凍て付く夜のヴァルプルギス
メインログ/雑談ログ
Trailer
昨日と同じ今日。今日と同じ昨日。
繰り返し時を刻み、変わらないように見える世界。
その裏側で、戦い続ける者達がいる。
既に変貌した、陽の当たらぬ世界で。
狂い咲くのは徒花か、それとも――。
私立星宮学園。
多くの生徒が通うこの女子校では、この頃様々な奇怪な事件が頻発していた。
学園に不安が広がる中、校内に在籍するエージェント達は調査を開始する。
秋から冬に移りゆく季節。
紅に染まった葉もやがては散り。
再会、そして訪れる別れの予感に、彼女達の関係は動き出す。
雪降る冬の夜。
全てが闇に閉ざされんとする夜に。
篝火を灯すのは、誰か。
Double Cross The 3rd edition
Replay Bloom Case01
『凍て付く夜のヴァルプルギス』
ダブルクロス──それは裏切りを意味する言葉。
Index
Opening
【OP1】
【OP2】
【OP3】
【OP4】
Middle phase
【Middle1】
【Middle first half/綱井楪】
【Middle first half/早乙女六華】
【Middle first half/リウトペルガ・ウィンニール】
【Middle first half/銀波嵐】
【Middle first half/珊瑚夜】
【Middle2】
【Middle latter half/珊瑚夜】
【Middle latter half/綱井楪】
【Middle latter half/リウトペルガ・ウィンニール】
【Middle latter half/早乙女六華】
【Middle3】
【Extra scene】
Climax
【Climax/凍て付く夜のヴァルプルギス】
【Middle latter half/銀波嵐】
Ending
【Ending】
Preplay
GM:では選手が全員出揃いましたので
GM:第一回レズロワクロス 『リプレイ・ブルーム Case01:凍て付く夜のヴァルプルギス』始めていきましょう
銀波 嵐:やったー!
珊瑚夜:よろしくお願いします!
リウトペルガ・ウィンニール:よろしくお願いします!
綱井楪:よろしくお願いします~
GM:今回は条件の公平を期すため、PCにPCナンバーが存在していません
GM:というわけで、10DXを振って数値の低い人から順番に自己紹介をお願いします。
GM:10DX
DoubleCross : (10DX10) → 9[1,2,3,4,5,8,8,9,9,9] → 9
GM:グアアアア
綱井楪:10dx
DoubleCross : (10DX10) → 10[4,5,6,7,7,7,8,8,10,10]+10[5,10]+5[5] → 25
珊瑚夜:10dx
DoubleCross : (10DX10) → 9[2,3,4,5,6,6,8,8,8,9] → 9
銀波 嵐:10dx
DoubleCross : (10DX10) → 10[1,6,6,7,7,8,9,10,10,10]+6[3,5,6] → 16
リウトペルガ・ウィンニール:10dx
DoubleCross : (10DX10) → 10[1,4,5,6,6,8,8,8,9,10]+7[7] → 17
珊瑚夜:GM笑ってたら同値だった
GM:同値なので珊瑚さんともう一回ずつ振りましょう 低い方が1番手で
GM:10DX
DoubleCross : (10DX10) → 9[1,1,2,3,4,4,5,7,8,9] → 9
珊瑚夜:10dx
DoubleCross : (10DX10) → 9[2,5,5,5,5,7,7,7,8,9] → 9
GM:なんで?????
珊瑚夜:???
綱井楪:仲良しかよ
リウトペルガ・ウィンニール:おいおいもうカップル成立か?
GM:もう一回だ!!
珊瑚夜:10dx
DoubleCross : (10DX10) → 10[2,2,3,3,4,5,6,6,8,10]+7[7] → 17
GM:10DX
DoubleCross : (10DX10) → 10[2,3,3,4,4,5,6,7,9,10]+9[9] → 19
GM:俺の勝ち 何で負けたか明日までに考えといてください
珊瑚夜:程度の低い争い……
銀波 嵐:もう格付けが済んでしまったか……
GM:珊瑚 早乙女 銀波 リウトペルガ 綱井 の順に自己紹介をお願いします。
GM:他のPLは汚い野次を飛ばしてね
銀波 嵐:ぐへへ
珊瑚夜:美しい野次を飛ばしてあげましょう
綱井楪:脱げーッ
珊瑚夜:それでは自己紹介をいたしましょうかね
珊瑚夜:珊瑚夜(さんご・よる)18歳、高校3年生です。
珊瑚夜:財閥の一人娘。自信家です。自分の恵まれた境遇を誇り、おごります。
銀波 嵐:夕飯おごって
早乙女六華:今日のパチンコ代は?
珊瑚夜:あなたのためにならないことはできないわ
珊瑚夜:文武両道で大抵の事は何でも出来ますが、生活能力は皆無。
珊瑚夜:その為機械をオートメーション化してウィーンガシャンと酷使して生活しています。
珊瑚夜:小さい頃からチルドレンをやっているのですが、今のところコードネームは無し。
珊瑚夜:どんな言葉も私を型に嵌めることは出来ないので。
綱井楪:かわいいね
珊瑚夜:能力は、気持ちを伝える能力。
珊瑚夜:感情に呼応して、いい匂いがします。
早乙女六華:なんかエッチなこと言ってる~
珊瑚夜:エッチじゃないわよ……///
珊瑚夜:嬉しいと甘い匂いがし、大抵甘い香りを漂わせています。
珊瑚夜:いい女からいい匂いがすると嬉しいからです。
銀波 嵐:白米用意するからうなぎの気持ちになってくれ
珊瑚夜:うなぎの気持ちになるですよ~
珊瑚夜:自分の感情を他人に共有させる事も出来るのですが、戦闘時に戦意を高揚させるといった使い方以外は本人のポリシーに反するので使いません。
珊瑚夜:あとは普段から機械を使っているので機械を扱うのが得意です。
珊瑚夜:性能的には完全支援で、全員に控えめなバフをかける事が出来ます。
珊瑚夜:また金を持っているのでカンパニーを積んできたので、みんなにあると嬉しい効果があります。
珊瑚夜:具体的にはシーン終了時登場キャラクターはHP1D回復、またHP回復時さらにHPを1D回復。
珊瑚夜:1シナリオ1回ですが、シーン中の全員の達成値を+2。
珊瑚夜:情報収集時の判定ダイス+1個、達成値+2。
珊瑚夜:バックトラックのダイス+1D。
珊瑚夜:そういったちょっとお得な効果があるので、みんなで使ってくださいね。
早乙女六華:クソ強いじゃねーか!
リウトペルガ・ウィンニール:金ってすごいなあ
綱井楪:みんなで珊瑚さんを使います
銀波 嵐:金だ!金だァ!!
珊瑚夜:もう……変な意味じゃないでしょうね///
珊瑚夜:関係性的には、リウ先生とは元恋人になります。
リウトペルガ・ウィンニール:元カノで~す
珊瑚夜:銀波さんは凪ちゃんとなかよし(セックスの意味ではない)だったのですが……嵐ちゃんとは初ですね。
銀波 嵐:知らねー女だな、殺す
珊瑚夜:綱井さん、早乙女さんとも初ですので、全員食い散らかすのが楽しみです!
早乙女六華:へぇ……おもしれー女
珊瑚夜:そんな感じです!よろしくお願いします!
GM:OKよろしくお願いします!あとキャラシもお願いします!
珊瑚夜:すっかり忘れていたわ
珊瑚夜:
(キャラシート)
珊瑚夜:これがキャラシよ!
GM:ヘェ~ なかなかいいキャラシしてんジャン
GM:それでは二番目の早乙女さん自己紹介お願いします
早乙女六華:はい
珊瑚夜:一人二役……
早乙女六華:早乙女六華(さおとめ りっか)です。
早乙女六華:昔から人間に紛れて生活してきた、雪女のレネゲイドビーイングです。
綱井楪:見た目があざとい
珊瑚夜:本当に可愛くて動揺してしまった
リウトペルガ・ウィンニール:あっ脆弱性を突かれている人が
銀波 嵐:しっかり描いてきやがってよ!!
早乙女六華:レズロワはルール無用だろ
早乙女六華:年齢はだいたい500歳前後。
早乙女六華:常に無表情で、何を考えているか分かりづらい女です。
早乙女六華:極度の寒がりで常に厚着をしており、人の体温を求めてよく寄ってきます。
早乙女六華:皆の体温を分けてもらうね
珊瑚夜:抱きしめてそのまま抱くわね
綱井楪:寒がりの雪女はいそうでいない感
早乙女六華:性能はプラズマカノンをシーン化してぶち込みます。
リウトペルガ・ウィンニール:かわいいプロフィールから破滅的な攻撃性能
早乙女六華:関係性的には、嵐さんのバディ。
銀波 嵐:おう。
早乙女六華:これはもうルート確定ですね
珊瑚夜:はやいはやい
早乙女六華:綱井さんとは幼い頃に出会ったことがあり、
早乙女六華:人生を歪めたようなのでここもルート確定ですね
珊瑚夜:全員抱く気か?
綱井楪:刺殺エンドかな?
早乙女六華:リウトペルガさんとは古くからの知り合いで、
リウトペルガ・ウィンニール:長生きだと知り合いも増えるね~
早乙女六華:知り合いということは昔夫婦として子供を作って育てていたということだと思うのでルート確定ですね
銀波 嵐:ごめん、今なんて??
珊瑚夜:どういうこと?
リウトペルガ・ウィンニール:雪女特有の知り合い観
綱井楪:雪女ってそうなんだ
早乙女六華:珊瑚さんとは唯一初対面ですが、
早乙女六華:つまりこれから運命的な出会いを果たすということなのでルート確定ですね
珊瑚夜:へえ……面白い女ね
早乙女六華:そういう感じです。よろしくお願いします。
早乙女六華:
(キャラシート)
GM:よろしくお願いします。
銀波 嵐:よろしくお願いします。
GM:では次に銀波さん、自己紹介お願いします。
銀波 嵐:銀波 凪(ぎんなみ なぎ)、UGNチルドレン(16)
銀波 嵐:の、戦闘用人格とされる銀波 嵐(らん)です。
銀波 嵐:よろしく。
早乙女六華:戦闘用人格ですって~?
珊瑚夜:野蛮じゃないかしら~?
銀波 嵐:そうなのです。
早乙女六華:今は戦闘中じゃなくってよ
銀波 嵐:姉(?)である凪は、優秀なエージェントとしてブイブイ言わせていたのですが、ある日任務で重症を負ってしまいます。
綱井楪:なんてこと
リウトペルガ・ウィンニール:そうなんだよね……
銀波 嵐:意識不明で生死の境をさまよった彼女ですが、目覚めたのは何故か嵐の方でした。
珊瑚夜:凪ちゃん……
銀波 嵐:嵐は生まれたてなのかどうか知らないですが、事件以前の記憶がありません。
銀波 嵐:ですが夢で凪と接触できたりすることがあるらしく、いくつか事前知識を仕込まれてたりします。
銀波 嵐:まず珊瑚夜、こいつは敵です、そう聞かされました、なので殺します。
珊瑚夜:おかしいわ……仲良かったはずなのに
早乙女六華:いいぞ~殺せ~
銀波 嵐:次に早乙女六華、バディです、ムカつくのでそのうち殺します。
早乙女六華:????????
珊瑚夜:いいわ~殺せ~
綱井楪:いいぞ~殺せ~
銀波 嵐:綱井楪、知らない女です、殺します。
早乙女六華:そうだ~殺せ殺せ~
珊瑚夜:そうよ~殺せ殺せ~
綱井楪:人類を滅ぼす気か??
銀波 嵐:リウトペルガ・ウィンニール、自分に借りがあるので死ぬまでこき使います。
リウトペルガ・ウィンニール:殺されても仕方ないことをしてしまったのかも知れないね……
リウトペルガ・ウィンニール:いや何があったのかPLは全く知らないんですが
早乙女六華:いや殺せよ
珊瑚夜:そこは殺してよ
綱井楪:ちゃんと殺れ
銀波 嵐:なにこの一斉の殺せコール
リウトペルガ・ウィンニール:コロセウムか?
銀波 嵐:ご覧の通り結構凶暴で、他人を基本的に敵だと思っています。
銀波 嵐:信じられるのは凪だけ。
銀波 嵐:いつかこの身体を凪に返すまで自分が守らねば……と考えています。
早乙女六華:返す前にメチャメチャにしてやろ
珊瑚夜:キズモノにしちゃお
綱井楪:敵じゃん
銀波 嵐:こわ
銀波 嵐:性能としてはモルフェウス、ブラックドッグ、ノイマンのトライ。
銀波 嵐:マルチウエポンを軸にした典型的な脳筋です。
銀波 嵐:鉄を含んだ黒砂を生成し、それをブレードに転じてぶんぶん振り回します。
銀波 嵐:貴様全員覚悟することだな、以上です、よろしくお願いします!
銀波 嵐:キャラシートは
銀波 嵐:
(キャラシート)
GM:OK!よろしくお願いします!
GM:それではお次はリウトペルガさんお願いします。
リウトペルガ・ウィンニール:リウトペルガ・ウィンニール、年齢不詳の非常勤講師です。
リウトペルガ・ウィンニール:担当科目は国語。「リウ先生」って呼んでね!
珊瑚夜:リウ先生~!
リウトペルガ・ウィンニール:非常勤とは言っても生徒を指導に当たることはあまりなく、学内の奥をふらふらしていることが多いです。
リウトペルガ・ウィンニール:奔放で子供っぽい性格といい、十代前半~半ばくらいにしか見えない童顔と矮躯といい、生徒の間では本当に教師なのか疑われています。
リウトペルガ・ウィンニール:その正体は古代種のオーヴァード。千年以上前の欧州に生まれ、魔女として諸国を放浪していました。
早乙女六華:年上じゃん
リウトペルガ・ウィンニール:日本に来たのは四十年くらい前。後年結成されたUGNに接触を受け、協力者として活動するようになりました。
綱井楪:国語教師のリウトペルガ先生なんだよな……
リウトペルガ・ウィンニール:そのレネゲイドは肉体だけでなく精神的にも若い『かたち』を保とうとする性質を持っており、千年生きてるのに子供っぽいのはその作用によるもの。
リウトペルガ・ウィンニール:とはいえ千年分の経験や記憶が消える訳ではないので、その辺の齟齬からちょっと不安定になることもあります。
リウトペルガ・ウィンニール:能力としては古い魔術の術式で持ってレネゲイドを操ります。性能的にはバフとデバフ。
リウトペルガ・ウィンニール:攻撃力は基本的にありませんがナーブジャックを持っており、フラットシフトと蝕命の魔眼で二回踏み倒しができます。
早乙女六華:こわ……
リウトペルガ・ウィンニール:なんかちょっと変な性能になった感があって若干不安なんですが、まあデータ面がガバでもレズセックスに支障はないので大丈夫でしょう
綱井楪:魔女だ
珊瑚夜:なにいってんだ?
早乙女六華:ナーブジャックセックスってわけね
リウトペルガ・ウィンニール:関係性的には先に説明があった通り、早乙女さんとは古い知り合いで、珊瑚さんとは元恋人同士。
リウトペルガ・ウィンニール:銀波さんは深い借りがある相手であり、今は同居関係にあります
リウトペルガ・ウィンニール:そして綱井さんが部長を務めるオカ研の(書類上の)顧問でもあります。
珊瑚夜:全員と関係性があるのね 卑しい古代種だわ……
リウトペルガ・ウィンニール:かつてどんな知り合いだったのか・恋人として何をやっていたのか
リウトペルガ・ウィンニール:同居中何が起こってしまうのか・部室で何が起こってしまうのか
リウトペルガ・ウィンニール:その辺は未だ未知数となっています
リウトペルガ・ウィンニール:そんな感じ! よろしくお願いします!
銀波 嵐:わからないことだらけだ
GM:よろしくお願いします!キャラシもどうぞ!
リウトペルガ・ウィンニール:あっキャラシ
リウトペルガ・ウィンニール:
(キャラシート)
GM:OK!
GM:ではラスト、綱井さんお願いします。
綱井楪:はーい
綱井楪:
(キャラシート)
綱井楪:綱井楪(つない ゆずりは)。舞台となる学校に潜入中のUGNチルドレンです。学年は三年。
綱井楪:部員一名のオカルト研究部の部長をしています。その立場を元に七不思議や都市伝説の体を取って伝わるR案件への対処を行う役どころですが、
綱井楪:何しろ部員が一名だし顧問がリウトペルガ先生だし、あと本人も掴みどころのない雰囲気・言動をしているので、大多数の人間からは謎多き存在と見られています。
早乙女六華:ミステリアス女
綱井楪:ただし接触を試みた一部のスタッフの報告によると、意外と距離感が近いとのこと。
珊瑚夜:スタッフ……?
銀波 嵐:探検隊かな
綱井楪:ぼんやりしつつ濃厚接触の間合いに踏み込む動きをしていこうと思っています。
早乙女六華:おもしれーじゃん
綱井楪:先述の通りリウトペルガ先生には部活の顧問を務めていただいていますが、他に
綱井楪:まず早乙女さんとは幼少時に会ったことがあるようです。今回が久々の再会になるのかな。
早乙女六華:人生歪めちゃったかな(笑)
珊瑚夜:軽い気持ちで人の人生を歪めないで
綱井楪:多少なり影響は受けてるかもしれない
リウトペルガ・ウィンニール:定命なる者の人生歪めは長命種の特権
綱井楪:また、銀波凪さんとは後輩兼友人としてなかよし(セックスの意味)でしたが
銀波 嵐:なかよし
早乙女六華:なかよし。
綱井楪:こちらは久々に会ったら不良になっているし知らないとか言われるし、結構ショッキングです。
銀波 嵐:殺す。
早乙女六華:いいぞ~殺せ~
綱井楪:思い出させてあげるしかないようね わたしたちの絆を
珊瑚夜:身体で?
綱井楪:オーヴァードは人と繋がることが大事だから
綱井楪:珊瑚さんのことは……どうだろう 同学年なので顔見知りくらいではあるかもしれないし、ぜんぜん知らないかも
綱井楪:そんな感じです。
綱井楪:性能はRCサブアタッカー兼カバー役。
綱井楪:当たると毒状態になるサイレンを固定値でばらまき、固定値で回避し、浮いた侵蝕率を活かしてカバーに入ろうという算段です。
GM:最悪の女
綱井楪:以上!よろしくね!
GM:OK!よろしくお願いします!
GM:それでは全員の自己紹介が終わったところで
GM:OPを始める前に、今回のセッションの特殊ルールをご説明します。
珊瑚夜:特殊ルール???
綱井楪:なんだいそれは
銀波 嵐:なんだなんだ
リウトペルガ・ウィンニール:一体どんなルールがあるってんだ
【ロイス取得特殊ルール】
このセッションでは開始時に固定ロイスを1つしか保持することが出来ない。(Dロイスを取得している場合、Dロイスのみとなる)
新たにロイスの取得が可能なのは、ミドルフェイズのメインシーンのみ。
また、シーン終了時にロイスを取得することは出来ない。
ロイスを取得する際、P/N感情のどちらかを秘匿しておくことが可能。この場合、原則ED終了までに自らのタイミングで公開することとする。
クライマックスシーンではジャーム化・『とどめを刺される』は発生しないが、侵蝕率が200%を越える、または全てのロイスを失うと、その時点で戦闘不能となる。
GM:お前らの今持ってるそのロイス……捨てな!!
綱井楪:何だとお……
珊瑚夜:な……なんだって!?ロイスが……!!
銀波 嵐:ポイ!
綱井楪:埋めなきゃって思ってさっき頑張ったのよ!
リウトペルガ・ウィンニール:手札を捨てるぜ そもそも入れるの忘れてたんですが
GM:お互いに仲良くしてロイスを築いていってもらうぜ
GM:そしてシーン終了時に何となくで取ることも出来ません
GM:そして特殊ルールはこれだけではござらん
銀波 嵐:えぇ~~~~?!
珊瑚夜:ま……まだあるっていうの!?
綱井楪:覚えきれないよ!
【シーン権の行使】
OP・ミドルシーン前半・後半で1回ずつ、計3回の『シーン権』が与えられる。
シーン権を持つPCは、シーンに登場させたい他PCを指名することが出来る。0人から全員まで、人数は自由。
OPの指名のみ、GMに対して秘話で宣言する。
ミドルシーンに登場しないPCは、その間サブシーンを行う。
持ち時間はそれぞれOP30分、ミドルシーン75分。
また、
・条件A
最も多くの他PCからロイスを取得されているPC
・条件B
1人のPCから3つ以上のロイスを取得されているPC
以上の条件A、Bどちらかに当てはまるPCは、ミドルシーン後半の終了後に、追加でシーン権を獲得することが出来る。ただしこのシーンに登場指名できる他PCは、Aの場合『まだ自分にロイスを取得していないPC(存在しない場合は全員登場する)』、Bの場合『条件を満たした相手PC』のみとなる。
GM:堕としたい相手を指名しな
珊瑚夜:ひ、ひえ~~
綱井楪:んっ 条件Bはどういうことですか?
GM:あ、そうそう
GM:一人の相手に複数のロイスを取ることも可能です。
珊瑚夜:同じ人物に複数個……ロイスがとれるってこと!?
綱井楪:何ぃ~~~~~
銀波 嵐:どゆこと~~~
GM:一人を確実に落として死ぬほどイチャつくか、全員を落としにいくのか
GM:戦略はキミ次第だ
リウトペルガ・ウィンニール:メチャクチャになった感情をメチャクチャなままに表現することが可能って訳ね
珊瑚夜:ふ~ん まあ人間の感情そんな簡単にめちゃくちゃにならないでしょ
リウトペルガ・ウィンニール:前半・後半で一回ずつっていうのはどういう?
珊瑚夜:自分のメインシーンが2回もらえるってことかな?
GM:これはミドルシーン前半を全員1回ずつ回した後に、トリガーシーンを挟み、後半でも同じように1回ずつ回すという意味ですね
GM:そういうこと!
リウトペルガ・ウィンニール:なるほどなるほど
綱井楪:ふんふん
リウトペルガ・ウィンニール:ビガミでいう2サイクルなんだ
GM:なおミドル開始前に全員集合シーンを設けてあります。
珊瑚夜:やったぜ!
GM:そこでシナリオに関する指令を渡すので、OPでは皆さんまだ事件と関係なくいつもの調子で過ごしている様を描写していただければと思います。
銀波 嵐:え~~~めちゃくちゃ迷う
GM:OPの時点で既に呼び出しが掛かっていることにしても大丈夫です。
綱井楪:指令……
珊瑚夜:なるほど~
リウトペルガ・ウィンニール:指令か~
GM:OPだけ秘話にしていただくのは、本来はA→B B→Aで希望を出すはずが、先に出されたのを見てじゃあそこは確保できたから自分は他の相手を指名しよう~という動きを防ぐためです。
珊瑚夜:なるほど……
綱井楪:被った場合はどうなるんです?
GM:その場合は普通にまとめて1シーンになります OPだしね
綱井楪:了解しました
GM:ちなみに0人指名で全力モノローグを行うことも可能です
珊瑚夜:なるほど なるほどしか言ってない なるほどbot
GM:既に関係性ある相手とOPをやって強固にするか、まだ知らない相手を選んで出会いを形成するか よく考えてね
GM:誰とどんなシーンがやりたいか決まった人からGMに秘話で送ってください。
GM:希望が出揃いました
銀波 嵐:ドキドキするな……
珊瑚夜:どうなるんだろう……
GM:結果はこちらです
GM:
A:リウ>綱井 部室で会話
B:綱井>珊瑚 部室で会話 ほか
C:珊瑚>リウ 珊瑚家から喫茶店で会話
D:銀波>早乙女 任務帰りに報告、解散
早乙女>銀波 同上
綱井楪:ほほう
銀波 嵐:ははーん
珊瑚夜:楽しくなって来たわ
リウトペルガ・ウィンニール:結構予想と違う流れだったな
GM:順番をダイスで決めたいと思います
GM:choice[A,B,C,D]
DoubleCross : (CHOICE[A,B,C,D]) → C
GM:choice[A,B,D]
DoubleCross : (CHOICE[A,B,D]) → D
GM:choice[A,B]
DoubleCross : (CHOICE[A,B]) → B
GM:
珊瑚>リウ
銀波>早乙女
綱井>珊瑚
リウ>綱井
GM:この順番で決定しました。
珊瑚夜:わかりました
綱井楪:ふむふむ
リウトペルガ・ウィンニール:なるほど
GM:では開戦しましょう
銀波 嵐:うす
珊瑚夜:よろしくお願いします
綱井楪:よろしくお願いします!
リウトペルガ・ウィンニール:よろしくお願いします!
銀波 嵐:対戦よろしくお願いします
【OP1】
GM:OP1、シーンPCは珊瑚夜、リウトペルガ・ウィンニール
GM:シーンの舞台描写は基本的に指名側の裁量にお任せします。
珊瑚夜:わかりました
GM:それではお二人は登場侵蝕をどうぞ。
珊瑚夜:1d10+35
DoubleCross : (1D10+35) → 10[10]+35 → 45
リウトペルガ・ウィンニール:リウトペルガ・ウィンニールの侵蝕率を1d10(→ 7)増加 (32 → 39)
珊瑚夜:ぴぴぴぴ、ぴぴぴぴ、
珊瑚夜:電子音が鳴る。
珊瑚夜:「ん……」
珊瑚夜:ベッドの中でもぞもぞと寝返りをうつ。
珊瑚夜:あと5分、を3回くらい繰り返せるように設定された起床時刻は、そのタイムリミットが訪れていた。
珊瑚夜:『よるさまー おきてください』
珊瑚夜:目覚まし時計を抱えたちびロボットが珊瑚夜の周りをきゅるきゅると走り回る。
珊瑚夜:「わかった……おきる……」
珊瑚夜:止めやすいように目覚まし時計を差し出したちびロボットの頭を撫でると、アラームを止める。
珊瑚夜:『よるさままた服ぬぎっぱなしですよー』『ごはんできますよー』『おようふく用意してますよー』
珊瑚夜:忙しくきゅるきゅると動き回るちびロボットたちをほほえましく見つめると、食卓につく。
珊瑚夜:『きょうは リウトペルガに あうのよね?』
珊瑚夜:テーブルの上の自分の形を模したロボットに話しかけられ、苦笑する。
珊瑚夜:「ええ……。……ごめんなさいね」
珊瑚夜:そして、ちらりとその傍に置かれたもうひとつのロボットを見る。
珊瑚夜:『……』
珊瑚夜:かつての恋人、リウトペルガを模したロボット。
珊瑚夜:今は動くことは無い。
珊瑚夜:「……この子がまた、動いて……ひとりぼっちじゃなくなる日が……」
珊瑚夜:そんな感傷的な考えを頭を振って消し去る。
珊瑚夜:ロボットの用意したトーストと目玉焼きを食べると、家を出て、待ち合わせの喫茶店へと向かった。
珊瑚夜:喫茶店へ足を踏み入れると、相手を探しきょろきょろとあたりを見渡す。
リウトペルガ・ウィンニール:その姿を認め、席の奥から大きく手を振る。
珊瑚夜:「リウトペルガ!」
珊瑚夜:亜麻色の長髪をなびかせ、席へつく。
珊瑚夜:「待たせてしまったかしら」
リウトペルガ・ウィンニール:「や、夜くん!」
リウトペルガ・ウィンニール:「おはよう。君と会うたびに思うけど、夜なのにおはようって不思議な気分だねぇ」
珊瑚夜:「ふふ……そうね。私は夜に起きることも多いから、それなりに馴染みもあるけどね」
珊瑚夜:テーブルのうえのメニューを掴むと、きゅるきゅると珊瑚へ渡す。
リウトペルガ・ウィンニール:皿の上へ乗ったケーキにフォークを刺す。脳がこどもなので朝からケーキだ!
珊瑚夜:「何にしようかしら……おいしい?ケーキ」
リウトペルガ・ウィンニール:「おいしいとも! まあ前に君に連れてってもらったとこのがおいしかったけどねぇ」
珊瑚夜:「……前はそれほど、甘いものに興味はなかったけれど。ずいぶん詳しくなったのよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「近場の喫茶店で出る分としちゃ、これは実に、じゅーぶん及第点だよ」
珊瑚夜:「ならよかったわ。じゃあ私もケーキにしようかしら……チーズケーキとフォンダショコラ、ショートケーキにブラックコーヒー、お願いします」
珊瑚夜:手を挙げて店員に注文を告げる。
リウトペルガ・ウィンニール:「そうそう、夜君、会ったばっかりの頃は全然ケーキとか食べなかったんだっけ!」
珊瑚夜:「そうね……からいものが好きだったし。なんだか……恥ずかしかったから」
リウトペルガ・ウィンニール:「甘いものに興味がない人間なんているんだなって不思議に思ったものさ」
珊瑚夜:「しっかりしないと、って思ってたから……そういう、女の子っぽいものは……。でも、食わず嫌いだったのよね」
珊瑚夜:「あなたのおかげで甘いものが美味しいということを知れたのよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「甘味が好きだったらしっかりしてないっていうのは偏見だね。ボクなんてこんなにしっかりしているのに!」
リウトペルガ・ウィンニール:「そうかい? ……」
リウトペルガ・ウィンニール:「……それで、今日はどうしたんだい? 朝早くに呼び出したりして」
珊瑚夜:「……ねえ、リウトペルガ」
珊瑚夜:「私たちの関係に、区切りはついたけれど……」
珊瑚夜:「あなたにとって……想いは簡単に消えてしまうものなのかしら」
リウトペルガ・ウィンニール:「うん?」
珊瑚夜:「私を愛してくれた気持ちは、もう捨ててしまったのかしら」
リウトペルガ・ウィンニール:「まさか!」
リウトペルガ・ウィンニール:「今でも夜君のことは好きだよ。そういうってことは、ヨリを戻したいってことかい?」
珊瑚夜:「……どうかしらね」
珊瑚夜:「またあなたを苦しめてしまうのは怖いし……」
珊瑚夜:「……私の気持ちの方が大きいと苦しむことになるのもわかってる」
珊瑚夜:机の上、ひとりぼっちで微笑む自分を模した機械を思い浮かべる。
珊瑚夜:「それでも想いって簡単には捨てられないのよね。……あなたはよりを戻したいとは思わないの?」
リウトペルガ・ウィンニール:「ふうん? ……」
リウトペルガ・ウィンニール:「よりを戻すのは構わないよ。言った通り、ボクは君のこと好きだしねぇ」
リウトペルガ・ウィンニール:「でも、今のまま戻してもまた君が苦しむんだろう? じゃあなしさ」
珊瑚夜:「ふふ、私の心配なんてしないでよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「『若い癖に早起は、心に煩悶のある證據ぢゃ』ってねぇ」
珊瑚夜:「私の心配をして諦められる程度の想いで私を手に入れようとしないで」
リウトペルガ・ウィンニール:「さてさて。そうなると中々、ヨリを戻すのは先になりそうだねぇ」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクにその気持ちを抱く権能があるんだかどうだか? 自分でも分かりはしないんだからね」
珊瑚夜:「……あなたのためだったら、私はどれだけ傷つこうと構わなかったのよ」笑顔でそう言うと、ふわりと甘い香りが漂った。
GM:シーン終了。
【OP2】
GM:シーンPCは銀波嵐、早乙女六華
GM:登場侵蝕をどうぞ。
銀波 嵐:1d10+35
DoubleCross : (1D10+35) → 6[6]+35 → 41
早乙女六華:早乙女六華の侵蝕率を1D10(→ 2)増加 (47 → 49)
エージェント:「……確かに確認した」
エージェント:UGN支部の一室。エージェントが君達の報告書を見て頷く。
エージェント:「“燐灰の爪”、“リジェノイドム”。ご苦労だった」
エージェント:「次の任務まで待機に入ってくれ」
銀波 嵐:小さく会釈し、踵を返す。ここにはもう用はないと言わんばかり。
銀波 嵐:そのまま扉を出、大股にロッカールームへ。
銀波 嵐:乱暴に己のロッカーへと鍵をねじ込み、こう思う。
銀波 嵐:「(ケチな任務だった)」
銀波 嵐:「(あれくらいならオレ一人でもなんとかなっただろう……)」
銀波 嵐:銀波嵐、UGNのエージェント。
銀波 嵐:臙脂色のジャケット、耳にはゴツメのピアスといったカジュアルなパンク、スタイル。
銀波 嵐:荒んだ印象を与える瞳、髪は自分で切っているのか、すこしまばらに飛び跳ねる。
銀波 嵐:愛用の登山用リュックへと、外したグローブを詰める。
銀波 嵐:この中には嵐の所有する全てが入っている。
銀波 嵐:嵐は持ちものが少ない。なぜならこの身体は姉である凪へと返し、いずれこの世界を去らねばならないと考えているからだ。
早乙女六華:少し遅れて、一人の少女がとてとてと小さな歩幅でロッカールームに入ってくる。
銀波 嵐:そこへ視線を向けることはない、意図的にだ。
銀波 嵐:黙々と帰り支度を進める。
早乙女六華:早乙女六華。今回君と同じ任務についていた、今のところ君のバディとされている少女。
早乙女六華:小柄の痩身。だがまだ秋だというのに着込んだ厚手の防寒具と、癖のついた豊かな黒髪がシルエットを丸っこくしている。
早乙女六華:「待て、嵐」
早乙女六華:「一緒に帰ろう」
銀波 嵐:「……」
UGN職員:「ひっ……!?誰あなた!?何ですか!?」
UGN職員:六華に抱き着かれ、困惑の悲鳴を上げる。
早乙女六華:「……?」
銀波 嵐:「ハァ……」深い深い溜息。
早乙女六華:「嵐……」
早乙女六華:「じゃない……?」首を傾げる。
銀波 嵐:「俺はこっちだ、ミス・バズーカ」
銀波 嵐:「あと一緒には帰らない」
早乙女六華:「ん……」
早乙女六華:「すまない、間違えた」
早乙女六華:無表情のまま職員に頭を下げ。
早乙女六華:嵐のもとに走ってくる(やたら遅い)。
銀波 嵐:「前にも言っただろう、オタクは仕事仲間としてはそこそこ優秀だが」
銀波 嵐:「プライベートで関わる気など…」
銀波 嵐:「聞いてんのかこいつ?」
早乙女六華:「嵐」
早乙女六華:「一緒に帰ろう」
早乙女六華:背伸びするように君にくっ付く。
銀波 嵐:「……残念ながら、俺にはリピートボタンは無ェ」
銀波 嵐:早乙女を払いのけようと
銀波 嵐:「……」
銀波 嵐:「なんだこいつこの力?!」
早乙女六華:ぎりぎりとしがみついたまま離れない。
銀波 嵐:「おいテメェ、これ引っ剥がすの手伝え!」職員へ
UGN職員:既にどこかへと逃げ去っている。
銀波 嵐:「んーーなーーーれーーーろォーーー」
銀波 嵐:ぎりぎりぎり
早乙女六華:「もう10月だ……」
早乙女六華:「一人で帰るのは……寒い……」
銀波 嵐:「……ハァ」げっそりとした顔
銀波 嵐:「(……いい、無視だ無視)」
銀波 嵐:「(ガキと一緒だ、飽きりゃあどっか行く)」
早乙女六華:「お前も寒そうだ」首元に氷のような手が触れる。
銀波 嵐:「ッッンヒャア!!!」
銀波 嵐:「おま、ま、ま!!!」
早乙女六華:「ふふ」
早乙女六華:「今のはわざとだ」
銀波 嵐:「(ク、クソ……クソクソ)」
銀波 嵐:「(この俺が……他人にここまで……)」
銀波 嵐:背中に早乙女をへばりつかせたままに歩き出す、当然リュックは抱く形に。
早乙女六華:無表情のまま、半ば引きずられるようにして歩き出す。
銀波 嵐:「ばかみてぇだ……」
銀波 嵐:今日は何処へ泊まろう、と考える。
銀波 嵐:保護者であるとある教師の家を下宿に持つ身ではあるが。
銀波 嵐:なんとなく居心地が悪い。
早乙女六華:「嵐」
銀波 嵐:割引券があったはずだ、駅前のネットカフェにでも行こう。
銀波 嵐:あそこは唐揚げとカレーが食べ放題で。
銀波 嵐:何かが話しかけてきている気もするが気のせいだ。
早乙女六華:「嵐」
早乙女六華:「嵐」
早乙女六華:「嵐」
銀波 嵐:「(……。)」
早乙女六華:一定間隔で話しかけてくる。
早乙女六華:「嵐」
銀波 嵐:「だぁぁああーーーー、何だよ!!?!」
銀波 嵐:銀波嵐に忍耐力はない。
銀波 嵐:どうもそれをこの子どもには理解されてるような気がする、悪い兆候だ。
早乙女六華:「……」耳がキーンとしている。
早乙女六華:「嵐」
早乙女六華:「お前は乱暴者だし」
早乙女六華:「いろいろと雑だし」
早乙女六華:「あと、すごく喧しい」
銀波 嵐:「ああそうかい、じゃあもっと静かなやつにへばりつきな、それがウィン&ウィンってもんだ」
早乙女六華:「だが、お前はあたたかい」
早乙女六華:こつん、と額を嵐の後頭部につける。
早乙女六華:「わたしは好きだ」
銀波 嵐:「ああそうかい、でもごあいにくサマ」
銀波 嵐:「俺はそのうちこの世界から消えるのさ、好きなったって良いことなんかいっこもありゃしねえぞ?」
銀波 嵐:皮肉そうに口の端を歪め、うそぶく。
早乙女六華:「消える?」小首を傾げる
早乙女六華:「なんで」
銀波 嵐:「俺はただの代理人だからだ」
銀波 嵐:「そのうちこの身体の本来の持ち主が帰ってくる」
銀波 嵐:「そしたらみんなサヨナラってわけだ」
早乙女六華:「それは困る」
早乙女六華:「わたしが知っているのは嵐なのに」
銀波 嵐:「そうかい?俺はせいせいするぜ、へばりついてくる鬱陶しいガキもいなくなるしな」
早乙女六華:「せっかくマブダチになれたのに……」
銀波 嵐:「オイ、今何つったよミス・子泣きじじい」
銀波 嵐:「いーつーかーらー俺と、オタクがマブダチになったつぅんだ!?」
早乙女六華:「む……すまない」
早乙女六華:「親友のほうがよかっただろうか」
銀波 嵐:「……」
早乙女六華:「盟友?」
銀波 嵐:パクパクと空気を求める魚のように口を開いて。
早乙女六華:「同胞?」
銀波 嵐:「…………ハアァァァァ」
早乙女六華:「あっ」
早乙女六華:「恋人がいいか?」
銀波 嵐:「もういい好きにしろ、はいはいソウデスネ」
銀波 嵐:そう言って歩き続ける。
銀波 嵐:そして
銀波 嵐:―――
銀波 嵐:「ペアシートですか?じゃ、ねえーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
銀波 嵐:「いつまでついてくんだお前?!」
早乙女六華:「嵐」「嵐?」「らぶらぶがいいか?」「夫婦か?」いつまでも黙ることなく、背中で喋り続けた。
GM:シーン終了です。
【OP3】
GM:シーンPCは綱井楪、珊瑚夜
GM:綱井さんのみ登場侵蝕を振ってください。
綱井楪:綱井楪の侵蝕率を1d10(→ 3)増加 (34 → 37)
綱井楪:部室棟の隅。人気に乏しく、忍び込んだ秋の終わりの風が、冷たい陰となって蟠る一角。
綱井楪:そこにぽつんと佇む扉を引き開けると、備え付けのストーブで暖められた、やや乾燥した空気が珊瑚夜を出迎える。
綱井楪:「どうぞ」
綱井楪:そう言って、ここまで君を案内してきた少女が室内を指し示す。
珊瑚夜:「お邪魔するわね」
珊瑚夜:ふわりと甘い香りを漂わせ、中に入るときょろきょろと見渡す。
綱井楪:室内は──散らかってはいない。そもそも部員が綱井楪一人なのもあるだろう。
綱井楪:しかし、それでもどこか雑然とした印象を受けるのは……
綱井楪:壁際の棚に入ったオカルト系の雑誌や、資料が収めてあると思しいファイル類の、
綱井楪:背表紙の出っ張り方がてんでバラバラだったり、ついでに刊行順も揃えられていなかったりするためか。
綱井楪:「さあ。遠慮せずに座ってちょうだい」
珊瑚夜:「ここがあなたの城なのね。過ごしやすそうなところだわ」
珊瑚夜:ふわりと微笑むと、その言葉通り椅子へ腰かける。
綱井楪:部屋の主はまるで頓着せず、君を一つだけのデスクにある椅子に座らせる。
綱井楪:卓上には開かれたノートPC。
綱井楪:「過ごしやすい……」
綱井楪:「そうかな……」
綱井楪:ぼんやりと小首を傾げながら、立ち上げられた直後の状態の画面を指差して。
綱井楪:「ええと……来てくれてありがとう」
綱井楪:「さん……」
綱井楪:「さんし……」
珊瑚夜:「珊瑚夜、よ。よろしくね、綱井さん」
綱井楪:「さんご」
珊瑚夜:にこりと微笑む。
綱井楪:「よろしくお願い」
綱井楪:無表情のままこくりと頷く。
珊瑚夜:「お招きいただき光栄だわ。謎多きオカ研の姫にご招待いただけるなんてね」
綱井楪:「そう言われているのは知っているけど」
綱井楪:「調べに来る人はなかなかいない」
綱井楪:「どうしてかしら」
綱井楪:再び、先とは逆の方に首を傾けて。
珊瑚夜:「そうね……あなたがミステリアスな魅力があって……暴くのは野暮だと、みんな思っているのかもしれないわ」
綱井楪:「あなたもそう思っていた?」
珊瑚夜:「私の場合は……オカルトにそれほど興味がなかったから、深く知ろうと思わなかったというのが大きいけれど」
珊瑚夜:「あなたのことは知りたいと思うわ」
綱井楪:「……」
綱井楪:じっと、茫漠とした瞳で君の笑顔を見つめて。
綱井楪:「……興味があっても知れないこともあれば」
綱井楪:「興味がなくても知ってしまうことはある」
綱井楪:「私は、あなたがその手の噂に詳しいと聞いて、今回こうして呼んだのだけれど」
綱井楪:「意外ね。友達とそういう話で盛り上がっているのかと思っていた」
珊瑚夜:「私の興味がある分野は……みんなが知りたい部分とは違うみたいだから」
珊瑚夜:「魂がどこへ行くのかとか……そういう話、女子高生が話すにはちょっと重いでしょう?」
綱井楪:「……オカルトに興味はないんじゃなかったの?」
珊瑚夜:「……あなたの知りたいオカルトとは、違うと思ったから」
珊瑚夜:「もっと……UFOとか、ミステリーサークルとか……オバケとか……そういうのしか、好きじゃないかと思って」
綱井楪:「私は何でも好きよ。皆が好きになるようなことなら」UGNの任務の都合でもあるが。
綱井楪:「だから、あなたが知っている話も知りたい」
綱井楪:「ちょうど、いま調べている話をまとめているサイトがあるんだけど」
綱井楪:「そこであなたが知っている話があるかどうか……」
綱井楪:そう言って、君の背後からマウスに手を伸ばすが。
綱井楪:届かない。
珊瑚夜:「そういう可愛いオカルト話も入ってくるから、何かしら協力できるんじゃないかと思うけど……」
綱井楪:「……ブラウザを開いてもらってもいい?」
珊瑚夜:「……ふふ、ごめんなさいね、私が邪魔よね。ええ、任せて」
珊瑚夜:小さく笑うと、言われるがままブラウザを開く。
綱井楪:マウスを触れると、掌にほんの少し凹凸の感触が返る。
綱井楪:表面に小さなシールが貼ってあるのだ。“綱井楪”と、持ち主を示す簡素なもの。
珊瑚夜:「……名前の、シール?……マウスに?」
綱井楪:よく見れば端末の隅や、机に置いてあるノートにも、全て同様に。
綱井楪:「うん」
珊瑚夜:「ええと……どうしてかしら。盗難予防なら、もっと適切な手段があると思うけど……」
綱井楪:小さく答えながら、マウスを掴む君の手に手を重ねる。柔らかくもやや冷たい肌が触れる。
綱井楪:手の長さが足りなかったのに無理をしてそうしたので、背中側からのしかかるような姿勢になっている。
珊瑚夜:「…………」そのひやりとした手の感触に、背中に当たる柔らかさに少しだけ鼓動が早くなる。
綱井楪:荷重は君の背中の上側に集中している。弾力があって丸いものが、そこで形を歪めている感覚がある。
綱井楪:それを意に介すこともなく。
綱井楪:「忘れられるのは怖いから」
珊瑚夜:「……忘れられる、のが、怖い」
綱井楪:「見てほしい人に見てもらえなくて、声を張り上げても届かない。暗闇の中で一人ぼっちになって、そのまま薄れて消えてしまう」
珊瑚夜:「…………そうね。それはとても……怖いことだと、思うわ」
綱井楪:「そうよね」低い声が耳元で囁く。
綱井楪:「……そんな思いを、私の持ち物にはさせたくないから」
綱井楪:「ちゃんと帰ってきてくれるように、こうしてるの」重ねたままの手でマウスを操作し、ブックマークしてあるサイトを呼び出す。
珊瑚夜:「…………あなたの、持ち物は…………幸せね」
GM:シーン終了。
【OP4】
GM:シーンPC リウトペルガ・ウィンニール 綱井楪
GM:登場侵蝕は不要です。
リウトペルガ・ウィンニール:晩秋の日は既に傾いて、部室を暮れ方の橙に染めている。
リウトペルガ・ウィンニール:その部室の扉が唐突に開き、ストーブによって暖められた空気を乱す。
リウトペルガ・ウィンニール:「やー綱井君! 暇だったから寄っちゃった」
リウトペルガ・ウィンニール:現れたのは、子供めいたほっそりとした矮躯を、オーダーメイドのスーツに包んだ少女──いや、"女性"だ。
リウトペルガ・ウィンニール:雪を欺く肌に月白の髪、小さな眼鏡の向こうへ覗く、碧玉を嵌めたような双眸。
リウトペルガ・ウィンニール:その容貌は一見近寄りがたくもあり、ともすれば儚げにも見える。
リウトペルガ・ウィンニール:が、ころころと変わる表情とそこへ籠めれらた稚気は、彼女が単なる彫像でも、吹けば飛ぶ霞の精でもないことをはっきりと物語っている。
リウトペルガ・ウィンニール:「お疲れ~。ケーキ買ってきたけど食べる?」
綱井楪:「……先生」
リウトペルガ・ウィンニール:答えも聞かず、ケーキの入った箱を彼女のデスクの上へ置く。
綱井楪:既に来客の姿はなく。彼女がいた椅子に座ったまま顔を上げ、ぱちぱちと目を瞬かせる。
綱井楪:ぼうっとしていたところから我に返った……かのような反応だが、少々の付き合いがあれば分かる。綱井楪はいつもこんな感じだ。
綱井楪:「……いただきます」
綱井楪:なぜか箱に顔を近づけ、くんくんと匂いを嗅いでから。
リウトペルガ・ウィンニール:「うむうむ、いただきたまえ」
リウトペルガ・ウィンニール:「ああ、それと」
綱井楪:紙の箱を開き、中身を覗き込む。
綱井楪:「はい」
リウトペルガ・ウィンニール:思い出したように、机の上、ケーキの邪魔にならないような場所にいくつかの雑誌を重ねる。
リウトペルガ・ウィンニール:「雑誌買ってきたよ。とびきり怪しそうなやつ!」
リウトペルガ・ウィンニール:『オカルト遍歴リブレ・奇所』『あなたの知らない都市伝説大全 - 最新版』『クリーチャー・ボックス UMA図鑑の超決定版!』『実録・UFO事件の真相』
リウトペルガ・ウィンニール:オカルト研究会の活動における資料──という言い訳が立ちそうな、怪しげな雑誌を乱雑に並べる。
綱井楪:“とびきり怪しそうなやつ”まで顧問が言い終わってから、視線をケーキから雑誌の山へ移す。
綱井楪:「いつも思うんですけど」
リウトペルガ・ウィンニール:「うん?」
綱井楪:「これだけある与太の中に“当たり”があるかどうか調べるのって、人ごみの中の誰かを追跡してオーヴァードかどうか確かめるのとどっちが効率的でしょうね」
リウトペルガ・ウィンニール:「そりゃもちろん……後者だろうね!」
リウトペルガ・ウィンニール:「だってこれなんてすごいよ──曰く『工藤静香は宇宙人だった』『日本のアイドル業界は狼人間に乗っ取られている』『ビッグフット発見 畑を耕すゴリラ』」
綱井楪:「やっぱり」
綱井楪:椅子を引き、平積みにされた雑誌群の背表紙といちいち視線を合わせながら。
綱井楪:「狼人間、アイドルになれないでしょ」
綱井楪:「逆になれるほど見た目が良いならそれはそれで別に問題ないのでは」
リウトペルガ・ウィンニール:「うっふふふ、それは違いない」
リウトペルガ・ウィンニール:「まあボクはこういうの読むのも結構好きだけどね。……それで」
綱井楪:「私も半分趣味のようなものです。はい」
リウトペルガ・ウィンニール:「どうだった? 聞き取りの方」
綱井楪:「いい香りの方でした」
綱井楪:まるで表情を変えずに返す。
リウトペルガ・ウィンニール:「いい香りの、……」
リウトペルガ・ウィンニール:「っていうと……夜君かな。あー、珊瑚夜くん」
綱井楪:「知っている生徒なんですか。先生なのに」
リウトペルガ・ウィンニール:「ふぅーむ。夜君はこういうのそんな好きでもないと思ったけどな? ……」買ってきた雑誌をつまみあげながら
綱井楪:まともに教師の仕事をしていないのに、というニュアンス。
綱井楪:「はい。初対面でしたが意外と話せたので、これから仲良くなれたらいいと思います」
リウトペルガ・ウィンニール:「なんて言い草だろう!」
リウトペルガ・ウィンニール:「あーまあ、……仲良くしてくれると嬉しいよ」
リウトペルガ・ウィンニール:妙な表情を浮かべ、歯切れ悪く呟く。
綱井楪:「そうですね」
綱井楪:「廊下ですれ違ったりした時の印象だと、もっときつい子かと思っていたのですが」
リウトペルガ・ウィンニール:「そうさ、あの子は、……」
リウトペルガ・ウィンニール:「……ああ"見えて"、優しい子だから。君と一緒でね」
綱井楪:「……」
綱井楪:「ケーキ、半分あげます」
綱井楪:唐突に机の上の箱に視線を戻して言う。
リウトペルガ・ウィンニール:「おやそうかい? じゃ、遠慮なくもらっちゃおうかなっと」
綱井楪:「感謝してくださいね」元々が貰ったものであることなど微塵も感じさせない態度でそう続け。
綱井楪:ぽんぽんと、椅子に座った自身の膝の上を叩いて示す。
リウトペルガ・ウィンニール:「するする。ありがとーねっ、と」躊躇うことなくその膝の上に座る。
リウトペルガ・ウィンニール:「でもね」
綱井楪:「はい?」
リウトペルガ・ウィンニール:「……半分は、貰いすぎかな。一つ、食べていいよ」
綱井楪:「……気分が落ち込んだ時には甘いものが良いそうですよ。先生はそうじゃなくても食べてますけど」小さな体の彼女の頭を、まるで姉が妹にそうするかのように撫でる。
GM:シーン終了。
GM:ここでミドル前半のシーン順を決めるダイスロールを行います。
GM:10DX5で判定を行い、数値の高かったPLから、何番目のシーンを選ぶか選択権を得られます。
銀波 嵐:はーい
綱井楪:なるほど
GM:先手必勝かトリでぜんぶ持っていくかよく考えてきめましょう
珊瑚夜:なるほど(なるほどbot)
GM:では判定どうぞ!
