す方法なんてあるものかよ! という訳で行きます。対象は四条さん!
四条 幸音:もらう!
椿尾 輪花:5dx
DoubleCross : (5DX10) → 8[2,2,6,7,8] → 8
椿尾 輪花:対決だ! ドッジするというなら……止めませんよ……!
葛野 くるみ:ホォン………
四条 幸音:ガードします
GM:ドッジしろ~~~~~~
椿尾 輪花:命中しちゃったね、私の気持ち……♡
四条 幸音:椿尾がくれるなら……
GM:椿尾~~ッ
椿尾 輪花:という訳で行動してください。演出はその後まとめてが嬉しいと思います。
四条 幸音:はーい
GM:では四条さんどうぞ!
椿尾 輪花:椿尾輪花の侵蝕率を12増加 (89 → 101)
椿尾 輪花:狂戦士レベル上昇に伴い、ダイス数は+2ではなく+4に
四条 幸音:ありがとう!
椿尾 輪花:ドッジダイス数も-2になっちゃった……ごめんね……
四条 幸音:いいよ……
椿尾 輪花:四条さん……♡
GM:イチャついてんじゃねぇ~~~~
四条 幸音:正気に戻らなきゃ
四条 幸音:マイナーアクション、ストライクチップの効果起動。メジャーの命中ダイス+2
四条 幸音:メジャーアクション、<コンセントレイト:オルクス>+<ディストーション>、コンボ:欠けた願い
四条 幸音:対象はフェアリーテイル、対応なければ判定!
GM:判定どうぞ!
四条 幸音:狂戦士でダイス+4とC-1!
四条 幸音:12DX+5+0@6
DoubleCross : (12DX6+5) → 10[3,4,4,5,7,7,7,8,9,9,9,9]+10[1,1,2,6,7,7,7,9]+10[1,6,7,7,8]+10[1,2,4,8]+1[1]+5 → 46
葛野 くるみ:すごご
“フェアリーテイル”:≪リフレックス:ソラリス≫+≪命の盾≫
四条 幸音:んー、どうしようC値下がってるしやっちゃうかな妖精の手……!
藁科 サイカ:これがイチャラブの力……
GM:妖精使うなら使いな!
藁科 サイカ:いけいけー
四条 幸音:じゃあ使っちゃう!
四条 幸音:四条 幸音の侵蝕率を4増加 (88 → 92)
四条 幸音:1DX+55+0@6
DoubleCross : (1DX6+55) → 10[10]+10[7]+1[1]+55 → 76
四条 幸音:よし、だいぶ伸びた!76!
GM:ハァ!?
藁科 サイカ:くるみちゃんを越えた
椿尾 輪花:ふふふ
“フェアリーテイル”:9DX7+14>=76
DoubleCross : (9DX7+14>=76) → 10[1,1,2,4,5,5,7,7,7]+10[1,3,9]+5[5]+14 → 39 → 失敗
四条 幸音:危なかった……!
“フェアリーテイル”:ざけやがって~~~~~
葛野 くるみ:すごいぞ~~
GM:ダメージどうぞ!
四条 幸音:8d10+1d10+7
DoubleCross : (8D10+1D10+7) → 43[4,5,3,4,4,7,6,10]+5[5]+7 → 55
四条 幸音:55点!
GM:ギャーーッ
“フェアリーテイル”:死にました……
四条 幸音:やった!
椿尾 輪花:やったわ
葛野 くるみ:やった~~!
藁科 サイカ:これで残るは……二体か!
GM:こいつらふざけやがって~~~
椿尾 輪花:「……私も……」
椿尾 輪花:「シルヴェストルって呼んだ方が良いかしら。四条さん?」 ごく小声で尋ねる
四条 幸音:「………」
四条 幸音:「それでもいいけど。僕のフェリクス」
四条 幸音:「いつかは幸音って呼んでよね」
椿尾 輪花:「っわ……!」 にわかに目を見開く。ばっと紅潮
椿尾 輪花:「せっ……戦闘中にっ、もう……!」
四条 幸音:「お互い様。……そう呼ぶ人はたくさん、居てくれるけど」
四条 幸音:「一番呼んでほしいのは、君だから」
椿尾 輪花:「っ……」 顔を赤くして、視線を逸らし、たっぷり5秒も何か言おうともごついていたが
椿尾 輪花:結局何も言葉にならず 「……もう」 拗ねたような声を漏らす
椿尾 輪花:同時、四条さんの足元から影の糸が四肢に絡みつき、浸透する。微かに痺れるような感覚と、それ以上に高揚する……レネゲイドの暴走に近い感覚があるだろう。
椿尾 輪花:「……レネゲイドを励起します。少しだけ……制御が難しい状態になるけど」
椿尾 輪花:「ある程度は調整を手伝いますし、何より私が守りますから。思い切りやってください」
椿尾 輪花:「力を託すなら、……」
椿尾 輪花:「…………四条さんが良いです」
四条 幸音:「……うん。大丈夫」
四条 幸音:「今、僕は」
四条 幸音:「幸せだから」
四条 幸音:左手でコインを弾く。 黒い鴉が姿を現す。
四条 幸音:穴だらけの欠けた翼に未来が映る。
四条 幸音:これまでその翼には、一度だって望むものが映ったことはなかった。
四条 幸音:それは思えば、当たり前なことで。僕は自分の望むものを、本当は何もわかってなかった。
四条 幸音:今なら、見える。そこに向かえる。皆で──一番大切な人と、一緒に。
四条 幸音:鴉が翔ぶ。これまでの頼りなさが嘘のように、力強く。
“フェアリーテイル”:不可視の何かがざわざわと蠢く音。鴉の行く手を阻むように追い縋る。
“フェアリーテイル”:音響担当だった少女。ひどく無口だったが、彼女にだけ見える『妖精』の力を借りる能力だと言葉少なに語っていた。
四条 幸音:追いつかせない。触らせない。
四条 幸音:彼女から受け取ったもの、もうちょっとだけ独り占めしたって、良いでしょ?
“フェアリーテイル”:「……ッ……!」
“フェアリーテイル”:威力を殺し切れない。鴉に打ち据えられ、小柄な身体が宙を舞う。
“天眼”:「……どいつも、こいつも……!」
“天眼”:苛立ちを隠しきれない様子で顔を歪ませる。
四条 幸音:倒れ伏す少女の姿を見届け、忘れないと心に刻む。
“天眼”:「誰でもいい……!さっさと奴らを片付けろッ!」
“天眼”:焦りの滲む声で叱咤を飛ばす。
GM:行動値0 シャンデル・ド・グラスの手番です
“シャンデル・ド・グラス”:メジャー《コンセントレイト:サラマンダー》《炎神の怒り》《煉獄魔神》
“シャンデル・ド・グラス”:対象は葛野くるみ!
葛野 くるみ:ホホン!
“シャンデル・ド・グラス”:11dx7+1
DoubleCross : (11DX7+1) → 10[2,2,3,3,4,5,6,7,8,8,9]+6[2,2,3,6]+1 → 17
“シャンデル・ド・グラス”:あ、間違い
葛野 くるみ:ホホン……?!
“シャンデル・ド・グラス”:11dx6+1
DoubleCross : (11DX6+1) → 10[1,1,2,2,4,4,6,8,9,9,10]+10[1,2,5,5,10]+5[5]+1 → 26
椿尾 輪花:あらあら
葛野 くるみ:ギャ~~増えた
“シャンデル・ド・グラス”:大して伸びない…………
葛野 くるみ:ドッジしてみよう
葛野 くるみ:6dx+1>=26
DoubleCross : (6DX10+1>=26) → 7[1,4,4,5,5,7]+1 → 8 → 失敗
葛野 くるみ:無理!
四条 幸音:流石に妖精の手使っても厳しそうね……!
藁科 サイカ:厳しいと思うぜ
椿尾 輪花:そうねえ
葛野 くるみ:そうね…!
葛野 くるみ:まあ良いでしょう 受けます
“シャンデル・ド・グラス”:ダメージ前に≪フェイタルヒット≫
“シャンデル・ド・グラス”:死ね~~ッ
葛野 くるみ:何だと~~~!?
“シャンデル・ド・グラス”:3D10+23+4D10
DoubleCross : (3D10+23+4D10) → 26[7,9,10]+23+21[4,4,10,3] → 70
葛野 くるみ:高いよ!!
椿尾 輪花:フウン……
椿尾 輪花:やってみる価値はありますぜ。《隆起する大地》+《浮遊する大地》+《原初の紫:異形の加護》
GM:何だとぉ……
椿尾 輪花:1d10+9+2d10+3d10
DoubleCross : (1D10+9+2D10+3D10) → 2[2]+9+18[8,10]+19[8,2,9] → 48
藁科 サイカ:すっごい
椿尾 輪花:48点軽減しな!
葛野 くるみ:りっ…リーダー……!
四条 幸音:さすが椿尾……!
葛野 くるみ:もしかして私のこと好きなのかな
四条 幸音:えっ……?
GM:この女……!
椿尾 輪花:防御いらなかった?
四条 幸音:喧嘩しないの!
葛野 くるみ:70-48で22点
葛野 くるみ:8点残って生存します!ヤッター
椿尾 輪花:椿尾輪花の侵蝕率を10増加 (101 → 111)
GM:なっ……何ィィ~~~~~~ッ
葛野 くるみ:リーダーありがと~~
椿尾 輪花:あんたに倒れられたら困るだけだし
GM:全然ロイスが削れないじゃねーか!
“シャンデル・ド・グラス”:座席の上を軽々と飛び跳ねるようにして、葛野の元へ疾走する。
“シャンデル・ド・グラス”:御薗橋による光学迷彩は健在だ。だが“天眼”に施された感覚強化が、限界を超えた感知能力を引き出している。
葛野 くるみ:真っ赤に濡れ、血肉に塗れた鋏をぎらぎらと光らせながら、ゆらゆらと舞台に鎮座している。
御薗橋七葉:「……!」
御薗橋七葉:その様に血相を変える。
御薗橋七葉:「くるみ!」
“シャンデル・ド・グラス”:「くるみちゃん、貴方に恨みは無いけど……!」
“シャンデル・ド・グラス”:剣山のような氷柱の束を、葛野に向けて振り上げ────。
椿尾 輪花:だが、その両優の間を阻む物がある。飛来する重力剣。
“シャンデル・ド・グラス”:「!」
椿尾 輪花:それを放ったのは勿論、"ブラックハイド"である。正確にはその肉体に宿るレネゲイドを……
椿尾 輪花:影の糸を通じて操作した椿尾輪花。意識を失った"ブラックハイド"が、まさしく操り人形のように動き、拙いながらも重力の剣を乱射する。
椿尾 輪花:「葛野さん、詰めて!」
葛野 くるみ:「はああい!」
椿尾 輪花:当然、無理やりの駆動だ。そう長く持つものではない。攻撃はいずれ止まる。だが、"シャンデル・ド・グラス"の勢いを削ぎ、迎撃の姿勢を整えるには十分だ。
葛野 くるみ:満開の笑みを浮かべ自らに向けられた氷柱を眺めていたが、輪花ちゃんの声に跳ねるように動き、その攻撃をかわす。
“シャンデル・ド・グラス”:「く、ぅっ……!?」
“シャンデル・ド・グラス”:重力剣が身体を掠め、氷柱の軌道が狂う。
葛野 くるみ:「シャンちゃん、良いよー、遠慮なんかしなくって」
“シャンデル・ド・グラス”:「必死でやってんの、生憎と!」
“シャンデル・ド・グラス”:「相変わらずエゲつないことしますね、リーダー……!」
椿尾 輪花:「手段を選んでいる暇はない。当然でしょう?」
葛野 くるみ:「えへへへ…!もっともっと、もっと全力出してよお!」
葛野 くるみ:「あたしもシャンちゃんに恨みなんかないけど、でも、やるならさぁ、全力で来てほしいじゃん!」
葛野 くるみ:「あはははっ!」
御薗橋七葉:「……」安堵の息を吐く。
御薗橋七葉:「ありがとうございます、椿尾さん」
椿尾 輪花:「あら」 片目を閉じて 「彼女が必要な人員なのは私だって認める所です」
椿尾 輪花:「好きか嫌いかはともかく……」
GM:クリンナップ。邪毒などは無し!
四条 幸音:私も特になし
葛野 くるみ:なしですー
藁科 サイカ:なくなっちゃったぜ
椿尾 輪花:ないのだなあ
GM:2ラウンド目 セットアップから!
椿尾 輪花:ないです!
葛野 くるみ:ありません!
四条 幸音:私はなし!
藁科 サイカ:無し!
“天眼”:≪オーバーウォッチ≫ 味方のダイス+3個
御薗橋七葉:≪攻撃誘導≫+≪ショウタイム≫+≪甘い芳香≫+≪タブレット≫+≪多重生成≫
御薗橋七葉:対象敵全員 自身を対象に含まない攻撃ダイス-18個、行動値-8
葛野 くるみ:えぐいぜ
GM:ではイニシアチブ 行動値10、藁科さんの手番です
藁科 サイカ:ヤー
藁科 サイカ:マイナーアクションは無いので、ここで
藁科 サイカ:タイタス化してあったSロイス、四条 幸音 幸福感/○偏愛を昇華します
藁科 サイカ:選択効果は再起。自分のエフェクト使用回数制限を1回復だ
GM:ほう……
藁科 サイカ:そしてメジャーアクションは《ウルトラボンバー》+《ブレインハック》。対象はシャンデル・ド・グラス
藁科 サイカ:行くぜ!
GM:邪悪コンボ!
GM:来やがれ~~ッ
藁科 サイカ:5dx+2 リアクション不可
DoubleCross : (5DX10+2) → 9[1,5,8,9,9]+2 → 11
GM:リア不か……ダメージどうぞ!
藁科 サイカ:2d10+20 装甲-5計算
DoubleCross : (2D10+20) → 7[4,3]+20 → 27
“シャンデル・ド・グラス”:27-2D10 屍人
DoubleCross : (27-2D10) → 27-13[4,9] → 14
藁科 サイカ:おおっ
“シャンデル・ド・グラス”:生きてる!
藁科 サイカ:なるほどそういう耐久か……!
四条 幸音:硬かった……!
藁科 サイカ:では憎悪をプレゼントします、天眼を憎悪してください
“シャンデル・ド・グラス”:ぎぇーっ
葛野 くるみ:まあ……
藁科 サイカ:で、メインプロセス終了時に、
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を14増加 (109 → 123)
藁科 サイカ:藁科 サイカのHPを7減少 (3 → -4)
藁科 サイカ:《ラストアクション》
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を5増加 (123 → 128)
GM:じゃ……邪悪コンボ!
