円環鎖すはスネグラチカ



メインログ/雑談ログ

Trailer



昨日と同じ今日。今日と同じ昨日。
繰り返し時を刻み、変わらないように見える世界。
その裏側で、戦い続ける者達がいる。
既に変貌した、陽の当たらぬ世界で。
狂い咲くのは徒花か、それとも――。

桜花市。
豊かな水と緑で知られる、人口10万人程の地方都市だ。
季節は8月。陽射しの照り付ける真夏の只中、オーヴァード達はそれぞれの想いや思惑を抱えつつも、昨日までと同じ日常を過ごしていた。
だが街に唯一のUGN支部の壊滅から、平穏は脆くも崩れ去る。

災害指定ジャーム“スネグラチカ”。
幾つもの都市を壊滅させながら、未だ討ち果たされぬ未曾有の災厄。
死を前にしたエージェントが遺したのは、その襲来を告げる予言だった。

街は既にジャームの領域下にあり、オーヴァードは逃れる事すら叶わない。
何も知らぬ人々が変わらぬ日々を送る中、5人の少女だけが絶望の内に取り残される。
タイムリミットは夏の終わり――8月31日。
刻一刻と迫る逃れ得ぬ運命を前に、彼女たちは何を想い、何を為すのか。

Double Cross The 3rd edition『円環鎖すはスネグラチカ』
5人の最後の夏が始まる。






Index


Opening
【OP1】
【OP2】
【OP3】
【OP4】

Middle phase
【Middle1】

【Middle first half/月城旭】
【Middle first half/日室晴陽】
【Middle first half/月城霞】
【Middle first half/白塚美弦】
【Middle first half/叢崎未和】

【Middle2】

【Middle latter half/白塚美弦】
【Middle latter half/叢崎未和】
【Middle latter half/日室晴陽】
【Middle latter half/月城霞】
【Middle latter half/月城旭】

【Middle3】

Climax
【Climax】

【Extra scene】

Ending
【ED/叢崎未和・白塚美弦】
【ED/日室晴陽・月城霞】
【ED/月城旭・月城霞】

Preplay


GM:それでは『リプレイ・ブルーム Case02: 円環鎖すはスネグラチカ』始めていきます
GM:今回はPC全員が公平なのでPCナンバーがありません
叢崎未和:なんて優しい世界なんだ
GM:1D100を振って大きかった人から順に自己紹介をお願いします
叢崎未和:1d100 えい
DoubleCross : (1D100) → 40

月城 旭:1d100 殺ァッ!
DoubleCross : (1D100) → 54

日室 晴陽:1d100
DoubleCross : (1D100) → 26

月城霞:1D100
DoubleCross : (1D100) → 84

白塚 美弦:1d100
DoubleCross : (1D100) → 31

月城 旭:2番目のようね
月城霞:私じゃん……
月城 旭:霞ちゃんがんばって~
叢崎未和:ニコリの応募はがきに書いた数字で平均に近いの取るやつだったら優勝だから……
日室 晴陽:トリかぁ……
GM:では順番は霞・旭・叢崎・白塚・日室になります
GM:それでは霞さんから自己紹介をお願いします
GM:他のPCは汚い野次を飛ばしてください
月城 旭:お姉ちゃん応援してるよ~
月城霞(キャラシート)
月城霞:つきしろ かすみ。桜花市支部所属のUGNチルドレンです。17歳。
月城霞:真面目で優秀なチルドレンですが、真面目過ぎるのが玉に瑕。
月城霞:融通が利かず、躊躇なく正論を振りかざします。マジレス女です
月城 旭:かわいいね
月城霞:他人にも自分にも厳しいですが、チルドレン育ちのために社会常識に疎い部分があり、適当な理屈で言いくるめられがちです。
白塚 美弦:弱点が明確
叢崎未和:受けだ
日室 晴陽:危なっかしい……
月城霞:両親はなく、姉と二人暮らし。それから仕事上のバディがいます。
月城霞:能力は魔眼を用いた防御能力。拒絶領域でダメージをカットするぞ
月城霞:そういう感じです。よろしくお願いします!
月城 旭:頼もしいのだ
叢崎未和:旭さんから矢印の向いてる女とよろしくするつもりなんか……ないわ!
月城 旭:よろしくね~
GM:ありがとうございます。それではお次は旭さん自己紹介お願いします!
叢崎未和:キィーッ
月城 旭:はーい
月城 旭(キャラシート)
月城 旭:つきしろ・あさひ。20歳。元桜花市UGNチルドレンで、今はフリーランスのオーヴァードです。
月城 旭:へらへらしてて忘れっぽく、隙の多く見えるお姉ちゃんです。
月城 旭:霞ちゃんと二人暮らしですが、あまり生活能力はなく、家事とかは妹を頼りがちになっています。
月城霞:しょうがないお姉ちゃんだな~
白塚 美弦:隙の多い人材多くない?
叢崎未和:許せねえ…………
日室 晴陽:皆つけ込まれる前提で隙作って来てる
月城 旭:というのも、超高精度の熱感知能力を持っており、分子振動状態の粒度で事象を観測できる能力者なのですが
月城 旭:その反動として脳への負荷が大きく、記憶能力に大きな障害があります。
月城霞:そんな……
白塚 美弦:大変だ……
白塚 美弦:でもこれ、ドキドキして顔赤くなったらバレちゃうんでしょ?怖い
月城 旭:自分自身のこと、霞ちゃんのこと、最低限の常識と、メモに書いて毎朝見返している情報の他はあんまり長い時間記憶できていません。
月城 旭:あと、幼少期に一回この能力が暴走してしまったので、
月城 旭:その時にはマジで何もかも忘れてしまっています。
月城霞:そんな……
月城 旭:そこから数えると実質年齢14歳。年下の姉です。
日室 晴陽:強い概念
叢崎未和:なんてことだ
白塚 美弦:年下の姉は強い。倒さねば
月城 旭:あとは趣味が旅行で、困ってる人は助けます。
月城 旭:能力的には強めの単体殴りとガードができる戦闘マシンです。Dロイスは屍人。
月城 旭:そんな感じかな……よろしくお願いします。
月城霞:お姉ちゃん頑張って……
月城 旭:一緒に頑張ろうね
GM:OKありがとうございます!それでは次は叢崎さんお願いします!
叢崎未和:おけはろー。
叢崎未和(キャラシート)
叢崎未和:むらさき・みわ。17歳女子高生です。
叢崎未和:眠たげな瞳に穏やかな調子で話す地味な子だよ。
月城霞:顔が良い
月城 旭:美少女じゃん
叢崎未和:でへへへ。そうですかね。
月城 旭:それで地味子が通ると思っているのか
叢崎未和:覚醒前は勉強や部活にけっこう打ち込んでいました。努力家です。
白塚 美弦:えらい
叢崎未和:しかしなんかの折にヤバいジャームに襲われ、竹刀とかも全然役に立たず
叢崎未和:いや、記憶の中でヤバくなってるだけで今思えば全然大したことなかったな……
月城 旭:初めて見たジャームが誇張化されるのはしょうがないね
叢崎未和:とにかくそんな時に旭さんに助けて貰い、ついでにオーヴァードに覚醒
日室 晴陽:覚醒がついで扱いとは
月城 旭:助けたらしいです(伝聞形)
叢崎未和:以来徐々にそれまでの真面目さがなりを潜め、部活もやめました。
月城霞:グレてる……
月城 旭:不良になっちゃった
叢崎未和:旭さんに対しては運命のようなものを感じているとかいないとか。
月城 旭:そうなんだ……
月城霞:重くない?
白塚 美弦:重い人多くない?
叢崎未和:そんな感じで私生活が色々適当になりましたが、オーヴァード化によって拡張された人間関係もあり
叢崎未和:特に同クラの白塚美弦ちゃんとは仲良く友達をやってます。どうでもいい話をいっぱい吹っ掛けます。
白塚 美弦:ズッ友
月城霞:よかったね~
月城 旭:なかよしじゃん よかったね
日室 晴陽:捨て鉢とかでないなら良かった良かった
叢崎未和:能力は腐食。目視で照準を合わせて物体を酸化させます。
月城 旭:目が合うと危ないというわけね
叢崎未和:あんまりコントロールが正確でない。命中ダイスのヘボさからも見て取れる感じで、同じ学年にいる子たちに比べて才能無いのかな……と思ってます。
月城霞:怖いな~
叢崎未和:だからなんか弱そうなミッチーには気安いわけですね 以上そんな感じです。よろしくお願いします
白塚 美弦:よろしくミワミワ~
GM:よろしくお願いします!それでは次は白塚さんお願いします。
白塚 美弦:はいな!
白塚 美弦(キャラシート)
白塚 美弦:17歳の女子高生。最近この街にやってきたよ。転入生!
白塚 美弦:明るめのふわふわした感じの子で、恋に恋するタイプ!
叢崎未和:主人公っぽいポジション取りしおって……
月城霞:レズロワにおいて恐ろしいポジション
月城 旭:言われてみれば主人公属性だ
日室 晴陽:転入生という属性含めてばっちり主人公
白塚 美弦:前に居た街では街案内のボランティアしていて、その経緯で旭ちゃんと知り合ったことがあるよ。
白塚 美弦:もちろん相手は忘れてるだろうけどね。
月城 旭:そうらしいです(伝聞形)
白塚 美弦:今は同クラの未和ちゃんと仲良し!なんだか気が合うぞ?
白塚 美弦:でも不思議!最近憧憬のような感覚を未和ちゃんに感じてて、これってもしかして……?
白塚 美弦:まだわかんないけどね!
叢崎未和:えっ……(トゥンク)
月城 旭:あらあら
叢崎未和:なぁんだ
月城霞:なんだろ……不整脈かな
月城 旭:未和ちゃんバロールだしほんとに重力が発生してるのかもね
叢崎未和:ばろばろ~
日室 晴陽:揃って察しが悪くなる一行
白塚 美弦:能力は思考伝播物質の生成。イメージしたものから幻覚を見せたりできるよ
白塚 美弦:それによってネズミを操って盾とかにもできる!弱そうな能力でしょ?私もそう思う!
月城 旭:画像テロし放題だ
叢崎未和:良い能力だと思うよ~
月城霞:スッゲ~ワルの敵が使ってくるやつじゃん
日室 晴陽:ストレートな動物使いあんまり見ないので逆に新鮮な気がする
白塚 美弦:戦闘としては、戦闘誘導からの回避盾がメイン。おまけの絶対の恐怖攻撃ができるよ
白塚 美弦:そんな感じ!以上です!
GM:OK!ありがとうございました!
GM:それでは全員出揃ったところで、今回のセッションの特殊ルールを説明します。
日室 晴陽:私私!
GM:あっ ごめん!!
月城 旭:かわいそう
GM:事前紹介で白塚さんが最後だったから……
GM:改めて日室さん自己紹介お願いします!
叢崎未和:よく分かんないけどGMから忘れられてる女になんて負ける気しねえぜ~~
日室 晴陽:はいはーい!
日室 晴陽(キャラシート)
日室 晴陽:アンシー・ガールこと日室晴陽、桜花市支部所属のUGNチルドレンです!
日室 晴陽:チルドレンらしからぬギャルな外見そのまま、快活で陽キャなJKとしてカヴァーの高校にも馴染みまくっています。
月城 旭:スカート短いな……
月城霞:優しいギャル……
日室 晴陽:こんくらいがオシャレなんだって!イケてるっしょ?
日室 晴陽:UGNからもやや不真面目と素行に眉を顰められることはありますが、任務にはしっかり真面目です。
叢崎未和:くっ……私達だって立ち絵に下半身が映っていないということはこれくらいのを
叢崎未和:消そうと思ったら暴発しちゃった
日室 晴陽:これでも叩き上げなんで。パパママがUGNだったって事情もあるけどね。
月城 旭:まあ霞ちゃんのバディならそうだよね
白塚 美弦:そこそこ真面目なギャル……
叢崎未和:えらいな~
月城霞:えらいよ
日室 晴陽:へへ~。めっちゃ褒めるじゃん。
日室 晴陽:そうそう、霞とは三年くらいバディ組んでます。性格が真反対なりに上手くやってる感じ。
月城霞:わたしたちバディです
日室 晴陽:その三年のうちにがっつり惚れこんじゃったりもしてますが、今のとこはまだナイショで。
月城 旭:妹が上手くやれてて良かった
日室 晴陽:いちおー遠回しにアプローチはしてるつもりなんだけど鈍いからなあ……。
月城霞:??
日室 晴陽:うんまあ、今回でオトせるよう頑張りまーす。
月城 旭:お姉ちゃんは認めていないが……
日室 晴陽:能力は範囲攻撃と敵の範囲攻撃の縮小。先手取れるよう先陣の火詰んだり紡ぎの魔眼で小回り効いたりもします。
月城霞:優秀な性能
叢崎未和:つよい……
日室 晴陽:描写としては太陽めいた炎の魔眼を操る感じ。名前にピッタリっしょ?
白塚 美弦:名実ともに陽の者というわけね
日室 晴陽:大体こんなとこかな。よろしくお願いしまーす。
GM:OK!皆さんよろしくお願いします!
GM:それでは改めて、今回のセッションの特殊ルールを説明します。

【ミドルシーン進行】

前半・後半で1回ずつ、計2回の『シーン権』が与えられる。
シーン権を持つPCは、シーンに登場させたい他PCを指名することが出来る。0人から全員まで、人数は自由。
シーンに登場しないPCは、その間サブシーンを行う。

また、ミドルシーンでは参加者・非参加者を問わず、見学席内で良いロールプレイに対してブーケを与えることが可能。
ブーケはメインシーン🌸サブシーン🌹に分けて与え、それぞれシーン内に登場している全てのPCが受け取ることになる。
ミドルシーン終了時、全ての登場シーンの合計獲得ブーケ数が最も多かったPC1名のみが、好きなPCを指名して時間無制限のエクストラシーンを行うことが可能となる。この際、サブシーンは発生しない。


GM:最強の女にだけ追加で最強のシーン権が付与されます
月城 旭:なるほどね。
月城 旭:誰かさんが暴れたから……
日室 晴陽:ロイス制は流石に取りやめに……
GM:一人を狙う、全員を落としに行く、プレイスタイルに関わらずよいロールをした人が取れるということになりました
白塚 美弦:なるほどね
月城 旭:ブーケ、投げる数の制限とかはないんだ
GM:それはなし!
月城 旭:理解を得ました
GM:そしてもう一つ

【ロイス取得特殊ルール】

このセッションでは開始時に固定ロイスを1つしか保持することが出来ない。(Dロイスを取得している場合、Dロイスのみとなる)
ロイスの取得が可能なのは、ミドルフェイズのメインシーンとエクストラシーンのみ。
ロイスを取得する際、P/N感情のどちらかを秘匿しておくことが可能。この場合、原則ED終了までに自らのタイミングで公開することとする。

クライマックスシーンではジャーム化・『とどめを刺される』は発生しないが、侵蝕率が200%を越える、または全てのロイスを失うと、その時点で戦闘不能となる。


月城 旭:あっそれもあるんだ
GM:これもあります
GM:頑張ってロイスを取っていっぱい活躍してね
叢崎未和:これめちゃめちゃ取りそびれそうでこわい
日室 晴陽:気を付けてかないとなあ
GM:というわけで、OPに入っていきたいと思います
月城 旭:うおおお
白塚 美弦:わいわい
GM:普通のダブルクロスでは事件の始まりを描写するところですが、ここではそれ以前の普段の日常をロールしてもらおうかなと思っています
GM:OPの制限時間は35分となります。まずは一緒にOPをやりたい相手とどんなシーンにしたいかの希望をGMまで秘話で送ってください。
月城 旭:理解しました
白塚 美弦:すべての理解
叢崎未和:わかったぜ
日室 晴陽:はーい
GM:案が出揃いました
GM:時系列などを勘案してこのようになりました
GM
・叢崎 旅行先で旭と会う
・日室 学校帰り、霞との日常
・白塚 朝、叢崎と登校時の一幕
・旭  旅行帰り、月城家の朝の一幕

月城 旭:霞ちゃんのOPはないのかな?まあ2回出ているが……
日室 晴陽:まあそうなるなという組み合わせですね
GM:霞側からは旭さんと同じような案だったので統一されました
月城 旭:理解者!
叢崎未和:そういうこともあるんだ
GM:それでは早速始めていきましょう!よろしくお願いします。



【OP1】

GM:OP、シーンPC 叢崎未和、月城旭
GM:登場侵蝕をどうぞ。
叢崎未和:叢崎未和の侵蝕率を1D10(→ 4)増加 (30 → 34)
月城 旭:月城 旭の侵蝕率を1d10(→ 10)増加 (35 → 45)
GM:シーンの舞台描写は基本的に指名側の裁量にお任せします。
某県・温泉地
叢崎未和:月城旭さん。あなたは趣味の旅行の最中です。
叢崎未和:いい具合に大浴場で旅の疲れを落として、脱衣所のロビーでくつろいでいるところに。
叢崎未和:浴衣姿の温泉客の一人がいきなり声をかけてきました
叢崎未和:「あっ旭さーん。奇遇ですね」
月城 旭:「……?あら」小さく浴衣を翻して、振り返る。
叢崎未和:落ち着いた光を湛えた眠たげな瞳の少女だ。どこかで会ったことがあるのかもしれない。
叢崎未和:「こーんな旅先で会うなんて、世界は狭いなぁ」
月城 旭:「お久しぶり……かな。私に何か御用?」首を傾げる。
叢崎未和:喋りながら自販機のボタンを押し、あなたの好みだと思う銘柄のドリンクを渡しながら隣に座ります。
叢崎未和:3dx+1 知識:月城旭
DoubleCross : (3DX10+1) → 10[7,8,10]+1[1]+1 → 12

叢崎未和:多分当たってるんじゃないでしょうか。分かりませんが。
月城 旭:「えっ、良いよ。払うよ……?」
叢崎未和:「用がなかったらお話ししちゃいけないんスか?」
叢崎未和:ちょっと不満そうな顔をする。
月城 旭:「や、そういう訳じゃないけどもさ」
叢崎未和:「えへへ。やや、これも旅の縁ですよ」
叢崎未和:あなたの小銭を掴んだ掌を包むようにしてお金を押し返す。
月城 旭:「ダーメです。私、これでも成人してるんですから」
月城 旭:するり、と。やけに鋭い身のこなしで君の衣服の懐に小銭を忍ばせる。
叢崎未和:「ひゃっ」
叢崎未和:まったく動きに対応できません。
月城 旭:緋色の髪が揺れて、甘い桃のような香りが鼻先をくすぐったかもしれない。
叢崎未和:「うーん。一本取られましたね。さすが大人……」
月城 旭:「ふふん。分かればいいんです」
叢崎未和:少し顔を赤くして。
叢崎未和:そそくさととなりでコーヒー牛乳の蓋を開ける
月城 旭:「……?」《熱感知知覚》。にわかに体温が上昇した様子を察知しつつ、問い詰めはしない。
叢崎未和:「あの。ですね」
月城 旭:「何かな?」フルーツ牛乳の瓶をよく振りながら応じる。
叢崎未和:「昔UGNに居たって聞きました。何でやめたのか聞いても良いですか?」
月城 旭:「……」その言葉が出た途端。視線が目の前の少女を離れて、周囲へと向けられる。
叢崎未和:左手を使わず、瓶を保持しながら右手の親指と人さし指だけで器用にラベルと蓋をゴミ箱に放り込む。
叢崎未和:「どうかしましたか。なにか怪しいものでも?」
月城 旭:断続的に崩壊を続ける彼女の記憶において、UGNという組織そのものに関する情報もまた例外ではないが。それらは社会生活上必須の知識として、強引に日々記憶させ直している。
月城 旭:「や。他の人に聞かれちゃ良くないでしょ、その話」だから、今もそれがどういうものかは理解している。
叢崎未和:「んん~ま、そりゃそうか」
叢崎未和:「今なら大丈夫じゃないかなぁ」自分とて周囲に気を配っていないわけではないのだが、と少し不満顔。
叢崎未和:なんだか、彼女は不思議な振る舞いをする事が多い。調べられることは調べたのだが、謎の多い女なのだ。
月城 旭:「……ん、まあそうみたいね」他の宿泊客も、今は近くにいないようだと察知して。
月城 旭:「それじゃ、君の質問に答える前に」
月城 旭:「一つ、こっちから質問をさせてくれるかな」
叢崎未和:「ん……はいな」
月城 旭:「……その、傷付けちゃったら本当に悪いんだけどさ」
月城 旭:「君は、誰なのかな?」
叢崎未和:「うふふ…………」
叢崎未和:少し気味の悪い光が瞳に宿る。
叢崎未和:その気配も一瞬で引いて。
月城 旭:「あはは。あいにくね、冗談とかじゃないんだよ」
月城 旭:「私、まあまあいい加減って言われるけど。流石にこんなたちの悪い嘘は口にしない」
月城 旭:「"忘れっぽい"んだよね。すごく」
叢崎未和:「あ、はい。分かってますよ」
叢崎未和:「人の顔覚えるの、難しいですもんねぇ」
叢崎未和:「叢崎です。叢崎未和」
叢崎未和:む、ら、さ、き。と、右手を伸ばし、彼女の掌に指先で書く。
月城 旭:「ん……ふふ。ありがと、教えてくれて」はにかんで見せる。「未和ちゃんでいいかな」
叢崎未和:「わ、名前で呼んでくれるんですねぇ」
叢崎未和:「それでお願いします旭さん。桜花の高校生です」
叢崎未和:「ちょっと前に、危ないところを助けて貰ったんですよ~」
叢崎未和:にっこりと笑う。
叢崎未和:「なぁんて、心ばかりのお礼は突き返されちゃいましたけどね」
叢崎未和:うひひ、と口元に手を当てて笑う。
月城 旭:「桜花の……って、私の地元だ」
月城 旭:「ええーっ……こんな遠くで偶々会うなんて」ざっと3県は離れている。
月城 旭:「そんなことないよね?」じっと君の眼を見る。
叢崎未和:「世界は狭いですね~」
月城 旭:「追いかけて来てくれたんだ」
叢崎未和:「えっ」
叢崎未和:「やっ、本当に偶然なんだけどな」
叢崎未和:真意を読み取らせぬ表情でそんな事を言う。
月城 旭:「すると……用事なんてない、って言ったのも嘘かな」
月城 旭:「理由もなくそんな事するはずないもんね」
叢崎未和:「仮にそうだったとして」
叢崎未和:「恩人と会いたかったから、じゃダメですか?」
叢崎未和:じっと、瞳を覗き込む。少しあなたより背が低い。
月城 旭:「……」じっと、その目を見つめ返して。
月城 旭:「……やはは、ごめんね」手を合わせて謝る。
叢崎未和:「いえいえ! お礼も言いたかったですし!」
叢崎未和:にぱ、と笑う。
月城 旭:「言ったでしょ、私、すっごく"忘れっぽい"の。脳のビョーキとかそういうレベルでさ」
月城 旭:「だから、貴女の事は、いま聞いた以上の事は何にも知らないし」
月城 旭:「そういうわけで、つい警戒しちゃうんだよね。上手いように騙されてないか、って」
叢崎未和:「うーん。そうなんですか……」
叢崎未和:一転、悄然としながら。
叢崎未和:「でも、それこそ旭さんが陰謀を疑っちゃうような」
叢崎未和:「3県離れた温泉旅館で偶然ばったりなんて、流石にこれは記憶に残るんじゃないっすかねー」
叢崎未和:ちょっと期待を込めた目で問う。
月城 旭:「どうかなあ」へらへらと笑う。そんなに簡単だったら良いんだけど、と思いながら。
叢崎未和:「例えば、どんなことがあったら憶えてられます?」
叢崎未和:「や、そんなに意味のある質問じゃないんですけどね」
叢崎未和:「なんとなく」
月城 旭:「さあねえ」
月城 旭:「こうやって、旅先で綺麗な景色を見て、知らない人に出逢って」
月城 旭:「そういう事を繰り返せば、少しは"思い出"に残るかな……なんて思ったんだけど」
月城 旭:「なかなか上手く行きそうもないんだよね」笑顔を崩さないまま。
叢崎未和:「…………」
叢崎未和:「ま、いいや」
叢崎未和:「旅の縁です! 折角ですし遊びましょう。エピソード記憶ですよ。卓球とか」
叢崎未和:ぐいぐいとあなたの事をゲーセンコーナーへと引きずりながら。
月城 旭:「あら……ふふ、そう。手伝ってくれるんだ」
月城 旭:「ありがとね」そう言って、君の頭を撫でながらゲームコーナーへと向かう。
叢崎未和:「…………今回もダメっぽいな」
叢崎未和:ぼそりと呟いたその声が、古い筐体にかき消された。






【OP2】

GM:OP2、シーンPC 日室晴陽、月城霞
GM:登場侵蝕をお願いします。
日室 晴陽:日室 晴陽の侵蝕率を1D10(→ 10)増加 (29 → 39)
月城霞:1D10+40
DoubleCross : (1D10+40) → 9[9]+40 → 49

日室 晴陽:二人ともテンションが高い



日室 晴陽:日直の号令とばらばらの挨拶が響く教室。
日室 晴陽:一日の授業とホームルームを終え、生徒達が一斉に騒めきだす。
日室 晴陽:部活へ行くもの、友達と話すもの、教室を出ていくもの。ごく日常的でありふれた学校の一コマだ。
日室 晴陽:「おーい、かっすみー!」
日室 晴陽:その教室の入り口から快活な声が響く。声の主は長い金髪と今時珍しい褐色の肌を持つ見るからにギャルと言った風貌の少女。
日室 晴陽:日室晴陽。隣のクラスの同級生であり、君のUGNチルドレンとしてのバディである。
月城霞:「……」教科書を鞄に詰め、席を立ったところでその声を聞く。
月城霞:意思の強そうな瞳の少女。黒髪は切り揃えられ、後ろでひとつに結われている。アクセサリーの類も無い。
月城霞:「日室」
月城霞:「どうかしたの」
月城霞:落ち着いた、しかしよく通る声。
日室 晴陽:「ね、ね、この後さ。このお店行かない?」 ずかずかと教室に入り君の隣へ。
月城霞:「お店とは、何のお店?」
月城霞:少し高いその顔を見上げるように。
日室 晴陽:「これだよこれー」
日室 晴陽:手に持っているのは女子高生御用達の雑誌。近所に新しく開店したというクレープ屋が特集されている。
月城霞:「……」しげしげとそれを見つめて。
月城霞:「どうして行く必要があるの?」
月城霞:「栄養なら三食で十分に取れているわ」
日室 晴陽:「ちっちっち。こういうのはさ、必要がどうじゃなくて行きたいから行くんだよ」
月城霞:「行きたいから行く……?」眉を顰める
月城霞:「私は行きたくはないけど」
日室 晴陽:「んん、オーケー訂正ね。あたしが、霞と、行きたいの」
月城霞:「君が……」
月城霞:じっと顔を見る。
日室 晴陽:「どかした?」 こてんと首を傾げてみせる。
月城霞:「どうして?何か目的でも?」
日室 晴陽:「ええ……」 ちょっと困ったように一回視線が迷って。
日室 晴陽:「ふつーに、一緒に遊びたいなーってだけなんだけど……目的ないとダメ?」
月城霞:「……」
月城霞:ちらりと教室の時計を確認する。
月城霞:「……そうね」
月城霞:「この後は支部でトレーニングをして、それから30分ほどは余暇が出来る予定」
月城霞:「そちらを前に回せば……」
月城霞:「分かった。一緒に行こう」
日室 晴陽:「マジ!?やったー!」 パッと表情が晴れる。
月城霞:「ただし、余計に糖分を摂った分、消費に運動が必要になるわ」
月城霞:「日室、君がトレーニングに付き合うのが条件」
日室 晴陽:「おけおけ!そんくらいなら全然OK!」
日室 晴陽:「そうと決まれば行こ行こ!新装開店らしいし早くいかないと混んじゃうしー」
月城霞:「そうか。それなら急ごう」
日室 晴陽:ウキウキで君の手を取って教室を後にする。
月城霞:そうと決まれば迷いなく、早足で歩いていく。
日室 晴陽:「にしてもさあ。霞ってばマジで毎日毎日訓練ばっかだけどだいじょぶ?」
月城霞:「自分のポテンシャルは把握しているし、指導も受けているわ」
月城霞:「トレーニングをすれば体調も安定する。むしろ、しない方が身体には良くない」
日室 晴陽:「そういうもんかあ……。や、おせっかいかもなんだけどさ」
日室 晴陽:「なんか息抜きっていうか日々の楽しみっていうか、それこそさっき言った心の栄養?」
日室 晴陽:「そういう感じの足りてるかなーって見ててちょっと思ってさ」
月城霞:「息抜き……」ほんの少し眉間に皺が寄る。難しそうな顔。
月城霞:余暇の使い方は掃除や家事などほとんど虚無だ。
月城霞:「……それなら、日室も毎日ジムに出てきたらどう?」
日室 晴陽:「んん……。あたしが居たら、霞の心の栄養になれる?」
月城霞:「二人ならトレーニングの効率は上がる」
月城霞:「一人でいるよりは……」
月城霞:「……そうね。君が居た方が身が入ると思う」
月城霞:真顔で頷く。
日室 晴陽:「……」 自然と笑みが深まる。なんというか、普段は表情とか言い方で損するタイプの子だけど。
日室 晴陽:その分こうやって真っ直ぐに伝えてくれる辺り、マイナス突っ切って良い子だよなって思うんだ。
日室 晴陽:「そういうことなら、流石に毎日はちょっと保証できないけどあたしもジム通い始めよっかな」
月城霞:「そうか。それはいい」
月城霞:「バディの君の練度が上がれば、私も助かる」
月城霞:「任務にももっと余裕を持って当たれると思う」
日室 晴陽:「……仕事人間~」 ちょっとだけ肩をすくめて笑って。
日室 晴陽:「ま、実際連携の精度とかもあげとくに越したことないしね」
日室 晴陽:「あたしらシンドロームとか一緒な分変な干渉しないとも限らないし。日頃から息合わせとくのはプラスっしょ」
月城霞:「そう思う。今でも君とは十分な連携ではあるけれど……」
月城霞:「もっと上を目指せると思う…… ……ここ?」クレープ屋の前まで来て足を止める。
日室 晴陽:「そ、ここ!おススメはDXワイバーン盛りらしいけど……霞甘すぎんのダメだもんね」
日室 晴陽:「甘さ控えめの生地とか選べるらしーから、そっちとか良いかも」
月城霞:「うん……」メニューを見て少し悩んで。
月城霞:「日室、君にお任せしてもいいかな」
日室 晴陽:「お、マジで?責任重大じゃん」
月城霞:「私が考えるより、君の方がよく知っていそう」
月城霞:「クレープも、私の好みも」
日室 晴陽:「えー……なんかダメなもんあったっけ。チョコとか抹茶とか」
月城霞:「偏食は無いよ」
日室 晴陽:「ん、りょーかい。じゃあちょい待ち」
日室 晴陽:そう言って店先へと足を運び、数分の後戻ってくる。
日室 晴陽:「はいどーぞ」 手渡されたのは甘さ控えめ生地の抹茶イチゴホワイトチョコソース。
月城霞:「どうもありがとう」両手で受け取って。
日室 晴陽:「どう?」 自分のDXワイバーン盛りにも手を付けずに反応を窺う。
月城霞:「うん」買い食いはぎりぎりセーフで立ち食いはアウトなのか、近くのベンチに座って。
月城霞:大きく口を開けてクレープを食べる。
月城霞:「……」
月城霞:「うん」
月城霞:頷く。
月城霞:「美味しい」
日室 晴陽:「良かった~~」 安堵の笑みと共に脱力。
日室 晴陽:「マジでさあ、こういう突発でセンス試す感じのやつ心臓悪いって~」
月城霞:「食べやすい、丁度いい甘さだ」
月城霞:「君に任せて良かった」言って、もう一口食べる。
日室 晴陽:「まあ、相棒ですし?霞の好みくらいばっちり分かってるって」
日室 晴陽:得意げに笑ってから自分も一口クレープをかじり。
日室 晴陽:「ね、霞」
月城霞:「……」もぐもぐとしっかりと咀嚼して嚥下してから
月城霞:「うん?」顔を向ける。
日室 晴陽:「あたしもさ、ジム通い頑張るからさぁ」
日室 晴陽:「またこうやってスイーツ食べに行こうよ。訓練頑張った分のご褒美で」
月城霞:「……」
月城霞:クレープに視線を落として。
月城霞:「そうね……」
月城霞:「こうして甘いものを食べてみると」
月城霞:「確かに、疲労がよく取れる気がする。精神面か、身体面かは判然としないけれど」
月城霞:「時々ならいいかもしれないわ」
日室 晴陽:「でしょでしょ!?やっぱ大事なんだって、こういうの」
月城霞:「うん……少しは理解できたかもしれない」
日室 晴陽:「また霞が美味しく食べれるようなのサーチしとくね」
月城霞:「でも」日室を見て「この後はしっかり訓練だから」
日室 晴陽:「はいは~い。分かってま~す」 相棒の真顔を見返してへらりと、それでも心底嬉しそうに笑った。






【OP3】

GM:OP シーンPC 白塚美弦、叢崎未和
GM:白塚さんのみ登場侵蝕をお願いします。
白塚 美弦:白塚 美弦の侵蝕率を1d10(→ 10)増加 (31 → 41)
白塚 美弦:わお
叢崎未和:私と同じシーンに出る子の登場、重い



白塚 美弦:叢崎未和と白塚美弦は同じ学校の同じクラスの生徒。
白塚 美弦:なんと通学路も途中から一緒!もうこれは運命では???
白塚 美弦:美弦が後から追いついて話しかけ、そこから合流するのがいつもの登校パターン。
白塚 美弦:「おはみわみわ~」隣を歩き始めるなり、左から頬をツンツンしようとします。
叢崎未和:「む、殺気!」
叢崎未和:全く対応できず頬を突かれます
叢崎未和:「うぐゅーー」
白塚 美弦:でも不思議、未和ちゃんは左頬ではなく、右頬を突かれた感触を受けます。
白塚 美弦:《声無き声》
白塚 美弦:ツンツンしようとしたのは、幻覚伝達物質によるイメージ映像です。
叢崎未和:右を向く「あ」
白塚 美弦:現実のほうで、美弦は右頬をつついていました。
叢崎未和:「またやったこういう~ いたずらっ子め」
白塚 美弦:「ふふふ~」
白塚 美弦:「避けられないように、幻覚使ったのに未和ちゃんがそのかいがないなー」
叢崎未和:美弦ちゃんのアホ毛を軽くくいくいします。
白塚 美弦:「ふへへー」
叢崎未和:「……ふっ」
叢崎未和:意図不明の笑いを漏らす。
白塚 美弦:「?」
叢崎未和:「はろーみっちー。今日も元気だね」
白塚 美弦:「元気だよー。ジュースいる?」
白塚 美弦:そういって、缶ジュースをかばんから取り出します。
白塚 美弦:そこらの自販機で買ってきたジュース。
叢崎未和:「この。ちっこいくせに私におごろうだと」
叢崎未和:と言いながら普通にジュースを受け取ってこくこくと飲みます。
叢崎未和:「この借りはいつか返す」
叢崎未和:ハードボイルドに言う。
白塚 美弦:「あっ」渡す時、少し手が触れてしまったのを感じ、少しびくっとなります。
白塚 美弦:「た、高くつくぞ~」少し声が裏返り気味。
叢崎未和:「てかさー 寝不足なんだよ~」
白塚 美弦:「そうなの?」
叢崎未和:右手を肩に回してもたれ掛かろうとするが、身長差的に歩きにくくなると判断して断念。
叢崎未和:「これ」携帯の画面を見せる。感涙にむせび泣く美少女が映ったアプリゲームのようだ。
白塚 美弦:「わぁ、泣いてる」
叢崎未和:「パウロ72っていう、なんかアレの守護聖人をいっぱい集めてアレするゲーム」
叢崎未和:「なんか危なそうだったから怖いもの見たさで入れてみたんだけど案外面白くって」
叢崎未和:ふわぁ。と欠伸をする。
白塚 美弦:「うりうり」右頬をツンツン。
叢崎未和:「うひゃーー」
叢崎未和:やる気のない悲鳴を上げる。
白塚 美弦:「かいがないなー」
叢崎未和:「何だその表情は。この、可愛いやつめ」
白塚 美弦:「かわ……!?」見るからに顔を赤くします。
白塚 美弦:そしてレネゲイド因子がわずかに暴走!
白塚 美弦:少し暴走気味に、幻覚伝達物質が撒き散らされる!
白塚 美弦:《声無き声》
叢崎未和:「自分の小動物さを自覚してないと出来ない動きをしおって……いや無自覚……むむ」
白塚 美弦:届けられた映像は、未和ちゃんが美弦を指で顎をクイってしている映像。「かわいいよ……」と囁いているかのようだ。
白塚 美弦:「わ。わわわわあああ」
叢崎未和:「わーーっ。思春期の暴走!」
白塚 美弦:幸い美弦と未和ちゃん以外に幻覚伝達物質が届くことはなかったようだが……
白塚 美弦:「だ、ダメだよ未和ちゃん、まだ早いって!」自分の作り出したイメージ映像に、混乱している!
叢崎未和:寝不足と視界の急激な変化が祟って足をもつれさせる。
叢崎未和:「あぶっ」
叢崎未和:そう……まだ白塚ちゃんの肩を抱いたままなのだ。
白塚 美弦:「わー!」二重の意味でわー!だ。
叢崎未和:なんとか体を入れ替えて彼女の下敷きに回る。
白塚 美弦:「ひゃうん」
叢崎未和:がっ ざざっ「あいたたた……バッグがクッションになってくれて助かった……」
叢崎未和:ふと見上げると、普段は15センチ下にあるその瞳が。
叢崎未和:正面にある。
白塚 美弦:「わっ……」
白塚 美弦:「ご、ごめんね!すぐ離れるから!」
叢崎未和:「いいよいいよ。私の体調管理だし。軽いね~」
叢崎未和:目を細めてうすらぼんやりと笑う。
白塚 美弦:「軽……!?」
白塚 美弦:《声無き声》
白塚 美弦:未和ちゃんが美弦をお姫様抱っこしているイメージが共有される。「軽いね……」とでも言っているかのようだ。
白塚 美弦:「わ。わわ。わあああああ」
叢崎未和:「え~~~~今日はどうしたのみっちー。いつもより一段と元気だね、その、能力のほうも」
叢崎未和:「されたいんだこういうの。男の人に」
叢崎未和:にやにやと幻の光景のことを揶揄する。
白塚 美弦:「お、女の人でも別に……じゃなくて!」
叢崎未和:「おん?」
白塚 美弦:「怪我とかなかった?ない?ないね?じゃあ私、先に行くから……!」恥ずかしさのあまり、この場にいることはもう不可能と判断!
叢崎未和:「あ、待てよー」
叢崎未和:のんびりした動きで起き上がって後を追う。
叢崎未和:「人生相談していい人生相談?」
白塚 美弦:「人生相談?」
叢崎未和:「相談する相手きみくらいしかいなくてさー」
叢崎未和:たはー、と息を吐く。
白塚 美弦:「でもダメ!今はちょっとむずかしいかも!せめて100m離れて!」
叢崎未和:「そ、そんな……」
叢崎未和:ガーン。
叢崎未和:「みっちーが反抗期だ」とぼとぼと離れていきます。
白塚 美弦:「反抗……!?」
白塚 美弦:《声無き声》による「反抗期の可愛い子猫ちゃん……」と言っているかのような未和ちゃんの映像が流れかけたが、慌ててセーブする。
白塚 美弦:「フーっ。フーッ、だ、大丈夫だから、きっと!」
叢崎未和:「む」また何か来そうな気配に一瞬身構え、また肩を落として歩いてゆく
白塚 美弦:「待ってよー!」
叢崎未和:「うう。多感なやつめ。わかるよ……」
白塚 美弦:ビターン!後ろで大きな音がします。
白塚 美弦:「うぅ……ころんだ……」
叢崎未和:(きっとネガティブなイメージを私に投影するのを堪えているんだ)
叢崎未和:(かわいいみっちーも腹に一物隠している……世は無常……)
叢崎未和:「っと」
叢崎未和:「大丈夫~? 絆創膏いる?」
白塚 美弦:幸い怪我はなかった模様。
叢崎未和:かがみこんで手を伸ばす。
白塚 美弦:「あ、ありがと……」
叢崎未和:髪を漉くようにかき分けて、アスファルトにぶつけたかもしれない部分を確認します。
叢崎未和:「ん。大丈夫そうか」
白塚 美弦:「い、一応……」
白塚 美弦:胸の高鳴りと《声無き声》を抑えながら、答えます。
叢崎未和:「頼むよー。きみが居なくなると私、だべる相手いなくなっちゃう」にへら、と笑う。
白塚 美弦:「え?そう?ふへへ。しかたないなー。未和ちゃんはー」
叢崎未和:「そうだよ。私は仕方ないやつなんだ」
叢崎未和:目を閉じて歌うように言う。
叢崎未和:「でも実はハートは熱い女なんだよ」
白塚 美弦:「そうなの?……ふーん」
白塚 美弦:いいながら、歩き出す。あまりドタバタしていては、学校に遅れてしまう。
叢崎未和:「そうなんだ。昔めちゃめちゃ剣道頑張ってたし」
叢崎未和:「最近はまぁアレよ」
叢崎未和:「ソシャゲで夜更かし…………」
叢崎未和:しゅんとする。
白塚 美弦:「好きな人でも追っかけてるとか?」
白塚 美弦:「いつもの未和ちゃんじゃん」
叢崎未和:「え!」
白塚 美弦:「え!」
叢崎未和:「もーそういうこと急に言うからびっくりしたじゃん」
叢崎未和:「みっちーは恋愛脳だな~」
白塚 美弦:その反応に、ちくりと心が痛むような気がしたが。
白塚 美弦:「ま、まぁね!」ほめられたと感じて、胸を張る。
叢崎未和:「私は」
叢崎未和:少し浮かない顔で。
叢崎未和:「愛とか恋とかわかんないよ」
白塚 美弦:「ふーん……」
白塚 美弦:その反応に、ちょっとうれしくなっている自分に気が付きながら、相槌を打つ。
白塚 美弦:まぁ、未和ちゃんに好きな人がいたとしても、とりあえずはいいんだ。
叢崎未和:「今は友情と、あと個人的な目標のためにがんばるフェーズかな」
白塚 美弦:「友情いえー!」
叢崎未和:「いぇいいぇい。やふふ」
白塚 美弦:《マーキング》。ちょっとしたイタズラ(みづるマーク)を、未和ちゃんの右頬にしかけてきたのだから。
叢崎未和:当の本人はそんな事も気づかず、気楽に調子をつけて右手を突き上げていた。






【OP4】

GM:OP シーンPC 月城旭 月城霞
GM:登場侵蝕は不要です。
桜花市某所
月城 旭:UGNが関係者に提供しているマンションの一室に、月城姉妹は暮らしている。
月城 旭:時刻は朝、夏の日の出が既に街を染め切ったころ。
月城 旭:月城霞がいつものように自室のベッドで目を醒ますと、
月城 旭:「……」
月城 旭:すぐ傍に姉の寝顔があった。
月城 旭:いわゆる添い寝という形……ではない。君の眠るベッドの傍に座り込んで、その上半身だけを預けるようにして眠りこけている。
月城霞:「……」
月城 旭:あるいは、君の寝顔を眺めていたらそのまま寝落ちしてしまったのだろうかと想像できるような姿勢だ。
月城 旭:無論、少なくとも昨夜の君の就寝時には、彼女はここに居なかった──というか、この家に居なかった。
月城 旭:一週間ほど前から、北海道旅行に出かけていて……そういえば、昨日の深夜に帰って来る予定だった事を
月城 旭:君は思い出すだろう。
月城霞:いつも通り、目覚まし時計の鳴る2、3分前。手を伸ばし、アラームを解除して。
月城霞:「……姉さん」
月城霞:「起きて、姉さん」
月城霞:肩を揺さぶる。
月城 旭:「んん……」身を捩る。セミロングの緋色の髪が、君の頬を撫でる。
月城 旭:普段とは違う、ローズ系のシャンプーの香り。旅先のホテルにあったものだろうか。
月城 旭:「……ん、え?」
月城 旭:「わっ……っと、ごめんね」まばたきしながら、慌てて身を起こす。
月城霞:「……おはよう」溜息と共にそう言って
月城 旭:「……へへ。おはよ、霞ちゃん」
月城 旭:君の顔を見止めて。ふにゃり、と柔らかな笑みを浮かべて。
月城霞:「駄目だよ、こんなところで寝ていたら」
月城霞:「風邪を引くわ」
月城霞:寝起きで少し乱れた髪。枕元、室内用の眼鏡を掛ける。
月城 旭:「やあ、ここで寝るつもりはなかったんだけどね……」ばつが悪そうに頬をかく。
月城 旭:「その……ゆうべ帰ってきたら、霞ちゃん、もう寝ちゃってたみたいだったから」
月城 旭:「だけど久しぶりに、顔を見たくなってさ」
月城 旭:「そしたら、寝落ちちゃってたみたい」
月城霞:「全く……」
月城霞:「夏だからって、毛布も掛けずに……」
月城 旭:「……あっ、でも。ちゃんと洗濯物は籠に入れておいたよ」
月城 旭:日頃の言いつけを守っているというアピール。
月城霞:「うん、それは偉い」
月城 旭:「ん。えへへ……」
月城 旭:褒められた事に、にわかに幼子のような笑みを浮かべて。
月城霞:しっかりと布団を畳みながら「朝は食べる?」
月城 旭:「んー、そうね。お腹空いてるし」
月城 旭:「久々に霞ちゃんのつくるご飯、食べたいし」
月城霞:「朝食程度でそんなに調理の違いが出るとは思わないけれど……」
月城 旭:「気分の問題なのー」
月城霞:寝起きとは思えないきびきびとした様子で立ち上がる。「ご飯?パン?」
月城霞:「……いえ、ご飯にしよう」
月城 旭:「あっ、霞ちゃんがそういう気分?私は良いよ、全然」
月城霞:「旅行先でちゃんとしたものを食べていたか分からないから」
月城 旭:「えー……そんなことないのに」
月城 旭:「昨夜は……そう、あれだよ、空港でラーメン食べたの。バターととうもろこしが入ってるやつ」
月城 旭:「とっても美味しかったし、ちゃんと残さず食べたからね」
月城霞:「……そんなものを食べて、もうお腹が空いたの?」
月城 旭:「え、ダメだった……?」
月城霞:「少し走ってきた方がいいんじゃない」
月城 旭:「いや、うん。うちに戻って来たし、トレーニングはちゃんとするけどさ……」
月城 旭:「あっ」ふと、思い出したように手を叩いて
月城 旭:「そうそう、ちゃんとお土産もあるんだ。冷蔵庫に入れてあるからね」
月城 旭:「なんか、蓮の花のケーキなんだって」
月城 旭:「蓮の花……?」言ってて違和感を覚えたらしい。
月城霞:「蓮の花……?」キッチンに入り、冷蔵庫を開く。
月城霞:「食べられるの?」
月城 旭:足元に置いていた鞄から、手帳を取り出す。ぺらぺらと捲る。「……違った。ハスカップだ」
月城霞:「驚いた……」
月城霞:「お土産ありがとう。食後に食べようか」
月城 旭:「ちょっとだけ試食したけど、あんまり甘すぎないやつだったから……霞ちゃんも好きな味なんじゃないかな」
月城 旭:「うん、一緒に食べよ」
月城霞:「うん。最近は……こういうのも、少しはいいかなと思う」
月城 旭:「……? 何かあったの?」
月城霞:鍋を火にかけ、換気扇のスイッチを入れる。
月城霞:「そういうわけじゃないけど。糖分も必要だなと思って」
月城霞:「……旅行はどうだった?」
月城 旭:「ふうん……」呟いて。「あ、そうそう」
月城 旭:「一昨日、湖に行ったんだけどね。そこら中に霧がわーってかかっててさ」
月城 旭:わーっと両手を広げてみせるジェスチャー。
月城 旭:「朝はそんな感じだったけど……でも、昼頃になったら晴れてきたんだ」
月城霞:「うん」味噌汁をかき混ぜながら聞いている
月城 旭:「よく磨いた宝石みたいに、青くて綺麗な水面で……あ、写真も撮ってあるよ」
月城霞:「そう……。うん、後で見せて」
月城霞:話の内容そのものより、それを語る姉の様子に口元を緩める。
月城 旭:急に写真の撮り方を忘れちゃったから、近くに居た他の観光客に撮ってもらったんだけど。それは黙っておく。
月城 旭:「それで、ペダルで漕ぐ船……スワンボート?が貸し出してあったから」
月城 旭:「湖の真ん中まで漕いでいって……ぷかぷか揺られるのが気持ちよくって、そのままちょっとお昼寝しちゃった。ふふ」
月城霞:「……大丈夫なの?」
月城霞:「落ちたりしそう」
月城 旭:「落ちないってば。結構ちゃんと作ってある船だったし……」
月城 旭:「お姉ちゃん、運動神経はやたらといいんだから」
月城霞:「……姉さん、泳ぎ方はずっと覚えていられる範囲なの?」
月城霞:姉の記憶のことは、妹である霞も把握している。
月城 旭:「えーと、ほら。戦い方を忘れた事はないでしょ」
月城 旭:「身体の動かし方とかは、今まで忘れたことない……はずだよ」
月城 旭:「記憶喪失の人だって、自転車の乗り方を忘れないでしょ?」
月城 旭:「……いや、どうなんだろう。場合によるのかなぁ」
月城霞:「場合によると思うわ」
月城霞:食卓に朝食を運ぶ。焼き魚と味噌汁、白米に卵焼き、その他こまごまとした副菜。
月城 旭:「……心配してくれてるんだ?」
月城霞:「当たり前じゃない」
月城霞:「姉さんは、姉さんでしょう」
月城 旭:「ふふ、ありがと」
月城 旭:「……そうだね」
月城 旭:「私は、月城旭。霞ちゃんのお姉ちゃんだ」
月城霞:「……うん」
月城 旭:「大丈夫だよ。それだけは絶対、忘れないからさ」
月城霞:「……うん」
月城霞:ほんの少し覇気に欠ける様子で頷いて。
月城霞:それを振り払うように息を吐く。
月城霞:「……食べよう。冷めちゃうよ」
月城霞:「いただきます」しっかりと手を合わせて、頭も下げる。
月城 旭:「うん」頷いて、手を合わせる。「いただきますっ」
月城霞:自分が作った朝食を見て「……姉さんが心配」
月城霞:「私がいないと、ずっと好きなものばかり食べていそう」
月城 旭:「ええー?旅行はそりゃ、楽しむために行ってるから……美味しいもの食べるけどさ」
月城 旭:「普段はちゃんと健康とか気にするよ? この仕事、体が資本なんだし」
月城霞:「姉さんが一番好きなものって、何かな」
月城 旭:「……ん。そうだな」少し、遠い目をして。
月城 旭:「卵焼き。霞ちゃんの焼いてくれたやつ」
月城 旭:朝食の皿の一つの上に視線を落としながら言う。
月城霞:「……」
月城霞:ほんの少し目を瞬いて。
月城霞:「そんなものでいいの?」
月城 旭:「簡単な料理だからって?」
月城霞:「うん」
月城 旭:「関係ないよ。私がどう感じるかでしょ」
月城霞:「……。……そうね。聞いたのは、好きなものだから」瞑目し、頷く。「……確かに。関係ないか」ほんの少しだけ、嬉しそうに。
月城 旭:「ふふ」こちらも嬉しそうに、頬を綻ばせて頷く。「そうなの。わかればよろしい」






【Masterscene】

GM:抜けるような夏の青空に、入道雲が高く昇っている。
GM:アスファルトに染み入るような蝉時雨。照り付ける強い陽射しに、足早に行き交う人々。
GM:子供たちのはしゃぐ声が市民プールから響き、高校のグラウンドで投げられた白球が、快音と共に空に吸い込まれていく。
GM:昨日と同じ今日。何も変わらない、桜花市の夏の日常。
GM:そんな一幕が──大音響と共に塗り潰される。
GM
GM:ゴ ォ ン────
GM
GM:響き渡るのは、ひび割れた鐘の音。聖堂のそれを思わせる荘厳な響きは、同時にどこか底冷えするような不吉さを纏っている。
GM:街全体に届いているであろう、鼓膜と内臓を震わせるような大音響だが、周囲の人々はまるで気にする様子も無い。
GM:同時に、ふわり、と、空から舞い落ちてくる白い雪。降り積もる前に消えていく。
GM:真夏に、雲も無いのに降ってくるそれにも、誰一人として気付かない。当り前のように街は動いている。
GM:そして、何より。
GM:オーヴァードである君達には、嫌というほど理解できる。
GM:恐ろしく巨大で、余りにも強力なワーディングが、街の全てを呑み込んでいる。
GM:君達のレネゲイドを喰らい、引きずり込まんとするような、それまで味わったことのないようなワーディング。
GM:それを放つ存在が一体どれほどの脅威なのか、想像すらつかない。
GM:発生源の方角、そこにあるものが何なのか、君達の誰もが理解できる。
GM:──UGN、桜花市支部。
GM:昨日までと同じ今日が、今、崩れ去ろうとしていた。






GM:それではミドルに入る……前に
GM:ミドルシーン前半の手番を決めましょう
GM:1D100で判定を行い、数値の高かったPLから、何番目のシーンを選ぶか選択権を得られます。
月城 旭:理解したわよ
叢崎未和:はーい
叢崎未和:1d100
DoubleCross : (1D100) → 45

白塚 美弦:1d100
DoubleCross : (1D100) → 38

月城 旭:1d100 殺ァッ
DoubleCross : (1D100) → 51

日室 晴陽:1d100
DoubleCross : (1D100) → 15

月城霞:1D100
DoubleCross : (1D100) → 24

GM:軒並み低いな……
叢崎未和:また微妙!って思ったら結構みんな低かった
月城 旭:これでトップとはね
日室 晴陽:またトリだ
叢崎未和:いちまァ……!
月城 旭:では"一番目"……頂けますか
GM:では旭・叢崎・白塚・霞・日室の順で、何巡目がいいか宣言してください
GM:一番目ね!
GM:お次は叢崎さん
叢崎未和:うーん、ちょっと考える
叢崎未和:ラスト貰います
GM:OK!白塚さん!
白塚 美弦:じゃあ4番目!
月城霞:じゃあ3番かな……
GM:では日室さんは2番目ですね
月城 旭:みんな奥ゆかしくていらっしゃるな
日室 晴陽:はーい
GM
1月城旭
2日室晴陽
3月城霞
4白塚美弦
5叢崎未和

GM:このようになりました。



【Middle1】

GM:ではミドル1、合流シーンに入ります。
GM:全員登場です。
月城霞:1D10+49
DoubleCross : (1D10+49) → 6[6]+49 → 55

月城 旭:月城 旭の侵蝕率を1d10(→ 7)増加 (45 → 52)
日室 晴陽:日室 晴陽の侵蝕率を1D10(→ 7)増加 (39 → 46)
白塚 美弦:白塚 美弦の侵蝕率を1d10(→ 9)増加 (41 → 50)
叢崎未和:叢崎未和の侵蝕率を1D10(→ 2)増加 (34 → 36)
UGN桜花市支部
GM:UGN桜花市支部は、雑居ビルをカバーとした中規模の支部だ。
GM:上階の探偵事務所に実質的な支部機能を集約し、スポーツジムや飲食店といったテナントも、支部員は自由に利用することが出来た。
GM:そんなビルと周囲の幾つかの建物が、今は纏めて瓦礫の山と化していた。
GM:君達が駆け付けた時にはワーディングの気配は消えており、
GM:ただ季節外れの雪だけが、まだ周囲にはらはらと舞い落ちていた。
叢崎未和:「わー………………」ぽかんと口を広げている。
叢崎未和:「そういう気配だったけど、ガチでやばいことになってるな…………」
叢崎未和:「えっと。誰か~~! 埋まってたら返事して!」
叢崎未和:「大丈夫かな……名古屋河さんとか……」
GM:返事は無い。支部には常駐の職員も複数人いたはずだが、皆瓦礫の下だろう。
叢崎未和:眠たげな瞳に心配そうな色を浮かべながら、霧状の魔眼群を展開し、周囲の瓦礫を腐食させていく。
叢崎未和:あまりペースがいいとは言えない。
日室 晴陽:そのタイミングで現場へと到着する。
叢崎未和:「…………お」
日室 晴陽:「……マジで?」 凄惨な現場に一瞬絶句して。
叢崎未和:ちょうど、自分より出力のいい子が来ないか周囲を伺っていたところだった。
叢崎未和:「日室さん……だよね、手伝ってこれ」
日室 晴陽:「みわっち。そっちもさっきのやつで駆け付けた感じ?」
日室 晴陽:言いながらこちらも魔眼を展開。太陽めいた炎が揺らめき、瓦礫の一部を焦がしていく。
叢崎未和:「そう。用があって近くに居て……」
叢崎未和:「……っていうかこれ、やばいな」
叢崎未和:「支部だけピンポイントで狙って来たって、悪意ある相手だよ。私達も警戒しなきゃ」
叢崎未和:「(しっかしそんなに話したことあったかな)」あだ名で呼ばれたことにちょっと驚いている。
日室 晴陽:「だよねぇ。しかも建物ごと支部が壊滅とか、出力ヤバすぎだし」
日室 晴陽:「これ、残ってる人員支部に居なかったメンツとイリーガルくらいじゃん?」
叢崎未和:「おーいおーい。誰かー」
叢崎未和:いるかもしれない生存者に呼びかけ続ける。
日室 晴陽:(昨日ふつーに家帰ってたし霞は多分大丈夫、だよね?)
日室 晴陽:「返事できなくてもいーから、生きてたらなんかリアクションよろ!」
日室 晴陽:不安は表に出さないままこちらも呼び掛ける。
白塚 美弦:「生きてる人でーす。って多分私のことじゃないよね……」到着して、少しズレた返事をします。
叢崎未和:「あ、みっち!」
白塚 美弦:「未和ちゃんだ。やばそうだね……」
叢崎未和:「集まって来たね。やっぱ相当な範囲だったんだ、あのワーディング」
日室 晴陽:「ああ、イリーガルの。しろっちだっけ」
叢崎未和:「(ナチュラルに確認があだ名から入った……!)」
白塚 美弦:「しろっち!? あ、チルドレンの方……ですか?」
日室 晴陽:「そうそ、チルドレンの日室晴陽ね。よろしくー」
叢崎未和:「ふ、おそるべしコミュ力よ……」
叢崎未和:そらぞらしい虚勢が風に消えていく。
白塚 美弦:「晴陽ちゃん!よろしくです~」
白塚 美弦:「私は瓦礫をどかせるような能力持ってないからなぁ……」
白塚 美弦:(もし生存者が居たとしたら、幻覚伝達物質で無理やりリアクションを起こさせるようなこともできなくはないけど……)
叢崎未和:「周り見といて。あわよくば守って」
叢崎未和:すぐに普段より少しきびきびした口調で返す。
日室 晴陽:「確かネズミを操れるんだっけ?出来ればでいーけど、プラスで瓦礫に埋まってる生存者が居ないかとか探してほしいな」
白塚 美弦:「はいはーい」
月城霞:その時、二人分の足音が聞こえてくる。
月城霞:「……日室!」
叢崎未和:「あっ」
日室 晴陽:「霞!」 一瞬声に明らかな喜色が滲む。
月城 旭:「おっとと、これは……只事じゃないなあ」
叢崎未和:「旭さん! と、霞さんだ」
月城霞:「……っ……」瓦礫の山と化した支部を目にして、絶句する。
月城霞:「何……これ……」
日室 晴陽:「……あたしらが来た時にはもうこんな感じだったよ。多分不意打ちで一撃って感じ」
叢崎未和:「最初からこのありさまで……お」腐食させたコンクリート片の下から腕が見える。すわ生存者かと身を乗り出すが。
叢崎未和:「いや……ダメか……」
月城 旭:「えーっと、どうも。ここの支部の人達かな」長身の女性。いつもの穏やかな笑みは消えている。
日室 晴陽:「ああ、旭さんも。おひさです」
日室 晴陽:「じゃなかった。えーと、霞のバディやってる日室晴陽です」
月城霞:「“パラダイム”……それに確か“マウス・ブリンガー”だったかな」
白塚 美弦:「そうです!イリーガルやってます!」
叢崎未和:「つけたな。そんなコードネーム」
月城霞:「誰か、状況が分かる者は……」
月城霞:「……いや、 居ないか」
月城 旭:「どうも、お久しぶり?かな」首を傾げながら僅かに微笑み返す。
叢崎未和:「えっと、はい……お久しぶりです。叢崎といいます」
白塚 美弦:「あ、お久しぶりです旭さん!覚えているかわかりませんが、前にボランティアで町案内させていただいた白塚です!」
白塚 美弦:「この街に居たんですね~」
月城 旭:「日室さんに、叢崎さんに、白塚さん……ね」指折り、君達の顔を見ながら。
叢崎未和:「……」まずったな。名前まで名乗ればよかった。
叢崎未和:「や、非常事態だ。テンパるのも仕方ない」
月城 旭:「うん、大丈夫」しばらくの間は。「……さて」
月城霞:「……支部長!名古屋河さん!ご無事ですか!」瓦礫をどかしながら呼び掛ける。
月城 旭:「手伝うよ、霞ちゃん」一つ、深く息を吸う。背に負った袋から、無造作に太刀を取り出す。
叢崎未和:「お願いします」
月城 旭:「私がやった方が早いでしょ、こういうの」瓦礫の中を歩く。不意に屈んだかと思えば、手首を捻り返すようにしてそれを振るう。
叢崎未和:「──!」
叢崎未和:びくりと警戒する。
月城 旭:すぱり、と破壊音らしい音もなく。幾つかの岩が水面のように割れる。
叢崎未和:「(奇麗だな、やっぱり……)」状況にもかかわらず、そんな事を思いながら。
GM:そんな君達の目の前で、瓦礫の一部が揺れ、がらりと崩れる。
GM:「……ゴホッ……」
GM:僅かに人の声。
月城 旭:「おっ……そっちに誰かいるかな」手を止めて、そちらを見る。
白塚 美弦:「せ、生存者かな……!」
GM:切り裂かれたその下から、人の姿が覗く。
GM:血塗れで、すぐには判別が付かないが────君達全員と面識のある相手だ。
GM:“レイドヴァイパー”、美奈川リョウコ。
GM:この桜花市支部の支部長だ。
日室 晴陽:「支部長!」 傍に駆け寄り、容体を確認。
月城霞:「支部長……!」同じく瓦礫を踏み締め走り寄る。
叢崎未和:「美奈川さん……! 生きてますか?」
GM:深い傷を負い、夥しい出血。片腕は根元から欠損している。
GM:相当な戦闘を行ったのか、既にリザレクトも働いていない。
月城 旭:「……そう、支部長さん」間に合わないかな、と心のどこかで冷ややかな判断を下しながら。
叢崎未和:「くそっ……こういう時に引っ張り出せる力があれば……」
叢崎未和:異音を上げながらコンクリート片を溶かしていく魔眼を恨みがましげに睨む。
美奈川リョウコ:「……う……」
美奈川リョウコ:呻き、薄っすらと目を開ける。
白塚 美弦:「支部長さん……!」
美奈川リョウコ:「日室、月城妹……」
月城 旭:「……静かにしてあげた方がいいかも。何かしゃべりたそうにしてる」
月城 旭:駆け寄りながら、そっと自分の唇に人差し指をあてて見せて。
叢崎未和:「……」言葉をかけておいて、喋らずに安静にした方がいいのでは、と思う。
叢崎未和:否、そう旭さんが判断したという事は。
美奈川リョウコ:「あれ、月城姉もいるじゃない」
美奈川リョウコ:「久し振り……はは……」状況に見合わぬ笑みを見せて、咳き込む。
月城 旭:「へへ、久しぶり……なんて」
GM:美奈川リョウコは前線からの叩き上げで支部長になった実力者だ。戦闘において、彼女が負けたことはない────君達が知る限りでは。
月城 旭:「薄情ですみませんね」自嘲めいた笑みを浮かべる。この街で生きて来た私は、きっとこの人にも沢山お世話になったはずだろうに。
月城 旭:こうして死に瀕する眼の前の彼女を見て、思い出の一つも浮かんでこない。
美奈川リョウコ:「叢崎と白塚も……ああ、じゃあ……」
美奈川リョウコ:「多分、これで全員か……」
叢崎未和:「全っ……」
叢崎未和:目を見開く。
月城 旭:「……。誰も、逃げきれなかったんですか」
美奈川リョウコ:「……そう……。残念ながらね」
美奈川リョウコ:「あたしも、多分、そろそろ死ぬね」
白塚 美弦:「……っ」あまりの惨状に目に涙を浮かべながら静観している。
月城 旭:「……」否定も肯定もしない。横目に、妹の表情を伺いつつ。
月城霞:目を僅かに見開き、必死に呼吸を整えて平静を保とうとしている。
月城霞:「何が……あったんですか、支部長……」
美奈川リョウコ:「……」
美奈川リョウコ:「襲われたのはいきなりだよ。何の前触れも無く……」
美奈川リョウコ:「最初の2秒で、半分以上は死んだ」
美奈川リョウコ:「直接見るのは初めてだけど、多分……あれは……」
美奈川リョウコ:「……“スネグラチカ”」
GM:口にしたその名に、君達は聞き覚えが無い。
叢崎未和:「……スネグラチカ」
叢崎未和:おうむ返しにする。自分の動悸がやけに遠いものに感じる。
美奈川リョウコ:「UGNでも結構な機密でね」
美奈川リョウコ:「情報も殆どないけど……要するに」
美奈川リョウコ:「ヤバいジャームだ。街をいくつも壊滅させてる、災害みたいなやつ」
美奈川リョウコ:「今度はこの街に……って……そういうことだろうね」
叢崎未和:うすぼんやりと視線を上げ、それによってもたらされた破滅の光景を視界に納める。
叢崎未和:ただのビルが砕かれたのとは、訳が違った。
月城 旭:「……。災害みたいな、ね」
月城 旭:「しかし災害そのものと言うには、少し意図を感じちゃうな」
月城 旭:「街を無差別に……って訳じゃなくて、いきなり支部ここを集中して狙ったこと」
月城 旭:「誰かが操ってるのかもね。……や、分かんないけど」
月城霞:「……それはどこに行きましたか?我々はどう対処すればいいですか」
月城霞:静かに息を吐きながら言う。
月城霞:「何者なんですか。教えてください、支部長」
月城霞:「指示を、ください」
叢崎未和:「(霞さんは偉いな……)」
叢崎未和:クールな彼女を以てして、平静に振舞えている様子ではない。
叢崎未和:それなのに、死の淵の彼女から、戦うための情報を得ようとしている。UGNチルドレンだから。
日室 晴陽:「霞」 静かに名前を呼んでその背に手を添える。
月城霞:「……」小さく肩が震える。
美奈川リョウコ:「……データベースに、少しは情報があったはず……。もしPCが死んでなければ……それで見られるかな」
白塚 美弦:「PC……」瓦礫の方をちらと見て、だいぶ不安そうな表情。
叢崎未和:「(旭さんは冷静だ。必要なことをして、考えを巡らせている。それも、もしかしたら覚えていないからなのか)」
叢崎未和:目の前の会話を他人事のように、思考はとりとめがない。
美奈川リョウコ:「このままだと、この街はおしまいだ。街丸ごと、この支部みたいなことになる」
美奈川リョウコ:「……だから、そうだな……」
美奈川リョウコ:「戦うか、助けを呼ぶか……どうするにしても……」
美奈川リョウコ:「……皆に頼んだ。ごめん、何とかして」
美奈川リョウコ:「この街のこと、お願い」
日室 晴陽:「頼まれました」
日室 晴陽:あえて不敵な笑みを浮かべて、支部長へと微笑みかける。
日室 晴陽:「大丈夫ですよ。あたしらが居るんですから」
日室 晴陽:「このまんま終わらせたりなんか、させません」
美奈川リョウコ:「……」
美奈川リョウコ:その笑みに安堵して、糸が切れたかのように。
美奈川リョウコ:かくりと脱力し、それきり動かなくなる。
月城霞:「……」
月城霞:手を伸ばし、開かれたままのその瞼を閉じて。
月城霞:「……日室」
日室 晴陽:「うん」
月城霞:どうしよう、と零しそうになって。喉で止める。
月城霞:「……まずは……状況を把握しよう」
月城 旭:「さて、なかなか難題を預かっちゃったね」
月城 旭:宿題を課された子供みたいに、つとめて気楽な声を発する。
叢崎未和:「……お」
叢崎未和:「応援を呼びましょう、日本支部とかの」
叢崎未和:「5人で対処するような話じゃ、ない」
白塚 美弦:「そう、だね……」
月城霞:「“スネグラチカ”のこと。支部のこと……そう。増援も出してもらえるか、連絡して……」
日室 晴陽:「だね。まずは市外への連絡で」
月城 旭:「違いない。でもって、こういうのは速いに越した事はない」
月城 旭:「って訳で、誰か。日本支部に連絡できる人いる?」
月城 旭:「私も連絡先は知ってるけど、たぶん正規の子が行った方が話が早いから」
叢崎未和:始めに選ぶべき行動が同じでも、戦う準備をする者と及び腰になっている者の差が明白だった。
叢崎未和:知らず、白塚美弦の手を握る。
叢崎未和:「(……だって、こんなのさ……)」
白塚 美弦:「……」握り返す。何かにすがりたい気分を持ちながらも、努めて優しく握り返した。
月城霞:「……連絡は私がする。……救助者もまだいるかも……支部機能の最低限の維持も……それに、後は……」
月城霞:「……後は…………」
月城霞:眩暈がするような気がして、一瞬立ち尽くす。
日室 晴陽:「OKOK。その辺は一回あたしらがやっとくからさ」
日室 晴陽:「霞は一回深呼吸して、市外への連絡お願い」
日室 晴陽:「なるべく簡潔にまとめて、はきはきと。イケる?」
月城霞:「……」言われるがままに深呼吸をして、頷く。
月城霞:「……うん」
月城霞:「大丈夫」
日室 晴陽:「よし、頼んだ」
GM:いつしか雪は止んでいて、鐘の音も聞こえない。
GM:蝉時雨が戻ってきて、街の喧騒は何事もなかったかのように続いている。
GM:だが、君達だけは既に理解していた。
GM:その平穏が既に仮初の、薄氷の上のものであると。






GM:今回のミドルシーンはなんと情報項目が存在します
叢崎未和:おお~
月城 旭:ほうほう
日室 晴陽:収集しなきゃ
GM:情報項目はこちらになります

技能 情報:UGN/噂話
難易度 9

・住民の様子
・スネグラチカについて
・外部との連絡
・街から出る方法
・謎の痕跡


GM:これらの項目は、必ずしもクリアする必要はありません。
叢崎未和:住民の様子かスネグラチカ調べたいです
GM:気になることがあれば調べてみてねという感じです
月城 旭:調べられるのはメインシーンだけ?
GM:メインシーン、サブシーンどちらでも判定することができます
月城 旭:どっちもいけた
叢崎未和:あ、そうなんだ
日室 晴陽:ふんふん、今調べるわけではない感じですね
日室 晴陽:了解です
GM:判定を行うのはシーン開始前、制限時間には含まれません
叢崎未和:各人が今調べて各メインシーンで放出してくのかと思ったけど、メインシーンの自由度上げたいもんね
GM:そういうことなの
白塚 美弦:ふむふむ
日室 晴陽:サブでの話題作りにも出来るし良いなあ
GM:何かやりたいことがあれば他のことをしても大丈夫というわけです
GM:また、1項目達成するごとに、以降の情報収集以外の全判定の達成値を+1します。
月城 旭:なるほどね
叢崎未和:あ~なるほど
叢崎未和:別に空けなくても攻略に支障ないから
叢崎未和:開けた時のボーナスくれるんだ うれしいですね
GM:そう 一応メリットもあるよ~というお話
月城 旭:一応開けるだけ開けといた方がいいんだな
日室 晴陽:全部開けたら+5はデカいなあ
GM:別に開けておいて既に行間で共有済みって形にしてもいいのでね
月城 旭:理解しました
白塚 美弦:は~い
日室 晴陽:了解ですー
GM:ということで1シーン目やっていきましょう!
月城 旭:はーい



【Middle first half/月城旭】

GM:ミドル前半、1手番目を獲得したのは旭さんです。
GM:誰を指名しますか?
月城 旭:月城霞ちゃんで
月城霞:私……
月城 旭:あ、でもあれだな 最初ちょっとソロの場面やりたい
月城 旭:ちょっと数時間前に遡るけど……
GM:その辺は自由にして頂いてOK!
GM:ではメインシーンは月城旭、月城霞、サブシーンは日室・白塚・叢崎になります
GM:月城さん二人は登場侵蝕をどうぞ
月城 旭:月城 旭の侵蝕率を1d10(→ 5)増加 (52 → 57)
月城霞:1D10+55
DoubleCross : (1D10+55) → 6[6]+55 → 61