リウトペルガ・ウィンニール:10dx5
DoubleCross : (10DX5) → 10[1,4,6,6,6,7,8,8,9,9]+10[1,1,2,3,5,7,8,9]+10[4,4,8,9]+10[2,8]+10[5]+2[2] → 52
珊瑚夜:10dx5
DoubleCross : (10DX5) → 10[5,6,6,7,8,8,10,10,10,10]+10[2,2,3,4,4,6,6,6,6,8]+10[3,3,4,5,9]+10[9,10]+10[7,10]+4[2,4] → 54
綱井楪:10dx5
DoubleCross : (10DX5) → 10[1,1,4,5,6,7,8,8,8,9]+10[1,2,3,3,3,3,10]+4[4] → 24
早乙女六華:10dx5
DoubleCross : (10DX5) → 10[2,3,5,6,7,7,8,8,9,10]+10[1,1,2,3,4,8,8,10]+10[8,9,10]+10[1,6,7]+10[6,8]+3[2,3] → 53
銀波 嵐:10dx5
DoubleCross : (10DX5) → 10[2,3,3,6,6,8,9,10,10,10]+10[1,2,3,5,7,8,9]+10[3,4,5,9]+10[2,6]+4[4] → 44
GM:めちゃめちゃ僅差だな
珊瑚夜:あれ!?一番高い
綱井楪:わたし低くない?
銀波 嵐:なんか皆高くない??
珊瑚夜:こんな僅差になるんだ
GM:では珊瑚さんから、何番目を取りますか?相手や内容などはまだ無指定で大丈夫です
珊瑚夜:うーん……最後で!
GM:ほう……
早乙女六華:では次は私ですね
早乙女六華:2番を頂きましょう
珊瑚夜:2番とは……
GM:次はリウさんどうぞ
リウトペルガ・ウィンニール:うーん……3番……かなあ
GM:3番!では銀波さんどうぞ
銀波 嵐:じゃあ……4で!
GM:やはり皆トップバッターは避けたいか……
綱井楪:私は望むところよ
GM:君はそうだろうね
GM:というわけで結果はこちらです
銀波 嵐:何が起きるのだから……
GM:
1綱井
2早乙女
3リウ
4銀波
5珊瑚
珊瑚夜:かしこまり!
リウトペルガ・ウィンニール:了解!
綱井楪:フゥム 承知
銀波 嵐:承り!
【Middle1】
GM:合流シーンです。全員登場。
綱井楪:綱井楪の侵蝕率を1d10(→ 2)増加 (37 → 39)
リウトペルガ・ウィンニール:リウトペルガ・ウィンニールの侵蝕率を1d10(→ 6)増加 (39 → 45)
GM:早乙女六華の侵蝕率を1D10(→ 6)増加 (49 → 55)
銀波 嵐:1d10+41
DoubleCross : (1D10+41) → 1[1]+41 → 42
珊瑚夜:綱井楪の侵蝕率を1d10(→ 3)増加 (39 → 42)
珊瑚夜:ごめんなさい綱井さんをいじりました
綱井楪:えっち……
GM:無許可でいじっちゃだめでしょ
珊瑚夜:自分の侵蝕を+3して45→48にしました!
私立星宮学園 オカルト研究部 部室
GM:玻璃兎市、私立星宮学園。
GM:ここ玻璃兎市は東京から離れた地方都市であり、レネゲイド案件も少ない街だ。
GM:UGN支部も小規模であり、職員も僅か。だがそんな街において、唯一UGNに警戒される場所がある。
GM:それがこの星宮学園だ。年若い多感な少女が多く在籍するその性質上、オーヴァードへの覚醒や無軌道な能力行使が危ぶまれるが
GM:外界から隔絶した閉鎖的な女子校という性質上、学内の案件は専ら潜入中のエージェントだけで対処するのが常だった。
GM:この日、学内に新たに二人の追加人員が派遣されることとなり
GM:その顔合わせのため、君達は学園でのUGNの活動拠点であるオカルト研究部部室に集合したのだった。
綱井楪:準備のためもあり、それ以前に部屋の主であるから当然、新たな人員よりも早く室内にいる。
リウトペルガ・ウィンニール:「うん、このくらいあればじゅーぶんかな」
綱井楪:部室の中央を片付けて空間を作り、滅多に使わない会議机を広げ、やはり滅多に使わないパイプ椅子を置いて。
綱井楪:「そうですか」
綱井楪:普段通りの調子でそう返す。
リウトペルガ・ウィンニール:その机の上へジュースやピザ、ケーキなどを配置しつつ、満足気に頷く。
綱井楪:「三人でしたよね?」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクら三人に、追加人員二人だってさ」
綱井楪:「……」
綱井楪:リウトペルガの横の何もない空間を見る。
リウトペルガ・ウィンニール:「追加人員、追加人員……ま、それ自体は別に悪い話でもないけど」
リウトペルガ・ウィンニール:「追加人員が必要になる何かがあった……って考えると、イヤーな感じはするかもね」
綱井楪:「……」
綱井楪:「三人……」
綱井楪:顔の向きを変えないまま首を傾げている。
珊瑚夜:「こんにちは」朗々とした声と共に、甘い香りが漂う。
リウトペルガ・ウィンニール:「やあやあ! 入って入って」朗らかに手を振り、部屋の中へと差し招く。
珊瑚夜:「まあ、美味しそう!私の為にこんなに用意してくれるなんて、嬉しいわ」机の上のごちそうを見てにこりと微笑む。
綱井楪:「夜?」目を瞬かせる。
綱井楪:「悪いのだけど、これから来客の予定があって」
珊瑚夜:「ふふ、その来客が私よ」
綱井楪:「……そうなの?」
リウトペルガ・ウィンニール:「あ、君たちUGNとしては面識なかったんだっけ?」
珊瑚夜:「私、チルドレンとしては不良ですもの。最近はあまり真面目に任務に参加していなかったから」
綱井楪:「そうなんだ……」
綱井楪:「全然気付かなかったわ」先日もあくまで一般人のつもりで部室に招いていた。
珊瑚夜:「綱井さんとは、チルドレンとしても、そうでなくとも仲良くしていきたいと思っているわ」
珊瑚夜:「…………リウトペルガも……仕事でも、うまくやっていきましょうね」
リウトペルガ・ウィンニール:「──そうだねぇ」
リウトペルガ・ウィンニール:「仲良くしてあげてよ、お互いにね。君たちが友達になってくれれば、ボクだって嬉しいからさ」
綱井楪:「ええ。三人で仲良くしていきましょう」こくりと頷く。二人の態度の裏にあるものは知覚していない。
銀波 嵐:ガラリ、と乱暴に扉が開かれる、冷たい空気が流れ込む。
綱井楪:「いえ、五人……?」
綱井楪:言いながら、入り口の方を見て。
銀波 嵐:荒んだ印象の少女、今だ扉の前に立つ珊瑚をねめつけ、
銀波 嵐:「……邪魔」
早乙女六華:その腰に手を回して引っ付いて、ずるずると引きずられてくる。
珊瑚夜:「あら……ごめんなさいね。……え?」その声に慌てるでもなくすっと横にずれ、声の主を見つめ……
銀波 嵐:瞬間、この場のふたり、脳裏に浮かぶ
銀波 嵐:”彼女”はこのようにまばらに色素の抜けた髪ではなく、このように粗野な風でもなく
銀波 嵐:でも確かに
珊瑚夜:「凪…………?」
銀波 凪:『ハロハロ、凪ですよ、よろしくね』
銀波 嵐:「……?」
銀波 嵐:旋毛から踵まで舐めるように眺め。
リウトペルガ・ウィンニール:「……ようこそ」
綱井楪:目を見開いて固まっている。
珊瑚夜:「凪……、凪よね?あなた……銀波凪!」
銀波 嵐:「俺は嵐だ、その名で呼ぶな……殺すぞ?」
珊瑚夜:「久しぶりね!元気そうでよかった……、結構雰囲気変わったのね」
珊瑚夜:「……え?」
銀波 嵐:「オタクはなんだ、どうやら凪の知り合いみてーだが」
珊瑚夜:「え……?どうしたの凪。忘れてしまったの?無理もないわね、久し振りだから……私は珊瑚夜。あなたの先輩よ?」
銀波 嵐:「珊瑚」
銀波 嵐:「夜」
銀波 嵐:念押すように、噛みしめるように。
銀波 嵐:ハ、と冷笑が漏れる。
銀波 嵐:「そうかい、オタクが」
珊瑚夜:「…………?どうしたの、凪……?」
銀波 嵐:「ずいぶんヤンチャしてくれたみてーじぇねえか、珊瑚夜」
珊瑚夜:「ヤンチャ…………?」
珊瑚夜:「……私が美しく出自にも恵まれまた才能もありながら人柄もいいから久しぶりの再開に引け目を感じている……といった感じでは……なさそうね」
銀波 嵐:「俺にリピートボタンは無ェ、殺すぞ?」
早乙女六華:「こら」手に力を込めて嵐の腹を絞める。
銀波 嵐:「まあ、そうじゃなくても、お前は……グェ」
早乙女六華:「すまない」珊瑚をじっと見上げ、ぺこりと頭を下げる。
早乙女六華:「こういう年頃なんだ」
銀波 嵐:そこではじめて腰にしがみつく存在を思い出したように、
銀波 嵐:「テメェ……」
銀波 嵐:「……」
銀波 嵐:はぁ、と嘆息。
銀波 嵐:どかどかと歩を進め、椅子を引く。
珊瑚夜:「と、年頃で片づけていいのかしら……ええっと」早乙女さんを困ったように笑いながら見つめている。
綱井楪:「凪に、六華……」
綱井楪:やり取りを遠間から見て、ぽつりと呟く。
早乙女六華:「ん」
珊瑚夜:「あら……綱井さんの知り合い?」
綱井楪:「……ええ」
綱井楪:表向きは、普段通りの様子のまま。
綱井楪:「二人とも、そうよ」
早乙女六華:綱井の言葉に、ぱっと嵐から離れ、とてとてと走っていく(やたら遅い)。
銀波 嵐:やっと開放された、というポーズで乱暴に腰を下ろす。
早乙女六華:「お前……」
早乙女六華:じっと綱井の顔を見つめて。
早乙女六華:冷たい掌で不意に掌を握る。
綱井楪:「っ」びくりと肩を竦める。
早乙女六華:「ふむ……」にぎにぎと確かめるように指を絡め、さすり、握り、撫で回して。
早乙女六華:「やはりそうか」
早乙女六華:「あの時の……迷子」
早乙女六華:「楪」
綱井楪:「……そうよ」
綱井楪:「よく覚えてる……その顔も、手の冷たさも」
綱井楪:「本当に何も変わってないのね。六華」
綱井楪:取られた手に手を重ねて。
綱井楪:今では自分よりも下にあるその両目をじっと見つめる。
早乙女六華:「随分よく育ったな」
早乙女六華:マフラーをずらして顔を見せる。
早乙女六華:「偉いぞ」
綱井楪:「……」
綱井楪:無言のまま、胸の中に抱きしめる。
早乙女六華:「む……」
早乙女六華:「どうした」
早乙女六華:「寒いか?」
綱井楪:「好きだったでしょう。こうされるの」
綱井楪:暫時そうした後、片腕を解き、銀波嵐に向けて伸ばして。
綱井楪:「凪も。おいで」
綱井楪:手招く。
銀波 嵐:「……俺にリピートボタンは無ェが」
銀波 嵐:「”再放送”だ」
銀波 嵐:底冷えのする声、拒絶の意思。
銀波 嵐:「俺の名前は銀波嵐、凪は今ここにいねェ」
銀波 嵐:銀波凪に兄弟姉妹はいない、そのように聞かされていた。
銀波 嵐:しかし眼前の嵐はそう名乗る。
銀波 嵐:「知り合いヅラしてんじゃねーぞ、"ミス初対面"」
綱井楪:「…………」伸ばしていた手を下ろす。
早乙女六華:「すまない」綱井に「照れ屋なんだ」
珊瑚夜:「……よく似た別人、というわけでもなさそうだけれど」嵐の隣に腰を下ろすと、じっと見つめる。
リウトペルガ・ウィンニール:「夜君、綱井君」
珊瑚夜:「……リウトペルガ、何か知っているの?」
リウトペルガ・ウィンニール:普段の稚気じみた様子は鳴りを潜め、静かな、どこか硬い声。
リウトペルガ・ウィンニール:「紹介しよう。早乙女六華君と──」
リウトペルガ・ウィンニール:「銀波、嵐君」
リウトペルガ・ウィンニール:「……二人とも、凪君とは知り合いだったんだね」
珊瑚夜:「嵐……、さっきもそう言っていたわね。……ええ、凪は可愛い後輩だったわ」
綱井楪:「……友達よ」
銀波 嵐:「チッ……」舌打ち。
リウトペルガ・ウィンニール:「『嵐』君は、彼女の別人格。UGNの分類で言うところの、戦闘用人格ってやつ」
珊瑚夜:「別、人格……?」
早乙女六華:「……」嵐を見る。「そうなのか?」
銀波 嵐:「(なんだその顔は、説明があっただろうがよてめーにゃ……)」
早乙女六華:(そういう年頃ではなかったのだな……)
綱井楪:「……」座学で聞き覚えはある。オーヴァードが発現する特筆性として、まま見られるものの一つ。
珊瑚夜:「凪、……嵐さんは、いまもずっと連続して任務にあたっている……とか?戦闘用人格は、レネゲイドの力が高まらないと出てこないと記憶していたけれど」
リウトペルガ・ウィンニール:「そう。さすが、よく勉強してるね」どこか寂しげに微笑む。
珊瑚夜:「チルドレンとしても優等生ですからね」冗談めかして笑う。
リウトペルガ・ウィンニール:「でも、嵐君の場合は──」
リウトペルガ・ウィンニール:「……2年前。対処に当たった事件で、凪君は重症を負ってしまった」
銀波 嵐:「ああそうさ、そこのセンセがヘマしたせいでな」
銀波 嵐:ようやく口を挟む、軽薄な笑み。
珊瑚夜:「え……」小さく声を漏らすと、リウと嵐を交互に見る。
綱井楪:「重傷……」
リウトペルガ・ウィンニール:「……ま、そうだね」
銀波 嵐:「それ以来凪はずっと眠ったままだ、だからこうして俺が代わりに"銀波"をやってるわけ」
綱井楪:「随分雰囲気が変わったとは思ったけれど。……そう」
珊瑚夜:「そんな、ことが」うつむき、呟く。「……知らなかった」
銀波 嵐:「ああそうだろうさ、珊瑚夜。アンタは他人に興味なんか無いだろうからな」
銀波 嵐:「それについてのツケを、俺がキッチリ支払わせてやるよ」
珊瑚夜:「……そう、なのかもしれないわね。あの子を……凪を守れるような、しっかりとした人間になりたくて」
珊瑚夜:「せめて形だけでも落ち着こうと思って、髪を伸ばしたりしたけれど。……そんなおままごとに興じてる間に、凪はそんなことになっていたのね」自嘲気味に微笑むと、シトラスの香りが漂う。
銀波 嵐:「下手な言い訳一つ言えねえのかよ」
銀波 嵐:吐き捨てるように。
早乙女六華:「……」綱井から離れ、すたすたと歩いていき
銀波 嵐:「聞いてた通りだな、いつまでもそんな上から目線でいられると思うなよ」
早乙女六華:「こら」ずぼり、と嵐の背中に氷のような手を突っ込む。
銀波 嵐:「ンヒッ!!!」
銀波 嵐:「て、てっ!めっ!!!」
銀波 嵐:「いい加減ソレやめろ!!」
銀波 嵐:がなり立てるが、先まであった殺気は霧散した様子で。
早乙女六華:「仲良くしろ、嵐」
早乙女六華:「これから一緒に仕事をするんだぞ」
銀波 嵐:「ち……」
早乙女六華:「今後ずっと気まずい空気で過ごすのは嫌だからな」
珊瑚夜:「早乙女さん、だったかしら。……ありがとう、優しいのね」
銀波 嵐:「そっちの白いのも……大きい方だよ」
銀波 嵐:綱井を睨み。
綱井楪:「……」まじまじと見返す。
銀波 嵐:「凪と何があったかしらねえが、ご覧の通り、俺たちは"他人同士"だ」
銀波 嵐:「馴れ馴れしくするんじゃねえぞ」
綱井楪:「……夜のことは知っているのに」
綱井楪:「私のことは覚えていないの?」
銀波 嵐:「凪はオタクの事なんか教えちゃくれなかったよ、どうでもよかったんじゃねえの?」
銀波 嵐:ハ、と煽るように笑う。
早乙女六華:(こいつは話を聞いていたのか……?)不思議そうな顔で嵐を見る。
綱井楪:「…………」嬉しそうでも不快そうでもなしに見つめ続ける。
銀波 嵐:「……」
銀波 嵐:不愉快そうに目を逸らす。
早乙女六華:「……」
早乙女六華:(お腹が空いたな……)
珊瑚夜:「……嵐さんが馴れ馴れしくしたくなくとも、私たちは一緒に仕事をしないといけないわ」
珊瑚夜:「『追加人員』が詳しい話をしてくれると聞いていたのだけれど?」
早乙女六華:「はっ……」
早乙女六華:勝手に部屋を出て行こうとしていたところで立ち止まる。
リウトペルガ・ウィンニール:「そうとも、仲良くしたくなくてもしなくちゃならないのさ」
銀波 嵐:ただただ、無言。
珊瑚夜:「あら、リウトペルガには仲良くしたくない人がいるのかしら」意地悪く微笑む。
リウトペルガ・ウィンニール:「夫呉人与越人相悪也、当其同舟而済遇風、其相救也、如左右手──呉越同舟。漢文の時間にやらなかったかい?」
綱井楪:ふ、と一度目を伏せる。
綱井楪:「……そうね」
リウトペルガ・ウィンニール:「もちろん」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクはみんなと仲良くしたいと思ってるよ」
リウトペルガ・ウィンニール:薄く微笑む。その表情には、どこか作り物のような色がある。
珊瑚夜:「私たちは敵国の者同士じゃないんだし、きっとうまくやれるわよ」綺麗な笑みを崩さず話す。
早乙女六華:ぺちぺちと机を叩く。全然いい音が鳴らない。
早乙女六華:「注目」
珊瑚夜:「……ええ」言われるがまま、早乙女さんの方を見る。
リウトペルガ・ウィンニール:「さ、説明のお時間だ」
早乙女六華:「任務の話をするぞ」
綱井楪:視線を上げて早乙女六華の方へ。
リウトペルガ・ウィンニール:また普段のような子供じみた笑顔を浮かべ、手近なピザを口へ運ぶ。
早乙女六華:のろのろした手つきで鞄から資料を取り出す。
早乙女六華:「まず確認しておきたい」
早乙女六華:「この学園で最近流行っている噂について、聞いた覚えのある者は?」
GM:判定です。
GM:情報:噂話 で難易度5。コネ使用可能です
綱井楪:知らなかったら何のための潜入人員かわからないぜ
綱井楪:技能もコネもないが……
珊瑚夜:≪無形の影≫を使いたいのですが、いいですか?
GM:大丈夫です!
リウトペルガ・ウィンニール:ウオーッ素振りだーッ
綱井楪:3dx>=5
DoubleCross : (3DX10>=5) → 7[5,5,7] → 7 → 成功
綱井楪:ほっ
銀波 嵐:情報雑魚勢、とりあえず静観
珊瑚夜:4dx>=5
DoubleCross : (4DX10>=5) → 8[5,7,7,8] → 8 → 成功
珊瑚夜:侵蝕48→52
GM:知ってるかどうかなので振らなければ自動で知らないことになるよ
リウトペルガ・ウィンニール:3dx>=5 〈情報:噂話〉
DoubleCross : (3DX10>=5) → 9[6,8,9] → 9 → 成功
銀波 嵐:振るか、素をよぉ!
銀波 嵐:1dx+1
DoubleCross : (1DX10+1) → 6[6]+1 → 7
GM:では全員知ってます
GM:近頃、星宮学園では奇妙な噂が流行っている。
GM:深夜の音楽室からピアノの音がした、階段の段数が増えていた、トイレからすすり泣く声が聞こえた……一つ一つはいかにもよくある怪談だが
GM:その数が尋常ではない。実際に見たとまことしやかに語る生徒の数は既に数十人にものぼっており、最早七不思議では全く足りない状態だ。
GM:生徒の間でも、噂の信憑性が高まると共に徐々に不安が広がりつつある。
綱井楪:「ええ。知ってる──」
綱井楪:「増え過ぎた七不思議。ちょうど、私も聞き込みをしていたところだったけれど」珊瑚夜の方を一瞥して。
珊瑚夜:「聞いたことがあるわ。ざっくりいえば、七不思議がたくさんある……って感じね」
銀波 嵐:「集団ヒステリーってやつじゃねえの、何しろお多感でいらっしゃる」
珊瑚夜:「集団ヒステリーというには、集団の数が多すぎるわ」
綱井楪:「……追加人員が出されるほどのことなの?」
早乙女六華:「うむ」
早乙女六華:「UGNでは今回の現象そのものと同時に、集団でのストレスの高まりによる覚醒事案の増加を懸念している」
珊瑚夜:「なにしろ、目撃者が何十人もいるんだもの。……ふふ、そうね。仮に思い込みだったとしても、それが元で覚醒してしまう可能性はあるわね」
早乙女六華:「一刻も早く解決して、生徒の不安を取り除くのが我々の任務だ」
銀波 嵐:「なんつーか、ずいぶんとフワッとした仕事だな」
銀波 嵐:「どこどこへ行ってなんちゃらを倒せとか」
銀波 嵐:「そういうのだけ回してくれりゃいいのに」
銀波 嵐:面倒くさそうに頭を掻く。
早乙女六華:「まだ初動の段階だからな。実際に原因が判明すればそういった任務になる可能性はある」
リウトペルガ・ウィンニール:「『骨格標本が走ってた』『深夜に大鏡を見ると連れて行かれる』『誰もいないトイレからノックの返事がある』」
リウトペルガ・ウィンニール:「『この学校はもともと墓場に立ってた』『体育館倉庫の奥に祭壇がある』『ゴミ捨て場の天井に人型の染みがある』『昔旧日本軍の人体実験に協力してた』『夜中に校長室の歴代校長の写真が動いて目が遭う』」
リウトペルガ・ウィンニール:「『廊下で振り向くと足だけが歩いてた』『プールから何本も人間の手が出てた』etc、etc」
早乙女六華:「詳しいな、リウ」
珊瑚夜:「……リウトペルガって教師っぽいこともするのね」
珊瑚夜:「顧問になるとオカルトに興味が出るものなのかしら」
リウトペルガ・ウィンニール:「みーんな、ちょっと水向けたら話してくれたよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「ま、誰かに話したいんだろうね。怖がってるなら聞いてもらわないと不安だし、面白がってるなら人に話して怖がらせなきゃソンだもの」
綱井楪:「……先生、生徒で入ってきても良かったのに」
綱井楪:「私よりよほど聞き込みが上手そうだもの」
綱井楪:自分はたいてい、話しかけるとまずぎょっとされるタイプの人間だ。
早乙女六華:「先生?」
早乙女六華:「お前、先生なんてやってるのか」
リウトペルガ・ウィンニール:「そうとも。適任だろう?」
早乙女六華:「どうしてお前が先生で、わたしが生徒なんだ」
早乙女六華:「わたしも先生がよかった」
リウトペルガ・ウィンニール:「先生ができるタマじゃあないだろ、キミは。ボクくらいしっかりしてないとねぇ」
早乙女六華:「なんだと……」
珊瑚夜:「……そこも知り合いなのね。私の交流関係が狭いのかしら」
綱井楪:「しっかりはしてないと思います」
早乙女六華:「しっかりしているぞ……わたしは……」
銀波 嵐:「オイオイ、女子会しにきたわけじゃねエんだぞこっちは」
銀波 嵐:「何すりゃいいんだよ、具体的に、それを話せよ」苛ついたように。
早乙女六華:「む……そうだった」
早乙女六華:「現状は各自で、学内と周辺地域での巡回と情報収集に当たってくれ」
早乙女六華:「何か分かったら各自連絡をとって情報を共有するように」
早乙女六華:「以上だ」
綱井楪:「……私にとっては普段通りね。了解」
珊瑚夜:「わかったわ。はやく実態を掴んで、『どこへ行って何を倒す』のか突き止めましょうね」あればの話だけど、と付け加えながら。
リウトペルガ・ウィンニール:「いつも通りってことね。おっけーおっけー」
銀波 嵐:「各自連絡を、ね」
早乙女六華:「お前もだぞ、嵐」
早乙女六華:「仲良くしろ」
銀波 嵐:「ま、いいさ、仕事なら、やる」
銀波 嵐:「仲良くするのは俺の仕事じゃねえ」
銀波 嵐:立ち上がり、登山鞄を背負う。
銀波 嵐:「以上だろ、俺は失礼させてもらう」
早乙女六華:「待て嵐」
銀波 嵐:「んだよ」
早乙女六華:背中に引っ付く。
早乙女六華:「私は腹が減った」
銀波 嵐:「……」
早乙女六華:「だが財布を忘れた」
早乙女六華:「とても困っている」
早乙女六華:「奢ってくれ」
リウトペルガ・ウィンニール:「おや、これ持っていくかい?」
リウトペルガ・ウィンニール:まだあまり減っていないピザの箱を掲げる。
早乙女六華:「リウ……」
早乙女六華:箱を抱える。
早乙女六華:「少し見ない内にいい奴になったな」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクは昔っからいいやつだろう?」
リウトペルガ・ウィンニール:「本当はここで食べてくれるとありがたいんだけどね。……」
リウトペルガ・ウィンニール:「まあ、また機会もあるだろうし。二人で食べたまえ」
銀波 嵐:「おいミニマムコアラ、人の背中でチーズの匂い垂れ流してるんじゃねえ……」
銀波 嵐:げんなりとした顔で、そう言った。
GM:シーン終了。
【Middle first half/綱井楪】
GM:それでは、ミドルシーン前半を開始します。
GM:1番目のシーン権を獲得したのは、綱井さん。
GM:誰を指名しますか?
綱井楪:銀波嵐さんと早乙女六華さんでお願いします。
GM:初手から……二人!
銀波 嵐:了……解!
GM:とんでもないことしやがるな 了解です。
綱井楪:綱井楪の侵蝕率を1d10(→ 9)増加 (39 → 48)
早乙女六華:1D10+55
DoubleCross : (1D10+55) → 6[6]+55 → 61
銀波 嵐:1d10+46
DoubleCross : (1D10+46) → 8[8]+46 → 54
銀波 嵐:さっきも忘れてていい加減ヤバいので
銀波 嵐:水晶の剣使用を宣言させてください
GM:しな!
銀波 嵐:手持ちのアームブレードへ、侵食+4
玻璃兎市内 カラオケ店『200デシベル』
綱井楪:──交友関係の狭さに反して、綱井楪は校内では名を知られた生徒だ。それは主には所属する部活の怪しさゆえだが、一方では容姿の所為でもある。
綱井楪:うねるような癖っ毛の白髪。常に眠たげに細められた空色の目。着崩しはだけられたブレザー。単体ではだらしないと見られるだけのそれらの要素が、
綱井楪:蛾の触角じみて長い睫。スカートの裾から晒される真っ白な太股。ブラウスを押し上げる胸の膨らみ──そうしたものと合わさると。ひどく危うげで、良くも悪くも、ひとの目を引き印象に残る姿となる。
綱井楪:それが転校生二人と連れ立ってカラオケボックスに入っていったとなれば、それこそ七不思議じみて新たな噂を生むかもしれないが──
綱井楪:「……これが、私が今までに集めた噂と、その発生源」
綱井楪:実際に個室内で行われるのは、おそらく無責任な噂よりも現実離れした会合だ。
綱井楪:ランダム再生のBGVだけが流れる空間で、テーブルの上に何枚もの紙の資料を広げながら。
綱井楪:「おおよそ辿れる限り、どの噂も別々の、そしてなんてことのない生徒から聞いた……っていうことになっている」
綱井楪:秘密組織による調査結果の報告会。傍目には、オカルト研究会の日常の活動でしかないが。
銀波 嵐:一方銀波嵐、彼女もまた名を知られた生徒だ。しかしそれは"悪名"の方であるが。
銀波 嵐:"ヤンチャ"な生徒が生意気な転校生を締め上げようとした、端正な容姿と危険な雰囲気に惹かれた女生徒が接触を試みた。
銀波 嵐:共に、嵐へと接触後”おとなしく”なり、黙して語らず。
銀波 嵐:「……」
銀波 嵐:資料に目を通しはしない、彼女はひとたび目を通したソレはすべて記憶している。
銀波 嵐:ノイマンレネゲイドによる「写真記憶」。
早乙女六華:「ふむ……」資料をめくって「よく調べているな」
早乙女六華:早乙女に目立った噂は無い。その物腰と子供じみた容姿から、普通の転校生より幾分か浮いてはいるが。
綱井楪:「元々、普段の仕事の領分ではあったから。とは言え」
早乙女六華:「あの時泣きべそをかいていた子供が、立派になったものだ」
綱井楪:「実質、何も分かってないようなもの……」
綱井楪:「……」
綱井楪:細い目をさらに細め、じっとりとした視線を早乙女六華に向ける。
早乙女六華:「……」視線に気付いた様子も無く、ドリンクバーのどろどろのコーンポタージュを飲んでいる。
銀波 嵐:ストローでソーダ水をすすり、ひとこと。
銀波 嵐:「まったくその通り、ゴシップと何ら変わりはねえな」
銀波 嵐:「ここに乗ってないものだと……俺の方でもいくらか聞いたものはあるぜ」
綱井楪:「どんなもの?」
銀波 嵐:「『小さい用務員』、『人面犬』、『医務室の"特別"な薬』」
銀波 嵐:「たわごとと何が違う?」
早乙女六華:「小さい用務員……?」
早乙女六華:「何だそれは……怖い……」
綱井楪:「現代版のブラウニーかしら」
銀波 嵐:「全長20cmほどのソレが、校舎の草をむしってるんだと」ヘラヘラと笑う。
早乙女六華:「しかし、実在の怪異かもしれない」
早乙女六華:「わたしだって『転校してきた雪女』だからな」
銀波 嵐:「ああ、オタクのお仲間?」小馬鹿にしたように笑う
銀波 嵐:「そりゃいい、そっちと仲良しくしてくれ」
早乙女六華:「そうだ」真面目な顔で頷く。
早乙女六華:「話が通じる相手かもしれん」
銀波 嵐:「そうかいそうかい、妖怪相手はオタクにお任せだ、ああこりゃ頼もしい」
綱井楪:「…………私がこういう役割でいる以上、おかしな噂に本物が紛れていることはそこそこあって、何度か相対もしたけれど」
銀波 嵐:「……いるのかよ、胡乱な学校だなほんと」
綱井楪:「大抵は数ある噂の一つが本物で、それは詳細を調べるなり、流布の大元を辿れば何とかなった」
綱井楪:「けど、今回のは違う。流れる噂の種類が多すぎることが異常」
早乙女六華:「うん」
早乙女六華:「妖怪はそんなに沢山いるものじゃない」
綱井楪:「正直なところ、少し困っているわ」
綱井楪:「単純な聞き込みでは限界があるかも」
銀波 嵐:「そもそも、だ」
銀波 嵐:「いつから始まったんだよこの乱痴気騒ぎは」
早乙女六華:「最初に始まったのは数か月前」
銀波 嵐:「その"最初"に報告された怪談ってやつはわからんねぇのか?」
早乙女六華:「それから次第に数を増やしているようだが、何しろ噂だ」
早乙女六華:「何が発端か、正確には不明だな」
早乙女六華:ポタージュを飲み終え、暖を求めて綱井に寄っていく。
綱井楪:「元々、全く噂の無かった時期があるわけではないし」
綱井楪:「どこかに“最初”があるのだとしても、今の時点だと判別は難しいわ」
綱井楪:銀波嵐に向けて言いながら、両腕を開いて迎え入れる態勢を作る。
銀波 嵐:「……」
銀波 嵐:「なによりもまず、だ」
銀波 嵐:「真っ先にハッキリさせないといけないことがある」
綱井楪:「……なに?」
早乙女六華:「?」綱井にしな垂れかかって。
銀波 嵐:「これが集団の"幻覚"なのか、マジでそういうものが"溢れ出してる"のか、だ」
銀波 嵐:「レネゲイドなんてけったいなモノがある以上、後者も100%否定することはできねぇ」
早乙女六華:「そうだな」
綱井楪:「百鬼夜行ね」
早乙女六華:体温を求めて縋るようにしながら「前者の大規模な幻覚や認識改変の線もあり得るだろうな」
早乙女六華:「だとすれば……」素肌とタイツの脚が触れ合う。
綱井楪:早乙女の腰に両腕を回す。こちらは体は正面を向いたままだ。
早乙女六華:「実行者の目的は、生徒へのストレスによる大量覚醒か?」
綱井楪:「ずいぶん迂遠に思えるけれど……」
綱井楪:「常識的な思考が通じるとは限らないものね。ことこういうタイプの事例では」
銀波 嵐:ふたりの様子を気にするでもなしに。
銀波 嵐:「こんなところでよ、ジュース啜ってるより手っ取り早い方法があるだろ」
銀波 嵐:「少なくとも後者を確かめる方法のな」
綱井楪:「実際に私たちで怪異を探す?」
銀波 嵐:銀波嵐は現場主義である。
銀波 嵐:「そうだ、邪魔の入らない時間に」
早乙女六華:「しかし、まだ昼間だぞ」
早乙女六華:「こんな時間に表に出てくる妖怪がいるか?」
銀波 嵐:「何か"ある"ってんなら……いるじゃねえか、目の前に」
銀波 嵐:つい話の腰を折り。
早乙女六華:「…………」
早乙女六華:「本当だ」
綱井楪:「本当ね」
綱井楪:まじまじと腕の中の少女を見る。
早乙女六華:「これは一本取られたな」
早乙女六華:「はっはっは」無表情のまま言う
綱井楪:「口が上手くなったわ。凪」
銀波 嵐:す、と目が据わる。
銀波 嵐:室内の気温が下がったような、
銀波 嵐:「殺すぞ?」
綱井楪:「……。嵐」
銀波 嵐:「おう、なんだ、ちゃんと"分かってる"じゃねえか」
銀波 嵐:「なんだ、さっきのは、挑発か?」
綱井楪:「知っておきたくて。つい」
綱井楪:「あなたが一体どういう子なのか」
銀波 嵐:ストローを噛む、いびつに捩れるそれ。
綱井楪:変わらない無表情で相対する。
早乙女六華:「……」二人を見ている。
銀波 嵐:「見てのとおりの悪タレだよ、どうだいご満足かい?」
銀波 嵐:「なあ……あんたらは」
銀波 嵐:「どうしたってそう他人に興味がある?」
銀波 嵐:「まったく、鬱陶しいったらありゃしねェ」
銀波 嵐:「俺はな、消えるんだ、そのうち」
銀波 嵐:「その時は、喜べよ、凪が帰ってくるわけだ」
銀波 嵐:「好きに"よろしく"すりゃあいい」
銀波 嵐:「だからな、なるべく身軽でいたいわけだ、"俺の方"はな」
銀波 嵐:「オタクが凪に対して何を思ってるかは知らねえが、それを俺相手には載せないでくれませんかね」
銀波 嵐:「鬱陶しい、重たい、」
銀波 嵐:「俺の持ち物は、コレに入るだけで、じゅうぶんだ」
銀波 嵐:そう言って足元の登山リュックを蹴る。
綱井楪:「……確かに」
綱井楪:「あなたは、凪とはぜんぜん違う」
綱井楪:「凪なら、こんなに真面目に任務の話なんかしてくれなかったし」
銀波 嵐:「は、ハァ?!」
綱井楪:「私が他の人とこうしていたら、黙って見ていたりもしなかった」
早乙女六華:「そうなのか」
綱井楪:「そうよ」頷き、両腕を解いて嵐に向き直って。
綱井楪:「……凪に帰ってきてほしいとは思う」
綱井楪:「だけど」
綱井楪:「あなたが消えてしまうのも嫌」
綱井楪:「せっかくこうして会って、私のことを知ってくれたのだもの」
銀波 嵐:「ああそうかい……」
銀波 嵐:「知ったこっちゃないね」
銀波 嵐:そうだ、知ったこっちゃない。
銀波 嵐:知りたくもない。
銀波 嵐:荷物が増える。
銀波 嵐:それは御免だ、銀波嵐は身軽で、自由だ。
銀波 嵐:そうでならなくてはならない。
早乙女六華:「……」
早乙女六華:「どうしてそんなにいじけているんだ?嵐」
早乙女六華:「意味が分からん」
早乙女六華:綱井から身を離し、嵐を見る。
銀波 嵐:「ア?」
銀波 嵐:「いじけてるように見えるのかよ?この銀波嵐が」
早乙女六華:「……?」
早乙女六華:「完全にそう見える」
銀波 嵐:「……じゃあなんだ」
銀波 嵐:「俺が本当はオタクらと仲良しこよしがしたいのに、それを隠してメソメソしてるって」
銀波 嵐:「……そう言いたいわけか」
銀波 嵐:チリ、と空気が焼ける。
早乙女六華:「ふむ……」
早乙女六華:「少し違うな」
早乙女六華:気にした様子もなく続ける。
早乙女六華:「自分はいずれ消えるから、何をしても無駄で意味が無いと」
早乙女六華:「そうやっていじけているように見えるが」
銀波 嵐:「ハッ」
銀波 嵐:「どうだいオカルト部、オタクも同意見?」
綱井楪:「いじけているかどうかはともかく」やはり淡々とした調子で声を上げる。
綱井楪:「あなたは、自分が直に消えることを前提に置き過ぎているとは思うわ。でも」
綱井楪:「私が知る限り、オーヴァードの多重人格は、共存する形でずっと続くことがほとんどよ」
綱井楪:「自分が消えないとしたら、あなたはどうするの」
銀波 嵐:「それは……違うな」
銀波 嵐:ピシャリと
銀波 嵐:「俺たちは、特別なんだ」
銀波 嵐:「おかしいだろうが、そもそもこの状態が」
銀波 嵐:「いずれ元の、あるべきかたちに戻る」
銀波 嵐:「凪もそう言っていた」
銀波 嵐:そう、そう聞かされた。
綱井楪:「……」
銀波 嵐:そして嵐もまたそれを確信している、腑に落ちる、理解ができる。
銀波 嵐:凪は間違えない、決して。
銀波 嵐:だから自分はそれを信じるだけだ。
綱井楪:「ふふっ」笑う。
綱井楪:ロイス取得 銀波嵐 〇執着/■■
銀波 嵐:「……?」
銀波 嵐:眉を歪め、
綱井楪:一瞬だけ持ち上がった口角は、すぐに元の無表情に戻って。
綱井楪:座席を立ち、銀波嵐の前へ。屈み込んで目の高さを合わせる。
綱井楪:長く黒々とした睫に囲われた空色の瞳が、至近距離から君の眼を覗き込む。
綱井楪:「やっぱり」
綱井楪:低い囁き声が耳朶に届く。
綱井楪:「いなくならせるのは勿体ないわ」
銀波 嵐:「ッ」
銀波 嵐:「やめ……ろ」
銀波 嵐:「俺に……興味を、持つな」
銀波 嵐:「俺に……勝手に触るな」
銀波 嵐:やめろ、やめろ、それは許されない。
銀波 嵐:これは凪の身体だから、勝手は許されない。
銀波 嵐:だから、ああ、こいつも。
銀波 嵐:―――敵、だ。
綱井楪:「凪なら、私を許してくれる」
銀波 嵐:「ああ……」
銀波 嵐:そうだろう、凪は許す、全部を許してくれるだろう。
銀波 嵐:だから、これは。
銀波 嵐:「"俺"は……許さねェ」
銀波 嵐:誰を?