藁科 サイカ:メインプロセス。マイナー無し
藁科 サイカ:メジャーアクションは《アドヴァイス》を四条 幸音へ
藁科 サイカ:次のメジャーアクションのダイス+2とC値-1(下限6)だ!
四条 幸音:ありがとう……!
藁科 サイカ:もちろん戦闘不能になるので、四条 幸音 ○執着/憐憫 をタイタス化昇華して蘇生、HP7になって処理は以上だぜ。
藁科 サイカ:万華鏡の幻惑。物理的には存在しない迷宮。
藁科 サイカ:そこへ流れ込むものがあった。
藁科 サイカ:それは細く伸びた糸のようで、牢獄の囚人たるシャンデル・ド・グラスの足下に、重さも感じさせずに纏わり付いていた。
藁科 サイカ:藁科サイカの神経系を、エグザイル能力によって延長させたものだ。
藁科 サイカ:……強制同調。記憶を読み取る指とは逆。
“シャンデル・ド・グラス”:「……! 何、これ……?」
藁科 サイカ:許可も得ず、己の感情で他者の思考を侵蝕する〝禁じ手〟が──
藁科 サイカ:『君達のせいじゃない。けど』
藁科 サイカ:『けど、弥生は死んだ。君達の行為の結果で』
藁科 サイカ:大気を震わす音ではない。脳裏に響く幻聴だ。
“シャンデル・ド・グラス”:「う、うっ……!?」頭を押さえる。幻聴は止まない。
藁科 サイカ:『君達のせいじゃない。分かってるさ。でも、じゃあ誰のせいだ?』
藁科 サイカ:『俺達、仲間だったじゃないか。なのに、俺達に殺し合いをさせた奴がいるんだ』
藁科 サイカ:『俺はそいつが』
藁科 サイカ:私はそいつが
藁科 サイカ:『憎くて』
藁科 サイカ:憎らしくて
藁科 サイカ:『死んで欲しくて』
藁科 サイカ:殺したくって
藁科 サイカ:『どうしようもなく苦しいんだ。だから』
藁科 サイカ:『君も同じ気持ちだろう?』
藁科 サイカ:あいつだ。
藁科 サイカ:今、自分が背を預け、その身で守っているあいつが、
藁科 サイカ:私達を争わせ、仲間を殺した奴だ。
藁科 サイカ:私はあいつが憎くて、殺してやりたい。
藁科 サイカ:……流し込まれた感情はいつしか思考と混ざり合う。もはやシャンデル・ド・グラスには、
“シャンデル・ド・グラス”:「────」
藁科 サイカ:何処までが己の意志であったかなど、判別もできるまい。
藁科 サイカ:「些細な八つ当たりだ。憎悪に曇った眼のままで、何も成せずに斃れるがいい」
“シャンデル・ド・グラス”:半狂乱で叫び、巨大な氷柱を振りかざす。その先に居るのは、君達ではない。
藁科 サイカ:「……さて。かくして脇役はいちど舞台の脇にはけ、主演にその場を明け渡す」
藁科 サイカ:「幸音」
四条 幸音:「……うん」
藁科 サイカ:「なんと大きな陥穽か。跳ね橋は降りて閂は砕け、守兵は眠りこけている」
藁科 サイカ:「君が落として、次に繋げ」
四条 幸音:「ほんとに僕は、もらってばっかりだ」
四条 幸音:「任せて!」
“天眼”:「…………」忌々しげに顔を歪める。
“天眼”:「ただ使えんどころか、私の足を引っ張るとは……」
“天眼”:「FHの、クソ虫共が……!」
GM:行動値8 御薗橋さんの手番です
御薗橋七葉:マイナーで13m後方に移動 メジャーで隠密状態になります
GM:同じく行動値8 天眼の手番です
“天眼”:マイナーで戦闘移動、シャンデル・ド・グラスのエンゲージに入ります
“天眼”:メジャーで≪ポイズンフォッグ≫+≪ヨモツヘグリ≫
“天眼”:倒れた敵全員をHP1で復活させます
葛野 くるみ:何だとぉ……
四条 幸音:なんてこと……!
“天眼”:「それなら────」
“天眼”:“天眼”が床に手を付く。“シャンデル・ド・グラス”に流れる強化電流が掻き消え、彼は再び光の迷宮に囚われる。
“シャンデル・ド・グラス”:「どこ……!?“天眼”!どこにいるのッ!!」
“天眼”:「歯向かう駒なら黙らせたほうがマシだ……そして」
“天眼”:一際強い電光が走ったと思うと、倒れた筈の敵達がふらふらと、ゾンビのように起き上がる。
“天眼”:彼ら自身の意思ではない。動かぬ身体に外部から電気信号を流して操り人形とする、椿尾のそれとは似て非なる身体操作。
四条 幸音:「っ、みんな……!」
椿尾 輪花:「あら。これはまた強引な……」
葛野 くるみ:「アンコールじゃあん。終わってなかったけど」
藁科 サイカ:「……悪趣味だ。ほとんどカーテンコールの気配から劇中に引き戻された」
御薗橋七葉:「……」その様を目にして、思う。自分もかつては、あれと大して変わらなかったと。
御薗橋七葉:与えられた身分。与えられた名前。与えられた役割。
御薗橋七葉:かつての私にはそれが全てだった。それを不満に思ったこともなかった。それが当然で、世界の全てだったからだ。
御薗橋七葉:それが変わったのは、あの時。その日、任務対象が逃げ込んだのは、小さな古びた劇場だった。
御薗橋七葉:ごく簡単な任務のはずだった。標的に追いついて、喉元に刃を突き立てて、それで終わり。
御薗橋七葉:何度となく繰り返してきたこと。今更何を考える必要も無い。そのはずだった。
御薗橋七葉:けれど、舞台の上、一人の少女を目にした瞬間、私の全ては塗り替えられた。
御薗橋七葉:────美しかった。
御薗橋七葉:溢れるような生気に満ちて、身を焦がすような感情を迸らせて。
御薗橋七葉:到底演技とは思えなかった。その圧倒的な存在感は、決して手の届かない遠い星に思えた。
御薗橋七葉:何もかもを忘れて舞台に魅入られて、カーテンコールと共に、気付けば頬を何かが伝っていた。
御薗橋七葉:そうしてその日、私は生まれて初めて任務を失敗した。
御薗橋七葉:「……くるみ」
御薗橋七葉:屈折する光と闇の暗幕から声が響く。決してスポットライトの当たらない、舞台袖から。
葛野 くるみ:「なにっ?」
葛野 くるみ:振り向く。いつだって、誰の思いも知らないような顔で。
御薗橋七葉:「もっと見せて。貴方の舞台を」
御薗橋七葉:「思い切り、思うがまま、踊って見せて」
御薗橋七葉:「私だけのエトワール」
葛野 くるみ:「どーしたの突然」
葛野 くるみ:「でも」
葛野 くるみ:《完全演技》。
葛野 くるみ:「いいよ」
葛野 くるみ:その瞳はもう、戦場に生きる少女のそれではない。
葛野 くるみ:舞台に君臨し、生と死を蹂躙し欲と願いを誘う悪魔の顔で、
葛野 くるみ:恍惚を滲ませて笑った。
GM:行動値6 葛野さん 四条さんの手番です
葛野 くるみ:幸音ちゃんお先にどうぞ~
四条 幸音:はい!
四条 幸音:マイナーアクションで5m前進、エンゲージに侵入します
四条 幸音:メジャーアクション、<コンセントレイト:オルクス>+<ディストーション>、コンボ:欠けた願い
四条 幸音:対象はブラックハイド、対応なければ判定!
GM:どうぞ!
四条 幸音:アドヴァイスでダイス+2とC値-1!
四条 幸音:8DX+5+0@6 欠けた願い
DoubleCross : (8DX6+5) → 10[1,1,1,3,6,8,8,10]+10[2,8,8,10]+10[1,4,6]+10[6]+3[3]+5 → 48
四条 幸音:よし、十分!
葛野 くるみ:すごいぜ
"ブラックハイド":4DX+1>=48 ドッジ
DoubleCross : (4DX10+1>=48) → 8[3,5,7,8]+1 → 9 → 失敗
GM:ダメージどうぞ!
四条 幸音:5d10+1d10+7
DoubleCross : (5D10+1D10+7) → 26[4,10,3,8,1]+2[2]+7 → 35
"ブラックハイド":HP1なので再び死亡!
四条 幸音:「山科……」
四条 幸音:昏い瞳で操られる少女。
四条 幸音:侮られていたと思う。嫌われていたかもしれない。
四条 幸音:刃を交えた。仲間が死んだ。容赦はできない。
四条 幸音:……泣いてなどやるものか。そんな権利なんてあるわけもない。
四条 幸音:弾かれたコインが姿を変え、人形と化した少女の脚を射抜く。
"ブラックハイド":「……」
"ブラックハイド":がくん、と体勢を崩し、無理な駆動でのたうつように床を転がる。
四条 幸音:くそったれ、なんて言ってたけど。
四条 幸音:舞台に立つあんたは、輝いてた。
四条 幸音:伝える機会が来るか、分からないけど。ちゃんと覚えておくから。
GM:同じく行動値6、葛野さんの手番です。
葛野 くるみ:はあーい
葛野 くるみ:マイナーなし。
葛野 くるみ:メジャーでコンボ【はなひらいてウラハラ】
葛野 くるみ:《コンセントレイト:ノイマン》《マルチウェポン》《ヴァリアプルウェポン》。対象は天眼。
GM:来い!
葛野 くるみ:前ラウンド同様、《ヴァリアプルウェポン》はキーンナイフ×2、攻撃力を+10、更に対象の装甲値を-5してダメージを算出!
葛野 くるみ:10dx7+12
DoubleCross : (10DX7+12) → 10[3,3,3,4,5,6,8,9,9,10]+10[6,7,7,8]+10[6,8,9]+10[6,7]+10[10]+2[2]+12 → 64
葛野 くるみ:おお…!
四条 幸音:ほんと強いよね!
御薗橋七葉:あれうちの彼女なんですよ
葛野 くるみ:見ててね~♡
“天眼”:4DX>=64 ドッジ
DoubleCross : (4DX10>=64) → 10[2,3,6,10]+8[8] → 18 → 失敗
“天眼”:FHのクソ共~~~~~
GM:ダメージどうぞ!
四条 幸音:ダメージロール直前、オートアクション
四条 幸音:力の法則を使用します
四条 幸音:四条 幸音の侵蝕率を4増加 (100 → 104)
四条 幸音:ダメージダイス+7!やっちゃって!
葛野 くるみ:すげ~増えた
葛野 くるみ:7d10+26+7d10 装甲有効
DoubleCross : (7D10+26+7D10) → 51[9,8,8,3,10,3,10]+26+33[2,5,8,4,2,4,8] → 110
葛野 くるみ:たったの110ダメージです!
GM:ほぎゃ~~~~~~
“天眼”:瀕死です
四条 幸音:キーンナイフ二本で装甲もがっつり削るんだっけ……
椿尾 輪花:生きとる
四条 幸音:生きてる!
藁科 サイカ:頑張ってる!
葛野 くるみ:葛野くるみの侵蝕率を8増加 (119 → 127)
葛野 くるみ:生きてた!
葛野 くるみ:葛野くるみの過去にさしたる物語はない。
葛野 くるみ:生まれ、育てられ、欠陥があり、棄てられ、それでも生きていた。
葛野 くるみ:乗り越えるべき困難も、悲劇も、喜劇も、特筆するべきものはない。
葛野 くるみ:2年前に彼女と出会った時だって、それは同じだったのだ。
葛野 くるみ:「……あっはあ!」
葛野 くるみ:脚部に備わった油圧ポンプを利用し、限界まで跳ね上がって、道を塞ぐ者どもを飛び越える。
葛野 くるみ:自らの胴を軸に回転する刃そのものと化し、"天眼"に振り落ちた。
“天眼”:「がっ……!?ぐぉあぁあぁあああっ!?」
“天眼”:鮮血が噴水のごとく迸り、苦悶の悲鳴があがる。
“天眼”:「貴ッ……様あぁあああッ……!」
葛野 くるみ:「あははっ、可哀想、可哀想…」
葛野 くるみ:「うん、でも、あたしは、刃を交えなくちゃいけないの」
葛野 くるみ:愛に溺れ、全てのしがらみから掻い潜って生きる、悪魔のように。
葛野 くるみ:「貴方には、死んでもらわないと」
“天眼”:「ふざっ……ふざけるな……!」
“天眼”:「FHのカス如きが……この私に……!」
“天眼”:「何度殺しても償いきれんぞ……!女ぁあ……!!」
葛野 くるみ:「あたしはラオペの"さかはぎサード"」
葛野 くるみ:「憎むなら、あたしの名前を刻んでね」
葛野 くるみ:憎悪の瞳を向けられて、砂糖菓子のような声色で返した。
GM:行動値6、オールドローズの手番です
“オールドローズ”:≪コンセントレイト:サラマンダー≫+≪災厄の炎≫+≪プラズマカノン≫+≪紡ぎの魔眼≫
“オールドローズ”:対象は四条 葛野 藁科
“オールドローズ”:11DX7+2
DoubleCross : (11DX7+2) → 10[1,1,2,3,4,4,5,7,8,9,10]+10[2,3,6,9]+10[7]+4[4]+2 → 36
椿尾 輪花:がんばりおる
藁科 サイカ:難しそうな気がするが……折角だ
藁科 サイカ:《言葉の盾》+《リフレックス:ノイマン》
四条 幸音:やるだけ回避!
藁科 サイカ:8dx7+8>=36
DoubleCross : (8DX7+8>=36) → 10[1,4,6,7,8,8,9,10]+10[2,5,6,7,8]+10[1,9]+2[2]+8 → 40 → 成功
四条 幸音:2DX+1+0@10>=36 回避
DoubleCross : (2DX10+1>=36) → 10[1,10]+4[4]+1 → 15 → 失敗
椿尾 輪花:ワーオ
藁科 サイカ:避けたよ
四条 幸音:避けとる!
葛野 くるみ:回避してみよう
藁科 サイカ:藁科 サイカの侵蝕率を3増加 (128 → 131)
葛野 くるみ:6dx+1
DoubleCross : (6DX10+1) → 10[1,2,2,6,9,10]+6[6]+1 → 17
葛野 くるみ:回ったのでえらい
“オールドローズ”:喰らえ!