GM:情報収集を行いたい方はいますか?
月城霞:外部との連絡について調べます
月城霞:コネ:UGN幹部使用
月城霞:5DX+4>=9
DoubleCross : (5DX10+4>=9) → 9[4,5,8,8,9]+4 → 13 → 成功

月城 旭:えらい
月城 旭:私はじゃあなしでいいかな 一気に開けすぎてもあれだし
GM:では情報開示します

・外部との連絡
電話や無線、メールなどで外部と連絡を試みても、応答は無い。テレビやインターネット等が利用できる以上、物理的に遮断されているわけではないようだが、あくまで一方的で、君達からの連絡は届かない。
奇妙なのは、外部のUGNや警察も、街の隔絶や通信の途絶に気づく様子が無いことだ。
外部からは桜花市といつも通りに連絡が取れ、何の変化もなく街が動いていると見えるような認識汚染、あるいは一種の現実改変が働いている可能性がある。これまで“スネグラチカ”による被害を食い止められなかったのも、これが原因かもしれない。
いずれにせよ、外からの救助は期待できないだろう。


月城 旭:ひええ
数時間前 月城家
月城 旭:朝食後。自室で荷物を整理していたおり。……ふと、手に取ったノートを開く。
月城 旭:先の北海道旅行の記録だ。
月城 旭:旅先での月城旭は、自分の行動体験をまめに──とりわけ自分が感動した出来事を中心に、記録するようにしている。
月城 旭:見返しているのは、1週間の期間があったその旅行の、初日分からのもの。
月城 旭:……初めに訪れたひまわり畑が壮観だったこと。そこで大事なアクセサリーを落としたミサキさんという人に出会って、一緒に探してあげたこと。
月城 旭:無事に見つかって一緒に喜んだこと。そのお礼に、ソフトクリームを奢ってもらったこと。
月城 旭:それがとても美味しくて、今度は霞ちゃんにも食べさせてあげたいと思ったこと。
月城 旭:ホテルの朝食がバイキングで嬉しかったこと。UGNの急な依頼で、ジャーム化した野生動物を処分したこと。
月城 旭:回収に来た支部員のゴトウさんが、私の体質の事を知って色々と心配してくれたこと。
月城 旭:彼には私くらいの年の妹がいたけど事故で亡くなってしまったという話を聞いて、一緒に痛ましい気持ちになったこと。
月城 旭:夕飯に蟹鍋を食べたら、とっても美味しくて幸せな気持ちになったこと。
月城 旭:そのまま座敷で微睡んで眠ってしまい、お店の人に起こしてもらったのが恥ずかしかったこと。
月城 旭
月城 旭:──ひどく冷めた気持ちで、それらを読み進める。
月城 旭:まるで、知らない他人が書いた日記か小説でも読んでいるような心地だった。
月城 旭:数日前の出来事でありながら、既に自身の記憶からは消えている。その事実を確認し、噛み締める。
月城 旭:たとえ記録に残っていても、”忘れる”とは、そういうことだ。
月城 旭:……その隔たりを認識するたびに、どうしようもなく寂しい気持ちになる。
月城 旭:ひまわり畑も、ミサキさんも、ゴトウさんも、蟹の味も、きっと私の心を動かしたはずなのに。
月城 旭:私の”思い出”になる事はできなかった。
月城 旭:今朝、霞ちゃんに語ったのは、まだ覚えていられた分。
月城 旭:1週間の最後の数日。昨日と一昨日あたりの記憶だ。
月城 旭:それも、時間をおけばいずれ消えてしまうのだろう。
月城 旭
月城 旭:……だけど、全てが全てそうという訳じゃない。
月城 旭:ノートの上、不意に視線が止まる。『霞ちゃんにも食べさせてあげたいなあ』という一文。
月城 旭:──ああ、そうだった。
月城 旭:何か美味しいものを食べた時、そう思ったことを覚えている。
月城 旭:堅苦しい表情を僅かに綻ばせる彼女の姿を、夢に思い描いて
月城 旭:それだけで、なんだかとても幸福になった時の熱が
月城 旭:まだ、胸に残っている。
月城 旭
月城 旭:……私のいる世界は、昏い。
月城 旭:か細い蝋燭を手に、広大無辺なその闇を、手探りに歩いている。
月城 旭:そのともしびが照らすのは、僅かに自分の足元ばかりで
月城 旭:振り返れば、来た道がどんな道程だったのかもよく分からない。
月城 旭:そんな世界で、ただひとつ
月城 旭:霞ちゃんの思い出だけが、煌々と光を放っている。
月城 旭
月城 旭:『だから私は幸せだ』と思う。
月城 旭:悲劇なんて気取らずに、ただ笑ってこの世界を受け入れたい。
月城 旭:何もかもが不確かなこの世界で、たったひとつ。確かな標があって
月城 旭:それが、私の大好きな人なのだから。
月城 旭:きっと、これ以上のことはない。そうでしょ?
現在 UGN桜花市支部跡地付近
月城霞:「……」
月城霞:スマートフォンから、何度目か分からないコール音が聞こえてくる。
月城霞:電波は入っている。壊れているわけでもない。確かにそのはずなのに。
月城霞:どうしても、どこにも繋がらない。
月城霞:メールも、ネットへの投稿も全て同じだ。
月城 旭:「……どうだった?霞ちゃん」足音も立てずに、ふらりと姿を現す。
月城霞:「……」
月城霞:声を掛けられ、一瞬、自分の焦燥を隠そうとして。
月城霞:それが姉だと気付いて、ほんの少し気を緩める。
月城霞:「……駄目ね」
月城霞:「どこにも繋がらない。メールは送れるけど、返信が無い」
月城霞:「単純な電波妨害とも、少し違う感覚。とにかく……」
月城霞:「……今重要なのは、これだと助けが呼べないということね」
月城 旭:「んー、やっぱりか」
月城 旭:「私もちょっと試したんだけどね」しゅる、と連絡端末を取り出しつつ。不可解な挙動をするその画面を見せる。
月城 旭:「どうにもダメだった。……霞ちゃんもってことは、私がポンコツだからってだけじゃないね。これは」
月城霞:「助けが来ないなら……私たちだけで何とかするしかない」
月城 旭:「……そうだねぇ」
月城霞:「私たち、5人だけで」
月城霞:言いながら、余りにも絶望的だと考える。
月城霞:支部を壊滅させた敵だ。イリーガルを含めてたった5人で勝てる相手だと考えるのは、余りにも楽観的に過ぎる。現実を見ていない。
月城 旭:「……」じっとその顔を見て。
月城 旭:「何とかする、か」
月城 旭:「……ねえ。霞ちゃん」
月城霞:「……何?姉さん」
月城 旭:「霞ちゃんは、どうしたいの?」
月城霞:「どうしたい、って……?」
月城霞:改めて姉の顔を見る。
月城 旭:「……や、ほら」
月城 旭:「怖くて、逃げたくなったりはしないのかな……って」
月城霞:「するに決まってるじゃない」
月城霞:「支部をあんな風に壊して、支部長でも勝てなかった敵なのよ」
月城霞:「戦うのは怖い。逃げられるなら逃げたいよ」
月城 旭:「……うん」
月城 旭:「でも、それだけじゃないんだよね」
月城 旭:「だから、なんとか立ち向かう方法を探そうとしてる」
月城 旭:「……私は、それが聞きたいんだ。改めて、ちゃんと。君の言葉で」
月城霞:「……」
月城 旭:「ほら。お姉ちゃんってやつは……」
月城 旭:「妹の願いを聞くためなら、何だって頑張れるのさ」
月城 旭:「だから、聞きたいんだ。君の決意とか……それ以外のものも」
月城霞:「……」
月城 旭:ふと、近付いて
月城 旭:ゆるりと背に腕を回す。頭ひとつ小さい妹の身体を、ぎゅっと抱き寄せる。
月城霞:「っ」
月城 旭:「顔を見て話しにくいことなら、こうしようか」
月城 旭:豊かな胸と、良く知った姉の匂いが君を包む。優しくその背中をさする。
月城霞:私は、自分の姉を尊敬している。
月城霞:常に明るく、そして冷静で、どこか子供のような。そんな、人としての魅力に溢れる姉が好きだ。
月城霞:人に言えば笑われるだろうか。それでも。
月城霞:自分の記憶すら不確かな彼女が、ただ姉だからという理由で私を愛してくれることに──
月城霞:私は、罪悪感すら抱いている。
月城霞:もしも自分が姉ならば、私も彼女と同じように、無条件に妹を愛することが出来ていたのだろうか?
月城霞:……自信は無い。
月城霞:私は、愛されるべきところなど一つもない人間だと思う。もし妹として生まれていなければ……
月城霞:こうして、月城旭に抱き締めてもらうことなど、きっと無かっただろう。
月城霞:ただ、偶然、妹として生まれただけで────。
月城霞:「……だって」
月城 旭:「……うん」
月城霞:「外と連絡をして、助けが呼べないのなら……」
月城霞:「私たちが戦うしかない」
月城霞:「私たちは、UGNだから」
月城霞:「この街を壊させるわけにはいかないし……それに」
月城霞:姉の肩に頭を寄せて。
月城霞:「……私は、まだ、死にたくない」
月城 旭:「うん」
月城 旭:ただ一言。しかし、あるがままを受け入れるような温かい声音で、君の言葉に応じている。
月城霞:「……だから」
月城霞:「姉さんにも、手伝ってほしい」
月城 旭:「うん。任せて」
月城 旭:ぎゅっと、君を抱き締める力がひときわ強くなる。
月城 旭:「ふふ。ありがとうね、話してくれて」
月城霞:「……」
月城霞:無意識に“スピキュール”への要請でなく、姉へのお願いとした自分に気付く。
月城霞:それはもしかしたら、とても卑怯で、狡いことなのかもしれない。
月城 旭:「大丈夫だよ。霞ちゃんがそうしたいなら……私は、ちゃんと最後まで手伝う」
月城 旭:「お姉ちゃんに任せなさい」
月城霞:「……」
月城霞:「……姉さんは?」
月城霞:ぽつりと漏らす。
月城 旭:「……ん?」
月城霞:「私の為、の他に」
月城霞:「姉さんは……姉さん自身は、どうしたいの?」
月城 旭:「……そうだねえ」
月城 旭:ちょっと困った質問だな、と思う。それから、少し言葉に迷って。
月城 旭:「まあ、ここは私も正直に話さないとだよね」
月城 旭:「他にはないよ」こともなげにそう口にする。
月城 旭:「この街が大事、とか。皆の日常を守りたい、なんて」
月城 旭:「いくら私が言ったって、嘘になるでしょ?それ」
月城 旭:「だって、なんにも覚えてないんだもん」
月城霞:「……」余りにも呆気なく返された残酷な答えに、言葉を失う。
月城 旭:「困ってる人を助けるのだって」
月城 旭:「まあ、"何も分からない"ならとりあえずそうした方がいいよな……っていう判断でもあるけど」
月城 旭:「一番は、霞ちゃんが……UGNチルドレンで、世界を守るために戦ってて」
月城 旭:「だったら……そのお姉ちゃんとして、相応しい人になろうって」
月城 旭:「そう思ったからだもん」
月城霞:「……それじゃあ……」
月城霞:それだけ言って、後を続けることが出来なくなる。
月城霞:それじゃあ。それが本当だとしたら。
月城霞:姉は全て私の為に。何の価値も無い、ただ妹であるというだけの、私の為に?
月城霞:姉のような人が、私に相応しい人になろうと?
月城霞:だとしたら、私は一体、どれほどの────
月城 旭:「……えっと、ごめん?」少し怯えたように言う。
月城 旭:「困らせちゃった……かな」どこか途方に暮れた様子で。
月城霞:「……ううん」
月城霞:かぶりを振る。込み上げてくる吐き気を抑えて。
月城 旭:「……」
月城霞:「……大丈夫」
月城霞:余りにも空虚な言葉だ。自分らしくない。
月城霞:だが、それ以外に何を言える?
月城霞:「ありがとう……姉さん」
月城 旭:「……ほんとに大丈夫?」
月城 旭:「泣きたかったら、泣いて良いんだよ。今なら、ほら……私しかいないし」
月城 旭:「支部のみんなのことだって」
月城 旭:「私は……世話になったこの支部の、皆の顔と名前も覚えてない」
月城 旭:「死んだ時に、ちゃんと悲しんであげる事もできない、ひどいやつだけどさ」
月城 旭:「私と霞ちゃんが、みんなに沢山助けられて育った事は理解してる。想像できる」
月城 旭:「それを……私と違って、霞ちゃんは全部覚えてて」
月城 旭:「その上で、なくしたんでしょう」
月城 旭:「その痛みは……私には、想像するしかできないけどさ」
月城 旭:「それを全部受け止めた上で、前を向いて立ってるっていうのは……」
月城 旭:「きっと……途方もなくすごくて、大変な事なんだと思うから」
月城霞:姉のその優しさが、今はどうしようもなく恐ろしくて、残酷で、受け入れがたいものに思えた。
月城霞:それに報いるために、相応しい人間になる為には。
月城霞:私は一体、どれほど正しくて、どれほど強い人間であり続けなければならないのだろうか。
月城霞:「……そんなこと、無いよ」
月城霞:「私から見たら……姉さんのほうが、ずっとすごい」
月城霞:「……心配しないで、姉さん」
月城霞:「私は大丈夫。UGNチルドレンだから」
月城 旭:「……そっか」
月城霞:「皆のことは悲しいけど……でも、悼むのは後からでも出来るわ」
月城霞:「今は立って、行動しなきゃいけない」
月城 旭:「……ん、分かった」
月城霞:「この事態をどうにか出来るのは、私たちだけでしょう。今、頑張って……」
月城霞:「この街と、皆を守らなきゃ」
月城霞:その言葉の、一体どれだけが自分の本心なのだろう。
月城霞:どれだけが自分の言葉で、どれだけがそう言うべきだと強いた言葉で、どれだけが姉に聞かせるための言葉なのだろう。
月城霞:自分自身、まるで分からなかった。
月城 旭:「……じゃあ、もし無事に」
月城 旭:「みんなで生き延びて、この事件を何とかできたらさ」
月城 旭:「私、今度は霞ちゃんと一緒に行きたいな。旅行」
月城霞:「……旅行?」
月城霞:「……私と?」
月城霞:「……二人で?」
月城 旭:「……いやだった?」
月城霞:「嫌、では、ないけれど……」
月城 旭:「ほら。いつも任務と訓練が忙しい感じだったから……誘うと迷惑かな、って思ってたけど」
月城 旭:「こんなに大きな事件を何とかした後なら、休みも取れるかな……って」
月城 旭:「思ったんだけど……」「や、ごめん。ちょっと不謹慎だったかな……」
月城霞:「……考えたこともなかった」
月城霞:「……そうね」
月城霞:戸惑ったが、少し気落ちしたような姉の顔を見ると、口が動いていた。
月城霞:「行こうか。休みも取れると思うし……」
月城 旭:「え、いいの?」
月城 旭:「やったー!」
月城 旭:「えへへ……実は、ずっと行きたかったんだよねぇ。霞ちゃんと旅行」
月城霞:「……それなら、言ってくれたら良かったのに」
月城 旭:「ふふ、そうだねえ……こんなに簡単な話なら、もっと早く言っておけばよかったなぁ」
月城 旭:「や、まだ場所は全然決めてないんだけど……それも一緒に相談して決めよっか」
月城霞:「うん……私、全然知らないから」
月城霞:「ええと……うん、楽しみ」こくりと頷く。
月城 旭:「ふふ。私も楽しみ……じゃあ、なおさら頑張って解決しないとだ」
月城霞:「……そうね。まずはそれ」
月城霞:「……考えてみると」
月城 旭:「ん?」
月城霞:「姉さんと一緒に、こうしてR案件に当たるなんて。いつ以来かな」
月城 旭:「1年ぶりくらい、かな? チルドレン辞めたのは、更にもっと前だったけど」
月城 旭:「……もしかして、寂しかった?」
月城 旭:悪戯っぽい笑顔……ではなく、心底心配するような表情で言う。
月城霞:「うん」
月城霞:「姉さんが一緒なら、頼もしいわ」
月城霞:それだけはきっと、本心からの言葉だった。
月城 旭:「そりゃ……そっか。ごめんね」困ったように髪を指でといて。
月城 旭:言い訳めいて、UGNを辞めた理由まで口にしかかって。やめる。
月城 旭:数か月前の旅行で、叢崎未和にその理由を訊ねられた事すらも。今の月城旭は覚えていないけれど。
月城 旭:結局、それも要約すれば「この子のため」だ。だから、口にすれば責を被せるようになってしまいそうで。
月城霞:「……いいよ」
月城霞:「今は寂しくないから」
月城霞:姉が自分を愛してくれることも、それだけの価値が自分にはないことも。私にとっては重荷だったけれど。
月城 旭:「ん、それは良かった」
月城霞:けれど、それがどうしようもなく嬉しいことも。私が姉を好きなことも。どちらもまた、紛れもない事実だった。
月城 旭:満足したような笑みを浮かべる。既に自分の想いが、彼女の重荷になっている事には正しく気付かないまま。
月城 旭:月城霞に〇親愛/(秘匿) でロイス取ります。
月城霞:ロイス取得 月城旭 親愛/○罪悪感



叢崎未和:街から出る方法判定しまーす
叢崎未和:6dx+1 コネ使用情報UGN
DoubleCross : (6DX10+1) → 9[1,2,3,3,4,9]+1 → 10

叢崎未和:わっほい
GM:えらい
叢崎未和:サブでやっちゃったけどサブで良いですかこれ
GM:いいんじゃないかな……?
日室 晴陽:あたしは一回パスしよっかな スネグラチカ調べるために瓦礫の発掘中って感じで

・街から出る方法
徒歩、あるいは飛行能力等を用いて街から出ようとすると、自分でも気付かない内に反転し、元の場所に戻ってきている。
空間は緩やかだが確実に閉じ、外に出ることは出来なくなっている。
バロールやオルクスによる空間転移も街の内部のみに限定されており、外に出ようと何度試みても不発に終わる。
電車に乗って隣の駅に移動しようとすると、桜花駅からは何の異常もなく発車する。
だが気付くとまるで環状線のように、再び桜花駅に戻ってきてしまう。
乗客も異変に気付くが、しばらくするとそんな異常も忘れてしまったかのようにぼんやりと大人しくなる。
車やバスを用いても同様であり、物理的な壁に激突して死ぬようなことは無いが、外に出ることはどうしても出来ない。


叢崎未和:コワー
白塚 美弦:住民の様子を調べます コネ:噂好きの友人で
白塚 美弦:8dx+2>=9
DoubleCross : (8DX10+2>=9) → 10[2,5,6,7,7,8,8,10]+3[3]+2 → 15 → 成功

GM:ではこちらも

・住民の様子
君達以外の桜花市の住人達は、何も気付いた様子なくごく普通の日常を送っている。
彼らも街から出られないのは同じであり、異常な状況に騒ぎが起きてもいいはずだが、そうはなっていない。
彼らは何度状況に疑問を抱いても、すぐに忘れて気にしなくなってしまうようだ。君達が事実を告げたとしても、一時的には正気に戻ったにせよ、結局は同じ結果になるだろう。
恐らくは“スネグラチカ”により、街全体に認識汚染が為されている。彼らはこの状況に気付くことも、脱出しようと行動を起こすこともない。
いま何か成せるとしたら、オーヴァードである君達だけだ。


高校・空き教室
叢崎未和:支部が倒壊した以上、これまで最上階で行っていたような情報共有は行えない。
叢崎未和:幸い、君たち3人は同じ高校の生徒だ。各人がある程度の状況把握を進めた今、人気のない空き教室に集まって今後の方策を練ることにした。
叢崎未和
叢崎未和:「そういう感じで」
白塚 美弦:「うん」
叢崎未和:「誰も出れない様子だったよ。人だけじゃなくて電車とか車とか」
叢崎未和:紙パックジュースを握りつぶすように飲む。
日室 晴陽:「なる~。ゆるい空間閉鎖って感じかぁ」
日室 晴陽:「異常に気づけないって辺り、一般人への認識汚染も入ってんね」
白塚 美弦:「そうだね」
叢崎未和:「ゆるい……のかなぁ。ま、軟禁の言いかえならそうか」
叢崎未和:一見して平静を取り戻している、ように見える。
日室 晴陽:「少なくとも物理じゃないしね。むしろその分厄介だけど」
叢崎未和:「っは~~~」
叢崎未和:大きく息を吐いて机に突っ伏する。「日室さんの方の調子はどう?」
日室 晴陽:「こっちはボチボチ……って言いたいけど」
叢崎未和:「日室さんの方ってか支部の方ってゆーか……うん」
日室 晴陽:「まだかかりそうかな~。量が量だしさ」
日室 晴陽:「それにほら。あたしの能力だと無差別に焼いちゃうから」
日室 晴陽:「結局手作業になるんだよね」
日室 晴陽:よく見れば、ネイルで飾られた指先に幾つもの傷がある。
叢崎未和:「ふん……ねえ。なんとかなると思う?」
白塚 美弦:「それは支部の方? この事態の方?」
叢崎未和:「うしろ」
叢崎未和:表現が悪かったな、と頭を掻く。
日室 晴陽:「後ろに関しては、どうにかなるかなーってより」
日室 晴陽:「どうにかするしかないって話っしょ」
叢崎未和:「あーもう…………」
叢崎未和:いやいやをするように頭を振る。
叢崎未和:「旭さんもそうなんだろうな……霞ちゃんも」
叢崎未和:「はぁーーーーーー最悪」
日室 晴陽:「……あー。なんかサガること言っちゃった?」
叢崎未和:「や。別に」
日室 晴陽:「いちおーさ、今回の件に関してはチームみたいなもんだし」
日室 晴陽:「なんかよくないなって思うことあるなら言ってほしーかな」
日室 晴陽:「あたしらどうにもその辺ズレがちっぽいし」
叢崎未和:頭を上げる。乱れた髪の奥から炯々たる眼光が覗いている。
叢崎未和:「私、こう見えて熱い女だからさ」
叢崎未和:「全然頑張りたくないけど頑張っちゃいそうで、嫌」
叢崎未和:「あとみっちが頑張りすぎちゃわないかも心配だなぁ」
白塚 美弦:「私?」
白塚 美弦:「心配してくれてるんだね~」
叢崎未和:「ネズミをヒョコヒョコさせてなんとかなる敵じゃなさそうだよ」
白塚 美弦:「それはそうかもだけど……大丈夫じゃない?」
叢崎未和:「あぁん?」
白塚 美弦:「未和ちゃんいるもん」
叢崎未和:何言っとんじゃこいつは、という視線を送るが、その言葉に意表を突かれる。
叢崎未和:「あらら…………」
日室 晴陽:「信頼だねぇ」
白塚 美弦:「信頼だよぉ」
叢崎未和:「……旭さんでも日室さんでもなく、私なんだ」
叢崎未和:おずおずと、踏みしめるように確認する。
叢崎未和:理由が分からないからだ。自分は彼女たちと違って、悲しみを押し殺してあの場をまとめるリーダーシップも、岩をバターの様に断ち切る高い戦闘力も見せていない。
白塚 美弦:「もちろん三人とも頼りになると思っているし、協力していきたいと思っているけど」
白塚 美弦:「一番私が知ってて確かなのは未和ちゃんだもの」
叢崎未和:「私にしてみれば、確かなほど無理筋に見えるもんよ。美弦は楽観……」
叢崎未和:「や、ありがと」
叢崎未和:言葉を切る。
白塚 美弦:「うん」むふー、と嬉しそう。
日室 晴陽:「……実際さ」 二人のやり取りをほほえまし気に見つめた後、口を開く。
日室 晴陽:「2人ともありがとね。協力してくれて」
日室 晴陽:「今回はまあ状況が状況だからアレだけどさ。本来イリーガルが事件に関わるかなんて当人の意思次第なんだし」
日室 晴陽:「こうやって手伝ってもらえてマジで助かってるよ」
叢崎未和:「ほんとにもう」
叢崎未和:「普通いっぱいいっぱいになると思うんだけどな~ 日室さんのポジショニング」
日室 晴陽:「え、あたし?」
白塚 美弦:「ね、それは思う」
叢崎未和:「……私さ、これまでの人生、努力の空回りしかしたことない」
叢崎未和:椅子の背もたれに体重を預けて、手をぷらぷらさせる。
叢崎未和:「……UGNで能力訓練頑張ってるのもさー。そういう感じに終わる予定だったんですよ」
叢崎未和:「本当に怖いんだ」
叢崎未和:「余裕バッファがない。努力に意味があったのか、なかったのかを叩きつけられる場がいきなり来て」
叢崎未和:「だからま、日室さんがどっしりしてくれてたお陰もある」
叢崎未和:「もちろん、みっちーが居たからもね」
叢崎未和:右手を持ち上げてぷらぷらさせる。
叢崎未和:一番重要な理由は、口にしていない。
叢崎未和:「出来ることがある限りはやるよ」
日室 晴陽:「ん、ん。そっか」
日室 晴陽:「どっしりってつもりは無かったけど……」
日室 晴陽:単にあの場にいた正規人員は自分と霞だけで、そして霞はああいう時テンパりがちだから。
叢崎未和:「あっ、ごめんね。そりゃそうだ……」
叢崎未和:右頬を掻く。
叢崎未和:「そう見えるくらい頑張ってたって事よ」
日室 晴陽:「そうなんかね。ま、それでみわっちがちょっとでも落ち着けてんならラッキーってことで」
白塚 美弦:「じゃあ、ラッキーなんじゃないかな?多分」
叢崎未和:「ラッキーは大事だねぇ」
叢崎未和:適当な相槌を打って目を細める。
叢崎未和:「や、本当に大事かもな」
叢崎未和:災害指定ジャーム、街を壊す化物なのだという。
叢崎未和:”スネグラチカ”。能力の規模が違う。破壊前兆であろう箱庭化も謎。正体定かならぬそれを打倒するには。
叢崎未和:「みっちーはどう思う? 引っ越してほどなくこんなんでさ」
叢崎未和:「ラッキー、あるって」
白塚 美弦:「ラッキー、かぁ」
叢崎未和:「私はバリバリにあるよ。あるから困ってる」
叢崎未和:「困ってるんだ…………」
日室 晴陽:「えぇ、ラッキーで困ることある?」
叢崎未和:頭を抱える。
白塚 美弦:「余裕バッファが足りない時の未和ちゃんだ」
叢崎未和:「そういうこと」我が意を得たりとばかりに白塚さんを指さし。
叢崎未和:そのまま人さし指を頬に突き刺す。
白塚 美弦:「あう」
叢崎未和:「じゃあ、よろしく。”パラダイム”、意味は……忘れたな。叢崎未和だよ。改めて」
叢崎未和:「メンタルもフィジカルも全然強くないけど、がんばるから」
叢崎未和:もちもちと白塚さんの頬を弄りながら言い切る。全く決まっていない。
日室 晴陽:「お、良いねそういう感じ。じゃああたしも!」
日室 晴陽:「"アンシー・レディ"の娘、"アンシー・ガール"!UGN桜花市支部所属の日室晴陽!」
叢崎未和:「あ、そういう由来なんだ。生え抜きだね~」
白塚 美弦:「へぇ~」
日室 晴陽:「名前の通りの太陽のように。未来を照らして見せましょう!」
叢崎未和:ぱちぱちと拍手してから、残りの一人をじーっと見る。
叢崎未和:「未来」
叢崎未和:かっこいいな、と思いながら。
白塚 美弦:「”マウス・ブリンガー”、白塚美弦」
白塚 美弦:「ネズミを操るっていうだけの理由ですけど」
叢崎未和:「分かり易くていーじゃん。あ、バラしちゃってごめんな能力」
白塚 美弦:「そして来たばっかりですけど、以後も住むであろう、この街を守りたい気持ちは変わらないです!」
白塚 美弦:頬をもちもちされているので、迫力はない。
白塚 美弦:「知られて困る能力ではないから、大丈夫だよ」
叢崎未和:「いいぞ~、やってやれ」
日室 晴陽:「それにまあ、元々支部で割と共有されてるし……」
叢崎未和:「……あ、そうか。そうだよね」
叢崎未和:一瞬あからさまに表情が変わる。
日室 晴陽:「ていうかめちゃつついてるけどそんなさわり心地いーの?」
叢崎未和:「う、うん」
日室 晴陽:「え、マジ?」 ちょうど触りたいなーとうずうずしていた。
叢崎未和:「ぽっと出のやつが触るには試練を課すところだけど」
叢崎未和:「日室さんはお疲れだからね」そっと傷ついた爪を見る。
叢崎未和:「免除ーー!」
叢崎未和:ぐぐいと白塚さんの肩を日室さんの方へ押し出す。
白塚 美弦:「なぁにそれ、私の頬は私のものだぞー。未和ちゃんが許可を出すものではないぞー」
日室 晴陽:「やたー!」 そのまま手を伸ばし、ネイルが刺さらないよう指の甲の方でふにふにと。
白塚 美弦:「あうあう」
日室 晴陽:「あ、すご。マジでふにっふにじゃん」
叢崎未和:「はは、よかろ」
白塚 美弦:「ふふふーん」嫌な気はしてなさそうな表情。
日室 晴陽:「え、ケアとか何使ってる?」
叢崎未和:「かぁいいな~こいつは」
白塚 美弦:「ケア……普通の洗顔用のやつ!」
叢崎未和:「天然素材!」
白塚 美弦:「でもアレだよね」
日室 晴陽:「天性の肌じゃん。うらやま~」
叢崎未和:「うん?」
白塚 美弦:「未和ちゃん、頬の許可を出す時といい、情報の件といい、私を所有物のような扱いをしているというか、」
白塚 美弦:「独占欲みたいなのあったりするのー?」
叢崎未和:「まぁね」
叢崎未和:「みっちの事は大事に思ってるよ」
日室 晴陽:「わお、いっけめーん」
叢崎未和:「(……多分みっちが思ってるより、かなりね)」
叢崎未和:ぼんやりとそんな事を考えながら。
白塚 美弦:「ほえー」少し照れ気味な様子。
叢崎未和:「なんというか、シンパシーを感じてるんだよ。ほら、私達、正規の子たちほどちゃんと鍛えて強いわけでもないし」
白塚 美弦:「シンパシー」
叢崎未和:「そっちの作戦とかのためにも、自己流で身の丈に合わない事とかしないのが大事じゃん? そういうさ」
叢崎未和:「そういう……」なんとなく、昔を思い出しているような表情になる。「そういうので、私はたまたま生きてるけど…………」
叢崎未和:「いや、なんだろうな……やりそうだと思ってるわけじゃないからやっぱ忘れて」
叢崎未和:よくわかんない話にしちゃった、と笑う。
白塚 美弦:「どうしよっかなー」忘れるか、忘れないか、その手綱はこっちが握っているんだぞとでもいうような表情。
叢崎未和:「みっち~~」
叢崎未和:「……んま、いいや」表情を引き締める。
白塚 美弦:「ん。まぁ折衷案で、心の奥底にしまっておく程度にしておく」
叢崎未和:「私はもう暫く市内を歩き回ってみるよ。別に逃げ出す気ぁないけど」
白塚 美弦:「はいはーい」
叢崎未和:「でも、外と何かで遣り取りできるかってのは死活問題だ」
日室 晴陽:「その辺は霞にも聞いてみないとかな。試してくれてるはずだし」
日室 晴陽:「あとまあ支部の設備が掘り起こせたらそっちも試したいな。他よりワンチャンあるっしょ」
叢崎未和:「ほんとのほんとに5人でやんなきゃいけないってなったら」
叢崎未和:「ほんとに嫌だな……」
叢崎未和:そんな事を言いながら、口元が笑みを形作っている。
日室 晴陽:「嫌って顔してない癖に~」
白塚 美弦:「癖に~」
叢崎未和:「……えっ」
叢崎未和:右手で表情筋をぐにぐにと揉む。
叢崎未和:「(や、これは本当にまずいな……)」
叢崎未和:「(時間、ないかもしれない)」
叢崎未和:「ん。まあね」
叢崎未和:「ハートは熱い女だから」
叢崎未和:誤魔化すようそう答える。
日室 晴陽:「この状況に燃えちゃってるって訳だ」
日室 晴陽:「良いね。実際ヤバヤバのヤバだし、楽観できる状況じゃないけど」
日室 晴陽:「しょんぼりしてられる状況でもないし。そうやってやる気出してくれてんのマジ心強い」
叢崎未和:「任せといて。みっちーの信頼に応えてやるわ」
白塚 美弦:「……」未和ちゃんの返答に”作った”もののような気配を感じつつ。
白塚 美弦:「いえいいえい。応えてみせろー!」
叢崎未和:…………怖い。
叢崎未和:覚悟があると思っていた。出来ると思っていた、そのつもりだった。
叢崎未和:うってつけの状況だ。今がその時だ。
叢崎未和:その、はずだ。
叢崎未和:あるいは、そうでないことを確認してしまうのが怖い。
叢崎未和:剣道やら、勉強やら。あるいは……もっと前。
叢崎未和:何かに備えて、それを結実させることはなかった。
叢崎未和:きっと、それと同じことが起きようとしている。
叢崎未和:それでも、今度ばかりは認める訳にはいかなかった。
叢崎未和:勇ましい言葉は全て虚勢だ。
叢崎未和:それでも、その虚勢を引きずり出してくれる2人に感謝した。
叢崎未和:「…………うん」
叢崎未和:小さく、こぶしを握る。



メイン:89 サブ:50





【Middle first half/日室晴陽】

GM:2手番目を獲得したのは、日室さんです。
GM:誰を指名しますか?
日室 晴陽:はーい、二連続になっちゃいますが霞ちゃん指名します
月城霞:分かりました
GM:それでは日室さんのみ登場侵蝕をお願いします。
日室 晴陽:日室 晴陽の侵蝕率を1D10(→ 2)増加 (46 → 48)
GM:サブシーンは白塚さん、叢崎さん、旭さんになります。
桜花市支部跡地
月城霞:“スネグラチカ”の能力によるものか、大規模な破壊にも関わらず、支部の周囲は騒ぎも起きず、警察も動いていなかった。
月城霞:それでも何か異変はあるかもしれない。昼と夜とでは能力の違うオーヴァードもいる。
月城霞:とにかく何か、状況を好転させる手掛かりが欲しかった。藁にも縋るような思いで、支部の跡地へと足を向けた。
日室 晴陽:日が沈み暗くなった外。街頭だけが照らす瓦礫の山。
日室 晴陽:そこには日室晴陽の姿があった。
日室 晴陽:昼間に付けていたネイルチップを外し、自慢の金髪をくくり、汚れてもいいようなラフなTシャツに着替え。
日室 晴陽:恐らくは夕方からずっと動いていたのか。あちらこちらが薄らと汚れ、酷く汗塗れだ。
日室 晴陽:「……あれ、霞?」
月城霞:「……え」思わぬ光景に目を瞬く。
月城霞:「日室?」
日室 晴陽:「どしたん?こんな時間に」
日室 晴陽:ガラガラと不安定な足場を伝い、霞の前に。
月城霞:「それはこちらの台詞よ」
月城霞:「何をしているの」
日室 晴陽:「何ってそりゃ、瓦礫掘ってんの」
日室 晴陽:「どーにか半分くらいは片付いたんだけど、まだPCが見つかんなくてさー」
月城霞:「……こんな時間に?」
日室 晴陽:「あー、ほら。どーせあたし一人暮らしだしさ」
日室 晴陽:「この状況でおうち帰って宿題しますーって訳にもいかんでしょ?」
日室 晴陽:「ならやれるだけねばろっかなって」
月城霞:「……」少し強引に、汚れたその手を取る。
日室 晴陽:「わわ。どしたん?」
月城霞:その身体をまじまじと見て「……怪我はしてない?」
日室 晴陽:「ん、だいじょぶ。さっきちょい指きったくらい」
月城霞:「してるじゃない」
日室 晴陽:「へーきだってこんくらい~。帰ったら消毒するし」
月城霞:「日室」窘めるようにぴしゃりと言う
月城霞:「いくらオーヴァードでも、こんな時間に撤去作業なんて危ない」
日室 晴陽:「う、そりゃあうん。そうだけどさぁ……」
月城霞:「予想外の怪我をするかもしれない。瓦礫が崩れたら、生き埋めになるかも」
月城霞:「分かっているの?」
日室 晴陽:「分かってるよぉ。一応、ヤバそうなとこは避けつつやってるし」
日室 晴陽:「いざってときは魔眼もあるし?身の安全は確保してるって」
月城霞:「そもそも、こんな作業を夜間にすることが非効率的でしょう」
月城霞:「視界も悪い。もし何か見つけても暗くて分からないかもしれない。それにやはり危ない」
月城霞:「今無理するよりも、夜は夜で、他に出来ることがあるわ」
日室 晴陽:「……はぁい」 反論も無くなったのか、肩をすくめて頷く。
月城霞:「……明日は私も手伝うから」
月城霞:「今日はもう休みなさい」
日室 晴陽:「それはマジ助かるけど……あと一個だけ良い?」
月城霞:「その方が効率が……何?」
日室 晴陽:「ちょい、ね」 そう言って比較的瓦礫が片付いた地点に積んでおいたいくつかの毛布を取る。
日室 晴陽:そのまま、少し高めに瓦礫を積んだ裏へと歩いていく。
月城霞:「……」後に続く。
日室 晴陽:確保された開けたスペースに、何人もの遺体と拾い集められた遺品が並んでいる。
日室 晴陽:「ホントならさ、ブルーシートとかかけんのがふつーなのかもだけど」
日室 晴陽:「家に無かったし、なんか気が引けてさあ。皆にかけたげよっかなって」
月城霞:「……これ」
月城霞:「……全部?」日室に目を向ける。
日室 晴陽:「ん。見つけられた人は皆ここにね。まだ見つけられてない人居るけど……」
日室 晴陽:「あ、いや!ちゃんとPCも探してっからね!」
月城霞:「……そう……」
月城霞:僅かに目を伏せて、遺体に向けて手を合わせる。
月城霞:≪氷の理≫
月城霞:白い霧と共に、空中に蒼白の魔眼が姿を現す。
月城霞:極低温の冷気が漂う。夏の気温で遺体が損傷しないように、氷に閉ざして保護する。
月城霞:「……日室は」
日室 晴陽:「あ、ナイス!……ん?」
月城霞:「いつも、肝心な時にしっかりしているね」
日室 晴陽:「そりゃあまあ、肝心な時にしっかりしないでいつしっかりすんのさ」
月城霞:「……私はそうだよ」
月城霞:「肝心な時に、いつも何も出来ない」
月城霞:「支部がこうなった時も、君の方がずっと冷静だった」
日室 晴陽:「……んなことないよ」
日室 晴陽:「今日外との通信試してくれたし、今だってわざわざ様子見に来てくれたっしょ?」
日室 晴陽:「なんも出来ないなんてことないって」
月城霞:「……それだって」
月城霞:「目の前のことに必死になっていただけ。それで、結局……」毛布を掛けられた遺体に目を向ける。
月城霞:「皆を弔うことなんて、少しも気が回らなかった」
月城霞:「本当は一番……大事なことなのに」
日室 晴陽:「んん……」
日室 晴陽:「なんつーかさ。難しーから上手く言えるか分かんないけど」
日室 晴陽:「それが一番大事とは限らなくない?」
日室 晴陽:「あ、いや。言い方違うか?ええと」
日室 晴陽:「皆のこと掘り起こしながらさ。これでいーのかなってちょっと思ったんだよね」
日室 晴陽:「今この街にはスネグラチカが居てさ。次いつ何するかも分かんなくて」
日室 晴陽:「ホントなら、スネグラチカを倒すとか、せめて情報探すとかが最優先なんじゃないかって」
日室 晴陽:「こうやって遺体掘り出したり遺品並べたり、そういうことよりもPC探すことだけ考えなきゃダメなんじゃないかって」
日室 晴陽:「ちょっと思ったんだよね」
月城霞:「……」日室を見る。
日室 晴陽:「でもさぁ」 もう動くことのない仲間達を見渡して。
日室 晴陽:「見つけたらどうしてもほっとけなくてさ。結局それで大分時間使っちゃってんの」
日室 晴陽:「だから、なんだろうな。これが絶対一番大事って訳じゃ多分無くてさぁ」
日室 晴陽:「それも大事で、スネグラチカも大事。みたいな?」
日室 晴陽:「どっちを優先したから偉いとか、どっちを考えてる方がすごいとか、そういうんじゃないんじゃないかなって」
月城霞:「……日室らしいね」
日室 晴陽:「そう?こんなマジメなのらしくないなーって思ってたけど」
月城霞:「それでも、やっぱり、君にしか出来ないことだ」
月城霞:「……私には出来ない。出来なかった」
月城霞:「……日室。私は」
月城霞:「君みたいになりたいよ」
月城霞:押し殺していた羨望が漏れる。自分に無いものを持った彼女に。太陽のようなその輝きに。
月城霞:姉も、日室も。どちらも自ら輝きを放てる人間だ。私はそれを、ただ反射することしかできない。
日室 晴陽:「あたし?」
日室 晴陽:一瞬、ギャル姿の霞を浮かべそうになって首を振って。
日室 晴陽:「あたしは、霞が霞で良かったなって思うけど」
月城霞:「……どうして?」
日室 晴陽:「あたしはさ。霞みたいに普段からずっとマジメにコツコツとか出来ないし」
日室 晴陽:「おシャレとかスイーツとか、そういう好きなもののことばっか考えてるし」
日室 晴陽:「大変だなって分かってることに真っ直ぐ向かっていくみたいなさ。そういうの、難しーから」
日室 晴陽:「それが出来る霞のことすごいって思ってるし、そういうとこすごい好きだよ」
月城霞:「……」
月城霞:「……そうなの?」
日室 晴陽:「ん、マジで。尊敬もしてる」
日室 晴陽:「なんだろうな、背筋が伸びてるっていうかさ。真っ直ぐなとこかっこいーよ」
月城霞:「そ……そう……なの……」
月城霞:世辞の類かと思ったが、彼女がそういう人間ではないことは知っている。
月城霞:面映ゆいような、恥ずかしいような。自分には分不相応なような心持になる。
日室 晴陽:「お、照れてる?」 ニッと笑みを浮かべ、染まりかけている頬を指さす。
月城霞:「……照れてなんていないわ」目を逸らす。
日室 晴陽:「ホントかな~」 けらけらと笑ってみせてから。
日室 晴陽:「……実際さ」
日室 晴陽:「そういう真っ直ぐなとこ、マジですごいしかっこいーし尊敬してるけど」
日室 晴陽:「その分、たまにちょい心配になるんだよね」
日室 晴陽:「あたしが普段しっかりせず気い抜いてるみたいな時間が、霞にはちゃんとあるかなって」
月城霞:「……君が気を抜きすぎなのよ」少し意地になったように
月城霞:「前々から思っていたけれど……」
日室 晴陽:「霞」 遮るように。
日室 晴陽:「マジな話。大丈夫?」
日室 晴陽:いつになく真剣な顔で、その瞳を見据える。
月城霞:「……」説教を始めようとして、出鼻をくじかれる。
日室 晴陽:「確かに、状況はヤバいよ。休んでるとか弱音吐いてる場合じゃないって思うくらい」
日室 晴陽:「でも、それで弱音溜め込んでぷっつりいったら本末転倒。でしょ?」
月城霞:「……私、そんなに」
月城霞:「大丈夫じゃなさそうに見えるの?」
日室 晴陽:「んん……」 一度、表情を緩めて。
日室 晴陽:「大丈夫じゃなさそうっていうか、なんつーか。真っ直ぐすぎて心配みたいな?」
月城霞:「……」
月城霞:真っ直ぐすぎて。
月城霞:他ならぬ彼女にとってそう見えているなら、自分も少しは安心できる。
月城霞:「……大丈夫よ」
月城霞:「自分の体調とメンタルの管理も任務の内よ」
日室 晴陽:「あ、そうそれ!」
日室 晴陽:「霞自身もそうだし、周りの人もさ。霞はしっかりしてるから大丈夫だろって思って」
日室 晴陽:「そうやって任せすぎて、それで大丈夫じゃなくなりそうなんだわ」
月城霞:「……日室は心配しすぎ」
月城霞:「私は無理なんてしない。それでは仕事が出来ているとは言えないわ」
月城霞:「ちゃんと休みも取ってる。あなたとクレープだって食べに行ったでしょう」
日室 晴陽:「だぁって、そのクレープのときに言ってたじゃん」
日室 晴陽:「心とか身体が休まってる気がするって。それって、あの日までは休まるって知らなかったってことっしょ?」
月城霞:「……それは……」痛いところを突かれて、言葉に詰まる。
日室 晴陽:「休み方自体知らなかったら休まりようがないじゃんか」
日室 晴陽:「そういうとこが心配になるんですー」
月城霞:「私だって、休み方くらい知ってる」
日室 晴陽:「例えば?」
月城霞:「余暇は、買い出しとか……掃除もしているし……」
日室 晴陽:「休んでないじゃん」
月城霞:「休んでる。時間が余ったら空を眺めたりするわ」
日室 晴陽:「えぇ……」
月城霞:「……大体、心配というなら……」
月城霞:「私にだって言いたいことはある」
日室 晴陽:「え。あたしに?」
月城霞:「そう。普段から」
月城霞:「あの爪は何?戦闘にも日常生活にも不要だわ」
日室 晴陽:「えぇ~!?要るよぉ、要る要る!あるとアガるもん!」
月城霞:「その髪も。若い内からそんなに派手に染めていては、髪が痛む。戦闘でも目立って不利よ」
月城霞:「スカートの丈も短すぎるわ。もっと……その、異性の目、を気にするべき」
日室 晴陽:「いやまあ、たまに気になるけどさ。でもあれくらいのがかわいーじゃん」
月城霞:少しごにょごにょと言って。
日室 晴陽:「人の目を気にして自分のしたいかっこ出来ないのイヤじゃん?」
月城霞:「あれくらいが……?」
日室 晴陽:「かわいーの!」
月城霞:「……」理解に苦しむという顔。
日室 晴陽:「むう……。ていうか、誤魔化されかけたけど」
日室 晴陽:「休めてるかとか大丈夫かの話終わってませんけど」
月城霞:「う……」
日室 晴陽:「……言った通りさ。状況がヤバいからちゃんとしなきゃって思うだろうけどさ」
日室 晴陽:「キツイとか辛いとか怖いとか、思ったら言ってもいーんだよ」
日室 晴陽:「人に言うだけでもマシになったりするらしーし。あたしならいくらでも聞くからさ」
月城霞:「……」
月城霞:その言葉に、つい抱えたものを吐き出してしまいそうになる。
月城霞:私の醜い弱音も全てぶちまけて、それでも彼女はきっと受け入れてくれるだろう。
月城霞:けれど、私はそうしたくはなかった。
月城霞:彼女には私のことを、少しでも立派な人間だと思っていてほしかった。
月城霞:彼女の相棒に相応しい人間でありたかった。それはただの意地や自尊心かもしれないが──
月城霞:そこまで考えて、気付く。姉が私に思うのも、こんな気持ちに近いのだろうか。
月城霞:「……大丈夫」
月城霞:「辛かったら言う。でも、今はまだ大丈夫だから」
月城霞:「その時まで、待っていて」
日室 晴陽:「……ん。マジでちゃんと言ってね」
日室 晴陽:「もうダメだってなる前にだかんね」
月城霞:「……うん。分かってる」
月城霞:「ありがとう、日室」
日室 晴陽:「どーいたしまして!」
日室 晴陽:「……そんじゃ、そろそろ帰ろっかなぁ。お腹もすいたし」
日室 晴陽:「ていうかシンプルな肉体労働マジヤバいね。明日筋肉痛で死ぬかもしんない」
月城霞:「だから言ったじゃない……」
日室 晴陽:「あたしももっと普段からジム通っとくべきだったかなぁ……」
月城霞:「明日に備えてしっかり休みなさい。食事をして、睡眠もしっかり取って」
日室 晴陽:「ん、はーい」
月城霞:「起きられないなら起こしに行くわ。何時がいい?」
日室 晴陽:「あ、マジ?良いの?」
月城霞:「あなたがいないと困るから」
日室 晴陽:「やった。じゃあ7時が良いかな」
日室 晴陽:「あ、でも霞の身支度考えると早すぎ?もうちょい後にする?」
月城霞:「いいえ。普段はもっと早いから。7時ね、分かったわ」
月城霞:「今日は栄養のあるものを食べなさい。歯も磨くこと」
日室 晴陽:「んえ、ママみたいなこと言うじゃん。分かってますー」
月城霞:「暑いからといって冷房の温度も下げ過ぎないで。いい?」
日室 晴陽:「分かってるってぇ」 呆れたような声を出しつつも、その顔は確かに笑っていた。
月城霞:ロイス取得 日室晴陽 ○連帯感/隔意
日室 晴陽:ロイス取得 月城霞 〇恋慕/心配



叢崎未和:『次は~○○、○○~』
叢崎未和:駅名を告げるアナウンスが響く。
叢崎未和:電車内がしばらくざわめき、やがて収まる。何度も経験した現象だ。
叢崎未和:「これ、戻ってきてますね」
月城 旭:「ん、まただねえ」溜息。
白塚 美弦:「そうだねー……」
月城 旭:「皆、気付いてもすぐ忘れちゃうみたい。私達だけが、おかしなことがあったって覚えていられる」
月城 旭:「まあ、私達には記憶操作に対する耐性があるって事だろうね。……ワーディングの一種かな」
叢崎未和:「これ、運転手さんがオーヴァードじゃないからかなって思って、お父さんのバイク借りて市から出ようとしてみたんですけど」
叢崎未和:「『耐性』があっても抜けられないのか、思ったほど耐性なんてないのかも……」
叢崎未和:複雑な表情で失敗を告げる。
白塚 美弦:「この調子だと、地下からだろうが空からだろうが出られなさそうだね」
月城 旭:「試してみてもいいけど……そういうレベルじゃない気がするなあ」
叢崎未和:「日室さんたちも頑張ってくれてるけど」
叢崎未和:「どうしようか、支部長たちがやられたとこで手遅れで、このままずっと何も起きなくて、何も見つからなかったら」
叢崎未和:2人の顔を順繰りに見る。
月城 旭:「あはは。何も見つからないって事はないでしょ」
月城 旭:「支部長や皆は、ちゃんと見たんだ。出逢ったんだ」
叢崎未和:「…………だといいけど」
叢崎未和:本当に、そうだと良いと思っているだろうか。
月城 旭:「"そいつ"が今もこの街の法則を支配していて、この街のどこかにいるんなら」
月城 旭:「いつか必ず出逢う事になる。できれば、こっちから会いに行きたいもんだけどね」
白塚 美弦:「不意打ちは嫌だものね」
叢崎未和:「……そうねぇ」
叢崎未和:月城旭に斬れないものがあるとは思っているわけではない。
月城 旭:「不安かい?」
叢崎未和:「信じてますよお」
月城 旭:「信じてるって……ふふ、私を?」
叢崎未和:ころんと頭を電車のドアに倒して、見上げる。
叢崎未和:「そりゃもう。ご存じないかもしれませんけど、命の恩人ですから」
月城 旭:薄く微笑んで、君の眼を見る。
月城 旭:「あら。高く買われちゃったもんだ……なら、なんとか期待に応えてあげないとね」
白塚 美弦:「へー。命の恩人なんだね」
叢崎未和:「そう、私が覚醒した時ね」
叢崎未和:心地よさそうに目を伏せる。
叢崎未和:「あろうことか竹刀一本でジャームと戦おうとしちゃって」
叢崎未和:「あれ? そんなはずないな……」
叢崎未和:「…………? ??…………」
月城 旭:「……? どうしたの」
白塚 美弦:「?」
月城 旭:「大丈夫?」少女に顔を近づけ、眼の前で手を振って見せる。
叢崎未和:「えっと、違う。逃げてたんだ、すごくおっきい化物で、怖くて……」ぶつぶつと、それにも気づかず。
叢崎未和:「じゃ、ない。えっと、えっと……」
叢崎未和:ひどく狼狽した様子で、カチカチと歯を鳴らしている。
叢崎未和:「私が旭さんとの記憶を間違える筈がない。全部覚えてる、全部、全部…………」
月城 旭:「……」その姿を見て、どうにも痛ましい表情を浮かべる。
月城 旭:彼女の痛みは、どことなく自分にも分かる事のような気がしたからだ。
叢崎未和:「そ、そうです! と……とにかく……。その時に、すごい傷を受けて、痛くて、助けて貰って…………」
叢崎未和:焦点が合っていない。普段ののんびりした口調が嘘のようになりを潜めている。
叢崎未和:呼吸が荒い。滝のように汗が流れる。顔色が目に見えて悪化する。
白塚 美弦:「み、未和ちゃん? 体調悪い?」
叢崎未和:「……な、なんでも」
叢崎未和:「なんでもない」
月城 旭:「叢崎さん」
叢崎未和:「ひゅっ」
叢崎未和:不意に名を呼ばれ呼吸が裏返る。
月城 旭:ふわり、と少女の背中に手を置く。ゆっくりとさすってやる。
月城 旭:「……苦しいのよね」
月城 旭:「大切な思い出のはずなのに、ちゃんと自分の中に形をとどめておけない事が」
月城 旭:ゆっくりと、どこかあやすように言葉をかける。
叢崎未和:「……あう…………」
叢崎未和:彼女に気を使わせている。『共感』されている。そのことが。
叢崎未和:とても申し訳なくて、嬉しくて。
叢崎未和:心臓の早鐘が収まる気配が無かった。
白塚 美弦:「……」その様子を見ながら、胸の痛みを感じている自分が居た。
白塚 美弦:未和ちゃんが少し落ち着いた様子は本来喜ばしいものであるはずなのに。
白塚 美弦:旭さんの手から、目が離せない。
月城 旭:「でも、もしそれが悪い事だというなら」
月城 旭:「私の方がずっと極悪人になっちゃうもの。ふふ」
叢崎未和:「………………いえ」
月城 旭:「どうか、あまり気負わないでほしいな」
叢崎未和:「いいえ」
叢崎未和:じっと、もう一度旭さんの顔を睨むように見る。
叢崎未和:「……『わかる』んですね。苦しいんだ、忘れることが」
月城 旭:「……納得できない?」
叢崎未和:「前に聞いた時は、そうは言ってくれなかった」
月城 旭:「……。そうなんだ」
叢崎未和:態度が不安定で、豹変著しい。
叢崎未和:「そうか……そう。それは」
叢崎未和:「絶対に忘れませんよ。私、都合のいい事しか見えないので」
叢崎未和:先ほどまでの悲観ぶりとの矛盾を認識していない。
叢崎未和:「ふ、ふふふふ……ふふふふふ………………」
月城 旭:「ううん?……そりゃ、ポジティブなのは悪い事じゃないし」
月城 旭:「君がそうやって笑えるのは、喜ばしい事だけど……ほんとに大丈夫?」
月城 旭:こんな状況だ。ストレスが嵩んで、どこかおかしくなってもしょうがないと思っている。
叢崎未和:「……これまでで」
叢崎未和:「一番大丈夫です。心配いりませんよ」
叢崎未和:へらりと、最初の表情に戻って。
叢崎未和:そこで友人の様子に初めて気づいたかのように「ん、みっち。どうかした?」
月城 旭:「……」どう?と白塚さんに視線を向ける。
白塚 美弦:「そういっているときの未和ちゃんの方が心配なんだけどなー」
白塚 美弦:努めて冷静に、返答をする。取り繕っている感バリバリだが、心配させる程ではないと思う。
叢崎未和:「や、ほんとに平気なんだって。お腹すいてきたな、なんか食べようよ」
叢崎未和:車両のドアの開く方向に倒れるように、電車を降りる。
月城 旭:「お友達もこう言ってるけど……ま、そうね」
月城 旭:「こういう時は何かお腹に入れた方が、落ち着くってものでしょうし」
白塚 美弦:「それはそうかも?」
月城 旭:「じゃ、決まりかな。二人とも、何が食べたい?」
叢崎未和:「私のぁ一過性のやつですから。旭さんのほど深刻じゃないよ」
叢崎未和:「……そうだな。量がほしいな」
叢崎未和:「あっや、今の嘘」
叢崎未和:恥ずかしそうに咄嗟に出た言葉を引っ込める。
白塚 美弦:「いいんだよ。いっぱい食べても」
月城 旭:「そうそう、遠慮する事ないのさ。お姉さんが奢ってあげよう」
叢崎未和:「うう…………」
叢崎未和:しまったとばかりに顔を覆う。
叢崎未和:「……じゃあ駅前の中華屋いきましょう。あそこ色々あるし……」
叢崎未和:---
叢崎未和:器用に片手で割りばしを割る。
叢崎未和:「いただきます。あとみっちーは知ってると思うけど……」
叢崎未和:「私すごい食べるので、おごりはエンリョします」
月城 旭:「いただきまーす」綺麗に手を合わせて言う。妹との暮らしで自然と身に付いた習慣。
叢崎未和:そう告げたことで腹が座ったのか、追加で回鍋肉と餃子とスープを注文する。
白塚 美弦:「いただきます」
月城 旭:「んん?大丈夫よ、別に」
月城 旭:「子供の頃からこういう仕事やってるとさ、お金ばかりはそれなりに余裕があるのさ」
月城 旭:鶏肉のサラダを摘みながら言う。
叢崎未和:既に目の前には3品ほどが並んでいた。
叢崎未和:「ん~~……この注文量見せちゃってもそれかぁ」
叢崎未和:「じゃ、お願いします」観念したように。
叢崎未和:一口が大きいわけではないが、とにかく箸を持った手を動かすのが早い。慣れた様子でてきぱきと平らげていく。
月城 旭:「ん、よろしい」
月城 旭:「街の為にこれから命張ろうって子なんだ。これくらいの報酬はあってしかるべきさ」
月城 旭:ささやかだけどね、と笑って。
白塚 美弦:「へへへ。ご馳走になります~」
月城 旭:「ん、白塚さんもいっぱい食べな~」
叢崎未和:「あ、ご馳走になります~」みっちーの真似
月城 旭:「……」真っ赤なラーメンを食べながら、ふと箸を止めて。「……霞ちゃん達、ちゃんと食べてるかな」小さくひとりごつ。
月城 旭:必要な栄養補給はしてると思いたいけど、こういうとき根を詰めすぎる事もあるからな……なんて考えて。
月城 旭:「あとで何か買っていってあげよ」
叢崎未和:殆ど椀を持ち上げることをせず、猫背気味になっていたが、食べる手を止める。
叢崎未和:「霞さんしんぱいですか。あんなにしっかりしてるのに」
叢崎未和:「お姉ちゃんですねぇ」
叢崎未和:ずる、と麺をすすりだす。
月城 旭:「……ん。まあね」
月城 旭:「しっかりしてる……のは否定しないけど。普通に17の女の子だもの。心配の一つ二つしちゃうさ」
白塚 美弦:「いいなー。私もお姉ちゃんほしかったなぁ」
叢崎未和:「みっちーは生粋の妹属性だもんね」
月城 旭:「二人とも、一人っ子なんだ?」
白塚 美弦:「一人っこです!」
叢崎未和:「……ええ、まあ」
叢崎未和:白塚さんの返事と対照的に、歯切れ悪く返す。
月城 旭:「……? あっ」
月城 旭:「もしかして、気に障る事聞いちゃったかな。そうだったら……ごめんね」
叢崎未和:「わかるんでしたっけそう言うの、体表の熱の感じとかで」
叢崎未和:申し訳なさそうに返す。
叢崎未和:「や、円満過程っすよ。パパママは私の事好きだし」
叢崎未和:「お姉ちゃんほしかったというのには同意するとこですけどね」
叢崎未和:口に物が入った状態で喋っている様子はなく、合間合間に飲み込んでいるのだが、とにかく平らげるペースが非常に早い。
月城 旭:「あー……」知られちゃってたか、という顔。
月城 旭:「そのこと教えると、ちょっと気味悪がられるから……あんまり言わないようにしてるんだけどね」
月城 旭:「まあ、そう。見えちゃうの」
白塚 美弦:「へー。すごい!」
月城 旭:「前の私に聞いたのかな?」じっと叢崎さんの眼を見て言う。
叢崎未和:「…………うっ」
月城 旭:「……あら。なんとなく聞いてみただけなんだけど」
叢崎未和:一度口ごもったら。そうです、とは言えない。
叢崎未和:「んまぁこの際言っちゃうか。どうせ忘れちゃうしな旭さん」
叢崎未和:「調べました。ストーカーなので」
月城 旭:「おっと」
叢崎未和:「うわっ」言った本人が非常にびっくりした、という調子で。
叢崎未和:「言ってしまった…………」
月城 旭:「え……ストーカー。って、私の?」
白塚 美弦:「わぁ。ストーカーなんだ」
白塚 美弦:そんなにも、旭さんに強い感情を抱いているのか。そう思うと、胸のあたりがざわざわして、淡白な反応しか返せなかった。
叢崎未和:「みっち~淡泊~~」
叢崎未和:無性に白塚さんが愛しくなってぎゅー、と抱きしめる。
白塚 美弦:「わ、わぁ!」
月城 旭:「冗談……って、感じじゃないね、こりゃ」
叢崎未和:「あ、でもゴミを漁ったりカメラ仕掛けたりするタイプの悪質な奴じゃないですよ。常識の範囲内です」
叢崎未和:もそもそとライスを食べる。
月城 旭:「常識の範囲内のストーカー……って、いまいち想像つかないけど」
叢崎未和:「理由があるんです。今は明かせませんが…………」
叢崎未和:「多分悪い事にはしないので」
叢崎未和:胡散臭い文言を並べ立てる。
月城 旭:「……。私が、君の恩人だから?」
叢崎未和:「シンプルに言えばそうですね」
月城 旭:「そっか……やあ、どうしたもんかな、これ」
叢崎未和:なんだかこれまでで一番興味……不審と言い換えても良いが……を抱かれている気がして「えへへへ……」と笑う。
月城 旭:「真っ当な大人としては、やめるように教え諭すべきなんだろうけど」
叢崎未和:少ししゅんとする。
月城 旭:「……理由があるって言うしなあ」
月城 旭:難しそうに頭をかいている。
叢崎未和:一転、表情が明るくなる。先ほどのような不自然な忙しさを孕んだ変化ではない。
月城 旭:「いや、容認するとかじゃなくてね」
月城 旭:「その理由をなんとかしないと、何を言い聞かせても意味ないでしょ。多分」
月城 旭:「君ってそういうタイプな気がする」
白塚 美弦:「お、大人の意見だ……」
叢崎未和:「おおぅ、詳しいですね……」
叢崎未和:「理由は」
月城 旭:「……教えてくれるの?」
叢崎未和:「や、それは恥ずかしいな……」箸を空になったどんぶりの上に置いて。
叢崎未和:「でも、もうすぐ何とかなります。多分、もうすぐ」
月城 旭:「ストーカーって告白した時点で恥ずかしいと思うけどな……」
白塚 美弦:「えー、なにー気になるー」
叢崎未和:「みっちーには後で教えたげる」
白塚 美弦:「ほんと!?」
月城 旭:「ええー?」
叢崎未和:「ほんとほんと」
叢崎未和:のほほんとした顔で。
白塚 美弦:”みっちーには”。その言葉は特別扱いされたようで、特別じゃないからこそそう言われたようで、複雑な心境だ。
月城 旭:(……さて、いかにも怪しい話だ。怪しすぎて、逆に危険度は低い気がするけど)
月城 旭:(こんな状況だし……伝えておいた方がいいかな、霞ちゃん達にも)
月城 旭:(いや、それで今結束が乱れるのも……)表情には出さないまま考え込んでいる。
叢崎未和:「言っておきたいのは」ぴし、と月代旭を指さす。
叢崎未和:「もし今の会話を旭さんが何の記録にも残さず、誰にも話さずに忘れちゃったって」
叢崎未和:「逆にそうじゃなくたって、私にとってはもう同じってことです。」
月城 旭:「そうかなあ」
叢崎未和:「今はだって、変なことしなくても毎日会えますからね」
白塚 美弦:「やっぱり変なことしてるんだー」
叢崎未和:「ちょっとだけだよぅ」
白塚 美弦:「ちょっとも『してる』に入るんだよ~」
月城 旭:「……私に毎日会うのが目的ってこと?」
叢崎未和:「じゃあそういう事にしましょう。究極的には」
叢崎未和:「貴女の友達になります、月城旭さん」
叢崎未和:ストーカーを間に挟んでいることを考えると、異常な宣言のような気もした。
月城 旭:「……」ひとつ、溜息をついて。
月城 旭:「君の事情は知らないけどさ」
叢崎未和:「教えたことはありますけどね」事も無げに言う。
月城 旭:「私、君とは普通に仲良くしたいと思ってるのさ」
叢崎未和:「? ええ。だいたい会った時は仲良くさせてもらってますね」
叢崎未和:旭さんは優しいからなぁ、と独り言ちる。
月城 旭:「うん、だから」
月城 旭:にわかに、表情から色が消えて
月城 旭:「あまりこんな状況で、いかにも怪しい言動はさ。避けてもらえると嬉しいかな」
月城 旭:「疑わなくちゃいけなくなる」
叢崎未和:「じゃ、これからは気をつけます」あっけらかんと答える。
叢崎未和:「…………今、疑われたって」こちらも、へらへらとした表情がまた、剣呑な色を帯びたものに変わる。
叢崎未和:「ここからずっと疑われたって、関係ない」
叢崎未和:「あなたは私を覚えている事は、できない────」
叢崎未和:どんどん言葉の勢いが弱くなっていく。
月城 旭:「そうだろうね」静かに、彼女の言葉を肯定する。
叢崎未和:「……だから」
叢崎未和:「でも、だからそこまでこぎつければ私の勝ちです。『友達になれ』ば」
叢崎未和:睨むような眼光のまま放たれた言葉が、不吉に響いた。



メイン:23 サブ:18





【Middle first half/月城霞】

GM:3手番目を獲得したのは、霞さんです。
GM:誰を指名しますか?
月城霞:日室さんを指名します。
GM:ではサブシーンは叢崎さん、白塚さん、旭さんになります。
月城霞:スネグラチカについて情報収集をします。
月城霞:5DX+4>=9
DoubleCross : (5DX10+4>=9) → 9[1,3,9,9,9]+4 → 13 → 成功

GM:他に情報収集する人はいますか?
月城 旭:謎の痕跡について調査します~
月城 旭:2dx+1>=9 うわさばなし
DoubleCross : (2DX10+1>=9) → 9[9,9]+1 → 10 → 成功

GM:では情報を開示します

・スネグラチカについて
“スネグラチカ”はUGNに災害指定を受けた凶悪なジャームだが、その情報は極めて少ない。
世界各地に何の前触れも無く現れ、都市一つを丸ごと喰らって消える。住民は消え、後には破壊された廃墟だけが残る。それが“スネグラチカ”の痕跡だ。
その存在自体は数年前から、今の君達と同じように囚われたオーヴァード達による手記などによって判明しているが、未だ討伐には至っていない。
“スネグラチカ”は普段は実体の無い存在として潜伏しており、街を襲う際のみ一時的に実体化するものと見られている。故にUGNでもまともな調査が出来ていないのが現状だ。
これまでの報告によると、街の隔離から“スネグラチカ”が実体化するまでの猶予はきっかり1ヶ月。その際に討伐できなければ、君達もこれまでの犠牲者と同じように死ぬことになるだろう。


・謎の痕跡
バス停や駅、外周部の道路など、街のそこかしこに、“スネグラチカ”襲撃時のものではない、新しい破壊痕を見つける。
何か尖ったもので抉り、貫かれたような痕跡。例えるなら鋭い槍のような。
鋼鉄やコンクリートなども容易に破壊されたようであり、少なくとも常人によるものではないことは確かだ。
君達以外に何者かが街にいる。あるいは、君達の内に裏切者がいると考えられるかもしれない。