銀波 嵐:答えは無い。
銀波 嵐:今ここに凪はいない。
早乙女六華:「……やっぱりいじけてる」独り言ちるように。
綱井楪:「興味を持つのも、触るのも……だけど」
綱井楪:かつての彼女の真意は知らない。自分のことが伝えられていなかったことに疑問はある。だが。
綱井楪:「……こうしたら、どうするのかしら」
綱井楪:「あなたは」
綱井楪:手を伸ばす。
銀波 嵐:ビクリ、と思わず身をすくめる。
綱井楪:やや冷たく細い指先が、ピアスで飾られた耳を撫でる。
銀波 凪:『大丈夫だよ』
銀波 凪:『全部全部大丈夫』
銀波 凪:『最後には』
銀波 凪:『私が全部大丈夫にしてあげますから』
銀波 嵐:ならば、はやくしてくれと願う……
銀波 嵐:「(この世界は、俺には、途方もなさすぎる……)」
珊瑚夜:オカルト研究部の部室。その唯一の部員はいないが、遠慮することもなく居座り、我が物顔で資料をめくっている。
リウトペルガ・ウィンニール:「それ、面白いでしょ」
リウトペルガ・ウィンニール:持ち込んだ私物のティーセットで淹れた紅茶を机へ置き、そう声をかける。
珊瑚夜:「……リウトペルガってオカルトが好きだったのね」雑誌を眺め呟く。
珊瑚夜:「未知の生物への興味はともかく、実在の人物を面白おかしく書くのはあまり好きではないわ」
リウトペルガ・ウィンニール:「そうかい? ……」適当な雑誌をパラパラと捲る。
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクはむしろそういうのになる側だったからね。あんまり気にしたことなかったな」
珊瑚夜:「……あなたの淹れる紅茶は好きよ。ありがとう」紅茶をすすり、呟く。
珊瑚夜:「……リウトペルガが長く生きていることは知っていたけれど。凪と……何かあったなんて知らなかったわ」
リウトペルガ・ウィンニール:「……ああ」
リウトペルガ・ウィンニール:少し声のトーンが落ちる。
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクの手落ちって部分は確かにあったから。あんまり……言いたくなかったのかな」
珊瑚夜:「やっぱり私は子供ね。あなたのことを何でも知ってる、なんて思い上がってはいなかったけれど」
珊瑚夜:「あなたの悩みの助けにもなれなかったなんて。他人に興味がないって言われても仕方がないわ」困ったように笑っている。
リウトペルガ・ウィンニール:「嵐君に言われたこと、気にしてるのかい?」
リウトペルガ・ウィンニール:その小さな手で彼女の頭を撫で、柔らかく微笑みかける。
珊瑚夜:「ん……」撫でられ、恥ずかしそうに目を反らす。
リウトペルガ・ウィンニール:「夜君は優しいよ。今も、実在の人を面白おかしく書くのは好きじゃない、って言ってたでしょ」
珊瑚夜:「……気にしているつもりはなかったのだけれど。結局それだって……『私が嫌だから』ということでしかないわ」
珊瑚夜:「結局は私がしたいように、私が優しくしたい人に優しくするだけ。自己満足でしかないのだから……自分にしか興味がないともいえると納得したの」
珊瑚夜:「……でも、リウトペルガにそう言ってもらえて、嬉しいと思っている自分がいるわ」またも困ったように微笑む。
リウトペルガ・ウィンニール:「そんなことを言い出したら、世の中の人間行為は全て自己満足だよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「人に優しくしようと思えるなら、それは優しいのさ。多分ね」
リウトペルガ・ウィンニール:「そうとも、存分に嬉しくなるといいよ」
珊瑚夜:「……やっぱり、リウトペルガは優しいわ」
珊瑚夜:「ずるいわ……別れたのに、まだ好きにさせるつもり?」
リウトペルガ・ウィンニール:「優しい? ……どうだろうね、優しいのかな。ボク」
珊瑚夜:「……あなたに撫でてもらって、笑ってもらえて」撫でる手を両手で握り、己の頬へと押し付け、頬ずりする。
珊瑚夜:「落ち込んでいた気持ちが消えてしまった。私は嬉しくなってしまう……そうやってくれるあなたは、優しいと思うわ」
リウトペルガ・ウィンニール:「そうなのかな」どこか虚ろな表情で、小さく呟く。
リウトペルガ・ウィンニール:最前自分が口にした定義に則るのならば、確かに自分は『優しい』のだろう。
リウトペルガ・ウィンニール:しかしそれを無条件に肯定することは、……
珊瑚夜:「凪……嵐さんのことを気にしているの?」
珊瑚夜:「……それとも、私と付き合って別れたことに、何かしらの感傷を抱いてくれているのかしら?」悪戯っぽく笑う。
リウトペルガ・ウィンニール:「うーん」
リウトペルガ・ウィンニール:唸り声を上げる──わざとらしい調子で。
リウトペルガ・ウィンニール:「勿論あるさ。夜君が落ち込んでたら励ましたくなるくらいにはね」
リウトペルガ・ウィンニール:そう言って、軽くウインクしてみせる。
珊瑚夜:「……はあ。私ってそんなに頼りないのかしら?」こちらもわざとらしくため息をつく。
珊瑚夜:「私だって、リウトペルガが悩んでいるなら、力になりたいのよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「違うね。ボクがしっかりしすぎてるのさ!」その小さな背を反らせて胸を張る。
珊瑚夜:「ふふ……あなたが周りから思われているよりしっかりしていることを、私は知っているけれど」その様子を、どこか寂しい目つきで見つめ、微笑む。
珊瑚夜:「誰も頼らず孤独にいることを、しっかりしているとは言わないのよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「それは勿論そうかも知れない。しっかりしていることと孤独であることは無関連だからね」
珊瑚夜:「……あなたの助けになるどころか、困らせてしまうかもしれないけれど。お願いしたいことがあるの」
リウトペルガ・ウィンニール:「ん、なんだい?」
珊瑚夜:鞄をまさぐると、小さなロボットを取り出す。――珊瑚夜の姿を模した機械。
珊瑚夜:「これ、……あなたが持っていてくれないかしら」
リウトペルガ・ウィンニール:「……どうして?」
珊瑚夜:「私が持っていても、……寂しくなるだけだから」
珊瑚夜:「この子は……ずっと、ひとりぼっちで」
珊瑚夜:「……せめて、この子だけでもあなたのそばに居させてあげたいの」
リウトペルガ・ウィンニール:「………」
リウトペルガ・ウィンニール:「この子が……寂しくなるのは、かわいそうだね」
リウトペルガ・ウィンニール:「でもね」
珊瑚夜:「……でも?」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクといても……それはそれで、かわいそうだもの」
珊瑚夜:「……そうかしら?」
リウトペルガ・ウィンニール:「夜君の家にはいっぱいロボットがいたろう」
珊瑚夜:「ええ、そうね」
リウトペルガ・ウィンニール:「その子たちと一緒に、──夜君と一緒にいた方が、寂しくないんじゃないかって」
珊瑚夜:「……この子は、『私』だから」
珊瑚夜:「『私』が求めるのは、リウトペルガ・ウィンニールだけよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「……それなら、なおさらさ」
珊瑚夜:「それも『私のため』かしら」小さく微笑む。
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクは一人っきりだから。じっと動かない北極星みたく」
リウトペルガ・ウィンニール:「そう──、いや、これは、……」
リウトペルガ・ウィンニール:「……分かんないな」
珊瑚夜:「ねえ……リウトペルガ」
珊瑚夜:「あなたと付き合うようになってから、ずっと考えていたことがあったのだけれど」
リウトペルガ・ウィンニール:「……なんだい」
珊瑚夜:「もし、機械の中に私の人格も感情も、完璧に移すことが出来たのなら」
珊瑚夜:「その機械は『私』といえるんじゃないかしら?」
珊瑚夜:「あなたが望むのなら……私はこの小さな機械の中で、あなたと永遠に生きる」
珊瑚夜:「あなたが電源を切りたいときに、切っていいのよ」
珊瑚夜:「どうかしら?」甘い香りを漂わせ、にこりと微笑む。
リウトペルガ・ウィンニール:「そんなこと、考えるものじゃないよ」
珊瑚夜:「どうして?」
珊瑚夜:「あなたと共に生きるのはいけないこと?」
リウトペルガ・ウィンニール:「……あんまり」
リウトペルガ・ウィンニール:「あんまりね。こんなこと言うのは好きじゃないんだけど」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクが生きてることが、そもそもいけないことなんだよ」
珊瑚夜:「あら。じゃあ死ぬ?」
珊瑚夜:明るい口調だが、その目は笑っていない。
珊瑚夜:「あなたが望むのなら、私があなたを殺してあげる」
リウトペルガ・ウィンニール:「死なない。まだまだ生きてたいからね」そう言って笑う彼女の瞳は、しかし妙な色を帯びている。
リウトペルガ・ウィンニール:「もっとおいしいもの食べたいし。漫画の続きだって気になるし。来月出るゲームだってやりたいし」
珊瑚夜:「なら、まだまだ生きてたいと思ううちは、あなたの傍にいさせてよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「来年公開の映画だって見たいし。コンサートも行きたいし、ライブも行きたいし」
珊瑚夜:「世界そのものが滅びでもするか、あなたがもう充分だと思うその時まで」
珊瑚夜:「あるいは……そんな日が来ないのなら、ずっと」
リウトペルガ・ウィンニール:「……ボクは子供だから」
リウトペルガ・ウィンニール:「この未練が消えることはないんだ」
珊瑚夜:「いいじゃない。消えなくて」
珊瑚夜:「次から次へと生まれる未練にずっとすがって、一緒に」
珊瑚夜:「永遠にいましょうよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「永遠」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクのこれは、永遠じゃないよ」
珊瑚夜:「なら、それが終わるその時まで」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクは流転と停滞の中間にある」
珊瑚夜:「私が傍であなたの終わりを見届けるわ」
珊瑚夜:「私は永遠に生きたいんじゃない。あなたとずっと居たいのよ」
GM:シーン終了です。
【Middle first half/早乙女六華】
玻璃兎市内 ホテル
早乙女六華:この日、早乙女と綱井が赴いた学園の巡回調査は深夜まで続き、結局徒労に終わった。
早乙女六華:疲れた心身に追い打ちを掛けるように、帰路、歓楽街に差し掛かったところで突然の豪雨に見舞われた。
早乙女六華:濡れた服のまま帰るわけにもいかず、二人はすぐ近くのホテルで雨宿りをすることになったのだった。
早乙女六華:「……」
早乙女六華:揃って部屋に入る。
早乙女六華:それなりに広い部屋だが、ベッドは部屋の中央に大きなものが一つだけ。
早乙女六華:二人とも全身ずぶ濡れになっている。秋の冷たい雨に打たれ、君もかなり寒くはあるだろうが、早乙女の様子はそれにしても異常だ。
早乙女六華:白い肌には最早生気が感じられず、がたがたと震えて、今にも倒れそうだ。
早乙女六華:「……ぅ……」
早乙女六華:入り口から数歩も進まずに崩れ落ちそうになる。
綱井楪:「六華?」
綱井楪:咄嗟に支える。平時の印象とは異なり、いざという時の反応は素早い。
綱井楪:「……寒いの?」
早乙女六華:触れると、その体は氷のようだ。元々体温は低いが、明らかにおかしい冷たさ。
早乙女六華:「……」
早乙女六華:震えながら、こくりと頷く。
早乙女六華:「大、丈夫、だ」
早乙女六華:「湯を……沸かしてくれるか」
綱井楪:「……」
早乙女六華:朦朧とした様子で、濡れた服をぎこちなく脱いでいく。
早乙女六華:濡れそぼった黒髪の先からは水が滴り落ちている。
綱井楪:首を振る。白髪の先端から滴った雫が、光の球となって散る。
綱井楪:「じっとして」
綱井楪:そう言うや、早乙女六華の服に手を掛けて。
綱井楪:濡れそぼった上着を脱がし、そのまま手早くブラウスのボタンも外していく。
早乙女六華:「……」されるがまま、震える不規則な息を吐く。
早乙女六華:無言のまま抵抗もしない。
綱井楪:……やがて露わになった、青白くか細い上半身の、胸元を覆う最後の守りも、躊躇うことなく剥ぎ取って。
綱井楪:感慨を示すでもなく次に移る。
早乙女六華:「……」
早乙女六華:素肌を晒して、視線を気にする様子も無い。或いはそんな余裕もないのか。
早乙女六華:「……楪」
早乙女六華:「もういい」
早乙女六華:「自分で脱げる」
綱井楪:スカートへと掛けた手を離す。「……そう」
綱井楪:「じゃあ、早く脱いで。良くないわ」
早乙女六華:「……ああ」
早乙女六華:のろのろとした動きでスカートを下ろし、下着も同様に。
早乙女六華:痩せて骨ばった、しかししなやかな身体を外気に曝す。
綱井楪:言いながらも既に脱がした服をハンガーに掛け、ついでに暖房の温度を思い切り上げる。
早乙女六華:覚束ない足取りで浴室まで歩いていき──
早乙女六華:「あ」
早乙女六華:小さな声を上げる。
綱井楪:追加で脱がれたそれらも同じように干して──
綱井楪:「どうしたの?」
早乙女六華:そちらに目を向けると、浴室の扉の前で早乙女が硬直している。
早乙女六華:恐らくドアノブを握ろうとしたのだろう。
早乙女六華:その腕は中ほどから先が無くなっており、
早乙女六華:雪のように白い掌が、文字通りの雪の塊と化して床に転がっている。
早乙女六華:「……」
早乙女六華:「すまない」
早乙女六華:「手伝ってくれるか?」
早乙女六華:己の手を見下ろして、さしたる驚きも無い様子で言う。
綱井楪:流石に目を瞠る。
綱井楪:「……いい、けど」
綱井楪:「温めるので良いのよね」
早乙女六華:「……ああ」
早乙女六華:「もっと寒くされたら、死んでしまう」
早乙女六華:冗談にもならないようなことを真顔で口にする。
綱井楪:「……溶けたりしないでよ」
綱井楪:浴室の扉を開け、少女を抱いて中に入れ、
綱井楪:「……くしゅっ」
綱井楪:小さくくしゃみをする。
早乙女六華:「……お前も寒いんじゃないのか?」
綱井楪:「……寒いけど、死んだりはしないわ」
綱井楪:「だから、先にお湯を浴びて」
早乙女六華:「いいや。人も寒さで死ぬだろう」
早乙女六華:「お前も暖まったほうがいい」
早乙女六華:「死にはしなくとも、風邪を引く」
早乙女六華:「それに最近の機械は、よくわからん」サウナやジャグジーなど様々な機能の付いた浴室を見回す。
綱井楪:「……」
綱井楪:目を伏せて逡巡する。
綱井楪:「……いいの?」
早乙女六華:「……何がだ?」
早乙女六華:「いやらしいことでも考えたか」
早乙女六華:「この身体は殆ど子供のそれだと思うが……?」
綱井楪:ふう、と息を吐く。
綱井楪:「……お先にどうぞ」シャワーを取り、湯を吐き出し始めたそれを、残っている方の手に持たせて。
綱井楪:「……私も、服を脱いでくるから」
綱井楪:そう言い残し、ひとたび外に出る。
早乙女六華:「……ん」シャワーを受け取り、熱いお湯を頭から浴びる。
早乙女六華:「はぁ……」心地よさそうな声と水音が、背後から聞こえてくる。
綱井楪:……ややあって、再び浴室の扉が開く。
綱井楪:「……どう?」
綱井楪:湯を浴びているところへ、後ろから声を掛けて。
早乙女六華:「……うん」
早乙女六華:振り向く。落ちた腕は、先程よりも回復しつつある。雪像を雪で修復したように。
早乙女六華:「なんとか助かった」綱井を見る。
早乙女六華:「お前のお陰だ」
綱井楪:「……そう。それは……」
綱井楪:視線を受け、少し落ち着かなげに、俯いて襟足の毛を弄る。
綱井楪:その下にあるのは、血管が青く透けて見える、色素の薄い裸身。
綱井楪:全体に細い輪郭の中で、豊かに盛り上がった双丘と、滑らかながらも肉付きの良い太股が目を引く。
綱井楪:「……良かった」
早乙女六華:「どうした?」首を傾げて「こっちに座れ。流してやろう」バスチェアを示す。
綱井楪:「ええ……」
綱井楪:普段よりも小さな歩幅で、示されるままの位置に座る。
早乙女六華:他人にそうしたことがあるのか、意外に慣れた様子で湯を掛けて、身体を流す。
早乙女六華:「……わたしはな」
早乙女六華:シャンプーを掌にとって、泡立てながら。
早乙女六華:「元々、ただの雪の塊なんだ」
綱井楪:「……うん」
早乙女六華:優しく滑らかな手つきで、綱井の髪に指を通し、洗っていく。
綱井楪:されるがままに身を任せる。
早乙女六華:「……だから」
早乙女六華:「寒くなると、身体が元の雪に戻ろうとしてしまう」
綱井楪:「知らなかった……」
綱井楪:「そして、意外だわ」
綱井楪:「ふつうは逆じゃないの……?」
早乙女六華:「そうかもしれんな」ほんの少し笑って
早乙女六華:「流すぞ」髪にお湯をかける。
綱井楪:「ん」
綱井楪:泡と湯が体を滑り落ちていく感触を味わう。
早乙女六華:濯ぎ残しが無いよう、しっかり流して。
早乙女六華:今度はボディソープを手に取る。
早乙女六華:「……わたしは、暖かくないと生きていけないんだ」
早乙女六華:「自分が人であることを忘れれば、すぐに元の雪に戻ってしまう」
早乙女六華:「それは……ただ温度の話じゃない」
早乙女六華:「心の話だ」
早乙女六華:するり、と背後から抱き着くようにして。
早乙女六華:「楪がここにいてくれて、よかった」
早乙女六華:濡れた黒髪とまだ少し冷たい素肌、小さな膨らみの感触が背に触れる。
綱井楪:「……そういう話は、座学でもされるけれど」
綱井楪:「……あの」
綱井楪:遠慮がちに、自分の体に回された腕に触れる。
早乙女六華:「……どうした?」
綱井楪:「そんな風にされると、少し落ち着かない……」
綱井楪:「……体も。自分で洗うから」
早乙女六華:「……落ち着かないか?」
早乙女六華:その言葉に、却ってさらに身体を密着させる。
綱井楪:「…………」露が光る睫毛を閉ざす。
綱井楪:「……私も。温度が欲しくなる時がある」
綱井楪:「あなたみたいに、にわか雨に打たれたくらいで死にかけたりはしないけれど。……心の話」
早乙女六華:「……そういう時は」
早乙女六華:耳元で囁く。静かに降り落ちる雪のような声。
早乙女六華:「……どうするんだ?」
綱井楪:ふるふると首を振る。癖のある毛先が、シャンプーの仄かな香りを伴って鼻先に触れる。
綱井楪:「ひとのことは分からないわ」
綱井楪:「でも、私は」
綱井楪:「……。確かめずにはいられなくなる」
綱井楪:「他人の中に、自分の存在がちゃんとある、って」
綱井楪:「だから、嬉しかった。小さい頃に会ったきりのあなたが、私を覚えてくれていたこと」
綱井楪:「そして……」
綱井楪:腕に触れたままでいた手に、少し力を込める。
綱井楪:「……抑えが利かなくなりそうなの」
早乙女六華:「……」
早乙女六華:くすり、と。目を細めて笑む。
早乙女六華:「……楪。さっきは答えなかったが」
早乙女六華:「……ふふ」
早乙女六華:「この身体は、殆ど子供だぞ?」
早乙女六華:口ではそう言いつつ、指先では背骨をなぞるように撫でる。
綱井楪:「……見損なった?」
綱井楪:振り返る。目を合わせる。
綱井楪:不安そうに揺れる空色の瞳は。そこだけは、かつて手を引いた幼子のように。
綱井楪:「……あの時の子供が、こんなにいやらしく育ってたなんて」
早乙女六華:「……まさか」
早乙女六華:「お前こそ、子供の頃の憧れに幻滅していないといいがな」
早乙女六華:吐息の触れる距離まで顔を寄せて、けれど自分からはそれ以上はせず。
早乙女六華:「あたためてくれ」
早乙女六華:じっと目を見て、囁くように言う。
綱井楪:ロイス取得 早乙女六華 ○思慕/不安
綱井楪:こくり、と頷く。細い腰に手を回して抱き寄せ、互いの肌触りを共有して。
綱井楪:そっと、唇に唇を重ねた。
早乙女六華:ロイス取得/綱井楪 ○慈愛/郷愁
珊瑚夜:『七不思議』などの怪異は、どうしても真昼間の目撃率は下がる。
珊瑚夜:ならば、日没後になにかしらの原因があるのではないか?
珊瑚夜:そういった発想から、珊瑚・銀波・リウトペルガの3名は夜の学校を探索し、部室で一休みをしていた。
銀波 嵐:"夜の学校"のなんてものは、怪談の温床でもある通り寂しく、恐ろしいものであると、なんとなくそう考えていた。
銀波 嵐:しかし、実際に目にしたそれは。
銀波 嵐:「(なんというか、ほのかに……"騒がしい")」
銀波 嵐:「(そういうもんなんだな……)」
銀波 嵐:日中に充填された若い生命力、そのパワーが、まだそこかしこに満ちている。
銀波 嵐:そんな印象を受ける。
珊瑚夜:「夜の学校が百鬼夜行になっているとは思っていなかったけれど。さすがにすぐに原因が見つかるとは言わないわね」
リウトペルガ・ウィンニール:「モーツァルトもモナリザも歴代校長もちっとも動かないし」
リウトペルガ・ウィンニール:「プールにもトイレにもグラウンドにも手は生えてこない上に」
リウトペルガ・ウィンニール:「骨格模型も人体模型も動物の剥製も走ってなければ」
リウトペルガ・ウィンニール:「マリア様も二宮金次郎も足だけの幽霊も歩いてない」
銀波 嵐:備え付けの電気ケトルで勝手に沸かしたお湯を自前のカップ、ステンレスのそれに注ぐ。
銀波 嵐:登山リュックから取り出したスティックタイプの即席コーヒーの封を切る。
銀波 嵐:「やっぱり、精神性の"流行り病"なんじゃねえの?」
銀波 嵐:ずず、とひとくち。
リウトペルガ・ウィンニール:「だったらそれに越したことはないんだけどねぇ」
珊瑚夜:「そうなのだとしても、何もないところからこれだけ大勢に発症するとは考えづらいわ」長い髪をかきあげ資料をめくる。
珊瑚夜:「精神に何らかの作用を及ぼす力を使っているとか……、何かしらの原因があるはずよ」
銀波 嵐:「そりゃ原因があるんだろうよ、俺たちがわざわざ駆り出されたんだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「そうだねぇ。実際何か、妙な雰囲気はある」
銀波 嵐:「んな当たり障りの無いコメントしか言えないわけ?」
銀波 嵐:自分を棚に上げ、攻撃的な姿勢。
珊瑚夜:「あら。あなたが『異常なし、以上』とでも言って帰ってしまいそうだったから、釘を刺したつもりだったけれど」涼しい顔で笑っている。
リウトペルガ・ウィンニール:「分かってることでも、改めて言葉にして纏めるのは大事だよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「頭の中だけで考えを纏められるのは、歴史に残るような天才だけさ。ちゃんとノート取ってるかい?」
銀波 嵐:「ア?売ってんのかテメェ」
銀波 嵐:起ち上がる。
銀波 嵐:「俺は仕事である以上手は抜かねぇ」
銀波 嵐:「凪の評判に直結するからな」
銀波 嵐:「つまり軽く見たわけだ、テメェは」
銀波 嵐:虎の尾、今にも飛びかからんばかり。
リウトペルガ・ウィンニール:「凪君の評判、か」
リウトペルガ・ウィンニール:クスクスと、小さな笑いを漏らす。
珊瑚夜:「ふぅん……」興味深そうにじろじろとその姿を眺めると、つかつかと近寄る。
銀波 嵐:「ハ、なんだ、やろうってか?」
珊瑚夜:「あなた……」顔を近づける。甘い香りが漂う。
珊瑚夜:「凪のこと、好きなのね」にこりと微笑む。
銀波 嵐:「は?」
銀波 嵐:キョトン、と。
銀波 嵐:「んなの当たり前だろうが、たったひとりの家族なんだからよ」
銀波 嵐:すっかり怒気は霧散し。
珊瑚夜:「ふふ……」微笑むと、耳元で囁く。
珊瑚夜:「私も凪のことが好きよ」
銀波 嵐:「……やっぱ殺す」怒気再充填、腕がグ、とこわばる。
銀波 嵐:「(あっちもオーヴァードなんだ、これくらいどうせ傷にも残りゃしねえ)」
銀波 嵐:「(イッペン、"わからせて"おく必要がある)」
銀波 嵐:右手、親指から順番に三本だけを開き、鉤爪の構え。
珊瑚夜:「凪が嫌われていた方が嬉しい?」その様子を見て目を細めて笑う。
リウトペルガ・ウィンニール:「へえ、驚いたな」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミは凪君のこと、家族だって思ってるんだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「それとも、そう思うことで折り合いをつけてるのかな」
銀波 嵐:「……」振り上げようとしたソレを。
銀波 嵐:「んだと?」気が逸れる。
銀波 嵐:「折り合いってのはどういう意味だ、俺はどうやら出来の悪い生徒みたいだからな」
銀波 嵐:「教えてくれよ、センセ」わざとらしいイントネーションで。
リウトペルガ・ウィンニール:「だって、『自分』でしょ」
リウトペルガ・ウィンニール:「確かに人格は違う。主たる人格から生まれたものであると考えれば、親子に近いのかも知れない」
銀波 嵐:「……違う」断定する。
銀波 嵐:「凪は凪で、俺は俺だ」
リウトペルガ・ウィンニール:「でも肉体は共通だ」
銀波 嵐:「ああそうだ」
銀波 嵐:「だからそのうち返す」
リウトペルガ・ウィンニール:「『返す』」
リウトペルガ・ウィンニール:「その『返す』だって、どういう形になるかはまだ分からないんだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミが消えて凪君だけになるかも知れないし、本来の『戦闘用人格』の通りに高侵蝕時にのみ出てくるようになるかも知れない」
リウトペルガ・ウィンニール:「もしかしたら──『凪』と『嵐』が統合されて、どっちでもない人格になるのかも」
銀波 嵐:「俺は消える、これは確定事項だ」確信の籠もった声で、言う。
銀波 嵐:「俺はな、もともと場を持たせるための繋ぎ、そういう"機能"なんだよ」
銀波 嵐:「役目を終えて、まだそこにいる意味なんてありゃしねェ」
銀波 嵐:銀波嵐は常に準備を進めている。
銀波 嵐:この世から消えるための準備。
リウトペルガ・ウィンニール:「繋ぎね、繋ぎ」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミがそれをどうやって確信してるのかっていうのもちょっと気になるけど──」
銀波 嵐:「(どいつも……こいつも)」
銀波 嵐:「(俺の、"俺たち"の邪魔をしようとしやがる)」
銀波 嵐:やはり、敵だ。凪以外は。
銀波 嵐:その認識を新たにする。
珊瑚夜:「……彼女は、『嵐』で」
珊瑚夜:「『凪』の肉体を、不当に占拠している」
珊瑚夜:「でも、本人にはきちんと返すつもりがあるから、大丈夫」
珊瑚夜:「そうよね?嵐さん」にこりと微笑む。
銀波 嵐:「不当、だァ?」今度こそ、爆発した。
銀波 嵐:珊瑚を押し倒し、馬乗りに、胸ぐらをねじり上げる。
銀波 嵐:「これは俺たちの"信頼関係"だ」
銀波 嵐:「わかったような口聞いてるんじゃねえぞ?」
銀波 嵐:ギチギチと布地が悲鳴を上げる。
珊瑚夜:「げほっ。……『信頼関係』のわりには、随分」
珊瑚夜:「後ろめたそうな目をするのね」
銀波 嵐:「元はと言えば、そこで偉そうに講釈垂れてる小せえのが悪いんじゃねえか」
リウトペルガ・ウィンニール:《lōkom hēr》『我はこちらを見張る』
リウトペルガ・ウィンニール:その言葉と共に、二人の身体が透明な何かに引き離される。
銀波 嵐:「……」ス、と目が冷える。
銀波 嵐:ぱ、と手を離し起ち上がる。
リウトペルガ・ウィンニール:「ほらほら、呉越同舟呉越同舟」
銀波 嵐:パンパンと両手を叩き。
銀波 嵐:「なんだ、安心したぜ」
珊瑚夜:「げほっげほっ。ありがとう、リウトペルガ……」うずくまってせき込んでいる。
銀波 嵐:「ミス超越者気取り、どうもありがとう、てんで的外れだ」
銀波 嵐:「おかげで目が冴えたぜ、何をマジになってたんだろうな……」
銀波 嵐:自嘲気味に、笑う。
珊瑚夜:「言ったでしょう、私たちは呉越同舟じゃないわ」息を整えながら呟く。
珊瑚夜:「彼女が『凪』を好きで、きちんと彼女にその身体を返す気があるのなら」
珊瑚夜:「私たちは敵じゃない。仲間よ。そうよね?」笑顔を嵐に向ける。
銀波 嵐:「いいや、アンタは、俺の敵だ」
銀波 嵐:「凪がそう言ったからじゃあない」
銀波 嵐:「俺が、俺自身がそう思った」
銀波 嵐:昏い目で淡々と、
銀波 嵐:「そうやって、何もかもわかってますよってツラして、べたべた"俺たち"に触れるな……」
珊瑚夜:「凪の評判を気にして、いつか消えると言っている割には、あなたは『嵐』を大切にするのね」相変わらず微笑んでいる。
銀波 嵐:「ああ……そうだな」
銀波 嵐:「少なくともテメエに舐められてはいそうですかって済ませるほど安くはねえ」
銀波 嵐:「はじめは……その涼しそうな顔グチャグチャに歪ませてやったら楽しいだろうなと思ってたが」
銀波 嵐:「今はもう興味もねえ」
銀波 嵐:「勝手にやってろ、そこのアンタもだ、センセ」
珊瑚夜:「ふふっ、怖い。さすが『戦闘用人格』ね」言葉と裏腹に楽しそうな声色。甘い香りが漂う。
リウトペルガ・ウィンニール:「ふぅむ」
リウトペルガ・ウィンニール:「ちょっと気になってたんけどさ」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミの存在が凪君──主人格が戻ってくるまでの『繋ぎ』だとして」
リウトペルガ・ウィンニール:「どうしてその『繋ぎ』に名前なんて付けたんだい?」
銀波 嵐:「あ?名前は必要だろうが」
銀波 嵐:「どう呼ぶんだよ、俺を」
銀波 嵐:「凪ってわけにもいくかよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「『凪』でいいじゃないか。別人格とはいえ、その基は同じだもの」
銀波 嵐:「いいわけあるか」
銀波 嵐:「何なんださっきから、俺をどうしても凪と呼びたい理由でもあるのか?」
珊瑚夜:「……リウトペルガ、あなたは『凪』と『嵐』を、気の持ちようで変えられるような……あるいは機嫌がいい時と悪い時、もしくはアルコール依存症の人がアルコールが入っているときといないとき」
珊瑚夜:「そんな風に『同じもの』として思っているのかしら」
銀波 嵐:「"俺"を認めたくないのか?」
銀波 嵐:「自分の不始末だからな」
銀波 嵐:「なんだ可愛いとこあるじゃねえかよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「いやいや、そんなつもりはないよ」
銀波 嵐:「じゃあどういうつもりだよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「僕が気になってるっていうか……気にしてるのは」
リウトペルガ・ウィンニール:「捨てる予定のものに名前つけちゃうと、無駄に愛着が湧いちゃうよねって話」
銀波 嵐:「捨てるわけじゃねえ」
銀波 嵐:「元に戻るだけだ」
珊瑚夜:「ふうん……」小さく声を漏らし、含みを持った目でリウトペルガを見つめるが、静かに話を聞いている。
銀波 嵐:捨てる、という言葉に少し背筋が冷えた。
銀波 嵐:違う、凪は、そんなことはしない。
銀波 嵐:だからあの女の言ってることはやはり的外れだ。
珊瑚夜:「……持つ勇気もないくせに、捨てる話をするなんて滑稽ね」笑顔をリウトペルガに向ける。
リウトペルガ・ウィンニール:「だからこそ言っているのさ。大事なものを捨てたくないなら、いっそ持たない方がいい」
銀波 嵐:「だから、捨てるわけじゃねえって……言ってるだろう」
銀波 嵐:繰り返す、どこか覇気はない。
珊瑚夜:「ふふ、ふふふふっ」心底嬉しそうに笑う。
珊瑚夜:「それでもあなたが一度は私を『持とう』としてくれたこと、嬉しく思うわ」甘い香りを漂わせ、リウトペルガに微笑む。
銀波 嵐:「……なんだ、オタク俺と話してたんじゃねえのか?」
銀波 嵐:どこか疲れた表情で、リウトペルガに。
銀波 嵐:「もういい、そこのイカれ女とよろしくやってくれ……」
銀波 嵐:「俺に……関わるな」
リウトペルガ・ウィンニール:「そのつもりだったんだけどね」少し困ったような、哀しいような表情で答える。
銀波 嵐:「もう、あそこには帰らねえよ……」
銀波 嵐:「俺のものがあったら勝手に処分してくれ」
銀波 嵐:「無いとは思うがな」
銀波 嵐:「一応世話になったこと、感謝はしておく」
銀波 嵐:そうだ、遅すぎるくらいだ。
銀波 嵐:自分はいったい何を。
リウトペルガ・ウィンニール:「そんな訳にはいかないさ」
リウトペルガ・ウィンニール:「もう一度言うけど──」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミの身体は凪君のそれと共有だ。キミが厳しい環境に身を置けば置くだけ、凪君にとっての負担にもなるんだよ」
珊瑚夜:「あら、じゃあうちに来る?」さらりと涼しい顔で尋ねる。
珊瑚夜:「一人では持て余しているの。顔を合わせずに生活することも可能だと思うわ」
銀波 嵐:「自分の胸ぐらひねり上げた相手によくそんなこと言えるな……やっぱオタクイカれてんのか?」
珊瑚夜:「『あなたの身体は凪と共有』だからよ。言ったでしょう?私は『凪』が好きなの」
リウトペルガ・ウィンニール:「夜君の家は広いからねぇ」
リウトペルガ・ウィンニール:「ただまあ……喧嘩になりそうだから、ボクとしては止めておきたいな」
銀波 嵐:「……俺には仕事の稼ぎだってある」
銀波 嵐:「UGNの寮を当たったって良い」
銀波 嵐:「だからもう……」
銀波 嵐:壁際に寄りかかり、ずるずると腰を下ろす。
銀波 嵐:「お願いだ、一人にしてくれ」
銀波 嵐:「ひとから話しかけられ続けると……おかしくなる」
銀波 嵐:「ずっとずっと準備してたのに」
銀波 嵐:「妙なことばっかり考えて、何も手につかなくなる」
珊瑚夜:「……そう。あまり話しかけて疲れさせても悪いわね」
銀波 嵐:「……」
珊瑚夜:「あなたなら、いつでも遊びに来ていいから。利用できるものは利用したらいいわ」
珊瑚夜:(その割には……寂しそうに見えるけれど)その言葉を口にするとまたも怒らせると思い、胸の中でつぶやいた。
リウトペルガ・ウィンニール:「……戻るのを待ってるよ。キミの私物は全然ないけど、ボクがキミのために勝手に買ったものは一杯あるんだからね」
GM:シーン終了。
【Middle first half/リウトペルガ・ウィンニール】
GM:3番目のシーン権を獲得したのは、リウトペルガさん。
GM:誰を指名しますか?
リウトペルガ・ウィンニール:迷ったんですが早乙女さんで
早乙女六華:了解です
GM:ではサブシーンは綱井さん、珊瑚さん、銀波さんになります。
GM:リウトペルガさんは登場侵蝕を振ってください。
リウトペルガ・ウィンニール:リウトペルガ・ウィンニールの侵蝕率を1d10(→ 7)増加 (45 → 52)
星宮学園 屋上
リウトペルガ・ウィンニール:昼下がりの空は青々と晴れ渡っている。
リウトペルガ・ウィンニール:晩秋の冷気に吹き尽くされたかと思われた陽の暖かさは、しかし風の当たらぬ出入り口の陰にはかろうじてその残喘を留めている。
リウトペルガ・ウィンニール:「それにしてもさ」
リウトペルガ・ウィンニール:「会うの結構久しぶりだよね」
リウトペルガ・ウィンニール:どこかぼんやりした顔で、隣に座る早乙女六華へ話しかける。
早乙女六華:「そうか?……そうかもしれんな」ホットのおしるこ缶を両手で握るようにして暖を取っている。スカートの下には色気も何も無いジャージ。
早乙女六華:「何年振りだ?」
リウトペルガ・ウィンニール:「最後に会ったのっていつだっけね。二十年前とか? ……もうちょっと最近だった気もするな」
早乙女六華:「最近は世の中の変化も目まぐるしくて、追いつくのもやっとだ」
早乙女六華:「だがな、リウ」
早乙女六華:ごそごそとポケットを漁る。
リウトペルガ・ウィンニール:「そうだねぇ、ここ100年くらいは、……うん?」
早乙女六華:「見ろ。わたしは世間にちゃんと適応しているぞ」
早乙女六華:「スマホだ」
早乙女六華:そう言って、折りたためない形状のガラケーを取り出す。
リウトペルガ・ウィンニール:「………」
早乙女六華:「どうだ……」
早乙女六華:「驚いてものも言えんか」
リウトペルガ・ウィンニール:ポケットに収められたiPhone 12を出そうとして思い止まる。
リウトペルガ・ウィンニール:「逆によくスマホなんて言葉知ってたね」
早乙女六華:「わたしの情報網を甘く見るなよ」
早乙女六華:「常にトレンドには目を光らせている……」
早乙女六華:「mixiも始めたぞ」
リウトペルガ・ウィンニール:「mixiか~」
リウトペルガ・ウィンニール:「……あれ、昔は確か招待制だったよね。いつの間にかなくなったとか聞いたけど……」
早乙女六華:「……それで?」吹き抜ける寒い風に身を震わせて、リウトペルガに寄りかかる。
早乙女六華:「わざわざこんなところで、何か話でもあるのか?」
早乙女六華:「無いなら帰るぞ」
リウトペルガ・ウィンニール:「旧懐を温めようと思った、じゃダメ?」
早乙女六華:「それならもっと温かい場所で温めてくれ……」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミが寒いとこ嫌いなのは知ってるけどさ」
リウトペルガ・ウィンニール:懐からシガレットケースを出す。
リウトペルガ・ウィンニール:煙草葉を巻紙で巻き、その端を舌で湿らせる。
リウトペルガ・ウィンニール:白皙の肌の、色素の薄い唇から覗く赤い舌は、それ自体どこか蠱惑的な色彩がある。
早乙女六華:もぞもぞとマフラーに顔を引っ込めて、ほとんどリウトペルガを抱くようにする。
早乙女六華:「今時、教師が煙草か?」
リウトペルガ・ウィンニール:「だからわざわざこんなとこに来てるんじゃない」
リウトペルガ・ウィンニール:そういって笑いながら、煙草を咥える。
早乙女六華:「それでわたしを犠牲にしたわけか」
早乙女六華:「ニコチン以下か?わたしは」
リウトペルガ・ウィンニール:「あはは、ごめんってば」
早乙女六華:「まあいい。湯たんぽになれば許す」
早乙女六華:「お前はあたたかいからな」
早乙女六華:数少ない、自分より小さな相手を抱き締める。
リウトペルガ・ウィンニール:「そうかい? じゃ、もっと温かくなっちゃおっかな」懐から小さなスキットルを取り出す。
リウトペルガ・ウィンニール:言うが早いかその蓋を緩め、中の液体をちろりと舐める。
早乙女六華:「おい……」
早乙女六華:「流石のわたしもどうかと思うぞ」
リウトペルガ・ウィンニール:「そう? ボクも同感」
早乙女六華:「……」
早乙女六華:「いい。見逃してやるから、わたしにも寄越せ」
リウトペルガ・ウィンニール:はあ、とうっすら酒気を含んだ息を吐く。
リウトペルガ・ウィンニール:「キミ飲んだっけ? まあいいや、どうぞ」
早乙女六華:制服姿のまま、くぴくぴとスキットルから中身を飲む。
早乙女六華:ほふ、と常より僅かに赤らんだ顔で息を吐き。
早乙女六華:「……そもそも」
早乙女六華:「どうしてお前が教師なんてしてる?」
リウトペルガ・ウィンニール:「ここにいるのはUGNの仕事で……って、多分そういう意味じゃないよね」
早乙女六華:「ああ。生徒のほうがまだ似合うぞ」
リウトペルガ・ウィンニール:「生徒だと卒業しなきゃならないでしょ。その点先生なら、怪しまれない程度ならそこそこ長くいられるからね」
リウトペルガ・ウィンニール:「学校ってボクと──『ボクの有り方』と同じくらいの歳の子が多いからさ。普通の職場とかよりは馴染むんだ」
早乙女六華:「……教師と生徒が同じ心持では、困ると思うが……」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミにそんなこと言われるなんて!」軽く赤らんだ顔でけらけらと笑う。
リウトペルガ・ウィンニール:「……ま、でもね」
リウトペルガ・ウィンニール:しかしその笑いをすぐに収め、軽く目を伏せる。
リウトペルガ・ウィンニール:「ちょっと失敗したなとは思ってるんだ」
早乙女六華:「……失敗?」
リウトペルガ・ウィンニール:「多少、学生のみんなと仲良くしても」
リウトペルガ・ウィンニール:「先生なら。学生同士ほど想いに残ることはないと思ってたんだけどなぁ」
早乙女六華:「……生徒にか?」
早乙女六華:「それとも、お前にか?」
リウトペルガ・ウィンニール:「両方かな」
リウトペルガ・ウィンニール:ふー、と煙草の煙を吐く。
リウトペルガ・ウィンニール:「キミはほら、人の温かさが必要だけど」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクは、──」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクは人の心に残りたくない」
リウトペルガ・ウィンニール:「残ったとして、大して重要でもない、ちょっとした思い出の一部くらいがいいんだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「……ああ、なんだろ」
リウトペルガ・ウィンニール:「旧懐を温めるっていうか……愚痴を聞いてもらってるな」
早乙女六華:「年寄りの話なんてものは、得てしてそんなものだろう」
早乙女六華:「……寂しい話だな。だが、お前らしくはある」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクらしい?」
リウトペルガ・ウィンニール:「『ボクらしい』なんてもの、本当にあるのかな」
早乙女六華:「……ふ」
早乙女六華:僅かに笑う。
早乙女六華:「1000年も生きて、まだそんな年頃の子供のようなことを言う」
早乙女六華:「それが何よりお前らしいよ、リウトペルガ」
リウトペルガ・ウィンニール:「そうかなぁ」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクにはなんだか分からなくなってきた。いや、前から分かってなかったのかも」
リウトペルガ・ウィンニール:「子供のボクはもっと遊びたいと思ってる。もっと遊んで、人と会って、……」
リウトペルガ・ウィンニール:「年寄りのボクはもうやめたいって思ってる。もうキリがない、もう人に触れたくないって」
リウトペルガ・ウィンニール:「……多分、キミの方が大人なんだろうな」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクより若いし、ボクより成熟してる」
早乙女六華:「ようやく認めたか」無表情ながら満足げに胸を張る。
早乙女六華:「大体……それを言うなら」
早乙女六華:「お前もお前と会う前のわたしを知らないだろう、リウトペルガ」
早乙女六華:「全然違ったぞ、昔のわたしは」
リウトペルガ・ウィンニール:「そうなの?」軽く目を瞬かせ。
リウトペルガ・ウィンニール:「……うん、でもまあ、それはそうか。キミが生まれたのだって結構昔のことだものね」
リウトペルガ・ウィンニール:「どんなだったんだい? 昔の『早乙女六華』」
早乙女六華:「……」少し黙って
早乙女六華:「さて。どうだったかな。何しろ昔の話だからな」
リウトペルガ・ウィンニール:「……覚えてないとか言わないよね?」
早乙女六華:「秘密だ。何しろ大人のレディだからな」
リウトペルガ・ウィンニール:「………」
早乙女六華:肩越し、背中からリウトペルガに顔を寄せる。
早乙女六華:「リウトペルガ」
リウトペルガ・ウィンニール:「うん?」その瞳を見返しながら。
早乙女六華:「わたしはいなくならないぞ」
早乙女六華:穏やかな声で言う。
リウトペルガ・ウィンニール:「それはまあ、心強いかな」
リウトペルガ・ウィンニール:小さく、寂しげに笑う。
早乙女六華:「お前とは、一通りのことはしたからな」
早乙女六華:「こうして愚痴くらいは聞いてやる」
早乙女六華:「望むなら、まあ。それなりのことはしてやる」
リウトペルガ・ウィンニール:「あっははは」
リウトペルガ・ウィンニール:「期待しとくよ」
早乙女六華:「む……」
早乙女六華:「腹に据えかねる態度だ」
早乙女六華:「mixiでフレンドなってやらんぞ」
リウトペルガ・ウィンニール:「mixiかあ、ログインid覚えてるかな……」
リウトペルガ・ウィンニール:「……ボクが、ほんとに怖いのはね」
リウトペルガ・ウィンニール:ぽつり、と零す。
リウトペルガ・ウィンニール:「いなくなることじゃない」
リウトペルガ・ウィンニール:「いなくなった後、時が経つに連れて、それに慣れていってしまうこと」
早乙女六華:「……」
リウトペルガ・ウィンニール:「なのに、同時に……いなくならず、ボクの有り方に付き合わせることも怖い」
早乙女六華:「……それが」
早乙女六華:「悲しみを忘れていくことが。人の、正しい在り方じゃないのか」
リウトペルガ・ウィンニール:「きっとそうさ。年寄りのボクはそう思ってる」
リウトペルガ・ウィンニール:「でもボクは、子供だから」
リウトペルガ・ウィンニール:「割り切れないんだ」
リウトペルガ・ウィンニール:早乙女六華/●P:憧憬/N:羨望
早乙女六華:「……やっぱり」
早乙女六華:「お前らしいよ」
早乙女六華:リウトペルガ・ウィンニール ○連帯感/食傷
銀波 嵐:とても団欒とは言えない会合が終わり、各自が疲労感を滲ませ帰路についた、その翌日。
銀波 嵐:銀波嵐は唐突に現れた。
銀波 嵐:確かにそういった、しかし、いったい何を考えているのか。
銀波 嵐:珊瑚夜、その眼前のモニタ付きインターフォンの画面の中で。
銀波 嵐:「ここに住む」
珊瑚夜:一人で住むには広すぎる家。白を基調とした家具の並ぶ部屋に、家主である珊瑚、そして同居を言い出した嵐、相談役として呼ばれた綱井が集まっていた。
珊瑚夜:おもちゃのような小さなロボットたちが大量にせっせと働いている。
珊瑚夜:『おちゃですー』
珊瑚夜:きゅるきゅるとロボットがお茶を運んでくる。
綱井楪:「……ありがとう」礼を言って受け取る。
銀波 嵐:見るのははじめてではないが、それでもぎょっとしたようにそれに目を向ける。
珊瑚夜:「ふふっ、こうしてお友達を招くなんてなかったから」ロボットを一撫でしてうきうきと笑う。
珊瑚夜:「とっても嬉しいわ!ゆっくりしていってね」
銀波 嵐:口数は少ない。有無を言わさぬ勢いで上がり込み、こうしてここにいる。
綱井楪:驚いているのか、普段より少しだけ目が大きく開いているが、それだけだ。特に日常と変わった様子は無しに、お茶を啜って。
綱井楪:「……それにしても」
綱井楪:「びっくりしたわ」
綱井楪:「どういう風の吹き回し?」
綱井楪:カップをテーブルに置き、二人を見比べるようにする。
銀波 嵐:「……」それには答えない。
綱井楪:「……意気投合した、というわけでもないようだけど」一つ息を吐く。
珊瑚夜:「先輩が後輩の面倒を見るのは当然でしょう?」にこにこと笑ってお茶をすすっている。
綱井楪:「当然だとしたら、私はなぜ呼ばれたのかしら」
綱井楪:じっと、眠たげな半眼で珊瑚夜を見つめて。
珊瑚夜:「友達が友達の相談に乗るのも、当然じゃないかしら」不思議そうに首を傾けると、亜麻色の長髪がさらりと揺れる。
綱井楪:「相談というと?」
珊瑚夜:「嵐さんは、私よりよほど生活能力があるから、それほど不自由したりはしないでしょうけど……」ちらりと忙しなく動き回るロボットたちを見る。
珊瑚夜:「……何が必要かとか、私にはいまいちわからないもの。……あっ!ちょっと、人がいるときは下着は運ばないで……!」顔を赤くしてロボットに文句を言っている。
銀波 嵐:「必要なものは……全部こちらで揃える」
銀波 嵐:「世話を焼く必要は、無い」ぽつりと。
珊瑚夜:「そう?私は先輩っぽいことやらせてほしいのに」楽しそうに笑う。
銀波 嵐:「……というか、オタクはそもそも、何もしてないだろ」
銀波 嵐:呆れたような。
銀波 嵐:「なんだここは、ここまでいくと感心だな」
銀波 嵐:あたりを忙しそうに動き回る機械を眺める。
綱井楪:「確かに」
珊瑚夜:「……家はかなり改造しているから。ロボットが動きやすいように……、キッチンなんかも人が使うには低いわ。なにか不自由があったら言ってね。出来る限り早く対応するわ」
珊瑚夜:『そうですー』『みなさんも、よるさまにちょっとはうごくよう、いってくださいー』『ぼくたち、がんばってるんですー』そんなことを喋りながらロボットたちが通り過ぎていく。
綱井楪:「下手をしたら、噂の出所の可能性もありそうだわ」
綱井楪:「小さい用務員とかの」
綱井楪:ロボットたちの様子を眺めて頷く。
珊瑚夜:「あら!この子たちが小さな用務員だったら可愛いわね」
珊瑚夜:「聞いたときは、小さなおじさんを想像していたけれど。でも確かに学校でもひっそり使っているから、可能性はあるわね」さらっと楽しそうに笑う。
銀波 嵐:「……」
綱井楪:沈黙する少女に視線を移す。
綱井楪:「……『だったら、アンタを退治すれば一つは解決だな』」
綱井楪:「みたいなことは言わないの?」
銀波 嵐:しばしの沈黙。
銀波 嵐:やがて、
銀波 嵐:「なあ……オタクらは、凪を知ってる」
綱井楪:頷く。
珊瑚夜:「……ええ」はしゃいだ様子から、落ち着いた柔らかい笑みを浮かべる。
銀波 嵐:「時間で言えば、俺よりもずっと」
銀波 嵐:「凪は……どんな奴だったんだ?」
銀波 嵐:神妙に、そう聞く。
綱井楪:睫に縁取られた目を瞬かせる。
銀波 凪:『ユズちゃん』
銀波 凪:『これはね、ツチノコの抜け殻、その一部です』
銀波 凪:『私がさる特別なルートで手に入れました』
銀波 凪:『マブダチのユズちゃんになら、これを譲ってあげてもいいです』
銀波 凪:『夜先輩……』
銀波 凪:『先輩は、世間に疎いですからね、優しい私はこうしてわざわざ教えてあげるのですが』
銀波 凪:『土用の丑の日、ってありますよね』
銀波 凪:『あれの親戚の金曜寿司の日、というものを知ってますか?』
銀波 嵐:じっと、君たちを見る。
綱井楪:「……そうね。私から見れば」
綱井楪:「可愛い子だった。明るくて、懐っこくて、」
綱井楪:「……私みたいな変わり者にも、他の人と変わらない風に話しかけてくれて」
綱井楪:「それに……」
綱井楪:ゆるゆると首を振って。
綱井楪:「……でも」
綱井楪:「悪戯好きで、よく騙されもしたわ」
綱井楪:「本物のツチノコだって信じてたのに」
綱井楪:ぼうっと遠くに眼差しを向ける。
銀波 嵐:「(ツチノコ……?)」
珊瑚夜:「ツチノコ?」くすくすと噴き出す。
珊瑚夜:「でも、そうね。可愛くって、ユーモアがあって。優しくて博識で……」
珊瑚夜:「……すごく良い子よね」柔らかく微笑む。
銀波 嵐:「そうだ……凪は優しい」
銀波 嵐:そう言って頷く。
珊瑚夜:「頼りないとか、弱いとかじゃないんだけれど。……どこか、守ってあげなきゃ、力にならなきゃって思わせるような子ね」
綱井楪:「そう……?」首を傾げる。
綱井楪:「むしろ、とってもしたたかな子だったと思うわ」
珊瑚夜:「したたか……?」そういう見方もあるのかしらね、と首を傾げる。
銀波 嵐:「したたか……。うん、凪はとっても賢いからな」
綱井楪:「……嵐」
綱井楪:じっと見る。
銀波 嵐:「……んだよ」
綱井楪:「都合のいい意見ばかり拾っていない?」
銀波 嵐:「は?んなことねーし!!」
綱井楪:「逆のことを言っているわよ、私たち」
綱井楪:「もちろん私の方が正しいと思うけれど……」
珊瑚夜:「ふふっ」その様子を見て楽しそうに笑う。
銀波 嵐:「は?え?……」
銀波 嵐:もやもやとした表情。
珊瑚夜:「いいじゃない。大切な人のこと、良く思いたいのは分かるわ」
珊瑚夜:「嵐さん、全部の人に噛みつくかのように荒っぽいけれど」
珊瑚夜:「凪のことを話すときだけは、とても嬉しそうだもの」
銀波 嵐:「俺は……丁寧な性格じゃあねえが、馬鹿でもねえ」
銀波 嵐:「脳みそは凪と同じものを使ってるんだ、そのはずがねえ」
銀波 嵐:「あれから……色々考えてみた」
銀波 嵐:あれ、というのは昨夜のことであろう。
綱井楪:「……」出来事自体は知らないが、雰囲気の変化を察して姿勢を直す。
銀波 嵐:「オタクらが俺と凪のことを知らねえように、俺はオタクらと凪のことを知らねえ」
銀波 嵐:「知らないまま、知ったように話すのは、馬鹿のやることだ」
銀波 嵐:「だから……ここに来た」
銀波 嵐:憮然として、そう告げる。
珊瑚夜:「……本当に、凪のことが大切なのね」
綱井楪:「……良いことだと思うけれど」
綱井楪:「私たちと凪が、前はどういう関係だったのか。……見せられたものが、本当にそうなのか」
綱井楪:「その判断は、誰がするのかしら」
銀波 嵐:「だから、それは当たり前だろうが……」照れたように
銀波 嵐:「……それは、俺だろ」
銀波 嵐:「会話ってのは、人間関係ってのは、そういうもんじゃねえのか?」
銀波 嵐:「俺は"経験”がぜんぜんないからな……別に詳しくはねえが」
銀波 嵐:「そういうモンだと思ってる」
銀波 嵐:「だから煩わしい……」
綱井楪:「……そう」
銀波 嵐:「他人を信用するなんざ、なんて心もとない、リスクだらけの面倒なことなんだってな」
珊瑚夜:「嵐さんが信用しようとしてくれているなんて、とても光栄だわ」
銀波 嵐:「別に俺自身がオタクらを信用したわけじゃねえよ……」
銀波 嵐:「ただ凪のことは信じてる」
珊瑚夜:「唯一の家族である凪を信頼している相手なら、少しは信用に値する……ってところかしら」
銀波 嵐:「そうだ、だから……」
銀波 嵐:「この件に関しては、裏切りは許さねえ」歯をむき出しに笑う。
綱井楪:「……なんと言うか」
綱井楪:「少し妬けてしまうわね」
綱井楪:滑らかな眉間に、見て取れるか取れないか程度の皺が刻まれる。おそらくは、不服さの発露。
綱井楪:「把握できていないけれど。私のいないところで、そういう心境の変化を起こすような出来事があったんでしょう?」
綱井楪:「そして、夜の家に住むことにした」
綱井楪:「私の方が凪と仲が良かった自信があるのに」
綱井楪:珊瑚夜を見る。ややじっとりとした目線。
銀波 嵐:そうなのか?という顔。
珊瑚夜:「あら、だって彼女は『嵐』よ。凪じゃないわ」涼しい顔でその目を受け流す。
綱井楪:「言ったわね」席を立つ。
綱井楪:そのまま、銀波嵐の正面に屈み込んで。
綱井楪:「えい」
銀波 嵐:「?」
綱井楪:脇腹、やや背中寄りの箇所を指で突く。
銀波 嵐:「ひゃ――」
銀波 嵐:そのまま、後方へと飛び退る。
銀波 嵐:「お……ま、ひ……」
綱井楪:「ほら」自慢げに。
綱井楪:「凪だってここが弱かったのよ」
銀波 嵐:ガクガクと足を震わせ、自分で自分の出した声に驚いた、という様子で。
銀波 嵐:「え……は?……なッ……」
珊瑚夜:目をぱちぱちと瞬かせてその様子を眺めている。
銀波 嵐:「お、おまっ、今……何ッ」
銀波 嵐:顔を真っ赤に、混乱した様子で。
銀波 嵐:「え……凪?何???」
綱井楪:「ううん。懐かしいような新鮮なような」指先を顎に当て、しげしげと観察する。
綱井楪:「味わい深いわね……」
銀波 嵐:「ひっ」
綱井楪:「もっとやっていい?」
銀波 嵐:怯えたように身を竦める。
銀波 嵐:「え、もっと、て、な」
銀波 嵐:「なに……」
銀波 嵐:すっかり固まって。
綱井楪:「大丈夫」
綱井楪:「さすがに夜の前では駄目なところは触らないから」
銀波 嵐:「駄目、だめって、な、ど」
珊瑚夜:「だ、だめなところ」顔を赤くする。
珊瑚夜:「……綱井さんって……結構、独占欲が強いのね」目を反らしながら恥ずかしそうに呟く。
銀波 嵐:「~~~~!」思考がパンクした様子で、目を固くつむってプルプルと震えだす。
珊瑚夜:「も、もう!嵐と凪は違うって言ったでしょう?ほらっ、あまり怯えさせないの」
珊瑚夜:ごほんと咳払いをすると立ち上がり割って入る。
綱井楪:「……」
綱井楪:制止され、半ば覆い被さるように乗り出していた上体を引っ込める。
綱井楪:「失礼」
綱井楪:「あんまりかわいいものだから、つい」
綱井楪:そう言う頃には、元のぼんやりとした表情に戻っている。
銀波 嵐:思わず珊瑚の足へとしがみつく。
銀波 嵐:「ハッ……ハッ」荒い呼吸。
珊瑚夜:「ほら、もう……こんなに混乱しているわ」屈んで目線を合わせると、優しく嵐の髪を撫でる。
銀波 嵐:「……??」
銀波 嵐:ややあって、その瞳が焦点を結び。
銀波 嵐:「ッ!」
銀波 嵐:バシリと頭を撫でる手を叩く。
銀波 嵐:「まっ……えっ……ら……」
銀波 嵐:「……」
銀波 嵐:へなへなと、床に手を付き。
銀波 嵐:「もう、何なんだよ……」
銀波 嵐:情けない声で。
珊瑚夜:「元気が出たみたいでよかったわ」微笑むと、顔を寄せ、
珊瑚夜:「そういうことは、ちゃんと段階を踏んでから……、ね?」耳元で囁く。
綱井楪:「あなたも興味津々なんじゃない」耳聡くその声を拾う。
銀波 嵐:「……はぁ?」
銀波 嵐:わけがわからない、という顔。
珊瑚夜:「……興味がないとは言っていないわ。同意がないのはどうかと思うって話」少し拗ねたように顔を赤くする。
綱井楪:「…………」
綱井楪:感情を映さない瞳で珊瑚夜を見つめて。
綱井楪:「……ともかく」
綱井楪:「ここに住むのはそうとして」
綱井楪:「目的が以前の凪との関係を確かめるためだって言うなら、私も時々はお邪魔してもいいのね?」
綱井楪:二人に対して確認を取る。
銀波 嵐:「……」家主に聞けよ、という目。
珊瑚夜:「家主である私は当然、あなたが遊びに来てくれるなら大歓迎だし」
珊瑚夜:「嵐さんもいいわよね?」うきうきとした様子を隠し切れない、といった様子。甘い香りが立つ。
銀波 嵐:「……好きにしろよ」
GM:シーン終了。
【Middle first half/銀波嵐】
GM:4番目のシーン権を獲得したのは、銀波さん。
GM:誰を指名しますか?