“オールドローズ”:4D10+38
DoubleCross : (4D10+38) → 23[8,6,7,2]+38 → 61
椿尾 輪花:さすがプラズマカノン……
四条 幸音:あっすいませんちょっとカバー周りとか相談を!
葛野 くるみ:死ぬぜ
四条 幸音:すいません、遅れましたが領域の盾を使用します!
四条 幸音:四条 幸音の侵蝕率を4増加 (104 → 108)
四条 幸音:対象は自身、葛野さんをカバーリング!
葛野 くるみ:生き残るぜ
四条 幸音:二倍ダメージを受けて倒れます。ラオペへのロイスをタイタス昇華して復活!
GM:チィ~ッ
“オールドローズ”:不自然な動きで君達に迫る。制御の効かない、強制的に発生させられた炎が、身体を薪とするかのように燃え盛っている。
“オールドローズ”:殆ど自爆に等しい形で、操られた当人ごと君達を爆炎が飲み込む。
藁科 サイカ:「──済まないが」自爆ならば一日の長がある。体内に送り込んだ〝病毒〟を遠隔で蠢かせ、オールドローズの〝機能〟を動作させた。
藁科 サイカ:炎には炎。己へ迫る爆炎へ、オールドローズ手ずから新たな攻撃を行わせ、爆風にて火災を消火するが如く致命の一撃を防いだ。
葛野 くるみ:「あははっははははっ!」両手を広げ、炎を受け止めるかのような体勢で笑う。
四条 幸音:「葛野、危ないっ……!」
四条 幸音:能力が告げている。そこに行ってはならないと。
四条 幸音:無視して爆炎の只中に飛び込み、笑う少女を突き飛ばす。
葛野 くるみ:「ははっ……きゃ!?」
四条 幸音:「づ、ぁっ……!」
四条 幸音:炎に呑み込まれる。全身が焼ける。 大丈夫、まだ生きている。
葛野 くるみ:「ゆっ幸音ちゃん…!?」目を丸くして。
四条 幸音:「……平気っ。僕、運が良いから!」
葛野 くるみ:「え、そこじゃなくて、別にあたし庇わなくても…」
御薗橋七葉:「四条さん」
御薗橋七葉:「ありがとうね」
四条 幸音:「……はいっ」
葛野 くるみ:「えーっ!?」
四条 幸音:「……ね、あんたも無理しないの。心配するでしょ」
葛野 くるみ:「……」珍しく虚を突かれたような瞬きの後。「…あはっ!」
葛野 くるみ:「はあい、ありがとー!」
GM:行動値5 椿尾さんの手番です
椿尾 輪花:マイナーアクションで前進、エンゲージに入りまして、メジャーで《狂戦士》+《さらなる力》+《崩れる大地》
椿尾 輪花:対象を未行動にし、さらに対象が次に行うメジャーアクションの判定ダイスを+4、C値を-1、ただしシーン間ドッジダイス-2。
椿尾 輪花:対象は四条さんです。判定は対決!
椿尾 輪花:6dx
DoubleCross : (6DX10) → 7[3,3,4,5,5,7] → 7
四条 幸音:ガード!
椿尾 輪花:命中。効果発揮されます。行動せよ!
四条 幸音:了解!
椿尾 輪花:椿尾輪花の侵蝕率を12増加 (111 → 123)
四条 幸音:マイナーアクション、ストライクチップの効果起動。メジャーの命中ダイス+2
四条 幸音:メジャーアクション、<コンセントレイト:オルクス>+<ディストーション>、コンボ:欠けた願い
四条 幸音:対象、”天眼”。対応なければ判定!
GM:どうぞ!
四条 幸音:13DX+5+0@6 欠けた願い
DoubleCross : (13DX6+5) → 10[1,1,1,1,2,3,3,4,7,8,9,9,10]+10[2,3,6,8,10]+10[3,6,7]+10[4,8]+10[8]+2[2]+5 → 57
葛野 くるみ:すごいぜ!
四条 幸音:よし、50超えた
椿尾 輪花:わあ
“天眼”:4DX>=57 ドッジ
DoubleCross : (4DX10>=57) → 10[5,7,7,10]+6[6] → 16 → 失敗
GM:ダメージどうぞ!
四条 幸音:6d10+1d10+7
DoubleCross : (6D10+1D10+7) → 39[9,1,9,10,6,4]+3[3]+7 → 49
四条 幸音:49点!
“天眼”:死に申した……
“天眼”:復活ありません。
四条 幸音:倒した……!
椿尾 輪花:受け入れよ イチャによる死を
四条 幸音:四条 幸音の侵蝕率を4増加 (108 → 112)
GM:次のラウンド以降、御薗橋さんのデバフで全員ダイスが振れなくなるので
GM:以降は省略しましょう 戦闘終了です。
椿尾 輪花:無残
藁科 サイカ:あわれ……
四条 幸音:勝った……!
葛野 くるみ:やった~~
GM:演出どうぞ!
椿尾 輪花:駆け寄り、攻撃を受けた四条さんの肩を後ろから抱きとめて
椿尾 輪花:「運が良いかはともかく」
椿尾 輪花:「体は大事にしてください。四条さん、そんなに得意な感じじゃないでしょう、身を守るの……」
椿尾 輪花:少し困ったような、叱るような口調
四条 幸音:「……ごめん。僕のほうが心配かけちゃった」
椿尾 輪花:「本当です」
椿尾 輪花:肩に添えた手から影の糸が伸びる。腕をそっと包むようにそれは絡みついて、四条さんに再動の力を与える。
椿尾 輪花:「……指示は必要ですか?」
四条 幸音:「おねがい。……声くれたら、もうちょっとだけ頑張る」
椿尾 輪花:「ええ」 糸でなく、細い手をそっとその腕に添えて
椿尾 輪花:「……戦闘の中心は"メイルストローム"、"天眼"です。彼さえ倒れれば、御薗橋さんの守りを突破するすべはない」
椿尾 輪花:「私たちの未来を阻む渦の中心はあそこ。……葛野さんの攻撃で動きは止まっています」
四条 幸音:触れた手が力をくれる。そう感じる。
椿尾 輪花:「あなたなら届く」 そっと囁きながら、彼女の力を増幅する
四条 幸音:「うん。君となら、届く」
四条 幸音:焼けただれた腕でコインを弾く。彼女の示した未来へ向けて。
椿尾 輪花:「……ふふ」 穏やかに笑う。戦闘中に。有り得ないことだ。でも自然、そんな笑みがこぼれる嬉しさが、胸に灯ってしまったのだからしょうがない
“天眼”:「やめろ、椿尾ォッ……!この淫売が……!」
“天眼”:「今更良識人気取りか!?貴様のような女が!」
“天眼”:「私が善意で目を掛けてやってというのに……!その返事がこの仕打ちか!?」
椿尾 輪花:「あらあら。不安に駆られて私たちをもろとも一掃しようとしていた口で、それこそ今更ですよ」
“天眼”:「私がいなくなれば“ラオペ”の後ろ盾は無くなる!貴様らのような弱小セルなど、風前の灯も同然だぞ!」
椿尾 輪花:「ご心配ありがとうございます。でも、私は別に良識人になった訳でもありません。変わりなく、セルのためならあらゆる手を尽くすでしょう」
“天眼”:「今ならまだ間に合う!恭順を誓えば許してやる!考え直せ!お前はそんな馬鹿じゃあないだろう!」
椿尾 輪花:「間に合いませんよ。私」
椿尾 輪花:「誓いを……命に換えても守ろうという、そういう誓いを立てるなら」
椿尾 輪花:「一人だけと決めていますから」
椿尾 輪花:「今あなたが選べるのは最期の言葉だけ。憤怒か、後悔か、命乞いか。……さあ」
椿尾 輪花:「四条さん」
四条 幸音:「うん」
四条 幸音:黒い鳥に指し示す。 僕らを阻む渦を、撃ち抜け。
四条 幸音:叫び続ける男へ向けて、凶鳥が翔ぶ。
“天眼”:「う──」
四条 幸音:「僕も、一人だけ。……だから」
四条 幸音:「邪魔は、させない」
“天眼”:「うわぁあああぁあああっ!!」
“天眼”:叫んだのは、恐怖。
“天眼”:飛翔する鴉に撃ち抜かれ、絶叫が途切れる。
“天眼”:力無く崩れ落ち、同時に敵達を操る能力も掻き消える。
GM:感知能力の要を失って、残った敵はただ、幻惑の中に閉じ込められることしかできない。
御薗橋七葉:「……終わりましたね」
御薗橋七葉:空間が歪み、御薗橋が姿を現す。
椿尾 輪花:「……そうですね」 四条さんの肩から手を離す 「お疲れさまです」
四条 幸音:「……勝っ、た?」
葛野 くるみ:「勝ったのー!?」
四条 幸音:「みんな、無事……?」
葛野 くるみ:「死んだ?えー、もう終わりー?」
葛野 くるみ:「あたし無事だよー!」
御薗橋七葉:「格好良かったわよ、くるみ」ハンカチで返り血を拭き取って。
葛野 くるみ:「わっぷ」拭かれる。
葛野 くるみ:「ちょっと、やめてよ七葉ちゃんってば…」
椿尾 輪花:「ええ。あとはどれだけ話ができるか……」 動きを止めた面々を見て
椿尾 輪花:「本番が近いから、あまり時間をかけていられないのが惜しいけれど」
四条 幸音:「椿尾……葛野、御薗橋さん……藁科は……?」
藁科 サイカ:「俺はカウントから外しておいてくれ。……この空気に介入できる余地があると思うかね?」
四条 幸音:「無事……よかったぁ」
四条 幸音:力を失って崩れ落ち、ペタンと座り込む。
御薗橋七葉:「……でも、気を抜いてられないわ」
御薗橋七葉:「ここからが本番だものね」
御薗橋七葉:腕時計を見て「開演まであと……3時間強しかないわ」
葛野 くるみ:「あはっ、じゃあ楽屋入りしないとヤバいじゃん」
四条 幸音:「あはは……ほんと、過密日程、ですね」
藁科 サイカ:「どうするんだ、返り血とか自分の血とか」
椿尾 輪花:苦笑して 「とんだ強行軍ね。悪いけど、彼らのことは座長に任せましょう」
藁科 サイカ:「……ああ、待った。リーダー」
椿尾 輪花:「三時間で完璧にする。私から提案できるのはそれだけよ……何?」
藁科 サイカ:「座長に任せるのはこれまでのラオペらしいやり方ではあるが、どうも、今の君にはあまり似つかわしくないと思わないか?」
藁科 サイカ:「……まぁ、つまり。せめて一言なりと、かつての仲間達に向ける言葉が有って良いだろうということだよ」
椿尾 輪花:「……別に私、ことさらに慈悲深く変わったわけではないわよ。今は『シルヴェストル』を成功させることで頭がいっぱい」
椿尾 輪花:「それに、今後どうするかはそれこそ彼らの意志次第ですもの。だから……」
椿尾 輪花:「優しい言葉は公演の後、彼らが戻って来るって決めたら、考えることにします」
藁科 サイカ:「……そうかい」
四条 幸音:「……戻ってきたいって思わせるぐらい、やってみせないとね」
御薗橋七葉:「さあ、急ぎましょう。時間がありません」
御薗橋七葉:「始まりますよ──ソワレが」
GM:バックトラック
GM:侵蝕率は特殊ルールにより自動帰還。今回の脱落者はゼロでした。
四条 幸音:良かった……!
椿尾 輪花:そういえばそうだったな……!
葛野 くるみ:やったぜ!
藁科 サイカ:ほほう
GM:経験点はいつもの5点にシナリオは諸々込みで10点、侵蝕分は一律で5点 計20点差し上げます
GM:お疲れさまでした!
葛野 くるみ:ありがとうございます。みんなおかえりなさーい
四条 幸音:ありがとうございます!みんなおかえり!
椿尾 輪花:いやーかえったかえった お疲れさまでした!
藁科 サイカ:うっす、いただきましてのお疲れ様でした
【ED/“ラオペ”】
GM:春の夕暮れ、劇団ラオペの活動再開第一回公演が執り行われた。
GM:一連の騒動で客足が心配されたが、杞憂だった。広報の甲斐あってか、小さな客席はほぼ満席となっていた。稽古場の火事はニュースになり、その後の活動継続も小規模なネットニュース等で報じられたが、概ね好意的に受け入れられたようだ。
GM:照明、音響、すべての準備が整い、開演のベルが鳴り響いた場内に、張り詰めた静寂が広がっていく。
GM:そして、幕が上がる。
GM:演目は『シルヴェストル』。物語は、兄弟同然に育ったシルヴェストルとフェリクスの友情から幕を開ける。
---
-:幕の上がり、照明が照らし出す前から、舞台の上からいくつかの剣戟が響く。烈昂の声。人の倒れる音。
-:照らし出される舞台の上には二人の騎士。背を託し合い、それぞれ異なる方へ剣を構え、静止している。
シルヴェストル:きらびやかな鎧を纏った小柄な少年。切っ先は不安げに揺れている。
フェリクス:背を託す少年の鎧は、僅かに装飾が少ないものの、同じく輝いている。その剣にブレはない。
フェリクス:「来るぞ、シルヴェストル!」 鋭い声を上げる
シルヴェストル:「お、おおっ……!」
シルヴェストル:背を預けた信頼する友の言葉に従い、向かってくる敵手へと剣を振り上げる。
-:だがその踏み込みは浅く、敵手は倒れない。よろめきながらも剣を振り上げ、シルヴェストルに向かおうとする。
シルヴェストル:「うっ……!」
フェリクス:そして、それを実直な剣が脇からかち上げる。打擲音。剣が空へと舞う。
フェリクス:手本となるような一撃であった。かくて敵手は全て倒れ、その剣の主……フェリクスは、刃を鞘へ納める。
フェリクス:「大事ないか、シルヴェストル。我が兄弟」
シルヴェストル:「フェリクス……」
シルヴェストル:渾身の一撃で体勢を崩していた。 どうにか構え直した無様な姿勢で友を見上げる。
シルヴェストル:「ああ……ああ、勿論。君のおかげだ。兄弟よ」
シルヴェストル:刃を納め、精一杯胸を張って立つ。
フェリクス:「当然のことだ。私の、フェリクスの務めは、何より君を守り、助くこと」
フェリクス:「たとえ戦場であっても、今日のように君を守ろう、シルヴェストル」
フェリクス:「それが君の、伯爵の家に命救われた、私の生きる意味なのだ」
シルヴェストル:非の打ち所なき騎士に対して、君主は弱々しく頷き。
シルヴェストル:「頼りにしているよ、フェリクス。我が友」
フェリクス:「胸を張ってくれ、兄弟」
フェリクス:背中を叩き、肩を抱く
フェリクス:「伯爵家に必要とされるのは、君の血と意志だ。私では持ち得ないものだ」
フェリクス:「私は必ずシルヴェストル、君を助けよう。だからどうか、胸を張ってくれ」
フェリクス:「私と君と、二人分の誇りを胸に」
シルヴェストル:「……ああ、大丈夫。君の力があれば、いかなる苦難にも立ち向かえるさ!」
GM:戦場の最中に居るかのような音響と、否応なしに主役の二人に視線を向けさせる照明。観客が舞台の──『シルヴェストル』の世界に没入していく。
御薗橋七葉:舞台袖で、侍女の衣装を着込んだ御薗橋が、つぶさにその反応を確かめる。
御薗橋七葉:(……立体音響の導入は成功だった。キャスティングの意外性も従来のファンに別軸での興味を持たせるのに役立ってる……)
御薗橋七葉:(掴みは上々。ここまでは王道の『シルヴェストル』。問題はここから……)
---
-:──舞台の明度が落ちる。勇壮な音響は途絶えて、暖炉の火が爆ぜる音に変わる。
-:舞台上の書き割りは、石壁を模したものに入れ替わった。
-:スポットライトは上手へ向かう。
ギヨーム公:だんっ!