日室 晴陽:何の変哲もない住宅街。その中に混ざって建つマンションの、三回目の端の部屋。
日室 晴陽:普段は空き家のように扱われているその部屋は、UGNによって確保されたセーフハウスの一つだ。
日室 晴陽:そのドアの前に立つ晴陽の手にはビニール袋。情報共有を兼ねた差し入れのために訪れた。
日室 晴陽:無事発掘できたPCを使い、霞が情報を調査しているはず。
日室 晴陽:「霞ー、来たよー?」 支給されてる合いかぎで上がり込み声をかける。
月城霞:「……」
月城霞:ぼんやりと目を向ける。カバーが外された剥き出しのPC。発掘できたHDDからデータを読み込んでいる。
月城霞:「……日室」
月城霞:どことなく憔悴した様子で口を開く。
日室 晴陽:「お疲れー。コンビニ寄ってお菓子買ってきたし、ちょっと休憩して……」
日室 晴陽:「……なんかわかった?」
月城霞:「これ、見て」
月城霞:椅子を引き、PCの画面を見せる。
月城霞:そこにあるのは“スネグラチカ”に関する資料だ。
日室 晴陽:ひょいと後ろからのぞき込む。
月城霞:「……想像以上の相手だった」
月城霞:「こんな小さな街よりも、大勢オーヴァードがいる都市も……いくつも襲われてる」
月城霞:「でも、そのどれも……」
月城霞:「……」
月城霞:白い顔からはさらに血の気が引いている。
日室 晴陽:「……一か月かあ」
日室 晴陽:既に支部が襲われてから――町が封鎖されてから数日。つまり、リミット自体はあと一か月足らず。
月城霞:「……日室」
月城霞:「勝てると思う?」
日室 晴陽:「……そうだなあ」
日室 晴陽:一瞬、言葉に迷ってから。
日室 晴陽:「楽観的って言われるかもだけどさ。勝てるって思ってるよ」
日室 晴陽:「や、勝てるっていうかまず勝たなきゃいけないって思ってるんだけど、その上で」
日室 晴陽:「絶対勝てないなんて思わないし、勝ってやるって思ってる」
月城霞:「……」
月城霞:日室を見て。それから俯いて。
月城霞:「……」
月城霞:椅子の上で、膝を抱える。子供のように。行儀にうるさい普段の霞からは考えられない行動だ。
日室 晴陽:「えと、霞?」
月城霞:「……私は、日室とは違うから」
月城霞:「そんな風に……楽観的に見ることは出来ない」
月城霞:「現実的に、私たちの戦力と状況を考えて……」
月城霞:「……多分、勝てないと思う」
月城霞:掠れた声で口にする。
日室 晴陽:「……ん。まあね」
日室 晴陽:「そう思うのだっておかしくないよ」
月城霞:「……」「……昔」
月城霞:「私の姉がね」唐突に、そんなことを話しはじめる。
日室 晴陽:「うん」
月城霞:「能力の暴走で……記憶喪失になったことがあるの」
月城霞:「映画に出てくるような都合のいいものではなくて……」
月城霞:「本当に、全て忘れて。幼児のようになってしまった」
日室 晴陽:「……旭さんが」
月城霞:「……私は……姉が大好きだったわ」
月城霞:「私より大きくて、ものを知っていて、明るくて頼れる、大好きな姉が……」
月城霞:「何も知らない子供のようになってしまった、その時」
月城霞:「私は、本当に恐ろしかった」
日室 晴陽:「……」 無言のまま、先を促す。
月城霞:「私は、両親も居なくて、姉だけが頼りだったから」
月城霞:「この世で唯一信じられるものを、失くしたような気持ちだった」
月城霞:「その時にはもう……私は、知っていたの」
月城霞:「普通の家庭には守ってくれる両親がいて、みんな訓練なんてすることもなく、穏やかに、平和に暮らしているんだ、って」
月城霞:「それでも……それまでは良かったの。親なんていらないと思っていた」
月城霞:「だって……姉さんが、いたから」
月城霞:ひとつ息を吸って、吐く。
月城霞:「……その姉すら奪われそうになった時……」
月城霞:「私は、どうして自分ばかりがこんな理不尽を受けるのだろう、と思った」
月城霞:「……子供だったんだ」
日室 晴陽:「そんなの」
日室 晴陽:「当たり前じゃん。子供とか、大人とかナシで」
日室 晴陽:「悲しいのも悔しいのも、理不尽って思うのも。当たり前じゃんか」
月城霞:「……ううん」ゆるゆると力なくかぶりを振って。
月城霞:「私はね、日室」
月城霞:「こんな理不尽な苦しみを受けるには、何か理由がある筈だと思ったんだ」
日室 晴陽:「理由、って」
月城霞:「そうでなきゃ耐えられなかった。そうである筈だ、と思った」
月城霞:「でも……どこを探しても、両親が居ない理由も、姉が記憶を失くした理由も、分からなかった。見つからなかった。誰も教えてくれなかった」
月城霞:「大人には、ただ運が悪かった、と言われたわ。そういう悲しいこともあるんだ、って」
月城霞:「そんなこと……そんな理不尽が」
月城霞:「あっていい訳がないと思った」
月城霞:「……それでね、日室」
日室 晴陽:「……うん」
月城霞:「気付いたんだ。思ってしまったんだ、私は」
月城霞:「他の誰にも、どこを探しても理由が無いのなら……」
月城霞:「それは、全部」
月城霞:「……私のせいじゃないかって」
日室 晴陽:「……そんな、の」
日室 晴陽:「……」 言葉が出てこない。
月城霞:「……私がもっと、いい子だったら」
月城霞:「両親も姉も、こんな目に遭わずには済んだんじゃないかって」
月城霞:「そう思ったの」
月城霞:「だから……それからは必死にやってきた」
月城霞:「昔は、訓練なんて嫌いだった。チルドレンとしての成績は悪かったけど……」
月城霞:「それからは、施設でトップに立てるようにした。そうしなきゃいけないと思ったから」
月城霞:「いい人間であろうとしてきた。もう二度と、姉さんを……大事なものを、失わなくていいように、って」
月城霞:「……勿論、今は……そんなこと。本気で信じてるわけじゃないよ」
月城霞:「でも、もう……後戻り出来ないの」
月城霞:「私はもう、こういう生き方しか出来ない」
月城霞:自嘲するように言って、
月城霞:「……」
月城霞:「……だけど」
月城霞:「だけどさ」
月城霞:「ここまで必死にやってきて──」
月城霞:「何もかも捨てて、頑張ってきたのに……」
月城霞:「その結果が、これなの?」
月城霞:“スネグラチカ”の被害を示す画面に目をやる。
月城霞:それが示すのは、絶望。決して逃れられぬ死。
月城霞:「……私」
月城霞:「これ以上」
月城霞:「どうしたらいいのかな……日室」
月城霞:涙が流れることはない。口元には不器用な笑みが、死んだように張り付いている。
日室 晴陽:「……霞」
日室 晴陽:「……なんて言ったらいいか、分かんないんだけどさ」
日室 晴陽:一瞬だけ迷ってから、その頬に手を伸ばす。
日室 晴陽:流れていない涙を拭うように、そっと触れて。
日室 晴陽:「昔の霞にとってそれが支えだったんだとしても、やっぱり、霞は悪くないよ」
日室 晴陽:「昔も、今も、霞のせいなんてこと一個だってないしさ」
日室 晴陽:「むしろ、こんなに頑張ってきた霞が酷い目に合う方が間違ってるって思う」
日室 晴陽:「だからさ」
日室 晴陽:真っ直ぐに、その瞳を見据えて。
日室 晴陽:「霞を泣かせる理不尽全部、あたしがぶっ潰してやる」
月城霞:「……」
日室 晴陽:「スネグラチカだか何だか知んないけどさ。そんなものに、霞の大事なものは一個だってくれてやんない」
日室 晴陽:「全部ぶっ潰して、全部守って、そんでさ」
日室 晴陽:「霞が頑張ってきた分のご褒美に、飽きるまでスイーツ奢ってあげる」
月城霞:「……日室……」
月城霞:呆けたように呟いて。
月城霞:「……どうして、そこまで言ってくれるの」
月城霞:「それこそ……理由が分からないよ」
日室 晴陽:「言ったじゃん。あたしが、霞のこと好きだから」
日室 晴陽:「辛いことあったのに誰のことも責めないで、世界も何も恨まないで、自分のせいだなんて思いこんで」
日室 晴陽:「必死に頑張ってきた霞をすごくてかっこいいって思うから」
日室 晴陽:「そんな霞を守りたくて、泣かせたくなくて、笑ってほしいんだよ」
月城霞:「……」
月城霞:「……あれ」
月城霞:頬の濡れる感触に驚く。
月城霞:「あれ……違う、違うの」
月城霞:「ごめん日室、ごめん……」
月城霞:意思と無関係に溢れてくる雫を、必死に拭う。
日室 晴陽:「やぁっと泣いた」 へらりと表情を崩して。
日室 晴陽:「いーんだよ。言ったっしょ?弱音吐いてって」
日室 晴陽:「別に今だけに限んないでさ。昔のことだって、辛かったら辛かったって言って」
日室 晴陽:「聞かせてもらえる方が、あたしは嬉しい」
日室 晴陽:言いながら、こちらも彼女の涙を拭う。ネイルが刺さらないよう、そっと。
月城霞:「……」
月城霞:私は、日室が思うような人間じゃない。
月城霞:そう強く思ったが、彼女にそう言う事すら、失礼な気がした。
月城霞:「……日室は、優しいよね」
日室 晴陽:「えぇ、そう?」
日室 晴陽:「いやまあ、霞に優しくしてる気はあるけど……」
月城霞:「私だって、君のことは……とても好感の持てる人だと思っているけれど……」
月城霞:「でも、普通は……仕事上の相棒に、ここまでしてくれる人は少ないと思う」
月城霞:「君を尊敬するよ」
日室 晴陽:「……」 途端に、図星を突かれたような微妙な顔になる。
日室 晴陽:「……や、そこに関してはなんというか」
日室 晴陽:「尊敬されるアレじゃないっていうかなんつーか……」
月城霞:「謙遜しなくていい」
月城霞:「君は立派な人間だ」
日室 晴陽:「あ、待って。これダメな気がする。ほうっておいちゃダメなやつな気がする!」
日室 晴陽:「……あのですね」
月城霞:「……? うん」
日室 晴陽:「これ、マジで今言うつもりじゃなかったやつだから基本流すくらいの気で居てほしーんだけど」
月城霞:「うん」
日室 晴陽:「あたしが霞の好きなの、相棒だからってだけじゃないんだよね」
月城霞:「……?」
月城霞:きょとんとしている。
日室 晴陽:「分かんないよねぇ……。や、うん」
日室 晴陽:「違うな。今言ったらふつーに負担になるわ」
日室 晴陽:「ていうかあたしだって流石にこんななし崩しなのイヤだし……」 後半はらしくなくぼそぼそと。
月城霞:「え……何、何なの?」
月城霞:「ごめん……私、会話の読解力が無くて……」
月城霞:「何かあるなら、分かりやすく言ってほしい」
日室 晴陽:「えぇ……。待ってね、あたしもちょっと悩むから」
月城霞:「……」待ってねと言われたので待っている。
日室 晴陽:(どうしよ……流石に今話すのは無くない?でもこの戦いが終わったらとかフラグ臭いのもやだし)
日室 晴陽:「……多分ね。言ったら霞めちゃ混乱するんよ」
月城霞:「うん」
日室 晴陽:「や、今もまあまあしてるけど。その十倍は混乱すると思う」
日室 晴陽:「そんでね、今まあまあ状況シリアスな訳じゃん」
月城霞:「うん」
日室 晴陽:「その中で混乱させんの良くないなってあたしは思う訳よ」
月城霞:「そうか……まあ、日室が言うなら……」
日室 晴陽:「あ、待って。その上でさぁ」
日室 晴陽:「あたしもまあ、言いたいっちゃ言いたいのね。ちょい怖くもあるけど」
月城霞:「うん…………?」
日室 晴陽:「だから、えーと。死ぬほど混乱する心の覚悟みたいなのしといてくれない……?」
日室 晴陽:「その覚悟が出来たら話すから……」
月城霞:「そ、そうか……」こくりと頷く。
月城霞:「分かった。覚悟しておく」
日室 晴陽:「ん、お願い」
日室 晴陽:「この事件終わった後とかでもいーからね、全然」
日室 晴陽:「マジで混乱すると思うから……」
月城霞:「終わった後……か……」
月城霞:「……なら、終わらせなくちゃ」
日室 晴陽:「……そーだね」
日室 晴陽:「結局、そこに帰ってくる訳だ」
月城霞:「……幸い、まだ時間はある」
月城霞:「考えよう。訓練もできるし……作戦も練れる。準備も出来る」
月城霞:「うん……諦めるには、まだ……早いか」
日室 晴陽:「そうそう。良いね、調子出てきたじゃん」
日室 晴陽:「やれること全部やって、やらなきゃいけないことも全部やって」
日室 晴陽:「そんでスネグラチカやっつけてハッピーエンド!」
日室 晴陽:「そしたら、祝杯あげに五人でスイパラ行こ」
月城霞:朗らかに言う彼女を頼もしく、輝かしく、そして誇らしく思う。
月城霞:「……君のお陰だよ」
月城霞:少し笑って言って。
月城霞:「ありがとう、日室」
月城霞:「改めてよろしく」
日室 晴陽:「こっちこそよろしくだけど、一個だけ訂正」
日室 晴陽:「あたしのお陰じゃなくてさ。あたしにこう思わせてくれたのは霞だから」
日室 晴陽:「今まで頑張ってきた霞のお陰」
月城霞:「む……」
日室 晴陽:「もしくは、うん。半々ってことで」
月城霞:「そ……そうか……」
月城霞:「……うん。じゃあ……」
月城霞:「半々、かな」戸惑いながらも、こくりと頷いた。
日室 晴陽:「素直でよろしい」 ニッと快活に笑って。
日室 晴陽:(……いつか)
日室 晴陽:(霞が、もっと。私が頑張ってきたからだって胸張って笑えたらいーのにな)
日室 晴陽:少しだけ寂しいような悲しいような、そんな祈りを。胸の中だけで呟いた。



市街地 UGN桜花市支部跡地付近
月城 旭:正体不明の"スネグラチカ"──未だ姿の掴めぬそれの痕跡を求めて、宛のない探索が続く。
月城 旭:瓦礫の山の中から得られるだけの情報は、既にある程度取り出した。現在、月城霞らがPCからの情報抽出を試みている所だ。
月城 旭:残った3人の仕事は、その周辺の捜索である。どこかにあるはずの彼の足跡を求めて、市街地を歩いている。
月城 旭:「……しかし、不気味なもんだね」振り返れば、崩壊した瓦礫の山が見える通り。
月城 旭:人々はそれを気に留める事もなく、ただ通り過ぎていく。
叢崎未和:「車とかは避けて通ってくんですけどねぇ」
叢崎未和:それだけだ。通報が起きたり、土木作業車が訪れることはない。
白塚 美弦:「これも認識汚染によるものなのかな……」
月城 旭:「この人手だし。隠匿の仕事が減るのは、ありがたい……と言えなくもないけど」
叢崎未和:「ほんとに一つの能力なのかな」
叢崎未和:「や、変な表現でした、一つの敵……なんだろうか」
月城 旭:「後でテープくらいは貼っておくべきかな……ん?」
月城 旭:「まあ……あり得ない話じゃないねえ」
白塚 美弦:「そうだね」
月城 旭:「何分、正体の掴めていない相手だ。直接交戦した支部長ですら」
月城 旭:「どういう種があったっておかしくないし……その方が納得しやすいのは、そうかもね」
叢崎未和:「支部をぶっ壊したのと、空間を閉じ込める力と、非オーヴァードの認識をおかしくする力」
叢崎未和:「まだなんかあったら嫌だな……お」
月城 旭:「ん、どしたの?」
白塚 美弦:「ん?」
叢崎未和:夜である。ぼんやりと草の茂る道路の端を、唐突に踏み外す。
叢崎未和:「あたーー!」
叢崎未和:脛を打って泣きながら転がる。
叢崎未和:「なにこの、溝……」
月城 旭:「うわっ……と。大丈夫!?」
月城 旭:しゃがみ、手を貸してやりながら。
叢崎未和:どうやら自分は浅いところを踏んだらしいと気づいたのは、足を引き抜いた時だ。
叢崎未和:「わわわ。ありがとうございます」
叢崎未和:「…………すごい奇麗に削れてますね」
叢崎未和:円錐形にくりぬいたかのような破壊の痕だ。
白塚 美弦:「そうだね。抉れているというにはきれいすぎるような感じ」
月城 旭:(……素直に照れてる、でいいのかな)横目にその表情を探りつつ
月城 旭:「ん……そうだね。少なくとも、自然な風化とかではなさそう」
月城 旭:「交通事故……にしても、どういう事があったんだろうな。ちょっとイメージつかないや」
月城 旭:振り返る。自分達が来た道……支部の方を見やって
叢崎未和:「これはなんだろ。”スネグラチカ”なのか」
叢崎未和:むーん、と唸る。
叢崎未和:「なんか違う……気もしますね」
月城 旭:「少なくとも、あそこで起きた戦闘の余波……とは考えにくいだろうね」
叢崎未和:その視線を追って倒壊したビルを見る。
叢崎未和:「(あとでこういうの起こせるエージェントの人が亡くなってたりしないかは確認させて貰うとして……)」
叢崎未和:気付いてから。同様の痕は幾つも見つかった。
叢崎未和:どこを中心に……という様子ではない。街中に点々と同じ現象によるものであろう穴や溝がある。
叢崎未和:「………………」
白塚 美弦:「誰がなんのために、というのは置いといて」
白塚 美弦:「どういう手段でやったのかについて、なんとなく思ったんだけど」
月城 旭:「ふむ?」
白塚 美弦:「なんか鋭いもので穿った感じじゃないかな」
白塚 美弦:「例えば槍とか、そういう……」
月城 旭:「んー、そうねえ」
月城 旭:「私が槍とか持ったら作れそうな傷だね」しれっと言う。
叢崎未和:「さすがです」うんうんと頷く。
月城 旭:「ま、逆に言えば。普通の人が槍を振るっただけじゃ難しいと思うんだよね」
月城 旭:「こんなに綺麗に削るのはさ」
白塚 美弦:「武芸に通じている人とかかぁ」
叢崎未和:「だとして」
叢崎未和:「なにかと戦った痕なんですよね。何が起きてるんだろう……」
叢崎未和:「スネグラチカと人知れず戦う第三勢力とかだったらいいんですけどね」
叢崎未和:この期に及んでまだ第三者頼みなことを言う
月城 旭:「そんなものがいるなら、ぜひ協力願いたいけれど」
白塚 美弦:「うんうん」
白塚 美弦:「そうはいかない気もするけどね~」
月城 旭:「期待しない方がいいだろうね。今まで私達にコンタクトを取ってない時点で」
叢崎未和:「これだけそこらへんでやってるなら」
叢崎未和:「ワーディングでNシステムの監視してるとことか乗っ取って市内の道路見張るか」
叢崎未和:言ってから犯罪者っぽ過ぎるなと思い直したのか。
叢崎未和:「あ、やったことないですよ。ほんとほんと」
白塚 美弦:「未和ちゃん、犯罪者っぽい~」
叢崎未和:「なんだとこの~」
月城 旭:「あはは。それ、気を付けるって言ったよね」
月城 旭:口元はふにゃりとして、目だけが笑っていない。
叢崎未和:「あ! 覚えてくれてる!」
叢崎未和:「こんな短いスパンで会う事ほとんどなかったからな~。新鮮」
月城 旭:「……。もしかして、相当な数会ってるのかな。私と君は」
叢崎未和:「そんなには」
叢崎未和:特に誤魔化している様子はない。少なくとも彼女の認識ではそうなのだろう。
白塚 美弦:「ふーーん」あまり面白くなさそうな表情。
月城 旭:「っと、悪いね白塚さん」
月城 旭:「あまり横で聞いてて愉快な話題じゃないよな、そりゃ」
叢崎未和:「なんだ嫉妬か? 美弦と会ってる時間の方がずっと多いよ」
叢崎未和:冗談っぽく返す。
白塚 美弦:「そりゃあ、会ってる時間は多いかもだけど」
白塚 美弦:「能動的に会いにいくのと、学校だから会うのとまた違うんじゃないかなー」
叢崎未和:「…………言われてみれば」
白塚 美弦:「別にいいですけどー。嫉妬なんてしてませんけどー」
叢崎未和:「みっちーのうちに遊びに行ったらさ。嬉しい?」
叢崎未和:「ちなみにうちは絶対来ちゃダメね」
白塚 美弦:「え、嬉しいけど。……なんで行っちゃだめなの?」
白塚 美弦:「あ。旭さんの写真が部屋にびっしり貼ってあるんでしょ!」
月城 旭:「そうなの?」
叢崎未和:「おお! いや違いますよ! 私を何だと思ってるんですか」
叢崎未和:「しませんよぅ盗撮なんて…………」
白塚 美弦:「今ちょっとアリかもって考えたでしょ」
叢崎未和:「いやいや、それはなんか違うじゃん」なにか一線があるのだろう。
叢崎未和:「あ、でも一緒に取らせて貰った記念写真は飾ってありますよ」
叢崎未和:「ほら、これ半年くらい前の」
叢崎未和:どこかの観光地だろう。山をバックに2人でピースしている写真がカメラロールに納められている。
白塚 美弦:「ふーーーん」
月城 旭:「んん……あら、本当」
月城 旭:「私、君と一緒に旅行するような仲だったことあるのかな」
叢崎未和:「瞬間的には」嘘をついている様子はない。そうだったと信じている様子だ。
月城 旭:「……。私の行く先、調べて突き止めたんだ?」
叢崎未和:「そうとも言いますね」
白塚 美弦:「うわぁ」
月城 旭:「そりゃ、この瞬間はそうだったんだろうけど……」溜息。
叢崎未和:「ごめんね。みっちもこの事件が終わったら2人ででかけようね」
叢崎未和:「この事件が終わったら……」
叢崎未和:「……はぁ」
月城 旭:「いや、2人だけでって言うか……お友達もドン引きしてるからね?」
月城 旭:「はあ、あまりお説教なんてしたくないんだけどな……私、自分の言った事にほとんど責任持てないから」
白塚 美弦:「ドン引きだよドン引き~」
叢崎未和:「うっ……」
叢崎未和:「傷ついた……変になってからの私はみっちの感覚で常識を計ってるとこあるからな……」
白塚 美弦:「もはやそれ常識の感覚が自分にないってことじゃない?」
叢崎未和:「ヘンな自覚はあるんだよ~~」
叢崎未和:「うう……ごめんね……捨てないでね……」
叢崎未和:この期に及んであまり嫌われるとは思っていない調子だ。
白塚 美弦:「捨てるも何も、手に入れた覚えもありませんけど~」ふくれっ面だ。
叢崎未和:白塚美弦。ともすれば精神の平衡を失いかけている自分をこちら側に保ってくれている、唯一の。
月城 旭:「……。もう、はっきり聞いちゃうんだけど」
叢崎未和:「なんですか?」
月城 旭:「君がそういう風になったのって、私のせい?」
叢崎未和:「違います」
叢崎未和:きっぱりと返事を返す。どこか義務的な口調だった。
月城 旭:「……どうかな。君、自分の中で基準をずらして答える所があるからな」
白塚 美弦:「そういうとこだぞ!」
叢崎未和:「わあ~~ごめんよぅ。ごめんなさい。ところで敬語で返すかどうかで二回返事することになったりするのでこれからタメでいいですか?」
月城 旭:「私が君を助けた。命の恩人になった……それが理由じゃないなら」
月城 旭:「……」少し思案して。「何、ただ普通に惚れたの? 私に」
叢崎未和:「えっ」意表を突かれたように。
月城 旭:「いいよ、私は気にしないし。今はうるさく言う大人もいないしね」敬語のことに対して。
叢崎未和:「えっ、や、それは嬉しいですけど」
月城 旭:「えっ、て。ストーカーの動機って、他にあるの?」
叢崎未和:暫くフリーズしたように固まっていた。
叢崎未和:ただ、その表情だけが落ち着かず、赤くなったり青くなったりする。
白塚 美弦:つんつん、と頬を突く。
叢崎未和:「……はっ」
叢崎未和:「や、言った通り。友達になりたいってだけですよ」
叢崎未和:「正確に言うと」
月城 旭:「……」じとっとした目で君を見ている。
叢崎未和:「旭さんは今」
叢崎未和:どこからかホワイトボードとペンを取り出す。
叢崎未和:1dx 芸術:似顔絵
DoubleCross : (1DX10) → 8[8] → 8

叢崎未和:きゅっきゅっと美弦と自分の顔と舌の方に書き、まるでくくり、友達、と記す。
叢崎未和:雲を書いて、上に月城旭のデフォルメした顔をその上に。
叢崎未和:となりに「神」と書く。
叢崎未和:大真面目な顔だ。
月城 旭:「雲の上……?」
月城 旭:「いやいやいや」
月城 旭:「えっ?」
叢崎未和:「このポジションなので」
叢崎未和:「引きずり下ろします」
月城 旭:「おかしくない?」
白塚 美弦:「えぇ……」
月城 旭:「前提がおかしい……やろうとしてる事もわかんない……」
叢崎未和:「神は言いすぎたな……でも」
叢崎未和:「人を助けるだけ助ける癖に、私からのアプローチは全部覚えててくれないの」
叢崎未和:「なんだか人ってより、そういう現象とかメディアとかコンテンツを利用してるみたいで」
叢崎未和:「もっとインタラクティブ性が欲しいんですよね」
月城 旭:「……。私の"そういう態度"が理由ってこと?」
叢崎未和:「いや、良くしてはもらってるので」
叢崎未和:「これは友達道(ウェイ)を目指す途中で私に何かあっただけですので、旭さんに責任はないですよ」
叢崎未和:「何かの内訳は秘密です」
月城 旭:「いや……」
月城 旭:「やめときなよ、私なんて」
叢崎未和:「絶対やです」
白塚 美弦:「ゼッタイと来たか~」
月城 旭:「いいや。君は、今すぐその執念を捨てるべきだ」
叢崎未和:「逆になんでそういう言い方になるんですか? 不気味で怖いならそう言えばいいじゃないですか」概ね似た内容の事は言われている。
月城 旭:「私は……君の想いも、思い出も、何もかも忘れてしまうんだから」
叢崎未和:「私がクレーンゲームに失敗し続けて全財産溶かすタイプの人間に見えてるのかな……」
叢崎未和:「まぁそうだけど。私努力成功した事ないし」
叢崎未和:いじけた調子で道端の石ころを蹴る。
月城 旭:「そんなのに真面目に付き合うなんて……いや、言い方を変えようか」
月城 旭:「知ってるかい?」
叢崎未和:「はん」
月城 旭:「記憶が繋がってないのは、死んだってのとそう変わりないんだ」
月城 旭:何でもないことのように、そう口にする。
白塚 美弦:「……死と変わらない」
月城 旭:それは一度、自分が体験した事だ。全てが真っ新になって、何も分からない状態から人生をやり直した。
月城 旭:「……だからさ。"君を助けた月城旭"は、もうどこにもいない」
月城 旭:「ここにいる私は、別人なのさ」
月城 旭:「そういう感じで、納得してもらえないかな」
叢崎未和:「…………そうですね。本気でそんな事を考えてるなら」
叢崎未和:「旭さんがまだ生きてるのには理由がある……」ぶつぶつと思索を巡らせる。
叢崎未和:「霞さんか」納得したように、掌を叩く。
叢崎未和:「取材だなこれは……」
白塚 美弦:「悪そうな顔してる」
白塚 美弦:「これは悪質なストーカー」
月城 旭:「……君」耳敏くその呟きを──彼女の名を拾った。叢崎の肩を掴む。
月城 旭:無表情、を通り越してどこか怒気すら孕んだ眼。
叢崎未和:「お」
月城 旭:「霞ちゃんに何かしたら……いや」
月城 旭:「……これも、言っても喜ばせるだけかな」
叢崎未和:「しませんよ。信用ないな……」
叢崎未和:「私が目指してるのはハッピーエンドのみです」
月城 旭:「……。とにかく、あの子に何かするのは許さないから」
月城 旭:「信用……したかったんだけどね、私も」
月城 旭:はあ、と溜息を吐いて。
叢崎未和:「ハッピーエンドのみって言うのは」
叢崎未和:「あなたと私が仲良くなって終わり、じゃないですよ」
叢崎未和:「せめて生き残った5人、全員笑顔で……」自分に言い聞かせるように。
叢崎未和:「この街を解放するんだ……」
月城 旭:「……その、言うまでもないかもしれないけどさ」白塚さんに耳打ちする。
月城 旭:「私がいなくても、この子ちゃんと見ておいてあげてね」
白塚 美弦:「……?」
白塚 美弦:コクコクと頷く。
叢崎未和:ひそひそ話を交わす2人を見ながら。
叢崎未和:結局敬語のまんま話しちゃったな、と。そんなどうでもいい事を考えた。



メイン:44 サブ:32





【Middle first half/白塚美弦】

GM:4手番目を獲得したのは、白塚さんです。
GM:誰を指名しますか?
白塚 美弦:月城旭さんを指名します
月城 旭:私!
GM:では白塚さんのみ登場侵蝕をお願いします。
白塚 美弦:白塚 美弦の侵蝕率を1d10(→ 7)増加 (50 → 57)
GM:サブシーンは日室さん・叢崎さん・霞さんになります。



白塚 美弦:喫茶店・プルート。
白塚 美弦:あなたは白塚から呼び出され、ここに来ていた。
白塚 美弦:曰く、
白塚 美弦:「話したいことがある」、とのことだ。
白塚 美弦:~~
白塚 美弦:「こんにちはー!」
月城 旭:「やっほ、白塚さん」
月城 旭:片手を上げて応じつつ、君の向かいの席に腰かける。
白塚 美弦:「すみません、いきなり……」
白塚 美弦:すでにコーヒー(ミルクたっぷり)を注文して少し飲んでいる。
月城 旭:「や、あんまり気にしないで。調査も行き詰ってたとこだし」
月城 旭:ぱっとメニューを開いて、アイスティーを注文しつつ。
白塚 美弦:「あ、やー。調査とは全然関係ないことなんですけどね……」
月城 旭:「ん、そうなんだ」
白塚 美弦:「強いて言うなら、私達の連携がこれからとれていくかには関わっていくとは思いますけど」
白塚 美弦:「はい!えっと確認したいことと、相談したいことがありまして」
白塚 美弦:「確認したいことからいきます!」
月城 旭:「いいよ、聞かせて。答えられるかはわかんないけど」
白塚 美弦:「あの……未和ちゃんのことをどう思っていますか……?」
白塚 美弦:「印象とか、好感度……とか……」
月城 旭:「叢崎さんか」
月城 旭:「んんー……印象。そうだね」
月城 旭:「怪しいし、危なっかしい」
白塚 美弦:「ふむふむ……!」どこからか取り出したメモ帳に書き留めている。
白塚 美弦:「あ、報告するとかじゃないので、お気になさらず!」
月城 旭:「……私に恩義を感じてるのは、きっと本当のことなんだろうけど」
月城 旭:「その結果としてああいう振る舞いをするのは、褒められたもんじゃないかな。この状況では」
白塚 美弦:「……それは、そうかもしれないですね」
月城 旭:「ああ……別に、大丈夫だよ。あの子にも似たような事を言ったし……それと、霞ちゃん達にも」
月城 旭:「……"スネグラチカ"の実態は、未だ何一つ掴めていない。支部が壊滅したあの時……」
月城 旭:「最初に現場に居たのは、彼女だったと聞いたわ」
白塚 美弦:「そうらしいですね」
月城 旭:「『だから彼女が"スネグラチカ"だ』……なんて、言う訳じゃないけど」
月城 旭:「まあ、そういう疑いも持たなきゃいけなくなってくるってこと」
月城 旭:「……っと、どうもどうも」ウェイターが運んできたアイスティーを受け取り、ガムシロップを剥いて入れながら。
白塚 美弦:「なるほど、大体思っていた通りの反応が得られたので、こちらとしては安心しました!」
月城 旭:「……ふうん?」目を細めて君を見る。
白塚 美弦:「それで……あの……割と本題はこちらなんですけど……相談をお願いしたくてですね」
月城 旭:「君は、どうなのかな。ついでだから聞くだけだし、答えたくなかったら答えなくてもいいんだけど」ストローで氷をかき混ぜながら。
月城 旭:「あの子のやってる事、どう思ってるの……」「相談?」
白塚 美弦:「あ、その印象にも関わってくるんですけど……」
白塚 美弦:「やってることについては、うーん……」
白塚 美弦:「UGNの人員としては危なっかしい動きをしているなぁと思うんですけど」
月城 旭:ふんふんと頷きながら聞いている。
白塚 美弦:「個人的には旭さんに大きな感情を向けているような感じなのが、その……もやもやしまして」
白塚 美弦:「それで……あの!」
月城 旭:「大きな感情……」「ああ、相談だね。ごめんよ、遮っちゃって」
月城 旭:(……もやもやする、か)彼女の頬の色をじいと見つめながら考えている。
白塚 美弦:「未和ちゃんとけ、けけけけけけけけけ……ゲホっゴホっ……!」
白塚 美弦:「結婚!結婚するにはどうしたらいいと思いますか!」
月城 旭:「……」
白塚 美弦:「あわわわわ……言っちゃった……はわわわわわわわわわ/……ぐぇほっごほっ……!」
月城 旭:「結婚というと……あれかな」
月城 旭:「二人で家族になって、ずっと一緒に暮らすっていう……」
月城 旭:「そっちの方の結婚……で合ってる?」
月城 旭:自分が忘れている何らかの同音異義語である可能性を疑っている。
白塚 美弦:「ずっと一緒に……!?」
月城 旭:「えっ、違った……!?」
白塚 美弦:《声無き声》
白塚 美弦:「未和ちゃん……!今までありがとう……ずっと……ずっと一緒にいてくれて!」なぜか未和ちゃんを看取るイメージ映像が旭さんに共有される。
白塚 美弦:「うぅうううう……死なないで……未和ちゃん……ぐすっぐすっずび~~~~っ!」
白塚 美弦:「はっ!」
月城 旭:いきなり脳裏に浮かんだ詳細な幻影に、驚いてまばたきをしている。
月城 旭:「……。えっ、なにいまの」
白塚 美弦:「失礼しました……私の、能力の暴走です……」
月城 旭:「だ、大丈夫……?紙あるよ……」テーブルの上の紙ナプキンを差し出しつつ
月城 旭:「……そっか。大変だね」
白塚 美弦:「た、大変ですかね!」
月城 旭:「え?……だって、意図した訳じゃないんでしょ」
白塚 美弦:「あっ、そっち!」
月城 旭:「能力が思うようにならないもどかしさ、っていうの。私は分かってるつもり……えっ」
白塚 美弦:「てっきり未和ちゃんと美弦ちゃんでは釣り合わないよ……大変だね……ってことかと……」
月城 旭:「いやいやいや。そこまでひどいこと言わないし……っていうか卑下しすぎじゃない?」
白塚 美弦:「ううううううう……だって未和ちゃん私を恋愛対象にみてなさそうだし……」
月城 旭:「えっと、じゃあ……悩みって言うのは、それ?」
月城 旭:「どうしたら彼女と心を通わせられるのか、っていう」
白塚 美弦:「はい!それです!」
月城 旭:「それならまだ良かった。……結婚のための法的な手続きのことなんて聞かれたら、私はお手上げだったからね」
白塚 美弦:「それはそのときになったら国を移住してでも成し遂げますので!!!!」
月城 旭:「たくましいなあ」微笑ましそうに笑う。
月城 旭:「あ、でも言っとくけど」
白塚 美弦:「はい」
月城 旭:「私、恋愛経験豊富とかじゃ全然ないからね」
月城 旭:手をぶんぶん振って否定する動き。
白塚 美弦:「え、そうなんですか!」
月城 旭:「ちょっと大人だからって理由で選ばれたんだったら……なんかごめんという気持ちがあるね」
月城 旭:「いやあ、子供の頃からずっとチルドレンだしね……華やかな学校生活なんてのとは縁遠かったのさ」
月城 旭:「何より、記憶の問題があるからね。友達だってろくに作れやしない」人差し指で自分の頭をつつきながら言う。
白塚 美弦:「いえ、相談できるだけでもありがたいです!」
白塚 美弦:「未和ちゃんひっかけるくらいだから、もう魔性の女で引く手あまたなのかと……!」
月城 旭:「あはは……確かに知らず好かれてる事はあるのかもね。彼女みたいに」
月城 旭:「でもまあ、私の中には知見は残らない訳さ。相手のこと忘れちゃうんだから」
白塚 美弦:「そっか……そうですよね……」
白塚 美弦:「いえ!でも!」
白塚 美弦:「もう相談しちゃったし、頼りたいお姉さんな感じなのは間違いないし、話聞いてくれそうなので!」
白塚 美弦:「なんらかのアドバイスだけでも、もらいたいです!」
月城 旭:「あはは、ありがとう。そこまで言ってもらえて嬉しいよ……白塚さんは良い子だね」微笑みながら。
白塚 美弦:「良い子……良い子かぁ……うぇへへ……」
月城 旭:「そうだな、じゃあ。……好き、って伝えた事はある?」
白塚 美弦:「な、ないです……多分……」
月城 旭:「恋愛的な意味じゃなくても、こう……はっきり好意を表明する、っていうのかな」
月城 旭:「友達だからって、ただ惰性で一緒にいる関係じゃないんだよ~、って」
月城 旭:「とりあえずそのレベルで、自分が相手を好いてるよって事を擦り込んで……こう……」
月城 旭:「できる範囲で距離を縮めていくというか……」
白塚 美弦:「ふむふむ」またメモりだしている。
月城 旭:(……。どうしよう。私、ちゃんとしたこと言えてるか?これ)
月城 旭:(年下に呆れられてない……?失望させちゃってない?)表情には出さないが、内心やや焦っている。
白塚 美弦:「なるほど!」
白塚 美弦:「擦り込む……サブリミナル幻覚……? 持ち物全てにハートマークつきのわたしの名前をマーキングするか……?」ぶつぶつ……
白塚 美弦:「は!なんでもないです!
月城 旭:「後は……そうだなぁ……」髪を指でくるくるしながら。
月城 旭:「逆に、いま好きな子がいないかって聞いてみる……?友達同士って、そういうこと話すものらしいし」
月城 旭:「あと、ハートマーク付きの名前をマーキングするのは引かれるし犯罪的だからやめといたほうがいいと思うよ」耳ざとく拾っている。
白塚 美弦:「あ、ダメなんですね……確かに……」
白塚 美弦:「ふむふむ……もし居た場合はその好きな子を抹消するってことですね!賢い」メモメモ
月城 旭:「抹消……って。何するつもりなのかな、具体的に」
白塚 美弦:「え、もしかして抹消もダメですか!? 恋愛って難しいですね!」
月城 旭:「ダメ、じゃなくて」
月城 旭:「何するつもり?って聞いたんだけど」
白塚 美弦:「いえ、さすがに殺害はまずいし、戸籍登録の抹消は法律的に厳しいと思うし、」
白塚 美弦:「社会的に消すのではその人いなくならないので」
月城 旭:「……。君、思ってたより良い子じゃないな?」
月城 旭:依然として笑顔のままだが、どこか威圧するような眼差し。
白塚 美弦:「未和ちゃんの記憶を幻覚で混濁させて、その人の記憶を抹消しようかと……あ、ダメ……そうですね?」旭さんの表情を伺って語尾が小さくなる
月城 旭:「……人の記憶を抹消するってのはさ」
月城 旭:「その人の過去を……心を傷付けるって事だ」
月城 旭:「……この言い方で分かってくれると信じて言うけどさ。君、ほんとによく考えた方がいいよ。その力の使い方」
白塚 美弦:「……」
白塚 美弦:「ごめんなさい」
月城 旭:「ん、ちゃんと反省するように」
白塚 美弦:「私……未和ちゃんのことになると暴走しがちで……さすがに本当はダメなことはわかってるんですけど……」
月城 旭:「そうなんだ。ある意味、似てる……って言っていいのかな」自分に対する叢崎さんの態度を思い返しながら。
白塚 美弦:「え、そんなお似合いだなんて……えへへ……」
月城 旭:「……恋、って。やっぱりそういうものなの?」
月城 旭:ふと、そんな疑問が口をついたのは。
月城 旭:二人きりの世界で生きている私にとって、それはきっと本当の意味で理解し得ない感情なのだろうと思ったからだ。
白塚 美弦:「うーん」
白塚 美弦:「恋かどうかもわからないんです、実は」
白塚 美弦:「でも未和ちゃんと話してると気持ちがほっとするし、楽しいし」
白塚 美弦:「未和ちゃんと手が触れたりすると頭がふわふわして、顔が熱くなっちゃうし」
白塚 美弦:「未和ちゃんが他の女性に対して言及してたりすると、胸の中がもやもやするし」
白塚 美弦:「未和ちゃんとずっと一緒にいたいなって思うし」
白塚 美弦:「あと顔が大変いいので……」
白塚 美弦:「ずっと一緒にいるためには結婚がいいかな……と」
月城 旭:「……ずっと一緒にいたい、か」
白塚 美弦:「最悪結婚しなくてもいいんですけど、できたとしたら嬉しいと思う自分がいるのは確かなので……」
白塚 美弦:「そのために最大限努力はしたいんです……」
白塚 美弦:「それも」
白塚 美弦:「ダメですか?」
月城 旭:「……」少し思案して。
月城 旭:「まさか、ダメだとは言わないよ。ただ……」
月城 旭:「もし……全部伝えた上で、君の想いを拒まれたとき」
月城 旭:「君はどうする?」
白塚 美弦:「それは……」
白塚 美弦:「……」
月城 旭:「……や、意地悪な事を聞いちゃったな」
白塚 美弦:「大丈夫です」
白塚 美弦:「旭さんの懸念もわかります」
月城 旭:「今そんな事を言われても……迷いがあるのは、きっと当然だよ。ただ……」
白塚 美弦:「そのとき、未和ちゃんを傷つけるのは良くないし、私自身を傷つけるのも良くない。もちろん、その理由に干渉するのも良くない」
月城 旭:「……うん。悪いね、つい心配になっちゃった」苦笑する。
白塚 美弦:「なので、多分……」
白塚 美弦:「寝ます!」
月城 旭:「ふふっ。そりゃ健全でよろしい」
白塚 美弦:「いっぱい寝て、気分を切り替えます!」
白塚 美弦:「それでも気分が切り替わらないこともあると思うので」
白塚 美弦:「その時は、旭さんに泣きつきます!」
白塚 美弦:「例えこの相談を忘れていても」
白塚 美弦:「きっと事情を話したら慰めてくれると思うので」
白塚 美弦:「思いっきり甘えます!」
月城 旭:「あはは……かたじけないな」
月城 旭:「そうだね、うん。月城旭は、困ってる人の味方だから」
月城 旭:「どんどん頼ってくれていいよ。常識の範囲内でならね」
白塚 美弦:「知ってます」
白塚 美弦:「覚えてないでしょうけど」
白塚 美弦:「前に会った時」
白塚 美弦:「ボランティア初めたばっかりで」
白塚 美弦:「街案内はおろか、ツアーの人に話しかけることもろくにできなかった私に」
白塚 美弦:「察してさりげなく話しかけてくれたのは」
白塚 美弦:「旭さんですから」
月城 旭:「あら。ふふ……そうだったんだ」
月城 旭:「やるじゃん、昔の私」
白塚 美弦:「そうです……そうでした。私自身、今まで忘れかけてたんですけど」
白塚 美弦:「それが、頼った理由かもしれませんね……えへへ……」
白塚 美弦:「とにかく!」
白塚 美弦:「良いアドバイスと心配、優しさを頂いたので頑張ってみようと思います!」
月城 旭:「ん。応援しているよ」
白塚 美弦:「もちろん、平和的な方法で……」
月城 旭:「えらいえらい。あの子も、これくらい物分かりが良かったらな……」
月城 旭:ぼやきながら、残ったアイスティーを飲み干して。
月城 旭:にわかに天井を見上げる。思い浮かべるのは、自分記憶しているただ一人の顔。
月城 旭:(……気持ちがほっとする。楽しい)
月城 旭:(他の誰かと仲良くしてるともやもやする。触れあってると頬が熱くなる)
月城 旭:(顔がかわいい)
月城 旭:(……ずっと、一緒にいたい)
月城 旭:(……)
月城 旭:(……やっぱり、何も違わないよなあ)
白塚 美弦:「あの、最後に一言」
白塚 美弦:「またあえて良かったです。旭さんのこと、大好きです」屈託のない笑顔で言う。
白塚 美弦:「あ、もちろん!恋愛的な意味ではないですからね!聡明な旭さんなら分かると思いますが!」少し照れ気味に、そう伝えるのであった。
月城 旭:「……ふふ、大丈夫。分かってるよ」こちらも笑みを返す。
白塚 美弦:素敵な人 月城旭/◯大好き/心配をかけてしまった ロイス
月城 旭:白塚 美弦:〇応援/(秘匿)でロイス取得します。



叢崎未和:くしゃくしゃのシーツの中、目を醒ます。
叢崎未和:「…………うるさい」
叢崎未和:頭を押さえるようにしながら、いくつかセットしてあるアラームを止めていく。
叢崎未和:「……出来る……私は出来る……私は…………」
叢崎未和:ぶつぶつと唱えながら身を起こし、床に転がっている櫛を拾ったところで。
叢崎未和:チャイムの音。
叢崎未和:「(……朝っぱらからなに)」
叢崎未和:父が出るだろうと思っているので応対はしない。
叢崎(父):「おーい!」
叢崎未和:「…………」
叢崎未和:「やめてよすぐ怒鳴るみたいな声出すの……」
叢崎未和:聞こえないように呟きながら玄関へ向かう。
叢崎未和:「替わりまーっす。はい」
叢崎未和:入れ替わりに玄関口へ。
叢崎未和:「おはようございます。あ~……」
叢崎未和:「どうしました?」
月城霞:「……叢崎さん」
月城霞:玄関口に月城霞が立っている。眉間に皺を寄せ、僅かに睨むような目。
叢崎未和:「あ、はい」眠たげな表情で応じる。もっとも、普段と大差はない。「叢崎です」
叢崎未和:「月城さんと……日室さんもじゃん」
日室 晴陽:「や、みわっち。ごめんね~急に」
日室 晴陽:霞の後ろ。こちらは困ったような笑顔で立っている。
月城霞:「少し、お時間を頂けるかな」
叢崎未和:「……えと……うちん中の方がいい?」
叢崎未和:こちらも困ったような表情になる。
月城霞:「ええ。お願い出来るかな」
月城霞:堅い表情。どことなく威圧感を漂わせて。
叢崎未和:背後を振り返る。
叢崎未和:「友達入れていい~?」
叢崎(父):「なに!?」
叢崎未和:「友達! 入れて! いい!?」
叢崎未和:「……ごーめ。耳あんまよくないんだ」
月城霞:「お気になさらず」
叢崎(父):奥からいかめしい顔をした父親が出てくる「未和」
叢崎(父):「何かしたのか」こんな時間に人が訪ねてくる理由が分からない、という困惑と。
叢崎(父):それから迷惑そうな表情だった。
月城霞:「はい」頷く。
日室 晴陽:「や、すみませんねお父さん」
叢崎未和:「あーもう…………」うんざりした調子で《ワーディング》を行使する。
日室 晴陽:「ちょっとガッコの委員会のあれこれがあって……って」
月城霞:「お話を聞かせて……あっ」
叢崎未和:「多分どうにでもなるよな。今の桜花の状態なら」
叢崎未和:勝手にひとり合点して2人を招き入れる。
月城霞:「そういう問題じゃない!」父親に駆け寄って様子を確認。
月城霞:「軽はずみなワーディングの使用は控えるように講習を受けていないの?」
叢崎(父):あなたたちに興味を失ったように、出かけていこうとします。
叢崎未和:「ん……」
叢崎未和:「確かに、変に覚醒する人が増えちゃったらマズいね。ごめん」
叢崎未和:「閉鎖空間だとそういう危険も増えるって習ったしねぇ」
月城霞:「それ以外にも、どんな影響があるか分からないでしょう」
月城霞:「増してや、自分の家族に……」
月城霞:信じられないというような、非難の目を向けて。
日室 晴陽:「あー、霞。一回ストップ」
月城霞:「……」
日室 晴陽:「なんかこう、最初聞こうとしてたこと以外も聞いた方が良いことあるっぽいし」
日室 晴陽:「まずは落ち着いて話せる態勢作ろ。ね?」
日室 晴陽:霞だけでなく、両者に言い聞かせるような声音。
月城霞:「……。……そうね」眉間の皺を深めつつ頷く。
叢崎未和:「はは、ごめんね、本当に」
叢崎未和:困ったように笑いながら、和室に座布団を並べていく。
月城霞:「お邪魔します」丁寧に靴を揃えて家に上がる。
日室 晴陽:「お邪魔しまーす」 霞に続き家に上がる。
叢崎未和:座卓に人数分のコップを置き、冷蔵庫から出した麦茶を注ぐ。
叢崎未和:「おはよう。日室さん、霞さん。……多分」
叢崎未和:「あれだよね。私が迷惑を働いたから」
叢崎未和:右手の指が落ち着かず畳を擦っているが、のんびりした話し方は変わらない。
月城霞:「君」
月城霞:叢崎をじっと見つめて。
叢崎未和:「うん」
月城霞:「うちの姉にストーカー行為をしているそうね」
叢崎未和:「そうなんだ」
叢崎未和:すぐに認める。
日室 晴陽:「あ、マジなんだ……」 旭さんの言葉を疑っていた訳ではないが、こうもすんなり認められるとは。
月城霞:「…………」表情が一層険しくなる。
叢崎未和:「こんな大事な時期に、私なんかの取り調べに時間使わせちゃって申し訳ないな、ほんと……」
月城霞:「他人事のように言うわね」
叢崎未和:「や、他人事だとは思ってないけど」
月城霞:「個人へのストーキングは犯罪よ。レネゲイドとは関係なく」
叢崎未和:「…………」
月城霞:「プライバシーの侵害で、許されるべきでない卑劣な行い」
月城霞:「相手が気付いている、気付いていないに関係なく…… ……いえ」
月城霞:「相手が『覚えていない』としても、罪は罪よ」
叢崎未和:「……そうだね」
月城霞:「叢崎さん、私は」
月城霞:「姉の状況をいいことに、そんな行為を働くあなたに怒りを抱いている」決めつけるように言って
叢崎未和:「ふ、ふふ…………」
叢崎未和:「いい事に、か」
月城霞:「今すぐUGNでなく警察に通報したいところだけれど」
月城霞:「その前に、一応話を聞こうと思って来たの」
叢崎未和:「……警察に私をどうにかできるのかな」
叢崎未和:「現実に照らし合わせて罪かどうかなんて。私達にとっては絶対的な基準じゃない」
月城霞:「私達はオーヴァードである以前に人よ」
叢崎未和:「それは……悲しいけど、その通りだなぁ」
月城霞:「人としてその社会で暮らしている以上、その法は守るべきで、罪は裁かれるべき」
月城霞:「そうでなくなれば、本当の人でなしよ」
叢崎未和:「手配されたらまともに暮らしていけないし、バビルⅡ世の続編……なんだっけ、とかでも」
叢崎未和:「警察すごい強く描写されてたし、実際あれくらいのバランスだよね」
日室 晴陽:「まーまー、霞。一回落ち着いて」
月城霞:「落ち着いてなんていられない、この子は姉さんを……!」
日室 晴陽:「そこは分かるけどさ。ほら、みわっちの話聞きに来たんだし」
月城霞:「……」不承不承といった様子で黙る。
日室 晴陽:「みわっちもさ。ストーカーがヤバいこと、っていうかダメなことって認識はあんだよね?」
叢崎未和:「すごく穏健に間を取り持とうとしてくれるね……」
叢崎未和:「ううん…………いやこれ……でも……」しばらく眉間にしわを寄せて唸る。
叢崎未和:それから、ぱちん、と手を合わせる。
叢崎未和:「ごめん! 完全に色々ダメなんだけど」
叢崎未和:「沙汰、待ってくれないかな、”スネグラチカ”がなんとかなるまで……」
叢崎未和:「ストーカーがダメな事……というか、旭さんの迷惑なことはそろそろここ数日の、あいや」
叢崎未和:「骨身に染みてるから。ほら、協力させてほしいし、2人にもこんなみみっちい不審者のことにかかずらっててほしくないし」
叢崎未和:「旭さんに妙な事はしないよ」
叢崎未和:いけしゃあしゃあと言う。
月城霞:「……」
月城霞:不快な顔をする。今は一人でもオーヴァードの戦力が欲しいのは紛れもない事実だ。だがそれすら都合のいい言い逃れに思える。
日室 晴陽:「してる後なんだよなぁ……」 流石にかなり呆れた声を出しつつも。
叢崎未和:「支部が壊れてからはやってないよぅ」唇をとがらせる。
日室 晴陽:「うん、あの。一回その辺だまろっか」
叢崎未和:「はい……」
日室 晴陽:「逆撫でしすぎだかんね、マジで」
叢崎未和:「……」霞さんに視線を向ける。
叢崎未和:「あー……うん」
月城霞:「……」感情を押し殺すように深々と息を吐き出す。
月城霞:「……理由は?」
月城霞:「どうして姉にこんなことをするの」
月城霞:怒気の籠った声。納得できなければ今すぐ警察に行くとでも言わんばかりの。
日室 晴陽:「そこなんだけどさ」
日室 晴陽:「さっきから話したりしてて思ったんだけど。これ、みわっちだけの意志じゃなかったりする?」
日室 晴陽:「あ、いや違うな……みわっちだけの意志じゃないというか、みわっち以外の意志が介在してるっていうか……」
叢崎未和:す、と少しだけ視線が強くなる。
叢崎未和:「私の意志でやってた。理由はね」
叢崎未和:「覚えてて欲しいから、かな。どんな風にでも」
月城霞:「……」
叢崎未和:「(……危険人物としての地位を確立しちゃうのは、できればやりたくなかったけど)」
叢崎未和:「(もうすぐ滅んじゃうしなあ、桜花市)」
叢崎未和:「……いやいや」頭を振る。
叢崎未和:「事態解決のために頑張る、という気概だけはこの世の誰にも負けてない、つもりだから」
叢崎未和:「…………まあ、そんなに役に立たないと思うし、役に立てたくもないだろうけどねん」
叢崎未和:自嘲するように言って、麦茶をストローでちゅうちゅう啜る。
月城霞:その顔を見つめてしばらく黙り込んでから、口を開く。
月城霞:「ひとつ条件がある」
叢崎未和:「うん?」
月城霞:「今後、姉への同様のストーキング行為を一切やめること」
叢崎未和:「やめるよ」存外あっさりと、そう答える。
日室 晴陽:「……マジ?」
日室 晴陽:「ああいや、疑う訳じゃないんだけどさ」
日室 晴陽:「なんか随分あっさり言うなって」
叢崎未和:「日室さんが言ってたけど、精神が不安定になってるのはそうなのかも。これ犯罪者の言い訳そのものじゃん」
叢崎未和:「私はやめることになると思ってるけど」
日室 晴陽:「……うーん?」
叢崎未和:「その時になって約束を反故にしようとしたら……」
叢崎未和:「……」
叢崎未和:「殺して欲しい、って言おうと思ったんだけど、させたくないな、そんな事」
月城霞:「殺さないけど」
月城霞:「普通に通報するから」
叢崎未和:「……」
叢崎未和:「ああ、そうだよねそうそう! うん。それで」
叢崎未和:「そういう事で、できればよろしく」
月城霞:「……」瞑目して嘆息する。
叢崎未和:にはは、とばつの悪い笑みを浮かべる。
月城霞:「……姉に覚えていてほしいという気持ちが、本当だというなら」
月城霞:「ストーキングなんてせずに、正面から来ればいい」
月城霞:「客としてなら歓迎するわ」
叢崎未和:「それは」
叢崎未和:「優しすぎて心配になるよ。へへへ……」
叢崎未和:「2人とも、そうだ」
叢崎未和:「霞さんは本当に旭さんの事が大事なんだなぁ」
叢崎未和:べったりとうしろに手をついて天井を仰ぐ。
月城霞:「当然でしょう。妹だもの」
月城霞:「でもそれとは別に、イリーガルとしての講習も再度受けなさい」ぴしゃりと言う。
月城霞:「あなたのレネゲイドの扱い、不安だわ」
叢崎未和:「それはね、霞さん」
叢崎未和:「私も」
叢崎未和:攻撃能力のコントロール制度が甘い事を言っている。ズレた返し。
月城霞:「そう。それならいいわ」認識のズレに気付かず頷く。
叢崎未和:「(あぁ。別に、そうか、旭さんは霞さんと、霞さんは旭さんと)」
叢崎未和:「(それで穏便に成り立ってるなら、私なんかが頑張る必要もなかったのかなぁ)」
日室 晴陽:「……じゃあ」 どことなくズレた空気は察しつつも声を上げる。
日室 晴陽:「話もまとまったし、あたしらは一回お暇しますか」
月城霞:「ええ。叢崎さん、朝早くに失礼したわね」腰を上げる。
月城霞:「親御さんにもよろしくお伝えして」
叢崎未和:「微々たるもんよ。私のに比べりゃ」
日室 晴陽:「なんか聞かれてもあんま強硬手段取らんどいてあげてね」
日室 晴陽:「ふつーにあたしらが来た時間もアレだったし」
叢崎未和:よっこいしょ、と立ち上がって、2人を見送る。
叢崎未和:「うん、気をつけます」
月城霞:「それでは、また」
日室 晴陽:「またね~」
月城霞:見送られて叢崎家を出て、少し歩いたところで口を開く。
月城霞:「……ありがとう、日室」
日室 晴陽:「んーん。こっちこそ、部外者なのに口挟んでごめんね」
月城霞:「私だけでは、きっと冷静に話せなかった」実際冷静に話せてはいないのだが。
月城霞:「君がいてくれて良かったよ」
日室 晴陽:「ふふ、役に立てたんなら何より」
月城霞:安堵するように僅かに微笑する。
月城霞:「お礼に、今日の昼食は奢る」
月城霞:珍しく社会性のあることを言って。
月城霞:「君の好きなものでいい」
日室 晴陽:「あ、ラッキー!ならさ、昼休み学食いこーよ」
日室 晴陽:「B定がからあげなんだよねー」
日室 晴陽:そのまままるきり日常のような会話を交わしながら、学校へと歩いて行った。

叢崎未和:2人が出て行った後の叢崎家。
叢崎未和:座布団に顔から突っ伏して足をばたつかせる。
叢崎未和:「はぁ~~~~~~何やってるんだよ……」
叢崎未和:「めちゃくちゃだ……支離滅裂だ。旭さんにはストーカーだってバラしちゃうし。霞さんの前でもあんな風だし……」
叢崎未和:「デメリットだ……デメリットがでかくなってる……本当に」
叢崎未和:「本当に、頼むよ…………」
叢崎未和:と、呟いてから。
叢崎未和:「……またね、か」
叢崎未和:「どうしたもんかな……もう何回かバイク貸して貰わなきゃいけないんだよな」
叢崎未和:「んん……無理言ってパパ上に頼んでみるか」
叢崎未和:畳の上、ごろんと仰向けに転がる。
叢崎未和:先ほどまでの姿と違う部分がひとつ。
叢崎未和:そうした彼女には、左腕の肩から先が、なかった。



メイン:29 サブ:29





【Middle first half/叢崎未和】

GM:最後の手番を獲得したのは、叢崎さんです。
GM:誰を指名しますか?
叢崎未和:白塚さんを
白塚 美弦:わいわいー
GM:では叢崎さんのみ登場侵蝕をお願いします。
叢崎未和:叢崎未和の侵蝕率を1D10(→ 8)増加 (36 → 44)
GM:サブシーンは日室さん・旭さん・霞さんになります。



叢崎未和:──びちゃびちゃと、絶えず耳元で不快な雨音が鳴っている。
叢崎未和:厚い雲が空を覆っていた。
叢崎未和:放射状に、街灯のオレンジを映すひかりの線が降り注ぐ。雨粒が頬を打つ。
叢崎未和:「疲れたな……」
叢崎未和:緩慢に身を起こす。
叢崎未和:「外縁のループ。レネゲイドの影響に晒され続けての、潜在意識化ストレスによるジャーム化、ってとこ」
叢崎未和:「不謹慎だけど、出たのが……私の見回り区域で助かったな。今の状況なら、暫くは……」
叢崎未和:ぶる、と体が震える。血が随分と減っていた。
叢崎未和:「さむ……」
叢崎未和
叢崎未和:深夜だ。
叢崎未和:白塚美弦の家のチャイムがだしぬけに響いた。
叢崎未和:「車ないし……」
白塚 美弦:「どなたですか……?」小さく扉越しに声をかける。
叢崎未和:「今日はいない日だろ。あ」
叢崎未和:「や、こんばんみっちー。なんつって」
叢崎未和:扉越しに聞き慣れた声がする。
叢崎未和:憔悴している。ということがわかる。
白塚 美弦:「あ!こんばんみわみわ~。どうしたの……?」声音から様子を読みとって不安そうに言います。
白塚 美弦:そして扉を開けようとします。
叢崎未和:「あはは、ごめん、シャワー貸してくんない?」
叢崎未和:その向こうに居たのは彼女は、平時と様子が違っていた。
叢崎未和:貧血なのか、顔色が蒼白で、眼の下の隈は濃く、隻腕。
叢崎未和:髪の色も、抜け落ちたように白い。
白塚 美弦:「え、え……!?」
白塚 美弦:「未和……ちゃん……?」
叢崎未和:「そ。激レア。正気の未和だよ」
叢崎未和:水滴を垂らしながらふらふらと上がり込む。
白塚 美弦:「正気の未和ちゃん……って何?」
白塚 美弦:「わ。わわっ、どうぞお上がりください…………」
叢崎未和:「……ふふ」
叢崎未和:「教えたげるって言ったよね。みっちーには」
白塚 美弦:「秘密のこと?」
叢崎未和:「おうちに遊びに来てほしいとも聞いたし」
叢崎未和:「あと、めちゃめちゃ倒れそうなので」
叢崎未和:「良い機会だからお邪魔させて貰っちゃった」頷く。
白塚 美弦:「え!?救急車呼ぶ?」
叢崎未和:「あ、だめだめ。みっちーだけだよ。この状態を見せるのは」人さし指を立てて、そっと彼女の唇に当てる。
叢崎未和:「じゃ、お邪魔します」

叢崎未和:ほかほかと湯気を立て、幾分か血色の戻った姿でぺたんとカーペットに胡坐をかいている。
叢崎未和:「ありがと。そして、みっちーが越してきてからずっと発狂してたから、初めましてになるね」
叢崎未和:普段より明らかに疲弊しているが、その瞳に湛えた輝きの色がいつもより強いのは錯覚だろうか。
白塚 美弦:「え、発狂……?」
白塚 美弦:「よくわからないけど、はじめまして……」三指をついて深々と頭を下げる。だいぶ混乱している。
叢崎未和:「全部秘密にしときたかったんだけどね。そうもいかなくなっちゃったや」
叢崎未和:「一時的に収まってるけど、今の私はすごくジャーム化に近い状態で、12個くらいのストレスか精神変調に同時に晒されているのだ。呪い、って呼んでる」
白塚 美弦:「呪い……12個の精神変調……?」なんとかついていこうとしている。
叢崎未和:「『解放』のやつが厄介でね、あれは秘密を喋る。みるみるボロを出してしまった」
叢崎未和:「うん。UGNの衝動識別系統の数」
白塚 美弦:「飢餓とかのやつだ」
叢崎未和:「やたら食べるのもそのせいだね」胃の容量が増えるわけでもないので、大体は戻している。『彼女』の奢りをそうするわけにはいかなかったが。
叢崎未和:「そうだな、順を追って喋ろうか。そもそもなんでストーカーを始めたのかっていう話だった」
白塚 美弦:「うん……」
叢崎未和:「命を救われたって言ったけど、別にジャームに襲われる前から私は失意の底にいてね」
叢崎未和:「命まで全部諦めた所で助けて貰えたから、タイミングだなこれは。タイミングが悪かったんだねぇ、旭さんは」
叢崎未和:申し訳ない事をした、と笑う。
叢崎未和:「それで、偶然。本当に偶然再会して。恩返しがしたくなったんだ。彼女、記憶が曖昧でしょう?」
白塚 美弦:「そうだね……」記憶のことで怒られたことを思い出して、少しバツが悪い気持ち。
叢崎未和:「それで私の能力だ。この靄はね」
叢崎未和:しゅうしゅうと黒い霧が現れて、消える。
叢崎未和:「ほんとうは『共感』する力なんだ。腐らせてるみたいに見えるのは、最初にそれがすごい変な形で出て、それで固まっちゃっただけで……」
叢崎未和:「シンパシーって言ったでしょ」
叢崎未和:「みっちーと同じなんだよ。私の力は」
白塚 美弦:「そうなの……?」
叢崎未和:ころんと、カーペットに寝そべる。
叢崎未和:「そ」
叢崎未和:「これをすっっっごくうまく使いこなせるようになったらさ」
叢崎未和:「私が共感して覚えた旭さんの記憶を旭さんに投げ返すことで、また会うたびに思い出して貰える。最初はそんな気持ちだったんだけど」
叢崎未和:「しすぎちゃってね。共感。それが『呪い』の正体」
白塚 美弦:「一種の暴走状態にあるみたいなこと……?」
叢崎未和:「能力を拡張するために倒してきたジャームの衝動をなんとか噛み合わせて、表出するのを最低限にしてる感じで……」
叢崎未和:「いい表現かもね~。そう。UGNの子たちに知られたら、拘束されちゃいかねない」
叢崎未和:くるりと身を起して、そのまま白塚さんの膝に寝そべる。
叢崎未和:「秘密にしてね?」
叢崎未和:彼女がそうするのを疑っていないと言った調子で。
叢崎未和:上目遣いの微笑。
白塚 美弦:「……」
白塚 美弦:「それが、秘密の全部?」
叢崎未和:「本当はもうちょっとある、かな。聞きたい?」
白塚 美弦:「聞く」
叢崎未和:「『嫌悪』の呪いは、大事な人からの気持ちに対して鈍くなるように作用するんだ」
白塚 美弦:「それって……」
叢崎未和:「普段の私は単純なタームをずっと口にすることで『目的』を守ってるし、おかしくなってた未和がやたらみっちに触るのは、そうしないと本当におかしくなっちゃうからだけど」
叢崎未和:「今はこうしたくてこうしてるかな」
叢崎未和:「旭さんに対してああ作用するのは本当に勘弁してほしかったな~」
白塚 美弦:「そっか」
叢崎未和:うんうんと唸りながら。
叢崎未和:小さな背中に手を回して、寝間着に包まれたお腹に顔をうずめる。
叢崎未和:「……助けて」
叢崎未和:「辛い。何やってんだって思う。絶対バカ」
白塚 美弦:「……」
叢崎未和:「努力の方向音痴極まりまくってる」
叢崎未和:「今だけで良いんだ。今だけで…………」
白塚 美弦:「……………」
叢崎未和:「全部私が悪い。ごめんよ。ごめん……でも」
叢崎未和:「きみに慰めて欲しくて、きたんだ」
白塚 美弦:「バカ」
叢崎未和:びくり、と肩が震える。
白塚 美弦:「お互いに、バカだよ」
叢崎未和:「え…………」お互い。どういうことだろうか。
白塚 美弦:「こんなになるまで話さなかった未和ちゃんはバカ」
白塚 美弦:「こんなになるまで気づかなかった私もバカ」
白塚 美弦:「似ている……そう旭さんに言われたっけ」
叢崎未和:「気づかないのは……」
叢崎未和:「当たり前だよ。出会った時から……わたし、こうだったんだもん」
白塚 美弦:「それでも」
白塚 美弦:「気付けないのは悔しいよ」
叢崎未和:「う……」
白塚 美弦:「ヒントはいくつもあった気がするのに」
白塚 美弦:「気づかなかった」
叢崎未和:例えば、ほとんど左手を使わなかった事。
叢崎未和:剣道ができない理由。
叢崎未和:記憶・人格の混濁。常に眠そうなこと。などだろうか。
叢崎未和:「隠してたもん……ほんとに、”スネグラチカ”までは」
叢崎未和:「ほんとに頑張って隠してたんだ……これも、しなきゃよかったがんばりだなぁ」
叢崎未和:「ね、最後の秘密」
白塚 美弦:「ん?まだあるの?」
叢崎未和:膝を立てて、耳打ちする。
叢崎未和:▼秘話
叢崎未和:「なんて」
叢崎未和:「あー、全部いい感じになんとかなればいいのになぁ」
叢崎未和:「ねえみっちー」
白塚 美弦:「なに」
叢崎未和:「もう少し、甘えてていいかな」
白塚 美弦:「……」
叢崎未和:「もうすぐ私、いつもの私になっちゃうけど」
叢崎未和:「それまでは、さ……」
白塚 美弦:「だめ」
叢崎未和:「ひぅ」
白塚 美弦:「……なんて、言えたら良かったんだけど」
白塚 美弦:「私には無理みたい」
叢崎未和:「…………」
叢崎未和:「うー…………」
叢崎未和:いつの間にやら赤く腫らした目許で、弱弱しく君を睨み。
叢崎未和:「ありがとう……ほんとにさ……」
叢崎未和:「ほんとによかったって思ってるんだ。みっちーがいて」
白塚 美弦:「そうなんだ」
叢崎未和:片方残った腕だけで、おずおずと抱き締める。
叢崎未和:「そうなんだよ。こんなどうしようもない私の事をさ」
叢崎未和:「なんでか、好きになってくれて。友達でいてくれて。それってさ、すごく勇気が出るんだぜ」
叢崎未和:強い力ではない。だが、いつまでも離す気配がない。
白塚 美弦:「私は」
白塚 美弦:「私は……」
叢崎未和:その勇気を、もっとカッコよく使えていればよかった。
叢崎未和:正しい事に使っていればよかったんだ。私は最悪の友達だ。
白塚 美弦:「……あーあ、私も、呪い、かかっちゃったのかな」
白塚 美弦:「感情が、おかしいや」
白塚 美弦:「悲しくて、嬉しくて、もうごっちゃ混ぜ」
叢崎未和:…「みっち……?」
叢崎未和:「そ、それはまずい」
叢崎未和:「きっと私が居たせいだ……私が……同じ力だって、知ってたのに……」
叢崎未和:目に見えて狼狽え始める。
白塚 美弦:「そうだよ。未和ちゃんのせい」
白塚 美弦:「未和ちゃんが、こんな悲しいことを打ち明けるから悲しくて」
叢崎未和:「う……」
白塚 美弦:「未和ちゃんが、こんな大変なことを私にだけ打ち明けるから嬉しくて」
白塚 美弦:「未和ちゃんが、甘えてくれるのが嬉しくて」
白塚 美弦:「未和ちゃんに対して、甘えさせることくらいしかできないのが、悲しい」
叢崎未和:思っていたのとは違った。だけれど。安堵というには遠くて。
叢崎未和:ぼろぼろと泣き始める。
叢崎未和:「ごめんよ……ごめんよみっち……ごめんよ…………」
白塚 美弦:「バカ」
白塚 美弦:「泣きたいのはこっちだよ」
白塚 美弦:「我慢してたのに……未和ちゃんだけ……ずるいよ……」
叢崎未和:「ごべんよぅ……」
叢崎未和:ロイスを取得します。白塚美弦。親愛〇/罪悪感
叢崎未和:もう一つ。
叢崎未和:白塚美弦 執着/恐怖〇 彼女が自分のようになってしまったら……という恐怖です。
叢崎未和:「私……何のために何していいのか、もう全然わからない」
叢崎未和:「そうなるのが分かってたから、いつもの私は、バカの一つ覚えみたいに熱い女、熱い女ってさ。きっとまたそうなるよ」
叢崎未和:「ウザくて悪いや」
叢崎未和:「でも、もうちょっと付き合って。私さ」
叢崎未和:「嬉しかった。『未和ちゃんいるもん』って言って貰えて」
白塚 美弦:「……そう」
白塚 美弦:「じゃあ」
白塚 美弦:「じゃあ、お願いしていい?」
叢崎未和:「なぁに?」
叢崎未和:肩に回していた手をほどいて、彼女のくりくりとした瞳を見る。
叢崎未和:「お願い?」
叢崎未和:大抵の事は聞く気で、そう返す。
白塚 美弦:「なんのためになにしていいかわからないっての、目的を」
白塚 美弦:「忘れないで」
白塚 美弦:「恩返し、するんでしょ」
白塚 美弦:「旭さんに」
白塚 美弦:「私は」
白塚 美弦:「私はきっと」
白塚 美弦:「そういう未和ちゃんに」
白塚 美弦:「恋したんだから」
白塚 美弦:そう、ようやく自覚した。これは呪いだ。
白塚 美弦:心に深く根付いて消すことの出来ない思い。
白塚 美弦:恋。
白塚 美弦:だと。
叢崎未和:はじめ。必要ないよ、と返そうとした。きっと、彼女は──と。
叢崎未和:今の白塚美弦にその言葉を返すのは、冒涜であるような気がして。次の瞬間には。
叢崎未和:そう言われていた。
叢崎未和:「──────」
叢崎未和:生来、そうであるのだろう。眠たげな瞼を。しかし今はめいっぱいに見開いて。
白塚 美弦:「返事は、聞かない」
白塚 美弦:「今は聞かない」そういって、唇に人差し指を押し付けて。
叢崎未和:「っ、!」
叢崎未和:びくりと硬直する。それだけで指一本動かせない。
叢崎未和:「(そう)」
叢崎未和:「(だったんだ)」
白塚 美弦:「今回の事件が片付いて、恩返しをできて、そしたら返事聞くから」
白塚 美弦:「それまで返事を聞いてあげない」
叢崎未和:目を白黒させながら、こくこくと頷く。
白塚 美弦:「それまでに死んだり、自分を見失ったら」
白塚 美弦:「あのとき」
白塚 美弦:「言われた言葉の返事を返せなかった」
白塚 美弦:「そう悔やんで消えることになるんだから」
白塚 美弦:そう、”呪い”を刻んで。
白塚 美弦:「悔しい思いして、消えたくなかったら」
白塚 美弦:「頑張って、返事を聞かせて」
白塚 美弦:「それが、私のお願い」
叢崎未和:「みっち………………」
叢崎未和:もしかしたら、とは思っていた。正確には、正気である瞬間に脳裏を過る程度だったが。
叢崎未和:そんな事、何のクッションにもならないくらい、そのことばは切実で、誇り高く、重要なものに思えた。
白塚 美弦:「あと、これは先に謝るんだけど、ごめんね」
白塚 美弦:「少しだけ、私も慰めてほしくて」
白塚 美弦:そういって。
白塚 美弦:叢崎未和の唇を奪う。
白塚 美弦:《マーキング》……ではない。ではないが。刻みつけるように。
白塚 美弦:優しく、努めて優しく。
白塚 美弦:でも、忘れられないように、しっかりと。
叢崎未和:「(────あ)」
叢崎未和:「(ぷにぷにして、やわらかい)」
叢崎未和:そんな、脳細胞を一切働かせていないような思考でいっぱいいっぱいになって。
叢崎未和:気付いたらそれは終わっていた。呆然と、右手人さし指で唇をなぞる。
白塚 美弦:「……ごめんね」離し、元の姿勢に戻る。
白塚 美弦:「結局強引になっちゃった」
白塚 美弦:「能力は使わなかったけど」
白塚 美弦:「平和的じゃないね」
叢崎未和:「……今の私が呪われちゃったら、正気に戻れなくなっちゃうじゃん」
叢崎未和:「”スネグラチカ”。絶対、なんとかしなきゃだ」
白塚 美弦:照れたように、いたずらっぽく笑って、そして、一筋の涙をこぼした。
白塚 美弦:大事な人 叢崎未和/◯恋慕/不安 でロイスをとります。