銀波 嵐:むい!
銀波 嵐:珊瑚夜→早乙女六華の順で
銀波 嵐:別々にシーンをやっていきたく
GM:面白いじゃん……
珊瑚夜:おっす!
GM:珊瑚さんは登場侵蝕を振ってください。
珊瑚夜:珊瑚夜の侵蝕率を1d10(→ 4)増加 (52 → 56)
GM:サブシーンはリウさんと綱井さんになります。
銀波 嵐:水晶の剣宣言→アームブレード 侵食4
銀波 嵐:ギイギイ、と音がする。
銀波 嵐:目を開けると、太陽の光。
銀波 嵐:ひらけた原っぱ、見慣れた場所。
銀波 嵐:サワサワと風が草を撫ぜる音。
銀波 嵐:乱雑に積み上げられた木材。
銀波 嵐:その中心で、凪がノコギリを手に悪戦苦闘。
銀波 嵐:いつものように手伝いを申し出る。
銀波 嵐:何度も繰り返した結果、鉋がけの腕はちょっとしたものだ。
銀波 嵐:嵐は大工で食っていけるよ、と凪が笑う。
銀波 嵐:あまり唆られる話ではないな、と思う。
銀波 嵐:何を作っているのか、何度聞いても教えてはくれない。
銀波 嵐:秘密、だけど完成はそう遠くないよ。いたずらっぽく笑う。
銀波 嵐:凪は本当に嬉しそうで、その顔を見ていると、なんだかこっちも嬉しくなってしまった。
銀波 嵐:
銀波 嵐:――いつもの夢だ。
銀波 嵐:内容はもう思い出せない。
銀波 嵐:いつもの夢を見た、という感覚だけが残っている。
銀波 嵐:顔を洗おうと、廊下に出たところで気づく。
銀波 嵐:「(ああ、ここはもう……センセの家じゃなかったっけ……)」
銀波 嵐:油断したものだ、これほど深い眠りはいつぶりだろうか。
銀波 嵐:珊瑚夜、あの女には人の警戒心を下げる特殊な技術でもあるのだろうか。
銀波 嵐:「(凪もそれに引っかかったのか……?)」
銀波 嵐:益体もないことを考える。
銀波 嵐:完成はそう遠くない、ふとそんな言葉が思い浮かぶ。
銀波 嵐:その響きは嬉しいことのはずなのに、何故だが少し、寂しくなってしまった。
銀波 嵐:朝食のトーストを齧りながら、唐突に切り出した。
銀波 嵐:「なぁ、買い物付き合ってくれよ」
珊瑚夜:嵐の唐突な申し出にとても喜んだ珊瑚は、問答無用で嵐に白いマフラーを捲かせると機嫌よく並んでショッピングモールを歩いている。
珊瑚夜:「ふふっ、友達……と買い物に行くなんていつぶりかしら」
銀波 嵐:「オタクどうせ欲しい物全部ネットで済ませちまうんだろ」
珊瑚夜:「まあ!よく分かったわね」
珊瑚夜:「あなたの気が変わらないうちに、って慌ててきちゃったけれど……、何を買うつもりなの?」今更過ぎる質問をする。
銀波 嵐:「さあ……店に行けば思いつくかと思ったけど……」
銀波 嵐:「ただなんつぅか外に出る口実が欲しかっただけというか……」
珊瑚夜:その言葉に目を輝かせる。
珊瑚夜:「私と遊びに行きたかった……、ってことね!?」
珊瑚夜:「ふふっ!嬉しい!」心底嬉しそうに笑うと、ふわりと甘い香りが漂う。
銀波 嵐:「……」
銀波 嵐:押し黙る嵐。
銀波 嵐:ふるふると、小さく震えている。
珊瑚夜:「あら……大丈夫?寒いのかしら」
珊瑚夜:「マフラーはさせたけれど。秋って急に冷えるから。油断は禁物よ?」
銀波 嵐:「……ぷ」
銀波 嵐:「アハハハハハハハ!!」
銀波 嵐:膝をバシバシと叩いて笑い出す。
珊瑚夜:「……?そ、そんなに面白いこと言ったかしら……?」きょとんとして見つめている。
銀波 嵐:「いやいや、相変わらず人を疑うってことを知らないんですね」
銀波 嵐:「それとも私が上手なのかな」
銀波 嵐:目尻に涙すら浮かべて。
珊瑚夜:「………………」
珊瑚夜:「…………な、………ぎ?」
珊瑚夜:ぽつりと。思わずその名を呟く。
銀波 凪:「どうも、お久しぶり、夜先輩」
珊瑚夜:「凪……、本当に凪なの!?」
珊瑚夜:思わずその手を取る。
銀波 凪:あの頃のままに、いたずらそうに。
銀波 凪:「急に懐いてきて変だと思わなかったんですか?」
銀波 凪:ニヤニヤと笑う。
珊瑚夜:「え、……えっ!?」目を見開く。
珊瑚夜:「あ、あれは、……嵐さんじゃなくて、凪だったの……!?」
珊瑚夜:突然家にやってきて、一緒に住むと言い出した彼女は。
珊瑚夜:唐突な心変わりではなく、『人』代わりだったということ……?
銀波 凪: 「急に嵐が歩み寄ってきて、ビックリしたでしょ」
銀波 凪:「あれ私の差し金だって言ったらどうします?」
珊瑚夜:「差し金……?」
銀波 凪:「……プ」
銀波 凪:「アハハ、フハハハ」
銀波 凪:「冗談ですよ、冗談」
珊瑚夜:「ええ?えええ?」何が本当か分からない、といったふうに目をぱちぱちと瞬かせる。
銀波 凪:「"あれ"はちゃんと嵐です、よく心を開かせましたね、難しい子なのに」
珊瑚夜:「そ、……そうなの?ええと……、……『凪』からみても嵐さんが、少しは心を開いていてくれているのなら、嬉しいけれど……」
珊瑚夜:相変わらず腑に落ちないといった表情で首を傾げる。
銀波 凪:「まあ、こんなところで立ち話もなんですし、どっかお店入りましょうよ、なるべく高いとこ」
銀波 凪:「noblesse obligeという言葉があるでしょ?」そこだけやたらに流暢な発音で。
珊瑚夜:「ふふ……」その言葉に自然と笑みが広がる。
銀波 凪:「あれ、今度法改正で厳密化するんですよ」
銀波 凪:「今のうちに訓練しとかないと、刑務所ですよ」
珊瑚夜:「まあ、そうなの?ふふっ、逮捕されないように基準を熟知しておかないとね」
珊瑚夜:そのちゃっかりとした言葉に。
珊瑚夜:おごらされようとしているというのに、嬉しくて、自然と涙が浮かぶ。
銀波 凪:ところ代わり、モールの喫茶店
銀波 凪:メニューでいちばん高いパフェを臆面もなくパクつく少女。
銀波 凪:「や、ビックリしたでしょ、嵐たら急に『殺す~』て」
珊瑚夜:こちらは、朝のトーストを5枚食べたというのにケーキを6個頼んでいる。
珊瑚夜:「そうねえ。こちらは『凪』だと思っているわけだし……、単純に血の気が多いから驚いたわ」
銀波 凪:「んー、でもやっぱ全然動じてなかったですね先輩は」
銀波 凪:クリームの付いたスプーンをふらふらと振って。
珊瑚夜:「そう見えたかしら?とても驚いたわよ。……でも、私が泣き叫んで凪を返して、って言ったところでどうにかなるとも思えなかったから」
銀波 凪:「やぁ~、一度見てみたいと思ってたんですよね、先輩が本気で動揺するとこって」
珊瑚夜:チーズケーキをフォークで口に運ぶ。
珊瑚夜:「ふふっ。そんなに余裕があって頼れる先輩だと思われているのね」皮肉といった様子はなく、心底嬉しそうに微笑む。
銀波 凪:「なのにてんで効いてないでやんの、嵐には悪いことしちゃったな」悪びれた様子もなく。
珊瑚夜:「……まあ。だって私を驚かせるためだけに『嵐さん』に体を使わせているわけではないんでしょう?」
銀波 凪:「うんうん、今日みたいのは特別」
銀波 凪:「今までもたまにこうやって出てきてたんですけどね」
銀波 凪:「嵐ってばいっつも気を張ってるから」
銀波 凪:「たまに電池来れるんですよね、プツーンって」
銀波 凪:「そういうときだけ動けるんです」
珊瑚夜:「そうなの?てっきり凪はどうやっても出てこられないのかと思っていたわ」
銀波 凪:「そんなことないですよ?あ、これ嵐には内緒にしててくださいね」
珊瑚夜:「…………そう、ね」
珊瑚夜:凪を大切に想う彼女なら、それを知ったら気にして、……あるいはわざと『凪が出てこられるように』するかもしれない。
銀波 凪:「あの子ああ見えて依存癖すっごいから、独り立ちできなくなっちゃう」
銀波 凪:「それよりー、このあと映画見に行きましょうよ映画」
銀波 凪:「私楽しい思い出作らないと死んじゃうんですよ、生命に直結するんです」
珊瑚夜:「映画!いいわね。私もしばらく映画は見ていないわ」
銀波 凪:「あと……アレだから」
銀波 凪:「レネ……なんつったっけ」
銀波 凪:「あそうだ、レネゲイドビーイング」
銀波 凪:「サメの」
銀波 凪:「サメなんです私」
珊瑚夜:「……ふ、ふふふっ」噴き出し、口を抑えて笑う。
珊瑚夜:「サメはパフェが好きだったとは初めて知ったわ」
銀波 凪:「サメはグルメなんですよ、知らなかったんですか」
珊瑚夜:「グルメになって、美味しいものをたくさん食べて人間を襲わないでいてくれると嬉しいわね」
銀波 凪:「だから定期的に人がいっぱいワーーーって死ぬ映画見ないと駄目なんです」
珊瑚夜:「それはサメじゃなくて『サメ映画』のレネゲイドビーイングじゃないかしら?」楽しそうに笑う。
銀波 凪:あなたの知る凪のイメージそのまま、楽しそうにぺちゃぺちゃと話し続ける。
銀波 凪:「先輩、私計画があるんですよ」
珊瑚夜:「計画?」そのまま楽しそうに聞き返す。
銀波 凪:「今はまだ話せないけど、その時が来たら先輩にも協力してもらうかもしれません」
銀波 凪:ニヤリと、笑った。
---
銀波 嵐:愛用の登山用リュック、この中には嵐の所有する全てが入っている。
銀波 嵐:財布、タオルにいくらかの衣類、日用の消耗品。
銀波 嵐:携帯の医療キット、充電ケーブルとモバイルバッテリー。
銀波 嵐:裁縫セット、折りたたみのレインコート。
銀波 嵐:ボトル入りのブラックミントガム。
銀波 嵐:ステンレスのコップに、先割れスプーン。
銀波 嵐:電池式のMP3プレーヤー、容量126MB。
銀波 嵐:使い捨ての、インスタントカメラ。
銀波 嵐:たまに本が加わることもあるが、読み終わったものは捨ててしまう。
銀波 嵐:それが全て。
銀波 嵐:それ以上はいらないし、知る必要もない。
銀波 嵐:ある日、何も持たされずに世界に投げ出された。
銀波 嵐:隣には凪がいたが、彼女はいっつも眠そうで、話をできるのはほんのたまにのことだった。
銀波 嵐:怖かった、途方もなかった、世界はあまりにも広すぎて、自分はちっぽけだ。
銀波 嵐:"よすが"となるものが必要だ、だから嵐はそれを凪に求めた。
銀波 嵐:リウトペルガ・ウィンニールと名乗る女が庇護者を申し出た。
銀波 嵐:信用できない、と言うと凪は利用してやれ、と言った。
銀波 嵐:その通りにした。
銀波 嵐:結論から言うと女は役に立った。生活に不自由はなく、少々の安堵を得た。
銀波 嵐:リウトペルガはベランダの鉢植えで奇妙な葉っぱを育てていた。彼女は収穫したそれを乾燥させ、紙に巻き、火を付ける。
もうもうと立ち上がる煙、嵐はそのふしぎなにおいが好きだった。
銀波 嵐:自分にもそれをくれ、と言った。生まれてはじめて他人にものをねだった。
銀波 嵐:『キミにはまだはやい』
銀波 嵐:はじめてのお願いは、すげなく断られた。
銀波 嵐:むくれていると、リウトペルガは困ったように頭をかいて、目に入った"ソレ"を放ってよこした。
銀波 嵐:『代わりにこれをあげよう』
銀波 嵐:電池式のMP3プレーヤー。部屋の隅で埃を被っていた、当時で既に骨董品。
銀波 嵐:中身の32曲はぜんぶ異国の言葉で歌われていて未だに歌詞の意味はわからない。
銀波 嵐:この世界に好きなものがまた増えた。嵐は困ってしまった。
銀波 嵐:少々まずいと思った。リウトペルガから離れる必要がある。
銀波 嵐:嵐は凪がやっていた仕事を引き継ぐことにした。
銀波 嵐:UGNエージェント、嵐は荒事は得意だ。凪ならもっと鮮やかに片付けると思うが、それは言ってもしょうがないこと。
銀波 嵐:ある日、"仕事仲間"が現れる。
銀波 嵐:早乙女六華、何度邪険にあしらってもべたべたと纏わり付いてくる。
銀波 嵐:無表情で何を考えているのかわからない、小さな女。
銀波 嵐:こう見えてリウトペルガと同じく、嵐よりずっと年上だと言う。
銀波 嵐:ある時からはもう追い払うことを諦めた。
銀波 嵐:しがみつくに任せるままに一緒にネットカフェに行き、カレーと唐揚げを食べた。他にも色々。
銀波 嵐:鬱陶しかったが、不思議と嫌な気持ちにならなかった。
銀波 嵐:その事実が不安を呼び、嵐はまた困ってしまった。
銀波 嵐:カチリ、と硬いプラスチックの手応え。
銀波 嵐:「……」
銀波 嵐:ジィコジィコと、ダイヤルを回す。
銀波 嵐:ふと、手が伸びたのだ。
銀波 嵐:来客も滅多に無いUGN玻璃兎支部、その応接間は貸し切り同然。
銀波 嵐:よくやるように、そこで雑誌を読んでいたら、唐突に現れた早乙女がいつものようにしがみついてきた。
銀波 嵐:ムキになって引き剥がそうとするだけ体力の無駄というもの。雑誌へ注意を引き戻す。
銀波 嵐:最初は何やら話しかけてきていたが、いつの間にか静かになっていて、
銀波 嵐:雑誌を上げる。
銀波 嵐:魔が差した――のだと思う。
銀波 嵐:愛用の登山用リュック、その中には嵐の所有する全てが入っている。
銀波 嵐:財布、タオルにいくらかの衣類、日用の消耗品。
銀波 嵐:携帯の医療キット、充電ケーブルとモバイルバッテリー。
銀波 嵐:裁縫セット、折りたたみのレインコート。
銀波 嵐:ボトル入りのブラックミントガム。
銀波 嵐:ステンレスのコップに、先割れスプーン。
銀波 嵐:電池式のMP3プレーヤー、容量126MB。
銀波 嵐:今は生産も終了した、12枚撮りのインスタントカメラ。
銀波 嵐:いずれこの世界を去ると知る嵐が、唯一持っていくことに決めた、12枚の光景。
銀波 嵐:撮る、という行為そのものに意味があると考える。嵐には"写真記憶"がある、現像それ自体に意味はない。
銀波 嵐:残り――5枚、たった今4枚になった。
銀波 嵐:「どうして……こんな馬鹿ヅラ……」
早乙女六華:「……む」顔を上げる。
早乙女六華:「こら」
早乙女六華:「あれだ……日照権?の侵害だぞ」
銀波 嵐:「……俺なんぞより隣のビルに言ってくれ、もともと陽なんて当たってねえだろ……」
銀波 嵐:そそくさと、隠すようにカメラを仕舞う。
早乙女六華:「著作権……?」首を傾げている
銀波 嵐:「切れてんじゃねえの、長生きだろオタク」
早乙女六華:「まだ生きてるのに……」
早乙女六華:体勢を変えて、寝返りをうつように嵐の膝に頭を乗せ、見上げる。
早乙女六華:「……」
銀波 嵐:「……」まじまじと見る。
早乙女六華:ごそごそと傍らから物音。
早乙女六華:登山用リュックを勝手に漁っている。
銀波 嵐:「あ、ちょっ、ばっ!」
銀波 嵐:「何してんだ!!」
早乙女六華:「む……」
早乙女六華:手を止めて
早乙女六華:「お前のことが知りたいと思ってな」
銀波 嵐:「段階があるだろうが!やりたい放題だなオタクは!」
早乙女六華:「段階を踏ませてくれるのか?」
銀波 嵐:「は?……いや、それは、あの……」
銀波 嵐:尻すぼみになっていく語気。
早乙女六華:紅玉のような瞳が、膝の上から見つめる。
早乙女六華:「……嵐」
早乙女六華:手を伸ばし、頬に触れる。
早乙女六華:「いずれ自分は消えるから、何かを知ることや得ることには意味が無い……」
早乙女六華:「それがお前の生き方か?」
銀波 嵐:その顔を見る、思えば、こんなにも近くでじっくりと眺めるのははじめてのことだ。
銀波 嵐:恐ろしく整った容姿だ、と思う。――人ではない、ああ、理解できる。
銀波 嵐:「そうだ……それが俺の生き方だ」
銀波 嵐:「それしか知らないし、知る必要もない」
銀波 嵐:「どうしてお前らは……いや、世界は……」
銀波 嵐:「俺を構うのをやめてくれないんだろうな」
早乙女六華:あどけない少女のような、人を惑わす歳経た怪異そのもののような顔が、嵐をじっと見据える。
銀波 嵐:嵐は困ってしまう。途方も無いのだ。"よすが"となるものがいる。
銀波 嵐:それは凪だけでじゅうぶんだ。それ以上は、身に余る。
早乙女六華:「わたしにはその話の真偽は分からんし、興味もない」
早乙女六華:「わたしがお前に構うのはな、お前があたたかくて、唐揚げとカレー食べ放題を奢ってくれるのと……」
早乙女六華:「それと、お前が滅茶苦茶にバカだと思うからだ」
銀波 嵐:「……は?」
銀波 嵐:ぽかん、と口を開ける。
早乙女六華:「いずれ消えるから意味が無い?」
早乙女六華:「人は死ぬぞ、嵐」
早乙女六華:「お前でなくてもな。誰でもだ。わたしもお前もいずれは消える」
銀波 嵐:「……そりゃな」
銀波 嵐:そんなこと、わかってる……はずだ。
早乙女六華:「だから意味が無いというのか?だとすれば、この世の全てに意味は無い」
銀波 嵐:「じゃあ……そうなんだろうよ」
早乙女六華:「そう思うなら、それはお前がそう思いたがっているだけだ」
早乙女六華:「第一、お前が消えるのはいつだ?明日か?1か月後か?80年後か?」
早乙女六華:「それまでの全てを、お前のいう『無意味』に費やして過ごすつもりなのか?」
銀波 嵐:ああそうだ。珊瑚夜の甘い匂い、不意に触れてきた綱井楪の指、世話焼きな女教師の困ったような笑い。
銀波 嵐:12枚撮りのフィルム、今確かに感じる小さな重み――どこか心地よい。
銀波 嵐:「意味なんてあってたまるかよ……」
銀波 嵐:「だってそれじゃ……あんまりだろ」
銀波 嵐:「過ごすよ……『無意味』に、だってそれしかないだろ」
銀波 嵐:「どこにあるんだよ意味なんてもんが」
銀波 嵐:「オタクが……お前が、教えてくれるってのかよ……」
銀波 嵐:つっかえつっかえに、絞り出す。
早乙女六華:「手伝いならしてやる」
早乙女六華:その手を握る。
早乙女六華:「私はお前のバディだからな」
銀波 嵐:ロイスを取得、早乙女六華→○《秘匿》/嫌気
早乙女六華:「生きる意味が分からないなら、探せ。嵐」
早乙女六華:「それが人間の生き方だ」
早乙女六華:銀波嵐 ○庇護/隔意
星宮学園 裏山
綱井楪:チェックのマフラーの隙間から、ほふ、と白い息を吐く。
綱井楪:整備されているとはいえ、日中でも雑木林じみてやや暗い斜面。
綱井楪:子供ならばいざ知らず、高校ともなれば生徒が入ることもほとんど無いが──
綱井楪:今は、二人の姿がある。
リウトペルガ・ウィンニール:「ふー、ちょっと休憩しよっか」
リウトペルガ・ウィンニール:近場の岩に小さな腰を下ろし、手に持っていた木の棒を置く。
綱井楪:「……はい」その隣に座る。
綱井楪:「いませんね」
綱井楪:「ツチノコ」
リウトペルガ・ウィンニール:「野生動物だからねぇ。UMAじゃなくたって簡単には見つからないさ」
リウトペルガ・ウィンニール:「綱井くんはさ、ツチノコっていると思う?」
リウトペルガ・ウィンニール:「この調査が無駄足かどうかって話じゃなくね。UMAなり妖怪なり、新種生物なりとして」
綱井楪:「……オーヴァードアニマルかレネゲイドビーイングとしてなら、きっと確実に」
綱井楪:「そうじゃない、純粋な動物としてだったら…………どうでしょうね」
綱井楪:望み薄、と言う風に小首を傾げて。
リウトペルガ・ウィンニール:「いたら面白いんだけどねぇ。RBだったとして、レジェンド系なのかアニマル系なのかってのも気になるけど」
リウトペルガ・ウィンニール:「この前買った雑誌には『ナントカ市の山中に人型ツチノコを見た!』なんて話も載ってたけど」
綱井楪:「……人型なのにツチノコですか」
リウトペルガ・ウィンニール:「……そういえば、昔ツチノコの抜け殻を掴まされた、みたいな話してなかったっけ」
綱井楪:「ええ」
綱井楪:「凪にですね。調べてもらって、蛇どころかトカゲの抜け殻でした」
綱井楪:「信じてたのに……」
綱井楪:しょんぼりとした風に俯く。
リウトペルガ・ウィンニール:「蛇ですらないってのがすごいね」
リウトペルガ・ウィンニール:「……凪君か。あの子ならたしかに、やりそうなことだ」
リウトペルガ・ウィンニール:組んだ膝に頬杖をつき、小さく溜息を漏らす。
綱井楪:「何かありました?」
綱井楪:「凪……嵐か。もしくは、他の人と」
リウトペルガ・ウィンニール:「まーね」
リウトペルガ・ウィンニール:「嵐君が……それまでボクの家で暮らしてたんだけど……出て行っちゃってね」
綱井楪:「……あ。そうか」
綱井楪:いま気付いた、とでも言うように目を瞬かせる。
綱井楪:「そうなりますね」
綱井楪:「夜の家に来てたんだから」
リウトペルガ・ウィンニール:「あ、ほんとに夜君の家に行ってたんだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「……ってことは綱井君、夜君の家に行ったの?」
リウトペルガ・ウィンニール:ふと気がついたように、彼女の顔へ意外そうな目を注ぐ。
綱井楪:「はい。凪と私たちがどういう関係だったのか、自分の目で見定めたいとかで」
綱井楪:頷く。「その件で呼ばれました」
リウトペルガ・ウィンニール:「なるほどねぇ。嵐君もちゃんと考えてるんだな」
綱井楪:首を傾げる。
綱井楪:「寂しいですか?」
リウトペルガ・ウィンニール:「寂しくないって言ったら」
リウトペルガ・ウィンニール:ふ、と視線を逸らす。その先にあるのは、木の枝に画られた青空。
リウトペルガ・ウィンニール:「まあ、嘘になるかな」
リウトペルガ・ウィンニール:「でも、それが正しいんだよ。多分ね」
リウトペルガ・ウィンニール:どこか遠い目で、そう呟く。
綱井楪:「正しいとは」
綱井楪:首の角度を逆側に傾ける。
リウトペルガ・ウィンニール:「みんながみんなと仲良くするのはいいことだろう?」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクが貰うのはちょっとでいい」
リウトペルガ・ウィンニール:「言っただろう、半分は貰いすぎさ」
綱井楪:「……なるほど」
綱井楪:「理屈ではそう考えながらも」
綱井楪:「いざ人が自分から離れていくと、誤魔化す余裕もなくなるくらい寂しくなってしまうんですね」
リウトペルガ・ウィンニール:わざとらしく両手を広げてお手上げのポーズ。──肯定のしぐさ。
綱井楪:「……」
綱井楪:「ねえ。先生」
綱井楪:体ごと向きを変え、正面からリウトペルガを捉える。
リウトペルガ・ウィンニール:「うん?」
綱井楪:「先生がとても長生きだって知ってから」
綱井楪:「一つお願いしたいことがあったんです」
リウトペルガ・ウィンニール:「……頷くかどうかは別にして、何?」
綱井楪:「私のことをずっと覚えていてくれませんか」
綱井楪:岩に片手を突き、少しだけ身を乗り出して。
綱井楪:「私は、私が知っている人に、私のことを忘れられてしまうのが怖い。……とても」
綱井楪:「だから」
綱井楪:「長生きの先生が覚えていてくれるなら、ずっと安心していられます」
綱井楪:語る口調に、すぐそれと感じ取れるような熱はない。ただ、空色の瞳がひたと、永命の少女の双眸を覗き込んでいる。
リウトペルガ・ウィンニール:「………」
リウトペルガ・ウィンニール:苦い表情。その瞳に覗く色は、怒りとも、悲しみとも、苦悩とも寂寥ともつかない。
リウトペルガ・ウィンニール:「実際ね」
リウトペルガ・ウィンニール:「覚えてるだけなら、そんなに難しくないんだ」
綱井楪:「……」
リウトペルガ・ウィンニール:父の顔。兄弟姉妹の顔。ルドウィーク王。農民のパオロ。審問官のフランシスコ。冒険家のモーリツ。ロベルト大尉。
リウトペルガ・ウィンニール:「でもね、でも」
リウトペルガ・ウィンニール:「そこに──その人たちに抱いてた感情は」
リウトペルガ・ウィンニール:「朧気になっていく。慣れてしまう」
リウトペルガ・ウィンニール:「いないことに、慣れてしまうんだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「小さい頃、宝物だったはずのおもちゃが、いつの間にか物置のどこかにしまわれてたままになってしまうみたいに」
リウトペルガ・ウィンニール:「それって」
リウトペルガ・ウィンニール:「覚えてるって、言えるのかな」
リウトペルガ・ウィンニール:ふい、と、軽く目を逸らす。
リウトペルガ・ウィンニール:見るのは空でなく、自分の足元だ。
綱井楪:「…………」
綱井楪:目を伏せる。
綱井楪:「……十三年前」
綱井楪:「ある建物で事故が起こって、推定50人が犠牲になりました」
綱井楪:「彼らは全員、身元が確かで、親類縁者も把握されている人員でしたが」
綱井楪:「にも拘わらず、名簿を作ることはできなかった。50人という数ですら、施設にあった個人用の机の数や、雑多な痕跡から導き出されたものでしかない」
綱井楪:「彼らに関する記録は悉く消え、付き合いがあった人間の記憶からも、例外なく消えてしまった」
綱井楪:「……忘れられてしまったんです」
綱井楪:「私が何よりも怖いのは、それです」
綱井楪:「名前も顔も覚えられていて、時々でもいいから思い出してもらえるのと」
綱井楪:「完全に消え去って、暗い中で誰にも届かない声を上げ続けるのは」
綱井楪:「どちらがましだと思いますか」
リウトペルガ・ウィンニール:「………」
リウトペルガ・ウィンニール:「……虫のいい話かもしれないけど」
リウトペルガ・ウィンニール:それなら──ボクの記憶にも、ちょっとは意味があるのかな。
綱井楪:「……考えておいてもらえると、嬉しいです」
綱井楪:しんと静まり返った林の空気に、囁くような言葉が染みた。
GM: シーン終了です。
【Middle first half/珊瑚夜】
GM:5番目のシーン権を獲得したのは、珊瑚さん。
GM:誰を指名しますか?
珊瑚夜:はい!
珊瑚夜:リウ先生と綱井さんの二名!
珊瑚夜:私は分割しないわよ!