ギヨーム公:荒々しい足取りで現れたるは、白銀と赤で飾った鎧を纏う青年。
-:その後を、三人の従者が小走りに追う。
-:その内の一人が、「お待ちください、ギョーム公!」と呼びかけて、
-:また別の一人が、「何かお気に障るようなことでも──」と縋り付くと、
ギヨーム公:「気に障るだと!?」劇場を揺らさんばかりの大喝と共に、青年は無造作に引き抜いた腰の剣にて、未だ言葉を発せぬ従者の一人を切り伏せた。
ギヨーム公:「忌々しい、忌々しい。忌々しきはあの二頭!」
ギヨーム公:「血統書付きの痩せ犬と、どこの穴の出とも分からぬ虎よ!」
-:「痩せ犬と、虎──それは果たして、シルヴェストル様とフェリクス様のことで御座いましょうか」
ギヨーム公:「その名を二度と俺に聞かせるな! 貴様の舌が讃えるべき名は一つ、このギヨームであるのだ!」
ギヨーム公:だん!
ギヨーム公:床を踏みつけ、客席を睨む。狂気を孕んだ瞳がぎらぎらと、赤黒い照明を反射して、獣のようだ。
ギヨーム公:「先の戦に於いても、演習に於いても」
ギヨーム公:「公爵(Duc)たる血をさしおいて、伯爵(Comte)の家門に過ぎぬ若造が──ましてやその従僕、奴卑に過ぎぬやつばらが!」
ギヨーム公:「俺に与えられるべき賞賛を掠め取り、はては上王の覚えめでたくも拝謁仕るとは、これはいかなる凶事であろうか!」
ギヨーム公:「忌々しい、忌々しい。忌々しきはあの二頭、世に一切の不浄を知らぬような顔をした餓鬼共だ!」
ギヨーム公:肩で息をする──咳き込む。少し、その咳は永かった。
-:生きて居る従者は二人。その片方がギヨームの背をさすりながら、
-:「お気を確かに。我々の主人はあなた様だけでございます──」
ギヨーム公:「おい、お前」その手を捻りあげ、額を上から押し付けるように睨む。
ギヨーム公:「あの連中の陥穽を知らぬか。いかなる噂話でも良い、羽虫が口吻に引っかけて持ち込んだ程度の信憑性でも構わぬのだ──」
-:「は。し、しかし先ほどは、二度とその名を聞かせるなと──」
ギヨーム公:剣を振るう。また一人、従者が倒れる。
-:生き延びた従者は一人、腰を抜かして舞台上に座り込み、こう告げるのだ。
-:「か、かの騎士二人は清廉潔白にして眉目秀麗!」
-:「武技においても学問においても傷無く、驕ることなく、上王には忠にして民に仁愛!」
-:「城の者達は口を揃えて、あのようなお方に仕えられるのならばと──」
ギヨーム公:首筋に、剣を突きつけた。
-:「ひっ!? は、話します! 話しますとも! あの従者の方はいずこの洞の生まれとも分からぬ身分!」
-:「蔑むものとておりましょう! 疎ましくも思いましょうぞ! ……当のシルヴェストルの他は!」
ギヨーム公:「不愉快だ! シルヴェストルという名、そのものが!」
-:「シルヴェストルはかの従者を〝我が友〟と呼び、また従者は主君を〝兄弟〟と敬い」
-:「かの騎士は比翼連理、その友情に一部の瑕疵も見当たらぬと──」
ギヨーム公:剣を引いた。
ギヨーム公:そうして嫉妬に燃える若き公爵は、空を見上げて笑みを浮かべた。
ギヨーム公:「そうか。シルヴェストルはあの男を、友と呼んだか」
ギヨーム公:「しかるにフェリクスはあの男を兄弟と呼んだのならば、それは」
ギヨーム公:「あの悍ましき血筋の若造は、伯爵の血が己の中に流れていれば良いと思っているのだ」
-:──どこからか、音楽が流れてくる。
-:それは心地の良い、だがどこか淫靡で甘ったるい、女性の歌声だ。
ギヨーム公:「……ふふ、ははは、ははははは」
ギヨーム公:「ようし、ようし」
ギヨーム公:「叶えてやろうぞ、若虎よ。貴様の牙で痩せ犬の喉を裂くが良い」
ギヨーム公:熱に浮かされたように呪詛を吐きながら、その足はふらふらと下手へ向かっている。
-:「ギヨーム公! いずこへ赴かれるのです!」
ギヨーム公:「天の声が俺を招くのだ! 天の声が俺を讃えている!」
ギヨーム公:「この国に於いて最も崇められるべきはシルヴェストルにあらず!」
ギヨーム公:「我、ギヨームである!」
ギヨーム公:がくん。
ギヨーム公:糸が切れたように背を丸め、肩を落とした青年は、
ギヨーム公:「……それにしても、美しい声だ。誰が歌っている?」
ギヨーム公:取り憑かれたような足取りで、下手の袖へ消えていく。
-:後には従者の亡骸が二つと、かろうじて生き残ったものが一人。
-:暗転する舞台の中、身じろぎもせずに残されていた。
---
-:かくして、無垢で清廉なるシルヴェストルは、ギヨーム公の策略により哀れにも命を落とす。
-:舞台・暗転。
-:……黒い幕の降りた舞台に、スモークが焚かれている。
-:シンプルな檀上の中央に、シルヴェストルが項垂れるようにして座り込んでいる。
-:地獄を彷徨うシルヴェストルの元に悪魔リュシエラが現れ、魂の契約を迫りながら現世へ誘うシーン。
悪魔リュシエラ:「ねえ、高貴なる騎士様」
悪魔リュシエラ:黒鳥を思わせるドレスを着た女が、シルヴェストルの背後から現れ、彼の頭をかき抱くようにして言葉を紡ぐ。
シルヴェストル:「騎士……?私を、呼んでいるのか?」
悪魔リュシエラ:「ええ。そう、あたしはずうっと貴方を見ていたの」
シルヴェストル:「覚えている。我が臓腑を焼くあの痛み。この身は、たしかに死を迎えた」
シルヴェストル:「ならば貴様は、我が魂を運ぶ死神か?」
悪魔リュシエラ:「いいえ、いいえ。あたしは、貴方のその綺麗な魂を、ここから運び出してあげる女」
悪魔リュシエラ:「ねえ、その美しい唇で、あたしのリュシエラという名前を呼んでくださらない?」
シルヴェストル:「死神でないというのなら、ああ、ああ、分かったぞ」
シルヴェストル:「貴様、悪魔か。我が魂を誑かしに来たのだな!」
悪魔リュシエラ:「あはははは!」哄笑する。「ああ、哀れなシルヴェストル。人を疑うことを知ってしまった」
悪魔リュシエラ:「ええ、そうかもしれないわ…そう思っていたっていいわ。ただ、あたしは」
悪魔リュシエラ:「騎士シルヴェストルの願いを知っている。ねえ、ギヨーム公に殺されたままでいいの?」
シルヴェストル:「黙れ」
悪魔リュシエラ:「黙らないわ。だってあたし、ずうっと貴方のこと見ていたんだもの」
悪魔リュシエラ:「ねえシルヴェストル。現世ではフェリクスが家督を継ぎ、貴方の持っていたものを全て我が物にしようとしている」
シルヴェストル:「……!」
シルヴェストル:項垂れていた騎士が、その名を聞いて立ち上がる。
シルヴェストル:「フェリクス……フェリクスだと?」
悪魔リュシエラ:「ええ。このままじゃ、シルヴェストルの名前はいずれ世から消え去り、人々が知る英雄の名はフェリクスとなるわ!」
悪魔リュシエラ:「ああ!あの何処の洞の生まれとも知らぬ男が、恩も忘れて高貴なる騎士を踏み台にして英雄となろうとしているなんて!」
シルヴェストル:「お、おお、おおぉ……!」
シルヴェストル:両腕を天へと伸ばす。遥か彼方、届かぬものへと伸ばされた手が無様に空を切る。
シルヴェストル:「ああ、なぜ……なぜだ、フェリクス!」
シルヴェストル:「言ったはずではないか。伯爵家には、私の血が必要なのだと……!」
シルヴェストル:弱々しく揺れていた声に熱が灯る。頼りなかった足取りが力強く大地を揺らす。
悪魔リュシエラ:「シルヴェストル。本当の騎士様。ねえ、このリュシエラが、貴方を再び現世へと誘うわ」
悪魔リュシエラ:手を伸ばす。「いかがかしら。あたしと魂の契約を果たさない?」
シルヴェストル:「やめろ、やめてくれ!悪魔の言葉など聞かぬ……!」
シルヴェストル:「ああ、だが……フェリクス! 我が友、我が兄弟よ、お前は……」
シルヴェストル:「お前が私に唯一残してくれたものすら、奪っていくというのか!」
シルヴェストル:その魂に熱を与えるものは怒り、絶望、そして──嫉妬。
シルヴェストル:「ならば、ならば私は……」
シルヴェストル:「この魂を売り払ってでも、お前から全て取り返してやる……!」
シルヴェストル:悪魔の手を掴む。
悪魔リュシエラ:黒いドレスを纏った女は妖艶に微笑む。
-:ここで、照明が下りて再び場面転換される寸前。
悪魔リュシエラ:「じゃあ、ここで、あたしに貴方をちょうだい」
悪魔リュシエラ:更に台詞を紡いだ。アドリブだ。脚本にはない。
悪魔リュシエラ:「ねえ、ひとつ口づけをくれるだけでいいの。それだけであたし、貴方に何だってしてあげる気になるわ」
悪魔リュシエラ:一歩踏み込む。
悪魔リュシエラ:「ねえシルヴェストル。この悪魔リュシエラに、愚かな恋をさせた、無垢なる騎士様!どうか!」
悪魔リュシエラ:「どうか…………」
悪魔リュシエラ:言いながら、男の前に崩れ落ちる。
悪魔リュシエラ:「………嘘よ。あたしに口づけなんかしちゃだめ」
悪魔リュシエラ:「好きよ…、シルヴェストル…。けれど貴方は…こんな下賤な悪魔に目をくれてはいけないわ…」
悪魔リュシエラ:「ああ、こんなに近くにいるのに、どうしてこんなにも、遠いんだろう……」
シルヴェストル:「……君も愚かだ。私と同じように」
シルヴェストル:膝をついて、すすり泣く悪魔の頬に手を触れる。
シルヴェストル:「約束しよう。私が全てを取り戻した時、君に私の全てを明け渡すと」
悪魔リュシエラ:「…………馬鹿な男」
悪魔リュシエラ:「あたし、貴方と、ひと時でも近しい友のように言葉を交わせれば、それだけで良かったのに……」
-:舞台・再び暗転。
GM:既存のイメージから離れたリュシエラのキャラクターに、客席には静かな驚きと共に賛否を問わずして興味の色が広がっていく。
GM:そして舞台は、クライマックスに向けて俄かに熱を帯びていく。
---
藁科 サイカ:(……静かだなぁ)
藁科 サイカ:(客席のどよめきは聞こえているし、舞台裏はこんなにも忙しく駆けずり回って)
藁科 サイカ:(なのに随分と、静かに感じる)
藁科 サイカ:(余計な音も考えも、今の俺に追いつけないでいるんだ)
藁科 サイカ:口に含んだ綿を吐き出した。
藁科 サイカ:目の下の隈を隠すメイクを拭い落とし、髪を両手でざんばらに掻き乱す。
藁科 サイカ:著しく背を曲げた、老人の如き足取りで──
ギヨーム公:だぁんっ!