月城家
月城霞:“スネグラチカ”に関する調査は手詰まりを迎えつつあった。
月城霞:支部から回収したHDDに残されたデータ、通常回線でアクセスできる範囲の情報、
月城霞:様々な方向から洗い出しを行っているが、成果は芳しくなかった。
月城霞:「……駄目ね」
月城霞:ブルーライトカットの眼鏡を外し、瞼を指の腹で押さえる。
月城 旭:「んんん。こっちも、さっぱりかなあ……これは」
月城 旭:ソファの上で膝を抱えて資料を捲っている。
日室 晴陽:「手詰まりって感じですねー。支部長も確か情報少ないって言ってたし」
日室 晴陽:「もう調べられること全部調べつくしたのかも」
日室 晴陽:グイッと一度背伸びした後、資料をどかした机の上に軽く突っ伏す。
月城霞:「現状ではそう言うしか無さそうね」
月城 旭:「何か別のアプローチか……んんーんんんん」
月城霞:「ひとまず、しばらく別の方向に目を向けましょうか。市内に利用できる物資や装備があるか確認したい」
月城 旭:「……それも、そうだね。どういう戦いになるかわかんないし」
月城霞:「火薬や銃器があればいいのだけれど。この辺りには駐屯地の類も無いし、難しいかな……」
日室 晴陽:「確かに、支部にあったやつは軒並みダメになっちゃったし」
日室 晴陽:「どっかから調達するしかないんよね。警察はダメだろーしなあ……」
月城 旭:「私も、幾つか替えの刀があると安心できるかなぁ。や、折れるようなヘタな斬り方するつもりはないけどさ」
月城霞:「こればかりは足で探すしかないでしょうね。間に合えばいいけれど……」言って、ふと壁の時計を見る。
月城霞:「……もうこんな時間。少し休憩を取りましょうか」
月城霞:「軽く食事でも作りましょう」そう言って立ち上がる。
日室 晴陽:「お、霞の手料理?ラッキー」
月城 旭:「あっ、やった。霞ちゃんのごはん」
月城霞:「そんなに期待されると困るけど」少し笑って。
月城霞:「それじゃあ、少し待っていてね」
月城霞:そうして部屋を出てキッチンへと向かっていく。
月城 旭:「はあい」返事をして、手にしていた書類を片付ける。
日室 晴陽:「はいはーい」 言いながらこちらも手の届く範囲の書類をまとめて机の上を空ける。
日室 晴陽:「……そういや、あたしら二人っていう感じ初めてですね」
日室 晴陽:何気なく旭さんへ声をかける。事件以前にも顔は何度か合わせたものの、交わした会話は少ない。
月城 旭:「お、そうなんだ」
月城 旭:どこか他人事のように返事をして。
日室 晴陽:「ああいや、事件が起きてからは初めてっていうか?一応会ったこと自体はありますけど」
日室 晴陽:「それもあんま長々とって感じではないですし。なんか新鮮」
月城 旭:「そっか。……ううん、そしたら」ちらと、台所の方に視線をやりつつ。
月城 旭:少し思案してから口を開く。
月城 旭:「……日室さんは、平気?」
日室 晴陽:「……何がです?」 きょとんと首を傾げる。
月城 旭:「……や、色々あったでしょ。支部の人達も、みんないなくなっちゃって」
月城 旭:「霞ちゃんの前だと、弱音とかも吐きづらいだろうし……って、思ったんだけど」
月城 旭:「いや、余計なお節介だったらごめんよ」
月城 旭:指で髪をといて、君の眼をじっと見ながら言う。
日室 晴陽:「あ、なるほど……。や、全然おせっかいとかじゃないです、ありがとうございます」
日室 晴陽:「ただまあ、なんだろ。確かに色々あったし、これからも色々あるけど」
日室 晴陽:「色々あるからこそ立ち止まってらんないなというか……頑張んないとなって」
月城 旭:「……。強い子だなあ」目を細める。
日室 晴陽:「ですかねぇ。なんか、みわっち達にも言われた気がするな」
月城 旭:「そうすべきと分かってても……そういう風に心の向きを定めるのって、なかなかできる事じゃないからね」
月城 旭:「"霞ちゃんに頼もしい相棒の子がいる"……って部分までは、ずっと覚えてたんだけど」
月城 旭:「覚え違いじゃなかったみたいだね」嬉しそうに微笑む。
日室 晴陽:「へへ。次は名前も覚えてもらうのを目指そっかな」
日室 晴陽:若干照れ臭そうに笑って。
月城 旭:「ふふ。それは……期待に応えられるように頑張らなきゃだ」
月城 旭:どこか空々しさを感じながらも、笑顔でそう口にする。
日室 晴陽:「……これ、あんま軽々しく聞くことじゃないなって思ってたんですけど」
月城 旭:「ん。どうしたの?」
日室 晴陽:「実際のとこ、どのくらいまで覚えてられるんです?」
月城 旭:「……そうだなあ」遠い目をして。
月城 旭:「これはとても重要、って頭に叩き込んだこと……たとえば、今回だと"スネグラチカ"って名前だとかか」
月城 旭:「これが、よく保って3日くらい」懐から黒いノートを取り出す。「だから、定期的に覚え直さなきゃいけない」
日室 晴陽:「なるほど……」
月城 旭:「それと……覚えておく情報の量が増えるとその分、靄がかかるのも速くなる」
月城 旭:「ここに記してあるのは、本当に"いま必要なだけ"の分さ」
月城 旭:「勿論、どうでもいいと認識しているもの……取り留めもない情報は、もっと早く抜けていく」
月城 旭:机の上の書類の一枚を手に取る。「今読んでたこれとかね」
日室 晴陽:「……」 元々は、5人での連携に支障が出ないかが心配で投げた質問だったのだけど。
日室 晴陽:「霞のこと、マジで大事なんですね」 話を聞いて真っ先に浮かんだのはそのことだった。
月城 旭:「そりゃね。妹だもん」
月城 旭:「……いや、それもちょっと違うか」言ってから違和感を覚えたのか、付け足して。
日室 晴陽:「違うんです?」
月城 旭:「うーんと」
月城 旭:「私、6歳の時に今みたいになったんだよね」
月城 旭:「能力が悪い感じに暴走しちゃってさ……記憶が一度、全部吹っ飛んだの」
月城 旭:「私自身の事も、霞ちゃんの事も」
月城 旭:「過去をまるごと失って……自分が、何だったのかも分からなくなって」
月城 旭:「そうなると、何にもわからないんだよ」
月城 旭:「周りの善意、心配の声も……差し伸べてくれる手も」
月城 旭:「どれも、意味がわからない。……だって、言葉が分からないから」
月城 旭:「ここが何処なのかも分からない。私自身が、誰なのかも」
月城 旭:「この世界が、何のためにあって」
月城 旭:「……私が、どうして生きてるのかも」
日室 晴陽:「……どうして、ってそんな」
月城 旭:「私。生まれたての赤ちゃんが泣いて喚くのは、きっとそういう理由だと思うんだよね」
月城 旭:「何もかもが目に入らない。ただただ、現実が恐ろしい。全部忘れるって言うのは、そういう感じで」
月城 旭:「……忘れたくても、忘れられない」
月城 旭:「ああ、いや」ふと、暗い顔をしていた自分に気付いて。
月城 旭:「話が逸れちゃったな……まあ、つまりさ」笑みを作りながら言う。
月城 旭:「私が、そんな状態だった時にね」
月城 旭:「私の事を、呼んでくれた子がいたのさ」
月城 旭:──“お姉ちゃん”、と
月城 旭:「こっちを不安そうに見上げて……今にも叫び出したくなるような想いを、ぐっと堪えている。そんな女の子が」
月城 旭:「まあ……その時の私には。その言葉の意味さえも、分からなかったんだけど」苦笑して。
月城 旭:「気が付くと、私は……その子を抱き寄せて、髪を撫でていた」
月城 旭:「どうしてか……そうしなきゃいけない、と思ったから」
月城 旭:「この子は、私を必要としているんだって分かった」
月城 旭:「私は……ちゃんと、誰かに求められてるんだと思えた」
月城 旭:「自分がここにいる理由が分からなくて、どうしようもなくて、八方塞がりで……何もかもが怖かった私にとって」
月城 旭:「それは、何よりの救いだったのさ」
日室 晴陽:「……なんつーか」
日室 晴陽:「あたし、部外者ですし。一人っ子だからマジで何か分かるみたいなこと言えないんですけど」
日室 晴陽:「それでもこう、そのときの旭さんに、霞と旭さんだから通じるものがあったのすごいなって思うし」
日室 晴陽:「霞のお姉さんが旭さんで、旭さんの妹が霞で良かったなって思ってます。今」
日室 晴陽:「……や、めちゃくちゃアレだなこの発言。どこ目線だ」
日室 晴陽:「ごめんなさい……」
月城 旭:「あはは、大丈夫大丈夫。私もそう思ってる……っていうか」
月城 旭:「いきなりこんな話ぶつけて、反応求めろって方も酷だよ。悪い事しちゃったのは私の方だ」
月城 旭:ごめんね、と軽く手を合わせながら言う。
日室 晴陽:「いやあ、先にこっち方面に話題振ったのあたしですし。こっちこそホントすみません」
日室 晴陽:「それに、うん。聞けて良かったなーって思っちゃってるんで、謝んないでください」
月城 旭:「ふふ。ありがとね」
日室 晴陽:「その上で、もう一個。勝手なこと言うんですけど」
月城 旭:「うん? 何かな」
日室 晴陽:「霞にとって旭さんが必要なのは勿論、今もですけど」
日室 晴陽:「あたしたち皆、旭さんが必要ですよ」
月城 旭:「……おっと。急にどうしたのさ」
月城 旭:「いや、もちろん嬉しいけど……あっ、霞ちゃん以外はどうでもいいみたいに聞こえちゃった?それは申し訳ないな……」
日室 晴陽:「や、なんか」
日室 晴陽:「スネグラチカがあれこれみたいなの抜きにしても、旭さんが今ここに居てくれるのすごい心強いですし」
日室 晴陽:「主語勝手に広げちゃったけど、こう。しろっちとか、……みわっちに関してはまあアレだけど……」
日室 晴陽:「霞だけじゃない、みたいな。や、どうでもいいと思われてるとは感じませんでした」
日室 晴陽:「単に、そうだな。シンプルにあたしも旭さんに居てほしいなって思ったんで」
日室 晴陽:「こういうの、言っとくべきかなと」
月城 旭:『霞ちゃん以外の事はどうでもいい』……霞本人に伝えたように、突き詰めればそれは旭自身にとっての事実だ。強く否定もできないのだけど。
月城 旭:「居てほしい……か」
月城 旭:自分の想いとしては、むしろ逆だった。
月城 旭:自分の事を一方的に知っている相手の傍に居つくのは、あまりにも不均衡で、避けるべきだと感じている。
月城 旭:旅を繰り返す理由の一つも、そこにある。初めて行く場所で出逢う人は、みな初対面だ。
月城 旭:……初対面の時だけは、皆。私と同じ時間を過ごしていられる。
月城 旭:月城旭は、少なからずその事実に心地よさを覚えている。……翻せば、一方的に思い出を重ねられている関係は苦しいと。
月城 旭:「そっか、ふふ。嬉しいよ」果たして、それをここで顔に出す事もない。
月城 旭:柔らかな笑みを浮かべて、そう言い放った。
日室 晴陽:「です?いや、ホントにあたしが勝手に思ったことなんで」
日室 晴陽:「なんか、流してともなんとも言いづらいアレなんですけど……」
月城 旭:「ええ? こんな事で嘘なんか吐かないよ」
月城 旭:罪悪感を覚えつつも、そう言葉を重ねる。
日室 晴陽:「ん。なら、良かったです」
日室 晴陽:若干眉は下がりつつも笑みを浮かべて。
月城 旭:(……霞ちゃんだけなんだ)
月城 旭:(本当の意味で、私と……ずっと、同じ時間を生きていられるのは)
月城霞:その時、扉の音と共に霞が戻ってくる。手には人数分の皿とお茶のボトル。
月城霞:「お待たせしました…… ……うん?」
月城霞:ツナと夏野菜の鮮やかなパスタを机に並べつつ、二人を見る。
月城霞:「何を話していたの?」
月城 旭:「あっ、ごはんできた?手洗って来なくちゃ」
日室 晴陽:「んー?世間話」
月城 旭:「ん? そうそう、そんな感じ!」
日室 晴陽:「ていうか、めちゃウマそうじゃん。霞、料理上手いね」
月城霞:「そう?」疑問に思ったふうでも無く「余りものを使っただけだけれど。冷めないうちにどうぞ」
月城 旭:(だから、私は……この子と、ずっと一緒に居たい。そう願ってる)
月城 旭:(でも、それは……)ふと、立ち止まって二人を見る。
月城 旭:信頼する相棒へと向ける、私の知らない霞ちゃんの横顔。
月城 旭:にわかに、胸に靄がかかるような心地がして。
月城 旭:(この想いは……きっと、この子を縛り付ける事になる)
月城 旭:だから、どうすべきか。その答えはまだ出ていないのだけれど。
月城 旭:(お姉ちゃんが、妹の枷になる訳にはいかないものね)
月城霞:「姉さん?」
月城霞:「ちゃんと手を洗わないとだめよ」
月城 旭:「ん?……ああ、美味しそうだなあって」
月城 旭:「うん、分かってる分かってる。洗ってくるね」洗面所へと立ち去りながら。
月城 旭:(……いつか、しなくちゃいけないのかな。妹離れってやつ)そんな言葉が脳裏に渦巻いていた。



メイン:73 サブ:53





GM:ではミドルトリガーシーンに入る前に
GM:全員1回ずつ購入判定が行えます。
叢崎未和:やった~
白塚 美弦:わーい
月城 旭:じゃあ防具チャレンジしよ
日室 晴陽:今のうちに応急手当キットとか買っとこうかな
月城霞:コネ手配師つかってクリスタルシールド狙います
白塚 美弦:強化ビシネススーツチャレンジしますー
月城 旭:UGNボディアーマーよ~
月城 旭:2dx+1>=12
DoubleCross : (2DX10+1>=12) → 9[6,9]+1 → 10 → 失敗

月城霞:6DX+6>=25
DoubleCross : (6DX10+6>=25) → 9[1,2,4,4,6,9]+6 → 15 → 失敗

月城 旭:財産4あるので2点消費で購入。
白塚 美弦:6dx+2>=19
DoubleCross : (6DX10+2>=19) → 10[1,6,8,9,10,10]+5[5,5]+2 → 17 → 失敗

月城霞:う、う~~~~~~ん
叢崎未和:4dx+2>=18 簡易手術キット
DoubleCross : (4DX10+2>=18) → 9[1,4,8,9]+2 → 11 → 失敗

白塚 美弦:財産点2点消費して購入!11→9!
叢崎未和:んー 財産はいいかな 以上
月城霞:財産10点払って購入、装備します
日室 晴陽:せっかくなら手術キットの方にするか 紡ぎの魔眼使って判定で
日室 晴陽:白塚 美弦の侵蝕率を0増加 (57 → 57)
日室 晴陽:白塚 美弦の侵蝕率を1増加 (57 → 58)
日室 晴陽:5dx=>18
日室 晴陽:5dx>=18
DoubleCross : (5DX10>=18) → 10[3,5,6,8,10]+9[9] → 19 → 成功

日室 晴陽:買えたわ
叢崎未和:優秀……
白塚 美弦:晴陽ちゃん!私の侵蝕が使われてます!
日室 晴陽:あれ!?マジだ、ごめん!
叢崎未和:あっほんとだ
叢崎未和:かわいいね
日室 晴陽:日室 晴陽の侵蝕率を1増加 (48 → 49)
日室 晴陽:こっちが正解!ごめんね、不慣れで
白塚 美弦:いいのよ



【Middle2】

GM:ミドル前半は終了、トリガーシーンに入ります。
GM:ミドル戦闘シーンになります。全員登場です
月城 旭:月城 旭の侵蝕率を1d10(→ 4)増加 (57 → 61)
白塚 美弦:白塚 美弦の侵蝕率を1d10(→ 2)増加 (57 → 59)
日室 晴陽:日室 晴陽の侵蝕率を1D10(→ 9)増加 (49 → 58)
叢崎未和:叢崎未和の侵蝕率を1D10(→ 3)増加 (44 → 47)
GM:月城霞の侵蝕率を1D10(→ 9)増加 (61 → 70)
桜花市 市街地
GM:支部の壊滅から2週間弱が過ぎたその日。
GM:君達は突如として、街中で放たれる君達以外の≪ワーディング≫を感知した。
GM:街中で倒れる人々。それもワーディングの出力に対して異様に広範囲、大人数だ。
GM:発生源を追っていくと、その理由はすぐに分かった。ワーディングを展開したまま、バイクで街中を走り回っているのだ。
GM:君達は連携によりバイクを停車させ、ライダーを引きずり下ろすことに成功した。
GM:ヘルメットを外したその顔に、見覚えがあるものもいたかもしれない。
GM:判定です 情報:UGN 難易度9以上で知ってます コネ使用可
月城 旭:3dx>=9 情報:UGN
DoubleCross : (3DX10>=9) → 8[4,8,8] → 8 → 失敗

叢崎未和:結構有名人だな……
日室 晴陽:コネ:UGN幹部使います
月城 旭:だれだろう……(ぼんやり
叢崎未和:6dx+1>=9
DoubleCross : (6DX10+1>=9) → 10[2,3,5,6,9,10]+3[3]+1 → 14 → 成功

日室 晴陽:4dx+1>=9
DoubleCross : (4DX10+1>=9) → 10[1,1,7,10]+5[5]+1 → 16 → 成功

白塚 美弦:6dx>=9 
DoubleCross : (6DX10>=9) → 7[1,3,5,5,7,7] → 7 → 失敗

月城霞:5DX+4>=9
DoubleCross : (5DX10+4>=9) → 9[1,2,7,9,9]+4 → 13 → 成功

GM:では記憶がぼんやりしてる旭さんと新入りの白塚さん以外は知ってます
GM:引き攣ったような怒りの表情で君達を睨むその女は、FHチルドレン“メタルペッカー”。
GM:この街で活動していたFHセル“ペニードレッド”の構成員です。
GM:ただしこのセルは、突如としてセルリーダーが行方不明になって以来、音沙汰が途絶えており
GM:“メタルペッカー”の活動もまた、最近は全く報告されていませんでした。
メタルペッカー:「お前らッ……!」
メタルペッカー:噛みつきそうな勢いで君達を見る。
メタルペッカー:「邪魔すんな!今大事なとこなんだよ!!」
月城 旭:「まさか、私達以外のオーヴァードがずっと街に潜伏してたとはね」
月城 旭:「それとも、途中で入り込んだのかな。外からの流通なんかは動いてるみたいだし」
叢崎未和:「んお、大事なとこ……って何してんの?」
日室 晴陽:「や、元からこの街に居たと思いますよ」
月城 旭:「あら。知ってるんだ?」
白塚 美弦:「そうなんですか?」
日室 晴陽:「うん。"メタルペッカー"っしょ?"ペニードレッド"のとこの」
月城霞:「うん……以前に関わったことがある」
月城霞:「街中でこんな風にワーディングを展開して、どういうつもり?」
月城霞:「とても危険だし迷惑よ。やめなさい」
メタルペッカー:「お前ら……UGNだな……」特に見覚えのあるチルドレン二人を見て。
叢崎未和:「そうだよ。ワーディングは危ないよ~」
白塚 美弦:「そ、そうだそうだ~」
叢崎未和:うすらぼんやりと笑いながら金づちでバイクを叩き壊している。
叢崎未和:髪の色や左腕は見かけ上元に戻っている。だが、やはり左手を使う様子はない。
メタルペッカー:「アーッ!!あたしのバイク!!」
メタルペッカー:「……ハッ!その様子じゃあお前らも閉じ込められたみたいじゃんか」せせら笑うように言う。
月城 旭:「お前らも……って事は、君もか」
メタルペッカー:「お互いこんなのはもう御免でしょ?」肩を竦める
月城 旭:「大事な事っていうのは、すると。ここから出ようとしていたとか?」
叢崎未和:「なんかちょっと詳しそうだね」
叢崎未和:進展の予感にうきうきしている。
メタルペッカー:「そうよ。大人しくしてなよ。こんなことした犯人をあたしがおびき出してやろうってんだから」
月城 旭:「あんな方法でなんとかなるとは思えないけど……」
日室 晴陽:「これでおびき出せるっつー確証があんの?」
白塚 美弦:「しびれを切らしたってことかな」
月城 旭:「……つまり、他に良い方法もなかったってこと?」
メタルペッカー:「何とかなるわよ。あたしには分かる」
叢崎未和:「まあまあ。とりあえずどういう機序でこういう運びになったのか聞こうよ」
叢崎未和:「私より話通じるはずだよ」
月城霞:「そうだ。話してみて」
月城 旭:「……」叢崎さんの言葉に怪訝そうな顔をしつつ、続く言葉を待つ。
メタルペッカー:「うっせー!5人でワッと話し掛けるんじゃねえ!!」
メタルペッカー:「こんな風にワーディングを垂れ流してれば、あいつが釣れないはずがない」
メタルペッカー:「あたしには分かる。あいつはそういう奴なんだよ」
叢崎未和:「…………『あいつ』」
日室 晴陽:「……認識を擦り合わせたいんだけどさ。あんたが言うあいつってどいつ?」
日室 晴陽:「あたしらは、スネグラチカっつージャームがこの状況の原因って前提で調査してんだけど」
メタルペッカー:「はあ?何そいつ」怪訝な顔をして
白塚 美弦:「えっ」
メタルペッカー:「決まってんでしょ。こんなことが出来る奴なんて一人しかいない」
メタルペッカー:「“ねじ巻き”」
メタルペッカー:「あいつの仕業に決まってる……!」
月城 旭:知ってる?と言いたげな顔で皆を見渡す。
叢崎未和:「うーん……」
白塚 美弦:ぶんぶん!と首を横に振ります。
月城霞:「知らないわ。それは何者?」
メタルペッカー:「……」
メタルペッカー:「本当の名前と顔はあたしも知らない……」
メタルペッカー:「でも、“ペニードレッド”はあいつのせいでメチャクチャになった」
メタルペッカー:「協力者だったあいつが裏切って、リーダーを殺したから!」
日室 晴陽:「……リーダーが失踪したっつーんは聞いてたけど。そういう?」
月城 旭:「君にとっての仇ってわけだ」
叢崎未和:「これ、ハズレかな」白塚さんと顔を見合わせる。
メタルペッカー:「あいつは裏切者ダブルクロスだ……!」
メタルペッカー:「リーダーはいい人だったのに……!あたしに居場所をくれた!たまにしか殴らなかったし、クスリもちょっとしかやらなかった!」
叢崎未和:「…………」
白塚 美弦:「未和ちゃんの方がまだいい人に思える感じだね」
叢崎未和:「たはー。手厳し」
月城 旭:「こんなことが出来る奴なんて一人しかいない、だっけ」
月城 旭:「そんなに強いんだ?そいつ」
月城 旭:"メタルペッカー"の言葉に眉を顰めつつ、答えを待つ。
メタルペッカー:「……元々、片っ端からジャームを殺してるって話は聞いてた。あたしらもその力を目当てに協力して……」
メタルペッカー:「実際、メチャクチャに強かった。あいつならこんなことだって出来るはず」
叢崎未和:「えー……」想像した以上の具体性のなさに絶句している。
メタルペッカー:「あたしはあたしから居場所を奪ったあいつを許さない……もっと力を付けてから復讐する気だったけど……」
月城 旭:「ふうん」
月城 旭:「君達は、そんなやつと協力して何をしようとしていたのかな」
日室 晴陽:「……ありそーなのは、ねじ巻きっつーんがスネグラチカの偽名とかその辺?」
日室 晴陽:「や、支部長がなんでスネグラチカだって判断したのか分かんないから何とも言えないか……?」
メタルペッカー:「あたしらは悪いことなんてしてなかった!他のセルを全部潰して、この街を平和にするってリーダーは言ってた!」
メタルペッカー:「もう、こうなったらやるしかない……!あたしがぶっ殺してやる!」
メタルペッカー:「あたしが奴を誘き出して、ぶっ殺して、リーダーの仇を取る!」
メタルペッカー:「邪魔すんなら……あんたらも殺す!!」
メタルペッカー:再び“メタルペッカー”がワーディングを展開する。
月城 旭:「同業の悪者を排除して、利益を独占しようとした……ってところかな」"メタルペッカー"の言葉を勝手に解釈する。
叢崎未和:「"デッド"みたいな風変わりなセルって感じでもなかったはずだし」
叢崎未和:「そんなとこでしょ」
月城霞:「……詳細は分からないけど」
月城霞:「話を聞く気は無さそうね」
日室 晴陽:「だね。この先の話はとりあえずこの子止めてからにしよっか」
メタルペッカー:アスファルトがめくれ上がり、道路標識がねじ切れて、空中で異音を立てながら変形していく。
メタルペッカー:無数の槍が形成され、君達にその切っ先を向ける。
月城 旭:「脱出のために協力……って言いたい所だったけど」目の前の光景を見て、手にしていた刀を再び握り直す。「難しそうだね」
白塚 美弦:「やるしかなさそうだねー」
叢崎未和:「こてんぱんにして言う事聞かせよう」
GM:ミドル戦闘を開始します。

エンゲージ []内は行動値



“メタルペッカー”[14]

 (10m)

日室晴陽[6]月城旭[6]叢崎未和[5]月城霞[5]白塚美弦[4]


GM:セットアップから!
メタルペッカー:なし
日室 晴陽:苛烈なる火Lv2のみ使用でHP5消費して攻撃力+6!
日室 晴陽:日室 晴陽の侵蝕率を3増加 (58 → 61)
月城 旭:ないです
月城霞:≪オーバーアクセル≫で暴走、変異暴走で行動値0に
GM:月城霞の侵蝕率を4増加 (70 → 74)
叢崎未和:なし
白塚 美弦:《攻撃誘導》 ラウンド間、白塚を含まない攻撃を行う場合、ダイスを-10個
白塚 美弦:対象はメタルペッカー
白塚 美弦:白塚 美弦の侵蝕率を3(→ 3)増加 (59 → 62)
GM:-10て
GM:ではイニシアチブ、行動値14でメタルペッカーの手番です
メタルペッカー:マイナー ≪ハンドレッドガンズ≫+≪錬成の掟≫で武器作成
メタルペッカー:メジャー ≪コンセントレイト:モルフェウス≫+≪カスタマイズ≫+≪ギガンティックモード≫+≪ストライクモード≫
メタルペッカー:対象PC全員
叢崎未和:話し合おう
メタルペッカー:11DX7+5
DoubleCross : (11DX7+5) → 10[1,2,2,4,6,7,7,8,8,9,10]+10[1,2,4,7,9,10]+10[1,1,8]+10[8]+1[1]+5 → 46

月城 旭:ガードします。
月城霞:どうしようかな……
叢崎未和:1dx+1 まあ避けれるっしょ
DoubleCross : (1DX10+1) → 5[5]+1 → 6

日室 晴陽:こっちもダメ元ドッジ
日室 晴陽:3dx+1>=46
DoubleCross : (3DX10+1>=46) → 5[2,5,5]+1 → 6 → 失敗

白塚 美弦:ドッジ!
白塚 美弦:7dx7+17>=46
DoubleCross : (7DX7+17>=46) → 10[2,3,4,5,8,8,9]+10[5,6,8]+10[9]+10[7]+1[1]+17 → 58 → 成功

白塚 美弦:いえいえい
日室 晴陽:しろっちつよ!
叢崎未和:つよい
GM:ヤベ~
月城霞:ガード、≪氷盾≫のみ使います
月城 旭:あ、そうか《氷盾》ここで宣言するんだった 使います
月城 旭:カバーリングのやつとごっちゃになってた
GM:エフェクトの分の侵蝕は上げておいてね
月城 旭:月城 旭の侵蝕率を2増加 (61 → 63)
白塚 美弦:あ、そうだそうだ。《命の盾》《リフレックス:ソラリス》使ってました。
白塚 美弦:白塚 美弦の侵蝕率を3(→ 3)増加 (62 → 65)
月城霞:5D10+15+3D10 ダメージ!
DoubleCross : (5D10+15+3D10) → 31[5,9,1,7,9]+15+17[3,6,8] → 63

叢崎未和:霞さん……あなたが裏切り者だったなんて……
GM:あっ間違えた
GM:ペッカーです
叢崎未和:運命的爆砕! リザレクトします
叢崎未和:叢崎未和の侵蝕率を1D10(→ 1)増加 (47 → 48)
叢崎未和:こいつ本当に省エネだな……
日室 晴陽:こっちもリザ!
日室 晴陽:日室 晴陽の侵蝕率を1D10(→ 5)増加 (61 → 66)
月城 旭:ガード23、装甲8、HPダメージ2d10軽減
月城 旭:63-31-2d10
DoubleCross : (63-31-2D10) → 63-31-14[8,6] → 18

月城 旭:18もらって残りHP12
月城 旭:月城 旭のHPを12に変更 (30 → 12)
月城霞:え~と……
月城霞:C(63-15-12-20)
DoubleCross : 計算結果 → 16

GM:月城霞のHPを13に変更 (29 → 13)

メタルペッカー:「あたしの邪魔する奴は……全員!ブチ貫いて殺すことに決めてんの!!」
メタルペッカー:叫ぶと共に、無数の槍が飛来する。様々な素材で造り上げられた凶器。街の破壊痕もこれによるものだろう。
メタルペッカー:「死んじゃえーッ!!」
叢崎未和:「ぎゃぶ」ろくに反応できず串刺しになる──否、金属への腐食作用を以て即死だけを逃れる。
白塚 美弦:「ネズミさん達~出番だよ~!」
白塚 美弦:ズモモモモ!!
白塚 美弦:声を掛けると、日々あらかじめ仕込んでおいたネズミたちがどこからともなく現れる
白塚 美弦:幻覚によって動かされ、槍に突撃していくネズミ達。
白塚 美弦:ネズミにぶつかり勢いが減衰されたり、撹乱されて狙いがつけられなかったりする無数の槍。
白塚 美弦:その隙に一応のオーヴァード由来の身体能力で回避する。
月城霞:霞を貫く直前、槍は空中でその勢いを失う。周囲には白い霧が立ち込め、槍の身には霜が降りている。
月城霞:「長期戦は不利ね」
月城 旭:ふう、と息を吐く。刃に薄赤くともしびが灯る。
月城 旭:ひどく力の抜けた下段の構えから。ゆるり、と空に文字でも描くように柄を動かす。
月城 旭:自身へと飛来していた金属槍の幾つかが、錬成の核となるレネゲイドそのものを断たれた事で塵になった。
月城 旭:「そうだねえ」全てを防ぎきれた訳ではない。血の流れ出る腹部を抑える。
日室 晴陽:「けほ」 自身の腹に刺さった槍を放り捨てて。
日室 晴陽:「なら、短期決戦で行きますか」
月城霞:「ええ。お願い、二人とも」

GM:行動値6、日室さん、旭さんの手番です。
月城 旭:どっち先いきます?
日室 晴陽:じゃあ会話の流れでこっちが先良いですか?
月城 旭:どうぞ~
日室 晴陽:という訳であたしから!
日室 晴陽:まずはマイナーでメタルペッカーのエンゲージまで移動。
日室 晴陽:そんでメジャーでコンボ、Oh! hit summer!:災厄の炎Lv5+コンセントレイト:サラマンダーLv3
GM:判定どうぞ!
日室 晴陽:紡ぎの魔眼Lv3も乗せて判定
日室 晴陽:8dx7+2
DoubleCross : (8DX7+2) → 10[2,2,3,4,7,8,9,9]+6[1,2,6,6]+2 → 18

日室 晴陽:わ、イマイチ
メタルペッカー:ドッジ!
メタルペッカー:6DX>=18
DoubleCross : (6DX10>=18) → 10[1,4,6,6,10,10]+4[1,4] → 14 → 失敗

メタルペッカー:惜しい……
日室 晴陽:こわ……
GM:ダメージどうぞ!
日室 晴陽:21+2d10
DoubleCross : (21+2D10) → 21+11[8,3] → 32

メタルペッカー:くっ……
メタルペッカー:≪ディスマントル≫ダメージ-12
メタルペッカー:生き延びます
日室 晴陽:日室 晴陽の侵蝕率を7増加 (66 →73 )

日室 晴陽:「そんじゃ、一番槍もーらい」
日室 晴陽:先ほど腹部に空いた風穴も気にせず、悠々と歩み出す。
日室 晴陽:その傍らにはいつの間にか出現した魔眼。そこから火が立ち上る。
日室 晴陽:否。日が昇る。
日室 晴陽:揺らめく炎。立ち込める熱。赤く輝くそれは、まさしく太陽。
日室 晴陽:彼女が晴陽と名付けられた理由。彼女と同じ能力を持つ母が輝きradiancyを由来に持つ名を名乗る理由。
メタルペッカー:「……な……!?」その輝きに目を見張る……否、直視することも出来ない。
日室 晴陽:「悪いんだけどさ。あんたのやり方だと周りに被害も出ちゃうから」
日室 晴陽:「今は大人しくボコられな!」
日室 晴陽:温度を増した魔眼によって、周囲ごとメタルペッカーを焼き焦がす!
メタルペッカー:「わっ……うわぁああああっ!!」
メタルペッカー:咄嗟にアスファルトで壁を形成するが、殆ど意味が無い。
メタルペッカー:一瞬で融解し、その熱に身を焼かれる。
メタルペッカー:「うぁああっ……!く、うううう……!許せない……!」
メタルペッカー:「見るからに陽キャの顔しやがって……!あたしのことバカにしてんだろ!!」
叢崎未和:「ちょっと! 日室さんはいい子だよ!」
月城霞:「そうだ。日室はそんなことしない」
日室 晴陽:「……や、あの。そんな二人して言われるとあたしの方が照れるんだけど」
メタルペッカー:「うるせェーーっ!!殺す!!」

GM:同じく行動値6、旭さんの手番です。
月城 旭:はーい。マイナーで戦闘移動、メタルペッカー達のところにエンゲージ。
月城 旭:メジャー。「斬るやつ」《コンセントレイト》《炎神の怒り》《煉獄魔神》メタルペッカーを攻撃
GM:判定どうぞ!
月城 旭:8dx+1@7 命中
DoubleCross : (8DX7+1) → 10[1,1,2,4,4,5,5,10]+1[1]+1 → 12

月城 旭:ええ……
メタルペッカー:避けちゃお~~
メタルペッカー:6DX>=12
DoubleCross : (6DX10>=12) → 8[1,2,4,4,4,8] → 8 → 失敗

メタルペッカー:チッ…………
月城 旭:ふー
GM:ダメージどうぞ!
月城 旭:2d10+20 ダメージ。諸々有効
DoubleCross : (2D10+20) → 9[6,3]+20 → 29

月城 旭:月城 旭の侵蝕率を8増加 (63 → 71)
メタルペッカー:う~~ん 受けます まだ生きてます

月城 旭:「あら、私も乗り遅れたかな」日室さんを庇う二人を横目に呟く。「……まあ、それはさておき」
月城 旭:「聞いた感じ……君の境遇、同情の余地がありそうだし」"メタルペッカー"を見遣る。
月城 旭:「これ終わったら、もう少し話を聞いてくれると嬉しいな」
メタルペッカー:「同情なんていらないっての……!」
メタルペッカー:「それなら邪魔しないでよ!!」
月城 旭:「君のやり方は冷静じゃないってこと……ま、この続きは後だ」
月城 旭:「痛くはしないようにするからさ」
月城 旭:にわかに前傾。サラマンダー能力者としての熱速度変換。一瞬の弛緩を経て、その肉体は最高速度に達している。
月城 旭:"スピキュール"、太陽から散発的に発されるプラズマジェット飛翔体。それに擬えられる身体操術。
月城 旭:彼女が振るう技に一切の型はなく、野性的な不規則さに満ちている。
月城 旭:──最も、それは「傍目には理合を持たぬように見える」というだけの話だ。
月城 旭:異常なまでに繊細な熱知覚──すなわちは分子運動状態の認識によって、
月城 旭:彼女の振るう刃は瞬間ごとの最適な切断過程(プロセス)を導出し続ける。
月城 旭:月城旭にとって「技」とは、須臾の内に編み出されては次の瞬間には意味を喪失している、そういった類のものである。
月城 旭:眼前。振り下ろすかに見えた刃を、不意に翻して
月城 旭:下段より、旗を振り上げるような所作。以て刃を跳ね上げると同時、右脚を蹴りに出して刃の横腹を叩いた。
月城 旭:剣閃は僅かに左へとブレて──その位置角度こそが、月城旭が演算した切断の理想である。
月城 旭:真紅の焔火を帯びた刀身が、少女の片腕を断つ。
月城 旭:「……綺麗に斬ったから」息を吐く。集中した思考演算のフィードバック。いつもより大きく感じる眩暈を噛み殺しながら。
月城 旭:「治療を受ければ、ちゃんと治ると思うよ」
メタルペッカー:「ッあ!」鮮血。宙を舞う自分の腕を見てようやく、切り裂かれたことに気付く。
月城 旭:降参しない?と目で問いかけながら言う。
メタルペッカー:「う、腕……!あたしの、腕……!」
メタルペッカー:「お前ぇッ……!」その態度に侮られていると感じ、余計に敵意を剥き出しにする。

GM:行動値5、叢崎さんの手番です。
叢崎未和:はーい マイナー1m前進
叢崎未和:《コンセントレイト》《黒の鉄槌》《増加の触媒》《暗黒の槍》対象メタルペッカー
GM:判定どうぞ!
叢崎未和:4dx7+9 命中!
DoubleCross : (4DX7+9) → 10[5,5,9,10]+2[1,2]+9 → 21

叢崎未和:上々
GM:そのダイスで一番回してるの何
メタルペッカー:6DX>=21 ドッジ
DoubleCross : (6DX10>=21) → 9[2,3,3,7,8,9] → 9 → 失敗

メタルペッカー:チクショウ~~~~
GM:ダメージどうぞ!
叢崎未和:3d10+21 装甲無視です
DoubleCross : (3D10+21) → 12[3,3,6]+21 → 33

メタルペッカー:ギャア~~~~
メタルペッカー:≪不壊の城壁≫ ダメージ-20
メタルペッカー:ギリッギリ耐えます
叢崎未和:こ、こいつ~~!
叢崎未和:侵蝕9増えて57

叢崎未和:「いい位置に来た」
叢崎未和:"メタルペッカー"の足元左後方。側溝から黒い靄が噴き出す。
メタルペッカー:「!?」
メタルペッカー:攻撃の正体は分からない。だが咄嗟に周囲の建材やコンクリートを隆起させ、身を守ろうとする。
叢崎未和:「いうこと聞かなそうだから、気絶してもらう、よ」
叢崎未和:レネゲイド因子と物質が、同化しようと引き合う。触れ合い、その性質を近づける。
叢崎未和:そうして表層の分子構造を壊すと同時、叢崎の因子の能力もまた変質し失われ、結合が破れ元の状態に戻る。
叢崎未和:混交と別離を繰り返し触れたものの表層をむしり取る黒い靄。それは『腐食』という現象をもって現実に作用する。
叢崎未和:「痛がれ」
メタルペッカー:「ぎ……あぁああああっ!!」
メタルペッカー:結果から言えば、それは正解だった。
メタルペッカー:叢崎の能力に曝露した部位が、ひどく糜爛し、ぐずぐずに爛れ──腐食している。
メタルペッカー:「お、前……!」
叢崎未和:「……や、結構防がれたなこれ。密閉がうまい」
叢崎未和:血塗れで転がったままひとりごちる。
メタルペッカー:「お前、お前ら……!クソッ、クソッ……!痛、痛いぃいっ……!」
メタルペッカー:神経にまで浸透した能力に脂汗を流しながら、その痛みで更に怒りを昂らせる。
メタルペッカー:「あたしは……絶対、倒すんだよ……!」
メタルペッカー:「“ねじ巻き”の野郎を…………!」
叢崎未和:「……みっち」
叢崎未和:遮るように、合図を送る。
白塚 美弦:コクリ。小さくうなずく。

GM:行動値4、白塚さんの手番です。
白塚 美弦:はーい
白塚 美弦:マイナーなし。
白塚 美弦:メジャーで《絶対の恐怖》。対象はメタルペッカー。
GM:どうぞ!
白塚 美弦:7dx+17
DoubleCross : (7DX10+17) → 9[1,1,3,3,7,9,9]+17 → 26

GM:何だその固定値は……
メタルペッカー:6DX>=26 ドッジ
DoubleCross : (6DX10>=26) → 6[2,2,4,4,4,6] → 6 → 失敗

GM:ダメージどうぞ!
白塚 美弦:3d10+1
DoubleCross : (3D10+1) → 9[3,2,4]+1 → 10

白塚 美弦:装甲無視!
白塚 美弦:白塚 美弦の侵蝕率を3(→ 3)増加 (65 → 68)
メタルペッカー:この程度のダメージで……
メタルペッカー:死んだ…………
白塚 美弦:わーい
GM:戦闘終了です。

白塚 美弦:「先に謝るね。ごめんね」
メタルペッカー:「ああ?何を……」
白塚 美弦:白塚がてのひらを向けると同時。
白塚 美弦:突如、メタルペッカーの目の前が真っ暗になる。
メタルペッカー:「っ!?」
白塚 美弦:人類種にとっての原初の恐怖とはなにか。
白塚 美弦:──暗闇だ。
白塚 美弦:獰猛な動物の襲撃を想起させる"それ"は、根源の恐怖として強く刻み込まれている。
白塚 美弦:そして、メタルペッカーにとっての一番の恐怖とは、恐らく。
白塚 美弦:殴打。
白塚 美弦:暗闇から微かに拳が見えて顔面に叩きつけられる──ような幻覚を見せられる。
メタルペッカー:「……!?」
メタルペッカー:「こんな……やめろ!!」
白塚 美弦:「いったじゃん。ごめんねって」
メタルペッカー:「こんな、こんなの、幻覚……!やめろ、すぐやめろ!!殺すぞ!!」
白塚 美弦:その間にちょっと大きめの石を拾って投げつける。
メタルペッカー:血相を変え、必死に叫ぶ。だが身体は竦み、動かない。
白塚 美弦:混乱しているメタルペッカーにとっては、殴られているように感じるはずだ。
メタルペッカー:「ひ、ッ……!」
メタルペッカー:「う、うぅあぁあっ……!」
白塚 美弦:「未和ちゃんの前で、こんなずるいことしたくなかったんだけど……」小さくつぶやき。
メタルペッカー:かく、と脚が折れ、へたり込む。
白塚 美弦:「先に攻撃してきたのはそっちだからね~」
メタルペッカー:「や、やめてください……」
メタルペッカー:「ごめんなさい、ごめんなさい……!」
メタルペッカー:「殴らないで……リーダー……!ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい……!」
メタルペッカー:蹲って、ぶつぶつと繰り返しながら震え出す。
叢崎未和:「おお…………」
叢崎未和:「(何やったの……かは聞かないでおいてあげた方がよさそうかな、これ)」
月城 旭:「ちょっ……と、白塚さん」流石に見かねて声をかける。
白塚 美弦:「いや、戦意を喪失させるほうが純粋暴力より幾分平和的かなって……」
月城霞:「やりすぎよ、“マウス・ブリンガー”」
月城霞:「もういいわ」
月城 旭:「この子、もう折れてるように見えるよ」
白塚 美弦:「はーい。やめまーす」
日室 晴陽:「……どうする?これ、下手に声かけんのも刺激しそうだけど」
日室 晴陽:こちらも魔眼を消し、臨戦態勢を解く。
叢崎未和:「なんかリラックスさせてあげることできる? みっちー」
叢崎未和:ずるずると立ち上がる。
月城 旭:「とりあえず、怪我を治療してあげないと……近くに寝かせられそうな場所、あるかな」
月城霞:「……セーフハウスがあるわ。連れて行きましょう」
月城霞:「日室、手伝って」
日室 晴陽:「ほいほーい」
メタルペッカー:「う……」抵抗する様子も無い。
白塚 美弦:SNSでよく見る猫の写真を想起して、イメージとして送りつける。少しばかりのリラックス効果を期待して。
白塚 美弦:「大丈夫!アフターケアもしました!」
叢崎未和:「えらいぞ~」よしよしします。
叢崎未和:「ほーら。私らも多分その……何。ねじ巻き? とやらを追ってるようなモンだから、多分」
叢崎未和:「邪魔とは限んないかもよ。や、わからんけど」適当な言葉をかけながらふらふらとついていく。
日室 晴陽:「そのねじ巻きの話も調べないとね。新しい手掛かりだし」
メタルペッカー:「……」憔悴しきり、反応も無い。二人に連れていかれる。
月城 旭:「あっ、私も手伝うよ!」声をかけて、2人の後を追う。
月城 旭:(……ん?)ふと、足を止める。眦に何かぬるいものが垂れているのを感じて。
月城 旭:周囲に見られないように、手の甲で拭う。……血だ。
月城 旭:(頑張りすぎたかな。……これでもセーブしたつもりだったんだけど)
月城 旭:(気持ち、いつもより重い気がする)
月城 旭:ハンカチで手を拭きながら、何事もなかったかのように再び後を追う。






GM:それではここでミドル後半のシーン順を決めるダイスロールを行います
GM:全員1D100で判定してください
叢崎未和:1d100
DoubleCross : (1D100) → 21

日室 晴陽:1d100
DoubleCross : (1D100) → 85

月城 旭:1d100 殺ァッ
DoubleCross : (1D100) → 67

叢崎未和:うきゃーっ
白塚 美弦:1d100
DoubleCross : (1D100) → 23

月城霞:1D100
DoubleCross : (1D100) → 44

GM:では最初は日室さん。何番目を選びますか?
月城 旭:ダイス腐り組に反動が来たわね
日室 晴陽:どうしよっかな……現状プランがあるわけじゃないし……
日室 晴陽:3番目貰います 前後が分かってる方が動きやすそう
月城 旭:ふーむ
GM:では次は旭さんです どうしますか?
月城 旭:んんー そうだな……
月城 旭:5番目もらいます
月城霞:では私は4番で
白塚 美弦:えと、次私かな?
叢崎未和:そうじゃよ
白塚 美弦:じゃあ最初いただきまーす
GM:OK、では叢崎さんは2番目ですね
GM:このようになりました
叢崎未和:ほいほーい
GM
1白塚美弦
2叢崎未和
3日室晴陽
4月城霞
5月城旭




【Masterscene】

桜花市 私立桜花第一高校
GM:朝のHR。教師がクラスの出欠確認を取っていく、いつもの光景。
GM:だが、いつも通り、ではない。
GM:「藤田……は、休みか」
GM:「本郷も休み」
GM:「美川……休みか」
GM:がらんとした教室。席に着いている生徒の数は僅か数人。
GM:インフルエンザでも流行って学級閉鎖になったかのような有様。だが、生徒たちはまるでそれが当然であるかのように、何も気にする様子はない。
GM:「よし、それじゃあHR始めるぞ」
GM:教師もまた、その状況に何の疑問も抱かない。
GM:穏やかで異様な光景が、当たり前のように進んでいく。

---

GM:「黒田さん。どうしました?こんなところで」
GM:普段見かけない経理部と人事部の社員を見かけ、声を掛けた。
GM:どうにも焦っている、というより戸惑っているかのような様子だ。
GM:「ああ、おはようございます。どうやらデータ管理にミスがあったようなんです。それもかなり大規模な」
GM:「……どういうことです?」
GM:「実際の社員の人数とデータ上の人数が合わない部署があるんです。それも一つや二つではなくて。社内全体で」
GM:「……そんなことあるんですか?」
GM:「あるから困ってるんです。単純な表計算の行ミスなんかだといいんですが……」
GM:「私も手伝いますよ。何から──」
GM:声を掛けた瞬間、経理部の彼の姿が忽然と掻き消える。
GM:「えっ」
GM:人事部の社員と顔を見合わせる。
GM:「黒田さん!?」「えっ、何ですかこれ。どこに……」
GM:狼狽も数秒のこと。
GM:すぐに、何をそんなに慌てていたのか分からなくなる。思い出せなくなる。頭に靄が掛かったように。
GM:「……あれ……?」
GM:「……おや、渡辺さん。何か御用ですか?」
GM:普段見かけない人事部の社員に気付き、声を掛ける。
GM:「はい?あれ……」
GM:彼はきょろきょろと辺りを見回し、
GM:「あれ、何ですかね?ぼーっとしてたのかな」
GM:「ちょっと、しっかりしてくださいよ」
GM:お互いに笑い合って別れる。もうすぐ始業時刻だ。何事もなかったように席に着き、息を吐いた。



【Middle latter half/白塚美弦】

GM:ミドル後半でも挑戦できる項目があります
叢崎未和:事態がうごいた
GM:こちらも1項目クリアするごとに情報項目以外の全達成値が+1されるよ~
白塚 美弦:やったー
日室 晴陽:めちゃくちゃ固定値もらえる

・消失現象について 情報:UGN/噂話 難易度5
・『白い獣』について 情報:UGN/噂話 難易度6
・“ねじ巻き”について 情報:UGN/FH 難易度9
・戦闘訓練 白兵/射撃/RC 難易度12
・迎撃設備の構築 交渉 難易度10


GM:後半二つは情報項目ではないです
GM:というわけで早速後半戦に入っていきましょう
GM:最初の手番を確保したのは、白塚さんです。
GM:誰を指名しますか?
白塚 美弦:未和ちゃんで!
叢崎未和:私!
叢崎未和:メタルペッカーの侵蝕率を1D10(→ 2)増加 (0 → 2)
叢崎未和:まちがえたわ
メタルペッカー:やめてくれ
白塚 美弦:ww
叢崎未和:ごめんごめん
叢崎未和:叢崎未和の侵蝕率を1D10(→ 1)増加 (57 → 58)
叢崎未和:こいつマジ
GM:白塚さんも登場侵蝕をどうぞ
白塚 美弦:白塚 美弦の侵蝕率を1d10(→ 2)増加 (68 → 70)
GM:サブシーンは日室さん、旭さん、霞さんになります。
叢崎未和:メイン面子の情報判定はなしで
白塚 美弦:なしなし~
月城 旭:「消失現象について」情報:UGNで行きます。
月城 旭:3dx>=5
DoubleCross : (3DX10>=5) → 10[1,3,10]+10[10]+4[4] → 24 → 成功

日室 晴陽:サブでコネ:UGN幹部使ってねじ巻きについてを調査します
GM:強すぎ
叢崎未和:天才
月城 旭:お姉ちゃんパワー
日室 晴陽:5dx+1>=9
DoubleCross : (5DX10+1>=9) → 4[1,1,2,3,4]+1 → 5 → 失敗

日室 晴陽:うわマジ?
月城霞:ひ、日室……
月城 旭:ええっ
月城霞:一緒に調べよう
月城 旭:吸い取ってしまった
月城霞:5DX+4>=9
DoubleCross : (5DX10+4>=9) → 6[1,2,4,5,6]+4 → 10 → 成功

月城 旭:えらい
日室 晴陽:サンキュ、霞。なんか奢るわ
叢崎未和:固定値えらすぎる
GM:では情報を開示します

・消失現象について
ここ数日、街中の至る所で、次々に住人が姿を消している。
本来のコミュニティが用を成さない程に人が少なくなっても、更には目の前で誰かが消えても、非オーヴァードの住人は何の疑問も抱いていない。
これは“スネグラチカ”による一種のワーディングの影響によるものであり、また“スネグラチカ”にとっての捕食に類する活動であり、人間を取り込むことで実体化へのエネルギーを蓄えているものと思われる。


・“ねじ巻き”について
FH“ペニードレッド”セルはリーダーによる恐怖政治で成立していたセルであり、リーダーの死と共に瓦解、セルメンバーは離散している。“メタルペッカー”のみが残党として活動していた。
セルリーダーを殺害したのは協力者だった“ねじ巻き”と呼ばれるオーヴァード。高い戦闘力を持ち多くのジャームを倒していたのは確かだが、それ以外の人物像は一切不明。“ねじ巻き”の名も、戦闘後に残される独特の破壊痕からそう呼ばれているに過ぎない。





白塚 美弦:白塚に呼ばれて、未和ちゃんは白塚家にやってくることになった。
白塚 美弦:「いらっしゃい~」
叢崎未和:「はろ~」
白塚 美弦:時刻は夕方ごろ。
白塚 美弦:両親はお仕事で出払っている。
叢崎未和:「何回も友達のうちに来るなんて新鮮だなぁ」
白塚 美弦:「そう?私は割とお友達の家遊びに行くけど」
叢崎未和:「昔は諸事情あって2回目はなかったんよね。今思うとオーヴァード覚醒の先ぶれだったんだろなぁ」
白塚 美弦:「ふーん、そうなんだ」
叢崎未和:「時々目の前の子が何考えてるか当てちゃうんだよ。で、気味悪がられて」
白塚 美弦:「共感の能力っていってたね」
叢崎未和:にへへ、と笑う。「皮肉なことにこの状態になってからはそういうのできなくなったね~」
叢崎未和:「自分の事でいっぱいいっぱいよ」
白塚 美弦:「じゃあ、そんな未和ちゃんに」
白塚 美弦:「少し余裕を持たせてあげます」
白塚 美弦:「いや、余裕もてるようになるかはわからないけど……」
白塚 美弦:「とりあえず、手助けをします」
白塚 美弦:「今日はそのために呼んだの」
叢崎未和:「……んげっ。や」
叢崎未和:「それはダメだっていったじゃん!」
叢崎未和:今までで一番機敏な動きで窓を開けて美弦ちゃんの部屋を脱出しようとします。
白塚 美弦:すでに鍵がかかっていて、開けるのに手間取ることでしょう。
叢崎未和:「うおお! 左手は添えるだけな自分が憎い」
白塚 美弦:「手助けっていっても」
白塚 美弦:「私ができることで負荷とかあんまないことだから安心して」
叢崎未和:「あっよかった~」
白塚 美弦:「とりあえず人の話を聞きましょう」
叢崎未和:ぼすっと白塚ちゃんのベッドに倒れ込みます。
叢崎未和:「ききます」
叢崎未和:のほほんと答える。
白塚 美弦:「説明が長くなるかもだけど、とりあえず聞いてね」
白塚 美弦:「そこで手助けを受けるか判断すればいいから」
叢崎未和:「因果応報って感じじゃんね」
叢崎未和:「(有無を言わさずって感じじゃないんだなぁ。えらいなぁみっちー)」自分だったら断りなくやる。
白塚 美弦:「まず、今回やりたいことは」
白塚 美弦:「未和ちゃんの呪いの制御……たまに抑えきれずにでちゃう呪いのデメリットの緩和、です」
白塚 美弦:「そのために私の能力を使用します」
叢崎未和:「やりたいねぇ」ずるずると体を起こして座る。
叢崎未和:「ほうほう」
白塚 美弦:「具体的には、旭さんのことと、私との返事の約束を特定の感情を契機にイメージ映像、幻覚として思い出させる」
叢崎未和:「おお、暗示をかけるわけだ」
白塚 美弦:「未和ちゃんの呪いは衝動から来てるんでしょ?」
白塚 美弦:「だからその感情、つまり衝動が発生したときに幻覚を発生させます」
白塚 美弦:「で、今度は私の能力の説明なんだけど」
白塚 美弦:「私はソラリスの中でも生成した物質の持続性と遅効性に長けています」
叢崎未和:「ああ~」
叢崎未和:「だから増えるのが早いねずみに仕込んで」
叢崎未和:「その子世代を子分として使ってるわけだ。積年の謎が解けたや」
叢崎未和:別に積年の知り合いではない。
白塚 美弦:「うん」
白塚 美弦:「逆にいえば、ネズミを操るのにはそれだけ持続性と遅効性が必要ってこと」
白塚 美弦:「で、もう一つ。私の作る幻覚物質の効果を発揮するトリガーの一つに」
白塚 美弦:「私の中で生まれた強い感情」
白塚 美弦:「があるのです」
白塚 美弦:「暴走しちゃうのは、それが原因」
叢崎未和:「おお、それって…………」
叢崎未和:彼女の能力が暴発しがちなのも、自分と能力が近い事が主だと思っていたが。
叢崎未和:どうにも、刺激してしまっていたらしい。ちょっと気まずくなる。
白塚 美弦:「普段は私の感情を契機としている、けど」
白塚 美弦:「特定の条件を満たすことで物質の影響を受ける人の感情をトリガーとすることができるんだ」
叢崎未和:「じょ、条件」
白塚 美弦:「そしてこれが本題です」
白塚 美弦:「条件、つまり今からやるっていった呪いの制御のための手段」
叢崎未和:「うんうん。すごく考えてくれててありがとう」
叢崎未和:「何でも言って?」
白塚 美弦:「それは」
叢崎未和:「うん」
白塚 美弦:「それは……」一度、言いよどんで、でも覚悟を決めて。
白塚 美弦:「た、体液の交換……」
叢崎未和:「…………………………」
叢崎未和:「うーーーーーん???」
白塚 美弦:「や。これは本当にそうなの!」
叢崎未和:「もしかしてみっちーさ」
叢崎未和:「元を辿れば昔ねずみに齧られたからねずみを子分にしてるだけだったりする?」
叢崎未和:「反乱とか起こさないし……」
白塚 美弦:「ねずみは私の感情を契機に操ってるから!かじられてないし!」
白塚 美弦:「実際のところ」
叢崎未和:「はい」
白塚 美弦:「相手の身体に馴染む物質を作るには」
白塚 美弦:「相手の成分を摂取しなきゃだし」
白塚 美弦:「私の作った幻覚物質をうまくなじませるには」
白塚 美弦:「体液を摂取するのが一番いいの」
叢崎未和:「せい、ぶん……!!」
叢崎未和:「(こういう冗談言う子じゃないよなぁ…………………………)」
白塚 美弦:「何を想像しているかしらないけど」
白塚 美弦:「血液とかでもいいんだからね」
白塚 美弦:「一番痛くなく済みそうなのは唾液とかになっちゃうけど……」
白塚 美弦:「そこは未和ちゃんが選んでいいよ」
叢崎未和:落ち着かない様子で目をぱちくりしたり、意味のない思考を巡らせたり(駆け回るヌーの大群を想像するなど)していたが・
叢崎未和:「はっ」
叢崎未和:「体液交換だなんてタームを使っておいて私がいやらしいだけだと言うのか」
叢崎未和:正体を取り戻したので一発かましておく。
叢崎未和:依然頬には血が上っているが。
白塚 美弦:「いや、私がいやらしくてもいいんだけど」
白塚 美弦:「そこはもう諦めるから、選んでほしい」
叢崎未和:「みっちーがいやらしいわけないでしょ!」動揺して意味の分からない場所にキレている。
叢崎未和:「……うう……はい…………」
叢崎未和:「(いや、だって唾液の交換まで行っちゃうとさ……それは……)」
叢崎未和:「(それは返事を保留したことになるの……? いいの私……!?)」
白塚 美弦:「や、でも、なんだかんだ、期待してるところはあるし……」
白塚 美弦:「本当は髪の毛とかでもいいんだけど、それはちょっとアレでしょ。お互いに。衛生的にも」
叢崎未和:「ううっ」
叢崎未和:「…………」
叢崎未和:少女の血色のよいかんばせを見る。
叢崎未和:白い首筋を。小柄だがやせぱちではなく、程よく肉のついた肢体に視線を巡らせる。
叢崎未和:「(美味しそうだな、みづるの血…………)」
叢崎未和:ふらふらと、彼女に引き寄せられるように立ち上がって。
叢崎未和:「はい駄目ーーーー!!!!」
叢崎未和:思い切り自分をひっぱたく。
白塚 美弦:「わ。びっくりした」
叢崎未和:「へぶんっ」
叢崎未和:もんどりうって倒れる。
叢崎未和:「へへ……ベッドがあって助かった……じゃなくて。これはうだうだしてられないね。マジで」
白塚 美弦:「も~」
白塚 美弦:「わかりました」
白塚 美弦:「やりやすいように」
白塚 美弦:「一つ、許可をします」
叢崎未和:「許可」
白塚 美弦:「選んでくれたら、返事を保留しなくていいです」
白塚 美弦:「それがどのような返事であっても」
叢崎未和:「……や、今のでちゃんと覚悟は固まったよ。ちょっと襲いかけたから踏みとどまっただけで……」
白塚 美弦:「そう、どうする?」
叢崎未和:「それに飛びついたらさ」
叢崎未和:少し難しい顔をして。「本末転倒だ。私が正気に戻るための材料が減っちゃうじゃない」
叢崎未和:あるいは、少し怖れているのかもしれないな、と思った。
白塚 美弦:「まぁ。そうだけど」
白塚 美弦:「それでも返事がどうあれ、私のことに思うところができるわけじゃない?」
白塚 美弦:「それをもって、正気に戻る材料とするのもいいかな、と思ったんだけど」
白塚 美弦:「保留でもいいなら保留でもいいよ」
叢崎未和:答えを出してしまう事。彼女の気持ちを受け入れることも、彼女が私の魂のアンカーでなくなってしまうことも。……そして、もう一つの錨は私を必要としていない。
叢崎未和:「…………恋ってさ」
白塚 美弦:「うん?」
叢崎未和:「そんなに、相手に全てを委ねてしまえるものなの?」
白塚 美弦:「委ねてないもん」
白塚 美弦:「私はわたしなりの一線を保ってるつもりだもん」
叢崎未和:「……へへへ。こりゃ失礼」
叢崎未和:「じゃ、チューしよ」
白塚 美弦:「さらっといったなぁ」
叢崎未和:すす、と体を寄せる。
白塚 美弦:「………」受け入れるというか、喜んで、といった風ではある。
叢崎未和:「ここまで結構悩んだっつーの」
白塚 美弦:「そうなんだ。ありがと」
叢崎未和:「色々抜きにしても、全然嫌じゃないんだ。みっちーとそうするの」
叢崎未和:「これは私がきみのことを好きって事なのかなぁ」
叢崎未和:「なんて……へへ。それは正気の時の私に聞くとして」
白塚 美弦:「ふーーーん」あまり眼が合わないのが見て取れるだろう。
叢崎未和:「うふふ」
叢崎未和:「ほら、こっち向いて」
白塚 美弦:「は、はい……」
叢崎未和:首の後ろに回した手で頬を撫でる。向き合う。
叢崎未和:「ん……」
白塚 美弦:「……っ」
叢崎未和:つい最近触れ合ったばかりの唇をまた密着させ、舌で割り開く。
叢崎未和:「(変な感じだな……)」
叢崎未和:生暖かくて、ぬるぬるしている。どちらも慣れているわけでもないから、気持ちいい、という感じではないのに。
叢崎未和:なんだか安心する。
白塚 美弦:溺れてはいけない。これは必要な行為だと無理やり解釈して、正気を保つ。成分を分析。解析。適合させる。
白塚 美弦:……そう、解釈するのも少し失礼で勿体ないと思ったけど。
白塚 美弦:でも、やるべきことをやらないと、未和ちゃんの覚悟を無駄にしてしまうから。
白塚 美弦:適合物質を生成。トリガーを未和ちゃんの感情に設定。
白塚 美弦:物質がちゃんと体内に届くように、舌を強く絡ませて。唾液とともに幻覚物質を送り込む。
叢崎未和:「(いっぱいいっぱいになってるな……)」
叢崎未和:眠たげに開かれた目で、彼女の顔を覗き込む。
叢崎未和:必死に能力を制御している。耽溺している様子はない。告白されてこのかたずっとそうだ。私に誠実であろうとしている。
叢崎未和:「んぅ……」こくり、
叢崎未和:とろりとした彼女のそれを燕下する。暖かい。
白塚 美弦:「……ん」もう終わったから、いつでも大丈夫。そう伝えるかのように、未和ちゃんの肩を叩く。
白塚 美弦:終わってもいいけど、自分では終わらせたくない。そういう感情を抱いたがゆえの行動。
叢崎未和:「(かわいいな)」
叢崎未和:そのままベッドに押し倒す。「(考えてることが分かり易くて)」
白塚 美弦:「……!?」
叢崎未和:「(もっと色々してあげたら……最後までやっちゃったら。どんな顔をするんだろう)」
叢崎未和:「(怒るかな。絶望するかな……それは……)」息継ぎに離した口が三日月のような笑みを形作る。
白塚 美弦:怯え。困惑。期待。不安。嬉しさ。どれもが共存するような表情を見せる。
叢崎未和:上着をはだけるように、矮躯に手が伸び──────
叢崎未和:「! っ────」
叢崎未和:二つの誓いがフラッシュバックする。
叢崎未和:「ぁ、ぐ……」頭を押さえてよろける。
白塚 美弦:「わ。大丈夫?」
叢崎未和:「き…………効いた──────」
叢崎未和:「みっち!」
叢崎未和:血相を変えて、彼女の様子を確認する。
叢崎未和:「ごめん、私──」
叢崎未和:頭を振る。
白塚 美弦:「ん……大丈夫だよ」
叢崎未和:「大丈夫なもんかよ……っ、はぁーーー」
叢崎未和:抱き起して、抱き締める。
白塚 美弦:「……ゎ」
叢崎未和:「みっちー、ごめん、みっちー…………ありがとう………………」
白塚 美弦:「……よくわからないけど、どういたしまして」
叢崎未和:「いま早速仕事した。何回まで効く、と思う?」
叢崎未和:肝が冷える。もう少し効きが遅かったら、私は何をしていた?
叢崎未和:心拍が早い。嫌な汗が噴き出る。
白塚 美弦:「それはよかった」
白塚 美弦:「回数はわからないけど、かなり持続すると思う」
白塚 美弦:「どんなに回数が重なったとしても」
白塚 美弦:「あと半月はもつかな」
叢崎未和:「最高だよ」
白塚 美弦:「伊達にねずみを操れるわけではないのです」
叢崎未和:ぽん、と背中を叩いて、小さくて自分より少しだけ体温の高い、その体を解放する。
叢崎未和:「見直したし、見直したし、見直した」
白塚 美弦:「ん」一瞬だけ名残惜しそうにするが、その表情はすぐに隠されて、いつもの笑顔に戻っている。
白塚 美弦:「それは嬉しいな」
白塚 美弦:「私、この選択を迫ったことで、嫌われるかもってちょっと不安だったから」
叢崎未和:申し訳なさそうに笑い返す。
叢崎未和:「ふふ、その不安、旭さんの傍でギャーギャーやってた私にも分けてやりたい」
叢崎未和:それから、少し言葉を切って。
叢崎未和:「……答えはさ、今は出せないや。でも、すぐだと思う」
白塚 美弦:「ん。わかった」
白塚 美弦:「私もいきなりだったからね」
叢崎未和:「私は私の事が分からない。けれど…………」
叢崎未和:「けれど、きみの事は分かるよ。今日、もっとよく分かった」
叢崎未和:「きみがいてよかった。美弦。かけがえが無くて、確かな。私のともだち」
叢崎未和:「確かであるほど不安だ。なんて言った。あんなのは嘘だよ」
叢崎未和:「今は、嘘だったってわかる。こうやって分かっていく足がかりになる」
白塚 美弦:「うんうん」
白塚 美弦:「私も、今日で未和ちゃんのことだいぶ理解度深まった気がして嬉しいな」
白塚 美弦:「体液の成分分析もしちゃったしね」冗談めかして言う。
叢崎未和:「……それは危険人物として?」冗談のように。
叢崎未和:同じく、返す。
白塚 美弦:「んー」
叢崎未和:「こらこら、引っ張られるとドキドキするだろ」
叢崎未和:アホ毛をくりくりする。
白塚 美弦:「えードキドキしてくれるんだ」
叢崎未和:くすくすと笑う。
白塚 美弦:「大好きな人として、とはいわない。今はね」
白塚 美弦:「今適切な表現で言うなら」
叢崎未和:「……うん」
白塚 美弦:「大事な友だちとして、かな」
白塚 美弦:「それはそうと」
白塚 美弦:「食べすぎには注意だぞー。塩分過多です」
叢崎未和:「あ゛ーーーーーっ! 乙女の秘密!!」
白塚 美弦:「へへー」
白塚 美弦:「合意の上でもらったデータです」
叢崎未和:「……摂食過多は続いちゃうなぁ。他に比べて大したのじゃないし」
叢崎未和:「というより衝動の発露が自動パッシブだからか。寝不足も改善されなさそう」
叢崎未和:「本当に乙女にあるまじき生活してる! 絶対なんとかしてやるからな……」
白塚 美弦:「そうだぞー。私にここまでさせたんだからなー」
叢崎未和:具体性のない意気込みも、空々しくは響かなかった。彼女がいる。
白塚 美弦:大切な友達 叢崎未和/◯信頼感/照れ でロイス取得。
叢崎未和:白塚美弦 感謝〇/依存