綱井楪:ダヴァイッ
GM:ではサブシーンは銀波さんと早乙女さんになります。
星宮高校 音楽室
珊瑚夜:珊瑚夜。しゃんと伸ばした長身、ともすればキツい印象を与えがちな顔には常に笑みが浮かんでいる。そして亜麻色の髪は、
珊瑚夜:腰まで伸ばしていたその長さを肩につくかつかないかほどの短さにバッサリと切りそろえられていた。
珊瑚夜:「『音楽室でピアノを弾いていると全裸のモーツァルトが全力疾走してくる』……でしたっけ?」
珊瑚夜:「遭遇したら、捕まえて警察に突き出さなければならないわね」
リウトペルガ・ウィンニール:「……何個か混ざってる気がするけど」
綱井楪:「……怪異の類なら、消してしまえばいいわ」
綱井楪:「私なら、そんな不健全な噂があったこと自体から消去してあげられる」
珊瑚夜:「噂なんて尾ひれがつくものでしょう?」
珊瑚夜:そう言って楽しそうに笑う。短くなった髪がさらりと揺れる。甘い香り。
リウトペルガ・ウィンニール:「………」その髪へ、ちらと視線を送る。
珊瑚夜:「……あら、リウトペルガは長い方が好きだったかしら」その視線を受け、楽しそうに笑う。
綱井楪:その発言があって初めて、珊瑚夜の頭部に目を向ける。
綱井楪:「どうしたの? それ」
珊瑚夜:「短いのも似合うでしょう?」綱井さんに笑いかけ。
綱井楪:「ええ」
珊瑚夜:「それに、……私も進まなくちゃって思うから」そう言って微笑む。
綱井楪:「前はお淑やかだったけど。今回は元気そうに見えて魅力的だわ」
綱井楪:「……何か踏ん切りが付いたのなら、何よりね」
珊瑚夜:「ありがとう。不思議ね、髪の長さで性格は変わりはしないのに、なんだか心まで軽くなったみたい」
リウトペルガ・ウィンニール:「……そっか」
リウトペルガ・ウィンニール:「夜君が、前に進めるようになったのなら──」
リウトペルガ・ウィンニール:「……よかった」どこか寂しげに、微笑む。
珊瑚夜:「……リウトペルガは、優しいのね」綺麗な笑みを崩さずそう言って。
珊瑚夜:「それじゃあ、早速検証してみましょうか。私がピアノを弾くけどいいわよね?」
綱井楪:「……」二人のやり取りを観察して。
綱井楪:「ええ。構わない」言及はせず、頷いて一歩引く。
リウトペルガ・ウィンニール:「そうだね。お願いしようかな」
珊瑚夜:「ええ。じゃあ早速」
珊瑚夜:優雅にピアノの前に座ると、長い指を鍵盤に滑らせる。
珊瑚夜:楽しそうな彼女の様子と裏腹の悲しい曲。
珊瑚夜:「……ふう」
珊瑚夜:弾き終わり、静寂を自ら破る。
珊瑚夜:「出てこないわね。ショパンだったからいけないのかしら?」
リウトペルガ・ウィンニール:小さな手で拍手をする。
綱井楪:ぱちぱちと拍手をする。「そういうものでもないと思うけど」
綱井楪:「それよりも、予想を超えて上手だったわ」
珊瑚夜:「でも、スポーツなんかではあるんでしょう?その人が出てくるときの決まった曲が。違う人の曲だと出てきづらいのかも」
珊瑚夜:「あら、ありがとう!色々とやらされたけれど、こうして時々役に立つから良かったわ」にこりと微笑む。
綱井楪:「……なら、念のためあと何曲かお願いしましょうか」
綱井楪:「出てくればそれで良し。出なくても綺麗な音楽が聴けてお得」
珊瑚夜:「ええ!任せて」
珊瑚夜:「何かリクエストがあれば、分かるものなら弾くけれど。二人とも何かあるかしら?」
綱井楪:「私はあまり詳しくないから。先生は?」
綱井楪:ぐるりと首を巡らせて彼女を見る。
リウトペルガ・ウィンニール:「そうだね、モーツァルトを何曲かと……」
リウトペルガ・ウィンニール:「……ヴィヴァルディ。あれ、あんまりピアノって感じじゃないけど」
リウトペルガ・ウィンニール:「お願いできるかな」
珊瑚夜:「ええ!大丈夫よ。ヴィヴァルディっていったら四季ね。春でいい?」
リウトペルガ・ウィンニール:「うん。……お願い」
珊瑚夜:微笑んで頷くと、再び鍵盤に指を滑らせる。
珊瑚夜:モーツァルト、そしてヴィヴァルディを弾いても、怪異が現れることは無かった。
珊瑚夜:ただ、音が満ちる。
珊瑚夜:「……こんなものかしらね」
珊瑚夜:数曲を弾き終わり、手を離す。
綱井楪:再び拍手。
珊瑚夜:「毎日練習しているわけではないから、それほど上手なものを聞かせられなくて申し訳ないけれど。でも、練習不足だから出てこないなんて、『七不思議』のくせに失礼だと思わない?」
綱井楪:「やっぱり外れだったのでしょう。よくあることよ」
綱井楪:手帳を取り出し、羅列したメモ書きの一つに線を引く。
珊瑚夜:「……リウトペルガは、私たちが古典として知る音楽が生まれた時代に生きていたんでしょうね」
リウトペルガ・ウィンニール:「……そうさ」
珊瑚夜:「……モーツァルト、全裸で全力疾走していた?」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクはモーツァルトに会ったことないから分からないけど」苦笑。
リウトペルガ・ウィンニール:「多分してなかったんじゃないかな。してたらなんかもっと……不名誉な名前として残ったと思う」
珊瑚夜:「ふふっ、それもそうね。この『噂』が生前の隠された行動を再現している、といった訳ではなさそうでよかったわ」
珊瑚夜:「……あなたはたくさん時間があるでしょうけれど、楽器の練習なんかはしたの?」
リウトペルガ・ウィンニール:「ちょっとだけね。趣味程度には触ったけど、人に聞かせられるようなもんじゃないよ!」
綱井楪:「ふうん……」
綱井楪:珊瑚夜を見る。
珊瑚夜:「まあ、そうなの?是非聞いてみたいものね。なんだったら私が教えて……」
珊瑚夜:「……いえ、なんでもないわ」
珊瑚夜:ロイス取得。リウトペルガ・ウィンニール/P:好意/〇N:未練
綱井楪:「…………」
珊瑚夜:「……あら?どうかしたのかしら、綱井さん?」
珊瑚夜:視線に気づき、笑みを向ける。
綱井楪:「……本当に弾く気がないなら、練習なんてしたことがないと言えばいいだけだわ」
綱井楪:「実際はかなりの腕前と見たのだけれど」
珊瑚夜:「あら!そうなの、リウトペルガ?」
リウトペルガ・ウィンニール:「勘弁してよ! 実際大した腕じゃないのは本当なんだ」
綱井楪:「そう? それなら」
綱井楪:「練習するに至った経緯が、とても印象的で記憶に残っている、とかかしら」
珊瑚夜:「……そうなの?」
リウトペルガ・ウィンニール:「音楽というか、……この曲にちょっと思い入れがあるってだけだよ」
珊瑚夜:「……聞いたことがなかったわね。聞いてもいいかしら」
リウトペルガ・ウィンニール:「モーツァルトには会ったことなかったけど、ヴィヴァルディにはあったんだ」
珊瑚夜:「まあ……」
綱井楪:「……」
リウトペルガ・ウィンニール:「昔から道楽者だったからね。サンタンジェロ劇場に通って彼のオペラを見たりしてたんだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「その縁でね。ちょっと詩を送ったりしたとか。それだけ」
リウトペルガ・ウィンニール:「特別仲良かったって訳でもないんだけど、……ちょっと思い出してさ」
珊瑚夜:「詩を?すごいじゃない。どんな詩だったのかしら」
リウトペルガ・ウィンニール:「Giunt' è la Primavera e festosetti」
リウトペルガ・ウィンニール:「La Salutan gl' Augei con lieto canto,」
リウトペルガ・ウィンニール:「E i fonti allo Spirar de' Zeffiretti」
リウトペルガ・ウィンニール:「Con dolce mormorio Scorrono intanto:」
リウトペルガ・ウィンニール:「Vengon' coprendo l' aer di nero amanto」
リウトペルガ・ウィンニール:「E Lampi, e tuoni ad annuntiarla eletti」
リウトペルガ・ウィンニール:「Indi tacendo questi, gl' Augelletti;」
リウトペルガ・ウィンニール:「Tornan' di nuovo al lor canoro incanto:」
リウトペルガ・ウィンニール:「春がやってきた」
リウトペルガ・ウィンニール:「小鳥は歌い、春へ挨拶する」
リウトペルガ・ウィンニール:「泉は優しく流れ、囁く」
リウトペルガ・ウィンニール:「西風の息吹きに撫でられて」
リウトペルガ・ウィンニール:「俄かに春雷とどろき、稲妻光り」
リウトペルガ・ウィンニール:「一たび空はマントルを纏う」
リウトペルガ・ウィンニール:「去って後、万籟死した沈黙を越え」
リウトペルガ・ウィンニール:「小鳥は再び歌いだす」
リウトペルガ・ウィンニール:「……こういうやつをね。いくつか贈ってやったんだけど……」
リウトペルガ・ウィンニール:「……恥ずかしいじゃん? やっぱり」
珊瑚夜:「……驚いたというか、なんというか」
珊瑚夜:「……まさか『四季』の詩のを作った人物が、目の前にいるなんてね」
珊瑚夜:「途方もなさすぎるわ。……あなたは私とはスケールが違うと、頭では分かっていたつもりだったけれど。それでもやっぱり想像も及んでいなかったんだって、思い知らされる」
珊瑚夜:ロイス取得。リウトペルガ・ウィンニール/P:執着/〇N:無力感
綱井楪:「……それは、さぞかし」
綱井楪:「忘れがたいことでしょうね」
綱井楪:口角を上げる。安らいだような微笑み。
リウトペルガ・ウィンニール:「……そうかな」
リウトペルガ・ウィンニール:「でも結局ボクは、あのころと大して変わってない」
リウトペルガ・ウィンニール:「……変わり得ないって言った方がいいのかな」
珊瑚夜:「あなたが、……変わりたくないと思っているだけじゃないの?」
リウトペルガ・ウィンニール:「分からない。分からないんだよ、本当に」
リウトペルガ・ウィンニール:「……でも」
リウトペルガ・ウィンニール:「わざわざ……彼の曲をリクエストしたのは」
リウトペルガ・ウィンニール:「………」
リウトペルガ・ウィンニール:「──ねえ、夜君」
珊瑚夜:「……なあに?」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクは、キミの演奏を聴いて……なんだか、妙な気分がした」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミの演奏が上手だったのもあるし──彼の曲をちゃんと聴いたのも久々だったし」
リウトペルガ・ウィンニール:「劇場の……賑やかさを……思い出したのもあるけど」
リウトペルガ・ウィンニール:「多分」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミが……弾いてくれたのが、嬉しかったんだと、思う」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクは……多分……"ボク"が思ってるより」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミのことが……好きなんだと思う」
リウトペルガ・ウィンニール:「……ごめんね」
珊瑚夜:「そんな、…………そんな、こと」
珊瑚夜:「知ってる」
珊瑚夜:「知っているわ……」涙がこぼれる。
珊瑚夜:「あなたが私を好きなことくらい、知っている」
珊瑚夜:「なのに、そう言われると」
珊瑚夜:「どうしようもなく、…………嬉しくなってしまう……」
珊瑚夜:リウトペルガ・ウィンニールは古代種と分類される存在で、普通の人間が想像もつかないような時を生き、そしてこれからも生きていく。
珊瑚夜:彼女がその永い時の中で幾人の人と出会い、関わり、愛を交わしたのか、……知らない。
珊瑚夜:そしてその人々の多くを、……あるいは早乙女六華のような例外を除いて全てを、見送って別れたのだと理解している。
珊瑚夜:子供のようなあどけなさで笑い、大人のような寂しい目で微笑む彼女が、別れを繰り返してどれほど心が擦り切れていったのか、……想像をすることはあっても、結局は少しも分かれない。
珊瑚夜:それでもその悲しみを慰めることは出来るのだと、傍にいる間は幸せを与えられるのだと、
珊瑚夜:信じたかった。
珊瑚夜:それでも私は子供だったから、
珊瑚夜:結局は、彼女に何かを与えることなんて、
珊瑚夜:少しも出来てはいなかったのではないか。
珊瑚夜:寂しさを堪えることもできない癖に、全てを忘れてのめり込んでくれないほどには理性的で。
珊瑚夜:愛されていることを知っている癖に、己が傷つかない範囲でしか愛情を表してはくれなくて。
珊瑚夜:私が寂しさを抱いていると知る癖に、諦められない程度には愛してくれて優しくしてくれて。
珊瑚夜:生きているのが間違いだと笑う癖に、彼女のその永い命を私に終わらせてくれる気はなくて。
珊瑚夜:寂しい癖に。
珊瑚夜:私の事を好きな癖に。
珊瑚夜:ロイス取得。
珊瑚夜:リウトペルガ・ウィンニール/P:■■■■■■/〇N:そこまで好きでもなかったのに付き合った訳ではないんでしょう?例外じゃない、人と深くかかわろうとしないあなたが恋愛感情から交際するなんて。でもやっぱり臆病なのね、変化も影響も恐れている。もうお互いで会う前と同じでいられないと分からないの?好きになればなるほどあなたが分からなくなっていく。傷ついても傷つけてもそれでも私はあなたといたかったのに
珊瑚夜:「……私だって、あなたのことが好きよ」
珊瑚夜:「私が想っている以上にね」
綱井楪:「……」
綱井楪:「夜」
綱井楪:「珊瑚夜」
珊瑚夜:「……何かしら?綱井さん」
綱井楪:珍しく、頭痛にでも耐えるかのように目を閉じるさまを見せる。
綱井楪:「私」
綱井楪:「先生に、ずっと私のことを覚えていてくれるようにお願いしたわ」
綱井楪:「二人の関係はよく理解したけれど。それくらいは許してもらえる?」
珊瑚夜:「え、」その言葉に顔を赤らめた後。「も、勿論よ。……私にだって、綱井さんは大切な友達だもの」
リウトペルガ・ウィンニール:
珊瑚夜/P:恋/●N:罪悪感、諦念、後悔
綱井楪/●P:『記憶』への思い/N:やり場のない憤懣
綱井楪:「そうであることを願うわ」溜息。
綱井楪:
リウトペルガ・ウィンニール ○希望/反発
珊瑚夜 連帯感/○呆れ
銀波 嵐:あたまのなかがぐしゃぐしゃだった。
銀波 嵐:考える時間が欲しい、いや、何も考えたくはない。
銀波 嵐:電車に乗った。行き先など知らない、ただ乗った。
銀波 嵐:腰の重みはこちらの行動に何も考えがないとわかると、流石に離れていくかと思った。
銀波 嵐:車内放送が知らない駅を告げる、降りる。
銀波 嵐:知らない街、当て所もなく歩く。
銀波 嵐:「……」
早乙女六華:「嵐」
銀波 嵐:「……んだよ」
早乙女六華:宛ての無い放浪をまるで気にしていない様子で、延々話し掛けてくる。
早乙女六華:「雑煮は東と西で様式がまったく異なるが……」
早乙女六華:「その境目はどこにあるのだろうか……」
銀波 嵐:「さあね、カップ麺のうどん出汁とおんなじじゃねえのか」
銀波 嵐:「……って何で雑煮の話をはじめた、今」
早乙女六華:「完全なる境界を見つけ出せれば、東西が融合した完全なる雑煮を食べられる……」
早乙女六華:「わたしはそんな気がしてならない……」
早乙女六華:ずっとこの調子で、意味があるのか無いのか分からない話を延々続けている。
銀波 嵐:「……」はぁ、と嘆息。
銀波 嵐:この女は何が楽しくてこんな無愛想なやつにへばりつくのだろうか。
銀波 嵐:他人の、ましては長い時を生きる人外の考えなどまるでわからない。
早乙女六華:「……む」
早乙女六華:不意に立ち止まる。嵐の腰に手を回した状態なので、当然腹を締め上げる形になる。
銀波 嵐:「ぐぇっ」鳥を締め上げたような声。
銀波 嵐:「んだよ急に!?」
早乙女六華:「嵐、見ろ」
早乙女六華:指差した先には、近年新設されたばかりの、駅前水族館がある。
早乙女六華:「入ろう」
銀波 嵐:「……」
銀波 嵐:最近は駅ビルの中にこういうものがある、と雑誌で読んだ記憶がある。
銀波 嵐:誰が入るかよ、と返そうと思い。
銀波 嵐:「(いや、どこへ行っても同じか)」
銀波 嵐:「(オサカナサンに興味がそれてくれるなら儲けもんだ)」
銀波 嵐:「……別にいいぜ」
早乙女六華:「ほう……」
早乙女六華:「誰が入るかよ、とか返されると思ったが」
早乙女六華:「成長したな、嵐」
早乙女六華:「えらいぞ」
銀波 嵐:「……」モノ言いたげに半目で、しかしそれを飲み込み。
銀波 嵐:「ホラ行くぞ」大股で歩きだす。
早乙女六華:そのままずるずると引きずられていく。
早乙女六華:水族館は普段は中々の人気スポットらしかったが、この日はあまり混雑してはいなかった。
早乙女六華:色とりどりの魚達の鱗が、青白い照明に反射して僅かに輝く。
早乙女六華:「嵐」
早乙女六華:くいくいと服を引っ張る。
銀波 嵐:「……んだよ」
早乙女六華:「あの魚は刺身にするといけるが、よく寄生虫がいるから気を付けろ」
早乙女六華:「あっちの縞々のは塩焼きがいいぞ」
銀波 嵐:「なんで急にそんなナマっぽい台所の知識が出てくるんだよ……」
銀波 嵐:食い気しか無いのだろうか、この女には。
早乙女六華:「釣りにはまっていた時期があってな」
早乙女六華:「お前も覚えておけば、いざという時に助かるぞ」
銀波 嵐:「釣り、ねぇ」じろじろと
早乙女六華:「何だ、その目は」
銀波 嵐:「いやね、魚や波に攫われそうな見た目だなあって」
早乙女六華:「む……」
早乙女六華:「わたしを舐めているな、嵐」
早乙女六華:「こう見えて昔はブイブイ言わせていたんだぞ」
銀波 嵐:「はぁ……左様でございますか」
銀波 嵐:「あと俺は釣り竿が必要な状況になんぞ近づかねえよ、ずっと都会で生きるわ」
銀波 嵐:言って、しまった、という顔をする。
銀波 嵐:苦虫を噛み潰したような。
銀波 嵐:「……ちっ」
早乙女六華:「それなら次は海に行くか」
早乙女六華:「わたしが教えてやろう」
銀波 嵐:「……"次"がありゃあな」
早乙女六華:「あるとも」
早乙女六華:嵐に寄りかかるようにして。
早乙女六華:「あるよ」
銀波 嵐:怖い、と思ってしまう。
銀波 嵐:目の前の早乙女六華が、ではない、それが語る未来を望んでしまう自分自身が。
銀波 嵐:「……そりゃよかった」
銀波 嵐:そっけない態度、嵐の鎧。
銀波 嵐:今は紙切れほどにしか思えない。
早乙女六華:「……」
早乙女六華:小さく笑い、くい、と手を引く。
早乙女六華:珍しく、自分が先導して歩き出して。
銀波 嵐:引かれるがままに、付いていく。
銀波 嵐:まるで幼児みたいに、らしくない。
早乙女六華:辿り着いたのは、鮫の泳ぐ大きな水槽。ベンチに腰を降ろして、隣に座るよう促す。
銀波 嵐:"らしい"とは何だっただろうか、それも今はよくわからない、促されるままに腰を下ろす。
早乙女六華:あまり人気が無いのか、辺りに客は少ない。薄暗い中で泳ぎ回る鮫を眺める。
銀波 嵐:「鮫……」
銀波 嵐:上位の捕食者、優雅で尊大。でも、今はこのちっぽけな水槽の中。
銀波 嵐:その水槽が少し羨ましいと思う。
早乙女六華:「……昔話をしてやろう、嵐」
銀波 嵐:「……オタクの昔ってのは、どのくらいの昔なんだよ」
早乙女六華:「そうだな……」
早乙女六華:「4、500年前かな」
銀波 嵐:「……スケールがちげぇな」
早乙女六華:「まだ世の中が戦国で、妖怪が沢山いた頃の話だ」
早乙女六華:少し遠い目をして話す。
早乙女六華:「私は昔、ブイブイ言わせていた」
早乙女六華:「マジだぞ」
銀波 嵐:「ああそうかい、マジの目だな」それはいいから、と促す
早乙女六華:「わたしは妖怪として生まれ、他に生き方も知らないから、ひたすら戦い続けていた」
早乙女六華:「同族を殺し回って、ひれ伏すものは配下にした」
早乙女六華:「割と有名だったんだぞ。名のある武将も何人も退治にやってきて……」
早乙女六華:「それも、殺した」
早乙女六華:「人間が嫌いだったんだ。体温を吸い尽くして、氷漬けにして何人も殺した」
早乙女六華:「マジだぞ」
銀波 嵐:出鱈目にしか聞こえない話だ。しかし仕事において、早乙女六華の出鱈目な力をこの目で見ている。黙って続きを聞く。
早乙女六華:「だが、その内に世の中は移り変わって、妖怪が妖怪らしく生きることは難しくなった」
早乙女六華:「わたしも仕方なく人に紛れて暮らすようになった。色んな家族や暮らしの中に入り込んで過ごした」
早乙女六華:「怪しまれないよう、我慢して過ごしている内に……」
早乙女六華:「……わたしはいつの間にか、人が好きになっていた」
早乙女六華:「そうして、今のわたしが出来た」
銀波 嵐:思わず茶々を入れそうになったが、思いとどまる。
早乙女六華:ほんの少し目を伏せる。
早乙女六華:「……雪というのはな、嵐」
早乙女六華:「天から降り、地に積もり、地中に溶けて。時には何千年、何万年もかけて、また雪となって降るものだ」
早乙女六華:「それはひとつの形ではないし……水であり、雨であり」
早乙女六華:「時には川や海であり、雹であり、空気であり」
早乙女六華:「凪であり、嵐でもある」
銀波 嵐:「……」
早乙女六華:君をじっと見上げる。
早乙女六華:「だがそれでも、もう一度降る時は──」
早乙女六華:「どれだけ形が変わっても、それはまた雪なんだ」
早乙女六華:「……昔のわたしと、今のわたしは」
早乙女六華:「違う人間だと思うか?」
銀波 嵐:「わかんねぇ……」
銀波 嵐:「わかんねぇよ……」
銀波 嵐:"凪”と"嵐"は同じ人間なのだろうか。
銀波 嵐:そもそも、自分も変わってしまうのだろうか。
銀波 嵐:変わってしまうことはおそろしい。
銀波 嵐:目の前の、早乙女六華は自分に何を求めているのか。
銀波 嵐:そうだ、といってやればいいのだろうか、違うと、断じてやれば……。
早乙女六華:「……嵐」
早乙女六華:隣にある背中を抱くようにする。
早乙女六華:「これだけは覚えておいてくれ」
早乙女六華:「わたしは、今のお前が──銀波嵐が好きだ」
早乙女六華:「だが、もしお前が変わってしまっても……」
早乙女六華:「その時もまた、好きになれるといいと思う」
銀波 嵐:「おれ……は」
銀波 嵐:言葉は続かない、ただ頬に熱を感じる。
銀波 嵐:嵐は人前で泣いたことがない。
銀波 嵐:それは自分が強いからだと思っていた。
銀波 嵐:そうでないことを知った。
銀波 嵐:知るのは怖い、知られるのも。
銀波 嵐:しかし、何かが変わり始めていた。
銀波 嵐:このモヤモヤを、不安を、恐怖を、どうにかするには。
銀波 嵐:どうしたって知らねばならないのだ、それがわかる。
銀波 嵐:あるいは――どうにもならないのかも。
銀波 嵐:「俺は……凪が好きだ」
銀波 嵐:「そう決めたからだ」
早乙女六華:「……」
銀波 嵐:「ただ、好きってのは……そういうものとは……違うんじゃねえかって」
銀波 嵐:「正確ではないんじゃないかって」
銀波 嵐:「そんなことを、最近は、ついつい考えちまう」
早乙女六華:無言のまま、嵐の顔を見て、言葉を待つ。
銀波 嵐:「オタクは……六華は、長く生きてるんだろ」
銀波 嵐:「教えてほしいが……なんか、」
銀波 嵐:「六華は、そういうの、言ってはくれない気がする」
銀波 嵐:これは新たに"知った"ことだろうか、それとも思い込みだろうか。
銀波 嵐:「なぁ……俺は、六華が好きなのか?」
銀波 嵐:涙を流す、困ったように眉を寄せ。
銀波 嵐:「わからねぇ……」
銀波 嵐:「だけど……やだな、それを知りたいって……思ってしまったんだ」
銀波 嵐:あとは、ただ、小さく身体を震わせる。
銀波 嵐:続く言葉はない、わからない。何を言えば良いのかなど。
早乙女六華:自分より高い位置にある頭を、子供にそうするように撫でる。
早乙女六華:「……わたしがそれを教えるのは、ずるだからな」
銀波 嵐:いつもなら払いのけるそれを、ただ黙って受け入れる。子供がそうするように。
早乙女六華:「焦らなくていい。それはお前自身が、ゆっくり考えることだ」
早乙女六華:言い聞かせるような穏やかな声。
早乙女六華:「……これから、ペンギンのショーがあるらしいぞ」
早乙女六華:「行ってみるか?嵐」
銀波 嵐:「……」
銀波 嵐:「……うん」
銀波 嵐:コクリと、頷く。
銀波 嵐:袖で涙を拭う。拭っても、拭っても溢れ出すソレ。
銀波 嵐:こわい、という気持ちは気づけばいくらか減っていた。
GM: シーン終了です。
GM:ここでミドル後半のシーン順を決めるダイスロールを行います。
GM:10DX5で判定を行い、数値の高かったPLから、何番目のシーンを選ぶか選択権を得られます。
珊瑚夜:10dx5
DoubleCross : (10DX5) → 10[1,2,3,4,5,6,7,9,9,9]+10[1,1,2,5,8,9]+10[3,6,8]+2[1,2] → 32
銀波 嵐:10dx5
DoubleCross : (10DX5) → 10[1,1,2,4,7,7,7,9,10,10]+10[1,1,5,6,8,9]+10[1,3,4,5]+10[10]+10[9]+10[7]+10[5]+10[7]+1[1] → 81
綱井楪:10dx5
DoubleCross : (10DX5) → 10[1,2,2,3,7,8,9,10,10,10]+10[1,1,1,4,7,8]+10[7,8]+4[1,4] → 34
銀波 嵐:むん!
珊瑚夜:つっよ
銀波 嵐:あ、いやちがった
銀波 嵐:嵐は、ちがうのでした
リウトペルガ・ウィンニール:10dx5
DoubleCross : (10DX5) → 10[2,2,4,5,5,6,7,8,9,10]+10[4,6,8,8,8,10,10]+10[1,2,4,5,8,9]+10[3,6,6]+10[6,7]+10[3,9]+2[2] → 62
早乙女六華:10DX5
DoubleCross : (10DX5) → 10[1,2,4,5,7,7,7,8,8,10]+10[1,3,4,6,7,10,10]+10[3,4,7,9]+10[6,7]+10[9,9]+10[2,7]+1[1] → 61
早乙女六華:1負けた……
GM:では最初に選べるのは銀波さん!何番目を取りますか?
銀波 嵐:あの、事前に相談したように
銀波 嵐:めっちゃ最後で
GM:了解しました。
綱井楪:えっ何……?
珊瑚夜:どういうこと??????
リウトペルガ・ウィンニール:何を相談したんだ……
GM:次はリウさん。何番を取りますか?
リウトペルガ・ウィンニール:う~~~ん
リウトペルガ・ウィンニール:3……3……かな……
GM:3ね!
GM:次は早乙女さんです
早乙女六華:うーん…………
早乙女六華:4……かな……
GM:では次は綱井さん、選択どうぞ
綱井楪:2番目!
GM:2!
珊瑚夜:何番にしようか悩むな~~~~~~~~~~~~!
GM:では順番はこのようになりました
GM:
1珊瑚
2綱井
3リウ
4早乙女
GM:お前は1番だ!珊瑚!
銀波 嵐:よろしくお願いします。
珊瑚夜:やったるわい!
珊瑚夜:めっちゃ最後の人は順番にものらないんですか???
【Middle2】
GM:ミドルシーン前半が終了し、トリガーシーンに入ります。
GM:全員登場です。
綱井楪:綱井楪の侵蝕率を1d10(→ 5)増加 (48 → 53)
珊瑚夜:珊瑚夜の侵蝕率を1d10(→ 4)増加 (56 → 60)
早乙女六華:1D10+55
DoubleCross : (1D10+55) → 8[8]+55 → 63
銀波 嵐:1d10+58
DoubleCross : (1D10+58) → 1[1]+58 → 59
リウトペルガ・ウィンニール:リウトペルガ・ウィンニールの侵蝕率を1d10(→ 10)増加 (52 → 62)
---
GM:それではここで情報収集を行っていただきます。
綱井楪:まるでダブルクロスみたいな判定だ
GM:皆さんで調べていた結果ということで、項目と難易度はこちら
GM:
情報:噂話/UGN
難易度:合計で40
GM:みんなで判定して40以上になればクリアです。
GM:というわけで判定どうぞ!
珊瑚夜:金の力でみんな判定ダイス+1個、達成値+2なのでよろしくお願いします!
銀波 嵐:金だ金だァ~~!!
綱井楪:YARUJAN
リウトペルガ・ウィンニール:やっぱ金なんだよな
銀波 嵐:2dx+3
DoubleCross : (2DX10+3) → 10[5,10]+4[4]+3 → 17
綱井楪:コネUGN幹部を使って情報UGNで
綱井楪:6dx+3
DoubleCross : (6DX10+3) → 9[1,5,5,7,8,9]+3 → 12
珊瑚夜:情報:UGNで判定。ミーミルの覚書をコネ:UGN幹部として使用します。
珊瑚夜:5dx+2
DoubleCross : (5DX10+2) → 8[1,3,4,5,8]+2 → 10
珊瑚夜:しょっぱ……
リウトペルガ・ウィンニール:情報:UGN、コネ使用で
リウトペルガ・ウィンニール:(1+3+2)dx 〈情報:UGN〉
DoubleCross : (6DX10) → 10[3,3,7,7,9,10]+2[2] → 12
早乙女六華:なにもしてないのにクリアできた
銀波 嵐:社会雑魚勢の嵐のやる気がすごい
早乙女六華:5DX+3
DoubleCross : (5DX10+3) → 9[2,3,5,7,9]+3 → 12
GM:というわけで見事無事にクリアですね
綱井楪:我々は任務に真摯であり、強い
GM:みんな珊瑚さんにお礼言っときな
GM:では情報を開示します
銀波 嵐:金をありがとう
珊瑚夜:私たちはレズセックス集団ではなくUGNチルドレンですからね
銀波 嵐:最後の水晶の剣!!手持ちのブレードへ!侵食4
情報:噂話/UGN
難易度40
学園周辺での怪異は主に逢魔時や深夜に集中している。今のところ傷害などの実害が出ているわけではないようだが、実際に恐怖体験をして精神的なショックを受けた生徒も少なくないようだ。
君たちが調査を進めている間にも、噂は更に拡大し、生徒達の不安は更に大きくなっている。
証言に従って現場を調査したところ、レネゲイドの残留が確認された。
また学内の各所、天井裏や空き教室の机の中など見つけづらい場所に、呪符と魔法陣、動物の死骸など、何らかの儀式の痕跡が発見できた。
一連の事件には何者かの関与があると見て間違いないだろう。
私立星宮学園 オカルト研究部 部室
GM:11月。
GM:晩秋が冬に変わりゆく季節、君達は各自の調査結果を持ち寄り、部室に集合していた。
GM:外から聞こえる部活動の声も心なしか静かだ。それは一連の事件とも無関係ではないだろう。
銀波 嵐:「QRコードだよ」
銀波 嵐:「だから、手書きの」
早乙女六華:「何だそれは?」
銀波 嵐:「まさかと思って読み込んでみたら繋がったわけ」
銀波 嵐:スマホをヒラヒラと。
珊瑚夜:「嵐さん。言いたいことから話し出すのは悪い癖よ?きちんと順序だてて説明してもらわないと……ああ、ネクタイがずれているわ」
珊瑚夜:言葉とは裏腹に機嫌よさそうに嵐のネクタイへ手を伸ばし直そうとする。
銀波 嵐:『コックリちゃんのお部屋』というタイトルで可愛らしい狐の耳をつけた3Dの少女が映る画面を差し出す。
銀波 嵐:「人工無能っていうんだっけ、こういうの」
銀波 嵐:「これがまたえらいよく喋る喋る」
銀波 嵐:「最初はこっちが質問してたんだが、そのうちあっちが色々聞いてくるようになってな」
銀波 嵐:「いやソレ聞くのかよ、ヤベーだろって質問が来たから、昨日、ブックマークから削除した」
珊瑚夜:「へえ……」興味深そうに画面をのぞく。
リウトペルガ・ウィンニール:「人工無脳って近頃は言わない気もするけど……でもかわいいねこれ」
銀波 嵐:「変に興味持つんじゃねえぞ、それこっちを操って来ようとしだすからな、そのうち」
リウトペルガ・ウィンニール:「さすがにそこまで迂闊じゃあないさ」
銀波 嵐:「ま、こんなのはほんの一部だな」
銀波 嵐:「流石に俺でも気付く、妙なものが明らかに増えてやがる」
綱井楪:「……所謂“オカルト”的なものね」
綱井楪:机に並べた資料をぱらぱらと捲る。発見した呪物めいたものの写真。
綱井楪:実物は既に処分してある。
綱井楪:「手書きのQRコードなんてものまであるのは知らなかったけれど」
早乙女六華:「……」呪物の写真を眺めて「厄介な術士が絡んでいるようだな」
珊瑚夜:「……早乙女さんから見ても悪戯じゃなさそうってことは、それなりに面倒な事態みたいね」
リウトペルガ・ウィンニール:「これは裏山で見つけたけど──」
リウトペルガ・ウィンニール:スマートフォンを操作し、一枚の画像を出す。
リウトペルガ・ウィンニール:地面に不自然に撒き散らされた木の葉とその周りに放置されたいくつもの香炉。
リウトペルガ・ウィンニール:「結構本格的な呪法だ。こんなのが空き教室、旧校舎、ゴミ捨て場、準備室──人目に付かない、色んなところにある」
早乙女六華:「……学生の悪ふざけでは済まんな、これは」
綱井楪:「むう」腕を組む。
珊瑚夜:「そうね……私は生徒への聞き込みを主にしていたのだけれど」
珊瑚夜:「怪異の内容そのものより、恐怖体験をした精神的ショックを受けているのが心配だわ」
珊瑚夜:「危惧されていたようなストレスによる集団覚醒が起こってしまうかもしれない」
早乙女六華:「……そうだな。素養のある生徒なら、その場で覚醒しかねん」
珊瑚夜:「やっぱり暗くなってからの遭遇がほとんどみたいだから、勘違いも含まれているかもしれないけれど……」
珊瑚夜:「遅い時間に変な事が起こった、ということはより精神的負担になる面もあるから」
銀波 嵐:「覚醒を促す、にしては俺には……ずいぶんとまどろっこしく思えるんだが」
銀波 嵐:「これって効率良かったりするわけ?妖怪ズの目から見て」
早乙女六華:「いいや」かぶりを振り、珊瑚にひっついて暖を取る。
早乙女六華:「非効率的で、不確かだ」
珊瑚夜:「わっ!……も、もう。早乙女さん、相変わらず距離が近いわ……」少し恥ずかしそうに顔を赤らめながらも拒みはしない。
銀波 嵐:その様子を少々苛立たしげに眺めながら。
リウトペルガ・ウィンニール:「そうだねぇ、FHなんかは今時はもっと便利なもの……ボクらにとっては厄介なもの、色々持ってるはずなんだけど」
早乙女六華:「ああ。本当に覚醒させたいだけなら、αトランスのような強制励起剤を散布でもすればそれで済む」
珊瑚夜:「……妖怪『ズ』って……」何か言いたげに嵐を見るがそれ以上何も言わず話を聞く。
リウトペルガ・ウィンニール:「本気にしては迂遠だけど、いたずらにしては悪質で、手が込んでる」
早乙女六華:「いずれにしても、放置は出来んな」
綱井楪:「……不服だわ」
銀波 嵐:「しっかし、舐められたもんだな」
銀波 嵐:「だんだん派手になってきてる以上」
銀波 嵐:「なりふりかまってられなくなったか、こっちを脅威と見てないかのどちらだが」
銀波 嵐:「どっちであっても愉快な話じゃあねェ」
珊瑚夜:「ええ。元から放置する気はなかったけれど、ますます危機感を持ったわ」早乙女さんの頭を撫でながら
綱井楪:「ええ」
綱井楪:「これだけ本格的な手並みを持っているのに」
綱井楪:「どうして私のところに来てくれないのかしら」
珊瑚夜:「不服って……そこなの?」
綱井楪:「そうでしょう?」
綱井楪:「オカルト研究会なのよ、ここは」
リウトペルガ・ウィンニール:「オカ研は年中部員募集中だからね!」
早乙女六華:珊瑚に頭を擦り付ける。「部長としての意見か」
銀波 嵐:「……。」
早乙女六華:「されたくないんじゃないのか?研究」
綱井楪:「自分は十分に知悉していて」
綱井楪:「研究なんてするまでもないと?」
銀波 嵐:「じゃあなんだ、あっちがホイホイやって来たとしたら、オタク部長としてこの馬鹿騒ぎに喜んで協力してたってワケ?」
綱井楪:「そうは言ってない」
綱井楪:「むしろちゃんと指導したわ。共に切磋琢磨しながら、使い方を間違えないように」
銀波 嵐:「ハァ……」
珊瑚夜:「……現場にはレネゲイドの痕跡があったわ。儀式には……小動物の死体なんかも使われていたみたいだし」早乙女さんの黒髪を梳きながら。
珊瑚夜:「そんな危険な手を使う相手に好んで会うのは危険だと思うけれど……」
珊瑚夜:「……ふふっ、猫ってこんな感じなのかしら」早乙女さんを楽しそうに見つめる。
銀波 嵐:「分野が少々被ってるからって自分と同じ人種だと思ってんじゃねえよ」
銀波 嵐:「あっちはオカルト実践会だろ、畑違いだ」
綱井楪:「むむう」ほんの少し唇を尖らせる。
綱井楪:「仲良くなりたいのに」
銀波 嵐:「ああそうかい、お優しいことで」
早乙女六華:「……嵐」珊瑚の腕の中から
早乙女六華:「何をそんなに苛ついてる?」
早乙女六華:「ペンギンショーを思い出せ」
銀波 嵐:「バッ」
銀波 嵐:「その話はここでするんじゃねえ!!」ガタン、と椅子を倒して起ち上がる。
珊瑚夜:「ペンギンショー?」ぱちぱちと不思議そうに目を瞬かせている。
リウトペルガ・ウィンニール:「ペンギンショー? ……ははあ」早乙女と銀波の顔を見比べる。
綱井楪:小首を傾げる。
早乙女六華:「……?」特に気にした様子も無い。
珊瑚夜:「早乙女さんと嵐さんはペンギンショーを一緒に見たのかしら?楽しそうだわ!」ニコニコと笑っている。
銀波 嵐:「お、お前ら何をしたり顔で!!」
綱井楪:「…………」
綱井楪:「私は行ってない」
綱井楪:じっと六華を見る。
銀波 嵐:「そ、それはそこのちびっ子がだな、どうしても水族館に行きたいって!」
銀波 嵐:「言っ……」
早乙女六華:「楪も行くか?今度」
早乙女六華:「イルカショーもあるらしいぞ」
早乙女六華:「餌やり体験もできる」
綱井楪:「行く」即座に頷く。
リウトペルガ・ウィンニール:「諦めたまえ嵐君、こういうヤツなんだ」
銀波 嵐:椅子を起こし、腰を下ろす。
銀波 嵐:「……。」
珊瑚夜:「へえ、イルカの餌やり……」その話を興味深そうに目を輝かせて聞き、
珊瑚夜:「…………」ちらりとリウトペルガの方を一瞬見た後慌てて視線をそらす。
綱井楪:「……安心して」着席した嵐に視線を移して。
綱井楪:「ちゃんと嵐とも行くわ」
銀波 嵐:「……女子会やりに来たんじゃねえぞ」ボソボソと
綱井楪:「遊園地の方が良ければそちらでもいいわ」
銀波 嵐:「いーや、どー、お二人で、ごゆっくり、だから、俺は、言ったように、水族館なんて」
銀波 嵐:「……遊園地」
銀波 嵐:「行ったことねえな、そんなん……」独りごちる。
綱井楪:「決まりね」頷く。
銀波 嵐:ハ、と顔を上げ。
銀波 嵐:「いや、待て、何決めてんだ!?」
綱井楪:「美味しいものもたくさんあるわよ」
綱井楪:「私はメロンソーダのポップコーンが好き」
綱井楪:「色が変で……」
銀波 嵐:「どうして……俺の周りには人の話を聞かねえ女しかいねぇんだ……」力のない声で。
珊瑚夜:「メロンソーダのポップコーンなんてあるの?」驚いて目を見開く。
綱井楪:「あるの」
早乙女六華:「あるのか……」
リウトペルガ・ウィンニール:「へえ! それは食べたことないなあ」
珊瑚夜:「!な、なら、一緒に行く?リウトペルガ」
珊瑚夜:「私も……食べたことがないし、興味があるわ」
リウトペルガ・ウィンニール:「………」
リウトペルガ・ウィンニール:「……そうだね」
リウトペルガ・ウィンニール:「行って……みようか。一緒に」
珊瑚夜:「!」その言葉に弾むような笑顔になる。
珊瑚夜:「ええ……、ええ!行きましょう!」ふわりと甘い香りが濃くなる。
早乙女六華:「嵐。それなら動物園にも──」
GM:その時。
GM:上階から破砕音と悲鳴が轟く。
綱井楪:無音で立ち上がる。
GM:断続的に続く揺れ。ガラスの割れる音が、この部室まで響いてくる。
珊瑚夜:「!」一瞬で厳しい表情になる。
リウトペルガ・ウィンニール:「と、出かける予定立ててる場合でもなさそうだね」
銀波 嵐:既に駆け出している。
銀波 嵐:「(手で開くより――)」
銀波 嵐:部室の扉を蹴破る。
綱井楪:「あっ」
銀波 嵐:飛び出していく。
早乙女六華:「なんてことを……」
綱井楪:「……」
綱井楪:きぃきぃと悲しげに鳴る扉を少しだけ見つめて。
綱井楪:そのまま嵐の後に続いて駆け出す。
珊瑚夜:「あっ、嵐さん!……えっと、とりあえず私たちも続きましょう!」蹴破られた扉を一瞬見つめた後鋭く言葉を放つ。
GM:放課後の白昼、教室棟。
GM:まだ生徒たちの残る校舎に、信じがたい光景が広がっていた。
GM:廊下を埋め尽くさんばかりの純白の大蛇が、のたうち暴れ回り、周囲のものを破壊している。
クチナワ:「シュゥウウウウウ……」
GM:口の端や全身の各所からは蒼白い炎──鬼火が漏れ、周囲にはレネゲイドの気配。
GM:明らかにただの生物ではない。
GM:ワーディングも展開せずに暴れているため、生徒たちが怯え逃げまどい、パニック状態になっている。
GM:「何……何なんだよこれぇ……!」「助けて……!く、食われる!」「いやヤバいヤバいって!」
珊瑚夜:「……へ、蛇!?」駆けつけ、その様子に目を丸くする。
綱井楪:──その恐慌が、階下への階段に近い場所から鎮まっていく。
銀波 嵐:弾丸のように飛び込む影、床を砕き割らんかという勢いで跳躍。
綱井楪:《ワーディング》。大蛇が用いなかったその結界を張りながら移動し、
綱井楪:「一発入れて。嵐」
綱井楪:「巻き込まれそうな人は私が守る」
綱井楪:後方から彼女へ声が飛ぶ。
銀波 嵐:鉄板の仕込まれたブーツに加重を載せ、
銀波 嵐:「――ッ」
銀波 嵐:「(デカい……ゴムの塊みてえな感触だ)」
銀波 嵐:反動で飛び、着地。
クチナワ:口から空気の漏れるような威嚇音。銀波に向き直り、鎌首を擡げてちろちろと青い舌を動かす。
銀波 嵐:「んだよアレ、動物園から脱走してきましたって感じじゃあねえが」
リウトペルガ・ウィンニール:「……そういえば聞き込みにあったねえ。『この学校は神社を潰して建てられたから、今でもその神さまの使いの白蛇が住んでる』とかなんとか」
綱井楪:……数秒後、銀波嵐に追い付く。
綱井楪:両腕には横抱きにした早乙女六華。
早乙女六華:「その噂も眉唾だがな……」綱井に抱えられたまま悠々と。
リウトペルガ・ウィンニール:「まあそれも単なるウワサなんだろうけど。神社でお墓で病院で日本軍の研究所なんて意味わからなすぎるもの」
珊瑚夜:「……全部事実だったほうが怖いわね」
銀波 嵐:「チッ……てめーは俺の"バディ"だろうが、何楽してやがるんだ」悪態をつく。
早乙女六華:「すまん。走るのは苦手でな」床に降りる。
綱井楪:「でも、先行してもらったおかげで助かった」
綱井楪:「えらいわ。嵐」
銀波 嵐:「るせっ、オタクは俺の保護者か何かか!!」
珊瑚夜:きゅるきゅると小さなロボットたちが眠りに落ちた生徒たちを安全な場所へと運んでいく。意外と力持ちなのだ。
クチナワ:「シャァアアアア……!」
クチナワ:君達に向け、敵意を露わに牙を剥く。
早乙女六華:「とにかく倒すぞ」
銀波 嵐:「おうおう、元気いっぱいじゃねえか」
銀波 嵐:「邪魔もなくなったんだ、三枚に下ろしてやるよ」
珊瑚夜:「ええ。どうしてこんな大きな蛇がいるのか分からないけれど……とにかく静かにさせましょう」
綱井楪:「……ワーディングも張りっぱなしにはできない」
綱井楪:「手早く済ませなくてはね」
リウトペルガ・ウィンニール:「教師として、危険な生き物はとっとと追い出さないとね」
GM:ミドル戦闘を開始します。
エンゲージ []内は行動値
クチナワ[6]
(10m)
綱井[8]珊瑚[8]銀波[7]リウトペルガ[7]早乙女[6]
GM:セットアップから!
リウトペルガ・ウィンニール:なし!
クチナワ:Dロイス ≪野獣本能≫により≪完全獣化≫+≪究極獣化≫+≪剛身獣化≫
クチナワ:肉体ダイス+6個 装甲+22 攻撃力+8
綱井楪:なし!
銀波 嵐:ないー
早乙女六華:≪先陣の火≫
早乙女六華:行動値6>11
珊瑚夜:セットアップ、≪加速装置≫行動値8→12、侵蝕+2
珊瑚夜:侵蝕60→62
GM:綱井楪の侵蝕率を2増加 (53 → 55)
綱井楪:上げるとこ違ってる!
早乙女六華:あっごめん
早乙女六華:無断で触っちゃった
綱井楪:もう……///
GM:早乙女六華の侵蝕率を2増加 (63 → 65)
GM:ではイニシアチブ、行動値12 珊瑚さんの手番です
珊瑚夜:はい!
珊瑚夜:マイナーなし、メジャーで≪原初の赤:アドヴァイス≫≪弱点看破≫≪混色の反乱≫侵蝕+11 対象は味方PC全員!
珊瑚夜:3dx
DoubleCross : (3DX10) → 10[5,7,10]+6[6] → 16
珊瑚夜:全員にダイス+5個、C値-1、攻撃力+9のバフ!
珊瑚夜:侵蝕62→73
GM:つよ……
GM:演出どうぞ!
珊瑚夜:どこからか、ふわりとミントの香りが漂う。
珊瑚夜:直接の攻撃手段は持たない珊瑚夜は、だからこそ立ち塞がる者を倒したいという想いは人一倍持っている。
珊瑚夜:その想いを匂いに乗せ、同調させ、高める。
珊瑚夜:「ペットのヘビが、身体を真っすぐに伸ばして飼い主の隣に寝ているとき」
珊瑚夜:「飼い主を食べようとして丸呑みできるかどうかを測っている」
珊瑚夜:「……という都市伝説は、嘘よ」
珊瑚夜:「けど、この大きさなら丸呑みにすることは十分可能だと思うから……」
珊瑚夜:「……みんな、丸呑みされないようにがんばって!」
GM:行動値11、早乙女さんの手番です
早乙女六華:マイナー≪氷の回廊≫+≪オリジン:レジェンド≫
早乙女六華:3m後方に移動。
GM:早乙女六華の侵蝕率を3増加 (65 → 68)
早乙女六華:メジャーで≪コンセントレイト:ウロボロス≫+≪原初の赤:氷の塔≫
早乙女六華:対象はクチナワ。
早乙女六華:13DX7+3
DoubleCross : (13DX7+3) → 10[3,4,5,5,5,6,6,6,8,8,9,10,10]+5[1,1,3,4,5]+3 → 18
早乙女六華:ひっくい
クチナワ:≪蛇の動き≫ ドッジ
クチナワ:12DX>=18
DoubleCross : (12DX10>=18) → 10[1,1,1,2,2,3,3,8,10,10,10,10]+8[2,3,8,8] → 18 → 成功
早乙女六華:ぎゃ~~~~~~~~~~~
珊瑚夜:ば、バディムってまだセーフ!?
リウトペルガ・ウィンニール:《グラビティバインド》
早乙女六華:リウ!
リウトペルガ・ウィンニール:達成値-9。
珊瑚夜:あっさすが!リウトペルガに任せるわ!
早乙女六華:やっぱりわたしの相棒はリウしかいないな……
綱井楪:ふ~ん
珊瑚夜:ふーん……
銀波 嵐:へぇ……
リウトペルガ・ウィンニール:これ貰い事故じゃない?
早乙女六華:秘書が勝手にやりました
早乙女六華:ダメージ!
早乙女六華:2D10+15+9
DoubleCross : (2D10+15+9) → 15[7,8]+15+9 → 39
クチナワ:カチカチ装甲でかなり減らして生存!
GM:早乙女六華の侵蝕率を6増加 (68 → 74)
リウトペルガ・ウィンニール:リウトペルガ・ウィンニールの侵蝕率を3増加 (62 → 65)
早乙女六華:「……なら、これでも呑んでもらおうか」
早乙女六華:六華が屈みこみ、ひた、と床に触れる。
早乙女六華:瞬間、冷気が壁を、床を、天井を伝い、ぴしぴしと音を立てて大蛇に迫る。
早乙女六華: ガ ガ ガ ガ !!
早乙女六華:夥しい数の氷柱が瞬時に伸び、四方から大蛇に迫る。
クチナワ:「……!」
クチナワ:その攻撃から、身体をしならせて逃げようとする、が。
リウトペルガ・ウィンニール:《Ni sal nieman》《then diubal vorhtan》『人は誰あれ悪魔をば』『恐れ、怖がることなかれ』
リウトペルガ・ウィンニール:《wanda her ne mach mannne scada sīn》 《iz ni hengi imo ūse druhttīn》『我らの主父が許さずば』『人に害たりえぬがゆえ』
リウトペルガ・ウィンニール:白蛇の周囲にいくつもの魔眼が現れ──その表面から生えた木の枝が、幾重にもその身体を拘束する。
クチナワ:「ガッ……!?」
クチナワ:捕らえられたその鱗を、無数の氷柱が刺し貫く。
リウトペルガ・ウィンニール:「蛇はトネリコを嫌う──と書いたのは、アルベルトゥスだったかな?」
クチナワ:「シャ、アァアアアッ……!」
クチナワ:鮮血を撒き散らし、のたうち回って苦しむ。ガラスが砕け散り、窓枠が歪む。
早乙女六華:「衰えてはいないようだな、リウトペルガ」
早乙女六華:「昔を思い出す」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミは昔より丸くなったね。その分、刃は鋭くなったかな」
GM:行動値8、綱井さんの手番です。
綱井楪:はーい
綱井楪:マイナーなし。メジャーでコンボ【自己消散の毒】。
綱井楪:《サイレンの魔女》《流血の胞子》でクチナワに射撃攻撃をします。
GM:判定どうぞ!
綱井楪:8dx9+18
DoubleCross : (8DX9+18) → 8[1,2,3,4,5,5,6,8]+18 → 26
クチナワ:しまった……こいつは……サイレン女!
クチナワ:ガード≪イージスの盾≫
GM:ダメージどうぞ!
綱井楪:3d10+15+9
DoubleCross : (3D10+15+9) → 18[4,4,10]+15+9 → 42
綱井楪:装甲無効で当たれば邪毒5!