ギヨーム公:強く床を踏みしめ現れたるは、前半の美丈夫ぶりを失った亡霊の如き公爵。
ギヨーム公:「忌々しい、忌々しい、忌々しきはあの若虎よ!」
ギヨーム公:「このギヨームの思惑は悉く空を切り、やつの策は悉く我が兵を射貫く!」
ギヨーム公:「公国と伯爵領の争いはまもなく終わるのだろう、我が死を以て──」
ギヨーム公:咳き込む。咳が止まぬ内に、
ギヨーム公:「──否とよ。まだ俺には策があるのだ。俺には天の声が味方している。嗚呼、あの麗しき歌声よ!」
ギヨーム公:「見ているが良い。あの痩せ犬を殺したが如く、次はフェリクスの首を跳ねてくれる。さすれば次こそ歓喜の声は俺に捧げられるのだ!」
シルヴェストル:「──否。させぬぞ、ギヨーム」
シルヴェストル:朗々たる声とともに現れる。腰の剣を抜き放ち。
ギヨーム公:「シルヴェストル!? あり得ぬ、貴様は死んだ筈! この目で貴様の死を見たのだ!」よろめくようにシルヴェストルから距離を取り、書き割りの壁にもたれ掛かる。
シルヴェストル:「貴様の策、貴様の刃がフェリクスをとらえることは叶わぬ」
ギヨーム公:「おのれぃ、吠えよるわ!」腰の剣を鞘ごと引き抜く──鞘を鬱陶しそうに投げ捨てる。
ギヨーム公:「そのフェリクスの背に隠れていたのは誰か、死んで忘れたとは言うまいな! 亡霊!」
シルヴェストル:「覚えている。覚えているとも!」
シルヴェストル:「私が誰よりも覚えている!だからこそ!」
シルヴェストル:剣を大きく振りかぶる。その瞳は、ギヨームを捉えていない。
シルヴェストル:「フェリクスの首を刎ねるのはこの私だ!」
ギヨーム公:「小癪! 地を這いずる亡者め、天にあるべき俺が見えぬか!」
ギヨーム公:「ふふ、はははっ、ははははは! そうか、さては天よ、女神よ、お前の差配であるのだな!」
ギヨーム公:「おおよそあの痩せ犬が死んでより、民の情愛は俺にも、あの若虎にも向けられなかった」
ギヨーム公:「民はただ涙に暮れて、薄汚れた墓の前に跪き続けたのだ! だが!」
ギヨーム公:剣を高々と振りかざす。背の曲がった狂公爵が、足を引きずるように踏み出した。
ギヨーム公:「再び殺してくれよう、シルヴェストル。貴様の首を城門に掲げ、我が優越の証とせん」
ギヨーム公:「天下の賞賛と愛は全て、我、ギヨームにこそ捧げられるべきなのだ!」
シルヴェストル:「目の眩んだ老いぼれが……!邪魔を、するなぁっ!」
ギヨーム公:振るわれる剣。そこにかつての鋭さは無い。
ギヨーム公:妄執に狂った男の剣は、シルヴェストルの頭上へ迫れど──。
シルヴェストル:白刃が一瞬早く、公爵の胸を貫く。
ギヨーム公:「ぐむぅうっ……!?」彫像のように動きを止めた。……その手から剣が滑り落ち、城塞の床に、からりと転がった。
ギヨーム公:「なぜ、だ」
ギヨーム公:「なぜ──」
藁科 サイカ:「──……っぐ、ゲフッ……!」
藁科 サイカ:咳き込んだ。酷く、激しく、上体を折るように。
藁科 サイカ:咄嗟に口元を抑えた指の隙間から、赤いものがつうっと零れて、白銀の鎧を穢す。
四条 幸音:「(っ、藁科……!?)」
ギヨーム公:「──何故、貴様は」ひゅうひゅうと隙間風のような音が混ざる声。だが声量は、先ほどまでと些かの遜色も無い。
ギヨーム公:「力も策謀も家柄も、全て俺に劣っていた筈だ……! だが、貴様は」
ギヨーム公:床に膝を着く。力を失った手が、シルヴェストルの衣服の裾に縋る。
ギヨーム公:「貴様は、俺が欲したものを」
ギヨーム公:「友も民も、賞賛も愛も」
ギヨーム公:「全て、当然のように……」
ギヨーム公:「いま、いま……しぃ……」
ギヨーム公:がしゃんっ……
ギヨーム公:それっきり、狂った男は動かなくなって、
ギヨーム公:「……歌が聞こえる」
ギヨーム公:「俺、だけの……」
ギヨーム公:最後の台詞は少しだけ、夢を見るように穏やかだった。
シルヴェストル:「……」
シルヴェストル:倒れ伏すギヨームを見届け、天を仰ぐ。
シルヴェストル:「……やった。やった、やったぞ!」
シルヴェストル:「私が斬った!私がこの手で……!」
シルヴェストル:「見たか、フェリクス! お前が居なくても、私は……!」
シルヴェストル:「次はお前の番だ、我が友よ!」
-:──どこからか、音楽が流れてくる。
-:それは心地の良い、だがどこか淫靡で甘ったるい、女性の歌声だ。
-:それは役者の移動する音や、セットを変更する際の音を掻き消す措置でもあるし、
-:このシーンを以て退場する愚かな男のテーマ曲でもある。
-:舞台・再び暗転。
藁科 サイカ:「──!」
藁科 サイカ:衣装の下に、シャツを着込んでいた。その裾を引きずりだして床を拭う。
藁科 サイカ:その後は何事も無かったかのように、撤去される書き割りパネルの裏に隠れて、舞台の袖へはけるのだ。
藁科 サイカ:その声を誰にも拾えぬよう、裏手へ深く消えてしまって、
藁科 サイカ:「……明日以降の公演、血糊が必要だなぁ」
藁科 サイカ:「あれ美味しくないんだよなぁ……」
藁科 サイカ:ぼやきながらも、にやりと笑った。
御薗橋七葉:(……藁科さん……!)
御薗橋七葉:予定にない吐血。それが演技でも意図してのアドリブでもないことは一目で分かった。
GM:藁科の喀血に気付いた様子の観客は、一人としていない。
GM:誰もがギヨームの鬼気迫る演技に魅了され、それが演出の一環だと思い込んでいる。
GM:そして、再び照明が灯る。物語は終幕へと。
---
-:黄昏色の光が、揺れるように舞台を照らし出している。
-:しかしそれは夕暮れの色彩ではない。炎。紅蓮の炎だ。
-:部下の一人もなく、傷んだ鎧のフェリクスが、燃える廊下をやってくる。
フェリクス:剣を携え、荒れ果てた双眸。髪も乱れ、横顔には疲れと怒りが滲む。
フェリクス:「ギヨーム。ギヨーム公!何処へと身を潜めている!」
フェリクス:「勇猛暴乱にて知られたその命を、今もって惜しむのか! 戦の中でそれを焼き尽くさんという気概すらも、老いさばらえたか!」
フェリクス:「ギヨーム、ギヨーム! この剣の前にその首を差し出されよ!」
フェリクス:「我が城の礎の一つとなられるために! 姿を見せろ。何処だ、ギヨーム!!」
シルヴェストル:「お前らしからぬ姿を見せたものだな、フェリクス」
シルヴェストル:騎士の前に現れたのは老いて狂った公爵ではなく。
シルヴェストル:「非の打ち所なき完璧な騎士。それがお前であったろうに」
フェリクス:「……!!」 その姿を認め、硬直する。目を見開いて、しかし剣だけは握ったまま
シルヴェストル:かつて友と、兄弟と呼んだ男。剣と鎧を真っ赤に染め、瞳を血走らせて。
フェリクス:「いよいよ私の気が狂ったか。紅蓮の炎が見せるまぼろしか。あるいはこれもギヨーム公の奸計か? ……いいや……」
フェリクス:「違(たが)えるものか。シルヴェストル! これは確かに貴様! なぜ……!?」
シルヴェストル:「なぜ、なぜ、なぜ!」
シルヴェストル:「ああ、その言葉。何度お前に問いかけてやろうと思ったことか!」
シルヴェストル:「なあフェリクスよ。 お前の求めるギヨームの首は、既にこの剣が奪ってやった!」
シルヴェストル:「懐かしいか? 憎いか、疎ましいか?」
シルヴェストル:「私はまたお前から奪ったのだ。お前が手に入れるべき栄光を!」
フェリクス:「……シル……ヴェストルゥ……!!」 低く唸るような怒声。獣のように駆け、剣を振り下ろす
シルヴェストル:激情に駆られ精彩を欠く刃を、正面から受け止める。
シルヴェストル:「ああ……だが、誰も知るまい。誰一人として認めまい」
シルヴェストル:「私のいかなる栄光も、いかなる名誉も」
シルヴェストル:「全て与えられたものになる。なってしまう。……お前が居る限り、フェリクスっ!」
フェリクス:受けられた剣を引き、また激しく振り下ろす。それをまた受けられる。鉄火散る衝突。
フェリクス:「何が不服か。そうあれば良かった! そうあれば良かったのだ!」
フェリクス:「人々は求めている。高貴なる血と、そこに引き継がれる意志を! それこそはお前が、お前だけが与えられたものだった!」
フェリクス:「私がいかに栄光と名誉を捧げようと埋めきれぬものを、お前だけが持っていたのに」
フェリクス:「……なぜ!」
フェリクス:「なぜ今、冥府より立ち上がってきた。シルヴェストル……!!」
シルヴェストル:「黙れっ!分かるものか、お前に!」
シルヴェストル:「与えられたものしか手にできぬ惨めさが、分かるものかっ!」
シルヴェストル:「なぜ私は、お前ではないのだ……!フェリクスっ!」
フェリクス:なぜ、なぜ、と問い続け、その一つにも答えの出ぬまま、怒号と共に交わされる白刃。
フェリクス:剣閃全ては全て一髪の肉薄で双方の命を掠め続け、しかしやがて
フェリクス:剣が弾かれ、飛ぶ。絵画のように硬直する両名。剣をなお手にしているのはシルヴェストルだ。
シルヴェストル:「私の……勝ちだっ!」
フェリクス:「ハァ……ハァッ……」 肩で息をしながらシルヴェストルを睨んだフェリクスは、しかし脱力してへたりこむ
フェリクス:「……ならば……」
シルヴェストル:倒れたフェリクスの喉元に刃を突きつける。
フェリクス:「勝利を手にするが良い。我が兄弟。シルヴェストル」
シルヴェストル:「……っ!」
フェリクス:「賤しき簒奪者をその手で討ち、その汚れなき血と意志で、栄光を手にせよ」
フェリクス:「私には為し得ぬことだ」
フェリクス:「さあ」 捧げるように、その白い喉を刃先に添わせる
シルヴェストル:「ああ……そうだ!私、私はっ……!」
シルヴェストル:「今度こそ、手に入れるんだっ!自らの手で!」
シルヴェストル:憎しみと怒りで声が震える。
-:全てを飲み込まんとする炎が、二人を照らしている。
シルヴェストル:捧げられたままに、憎み続けた男の首を刎ねる──
シルヴェストル:「……なぜ、」
シルヴェストル:剣が、その手から滑り落ちる。
シルヴェストル:「なぜだ……フェリクス……!」
シルヴェストル:力なく崩れおち、答えのない問いを続ける。
フェリクス:答えはない。剣が彼の手より落ちてもなお、最後の審判を待っている。
シルヴェストル:「いつだってお前は、私に与えてきた」
シルヴェストル:「偽物ばかりだ!私が手にしたものは全て!……その筈なのに、なぜ!」
シルヴェストル:「私を友と、兄弟と呼ぶお前の言葉を」
シルヴェストル:「私は、偽りにできぬのだ……!」
フェリクス:「……いつまでもお前は」
フェリクス:「為し得ぬ者なのか? 違うはずだ、シルヴェストル」
フェリクス:「地の底より戻ってきたのは何故だ。その剣で貫くものがあったからではないのか」
フェリクス:「それはここにあるのではないか!? ……シルヴェストル!!」
シルヴェストル:「できない……できる、ものか」
シルヴェストル:「私は、お前の命を奪いに来たのだ」
シルヴェストル:「お前から、命すらも恵んでもらいに来たのではない……!」
シルヴェストル:弱々しい足取りで立ち上がり、背を向ける。
シルヴェストル:「なぜだ、フェリクス……なぜ、」
シルヴェストル:「私を、憎んでくれなかったのだ……」
シルヴェストル:勝者となったはずの男は、何一つ手にできずに去っていく。
フェリクス:「……いいや……」 去っていくその背に、尚も喉を捧げるような恰好のまま
フェリクス:「私は……シルヴェストル。お前のことを憎んでいたし、嫉んでいたぞ」
フェリクス:「どれほど己を鍛えても、この人生を捧げたとしても得られぬ、高貴の血、尊い意志の価値も分からぬお前を」
フェリクス:「それでも私は、お前をこの世から消し去ってしまうよりも……お前の椅子にふんぞり返るよりも……」
フェリクス:「お前と共にありたかったのだ」
-:炎の音が、光が、強さを増していく。フェリクスが輪郭を残し、人型の影となっていく。
フェリクス:「お前はどうだ?」
フェリクス:「シルヴェストル……」
---
-:中割幕が降り、シルヴェストルは地獄へと再び舞い戻る。
-:中央に立つシルヴェストルと、下手に立つ悪魔リュシエラに対しスポットライトが落ちた。
-:舞台に、役者だけが揃う。
悪魔リュシエラ:「どうして戻ってきてしまったの、シルヴェストル!愚かな人……」すすり泣く。
悪魔リュシエラ:「あたし達は契約を交わしてしまった!貴方が地獄に戻ってくるということは、あたしに魂を捧げること!」
悪魔リュシエラ:「あたしのことを好きでもないくせに、あたしに全てを捧げようというの!」
シルヴェストル:「それが契約だっただろう。お前が涙を流すことがどこにある?」
シルヴェストル:「……私にはできなかった。ああ、お前の言う通りに愚かだったのだろう」
シルヴェストル:「だが、それでも……一時の帰還、二度目の生で」
シルヴェストル:「私は取り戻した。だから、もう良い」
シルヴェストル:「私の魂も全て、お前のものだ」
悪魔リュシエラ:「…嘘よ」
悪魔リュシエラ:「言わなくていいわ。分かるんだもの」
悪魔リュシエラ:「貴方をすっかり食べてしまったって、貴方の一番大切なものを、あたしは嚙み砕けすりゃしないんだわ」
悪魔リュシエラ:「いいわ。それでもあたしの元に来てくれた貴方を、あたしは離すことができないんだから…」
シルヴェストル:「ああ……」
シルヴェストル:彼女の言葉で、初めて気づく。己の嘘に。
シルヴェストル:「すまない、リュシエラ。……私はやはり、与えることには向かぬようだ」
シルヴェストル:「……それでも、私の残った全てが、君の安らぎとなるのなら」