日室 晴陽:メタルペッカーとの戦闘を終えた後。
日室 晴陽:新しく見つかった手掛かりの調査や傷の手当てのために、三人はセーフハウスへと身を寄せていた。
日室 晴陽:「んじゃ霞、傷見せて」
月城霞:「うん」
月城霞:何の気なしに制服の上を脱ぎ、シャツを捲る。
月城霞:鍛えられた、しかし肉の付きづらい白い肌に、リザレクトで癒え切らなかった生々しい傷跡が残っている。
日室 晴陽:こちらも支部の発掘作業の一環で見つけた簡易の手術キットを開く。
月城霞:「……自分で出来るわ、これくらい」
日室 晴陽:「いーからいーから。背中とかのは自分じゃ見づらいっしょ?」
日室 晴陽:「縫わなきゃってレベルのは無いし、消毒と包帯でじゅーぶんかな」
月城霞:「む……」そう言われると、反論の理屈は出てこない。
月城霞:「……それじゃあ、お願い」大人しく背中を向ける。
日室 晴陽:「はいはい。ちょい染みるよ」
日室 晴陽:言いながら手際よく消毒液を脱脂綿に染み込ませ、そっとその背の傷に添える。
月城霞:「……」じわりと痛みが滲むが、声は上げない。ほんの一瞬、僅かに眉を動かすのみ。
月城霞:「日室は?怪我、どうなの」
日室 晴陽:「んー?へーきへーき」
日室 晴陽:「あたしはあんま耐久重視でもないしね」
日室 晴陽:肩側から腰の方へと下るように。傷の表面をさらりとなぞっていく。
月城霞:「……平気かどうかは主観で判断することではないでしょう」
月城霞:肩越しに振り返り「見せて」
日室 晴陽:「わ!?急に動かんでって!」
日室 晴陽:一応、仕事モードだし雑念を払って入るけど。服を乱した好きな子を真正面から見るのはちょっとこう、心臓に悪い。
月城霞:「防御力のある能力で無いのだから、余計に心配よ」
月城霞:まるで気にする様子も無い。
月城霞:「私が守り切れるとは限らないでしょう」
日室 晴陽:「……えぇと……」
日室 晴陽:意識されてないというか、霞的に意識することでもないのは分かってるし。真面目に気にしてる霞が引く訳もないし。
日室 晴陽:「……は~い」
日室 晴陽:おとなしく自分も傷を晒す。
月城霞:「……」それを見て眉間に皺を寄せる。
月城霞:「私より余程深いじゃない」
日室 晴陽:回復力耐久力共に霞より劣る。当然、傷自体も深ければ治りも遅い訳で。
月城霞:「治療するなら君のほうからでしょう。日室はそういうところがあるよね」
日室 晴陽:「や~……ガード型の霞の方が優先度高いしな~って」
日室 晴陽:困ったように笑いつつ、若干目線を逸らす。
月城霞:「緊急時ならともかく、今は関係ない」
月城霞:「私はもういいから。ほら、代わって」
日室 晴陽:「緊急は緊急じゃんか。物資も限られてるしさあ」
日室 晴陽:ぶつぶつ言いつつも最後に包帯だけ巻いて、大人しくキットを渡す。
月城 旭:と、そこに扉の開く音。
月城霞:「日室はそうやって、実情に関わらず自分を二の次にする傾向がある」
月城霞:「非効率的だよ。君が……」その音に目を向ける。
月城 旭:「わっと……ああ、いや」肌を晒す二人が目に入り。一瞬、驚いたようにまばたきをして。「治療中か」
月城霞:「姉さん」
月城 旭:「や、帰ったよ~」
日室 晴陽:「お帰りですー」 笑って応じるも、微妙に気まずい。
月城 旭:ふらふらと手を振りながら、その辺のソファに腰かける。
月城霞:「お帰りなさい。何か収穫はあった?」やはり気にする様子はない。
月城 旭:二人の仲を見ていると、また胸につかえるようなものを感じるけれど。仕事上のパートナーなら普通でしょ、と自分を説得しつつ表情には出さない。
月城 旭:「ああ……さっきの"メタルペッカー"の戦闘で、ほら」
月城 旭:「無茶な力の振りまき方してたから……あれに影響された人がいないか、確認して回ってた」
月城霞:「そうだね。大丈夫だった?」
月城霞:「日室、染みるよ」傷を消毒する。
日室 晴陽:「あ、うん。……っ」
日室 晴陽:軽く目を瞑りながら声を抑える。
月城 旭:「うん。まあ……幸い、そういう人は見当たらなかったんだけど」
月城 旭:何ともなく二人の治療の様子を眺めながら、言葉を続ける。
月城 旭:「収穫……って言っていいのかな。これは」少し、口にするのを躊躇うようなそぶりを見せて。
月城 旭:「消えたんだよね。人が、目の前で」
月城霞:「……。それは、“メタルペッカー”の能力……」
月城霞:「では、ないよね」
日室 晴陽:「ん。あのとーり、錬金能力だけだったはずだし」
日室 晴陽:「それが出来たら脅しに使ってくるっしょ、あの子なら」
月城 旭:「そうでしょうね」
日室 晴陽:「てことはー……推定スネグラチカの仕業って感じです?」
月城 旭:「私の"目"の前で消えたんだ。まずもって視覚的な手品の類じゃない」
月城 旭:「……今のところ、その可能性が一番近いと思うな」
月城霞:「“スネグラチカ”が人を消した……」
月城霞:「……消えたのは、その人だけ?」
月城 旭:「周りの人は、あの子が消えた事にも気付かない様子だった。きっと、騒ぎになっていないだけで……」
月城 旭:「私達が痕跡を調べれば、多分もっと出てくるはず」
月城霞:「……。……ねえ、日室」
日室 晴陽:「例の認識汚染の一部ってことかな……うん?」
月城霞:「夏期講習、ここ何日か……少し休みの生徒が多いと思わなかった?」
日室 晴陽:「……そういや、結構休み出てたかも」
月城霞:「……関係があるとしたら?」
日室 晴陽:「せんせーも特に触れてなかったし、あれもその一部かもーって?」
月城 旭:「……休んでる子の家、調べてもいいかもね。プリントを届けに来ました、とでも言って」
月城 旭:「どの程度認識汚染が働いているかは分からないけど。うちにそんな子はいない、とでも言われるのかな……」
月城霞:「……そうね。もし懸念が正しければ……想像より事態は良くない」
月城霞:「“スネグラチカ”の情報も、殆ど分かっていないのに……」
月城霞:前から腕を回し、半ば抱き着くようにして包帯を巻いていく。
日室 晴陽:「……あたしらが見えてないとこでも事が進んでるって感じかぁ」
日室 晴陽:邪魔にならないよう腕を上げ、大人しく包帯を巻かれる。
月城霞:「あれから私たちで“ねじ巻き”についても調べたけれど、関係があるかどうかは……正直なところ、よく分かってない」
月城 旭:「メタルペッカーが言ってた人か。よく分からない、って?」
月城霞:「“ペニードレッド”セルのリーダーを倒したのは事実みたい」
月城霞:「“ねじ巻き”が彼らと協力していて、それを裏切ったのも本当」
月城霞:「でも、“ねじ巻き”の人物像は、今のところ全く不明のまま」
月城 旭:「ふーむ」ソファの肘かけに頬杖をついて。
月城 旭:「痕跡、消したのかもね。自分が裏切る時に」
月城霞:「“ねじ巻き”という名も、本人のコードというより外から呼ばれている異名のようなものらしいわ」
日室 晴陽:「裏切る前提だから渡す情報絞ってたとか?」
月城霞:「あるいは……」
月城霞:「“ねじ巻き”が“スネグラチカ”だというなら、認識汚染の応用でそういったことも可能かもしれない」
月城霞:「あくまで仮説だけれど」
月城霞:手当を終えて身を離す。
日室 晴陽:「サンキュ」 まくっていたシャツを下す。
月城 旭:「ははあ……つくづく厄介だなぁ、認識汚染」
月城霞:「まあ、UGNわたしたちがしている記憶処理も、似たようなものではあるけれど」
月城霞:「それにしても、範囲が桁違いね」
月城 旭:「出逢っても気付かない……相手の元に痕跡が残らない、か」
月城 旭:「案外、私達ももうどこかで会っていたりしてね」
月城 旭:髪を指でくるくると回しながら、しれっと言う。
日室 晴陽:「うわぁ……それは無いと思いたいですけどねぇ」
月城霞:「“ねじ巻き”がこの街にいるというなら、あり得る話だね」
月城 旭:(……弱ったな。いや……二人の手前、弱音なんて吐けないけどさ)
月城 旭:(もしも、あの子みたいに……私の目の前で、霞ちゃんが消えちゃったら。実際、私、何ができるんだろうね)
月城 旭:表情には色も出さないが。目の前で1人守れなかったという事実が、自分にはそれなりに堪えているらしい……と、どこか他人事のように思う。
月城霞:「ただ、だとすれば最悪なのは」
月城霞:「“ねじ巻き”と“スネグラチカ”が別々の存在で、どちらも私たちの敵になることね」
日室 晴陽:「それキッツいなぁー。スネグラチカだけでも手いっぱいなのに」
月城霞:「“ペニードレッド”のリーダーも強力なオーヴァードだった。“ねじ巻き”がそれ以上だとすれば……」
月城霞:「……。……どうにか、こちらの味方にするか、せめて中立であってくれたらいいけど」
月城 旭:「この状況で、ここに閉じ込められていて。"スネグラチカ"に味方する人はいない……と思いたいけどなあ」
日室 晴陽:「そういや、そもそも何が目的なんだろーね」
日室 晴陽:「わざわざ味方として接触してから"ペニードレッド"を潰すってのもまあまあ手間だと思うし」
日室 晴陽:「自分の痕跡とか素性隠すのもそうだし。何がしたいんだろ」
月城霞:「既にジャームだとすれば、理屈では測れないこともあるかもしれないけれどね」
月城 旭:「"ペニードレッド"が、そうしなきゃいけないくらい脅威だったってことは?」
日室 晴陽:「……この騒動で真っ先に支部が狙われたみたいに?」
月城 旭:「この街で残ってたって事は、吹いて消えるような組織じゃなかったんでしょう。少なくとも」
日室 晴陽:「まあ、あたしらとちょいちょいぶつかってたくらいですしね」
日室 晴陽:「よし潰そう!で潰せる感じではなかったかな」
月城霞:「確かに厄介なセルではあったけれど……でも、目的としては単純な利益目的、テロ組織というより暴力団の延長に近いセルだった」
月城霞:「その後、“ねじ巻き”が徒党を組んだりセルを立ち上げたという情報は無いし」
月城霞:「だとすれば、FH側があまり積極的に潰す理由は思い当たらないわね。セルリーダーに隠したい情報を握られていたのかな」
月城 旭:「そっか、ううん……」いくつかメモを取りながら、首を捻る。
日室 晴陽:「ああ、リーダーがピンポイントで邪魔だった可能性はあるか。セルがつぶれたのは結果論だもんね」
月城 旭:「秘密主義っぽいしね……想像しかできないけど」
月城霞:「もしくは、やはりジャームなのかもしれない。闘争や殺戮衝動を抱いたジャームなら、筋道立った理由はいらない」
日室 晴陽:「ジャームじゃないと良いなぁ……そういうタイプ、問答無用で敵になりやすいし」
日室 晴陽:「筋道たってないからスネグラチカガン無視でこっち狙いとかもありえるじゃん」
月城 旭:「ジャームか……"スネグラチカ"も、ジャームなんだよね」
月城 旭:「いや、今の流れとは関係ないんだけども」
月城霞:「情報ではそうね。出力を見ても、通常のオーヴァードとは考えにくい」
月城 旭:「あれが衝動に呑まれた存在だって言うなら、街を壊すまでに一か月も我慢して潜伏できるものなのかなぁって」
月城 旭:「もっとこう……破壊衝動とかが目的なら、どんどん表に出て暴れたくなるものじゃない?私がよく分かってないだけかな……」
月城霞:「……確かにそうね」顎に手を当てて考え込む。
日室 晴陽:「単に潜伏してるんじゃなくて、それが街を潰すために必要なプロセスって線は?」
日室 晴陽:「実際人消えてるし。単に表に見えてないってだけで今もなんかしてる最中なんかも」
月城 旭:「我慢してるんじゃなくて、するしかない……ってことか」
月城霞:「……なるほど。これまでの報告でも、出現までおよそ1カ月という期間は共通している」
月城霞:「そうせざるを得ないということだとすれば、少なくとも月末までは準備に当てて問題ないということになるかな……」
月城 旭:「その時までは襲ってくる事はない、って訳か」途中で犠牲者は増えるけれど、とはわざわざ口にしない。
月城霞:「……奴を、無理やり引きずり出せればいいのだけれど。不完全な状態で戦えれば……」
月城 旭:「……ああ、そういう考え方もあるね」
日室 晴陽:「向こうが準備してる最中なら、それが済む前に仕掛けんのがまあ無難だよね」
日室 晴陽:「問題はその引きずり出し方が分かんないってとこだけど……」
月城霞:「口惜しいわね……」難しい顔をする。
月城 旭:「ま、少しは前進したんじゃないかな。それが分かっただけでも」
日室 晴陽:「ま、完全手詰まりより良くなりましたよね」
日室 晴陽:「まだ調べられてないとこもあるし、調べる以外にすることもあるし」
日室 晴陽:「そういう意味じゃメタルペッカーに感謝かも」
月城霞:「……そうね。何も出来ずに手をこまねいているより、ずっといい」
月城霞:本人の気性ゆえか、心底からの言葉のように息を吐く。
月城霞:「トレーニングばかりでオーバーワークになりそうだったから、助かる」
月城 旭:「時間内に見つけ出す……要するにかくれんぼだ。私、鬼やるのはまあまあ得意だよ」
日室 晴陽:「感知関連ですもんね。あたしその辺全然出来ないし、助かります」
月城霞:「うん。お願いね、姉さん」
月城 旭:「そういうこと。お姉ちゃんを頼りなさい」へらへらした笑みを浮かべて、立ち上がり。
月城 旭:「……ねえ、霞ちゃん」おもむろに、妹の傍へと寄る。
月城霞:「?」顔を上げて。「なに?」
月城 旭:「えいっ」ぎゅう、と抱き寄せる。……その存在を確かめるように。
月城霞:「……む……」
月城霞:されるがままに抱き締められて、きょとんとした顔をする。
月城 旭:細くもよく鍛えられた肢体と、柔らかな肌の感触が君を包んで。数秒の後に離れる。
月城霞:「どうしたの、姉さん」
月城霞:「寒い?クーラー、温度上げましょうか」
月城 旭:「……えへへ、大丈夫大丈夫。ちょっとね」誤魔化すような笑みを浮かべながら。
月城 旭:「やる気を充電したくなっただけ。もう頑張れるよ、うん」
月城霞:「……そう?」不思議そうに、だが姉の柔らかい表情を見て、「それなら、良かったわ」
月城 旭:あまり人前で甘えちゃいけないと、分かってはいるのだけれど。……それでもそうしたくなったのは、喪失の恐怖からか。あるいは、
月城 旭:彼女がいるからだろうか。(……だとしたら、やっぱり私は悪い子だ)日室さんを横目で見ながら、胸の内でひとりごつ。
日室 晴陽:「……」 いつも通りに見える旭さんの笑みが、いつも通りでないような。そんな気がして。
日室 晴陽:口を挟むでもなく、ただ二人のやり取りを見ていた。



メイン:32 サブ:23





【Middle latter half/叢崎未和】

GM:2手番目を獲得したのは、叢崎さんです。
GM:誰を指名しますか?
叢崎未和:月城旭さんを指名します。
GM:では旭さんは登場侵蝕をお願いします。
月城 旭:月城 旭の侵蝕率を1d10(→ 5)増加 (71 → 76)
GM:サブシーンは日室さん、白塚さん、霞さんになります。
叢崎未和:3dx+9>=12 戦闘訓練判定します
DoubleCross : (3DX10+9>=12) → 10[2,6,10]+10[10]+5[5]+9 → 34 → 成功

月城 旭:すご
叢崎未和:めちゃくちゃ強くなっちゃった
GM:つよすぎ
白塚 美弦:じゃあサブで迎撃設備の構築します~
白塚 美弦:7dx+17>=10
DoubleCross : (7DX10+17>=10) → 10[2,3,3,5,9,9,10]+1[1]+17 → 28 → 成功

日室 晴陽:ペッカーちゃん完全に言いなりじゃん
GM:つよすぎ
GM:ではいい感じに訓練できてチームワークが高まったし、メタルペッカーは言いなりになっていっぱい設備を作りました



叢崎未和:「私が"ねじ巻き"です」
叢崎未和:開口一番、そんな事を言った。
叢崎未和:即席の訓練場での、戦闘訓練中である。
月城 旭:「……へえ?」笑みを張り付けたまま。
叢崎未和:ぽこーんとバッティングマシーンから飛んできたボールを腐食させるのが間に合わず、吹き飛んで転がる。
叢崎未和:「色々考えたんだけど、UGNのみんなに無駄な調査をさせる訳にはいかないから」
月城 旭:「うん、ちょっと待ってね」
月城 旭:彼女の話を聞くために、次弾を装填しかけていたバッティングマシーンの動作を停止させつつ。
叢崎未和:「あ、ありがとう」
月城 旭:「……はい、続けて?」
叢崎未和:「ごめんなさい。何から何まで無駄に面倒をかけちゃって」
叢崎未和:「……頭ごなしに『嘘だろう』とは言わないんだね。旭さん」
月城 旭:「そりゃあね。嘘だったら怒るけど」
月城 旭:「霞ちゃんが、君はもう反省してるって言ってたし。ひとまずはそれを信じる事にする」
叢崎未和:「その節はすいませんでした」深く頭を下げる。
叢崎未和:「もう嘘は言わないよ。それに、話してる途中で憎悪衝動が暴走してあなたに襲い掛かる心配も」
叢崎未和:「みっちーのお陰でなくなった」
月城 旭:「……暴走」
月城 旭:「まあ……どうも、言ってる事がちぐはぐだなとは思ったけど……」訝るような眼を向ける。
叢崎未和:「最初の話をしましょうか」
月城 旭:「……うん、いいよ。衝動の件を隠してた理由も、一旦は置いといてあげる」
叢崎未和:「ありがとうございます。UGNに提出してるやつと違うのも追って説明するね」
叢崎未和:「霞さんたちの家庭訪問で分かってると思いますが。うちはごく普通の家庭で」
叢崎未和:「うーん、やっぱり気付くと敬語になっちゃうな。魂が旭さんをその位置に置いている……」
叢崎未和:「とにかく、小さいころから私は、人が何を考えてるのかがわかったんだよね」
月城 旭:「別にいいよ、喋りやすい方で」
叢崎未和:「喋りやすい方より、喋りたい方だよ」
叢崎未和:「生きやすい側より生きたい側、でしょ」
叢崎未和:じっと、目の前の彼女を見て。
月城 旭:「一緒かなあ、それ。……まあ、さておき」
叢崎未和:「普通の家庭には普通の不和がたくさんある。私はその原因が全部わかった」
月城 旭:「……」
叢崎未和:「育児への不理解、仕事への不理解、家事への不理解、あと母親はヒステリーになりやすかったし、父親はこえがでかいし」
叢崎未和:「そういう細かいのを逐一『なおして』って言って回って、めーっちゃ嫌がられてね」
叢崎未和:「それが最初だったなぁ……」
月城 旭:自分とは真逆だな、と思う。幼い頃の私は、何も分からなかった。たった一つのことの他はなにも。
叢崎未和:最初の宣言と関係のなさそうな、さして悲惨な境遇というわけでもない身の上話を並び立てる。
叢崎未和:「友達を作るのにも失敗したし、仲良くなろうとして頑張って読もうとしたら、もっと嫌がられるようになって」
叢崎未和:「知り合いのいない遠くの高校受けたし、暴力に負けないために剣道とかもやってたりして……」
叢崎未和:「家から出たかったんだよね」
月城 旭:「……そっか」
叢崎未和:「で、ジャームに襲われた。旭さんとどう会ったのか、喋ったっけ」
叢崎未和:『喋ったっけ』というのは、話したかどうかという確認ではない。記憶が消えるより前に『喋った』か、という質問だ。
月城 旭:「君の命を救った、って」
月城 旭:「……詳しい部分は聞いてないかな」
叢崎未和:「なんかその時はね。いいや、って思ったんだ」
叢崎未和:「必死に振り回した竹刀が触れもせずに先端が腐り落ちて」
叢崎未和:「そもそもこんな化物に襲われるなら何しても意味ないじゃん。って」
叢崎未和:「体でかいし、なんか変なオーラ出してるしさ、あんなの人間が相手するものじゃない。そこで」
叢崎未和:「旭さんですよ」
叢崎未和:ぐぐ、と伸びをする。
月城 旭:「ふむ」
叢崎未和:「正直ジャームを初めてみた時」
叢崎未和:「奇麗、って思ったんだよね。余計な事考えてないし、一つの衝動に支配されて、見た目もそれに引っ張られて」
叢崎未和:「だから危なかった」
月城 旭:「……心が読めるんだったよね」
月城 旭:「そのジャームの事も、分かったんだ」
叢崎未和:「もっと奇麗な剣閃ものがあれを斬り倒さなければ。惹かれてあっちに行ってたと思う」
月城 旭:「……」一瞬。綺麗なもの、というのが何なのかわからなくて
叢崎未和:「そう。ジャームの事も────」
叢崎未和:「あなたの事もだよ。旭さん」
叢崎未和:にっこりと笑う。
月城 旭:「ああ。そりゃ……光栄だね」くすりと笑う。
月城 旭:「……私のこと、か」その笑みがほんのわずかに凍り付く。
月城 旭:「そんなに大したことは考えてなかったんじゃないかな……って気がするけど」
叢崎未和:「まさかあの純化された思考が、記憶が逐次吹っ飛んでるからだとは。二度目に会うまでわからなかったけど」
月城 旭:「……ああ、そうか。君、そういうものに惹かれるって言ったな」
叢崎未和:「嬉しかったんだ。すっきりした。あんな化物に憧れるよりずっと、私にとっては……」
叢崎未和:「あ、二度目の時は本当に偶然だよ。ストーカーじゃない」
叢崎未和:と、どうでもいい事を言い添えて。
月城 旭:「二度目……」首を傾げる。さっぱりわからない、という顔。
月城 旭:「……ああ、いいよ気にしなくて。続けて」いつもの事だから、と本題を促す。
叢崎未和:「たまたまジャームと会って、一緒に倒しただけ」
月城 旭:「そう、一緒に……」
月城 旭:事件協力者の事であれば、その時の自分の記録に残しているはずだ。……あるいは、家に置いてある古いノートの中のどれかに、彼女の名があるのだろうか。
叢崎未和:「……恩返ししようと思ったんだ」遠くを見るような視線。
叢崎未和:「記憶がなくなるの、嫌なのかなって思って」
叢崎未和:「私があなたの考えた事を覚えていて。あなたにいつでも投げ渡すことが出来れば、外付けの記憶装置になれる。ここまでが、発端」
月城 旭:「はあ……外付けの記憶装置?」そんな事を考えていた思考が、一気に冷却される。
月城 旭:「きみ、ほんとに危なっかしい事を考えるな」呆れたような、感心したような声音。
叢崎未和:「うん、だから修行しようと思ってさ。何回も記憶装置として使うなら、万に一つも旭さんの脳に変な損傷を与える可能性があったら嫌でしょ」
叢崎未和:「『共感』の能力で、いろんなレネゲイドを取り込んで、それらを正確に使いこなすことで、自分の能力の把握が進む実感があった。それこそ私の腐食能力は、はじめに取り込んだバロールの影響を強く受けたものだし」
叢崎未和:「こうしてできたのが『ねじ巻き』というわけ」
叢崎未和:キャラシートを公開します。
叢崎未和(キャラシート)
叢崎未和:Dロイス【工作員】を解除。
月城 旭:「……。いろんなレネゲイドを取り込んで、って」
叢崎未和:「ねじ巻きの契約は、十二の倍数個の衝動を励起することで行使される。反動もデカいけど」
叢崎未和:「実体のあるものなら大体削り取れる。旭さんの剣と同じさ」
月城 旭:「……」笑みの消えた表情で君を見つめる。
叢崎未和:「まだ未完成だ……未完成の能力だ。でも、完成は近づいてる」
叢崎未和:「ここまで話しても、『憎悪』も『闘争』も暴発してない。みっちーに縛られたことで掌握が進んだのかな」
月城 旭:「……何。まだ、完成させるつもりなんだ」
叢崎未和:「うん」
叢崎未和:「UGNの訓練施設もよく使わせて貰ってた。力の使い方を慣らすために」
月城 旭:「この街がこんな状況に陥ってるのに。私なんかの記憶のために」
叢崎未和:「……『私なんか』か。ははは」
叢崎未和:「旭さんはさ」
叢崎未和:「どうして霞さんの事が大事なの?」
月城 旭:「……」
叢崎未和:「家族だから?」
月城 旭:「違うよ」
叢崎未和:くすくすと笑う。「そうでしょ」
叢崎未和:「そうだと思った」
月城 旭:「……君の語った言葉が本当なら」
月城 旭:「分かっているんでしょう?わざわざ私の口を通して伝えるまでもなく」
叢崎未和:「今は読めないよ。だから、変わってしまっているかもしれない」
月城 旭:溜息を吐いて。
月城 旭:「……あの子が、私に意味をくれたの」
月城 旭:「何もかもなくして、空っぽだった私を……それでも、お姉ちゃんと呼んでくれた」
月城 旭:「私を必要だと言ってくれた。だから……私は、今日まで生きて来られた」
叢崎未和:「私はね、旭さん」
叢崎未和:「あなたみたいな難儀な力を持ってるわけでは全然ないけれど」
叢崎未和:「何もかも失くして、空っぽになりかけた時にあなたに助けて貰ったんだ」
月城 旭:「……」
叢崎未和:「剣は象徴だったんだ」
叢崎未和:「それからの世界を一人で生きていくための、心の手綱だった、それが何をする事もなく腐り果てて潰れ消えた」
叢崎未和:「もう私の左手は剣を握れないけれど」
叢崎未和:「あなたの刃鋼の煌めきが胸に残っている。そんなあなたを助けたくなったことが、そんなに変かな」
叢崎未和:とん、と自分の心臓のあるあたりを親指で突く。
月城 旭:彼女の語りに、共感する部分はある。だからと言って、今の彼女を肯定していいのか?……否だ、と月城旭は結論する。
月城 旭:「……ずるい言い方をするな。だけど」
叢崎未和:「ま、この体たらくではあるからねぇ」自嘲するように笑う。
月城 旭:「いつかの私が、君にそんな事を頼んだのかな。違うだろ」
叢崎未和:「ふはっはっは」
叢崎未和:「…………そうだねぇ」
叢崎未和:「サプライズのつもりだったんだよね。あとあといっぱい記憶を渡せるように、いっぱい会いに行った。手段と目的が逆転しちゃったのはいつだったか」
月城 旭:「そうやって……君のしたことで、記憶を維持できるようになって」
月城 旭:「私が喜ぶと思っていたのかな」
叢崎未和:何かに耐えるかのように、顔をしかめる。
叢崎未和:先ほどから、小さく何度もそれが起きている。
月城 旭:「……いつか、私が助けようとした君を」
月城 旭:君の左肩に触れる。その先に、腕がない事を確かめて
月城 旭:「こんな風に、してまでさぁ」
叢崎未和:「あ、やっぱりちゃんと注目するとバレちゃうか」
叢崎未和:「バレちゃうというか、自己催眠のすごいやつなんだよね。普段は私もない事をぼんやり忘れてるくらいなのに」
月城 旭:「自分で言っただろ。左手は剣を握れない、って」
叢崎未和:「あっと」
叢崎未和:呪いに抗うのに必死で気付いていなかった。
叢崎未和:「やー……はははは…………」
叢崎未和:「ごめんなさい」
月城 旭:「……気付くに決まってるだろ。気付けないやつは、ばかだよ」後半の言葉は、自分自身に向けたようで。
月城 旭:怒ったような、今にも泣きだしそうな。色の入り混じった表情が、君の目の前にある。
叢崎未和:「喜ぶと思ってたんだ、後半はもう意識がぐちゃぐちゃで、そう思ってないとぽっきり折れそうだった」
叢崎未和:「みっちーが来てくれてから、だいぶマシになったなぁ。あの子、めちゃくちゃな話しても結構楽しそうに聞いてくれるんだ」
叢崎未和:「それこそ話の前後で主義主張が180度変わるような支離滅裂なやつでもね」
月城 旭:「だったら……違うでしょう」
叢崎未和:「『完成してない』私でも、居ていーんだな、って。うん?」
月城 旭:「謝罪なんて必要ない。私の、記憶の事だって……君が気にかける必要はない」
月城 旭:「私はこれでも今、とっても幸せだからね」
月城 旭:「それ以上なんて、望まなくていい……初めから、望む必要はなかった」
叢崎未和:「それよそれ。そうらしいからね」困ったように笑っている。
叢崎未和:「ねえ、覚えてないと思うけどさ」
叢崎未和:「旭さん、これまで何度か物事が憶えてられない事、辛そうにしてたぜ」
叢崎未和:「いいじゃん別に。私、元わるいFHエージェントだけどさ」
月城 旭:全てを覚えて居られたら、と願った事は何度もある。
月城 旭:明日になれば全てを忘れてしまっているんじゃないかって……布団の中で恐怖に涙を流した夜は、何度もある。
月城 旭:それでも、今この子の前では虚勢を通さなくちゃいけないと思った。
月城 旭:「……そうじゃないんだって。私は、大丈夫だから……」
月城 旭:「君が、今。言うべきなのは」
月城 旭:じっと、射抜くように君を見据える。
叢崎未和:「ん。なに?」
月城 旭:「"助けて"、だろ」
叢崎未和:「くっ」
叢崎未和:「くくくくく………………」
叢崎未和:「そうじゃないんだよ。旭さん、そうじゃないよ」
叢崎未和:「私達は『助けて』って言うのがド下手くそだ」
叢崎未和:「反転可能性テストだよ。もちろん、そりゃ助けて欲しいけど…………」
叢崎未和:「でもさ、みっちーのお陰で、どん底ってわけじゃない。それに」
叢崎未和:「最初から言ってたでしょ」
叢崎未和:「私はあなたに助けて欲しい時はあるよ」
叢崎未和:「あなたを私が助けてやりたいときだって、あるんだ」
叢崎未和:「友達になろう、月城旭」
月城 旭:「……」
叢崎未和:濁った瞳で、馬鹿の一つ覚えのように繰り返していたタームを、もう一度口にする。
叢崎未和:自我の混濁に苛まれていても、その表情は真剣だ。
叢崎未和:右手を差し出した。
月城 旭:「……やめてよ。私は……」
叢崎未和:「嫌だ」
叢崎未和:「私は損切りが出来ないんだ。これまでずっと、ありとあらゆる努力を方向音痴に突っ走ってきた」
月城 旭:「私が、友達になったら」
月城 旭:「君はまた、同じような事を繰り返すだろ……」
月城 旭:「私の思い出を繋ぎ止めるために、自分の脳を道具みたいに使って」
叢崎未和:「人間の脳の記憶容量は」
叢崎未和:「人間の一生分よりずっと多いよ。旭さんの能力の代償は、それすら食いつぶすというだけ」
叢崎未和:「道具じゃない。言ったはずだ」
叢崎未和:「なるんだ」
叢崎未和:「友達だ」
叢崎未和:その言葉に縋るように。
月城 旭:「……ダメだ。ダメだよ、そんなのは」
叢崎未和:頭を押さえようとした手が止まる。
叢崎未和:ぴくりと動きかけた表情筋を無理やり押し留める。
月城 旭:「君が止まれないと言うなら、私が。その努力を止めてやる……止めてやらなくちゃいけない」
月城 旭:「月城旭は、困ってる人の味方なんだ」
叢崎未和:解放。無視。 吸血。棄却。 飢餓。棄却。 殺戮。棄却。 破壊。棄却。
叢崎未和:加虐。棄却。 嫌悪。棄却。 闘争。棄却。 妄想。棄却。 自傷。棄却。
叢崎未和:今まさに行われようとしている宣言への恐怖に抗う。
叢崎未和:ひっきりなしに彼女に向けられそうになる憎悪に抗う。
月城 旭:「だから、私に助けられてよ……月城旭に、縛られないで。私に、罪を重ねさせないで」
叢崎未和:「罪なんかじゃない!」
月城 旭:「違わないでしょ! 君をそんな風にしたのが、私なんだ……!」
叢崎未和:「重荷は錨だ! 絆が人の意志の道標だ!」
叢崎未和:「私はこれまでの全部、間違ってたとしても……」
叢崎未和:「今だけは間違えない。絶対に」
叢崎未和:強引に彼女の手を取ろうとする。本当に
叢崎未和:本当に本当に彼女がそう思っているのなら、この手は空を切る。知っている。それでも。
叢崎未和:この時は、手を伸ばさないわけにはいかなかった。
月城 旭:「……ああ」自分の"友達"になるために、色んな物を捨てて進んで来た目の前の少女を
月城 旭:「馬鹿」止めてやるには、幾ばくか遅かったらしいと観念して。……その手を握る。
叢崎未和:ロイスを取得しタイタスに変更。月城旭 崇拝/執着〇
叢崎未和:さらにロイスを取得します。
叢崎未和:「…………はは」
叢崎未和:月城旭 友情〇/連帯感
月城 旭:「知ってると思うけど、私」
月城 旭:「すっごく友達甲斐のないやつだからな」
月城 旭:「君の事も、ここで交わした言葉も……きっと。すぐに忘れるから」……"きっと"と言った。無自覚の内に、僅かな期待を込めて。
叢崎未和:「だったら全部、全部全部思い出させてやる」
月城 旭:ロイス取得します。叢崎未和:〇期待/(秘匿)



月城霞:蝉時雨の降りしきる夏のアスファルトの上、黙々と大きな建材を運んでいく。
月城霞:“メタルペッカー”が大量に錬成した、“スネグラチカ”への迎撃設備。
月城霞:防壁や足場、砲台の類、果てはバリスタまで。様々な武装を確保できたが、
月城霞:それを街中に配置するのは別の仕事。即ち肉体労働だ。
日室 晴陽:「あっづ~~~」 学校指定の体操着姿。髪は高くくくったポニーテール。
白塚 美弦:「やー。”メタルペッカー”さんいい人でしたね~」
日室 晴陽:「いい人っていうか、うん」
日室 晴陽:「まーまーかわいそうなくらいビビってたね」
月城霞:色気の欠片もない作業着に身を包み、顎から垂れる汗を拭う。
月城霞:「どうやって頼んだの?」
白塚 美弦:「あー、腕切られたのがきつかったかもしれないですね
白塚 美弦:「猫の写真を送りつけたんですよ!いっぱい!あ、幻覚じゃなくてチャットアプリで」
白塚 美弦:「そしたら喜んでくれたみたいで~」
日室 晴陽:「……」 生ぬるいような笑みで黙って聞いている。
月城霞:「猫の写真……そう……」
月城霞:「猫好きなのね」実情はよく理解していない。
日室 晴陽:(どー見てもしろっち相手にビビってたよあれは……)
日室 晴陽:(協力しないとまた脅されるって顔してたよ……)
月城霞:(意外といい子なのかもしれないな……)
月城霞:「とにかく助かったわ。あなたにもお礼を言わせて」
白塚 美弦:「どういたしまして~」ニコニコしている
月城霞:「これで……」積み上げられた防壁の山を見て
月城霞:「少しでも勝率を上げられる」
日室 晴陽:「実際、物資不足ヤバかったもんね」
白塚 美弦:「結構積み上がりましたね。これは勝率に貢献……するといいなぁ」
日室 晴陽:「あたしたちの能力だとカバーできないとこだったし、認識汚染で警察とかも頼れなかったし」
日室 晴陽:「めたっちとしろっち様々だわ」
月城霞:「めたっち……」
白塚 美弦:(未和ちゃんだと「むらっち」になるのかな……)
月城霞:「そういえば、私はあだ名で呼ばないの?日室」
日室 晴陽:「え」
白塚 美弦:「あだ名で呼んでないんですか?」
白塚 美弦:「仲良さそうなのに」
日室 晴陽:「や、仲は良いよ。勿論」
日室 晴陽:だから、霞をあだ名で呼ばないというよりは。霞以外は名前を呼ばないという方が近い(年上の旭さんは別として)んだけど。
白塚 美弦:「いや、私も未和ちゃんのことは未和ちゃんって呼んでるけど、それは私が普段あだ名で人を余り呼ばないからで……」小さな声でごにょごにょ
月城霞:「……ごめん、何か変なことを聞いたかな」
月城霞:「法則性が気になっただけなのだけど……」
日室 晴陽:「……やー」 実際気にされては無さそうだけど、それはそれとして。
白塚 美弦:「法則性……賢そうなこといってる……」アホ丸出しの発言。
月城霞:また何か文脈を読み違えたかと、少し不安げに言う。
日室 晴陽:万が一にも距離置いてるみたいに思わせたくないし。
日室 晴陽:「あたしが、霞は名前で呼びたいなーって思ってる、っていう」
日室 晴陽:「そんだけ」
月城霞:「……そうなの?」
白塚 美弦:「へー。いい響きですもんね。『かすみ』。」
日室 晴陽:「ん。そういうこと」 霞に頷いて。
日室 晴陽:「ね、響き良いんだよね。それにさ、上二文字取るとかすっちになっちゃうからさあ」
日室 晴陽:「それはなんか違うじゃんね」 するりとしろっちへの相槌に移行する。
白塚 美弦:「確かに法則性に従うとそうなりそう……」
月城霞:「響き……そう……」何だか面映ゆい気がする。
白塚 美弦:「ちなみにちなみに」
白塚 美弦:「霞さんは、あだ名で呼ばれたかったりするんですか?」
月城霞:「え……」
月城霞:「あだ名。そうね……」
月城霞:少し考えて、日室に目を向ける。
月城霞:「かすっち……」
日室 晴陽:「……え、そっちで呼ばれる方が良かったりする?」
月城霞:「……」
月城霞:「……そうでもないかもしれないわ。日室には霞、と呼ばれるのに慣れているし、それに……」
月城霞:「姉も、私のことは『霞ちゃん』と呼ぶでしょう」
日室 晴陽:「あー、確かに」
月城霞:「霞、と呼び捨てされるのは殆ど日室だけなの。それが、そうね……何というか……」
月城霞:何と表現するべきか考えて、じっと日室の顔を見て。
月城霞:「……うん……何というか、嫌いじゃない、かな」
日室 晴陽:「……そっか。なら良かった」 安堵を含んだ快活な笑みを浮かべて。
白塚 美弦:「……」二人の様子を見て、微笑ましそうにしながらニコニコと黙っている。
月城霞:「……そういえば」白塚さんに顔を向ける。
白塚 美弦:「ん。はいはいなんでしょう」
月城霞:「“マウス・ブリンガー”……いえ、白塚さん」
白塚 美弦:(おぉ……姓でよんでくれた)
月城霞:「一度聞いてみたかったのだけど、あなた、この事件に巻き込まれる前から、イリーガル登録はしていたのよね」
白塚 美弦:「そうです」
月城霞:「理由を聞いてもいいかしら」
白塚 美弦:「理由……」
白塚 美弦:「んー」
白塚 美弦:「憧れ、ですかね」
白塚 美弦:「人助けするの、憧れなんです」
月城霞:「……憧れ……」
日室 晴陽:「人助けそのものが?」
白塚 美弦:「私は想像突くと思いますけど、ぼんやりしてたりおっちょこちょいだったりで色々と助けてもらうことが」
白塚 美弦:「多かったから」
白塚 美弦:「はい、人助けそのものです」
白塚 美弦:「まぁ、最たるきっかけは」
白塚 美弦:「霞さんのお姉さん、旭さんなんですけどね」
月城霞:「……え」
白塚 美弦:『引っ越す前に会ったときにちょっと助けてもらっちゃって」
月城霞:「姉さんが……?」
白塚 美弦:「あ、私がこちらに引っ越す前ってことです」
白塚 美弦:「そうです!」
白塚 美弦:「それはオーヴァードとか関係ない、もしかした旭さんにとっては些細な人助けだったかもしれない」
白塚 美弦:「けど、それが嬉しくて嬉しくて」
白塚 美弦:「で、私はそういう気を回すのが得意じゃないから」
白塚 美弦:「もっと仕事とかそういう枠?理由みたいな、そういうのがある人助けじゃないと、人助けもできなさそうだったから」
白塚 美弦:「だから、イリーガルとして頑張ろうと思いました」
月城霞:「……そう……」
月城霞:思わぬところで繋がった縁に驚くと同時に、姉を誇らしく思う。
日室 晴陽:「なる~。それで引っ越してきたこの街で旭さんと再会って、マジで不思議な縁じゃんね」
月城霞:「……立派ね、あなたは」
白塚 美弦:「や、そんなことは……いえ、そうですね。ありがとうございます」
月城霞:自分はチルドレンとして生まれ育ち、その通りに生きているに過ぎない。
月城霞:彼女はそうではない。自分で自分のするべきことを、道を選んだのだ。
日室 晴陽:「ね。イリーガルになるってさ、自分から事件に関わるのを選ぶってことだもん」
日室 晴陽:「あたしらみたいに仕事で関わるのが決まってるんじゃなくてさ。それ、マジですごいことだと思う」
月城霞:「……うん」頷く。「そう思う」
日室 晴陽:「今回のこれもめちゃ協力してもらってるもんね。しろっちが居てくれて良かったわ」
白塚 美弦:「わー。褒め殺しじゃないですか。照れちゃいます……」
白塚 美弦:「でも、イリーガルがイリーガルとしてお仕事できることに関しては」
白塚 美弦:「それを正式に仕事としているチルドレンやエージェントさんたちのおかげですから」
白塚 美弦:「そこはお互い様です!」
白塚 美弦:「だから、そうですね……」
白塚 美弦:「まずはこの重いやつ、一緒に運びませんか?」
月城霞:目を瞬く。「……そういう考え方も出来るのね」
日室 晴陽:「そう言ってもらえると、こっちもチルドレンやってる甲斐あるわ。サンキュね」
日室 晴陽:くしゃくしゃと軽くしろっちの頭を撫でて。
月城霞:「……何だか、いいわね。報われる気がする」
月城霞:穏やかな表情で、日室に合わせてぎこちなく頭を撫でる。
白塚 美弦:「わー……!」撫でられ、ちょっとくすぐったそうにする。
日室 晴陽:「じゃ、チルドレンとイリーガルで共同作業と行きますか」
白塚 美弦:「お願いします~」
月城霞:「ええ。まだ作業は山ほど残っているから」
月城霞:積み上げられた建材を見て。
月城霞:「……白塚さん」
白塚 美弦:「はい」
月城霞:「あなた、能力負荷は大きい方?」
白塚 美弦:「軽いほうですよ」
月城霞:「いえ……」
月城霞:「あなたのねずみさんに、これ、運んでもらうことは出来ないかと思って」
白塚 美弦:「幻覚物質生成なんて、人が脳内で興奮物質を作るのと対してかわりませんからね」
白塚 美弦:「あー……」
白塚 美弦:「ねずみさんは」
日室 晴陽:(……ねずみさん……) くすっときそうなのをこっそり堪える。
白塚 美弦:「潰れてしまうかも知れませんね…………」
月城霞:「そう……」心なしか少ししょんぼりしたように。
月城霞:「姉と叢崎さんにも、来てもらえばよかったわね」
日室 晴陽:「まああっちはあっちで話あるっぽかったしね」
日室 晴陽:「訓練は訓練で大事だし。あたしらも後でやっとく?」
月城霞:「そうね。連携を高めておくのは大事」
月城霞:「今回は私たち二人じゃなく、五人だものね」
日室 晴陽:「そうそう。五人での動き方も覚えとかないと」
白塚 美弦:「その人数で連携ってなると大変そうですね」あまり5人程度での連携は経験がない。
月城霞:「白塚さんは、叢崎さんと親しいようだけれど。共闘の経験は?」
白塚 美弦:「実はないです」
白塚 美弦:「イリーガルとしてのお仕事はけっこうバラバラで呼ばれる事が多くて」
月城霞:「それじゃあ、イリーガルとしてでなく、プライベートの友人なのね」
白塚 美弦:「そういうことですね~」
日室 晴陽:「そうなると、みわっちの能力についてもあんま知らない感じ?」
白塚 美弦:「えっ、あー」
白塚 美弦:「おおよそ知ってます」
白塚 美弦:「知ってるんですけど、多分彼女はまだなんか隠している部分がある、と思います」
白塚 美弦:秘密のことには触れずに、しかし嘘をつかずに答える
月城霞:「隠している? ……そうなの?UGNへの報告もしていないということ?」
日室 晴陽:「……やっぱかぁ」
白塚 美弦:「多分、そういうことになると思います」
月城霞:「……やはり再講習を受けてもらう必要があるようね……」
白塚 美弦:「もしかしたら能力検査とかで、UGNのデータに入っている可能性もゼロではないですが」
日室 晴陽:「UGNもその辺万能じゃないかんねぇ。割と最近までウロボロスシンドロームが見つかってなかったりしてるし」
日室 晴陽:「みわっち自身の言動も違和感あるっつーか、なんかありそうとは思ったし」
日室 晴陽:「自分から隠してるんならUGNでも把握しきれてないは全然あるラインだと思う」
白塚 美弦:「なので、友達として言えることは」
白塚 美弦:「注意深く見てあげてほしいのと、この事件が終わったら再講習を受けさせてあげてください」
白塚 美弦:「もちろん、私も注意してみるつもりです!」
月城霞:「注意深く……」考え込む。叢崎未和。彼女を本当に信頼して良いものなのだろうか。
日室 晴陽:「こっちももち、やるつもりだよ。注意の方も講習の方も」
白塚 美弦:「そうでなくとも、結構みちゃうけど……」小さくつぶやいた。
月城霞:だが、白塚の顔を見て、頷く。
月城霞:「……分かったわ」
月城霞:「イリーガルの監督も、UGNの仕事の内よ」
白塚 美弦:「ありがとうございます!」
白塚 美弦:「霞さんって」
白塚 美弦:「割とハートが熱い方ですよね」
月城霞:「……」
白塚 美弦:「もちろん、仕事のうちだからというのもあるんでしょうけど」
月城霞:「……は、ハートが……?」怪訝な顔。
月城霞:「どういうこと……?」
白塚 美弦:「ここで頷いてくれるのは、情にも篤い証拠だと思います」
白塚 美弦:「感情豊かってことです!」
月城霞:「……私が……?」
日室 晴陽:「ね。こう見えて熱いしあったかいんだよ」
月城霞:「ひ、日室まで……」
白塚 美弦:「せっかく可愛らしい顔してるんですから、もっと表情に出してみるといいかもしれませんね!」
月城霞:「可愛らしい……!?」
白塚 美弦:「日室さん、さすが霞さんのことをよく理解していますね!」
日室 晴陽:「そりゃもう、相棒ですから~。それにね、しろっち」
白塚 美弦:「ん、なんでしょう」
日室 晴陽:「今でも、たまにだけど表情に出るんよ」
白塚 美弦:「ほほー」
日室 晴陽:「レア度込みでめっちゃかわいいから探してみ」
白塚 美弦:「わー。探してみます!」
月城霞:「……何を言うのよ……」困惑と気恥ずかしさに上気した顔を逸らす。
白塚 美弦:「日室さんみたいに気が利く人は、観察力も凄いんですね!」
日室 晴陽:「あ、ほらほら今とか!」
白塚 美弦:「ほんとだ~」
月城霞:「~~~……! ……もういいでしょう……!」
月城霞:「休憩は終わり!作業に戻って!」
月城霞:耳を赤くしてそっぽを向いて、建材を抱えて歩いていく。
白塚 美弦:「はーい!」ニコニコしながら。
日室 晴陽:「はいはーい」 けらけら笑いながら後に続く。
白塚 美弦:「じゃあ、”お互い頑張って”いきましょうね、日室さん」
白塚 美弦:含みのあるような、ある程度見透かしているような、声音でいって作業に戻った。



メイン:30 サブ:26





【Middle latter half/日室晴陽】

GM:3番目の手番を獲得したのは日室さんです。
GM:誰を指名しますか?
日室 晴陽:霞を指名します。シチュは事前相談通りで
GM:では日室さんと霞さんは登場侵蝕をお願いします。
月城霞:74+1D10
DoubleCross : (74+1D10) → 74+1[1] → 75

日室 晴陽:日室 晴陽の侵蝕率を1D10(→ 4)増加 (73 → 77)
GM:サブシーンは旭さん、叢崎さん、白塚さんになります。



日室晴陽 自室
日室 晴陽:「んん~~……」
日室 晴陽:普段はあんま使わない勉強机の前。広げたノートとにらめっこ。
日室 晴陽:今回に限らず、たまにやってる事件とかのまとめ。文章でバッと書いちゃった方が考えまとまりやすかったりするし。
日室 晴陽:今開いてるページには皆の名前と、能力と性格と後色々。丁度さっきみわっちについて書いたとこ。
日室 晴陽:「ねじ巻きの正体がみわっち、かあ……」
日室 晴陽:や、なんかもう情報量多すぎてそれどころでもあんまないけど。お陰で能力のとこ全部書き直しだし。
日室 晴陽:本当の能力は腐食じゃなくて共感。それを活かしてジャームと戦いまくって自分を強化してる。
日室 晴陽:でもそれのせいで人格とか諸々がヤバくて、その上旭さんと共感しようとしてるせいで記憶もヤバい。
日室 晴陽:(……いや、ヤバいこと多すぎでしょ)
日室 晴陽:そりゃ傍から見てもあれ?ってなるわ。むしろよく隠してたっていうか。
日室 晴陽:(……しろっちも)
日室 晴陽:二人が話してたときのリアクションとか、その前に三人で作業してたときの感じとか。多分だけどしろっちだけは先に聞いてたんだと思う。
日室 晴陽:それでもすぐあたしたちに報告するとかじゃなくて、みわっちを支えてたんだろうな。
日室 晴陽:「……なーんか、なぁ」
日室 晴陽:軽いなって思う。あたしが。
日室 晴陽:背負ってるもの、じゃちょっと違うか。かかってる負荷が全然軽い。
日室 晴陽:あたしは、パパとママにかわいがられて育ってきた。
日室 晴陽:物心つく頃には当然みたいに能力も使えたし、制御で苦労した記憶もそんなにない。
日室 晴陽:そのままの流れでチルドレンとしての訓練も重ねて、今もチルドレンを続けてる。
日室 晴陽:そういう感じだから、誰かを助けるのも守るのも、そのために戦うのだって当然のことだ。
日室 晴陽:だってそれがUGN(あたしたち)だ。正義の味方、日常の盾、人類の砦。
日室 晴陽:皆が死んじゃったのが悲しくても、誰かが消えていくことが悔しくても。
日室 晴陽:むしろだからこそ、戦わなきゃいけない。これ以上酷いことにしないために。
日室 晴陽:それをずっと教わってきた。教官からも、パパとママからも。
日室 晴陽:だから、あたしにとっては全部当たり前のことで。だから、しっくりこない。
日室 晴陽:――「普通いっぱいいっぱいになると思うんだけどな~ 日室さんのポジショニング」
日室 晴陽:――「……日室は」「いつも、肝心な時にしっかりしているね」
日室 晴陽:――「……。強い子だなあ」
日室 晴陽:貰った言葉の全部が、全然しっくりこない。
日室 晴陽:だって、そう言われるべきなのは皆の方だ。
日室 晴陽:大切なはずの記憶がどんどん消えていくのも。
日室 晴陽:自分の一番大切な人が何もかも忘れちゃうのも。
日室 晴陽:誰かを救いたいって気持ちで自分の人格さえおかしくなっちゃうのも。
日室 晴陽:自分の友達がとんでもない無茶をしてるって分かってて何も出来ないのも。
日室 晴陽:キツイと思う。辛いだろうなって思う。
日室 晴陽:思うだけだ。何にも出来ない。
日室 晴陽:あたしには分かんないから。体感してないクセに、分かるよなんて言えっこないから。
日室 晴陽:「……なんだか、なぁ」
日室 晴陽:何もなくて、だからその分余裕(バッファ)がある。なら一番適応できて当然じゃんね。
日室 晴陽:むしろ、皆がそれでも適応してるのがすごいって話で。
日室 晴陽:「……」
日室 晴陽:「……違う違う!」
日室 晴陽:暗くなるために振り返ってるわけじゃないんだった。
日室 晴陽:皆と違って余裕があるなら、その分皆に出来ないことをするべきだ。
日室 晴陽:霞にだって言われたし。「君にしか出来ないことだ」って。
日室 晴陽:あれは、単にそうしたいからしたってだけだったけど。なるべく目を配るとか、そういう。
日室 晴陽:例えば、みわっちの能力訓練ならちょっとは手伝えるかもだし。
日室 晴陽:例えば、旭さんの記憶の補完の手伝いとかフォローみたいなのも出来るかもだし。
日室 晴陽:例えば、しろっちの……あの子は実は割と安定してるから要らないかもだけど、精神面のフォローとか。
日室 晴陽:余裕があるあたしだから、割けるリソースがあるはず。それを頑張るのが多分、あたしの仕事だ。
日室 晴陽:みわっちに〇連帯感/心配、旭さんに〇感服/心配、しろっちに〇友情/心配でロイスを取得します。
日室 晴陽:それに。
日室 晴陽:戦うのが当たり前でも。一人だけ何にもなくても。
日室 晴陽:頑張る理由はそれだけじゃない。
日室 晴陽:ノートの一番左上。真っ先に書いた一文字目を指でなぞった。
日室 晴陽
日室 晴陽:霞と会ったのは、三年前。まだ中2だった頃。
日室 晴陽:その頃のあたしは、まあまあダレてた。サボり魔ってほどでもなかったけど。
日室 晴陽:誰かを守るためで自分が生き抜くため筈の訓練も、繰り返しちゃえばルーチンワークになる。
日室 晴陽:ましてや、オシャレとかスイーツとかゲームとか、楽しいことが世の中に沢山あるのを知っちゃえば。
日室 晴陽:がっつり訓練とかに打ち込む気はどうにも起きなくて、ほどほどでいっかって手を抜きがちだった。
日室 晴陽:その分、霞の第一印象も悪かった。冷たそーでお堅そーな真面目ちゃん。
日室 晴陽:絶対合わないだろーなーって思って、案の定合わなくて。多分霞もおんなじこと思ってただろうなって思う。
日室 晴陽:その意識が変わったのが、あの日の話だ。
日室 晴陽:いつも通り流すくらいの気持ちで訓練場に来て、そしたらいつも通り先に霞が居た。
月城霞:他に誰もいない訓練場。一人でずっとトレーニングしていたのか、汗を流しつつ、スポーツドリンクを口にしている。
日室 晴陽:「あ。……ちーっす」
月城霞:その間にも自分のトレーニングデータを確認し、どこを調整すべきか確認しているようだ。
月城霞:息を吐き、再び訓練に戻ろうとしたところで、その声に気付き振り向く。
日室 晴陽:見かけちゃったら無視も出来ない。微妙な距離感のまま、挨拶だけ投げた。
月城霞:「……“アンシー・ガール”」
月城霞:近寄りがたい冷たい空気を纏ったまま、口を開く。
月城霞:「こんにちは」
日室 晴陽:「……うん」 こんにちはって言われても、こっちは挨拶した後だし。返答に困る。
日室 晴陽:(テンポが分かんないんだよなぁ)
日室 晴陽:いつも何考えてんだろって思いながら、そのまま彼女の横のスペースに荷物を置く。距離空けるのも不自然だし。
月城霞:こちらは気にした様子も無い。挨拶をして──それだけだ。ランニングマシンをセットする。
日室 晴陽:「……霞さあ」 それを横目に見て。
日室 晴陽:「なんでいつもそんなにマジメなの?」
日室 晴陽:黙ると気まずいだろうなって言うのもあったけど、シンプルにずっと気になってた。
月城霞:「……?」走り始めようとしたところで、その言葉に振り返る。走者のいないランニングマシンがただ流れていく。
日室 晴陽:世の中には訓練より楽しいことが山ほどあって。訓練より楽なことだって幾らでもある。
日室 晴陽:それなのに、なんでそんなに訓練ばっかやってんだろう。
月城霞:じろりと睨むように──当人にはそんなつもりは無いのだが──君を見て。
月城霞:「質問の意図と意味がよく分からないわ」
月城霞:「その質問に答えることで、双方に何らかの利益があるのかしら」
日室 晴陽:「えぇ……や、だってさぁ」 キツめの目線と物言いにちょっと怯みつつ。
日室 晴陽:「バディじゃん、あたしら。上から言われたってだけだけどさ」
日室 晴陽:「お互い相手がどんな人か分かってた方がやりやすくない?」
月城霞:「任務上の連携の為、相互理解を深めようということ?」
日室 晴陽:「言い方硬っ。ま、そういうこと」
月城霞:「成程。分かったわ」
月城霞:「……そうね……」少し考えるようにして。
月城霞:「……まず、確認しておきたいのだけれど」
日室 晴陽:(……話してくれるんだ) ちょっと意外な気持ちでそれを眺めて。
日室 晴陽:「うん」
月城霞:「その質問を投げかけたということは、あなたは私が真面目な人間だと認識しているということで相違ないかしら」
日室 晴陽:「そりゃまあ。どっからどー見てもマジメっしょ」
月城霞:「……そう。……そうね……」また考え込んで
月城霞:「……例えば」
月城霞:「UGNチルドレンであるから、だとか」
月城霞:「人を守る為。正義の為。それを成す自身の能力の向上の為」
月城霞:「そういった理由も、私の中にあるわ。他にも様々な、言語化しがたい動機はあって……」
月城霞:「でも、そう。あなたの質問の答えになる、最も大きな理由としては──」
月城霞:顔を上げ、君に目を向ける。
月城霞:「私が、そういう私でありたいからよ」
日室 晴陽:「……そういう私?」
月城霞:「……あなたから見て、私。真面目に見えたのでしょう?」
月城霞:「『そういう私』よ」
月城霞:そう言って、ほんの少し笑った。
日室 晴陽:(……笑うんだ)
日室 晴陽:そりゃあ、霞だって人間なんだし。笑って当然なんだけど。
日室 晴陽:初めて見たからか、意外とかわいかったからか、妙に不思議な感じだった。
日室 晴陽:「……でも、マジメでいんの疲れない?」
月城霞:「……どうかな」
月城霞:「疲れているのかもしれない」
月城霞:「でも、今更やめられない」
月城霞:「これが私だから」
日室 晴陽:「……そっか」
日室 晴陽:真っ直ぐだなって思った。
日室 晴陽:あたしみたいに、いつもやることだからじゃなくて。
日室 晴陽:やりたいからやる。疲れてても、それでもそうしたいからって。
日室 晴陽:そういう自分で居たいって言う霞は、真っ直ぐでかっこよかった。
日室 晴陽:それに比べると、ただ流れでここに居て流れで訓練を済ませようとしてる自分が、ちょっとカッコ悪い気がして。
日室 晴陽:月城霞に〇尊敬/劣等感でロイスを取得します。
日室 晴陽:自分もランニングマシンのセットを済ませる。そして。
日室 晴陽:「霞さ。今日のトレーニングの結果、勝負しない?」
月城霞:「……勝負?」
月城霞:「どうして?」
日室 晴陽:「負けた方が勝った方にドリンク奢んの」
日室 晴陽:「そういうのある方がやる気でない?」
月城霞:「別に……私は無くとも全力を尽くしているけど……」
月城霞:「あなたはそうなのね、“アンシー・ガール”」
日室 晴陽:「あたしのやる気が出るからさ。やろうよ~」
月城霞:「バディのトレーニング効率が向上するなら、価値はあるわね」
月城霞:「……分かったわ。やりましょう」
月城霞:「けれど、やるからには負けないので、そのつもりでね」
日室 晴陽:「お、やったー!」
日室 晴陽:(……意外とノリ良いじゃん)
日室 晴陽:そうして、二人で競争をして。あのときは、どっちが勝ったんだっけ。
日室 晴陽:久々ってくらい全力で訓練してくたびれ果てて、そのせいかあんまり思い出せないけど。
日室 晴陽:あの日以来、あたしは毎日ちゃんと訓練するようになって。
日室 晴陽:いつのまにか冷めかけてた熱を霞に貰った。
日室 晴陽:頑張れる理由を貰った。
日室 晴陽:霞に負けたくないから。いざってときに霞の助けになりたいから。霞の足引っ張りたくないから。
日室 晴陽:霞に見合う相棒の自分で居たいから。
日室 晴陽:その気持ちが、今もあたしの胸の中で燃えている。
日室 晴陽:あたしの炎の芯になっている。
日室 晴陽:いつの間にかそれだけじゃなくなったけど、そこは絶対変わらない。
日室 晴陽:あたしは。日室晴陽は。霞のためだから頑張れるんだ。
日室 晴陽:霞に〇恋慕/尽力で取得。想い人の対象及びSロイスに指定します。



月城 旭:叢崎未和の正体告白によって、訓練は中断された。
月城 旭:「だって、それ所じゃないでしょう?今まで、その身体のこと誰にも教えてなかったみたいだし……」
叢崎未和:「みっちーには話したよう」つんと唇を尖らせる。
月城 旭:「自分じゃ気付かない部分で、無理をしているかも」などと言って。
月城 旭:彼女が君の手を取り連れて来たのは、訓練場付の医務室だ。
月城 旭:無論、今は他に職員がいるという事もないが。一通りの医療設備は揃っている。
叢崎未和:「ん……」
叢崎未和:小さく身震いして、擬態を解く。
月城 旭:「……そう、白塚さんは知ってるんだ」
叢崎未和:隻腕に白い髪、少しやつれた表情。
月城 旭:顎に手を当てて、じっとその身体を見る。
叢崎未和:「えぇと…………」ベッドに腰掛けた状態でおどおどする。
叢崎未和:「脱いだ方が?」
叢崎未和:「(何を言ってるんだ)」
月城 旭:「そうだね。悪いけど、脱いでもらえるかな」真剣な顔で言う。
月城 旭:「私も、医療系の知識がある訳じゃないけど……それでも、気付けることはあるかも」
叢崎未和:「う……はい」
叢崎未和:水底の宝石を思わせる深い色を湛えた瞳に魅入られるように。
叢崎未和:ややぼうっとした表情で、一枚ずつ服を脱いでいく。
月城 旭:「君の身を蝕む力が、ジャームのそれと同じなら……」
月城 旭:「……そういった敵の性質を見抜くことと、本質的には近い事のはずだ。たぶん」
叢崎未和:衣擦れの音が途切れ、余り飾り気のない下着姿が露になる。
叢崎未和:意外にも滑らかな肌だ。左腕の肩から先の傷は塞がっており、他に大きな傷はない。
月城 旭:「ふうむ……」これと言って躊躇も情感もなく、隅々まで君の身体を見つめる。
叢崎未和:豊かな乳房が、服に包まれていた時より強くその存在を主張していた。右の腿には、抓ったような跡が多くある。
叢崎未和:「ひゃー…………」
叢崎未和:間抜けな声を漏らして赤面している。
月城 旭:「……衝動が沸き起こる時って、どの辺りが疼くとかある?」
月城 旭:「胸のあたり?それとも、頭?」
叢崎未和:「胸、……だよ」必要な質問に答えるだけなのに何故だかどきどきしている。
月城 旭:「……これは、自傷の衝動か」腿の辺りに視線を移す。
叢崎未和:「"ペニードレッド"のリーダーから『書架』を奪った時に、そうなった」
白塚 美弦:「こんにちみわみわ~。この辺りにいるって聞いて……」
叢崎未和:そう言って、押し出すようなポーズで胸元を曝ける。
月城 旭:「そう……」答えを聞いて、視線をその乳房の辺りへと移す。じっと、集中する。
叢崎未和:「見て、旭さん……」
白塚 美弦:「………………」
叢崎未和:「……待って、違う」
白塚 美弦:「わー…………」ぽかんとしている。
叢崎未和:冷や水を浴びせられたように汗が噴き出す。
叢崎未和:「(いや、何を言い訳しているんだ。言い訳が必要な事なんて何もしてないじゃないか)」
月城 旭:視界内に映る事象が、その粒度を高めていく。温度を帯びた粒子のような色が、その瞳に無数に投影される。
叢崎未和:「私はみっちーの告白にまだ応えてないし、これはUGNと協調するうえで必要な──」
月城 旭:鈍痛が側頭部を襲うが、噛み殺す。……集中のあまり、白塚さんがやって来た事にも気付いていない。
白塚 美弦:「だ、だめですよ!? いくら仲が良いといっても医務室でそういうのをやるのは!?」
叢崎未和:心臓を中心に。
白塚 美弦:「いや、その前に未和ちゃんは私という女への返答を保留にしておきながら……!」
叢崎未和:円を描くように配置された、燻るレネゲイドの淀み。ほとんどの気配を消しているが、旭さんは見つけることが出来る。
叢崎未和:さらに意識を研ぎ澄ませば、中心を同じくする円環がいくつも、角度を変えて絡みつくように存在している。
叢崎未和:「そういうことってなんだよ!!」
月城 旭:叢崎さん自身の感情に由来する反応、周囲の声、その他一切のノイズを排除しながら。その視界に映る情報を解き進める。
月城 旭:「………………なるほど」呟き、息を吐く。
白塚 美弦:「旭さんのほうは旭さんのほうで私のこと眼中にないし!?敵にも障害にもならないってことですか!?」」
月城 旭:「難しいな、これは……かなり深く結びついてる。私でも上手く斬れる自信は……」
月城 旭:「……え、わっ。白塚さん!」
月城 旭:「ああっ……ごめんね、気付かなくって」
叢崎未和:「しっ、してないよ! いかがわしい……事は……」
叢崎未和:なぜだか後半が尻すぼみになる。
叢崎未和:「ただ旭さんが私の体を見たいって」
白塚 美弦:「ダウト!その脱衣はいいのがれ不可能です!」
月城 旭:声を出すと同時、鈍い痛みが目の裏に走る。つ、と鼻から血の滴が零れた。
月城 旭:「わっと」慌てて手の甲で拭う。
叢崎未和:「どうしたの?」
白塚 美弦:「旭さんは旭さんで興奮しているし!」
叢崎未和:「えっこうふ…………!」
叢崎未和:「…………してたんですか?」
月城 旭:「えっ……いやいや、してないよ……!?」
叢崎未和:いそいそと服を着こむ。
月城 旭:「その、本当にたまたまで……因果関係はないっていうか……」
叢崎未和:「惚れたの? とか聞いてきたし、やっぱり……」
叢崎未和:「って、そっちの方がまずいじゃん」
月城 旭:「わ、私そんな変態みたいなことしないもん……」
白塚 美弦:「あ、未和ちゃんもう服来ちゃうの!まだ私よく見てない……!」変態みたいなことを言っている人はここにいる。
叢崎未和:「え、えっと……」あまりにも堂々と言われたので着る手が止まる。
叢崎未和:「そ、そうだよね。平等にしないと……(???)」
白塚 美弦:「そうだそうだ!私も混ぜろー!」混乱しすぎて自分で何を言っているかわかってない。
月城 旭:「そう?鼻血くらい、誰だって出る時はあるでしょ」当然とばかりに言う。
叢崎未和:白塚さんの方を向いて恥ずかしそうに着込みかけた上着をはだける。
叢崎未和:「んん…………」その言葉に何か気になるものがあったのか。
月城 旭:「……いや、うん。それにしたって誤解を招きかねない事だったとは思うし……」
叢崎未和:「なんか私が嘘つく時の手つきと似た気配なかった?」
月城 旭:「その……ごめんね」白塚さんに向かって手を合わせる。
叢崎未和:半脱ぎのまま白塚さんに。
白塚 美弦:「未和ちゃんの脱衣……へ?」
叢崎未和:「くそっ頼りにならない!」
月城 旭:彼女から先に相談を受けていた上で、その気持ちを軽んじた行いだったかなと思う。……勿論、叢崎さん本人がいる前でそんな事を口にはしないが。
叢崎未和:「あっ嘘。嘘です。みっちーは宇宙一頼りになるけど言葉の綾」
叢崎未和:「とにかくなんというか、私が脱いでたのはアレよ」
月城 旭:「そう、叢崎さんの身体の異常を調べてたの」
白塚 美弦:「あ、あー………」
月城 旭:「先に聞いてた……んだよね?この子の体質のこと」
叢崎未和:「だから全然やましいことはないのでっ」
白塚 美弦:「身体の……異常を……ね。へぇー……そっかぁ。そうですよね~……あ、ハイ。聞いてました」
白塚 美弦:自分の勘違いと発言の内容を思い出して、冷静になり。
白塚 美弦:「私、変なこといってたー!うわーん!」再びパニックになる。
叢崎未和:「女の子の事がそういう意味で好きな女の子なんてそうそうエンカウントしないよー」
月城 旭:「ま、待って……大丈夫だから。今のは仕方のない誤解だから……」
月城 旭:白塚さんの背中をあやすようにさする。
叢崎未和:目を細めて微笑しながら、白塚さんの手を取って、膝の間に座らせる。
叢崎未和:そのまま抱きすくめるように腕を回し肩に顎を乗せる。
白塚 美弦:「わぁ」されるがままになる。
叢崎未和:「よし、今日のぶん今日のぶん、と」
叢崎未和:「衝動を抑えつけている分、みっちーとの接触もより必要になっているのだ」
叢崎未和:「大人しく私に包まれなさい わはは」
白塚 美弦:「補充されている……」
白塚 美弦:「うぅ……」
白塚 美弦:「……はい、少し落ち着きました」
月城 旭:「……ふふ」微笑ましいものを見るような眼。
叢崎未和:「お、何だその目はー」
月城 旭:(危なっかしい二人だけど。ある程度こうやって、上手く支え合ってるのかな)
叢崎未和:「こちとら必死なんだぞ」みっちーの頬を玩びながら。
白塚 美弦:深呼吸をしている。
月城 旭:「おっと。馬鹿にするつもりはなかったんだけどね」
月城 旭:「似合いだな、と思っただけ」
白塚 美弦:「お似合いだって~」ふにゃっと笑う
叢崎未和:「いいことだねぇ」笑い返す。
叢崎未和:「旭さんも大丈夫かい?」
月城 旭:「ん。大丈夫って、何が?」
叢崎未和:「不足してませんか? 人との繋がり」テレビのコマーシャルっぽく言う。
叢崎未和:「そんな時はこれ、みっちー」
叢崎未和:「と、私」
叢崎未和:立ち上がって白塚さんをけしかけるようにしながら旭さんに抱き着こうとする。
月城 旭:「……ふふ。足りてるつもりだけどなぁ」特に抵抗はせず、微笑んで
叢崎未和:「背が高いな…………」
白塚 美弦:「わ~」けしかけられるままに抱きつく。すっかり上機嫌
月城 旭:「ふふ。体格の良さが取り柄の一つなんだよねえ」
叢崎未和:左右から挟み込む。丁度表彰台のような身長差である。
月城 旭:「……霞ちゃんも、昔はこうやって自分から甘えてくれたんだけどなあ」二人の頭を撫でながら。
叢崎未和:「霞さん、甘えなさそうだなぁ」
叢崎未和:昔のこと、覚えてるんだな~。と、少し安心したようなやきもきするような気持を抱えながら。
白塚 美弦:「………ん、あれ」撫でられるがままにされていたが、ふと気づく。
白塚 美弦:「未和ちゃんと旭さん、仲良くなったんですね」
月城 旭:「あの子、頑張り屋さんだからねえ。自分から吐き出すのが苦手なのさ」
月城 旭:「……ん。まあね」
叢崎未和:「熱いぶつかり合いを経てね」
白塚 美弦:「ぶー」隠すこともせず、口を尖らす
叢崎未和:そっけなく言う。
叢崎未和:白塚さんには、そこに少しだけ得意げな色が滲んでいるのが分かるかもしれない。
月城 旭:「私のためにこうなった、って言われちゃあ」
叢崎未和:「だいたいみっちーのお陰だよ。あれがあったから……」
月城 旭:「突き放せないでしょ。……我ながら、どうかなとは思うけどさ」
叢崎未和:「……」あれ、の内容を思い出して一瞬口ごもる。
叢崎未和:「フェアに行こうって思って、全部喋った」
白塚 美弦:「……まぁ、仲悪いよりは仲良いほうがいいですけど」
叢崎未和:少しだけ語気を強めて言い切る。
月城 旭:仕方なく、と言った口ぶりだが。こちらもどこか嬉し気な色が見える。
白塚 美弦:「私には、なにか言う権利はいまのところないですし」
月城 旭:自分のためにここまでさせてしまった、という罪悪感の裏に
白塚 美弦:「そっか。喋ったんだね。いずれ必要なことではあったし」
月城 旭:自分の為にここまでの事をしてくれた、という歓喜が全くなかったかと言えば否定できなかった。
叢崎未和:「へへへ」
白塚 美弦:「変なタイミングで戦闘の連携取れなくなっても困るから」
白塚 美弦:「それでいいですけどー」
月城 旭:……最も、月城旭の「良識ある大人」としての律は、それはよくないと言っているけれど。
月城 旭:「あ、霞ちゃん達にも教えちゃっていいんだよね」
月城 旭:(まあ、ダメって言っても話すと思うけど……)
叢崎未和:「そのつもり。言ったでしょ、余計な調査させる訳にゃいかない」
叢崎未和:あやすように白塚さんの喉元をごろごろする。
白塚 美弦:「ごろごろー」
叢崎未和:「ごめんよぅみっちー。私がしょうがない奴で」
月城 旭:「そっか。うん……それは良かった」
白塚 美弦:「未和ちゃんのジゴロ~」
叢崎未和:「んなこたぁない」
叢崎未和:友達だっつの。
月城 旭:「皆でやれば、何とかなるものもあるはずだ。君の事にしろ、"スネグラチカ"にしろ……」
叢崎未和:「皆でやれば、か。そうだね。ほんとにそうだ……」
叢崎未和:これまでの単独行を振り返るように、遠い目で口にして。
月城 旭:「反省、してるんだ?」
叢崎未和:「む」
叢崎未和:「それはもちろん……でもさ」
叢崎未和:「『何とかなるもの』の候補に、旭さん自身の事も入れてくれると」
叢崎未和:「わたしゃ嬉しいな」
月城 旭:「……あはは」
叢崎未和:器用に片手で服のボタンを留めていきながら。
月城 旭:「そうだねえ」どこか遠い目をして。「本当に……」
叢崎未和:「差し当たって私はそうだなー」
叢崎未和:「衝動の化物、ジャームだ。それを食い取って私の心臓の契約は育つ」
月城 旭:(本当に……この時間も、私の中の思い出に残ればいいのに)
叢崎未和:「あんまり想定はしたくないけど、住民のジャーム化は既に起きてる。完成を間に合わせるために協力してもらうかも、だ」
月城 旭:「協力……って、具体的に何をするの」
叢崎未和:視線の温度が冷える。スネグラチカの再臨は近い。
月城 旭:「そりゃ……そうなった人達をそのままにはしておけないし。倒す……必要は、あるだろうけど」
白塚 美弦:「そうですね……」
叢崎未和:「その時に私を連れ回してくれればいいだけ」
月城 旭:「それだけ?そりゃ、構わないだろうけど……」
叢崎未和:「元々、共感能力を鍛えるためのやつだからね」
叢崎未和:「奇麗に全部噛み合わさったら、全部手放せる。そういう風に組んであるんだ。もちろん、不安要素もあるけど……」
叢崎未和:「そこは回避しようがないから、頑張って戦力を整えよう。大丈夫、しっかり育つ」
叢崎未和:いささか不安な宣言。
月城 旭:「……まあ」
叢崎未和:「いささか不安な宣言なのはフェアに行こうと思ってるからだよ」捕捉を付け加える。
月城 旭:「ここまで来たら、信じるけどさ」
白塚 美弦:「そうですねー、信じる以外無いのは確か」
月城 旭:「じゃあ……私の方は、そうだな」
叢崎未和:「おっ」
月城 旭:「とりあえず、君のその力を借りるつもりはないよ」
月城 旭:釘を刺すように言う。
叢崎未和:「…………」
叢崎未和:「そんな気は」
叢崎未和:「してたかなぁ~~~~」
月城 旭:「そりゃ、何とかしたいって気持ちはあるんだけどね」申し訳なさそうに笑う。
叢崎未和:大きく溜め息を吐いて座る。
月城 旭:「君の努力ってやつにも感謝してる」
叢崎未和:「ん。いいよ。結局正攻法が一番だ」
月城 旭:「でも、受け取れない。月城旭はそれを許さない。……それに」
月城 旭:「きっと根本的解決にはならないよ。君のその能力は、つまり、バケツに水を注ぐんだろ」
叢崎未和:「妹さんくらい……とは行かなくても、さ。仲良くなれば、もしかしたら記憶に残れるかもって。そうやってくしかない」
月城 旭:「私の使える器が小さいのは、どうにもならない」
月城 旭:「……そうだね」静かに肯定して。
叢崎未和:「慣れてるから。大丈夫」
月城 旭:「少し、嫌な話をするんだけど」
叢崎未和:そう、寂しげに笑う。
月城 旭:「……私が、UGNに居た頃にもさ」
叢崎未和:「ん」
月城 旭:「私の事情を気遣って、その上で仲良くしようとしてくれる人は、沢山いた」
月城 旭:「そうだろうさ。皆、秩序の守護者を名乗ろうって人達だ」
月城 旭:「……だけど、やっぱり歪んでいくんだよね。時間を重ねると」
月城 旭:「片方だけが積み重ねていく記憶と、いつまで経っても変化がない私が」
月城 旭:「そういう志を、少しずつ蝕んでいく。疲弊と、諦観だ。"どうせこいつは何を言っても忘れるしなあ"って」
月城 旭:「記憶には残らないけど、話してれば分かっちゃう時があるからね。そういうの」
叢崎未和:「うーん。じゃあ正攻法やめよ」
月城 旭:「そう?でも」
叢崎未和:かねてより言っていたようなこだわりのなさで前言を翻す。
叢崎未和:「でもじゃない」
叢崎未和:「何かあるさ」
月城 旭:「君は、もう何度も何度も私に忘れられたんだろ。その末が今だ」
月城 旭:「だから……少し、期待してるんだよ。って」
叢崎未和:「…………」
月城 旭:「これが、私の"嫌な話"」
叢崎未和:「う、ふふふふ」
叢崎未和:口元を押さえるようにして笑う。
叢崎未和:「頑張るよ。得意なんだ、頑張るのだけ」
白塚 美弦:(あぁ、なるほど。旭さんは期待をやめられない。つまり、それは──)
叢崎未和:何度も何度も忘れられた末、小さなマイルストーンを刻んだ。だからこれまでよりもずっと確かな自信を持って。そう言える。
月城 旭:「……悪いね。子供にこんなもの押し付けちゃう大人でさ」我ながらしょうがないやつだ、と困ったように笑う。
白塚 美弦:(助けてほしい。そういうことかもなぁ……)ぼんやりと浮かぶ思考が白塚の脳内をよぎった。



【Middle latter half/月城霞】

GM:4番目の手番を獲得したのは霞さんです。誰を指名しますか?
月城霞:日室さんと旭さんを指名します。
GM:ではサブシーンは叢崎さんと白塚さんになります。
叢崎未和:白い獣判定します
叢崎未和:7dx+1>=6
DoubleCross : (7DX10+1>=6) → 9[1,1,3,5,6,7,9]+1 → 10 → 成功