クチナワ:ギャアアッ 嘘だろ
クチナワ:42-2D10
DoubleCross : (42-2D10) → 42-6[4,2] → 36
クチナワ:かなり入りますが……まだ生存!
綱井楪:綱井楪の侵蝕率を7増加 (53 → 60)
綱井楪:──十三年前。
綱井楪:UGN管理下の研究施設で事故が起き、当時そこに居た数十人が“亡失”した。
綱井楪:原因は、とあるレジェンド種レネゲイドビーイングに由来する毒の流出。
綱井楪:それは“定義”を蝕んで削り落とす、特異な性質を持っていた。曝露者は他人の記憶から消え去り、記録からも抹消され、己自身さえ何者であったのかを忘れながら、世界とのあらゆる結び付きを失って消えた。犠牲者の数が明確でないのはそのためだ。
綱井楪:ただ一人、当時5歳の少女だけが生き残った。
綱井楪:毒に適合することによって。
綱井楪:……目を瞑る。右肩を押さえて背を丸め、息を吐く。
綱井楪:この力を使うことには恐怖がある。
綱井楪:つい先程までおしゃべりをしていたひとが、霧が吹き払われるように消えるのを見た。見たはずだ。その記憶さえ朧気なのが恐ろしい。忘れられてしまうことが恐ろしい。
綱井楪:何より、それを為したそのものが、未だ自分の中に残っているのだ。たまたま抑え込むことができたが、気を抜けばすぐにも喰らわれる。その感覚がある。
綱井楪:だが今は、それが必要だ。
綱井楪:ぶわり、と風ならぬ風が吹く。
綱井楪:綱井楪の背に負われ、超自然の力場が花開く。それは蛾の翅とも金魚の尾ともつかぬ形をしていて、薄衣の如く透き通るその随所に、星を思わせる幽玄の光を灯す。
綱井楪:“星の透かし羽”。輝きの粒が溢れ出し、大蛇の周囲の空間に滞留し、ひとには理解できない規則性を以て瞬き、青白い光を散乱させる。
綱井楪:毒とは、それだ。存在の芯を氷の剃刀で薄く削がれていくような感覚がクチナワを襲う。
綱井楪:“どこにもなくなる”。それが、綱井楪が身に宿す力である。
クチナワ:「────!?」
クチナワ:異様な感覚に襲われ、混乱し暴れ回る。
クチナワ:硬質の鱗による防御も、何の役にも立たない。レネゲイドによって作り出された存在にそれは、文字通りの致死の毒となる。
クチナワ:だが、まだ倒れない。青白い火を引っ切り無しに口から漏らしながら、爬虫類の眼で君達を見据える。
GM:行動値7、リウトペルガさん、銀波さんの手番です。
銀波 嵐:はーい!
銀波 嵐:コンボ、【黒蜻蜒】→《砂の加護》《コンセントレイト:ノイマン》、アームブレードを使用し《マルチウエポン》《ヴァリアブルウエポン》の白兵攻撃。
銀波 嵐:侵食値+11。
GM:判定どうぞ!
銀波 嵐:8dx7-2
DoubleCross : (8DX7-2) → 10[2,2,2,4,4,6,7,9]+10[5,7]+10[9]+1[1]-2 → 29
珊瑚夜:バディムーブ!
珊瑚夜:達成値+3!
銀波 嵐:ヤッター!
GM:こいつらァ~~~ッ
クチナワ:避けてやる……≪蛇の動き≫!
クチナワ:12DX>=32
DoubleCross : (12DX10>=32) → 10[1,2,2,3,3,4,6,8,8,8,9,10]+2[2] → 12 → 失敗
クチナワ:クソ~~~~~~ッ
GM:ダメージどうぞ!
銀波 嵐:13dx6-2
DoubleCross : (13DX6-2) → 10[1,1,1,2,3,4,4,4,4,6,6,7,10]+10[4,5,5,8]+1[1]-2 → 19
リウトペルガ・ウィンニール:《妖精の手》、最後の1を10に
リウトペルガ・ウィンニール:リウトペルガ・ウィンニールの侵蝕率を4増加 (65 → 69)
銀波 嵐:1dx6+28
DoubleCross : (1DX6+28) → 4[4]+28 → 32
GM:ダメージどうぞ!
銀波 嵐:4d10+45+9
DoubleCross : (4D10+45+9) → 28[8,9,8,3]+45+9 → 82
珊瑚夜:つよ
綱井楪:マジ?
銀波 嵐:景気が良い
リウトペルガ・ウィンニール:デカい
GM:嘘でしょ
クチナワ:死にました…………
銀波 嵐:それとアームブレードでガード5削りかな
銀波 嵐:ワイワイ!
珊瑚夜:ガードの前に生命が削れてるんだよな
銀波 嵐:「よおし、そのまま抑えておけ、活造りだ」
銀波 嵐:氷にはりつけられ、毒に侵された白蛇。
銀波 嵐:横目でチラリと、綱井楪を盗み見る。
銀波 嵐:広がる羽。目を奪われる。綺麗だな、とただただ思う。
銀波 嵐:つい部室に置いてきた、使い捨てのインスタントカメラの事を思い出す。
銀波 嵐:ばかだな――こんな時に。
銀波 嵐:「俺の"翅"も見せてやるよ」
銀波 嵐:サラサラ、と臙脂のジャケットその袖口からこぼれ落ちるは黒い砂。
銀波 嵐:鉄を含んだその特殊な砂、
銀波 嵐:「《電磁鍛造》」
銀波 嵐:それは床に落ちることなく、空中にてとある形を取る、むき身の刃。嵐の全身の"発電細胞"が鎚を振るい、それが打ち鳴らされる。
銀波 嵐:黒蜻蛉。機能以外の全てを削ぎ落とした、シンプルな美しさがその翅にはあると嵐は考える。完全なる"四枚"には届かぬが、
銀波 凪:『四枚目はね、絶体絶命ってだーー!って時以外は、使っちゃ駄目だからね、ぜったい!』
銀波 嵐:「今はそれでいい」
銀波 嵐:シュパ――リ。閃く黒い軌跡。
クチナワ:「……」
クチナワ:鮮血と共に、その巨大な首が落ちる。
クチナワ:断面から、次いで全身から噴き上がる青い炎。
クチナワ:巨体が崩れ落ち、燃え尽きると同時に空気に溶けていく。
GM:周囲の生徒たちはまだワーディングの影響下にあり、静まり返っている。
早乙女六華:「……こんな白昼に」
早乙女六華:「こんなに堂々と、直接的に……」
早乙女六華:「これまでとは、随分様子が違うな」
珊瑚夜:「……そうね。事情が変わった?それとも別勢力……?」
銀波 嵐:「……仕掛けてきたってのか?」
銀波 嵐:「それともコレが、あちらさんにとっても不測の事態って線は……」
リウトペルガ・ウィンニール:「いずれにしても、さ。ボクらが忙しくなることには変わりはなさそうだ」
綱井楪:「…………」
綱井楪:息を吐く。生白い顔に一筋の汗が伝う。
綱井楪:「……夜。ロボットたちはどう?」
綱井楪:「生徒の無事もそうだけど。怪しい奴を見かけたりしていないかしら」
綱井楪:意図的にこれを起こした者がいるなら、状況を観察していたのではないか、と考えている。
綱井楪:言いながら、自分でも辺りを見回して。
GM:珊瑚夜のロボットに異常はない。
珊瑚夜:「生徒たちは無事に避難を完了させたわ。目撃情報は……ないみたいね」タブレットに指を滑らせる。
綱井楪:「ふむ……」
GM:が。
???:「……あらあら……」
GM:声が響く。
GM:大蛇の消えた廊下の先に、一人の女が佇んでいる。
綱井楪:「!」緩みかけていた翅をばさりと広げる。
珊瑚夜:「誰!?」鋭く言い放つとそちらを見る。
銀波 嵐:綱井の前にずい、と出る。
銀波 嵐:「下がってろ、オタクなんだかずいぶん顔色が悪いぞ」
綱井楪:「……平気よ。嘘じゃない」
綱井楪:言いながらも前衛は任せ、女を見据える。
GM:黒い日傘を差し、赤い髪に眼鏡。
GM:明らかに学校の景色から浮いた、その貴婦人めいた女に、
GM:この中でリウトペルガと早乙女だけは、見覚えがある。
GM:“ベイルファイア”。
GM:古代種にして幻想種。リウトペルガより更に長く生きてきた精霊──ニンフの生き残り。
GM:長命者の中でも、特に人間嫌いで有名な女だ。
GM:魔術の類にも精通していたはずだと、二人は知っているかもしれない。
リウトペルガ・ウィンニール:「……これはこれは」
早乙女六華:「お前……」
珊瑚夜:「……リウトペルガ、早乙女さん。知っているの?」
銀波 嵐:「なんだ、ご同輩か?」
綱井楪:「……」二人に一瞥を向ける。
リウトペルガ・ウィンニール:「同輩っていうか、先輩かな」
早乙女六華:「アレと同輩扱いされるのは少々不本意な類の輩だな」
リウトペルガ・ウィンニール:「"ベイルファイア"。人間が嫌いな……まあ妖精さんみたいなものかな」
“ベイルファイア”:「御機嫌よう、ウィンニールさん。早乙女さん」
“ベイルファイア”:「こうして会うのは何十年振りかしら?何百年、だったかしら」
“ベイルファイア”:笑みを湛えて朗らかに話すが、その目だけは笑っていない。
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクの記憶では、7、80年ぶりだね」
珊瑚夜:「……『そういう類の人』って一生に一度でも会えば多い方だと思っていたけれど。惹かれあうのかしら?この場に三人もいるなんてね」
“ベイルファイア”:「あの蛇、それなりに強かったはずなのだけど。思ったよりやるようね」
珊瑚夜:「あの蛇を操っていたのはあなたなのね。……人間嫌いの”ベイルファイア”さんがこんなに人の多い場所で何の用かしら」
“ベイルファイア”:「一応、二人に挨拶しておこうと思って」
“ベイルファイア”:リウトペルガと早乙女に目を向ける。他は眼中にないというように。
“ベイルファイア”:「ウィンニールさん。早乙女さん」
“ベイルファイア”:「もうすぐ、人間の時代は終わるわ」
“ベイルファイア”:「私が終わらせる……くふ……」
“ベイルファイア”:口元に笑みを浮かべる。
“ベイルファイア”:「貴女たちも手伝ってくれないかしら?」
“ベイルファイア”:「仲間ですもの。喜んで歓迎するわ」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミねえ」
リウトペルガ・ウィンニール:「忘れてるかも知れないけど、ボクは元々人間だぜ」
“ベイルファイア”:「あら」
“ベイルファイア”:「まさか、今もそのつもりなの?」
リウトペルガ・ウィンニール:「ま、それはちょっと怪しいかもね?」
リウトペルガ・ウィンニール:「でも──」
リウトペルガ・ウィンニール:「人の身で人でなくなったゆえにこそ、今でもボクは、哀しいくらい人間のままなのさ」
早乙女六華:「わたしは人が好きだ」
早乙女六華:「そしてお前が嫌いだ」
早乙女六華:「手伝うわけがないだろう……」
早乙女六華:「何を言ってるんだ?」
早乙女六華:「莫迦なのか……?」
“ベイルファイア”:「……くふっ」
“ベイルファイア”:日傘をくるりと回し。
“ベイルファイア”:「そう。まあいいわ。一応の礼儀として、聞いてあげただけだから」
“ベイルファイア”:「でも、きっと後悔するわよ」
銀波 嵐:「私が終わらせる……ねぇ」
銀波 嵐:「そのために必要なのが、このお可愛らしい"学校の七不思議"ってわけか?」口を挟む、嘲るように。
銀波 嵐:「オイなんなんだありゃ、年ってのは重ねるとかしこくなるもんだと思ってたが」
銀波 嵐:「耄碌のが勝つのか?オタクらも大変だな」
“ベイルファイア”:「お可愛らしい?ええ、これまでを見ればそう思うかもしれないわね」
“ベイルファイア”:「けれど……これを見て同じように可愛いと思えるのかしら?」
“ベイルファイア”:辺りに目を向ける。散乱したガラスの破片、破壊され尽くした窓やドア。
“ベイルファイア”:そして倒れ伏した生徒たち。
“ベイルファイア”:「これからはこれが、貴女たちの日常になるのよ」
銀波 嵐:「あ?」
銀波 嵐:「んなの、ここでテメェを"なます"にすりゃいいだけの話じゃねえかよ」
“ベイルファイア”:「くふふ……」
“ベイルファイア”:「すぐに分かるわ」
“ベイルファイア”:ふわり、と日傘と共に舞い上がる。
“ベイルファイア”:「せいぜい無駄な足掻きを続けるといいわ」
“ベイルファイア”:「人の世界は終わる。もうすぐ……」
“ベイルファイア”:「私達の世界が戻ってくる」
銀波 嵐:「――チッ」黒剣を構え、駆け出す。
綱井楪:輝く粒子が女の周囲に集う。
銀波 嵐:「(……間に合うか?)」
“ベイルファイア”:二人の攻撃が届くより早く、
“ベイルファイア”:謎めいた言葉だけを残して、とぷん、と、天井に潜るかのように消えてしまう。
珊瑚夜:「消えた…………逃げられたわね」
綱井楪:「……」
綱井楪:背中の翅が縮んで消える。それに伴い、空間に散っていた毒もまた。
早乙女六華:「逃げ足の速さがなくては、ああして何千年も生き残ってこられないからな」
珊瑚夜:「……他人と違う特徴があろうと、なかろうと。…………変わらず、『リウトペルガ・ウィンニール』を想う人間は、いるわ」拗ねたようにぽつりと呟く。
珊瑚夜:「……はあ。それにしても人の世界を終わらせるって……何をするつもりなのかしら」
銀波 嵐:「ケッ……」剣がほどけ、砂が舞い宙へと溶ける。
早乙女六華:「……碌でもないことは確かだな」
綱井楪:「何であれ、元凶とその主張は分かった」
綱井楪:「今までの雲を掴むような話より、追いかけることはしやすくなったわ」
<
珊瑚夜:「そうね。『どこへ行って』はともかく『何を倒す』かは掴めたわね」
綱井楪:「……この有様は極めて不本意だけど」
綱井楪:改めて破壊と、倒れ伏した生徒たちを見。
珊瑚夜:「……ええ」同じく惨状を見て唇を嚙む。
銀波 嵐:「まったく面倒だな……妖怪ポストの場所教えてくれよお嬢ちゃん」
早乙女六華:「仮にそんなものがあったとしても、向こうは住所不定だろうしな……」
早乙女六華:「そう簡単に見つけ出せるとは思えん」
リウトペルガ・ウィンニール:(……住所っていや、早乙女くんて今どこに住んでるんだろ)
リウトペルガ・ウィンニール:「……失敗したなあ。確かに言われてみれば、ギリシャ系の術式もいくつか混じってた。他の呪法も使うことでカモフラージュしてたんだな」
リウトペルガ・ウィンニール:「ただ逆に言えば、先手を取られたけど無事跳ね返したってことでもある」
珊瑚夜:「……そうね、私たちの手が全く通じないわけではないということだものね」
綱井楪:「ともかく、のんびりしてはいられないわ」
綱井楪:はす、と気の抜けた音が鳴る。
綱井楪:両手を打って注目を集めようとしたのだが、うまく鳴らなかった。
綱井楪:「……」
珊瑚夜:「……ええ。相手が誰なのか、どころか相手というもの自体がいるのかも分からない状態よりは、ずっとやりやすいと思うわ」
珊瑚夜:綱井さんの様子を見て困ったように笑う。
綱井楪:「まずは生徒たちを運んで、支部に連絡して」
綱井楪:「事後処理が済んだら、追跡を再開しましょう」
早乙女六華:「……忙しくなりそうだな」
リウトペルガ・ウィンニール:「そうだね。"用務員"さんに来てもらわないと」
銀波 嵐:「後処理だのなんだのは任せるわ」
銀波 嵐:「俺はあの女を探す。逃げたのはフリでまだ近くにいるかもしれねぇ」
綱井楪:「お願い」
珊瑚夜:「そうね、嵐さんにはそれをお願いするわ。……大変だと思うけれど、みんなで頑張りましょうね」
珊瑚夜:「人間を滅ぼされるわけにはいかないもの」
---
GM:それから、“ベイルファイア”の言った通り、事態は一変した。
GM:人気の無い時間帯に発生していた怪異が、次々に白昼堂々と現れるようになり
GM:その度に君達が駆り出されることとなった。
GM:怪異そのものも、それまでのささやかなものと異なり、戦闘力を備えた危険なものとなり
GM:生徒たちにも怪我人が出るようになった。
GM:UGNの記憶処理も万能ではなく、生徒たちの間には大きな違和感を残す形となり
GM:それが更に、彼女たちの不安を加速させていた。
GM:そして、怪異の出現も収まらず、“ベイルファイア”の足取りも掴めないまま
GM:季節は冬へと進んでいった。
GM:シーン終了。
GM:購入可能です。
早乙女六華:2DX メイド服
DoubleCross : (2DX10) → 8[6,8] → 8
早乙女六華:チッ……
早乙女六華:これさえあれば……
綱井楪:こちらもメイド服を狙います
綱井楪:4dx>=20
DoubleCross : (4DX10>=20) → 10[3,8,9,10]+1[1] → 11 → 失敗
銀波 嵐:けものか??
綱井楪:ううん……
珊瑚夜:勝負服を狙います。≪無形の影≫使用
珊瑚夜:5dx+2>=20
DoubleCross : (5DX10+2>=20) → 9[1,4,6,7,9]+2 → 11 → 失敗
珊瑚夜:クソ……
銀波 嵐:じゃあメイド服で……
珊瑚夜:珊瑚夜の侵蝕率を4増加 (73 → 77)
銀波 嵐:2dx
DoubleCross : (2DX10) → 7[7,7] → 7
銀波 嵐:いやー、惜しかったなー
リウトペルガ・ウィンニール:こっちもメイドで
リウトペルガ・ウィンニール:(1+3)dx+1>=20 〈調達〉
DoubleCross : (4DX10+1>=20) → 6[2,2,4,6]+1 → 7 → 失敗
リウトペルガ・ウィンニール:ダメ!
GM:では誰一人としてドンキのペラペラメイド服を買うことはできませんでした
GM:反省しろ
綱井楪:価格設定サイドにも問題がある
珊瑚夜:強気すぎる もっと消費者の声を聞いてほしい
銀波 嵐:そーだそーだ!
銀波 嵐:資本主義を許すな!!
リウトペルガ・ウィンニール:見切り品ない?
銀波 嵐:布地めっちゃ減るけど良いの?いいやぜったいだめだな……
GM:これあれだな
GM:着せたいだけならカジュアルかフォーマルか制服買えばよかったんだな
珊瑚夜:つい性能を求めてしまった我々の真面目さが敗因ということね
銀波 嵐:皆脳が壊れてるから……
綱井楪:待てよ わたし思い出の一品ってアイテムを持ってるんですけどお……
珊瑚夜:まあそんなデータなんてなくてもリウトペルガはエッチミニスカサンタコスしてくれるけどね
【Middle latter half/珊瑚夜】
GM:ミドルシーン後半を開始します。
GM:1番目のシーン権を獲得したのは、珊瑚さん。
GM:誰を指名しますか?
珊瑚夜:リウトペルガさんを指名します。
GM:了解です。珊瑚さんとリウトペルガさんは登場侵蝕を振ってください。
珊瑚夜:珊瑚夜の侵蝕率を1d10(→ 4)増加 (77 → 81)
リウトペルガ・ウィンニール:リウトペルガ・ウィンニールの侵蝕率を1d10(→ 3)増加 (69 → 72)
GM:ではサブシーンは銀波さん、綱井さん、早乙女さんになります。
珊瑚夜:12月24日、夜。
珊瑚夜:珊瑚夜はリウトペルガの家へ訪れていた。
リウトペルガ・ウィンニール:学園から程近くに建つ、比較的新しいマンション。
リウトペルガ・ウィンニール:その一室が、古き魔女──リウトペルガ・ウィンニールの住処だった。
リウトペルガ・ウィンニール:リビングは割合すっきりとしている。オーク材のテーブルと、本革張りの柔らかいソファー。
リウトペルガ・ウィンニール:他の部屋が大量の書籍や実験器具、趣味で集めた嗜好品で溢れ返っているのとは、対照的だった。
リウトペルガ・ウィンニール:その閑静なリビングに、今はクリスマスツリーが飾ってある。
珊瑚夜:我が物顔で買ってきたご馳走をテーブルに並べ、ケーキにロウソクを立てている。
珊瑚夜:「ふふっ、クリスマスツリーもちゃんと飾っているのね!綺麗だわ」楽しそうに笑っている。
リウトペルガ・ウィンニール:「季節のイベントは楽しみたい派でね」
珊瑚夜:「同感よ!私は一人だと思うとどうしても内装を凝ることはためらってしまって……ああ、でも今は嵐さんがいるからツリーくらい飾ればよかったわ」
珊瑚夜:「ねえ、ならこれも着るでしょう?」うきうきとサンタクロースの衣装を出す。
リウトペルガ・ウィンニール:「ああ、今は嵐君がいるんだっけ――うん?」
リウトペルガ・ウィンニール:「……ふぅ~ん」その布地を広げ、矯めつ眇めつして眺める。
珊瑚夜:「可愛いでしょう?あなたに似あうと思うわ」女性用の短いスカートの衣装を見てニコニコしている。
リウトペルガ・ウィンニール:「中々面白いじゃないか。ちょっと待っていたまえ!」
珊瑚夜:「ええ!」とても嬉しそうに頷く。
リウトペルガ・ウィンニール:衣装を持ったまま、意気揚々と着替えに向かう。
リウトペルガ・ウィンニール:数分の後、ドアが再び開き──
リウトペルガ・ウィンニール:「どうだい! 結構似合っているだろ?」その小さな身体にミニスカートの赤白衣装を纏い、彼女の前で胸を張る。
珊瑚夜:「わあ!とっても似合っているわ」とても嬉しそうに声を弾ませる。甘い香りが漂う。
リウトペルガ・ウィンニール:「そうだろうそうだろう!」
珊瑚夜:「ふふっ、妖精みたいだわ。サンタクロースの妖精というのは聞いたことがないけれど、いたらきっと今のあなたみたいなんでしょうね」
リウトペルガ・ウィンニール:「せっかくのクリスマスだものね。ボクとしたことが、こういうのを着たことはなかったなぁ」
珊瑚夜:「まあ、そうなの?意外だわ」
珊瑚夜:「そう、今日はクリスマスだから…………」
珊瑚夜:「………………好きな人と過ごしたくて、来てしまったわ」
リウトペルガ・ウィンニール:「……そっか」
リウトペルガ・ウィンニール:「クリスマスに好きな人と会う、っていうのは……この国の流儀だね」
珊瑚夜:「……海外では、家族と過ごすところが主流よね」
珊瑚夜:「………………」
珊瑚夜:言葉を続けようとしたけれど。
珊瑚夜:気づいたら、ぎゅう、とリウトペルガを抱きしめていた。
リウトペルガ・ウィンニール:「わ、……」
リウトペルガ・ウィンニール:その矮躯が、彼女の腕と身体に埋もれる。
珊瑚夜:すらりと伸びた長身と食べる量に似合わずすらりと細い体躯に、普段制服を着ている時から大きさを主張する豊かな胸。
珊瑚夜:その全てを使って彼女を抱きしめる。
珊瑚夜:「何を言おうか、……色々、考えてきたのだけれど」
珊瑚夜:「あなたに会って、あなたの顔を見たら……」
珊瑚夜:声を震わせる。
珊瑚夜:次の言葉を紡ごうとするが、涙が止まらなくて、次の言葉が出てこない。
珊瑚夜:自分よりもずっと小さな身体を抱きしめただただ泣いていた。
リウトペルガ・ウィンニール:「………」
リウトペルガ・ウィンニール:黙ったまま、自分よりずっと大きな身体を抱き返し、背中を撫でる。
リウトペルガ・ウィンニール:「……ボクはね」
リウトペルガ・ウィンニール:ぽつり、と、独り言のように呟く。
リウトペルガ・ウィンニール:「やっぱり、自分勝手なんだと思う」
リウトペルガ・ウィンニール:「いつかキミに言ったっけ。『自己満足でも人に優しくできるなら優しいんだ』って」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクは自分のこと優しいなんて思ってない。でも、優しいふりならできる、って」
リウトペルガ・ウィンニール:「思ってた。……思ってた、けど」
リウトペルガ・ウィンニール:「……こんなに、泣かせたんじゃ……ふりだって、できてないね」
珊瑚夜:「……ふふっ」ぐすぐす、と泣きながら笑う。
珊瑚夜:「知っているわ」
珊瑚夜:「あなたが、あなたが思うほど優しくない事も」
珊瑚夜:「あなたが、あなたが思っているより優しい事も」
珊瑚夜:「全部知っている」
珊瑚夜:「どれほど意地を張っても、理屈をこねてもダメだった。止められないの」
珊瑚夜:少しだけ身体を離し、じっと目を見つめる。
珊瑚夜:日本人離れした、……あるいは人間離れした、美しい小さな想い人を見つめる瞳からは、ぼろぼろと涙があふれる。
珊瑚夜:「好きよ」
珊瑚夜:「好きです」
珊瑚夜:「大好き……」
珊瑚夜:へにゃりと笑う。いつも笑顔の珊瑚からしたら、信じられないほど下手くそな笑顔で、笑った。
リウトペルガ・ウィンニール:「……夜君」
リウトペルガ・ウィンニール:その零れる涙を、短くなった髪を、笑顔を、──弱々しい笑顔を見て。
リウトペルガ・ウィンニール:胸の奥から突き上げてきた、言葉がある。
リウトペルガ・ウィンニール:「聞いて……くれるかな」
珊瑚夜:「……もちろん。なあに……?」
リウトペルガ・ウィンニール:言うべきではない。"年寄りの"自分がそう言う。相手に重みを押し付けるなと。
リウトペルガ・ウィンニール:言いたい。"子供の"自分がそう言う。もうこれ以上耐えられないと。
リウトペルガ・ウィンニール:言ってしまえ。"年寄りの"自分がこう言う。もういい加減背負うべきときなのだと。
リウトペルガ・ウィンニール:言うのが怖い。"子供の"自分がこう言う。怖い目に遭うくらいなら、進みたくないと。
リウトペルガ・ウィンニール:言おう。
リウトペルガ・ウィンニール:"大人ぶった"自分が、"若者ぶった"自分が、そう決意する。
リウトペルガ・ウィンニール:「怖いんだ」
珊瑚夜:「……怖い?」優しく聞き返す。
リウトペルガ・ウィンニール:「父上と母上は優しかった。姉上も兄上も、妹たちも」
リウトペルガ・ウィンニール:「王様は強い人だった。立派だったかどうかともかく、ずっと戦い続けてた」
リウトペルガ・ウィンニール:「パオロは素朴なヤツだった。ちょっとからかってやるだけですごく驚いて」
リウトペルガ・ウィンニール:「フランシスコはムカつくヤツだった。ちょっと魔術を使っただけで異端呼ばわり。まあ確かに魔女ではあるけど」
リウトペルガ・ウィンニール:「ヴィヴァルディは忙しい人だった。劇場の運営、作曲、いろんな国を回っていろんな人の前で演奏して」
リウトペルガ・ウィンニール:「モーリツは面白いヤツだった。バカで嘘つきのロクデナシだけど、あいつのホラを聞くのは楽しかった」
リウトペルガ・ウィンニール:「ロベルト大尉は、ひたすら真面目な人だった。真面目すぎて、根を詰めて、気の毒な結末になった」
リウトペルガ・ウィンニール:「全部覚えてる。でも」
リウトペルガ・ウィンニール:「家族も、尊敬できる人も、ムカつく相手も、楽しい友達も」
リウトペルガ・ウィンニール:「10年、100年、1000年が経って」
リウトペルガ・ウィンニール:「『優しかった』『楽しかった』『やなヤツだった』『いい人だった』って認識だけが残って」
リウトペルガ・ウィンニール:「実感はいつの間にか消えちゃうんだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「………」
リウトペルガ・ウィンニール:「夜君。珊瑚夜」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクはキミのことが好きだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「この好きだっていう気持ちが、今こんなに、泣きそうなほど、好きだっていう気持ちが」
リウトペルガ・ウィンニール:「いつか『好きだった』っていう、抜け殻の認識だけになるのが」
リウトペルガ・ウィンニール:「すごく怖いんだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミを好きでいたい。好きっていう気持ちを、忘れたくない」
リウトペルガ・ウィンニール:「でも、キミを……キミを、この停滞に引っ張り込むのも」
リウトペルガ・ウィンニール:「そんなことしちゃいけないって。好きな人に、こんな怖い運命を背負わせてはいけないって」
リウトペルガ・ウィンニール:「………」
リウトペルガ・ウィンニール:「こんなこと言って……なんにもならないって分かってるけど」
リウトペルガ・ウィンニール:「でも、言いたかった」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミが好きだ」
リウトペルガ・ウィンニール:震えた声で言ったきり、彼女の身体へ顔を押し当てる。
珊瑚夜:「……あなたの悲しみを、苦しみを、恐怖を」ぎゅ、とその小さな身体を抱きしめる。
珊瑚夜:「分かる、想像できるとは、私には到底言えないわ」
珊瑚夜:「……でも、私たちはどれほど怖くても、苦しくても、どうしようもなくお互いが好きで」
珊瑚夜:「どんな言い訳をしたって、求めるのを我慢できないのよ」
珊瑚夜:甘い芳香と共に、困ったように笑う。
珊瑚夜:「私は……子供で、まだその恐怖をよく理解していないから」
珊瑚夜:「あなたとなら……普通ではない永い時を生きるのも、少しも怖くないと言えるけれど」
珊瑚夜:「そして……その気持ちはきっと変わらないだろうと、確信もしているけれど」
珊瑚夜:「私の人生はまだまだ長いわ。……あなたにとっては、ほんの一瞬かもしれないけれど」
珊瑚夜:「今すぐにすべてを決める必要はないと思うの」
珊瑚夜:「苦しんでも、それでも今、あなたが私を好きと言ってくれて」
珊瑚夜:「どうしようもなく、嬉しいのよ……」
珊瑚夜:ロイスのN→P変更、秘匿感情の公開、及び感情の変更を行います。
珊瑚夜:リウトペルガ・ウィンニール/P:好意/〇N:未練→リウトペルガ・ウィンニール/〇P:好意/N:未練
リウトペルガ・ウィンニール/P:執着/〇N:無力感→リウトペルガ・ウィンニール/〇P:執着/N:無力感
リウトペルガ・ウィンニール/P:それでも好き/〇N:そ(略)例(略)で(略)も(略)好(略)傷(略)→リウトペルガ・ウィンニール/〇P:それでも好き/N:それでも好き
珊瑚夜:「……もし、私があなたと共に、永く生きないのだとしても」
珊瑚夜:「私が傍に居る間は、どうしようもなく幸せだったって」
珊瑚夜:「忘れられないくらい、甘い思い出にしてあげる」
珊瑚夜:「……この国では、クリスマスの日、恋人同士は、愛を確かめ合うの」
珊瑚夜:「ね……、いいでしょう?」
珊瑚夜:そう言って、身体を離し、じっと見つめ、顔を近づける。
リウトペルガ・ウィンニール:「………」
リウトペルガ・ウィンニール:「……ボクは」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクに、そんな資格があるのか……分からない、けど」
リウトペルガ・ウィンニール:ロイス取得 珊瑚夜/●P:どうしようもなく好き/N:どうしようもなく怖い
リウトペルガ・ウィンニール:「でも、──優しいふりくらいは、できそうだ」涙に濡れた顔で、小さく笑う。
綱井楪:12月24日。
綱井楪:そわそわしながら帰っていった珊瑚夜・リウトペルガ両名と同じように、綱井楪にとっても特別な日だ。
綱井楪:滅多に人の訪れない自室に、一度に二人も人を招くという意味で。
綱井楪:
綱井楪:マンションの一室。チルドレンに割り当てられる平均的な間取りの部屋。
綱井楪:ベッドに本棚、テレビ、そして炬燵。……小さなツリーも買ってきて部屋の隅に置いた。
綱井楪:炬燵の天板の上には、加減が分からず買ってきた大量のパーティ料理と飲み物。
綱井楪:「……どうぞ。いらっしゃい」
綱井楪:そこに、君たちは招かれる。
早乙女六華:「邪魔するぞ」
早乙女六華:耳あてに二本目のマフラー、分厚いダウンジャケット。
早乙女六華:南極にも行くのかという完全防備でのそのそと入室してくる。
銀波 嵐:「……なんだ、やっぱこれいらなかったんじゃねえか」
銀波 嵐:炬燵の上を眺めて。
銀波 嵐:手にはケーキの箱。
銀波 嵐:「そもそも3つでいいだろっつったのに、ホールでホールでって……」
銀波 嵐:ぶつくさとそれを床に下ろす。
早乙女六華:「甘味はありすぎるということはないぞ」
綱井楪:「ええ」
銀波 嵐:「あるだろ……胸焼けしちまう、カレーや唐揚げとは違うんだぞ……」
綱井楪:「そちらの方が胸焼けしないかしら……?」
綱井楪:首を傾げながらそう問う姿は、黒いセーターに細身のデニム姿。
綱井楪:普段よりも露出は少ないが、体の線はよりはっきりと出ている。
早乙女六華:シャンパンとシャンメリーを机に置き、部屋を見回す。
早乙女六華:「ここに住んでるのか?楪」
綱井楪:「そうよ」
綱井楪:スリッパをぱたぱたと鳴らして移動して。
綱井楪:「頑張って片付けたわ」
早乙女六華:「いい部屋だな」
早乙女六華:「家があるというのは、いいことだ」
綱井楪:「自分で決めた住まいではないけど」
銀波 嵐:嵐はいつもの出で立ちに一枚コートを羽織っただけの格好。そのコートも古着屋で買ったものだ、冬が終われば捨てるつもりでいる。
銀波 嵐:「家といえば……お前どこに住んでるんだよ、たまに直帰するときも帰る方向てんでばらばらじゃねえか」
銀波 嵐:視線をその黒いつむじへ向け。
早乙女六華:「む……?」
早乙女六華:「大抵は支部の仮眠室か、ホテルだな」
早乙女六華:「知り合いの家に泊めてもらうこともあるし……」
早乙女六華:「見つからなければ、適当な場所で夜を明かす」
綱井楪:「……そんな生活してたの」少し呆れた風に言う。
早乙女六華:「こういう身柄だと部屋を借りるのも手間でな」
早乙女六華:「UGNで用意して貰ってもいいが……まあ、凍死しなければどこでも構わん」
銀波 嵐:「家があるのはいいことだ……って……」
銀波 嵐:「元々山で暮らしてたのかどうだか知らんが……」
綱井楪:「……」
綱井楪:「うちでも?」
早乙女六華:「?」小首を傾げる
銀波 嵐:「って、そりゃ駄目だろ!?」
銀波 嵐:食い気味に。
綱井楪:「どこでもいいって言うから」
綱井楪:「うちでもいいのかなって」小首を傾げて。
早乙女六華:「いいのか?」
綱井楪:「嵐だって夜の家に住んでるじゃない」
早乙女六華:「確かにそうだな」
銀波 嵐:「じゃ、じゃあ六華も珊瑚の家に住めばいいじゃねえか……」
早乙女六華:「三人でか?流石に狭いんじゃないか」
銀波 嵐:「いや三人で住んでもここよりよっぽどデカいだろ……」
綱井楪:「む」
綱井楪:「それなら私も夜の家に……」
早乙女六華:「なるほど……?」
銀波 嵐:頭がぐるぐると回る、煙を吹きそうだ。
銀波 嵐:そもそもなんで自分はこんなことを言ってるのだ……。
早乙女六華:「広さを抜きにしても、楪と住むのは楽しそうだな……色々と」
綱井楪:「……」
綱井楪:白い顔をかすかに朱に染めて目を逸らす。
銀波 嵐:「……俺とは楽しくねえってのかよ」
早乙女六華:「? そうは言っていないが……?」
綱井楪:「嵐……?」
銀波 嵐:「(だから、何を言ってるんだ……俺は)」
早乙女六華:「流石にいきなりわたしと楪とで押しかけられては、夜も困るだろう」
銀波 嵐:「……ぁ、うん…」
綱井楪:(お腹が空いたのかしら……)
銀波 嵐:「(そうだよな、まったくもってその通り)」
銀波 嵐:「(というか、こいつが誰と暮らそうが……それが俺に何の関係があるってんだ……)」
早乙女六華:「食事にするか?折角の料理が冷めてしまう」
綱井楪:「うん」
銀波 嵐:「……ぉぅ」
銀波 嵐:消耗しきったような顔で、腰を下ろす。
早乙女六華:炬燵に潜り込み、「あぁ……」溶けたような声を漏らす。
綱井楪:「私の奢りよ。遠慮なくどうぞ」
早乙女六華:「やはり、いいな……炬燵は……」
早乙女六華:「人の作ったものでも最高に近い」
綱井楪:「寝ては駄目よ」
銀波 嵐:「前々から気になってたんだけどさ……六華、溶けないわけ?」
銀波 嵐:「というかなんで寒がりなんだよ」
銀波 嵐:「そもそも、雪女って、何?」
早乙女六華:「……言っていなかったか?そういえば」
綱井楪:「私は聞いたけど」
綱井楪:嵐の前に料理を取り分けた皿を押し付けながら。
綱井楪:フライドチキン、エビチリ、青椒肉絲、刺身、ごま団子……
銀波 嵐:「(聞いたのかよ……)」
銀波 嵐:皿を受け取り、もそもそと食べ始める。味は……よくわからない。
早乙女六華:「楪が作ったのか?これは」器用に野菜を避けながら青椒肉絲を小皿に取っていく
綱井楪:「まさか」
綱井楪:グラスにシャンメリーも注いで嵐の前に置く。
綱井楪:「買ってきただけ。こんなにたくさん作れない」
早乙女六華:「便利な世の中になったものだな……」料理を口に運びながら、満足気な表情。
早乙女六華:「……そうだ、わたしの話だったな」
早乙女六華:口の周りにエビチリのソースをつけたまま。
綱井楪:ナプキンでその口元を拭う。
早乙女六華:「……一口に雪女と言っても、その由来には色々あってな」
早乙女六華:「折れた氷柱から生まれたもの、所謂山姥のようなもの、行き倒れになった女の幽霊……果ては月から来た姫などという話もあるが」
早乙女六華:「わたしの場合は、そうだな……雪から生まれた、ということになるかな」
早乙女六華:「雪の精とでも思ってくれ」
銀波 嵐:「雪の精ねぇ……」
銀波 嵐:ゴクンと、ゴマ団子を飲み込んで。
綱井楪:ミートボールをぱくつきながら聞いている。
早乙女六華:「私のこの身体は、氷の彫刻のように冷気で凍り付いているわけじゃない」
早乙女六華:自分だけシャンパンを開ける。
早乙女六華:「自分自身がこの形、妖怪であり人であるという意識で保たれていて……」
早乙女六華:「寒くなると、その意識が薄れて、本能的に元の雪に戻ろうとしてしまう」
早乙女六華:「その意識を保つためには、気温的に暖かくいるのもそうだが……」
早乙女六華:「人の心の温度に触れるのが、いちばんいい」
早乙女六華:炬燵の中で、二人それぞれに脚を絡ませる。
綱井楪:箸で掴んでいた焼売がぴくりと震える。
銀波 嵐:「……」
銀波 嵐:「だからやたらとひとにへばりつくわけね」その動作には、もう慣れたものという様子で。
綱井楪:身動ぎをして絡むに任せながらそのまま食べる。
早乙女六華:暖かくなってきたのか、ダウンジャケットを脱ぐ。中からマトリョーシカめいてダッフルコートが出てくる。
銀波 嵐:「んじゃ……これはあんまりお気に召さないかもしねぇが……」
銀波 嵐:ゴソゴソと懐をまさぐる。
銀波 嵐:「……ホラよ」
早乙女六華:「?」目をぱちくりさせる
銀波 嵐:ぽん、と、少々乱暴に。
銀波 嵐:リボンの巻かれた小箱、グリーンの包装紙。
銀波 嵐:「……今日は、そういう日だって……聞いた」
早乙女六華:「嵐……」まじまじとそれを見つめて
早乙女六華:「お前が……プレゼントを…………?」
綱井楪:「…………」
綱井楪:目を大きく開いてそれを見ている。
銀波 嵐:「……き、気に食わなくても知らねえぞ!ひとにものをあげるだなんてはじめてなんだ!!」
早乙女六華:「……開けてもいいか?」
銀波 嵐:「好きにしろ……」耳まで真っ赤に染め上げて、ぷい、とそっぽを向く。
早乙女六華:リボンを解き、包装紙も破かぬように丁寧に箱を開ける。
銀波 嵐:それが現れる。銀色に鈍く輝くハンドサイズの、オイル式カイロ。
銀波 嵐:早乙女六華の美的な嗜好などわからない、ただ役に立つものを、と選んだ。
早乙女六華:「おぉ……!」目を輝かせてそれを見る。
早乙女六華:「いいのか……!?こんなもの……」
銀波 嵐:「ああ……一応……六華には……世話になってるわけだしな」もごもごと言葉を濁しながら。
銀波 嵐:「……」
銀波 嵐:「……お前にもあるぞ」こちらを見つめる綱井楪に対し。
綱井楪:「……そうなの?」目を瞬かせる。
銀波 嵐:そう言って小箱を差し出す。先程のより一回りほど大きい。
綱井楪:受け取り、丁寧な手つきで開封する。
銀波 嵐:出てきたのは、水色のデジタル式トイ・カメラ。
銀波 嵐:「……オモチャみてーだけどな、一応、写る」
銀波 嵐:「変なうつりの写真が出来上がるんだ……」
銀波 嵐:「写真は……俺が唯一自分で見つけた趣味みたいなものだ……」
銀波 嵐:「たぶんいいものだと思ってる……」
銀波 嵐:「忘れたくないと思った時に、それが手元にあると」
銀波 嵐:「安心するんだ……なんつぅか」
銀波 嵐:「お前のことはよく知らないから……俺が良いと思ってるものをあげようと考えた」
銀波 嵐:「気に入らなかったらすまねぇ……」
銀波 嵐:そういうと、視線を皿へと落としてしまう。
綱井楪:「……」
綱井楪:カメラを手の中で回し、色々な角度から見て。
綱井楪:不意に立ち上がり、銀波嵐の傍へ。
綱井楪:その体を横から抱き締める。
銀波 嵐:「ん、ンなんだっ」
綱井楪:「ありがとう」
銀波 嵐:「っ」
綱井楪:「とても嬉しいわ」
銀波 嵐:困ったように、その両手を宙に浮かせて。
銀波 嵐:「あ……あぁ、喜んでくれたなら……何よりじゃねえか……」
早乙女六華:「ふふ」
早乙女六華:立ち上がり、手を伸ばして、二人まとめて抱き締める。
銀波 嵐:柄じゃない、以前までならたまらず払い除けた。
銀波 嵐:困ったことに、困った気持ちが湧いてこない。
早乙女六華:「……ありがとう、嵐」
銀波 嵐:「……」
早乙女六華:「とても暖かい」
早乙女六華:まだ熱も加えていないのに、そんなことを言って。口元に笑みを浮かべる。
銀波 嵐:「どうい……たいしまして」ぎこちなく、返す。
綱井楪:「……真心に免じて、フライングは許してあげるわ」
綱井楪:「本当ならケーキまで食べ終わって、クラッカーを鳴らした後でプレゼントを交換する予定だったのだけど」
銀波 嵐:「そ……そうだったのか」
綱井楪:予定表は自分の頭の中にしかない。
銀波 嵐:「お、俺こういうの全然詳しくなくて……」しゅんとした様子で。
早乙女六華:「いや、そんな予定わたしも聞いていなかったが……」
綱井楪:「いいのよ」無表情のまま、しかし優しく頭を撫でる。
綱井楪:「クラッカーを買ってくるのも忘れてしまったし」
早乙女六華:「続きをしようか」
早乙女六華:「パーティーはまだ始まったばかり、だろう?」
綱井楪:「勿論」
GM:シーン終了です。
【Middle latter half/綱井楪】
GM:2番目のシーン権を獲得したのは、綱井さん。
GM:誰を指名しますか?