シルヴェストル:「喜んで差し出そう。 ……ありが、とう」
シルヴェストル:目を閉じる。眠るように安らかな表情で。
悪魔リュシエラ:「………」
悪魔リュシエラ:眠り落ちたシルヴェストルに歩み寄り、その表情を見ながら独り言ちる。
悪魔リュシエラ:「ああ……高潔で勇敢で、誰からも愛されて、全てを与えられ、何も果たせなかった愚かなるシルヴェストル」
悪魔リュシエラ:「貴方は、愛も、友も、罰すらも、満足に与えてくれないけれど」
悪魔リュシエラ:「幸福だけは、与えてくれた」
悪魔リュシエラ:「おやすみなさい。シルヴェストル」
悪魔リュシエラ:額に口づける。
GM:──最後のスポットライトが落ち、舞台が暗闇に包まれる。
GM:幕が降りると共に、静寂が劇場を満たす。
GM:ぱちぱちと拍手の音。最初は戸惑いがちに、やがてさざ波のように広がって劇場を埋め尽くしていく。
GM:割れんばかりの拍手と歓声は、カーテンコールの後まで止むことはなかった。
GM:斯くして、劇団ラオペによる復帰第一回公演は、盛況のうちに幕を下ろした。
帳市 居酒屋『グランギニョール』
座長:「──ここまで色々なことがありましたが、何とかここまで辿り着けたのは劇団の全員が力を合わせてきたからだと信じています」
座長:「挨拶が長くなりましたね。今日はとにかく、この成功をお祝いしましょう」
座長:「それでは、『シルヴェストル』第一回公演の成功を祝して……」
座長:「乾杯!」
GM:グラスの打ち鳴らされる音。打ち上げで訪れた宴会には、劇団ラオペのメンバーが勢揃いしていた。
GM:机にはアルコールの類と、思い思いに注文されたごちゃ混ぜの料理が並び、これまでの苦労もあってか、賑やかな会話に花が咲く。
藁科 サイカ:「乾杯!」偽造身分証で年齢を偽り注文したのは甘ったるいカクテルで、それをくうっと喉奥に流し込んだ。
藁科 サイカ:手元に引き寄せた皿には、クリームコロッケやらポテトフライやら白米やら。炭水化物、脂肪分、炭水化物。
葛野くるみ:「かんぱーい」同じく、グラスにフルーツが刺さった甘いカクテルを高々と掲げている。
葛野くるみ:「あはは、サイカくんのダイエットもようやく終わりだねー?」
御薗橋七葉:「乾杯」乾杯の前から、ろくにつまみも食べずにひたすら日本酒を飲んでいる。
椿尾 輪花:「乾杯です」 手にしているコップに注がれているのはブラッドオレンジのジュース きちんとソフトドリンクである
四条 幸音:「乾杯」 グラスに入った最初の一杯をちびちびと傾ける。
GM:その後“天眼”──“メイルストロム”の所業は明るみとなり、UGNによって身柄を拘束される運びとなった。
GM:残った元劇団メンバーの態度は様々だ。話し合う姿勢を見せる者もいれば、あくまで対立を崩さない者もいる。
GM:少なくとも、“ラオペ”に対する火急の危機は去ったと言えるだろう。
椿尾 輪花:他の……特に一般メンバーの様子見も兼ねてぽつぽつと話して回っていたが、
椿尾 輪花:やがて"ラオペ"セルの元へ 「お疲れ様。ちゃんと食べてますか?」
葛野くるみ:「ねー公演の反応どうだった?もう感想届いてるの?」
四条 幸音:「客席からの反応は良かった……ように見えたけど……」
葛野くるみ:幸音ちゃんとそんな話をしていたが、輪花ちゃんに視線を向ける。
四条 幸音:「あ、お疲れ様。うん、先にもらってる」
御薗橋七葉:「上々よ。順調な滑り出し」
御薗橋七葉:「この感じなら、次はもっと大きなハコでやれるんじゃないかしら」
四条 幸音:「ほんとですか!?」
椿尾 輪花:「あら、そんなに……」 御薗橋さんに 「確かに手応えはありましたけど」
御薗橋七葉:「当然よ」ぐいぐいとジョッキを傾けて「最高だったもの、皆」
四条 幸音:「……良かったぁ」
四条 幸音:グラスを置いて、ぐったりと背中を壁に預ける。
椿尾 輪花:「不安があったの?」
四条 幸音:「出来には自信あったよ。皆、ほんとに凄かったし」
四条 幸音:「でも、周りから見てどう、なんてわかんないしさ。やっと緊張抜けたかも」
椿尾 輪花:「真面目なんだから」 四条さんに目尻を下げて
藁科 サイカ:「寧ろ目下の不安は、次のハコでやれるのがいつになるかってことだ」油物ばかりの皿を幾つか空にして、またカクテルで口の中を洗い流し
藁科 サイカ:「あまり何ヶ月も先になってしまうと、待つのがじれったくなるからな。可及的速やかにで頼みたいところだ」
四条 幸音:「次……」
椿尾 輪花:「そうね。できるだけ間をおかずに動いていきたいとは思っています。帳簿的には問題ないし……」
椿尾 輪花:「本の方が間に合えばですけど。どうです、御薗橋さん?」
御薗橋七葉:「順調ですよ」ホッケの身をほぐしながら
御薗橋七葉:「うちみたいな小劇団は、フットワークの軽さも武器ですからね」
御薗橋七葉:「本のほうは、あと1~2週間もあれば出来るかと」
椿尾 輪花:「心強いです」 ポテトを食べながら
葛野くるみ:「次はロミオとジュリエットでしょー」フライドポテトをつまみながらクスクス笑う。
椿尾 輪花:「……あの時話していたあれですね。内容としては実際面白そうですし、構いませんけど」
藁科 サイカ:「挑戦的な題材であることは確かだ。悲劇の中で最も知名度が高いだろうものを、幸福に終わらせようとは」
藁科 サイカ:「これは中々、役を掴むまでが難航しそうだとも」
四条 幸音:「……楽しみ?藁科」
藁科 サイカ:「さて、どう答えるべきか」
藁科 サイカ:「正直に言って、今回のギヨームは俺に〝合い〟すぎた。あそこまでに仕上げられるかどうか、不安は大きいな」
椿尾 輪花:「正直、あそこまで無茶な合わせ方はそう何度もして欲しくないけれど……」
葛野くるみ:「初日とかさー、ホントに死んじゃうかと思ったもん、あたし」
御薗橋七葉:「それは同意なんですけど、まあ……」酒気を帯びた深い息を吐く。
四条 幸音:「それはほんとに。……でも、凄かったよ。あんたのギヨーム」
御薗橋七葉:「良かったですよね……ギヨーム……」
葛野くるみ:「ねーっ、七葉ちゃんそればっかー。あたしはあたしはー?」
御薗橋七葉:「くるみも最高だったわよ」じゃれるように頬を撫でる。酔っている。
葛野くるみ:「ふうーん」七葉ちゃんによる頬の感触に目を細めている。
藁科 サイカ:「おいおい、なんだ急に。普段誰もそんな風に褒めちゃあくれないくせに」
藁科 サイカ:けらけら笑ってまたカクテルを一杯。酔いに身を任せている。
椿尾 輪花:「そういうための場でしょ。素直に受け取ってください」
四条 幸音:「うん。 一緒に演ってるのに、引き込まれた」
藁科 サイカ:「……問題は、次の役は〝幸せ〟でなきゃいけないってことだ」
藁科 サイカ:「食事が美味い、酒が美味い。寝床が暖かい。その程度の幸せじゃあ、ちょっと悲劇を引っ繰り返すには足りないかな」
椿尾 輪花:「信じられないくらいの愛の悲劇に出くわしたジュリエットが、そんなことで幸福を取り戻したりするのも……」
椿尾 輪花:「……いや、ちょっと斜に構えすぎかしらね。もうちょっと素直な方が良いか」
藁科 サイカ:「やだろ、揚げ物で幸福を掴むジュリエット」
四条 幸音:「……藁科。『シルヴェストル』は、楽しかった?」
椿尾 輪花:「ああロミオ、ベッドがふかふかで幸せだわ!」
御薗橋七葉:「いいかもな……」神妙な顔。酔っている。
藁科 サイカ:「あー……」答えの言葉を探し、暫しは酒臭い息を吐き出し続けて、
藁科 サイカ:「おっと、急に成人向けの内容になったなジュリエット」一度脱線して言葉を茶化す。
藁科 サイカ:それから、視線を何処へ向けるともなく漂わせて、「〝くらわせてやった〟って感じ」と言った。
四条 幸音:「……ああ、くらったよ。少なくとも僕は、心に残った」
四条 幸音:「そういうのもさ、”幸せ”の足しにならない?」
藁科 サイカ:「足りないなぁ。俺は欲深いから」
藁科 サイカ:「今の状況から想像できる、なにもかも上手く行ったハッピーエンドにならなきゃ、気持ちが乗らないかも知れないよ」
四条 幸音:「……そっか。じゃ、頑張るとしますか」
四条 幸音:「あんたが想像できないぐらいのハッピーエンド、目指してやるから」
四条 幸音:「そうすればきっと、次も……良い舞台になるよ」
葛野くるみ:「シッルヴェストるーーーー」いつもより陽気な声を上げて、幸音ちゃんの背中に後ろから抱き着く。
四条 幸音:「ひゃ、ちょ、なにっ!?」
葛野くるみ:隣の席からもらってきたウイスキーのグラスを片手に持っている。酔っている。
葛野くるみ:「ねーシルヴェストルさーひどくないー?あたしのこともうちょっと好きになってくれてもよくないー?」
四条 幸音:「え、ええ……? それを僕に言われても」
御薗橋七葉:「……」据わった目で熱燗を傾けている。
四条 幸音:「ちょ、怖い」
椿尾 輪花:「あらあら。悪魔じゃない人が悪魔のようになってますよ」
葛野くるみ:「幸音ちゃんはシルヴェストルでしょ~」
葛野くるみ:幸音ちゃんの背中にぐいぐい体重を乗せる。
椿尾 輪花:「仕方ありmせん。シルヴェストルの心の中心にあったのは結局、フェリクスのことなんですから」
椿尾 輪花:「悪魔リュシエラに……」 葛野さんの顔を覗き込んで 「最初から出る幕はなかったんですよ」
椿尾 輪花:「ねえ? シルヴェストル?」
葛野くるみ:「えーーーー??」
葛野くるみ:「でもシルヴェストルが最後に一緒にいたのはリュシエラだも~ん。魂くれたも~ん」
葛野くるみ:「そうだよねえ!シルヴェストル?」
藁科 サイカ:「あれは契約だからなぁ……」
四条 幸音:「顔が怖いよ、フェリクス……リュシエラも、ほんとにもう……」
藁科 サイカ:「〝お金払ったのに〟って女の子に詰め寄るおっさんみたいだぞ、くるみ」
御薗橋七葉:「……ほら」
御薗橋七葉:がし、とくるみの肩を掴んで、四条さんから引き剥がす。
葛野くるみ:「あたしおっさんやだぁ~…」引き剥がされていく。
御薗橋七葉:「迷惑してるでしょ」
御薗橋七葉:「『四条さん』が」
四条 幸音:「確かに最後、シルヴェストルはリュシエラに魂を引き渡したけれど」
四条 幸音:「結局リュシエラは、シルヴェストルから一番受け取りたかったものは手に入れられなかったんじゃないかな」
四条 幸音:「シルヴェストルの情は、フェリクスに奪われてしまったから」
四条 幸音:「……って、こんな話、練習のときに散々したじゃない」
椿尾 輪花:「ふふふ。聞き分けが良かったら悪魔じゃないでしょう」
椿尾 輪花:葛野さんに抱きつかれて少し乱れた四条さんの衣服をはたいて直し
椿尾 輪花:「悪魔の面倒を見なきゃいけない人がいたとしたら、さぞかし大変でしょうね」
御薗橋七葉:「さあ、どうでしょうね」
御薗橋七葉:酒器をひっくり返して、残ってないか確かめて。
御薗橋七葉:「それも楽しいかもしれませんよ、案外」
四条 幸音:「……魅入られてますね」
椿尾 輪花:「魂まで捧げる勢い」
藁科 サイカ:「バッドエンド版のロミオとジュリエットなら配役決まりだな」
葛野くるみ:「七葉ちゃんの魂なんかいらない~」
椿尾 輪花:「あら」
御薗橋七葉:「何でよ」ムッとして
四条 幸音:「(魂取られたい、ってのもすごいのろけ方だよね……)」
葛野くるみ:「えー、だってあたしと七葉ちゃんが別々にいた方が楽しいじゃん」
葛野くるみ:「じゃないとキスとかできないし…」
御薗橋七葉:「くるみ……」
御薗橋七葉:アルコールに溶かされた目で見つめて
御薗橋七葉:「今していい?」
葛野くるみ:「七葉ちゃん……」
葛野くるみ:アルコールに染まった頬のまま見つめ返して
四条 幸音:「ちょ、ちょっとちょっと……!周り、人居るから……!」
椿尾 輪花:微笑しながら、片頬が引きつっている
藁科 サイカ:「いいだろ、やっちゃえやっちゃえ」
椿尾 輪花:「今度からこの二人だけ打ち上げはハプニングバーにしてもらいましょう」
四条 幸音:「皆だいぶ酔い回ってきてるでしょ、もう……!」
葛野くるみ:「えー、皆で二次会行こうよー」
葛野くるみ:七葉ちゃんの首に両腕を回しながら振り向いて言う。
藁科 サイカ:「二次会はパス。ここでキスだろ?」
藁科 サイカ:「二次会なんか行ったら、そりゃもう君達……なぁ?」
椿尾 輪花:「駄ー目、お酒飲まない人は一次までって決めたでしょ」
御薗橋七葉:「飲んでるもんね?」
葛野くるみ:「飲んでる~!」
椿尾 輪花:「私は法令を遵守していますので」
葛野くるみ:「えー、幸音ちゃんも飲んでるよね?」
四条 幸音:「えっと……ごめん、今日はいただいてます……」
御薗橋七葉:「ほらぁ」
椿尾 輪花:「えっ……」
椿尾 輪花:四条さんを振り返る
四条 幸音:申し訳無さそうにからんからんとグラスを回す。
藁科 サイカ:「みんなタフだな……」苦笑しつつ、「俺は抜けるよ。人を探してくる」
葛野くるみ:「いってらっしゃい~」サイカくんに手を振ります。
四条 幸音:「そっか。……うん、行ってらっしゃい」
藁科 サイカ:「全員見つかるまで戻らないかも知れないからよろしく~」ぱたぱたと手を振って、さらりと重要なことも言って、
藁科 サイカ:それからするりと、宴会場を抜けていった。
椿尾 輪花:(……人を探して……?) 引っかかりを覚えつつも軽く手を振る
御薗橋七葉:「お気を付けて」くるみに凭れたまま酒をぐいぐい煽る。
四条 幸音:「(全員……?)」
椿尾 輪花:そして、四条さんのグラスを取って一口だけ口にする 「……はい。私も飲みましたから」
椿尾 輪花:「二次会行きです。あーあ」