GM:では情報を開示します

・『白い獣』について
街の境界付近に、昼夜を問わず雪が降り続けている。それと同時に、付近には雪で造られたような純白の獣が姿を現しつつある。
姿は鳥や鹿、兎や熊など様々だが、いずれも人が近付くと襲ってきて雪の中に引きずり込んでしまう。
“スネグラチカ”の一部、端末であり擬似生命、従者に近いものと思われる。近付かなければ危険は少ないが、徐々に降雪の範囲が広がると共に数を増やしつつあり、注意が必要だろう。





UGN桜花支部 訓練場跡地
月城霞:霞からの呼び掛けで、訓練の一環として日室との模擬戦が行われることとなった。
月城霞:支部からやや離れた位置にある、人目に付かない訓練施設。
月城霞:“スネグラチカ”の襲撃を免れたその場所で、二人は向かい合っている。
月城霞:それを見守るのは、監督役を頼まれた月城旭。
日室 晴陽:「んじゃ、軽めに行きますか」
月城霞:「うん」
月城 旭:「こっちはいつでも大丈夫だよ~」
月城 旭:10mほど離れた場所に立ち、小さく手を振っている。何か危険があれば一息に止めに入れる距離。
月城霞:霞の背後に、冷気の白い霧を湛えた月めいた魔眼が姿を現す。
月城霞:「来て、日室」
日室 晴陽:「はいはーい」 いつも通りの笑顔のまま。
日室 晴陽:その傍らに、炎と熱を携えた彼女の魔眼が光臨する。
日室 晴陽:全力には程遠い、だけど確かに人を焼き焦がすに足る熱量。それが霞へと向かっていく。
月城霞:熱は霞に届く前に、魔眼の月光に触れて消散していく。
月城霞:辺りに立ち込める霧。乱反射する光の中で、熱と冷気がぶつかり合う。
日室 晴陽:「やーっぱこうなるんだよねえ」
日室 晴陽:攻撃型の炎の魔眼と、防御型の氷の魔眼。
月城霞:「……そうだね」
日室 晴陽:対照的な能力の結果、実戦型の訓練はいつも出力勝負にもつれ込む。
月城霞:相克する二つの能力は、容易に決着が着くことはない。
月城霞:「……やめよう」
月城霞:瞑目する。
月城 旭:「……ふうむ」顎に手を当てて頷く。
日室 晴陽:「だね。これ以上はふつーに消耗のがデカそう」
日室 晴陽:背後に控えていた魔眼が姿を消す。
月城 旭:「手数の問題だなあ……まあ、共闘なら色々とやりようはありそうだけど」
月城霞:魔眼は朧月のように薄れていき、辺りにはまだ白い霧だけが残っている。
月城 旭:「今の水蒸気とか、目晦ましに使えそうだし……なんて、私が言わなくてももうやってるか」
月城霞:「……」
月城霞:少し、黙り込んで。どこか遠くを見るような顔をして。
月城霞:「……ごめん、日室」
月城霞:「姉さんも」
日室 晴陽:「ん、どした?」
月城 旭:「……何?」
月城霞:「本当は今日は、模擬戦をするのが目的じゃなかったんだ」
月城霞:「ずっと違和感があって。ある程度力を振るって、感覚を確かめたかった」
月城霞:「……おかげで、確信が持てた」
日室 晴陽:「……何に?」 うっすらとした嫌な予感を感じながら。
月城 旭:「……」表情に陰が差す。違和感? この距離で見ても、自分は気付かなかった……気付けなかった。
月城霞:「……」二人に向き直る。
月城霞:「……私の能力は、防御型のサラマンダーでも特殊なほうで」
月城霞:「単純な冷気や、氷の壁を形成するものじゃない」
月城霞:「相手の『熱』……エネルギーを奪って、無力化する能力」
月城霞:「それは……二人も知ってるよね」
日室 晴陽:「勿論」
月城 旭:「うん。……それで?」
月城霞:「冷気は熱を奪った余波として現れる、副産物に過ぎない」
月城霞:「この『熱』は、ありとあらゆるものに存在していて」
月城霞:「例えば、情報にも。私と似た能力者の症例報告書を呼んだことがあるけれど、そのオーヴァードは能力の代償に記憶という情報の『熱』を奪われるそうよ」
月城 旭:自分の剣も、部分的にはそれに近い。"眼"によって分子の状態を認識した上で、それらを結合させる"熱"を奪う事によって自在の切断は成立している。
月城 旭:「……そう、記憶を」
日室 晴陽:「情報に『熱』があるってなんか字面不思議だけど……それがどうかしたん?」
月城霞:「この世の全て。人も、物も、情報も。時間も空間も、重力という力に縛られる以上、そこには熱が存在していて」
月城霞:「そして、人にとっての情報とは、記憶という形に限らない」
月城霞:「例えば、そう」
月城霞:「個人の『認識』も、情報のひとつと言えるんじゃないかしら」
月城 旭:「……。目の前にいた人が消えても、そこに違和感を覚えないのは」
月城 旭:「それを認識した事そのものを奪われているから……と」
月城霞:頷く。「“スネグラチカ”は、人から認識という情報の『熱』を奪っている」
日室 晴陽:「霞式に言うと、この街全体が段々冷えてってるってことか」
月城霞:「ええ。恐らく“スネグラチカ”は……空間の熱を喰らいつつ、自身の情報を限界まで希薄化することで、誰にも認識されずに潜伏し続けることを可能としている」
月城霞:「引きずり出すのはほぼ不可能と言っていいでしょうね」
月城霞:「……本来なら」
月城 旭:「私達がそうと分からないだけで、そこに居るには居る……ってことか」
月城 旭:「……濁した言い方だなあ」不安を誤魔化すように笑みを浮かべる。
月城霞:「……“スネグラチカ”が情報を喰らうというのは、あくまでアナログな意味合いのものであって」
月城霞:「やはり、UGNのデータベースにもこれだけ情報が少ないのは不自然」
月城霞:「そもそも、それほど強力なジャームなら……」
月城霞:「ジャーム化以前のオーヴァードの時点で、UGN側が認識していないとおかしい」
月城霞:「でも……もし」
月城霞:「“スネグラチカ”が、その時点では存在していなかったとしたら」
月城 旭:「覚醒と同時にジャーム化した、ってこと?」
月城霞:「いいえ」かぶりを振る。
月城霞:「“スネグラチカ”があらゆる熱を喰らうジャームだとしたら……」
月城霞:「物質だけじゃない。時間流という熱を喰らうことも可能であるはず」
月城 旭:「え……」
月城霞:「オーヴァードには限定的な時間停止を可能とする者も居る」
日室 晴陽:「……ジャーム化する前の時間を食べちゃったってこと?」
月城 旭:「……やけに、断定的に言うね。そりゃ……」
月城霞:「あれほどのジャームであれば。それも、自分の情報を限界まで希薄化させることの出来る“スネグラチカ”であれば……」
月城霞:「限定的な時間遡行も可能ではないか、と考える」
月城 旭:「ありえない、とは言わないけどさ……」
月城霞:「つまり、“スネグラチカ”はまだ、ジャーム化していない」
月城霞:「この先の未来で生まれるジャームだとしたら?」
月城霞:「」
月城霞:「だとすれば、データが無いのは当然の話」
月城 旭:何か、ズレてる気がする。前提が。飛躍した発想を、いずれも断ずるように述べる妹を見る。
日室 晴陽:「……霞がそんだけ言うってことは」
日室 晴陽:「根拠があんだよね?なんか、確信的なやつ」
月城 旭:「どうも、分からないな……霞ちゃんは、どうやって……」
月城 旭:「その推測に、辿り着いたのさ」
月城霞:「……」姉と視線が交錯する。
月城霞:「最初に“スネグラチカ”のワーディングを受けた時」
月城霞:「私は、あれほど強力なジャームのワーディングであるにも関わらず……」
月城霞:「まるで衝動が喚起されなかった。レネゲイドの共振すら感じなかった」
月城霞:「私は最初、それが“スネグラチカ”の異常性だと思っていた」
月城霞:「でも、違う。あの感覚を……私は知っている」
月城霞:「多分、誰よりも」
月城霞:「今、日室と模擬戦をして……能力を使って、それを確信した」
月城霞:二人を見る。
月城霞:「恐らく」
月城霞:「私が“スネグラチカ”よ」
月城 旭:「……確信、って」
日室 晴陽:止まりかけてる思考を無理やり回す。回して。
月城 旭:「ちょっと、決めつけるのはまだ早くない? なんて……言える感じじゃなさそうだね」妹の、迷いのない眼差しを見て。
日室 晴陽:「……少なくとも、霞がそうだって確信してるのは分かったよ」
月城 旭:誰よりそれを疑っただろう。誰よりそれを否定したかっただろう。……その彼女が、こうして口にした答えだ。
日室 晴陽:「じゃあさ。あたしら二人に話した理由もあるんっしょ?」
月城霞:「……ええ」
日室 晴陽:みわっちとしろっち抜きの、あたしと旭さんだけに先に打ち明けた理由が。
月城霞:「私が将来的に“スネグラチカ”になるのだとすれば」
月城霞:「奴を倒せる、有効な手段がある」
月城霞:「私を殺してほしい」
日室 晴陽:そういうだろうと思った。
月城 旭:「あはは」引き攣った笑み。
日室 晴陽:話の途中からずっと、そういうことだろうと思ってた。
月城 旭:「いくら霞ちゃんのお願いでも、それは難しいな」
日室 晴陽:だから、答えも決まってる。
日室 晴陽:「あたしも。絶対に嫌だ」
日室 晴陽:きっぱりとそう言い切る。
月城霞:「……」
月城 旭:「言っただろ。私の理由は、君だけさ」
月城霞:どうして、と口にしようとして、同時に。当然だろう、とも思った。
月城 旭:「君を守る為なら、なんだってやる。月城旭ってのは、そういうどうしようもない奴なんだ」
月城霞:この二人が私を殺せるはずがない。少し考えれば、いや、考えなくともわかったはずだ。
月城霞:どうして二人に打ち明けて、こんなことを頼もうと思ってしまったのか。
月城 旭:「大体。……"スネグラチカ"が生まれたのが、将来の霞ちゃんからだって言うならさ」
月城霞:本当に実行する気があるなら、錘を付けて飛び込むなり、硫酸でも用意するなり、自殺の方法はいくらでもあったはずだ。
月城霞:そうしなかったのは……結局。私が、浅ましく生きようと思っているからなのか。
月城 旭:「ジャームっていうのは、繋がりを断たれる所から生まれる怪物だ」
月城霞:ジャームになって、大勢の人を殺してまで?
月城 旭:いつものように、君の傍へ歩み寄って。少し背の低いその身体を抱き締める。
月城霞:「……っ……」
月城 旭:「それはきっと、将来の私達が……私が」
月城 旭:「君を一人にしてしまったから、起きてしまった結果なんだろう」
月城 旭:「……世界を守る為に、君を死なせてもいいや、なんて」
月城 旭:「君の事を諦めて。霞ちゃんとの繋がりを捨ててしまうなんて」
月城 旭:「そんな想いを、"君"に二度もさせてやる訳にはいかないよ」
月城霞:「……姉、さん」震える声を漏らし、かぶりを振る。
日室 晴陽:「霞」
日室 晴陽:同じように歩み寄り、旭さんの腕の中から除くその頭にポンポンと手を置く。
月城霞:「……日室……」
日室 晴陽:「あたしらにそれ話したってことはさ」
日室 晴陽:「霞が一人で完結しないで、あたしらに話したいって思ったってことじゃん」
日室 晴陽:「それがさ、あたしは嬉しいよ」
日室 晴陽:いつものように笑って。
日室 晴陽:「その繋がりがあるんなら、だいじょぶだって」
日室 晴陽:「霞は霞で、スネグラチカにはならない。あたしらがさせない」
月城 旭:「そう。……結局、それが一番の方法だ」
月城霞:「……違う……違うよ」
月城霞:「私は、私はただ……弱かっただけ」
月城 旭:「"スネグラチカ"が生まれる未来を、私達が否定する」
月城霞:「お願い……二人とも、私……」
月城霞:「私、皆を殺したくない……」
月城霞:姉に抱かれるまま、抱き返すことも出来ず。立ち尽くしたまま涙を零す。
月城 旭:「……知ってるよ」
日室 晴陽:「ん。ちゃんと弱音吐いてくれて、ありがとね」
日室 晴陽:「ちゃんともうダメだってなる前だし。間に合うよ、大丈夫」
日室 晴陽:「言ったじゃんか。旭さんに先言われちゃったけど」
月城 旭:「君が、それほど強くないことも。それでも頑張ってることも」
日室 晴陽:「霞が笑えるためなら何でも出来るしさ。理不尽なんて全部ぶっ潰してやるから」
月城 旭:「皆のために自分を犠牲にしようと思ってしまうくらい、優しいことも……こうやって、誰かに自分から甘えるのが苦手なことも」
月城霞:「……なんで…………」
日室 晴陽:「要らない未来だって変えてやる」
月城霞:「私が死ねば、それだけで……全部解決するのに」
月城霞:「どうして、そこまで……」
月城 旭:「そりゃ、だって」
月城 旭:「聞いちゃったもん。"まだ死にたくない"、って」
月城 旭:「別に、あっちが嘘だった訳じゃないんでしょ」
日室 晴陽:「それにさ」
月城 旭:「どっちも君の本心で……考えて考えて、悩んだ末に。勇気振り絞ってこういう行動に出てる」
日室 晴陽:「一番単純な話。あたしも、そんで旭さんも」
日室 晴陽:「霞に生きててほしいし、幸せになって欲しい」
日室 晴陽:「霞が好きだから。ね?」
月城 旭:「ん、そういうこと」
月城 旭:「私は霞ちゃんのお姉ちゃんだ。……でも、それはさ」
月城 旭:「ただ血が繋がってるから、って訳じゃない」
月城 旭:「だって、私の記憶は一度途絶えてるんだ。……それでも、ゼロから始めた私が、君のお姉ちゃんをやろうと思ったのは」
月城 旭:「こうして、14年間も続けてられるのはさ」
月城 旭:「ただ、君の事が大好きだからなんだぜ」
月城霞:二人の言葉に、何も言葉を返せなくなって。堪えていたものが溢れ出す。
月城 旭:いつもと変わらない、ふにゃりとした笑みを浮かべる。
月城霞:姉の腕の中、嗚咽を漏らし。どこか遠く、懐かしい温もりの中で、ただ子供のように泣き続けた。
月城 旭:その温度を感じながら。これから自分が為すべきことを考える。
月城 旭:霞ちゃんを"スネグラチカ"にはしない。それは絶対だ。だけど、既にこの街を侵食している怪物が……それで消えてくれる保証はない。
月城 旭:もし、そうだったら。
月城 旭:(……倒さなくちゃ、いけないのか。いつか、霞ちゃんだったものを)
日室 晴陽:姉の腕の中でなく霞を見つめて、少しだけここに居られることを安堵してる自分が居た。
月城霞:ロイス取得 日室晴陽 感謝/○罪悪感 月城旭 親愛/○罪悪感
月城 旭:日室晴陽:〇連帯感/(秘匿)
日室 晴陽:弱音を吐く相手に選んでもらえたことが、彼女が無くこの場に呼ばれたことが嬉しくて。必ずここを離れないと、胸の中で誓った。



叢崎家
叢崎未和:「や、微妙に汚いとこだけど上がって」
白塚 美弦:「おじゃましまーす」
叢崎未和:家人からの歓待はない。未和自身もそれを当然のものと思っているようで、早々に彼女を2階の自室へ案内した。
叢崎未和:「これなんだよなぁうちに呼びたくなかった理由」
白塚 美弦:「んー?どういうこと?」
叢崎未和:「んーん。気になんないなら気にしないで」
白塚 美弦:「わかったー」
叢崎未和:部屋の中は辛うじて汚くはない……といった状態だ。
叢崎未和:全体的に、人を呼ぶからあわてて片付けたといった雰囲気があり、よく見ると隅にごちゃごちゃと教科書やら何やらが積み上がっている。
白塚 美弦:多少片付いてない部分もあまり気にせず入室する。
白塚 美弦:未和ちゃんの部屋に上がるということで、なぜか緊張しているフシがあり、ささいなことに気が付かない。
叢崎未和:どうぶつモチーフのくたびれたクッションをひょいひょいと放り、片方に座り込む。
叢崎未和:ランニングにショートパンツ。ラフな服装だ。
白塚 美弦:こちらも座る。
叢崎未和:「や、こんなとこだけど」
叢崎未和:とくとくとオレンジジュースをコップに注いでいく。
叢崎未和:「やっぱ呼びたいな~って思ってさ。せっかくお邪魔させて貰ったし」
叢崎未和:「もうすぐ決戦だし」
叢崎未和:ぼんやりと窓の外を眺める。遠く雪が降っているのが見える。
白塚 美弦:「うんうん。ありがとー」
叢崎未和:「夏なのにねぇ」
白塚 美弦:「そうだね……とっても変な感じ」
叢崎未和:あの雪が積もったエリアには、この世ならざる白い獣が出現する。
叢崎未和:人を襲い、雪の中へ引きずり込む"スネグラチカ"の端末。
叢崎未和:「遠い昔、人間にとって山は異界だったって言うけど」
叢崎未和:「それに近いものなんだろうね。あの積雪エリア」
白塚 美弦:「異界……」
叢崎未和:「"スネグラチカ"の胃袋。みたいな?」
叢崎未和:右手でペットボトルのキャップを締める。
白塚 美弦:「入っちゃったら養分になる……適切な表現かもね」
叢崎未和:「私達がさ」
白塚 美弦:「うん?」
叢崎未和:「例えば十人束になっても現状の私やみっちーに敵わないような、十把一絡げのオーヴァードだったら」
叢崎未和:そういった者が使い潰されるのをセルで見てきた。
叢崎未和:「ふたり肩を寄せ合って、街の終わる幻想的な光景に浸ってたのかなぁ、とかちょっと考えちゃうな」
白塚 美弦:[
叢崎未和:「なーんて。ちょっと強い程度で出来る事がある保証もないんだけど」
白塚 美弦:「未和ちゃんは諦めないと思うな」
叢崎未和:「そんなことないさ」
叢崎未和:「事件の始まりに、弱気な事ばっかり言ってただろ?」
叢崎未和:「今は良い気になってるけど、あんなんだよ、私」
白塚 美弦:「それは」
叢崎未和:「……でも、そうだな」
白塚 美弦:「衝動の影響を受けていないともいえないでしょ」
叢崎未和:「きっと、みっちーがさ」
白塚 美弦:「今のほうが影響受けている可能性もあるけどね」
白塚 美弦:「うん」
叢崎未和:はは、と苦笑する。
叢崎未和:「未和ちゃんは諦めないと思う、って言ってくれて」
叢崎未和:「そしたら私は諦めないのかもしれない」
叢崎未和:「始めから、そんな話だった気がするな」
叢崎未和:へらへらと笑いながら。
白塚 美弦:「私の言葉」
白塚 美弦:「未和ちゃんに効くんだ」
白塚 美弦:「嬉しいな」
叢崎未和:目を閉じる。肩を寄せる。
叢崎未和:「ずっと効いてる。」
白塚 美弦:「……そっか」
白塚 美弦:「届いてないわけないって思ってたけど」
白塚 美弦:「同時に届いているのかと不安になることもあったんだよ」
叢崎未和:「そうだねえ。私、悪い友達だ」
叢崎未和:『だった』とは言わない。今もそうだからだ。
叢崎未和:呪いは消えていない。顕在的な表出の幾つかを抑えつけているだけ。
叢崎未和:「でも、きみの愛と信頼に報いたいよ」
叢崎未和:「私よりずっと私を信じている、きみの」
叢崎未和:恐る恐ると、言葉を紡いでいく。
白塚 美弦:「愛って言われると恥ずかしいけど」
白塚 美弦:「そうだね、愛です」
叢崎未和:これは自分の内心の真実だろうかと、踏みしめるようにして。少しでも確かであるように。
叢崎未和:「……うん」
叢崎未和:「うん……きっと」
叢崎未和:「ずっと。ずっと昔から、自分へ向けられた気持ちをいくつも見逃してきた。心が読めたころから、ずっとそうだ」
白塚 美弦:「心が読めても、そうなんだ」
叢崎未和:「そうだよ。人がその場その場で考えていることを掠め取るだけじゃ人の姿は見えたりしない。だからパパにもママにも、素直に愛されることができなかった」
白塚 美弦:「……」
叢崎未和:「いくら感謝しても足りないんだろうな」
叢崎未和:「そうやって、見逃し続けた私と、一緒に居てくれてさ。」
叢崎未和:「ねえ、みっちー」
白塚 美弦:「んー?」
叢崎未和:世界は。自分が思うよりもずっと早く、回る。
叢崎未和:"スネグラチカ"が現れた。円環の結実を迫られた。
叢崎未和:愛の告白を受けた。全ての秘密を仲間へと打ち明けた。
叢崎未和:旭さんの手を握った。ずっと先に起きる筈だったこと。
叢崎未和:なら、これだけを遅らせていい筈がなかった。
叢崎未和:何かに躓いて、一生彼女と出会う前の、正気の叢崎未和へ戻れないとしても。
叢崎未和:それは、告げておくべき言葉だと思ったから。
叢崎未和:「好きだよ」
白塚 美弦:「……!」
叢崎未和:「愛してる」
白塚 美弦:「~~っ!」
白塚 美弦:「返事は、保留じゃなかったっけ」
叢崎未和:「そうしなくてもいいって言ってくれたじゃない」
叢崎未和:くすくすと笑う。
白塚 美弦:「言ったけどさ~~」
白塚 美弦:「う~~~~」
叢崎未和:「はっきりしないままずっと抱きまくらにし続けるのも悪いと思って」
白塚 美弦:「それはそうかもだけど」
白塚 美弦:「不意打ちはずる」
白塚 美弦:「や。私も人のことは言えないけど……」
叢崎未和:「そうだよぅ」
叢崎未和:「ねえ。きみの事が好きだ。あんまり、甘えてばかりいるのは……それは。カッコ悪いじゃないか」
叢崎未和:「今更だけどね」
叢崎未和:悪戯げに舌を出す。
白塚 美弦:「悪い人」
叢崎未和:「そうだよ。私はしょうがない奴なんだ」
叢崎未和:「でも、ハートは熱い女だからさ」
叢崎未和:いつかのような文言を謳うように唱える。
白塚 美弦:「ん。熱い思いはたしかに受け取りました」
白塚 美弦:「じゃあ、その」
白塚 美弦:「両思いってことで」
白塚 美弦:「いいんですね……」なんとなく敬語になっている。
叢崎未和:「んーー…………」
叢崎未和:しばらくにやにやした後、急にがばりと抱きすくめる。
白塚 美弦:「わ」
叢崎未和:「かわいいな~~~~」
白塚 美弦:「意地悪」
白塚 美弦:「今、わたし」
白塚 美弦:「能力の暴走止めるのに必死なんだから」
白塚 美弦:「そんなことされたら、溢れ出ちゃう」
叢崎未和:「いいじゃない。ちょっとくらい羽目を外したってさ」
叢崎未和:「みっちー。私のみっちー……」
白塚 美弦:「うぅ……」
白塚 美弦:「あなたのみっちー……です……」
叢崎未和:心地よさそうに、首筋に頬をうずめる。
叢崎未和:「うん……うん」
白塚 美弦:「一応、確認なんだけど」
白塚 美弦:「ん……いや、いいや」
叢崎未和:「なんだよぅ」
白塚 美弦:「旭さんのこと、確認しようと思ったけど」
白塚 美弦:「未和ちゃんそんなひどい女じゃないって信じてるから」
白塚 美弦:「それでいいや」
叢崎未和:「はは、また信じられちゃった」
白塚 美弦:「信じてるもん」
叢崎未和:「……ありがとう。知ってる?」
白塚 美弦:「なにを?」
叢崎未和:「どれだけひどい女でもさ。大事な人に、幻滅されたくないって」
叢崎未和:「そう思ってると、なんだかまともなやつみたいな行動をする」
白塚 美弦:「そうなんだ」
叢崎未和:「『まとも』は違うか……でも、そんな気持ちが、命よりも重くなることがあるんだ」
白塚 美弦:「命よりも……?」
叢崎未和:「"ペニードレッド"で学んだことだよ。あいつは……"ムーンブリンク"は」
叢崎未和:「能力を使って誘拐したセルメンバーの『大事な人』になるんだ」
叢崎未和:「"メタルペッカー"は、まだアレの影響下にあったんだろうね。みっちーが能力でやつの因子を上書きしたんだろう」
白塚 美弦:「そこまでしたつもりはなかったけど」
白塚 美弦:「そうかもしれない」
叢崎未和:「喩に出すものを盛大に間違えた感じする…………」
白塚 美弦:「うん、それはそう」
叢崎未和:「あれだよ」
叢崎未和:「私が戻って来れなくても」
叢崎未和:「みっちーの前でだけは、みっちーの未和に相応しいやつのフリができる、と思う」
白塚 美弦:「それはちょっと悲しいけど」
叢崎未和:「私にかけてくれた術以上にさ」
白塚 美弦:「それだけ私のために頑張ってくれるのはちょっと……だいぶ……うれしいな」
叢崎未和:「私に恋してくれた君が居たから、フリが続いてる」
白塚 美弦:「……うん」
叢崎未和:「そうやって、自分を作ってるうちにした約束が、どんどん私の姿を規定していくんだ」
白塚 美弦:「約束、か」
叢崎未和:「約束さ」
白塚 美弦:「こっちからも例えがあるんだけど。ねぇ、知ってる?」
白塚 美弦:「自殺しちゃいそうな人に、死なないように、またあおうって約束するの」
白塚 美弦:「結構有効なんだって」
白塚 美弦:「全部が全部それでなんとかなるわけじゃないけど」
白塚 美弦:「それだけ約束の力は強いらしいよ」
白塚 美弦:「……私も例え間違った気がする」
叢崎未和:「うふふふ……」
叢崎未和:「じゃあ、そうだな。全部なんとかなって、もし私達が生きてたら──」
叢崎未和:「キス、はもうやったなぁ」
叢崎未和:「そうだ!」
白塚 美弦:「なにー?」
叢崎未和:「2人で行こうよ、旅行!」
白塚 美弦:「旅行」
白塚 美弦:「いいね」
叢崎未和:「温泉地に行ってさ、浴衣着て足湯巡りしたりして」
白塚 美弦:「うんうん」
叢崎未和:「天婦羅とか食べてさ、なんか郷土博物館的なの見て」
叢崎未和:「おっきいお風呂に1日何回も入りに行ったりするのもいいなー」
白塚 美弦:「そうだね」
叢崎未和:「それでさ、部屋はもちろん2人一緒で」
叢崎未和:声を潜めて、くちびるを耳朶に這わせるように。
叢崎未和:「しちゃおうか。セックス」
白塚 美弦:「~~っ」
白塚 美弦:「ばか、えっち」
叢崎未和:熱い吐息が、耳をくすぐる。
叢崎未和:「ごめんよ~」
叢崎未和:全く悪びれない口調でぱっと離れる。
白塚 美弦:「……それまでに考えておくね」
叢崎未和:よく考えれば分かる。すぐに離れるのが妙だし、顔も赤い。
叢崎未和:その言葉より随分余裕がない。
白塚 美弦:でも白塚は気づかない。今は感情が爆発しそうで、そこまで気が回らない。
白塚 美弦:「とりあえず。とりあえず、旅行いくことについては」
白塚 美弦:「約束しよ」小指を出す
叢崎未和:「そだね、かわいいみっちーをメロメロにしてやるためにも」
叢崎未和:右手をおずおずと持ち上げ、小指の先が触れる。
叢崎未和:先端でなぞるように、指を絡めて見つめ合う。
叢崎未和:「指切りげんまん。約束だ」
白塚 美弦:「……うん、約束」
叢崎未和:続く文言は言わなかった。ただ、なごり惜しがるように。
叢崎未和:いつまでもその指を離すことができなかった。



【Middle latter half/月城旭】

GM:最後の手番を獲得したのは旭さんです。
GM:誰を指名しますか?
月城 旭:霞ちゃんです。
月城霞:はい。
GM:ではサブシーンは日室さん、叢崎さん、白塚さんになります。



月城 旭:誰かの情景。
月城 旭:白い部屋、ベッドの上で、おさなごが泣いている。
月城 旭:小さな部屋に、啜るような泣き声が静かに響いている。
月城 旭:「落ち着いて……ほら、旭ちゃん。大丈夫だから……」
月城 旭:かけられた言葉は真心からのものだったが、今の彼女には伝わらない。
月城 旭:いっそう、泣き声が大きくなった。
月城 旭:差し伸べられた手から、怯えるように逃げて後退る。
月城 旭:「まずいな。このままだと、侵蝕率が更に悪化して……」
月城 旭:「鎮静剤もあまり効いていない。そもそも、投薬に対する抵抗が激しすぎる」
月城 旭:研究者らしき二人の大人が、その様子を見ながら言葉を交わしている。
月城 旭:その意味さえも、白痴となった今の彼女は理解していない。
月城 旭:彼らが自分の味方である事はおろか、彼らが自分と同じ「にんげん」であることすらも。
月城 旭:「いっそ拘束しますか?」
月城 旭:「それがストレスになったら元も子もないだろう。強力な麻酔で、有無を言わさず眠らせるというのは考えられるが……」
月城 旭:──『自分にはわからない”何か”が眼の前にいる』
月城 旭:──『”何か”が自分に関心を持っている』
月城 旭:それだけを感じ取り、ただ怯えている。
月城 旭:「起きて、また暴れ出したら?」
月城 旭:「……その前に、侵蝕状態の精密検査だ。この分では、あるいはもう既に──」
月城 旭:ジャーム化、と続く言葉を途中で飲み込んだのは。
月城 旭:扉を開けて入ってくる、一人の子供の影に気付いたからだ。
月城 旭:「……おねえ、ちゃん」
月城 旭:月城霞。全ての過去を失い、世界との絆を見失った少女の、たった一人の家族。
月城 旭:まだ3歳の幼い子だ。今この現実を突きつけるのは、きっと酷だろう。錯乱している彼女に近付けば、どんな危険があるかも分からない。
月城 旭:……それでも、彼らが制止の言葉を発さなかったのは。
月城 旭:世界の全てに背を向けるようにして、ひとりベッドの上に座り込み、心を鎖していた彼女の姉が
月城 旭:気付けば、じっと吸い込まれるように、妹の方を見ている事に気付いたからだ。
月城 旭:泣き喚く声は、一転して静まり返っていた。
月城 旭:「わたし……かすみ、だよ。おねえちゃん」
月城 旭:拙い足取りで、歩み寄る。縋るような眼差しを姉へと向けながら。
月城 旭:「ねえ……へんじ、してよ……」
月城 旭:何かを、返そうとしたのだろうか。しかし、今の姉は言葉を持っていない。
月城 旭:ただ、魚のように所在なく口をぱくぱくとさせて。拙く息を漏らした。
月城 旭:霞自身は……姉が記憶喪失になったという話は、入室前に聞かされていた。
月城 旭:言葉だけでは半ば信じられなかった光景そのものが、今、目の前にある。
月城 旭:その絶望を理解できる程度に、既にこの子は聡かった。
月城 旭:「そんな……うう……うあああ……っ!」
月城 旭:部屋に響く慟哭の主が、入れ替わった。
月城 旭:たった一人の家族を失って、立ち尽くし声を上げる妹がいた。
月城 旭:「……」
月城 旭:その声を聞いた姉は……いつの間にか、裸足のままベッドから身を降ろしていて
月城 旭:泣き喚く妹の身体を、慈しむように抱き締めた。
月城 旭:……そのまま、彼女が疲れ泣き止むまでずっと、そうしていた。
月城 旭:何かを思い出した訳ではない。月城旭の頭脳は、このとき何も取り戻してはいない。
月城 旭:後の検査でも、それは明らかな事だった。
月城 旭:記憶ではない。冬によって失われる、熱ではない。
月城 旭:ならば、何が彼女たちを結び付けたのか。
月城 旭:---
月城 旭:……だって、分かったんだ。
月城 旭:言葉を知らなくても。過去の全てを失くしても。
月城 旭:眼の前の君が、私の事を何より大切に想ってくれていた事が。
月城 旭:私を必要として、呼びかけてくれた事が。
月城 旭:それが、何よりも嬉しかった。
月城 旭:私がここに居る意味が分かった。
月城 旭:私は、この世界で生きていて良いんだと思えた。
月城 旭:だから。君が、私をお姉ちゃんと呼んでくれたあの時に
月城 旭:真っ暗だった私の世界を、初めてともしびが照らしたんだ。
月城 旭:---
月城 旭:……現在。
月城 旭:居住区画にまで現れるようになった"白い獣"達を、月城姉妹が討伐していた最中のこと。
月城 旭:戦闘を終えた月城旭が不意に、立ち眩みを起こしたようにして倒れ伏した。
月城 旭:君は、急ぎ近くのセーフハウスへと、治療のため彼女を連れ運んだ。
月城霞:「姉さん、姉さん……!」
月城霞:ベッドに寝かせた姉に、不安な顔で呼びかける。
月城霞:目立った外傷は無い。何故急にこんなことになったのか、皆目見当がつかない。
月城霞:理由もわからないから、どう処置を施したらいいのか分からない。ただ不安だけが募っていく。
月城 旭:「ん……ぅ」魘されたように、声を漏らして
月城 旭:ぱちり、と碧い瞳を開く。
月城霞:「……! 姉さん!」
月城 旭:すぐそばにある、君の表情を見て。
月城 旭:「あ……はは。やっちゃった……」
月城霞:その手を握る。
月城 旭:「……ごめんね、心配かけて」
月城霞:「良かった……」安堵の息を漏らして。
月城 旭:「一人にしないって、言ったそばだったのに……」ぎゅっと握り返しながら、申し訳なさそうに笑う。
月城 旭:「……」息を吐く。何かを迷ったように、視線を宙にやって。再び口を開く。
月城霞:「……一体どうしたの、姉さん」倒れたことを自分で理解しているような彼女に対し。
月城霞:「熱中症……なんかじゃ、ないよね」
月城 旭:「……この世界に閉じ込められてから」
月城 旭:「どうにも、私の眼を使うと……負荷が大きいと感じてた」
月城 旭:「元々、記憶を代償にするほどの思考リソースを使うんだ。多少の頭痛は茶飯事なんだけどさ」
月城 旭:「……この前の霞ちゃんの説明で、納得した」
月城 旭:「私自身のレネゲイドと、"スネグラチカ"の認識阻害……複数種類の干渉を、同時に受けている事が」
月城 旭:「忘却現象に抵抗ための、消耗を……いつもより激しくしてる」
月城霞:「……そんな……」表情を曇らせる。
月城 旭:「……ごめんね。もっと早く、相談すればよかったかも」
月城 旭:「ちょっと気合入れれば何とかなるって……思ったのが、甘かったな」
月城霞:「……でも、それなら」
月城霞:「今だけ……なんだよね?」不安げに、確認するように言う。
月城 旭:大丈夫、といつものように口にしてあげたいけれど。それができなくて……いつになく弱っている自分の心を自覚する。
月城霞:「何かの病気や、症状の悪化じゃなくて……」
月城霞:「この状況だから……なんだよね?」
月城 旭:「……そのはずだ。私はお医者さんじゃないから、確かな事はいえないけど……きっと」
月城 旭:「この件を片付ければ、元のように……」
月城 旭:「……」
月城 旭:「……これさ。恥ずかしいから、秘密にしようと思ってたんだけど」
月城霞:「……?」
月城 旭:「私の……”スピキュール”っていう、コードネーム」
月城 旭:「太陽表面上を噴き上がる、プラズマジェットの現象……私の剣技を、そういうものに喩えた言葉」
月城 旭:「……そういう事になってる。表向きは」
月城霞:「……そうじゃ、ないの?」怪訝な表情。
月城 旭:「もう一つ。もっと大事な意味がある」悪戯っぽく笑って。
月城 旭:「……大気層へ高温物質を運んだスピキュールは、太陽の重力圏を離れてその先へと到達する事はない」
月城 旭:こんな雑学を意味もなく記憶している女ではない。……自分自身の形を確かめるように、今朝のメモで読んだその言葉をなぞる。
月城 旭:「何千何万という数のスピキュールは……数分の内に気中で分解されて、再び太陽へと還っていく」
月城 旭:「つまり、この名前に込められたものは」
月城 旭:「私は……何度君の傍を離れたって、必ず君の元に戻ってくるという決意で」
月城 旭:「……霞ちゃんは、私にとってただ一つの、離れがたい太陽なんだ」
月城 旭:「ほら……やっぱり口にすると恥ずかしい」仄かに頬が紅潮している。
月城霞:「……姉さん……」
月城霞:僅かに頬に朱が差す。
月城霞:「私だって……気恥ずかしいよ……」
月城 旭:「……悪いね。だけど」
月城 旭:「ちゃんと、変わらない自分のままで居られるか……少し不安になっちゃったんだ」
月城 旭:「自分一人の決意じゃなくて、君との約束なら」
月城 旭:「きっと……いや、必ず。守れると思うから」
月城霞:「……私にとっては、太陽は姉さんのほうだよ」
月城 旭:「……そう?」
月城霞:「姉さんの為なら、私も、頑張ろうと思える」
月城霞:「姉さんが好きだから……姉さんに好きでいて貰えるに相応しい、自分でいようと思えるの」
月城 旭:「ふふ……同じだ。私と」
月城霞:「……私」
月城霞:「怖かった。今。とても」
月城 旭:「……うん」
月城霞:手を握ったまま俯いて。
月城霞:「姉さんが、このまま目覚めないんじゃないかって」
月城霞:「もし、目覚めても……」
月城霞:「……また、あの時みたいになるんじゃないか、って……」
月城 旭:「大丈夫……きっと」
月城 旭:「もし、そうなったとしても」
月城 旭:「霞ちゃんが、私の傍にいて」
月城 旭:「私の事を想って、呼んでくれたなら」
月城 旭:「私は、何度だって戻って来れる」
月城 旭:「……たとえ、思い出せなくたって」
月城 旭:半身を起こし、手を伸ばす。君の頭を撫でる。
月城 旭:「何度忘れたって、私はまた君のお姉ちゃんになるよ」
月城霞:「……」顔を伏せる。
月城霞:「それでも」
月城霞:「もし、姉さんが覚えていなくても」
月城霞:「きっと忘れる度、その度に……姉さんは、そのことで傷付くでしょう」
月城霞:「私は……そんなの、見たくないよ」
月城霞:「……姉さんの記憶障害は、能力の副作用なんでしょう?」
月城 旭:「……ごめんね」
月城霞:「ねえ」
月城霞:「これから……極力。ううん」
月城霞:「一度も能力を使わないことは出来ない?」
月城 旭:「ええ。集中して使うと、負荷が大きくなる……だけど」
月城 旭:「完全に使わない、ってのは難しいんだ」
月城 旭:「目に映ってしまうんだから。私自身に、戦うつもりがなくたって……」
月城 旭:「ジャームのような脅威に遭遇すると、脳が勝手に戦いの準備を始めようとする」
月城霞:「じゃあ、私が姉さんを守る」
月城 旭:「……いっそ、戦う事を止めようかとも思った。そうした時期もあったけど……改善の兆候もなかったし」
月城 旭:「……うん」
月城 旭:「霞ちゃんは、そう言ってくれるよね」
月城霞:「姉さんが戦わなくていいようにする。姉さんが能力なんて使わずに生きて行けるようにする」
月城霞:「それでも、駄目なの?」
月城霞:縋るように言う。
月城 旭:「……私はさ」
月城 旭:「霞ちゃんの枷になっちゃいけない、って思ってた」
月城 旭:「だって、お姉ちゃんなんだ。妹の人生や、可能性を……縛るような事は」
月城 旭:「きっと、いけない事なんだって……思っていたから」
月城 旭:「……戦う事は、こんな私にもできるたった一つの仕事だった」
月城 旭:「危険は分かっていたけど……霞ちゃんのために、お金くらいは稼げるようになりたかった」
月城 旭:「このままじゃいけない、とも思ってた」
月城 旭:「ずっと、変わろうとしていた。旅をして、綺麗なものを見て、素敵な出逢いをして……」
月城 旭:「そうすれば、私の世界も広げられるかもしれないと思ったから」
月城 旭:「だけど、もし」
月城 旭:「これは……君のお姉ちゃんとして、とっても情けない言葉なんだろうけど。もしもさ」
月城 旭:「霞ちゃんが、私に縛られても良いと言ってくれるなら……」
月城 旭:「……そういう選択を、してもいいんじゃないかって」
月城 旭:「ちょっとだけ、そう思ってる」
月城 旭:「……。失望した?」
月城霞:「……姉さん」
月城霞:その目を見つめる。
月城 旭:「……うん」
月城霞:「姉さんは、私の枷になんてならないよ」
月城 旭:「……そう、かな」
月城霞:「姉さんがいないと……私はきっと、私でいられない」
月城霞:「姉さんがいるから、私は今の月城霞でいられるの」
月城霞:「……姉さんが、私を頼ってくれるなら……」
月城霞:「……それは、何より嬉しいよ」
月城霞:「……私」
月城霞:「ずっと、姉さんに誇れる、頼れる妹でありたいって」
月城霞:「そう……思ってきたから」
月城 旭:「……嬉しいけど、ちょっと複雑だな」
月城 旭:「私、霞ちゃんの前だと……結構、見栄を張ってたからさ」
月城 旭:「素の私は、案外もっと情けなかったり、子供っぽかったりしちゃうのさ」
月城霞:「……そういう顔を」綻ぶように笑う「見せて貰えるのが、嬉しいの」
月城 旭:「……じゃあ」
月城 旭:「言うよ。今から」
月城 旭:「私の中の、弱くて……情けなくて、どうしようもない部分の気持ち」
月城霞:「……うん」
月城霞:「聞かせて」
月城 旭:「……変わる事が、怖いんだ」
月城 旭:「今の自分を変えなくちゃいけない、と思ってた。旅を繰り返すのも、大切な思い出になるものを見つけるためだ」
月城 旭:「未和ちゃんと友達になる事を受け入れたのも、きっとそう思ったから」
月城 旭:「だけど……それでも、私は怖い」
月城 旭:「私にとって、変化とは大抵、喪失することだったから」
月城 旭:「……何より、私は」不安を隠さない眼差しを、君へと向ける。
月城 旭:「霞ちゃんが、変わってしまう事が怖い」
月城 旭:「人生の中で、私よりも大切な人を見つけてしまう事が怖い」
月城 旭:「君の、二番目やそれより下のものになってしまう事が怖い」
月城 旭:「私よりずっと沢山の物を積み重ねていく君の中で、埋もれて、君にとっての過去になってしまう事が怖い」
月城 旭:「……人間は、生きていく限り成長するものだ。私が言っているのは、無理難題で、どうしようもない我儘なんだろう」
月城 旭:「それでもさ」
月城 旭:「私は……いつまでも、ずっと。霞ちゃんにとっての一番大切な人で居たい」
月城 旭:「……ほら」
月城 旭:「やっぱり、枷になりそうじゃない?」困ったように微笑む。
月城霞:「……」
月城霞:その微笑を前に、身を寄せ、頭を預けるようにして。
月城霞:「……本当は、ずっと」
月城霞:「姉さんが、一人でどこかに旅行に行く度に」
月城霞:「私、不安で。怖くて。寂しくて」
月城霞:「引き留めたくて、仕方なかった」
月城 旭:「……ごめんね」
月城霞:「……そんなことをすれば、きっと頼りない妹だって思われるし」
月城 旭:「私。お姉ちゃんなのに、そんな事にも気付けなかった……」
月城霞:「出来なかった。姉さんの枷に、なりたくなくて」
月城霞:「……私の、弱くて、情けなくて、どうしようもない気持ちはね」
月城霞:「たった一つだけだよ」
月城 旭:「……うん」身を寄せる君を抱きとめて、続く言葉を待つ。
月城霞:幼児のように姉を抱き締めて、僅かに高いその顔を見上げる。
月城霞:「離れないで」
月城霞:「ずっと傍にいて」
月城霞:「……お姉ちゃん」
月城 旭:「うん……もちろん」
月城 旭:「霞ちゃんがそう願うなら、ずっと一緒に居よう」
月城 旭:「旅行も……これが終わった後に行く、一度だけじゃなくて」
月城 旭:「行く時は、いつも霞ちゃんと一緒に。……それなら、寂しくないでしょ?」
月城霞:「……うん」
月城霞:「そうして」
月城霞:素直に頷く。姉に身を委ねて。
月城霞:「……お姉ちゃん」
月城 旭:「ふふ」ぎゅう、と君を抱き締めて微笑む。最後にたった一つ残った弱音を零す。
月城 旭:「ああ……良かった。霞ちゃんに、嫌われなくて」
月城霞:「……これだけは覚えていて」
月城 旭:何もかもを伝えてしまった、醜い自分を、それでも受け入れてくれて。
月城 旭:「本当に、良かった……」
月城霞:「私は、お姉ちゃんが大好きだって」
月城 旭:「……うん。大丈夫」
月城霞:きっと永遠に変わらない事実を口に。その熱を感じながら、穏やかに目を閉じた。
月城 旭:「霞ちゃんの言葉は忘れないよ。こんな私が……14年ものあいだ続けて来られた、数少ない特技だからね」満面の笑みと共に、その願いに応じた。
月城霞:ロイス取得 月城旭 ○お姉ちゃん/不安
月城 旭:ロイス取得。 月城霞:〇妹/依存 月城旭:〇霞ちゃんのお姉ちゃん/不安



叢崎未和:レネゲイド事物への認識情報を操られている住民たちの行動を制御しきることは出来ない。
叢崎未和:必然、被害を抑えるためには『白い獣たち』へと対抗して打って出る必要があった。
叢崎未和:「起きろ〈ズュギア〉……」
叢崎未和:襲い来る狐へ、腐食の霧を呼び出す。間に合わない。
叢崎未和:「っ!」
日室 晴陽:「はい、ストップ!」
日室 晴陽:日室の言葉に引きずられるように狐の動きが止まる。
日室 晴陽:否、実際に引きずられている。魔眼から発生する重力によって。
叢崎未和:そうして分解──否。
叢崎未和:それはレネゲイドに対しては『同化』として作用する。
叢崎未和:『衝動』を核に因子を取り込む、ウロボロスの影の霧。
叢崎未和:「助かった!」
白塚 美弦:「さすが日室さん!」
叢崎未和:「……さて、あらかた片付いたかな……で」
叢崎未和:「霞さんが"スネグラチカ"だって?」
叢崎未和:ついさっき告げられた推測を確認する。
白塚 美弦:「そういう話だったね」
日室 晴陽:「そ。霞本人が確信してるし、理屈も通んなくはないから」
日室 晴陽:「確定までは行かないけどまあまあ可能性高めだろーね」
叢崎未和:「これまでの被害記録は」
叢崎未和:「時の情報熱を貪って過去へと飛ぶ、"スネグラチカ"にとっては未来の話なんだ」
叢崎未和:「とんでもない話だな」
日室 晴陽:「ね。この場合、あたしらがスネグラチカ倒したらどうなんだろうね」
叢崎未和:「日室さんのいいとこだね。それ」
日室 晴陽:「え、どれ?」
叢崎未和:いいとこ、の具体的な話はせず「ん~そうだな」
叢崎未和:「霞さんが自分が死ねば何とかなるって確信してるんなら、つまりスネグラチカを倒せばこれまで事件も無くなるんだろうなと思うけど」
叢崎未和:「ひとつ、提案があるかな」
白塚 美弦:「なんだろなんだろ」
日室 晴陽:「ふんふん、とりあえず聞かせて?」
叢崎未和:「"ペニードレッド"のセルリーダーは知ってるよね。"ムーンブリンク"上月姑獲鳥」
叢崎未和:「あいつはちょっとだけ私の師匠みたいなとこがある。どうしようもないジャームだったし」
叢崎未和:「最終的に殺して力を奪った、まあ闇の師だね」
叢崎未和:「……『名前』を奪うんだ」
叢崎未和:「"メタルペッカー"、"シガルヴォイド"、"カプラマルジア"、"ランドイーグル"…………」
叢崎未和:「あのセルのチルドレンは本名を奪われ、それとは別に名を与えられて、性質を歪められる」
叢崎未和:「私がストックしている因子に名前を付けることを提案したのも奴だった」
叢崎未和:「『認識し』『呼ぶ』者が私しかいなければ、機能に適した存在にある程度叩き直すことが出来る。これは呪いの話だ」
叢崎未和:「"スネグラチカ"」
叢崎未和:「そこには閉じた情報の円環が存在している。遥か過去にさかのぼって街を破壊してゆくが故に」
叢崎未和:「誕生の瞬間には既にその名がある。だからUGN桜花支部にはこの手は使えなかったけど」
叢崎未和:「今、この異界化した桜花で、その名を知るのは私達5人」
叢崎未和:「単純な手だけどさ、別の名前で呼ぼう。」
白塚 美弦:「そうすることで、性質が変わるかも知れないってこと……かな」
日室 晴陽:「……えぇと、待ってね。悲しーことに、あたしあんま賢くないから理解が追い付いてるかも分かんないんだけど」
日室 晴陽:「あたしたちだけの名前でスネグラチカを呼んで、そしたらスネグラチカに影響が行って」
日室 晴陽:「あたしたちに都合の良い方に変えられるかも……みたいな?」
叢崎未和:「多少の齟齬を入れることは出来るんじゃないか、くらい」
叢崎未和:「だいたい合ってるよ。賢い賢い」
日室 晴陽:「合ってる?良かったー」
叢崎未和:ニコニコ笑いながら拍手する。
日室 晴陽:素直に安堵して胸を撫でおろし、ついでに気を取り直し。
日室 晴陽:「まあ呼び型変えるだけでなんか起こせるかもなら、試して損はないし」
日室 晴陽:「良さげじゃん?後で二人に話通すとして、今のうちに呼び名決めちゃお」
叢崎未和:「いいの? どうしようかな……」
白塚 美弦:「名前……私、そういうのセンスないかもなー」
日室 晴陽:「あたしもあんまないなー。自分のコードもつけてないし」
叢崎未和:「"スネグラチカ"は、元はと言えばロシアの雪の少女の名前らしい」
叢崎未和:「あるいは、霞さんにとっての時を遡った先に、ロシアで伝承としての名前を得たのかもしれないけれど……」
叢崎未和:「私達が呼ぶ上で『雪』のエッセンスは消してしまいたい気もするし」
叢崎未和:彼女の能力を想起しながら。
叢崎未和:「逆に演技がいいともとれる。日室さんも旭さんも、雪解けって感じの名前だし」
叢崎未和:「あ、ごめん。私も命名センスはないよ。"ねじ巻き"、私が言い出した奴じゃないし……」
日室 晴陽:「あ、そうなん?周りが勝手に系?」
叢崎未和:「そそ。ま、今見えてる部分の、サラマンダー能力と関係ない部分をピックアップするなら」
叢崎未和:「あの動物共だよね。色んな獣を従えてる」
日室 晴陽:「あ、確かに。従者系かなーって考えてたけど、霞なんだったら多分違うよね」
叢崎未和:「パッと思いつくのは"アスラン"とか? エスペラント語かなんかでライオンのことだった気がする」
日室 晴陽:「ジャームだから出来る系なんかな……」
叢崎未和:「百獣の王ってことで。敢えて雪からは遠めの語彙にしてみました」
白塚 美弦:「なるほど……」
日室 晴陽:「良いかも。スネグラチカより呼びやすいし」
叢崎未和:「なんかUGNはもっと丁度いい名づけのメソッドいっぱい持ってそうだし、持ち帰って検討くらいにしとこう。暫定それ」
日室 晴陽:「まあ霞と旭さんにも案あるかもだしね。暫定で」
白塚 美弦:「わかった~」
叢崎未和:「名前と言えば、私のUGNの方のコードも結局どういう風につけたか思い出せないんだよね」
叢崎未和:「みっちー新しいの考えといてくんない? 事件終わるくらいまでに」
白塚 美弦:「センスないけど、いいの?」
叢崎未和:「みっちーのが欲しいのさ」
叢崎未和:彼女の頬をくすぐるように撫でる。
白塚 美弦:「ふ~~~ん」
日室 晴陽:「いちゃつくねえ」
白塚 美弦:「わかった。いいよ~。考えておくね」
叢崎未和:「期待しとく……まぁねん」
叢崎未和:前半は白塚さんに、後半は日室さんへ向けて。
叢崎未和:「みっちーとイチャイチャすることでレネゲイドを安定させているのだ。来たる決戦に備えてね」
叢崎未和:「と、言っても」
叢崎未和:「完全出現前に叩きたい、とは言ってたがどうしたもんかねぇ……」
日室 晴陽:「そこなんよね。結局引きずり出す方法見つかってないし」
日室 晴陽:「一応新事実はあるんだし、そっから何か試せなくはないかもだけど」
叢崎未和:「桜花の住民を私達が初日からローラーで絶命させてくしか手段はなかったのだ。って言われちゃうと」
日室 晴陽:「それであっさり出てくるかも分かんないしなー……最悪正面戦争かも」
叢崎未和:「お手上げよ」物騒なことを言いながらお手上げのポーズ
白塚 美弦:「正面戦争かぁ……迎撃設備とかもあるとはいっても……」
日室 晴陽:「ま、それでも完全出現に勝てないとは限んないし」
日室 晴陽:「やれるだけ準備してやるしかないっしょ」
叢崎未和:「前向き~」
日室 晴陽:「よそ見してる場合じゃないかんね~」
日室 晴陽:「それにまあなんつーか」
日室 晴陽:「そっちのが向いてるからさ」
叢崎未和:「そりゃわかるぜ」
叢崎未和:「日室さんはそんな感じよねん」
白塚 美弦:「根っからの太陽なんだねー」
日室 晴陽:「そうかな、太陽出来てる?」
白塚 美弦:「できてるできてる~」
叢崎未和:「できてるさ。言ったろ」
叢崎未和:「お陰でやれてるって」
日室 晴陽:「……なら良かった」
叢崎未和:「霞さんも……と言うかあの子が一番そういうとこあるんじゃないかな。旭さんは……どうだろ」
叢崎未和:特に関係ないかもしれないなぁ、と苦笑しながら。
日室 晴陽:「事情が事情だしなぁ……。正直あたしも力になれてる気あんましない」
日室 晴陽:「でもまあ、こうさ。協力して一緒に戦って」
日室 晴陽:「それでなんか、残るものあったりしないかなとも思うんだよね」
叢崎未和:「あるといいねぇ」
日室 晴陽:「別に忘れなくなるとかじゃなくてさ。こう、自転車の乗り方忘れないのと一緒みたいな」
白塚 美弦:「うんうん」
叢崎未和:「ん。いい事言う」
日室 晴陽:「呼吸の合わせ方とか、連携の感じみたいな。そういうのが何かちょっと残るかもって」
日室 晴陽:「残ったらいいなって。最近はそう思いながら訓練してる」
叢崎未和:「……」
叢崎未和:「今更ながらこの班分け、戦力的には正解だけど、日室さんが居ない2人」
叢崎未和:「危うい気がするな。大丈夫かな」
叢崎未和:言えた義理ではない。
白塚 美弦:「姉妹で今までやってきたから大丈夫……と言いたいけど」
白塚 美弦:「状況が少し変わったからね。そういう点ではちょっと心配かも」
日室 晴陽:「……だいじょぶだよ」
日室 晴陽:「や、あたしもあんま言い切るとか出来ないけど」
叢崎未和:「そう? でも日室さんが言うならそうなのかもな」
日室 晴陽:「旭さんと霞なら大丈夫だと思う」
白塚 美弦:「そうかもね~ほら、私達は」
白塚 美弦:「割と俗でよそ見しがちだから、前を向いてないときもあるけど」
白塚 美弦:「いつも前を見て、あの姉妹のこともよく見てるであろう日室さんがいうなら」
白塚 美弦:「多分そう」
白塚 美弦:「付き合いも短いわけじゃなさそうですしね」
叢崎未和:「よそ見しぃの割に切羽詰まってるからね~」
日室 晴陽:「なんか今日二人ともめっちゃ褒めてくれんね。どしたん?」
日室 晴陽:「や、嬉しいけど。やや照れてきた」
白塚 美弦:「それは」
白塚 美弦:「ちょっと余裕(バッファ)があるからかなぁ。こんな状況だけど」
白塚 美弦:「今、幸せなので!」
叢崎未和:「へ、そうかいそうかい」指先で軽く鼻を擦る。
叢崎未和:「私は今日が特別そうって気はないよ」
叢崎未和:「日室さん、得難いやつだからね。特にチームにとって」
日室 晴陽:「マジか……や、実際結構褒めてもらってたわ」
日室 晴陽:「え、なんだろ……ありがとう?」
日室 晴陽:本当に照れ臭くなってきて、なんとなくお礼。
叢崎未和:「こっちこそ」へらへら笑いながら。
白塚 美弦:「どういたしまして~」ニコニコと受け取る。
叢崎未和:「とんでもない厄モノとして紛れ込んじゃったもんだけど、なんか協力させて貰える感じで回ってるし」
叢崎未和:「霞さんのなれ果て面かもっつーのがアレだけど」
叢崎未和:「正直私もちょっと、やれる気はしてるよ。暫定”アスラン”、ぶっ潰しますか」
叢崎未和:カラ元気に影が蠕動する。完成は近づいている……はずだ。
白塚 美弦:「本当に霞さんだとしたら、叱って止めなきゃだもんねー」
日室 晴陽:「……うん。止めなきゃだし、謝んなきゃだ」
日室 晴陽:「そんなになるまで止めれなくてごめんって」
叢崎未和:ただ、最後の1ピースが足りないことも感じている。白い獣の因子を取り込んでも、依然としてその感覚はある。
叢崎未和:「(ぶっつけ本番かな、これ)」
叢崎未和:「はは、好対照でウケる」
叢崎未和:「止められなかったやつが悪いのか。止まらなかったやつが悪いのか……」
叢崎未和:「ま、その時だよね。その時」
日室 晴陽:「ま、出たとこ勝負なとこあるしね」
日室 晴陽:「そのときの全力を尽くすとしますか」
白塚 美弦:「ぶっつけ本番に全力、だね。頑張ろ~っと」
叢崎未和:何一つ悪く無くても、それを止められたのかもしれない当事者となれば、自責の念に駆られることもあるんだろうな、と。初めて美弦のうちに泊まった日の事を思い出して。
叢崎未和:「反転可能性テストだなぁ」と、今は目の前に居ない彼女たちに思いを馳せた。



GM:ブーケの集計が完了しました
GM:最も多くのブーケを獲得したのは、月城霞さん。ブーケ数は327個でした。
GM:霞さんはエクストラシーンの権利を獲得します。



GM:トリガーシーンに移る前に、全員購入判定を行えます。
GM:全達成値+10になっているのをお忘れなく
叢崎未和:何でも買えちゃうじゃん
白塚 美弦:えー、なにかおうかな
叢崎未和:んー ジェネシフト
叢崎未和:2d10+73
DoubleCross : (2D10+73) → 6[5,1]+73 → 79

叢崎未和:良い感じ
月城霞:コネ:手配師を使用して戦闘用着ぐるみを買います
叢崎未和:5dx+12>=18 簡易手術キット
DoubleCross : (5DX10+12>=18) → 10[4,6,8,9,10]+5[5]+12 → 27 → 成功

叢崎未和:1+4d10 自分に
DoubleCross : (1+4D10) → 1+25[5,7,10,3] → 26

月城霞:6DX+16>=14
DoubleCross : (6DX10+16>=14) → 9[2,4,6,8,8,9]+16 → 25 → 成功

月城 旭:私も手術キットかなあ
日室 晴陽:こっちも簡易手術キット狙います
叢崎未和:全快! 以上です
月城霞:装備して以上です
月城 旭:3dx+1+10>=18
DoubleCross : (3DX10+11>=18) → 7[1,3,7]+11 → 18 → 成功

月城 旭:自己使用で
月城 旭:12+4d10
DoubleCross : (12+4D10) → 12+8[4,1,1,2] → 20

月城 旭:?
日室 晴陽:3dx+10>=18
DoubleCross : (3DX10+10>=18) → 8[2,5,8]+10 → 18 → 成功

月城 旭:月城 旭のHPを20に変更 (12 → 20)
GM:ひくすぎ
日室 晴陽:よし買えた。こっちも自己使用で
日室 晴陽:5+4d10
DoubleCross : (5+4D10) → 5+9[4,1,1,3] → 14

日室 晴陽:ひっく
GM:君ら手術苦手だな……
日室 晴陽:まあ苛烈なる火は使えるからいっか、以上!
白塚 美弦:じゃあ一応ブルーゲイルかなー
白塚 美弦:もしかしたら、役に立つかも知れないし……
白塚 美弦:7dx+12>=20
DoubleCross : (7DX10+12>=20) → 9[4,5,6,6,7,9,9]+12 → 21 → 成功

叢崎未和:あ、私貰っていい? 日室さん先陣あるし
白塚 美弦:いいよーあげるー
叢崎未和:みっち~♡
叢崎未和:ありがと~ 所持して以上



【Middle3】

GM:クライマックス前、最後のミドルシーンです。全員登場
日室 晴陽:日室 晴陽の侵蝕率を1D10(→ 2)増加 (77 → 79)
白塚 美弦:白塚 美弦の侵蝕率を1d10(→ 9)増加 (70 → 79)
月城霞:75+1D10
DoubleCross : (75+1D10) → 75+6[6] → 81

月城 旭:月城 旭の侵蝕率を1d10(→ 5)増加 (76 → 81)
叢崎未和:叢崎未和の侵蝕率を1D10(→ 2)増加 (79 → 81)



カラオケ店『200デシベル』 桜花店
GM:夏の終わりがあと五日ほどに迫ったその日。
GM:街を行く人の影は静かに、だが確実に減りつつあり、白い獣たちの出現範囲も、人口密集地まで到達しつつあり
GM:焦燥の募る中、君達は情報共有と今後の会議のため、このカラオケ店に集まっていた。
月城 旭:「……結局、こっちから引きずり出すのは厳しそうかなあ」
日室 晴陽:「ですよねぇ……」
白塚 美弦:「完全体になる前に抑えられたら良かったけど……」
叢崎未和:「私は安定してまーす。いつでもいけるよ」致命的なコミュニケーション不全は抑え込めている。空腹・貧血・不眠・闘争衝動などは放置したままだが。
月城 旭:「認識阻害が原因だろう、って頭じゃ分かってて……しかも、私達はある程度その辺に耐性があるみたいだけど」
月城霞:「……そのことだけれど」
月城霞:「私に、少し試したいことがある」
叢崎未和:「おや」
白塚 美弦:「おー」
月城 旭:「それでも見抜けない。よっぽど特別、強力な阻害がされてるんだろうか……おっと」
月城 旭:「何かアイデアあるの?霞ちゃん」
日室 晴陽:「どういうの?」
月城霞:「“スネグラチカ”と私の能力が同じだとすれば、奴を引きずり出せるかもしれない」
叢崎未和:「結局そっちの名前で呼ぶんだ。まあ干渉ルートが霞さんってんなら、そうだろうね」
叢崎未和:「んで、具体的にはどんな感じなの?」
月城霞:「あ、“アスラン”だったかしら。そちらでもいいけれど……とにかく」
月城霞:「私が街中で、全力で能力を使う。奴があらゆる熱を喰らうジャームならば、大事な餌が減るのを黙って見過ごしはしないと思う」
月城霞:「それともう一つ」
月城霞:「奴は情報を極限まで希薄化させているだけで、完全に消失しているわけじゃない」
月城霞:「いわばこの街に存在が偏在している状態。その状態の奴に対して、私の能力を使えば……」
月城 旭:「全力で力を……大丈夫そう?それは……」単純な消耗に加えて、その後に奴と交戦する事になる訳だけど。
月城 旭:心配そうに妹の顔を覗き込む。
日室 晴陽:「霞の力で直接ダメージが通るかも、って?」
月城霞:「実体化する前に、存在そのものを消し去れるかもしれない。少なくとも、奴はそれを嫌って出てこざるを得ないはず」
月城霞:「……私は平気よ、姉さん」
叢崎未和:くっくっく、と笑う。
月城霞:「ただ、皆にはその為に、一般人の避難を手伝ってほしい」
叢崎未和:「いいねそれ。いかにもやばい敵の性質を掴んで、頭のいい霞さんが考えて」
月城 旭:「……分かった。そうだね、十分試す価値のある仮説だと思う」
叢崎未和:「メタルペッカーちゃんと同じアプローチになってんのが、最高にバカバカしくて良い」
月城霞:「言われてみれば……」
白塚 美弦:「全力で協力しますよー」
月城 旭:「わ……笑う所なのかな、それは?」
叢崎未和:「絶望との対峙にはこれくらいがちょうどいいよ。おあつらえ向きの作戦ってこと!」
日室 晴陽:「ん。まあ霞が居てくれたお陰でちゃんと効果も見込めるんだしね」
日室 晴陽:「避難は完璧にやっとくからさ。霞も無理しないでね」
月城 旭:「そういうものかな。まあ……あれが絶望だなんて、私は思わないけどね」
月城霞:「うん。大丈夫」
叢崎未和:「おっけ。これでも得意なんだ、人に言う事聞かせるの」
月城霞:「無理はしないわ。勝つためにやるのだから」
月城 旭:「……うん。勝って、帰るために」
日室 晴陽:「ならよろしい。ま、揃ってからやるんなら霞が攻撃されてもフォローできるっしょ」
日室 晴陽:「というか絶対する。けどまあ、それはそれとしてね」
日室 晴陽:「心配は心配だもん」
月城霞:「日室は心配し過ぎ」
月城 旭:「まあ、心配になるのは分かる……けど」
月城霞:「本当に大丈夫よ。少しは信頼して」
月城霞:「バディでしょう、私たち」
日室 晴陽:「信頼はしてるよ、勿論。だから作戦にはさんせー」
月城 旭:「……次ばっかりは、私も戦うからね」
日室 晴陽:「その上でね。心配してるよって言っとくのが大事かなって」
月城 旭:倒れたあの日以来、白い獣の討伐にも参加せず能力を使うのを控えていた。
月城 旭:それでも、次ばかりは戦力を温存して済む相手ではあるまいと。
月城霞:「分かった。よく覚えておくわ」日室に真面目な顔で頷いて。
月城霞:「……うん」
月城霞:「これを最後にしよう」
叢崎未和:「節目には丁度いいよね」
白塚 美弦:「うんうん」
月城 旭:「最後……うん、そうだね」
月城 旭:「それでもって、始まりだ」
日室 晴陽:「最終決戦開始、って感じ。なんか熱いね」
叢崎未和:「よし。叢崎未和、景気づけに歌いまっす」
月城霞:「何故歌を……?」
叢崎未和:纏まりかけたところで、妙にこなれたデスボイスを披露し始める。自傷衝動を満たしたかったのだろう。
月城 旭:「そういえば、ここって歌う所なんだっけ」
日室 晴陽:「ほら、歌聞くとテンション上がるし……いやみわっちデスボやば」
月城 旭:「ひゃっ、すごい声……」
日室 晴陽:「なんでそんな慣れてんの」
月城霞:「何故喉を……」
白塚 美弦:「そうだそうだー」
月城霞:「痛めるからやめたほうがいいわよ」
叢崎未和:「痛めるためにやってんのよ」かすれた声で返す。
白塚 美弦:「慣れてるのなんて知らなかったぞー」
月城霞:「何故…………??」
白塚 美弦:「今度から私も連れていきなさいー」
叢崎未和:「こういう代償行為をそこかしこに埋め込んだ生活にもおさらばだー!」
月城 旭:「ああ……これも、例の衝動なんだ」
日室 晴陽:「あー……まだ穏当な方だからやめなって言いづらい奴……」
叢崎未和:「いーよいーよ。一緒に歌おーね」
月城 旭:「そっちも、何とかなりそうなの?」
叢崎未和:「放り捨てるの前提で育ててきた力だよ。上手い具合に放り捨てる」
叢崎未和:そうできたら、の話だが。
月城 旭:「そう。……皆の協力が必要なら、言ってね」
叢崎未和:にっこり笑う。「ありがと、旭さん」
叢崎未和:「私、うまく行ったら途中でめちゃめちゃ弱くなると思うから、みんな頑張ってね~」
叢崎未和:気の抜けるような宣言とともに、またやかましく歌い始めた。
日室 晴陽:「せっかくだしあたしもなんか入れよ。三人は?」
月城 旭:「それは……うん、前もって聞けて良かったな」
日室 晴陽:ピッピッと機械を弄る。
月城 旭:「んー? 私は分かんないや、歌」
月城 旭:「聴いてるだけで楽しいから大丈夫だよ」
月城 旭:ジュースのグラスを手にニコニコしている。
月城霞:「士気の向上に効果があるなら……歌うべきかしら」神妙な顔。
白塚 美弦:「ん、じゃあ次貸してください」
叢崎未和:「え~聴きたいな~ 霞さんのおうた」マイクをみっちーへほうりながら。
白塚 美弦:「甘ったるい恋愛ソングならおまかせを!」
月城 旭:「霞ちゃん、歌えるの? 聴いてみたいかも」
白塚 美弦:「霞さんの歌は聴いてみたいですね」
月城霞:「そうね……分かったわ」端末で校歌を探し始める。
日室 晴陽:「……」 横からそれを見て一瞬噴き出しかけて。
日室 晴陽:「あんね、霞。校歌は多分流石に無い」
月城霞:「…………」
月城霞:「そうなの……?」
日室 晴陽:「ご当地物だし……いや、ご当地って言い方があってるかも分かんないけど……」
日室 晴陽:「がっこの授業で習った合唱曲とかならあるかも。探してみ」
白塚 美弦:「全国の学校の校歌いれてたら大変なことになりますからねー」
月城霞:「そう……」やや残念そうに、言われるがまま合掌の課題曲を探し始める。
月城霞:「……勝ちましょうね」
月城霞:「必ず」
月城 旭:「もちろん」
日室 晴陽:「もち!」
白塚 美弦:「そうですね!」
叢崎未和:「うん」
叢崎未和:「勝つさ。私達」
叢崎未和:3d10 ジェネシフト
DoubleCross : (3D10) → 18[8,6,4] → 18

叢崎未和:侵蝕99に



【Climax】

GM:クライマックスシーンです。全員登場。
月城 旭:月城 旭の侵蝕率を1d10(→ 5)増加 (81 → 86)
日室 晴陽:日室 晴陽の侵蝕率を1D10(→ 8)増加 (79 → 87)
白塚 美弦:白塚 美弦の侵蝕率を1d10(→ 7)増加 (79 → 86)
叢崎未和:叢崎未和の侵蝕率を1D10(→ 4)増加 (99 → 103)
月城霞:81+1D10
DoubleCross : (81+1D10) → 81+1[1] → 82




GM:真夏の青空に、霧を纏った白い月が昇る。
GM:桜花市の中心部、普段は人通りの多いビル街の中心部に、今は君達以外はひとつの人影もない。ただ蝉の声だけが響いている。
GM:上空に飛翔する月城霞の魔眼は、今や真昼に現れたもうひとつの月めいて巨大に輝き、
GM:辺りに極低温の冷気を撒き散らす。正確には、あらゆるものの熱を喰らっていく。
月城霞:「……ッ……」
GM:侵蝕負荷に、霞が顔を顰める。駅前の巨大な噴水が凍り付き、ぴしぴしと空気の軋む音が聞こえる。
月城霞:「…………!」
GM:霞が空を見上げ、同時に月が一際強い輝きを放った、その時。
GM:みしり、と。
GM:空が割れた。
月城 旭:「っ……」心配する声をかけたくなるが、堪える。熱を失い、ひどく静まり返った世界を見据えて、敵の出現予兆を探っている。
叢崎未和:「おっ」
GM:天蓋が砕けたように、空が剥がれ落ちたように。青空に黒い罅が走り、巨大な雪の塊と化して落下してくる。
叢崎未和:右手を庇に空を仰ぐ。白髪隻腕、姿の欺瞞を解いている。
GM:街に、君達のもとにふわりと舞い落ちてくる、白い雪。
月城 旭:「あそこ、か」無造作に、鏡のように透き通った刃鋼を空へと向けて、指し示す。
GM:灰色の空、雪雲の中心に、それは居た。
“スネグラチカ”:「……」
“スネグラチカ”:純白の、少女を象った雪像のような。
“スネグラチカ”:目も、鼻も、口も無い。削ぎ落され、漂白されたかのような人影が、雪と共に君達のもとへと降りてくる。
叢崎未和:「目をつけられるとこまで成功」
月城 旭:「……」その姿を見止めて、僅かに表情を顰める。警戒は解かないまま。
日室 晴陽:「ん、引っ張ってこれたんだし成功じゃんね」
月城 旭:「霞ちゃん、もう良いよ」
日室 晴陽:「出てきただけでヤバいって感じもないし、準備もまだ終わってないっしょ」
月城霞:「……っ、うん……」
月城霞:息を吐き、能力を解除する。だが冷気は引くことはない。“スネグラチカ”によって、更に強くなっている。
白塚 美弦:「よく頑張りました、霞さん。ただ……」
白塚 美弦:「もうひと踏ん張り、必要ですけどね」
“スネグラチカ”:霞に顔を向ける。
“スネグラチカ”:どのような感情を抱いているのか。あるいは単なる外敵として認識しているのか。それすら読み取れない。
“スネグラチカ”:ただ、淡く舞っていた雪が、忽ち烈しく、強く、吹雪へと変わる。
月城 旭:「ごめんね」吹雪の中、口を開く。ジャームと化したそれに、きっと通じる事はないだろうけれど。
月城 旭:「……なんて、本当は。私が口にするべきじゃないかもしれないけど」
月城 旭:「いつかずっと昔に、君の傍にいたはずの」
月城 旭:「君を守れなかった……どこかの馬鹿な姉に代わって」
月城 旭:「宣言しよう」
月城 旭:刃が、薄赤い焔を帯びる。
月城 旭:「私は、”スピキュール”。月城旭」
月城 旭:「君を倒して、君が生まれなくていい未来を──」
月城 旭:「私の妹が笑って過ごせる世界を、手に入れるよ」
“スネグラチカ”:「……」
“スネグラチカ”:かつて姉だったはずの者の言葉にも、表情を動かすべき顔も存在しない。
“スネグラチカ”:吹雪の向こうから、無数の影が現れる。雪で造られた純白の鳥や獣の群れ。宙を泳ぐ魚の姿まである。
月城霞:吹き荒ぶ雪の中、揺らがずに立ち、“スネグラチカ”を見据える。
月城霞:「私は貴方じゃない」
月城霞:「私はUGNチルドレンで。月城旭の妹で、日室晴陽の相棒」
月城霞:「“豊穣の海”。月城霞だから」
月城霞:「“スネグラチカ(あなた)”とは、違う」
月城霞:再び、純白の朧月が満ちる。
月城霞:「もう決めたの」
月城霞:「私は、運命(あなた)に勝つ」
日室 晴陽:相棒の真っ直ぐな眼差しを、ピンと伸びた背筋を横目に見て。
日室 晴陽:「良かった」 口の中だけでそう呟く。
日室 晴陽:そのまま、自身もスネグラチカを真っ直ぐに見据える。
日室 晴陽:「正直さ」
日室 晴陽:「君よりかは、君がこんなになるまでほっといた未来のあたしをぶん殴ってやりたい気持ちなんだけどさ」
日室 晴陽:「それは出来ないし。今のあたしはそんなことしないとしか言えないし」
日室 晴陽:「だから」
日室 晴陽:朧月に並び立つように。太陽が姿を現す。日が昇る。
日室 晴陽:「この街は、雪に沈まない。あたしが全部溶かす」
日室 晴陽:「それで、君のことも。絶対ここで止める」
“スネグラチカ”:その言葉が届いているのか。目の前の人物が誰であるか、理解しているのか。
“スネグラチカ”:ただ雪が吹き荒れる。あらゆる全てが雪に閉ざされ、凍り付いていく。
白塚 美弦:「……私は霞さんと話す機会が少なかったけど」
白塚 美弦:「それでも。霞さんは、ハートが熱い人だよ」
白塚 美弦:「こんな芯まで冷え切った感じじゃ、断じてない」
白塚 美弦:「だから、あなたと霞さんはきっと違う人。ありえた未来かもしれないけど」
白塚 美弦:「その未来は今から防げる。そう信じる」
白塚 美弦:「信じることで、光明が見えることもあるって知ったから」
白塚 美弦:未和ちゃんのほうを一瞥して。
白塚 美弦:「強く、強く、信じるよ」
叢崎未和:小さく笑う。
叢崎未和:「きみは、"スネグラチカ"のいない未来から発生したのかな」
叢崎未和:「それとも、そんな未来は無くて、卵が先かニワトリが先か、時遡る"スネグラチカ"の脅威に晒されたことで霞ちゃんがきみになる」
叢崎未和:「そういう因果、閉じた歴史の円環であるのか」
叢崎未和:「いずれにせよ、”ムーンブリンク”の弟子を敵に回したのが運の尽きだ」
叢崎未和:「まじない師にとっては、その存在そんものがセキュリティホール」
叢崎未和:首筋から、細い血の筋が噴き出し、細く大きな真円を形作る。廻る。
叢崎未和:「ウルトラCを決めてやる」
叢崎未和:悪辣な笑みと共に、踏み出す。
“スネグラチカ”:君達に応じるように、“スネグラチカ”もまた歩み出す。
“スネグラチカ”:あらゆる熱を喰らうべく。全てを雪に呑みこむべく。再び円環を鎖すべく。
GM:クライマックス戦闘を開始します。
“スネグラチカ”:“スネグラチカ”からワーディングが放たれる。
“スネグラチカ”:一か月前、夏の始まりに味わったそれと同じ。だが、それ以上に強烈なレネゲイドの奔流が、至近距離から解放される。
GM:衝動判定、難易度19です。
月城 旭:19!?
叢崎未和:6dx+11>=19
DoubleCross : (6DX10+11>=19) → 10[2,3,5,7,10,10]+4[2,4]+11 → 25 → 成功

叢崎未和:2d10+103
DoubleCross : (2D10+103) → 5[4,1]+103 → 108

月城 旭:6dx+2>=19 意志
DoubleCross : (6DX10+2>=19) → 6[1,1,2,2,5,6]+2 → 8 → 失敗

叢崎未和:ぴったり108
月城 旭:普通でも無理だった お姉ちゃん暴走します
月城 旭:月城 旭の侵蝕率を2d10(→ 7)増加 (86 → 93)
白塚 美弦:4dx+7>=19
DoubleCross : (4DX10+7>=19) → 5[1,1,3,5]+7 → 12 → 失敗

日室 晴陽:6dx+11>=19
DoubleCross : (6DX10+11>=19) → 10[1,6,7,8,9,10]+7[7]+11 → 28 → 成功

日室 晴陽:日室 晴陽の侵蝕率を2d10(→ 12)増加 (87 → 99)
白塚 美弦:達成値+10をわすれていたため、12+10=22で成功でした
月城霞:3DX+10>=19
DoubleCross : (3DX10+10>=19) → 8[1,7,8]+10 → 18 → 失敗

月城霞:82+2D10
DoubleCross : (82+2D10) → 82+13[6,7] → 95

白塚 美弦:86+2d10
DoubleCross : (86+2D10) → 86+14[7,7] → 100

GM:ラウンド1
GM:セットアップから開始します。
雌鹿:≪原初の黄:加速装置≫
月城 旭:セットアップないです。
雌鹿:行動値+8
日室 晴陽:Go! like all!:苛烈なる火Lv3+先陣の火Lv2
日室 晴陽:攻撃力+9、行動値+10、HP5消費、侵蝕値+5
日室 晴陽:日室 晴陽の侵蝕率を5増加 (99 → 104)
日室 晴陽:日室 晴陽のHPを9に変更 (14 → 9)
叢崎未和:うーんどうしようかな
日室 晴陽:日室 晴陽のイニシアチブを16に変更 (6 → 16)
白塚 美弦:《攻撃誘導》ラウンド間、白塚を含まない攻撃を行う場合、ダイスを-12個 対象は"スネグラチカ"。
白塚 美弦:白塚 美弦の侵蝕率を3(→ 3)増加 (100 → 103)
叢崎未和:自分より早い敵のセットアップ待ちます
GM:叢崎さんより早い敵のセットアップは無いです。
叢崎未和:じゃあなし!
“スネグラチカ”:Eロイス≪孤高の超人≫
“スネグラチカ”:自身以外のキャラクターはラウンド間侵蝕率によるダイス数およびエフェクトレベルへのボーナスを得ることができなくなる。
叢崎未和:キツすぎ
雌鹿:イニシアチブ下がって15>11に
日室 晴陽:こっちもイニシアチブ下がります16>11
GM:ではイニシアチブ、行動値11で日室さんの手番です。
日室 晴陽:ではマイナーで戦闘移動してスネグラチカ達のエンゲージに移動
日室 晴陽:そしてメジャーはコンボ。tie you!sun,sun!:災厄の炎Lv5+プラズマカノンLv3+コンセントレイト:サラマンダーLv3
GM:ギェ~ッ
日室 晴陽:紡ぎの魔眼Lv3も乗っけて、対象は全員!
GM:判定どうぞ!
日室 晴陽:その前に、最初に取った霞への〇恋慕/心配のロイスをタイタス昇華して不利な効果を解除します
日室 晴陽:ダイスボーナスとエフェクトレベルボーナスを返してもらおう
GM:今やったばっかなのに……
GM:改めてどうぞ!
日室 晴陽:11dx7+12
DoubleCross : (11DX7+12) → 10[2,2,2,2,5,5,5,5,7,8,10]+10[2,3,7]+2[2]+12 → 34

GM:ウ~~~ン
日室 晴陽:ううん、渋いか?
山鼠:≪支配の領域≫
GM:2回目の7を1に。
日室 晴陽:23まで下がります
GM:13+12で25かな?
日室 晴陽:あ、ホントだそっちです
山鼠:≪絶対支配≫も使います
山鼠:あんま意味無いけど……
山鼠:いや意味ありまくりか
山鼠:3個選択だから……
山鼠:1回目の7 8 10を1にします
日室 晴陽:うわ、17まで下げられる
:ガード
鹿:ガード
山鼠:ガード
“スネグラチカ”:ガード≪グラビティガード≫+≪氷盾≫
大鷲:≪リフレックス:ブラックドッグ≫+≪見えざる僕≫
大鷲:3DX8+18>=17
DoubleCross : (3DX8+18>=17) → 10[4,6,9]+5[5]+18 → 33 → 成功

大鷲:ドッジ
GM:ダメージ算出……の前に
GM:ギリギリで思い出しました NPCカードが使用可能です
日室 晴陽:お、誰だ?
GM
NPCカード
≪支援砲撃≫
ダメージロール直前に使用。ダメージ+4D。1ラウンド1回まで使用可能、シナリオ3回まで。

≪防壁≫
攻撃に対するリアクション時にオートで使用できる。カバーリングを受ける。シナリオ3回まで。

GM:せっせと建てた防衛設備が利用できます
叢崎未和:あっ迎撃設備だ! ありがとうペッカーちゃん
日室 晴陽:建てた甲斐があった
日室 晴陽:じゃあ支援砲撃使うのと、後想い人の効果も使用します
日室 晴陽:ダメージ+4Dして装甲・ガード・カバーリング無視!
GM:うぎゃ~~~~想い人!!
GM:ダメージどうぞ……!
日室 晴陽:6d10+47
DoubleCross : (6D10+47) → 26[6,3,5,3,7,2]+47 → 73

GM:ギャア~~ッ
GM:かなり入ります。スネグラチカもガード無効されるとかなりつらい
GM:山鼠と鹿は瀕死です
日室 晴陽:ううん、落とせはしないか……仕方ない
GM:演出どうぞ!