綱井楪:はい
綱井楪:銀波嵐さんでお願いします。
GM:ではお二人は登場侵蝕を振ってください。
綱井楪:綱井楪の侵蝕率を1d10(→ 6)増加 (60 → 66)
銀波 嵐:はひはひ
銀波 嵐:1d10+74
DoubleCross : (1D10+74) → 3[3]+74 → 77
GM:サブシーンは珊瑚さん、リウトペルガさん、早乙女さんになります。
綱井楪:オカルト研究会部室。無機質な電灯と、ストーブで暖められた乾いた空気の部屋。
綱井楪:クリスマスが過ぎても年末がある。世間はまだまだ浮ついた空気だが、この学校においてはそうではない。
綱井楪:ことに、この部室に集う面々にとっては。
綱井楪:今日も怪異との戦闘があった。誰も傷を負うようなことはなかったが、戦闘の日々は体の芯に疲労を溜める。
綱井楪:窓の外は既に暗い。経験上、もう敵は現れないと言える時間。
綱井楪:油断は禁物とは言え、ひとまずは肩の力を抜いて、綱井楪と銀波嵐はここに戻ってきた。
綱井楪:「……今日もお疲れ様」
綱井楪:部屋の奥の普段使っている机ではなく、真ん中に出している長卓の椅子に座って言う。
銀波 嵐:「おう……」入るな否や、猫のようにストーブの前ピタリと張り付いて。
銀波 嵐:「しっかし、あれきり尻尾も表さねえな……あの女」
綱井楪:「寒い?」
銀波 嵐:「寒い、な……」
銀波 嵐:「俺は去年までこんな寒がりじゃあ無かった気がするんだが……」
銀波 嵐:今年はどうやらとびきり寒いようだな、と独りごちる。そんな事実はない。
綱井楪:「……そうなのかしら」勘が働かず、まあそんなものか、程度の気持ちで頷く。
綱井楪:「元凶が目の前に現れた時には」
綱井楪:「もうじき解決できそう、と思ったのだけどね」
綱井楪:「そうできていたら、今頃はゆっくりして……」
綱井楪:ふう、と息を吐く。
銀波 嵐:「ああ……あれきり尻尾すら出さねえあの女……」
銀波 嵐:そうできていたら、ゆっくりできる。それを歓迎できるだろうか。
銀波 嵐:嵐は、正直ありがたく思っていた。日々の忙しさを。
銀波 嵐:暇になれば……また余計なこと――いや、本来考えねばならないことに向き合わねばならない。
銀波 嵐:堕落したものだ、と自嘲。ただその心地よさは……悪くないものだった。
綱井楪:「嵐」
綱井楪:「……疲れていない?」
銀波 嵐:「ん~~?」
銀波 嵐:ストーブのオレンジの光を眺め、生返事。
銀波 嵐:「疲れるかよ、あれしきの小競り合いで……」
銀波 嵐:だがその声にはうっすらと疲労が滲んで。
綱井楪:「……」
綱井楪:綱井楪の様子は以前と変わらない。その無表情が切り替わることは滅多にない。
綱井楪:ただ最近、おそらくは無意識のうちに、人前で溜息を吐くようになった。先のように。
綱井楪:「……クリスマスの時に」
銀波 嵐:「ん~?」
綱井楪:「六華が言っていたでしょう。人の心の温度の話」
銀波 嵐:生返事、繰り返す。
銀波 嵐:「ああ、言ってたな」
綱井楪:「六華ほど極端なのは珍しいけれど」
綱井楪:「オーヴァードにとっては他人事じゃない……」
綱井楪:「……私も、どちらかと言えば、分かりやすく影響が出る方」
銀波 嵐:「ああ、他者とのつながりがどうのこうのって」
銀波 嵐:「俺も資料もらって医者からあれこれ聞いたな、UGNで」
綱井楪:頷く。
銀波 嵐:「あまり真面目に聞いてなかったから……」
銀波 嵐:「それで、それがどうしったわけ?」振り返る。ようやく目が合う。
綱井楪:「…………」
綱井楪:逡巡する間。
綱井楪:「前に言っていたでしょう」
綱井楪:「凪が、私たちとどういう関係だったのか確かめる、って」
綱井楪:「……あれは、今も続いている?」
銀波 嵐:「ああ……そんなことも、言ったな……」
銀波 嵐:忘れていたわけではない、思い出さないようにしていた。
銀波 嵐:最近、凪について考えることを意図的に避けてしまっている。
銀波 嵐:「最近の俺は……」
銀波 嵐:「何か、変なんだ」
綱井楪:「……変」
銀波 嵐:「凪とお前の関係は、凪とお前の関係だ」
銀波 嵐:「俺にとって大事なのは、俺とお前の関係だろうって」
銀波 嵐:「……やっぱ変だな」
銀波 嵐:首をかしげる。
綱井楪:「……むしろ普通ではないかしら」
銀波 嵐:「そうか……?」
銀波 嵐:「だいぶ雑になったぜ、俺は、以前より」
銀波 嵐:「雑にやっていけるってのは、たぶん、ある意味で強くなったってことなんだろうさ……」
銀波 嵐:「強かったんだな……普通の連中なんてやつらは」
銀波 嵐:それは、はじめから分かっていたことだ。
銀波 嵐:この世界にいきなり手ぶらで放り出された嵐は誰よりも弱い。
銀波 嵐:強いみんなが羨ましかった。
銀波 嵐:照れくさくて、今はじめて知ったように言った。
銀波 嵐:「お前は……どうなんだ」
銀波 嵐:「普通か?」
銀波 嵐:「今の俺は、前より他人に興味がある」
銀波 嵐:興味があるうちに聞いておかないと、また変わってしまった時に、知れなくなってしまうかも、と考える。
銀波 嵐:「俺とお前の関係に興味はあるか?」
銀波 嵐:それとも――興味があるのは、以前の自分(嵐)のように
銀波 嵐:ただ、凪のことだけ……。
銀波 嵐:それを考えると、チクリと胸が痛くなった。
銀波 嵐:「(……?)」
綱井楪:「……順番に答えましょう」
綱井楪:確かにすっかり様子の変わった少女の目を、常の眠たげな瞳で、しかし真っ直ぐに見る。
綱井楪:「私は、自分は普通だと思う。でも、あまり他人に同意を貰えたことはない」
綱井楪:「だから……あなたが普通になったかどうかの判定も、正直なところ、正確性に自信はない」
銀波 嵐:茶々も相槌も入れず、ただ黙って聞く。
綱井楪:「でも少なくとも、前より自然になったと思う」
綱井楪:「ふたつめ。あなたと私の関係に興味はあるか」
綱井楪:「当然、あるわ」
綱井楪:「凪は大事な友達だけど。それとは別個の話として、あなたとも仲良くなりたいし」
綱井楪:「あなたもそう思ってくれているんじゃないかと思って、実のところ少し浮かれているわ」
綱井楪:まったく淡々とした調子で言った。
銀波 嵐:「……そうかい、そりゃ嬉しいね」
銀波 嵐:皮肉ではなく、言えた。と思う。
銀波 嵐:「だがよ……」
銀波 嵐:続けて返そうとした、常套句。
銀波 嵐:自分はいずれ消える人間だ。好きになってもなんも良いことはない。
銀波 嵐:「……」
銀波 嵐:続かなかった。
銀波 嵐:「まあいいや」
銀波 嵐:本当に、雑になった。
銀波 嵐:認めよう、と思う。
銀波 嵐:楽しいことが、良いことがいっぱいあった。
銀波 嵐:自分が生まれてからの、このほんのわずかな時間で。
銀波 嵐:いずれ消えるにしても。
銀波 嵐:「(それがあれば……いいじゃねえか)」
銀波 嵐:成長か、諦観か、嵐自身に区別はつかない。
銀波 嵐:ただ、楽にはなった。
綱井楪:「……遊園地も、行かなくてはね」
銀波 嵐:「……良いぜ、行こうか」
綱井楪:窓を見る。黒い鏡のようになったそこに、部屋と自分たち二人の姿が映っている。
綱井楪:「ええ」
綱井楪:その反応を特に茶化すこともなく。
綱井楪:「寒い冬でも」
綱井楪:「この前のパーティみたいに。もっと楽しいことがあっていいはずだわ」
銀波 嵐:「……綱井先輩よ。」
綱井楪:「なに? 嵐」
銀波 嵐:「以前の俺には、世界にいる人種ってのは2通りだけだった」
銀波 嵐:「凪か、それ以外か」
銀波 嵐:つまりは、味方か、敵か。
銀波 嵐:「今は……なんだか、その種類がいくらか……増えたように思う」
銀波 嵐:じっと、その目を見つめ。
銀波 嵐:「アンタは、"好きな"ひとだ。結構な」
綱井楪:「……」
銀波 嵐:「一緒にいると、安心できる」
銀波 嵐:「俺は……」
銀波 嵐:登山リュックに視線を送り。
銀波 嵐:「これしか持ってない……それ以上は……持ちきれないと思ったから」
銀波 嵐:「でも……他人の手を借りれば……より多くが……持てる」
銀波 嵐:「そんなことを……」
銀波 嵐:「だから、プレゼントを……渡した」
銀波 嵐:片手に収まる、プラスチックのほんのわずかな重み、それが銀波嵐の新たな世界。
銀波 嵐:「正直……受け取ってもらたことを……」
銀波 嵐:「安心している」
銀波 嵐:あれは、一世一代の大勝負だった。少なくとも嵐の覚悟、その重さにおいては。
銀波 嵐:「だからアンタは"好きな"ひとだ、俺に安心をくれる……」
銀波 嵐:贈り物を、受け取ってもらえた。ただそれだけのことだが、それだけでじゅうぶんだった。
綱井楪:細い頤を下げる。真摯な眼差しの重みに負けたかのごとく。
綱井楪:「安心……は、良かった、のだけど」
綱井楪:「少しだけ……照れると言うか、決まりが悪いと言うか」
綱井楪:もごもごと不明瞭な声を漏らして。
綱井楪:「……今にして思うと、その」
綱井楪:「あなたのことは、少しいじめすぎてしまったかも、って気がしていたから……」
綱井楪:指先を落ち着かなさげに絡み合わせる。
銀波 嵐:「そうなの……か?」キョトン、と首をかしげる。
綱井楪:「それは……だって、したでしょう」
綱井楪:「触ったりとか」
銀波 嵐:「……アレ、そうだったのか?」少し、呆れたような顔で。
銀波 嵐:「俺ァさっきちょっと納得しちまったぜ……『分かりやすく影響が出る方』って」
銀波 嵐:「ああそういうことだったのか、六華がへばりついてくるようなもんか……って」
綱井楪:「それはだって……だから、それよ」顔を上げて。
銀波 嵐:「だから、綱井先輩がよ、そういうのが必要だったら俺で良ければ六華で慣れてるしって……」
銀波 嵐:そこまで思ったのに、あれは悪ふざけだったというのか。
綱井楪:「久しぶりに会った友達が、ぜんぜん私のことを覚えていないし、やたら突き放してくるし」
綱井楪:「そのせいで少し抑えが利かなくなって……でも」
銀波 嵐:「俺は謝らねえぞ……」憮然として
銀波 嵐:「謝罪なら凪から聞けよ」
綱井楪:「考えてみたら嵐のせいではないし、大人げなかったなって……そう思ったの」
銀波 嵐:「ん、そらそうだ」薄く、勝ち誇ったように笑う。
綱井楪:「……だから、謝ってもらうことでもない。どっちにも」首を振る。
綱井楪:「……それと」
綱井楪:少し目を細める。
綱井楪:「あまり軽率にそんなことを言っては駄目よ」
銀波 嵐:「?」
綱井楪:「俺で良ければ、とか。六華で慣れてるし、とか」
銀波 嵐:「いや別に良いだろ、減るもんでもねぇし」
綱井楪:「……分かってない」
綱井楪:「分かっていないわ、嵐」
銀波 嵐:「そりゃ俺は世間様を知らねえけどよぉ」ムッとした顔
綱井楪:「自分は自分、という自覚も出てきたんでしょう」
綱井楪:「そこに来て凪と同じことをさせるわけにも行かないし」
銀波 嵐:「(凪とおなじこと?)(させる?)」
綱井楪:「覚悟のない子に無理をさせるほど落ちぶれてはいないわ」
銀波 嵐:「俺に分かるようにいってくれよ……」困ったように
綱井楪:「…………」
綱井楪:長い沈黙。
綱井楪:「……やっぱり、駄目」やがて、また首を振る。
銀波 嵐:ロイスを取得します→綱井楪 ○好意/不安
綱井楪:「あなたがもう少し大人になってからね」
綱井楪:ロイス感情を変更します。
綱井楪:銀波嵐 ○執着/嗜虐 → ○庇護/罪悪感 へ
リウトペルガ・ウィンニール:ちらつく雪はしんしんと露天の前庭へ降り積もっている。
リウトペルガ・ウィンニール:ある日の玻璃兎市。いつものように警邏と討伐を終えた彼女らは、綱井・銀波の二人と別れ、地域の旅館を訪れていた。
リウトペルガ・ウィンニール:冷え込みがきつい日だったこともあり、外での任務に消耗した身体を癒すため──
リウトペルガ・ウィンニール:この旅館の目玉である、日帰りで入れる露天風呂に、三人で入浴していた。
早乙女六華:「はぁ……」白い肢体を湯につけて、手足を伸ばしている。
早乙女六華:「最高だな……温泉は……」
珊瑚夜:「ええ!とても気持ちがいいわ」
珊瑚夜:ニコニコと機嫌がよさそうに、同じく湯の中で長い四肢を伸ばし、のびをする。
リウトペルガ・ウィンニール:「だよねぇ……ふは~……」湯に浸かり、長い息を漏らす。
早乙女六華:「……」降り続ける雪をじっと眺める。
早乙女六華:「湯から出た時の寒さを考えると……」
早乙女六華:「どうやらわたしは永遠にここから出られないようだな」
早乙女六華:「すまない。わたしのことはいい……置いていってくれ」
珊瑚夜:「……私もそれなりに肌が白い方だと思っていたけれど。規格外の二人に並ばれたら立つ瀬がないわ」拗ねたような声色だが、表情はにこにこと明るい。
珊瑚夜:「まあ!だめよ、そんな……早乙女さんを置いていけないわ」
珊瑚夜:「充分に温まったら、脱衣所に戻るまでの温かさは保てると思うから……、ね?」
早乙女六華:「そうだろうか……あと何年で充分に……?」
珊瑚夜:「年単位で居座るのは難しいと思うけれど……」
リウトペルガ・ウィンニール:「ならやっぱり、身体の中から温めるしかないねぇ」どこからか、盆の上に乗った徳利と猪口を浮かべてくる。
リウトペルガ・ウィンニール:「夜君はダメだよ、まだ未成年だからね!」
珊瑚夜:「……もう、こんなところでお酒?」困ったように笑っている。
早乙女六華:「む……気が利くな」猪口を手に取る。
早乙女六華:「しかし、前からこんなに酒好きだったか?」
早乙女六華:「酒気に逃避してるんじゃないか、お前」徳利から酒を注ぐ。
珊瑚夜:「……そうなの?」咎めるというよりは、純粋に心配した様子。
リウトペルガ・ウィンニール:「あー、この前についてはね」
リウトペルガ・ウィンニール:「でもこれは、普通に楽しんで飲みたいだけだよ」
早乙女六華:「それならいいが……」猪口を傾け、ふう、と息を吐く。
珊瑚夜:「……今はもう、お酒に逃げなくてもいいでしょう?」リウトペルガの顔を覗き込んで笑っている。
リウトペルガ・ウィンニール:「どうかなぁ。まだ怖いのは怖いから」苦笑を浮かべつつ、猪口を唇へ運ぶ。
リウトペルガ・ウィンニール:「でも、確かに──前ほどには、思い詰めてもいないかな」
珊瑚夜:「ふふっ」弾むように笑い。「嬉しいわ。少しでも、あなたの恐怖が溶けるのなら」
早乙女六華:「……」二人をじっと眺めて。
早乙女六華:また酒を注ぐ。「……しかし、よかったのか?」
珊瑚夜:「よかったって、……なにがかしら?」
早乙女六華:「わたしも一緒に来て」
早乙女六華:ぐい、と酒を飲む。
珊瑚夜:「え?」ぱちぱちと目を瞬かせる。
早乙女六華:リウトペルガに向けた目を細める。
リウトペルガ・ウィンニール:「何か悪いことがあるかい?」そ知らぬ顔。
リウトペルガ・ウィンニール:と言って、特別隠しているという風でもない。
早乙女六華:「いいや?」
早乙女六華:「教師が生徒に手を出すのはどうなのかと思っただけだ」
珊瑚夜:「…………っ」その言葉に顔を赤くして目を反らす。
リウトペルガ・ウィンニール:「さてね。ボクは魔女だもの」
早乙女六華:「……何だ、本当にか?」珊瑚の反応を見て
早乙女六華:「鎌を掛けたつもりだったんだが」
珊瑚夜:「…………早乙女さんは意地悪だわ」拗ねたような声色と共に、ますます顔が赤くなる。
リウトペルガ・ウィンニール:「なんだ。普通に知ってるもんかと思ってた」気にした風もなく、猪口を傾ける。
リウトペルガ・ウィンニール:「キミこそ、あの子たちに手なんて出してないだろうね?」
早乙女六華:「あの子たち?」ぱしゃぱしゃと顔に湯を掛ける。
リウトペルガ・ウィンニール:「綱井君と嵐君」
リウトペルガ・ウィンニール:「特に嵐君なんて、あれで繊細なんだからさ」
早乙女六華:「……」
早乙女六華:酒を傾けて。
早乙女六華:「何か悪いことがあるか?」そ知らぬ顔。
リウトペルガ・ウィンニール:「……その反応は」
リウトペルガ・ウィンニール:胡乱げな視線で、"後輩"の顔を見つめる。
リウトペルガ・ウィンニール:「……ま、了解があってやるならいいか。ボクが言えたことじゃないし」
リウトペルガ・ウィンニール:「一応聞いとくけどさ、了解はあったんだよね?」
早乙女六華:「……鎌を掛けられてないか?まあいいが……」
早乙女六華:「そこまで落ちぶれたように見えるか?わたしが」
早乙女六華:残り少なくなった徳利を振る。
リウトペルガ・ウィンニール:「流石にないとは思うけどさ。一応聞いとかないと」
リウトペルガ・ウィンニール:あまり減っていない自分の方の徳利を傾け、早乙女の猪口へ注ぐ。
早乙女六華:「わたしは素直に祝福するぞ」
早乙女六華:酒と湯で赤く染まった顔。黒髪に雪が積もってはじんわりと溶けていく。
早乙女六華:「友人達の幸福をな」
珊瑚夜:「………」その様子を、照れたような寂しいような笑顔で見つめ。
珊瑚夜:「ねえ、……早乙女さんがいるのに、こういうことを聞くのは不謹慎かもしれないのだけれど……」その髪に溶けていく雪を見つめる。
珊瑚夜:「問題です。雪が溶けたら、何になるでしょうか」
早乙女六華:「ふむ?」
早乙女六華:リウトペルガに目を向ける。
リウトペルガ・ウィンニール:「うーん?」
リウトペルガ・ウィンニール:「普通に考えれば、水だけど」
リウトペルガ・ウィンニール:「そういうことではないでしょ?」
早乙女六華:「クイズだからな」
リウトペルガ・ウィンニール:「だから、多分……」
早乙女六華:「引っかけのはずだ。つまり……」
リウトペルガ・ウィンニール:「La Primavera《春》だ」
早乙女六華:「雪解け水」
早乙女六華:「……えっ」
珊瑚夜:「ふふっ!リウトペルガはさすがね。正解よ」嬉しそうに笑う。
珊瑚夜:「雪が溶けたら、春になるの」
リウトペルガ・ウィンニール:「よっし」
早乙女六華:「春が来るから雪が溶けるのではないか……?」不服げな顔
リウトペルガ・ウィンニール:「雪解け水は大枠で水じゃん」
珊瑚夜:「まあ、クイズだから大目に見て欲しいわ」早乙女さんに笑って。
珊瑚夜:「雪は冷たく見えるけれど、その内に春の暖かさと優しさを秘めているのね」
珊瑚夜:「……早乙女さんが暖かいものに惹かれるのは、自分と似た者同士だから惹かれあうのかもしれないわ」
早乙女六華:「……」
早乙女六華:「……初めてだな。そんなことを言われたのは」
珊瑚夜:「永く生きている人の『初めて』になるのは、光栄だわ」楽しそうに笑う。
早乙女六華:「暖かい、か。雪女のわたしが……」
早乙女六華:瞑目する。
早乙女六華:「……何だか、ああ。奇妙だが」
早乙女六華:「悪くない気分だ」
珊瑚夜:「ふふ。早乙女さんは優しくて、とても暖かい人だと思うわ」
珊瑚夜:「私も友達の幸せは祝福したいし……その友達の中には、もちろん早乙女さんも入っているのよ」
早乙女六華:「……」「……ありがとう、夜」
早乙女六華:「そいつはいつもフラフラしているし」
早乙女六華:リウトペルガに目を向けて
早乙女六華:「この歳になっても面倒極まりない奴だが……」
早乙女六華:「だが、いい奴だ」
早乙女六華:小さく笑う。
早乙女六華:「傍に居てやってくれ」
珊瑚夜:「ええ。……ええ!」とても嬉しそうに笑う。
リウトペルガ・ウィンニール:「キミはボクの親か何かかよ」苦笑しつつも、不快さはない。
珊瑚夜:「ふふっ、何が何でも傍にいる、離さないって決めていたのに……」
珊瑚夜:「……心のどこかで、本当に傍に居ていいのか、少しは不安があったのかしら。早乙女さんにそう言ってもらえて、今、とても嬉しいの」
珊瑚夜:「必ず、リウトペルガのこと、幸せにするわ」甘い香りと共に、ふわりと笑う。根拠のない自信が、珊瑚夜の長所だ。
早乙女六華:「……なに、少し心配だっただけだ。世話の焼ける先輩を持つと」
早乙女六華:「後輩としてはな」
早乙女六華:穏やかな顔で息を吐き、夜空を仰ぐ。
早乙女六華:「お前もだぞ、リウトペルガ」
早乙女六華:「ここまで言わせて、夜を泣かせるようなことはするなよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「……分かってるさ」
リウトペルガ・ウィンニール:「今でも怖いし、不安だけど」
リウトペルガ・ウィンニール:「それでも、少なくとも……夜君を不幸にさせたくはない」
リウトペルガ・ウィンニール:「……幸せに、したいから」
早乙女六華:「……ふ」
早乙女六華:小さく笑んで。
早乙女六華:ざばりと風呂から出て、ぺたぺたと歩いていく。
早乙女六華:「先に出る。マッサージチェアのところにいるぞ」
早乙女六華:くしっ、と小さくくしゃみをして、露天風呂から出ていく。
珊瑚夜:「あら?もういいの?……風邪引かないように気をつけてね?」少しだけ心配そうにその姿を見送る。
リウトペルガ・ウィンニール:「水分はちゃんと摂るようにね。雪女だからって横着しないように」
リウトペルガ・ウィンニール:去ってゆく背中へ声をかける。
珊瑚夜:「……ねえ、リウトペルガ」
珊瑚夜:「あなたが……、私を幸せにしたいって、……言ってくれて」
珊瑚夜:「…………どうしようもなく、嬉しいわ。嬉しくてたまらないの」
珊瑚夜:ぎゅ、と彼女の小さな身体を湯の中で抱きしめる。
珊瑚夜:「…………ありがとう」珍しく小さな声で、そう呟く。
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクは、──まだ怖いし、不安だし、……自分を信じ切れてもいないけど」
リウトペルガ・ウィンニール:「でも、キミが嬉しくなってくれたのは……本当に、嬉しいな」
リウトペルガ・ウィンニール:彼女に抱きしめられながら、少し困ったように──それでいて、心から嬉しそうに、微笑んだ。
GM:シーン終了です。
【Middle latter half/リウトペルガ・ウィンニール】
GM:3番目のシーン権を獲得したのは、リウトペルガさん。
GM:誰を指名しますか?
リウトペルガ・ウィンニール:銀波嵐さんと珊瑚夜さんでお願いします
珊瑚夜:はあい!
銀波 嵐:おう
GM:ではサブシーンは綱井さんと早乙女さんになります。
銀波 嵐:「ちょ、ちょっと待ってくれ……」
銀波 嵐:「どうしたらこんなことに……」
銀波 嵐:フワフワとあたりを漂う泡の塊を愕然と見つめる。
銀波 嵐:「は、ハァ?洗剤を、一度に一本全部?!」
銀波 嵐:無理矢理に、やらせたのだ、その機械が動かなくなった時にどうするのだ、と。
銀波 嵐:"爆心地"である浴室の前からは今もモコモコと噴煙のように泡が立ち込めてくる。
珊瑚夜:「……一本じゃ足りないのかと思ったけれど。もしかして……多かったのかしら?」
銀波 嵐:「……いや、見りゃ……わかんだろ……」
珊瑚夜:「でも、シャボン玉みたいで綺麗だわ!」にこにこと笑っている。
銀波 嵐:「ソウデスネ……」
銀波 嵐:「オタク、スケールが違うわ……」
珊瑚夜:「……そうかしら?私は割と……『普通』だと思うけれど」首をかしげる。
銀波 嵐:「もうこれは……俺の手には余るから……そのちっちゃいの……動かしてもいいぞ……」
珊瑚夜:「ふふっ、ありがとう!嵐さんは優しいわね。大丈夫よ、うちのロボットたちは優秀だから」
珊瑚夜:物陰で集まって様子を見ていた小さなロボットたちが、その声を聞いてきゅるきゅると雑巾持って集まってきて、後始末を始める。
銀波 嵐:アジアン・スクワットの体勢をとり、ちょこまかと駆け回る機械群をぼんやりと眺めている。
リウトペルガ・ウィンニール:泡で溢れかえった、広い洗面所。
リウトペルガ・ウィンニール:その扉が急に開き、白い矮躯が顔を出す。
リウトペルガ・ウィンニール:「わ、なんだいこれ」
リウトペルガ・ウィンニール:「泡風呂?」
珊瑚夜:「あら、リウトペルガ!」ぱっと華やかな笑顔を向ける。
銀波 嵐:「……」
銀波 嵐:「おう」
銀波 嵐:それだけ言って、視線を再び泡へ。
珊瑚夜:「洗濯、というのをやってみようとしたのだけれど……、難しいわね」ニコニコしている。
リウトペルガ・ウィンニール:「お邪魔してるよ。……洗濯?」
銀波 嵐:「この女逆に何だったら出来るんだよ……」
珊瑚夜:「あら!もしかして私は洗濯というものができないのかしら」嵐の言葉に驚いたような声をあげて笑う。
珊瑚夜:「なんでも出来ると思っていたから気がつかなかったわ」
銀波 嵐:「見ての通りさ、これが珊瑚夜式洗濯術ってわけ……」お手上げのポーズ。
リウトペルガ・ウィンニール:「ははあ……。ボクも家庭科の進度についてはよく分からないけど……」
リウトペルガ・ウィンニール:「……まあ、ロボットがいるからいいんじゃないかな。ボクもある程度ならやれるし」
リウトペルガ・ウィンニール:「……それでね」
リウトペルガ・ウィンニール:苦笑を収め、真剣な表情を浮かべる。
珊瑚夜:笑みが広がる。リウトペルガが自分の面倒をみようとしていることがたまらなく嬉しい。
珊瑚夜:「ええ、何か用事があるんでしょう?今日はどうしたの?」
リウトペルガ・ウィンニール:「今日来たのは──」
リウトペルガ・ウィンニール:「嵐君と、……ちょっと、話がしたくって」
銀波 嵐:「俺と……?」
珊瑚夜:「ふうん?……私は聞いていてもいい話?」
リウトペルガ・ウィンニール:「……うん」
珊瑚夜:「なら、場所を変えましょうか。お茶を出すわ。……淹れるのは私じゃないけれど」
珊瑚夜:リビングの方で、きゅるきゅると音がする。ロボットたちがもてなす準備を始めた音だ。
リウトペルガ・ウィンニール:「お願いしようかな。……嵐君が嫌でなければ」
銀波 嵐:「別に……かまわねえがよ」
リウトペルガ・ウィンニール:無言のまま、連れ立ってリビングへ向かう。高級な調度のカフェテーブルに腰かけ、カップを傾ける。
リウトペルガ・ウィンニール:味や香りを楽しむというよりは、渇いた口を潤すように。
銀波 嵐:「……」
銀波 嵐:正面のリウトペルガを見る、居心地はいいとは言えない。
銀波 嵐:捨て台詞同然に飛び出した形だ。
リウトペルガ・ウィンニール:「──嵐君」
銀波 嵐:「んだよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「……去年にチームを組んで、五人で動くようになって」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミは──変わったね」
銀波 嵐:「そりゃ……変わらねえ方がおかしいだろ」
銀波 嵐:「時間ってのが経ってんだしな……」
銀波 嵐:乱暴にずず、と音を立ててカップの中身をすする。
リウトペルガ・ウィンニール:「時間が経っても変わらないものというのは、あるものだよ。良くも悪くもね」
リウトペルガ・ウィンニール:「……落ち着いた、っていう感じじゃない。丸くなった、っていうのもちょっと違う」
銀波 嵐:「アンタの見た目とかな」
リウトペルガ・ウィンニール:「………」
珊瑚夜:「……嵐さんが出会ってから、『見た目』が大幅に変わったのは私くらいだと思うけれど?」
珊瑚夜:柔らかく微笑みながらカップを傾けている。
銀波 嵐:「んだよ、気に触ったか?謝って欲しいか?」
リウトペルガ・ウィンニール:「いや」
リウトペルガ・ウィンニール:「変な表現だけど……」
リウトペルガ・ウィンニール:「……今のキミは、『生きている』って感じがする」
銀波 嵐:「ゾンビじゃねえんだ、そりゃ生きてる」
銀波 嵐:そういう意味ではない、とはわかっている。
銀波 嵐:ただうまく返せなくて、ついそんなことを言ってしまう。
リウトペルガ・ウィンニール:「そう。生きてるんだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「……キミは、前に」
リウトペルガ・ウィンニール:「『自分の不始末だから"俺"を認めたくないのか』って言ったね」
銀波 嵐:「……」
リウトペルガ・ウィンニール:「それは……半分あってるけど、半分間違ってる」
リウトペルガ・ウィンニール:「"凪"君が眠ってしまったのは確かにボクの不始末だ」
リウトペルガ・ウィンニール:「その罪を考えるなら……あの子のためにも、ボクは"元"に戻す努力をしなきゃいけない」
リウトペルガ・ウィンニール:「……でも」
リウトペルガ・ウィンニール:「『捨てる予定のものに名前をつけると、愛着が湧いてしまう』。……」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミが……"凪"の一部じゃなく、"嵐"だと認めてしまったら」
リウトペルガ・ウィンニール:「捨てられなくなってしまう。──"元"に戻すことを、ためらってしまう」
リウトペルガ・ウィンニール:「……夜君は知ってると思うけど」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクは臆病なんだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「……怖かったんだよ」
銀波 嵐:臆病であることに関しては、自分もそうだ。
銀波 嵐:以前は常に怯えて生きていた。
銀波 嵐:だがこの目の前の人物は、己のそれとは違った――
銀波 嵐:「難儀だなアンタ」
銀波 嵐:「もっと楽に生きたらどうだ?楽っていうか……雑に、だな」
銀波 嵐:俺は、そうした。
銀波 嵐:「たぶん暇なんだと思うぜ、あと変に頭が回るもんだから、空いた時間で余計なことばっかり考えてる」
リウトペルガ・ウィンニール:「これでも、だいぶん雑に生きてるつもりなんだけどねぇ」どこか寂しげな苦笑を浮かべる。
珊瑚夜:「なんていうか……リウトペルガって、結構馬鹿よね」呆れたような声色だが、優しく笑っている。
珊瑚夜:「……あなただけがそういう想いを抱えているわけがないでしょう」
リウトペルガ・ウィンニール:「ああ、でも」
リウトペルガ・ウィンニール:「なんてことだろう。他ならぬキミに、『生き方』について諭されるなんて!」
リウトペルガ・ウィンニール:そう言って、おかしそうに笑う。
銀波 嵐:「今更だけどよ……センセにゃ感謝してる」
リウトペルガ・ウィンニール:「感謝?」
銀波 嵐:「右も左もわからねぇ俺を世話してくれてよ」
銀波 嵐:「ただ、それが"義務感"でやってくれたことなのか」
銀波 嵐:「そういうのが気になっちまって……それは"余計"なことだ、だからあんまり考えたくねえ」
銀波 嵐:「だから出てって良かったと思ってるよ、今は」
銀波 嵐:「恩知らずで申し訳ねぇが、今の俺はこういうやつだ」
銀波 嵐:「俺に残された時間がどれほどあるのかはわからないが……」
銀波 嵐:「好きにする、センセも好きにすりゃいいと思う」
銀波 嵐:「少なくとも"俺たち"に対してはそうしてくれていいし」
銀波 嵐:「そうしてると勝手に思う」
銀波 嵐:だから、
銀波 嵐:「この先、については義務感は無しだ」
銀波 嵐:カップは、いつの間にか空になっている。
珊瑚夜:「まあ、私と暮らしているのは余計なことを考えなくて大丈夫なのね!」皮肉の色はなく、心底嬉しそうに笑う。
銀波 嵐:「(こいつにゃ遠慮するだけ馬鹿を見るってわけだ……)」じとりと横目で。
珊瑚夜:「リウトペルガ。……あなたがどれほど気に病もうとも、他人は勝手に強く生きていくわ」
珊瑚夜:「……嵐さん。あなたが思っているよりも……私たちは、嵐さんのことが大好きよ」
銀波 嵐:「……そりゃ嬉しいね」
珊瑚夜:「だから。……1人で思い悩んでいるよりも、好きにやりたいことをやったほうが、きっといいわ」
珊瑚夜:「私たちはみんな、『好きにしてる』のがいいのよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「……そっか」
リウトペルガ・ウィンニール:「感謝なんて、いらないさ」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミの言うとおり。"凪"君のため、そうしなきゃいけないと思ってやったことだもの」
リウトペルガ・ウィンニール:「だからね」
リウトペルガ・ウィンニール:真剣な目で、彼女の瞳を正面から見据える。
リウトペルガ・ウィンニール:「嵐君。銀波"嵐"」
リウトペルガ・ウィンニール:「怖いけど──ボクも、認めるよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミは生きてる」
リウトペルガ・ウィンニール:「"凪"の一部じゃなく、"嵐"として──確かに、生きている」
リウトペルガ・ウィンニール:「……これも、ボク以外のみんなはとうに認めてるだろうけどね。遅まきながら、ボクもやっと覚悟がついた」
リウトペルガ・ウィンニール:「『この先は義務感はなし』──そうとも」
リウトペルガ・ウィンニール:「だから、これは」
リウトペルガ・ウィンニール:椅子に立てかけていた袋を開け、中身を取り出す。
リウトペルガ・ウィンニール:「"凪"への義務感でも罪悪感でも恐怖感でもなく」
リウトペルガ・ウィンニール:「"嵐"へ、ただあげたいだけだ」
リウトペルガ・ウィンニール:それは、リボンでラッピングされた、大きなアルバム。
リウトペルガ・ウィンニール:「……写真が好きだって聞いたからさ」
銀波 嵐:「……こん、な」
銀波 嵐:こんな、
銀波 嵐:「デケえ物……俺の鞄に入らねえよ……」
銀波 嵐:恐る恐る、とそれを受け取る。
銀波 嵐:受け取ってしまった。
銀波 嵐:持ちきれないものは、どうすればいいのだろう。
銀波 嵐:皆、"普通"にやっている。
銀波 嵐:自分の家に、部屋に、物置に。コインロッカー、レンタルルーム。
銀波 嵐:誰もが"場所"を持っている。
銀波 嵐:ここは、そうか?銀波嵐の家ではない、珊瑚夜の場所だ。
銀波 嵐:怯えたように、珊瑚の目を見てしまう。
珊瑚夜:「ええ!好きに使っていいのよ。うちはとにかく場所だけはたくさんあるんだから」
珊瑚夜:「あなたも住んでいるのだから、あなたの家でもあるのよ?」
珊瑚夜:嬉しそうに笑っている。
リウトペルガ・ウィンニール:「そう。ここに飽きたら、ボクの部屋に戻ってきてもいいんだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「勿論、どっちも気に入らなければ、別の所だっていい。」
リウトペルガ・ウィンニール:「──嵐君」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミのための場所を作るんだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「"キミだけの"じゃなくていい。"キミのための"場所を」
銀波 嵐:「……」
銀波 嵐:場所、考えたことも無かった。
銀波 嵐:本当に欲しかったものは、何だろうか。
銀波 嵐:それは願うものではなく、気付くものであるのではないだろうか。
リウトペルガ・ウィンニール:「そのアルバムにキミの撮った写真を入れていけば、そこはキミの世界だ」
リウトペルガ・ウィンニール:「その世界を置いておける場所が、キミの居場所だ」
銀波 嵐:「……」
珊瑚夜:「…………それにしても呆れたわ。目の前で他の女の子にプレゼントするなんて。……隠れてやるよりよほどいいけれど」頬を膨らませてリウトペルガを見ている。
珊瑚夜:「まあいいわ。私があなたに贈って欲しいものは、ほかにあるもの」
リウトペルガ・ウィンニール:「夜君、それについては言いっこなしで頼むよ!」大げさな動作で、楽しげに笑う。
リウトペルガ・ウィンニール:「キミがいなかったら──こうする覚悟だって、つかなかったんだからね」
銀波 嵐:ロイス取得します。
銀波 嵐:リウトペルガ・ウィンニール→○信頼/同情
珊瑚夜:ロイス取得。リウトペルガ・ウィンニール/〇P:尽力/N:独占欲
リウトペルガ・ウィンニール:
銀波嵐/●P:"嵐"/N:未来への不安
珊瑚夜/●P:尽力/N:不安
綱井楪:国内某所。山中。
綱井楪:ひっそりと佇む白い建物の門から、一人の子供が歩いて出てくる。
綱井楪:その足取りは覚束ない。
綱井楪:呼び止める守衛はいない。周囲に人の姿もない。
綱井楪:辺りに広がる森さえも異様に静かだ。生きている動物がいるのならば当然あるべき気配がない。
綱井楪:耳が痛くなりそうなほどの静寂の中、子供は敷地の境界線をまたぎ、まばらに草の生えた砂利道に踏み出して──
綱井楪:つまづいて、転ぶ。
早乙女六華:ふわりと、その頭にひとひらの雪が落ちる。
早乙女六華:ほんの小さな足音が、静寂を破って子供の耳に届いた。
早乙女六華:気付けばそこに、少女が立っている。といっても、子供にとっては幾分か年上の、十代半ば程に見える
綱井楪:くしゃくしゃの白髪に雪が落ち、混ざり込むように溶けて消える。
綱井楪:子供は顔を上げた。淀んだ池の色をした瞳でそちらを見る。
早乙女六華:子供のもとにしゃがみ込む。
早乙女六華:時代錯誤な和服を着込んだ少女だ。
早乙女六華:真っ白な肌によく目立つ真紅の瞳は、雪兎に南天を嵌め込んだかのようだ。
早乙女六華:「……どうした、お前」
早乙女六華:「一人か?」
早乙女六華:静かで落ち着いた、吐息が混じったような声。
綱井楪:「……あ……」
綱井楪:掠れた声。貧相な体つきをしているわけでも、衣服が汚れているわけでもない。だが、ひどく憔悴している。
早乙女六華:「ん?」
綱井楪:「ひ、とり」
綱井楪:「ひとり、に……なっちゃった」
早乙女六華:ひょい、と軽々と抱き上げて立たせ、土埃を払ってやる。
早乙女六華:「……」
早乙女六華:「……そうか」
早乙女六華:身を寄せ、ぎゅ、と子供を抱き締める。
綱井楪:「……」されるがままに胸の中に収まる。
早乙女六華:「わたしもそうなんだ」
早乙女六華:子供には見えない肩越しの瞳に、ほんの少し寂寞の色が滲んで。
早乙女六華:「寒いな、ひとりは」
綱井楪:「……さ、むい」
綱井楪:「さびしい」
綱井楪:「こわい」
綱井楪:「わたし……わたし、は」
綱井楪:「きえたく、ない」
綱井楪:抱き締められた姿勢から、遠慮がちに和服の袖を摘まむ。
早乙女六華:「……そうだな」
早乙女六華:「わたしもだ」
早乙女六華:ばさり、と
早乙女六華:古びた赤い和傘を広げる。
早乙女六華:ある者から贈られたものだった。
早乙女六華:大正の時代に知り合い、以来、人ならざる身の六華を、家族の非難と反対を押し切って匿ってくれた老人。
早乙女六華:……出会った時には、まだ幼い少年であったが
早乙女六華:つい数日前に、死んだ。
早乙女六華:「……お前」
早乙女六華:子供と目線を合わせる。
早乙女六華:「名前は?」
綱井楪:「……ゆずりは」
綱井楪:俯き加減のまま、両目だけを上向けて答える。
綱井楪:シンプルなパーカーに、ズボン、スニーカー。幼さもあって判別し難いが、声質からしても少女であるのだろう。
早乙女六華:「楪か」
早乙女六華:「縁起の良い名だ」
綱井楪:「えんぎ……」
早乙女六華:「楪の葉は、古い葉が新しい葉に代わるようにして落ちる」
早乙女六華:「譲る葉、だから楪」
早乙女六華:「親から子に命が受け継がれていく様になぞらえて、縁起が良いと言われてる」
早乙女六華:「それは『続いていく』名だ」
綱井楪:「……」そう語る和装の少女の目を、じっと見ている。
綱井楪:理解しているのか。何を考えているのか。茫漠とした眼差しからは分かりにくい。
早乙女六華:「行く宛てはあるのか?楪」
綱井楪:「あて……?」
早乙女六華:「帰る場所だ。行きたいところでもいい」
綱井楪:「…………」
綱井楪:ズボンのポケットから紙片を取り出す。
早乙女六華:「む」受け取る。
綱井楪:「ここにいられなくなったら、かいてあるところにいけ、って」
綱井楪:それは何かのプリントの端を切り取ったものだ。
早乙女六華:「……護人会か。成程な」
綱井楪:「……しってる?」意外そうに。
綱井楪:施設名も何もない。ただ住所だけが記載されていて、おそらくは少女自身、それが具体的に意味するところは理解していないのだろう。
早乙女六華:「ああ。その辺りの孤児院よりは信用できる」養護施設のイメージが戦前からアップデートされていない。
早乙女六華:「いいだろう。ここが帰る場所だな」紙片を懐にしまって
早乙女六華:「では、行きたいところはあるか?」
綱井楪:暫し口を閉ざす。
綱井楪:「……あった、とおもう」
綱井楪:「ずっとここにいて。でも、そとにはいろいろなものがある、って」
綱井楪:「だれかから、きいて」
綱井楪:「いつかそとにでたら、いってみたいって……おもっていたのに」
綱井楪:「……おもい、だせない」
早乙女六華:「……そうか」楪の頭を撫でる。
早乙女六華:「いいさ、それなら」
早乙女六華:「忘れたなら、その分これから探せばいい」
綱井楪:「……どうやって?」
綱井楪:「わたし、どうしたらいいの」
早乙女六華:「生きればいい」
早乙女六華:「生きていれば、それだけで色々なものと出会う」
早乙女六華:「その中には、お前の興味を惹くものもあるだろう。その大半は無駄だとしても────」
早乙女六華:「そういう無駄が、人生には必要だ」
早乙女六華:「雪男を探しにヒマラヤに登って、結局見つけられなくとも」
早乙女六華:「それはそいつにとって、大切な経験になるだろうよ」
早乙女六華:「……知らないか……イエティ」
綱井楪:「……しらない」
早乙女六華:「そうか……まあ、世の中にはまだ、お前の知らないことが沢山あるということだ」
早乙女六華:「わたしみたいな、な」
早乙女六華:楪の手を握る。
早乙女六華:ほんの僅かに外気よりはあたたかいというだけの、人としては異様に冷たい手。
早乙女六華:「わたしは、六華」
早乙女六華:「早乙女六華だ」
綱井楪:「……りっか」
綱井楪:握られた手を見る。
綱井楪:細く、白く、滑らかで、冷たい。雪の彫刻のようなそれを、
綱井楪:きっとこの時に初めて、綺麗だと思った。
綱井楪:彼女のようなものが、まだ知らない世界にはあるというのなら。
綱井楪:「……りっか」
早乙女六華:「うん?」
綱井楪:「わたしを、はなさないでいてくれる……?」
早乙女六華:「……」
早乙女六華:「……ああ」
早乙女六華:「分かった。約束だ」
早乙女六華:ほんの少し苦い表情。それも気取られぬ程度の、一瞬のこと。
早乙女六華:楪の手を引いて、和傘を差してゆっくりと、雪の中を歩き出す。
早乙女六華:「……腹は減っていないか?楪」
早乙女六華:「ラーメンは好きか」
綱井楪:「……」自由な側の手でお腹を押さえる。くぅ、と控えめな音が鳴る。
綱井楪:「わかんない」
早乙女六華:「それなら、食べてみるといい」
早乙女六華:「一緒に行こう、楪」
綱井楪:こく、とひとつ頷いて。
綱井楪:少しだけ強く、少女の手を握り直す。
GM:シーン終了です。
【Middle latter half/早乙女六華】
GM:4番目のシーン権を獲得したのは、早乙女さん。
GM:誰を指名しますか?