葛野くるみ:「えー、何それ!なんでいつもみたいにナマとか飲まないの?」
椿尾 輪花:「人を飲んだくれみたいに」
椿尾 輪花:「お酒、別に特別好きな訳ではないですし。今日は色々な人とも普通に話したかったですしね」
椿尾 輪花:「未成年の子の前であんまりアルコール匂わせても駄目でしょう。……このテーブルでは不要な気遣いみたいですけど」
四条 幸音:「ん……そうだね。気遣い、空振りさせちゃってごめん」
椿尾 輪花:「いいんですよ。四条さんは四条さんのしたいようにしてくれれば」
椿尾 輪花:「まあ……程々にお願いします。飲まれすぎない程度にね」
四条 幸音:「ん、了解。君も今日ぐらい、ちょっとは気を抜きなよ」
葛野くるみ:「ちょ~イチャついてるじゃん!」
椿尾 輪花:「ふふ、そんな。あなたたちじゃあるまいし」
四条 幸音:「い、イチャ……アンタに言われたくない!」
椿尾 輪花:「イチャつくっていうのは、これくらいしなきゃ」
椿尾 輪花:身を寄せて、四条さんの頭に頭を乗せる
椿尾 輪花:「……これくらいですよね?」
四条 幸音:「へ、うぇ」
御薗橋七葉:「イチャついてる……」
四条 幸音:「……酔ってる?」
椿尾 輪花:「あら、まだ一口だけですよ」
椿尾 輪花:「……今の空気には、酔ってるかも」
葛野くるみ:「えーっ、皆でどんどん酔ってこうよお。あたし達、どうせ悪い子なんだしさ」
葛野くるみ:手を挙げて、店員を呼ぶ。「すいませーん!」
四条 幸音:「……うん。僕も酔っちゃったかも」
GM:夜はまだ長く、朝の陽射しは遠い。
GM:そうして、“ラオペ”の宴は続いていく。
【ED/四条幸音・椿尾輪花】
四条 幸音:"ラオペ"セルの中心、ビル地下の応接スペース。
四条 幸音:セルのメンバーとして通い慣れた場所だ。全員で集まったり、主に呼び出されたり。
四条 幸音:最近はそれ以外の、私的な理由で訪れることが増えた。
四条 幸音:「椿尾、居る?入るよ」
四条 幸音:声をかけ、返事も待たずに扉を開ける。
椿尾 輪花:長い髪の少女が一人、応接スペースのテーブルでいくつかの資料を並べ見ている。
椿尾 輪花:が、来客が来れば顔を上げて、そっと笑みを浮かべる 「四条さん」
椿尾 輪花:「いますよ。こんにちは」
四条 幸音:「お疲れ様。 補給、持ってきたよ」
四条 幸音:手元のビニール袋を長椅子に置く。 コーヒーや紅茶、軽くつまめるもの。
椿尾 輪花:「ありがとう。ちょうどお腹が空いていたんです」
四条 幸音:「良かった。……えっと、麦茶とコーヒーと紅茶、どれがいい?」
椿尾 輪花:テーブルの上の資料を片して 「紅茶にします。四条さんも座って?」
椿尾 輪花:「休憩にしますから。そんなに急ぎということでもないし……」
四条 幸音:「ありがと。……今見てたのは何?」
四条 幸音:椅子に腰掛け、紅茶のペットボトルを開けて紙コップに注ぐ。
椿尾 輪花:「箱……舞台の資料ですね。いくつか候補を見繕っていて」
椿尾 輪花:「御薗橋さんもああ言ってたし。考慮はしておかないと」
四条 幸音:「僕に手伝えることある? 現地の様子見に行くぐらいなら……」
椿尾 輪花:「それはどちらかというと、演出の意見が欲しい所だから」 少し笑って 「どこかのタイミングで御薗橋さんを捕まえて、ですね」
椿尾 輪花:「なので、今は大丈夫。ありがとう、四条さん」
四条 幸音:「……了解、ひとまず役の練習に集中します。でも何かあったら言ってね」
四条 幸音:「愚痴ぐらいなら聞けると思うし。疲れたら気分転換ぐらいは付き合えるから」
椿尾 輪花:「……うん。ありがとう。そういう時は遠慮なく頼らせて」
椿尾 輪花:「多分また近く、UGNとの関係について、探りを入れなければいけなくなると思うから」
椿尾 輪花:「市内FH勢力が減ったぶん、前よりはずっと楽になるだろうけど……」
四条 幸音:「……そう、なってくれるといいな」
椿尾 輪花:「こればかりは相手の出方次第だから、待つしかないです」
椿尾 輪花:「……藁科さんから何か連絡があったりは?」
椿尾 輪花:彼女が何をしているらしいか、は、未だ彼女の髪にまぎれている影の端末を通じておよそ把握している。それはそれとして、だ。
四条 幸音:「……僕にはなにも。電話もメールも繋がらないし」
四条 幸音:「そっちも……待つしかない、のかな」
椿尾 輪花:「……そうね」 目を閉じる 「結局、本人を無理に連れ帰してどうなる訳じゃない」
四条 幸音:「あいつ、次の舞台の話をしてた。きっと戻ってくるって、そう思うけど……」
椿尾 輪花:あるいは自分がそこをそういう風に割り切れる人間だからこそ、そうではない彼女が今、行動をしているのかもしれないが。
椿尾 輪花:「私も同じ気持ちです。彼女はきっと戻ってくる」
椿尾 輪花:「そこに納得するための旅をしているんでしょう。……待ちましょう。ちゃんとこの"ラオペ"で」
四条 幸音:「うん。あいつが帰ってきた時、一緒に最高の舞台を演る」
四条 幸音:「そのための準備をする……僕らに今できるのは、きっとそれだよね」
椿尾 輪花:「はい。私もまた彼女が舞台に立つ所を見たい」
椿尾 輪花:「『シルヴェストル』のアンケート、一番は葛野さんでしたけど、藁科さんも僅差でしたからね」
椿尾 輪花:「これまでにないくらい好評でした。……立って欲しいです」
椿尾 輪花:「藁科さんと一緒に……」
椿尾 輪花:「……」 何か言いかけて、少し口を噤む
四条 幸音:「……椿尾?」
椿尾 輪花:「……いえ。その」
四条 幸音:言いよどむ様子を見て首を傾げる
椿尾 輪花:「前この場所で、あなたと藁科さんと話した時のことを思い出して」
椿尾 輪花:四条さんが他セルと通じていることを知り、それを彼女に『確認』した、その直後のことだ
四条 幸音:「三人で……」
椿尾 輪花:「あの時から……藁科さんとはどうしても、目標のベクトルがかけ離れていたのかな、それでもどうにかしようと思えばどうにかできたのか……っていうのが半分と」
椿尾 輪花:「……あなたにここでしたことのこと、半分」
四条 幸音:「……」
椿尾 輪花:視線をそらして 「今から思い返すと、やっぱり下手ばっかりだな、私は」
四条 幸音:「僕もさ。どうにかできたのかな……って、思っちゃうんだ」
四条 幸音:「もっと上手くやれてれば、あの時ああしていれば……って」
椿尾 輪花:「ん……」 頷く
四条 幸音:「でも、結局。思い返しても、正しい答えなんて今でも分からない」
四条 幸音:「もっと上手くできたかもしれないけど、もっと悪くなってたかもしれない」
四条 幸音:「でも、とにかく必死だった。全部正しくなかったとしても、全力で生きた」
四条 幸音:「そう思うしかないのかなって。……難しいけど」
四条 幸音:「あとは……忘れない、だけかな」
椿尾 輪花:「忘れない、か……」
四条 幸音:「自分の選択、やってきたこと。……それで変わったことを」
四条 幸音:「上手くできたことも、できなかったこともね」
四条 幸音:「でも、少なくともさ」
四条 幸音:「今も、"ラオペ"は続いてる。それは椿尾が残した結果だよ」
椿尾 輪花:自らの行いに対する結果の記憶は、生きるために重ねてきたことではるが、彼女の言葉はそうではないのだろう。
椿尾 輪花:だから、静かに頷く。じっとその言葉を自らに染み渡らせる。
椿尾 輪花:「……うん。選んで残せたものに、間違いはないって思ってる」
椿尾 輪花:「今この瞬間にないものが、私の失敗であったかもしれないけど」
椿尾 輪花:「この瞬間にあるものは……大事にしたい」
椿尾 輪花:「誇りたいです。……それで良いかな、四条さん」
四条 幸音:「うん。きっと、それで良いと思う」
四条 幸音:「少なくとも僕は、君のおかげでここに居る」
椿尾 輪花:「……」 そっと手を取り、指を絡める
四条 幸音:「……ちゃんと証明するから。君が残してきたもの誇れるように」
四条 幸音:少しだけ肩を寄せる。それだけで互いの熱が伝わる。
椿尾 輪花:時折……たとえば今のように、過去に思いを寄せた時、不安になる。仮眠室で告げた言葉。それに対する返事。そこから続く関係。
椿尾 輪花:本当に確かなのは、自分が発した言葉だけで。あの日からこの小さな彼女は、否応ないから自分を受け入れているに過ぎないのではないかと。
椿尾 輪花:この部屋のソファで彼女にした『確認』のように、力ずくで彼女の頭を握って、首を縦に頷かせているだけなのではないかと。
椿尾 輪花:だから、どこか甘えるように、触れた肩に頭を乗せる。
椿尾 輪花:「……温かいです」
椿尾 輪花:「温かい」
四条 幸音:「僕も」
四条 幸音:「……幸せ」
四条 幸音:絡めた指をより強く握る。
四条 幸音:「椿尾。君、次はいつ予定開いてる?」
椿尾 輪花:閉じた目を細く開いて 「予定……」
椿尾 輪花:「今夜は……セルの関係で顔を合わせなきゃいけない相手がいます。明日は劇団の関係。午後は少し空くけど……」
椿尾 輪花:「明後日なら一日」
四条 幸音:「じゃ、明後日だ。時間、もらえる?」
四条 幸音:「デート、しよ」
椿尾 輪花:「……」
椿尾 輪花:微睡むような目が、ぱちりと開いて
椿尾 輪花:「デート」
四条 幸音:「ご存知ない?」
椿尾 輪花:「っな」 顔を上げる。彼女の顔を見る
椿尾 輪花:「そんな、……その」
椿尾 輪花:「……ご存知、ですけど」 驚いた表情
四条 幸音:「前に言ったじゃない?次は僕が考えるって」
四条 幸音:「だからその約束……って、」
四条 幸音:「いうのが、建前」
椿尾 輪花:まばたきをしながら聞いている
四条 幸音:「本音を言うと」
四条 幸音:「また忙しくなりそうだから、そうなる前に」
四条 幸音:「輪花と二人でゆっくりしたかった。……ダメ?」
椿尾 輪花:「だ……」「……駄目な訳ない、じゃないですか」
椿尾 輪花:「その」 また視線を逸らす 「嬉しいです。誘ってくれて……」
四条 幸音:「……えへ」
四条 幸音:腰に手を回して、ぎゅっと抱き寄せる。
椿尾 輪花:「っあ」
椿尾 輪花:「し、四条さん」 慌てたような声。回された手に手を重ねる
四条 幸音:「約束とかお返しとか、理由なくたって」
四条 幸音:「僕、一緒に居たいんだからね」
椿尾 輪花:「っ……」
四条 幸音:「また誘ってよ、デート。僕も一杯考えるからさ」
四条 幸音:「楽しみな日は、一日だって多いほうが良いでしょ?」
椿尾 輪花:……理由がなくたって一緒にいたい。自分も口にしたことのある甘言だ。もちろん文字通りの意味ではなく、裏のある言葉。よく知っている言葉なのに。
椿尾 輪花:もうダメだ。彼女のそれを疑うことはできない。
椿尾 輪花:「……はい。その……はい」 小さく頷き、次いでしっかりと頷く
椿尾 輪花:「考えます、私も……で、誘います」
椿尾 輪花:「そういうの、あんまり分からないんですけど……それでもきっと」
椿尾 輪花:微笑を浮かべる 「……楽しい日、欲しいですから。四条さんと一緒の」
四条 幸音:「……」
四条 幸音:「まだ、『四条さん』」
椿尾 輪花:「う」
四条 幸音:「ふふっ」
四条 幸音:拗ねたような声を出して、すぐに我慢できなくて笑う。
椿尾 輪花:「……もう。演技やめてください」
四条 幸音:「僕だって役者ですしー」
椿尾 輪花:それこそ拗ねたようにして 「名前で呼ぶより、苗字で呼ぶ方が落ち着いて……」
椿尾 輪花:「……ゆ」
椿尾 輪花:「幸音……って」
椿尾 輪花:「ちゃんと呼んだ方が良いですか?」
四条 幸音:「……っ!」
四条 幸音:強く抱きついて、自分の顔を隠す。
四条 幸音:だめ。頬を通して、熱が伝わってしまうかも。
四条 幸音:「不意打ちはずるい……」
椿尾 輪花:「あっ……ちょ、ちょっと」
椿尾 輪花:「四条さん……っ」
椿尾 輪花:慌てたような声を漏らし、しかしほどなく
椿尾 輪花:「……ふふ……っ」 笑みを漏らす
四条 幸音:「……ふふ」
椿尾 輪花:「もう、四条さん……可愛いんだから」 ぎゅ、と腕を回して抱き返し
椿尾 輪花:「……一緒に作っていってください。楽しい日。ね」
四条 幸音:「うん。一緒に、たくさん。ずっと」
四条 幸音:「好きだよ、輪花」
椿尾 輪花:「ん……」
椿尾 輪花:「……好き……私も」
椿尾 輪花:「好き……」
【ED/葛野くるみ・御薗橋七葉】
葛野くるみ:まだ夜が明けていない時刻であることは分かる。
葛野くるみ:市内にあるオートロックマンション。葛野くるみの家。
葛野くるみ:ふたりで溶け合うように肌を重ね合わせた、真夜中のこと。
葛野くるみ:「七葉ちゃーん、お水とってきてえ」
葛野くるみ:一糸まとわぬ姿でベッドに横たわりながら、緩慢な調子で言う。
御薗橋七葉:「冷たいの?ぬるいの?」
葛野くるみ:「冷たいの…。冷蔵庫にペットボトル入ってるから」
御薗橋七葉:「ん」
御薗橋七葉:全裸、素足のままぺたぺたと冷蔵庫まで歩いていく。
葛野くるみ:(ほっそ………)ベッドから、ぼーっとそれを見送る。
御薗橋七葉:それから、二人分のボトルを手に行きより早足で戻ってくる。
御薗橋七葉:「さむ、さむ……」
御薗橋七葉:ベッドに乗って、毛布に潜り込む。
葛野くるみ:「あはは」
御薗橋七葉:「夜はまだ寒いわね……はい」よく冷えたボトルを手渡す。
葛野くるみ:「ありがとー」ひょいと受け取って。
葛野くるみ:「寒いの嫌いなんだよね。義肢の接合部がなんか痛くなるから」
御薗橋七葉:「じゃあ、冬はつらくない?」