日室 晴陽:ふう、と。一つ息をついて、真っ直ぐに歩みだす。
日室 晴陽:彼女の傍らには太陽。その熱が、じわりじわりと上がっていく。
日室 晴陽:――オーヴァードが出力を上げる手段は人それぞれだ。
日室 晴陽:単にレネゲイドの高揚に影響されるもの、なにがしかのトリガーを有するもの、あるいは精神に影響されるもの。
日室 晴陽:日室晴陽の場合はごく単純。彼女の強い感情に反応し、太陽はより強く輝く。
日室 晴陽:だから、脳裏に浮かべるのは一つだけ。否、一人だけ。
日室 晴陽:霞のことを思い返す。
日室 晴陽:訓練に打ち込む姿を、クレープを食べる姿を、説教をする姿を。
日室 晴陽:泣いた顔を、怒った顔を、笑った顔を。
日室 晴陽:幾つも幾つも思い返す。そのうちに。
日室 晴陽:真っ直ぐだから、かっこいいから、かわいいからという理由も。
日室 晴陽:だから支えたい、だから守りたい、だから隣に居たいなんて理屈も。
日室 晴陽:全部溶けて、混ざって、合わさって。
日室 晴陽:「霞が好き」という気持ちだけが残る。
日室 晴陽:気付けば。スネグラチカと従者たちの元へと辿り着く頃には――。
日室 晴陽:攻撃を意識するまでも無く、ただあるだけで周囲を焦がすほどに昂り切った太陽が昇る。
日室 晴陽:その熱全てが、日室晴陽の恋そのものだった。
日室 晴陽:「――行くよ、」 唇だけが名前を呼んで。
日室 晴陽:灼熱が周囲一帯を焼き尽くしていく。
GM:吹き荒れる吹雪は、日室へと届く前に蒸発していく。“スネグラチカ”の『捕食』をも上回る、絶対的な熱量。
GM:白い獣の群れが溶けて消え行き、“スネグラチカ”本体も、太陽に焼き焦がされる。
“スネグラチカ”:「……」
“スネグラチカ”:溶けた白い腕が、再び再生する。痛みを感じている様子すら見せない。
“スネグラチカ”:ただ真っ白な顔が、日室の方へと向けられる。
日室 晴陽:合わせるべき瞳も、語るべき口もないその顔を見返して。
日室 晴陽:「君さ」
日室 晴陽:まるきりいつもと変わらないような口調で。
日室 晴陽:「熱が欲しくて、こんなことしてんでしょ?」
日室 晴陽:いつもと変わらない声音で。
日室 晴陽:「ならさ」
日室 晴陽:――いつかの放課後、彼女を誘ったように。
日室 晴陽:「飽きるまであたしが奢ってあげる」
日室 晴陽:快活に。不敵に。いつも通りに。彼女はそう笑った。

GM:行動値11、“雌鹿”の手番です
雌鹿:マイナーなし
雌鹿:メジャー≪原初の赤:アドヴァイス≫+≪原初の白:弱点看破≫+≪混色の氾濫≫
雌鹿:対象は敵全員。
雌鹿:エネミーの次に行うメジャーアクションのダイス+5個、C値-1、攻撃力+9
GM
GM:行動値8、大鷲の手番です
大鷲:マイナー無し
大鷲:メジャー≪雨粒の矢≫+≪流血の胞子≫
大鷲:対象はPC全員 命中で邪毒5付与です
叢崎未和:《原初の黒:時の棺》判定強制失敗。
叢崎未和:侵蝕120に
GM:何だとぉ…………
GM:では失敗します。

雌鹿:純白の鹿が、周囲にレネゲイドを放つ。
雌鹿:見る間に雪で造られた木々や花が周囲に生い茂り、それが獣たちの傷を修復し、さらに活力を与えていく。
雌鹿:“スネグラチカ”の能力のひとつ。奪った熱を開放し、自らのエネルギーとして活用する。
雌鹿:獣たちは皆、彼女の権能を一つずつ分け与えられている。
大鷲:太陽に焦がされ、地に落ちていた大鷲が再び舞い上がる。
大鷲:巨大な翼を広げ、羽搏く。
大鷲:吹き荒れるのは、あらゆる熱を奪う致死の風。
大鷲:吹雪の中、凍てつく風が君達の身体を凍り付かせていく。
叢崎未和:「──〈タンサ〉」
叢崎未和:「〈スズメ〉〈ロッコ〉〈クジン〉〈セロン〉〈キジン〉〈テンコ〉〈イオン〉〈クロム〉〈タズネ〉〈シロコ〉〈ウツロ〉」
叢崎未和:冷気の中。
叢崎未和:それは木枯らしの歌のようにごく自然にその景色の中にあり、言葉であると認識した時には唱え終えている。
叢崎未和:12グループの因子が共鳴し、広がった血の糸のリングから同時に『何か』が湧き出した。
叢崎未和:それは獣であったり、雷であったり、青黒い触腕であったり、縞を携えた好物であったりしたように見えた。一瞬だ。
叢崎未和:瞬きすら置かず、円環の契約は混ざり合い、隣り合う一を殺害しながら極大の破壊を齎した。単純な、指向性衝撃波。
叢崎未和:地を抉る巨大なねじ巻きの破壊痕。吹雪が吹き散らされる。
叢崎未和:「けほっ」血痰を吐き捨てる。
大鷲:大鷲は舞い上がり、辛うじて破壊を逃れる。
大鷲:だが死の風が君達に届くことはない。
“スネグラチカ”:「……」
“スネグラチカ”:自らのものでない異様なレネゲイドに反応してか、雪の帳の中で僅かに身動ぎをする。
叢崎未和:「熱でもエネルギーでもない。ただの『破壊』だ。レネゲイドってのは、こういう真似をする」

GM:行動値7、群狼、山鼠の手番です。
群狼:choice[日室,旭,叢崎,白塚,霞]
DoubleCross : (CHOICE[日室,旭,叢崎,白塚,霞]) → 霞

群狼:いや……駄目か
群狼:マイナーなし
群狼:メジャー≪コンセントレイト:ノイマン≫+≪砂の加護≫+≪マルチウェポン≫+≪ヴァリアヴルウェポン≫
群狼:対象は日室さん!
群狼:13dx6-2
DoubleCross : (13DX6-2) → 10[1,1,1,2,2,3,3,3,4,5,6,8,10]+10[7,8,10]+10[4,8,10]+10[1,7]+10[9]+5[5]-2 → 53

日室 晴陽:めっちゃ回すじゃん
日室 晴陽:一応ドッジ
日室 晴陽:5dx+11>=53
DoubleCross : (5DX10+11>=53) → 10[5,9,9,10,10]+6[1,6]+11 → 27 → 失敗

日室 晴陽:普段ならワンチャンあったな……
群狼:ダメージ!
群狼:6D10+28 
DoubleCross : (6D10+28) → 29[7,10,2,3,2,5]+28 → 57

日室 晴陽:普通に無理!みわっちのロイス切って復活!
山鼠:マイナーなし
山鼠:メジャー≪コンセントレイト:オルクス≫+≪ナーブジャック≫
山鼠:choice[日室,旭,叢崎,白塚]
DoubleCross : (CHOICE[日室,旭,叢崎,白塚]) → 旭

山鼠:choice[日室,叢崎,白塚,霞]
DoubleCross : (CHOICE[日室,叢崎,白塚,霞]) → 叢崎

山鼠:ヘェ~
叢崎未和:うっっっわ
山鼠:対象は旭さん
月城 旭:ぐええ
山鼠:7DX9
DoubleCross : (7DX9) → 10[2,4,4,6,6,6,9]+8[8] → 18

雌鹿:≪妖精の手≫
山鼠:1DX9+20
DoubleCross : (1DX9+20) → 8[8]+20 → 28

GM:意志で対抗しな!
月城 旭:暴走中につきリアクション不可。受けます
GM:では叢崎さんに回数制限なしの全力で攻撃してください
月城 旭:はい……
月城 旭:《コンセントレイト》《炎神の怒り》《煉獄魔神》
月城 旭:《フェイタルヒット》はラウンド1回なのでなしで
月城 旭:7dx+1+10@7
DoubleCross : (7DX7+11) → 10[2,4,4,6,7,9,10]+10[1,6,10]+2[2]+11 → 33

叢崎未和:回避!
叢崎未和:ミドルフェイズでタイタス化した旭さんのロイスを使用して不利な効果を解除します。ダイスボーナスが復活
叢崎未和:4dx+13>=33
DoubleCross : (4DX10+13>=33) → 10[4,4,4,10]+8[8]+13 → 31 → 失敗

GM:あぶねえ~~
月城 旭:がんばった
叢崎未和:案外頑張った
月城 旭:4d10+20 諸々有効
DoubleCross : (4D10+20) → 25[10,7,1,7]+20 → 45

叢崎未和:まってまって
月城霞:≪炎陣≫でカバーします
月城 旭:月城 旭の侵蝕率を8増加 (93 → 101)
月城 旭:えっはい
叢崎未和:カバーリング受けたい ありがとう霞さん!
月城霞:これで侵蝕97か……う~ん
月城 旭:そっかダイス振る前だった ごめん
月城霞:エフェクトは無しで受けます
月城霞:クリスタルシールドでガード12、装甲が12、拒絶領域でダメージ常に-20
月城霞:1点受けてHP13>12
月城 旭:すごい
叢崎未和:すご

GM:獣の群れが動き出す。狼が駆け、四方八方から日室へと襲い掛かる。
GM:身体は雪だが、爪牙は硬質で鋭利な氷だ。本物の獣のそれと同じように、皮膚と肉を容易く切り裂き、噛み千切る。
日室 晴陽:「っく」 爪や牙を受けながらも、太陽が輝きだす。
日室 晴陽:雪と氷を溶かし、狼たちを追い払うように。
GM:同時に、ざわざわと巨大な雪の塊が蠢く。雪崩のように見えるそれは、一匹一匹が小さな哺乳類──山鼠の群れだ。
GM:止め処ない津波のように旭へと殺到し、群がり這い上がって身体の自由を奪う。
叢崎未和:「さて、巡れ〈ライラ〉〈コルピ〉〈タリア〉────」十二でひと組。影に押込めたジャームたちの『名前』を唱えてゆく、今度は”スネグラチカ”本体に照準を合わせて。
GM:熱を奪うもの、強制的に与えるもの。群体がひとつの生き物のように複雑な連携を発揮し、旭の身体を無理やりに人形めいて駆動させる。
叢崎未和:「──旭さ」
月城 旭:「な、あっ……!」
月城 旭:それに抵抗する力を、彼女の身の内にあるものが削ぎ、阻む。
月城 旭:月城旭の肉体に根差す、根源的な解放衝動。
叢崎未和:瞠目、今まさに組み上がりつつある破壊を彼女へと向けるわけにはいかない。
月城 旭:感染者を人間という枠から外し──何者でもない、純粋な戦闘装置へと変質させていくレネゲイド。
月城 旭:“それ”は彼女の記憶領域に占めるものを、宿主の意思に背いて『選別』する。
月城 旭:戦技を、体術を、生存に必要な最低限度の知識を残して。
月城 旭:人としての名も、物語も、繋がりも、不要だと認識して。
月城 旭:究極の個へ──より高次元の力を持った存在(ジャーム)へと進化するために。彼女の持つ繋がりを、断つべく蠢く。
月城 旭:薄赫い焔を帯びた刃鋼が、意に反して振るわれる。
月城 旭:「──躱、してっ!」
月城 旭:口にした時には、遅い。既に疾っている。
叢崎未和:「んぁっ」無理──と返す事すらできない。
叢崎未和:ただ契約が暴発して、至近のビルが吹き飛ぶ。
月城 旭:敵に背を向けると同時、屈むような姿勢で破壊円を潜らせ、刃を彼女の懐へと──
月城霞:「っ……!」それが叢崎を切り裂く直前で、白い月が輝いた。
月城霞:月光が鼠の群れから、旭の振るう剣から運動エネルギーを根こそぎ奪い取る。如何に冴えた太刀筋だろうと、赤子以下の力で振るわれえば脅威ではない。
叢崎未和:「あ、あ……あ…………!!」噴き出す複合衝動の侵蝕に、喉を掻きむしって耐える。
月城霞:咄嗟に自らの掌で刃を受け止め、血が垂れ落ちる。
叢崎未和:「っ、サンキュー霞さん、さすが!」
月城霞:「それよりあなた……大丈夫なの、それ……!」
月城 旭:「っ、ああ──っ!」傷ついた──否、自らの手で傷付けた妹の姿を前にして。取り乱したように叫ぶ。
叢崎未和:「大丈夫、むしろ都合がいい……はず!」
月城霞:「姉さん。私も大丈夫よ」
月城 旭:「……ごめん。ごめんよ」
月城霞:「……止めようとしてくれたんでしょう?そうでなければ、間に合わなかった」
叢崎未和:荒い息を吐く。先ほど放った12の契約は──”ペニードレッド”で用いてきたこれまでの”ねじ巻き”の力だ。
月城 旭:己の身体を繋ぎ止め、取り戻す。14年間、何度もそうしてきたように抗う。今ばかりは少し遅かったけれど。
叢崎未和:……必要になる、この先が。
月城 旭:「ええ……大丈夫。私は、忘れてない」
月城 旭:半ば自分に言い聞かせるように、そう呟いて。

GM:行動値6、旭さんの手番です。
月城 旭:マイナーで戦闘移動、敵グループにエンゲージ。
月城 旭:メジャー、斬るやつ/《コンセントレイト》《炎神の怒り》《煉獄魔神》。対象は山鼠
GM:判定どうぞ!
月城 旭:7dx+1+10@7 命中
DoubleCross : (7DX7+11) → 10[1,1,2,2,4,7,8]+5[4,5]+11 → 26

山鼠:≪支配の領域≫≪絶対支配≫
山鼠:8,4,5を1に
山鼠:これで達成値18……
月城 旭:18かな
山鼠:≪グラビティバインド≫
山鼠:達成値-9します
月城 旭:ンギィ~ッ
叢崎未和:こいつ……
山鼠:避けちゃお~
山鼠:1DX>=9
DoubleCross : (1DX10>=9) → 4[4] → 4 → 失敗

山鼠:孤高の超人がよ!!
GM:ダメージどうぞ……
月城 旭:《フェイタルヒット》ダメージダイス3個増やします。
月城 旭:1d10+20+3d10 ダメージ。
DoubleCross : (1D10+20+3D10) → 1[1]+20+20[5,5,10] → 41

月城 旭:諸々有効です
月城 旭:月城 旭の侵蝕率を12増加 (101 → 113)
山鼠:死ぬに決まってるでしょ!
山鼠:復活もないです

月城 旭:……動揺している自己を、つとめて俯瞰する。冷静に、己を呑まれないように思考を整理していく。
月城 旭:(ああ)"スネグラチカ"を取り巻く獣の群れを見つめて、ふと思う。
月城 旭:(……そんなものを拵えてまで、君は)
月城 旭:(一人になりたくなかったのかい)
月城 旭:発熱。収束。じわり、と両脚を灼くような感覚が走る。
月城 旭:次の瞬間、その全てを運動速度へと変換する。踊るような軽い足取りで踏み出した。
月城 旭:視界を鎖すような吹雪の中、揺らめく焔が振るわれる。月城旭の剣である。
月城 旭:暴風雪の渦中にあってはマッチのように心許ないその熱は、しかし掻き消える事はなく
月城 旭:群をなす彼らをただ撫でるように、静かに揺らめいた。
月城 旭:……ノイマン・シンドロームの演算が齎す真価は、最小の熱量(エネルギー)で最大の成果を引き出す事にある。
月城 旭:数多の群れを成すその統率を掻い潜り、過たず捉えるその剣閃が
月城 旭:草でも薙ぐようにして、瞬く間に山鼠の数を減らしていく。
山鼠:小さな無数の悲鳴が上がる。群体が散り散りになり、ただの雪塊へと還っていく。
月城 旭:「──さて、これで」最期の一匹を、音もなく刺し溶かして。
月城 旭:「さっきの仕返しは完了……って事にしとこうか」
月城 旭:「私、すっごく忘れっぽいけどさ」
叢崎未和:かつて剣を握っていたからこそわかる、その剣跡の異様さが。美しいと思う。見とれそうになる。
叢崎未和:だが、違う。目の前で剣を振るう彼女は、最早私にとってのイデアではない。
月城 旭:「霞ちゃんに関する恨みは、根深いんだぜ」冗談っぽく、しかし獰猛な笑みを浮かべる。
叢崎未和:共に戦う仲間で、友達だ。

GM:行動値5、叢崎さんの手番です。
叢崎未和:呼吸を無理やり整え、心臓の遺産から力を引き出そうとする。
叢崎未和:マイナーアクション《原初の灰:聖なる血槍》HP20消費、武器攻撃力+20
叢崎未和:侵蝕126に
叢崎未和:「巡れ」
叢崎未和:「…………っ!!」
叢崎未和:それは唐突に起こった、胸郭が裂けるようにして、爆発するように鮮血が噴き出す。
叢崎未和:そういう技──ではない。
叢崎未和:彼女の驚愕の表情がそれを物語っていた。
叢崎未和:ぼごり、ぼごりと泡立つように血中から這い出した靄がシルエットを形作っている。
叢崎未和:妖しげな女の哄笑が響く。
???:「はははははは!」
???:「気づきませんでしたか? ねじ巻きぃ…………私が『名前』で子分を縛るなら」
???:「あなたの名前は誰が与えたのか」
叢崎未和:メタルペッカー。
叢崎未和:シガルヴォイド。カプラマルジア。ランドイーグル。
叢崎未和:薄れゆく意識のなかで想起する。
叢崎未和:『鳥』だ。”ペニードレッド”の書架。
叢崎未和:啄木鳥、かもめ、よだか、鷲。文学作品のタイトルに登場する鳥たち。本と鳥類、共通するタームは。
叢崎未和:「(────────刷り込み、か)」
叢崎未和:”ねじ巻き”。『ねじ巻き鳥』
叢崎未和:そんな益体もない事を今更思い浮かべる間にも、影はみるみる実体を取り戻していく。
”ムーンブリンク”:「ここまでありがとう。私のためにさっさと努力してくれてありがとう!」
”ムーンブリンク”:「あなた私を取り込んだんじゃない。私があなたに潜り込んだのだ、それを証拠に」
”ムーンブリンク”:皆、知っている。
”ムーンブリンク”:捜査資料で、この女の顔を。
”ムーンブリンク”:「『ダイムノヴェル』、安物の大衆小説を意味する」
”ムーンブリンク”:「もう一つの三文娯楽(ペニードレッド)」
”ムーンブリンク”:「あなたのコードです。私が無意識を操って、変えさせた」
”ムーンブリンク”:ねじ巻きに討たれ、死亡したはずの”ペニードレッド”のセルリーダーが、そこにいる。
月城霞:瞠目し、その顔を見る。かつてチルドレンとしても戦った、もう死んだ筈の女の顔を。
月城霞:「“ムーンブリンク”…………!?」
月城霞:「どういうこと……叢崎さん!?」
”ムーンブリンク”:「”スネグラチカ”」
”ムーンブリンク”:女は応えない。
”ムーンブリンク”:「すでに因子の片鱗は取り込んだ。叢崎さんはオーヴァードであることに拘っていたけれど──」
”ムーンブリンク”:「私は違う。超級のジャームとして、あれと同化するのも悪くない」
”ムーンブリンク”:「感謝しますよ、月城霞さん」
”ムーンブリンク”:にっこりと、悪辣な笑顔で微笑む。その手にはミニチュアの書架が握られていて──
叢崎未和:「ざぁんねん」
叢崎未和:ばしゃりと、”ムーンブリンク”の形成されつつあった半身が吹き飛んだ。
”ムーンブリンク”:「────!」
叢崎未和:「や、運良かったな。嫌な予感したんだよね」
叢崎未和:「私の力は完成しなかった。あんたが邪魔してたわけだ」
叢崎未和:「でもさ、お前はもう師ではない。"ペニードレッド"ではない。"ムーンブリンク"ではない。上月姑獲鳥ではない」
叢崎未和:「私はもう、"パラダイム"でも"ねじ巻き"でもない」
叢崎未和:「ね、みっち」
叢崎未和:ずるり、と立ち上がる。
白塚 美弦:「うん」
白塚 美弦:「──"ボトムレス・ピット"」
白塚 美弦:「……無尽に食らって成長する、『底なし穴』。転じて『大食漢』とも」
白塚 美弦:「そして、これから私の愛を無尽蔵に受ける予定の、底の無い愛しの貴女」
白塚 美弦:「昔の女も食らって飲み下して」
叢崎未和:「へへ」笑う。
白塚 美弦:「いっぱい食べるのは、得意でしょ?」
叢崎未和:何か、大きな生物の大咢が、絶句する”ムーンブリンク”を飲み込む。
叢崎未和:「──〈スケンチ〉」名づけを行う。その概念にやつを押し込める。
叢崎未和:「〈スポーン〉〈グリンブル〉〈フィニー〉〈ホーテンス〉〈ジェット/ジャット〉〈メタルビーク〉〈ナイラ〉〈ナイロック〉〈ストライカー〉〈アグラモア〉〈フィリップ〉、翼馳せ廻り穿て」
叢崎未和:《コンセントレイト》《絶対の恐怖》《オーバーロード》
叢崎未和:7dx7+20 命中
DoubleCross : (7DX7+20) → 10[3,5,6,8,8,8,10]+10[2,4,9,9]+10[3,9]+10[8]+10[9]+4[4]+20 → 74

叢崎未和:あ、対象スネグラチカです。
“スネグラチカ”:ガード≪氷盾≫≪グラビティガード≫
GM:ダメージ算出をどうぞ
叢崎未和:8d10+104 装甲無視
DoubleCross : (8D10+104) → 44[7,6,4,8,10,4,1,4]+104 → 148

叢崎未和:侵蝕136に。
“スネグラチカ”:148-5D10
DoubleCross : (148-5D10) → 148-39[10,5,7,7,10] → 109

“スネグラチカ”:≪氷盾≫≪拒絶領域≫で減らして、まだ生存しています。

叢崎未和:メチャクチャ硬い
叢崎未和:様々な色と模様を持つ、翼が。
叢崎未和:舞っている。”ムーンブリンク”を噛み潰したのは、猛禽の嘴。
叢崎未和:連鎖するように12の巨鳥が出現し、一瞬で破壊現象を残して消滅する。
叢崎未和:──否、”スネグラチカ”の肉体を錐のような極度圧縮された破壊が突き抜けたはるか先、小さなジャームが産み落とされた。今は何の戦闘力も持たない。幼子の如き。
叢崎未和:「卵が先か、鶏が先か」
叢崎未和:「歴史の始端がめぐり不明であるなら」
叢崎未和:「”スネグラチカ”は”スネグラチカ”から生まれたかもしれない」
叢崎未和:「スネグラチカへとなり替わろうとしたやつのメソッド、予め手にして置いた白い獣たちのジャーム因子」
叢崎未和:「これで、ちょっとは霞ちゃんから切り離せたんじゃないかな」
叢崎未和:「反動もない。やっぱ持つべきものは師匠とかわいい彼女だね」
叢崎未和:代わりに、ごっそりと貯め込んだ力が抜け落ちが感触があるが。
月城霞:「貴女……」叢崎とジャームを見遣る。何が起きたのか、殆ど理解はできないが。
“スネグラチカ”:絶対の破壊が、“スネグラチカ”に辿り着く頃には著しく減衰した。そして“スネグラチカ”自体、一瞬で希薄化し、攻撃を免れる。
“スネグラチカ”:それでも、身体の大半を削り取られる。異様な破壊痕が削り取られ、再生するもレネゲイドの圧力が幾分か弱まる。
叢崎未和:「みんな、すっごく深刻そうな顔してるから」
叢崎未和:「私はこういう芸風でやってくぞーって感じ」
叢崎未和:「希望に満ちた狂人だからね」
叢崎未和:「霞さんはこんな風にならないよ」
叢崎未和:へにゃりと笑う。いかにもな希望的観測。
月城霞:「……ありがとう」
月城霞:だが、今は彼女のその言葉が嬉しい。

GM:行動値4、白塚さんの手番です。
白塚 美弦:マイナーなし
白塚 美弦:メジャーで《絶対の恐怖》で対象は鹿さん!
GM:判定どうぞ!
白塚 美弦:6dx+27
DoubleCross : (6DX10+27) → 10[4,6,9,9,9,10]+2[2]+27 → 39

雌鹿:ガード
GM:ダメージどうぞ!
白塚 美弦:4d10+1 装甲無視
DoubleCross : (4D10+1) → 21[1,3,8,9]+1 → 22

雌鹿:HP0!
白塚 美弦:やったー
雌鹿:倒れます!
叢崎未和:えらいぞ~

白塚 美弦:「……やっぱり今回の事件はどの戦闘も相手が悪いなぁ」
白塚 美弦:「恐怖を与えて後味の良いような対象じゃない」
白塚 美弦:"メタルペッカー"も。白い獣も。──"スネグラチカ"も。
白塚 美弦:「でも、手を抜いて良い相手で無いことも確かだよね」
白塚 美弦:浅く息を吐いて、集中する。
白塚 美弦:恐怖とはなにか、という問いは簡単に答えられるものではないだろう。
白塚 美弦:恐怖の正体は人によって様々だったりする。
白塚 美弦:ましてや人でない獣に対して通じる恐怖は想像し易そうで、想像し難い。
白塚 美弦:それでも。いくつか想像することはできる。
白塚 美弦:例えば、こういうのはどうだろうか。
白塚 美弦:──自己の崩壊。
白塚 美弦:腐乱でも焼却でも凍傷でも切断でもなく。
白塚 美弦:服の繊維がほつれていくように、ぽろぽろと身体がこぼれ落ちていく。
白塚 美弦:それはさながら、雪が舞うように。
雌鹿:「────!」
白塚 美弦:そういう幻覚を、雌鹿は見せられる。
白塚 美弦:恐怖は心を蝕み、多大な消耗を負わせるだろう。……ともすれば、自己の崩壊に至る程までに。
雌鹿:レネゲイドで編まれた仮初の存在にそれは、即ち現実のものとなる。
雌鹿:がくがくと脚を震わせ、恐怖にのたうち暴れる。ぼろぼろと身体が崩れていき、
雌鹿:最後には同質量の雪の塊と化して、動かなくなる。

GM:行動値0、霞さんの手番です。
月城霞:マイナーで……う~~ん……
月城霞:マイナーなし。
月城霞:メジャーで全力移動、スネグラチカのエンゲージに移動します。

月城霞:荒れ狂う吹雪の中、一歩ずつ踏み締め歩き、“スネグラチカ”を見遣る。
月城霞:あれが自分の可能性だというなら、随分と変わり果てたものだと思う。
月城霞:存在としての話や、出力の話ではない。もっと単純な、能力の使い方の話だ。
月城霞:レネゲイドコントロールが苦手だった子供の頃から、出力には自信があった。
月城霞:サラマンダーは、攻防に優れた戦闘向きのシンドロームだ。確かに“スネグラチカ”のように攻撃に転用すれば、自分もそれなりの活躍が出来ていただろう。
月城霞:昔は……幼い頃は、攻防を両立させた、一人で戦えるエージェントを目指していたこともあったはずだ。
月城霞:いつからそれを忘れていたのだろう。答えは明白だ。
月城霞:自分で攻撃をする必要が無かったから。私よりずっと優れた攻撃手が、いつも隣にいて。
月城霞:そして私は、一人で戦っているのではないからだ。
月城霞:「……日室」
日室 晴陽:「霞」
月城霞:吹雪の中、真っ先に駆け出して行った相棒にようやく追いつき、並び立つ。
月城霞:「できたよ」
月城霞:不意にそれだけ言う。
日室 晴陽:「良いね、百人力だわ」
月城霞:「後で聞かせて」
月城霞:“スネグラチカ”を倒した後で。少しも疑いの無い口調で。
日室 晴陽:「……」 一瞬心当たりを探るような沈黙の後。
日室 晴陽:「あー……うん」
日室 晴陽:「おっけ」
日室 晴陽:覚悟が居るのはこっちもだったな、なんて一瞬よぎりつつ。
日室 晴陽:さざめいた気持ちに煽られるように、傍らの太陽が揺らめいた。

GM:行動値0、スネグラチカの手番です
“スネグラチカ”:マイナーで≪魔王の外套≫
“スネグラチカ”:メジャーで≪コンセントレイト:サラマンダー≫+≪災厄の炎≫+≪クロスバースト≫ +≪ブリザードブレス≫
“スネグラチカ”:対象は日室・旭・霞
“スネグラチカ”:3DX7+10
DoubleCross : (3DX7+10) → 10[4,6,9]+4[4]+10 → 24

GM:リアクションどうぞ
月城 旭:暴走につきリアクション不可です
日室 晴陽:試しにドッジ
日室 晴陽:5dx+12>=24
DoubleCross : (5DX10+12>=24) → 10[3,4,5,8,10]+5[5]+12 → 27 → 成功

日室 晴陽:避けれた!
GM:成功してる!
月城霞:では≪炎陣≫で姉さんをカバー
月城霞:侵蝕が99……
月城霞:うーん エフェクトはなしで
“スネグラチカ”:ダメージ
“スネグラチカ”:3D10+48
DoubleCross : (3D10+48) → 18[10,1,7]+48 → 66

月城霞:99+1D10 リザレクト
DoubleCross : (99+1D10) → 99+6[6] → 105


“スネグラチカ”:“スネグラチカ”の頭上に、白い極光が走る。
“スネグラチカ”:空を埋め尽くさんばかりのそれは、光り輝く巨大な岩塊にも見える。
“スネグラチカ”:その正体は、砕けた魔眼の、月の破片。
“スネグラチカ”:悍ましく美しい月光が、辺りに降り注ぐ。熱を奪われた地面が、建物が、一瞬で凍り付き────
“スネグラチカ”:そして、消失する。『そこにある』という情報の熱を失って、この世から消え去っていく。
月城霞:「……! 姉さん!」
月城 旭:「っ……!」それを睨み上げる。ウイルス粒子そのものを斬り断つ自らの剣も、空に昇り砕けた魔月の断片すべての対処には及ばない。
白塚 美弦:一瞬。対象にされてないと判断した白塚は、避ける必要がないと踏み、幻覚を"スネグラチカ"に発動させる。
白塚 美弦:刹那の暗闇。その程度しかできなかったが、集中を一瞬乱す。
月城霞:魔眼を、破片のひとつにも及ばない大きさの魔眼を展開する。
月城霞:“スネグラチカ”に比べればあまりにも微かな光。だが辛うじて、姉へと光が届くのは食い止める。
月城霞:だがその代償は大きい。片腕が凍り付き、輪郭がぼやける。
月城 旭:「あ──」視界の端に魔月とは異なる光──妹のそれを捉えて。「霞ちゃん……っ!」
月城霞:「ッ……!」悲鳴は上げない。そういう訓練を受けている。
月城霞:「……大丈夫よ、姉さん」力の入らない片腕を抱えながら
月城 旭:霞の傍へと駆け寄る。妹のような……チルドレンとしてあるべき「正しい」振る舞いも、この女はとうに忘れている。
月城霞:「幾つも大都市を破壊してきたにしては……」
月城霞:「単なる強力なジャーム程度にしか思えない。やっぱり、身体が完全じゃないんだわ」
月城霞:「この程度。単純な出力なら……」
月城霞:言って、己の相棒に目をやる。
日室 晴陽:「うん」
日室 晴陽:何もかもが失われるはずの極光を受けて。なおもその魔眼は輝いてる。
日室 晴陽:「足んないな、全然足んない」
日室 晴陽:「それとも、そっちがお腹いっぱい?」
日室 晴陽:情報さえ奪われるはずの吹雪の中を、ただ自身が放つ熱だけで相殺して。
日室 晴陽:「そんくらいじゃあ、あたしの炎は冷めやしない」
日室 晴陽:日室晴陽の恋は冷めない。
日室 晴陽:『まだまだ沈んであげられないな」
日室 晴陽:太陽はなおも沈まない。
月城 旭:「分かってる……知ってるよ。君の防御がすごい事も、君が強い事も」
月城 旭:振り絞るように言いながら、力の抜けた霞の片腕を支えるように触れる。
月城 旭:《快適室温》白い凍風の中で、そこにばかり。場違いに凪いだ熱が走る。
月城霞:「……姉さん」少し不思議そうに、その顔を見る。
月城 旭:「……それでも、君が傷ついていたら。私は」
月城 旭:「心配になっちゃうものなのさ。……悪いね」
月城霞:「うん……ごめんね」
月城 旭:枷になっちゃって、出かかった言葉を飲み込んで。へらへらとした笑みを浮かべながら、再び目の前の敵へと向き直る。
月城霞:「私も知ってるよ」
月城霞:「姉さんが、そういう人だって」
月城 旭:「そっか。……敵わないなぁ」振り返らないまま、嬉しそうに口元を緩める。

GM:ラウンド終了。

GM:2ラウンド
GM:セットアップから。
月城 旭:ありません
日室 晴陽:苛烈なる火Lv3のみ
日室 晴陽:日室 晴陽の侵蝕率を5増加 (115 → 120)
日室 晴陽:日室 晴陽のHPを7に変更 (12 → 7)
白塚 美弦:《攻撃誘導》! ラウンド間、白塚を含まない攻撃を行う場合、ダイスを-10個 対象は"スネグラチカ”
雌鹿:≪原初の黄:加速装置≫行動値8>16
白塚 美弦:白塚 美弦の侵蝕率を3(→ 3)増加 (106 → 109)
叢崎未和:なし
GM:ではイニシアチブ。行動値16で雌鹿の手番。
雌鹿:≪原初の赤:アドヴァイス≫+≪弱点看破≫+≪混色の氾濫≫
雌鹿:対象はエネミーすべて。
雌鹿:次のメジャー判定ダイス+6個 C値-1 攻撃力+12
GM
GM:行動値8、大鷲の手番です
大鷲:マイナーなし
大鷲:メジャー≪雨粒の矢≫+≪流血の胞子≫
大鷲:対象はPC全員、命中で邪毒6付与です
叢崎未和:判定妨害ありません
大鷲:11dx9+20
DoubleCross : (11DX9+20) → 10[1,3,4,4,5,5,7,8,9,10,10]+10[2,3,9]+8[8]+20 → 48

大鷲:死ね~~~ッ
叢崎未和:こわ……
月城 旭:暴走リアクション不可。
日室 晴陽:一応ドッジ
月城霞:ガード≪氷盾≫+≪グラビティガード≫
叢崎未和:5dx+11 回避
DoubleCross : (5DX10+11) → 9[3,4,6,7,9]+11 → 20

日室 晴陽:5dx+12>=48
DoubleCross : (5DX10+12>=48) → 7[2,2,5,5,7]+12 → 19 → 失敗

白塚 美弦:《命の盾》《リフレックス:ソラリス》でドッジ!
日室 晴陽:いや、無理
白塚 美弦:6dx7+27>=48
DoubleCross : (6DX7+27>=48) → 10[2,2,3,4,8,10]+10[4,10]+10[10]+6[6]+27 → 63 → 成功

白塚 美弦:白塚 美弦の侵蝕率を3(→ 3)増加 (109 → 112)
GM:狂気
白塚 美弦:やったー
日室 晴陽:しろっちつよ
叢崎未和:すごいぞみっち~
月城霞:≪炎陣≫で日室さんをカバーします
月城霞:侵蝕105>112
叢崎未和:≪防壁≫使います 1/3
月城 旭:こっちは防壁なしで受けます。
大鷲:ダメージ!
大鷲:5D10+4 命中で邪毒6
DoubleCross : (5D10+4) → 29[6,5,4,4,10]+4 → 33

月城 旭:33-8-2d10 装甲と屍人分差し引き
DoubleCross : (33-8-2D10) → 33-8-11[7,4] → 14

月城霞:エフェクトいらなかったな……無傷で邪毒だけ受けます
月城 旭:14貰います
月城 旭:月城 旭のHPを6に変更 (20 → 6)
GM:あっすいません
GM:鹿の支援で攻撃力+12されてました
月城 旭:おっと。では倒れます
叢崎未和:あっ強かった
月城 旭:月城旭のロイスをタイタス化・昇華。復活します
月城霞:C(33+12-12-25-5D10-12)
月城霞:これダメなんだ
月城 旭:月城 旭のHPを13に変更 (6 → 13)
月城霞:C(33+12-12-12)
DoubleCross : 計算結果 → 21

月城霞:21-25-5D10
DoubleCross : (21-25-5D10) → 21-25-28[8,3,2,9,6] → -32

月城霞:無傷です
叢崎未和:硬すぎ
日室 晴陽:かった
月城 旭:妹がすごい
月城霞:まだ拒絶領域にも魔王の外套にも届いてない
GM:行動値7、群狼の手番です。
群狼:マイナー≪ポルターガイスト≫でインプラントミサイルを破壊
群狼:《砂の加護》+《コンセントレイト:ノイマン》、アームブレードを使用し《マルチウエポン》+《ヴァリアブルウエポン》
群狼:対象は月城旭!
群狼:21dx6+3
DoubleCross : (21DX6+3) → 10[2,2,3,3,3,3,4,5,5,5,5,5,5,6,6,6,7,8,9,9,10]+10[1,2,2,5,8,9,10,10]+10[1,2,5,9]+10[7]+10[7]+10[10]+5[5]+3 → 68

月城 旭:ひえ~~ 暴走リアクション不可です
月城霞:≪炎陣≫でカバー、ガード≪氷盾≫≪グラビティガード≫
群狼:ダメージ アームブレードでガード値-5
群狼:7D10+54+12
DoubleCross : (7D10+54+12) → 43[7,1,9,10,6,4,6]+54+12 → 109

月城霞:109-12-25-5D10
DoubleCross : (109-12-25-5D10) → 109-12-25-24[3,8,2,9,2] → 48

月城霞:C(48-12-20)
DoubleCross : 計算結果 → 16

月城霞:流石に死ぬ!魔王の外套があれば……
月城霞:ロイス昇華 月城旭 親愛/○罪悪感 で復活

GM:吹雪は次第に激しさを増していく。
GM:数メートル先も見えない白の帳の中から、獣たちが次々に襲い来る。
月城 旭:「ぐ、っ……!!」
月城 旭:人の持つ情報(ねつ)を蝕む”スネグラチカ”との直接対峙、全力に近い戦闘稼働負荷。眼球の奥に、燃えるような熱が走る。
月城 旭:眦から血を溢れさせながら、防ぎ斬るべく集中を研ぎ澄ます。それでもなお
月城 旭:防御反応に微かな狂いが生じる。精度をこそ要とする月城旭の技において、その「微か」は致命となる。
GM:全てを凍て付かせる死の風が吹き抜け、狼たちが群れを成して飛び掛かる。
月城 旭:殺到する獣の群れの中に飲み込まれる。無数の傷を負いながら、それらを振り払おうと動く。
月城 旭:……屍人、と呼ばれる特質分類がある。
月城 旭:何らかの意味で一度死を体験し、損傷に対する格別の耐性を獲得したオーヴァード。
月城 旭:耐性の直接的な理由は様々だ。心理的な死に対する恐怖の喪失や、痛覚神経の鈍化。肉体構造そのものの異物化。
月城 旭:そして月城旭の場合それは、一種の慣れだ。
月城 旭:日常的に己の身に起きる小さな「死」に、この心は何度も耐えているという自認。
月城 旭:──『記憶が繋がっていないことは、死んだのとそう変わりない』と叢崎未和に話した。
月城 旭:あれは彼女を諦めさせる為の詭弁、ではない。旭自身がずっと、そう感じていること。
月城 旭:意識記録の連続こそが「生き続けている」という事であるなら
月城 旭:自己の消失。過去との断絶──月城旭にとって、死とは
月城 旭:あまりにも身近にあって、何度となく我が身に起き続けている体験だ。
月城 旭:──だって、そうだろう。自分を生んでくれた、幼い頃はずっと傍に居たはずの両親の顔も思い出せない。
月城 旭:確かに友達になると誓ったはずの、叢崎未和と交わした言葉も。今は半分も覚えていない。
月城 旭:そんなものが、どこまで同じ私だと言えるのだろうか。
月城 旭:月城旭(わたし)という器は、何度も砕けて、欠けて、割れて、その形を変え続ける。──それでも。
月城 旭:「……大丈夫。約束、したんだ」
月城 旭:いつもと変わりない、穏やかな声音。獣の群の中に沈み込んだ人影が、再び立ち上がる。
月城 旭:「きみと繋がっているから、私は」
月城 旭:傍に居る大切な人を、またあるいは自分自身を安心させるように。静かに呟く。
月城 旭:「何万回死んだって、生きていられる」不敵に笑う。白い絶望に対峙する。
月城霞:そう。そこに居る。
月城霞:戦いの中で防御を専門とすると決めた以上、必ず守り通すべきただ一つの誇りがある。
月城霞:ただそこに立つこと。立ち続けること。
月城霞:日室晴陽の相棒として。月城旭の妹として。
月城霞:月城霞として、そこに立つこと。
月城霞:それが仲間の背を押すことだと、信じている。自分を。そして彼女たちを。
月城霞:吹雪の中、蒼白い月が輝く。
月城霞:「……日室。姉さん」
月城 旭:「うん」
日室 晴陽:「ん」
月城霞:「……頑張って」
月城霞:白い月は砕けない。二本の足で立ち、敵を見据える。
月城 旭:「ふふ。もちろん」
日室 晴陽:「もち。霞が頑張ってだもん」
日室 晴陽:「負けてらんないって」
月城 旭:「君のお願いなら、どこまでだって頑張れるさ」微笑みを返す。
叢崎未和:一方・ごく小規模な衝撃風を起こし、防塁に転がり込んで魔風をのがれる。
叢崎未和:多くのジャームの力を取り込んでいるとは言っても、至って万能ではない。
叢崎未和:選択的にその能力を引き出そうとすれば決壊し一瞬で身を引き裂かれる。だから扱えるのは、純粋な力のみだ。
叢崎未和:血が足りない。でも、ずっとクリアだ。よく見える。よく聞こえる。
叢崎未和:「旭さん、霞さん、日室さん……みっちー」
叢崎未和:彼女らの姿が。
白塚 美弦:「……これ、本当は良くないんだけど、あとでいっぱい怒られるから許してね」
白塚 美弦:言って、地面のマンホールを軽く足で二度叩く。
白塚 美弦:すると、勢いよく水流が天に向かって吹き出す。
白塚 美弦:ネズミを操って、水道管を破壊したのだ。
白塚 美弦:それによって、正面から来た魔風の防御に成功する。

GM:行動値6、旭さん、日室さんの手番です。
日室 晴陽:こっちから行きます!マイナーはなし
日室 晴陽:メジャーはさっきとおんなじコンボ!tie you!sun,sun!:災厄の炎Lv6+プラズマカノンLv4+コンセントレイト:サラマンダーLv4!
GM:判定どうぞ!
日室 晴陽:紡ぎの魔眼Lv4込みで判定、対象は敵全部!
日室 晴陽:11dx7+12
DoubleCross : (11DX7+12) → 10[1,1,2,2,3,4,4,6,7,9,10]+10[3,10,10]+10[1,10]+10[10]+4[4]+12 → 56

日室 晴陽:よっし!回った!
GM:ギャア~~~~ッッ
“スネグラチカ”:ガード≪氷盾≫≪グラビティガード≫
雌鹿:ガード
群狼:ガード
大鷲:≪リフレックス:ブラックドッグ≫+≪見えざる僕≫
大鷲:6DX7+18>=56
DoubleCross : (6DX7+18>=56) → 10[2,3,6,7,7,10]+10[7,8,10]+6[2,2,6]+18 → 44 → 失敗

大鷲:うぐ~~~~っっ
日室 晴陽:怖い目出すな!
GM:ダメージどうぞ!
日室 晴陽:支援砲撃も貰って+4d!いざ!
日室 晴陽:10d10+47
DoubleCross : (10D10+47) → 50[2,4,5,4,2,8,1,8,10,6]+47 → 97

日室 晴陽:どうよ!
GM:何そのダメージ…………
“スネグラチカ”:5D10 グラビティガード
DoubleCross : (5D10) → 42[9,10,9,10,4] → 42

“スネグラチカ”:出目メチャメチャ良い 生きてる!
日室 晴陽:こんにゃろ……
GM:鹿と狼と鷲は死にました…………
日室 晴陽:日室 晴陽の侵蝕率を11増加 (118 → 129)

日室 晴陽:「ね、霞」
日室 晴陽:敵から目線を外さないまま、傍らの相棒へと呼びかける。
月城霞:「なに、日室」
月城霞:同じく敵を見据えたまま応える。
日室 晴陽:「今からちょっと頑張るからさ。うまく行ったらご褒美くんない?」
月城霞:「ご褒美……」難しそうな顔をして。
月城霞:「それで君のモチベーションが上がるなら、いいわ」
月城霞:「……でも、何を?」
日室 晴陽:「霞のセンスでいーよ。なんか考えといて」
月城霞:「む…………」さらに難しそうな顔になって
月城霞:「……わ、分かった」だが頷く。
月城霞:「精一杯考えておく」
日室 晴陽:「サンキュ」 一瞬だけ、そう霞に笑いかけてから。
日室 晴陽:吹雪の中心、スネグラチカへと踏み出す。
日室 晴陽:「って訳で。追加のやる気も貰っちゃったし」
日室 晴陽:付き従う魔眼が光度と高度を増していく。
日室 晴陽:「今のあたし、めちゃ無敵モードだからさ」
日室 晴陽:吹雪も、動物の群れも、スネグラチカも。等しく照らし焦がし尽くすために。
日室 晴陽:「覚悟しなよ」
日室 晴陽:そして。
日室 晴陽:「一切合切溶け落ちろ」
日室 晴陽:暦通りの真夏のような。灼熱が顕現する。
日室 晴陽:区別なく晴らす。容赦なく焦がす。遍く全てを照らし出す。
日室 晴陽:それこそ、太陽の――彼女の魔眼の本質故に。
GM:太陽に晒された白雪の末路として、当然の帰結として。
GM:獣の群れが瞬時に溶解し、蒸発していく。
GM:地を這う獣も、空を舞う鳥も、逃れられたものは一つとしてない。
GM:ただ一人───“スネグラチカ”を除いては。
“スネグラチカ”:「……」
“スネグラチカ”:灼熱に呑まれて、尚も結界めいて荒れ狂う雪と氷の中から、日室に顔を向ける。
“スネグラチカ”:全ての仲間を失い、ただ一人。それでもまだ立っている。
日室 晴陽:「……まだ足んない、か」
日室 晴陽:「いーよ、だいじょぶ。最後まで付き合ったげる」
日室 晴陽:「あたしも冷める気配ないし」
日室 晴陽:無限の思いからなる無限の熱。単なる恋から生まれる太陽を携えて。
日室 晴陽:「いくらだって注げるよ」

GM:行動値6、旭さんの手番です。
月城 旭:はい。マイナーで暴走解除
月城 旭:メジャーで「斬るやつ」《コンセントレイト》《炎神の怒り》《煉獄魔神》
月城 旭:対象スネグラチカ。
月城 旭:11dx+1+10@7 命中
DoubleCross : (11DX7+11) → 10[2,2,2,3,3,5,5,5,7,7,10]+10[2,4,8]+10[9]+2[2]+11 → 43

“スネグラチカ”:ガード≪氷盾≫≪グラビティガード≫
月城 旭:ダメージで《フェイタルヒット》
GM:ダメージどうぞ
月城 旭:5d10+23+4d10 諸々有効
DoubleCross : (5D10+23+4D10) → 23[1,2,8,5,7]+23+21[4,3,8,6] → 67

月城 旭:月城 旭の侵蝕率を12増加 (113 → 125)
“スネグラチカ”:5D10 グラビティガード
DoubleCross : (5D10) → 28[2,9,1,9,7] → 28

“スネグラチカ”:耐えてしまうなあ!それは!
月城 旭:そっかあ

月城 旭:……そうして、太陽が一切の障害を溶かし消したあと。
月城 旭:発散する膨大な熱に満ちた世界を視認しながら、既に女は駆け出している。
月城 旭:熱速度変換。飛びあがる。振り掲げられたともしびが火の粉と共に舞う。そして、不意に──
月城 旭:「ぇあ」
月城 旭:──燐光を帯びた刀を振るうその手が、止まる。
月城 旭:限界を超えた損傷再生。神経が焼け落ちていくような感覚。
月城 旭:頭の中に染み出した、ぼんやりとした闇が
月城 旭:広がって おおきくなって
月城 旭:(────あれ)
月城 旭:ともしびが、消える。
月城 旭:世界が、陰る。
月城 旭:(…………まず、い)
月城 旭:立ち眩む。膝をつく。
月城 旭:(私…………)
月城 旭:(…………えっと)
月城 旭:(……なんで、戦ってるんだっけ)
月城 旭:(私、の……名前…………)
月城 旭:(まずい、や)
月城 旭:(思い……出せなく、なっちゃった)
月城 旭:“スネグラチカ”の展開する無差別的な熱簒奪。
月城 旭:あの日、霞に語ったように──それの発するワーディング圏内に入った時点で、認識阻害を引き起こす情報毒が旭の脳髄を蝕み始めていて。
月城 旭:更には現在、本体から放たれるいっそう烈しいその干渉を、この距離で身に受けながら
月城 旭:重ねること、全力に近い能力稼働を繰り返していた。
月城 旭:ここに、その限界が訪れた。代償が、火花となって網膜の中で弾ける。
月城 旭:熱が神経を蝕んでいく。奪い去っていく。思い出を。過去を。
月城 旭:ロイス状態が変更されます。
月城 旭:(どうしよう……わたし、どうすれば、今)
月城 旭:白塚さんのロイス(〇応援/(秘匿))がタイタス化されました。
月城 旭:(いやだ……さむくて……いたくて)
月城 旭:日室さんのロイス(〇連帯感/(秘匿))がタイタス化されました。
月城 旭:(まっくらで)
月城 旭:叢崎さんのロイス(〇期待/(秘匿))がタイタス化されました。
月城 旭:(こわい、よ──)
月城 旭:……それでも、なお
月城 旭:胸の内に残るもの。忘れてはいけないと叫ぶ何かが
月城 旭:怯懦のままに泣き喚く事をさせなかった。
月城 旭:彼女の手に、刀を手放す事を許さずにいた。
月城 旭:その答えを求めて、視線を宙に彷徨わせる。
月城 旭:戦う事も忘れて、ただ迷い子のように──
月城 旭
月城 旭:──姉妹の視線が交わる。
月城 旭:月城霞。君の眼に映る姉の、今のその姿は
月城 旭:ずっと昔に病室で見た、全てを失ったあの日の姉と、どこか重なって見えた。
月城 旭:同時に、思い出す。姉が倒れたあの日に過った不安。
月城 旭:“姉さんが、このまま目覚めないんじゃないかって”
月城 旭:“もし、目覚めても……”
月城 旭:“……また、あの時みたいになるんじゃないか、って……”
月城 旭:それと、もう一つ。
月城 旭:柔らかな笑みを浮かべて、君を安堵させようとした。その時の姉の言葉。
月城 旭:”大丈夫……きっと”
月城 旭:”もし、そうなったとしても”
月城 旭:”霞ちゃんが、私の傍にいて”
月城 旭:”私の事を想って、呼んでくれたなら──”
月城霞:「……」
月城霞:姉は、ずっと一緒だと言ってくれた。
月城霞:必ず帰ると約束してくれた。
月城霞:それならば、私に出来ることは、ただ一つしかない。
月城霞:静かに、しかし吹き荒ぶ吹雪にかき消されないように、口を開く。
月城霞:「……卵焼き」
月城霞:「姉さんが好きな、ふわふわで、甘いやつ」
月城霞:「明日の朝、つくるから」
月城霞:「……だから、帰ってきて」
月城霞:その名を呼ぶ。世界にただ一人のその名を。
月城霞:「────お姉ちゃん」
月城 旭:「────」絶凍の中、白い息を吐く。吹雪の向こう。
月城 旭:それでも、微かに唇が動いた様に見えた。
月城 旭:"だいじょうぶ"、と
月城 旭:秘匿していたロイス感情をすべて公開、感情変更をします。
月城 旭:……私は、酷いやつだ。
月城 旭:(大切にしようと決めたはずのものを、すぐに放り捨ててしまう)
月城 旭:タイタス 白塚 美弦:応援/〇それでも、私が誰より力になってあげたいのは霞ちゃんで
月城 旭:(私に優しくしてくれた人の温もりも。私を好きだと言ってくれた人の想いも)
月城 旭:(その時に、きっと返そうと思ったはずの感謝も。きっと本心から感じたはずの喜びも)
月城 旭:(何一つ、自分の中で守り通せないまま)
月城 旭:タイタス 日室 晴陽:連帯感/〇できる事なら本当は、一人で霞ちゃんを助けたい。誰より私が、あの子に一番必要とされる存在でありたいから
月城 旭:(そうやって、沢山の人を傷付けてきた)
月城 旭:(傷付けて、傷付けて、その事すらも忘れて、正しい罰を受ける事なく生きて来た)
月城 旭:(その事に疲れて、その罪すらも見えてないふりをして)
月城 旭:(へらへら楽しそうに笑いながら生きることにして)
月城 旭:タイタス 叢崎未和:期待/〇やっぱり、君も私の”思い出”には──霞ちゃんと同じには、なれないんだ
月城 旭:(──そんな私が、たった一つ。取り零さなかったものがある)
月城 旭:(忘れない。……忘れるもんか)
月城 旭:(きみをひとりにはしないと誓った、その約束を)
月城 旭:(君が私を呼んでくれるなら。君さえ、私を必要としてくれるなら)
月城 旭:(何度だって、私の世界には──)
月城 旭:(──光が、射すんだ)
月城 旭:ロイス 月城霞:〇親愛/だから、お願い。君だけは、どうか私を見放さないで
月城 旭
月城 旭:……暗闇が、晴れる。
月城 旭:身を蝕み過去を喰らう熱ではなく。
月城 旭:柔らかに包み込むような陽射しの温もりが、この身を包む。
月城 旭:《快適室温》──白く鎖された極寒の中にあって、彼女の立つ場所だけが穏やかな春のように凪いで。
月城 旭:何度もそうしてきたように、もう一度。
月城 旭:自分の身体を蝕む”それ”から、
月城 旭:この身体を、大切な想い出を──自分がここに居る意味を、奪い返す。
月城 旭:……それは、月城旭が白紙化した自分自身に対して行った、最初の自己定義。
月城 旭:どんな状況でも己を奮い立たせる事のできる、最強の呪文。
月城 旭:「大丈夫」
月城 旭:「私は、月城旭」
月城 旭:「霞ちゃんの、お姉ちゃんだから」
月城 旭:Sロイス指定 月城霞:〇妹/依存
月城 旭:柄を握る手にもう一度、力が籠る。
月城 旭:眦から血を流しながら、きみを安心させるために
月城 旭:いつもと変わりない、柔らかな笑顔を浮かべて見せる。
月城 旭:……おもむろに、その身体が傾く。平衡感覚を失った──訳ではない。
月城 旭:刃を自らの肩へ掛けるように引き戻しながら、背を向けていた"スネグラチカ"の横腹へと潜るように移動している。
月城 旭:不規則にして不可解に見えるもの。いつも通りの、"スピキュール"の技。
月城 旭:直後。縄跳びでもするように、ひゅんと手首を回した。
月城 旭:赫刃が円弧を描く。"スネグラチカ"の、色のない表皮の上に、焔の斬線が走る。
“スネグラチカ”:“スネグラチカ”の身体が両断され、血飛沫のように白雪が舞う。
“スネグラチカ”:だが、その現実を拒絶するように、純白の体躯は再び形を取り戻していく。
“スネグラチカ”:ただ、そこに立つこと。立ち続けること。
“スネグラチカ”:いつかの過去、あるいは未来に抱いたそれを。
“スネグラチカ”:最早すべての理由すら失い、忘れ果てても、ただ愚直に護り続けるように。
月城 旭:「……ああ」その姿に、重なるものを見たのか。僅かに悲哀の色を浮かべて。
月城 旭:「ごめんよ。あと少し……もう少しで」
月城 旭:「君が休めるように、してあげるから」

GM:行動値5、叢崎さんの手番です。
叢崎未和:マイナーで"スネグラチカ"のエンゲージへ移動
叢崎未和:メジャー《コンセントレイト》《絶対の恐怖》《原初の白:オーバーロード》
叢崎未和:白塚美弦 親愛〇/罪悪感
白塚美弦 執着/恐怖〇 この二つをタイタスに変更

叢崎未和:C値-1、ダイス+10 スネグラチカを攻撃します
GM:判定どうぞ!
叢崎未和:18dx7+20 命中
DoubleCross : (18DX7+20) → 10[1,1,2,3,4,5,6,7,7,7,8,8,8,8,9,9,10,10]+10[1,1,1,1,3,4,5,5,9,9,10]+5[3,4,5]+20 → 45

叢崎未和:間違えました
叢崎未和:18dx6+20
DoubleCross : (18DX6+20) → 10[1,1,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,9,9,9,10,10]+10[2,3,4,4,4,6,8,8,9,10]+10[2,4,7,7,10]+10[8,10,10]+10[1,10,10]+10[6,9]+10[3,7]+10[10]+4[4]+20 → 104

GM:跳ねたな……!
“スネグラチカ”:ガード≪氷盾≫≪グラビティガード≫
叢崎未和:11d10+104 カリギュラを破壊し装甲無視攻撃!
DoubleCross : (11D10+104) → 82[6,2,9,9,8,9,10,2,10,9,8]+104 → 186

叢崎未和:あ
叢崎未和:いやなんでもないです。これで!
GM:何だそのダメージは…………
“スネグラチカ”:5D10 グラビティガード
DoubleCross : (5D10) → 42[7,10,10,7,8] → 42

叢崎未和:おかしいでしょ!
“スネグラチカ”:すごい出目だが……
“スネグラチカ”:50が出ても耐えきれない!軽減しきれないとHPは脆かった
叢崎未和:ハァハァ……やった!
“スネグラチカ”:HP0。復活エフェクトはありません
GM:戦闘終了です。
叢崎未和:侵蝕146まで。演出行きます。