葛野くるみ:「すごいつらいの。七葉ちゃんがあっためて」
御薗橋七葉:「もう……」
御薗橋七葉:やわやわと頭と首元を撫でるようにして。
御薗橋七葉:「真面目に聞いてるのに」
葛野くるみ:「ふふふ」毛布の中で、身体を摺り寄せる。
御薗橋七葉:「はぁ……」溜息にも似た、しかし幸福そうな息を漏らして。
御薗橋七葉:「リュシエラ」
御薗橋七葉:「すごく良かった」
葛野くるみ:「えっほんと?」
御薗橋七葉:「ほんとに決まってるでしょ」
葛野くるみ:「だってー。そういえば、まだちゃんと言ってもらってなかった気がするから…」
御薗橋七葉:「だから今言ったの」
御薗橋七葉:「……くるみに任せて良かったわ」
葛野くるみ:「……ふうん?」嬉しそうな表情を隠しもせず、言葉の続きを期待する。
御薗橋七葉:「リュシエラは私の『シルヴェストル』のストーリーの、中核を担う存在であり……」
御薗橋七葉:「黒幕であり、ヒロインであり、狂言回しであり……」
御薗橋七葉:「くるみであって……。……私でもある」
葛野くるみ:「………」瞬きして、七葉ちゃんの表情を見る。
御薗橋七葉:穏やかな微笑。そこに少しだけ罪悪感が滲む。
御薗橋七葉:「……正直を言うとね、配役をした時点では……」
御薗橋七葉:「思ってたのよ。少しは私みたいな女の気持ちを思い知れ、って」
葛野くるみ:「なあにそれ」
葛野くるみ:触感の通じる太腿を絡ませる。
葛野くるみ:「意地悪したんだ」
御薗橋七葉:「そう。ちょっとだけね。三割くらい」
御薗橋七葉:指の腹で、鎖骨の窪みを撫でる。
御薗橋七葉:「……貴方なら、リュシエラの感情も、役に込められた意味も読み取れるだろうと思ったの」
葛野くるみ:「七葉ちゃん、前に言ってたね」
葛野くるみ:「ひとりの女としてリュシエラを描いたって」
御薗橋七葉:「うん」
葛野くるみ:「……あたし、リュシエラの気持ちを考えたよ」
御薗橋七葉:「……」じっとくるみを見る。「……聞かせてくれる?」
葛野くるみ:「難しいことは分かんないけどね」照れたように目を細める。
葛野くるみ:「シルヴェストルのことがね、いつも頭から離れなくて、でもそんな風に思っちゃいけないとも思ってて」
葛野くるみ:「でも近づきたくて…。そんな風にしていたら、シルヴェストルが地獄にやって来て、言葉を交わすことができて…」
葛野くるみ:「…それだけでも十分なのに、ずっとシルヴェストルのそばにいられるの」
葛野くるみ:「怖くて、嬉しくて…、夢みたいな気持ち…」
御薗橋七葉:「…………」
葛野くるみ:「……恋してるの」
葛野くるみ:「好きでいてほしいの」
葛野くるみ:ゆっくりと瞬きする。「リュシエラは…シルヴェストルに、悪魔の自分と恋してはいけないって思ってたけど」
葛野くるみ:「あたしはそんなこと、思わないからね」
葛野くるみ:「あたしは、七葉ちゃんがあたしと恋をしてくれなくちゃ、嫌」
葛野くるみ:「あたしだけを見てくれなくちゃ、嫌…」
葛野くるみ:七葉ちゃんの手をとって、口づける。
葛野くるみ:そうしなければ、七葉ちゃんの体温すら分からない。
御薗橋七葉:何も言わない。答えもしない。
御薗橋七葉:ただ、もう片方の掌でくるみの目を覆って、唇を重ねる。
御薗橋七葉:長く、静かに。
葛野くるみ:「……っ…」
御薗橋七葉:やがて、そっと口を離して、掌を退ける。視線がぶつかる。
御薗橋七葉:空いた掌を、くるみの掌と絡ませ、握り、繋ぐ。
御薗橋七葉:「……魂って、どこにあると思う?」
葛野くるみ:「………」長い睫毛がゆっくりと上下する。「……わかんない」
御薗橋七葉:「手足では、無いと思う」
御薗橋七葉:「心臓か、頭か……」
御薗橋七葉:「もっとずっと、深いところか……」
御薗橋七葉:掠れた低い声で、囁くように言いながら。くるみに身を寄せる。
葛野くるみ:「……?」
御薗橋七葉:柔らかな肌と肌が密着して、互いの輪郭が僅かに歪む。
御薗橋七葉:「それが、心と結びつくもので……」
御薗橋七葉:「人の、一番大切なもので。だけど、自分にはどうしようもないもので」
御薗橋七葉:「何かに焦がれて、燃えて、囚われてしまうものだとしたら……」
御薗橋七葉:微笑を浮かべて、額と額を合わせる。
御薗橋七葉:「……私の魂は、きっともうとっくに、くるみのもの」
葛野くるみ:「……いらないって言ってるのに」
御薗橋七葉:「別々に居た方が楽しいから?」
葛野くるみ:「うん」甘えるような声。「……でも」
葛野くるみ:「七葉ちゃんがどうしてもって言うならもらってあげてもいいよ」
御薗橋七葉:「……怖いわね」笑って
御薗橋七葉:「何が代償?」
葛野くるみ:「……なにかなあ」
葛野くるみ:「でも、前に話したじゃん。あたしが突然他の男のとこいっちゃうことだって全然あるし」
葛野くるみ:「七葉ちゃんは、それでも良いんだって…」
葛野くるみ:「……」
葛野くるみ:「その時にね、七葉ちゃん、あたしに言ってくれたでしょ」
葛野くるみ:「退屈させないって」
御薗橋七葉:「うん」
御薗橋七葉:「言った」
葛野くるみ:「…じゃあ、それが代償」
葛野くるみ:「絶対あたしを退屈させないで。あたしが、七葉ちゃんを手放せなくなるように」
御薗橋七葉:「……ふふ」
御薗橋七葉:「そんなに油断してると、貴方の魂も貰っちゃうかも」
葛野くるみ:「奪ってよ」
葛野くるみ:唇を重ねて、すぐに離す。
葛野くるみ:「…七葉ちゃんの好きな、葛野くるみは」
葛野くるみ:「ここにいるあたしのことなんだって、あたしに教え込ませてよ…」
御薗橋七葉:「……くるみが望むなら、何度でも」
御薗橋七葉:長い腕が伸びて、少女の背に回り。二人まとめて寝台に倒れ込む。
葛野くるみ:「やっ……もう」
葛野くるみ:「明日、用事あるんじゃなかったっけ」クスクスと笑い声。
御薗橋七葉:「やめていいの?今更」
葛野くるみ:「やーだ」
葛野くるみ:「ねえ、好きって言って。あたしが満足するまで」
御薗橋七葉:「……うん」
御薗橋七葉:この日何度目か分からない口付けを交わして、まずは一度目のその言葉を口にする。
御薗橋七葉:「──好きよ。くるみ」
御薗橋七葉:ロイス感情を開示します。 葛野くるみ ○秘匿/秘匿
御薗橋七葉:葛野くるみ ○幸福/不運
御薗橋七葉:ロイス感情を変更します。
御薗橋七葉:葛野くるみ ○幸福/運命
【ED/藁科サイカ】
藁科 サイカ:携帯電話を買い換える際に、新規の回線契約を選んだ。
藁科 サイカ:新しい端末に登録された番号もメールアドレスも、まだ誰にも教えていないし、
藁科 サイカ:あっさりと譲り渡してしまった前の端末から、データを引き継ぎもしていない。
藁科 サイカ:誰の情報も登録されていないまっさらな携帯電話。
藁科 サイカ:それと財布だけをポケットに押し込んで、街を歩いていた。
藁科 サイカ:あの飲み会から数日が過ぎて、ラオペにはまだ顔を出していない。
藁科 サイカ:いつ、足を運ぶことになるのか。
藁科 サイカ:それは分からない。明日かも知れないし、このまま二度と会わずに終わるのかも知れない。
藁科 サイカ:財布の中身はまだ潤沢で、なんとなく目に付いた宿で、その日を過ごすことに決めた。
藁科 サイカ:
藁科 サイカ:「えーと、これで……半分くらいは会ったか」
藁科 サイカ:ビジネスホテルの一室で、記憶を辿りながら指を折る。
藁科 サイカ:思い浮かべる顔は全て、かつて仲間と呼んだ者で、
藁科 サイカ:不幸にして敵対することとなった者達だ。
藁科 サイカ:……不幸にして、だ。
藁科 サイカ:表面上、いかなる姿を見せていようとも。
藁科 サイカ:やはりこの藁科サイカという人間にとって、安寧の場所は未来でなく、過去に有る。
藁科 サイカ:既に幾つかの命が失われた。二度と繋ぎ治せない絆もあるやも知れない、それでも。
藁科 サイカ:出会える全員に会い、その全てをラオペへ連れ戻すまで。
藁科 サイカ:……真実の幸福を得るエンディングに辿り着くことなど、出来はしないのだ。
藁科 サイカ:何処かのセルに組み込まれていたり、今は身柄を拘束されていたり、或いは非日常から逃れた生を謳歌していたり──
藁科 サイカ:そういう者達もいるだろう。会い、語らうことなど出来ないかも知れない。
藁科 サイカ:ならば残る短い生涯において、この旅は完遂できない可能性もあるが、
藁科 サイカ:「それもまた人生さ」
藁科 サイカ:そう呟いて、部屋の灯りを消した。
藁科 サイカ:
藁科 サイカ:……目覚めたのは、深夜だった。
藁科 サイカ:跳ね起き、暫し窓から忍び入る街の光を見つめて、
藁科 サイカ:「危ない、死んだかと思った」
藁科 サイカ:自分しか聞く者のない冗談を吐き、タオルで額の汗を拭う。
藁科 サイカ:眠りに落ちる瞬間に、〝もう二度と目覚めないかもしれない〟と思うのは、心地良くもあり、恐ろしくもある。
藁科 サイカ:変わり果てた今に苦しむことの無い安らかな世界へ行けるのかも知れない。
藁科 サイカ:或いは、たったひとつの幸福さえも残らない無明の世界へ堕とされるのかも知れない。
藁科 サイカ:日と気分によって、己の空想で笑ったり泣き喚いたりを繰り返す。情緒不安定と笑ってしまえばそれまでだ。
藁科 サイカ:「だが」
藁科 サイカ:「思うに人間というものは、誰しも多数の顔を持つ筈なのだ」
藁科 サイカ:独り言は、舞台の上に在るように。
藁科 サイカ:「同じ一つの事象に際して、矛盾する幾つもの感情を同時に抱くものが人間であり」
藁科 サイカ:「対してキャラクターに求められるものは、物語の中における一貫性であるからして」
藁科 サイカ:「人間が抱く矛盾を、矛盾していないかのように後付けで補間する作業こそが〝役作り〟なのだ」
藁科 サイカ:「……と、俺は思うよ」
藁科 サイカ:「いい事なんて何一つ無いような生き方をしながら、自分が大好きで、幸せだって顔をしてる奴とか」
藁科 サイカ:言葉にすると、思考は纏まる。纏まった思考は、どこかへ書き写す必要は無い。
藁科 サイカ:自分が見聞きした言葉は全て記憶しているし、これを誰かに読ませる予定も無い。
藁科 サイカ:死ぬならば、痕跡一つ残さず、世界から切り取られたように死にたいのだ。
藁科 サイカ:……と同時に、いつまでも残る傷をつけて、世界中から嘆き惜しまれたい気持ちも嘘ではない。
藁科 サイカ:これもまた矛盾かと、自分の面倒くささをけらけらと笑い飛ばす。……少し泣いて、涙を拭う。
藁科 サイカ:数日で、ラオペを恋しく思うようにはなった。
藁科 サイカ:一方で、あそこはもう、自分が執着した場所ではないとも思うのだ。
藁科 サイカ:歪な生き方をしていた連中が集まって、演劇をしていたと思ったら──いつの間にか、彼女達は、
藁科 サイカ:ラオペという居場所より、演劇という生き様より、大切なものを手に入れていた。
藁科 サイカ:自分も同じように、何か一つ、大切な生き方を探せば良いのかも知れない。
藁科 サイカ:だが、そうできそうな候補を頭の中で募ると、どうしても、舞台上で血を吐いた時の陶酔感が蘇る。
藁科 サイカ:死に至るまでの短い旅路の中で、あれ以上の、我こそが世界の中心であるという全能感を得られることがあろうか?
藁科 サイカ:無いように思う。
藁科 サイカ:……ふと、唐突に、いつかの夜の言い争いのことを思いだした。
藁科 サイカ:生きるとは何か。死ぬとは何か。
藁科 サイカ:前へ進むことが生きることで、停滞は死だ。要約するならばそういう事だろう。
藁科 サイカ:周りを見習って前へ進んでみようかという気には、時々はなる。
藁科 サイカ:けれども、そういう殊勝な気持ちになりながら、去っていった面々を探して街を歩く様は、全く停滞する亡霊だ。
藁科 サイカ:「……ん?」
藁科 サイカ:ふと、唐突に。……二回目だ。
藁科 サイカ:この一連の騒動を、始めから終わりまで振り返ってみた。
藁科 サイカ:会話の全てを克明に覚えている。皆の声を、表情を。その時に抱いた感情を。
藁科 サイカ:怒りやら憎悪やら、嫉妬やら絶望やら、見苦しく、舞台の上に乗せるなどとても出来ないような、悍ましいものを。
藁科 サイカ:そうして最後までを見終わって、藁科サイカは腹を抱えて笑った。
藁科 サイカ:「なんだ。もしかして皆、俺の為に残しておいてくれたのか?」
藁科 サイカ:「あの台詞さ」
藁科 サイカ:目尻の涙を拭い、息を吐き、息を吸う。
藁科 サイカ:「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」
藁科 サイカ:進むべきか留まるべきか、それが問題だ。
藁科 サイカ:演劇人なら一度は、人生の節目で口にしてみたい台詞。
藁科 サイカ:それを
藁科 サイカ:これ以上もなく実感を伴って吐き出せたことに、藁科サイカは些かの幸福感を覚えた。
藁科 サイカ:「ああ、なるほど」
藁科 サイカ:「幸せって言うのは、これくらいのものでもいいんだな」
藁科 サイカ:いつ帰ることになるかは分からない。二度と帰らないのかも知れないが。
藁科 サイカ:幸せを掴む女の芝居は、だんだんとプランが固まっていく。
藁科 サイカ:眠ろう。
藁科 サイカ:明日は目覚めるかも知れないし、目覚めないかも知れない。
藁科 サイカ:怖くてまた少し泣いたがすぐに泣き止んで、そうして観た夢は、はっきりとしないがとても楽しいものだった──
藁科 サイカ:とても幸福な、知らない何時かの夢だった。
Double Cross The 3rd edition
Replay Bloom Case03
『ソワレの前に』
Curtain fall