叢崎未和:「みっちー」
白塚 美弦:「ん?」
叢崎未和:ふらふらと、糸で吊られるような動きで防塁から出る。
叢崎未和:「もう大丈夫、解いて」
叢崎未和:君の知る普段の彼女より、幾分か目に光の戻った顔が、気付けば目の前にある。
叢崎未和:そのまま、おとがいに指を這わせ、唇を奪った。
白塚 美弦:「……!」
叢崎未和:いつかそうしたように、舌が侵入する。いつかより幾分か丹念に、口内をなぞる。
白塚 美弦:「……っ」衝動の抑制。その解除を求められている。理解している。
叢崎未和:気付けば。天体の運行を示す円環のように。
白塚 美弦:それは私の影響下から離れるということで、少しさびしいけれど。
叢崎未和:2人の周囲を血の帯が回転していた。12の力を込めた、いくつもの円環。
白塚 美弦:必要なことだ。
白塚 美弦:だから、解除を開始する。
白塚 美弦:それと同時に。
叢崎未和:それらが外殻から順にはじけるようにして、雪を拒絶し、風を弱め、凪の領域を形成する。
白塚 美弦:少しばかりの景気づけに。
白塚 美弦:未和ちゃんの体内にある思考伝播物質を一瞬起動させる。
叢崎未和:「ぅんっ……」
叢崎未和:ぴくり、と指先が震える。
白塚 美弦:それも一度に複数。無数のイメージが起動する。美弦に少し負荷のかかる多重起動。
白塚 美弦:それは、全てが叢崎未和と白塚美弦の思い出。
白塚 美弦:全て、総てだ。
白塚 美弦:最初に出会った日から、今まで全部会って話した記録を。
白塚 美弦:白塚美弦は思考伝播物質の遅効性を利用して記憶していた。
叢崎未和:「ぷはっ。ふふ。ふふふふふ」
叢崎未和:見える。伝わる。彼女が現れたあの日から、こんな、こんな風に。
白塚 美弦:これは、少しばかりの景気づけ。
白塚 美弦:この思い出を無に帰さないために、頑張ってほしい。
白塚 美弦:そのための、エール。
叢崎未和:今までわからなかったことが、慌てる/微笑む/照れる/嫉妬する彼女の表情が、真実の意味で理解できる。
叢崎未和:『フリ』をやめてもいい時が、来た。
叢崎未和:「ほんとに、私が欲しいもの全部分かっちゃうんだから」
叢崎未和:もう一度抱き寄せて、頬に軽くキス。
叢崎未和:「大好き」
白塚 美弦:「ん、私も」
白塚 美弦:「大好きだよ」
叢崎未和:ロイス感情変更。 白塚美弦 感謝〇/依存
叢崎未和:これを 大好き〇/返しきれないほどの感謝 へ。Sロイスに指定します。
叢崎未和:「行ってきます」
叢崎未和:駆けだす。
叢崎未和:意識を乗っ取られかけたあの一瞬。
叢崎未和:隠れ潜んでいた師(やつ)との『共感』を経て、掌握が進んでいた。だからこそ感じる。
叢崎未和:影に取り込んだ衝動因子たち。今は私の力だ、だがリミットはいよいよ近づいている。みっちーの能力で縛っても、それは表出を押さえるだけ。解決にはならない。
叢崎未和:現在の超高侵蝕域を抜け出せば、制御不能になる。
叢崎未和:──ここで全て使い切る必要がある。
叢崎未和:「月城旭さん!」
叢崎未和:掠れる、だがはっきりと叫ぶ。
叢崎未和:「私は覚えてるぞ、ここで会ったが一年目。通算97回目の初めましてだ」
叢崎未和:「あなたは知らないかもしれないが、大きな恩があって──」
叢崎未和:「その縁で、友達になった」
叢崎未和:「だから、手助けさせてくれ」
月城 旭:「……そっか」
月城 旭:先程の影響で、未だ記憶の端々が霞んでいる。
月城 旭:彼女の言葉のどれほどが自分の中に存在するものであるのか、実感は湧かないけれど。
叢崎未和:自己催眠を何重にも重ねがけして、筋力を瞬間的に増加させ、跳ぶ。
月城 旭:今、この瞬間。彼女が私を想ってくれているくらいは、分かる。
月城 旭:「ごめんね。君の大切な記念日も覚えていられない、こんなやつで」
叢崎未和:「忘れないのは神様だけだよ」
叢崎未和:「だから、いい」
月城 旭:「だけど、ああ──97回もそんな目に逢わせて」
月城 旭:「そんな私を、それでも友達と呼んでくれる子がいるのか」
叢崎未和:にい、と笑う。
月城 旭:「ありがとう。……とっても、嬉しいよ」
月城 旭:こちらも、笑みをもって応じる。
叢崎未和:空を赤線の輪が走る。
叢崎未和:衝動区分十二系統。叢崎未和の『名付け』は、12個で1組である概念を流用、ないしもじりを加えたものだ。それにより主人から代償を取り立てる前に完結する『系』を作り出す。
叢崎未和:──〈フロン〉〈ブック〉〈ハイト〉〈マント〉〈ルート〉〈ロード〉〈コーヴ〉〈パイン〉〈トータ〉〈ヒリィ〉〈ピース〉〈ミント〉
叢崎未和:──〈タツ〉〈ノゾク〉〈ミツ〉〈タイラ〉〈サダン〉〈トル〉〈ヤブル〉〈アヤブ〉〈ナル〉〈オサン〉〈ヒラク〉〈トヅ〉
叢崎未和:──〈ナイアー〉〈エリオス〉〈ロディタ〉〈レーウス〉〈テュイア〉〈ポーロス〉〈ピステス〉〈ポンポス〉〈ガイオス〉〈グレウス〉〈ピトール〉〈ズュギア〉
叢崎未和:──
叢崎未和:──
叢崎未和:──
叢崎未和:……
叢崎未和:美弦に呼びかける前に唱え終えている。空間と極限まで親和し、気配を悟らせぬ風の声。
叢崎未和:抑制から解き放たれた衝動を以て、その完結性を破く。
叢崎未和:建造物が現れた。それぞれ結晶構造の異なる鉱石によって組み上げられた。12様の。
叢崎未和:次いで、時代もばらばらな朽ち果てた12の武装。異音と共に輝く12形態のプラズマ。12色のレーザー光。12の生体特徴。個となる文明の古代文字を刻まれた12の魔法円。それらが瞬間的に現れては消えてゆく。
叢崎未和:12のジャームで織られた12の系が重なり、144の衝動が増幅され、正体不明の破砕音とともに直下へと向けられる。
叢崎未和:「結実しろ! "ボトムレス・ピット"!!!」
叢崎未和:声を涸らして、叫ぶ。その痛みすら愛おしい。
叢崎未和:秘密の漏出。慢性的な貧血。尽きぬ
叢崎未和:飢え。徹底的な殺戮、痕跡すら残さぬ破壊の強迫観念。
叢崎未和:力の行使に伴う苦痛。他者より向けられた感情の拒絶。死地の探究。自己否定。悪夢による不眠。
叢崎未和:大事なはずの誰かへの憎悪。
叢崎未和:それら衝動に応じた記憶・人格の変調。
叢崎未和:何もない。
叢崎未和:叢崎未和がそこにいる。
叢崎未和:「そして真実初めましてだ、みんな!」
叢崎未和:憔悴した顔に満面の笑みを湛え、快活に叫ぶ。
叢崎未和:彼女を中心にして発生したごく短い円の旋痕、細く圧縮されたひかりの帯。
叢崎未和:どこか、剣とその鍔に似て。
叢崎未和:咆哮とともに放たれる。
“スネグラチカ”:荒れ狂う吹雪。“スネグラチカ”の防壁、絶対の拒絶が光を阻もうとして──
“スネグラチカ”:そして、穿ち貫かれる。
“スネグラチカ”:「────」
“スネグラチカ”:胸に空いた孔。その空洞を埋めるものは、最早何も無い。
“スネグラチカ”:“スネグラチカ”の身体が、粉雪のように散っていく。
“スネグラチカ”:崩れ落ち行く中、どこかへと腕を伸ばす。叫ぶ喉も、開く口も無い身体で、何かを叫ぼうとして。
“スネグラチカ”:いずれも叶わず、ただの雪として霧散する。
叢崎未和:それを認め、うっすらと微笑み。
月城 旭:「……ああ」何かに引かれるように。思わず、伸ばされた手を掴もうと伸ばしかけて──止まる。
叢崎未和:すべての力を使い果たして墜落する。雪に包まれた街路樹受け止められ、枝に引っ掛かりながら転げ落ちてゆく。
月城 旭:代わりに、誰もいなくなったその場所に向かって
月城 旭:「……おやすみ」
月城 旭:おさなごを寝かしつけるように、柔らかな声で。そう告げやった。
日室 晴陽:(……足りたかな)
日室 晴陽:彼女の終わりを見送ったのち。ようやく太陽が動きを止める。
日室 晴陽:「ま、これで本物がお仕事出来るだろうし」
日室 晴陽:「こっちはそろそろお休みしますか」
月城霞:「……」最後に舞い落ちた雪の一片を、掌で受け止める。
月城霞:それも体温で、すぐに溶けて消えていく。
月城霞:(……そうだ。私は、あの子とは違う)
月城霞:(私には、ずっと)
月城霞:掌を胸元に寄せ、面々を見遣る。
月城霞:(消えない熱がある)
月城霞:「……ありがとう、皆」
白塚 美弦:「……」しばし、ぼうっとしていたが。
白塚 美弦:「未和ちゃん!」はっとなって落下地点目指して駆ける。
叢崎未和:先にも増して血だらけだが、穏やかな表情で気絶している。
白塚 美弦:抱きとめ、その顔を見て安堵する。
白塚 美弦:それから、じっと顔を見ていたが。
白塚 美弦:ふと、我に返って。
白塚 美弦:「もうっ」
白塚 美弦:「お姫様抱っこは、私がしてもらいたかったのにな……」
白塚 美弦:心底悔しそうな表情をして、それからいつものニコニコを取り戻すのであった。
GM:吹雪は止み、砕けた月が消えていく。静寂の中、荒天は晴れ行き。辺りには夏の匂いと、蝉の声が戻ってくる。
GM:鎖された円環は、砕かれた。



GM:バックトラックです。
GM:特殊ルールにより全員自動で帰還成功。
月城 旭:わあい
GM:Eロイス・Dロイスはこちら

スネグラチカ
≪究極存在≫
≪愚者の契約≫
≪孤高の超人≫

大鷲
≪あり得ざる存在≫

群狼
≪戦闘用人格≫


日室 晴陽:まあまあ多い
GM:基本5、シナリオ10、EとDロイスで5点
月城 旭:愚者の契約……
GM:侵蝕点を5点として、全員に一律で25点進呈します。
白塚 美弦:わーい
叢崎未和:やった~
白塚 美弦:いただきまーす
月城 旭:いただきます~
叢崎未和:Sロイスは経験点に入りますか?
日室 晴陽:いただきますむしゃむしゃ
月城 旭:あっそういえばそのルールあった
GM:そうだ Sロイスある方はそちらも!
月城 旭:30点いただきます。
日室 晴陽:やった、30点
叢崎未和:では30! いただきます!
GM:というわけでお疲れさまでした!
叢崎未和:お疲れさまでした~
白塚 美弦:お疲れ様でした
日室 晴陽:お疲れさまでしたー



【Extra scene】

高校 屋上
日室 晴陽:終わりは近づきつつあるもまだ日差しのきつい残暑の中。雪が降るなんて想像もつかないような炎天下。
日室 晴陽:例の話をいつするかと霞に聞かれて、咄嗟に思いついた場所がここだったわけだけど。
日室 晴陽:「場所ミスった気がしてきたな……」
日室 晴陽:自身の能力である魔眼はともかく、本物の太陽に照らされれば普通に暑い訳で。
日室 晴陽:もっと言えば、これからすることを考えて普通に緊張などもする訳で。
日室 晴陽:やや茹りそうな頭を抱えながら、霞が来るのを待っていた。
月城霞:ややあって、きい、と扉の開く音がする。
月城霞:夏服姿の霞が姿を現す。照り付ける陽射しに、掌をひさしにして。
月城霞:「ごめんなさい、待たせてしまった」
月城霞:「先生に用事を頼まれてしまって」
日室 晴陽:「ん、いーよいーよ」
日室 晴陽:「あたしが気合入れすぎただけだしー」
日室 晴陽:寄りかかっていたフェンスから身を起こしてふらふらと手を振る。
月城霞:「気合?」不思議そうにしつつ「水分を摂った方がいいわ」冷たいペットボトルのお茶を手渡す。
日室 晴陽:「お、サンキュ!生き返るわー」
日室 晴陽:受け取ってごくごくと半分近くを一気に飲み干して。
月城霞:「……怪我はもう大丈夫?」
日室 晴陽:「へーきだって。霞こそだいじょぶ?」
月城霞:「私は問題ないわ」
月城霞:「医師の診断も受けているし……訓練はもうしばらく出来ないけれど」やや不満の滲む顔。
日室 晴陽:「大人しくしてなって。ふつーにオーバーワークみたいなもんだしさ」
日室 晴陽:「ちょっとくらい休も。夏休みほぼ潰れちゃったし」
月城霞:「休みすぎているくらいだわ……」
日室 晴陽:「仕事バカー」 へらへらと苦笑した後。
日室 晴陽:「……えーと。そんでさ」
日室 晴陽:「本題の方なんだけど」
月城霞:「うん」ペットボトルの蓋を締めて、いつもの調子で口を開く。「それで、話って?」
日室 晴陽:「話す前に、確認ね」
日室 晴陽:「これさ、一回聞いたら聞きませんでしたーって言えない系のアレで」
日室 晴陽:「霞もまあめちゃ混乱するだろうなーって話で」
日室 晴陽:「それでも話して良いんだよね?」
月城霞:「……」重ねられる確認に、話題の深刻さを察して真剣な顔になる。
月城霞:「……ええ」頷く。
月城霞:「言ったでしょう。覚悟は出来ているわ」
月城霞:「聞かせて、日室」
日室 晴陽:「おっけ」
日室 晴陽:神妙に頷いて、それからいつものように笑って。
日室 晴陽:「あたしね。霞のことが、恋してるって意味で、好き」
日室 晴陽:分かりやすく、明快に。聞きやすいよう区切りながら。
日室 晴陽:どこまでも真っ直ぐに、想いを言葉にする。
月城霞:「…………」
月城霞:黙り込む──違う。固まっている。
月城霞:「…………」
日室 晴陽:「……霞ー」 顔の前でひらひらと手のひらを泳がせてみる。
月城霞:その顔を見つめたまま、微動だにしない。
月城霞:「……すき……」
月城霞:「……ああ」
月城霞:「それは、勿論。私も好きだよ」脳が理解を諦め、言葉の一部を聞き流し、断片的な意味合いで友人と相棒として答える。
日室 晴陽:「あ、違う違う。そっちじゃない」
日室 晴陽:「前も言ったじゃん。相棒だからの好きだけじゃないって」
日室 晴陽:「友愛じゃなくて恋愛。LIKEじゃなくてLOVE。分かる?」
日室 晴陽:どうやら理解を放棄されたらしいのを察して言葉を重ねる。
月城霞:「ら……」
月城霞:「ラヴ…………」
日室 晴陽:「そ、LOVE」
月城霞:文脈で意味合いが複雑に変化する日本語よりも、端的な英語で示されたその意味が、解釈で逃れる余地を許さずに突き付けられる。
日室 晴陽:「例えばさ」
日室 晴陽:「あたしの魔眼って、あたしの感情に比例して温度が上がるじゃん」
日室 晴陽:お互いの能力に関しては幾度となく話して共有もしている。二人にとっては当然の事実だ。
月城霞:「う、うん」日室がようやく理解できる言語を発しだしたのを聞いて、安堵と共に頷く。
日室 晴陽:「だから、戦うときって大体いっつも霞のこと考えてんだよね」
月城霞:「は」
日室 晴陽:「霞のこと考えてる時のあたしが一番熱いんだよ」
月城霞:「………………私………………?」
月城霞:「なん……何」
月城霞:「何で……」
月城霞:「相棒だから……?」
日室 晴陽:「なんでだろーね。あたしとしてはいつの間にかって感じなんだけど」
日室 晴陽:「一番最初はこう、かっこいいなとか並びたいなだったし」
日室 晴陽:「そもそも一緒にいるようになったのが相棒になったからだから、相棒だからってのもまあ間違ってないけど」
日室 晴陽:「それ以上にね」
日室 晴陽:「真っ直ぐだったり、かっこよかったり、マジメだったり」
日室 晴陽:「意外とノリ良かったり、たまに天然だったり、ちょい心配になるくらい素直だったり」
日室 晴陽:「あたしのこと相棒って認めてくれたり、笑った顔がかわいかったり」
日室 晴陽:「だから、うん」
日室 晴陽:「霞が霞だから、好きになったんだよ」
月城霞:「…………」
月城霞:ぽたり、と、屋上に汗が滴り落ちる。
月城霞:頬がひどく熱い。茹でられたように頭が回らない。
月城霞:照り付けるこの陽射しのせいか。
月城霞:「……ぁ……」酸欠の魚のように口をぱくぱくさせて、喉の奥から声が漏れる。
月城霞:「あぁ……う……」
月城霞:「ぅぇ……?」
月城霞:「……」
日室 晴陽:「あー、うん」
日室 晴陽:「あんね、捲し立てちゃってから言うのもアレなんだけど」
日室 晴陽:「無理に今飲み込まんでいーよ」
日室 晴陽:「ふつーにめちゃ急な話だし、混乱するって思ってたし」
日室 晴陽:「ゆっくりでいーから、まあ」
日室 晴陽:「今日はあたしが霞をそういう意味で好きだってことだけ分かってくれれば、じゅーぶん」
月城霞:「……」
月城霞:「……ご」
日室 晴陽:少し眉を下げて笑って、つい詰め切っていた距離を空けるように少し身を引く。
月城霞:「ごめん、日室」
月城霞:申し訳なさそうな顔をして。
月城霞:「どこかで勘違いさせてしまったのかもしれないわね……」
日室 晴陽:「勘違い?」
月城霞:「そうね、日室と違って、普段からあまり身だしなみにも拘らない性質だし……」
月城霞:「……私は女よ」
月城霞:深刻な顔で言う。
日室 晴陽:「……」
日室 晴陽:一回完全に呆気にとられてから。
日室 晴陽:「や、うん。知ってるけど」
月城霞:「……」
月城霞:「……?」
日室 晴陽:「ふつーに手当とかもしてて勘違いするわけないじゃん」
日室 晴陽:らしいけどさぁと苦笑した上で。
日室 晴陽:「もっと言うとね。霞が男だろうと女だろうと関係ないよ」
日室 晴陽:「そりゃまあ、女の子だからみたいな部分も好きだけどさ」
日室 晴陽:「霞が男だったとしても多分好きにはなってた気がする」
月城霞:「…………」
月城霞:ふらりとよろめいて、屋上の柵を掴む。
月城霞:「……いえ……」
月城霞:「違うの。この国際的に性差に対する価値観と在り方の寛容性が進歩しつつある中で」
月城霞:「正しく理解しているつもりだし……それは肯定されるべきだと思うし」
月城霞:「けれど私自身がその当事者になるということを考えたことがなくて……男性を好きになったことはないけれど私自身はこれまで自分はヘテロセクシャルだと思っていて……」
日室 晴陽:うんうんと頷きながら。
日室 晴陽:「だいじょぶだいじょぶ。霞がそういうこと考えたことないだろうなーとは思ってたし」
日室 晴陽:「だから無理に今考えろーとか受け入れろーとも言う気ないし」
日室 晴陽:「言ったっしょ。ゆっくりでいーよ」
月城霞:「待って」
月城霞:その手を掴む。
日室 晴陽:「んえ」
月城霞:いつものように、自分を慮って距離を置こうとするその顔を見て。
月城霞:「……待って」
月城霞:「考えさせて」
日室 晴陽:「……うん」
月城霞:「……」
日室 晴陽:「その考える時間が要るだろうから、ゆっくりで良いんだって」
月城霞:「……私が両性愛者・同性愛者ではないのかと問われたらやはり恋愛経験も考慮したこともないので今結論を出すのは難しくて……」
月城霞:「日室のことは仕事上の同僚のみならず人間として好ましい相手と感じていて……」
月城霞:「日室は……格好良くて……優しくて……」
月城霞:「私と違って明るくて……話すのが上手で、頼りになって……」
月城霞:「……綺麗で、眩しくて」
月城霞:「日室が……」
月城霞:「日室が、私のことを」
月城霞:「……好き…………?」
日室 晴陽:「……うん」
日室 晴陽:「好きだよ、ずっと」
月城霞:「…………」
月城霞:混乱の果てに、最初から提示されている命題をようやく理解して。
月城霞:へなへなと、腰が抜けたかのようにへたり込む。
日室 晴陽:「あー……」
日室 晴陽:「えっと、だいじょぶ?」
日室 晴陽:視線を合わせるようにこちらもしゃがみ込む。
月城霞:「やめて」
月城霞:「見ないで、顔」蹲り、顔を覆うようにして。耳だけが真っ赤になっている。
月城霞:「自分でも、分からないから……どんな顔してるのか……」
日室 晴陽:(……かーわいいの)
日室 晴陽:へにゃりと苦笑して。
日室 晴陽:「じゃあ、うん。そのまんまでいーから」
日室 晴陽:「もう二つだけ話聞いてくれる?」
月城霞:「……」
月城霞:僅かに頭が揺れる。
日室 晴陽:「ん。まずね、大事なことなんだけど」
日室 晴陽:「今まで知らなかったし考えてこなかったってことは、これから考えてもらうってことになると思うんだけど」
日室 晴陽:「というかまあ、霞が考えてくれるって前提での話なんだけど」
日室 晴陽:「あたしのこと、無理に好きになろうとしなくていいよ」
月城霞:「……」
日室 晴陽:「や、好きになってもらえたらそりゃ嬉しいんだけどさ。こう、無理にそうなろうとしなくて良いっていうか」
日室 晴陽:「しないでほしい、の方が近いかな。前にも言ったと思うんだけど」
日室 晴陽:「あたしは霞に笑っててほしいし、それが一番大事だから」
日室 晴陽:「無理に好きになろうとか、好きになれなくて申し訳ないとか、そう思わせちゃうのはイヤなんだ」
日室 晴陽:「だからこう、霞が一番自然に笑えるなーって方を選んでほしいし」
日室 晴陽:「その結果としてあたしを好きになってもらえたらめちゃくちゃ嬉しい」
日室 晴陽:「そういう感じ。ここまでOK?」
月城霞:「……」
月城霞:顔を隠したまま、こくりと頷く。
日室 晴陽:「ん。それでもう一個なんだけど……」
日室 晴陽:「……いや、うん。こんなかっこつけた良い感じの話した後でアレなんだけどさ」
日室 晴陽:常以上にはきはきと喋っていたのが、少し口ごもって。
日室 晴陽:「霞があたしを好きになっても、そうじゃなくても」
日室 晴陽:「ずっと、相棒でいていい?」
日室 晴陽:らしく取り繕おうとして、でも隠し切れない不安が滲んだ声。
月城霞:「……」
月城霞:ゆっくりと顔を上げる。
日室 晴陽:口元は変わらず笑んで。だけど、瞳がわずかに揺れている。
月城霞:耳まで真っ赤になって、飽和した感情と混乱とで、目には涙を浮かべて。
月城霞:ひどく熱く、荒い息を整えて、日室のその顔を見る。
月城霞:「……まず」
日室 晴陽:「うん」
月城霞:「日室の、その、言葉、気持ちは、」
月城霞:「すごく……とても、嬉しい」
日室 晴陽:「……うん」
月城霞:自ら思考と感情を整理しながら、ゆっくり、ぽつぽつと言葉を紡ぐ。
月城霞:「……私なんかを……好きになってくれて」
月城霞:「そんな風に思ってくれて……すごく、光栄だし。幸せなことだと、思う」
日室 晴陽:「……なんかじゃなくて、霞だからだかんね」
日室 晴陽:「そこだけ訂正。続けて?」
月城霞:「……。……でも」
月城霞:「……私は、日室が思ってるような人間じゃないよ」
月城霞:「本当は、弱くて、脆くて、どうしようもない」
月城霞:「暗いし、空気も読めないし」
月城霞:「一緒にいても、楽しくなんて無いよ」
日室 晴陽:「霞」
日室 晴陽:「ストップ」 笑みの抜けた、真剣な眼差し。
月城霞:「……」
日室 晴陽:「あたしはさ。霞が霞をどう思ってるかは、全部は分かんないよ」
日室 晴陽:「自己評価が低いのは知ってるし、そういう自分の欠点だと思ってるとこ気にしてるのも知ってる」
日室 晴陽:「でも、全部は分かんない。あたしは霞じゃないしね。……その上で」
日室 晴陽:「あたしが見てきた霞は、霞が思ってるような子じゃないよ」
日室 晴陽:「弱くても脆くても、ちゃんと立って前を向けるくらい強いし」
日室 晴陽:「理由があればあたしが思い付きで言い出したことにも付き合ってくれるくらいノリ良いし」
日室 晴陽:「空気読まないのだって、言わなきゃいけないことちゃんと言える強いとこだって思ってるし」
日室 晴陽:「何よりね。あたしは霞と一緒に居るのいっつも楽しいよ」
日室 晴陽:「霞がなんつったって否定させない。だってあたしは楽しいもん」
日室 晴陽:「だから今言ったことぜーんぶハズレ。少なくとも、あたしにとってはそう」
日室 晴陽:分かった?と。そこでようやく笑みを溢す。
月城霞:「…………」
月城霞:その笑みと対照的に、苦しそうに顔を歪めて、溢れた涙が零れ落ちる。
月城霞:「……日室は」
月城霞:「日室は、本当に、優しいよね」
月城霞:「私が求めている言葉を、全部与えてくれる」
月城霞:「私、日室といると、陽だまりの中にいるような、暖かい気持ちになれるんだよ」
月城霞:「……私、日室が好きだよ。大好き」
月城霞:「……でも」
月城霞:「ごめん」
月城霞:俯き、涙が落ちる。
月城霞:「私のその『好き』は、日室の好きとは、多分、違って」
月城霞:「私、まだ、恋愛も、愛情も、分からなくて」
月城霞:「日室を、恋愛として好きになれるか、まだ分からない」
月城霞:「……それにね」
月城霞:「……私、姉さんがいるの」
日室 晴陽:「……うん」
月城霞:「ずっと一緒って、約束したの」
月城霞:「私、姉さんも、日室と同じくらい好き」
月城霞:「それは勿論、恋愛という意味ではないけど──」
月城霞:「でもね、日室。……私が君に言いたいのは」
月城霞:「……日室が、日室の全部で、どれだけ私を愛してくれても」
月城霞:「私は……それと同じだけの気持ちを、返すことが出来ないかもしれない」
月城霞:「私は、それが」
月城霞:「どうしようもなく、怖いんだ……」
月城霞:「そんなこと」
月城霞:「許されて、いいはずがない……」
日室 晴陽:「……んっと」
月城霞:涙は止まることがない。彼女に愛されることが嬉しくて。それに答えられないことが、苦しくて。
日室 晴陽:「そもそもの話をするとさ」
日室 晴陽:「あたしが霞を好きになったのって、あたしの勝手なんだよ」
日室 晴陽:「あたしが勝手に好きになっただけで、勝手に好きになってもらえたら嬉しいなって思ってるだけ」
日室 晴陽:「だからまあ、あたし的には霞があたしをどういう意味で好きかは重要じゃないっていうか」
日室 晴陽:「何度でも言うんだけどさ。霞が笑えるかどうかが一番重要なんだよ」
日室 晴陽:「だから、霞にとって許されないって思うことでもあたしは許すよ」
日室 晴陽:「むしろそう思わせてごめんね」
月城霞:「……日室は」
月城霞:胸の奥が、ぐちゃぐちゃで。味わったことの無い感情が、止め処ない涙となって流れ落ちる。
月城霞:「日室は本当に、それでいいの……?」
月城霞:「こんな」
月城霞:「こんな……」
月城霞:何も言えなくなって、喉からは言葉にならない嗚咽だけが漏れる。
日室 晴陽:「良いよ」
日室 晴陽:「霞が笑えるんならそれで良い。それだけで良い」
日室 晴陽:あたしが勝手に好きになっただけなんだから。おんなじだけの思いを返してなんて、理不尽なこと言わない。言いたくない。
日室 晴陽:霞を泣かせる理不尽全部、潰してやるって言ったんだから。
日室 晴陽:だから、ああもう。なんで今霞のこと泣かせてんのかなあ。
日室 晴陽:「相棒で居たいって言ったけどさ。それだって、あたしのワガママだし」
日室 晴陽:「あたしのワガママで霞が笑えなくなる方が、よっぽど嫌だよ」
月城霞:「う」
月城霞:「うぅうぅぅ~……」
月城霞:日室に身を寄せ、寄りかかるように頭を預ける。
月城霞:「日室」
月城霞:「日室……」
月城霞:好き、とは、言えなかった。
日室 晴陽:「……うん」 若干身をこわばらせつつもどうにか受け止める。
月城霞:友人としてのその言葉が、彼女にとってはどれだけの意味合いを持つか、もう、分かってしまったから。
月城霞:「ごめん」
月城霞:「ごめんね……」
日室 晴陽:「謝らんでいーよ」
月城霞:何度も何度も、泣きじゃくりながらそう繰り返す。
日室 晴陽:「霞が謝るようなこと、なんも無いんだから」
日室 晴陽:ポンポンと、その背を叩く。あくまで、相棒の距離として。
日室 晴陽:自分は霞の相棒だと言い聞かせて。
日室 晴陽:「あたしこそ、ごめんね」
日室 晴陽:「重いこと背負わせちゃって」
月城霞:かぶりを振って、涙を拭い。
月城霞:なんとか呼吸を整えて、まだしゃくりあげながら、真剣な目をして。
月城霞:「……デート」
月城霞:「デートをしよう」
日室 晴陽:「ぇ」
月城霞:「恋人……もしくはそれに準ずる人達は……」
月城霞:「デートをして、仲を深めるものなんでしょう」
日室 晴陽:「……」 目線が少しだけ迷って。
日室 晴陽:「いーの?」
月城霞:「……私、まだ」
月城霞:「日室のこと、恋愛として、好きになれるか分からない」
月城霞:「……でも、『まだ』よ」
月城霞:「試してみないと……分からない」
月城霞:「だから、日室も、まだ」
月城霞:「私のこと、勝手に諦めないで」
日室 晴陽:「……」
日室 晴陽:ぐるぐるとお腹の中で感情が回っている。
日室 晴陽:霞のことを思うなら、それでも諦めるべきなのかもしれない。
日室 晴陽:それで良いんだよって笑って、変なこと言ってごめんねって終わらせるべきかもしれない。
日室 晴陽:それでも、ずっと。こんなに霞を泣かせてるのに、ずっと。
日室 晴陽:好きにならなきゃ良かったとだけは思えなくて。
日室 晴陽:諦めたくないって思ってる自分もずっと居て。
日室 晴陽:「……うん」
日室 晴陽:「分かった」
日室 晴陽:「デート、しよ」
日室 晴陽:諦めるかどうか、終わりにするかどうか、全部保留して。
日室 晴陽:ずるいなと思うけど、それでも。霞がくれるチャンスを捨てたくなかった。



【ED/叢崎未和・白塚美弦】

某県山中・温泉地
叢崎未和:柔らかな暖色の街燈が、夜の温泉街を彩っている。
叢崎未和:約束通りの女二人旅。旅館でおいしい夕食に舌鼓を打った二人は、夜風に当たるために少しぶらぶらしていた。
叢崎未和:浴衣姿である。アスファルトをカランコロンとゆく、下駄の音が響く。
叢崎未和:「みっちーのかわいい足指に挟まれるとは、この鼻緒も幸せ者だねん」
叢崎未和:と、別に大して見えているわけでもない彼女の足元を見て冗談を言う。
白塚 美弦:「発言がちょっと変態っぽいぞー」でも少し嬉しそう
叢崎未和:あれから少し。今では随分と血色が戻り、目の下の隈も消えていた。
叢崎未和:「はは、あ。夜だと蒸機出てるとここんな風になるんだね」
白塚 美弦:「ほんとだー」
叢崎未和:湯の流れる池みたいなアレが幻想的にライトアップされていたりするのを眺めながら、ついさっき買ったばかりの杖をつく。
叢崎未和:「あ、うさんくさい石売ってる店まだ開いてる」
叢崎未和:「みっちーにプレゼントしよっか。なんかすごい事書いてあるうさんくさい石」
白塚 美弦:「私はそういうの割と信じる方だけど……」
白塚 美弦:「でも、いいや」
白塚 美弦:「これからいっぱい色んなもの貰うもん~」
叢崎未和:「おっと」
叢崎未和:「私は普通にキレーだから好き。近くで採掘してんだって」
叢崎未和:などと言いながら店前を冷かしていく。
叢崎未和:「ここのお湯成分のちょっと胡散臭い感じの説明もなんか肌になじむんだ~。胡散臭い戦い方してたから」
叢崎未和:「と、このままだとまた無限に適当なことをしゃべり続けちゃうな」
白塚 美弦:「未和ちゃんは胡散臭い適当なこと話すの得意だからねー」
叢崎未和:「へへへ……」照れたように鼻の頭を掻く。
叢崎未和:「いい風だねぇ」
白塚 美弦:「うんー。心地良い~」
叢崎未和:ぐるりと、周囲を取り巻く尾根や建物たちを見回す。
叢崎未和:「なんだか、ようやく本当に肩の荷を下ろせた感じ」
白塚 美弦:「そうだろうねぇ」
叢崎未和:白塚さんを抱きすくめて、軽く頬擦り。
白塚 美弦:「……お、往来だぞー」
叢崎未和:「ふふ、可愛い」
叢崎未和:ぱっと離れる。
叢崎未和:「本当は両手で抱き締めてあげたいんだけどな~」
叢崎未和:魂が『失ったもの』と認識しているのか。左手だけは、どうにも戻らなかった。
白塚 美弦:「そりゃあ、両手だったら嬉しいけど……」
白塚 美弦:「ないものねだりしてもしょうがないし」
白塚 美弦:「ありのままの未和ちゃんでいいよ」
叢崎未和:「寛容すぎ!」
叢崎未和:「そんなんだから私がつけあがるんだよ~」
叢崎未和:嬉しそうだ。
白塚 美弦:「えー、でも駄々こねても生えてくるわけじゃないじゃん~」
叢崎未和:「霞さんに頼んだらソラリス能力で動かせる義手の1つや2つ貰えないかな、や」
叢崎未和:「FHにいた件までなんとかして貰っちゃったし、これ以上頼るのはアレだね」
叢崎未和:白塚さんをなでなでしながら。
白塚 美弦:「そうだね……」
叢崎未和:「でさ」
叢崎未和:夜だ。
叢崎未和:多くの施設が閉まり、人通りも多くはない。
白塚 美弦:「んー?」
叢崎未和:「どうかな、『それまで』に考えとくって言ってくれたけど」
叢崎未和:こしょこしょと耳打ち。
叢崎未和:「しちゃう? 部屋に戻ったら」
白塚 美弦:「~~~~っ」
叢崎未和:けらけらと笑う。
叢崎未和:「みっちーの表情、くるくる変わって、見てて飽きないなぁ」
白塚 美弦:「……うぅ~」
叢崎未和:「ね、いいでしょ。私まだみっちーの事愛し足りない」
白塚 美弦:「考えては来たよ」
叢崎未和:杖を持つ腕を絡める。豊かな胸が密着する。
叢崎未和:「おと」
白塚 美弦:「だから、その」
白塚 美弦:「します」
白塚 美弦:「いずれ……」
叢崎未和:「おおっ」
叢崎未和:「いずれ……!」
白塚 美弦:「旅館ではだめ」
白塚 美弦:「だって」
白塚 美弦:「そういうとこする場所じゃないじゃん……」
叢崎未和:「ぐう……」
叢崎未和:「正しい事を言われてしまった」
叢崎未和:ちょっと肩を落とす。
白塚 美弦:「他の人に壁越しにでも声聞かれたらやだし……」
叢崎未和:「えいっ」
叢崎未和:こつん、と額を突き合わせる。影に取り込んだ因子を手放したことで、心を読む力を取り戻している。オフに出来るようになったのは成長だ。
白塚 美弦:「わ」
叢崎未和:「くそう。本当にイヤか。仕方ない……」
叢崎未和:悔しげにうめく。「私もみっちーのそういう声を」
叢崎未和:「ほかのやつに聞かせてやりたいシュミがあるわけではないのだ」
叢崎未和:「うーん、じゃそうだな。まだ入ってないお風呂いこ。最上階にあるのになんか露天じゃないから後回しにしてたとこ」
白塚 美弦:「ん、いいよ」
叢崎未和:「やった~」
白塚 美弦:「温泉入るのならいくらでも、むしろいっぱい一緒に入りたい」
叢崎未和:「一緒に入って肌つるつるにしよ。なーんて」
叢崎未和:「これ以上みっちーの肌が触り心地よくなったら私どうなっちゃうんだろ……」
叢崎未和:ぽわぽわとしながら旅館への道を引き返していく。
叢崎未和:「ね、みっち」
白塚 美弦:「んー?」
叢崎未和:「楽しい」
白塚 美弦:「私も私も~」へにゃっと笑う。
叢崎未和:「こうやって普通に過ごしてると、今までいかに妙なハンデを背負って生きてたか分かるよ~」
叢崎未和:「ま、でも。そだな」
叢崎未和:「努力が実を結んだことなんて、生きてきてまともにない気がしていたけれど────」
叢崎未和:「剣道やってた時のカンで生き延びたこともなんだかんだあるし」
叢崎未和:「力を伸ばそうとしたやつは、思ってたのとは違う形で旭さんの役に立って」
叢崎未和:おっと、他の女の話しちゃった。と、彼女の反応を伺いながら笑う。
叢崎未和:「勉強頑張ってうちから遠い進学校に入ったのも」
叢崎未和:「お陰できみに会えた」
白塚 美弦:特に気にせず、聞いている。
白塚 美弦:「ん、そうだね」
叢崎未和:さあ、と夜風が吹き、ふたりの髪が遊ぶ。
白塚 美弦:「これからも」
白塚 美弦:「自分の幸せのために頑張ってください」
白塚 美弦:「私の幸せのために、とは言わないよ」
白塚 美弦:「そう選択してもらうのは」
白塚 美弦:「私が努力しなきゃいけない部分だから、ね」
叢崎未和:「うふふふふ」
叢崎未和:ぎゅ、と一際強く、美弦を胸元に抱き寄せる。
叢崎未和:「まったく、いい女め」
白塚 美弦:「でしょー?」
叢崎未和:「うんうん、お陰で今、みっちーの幸せは私の幸せだし」
叢崎未和:「これからもずっとそうだといいな~~」
白塚 美弦:「そうだといいね~~」
叢崎未和:笑顔で頷き合う。
叢崎未和:それから、真剣になってしばらく彼女の顔をじっと見る。
叢崎未和:「…………」
叢崎未和:「くそ~~~~絶対エッチするぞって気持ちが再燃してきた」
叢崎未和:「絶対いけるって思ってたのに……!」
白塚 美弦:「……」
叢崎未和:ぼやきながら、下駄の音を響かせて歩く。
白塚 美弦:「適切な場所でなら」
叢崎未和:「ぉ」
白塚 美弦:「本当は心の準備、できてるから」
叢崎未和:「わ、わかった……」
叢崎未和:「……よーし、そうと決まれば今日明日は風呂だ! おふろ!」
白塚 美弦:「お風呂お風呂~」
叢崎未和:「夜は健康的に寝て、朝の5時とかにも入ろ。眠かったらそのままだらだらすんのもいっかな」
叢崎未和:「人居ない時間帯の大浴場が好きでさ~」
叢崎未和:「これ全人類好きだから」
叢崎未和:「意味ない事言っちゃったかも、なんちって」
白塚 美弦:「そういうもんなんだ」ニコニコと笑う
叢崎未和:「そういうもんよ。視覚的にきもちいーんだから」
叢崎未和:気の抜けた夜が更けていく。
叢崎未和:思えば、ずっと回り道をしていたように思う。それでも。その回り道は無駄なんてことは無くて。
叢崎未和:どうにも、幸せだ。
叢崎未和:ふと、桜花市の方角を見た。
叢崎未和:今、あそこに居るのかはわからないけれど。
叢崎未和:「(死んだってのとそう変わりない、ね)」
叢崎未和:そんな風に言うなよ。と思う。
叢崎未和:私にだって、美弦にだって。あなたと出会った意味を胸に抱いているのだから。
叢崎未和:ふ、と笑って、いつの間にか少し先を行っている彼女を追う。
叢崎未和:共に脅威と戦った仲間たちの事を思いながら。
叢崎未和:「ま、嬉しいって言ってくれたのは」
叢崎未和:「ちょっと、だいぶ嬉しかった、かな」
叢崎未和:口ずさんだそれが、誰に届くともなく風に溶けて消えた。



【ED/日室晴陽・月城霞】

日室 晴陽:日曜日。休日に浮かれる人々で賑わう駅前。
日室 晴陽:(気合い入れすぎたかな……)
日室 晴陽:服良し、髪良し、メイク良し。鏡の前で1時間は確認したから間違いないはず。
日室 晴陽:それだけ入念に準備し終えてなお、待ち合わせは早い時間で。
日室 晴陽:だからと言って家でおとなしくもしていられなくて結局出てきてしまった。
日室 晴陽:(まだ30分あるし……近くのお店で時間潰すとか……)
日室 晴陽:そう考えながら、待ち合わせの広場まで足を運ぶと。
月城霞:そこには既に、月城霞の姿があった。
月城霞:モノクロのブラウスにインナー、落ち着いた色のフレアスカート。
月城霞:待ち合わせ場所にひとり、いつものように背筋をぴんと伸ばして立ち。
月城霞:スマートフォンを弄るでもなく、ただじっと黙って雑踏を眺めている。
日室 晴陽:「え、あれ」
日室 晴陽:思わず一回スマホと彼女を見比べて。慌てて声をかける。
日室 晴陽:「霞ー!」
月城霞:その声に振り向く。
月城霞:「日室」
月城霞:「おはよう」
日室 晴陽:「おはよ……いや」
日室 晴陽:「めちゃ早いね」
月城霞:「そ……そうかしら」
月城霞:緊張したぎこちない面持ちには、近くで見ないと分からない程度だが、軽く化粧が施されている。
月城霞:「もしかしたら道が混んでいたり……途中で予想外のアクシデントに見舞われるかもしれないでしょう」
月城霞:「だから……念のために余裕を持ってと思って……」
月城霞:早速何か間違っただろうか、とやや不安な顔をする。
日室 晴陽:「ああいや、正直あたしも早すぎたかなーって思ったくらいだったから」
日室 晴陽:「先に居てちょいビックリしただけ」
日室 晴陽:「早く来てくれたのも、オシャレしてきてくれたのもすっごい嬉しい」
月城霞:「……だって……」
月城霞:照れたように目を逸らす。
月城霞:「なるべく早く来るのも、その……身だしなみを整えるのも……」
月城霞:「……礼儀、なのでしょう? だって……」
月城霞:「……デート……なのだから」
月城霞:口に出して実感したのか、頬に朱が差す。
日室 晴陽:「……そういうさ。デートだって思って準備してくれてんのが嬉しーの」
日室 晴陽:「霞がそういうの気にしてるのレアだしね。かわいいとこ見れてすごい嬉しい」
日室 晴陽:「や、語彙力な。嬉しいしか言えなくなってきたな」
日室 晴陽:こちらは普段の短いスカートではなくスキニージーンズと、デコルテの出るクロスラインのTシャツを合わせている。
月城霞:「……う……」
日室 晴陽:普段通りネイルもアクセもつけてはいるが、普段より露出は抑えめだ。
月城霞:顔を隠すように地面を見て。
月城霞:「……ええ。その……日室も……」
月城霞:何と言うべきか、しばらく言葉選びに迷って。
月城霞:「かわいい……かっこいい……ええと……」
月城霞:「……素敵、だと……思うわ」
日室 晴陽:「そう?良かった~」
日室 晴陽:露出に良い顔はしないだろうし、かといって自分らしくない服を着るのも違うしと、丸二晩は悩んだコーデ。
日室 晴陽:その上で誉め言葉を引き出せたことに達成感と安堵の滲んだ笑みを浮かべる。
日室 晴陽:「ええと、それじゃ」
日室 晴陽:「そろそろ行こっか。結構予定詰めちゃったし」
日室 晴陽:言いながら手を差し出す。
月城霞:「……」
月城霞:驚いたようにその手を見て、日室の顔と見比べる。
日室 晴陽:「……や、ほら」
月城霞:普段、訓練などの際に何の気無しに繋いだことは、幾度となくあるが。
日室 晴陽:「デート、だし」
月城霞:こうして意識したことは、当然、一度も。
月城霞:「……デートは……」
月城霞:「そう……そうね」
日室 晴陽:さりげないふうに差し出したものの、じわじわと頬が赤くなっていく。
月城霞:「手を……繋ぐ、ものよね……」
月城霞:おずおずと自らの手を差し出して、日室の手に触れる。
月城霞:ゆっくりと指を曲げ、恐る恐るその手を握る。
月城霞:触れ合った部分がひどく熱い。
日室 晴陽:指の先まで熱がこもっている。普段からの体質か、あるいは緊張か。
日室 晴陽:それでも、柔らかく霞の手を包んで。
日室 晴陽:「……あー、うん」
日室 晴陽:「じゃあ、その。出発ってことで」
月城霞:「…………ええ」
月城霞:機械のように頷いて。
月城霞:「行きましょうか……」
日室 晴陽:こちらもややぎこちない動きで向き直って。
日室 晴陽:隣を気にしながら歩き出す。
月城霞:半歩遅れて、手を引かれて歩き出す。
日室 晴陽:---
日室 晴陽:ゲームセンター
日室 晴陽:---
日室 晴陽:駅前傍のゲームセンター。普段なら付き合ってもらえなさそうなところを、と思ってのチョイスだ。
日室 晴陽:「こんな感じで色々ゲームが置いてある場所なんだけど……」
日室 晴陽:「とりあえず、なんか気になるやつある?」
月城霞:「……」慣れない音響と光の刺激に驚いている。
月城霞:「気になるもの……」辺りに視線を巡らせて。
月城霞:「……? ……あれ」一つの筐体に目を止める。
月城霞:ゾンビと戦うガンシューティングの類。
月城霞:「銃があるわ……」
月城霞:「所有許可を取っているのかな」
日室 晴陽:「……そっからかぁ」
日室 晴陽:ちょっとだけ遠い目をして。
日室 晴陽:「あれはね、ガワ似せてるだけだから」
日室 晴陽:「所有許可とかは要らんやつなんよ」
月城霞:「成程……模擬銃なのね」神妙に頷く。
月城霞:「では、あれを使ってシミュレーションを行うということ?」
日室 晴陽:「ん、そんなとこ。画面に映るゾンビを撃って点数稼ぐ感じ」
月城霞:「ゾンビ……うん……」分かっているのか分かっていないのか分からない顔で。
月城霞:「射撃シミュレーションなら何度もしたことはある」
月城霞:「やってみましょうか」
日室 晴陽:「おっけ。そんじゃ霞2Pね」
日室 晴陽:慣れた様子で硬貨を投入し、自身が1P用を取って難易度などを選択していく。
月城霞:「軽い……」銃型コントローラーを握って、興味深そうに見ている。
月城霞:「模擬銃としては軽すぎるのではないかしら……」
日室 晴陽:「まあリアリティ追及してないかんねー。お、そろそろ始まるよ」
月城霞:「……!」真剣そのものの様子で、画面内のゾンビを撃っていく。
月城霞:「リコイルが全く無い……どうなっているの……?」
日室 晴陽:(……鬼気迫ってんなー……)
日室 晴陽:画面も注意はしているものの、むしろ横の霞の様子が気になって仕方ない。
月城霞:「でもこのリロードはスムーズね。私も見習いたい」
月城霞:「しかし……このゾンビはどこからこんなに出てくるの?」
月城霞:「元が人間だったというのなら……相当な人口密集地でなければこんな人数は発生しないと思うのだけれど……」
日室 晴陽:「そこはまあ……ゲームだから……」
日室 晴陽:「や、密集地帯だったって設定なのかもだけど」
月城霞:「でもこれでは訓練に……あっ!?」
月城霞:構えたグレネードを投げ損ない、手元で自爆してHPが消し飛ぶ。
日室 晴陽:「あっ、ヤバ」
月城霞:「な、何故……!?」
月城霞:「まだピンを抜いただけで、レバーを外していなかったのに……!」
日室 晴陽:「あの、霞。これゲームで現実と違うから」
日室 晴陽:「現実のつもりでやるとミスるから」
月城霞:「そんな…………」
日室 晴陽:そうこうしている間にタイムリミットが来て。
日室 晴陽:リザルトが表示される。
日室 晴陽:「A-かー。初めてにしてはかなり良い感じじゃん」
月城霞:「…………」
月城霞:「納得いかない……」憮然とした表情。
日室 晴陽:「やー……ゲームってこう、現実感とか整合性とかまあまあ投げ捨ててるから」
月城霞:「次はもっと上手くやれるわ」
月城霞:「環境の変化に戸惑っただけよ」
日室 晴陽:「慣れてないとムズイのも確かだし……うん」
月城霞:普段あまり出てこない、負けず嫌いの面が顔を覗かせる。
日室 晴陽:「なら、もっかいやる?」
日室 晴陽:「それかレースゲーとか音ゲーやるのも良いし」
月城霞:「そんなに色々……」周囲の筐体を見回して
月城霞:「日室は全部分かるの?」
日室 晴陽:「まあ一通りは?やってないのもあるけど、チュートリアル見りゃ行けるっしょ」
月城霞:「やるわ」
月城霞:「次は足を引っ張ったりしないから。見ていて」
日室 晴陽:「おっけ。そんじゃあ……」
日室 晴陽:ゲームに付き合ってもらえるのは勿論。普段出ない素が見えてるのが嬉しくて。
日室 晴陽:へにゃりと破顔したまま
日室 晴陽:へにゃりと破顔したまま次のゲームへと向かう。
日室 晴陽:---
日室 晴陽:ショッピングモール
日室 晴陽:---
日室 晴陽:「やー、ずーっとやりたかったんだよね」
日室 晴陽:居並ぶ服屋のあちこちに目を巡らせながら。
日室 晴陽:「霞にコーデするやつ!腕が鳴るな~」
月城霞:「そ……そうだったの……?」
月城霞:戸惑いながら歩いている。
月城霞:「あの……日室、お手柔らかに……」
日室 晴陽:「うん!霞かわいいしスタイル良いし」
日室 晴陽:「背も161ってちょーど良い感じじゃん?かなり色々似合うと思ってたんだ」
日室 晴陽:「だいじょぶだいじょぶ、霞でも着れる感じのやつ選ぶからさ」
月城霞:「そう……?」金髪に染められてしまうのではないかと危惧している。
日室 晴陽:「あたしのセンスを信じなってー。よし、とりあえずあそこから入ろっか」
日室 晴陽:ちょうど目についたティーン向けブランドを指さして。
月城霞:「う、うん……分かった……」
月城霞:言われるがままに付いていく。
日室 晴陽:「んん……。丈短いのはアウトでー、露出控えめでー」
月城霞:「……」どきどきしながら、服を選ぶ日室を眺めている。
日室 晴陽:「あ、これ良いな。これと合わせるとして……よし、これ着てみ!」
日室 晴陽:幾つかの服を手に取り、ハンガーごと渡す。
月城霞:「わ、分かった……」それを真剣な顔で受け取って。
月城霞:「待っていて」試着室へと入っていく。
月城霞:ややあって、カーテンが開く。
日室 晴陽:「お、良いじゃん!」
日室 晴陽:選んだのは普段なら選ばなそうな明るいオレンジのニットワンピとジーンズ生地のジャケット。
日室 晴陽:夏よりは、これから来る秋向けの装いだ。
日室 晴陽:「普段モノクロでまとめがちだけど、明るめの色も行けるじゃんね」
月城霞:「そ……そう……?」
月城霞:自分ではよく分からないというように、鏡の前でくるりと回って。
月城霞:「日室は似合うと思う……?」
日室 晴陽:「バッチリ!似合ってるよ」
月城霞:「そう……」
月城霞:鏡に映った自分を見て、照れたように、はにかむように笑む。
月城霞:「うん」
月城霞:「……嬉しいな」
日室 晴陽:「……ん。霞が嬉しいならあたしも嬉しい」
月城霞:「このまま着て行こうかな」
月城霞:「あ……でも、他にもまだあるの?」
月城霞:「私に着せたい服……」
日室 晴陽:「あー……確かにまだ……」
日室 晴陽:「あ、じゃあさ。この後も2、3くらい試着して」
日室 晴陽:「それで霞が一番気に入ったやつ、プレゼントさせてくんない?」
月城霞:「プレゼントって……いや、い、いいよ……!」
月城霞:「自分で買うから。そこまでしてもらえないよ」
日室 晴陽:「や、違くて。あたしが霞に贈りたいの」
日室 晴陽:「デートなんだしさ。そういうのしたいなって」
月城霞:「……そ……そうなの……?」
月城霞:「そういうもの…………?」
日室 晴陽:「そういうもの」
日室 晴陽:うんうんともっともらしい顔で頷く。
月城霞:「そうなの……」つられて頷く。
月城霞:「……じゃあ、今度私からも……日室に何か贈るから」
月城霞:「私も日室にそうしたい」
日室 晴陽:「そう言ってもらえるなら、楽しみにしてよっかな」
日室 晴陽:「例のご褒美の件もあるしー」
月城霞:「む…………」
月城霞:それを聞いてぎくりと硬直して。
月城霞:「…………ええ…………」
月城霞:「ちゃんと……考えてあるから……」
日室 晴陽:「お、嬉しいなー。楽しみだなー」
日室 晴陽:「……実際ね」
日室 晴陽:「霞があたしのために色々考えてくれてるってのがもう嬉しいから」
日室 晴陽:「あんま気負ったりせんでいーかんね」
月城霞:「……」
月城霞:「……日室はそうやって……いつも私を気にしてくれるけど」
月城霞:「私は普段から……日室にもっと、日室自身の欲を出してほしい」
月城霞:「だって……私達、相棒でしょう」
月城霞:「私は君と……対等でいたいんだよ」
日室 晴陽:「……ん」
日室 晴陽:相棒と。まだ、そう呼んでもらえることが嬉しくて。
日室 晴陽:でも、相棒に収まらない気持ちを抱いたのはあたしの方だから。
日室 晴陽:相棒以上のことを望んでしまいそうで。
日室 晴陽:「出してるよ。じゅーぶん」
日室 晴陽:「出してるから今デートしてんだし」
日室 晴陽:そう笑って、繋ぎなおした手を揺らす。
月城霞:「…………」
月城霞:それでもまだ、納得できていない顔で。
月城霞:繋がれた手を、ほんの少しだけ強く握った。
月城霞:---
日室 晴陽:その後。ご飯を食べて、カラオケに寄って、映画も見て、スイーツも巡って。
日室 晴陽:丸一日を使い切るように遊びまわった。
日室 晴陽:そうしてすっかり日も暮れた、帰り道。
日室 晴陽:別れる前にと寄った公園のベンチに二人で腰かけて。
日室 晴陽:「ココアとコーヒー、どっちにする?」
月城霞:「……ココアを頂くわ」
月城霞:そう言って受け取る。味より糖分補給の観点。
日室 晴陽:「ん」 手渡して、自分も手元に残ったカフェオレの封を空ける。
日室 晴陽:「……どうだった?今日」
月城霞:「……」
月城霞:ココアを飲んで、息を吐く。
月城霞:「……楽しかったわ」
月城霞:「とても」
月城霞:「どうもありがとう、日室」
日室 晴陽:「いーえー。こっちこそ」
日室 晴陽:「霞が楽しめたんなら良かった」
月城霞:「……日室は?」
月城霞:「……その……退屈させてしまわなかったかしら 」
日室 晴陽:「まさか」
日室 晴陽:「ずっと楽しかったよ。マジで」
日室 晴陽:「ちょっとでも退屈してるように見えた?」
月城霞:「……」小さくかぶりを振る。
日室 晴陽:「でしょ?なんなら、霞より楽しんでた自信あるよ」
月城霞:「……よかった」安堵したように
日室 晴陽:だって、ずっとずっと憧れてたから。
月城霞:「……がっかりさせてしまうかと思って」
日室 晴陽:相棒として出かけるんじゃなくて。自分が冗談で言うだけじゃなくて。
日室 晴陽:霞と、デートがしたいって。思ってたんだから。
日室 晴陽:「あんねぇ。あたしだって霞ともう3年も相棒やってんだからさ」
日室 晴陽:「霞がどういう子かっていうの、そりゃあ全部とは言わないけど、まあまあ分かってるって」
日室 晴陽:「……その上で好きになったんだよ」
月城霞:「…………」
月城霞:「……私」
月城霞:「本当に、思ってなかった」
月城霞:「日室と対等で居たいと思って。必死だったから」
月城霞:「その日室が……そんな風に思ってくれてるなんて」
月城霞:「考えもしてなかった」
日室 晴陽:「……そりゃね」
月城霞:「……あの」
月城霞:「本当に……」
月城霞:ココアの缶を握って俯き
月城霞:「本当に……私のことが」
月城霞:「その……好き……なんだよね……」
日室 晴陽:「うん」
日室 晴陽:「何回でも言うよ。霞が好き」
日室 晴陽:「相棒として尊敬してるし、かっこいいなともかわいいなとも思ってるし」
日室 晴陽:「支えたいし守りたいし、出来れば隣に居たいし、ずっと笑っててほしい」
日室 晴陽:「霞がどれだけ信じられなくても。あたしにとっては全部ホントのことで」
日室 晴陽:「あたしの炎の芯になってる」
日室 晴陽:「……すごい話じゃんね」
日室 晴陽:ちょっとだけ冗談めかして笑って。
日室 晴陽:「霞ってば、太陽に火をつける女だよ。最強じゃん」
月城霞:「…………」
月城霞:すっかり陽も落ちたはずなのに、夕陽に照らされたように顔を染めて。
月城霞:「……最初は」
月城霞:「いつも日室がしてくれるように……どこかのお店で、食事を奢ろうかと思って」
月城霞:「でも……それじゃ足りないように思えて……かと言って、もっと高価な服やアクセサリーの類は、私はまるで詳しくないし……」
月城霞:「そもそも……金銭よりも贈れるものがあるのではないかと……思って……」
月城霞:「…………」
月城霞:「……それ、で」
月城霞:「考えたのだけど……」
月城霞:「……日室が……その」
月城霞:「……本当に……私のことを……好きだと言ってくれるなら……」
月城霞:おずおずと。
月城霞:隣に座る日室に向けて、ゆっくりと両腕を伸ばし、開く。
月城霞:「……その」
月城霞:「当初は……手を……繋ごうと思っていたのだけれど……」
月城霞:「それは、もう……してしまったから……」
月城霞:「だから、あの」
月城霞:消え入りそうな声で。
月城霞:「……ハグ……」
日室 晴陽:一回思考と体が両方固まって。
日室 晴陽:「…………あ、の」
日室 晴陽:「待って。待ってね」
日室 晴陽:「いや、めちゃくちゃ嬉しいしご褒美だよ。それはそうなんだけど」
日室 晴陽:「……あたし、霞のことが好きなんよ」
日室 晴陽:「キスとか、その。……それ以上のこともしたい方の、好きなの」
日室 晴陽:「その上で、あの」
日室 晴陽:「……ハグしていいの?」
月城霞:「……キ…………」
月城霞:今度はこちらが固まって。
月城霞:「…………」
月城霞:「……ひ」
月城霞:「日室が……言ったんだよ」
月城霞:「……私に、笑っててほしい。無理してほしくないって」
月城霞:「それ以上、の……ことは……今はまだ……分からないけど」
月城霞:「……少なくとも……今、これは」
月城霞:腕を広げたまま言う。
月城霞:「……嫌……じゃない……から…………」
日室 晴陽:「……もー」
日室 晴陽:そっと腕を回し、彼女を引き寄せる。
月城霞:「ひぅ」
月城霞:小さく声が漏れる。
日室 晴陽:「そんなん、もう。我慢できないじゃん……」
日室 晴陽:ぎゅう、と。強くなりすぎないように必死に自制しながら。霞を抱きしめる。
月城霞:「……」
月城霞:恐る恐る、その背を抱き締め返す。
日室 晴陽:「……実際、さあ」
日室 晴陽:「このデートってさ。霞が、あたしをそういう意味で好きになれるか確かめるってやつじゃん」
日室 晴陽:「あたしはさ。言った通り、めちゃ楽しかったし、嬉しかったし。……ますます霞のこと好きになったんだけど」
日室 晴陽:「霞は、どうだったの」
月城霞:「……」
月城霞:しばらく、考えるように黙り込み
月城霞:「……やっぱり、私には」
月城霞:「人を好きになることや……相棒と友人と恋人の違いは……まだ、よく……分からないけれど……」
月城霞:「……」
月城霞:「……でも」
月城霞:「でもね」
月城霞:「今は……」
月城霞:「……すごく、ドキドキしてる」
日室 晴陽:「……そっか」
日室 晴陽:それが、そのドキドキが。単なる緊張なのか、状況から来る錯覚なのか、それとも。
日室 晴陽:恋のはじまりのような、そういうものなのか。
日室 晴陽:きっとまだ霞自身にだって分からないんだろうけど。
日室 晴陽:「それでいーよ。今は」
日室 晴陽:「それだけで、じゅーぶんだよ」
日室 晴陽:ぎゅうぎゅうと胸を締め付ける思いを逃がすように。そう囁いた。



【ED/月城旭・月城霞】

月城 旭:……ひと月近くに渡って続いた“スネグラチカ”の事件を乗り越える中で、交わされた約束が幾つかあった。あるいはそれらは、元の日常へと帰る標としての。
月城 旭:たとえば、温泉旅行だったり。デートだったり。何らかのご褒美だったり。卵焼きだったり。
月城 旭:そしてまた、ここにもその一つとして
月城 旭:姉妹ふたり、初めて訪れる街を巡って、存分に羽を伸ばす数日があった。
月城 旭:その滞在最終日の夜。旅館の一室で、布団を並べて灯を消すところ。
月城 旭:明日午前の新幹線で、桜花市へと帰る予定になっている。
月城 旭:「……あっという間だったねえ」
月城霞:「……本当だね」
月城 旭:寝巻姿で、枕の上にうつぶせになるようにして。ふうと息を吐く。
月城霞:「来る前は、そんなに長く支部を離れるのか、と思ったのに」
月城霞:「出発したのがついさっきのことに感じる」
月城霞:その隣で、仰向けで天井の電灯を眺める。
月城 旭:「うん……」曖昧に頷きながら
月城 旭:ごろ、と身体を横にする。君の横顔を眺めるかたち。
月城 旭:「……ふふ。ちょっと新鮮かも」
月城 旭:「別々の部屋で寝るようになって、もうかなり経つでしょ」
月城 旭:緩み切った笑みを浮かべている。
月城霞:「そうね……」少し考えて。「新鮮というか。小さい頃はこうしていたのにね」
月城霞:「私、まだ覚えてるよ」
月城 旭:「……そうだね。私も覚えてる」
月城 旭:「あの頃は一緒の布団じゃないと嫌、って愚図ったりしてたのに……」
月城霞:「いつの話をしているのよ」照れたように言って
月城 旭:「今はもう、こんなにしっかりした子に育っちゃったんだなあ」
月城霞:「……そう思う?」
月城 旭:「……そう見えるように頑張ってるんでしょ?」
月城 旭:「お姉ちゃんとしては、そういう所も認めてあげたいなって思ったのさ」
月城霞:「……うん……」息を吐く。
月城霞:「……本当は」
月城霞:「夜中、一人でトイレに起きるのが怖くて……いつも姉さんについてきてもらってた」
月城霞:「あの頃から、あまり変わっていないのかも」
月城 旭:「……霞ちゃんは」
月城 旭:「私よりずっと多くのものを背負ってて」
月城 旭:「自分の中の弱い部分も、脆い部分も……ちゃんと分かってて」
月城 旭:「その上で、正しくあろうとしてる」
月城 旭:「この前の事件だって、ちゃんと最後までやり遂げられた」
月城 旭:「だから……ばっちり成長してるよ。大丈夫」
月城 旭:「お姉ちゃんが保証しよう」
月城霞:「……ありがとう、姉さん」
月城霞:「でも、やっぱり……皆のお陰よ」
月城霞:「日室と、白塚さんと、叢崎さんと……姉さん」
月城 旭:「……そうだねえ」
月城霞:「皆が居たから、最後まで頑張れた」
月城霞:「私一人じゃ、絶対に無理だったよ」
月城 旭:既に顔も思い出せないけれど。私達だけではやり遂げられなかった事は、はっきりと分かる。
月城 旭:その事が、どうにも寂しくなって。
月城 旭:……いいや。理由は、それだけじゃない。この胸に孔の空いたような感覚は。
月城 旭:秋口だというのに、虫の鳴く声ひとつないこの静かな夜も、きっと関係ない。
月城 旭:おもむろに寝返りを打つようにして、妹へと背を向ける。大窓の向こうに、昏い夜空が広がっている。
月城 旭:「……ねえ、霞ちゃん」
月城霞:「……?」そちらに目だけを向けて「どうしたの、姉さん」
月城 旭:「その……」言いにくそうに、いちど言葉を切ったあと。
月城 旭:「デート……したんだよね」
月城霞:「……」自分から明かしたこととはいえ、肉親と恋愛について話すことに、若干の気恥ずかしさを覚えながら。
月城霞:「……うん」
月城霞:「そうだよ」
月城 旭:「じゃあ……その」
月城 旭:「霞ちゃんは……」
月城 旭:ぬらりとした夜の熱気が頬を撫でる。
月城 旭:あの日、妹にその話を聞かされた時は、姉としてただ背中を押すだけだったけれど。
月城 旭:「恋人を作りたい、の……?」
月城 旭:もう顔も思い出せない相手。だけど、窮地で確かに妹の支えになってくれた人。彼女の相棒。
月城 旭:きっと、いや間違いなく素敵な人なのだろう。姉として、どう振る舞うべきかも理屈では分かっている。
月城 旭:だけど、自分の胸に空いた寂しさの、最も大きな理由がそれである事は
月城 旭:今この時となっては疑いようもないことだった。
月城霞:「……んん……」
月城霞:もぞもぞと、布団の中で足の先を動かして。
月城霞:「……日室にも言ったのだけれど」
月城霞:「そう言われると……やっぱり、まだ、よく分からない」
月城霞:「日室のことは、好ましく思っているし……」
月城霞:「デートは、楽しかった。これまでに知らなかった感覚を覚えたのも確かだけど……」
月城霞:「でも、やっぱり……それ以上どうしたいのか、自分でもよく分からないの」
月城 旭:「……そっか」
月城霞:「この気持ちが相棒や友人としてのものなのか、恋愛としてのものなのか……」
月城霞:「私自身、まだ……よく分からない」
月城 旭:「……。でもさ」
月城 旭:「その、日室さんに対する気持ちは、今はまだはっきりしてなくても」
月城 旭:「いつか……その子であれ、他の誰かであれ」
月城 旭:「良い人が見つかったら結婚したいって」
月城 旭:「そういう事は……」言いながら、何を"あたりまえ"の事を聞いているんだろうと思って。
月城 旭:「思ってる……よね。そりゃ」
月城霞:「……結、婚……」
月城霞:恋愛すら分からない自分には、その言葉はあまりにも縁遠いものに思えて。
月城霞:「……分からない、けれど……」
月城霞:「……どうしてそんなことを聞くの?」
月城 旭:「……それは」顔も見えていないのに、目を伏せる。
月城 旭:「私も、恋愛っていうのはよく分からなくて……」
月城 旭:「こんな体質だから、誰かとそんな風になるなんて……無理だろうって思うし」
月城 旭:「だから……そういう物があること自体を、意識しないようになってたのかな」
月城 旭:「一番身近な霞ちゃんが、デートするって言った事にびっくりしちゃったんだ」
月城 旭:「だって……デートしてみよう、って思うくらいには」
月城 旭:「そういうことに興味が湧いたん……でしょ」
月城霞:「……それは……!」
月城霞:「……その……」
月城霞:「……そう……とも、言える……の、かな……」
月城霞:ごにょごにょと言う。
月城 旭:「……」無言のまま、その肯定を受け取って。
月城 旭:沈黙が流れる。その間にも
月城 旭:吐き出すつもりだった筈の自分の気持ちが、どんどん膨らんで。
月城 旭:自分の振る舞いがどうしようもなくなっていきそうなのを感じる。
月城 旭:あるいはそれは、妹の前で弱音を晒したあの日に、強がりの箍が壊れてしまったのか。
月城 旭:「……私も、分からないんだ」
月城 旭:「知識としては、分かってるのに……分からないんだ」
月城 旭:「だって、それは」
月城 旭:「一緒に居ると気持ちがほっとして、楽しくて」
月城 旭:「ずっと傍に居たくて、離れたくなくて」
月城 旭:「その子の為なら、なんだってできると思えて……」
月城 旭:「結婚して……ずっと一緒にいるって誓いを立てて、それから」
月城 旭:「一緒に、家庭を作っていく……」
月城 旭:「……新しい、家族になる」
月城 旭:「そういう相手のこと……なんでしょ」
月城 旭:なんでだろう。止まらない。
月城 旭:言っちゃいけない事を言ってるって、分かってる。
月城 旭:こんな事を言っても、霞ちゃんを困らせるだけだって。
月城 旭:「……」ごめん、って言わなくちゃ。
月城 旭:「……ねえ」これ以上は、止まらなくちゃいけないのに。
月城 旭:「私は、”それ”にはなれないのかな」
月城 旭:そうして一度、零れ出してしまったものは、もう抑えられなくて。
月城 旭:「私が、どんなに君の事が大好きで、他の何より大切でも……」
月城 旭:「霞ちゃんは……いつか、私じゃない人と結ばれて」
月城 旭:「その人と一緒に、新しい家族を作っていくのかな」
月城 旭:振り返りたくない。今の私がどんな顔をしているのか、自分でも分からないから。
月城 旭:「私と、二人だけの家族じゃ……」
月城 旭:「君のしあわせには、やっぱり足りなかったのかな……」
月城 旭:幼い頃から、理解していた。普通の家族はこうじゃないって。
月城 旭:はじめに、恋をした二人が──お父さんとお母さんがいて。
月城 旭:二人が作る輪の中で、子供たちは育まれていくものなんだって。
月城 旭:分かっていた。不安だった。だからこそ、それを満たせるように、彼女に慕われる立派な「お姉ちゃん」であろうとした。
月城 旭:どうしようもないからこそ、胸の奥に封じていた気持ち。本当の本当の、最後の弱音。それを零してしまって
月城 旭:最も大切にしていたそれすらも──正しい「お姉ちゃん」である事すらも、今。失ってしまった。
月城霞:「……」身を起こし、姉の背中を見る。
月城霞:自分より少しだけ大きいはずの、けれど今は消えてしまいそうに頼りなく見える、その背中を。
月城霞:「……姉さんは」
月城霞:「私に……そういう相手が出来るのは、嫌?」
月城 旭:「私、は……」
月城 旭:「霞ちゃんが……霞ちゃんの人生の中で、私よりも大切な人を見つけてしまう事が怖い」
月城 旭:「もしも、霞ちゃんが……そういう、結婚したりする相手を求めていて」
月城 旭:「その相手が、私でも良いって言ってくれるなら」
月城 旭:「私は、君のためになんだってしてあげたい」
月城 旭:「キスだって……それ以上の事だって……私は……」
月城霞:「……」
月城霞:身を寄せ、同じ布団に入って、姉の頭と首筋を見る。丁度幼い頃にそうしていたように。
月城霞:「……私はね、姉さん」
月城 旭:「っ……」僅かに身を捩る。されるままに身を寄せ合う。
月城霞:「恋愛したり……結婚したりする相手を、求めてるわけじゃないよ」
月城霞:「それはまず、最初に相手のことが好きで……。それから……その相手とどうしたいか考えて、結果としてするものだと思う」
月城霞:「……ねえ、姉さん」
月城霞:「今、姉さんは幸せ?」
月城 旭:「幸せ、だよ」
月城 旭:「こんな体質で……この世界の、何もかもが不確かで」
月城 旭:「死にそうな戦いに、何度も巻き込まれて……明日の事は分からなくて、それでも」
月城 旭:「私は幸せだよ。霞ちゃんが、居てくれるから」
月城霞:「……私も」
月城霞:「姉さんが居て、幸せ」
月城霞:「姉さんのことが大好き。姉さんは、たった一人の家族で」
月城霞:「あたたかくて、優しくて。私を愛してくれて」
月城霞:「私も、姉さんの為なら、何でも出来る」
月城霞:「……」
月城 旭:「……ありがとう」
月城霞:「……でもね、姉さん。聞いて」
月城 旭:涙声混じりに、そう返す。背中がかすかに震えている。
月城霞:「私、姉さんと同じくらい、日室のことが好き」
月城霞:「二人とも、どちらが一番なんて無くて」
月城霞:「私にとっては、どちらも掛け替えのない人なの」
月城霞:「家族と友人と恋人、どれが一番大切かなんて問いに」
月城霞:「私は、何の意味も無いと思う」
月城 旭:「……」
月城霞:「私、姉さんのことが、大好き」
月城霞:「何が起きても、姉さんとずっと一緒に居る。それは絶対に変わらない」
月城霞:「……姉さんが、今、私と居て幸せだと言ってくれるなら」
月城霞:「それを壊すことも、失くすことも、絶対にしない」
月城霞:「……約束する。だから」
月城霞:「……私を。あなたの妹を。月城霞を、信じて」
月城 旭:……ああ。結局のところ、私の間違いはそれだったんだ。
月城 旭:感謝よりも、喜びよりも、情けないという気持ちが一番に来た。……彼女との絆を、信じ切れていなかった。
月城 旭:「……ごめんね」だから、はじめに出て来たのはその言葉で。
月城 旭:「信じるよ、信じる。……今度こそ、ちゃんと……」
月城 旭:「ありがとう、こんな……弱くて、情けなくて」
月城 旭:「霞ちゃんを困らせるようなこと、沢山言っちゃって」
月城 旭:「それでも、まだ……姉さんって呼んでくれて……」
月城 旭:「私の、家族でいてくれて」
月城 旭:「ありがとう……本当に」
月城 旭:「私は、幸せだ」
月城霞:「……大丈夫だよ」
月城霞:「ずぼらで、だらしなくて、忘れっぽくて」
月城霞:「私のことになると、時々弱気で、考えすぎて」
月城霞:「私、そういう姉さんの世話を焼くのが、好きなの」
月城霞:「そういう姉さんが、好き」
月城霞:「私」穏やかに笑って。
月城霞:「幸せだよ」
月城 旭:「っ、う……」嗚咽のような声が漏れて。
月城 旭:「……ねえ、霞ちゃん」
月城 旭:「今日は、このまま」
月城 旭:「一緒の布団で、寝てほしい……」
月城 旭:おさなごが甘えるように、そう口にする。
月城霞:「……しょうがない甘えんぼうだね」呆れたように、けれど少しだけ嬉しそうに。
月城霞:「お姉ちゃんは」
月城霞:そう言って、少しずれた布団を掛け直す。
月城 旭:まだ14年分の生きた記憶しか持たない旭にとって、あるいはそちらの姿もまた、素のようなものなのかもしれない。
月城 旭:「……ありがと」らしくなくか細い声で、そう言って。
月城 旭:布団の中で、そっと手を繋ぐ。二人の間にあるものを確かめるように。
月城 旭
月城 旭:……何度も、考えた事がある。
月城 旭:姉妹という繋がり、その本質は何なのだろうと。
月城 旭:定義としては、ただ血の繋がっているという話だ。だけど実感はない。
月城 旭:何より月城旭という人間は、いちど"死んで"いるのだから。
月城 旭:記憶にないほど幼い頃の私が、いくら妹と心を通わせていたのだとしても、今の私は何一つ覚えていないし
月城 旭:同じ様に血が繋がっていて、きっと優しくしてくれた両親の事だってそうだ。
月城 旭:……だけど。
月城 旭:今の月城旭が生まれた日。霞ちゃんが、私の事を姉さんと呼んでくれたのは
月城 旭:きっとそれまでの私が、あの子にとって慕われる「お姉ちゃん」であったからだ。
月城 旭:私にとって、幼い日の私は既に死んだようなものであるのだとしても
月城 旭:霞ちゃんにとっては、ずっと傍にいる、変わらないただ一人に見えているのだろう。
月城 旭:そう、たった一人の家族。……あの子の言葉を聞いて、そう思う事ができるようになった。
月城 旭:だから、私達が姉妹であるという事はきっと
月城 旭:記憶でも、思い出でも、ましてや血の繋がりでもなく
月城 旭:ただずっと一緒にいる事だ。
月城 旭:それだけが、この20年間……こんな私がたった一つ、間違えずに続けられた事なのだから。







Double Cross The 3rd edition
Replay Bloom Case02
『円環鎖すはスネグラチカ』
END