早乙女六華:綱井楪さんを指名します。
綱井楪:呼ばれ
早乙女六華:1D10+74
DoubleCross : (1D10+74) → 8[8]+74 → 82
GM:ではサブシーンはリウトペルガさん、珊瑚さん、銀波さんになります。
早乙女六華:ごくごくとミネラルウォーターを飲むたびに、肉の薄い白い喉が別の生き物のように動いている。
早乙女六華:ベッドの上、その身体は深夜の薄明を反射して、暗がりの中で浮かび上がるかのように見えた。
早乙女六華:一糸纏わぬ裸体。その白い肌は繊細な雪像がそのまま動いているかのようであり
早乙女六華:癖のついた豊かな黒髪は、少しの動作でさらさらと絹糸のように肌の上を滑っていく。
早乙女六華:丸みを帯びて、しかしところどころ骨ばった、しなやかな身体。
早乙女六華:その身には女と少女との狭間、本来刹那的であるはずの不均衡な美しさが、永遠に凍り付いている。
早乙女六華:「……楪?」
早乙女六華:視線に気付き、ペットボトルを置く。口元からは溢れた水滴が滴り落ちている。
早乙女六華:「どうかしたか」
綱井楪:「…………」
綱井楪:横臥した姿勢。熱を帯びた吐息を暗い部屋の空気に溶かし込みながら、
綱井楪:頬を仄かに朱色に染め、潤んだ空色の瞳でそのさまを見つめている。
綱井楪:「……改めて見ると」
綱井楪:「こんなに子供だったんだ、と思って」
早乙女六華:「む……」
早乙女六華:「お前もそんなに変わらんだろう」
綱井楪:「……そう?」
綱井楪:「初めて会った時は、すごく大人に見えたけれど」
綱井楪:笑うでもなく、静かな語調でそう言う。
綱井楪:初めて会った時。
綱井楪:その頃は、一見では性別も曖昧なほどに幼かったが。
綱井楪:いま早乙女六華の前に横たわるその肢体は、
綱井楪:少女よりもむしろ女に近くなりつつある、若々しさと色香を同居させたものだ。
綱井楪:大きく、そして瑞々しく実った双丘。
綱井楪:UGNチルドレンとして戦い、しかし戦法の関係もあって、傷を受けることも少ないその肌は、
綱井楪:しっかりした筋肉の上に脂肪が乗っていて、張りがありながらも柔らかく、触れれば吸い付くような手ざわりを返す。
綱井楪:その自分の体と六華の体とをまじまじと見比べて。
綱井楪:「今は、私の勝ちだと思う」
早乙女六華:「むぅ…………」
早乙女六華:「……わたしも……外見的には12……13……いや14…… ……1、5……くらいだし……」
早乙女六華:「胸だってある」自分の小振りな胸にふにふにと触れる。
綱井楪:「……そうね」
綱井楪:起き上がって身を寄せ、指の腹でそのふくらみを押し込むようにして。
綱井楪:「私は好き」
綱井楪:「ちょっぴり物足りないとか思っていないわ」
早乙女六華:「……思っていないのに付け足すか?」
早乙女六華:下から支えるように、自分より随分と豊かなそれに指を沈める。
綱井楪:「不安かなって思って……」
早乙女六華:「……不安だよ」
早乙女六華:その身に寄りかかるようにする。ひんやりとした体温。だが常よりは僅かに上気して。
早乙女六華:「足りないと言われても、わたしは変われないからな」
綱井楪:六華の背に腕を回し、抱き寄せる。
綱井楪:再び密着する素肌のあわいで、白い鞠のような輪郭が歪み、その感触が共有される。
綱井楪:「……そのおかげで」
綱井楪:「ずっと、憧れのあなたのままでいてくれた」
綱井楪:夢見るように囁いて。
綱井楪:小さな口に、唇を重ねる。
早乙女六華:「……ん……」
早乙女六華:一度だけ目を瞬いて、それからは自ら、外見から想像できるよりもずっと長いその舌を絡ませる。
綱井楪:「……、は……」
早乙女六華:体格はずっと小さくとも、自分から熱を貪るように舌を絡ませ合い、口内の形を確かめるかのように隅々までなぞり、唾液と唾液を交換する。
早乙女六華:反応を確かめるかのように、細められた双眸から、赤い瞳がじっと楪の顔を見つめている。
綱井楪:雪女の視線の先、少女は長い睫に囲われた目を瞑る。
綱井楪:粘膜同士の戯れ合いが齎す、独特の弾力と柔軟さに溺れようとするため。
綱井楪:時折漏れる苦し気な呼気は、息をする間も惜しんでいるからだ。
綱井楪:舌を迎え入れ、自らも送り込みながら、その口内を隅々まで堪能しては、
綱井楪:咽頭近くを突かれれば反射的に、どちらのものかも分からない唾液をこくこくと飲み下す。
早乙女六華:「……っ……ふ……」
早乙女六華:くらくらと息苦しくなるほどに、たっぷりと口内を蹂躙し尽くして、ようやく顔を離す。
早乙女六華:二者の口端に、一瞬銀糸の橋が架かる。
早乙女六華:「……は、ぁ……」
早乙女六華:ぺろり、と舌なめずりするように赤い舌を出して。少し荒くなった息を吐く。
綱井楪:目を開ける。涙の粒が眦に光る。
綱井楪:すっかり赤くなった顔は、酸欠のせいだけではないだろう。
早乙女六華:「……」
早乙女六華:楪の前髪を掻き上げるようにして、汗の浮いた額に軽いキスを落とす。
綱井楪:口を半開きにしたまま、弛緩した表情で彼女を見つめて。
綱井楪:「……あ……」
綱井楪:きっとそれが、火を灯す最後の一押しだった。
綱井楪:小さな体を抱いたまま、柔らかく、けれど体重を掛けて、六華を寝台の上に押し倒す。
早乙女六華:「……ん……」
早乙女六華:抵抗せずに押し倒されて、腕の下から楪を見上げる。
早乙女六華:無言のまま、僅かに目を細める。熱に浮かされて蕩けたようなその目には、どこか挑発するような色が宿っている。
早乙女六華:ロイス取得 綱井楪 ○熱/不安
綱井楪:「…………」
綱井楪:陰のかかった表情が、いくらか真剣さを取り戻す。
綱井楪:じっと目と目で見つめ合いながら、片手の親指と人差し指で、左の膨らみの先端を摘む。捏ねるようにしながら軽く左右に振る。
早乙女六華:「ん、……ん、ふっ……」
早乙女六華:堪えるような声を漏らしながらも、身体はびくりと反応し、白い胸が跳ねる。
早乙女六華:「……っ、は……。 ……あの時は」
早乙女六華:「お前と……こんな形になるだなんて」
早乙女六華:「……想像もしていなかったな」
綱井楪:胸の頂を解放し、しかし手は六華に触れたまま、白い裸身を下方へと滑る。
綱井楪:薄く浮いた肋を撫でる。すべすべとした腹を下り、へその窪みで指先を遊ばせて。
綱井楪:「……それは、そうよ」
綱井楪:「でも……」
綱井楪:「あの日から、私の一番奥にはずっと、あなたのことが残っていた」
綱井楪:「そういう相手となら、こんなことをしたって不思議じゃない……」
綱井楪:やがて。
綱井楪:繊手は、黒髪の少女の足の付け根へと辿り着く。
綱井楪:「……あなたも、そう思ってくれる?」
綱井楪:その入り口の縁を、指先でなぞる。
早乙女六華:小さく震え、それを隠そうとして眉を顰める。
早乙女六華:「……楪はそうだろうが……」
早乙女六華:「わたしは……ふふ」
早乙女六華:「……何だか、まだ子供を抱いているようで気が引けるな」
早乙女六華:冗談めかして微笑を浮かべる。
綱井楪:「…………」
綱井楪:す、とわずかに口角が持ち上がる。
綱井楪:「それなら」
綱井楪:「どうぞ、子供に組み伏せられて、可愛く鳴かされてしまってね」
早乙女六華:「……何だ」
早乙女六華:「教えてくれるのかと思ったが?」
早乙女六華:「もうとっくに、大人だと」
綱井楪:秘された内に潜り込ませる指を、答えの代わりとする。
早乙女六華:「っ……んん、ぁ、っ────」
早乙女六華:普段の静かで落ち着いた声からは想像も付かない、高く甘い声が漏れる。
綱井楪:湿った音と共に抜いては差し、同時に掌を押し当てて、門の上方の秘核を擦りながら。
綱井楪:「六華。……六華」
綱井楪:投げ出された彼女の手を、もう片方の手で強く掴む。
早乙女六華:「っあ……! ……ふ、ふふ……」強がるように笑んで見せて。
早乙女六華:「……溶かされてしまうかもしれんな」
早乙女六華:耳元で、囁くようにそう言った。
綱井楪:「あなたがそうなっても。私がいずれ消えてしまうとしても」
綱井楪:「あなたの中から、私を離さないでいて──」
綱井楪:ロイス取得 早乙女六華 ○執着/不安
早乙女六華:綱井楪 愛情/○『秘匿』
珊瑚夜:ショッピングモールを進む3つの影。白いマフラーを捲いた珊瑚は目を輝かせて商品を次々と見ている。
珊瑚夜:「まあ!これ、全部カメラなのよね?どう違うのかしら!全部同じに見えるわ!」
リウトペルガ・ウィンニール:「うーん、ボクもカメラはよく知らないからなあ。やっぱり店員さんに聞くのがいいのかな?」
銀波 嵐:「し、知らねえよ……」
銀波 嵐:嵐が持つカメラは手持ちのインスタントカメラ、ただその一台のみだ。
銀波 嵐:スマートフォンに搭載されたカメラ機能をたわむれに使うこともあるが、撮った写真はその場で消してしまう。
珊瑚夜:「餅は餅屋というわけね。……お餅屋さんとおもちゃやさんって響きが似ているわ」そんなことを呟きながら。
珊瑚夜:「せっかくのプレゼントですもの。私が気にいったものか、嵐さんが気にいったものがいいわ」
珊瑚夜:私も嵐さんにプレゼントしたいわ!と騒ぎだした珊瑚夜に連れられ、3人でカメラを見に来ていた。
銀波 嵐:「あまり……重すぎないやつがいい……」
銀波 嵐:それにいきなり本格的すぎるやつは怖い、と思う。
リウトペルガ・ウィンニール:「そうかい? ボクだってお金出せるし、それなら二つ買おうか。小さいやつと大きいやつ」
銀波 嵐:「いや、そんな気軽に買っていい値段じゃねえだろこんなの……」
銀波 嵐:ズラリ、と並ぶカメラを眺める。
珊瑚夜:「……リウトペルガは嵐さんにプレゼントをしすぎじゃないかしら?」拗ねたような声。
珊瑚夜:「そうね……いきなり高いものをたくさんもらっても、困ってしまうでしょうし。それに、何が欲しいのか今はまだよく分からないでしょう?まずは軽くて持ちやすいものを試すのがいいんじゃないかしら」
銀波 嵐:「あ……ああ、そうしてくれ」ホッとしたように。
リウトペルガ・ウィンニール:「それなら、大きいのはまた今度かな。嵐君の腕前が上達したらにしようか」
リウトペルガ・ウィンニール:「小さいやつは普段使いに、大きいやつは部屋に置いといて、遠出するときとかに持ち出して使う」
リウトペルガ・ウィンニール:「それで──ふっと『これだ』と思ったものを、あのインスタントカメラで撮る、なんて」
銀波 嵐:「つっても…あれ残り2枚だぞ」
銀波 嵐:思わず、撮ってしまったのだ。リウトペルガ・ウィンニール、珊瑚夜、共に一枚ずつ。あのあと、すぐに。
銀波 嵐:暇そうな店員を捕まえ、何やら質問を始める。
珊瑚夜:「ねえ……リウトペルガ」嵐が質問する姿を眺めながら話しかける。
珊瑚夜:「私……あなたに贈って欲しいものがあるのだけれど」
リウトペルガ・ウィンニール:「うん?」
珊瑚夜:「私の、コードネーム」
珊瑚夜:「あなたに決めて欲しいの」
リウトペルガ・ウィンニール:「──なるほど」
リウトペルガ・ウィンニール:「嵐君にあげすぎ、とは思わないけど──確かに、夜君にももっとプレゼントはしたいね」
珊瑚夜:「ええ!たくさんプレゼントして欲しいわ」楽しそうに笑う。
珊瑚夜:「……ああ、今すぐこの場で、という話ではないから。考えておいてくれると嬉しいわ」
銀波 嵐:「おい」声が掛かる。
珊瑚夜:「あら、嵐さん。いいのはあったかしら?」
銀波 嵐:「……決めた」
---
銀波 嵐:テーブルの上に置いた紙袋を眺める。
銀波 嵐:モールの喫茶店、初めて来た……しかしどこか見覚えのあるような。
銀波 嵐:気にしないことにする。
銀波 嵐:「……ありがとう」
銀波 嵐:「礼を言ってなかった……」
珊瑚夜:「まあ!」その言葉に顔を輝かせる。
銀波 嵐:目線をフラフラと彷徨わせながら、言う。
珊瑚夜:「どういたしまして!大切にしてもらえると嬉しいわ」心底嬉しそうに笑う。
珊瑚夜:甘い香りがするのは、彼女が大量のパンケーキとたくさんのケーキに囲まれているからだけではないだろう。
銀波 嵐:「……なぁ」
銀波 嵐:唐突に、声色を変えて。
銀波 嵐:真剣な目をしている。
珊瑚夜:「……どうしたのかしら?」パンケーキを口に運びながら首を傾げる。さらりと短くなった亜麻色の髪が揺れる。
銀波 嵐:「俺は……ここ最近、余裕がある」
銀波 嵐:「だから前とは違うことを考えたり、している……」
珊瑚夜:「……ええ」柔らかく微笑みながら、頷いて耳を傾けている。
銀波 嵐:「以前は疑うって選択肢そのものが……無かった」
リウトペルガ・ウィンニール:「……疑う?」
銀波 嵐:紙ナプキンをねじり、弄びながら。
銀波 嵐:「凪は……ホラあいつ、嘘つきだろ?」
銀波 嵐:「なんか、思い込んでしまってたんだよな……俺だけには嘘をつくはずがないって」
珊瑚夜:「嘘つき……という言い方が正しいかは分からないけれど」困ったように笑う。
珊瑚夜:「冗談が好きな子ではあるわね。……そして優しい子だから、あなたのために……何か、真実を隠している可能性はあるかもしれないわね」
銀波 嵐:「それだよ」
銀波 嵐:「凪は優しい」断定するように。
銀波 嵐:「俺のことを大事に思ってる」これもまた。
珊瑚夜:「ええ、その通りだわ」大真面目に頷いて肯定する。
銀波 嵐:「なんで今の状況をそういうものだって、ニコニコしてんのかなって……」
銀波 嵐:「"普通"、アンタらみたいに『どうにかならないか』って頭を捻ったりするものなんじゃねえのかって」
銀波 嵐:「あんたらの"普通"を見て俺は学習した……」
銀波 嵐:「今更命が惜しいとは言わねえけどさ」
銀波 嵐:嘘だ。惜しい、だんだんと、その思いは強くなってきてしまっている。
珊瑚夜:(……命が惜しいと思うのは……『普通』だし)
珊瑚夜:(そう思ってもらって……嬉しいと思っている、自分がいるけれど)
珊瑚夜:(それを……嵐さんに伝えるのは……)あまりに、酷だ。
銀波 嵐:「なんかあの態度が……俺の知る凪とうまく噛み合わねえっつぅか……」
リウトペルガ・ウィンニール:「……ふぅむ」
珊瑚夜:(『あの子ああ見えて依存癖すっごいから、独り立ちできなくなっちゃう』)
珊瑚夜:嵐に内緒で『凪』に会った時のことを思い出す。彼女は嵐を『独り立ち』させようとしていた。
銀波 嵐:「やっぱ、なにか嘘つかれてんのかな。俺」
珊瑚夜:「そうねぇ……あるいは」パンケーキのクリームをすくいながら。
珊瑚夜:「もう……『どうにかなる』算段がついているから……落ち着いているのかも」
珊瑚夜:凪は『計画がある』とも言っていた。
銀波 嵐:「……どういうことだよ?」
珊瑚夜:「凪には……あなたたちが、どうなるか……ある程度は、もう分かっていて」
珊瑚夜:「その機会を……待っているだけだから、焦る必要がないのかも」
銀波 嵐:「……それ秘密にしててなんか良いことあるもんなのかよ」憮然と
珊瑚夜:「悪戯が好きな子だから。途中経過を明かしてしまったらビックリさせられないと思っているのかも」困ったように笑ってから、
珊瑚夜:「……もしくは、やっぱり……嵐さんのためでしょうね」ぽつりとつぶやく。
リウトペルガ・ウィンニール:(……確か、嵐君が綱井君に初めて会ったとき)
リウトペルガ・ウィンニール:(嵐君は彼女のことを知らなかった──"凪"君から聞かされていなかったようだった)
リウトペルガ・ウィンニール:(だが、綱井君は……元々知り合いだったみたいなことを言ってた)
リウトペルガ・ウィンニール:(それに夜君に対しては……やけに敵対的だった)
リウトペルガ・ウィンニール:(理由は分からないけど……単にあの時期の嵐君が荒れていたってだけにしては、他よりも攻撃的だったような気がする)
リウトペルガ・ウィンニール:(……凪君が、ボクのことを利用しろと伝えるのは分かる。負い目もあるし、財産と社会的な地位もある)
リウトペルガ・ウィンニール:(だが、この二人への凪君の態度は確かに妙だ)
リウトペルガ・ウィンニール:(仲良くさせたいなら信用しろと伝えればいいし、心配をかけさせたくないなら近寄るなと伝えればいい)
リウトペルガ・ウィンニール:(それに、嵐君は……自分が消えることを、決定事項のように言っていた。その出所はどこだろうか?)
リウトペルガ・ウィンニール:「……単なるイタズラ心だったらいいけどねぇ」
リウトペルガ・ウィンニール:テーブルへ頬杖を突きながら、ぽつりと呟く。
銀波 嵐:「……まあいいか、これもたぶん"余計"なことだ」
銀波 嵐:深く考えるようなことはよそう、嵐は変わった。雑になった。
銀波 嵐:良くも悪くも、変わってしまったのだ。
銀波 嵐:「……俺が」
銀波 嵐:「消えても、ふたりは……俺のことを覚えててくれるよな」
銀波 嵐:ポツリ、と。
珊瑚夜:自分より早く消えてしまう存在へとどう向き合ったらいいのか、正直まだ折り合いがついていない。
珊瑚夜:……そしてそれを途方もない数繰り返してきたリウトペルガを考えると、めまいがする。
珊瑚夜:それでも、『消える側』だと思っていた自分が出した答えは、
珊瑚夜:「ええ、もちろん!大切な友達ですもの」
珊瑚夜:共に居られる間は、幸せでいて欲しいというもの。
リウトペルガ・ウィンニール:「忘れないさ」
リウトペルガ・ウィンニール:「哀しいくらい、怖いくらい、忘れないよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「哀しくても、怖くても、覚えているよ」
リウトペルガ・ウィンニール:楪の言葉を思い出す。──常になく、熱を帯びた彼女の言葉を。
リウトペルガ・ウィンニール:哀しくても、怖くても、それが救いになるのなら。
リウトペルガ・ウィンニール:自分がやろう。"大人"たちのために。"若者"たちのために。
銀波 嵐:「そうか……なら」
銀波 嵐:「まあ……いいか」
銀波 嵐:そう言って、気怠げに微笑んだ。
【Middle3】
GM:全員登場です。
珊瑚夜:珊瑚夜の侵蝕率を1d10(→ 8)増加 (81 → 89)
綱井楪:綱井楪の侵蝕率を1d10(→ 3)増加 (66 → 69)
銀波 嵐:1d10+77
DoubleCross : (1D10+77) → 4[4]+77 → 81
早乙女六華:1D10+74
DoubleCross : (1D10+74) → 8[8]+74 → 82
GM:---
GM:では再び情報収集をして頂きます
リウトペルガ・ウィンニール:リウトペルガ・ウィンニールの侵蝕率を1d10(→ 1)増加 (72 → 73)
GM:前と同じでみんなで力を合わせる形で頑張ってね!
銀波 嵐:はーい
綱井楪:やったらい
GM:項目はこちらです
GM:
情報:噂話/UGN
難易度50
珊瑚夜:金の力で情報収集時の判定ダイス+1個、達成値+2がつくからよろしくね!
銀波 嵐:ヒャハハ!金だ金だァ!
GM:というわけでビシバシ判定しな!
綱井楪:金の力とコネUGN幹部を使って判定!
綱井楪:5dx+3
DoubleCross : (5DX10+3) → 9[1,1,2,3,9]+3 → 12
珊瑚夜:情報:UGNで判定。ミーミルの覚書をコネ:UGN幹部として使用します。
珊瑚夜:7dx+4
DoubleCross : (7DX10+4) → 9[1,3,3,5,5,6,9]+4 → 13
銀波 嵐:情報:UGN。
銀波 嵐:4dx+3
DoubleCross : (4DX10+3) → 4[2,2,2,4]+3 → 7
銀波 嵐:あらかわいい
リウトペルガ・ウィンニール:コネ:UGN幹部使用
リウトペルガ・ウィンニール:(3+1+2+1)dx+2 〈情報:UGN〉
DoubleCross : (7DX10+2) → 10[4,5,7,7,8,10,10]+7[6,7]+2 → 19
早乙女六華:コネ使ってUGN
早乙女六華:6DX+3
DoubleCross : (6DX10+3) → 8[1,2,3,7,8,8]+3 → 11
GM:というわけで判定達成ですね
珊瑚夜:わーい!
GM:みんな珊瑚さんにちゃんとお礼を言うように
銀波 嵐:お金をありがとう
綱井楪:マネーパワー万歳
リウトペルガ・ウィンニール:ありがとう、これからも頼むね♡
珊瑚夜:仕方ないわね……♡(チャリンチャリン)
GM:では情報を開示します
“ベイルファイア”の目的は、端的に言えばオリジン:レジェンドに分類されるレネゲイドビーイングの大量発生。
それらは噂や都市伝説などの集合的意識から生まれるものだが、儀式で働きかけることによって個体としての成立を促進、多くの衆目に晒すことによってその実在を意識に刻み込み、更なる発生を加速させている。
レネゲイドビーイングには≪怪人≫と呼ばれる、人の記憶や認識を大規模に改竄する能力を持つものがいるが、“ベイルファイア”はそれに似た能力を悪用しているものと見られる。
“ベイルファイア”は星宮学園を箱庭として溜め込んだ恐怖を用い、玻璃兎市を百鬼夜行に近い状態に陥れるつもりだ。
やがて玻璃兎市民も星宮学園の生徒と同じ精神状況に陥り、百鬼夜行は国へ、世界へと広がっていくだろう。
1月に入ってから、急激に怪異の出現数が増加している。三年生の大学入試共通テストを前に、一気に生徒の不安と恐怖を煽ろうとしているようだ。
生徒たちの精神状態は悪化のピークに達しつつあり、噂は止まることを知らない。不登校の生徒も目立つ。
“ベイルファイア”が街に怪異を解き放つのは、もう間も無くだろう。
玻璃兎市内 ファミレス 『パラディ・フィスカル』
GM:1月。
GM:年明け気分に浸る間もなく、その日の学園周辺に出現した怪異は5体にものぼり、ようやく息をつけたのはすっかり陽が暮れてからのことだった。
GM:既に学食も閉まっている時間。君達は近場のファミリーレストランに足を運び、束の間の休息を取っていた。
早乙女六華:「キリが無いな」
早乙女六華:じゅうじゅうと音を立てる分厚いサーロインステーキを切り分けている。
綱井楪:「……うん」言葉少なに答え、ふう、と息をつく。
リウトペルガ・ウィンニール:「三代校長と幽霊看護婦と二宮金次郎がいっぺんに走ってきたのは中々壮観だったねぇ」
銀波 嵐:「……マジで速かったな、ターボババァは」注文したドリアの皿は既に空。
銀波 嵐:あと0.1秒初動が遅かったら追いつけなかったぜ……とぶつぶつ呟く。
珊瑚夜:「……”ベイルファイア”は走らせるのが好きなのかしらね?」
早乙女六華:「びっくりするからな……速いと……」
リウトペルガ・ウィンニール:追加で注文したデザートが来るのを心待ちにしながら、ハンバーグを手際よく口へ運ぶ。
珊瑚夜:「あまりに疲れると食欲が落ちてしまうわ」そう言いながらステーキとピザを交互にパクついている。パスタとハンバーグも時々つまんでいる。
綱井楪:「良いようにされっぱなし……」
綱井楪:ロコモコ丼に乗った目玉焼きの黄身を、気のない様子でつついて崩している。
早乙女六華:「しかしこのペースは……明らかに本腰を入れてきたという感があるな」
リウトペルガ・ウィンニール:「それさ」行儀悪く、ハンバーグの刺さったフォークで早乙女を指す。
リウトペルガ・ウィンニール:「速いのが多かったのも、顕現したあとすぐに市内に出て行くつもりだからかも知れない」
リウトペルガ・ウィンニール:「学内ならともかく、モナリザやベートーベンがキョロキョロやったところで、街の人は怖がらないもの」
早乙女六華:「なるほど?」チーズインハンバーグを追加注文して「筋は通るな」
早乙女六華:「空を飛んだりするものも出てくるかもしれんな……」「ところでここ、リウの奢りでいいんだろうな?」
リウトペルガ・ウィンニール:「空はやっかいだねぇ。ただでさえ『風もないのに揺れる国旗』とかの話が残ってるのに」
リウトペルガ・ウィンニール:「奢りさ。夜君ほどではないにせよ、ボクもちょっとはお金持ってるんだぜ」
銀波 嵐:「……根っこの解決ってわけにゃいかねえけどな、閉鎖するわけにゃあいかねえのかよ、学校」
早乙女六華:「それが出来れば一番だがな……期限がいつまでかも分からんし、生徒の行き場も無い」
綱井楪:「ただでさえ、一般の三年生にとっては大事な時期」
珊瑚夜:「ええ……一応、受験を控えているから。本格的に危険が伴わない限り、難しいかもしれないわね……」空になったサーロインステーキの皿をどけ、サイコロステーキの皿をよせる。
綱井楪:「そんな時に学校を閉鎖するとなれば」
綱井楪:「本格的に“何かある”と世間に思われる。ベイルファイアの思う壺かも」
綱井楪:とろりと黄身がかかったハンバーグではなく、丼からはみ出したキャベツの端っこを齧りながら。
珊瑚夜:「……UGNに経費で請求できるんじゃないの?リウトペルガが出すなら私も少しは出すわよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「いいさいいさ。領収書がどうとか気にするより楽だし、楽しいじゃない」
リウトペルガ・ウィンニール:「何しろボクは先生、引率者だからね!」
早乙女六華:「流石リウ先生だな」上機嫌になって、カルボナーラとマグロ丼を追加注文する。
銀波 嵐:「……俺は自分の分は出すぞ」
早乙女六華:「何だ嵐、気にしてるのか?」
銀波 嵐:「六華はちょっとは気にしろよ……」呆れたように。
珊瑚夜:「リウトペルガはそういうところ結構おおざっぱなのよね……ふふ、ソースがついてるわよ、『先生』?」楽しそうにハンカチでリウトペルガの唇を拭く。
リウトペルガ・ウィンニール:「おっと、ありがとう。ん~っ」素直に拭かれる。
早乙女六華:「こいつはこういうやつだから、奢らせて気を良くさせてやれ」ステーキを頬張る。
早乙女六華:「わたしも年下だからな」
綱井楪:「……目上の者にとって、こういう時は素直に奢られないとむしろ面子が立たないと聞いたわ」
綱井楪:「なので私はありがたくご馳走されます」
銀波 嵐:「……ああそうかい、好きにしろぃ」
リウトペルガ・ウィンニール:「そうともそうとも、好きに註文したまえ!」
珊瑚夜:「受験といえば、綱井さんは進路ってどうするのかしら?」
綱井楪:「仕事の兼ね合いも考えて決めてあるけれど」
綱井楪:「こんな状況だし。あまり進捗はよろしくないわ」
珊瑚夜:「……もう一月よ?具体的な対策をしなくて大丈夫なの?」
珊瑚夜:「まあ……状況が大変だというのは、私もよく分かるけれど」
銀波 嵐:「進路、ねぇ……」独りごちる。
早乙女六華:「……」楪をじっと見て、それから視線を移す。「夜も三年生だろう?どうするんだ」
珊瑚夜:「ああ、私は国立を受けるわ。模試で点が足りなかったことはないから大丈夫とは思うけれど、受験って何があるか分からないから。なるべく心労は減らしたいわね」
早乙女六華:「……そうだな。こんなことにかかずらっている場合じゃない」
早乙女六華:「楪、お前もだぞ。もう少しちゃんと考えろ」
綱井楪:「“ベイルファイア”に言って頂戴」少しむくれる。
早乙女六華:「……その“ベイルファイア”の件だが」
早乙女六華:「奴の計画の実行日に、心当たりがある」
珊瑚夜:「……心当たり?」平らげたパスタの皿をどけてドリアの皿をよせる。
早乙女六華:「うん」チーズインハンバーグを切り分けながら
リウトペルガ・ウィンニール:「へえ?」ようやく来たデザートのティラミスを掬う。
早乙女六華:「百鬼夜行というものには、暦の上でこの日に出現するという“百鬼夜行日”が月ごとに定められているものなんだ」
早乙女六華:「知っていたか?」
銀波 嵐:「なんだそりゃ、行事かよ」
綱井楪:「一応、普段の役割が役割だから」頷く。
珊瑚夜:「まあ、知らなかったわ!カレンダーに従って行動するなんて、百鬼夜行って律儀なのね」楽しそうに笑う。
早乙女六華:「1月と2月の場合は、子日。今年の1月で残りの子日は」
早乙女六華:「15日の甲子になる。丁度共通テストの前日だ」
銀波 嵐:「過密スケジュールだこと」
早乙女六華:「動くとしたら、この日の丑三つ時ではないかと思う」
珊瑚夜:「……ただでさえ、大事な試験の前なんて不安と緊張でストレスが溜まっている時だわ。そんなときに恐怖体験をしたら……」
珊瑚夜:「……通常よりも、ずっと多くの恐怖を集められるでしょうね」
リウトペルガ・ウィンニール:「一石二鳥って訳だ。ははあ、全く迷惑だこと」
綱井楪:「…………」
銀波 嵐:「あんたら妖怪連中のその形式に律儀なとこはわかりやすくっていい」
銀波 嵐:「だから六華や綱井先輩の知恵袋が今までにも役に立ってきたわけだからな」
銀波 嵐:「それも信用できるんだろうさ」
綱井楪:「そこで大元を叩けるかどうかが分水嶺……」
綱井楪:「……。これ食べる? 六華」ほとんど手を付けていないロコモコ丼を差し出す。
早乙女六華:「何だ……さっきから見ていれば、食欲が無いのか?」
綱井楪:「少し気分じゃないだけ」
珊瑚夜:「無理もないわ。……こんな状況の上、受験の心労。それに加えて大量の戦闘。私だって食欲が落ちて普段の半分も食べられていないもの」そう言いながらタンドリーチキンに手を付ける。
銀波 嵐:「どっちが妖怪だかわかんねぇな……」
早乙女六華:「ふむ」ロコモコ丼を箸で取って
早乙女六華:「ほら、あーん」楪の口元に運ぶ。
綱井楪:伏せていた目を上げて瞬かせる。
銀波 嵐:「……。」
リウトペルガ・ウィンニール:「気分でなくても、ある程度は食べないといけないよ。精神に身体が影響されるように、身体に精神も影響されるからね」
リウトペルガ・ウィンニール:「夜君は……まあ、食べるに越したことはないから」
珊瑚夜:「……嵐さん。私はそろそろデザートを頼もうかと思うけれど、あなたも何か頼む?」メニューを嵐に見せる。
銀波 嵐:「あ?別にアンタと同じものでいいよ」
銀波 嵐:「……いや待て、今のは無しだ!」
銀波 嵐:「一品、一品でいい……」
珊瑚夜:「えっ、一つだけでいいの!?」驚いたように目を見開く。「……遠慮しなくていいのよ?」
綱井楪:「……んん」眼前で微動だにしない箸に観念して。
綱井楪:「……ぁーん」やや目を逸らしながら口を開ける。
早乙女六華:「ふふ」餌付けするように食べさせて
早乙女六華:「気分になったか?」
綱井楪:「む……」黄身の染みたハンバーグとご飯を咀嚼し、ごくりと飲み下す。
銀波 嵐:「……チッ、餓鬼じゃあるまいし」二人を半目で眺めながら。
銀波 嵐:「気が変わった……アンタと一緒でいい」
リウトペルガ・ウィンニール:「……それ、大丈夫かい? 嵐君」
銀波 嵐:無性に糖分が必要だった。知ったことか。
綱井楪:「……返して。ちゃんと自分で食べられるわ」
綱井楪:反抗するように目を合わせないまま。
珊瑚夜:「そうこなくっちゃ!えっと、ティラミスとショートケーキ、チョコレートケーキにチーズケーキ、パンナコッタにストロベリーサンデーにジェラートセットを4つずつお願いします」
珊瑚夜:にこにこと嬉しそうに注文する。
銀波 嵐:「……?」
銀波 嵐:「(4……つ?)」
銀波 嵐:「(聞き間違えだよな……たぶん)」
珊瑚夜:「あっ、それを2セットずつ!」
早乙女六華:「あーん」わざとなのか、話を聞いていないのか、再び口元に運ぶ
早乙女六華:「3セットにしてくれ」
早乙女六華:「リウトペルガのおごりなら、わたしも食べる」
綱井楪:「むう……」
綱井楪:結局口を開けて食べさせてもらう。
珊瑚夜:「食べるに越したことはないものね!」
リウトペルガ・ウィンニール:「いや奢るのはいいけど……」
早乙女六華:「とにかく、奴の思い通りに運べば、全国的に試験どころの話ではない」
早乙女六華:引き続き楪に食べさせながら
早乙女六華:「何としてでも阻止しなくてはな」
綱井楪:「……そうね」見ないままで的確に差し出された箸に食いつきながら。
珊瑚夜:「……心労でこれしか食べられそうにないけれど。きちんと解決して、またお腹いっぱい食べられるようになりたいわね」
銀波 嵐:「(心労って言ったか……今)」
銀波 嵐:視線をふたりと珊瑚の間で往復させながら。
リウトペルガ・ウィンニール:「嵐君、諦めたまえ。ボクも協力するから」
銀波 嵐:「……。」
リウトペルガ・ウィンニール:「ともかく──そうだね。生徒のみんなには、百鬼夜行なんて気にせず羽ばたいてもらわないと」
珊瑚夜:「ふふっ。本当に先生っぽいわ」楽しそうに笑って。
珊瑚夜:「百鬼夜行なんかに怯えないで、何を食べるかとか、進路がどうとか、そういったことで悩めるような日常を取り戻しましょう」
綱井楪:「ここまでやりたい放題されてきたけれど。逆に大詰めで失敗すれば、向こうも相当悔しいでしょう」
綱井楪:「先生と二人だけだった頃ならともかく」
綱井楪:「今は、夜も、嵐も」
綱井楪:「……六華もいるのだし」
綱井楪:その名を呼ぶ時だけ、一瞬視線を合わせる。
早乙女六華:「……」その視線に小さく微笑して、頷く。
銀波 嵐:「悔しがらせるんじゃなくて、キッチリ引導渡してやるんだろうがよ」苛ついたように。
銀波 嵐:「何にせよ、15日には全部ケリがつくってワケだ」
珊瑚夜:「ええ!全部きっちり解決して、余計なことを考えないでテストに挑みましょう」
珊瑚夜:「私たちの人生は、世界の危機なんかに比べたら小さなどうでもいいことに頭を悩ませて続いていくんだから」
GM:シーン終了。
GM:購入可能です。
銀波 嵐:こうにゅう……なんだそれは
早乙女六華:3DX メイド服
DoubleCross : (3DX10) → 9[6,9,9] → 9
早乙女六華:くっっっっ………………
銀波 嵐:迷いがねぇ~~
珊瑚夜:≪無形の影≫を使って勝負服を狙うわ
珊瑚夜:6dx+2>=20
DoubleCross : (6DX10+2>=20) → 9[1,2,3,5,7,9]+2 → 11 → 失敗
珊瑚夜:く……
珊瑚夜:ん!?私お金持ってるじゃない!
綱井楪:メイド服を狙います
珊瑚夜:9点払って購入!リウトペルガにあげるわ!!
綱井楪:4dx>=20
DoubleCross : (4DX10>=20) → 8[4,4,7,8] → 8 → 失敗
リウトペルガ・ウィンニール:えっ!?
銀波 嵐:皆同じあやまちを繰り返すのか……
珊瑚夜:珊瑚夜の侵蝕率を4増加 (89 → 93)
綱井楪:何故……?
銀波 嵐:あげる
珊瑚夜:ナーブジャックには意志が必要 それだけのこと
リウトペルガ・ウィンニール:遺志は相手が振るやつだったはずだけど……
珊瑚夜:あっふーん……
珊瑚夜:まあもらっておいて
GM:勝負服着せたいだけじゃない?
リウトペルガ・ウィンニール:でも衝動判定でガバったら変異暴走で大ダメージだから貰います
リウトペルガ・ウィンニール:ありがと♡
銀波 嵐:まあ、俺は堅実に……メイド服だな。
銀波 嵐:3dx
DoubleCross : (3DX10) → 10[3,5,10]+5[5] → 15
リウトペルガ・ウィンニール:(3+1)dx+1>=20 メイド服チャレンジ
DoubleCross : (4DX10+1>=20) → 8[2,5,5,8]+1 → 9 → 失敗
早乙女六華:頑張ったな
銀波 嵐:クソッ……お金も足りねえ!
綱井楪:俺たちのドンキのペラペラメイド服への思いが足りねえってのかよ
銀波 嵐:執念が……一歩届かなかったか……。
珊瑚夜:ドンキごと買い取って勝負服を購入した私を見習って
銀波 嵐:ドンキゴト
GM:ではここでエクストラシーン権の確認をします
GM:皆さん自分が取得したロイスを見せてください 感情秘匿してる場合秘匿のままでOK
綱井楪
1.D遺産継承者
2.銀波嵐 ○庇護/罪悪感
3.早乙女六華 ○思慕/不安
4.リウトペルガ・ウィンニール ○希望/反発
5.珊瑚夜 連帯感/○呆れ
6.早乙女六華 ○執着/不安
7.(未取得)
早乙女六華
D超血統
1綱井楪 ○慈愛/郷愁
2リウトペルガ・ウィンニール ○連帯感/食傷
3銀波嵐 ○庇護/隔意
4綱井楪 ○熱/不安
5綱井楪 愛情/○『秘匿』
珊瑚夜
1Dロイス 傍らに立つ影
2リウトペルガ・ウィンニール/〇P:好意/N:未練
3リウトペルガ・ウィンニール/〇P:執着/N:無力感
4リウトペルガ・ウィンニール/〇P:それでも好き/N:それでも好き
5リウトペルガ・ウィンニール/〇P:尽力/N:独占欲
6まだ
7まだ
GM:こいつヤバ…………
銀波 嵐:狂気が見える
珊瑚夜:そう?
綱井楪:三つどころか四つも取ってるのかよ
銀波 嵐
1、早乙女六華 ○《秘匿》/嫌気
2、綱井楪 ○好意/不安
3、リウトペルガ・ウィンニール ○信頼/同情
リウトペルガ・ウィンニール
1.Dロ
2.早乙女六華 ●憧憬/羨望
3.珊瑚夜 恋/●罪悪感
4.綱井楪 ●『記憶』への思い/やり場のない憤懣
5.珊瑚夜 ●どうしようもなく好き/どうしようもなく怖い
6.銀波嵐 ●"嵐"/未来への不安
7.珊瑚夜 ●尽力/不安
GM:こっちも3つ取ってるんだな……
珊瑚夜:そうよ♡
銀波 嵐:きさまらぁ~~~!
リウトペルガ・ウィンニール:この流れで見ると「どうしようもなく怖い」が別の意味に見えますね
銀波 嵐:怖いよね
綱井楪:そりゃどうしようもなく怖いよ
GM:え~では条件Bの『1人のPCから3つ以上のロイスを取得されているPC』を達成し、発生するエクストラシーンは
GM:リウトペルガさんと珊瑚さん、早乙女さんと綱井さん
GM:条件Aの『最も多くの他PCからロイスを取得されているPC』は……
GM:えーっと
珊瑚夜:たぶんリウトペルガが全員で達成しているわ
GM:そうですね
珊瑚夜:逆に他の人は無理ね 私がいるから
GM:とんでもねえ女だよ
綱井楪:酷すぎ
銀波 嵐:何なんだよ
GM:次からこのルール変えるワ……
珊瑚夜:こうなることはそうそうないとは思うけれど……
銀波 嵐:先輩!!
GM:レズロワのルールを変えた女として歴史に名を刻んで
リウトペルガ・ウィンニール:怖い
珊瑚夜:光栄だわ♡
GM:では最後のエクストラシーンは全員でのシーンの形になりますね
珊瑚夜:「髪を切って……便利なこともたくさんあるのだけれど」
珊瑚夜:「こういう時に邪魔にならないというのも、そのひとつね」
珊瑚夜:学園から程近くに建つマンションの一室。古き魔女、リウトペルガ・ウィンニールの住むその部屋。
珊瑚夜:その小さな魔女、リウトペルガの白い肌に細く長い指を這わせながら、珊瑚夜は妖しく微笑む。
珊瑚夜:目の前に横たわる子供のような小さな裸体のラインを確認するようになぞり、彼女の肌の滑らかさに、指先から伝わる熱に、己の欲が燃え上がるのを感じる。
珊瑚夜:長身をゆっくりと彼女の顔の傍に近づけ、ともすればキツい印象を与えがちな整った顔に笑みを浮かべ、耳元で囁く。
珊瑚夜:「けれど……短いと、髪で隠せないという面もあるわね」
珊瑚夜:そう言って、リウトペルガの細く白い首筋に歯を立てて、噛み痕を遺す。
珊瑚夜:果実の熟れたような甘い香りが漂う。
リウトペルガ・ウィンニール:「んっ……、そうかもね」
リウトペルガ・ウィンニール:その白皙の首筋へ、小さな歯型がくっきりと残る。
リウトペルガ・ウィンニール:「殊にボクは色が白いから。跡も見やすくなっちゃうのさ」
リウトペルガ・ウィンニール:「でも、欲張りなキミのことだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「一つつけたくらいじゃ、満足できないだろう?」
リウトペルガ・ウィンニール:彼女の頭を両手で包み込み、薄っすらと微笑む。
珊瑚夜:「ふふ……『先生』なのに。いけない人」
珊瑚夜:その言葉に、紅く遺る嚙み痕にゾクゾクと興奮が高まる。
珊瑚夜:目を合わせて淫靡に微笑むと、再び彼女の首元へ顔を沈める。
珊瑚夜:「ええ……その美しい身体に、たくさん私の印を遺してね」
珊瑚夜:首筋を嚙み、吸い、痕を遺す。
珊瑚夜:徐々にその痕は下へと下がり、彼女の胸元へ到達する。
珊瑚夜:「リウ……」
珊瑚夜:囁くと、その胸の先端をそっとなぞるように舐める。
リウトペルガ・ウィンニール:「ん……っ」
リウトペルガ・ウィンニール:薄い胸板から伝わる鋭敏な刺戟に、身体をわずかに捩る。
リウトペルガ・ウィンニール:「いいのさ。長命者なんてのは、放蕩と放埓が義務みたいなもんだもの」
リウトペルガ・ウィンニール:「それを言うなら、キミこそ──」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミよりもずっと小さい身体に、そんなに昂ぶるなんて。いけない子だ」
リウトペルガ・ウィンニール:その小さな胸に吸い付く彼女の髪を、柔らかく撫でる。
珊瑚夜:「ふふ、ええ……そうね。自分より小さな……子供みたいな、それも女の人に……こんなにドキドキするなんて思いもよらなかったわ」
珊瑚夜:微笑んで一度少し体を起こすと、その小さな体躯を抱きしめる。珊瑚の熱を帯びた豊かで柔らかな双丘がその肉体に押し付けられる。
珊瑚夜:「ねえ……伝わる?私、今……すごくドキドキしているの。心臓が破裂してしまいそうだわ」
珊瑚夜:「ねえ……あなたも少しはドキドキしてくれているかしら?」
リウトペルガ・ウィンニール:「わぷ」その大きな胸の中に抱きしめられ、少し驚いたような表情を見せる。
リウトペルガ・ウィンニール:「……うん、伝わるよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「とってもドキドキしていて……いい匂いがする」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクは……今は、ドキドキっていうより」
リウトペルガ・ウィンニール:「満たされてる、って感じかな」
リウトペルガ・ウィンニール:「こうやって、キミの腕に抱かれて──」
リウトペルガ・ウィンニール:「……ボクも、抱き返せてるのが」
リウトペルガ・ウィンニール:「すごく、幸せだ」
リウトペルガ・ウィンニール:どこか遠い目で、そう呟く。
リウトペルガ・ウィンニール:遠い目で──しかしそこに覗くのは、寂寥や哀しみの色ではない。
リウトペルガ・ウィンニール:そこにあるのは、言葉の通り、噛み締めるような幸福だ。
リウトペルガ・ウィンニール:しかし、そんな表情を見せたのも一瞬のこと。
リウトペルガ・ウィンニール:「だからね」
リウトペルガ・ウィンニール:彼女の胸の中を抜け出し、顔と顔とを見合わせる。
リウトペルガ・ウィンニール:その幼い美貌に浮かぶのは、蠱惑的な挑発の気色。
リウトペルガ・ウィンニール:「もっと、ドキドキさせてみてよ」
珊瑚夜:「ふふ……っ。リウったら……本当にいけないひとね」
珊瑚夜:その言葉に、どきりとするような美貌に、思惑通り乗せられ情欲の炎が燃え上がるのを感じる。
珊瑚夜:その細く白い首筋に手を這わせる。
珊瑚夜:「……リウ。私もどうしようもなく、幸せなのよ」
珊瑚夜:「あなたが……震える手で、私の手を取ってくれたこと」
珊瑚夜:「想いを感じて……返してくれること」
珊瑚夜:ロイス取得。リウトペルガ・ウィンニール/〇P:どうしようもなく幸せ/N:不安
珊瑚夜:「リウ……」
珊瑚夜:囁いて甘く唇に唇を重ねる。
珊瑚夜:数度小さく唇を吸うと、長い舌を潜り込ませ、口内を犯すように荒々しく舌を這わせる。
珊瑚夜:首元に当てた手に少しだけ力を込め、彼女の喉を圧迫する。
リウトペルガ・ウィンニール:「っ……ふ」
リウトペルガ・ウィンニール:唇に唇を塞がれ、舌に口内を蹂躙され。
リウトペルガ・ウィンニール:そして細い首へとかかった力に気道を狭められ、少し苦しげな息を吐く。
リウトペルガ・ウィンニール:もしそれを傍から見る者があれば、少女が凌辱に遭っていると見紛ってもおかしくはない光景。
リウトペルガ・ウィンニール:しかし、その"少女"の碧玉の双眸へ閃くのは、明らかな昂揚と陶酔だ。
珊瑚夜:手に込める力を強める。
珊瑚夜:熱に浮かされたように唾液を送り、夢中で彼女の舌を吸い、どちらのものともつかない唾液を飲み下す。
珊瑚夜:「……ん、はあ……」
珊瑚夜:一際強く首への力を強め圧迫すると、ふっとその力を弱め唇を離す。
珊瑚夜:「ふふ……可愛いわ、リウ……」
珊瑚夜:蹂躙された小さな彼女を見て、ぎらぎらと欲望の滾る瞳で見つめる。
珊瑚夜:「あなたの不安も恐怖も……全て快楽で、幸せで塗りつぶして忘れさせてあげるわ」
珊瑚夜:「大好きよ、リウ」
珊瑚夜:ロイス取得。リウトペルガ・ウィンニール/〇P:恋/N:覚悟 Sロイスに指定します。
リウトペルガ・ウィンニール:「けほっ、……ふふ」
リウトペルガ・ウィンニール:軽い咳をしながらも、小さく微笑む。
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクは臆病だから……そうなれるのか分からないけど」
リウトペルガ・ウィンニール:「でも、キミなら」
リウトペルガ・ウィンニール:「きっと──本当にしてくれるのかも知れないね」
リウトペルガ・ウィンニール:真珠が煌めくように、雪が舞い散るように──白のかんばせが、柔らかく笑む。
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクも──大好きだ。夜君」
リウトペルガ・ウィンニール:珊瑚夜へのロイス/P:恋/●N:罪悪感をPへ反転。
リウトペルガ・ウィンニール:また、珊瑚夜へのロイス「●P:どうしようもなく好き/N;どうしようもなく怖い」をSロイスに指定します。
珊瑚夜:「ええ……そうしてみせるわ」
珊瑚夜:嗜虐的に微笑むと、彼女の首に手を這わせたまま、その小さな身体に馬乗りになる。
珊瑚夜:興奮し蜜をしたたらせる己の秘所と彼女の秘所を密着させる。
珊瑚夜:「一緒に気持ち良くなりましょう?リウ……」
珊瑚夜:うっとりと囁くと首に宛てた手に力を込め、ゆっくりと腰を動かす。
珊瑚夜:脳を灼くような甘い香りが濃くなる。
珊瑚夜:珊瑚夜が好んで使わない『自分の気持ちを相手と共有する能力』の応用。
珊瑚夜:『想いの通った相手に己の快感を共有させる能力』。
珊瑚夜:リウトペルガと身体を重ねるようになって初めて使ったそれは、恐らくこの先も、彼女以外の相手に使うことはないのだろう。
珊瑚夜:「はあ、ん……っ、だって、私は……こんなにも幸せで、気持ちがいいのだから」
珊瑚夜:彼女の首を絞める力を強め、うっとりと囁く。
珊瑚夜:「あなたも一緒に、どこまでも堕ちてね」
綱井楪:「……」
綱井楪:水槽のガラスを抜ける青く揺らめく光が、薄暗い通路と、無表情の少女の顔を照らす。
綱井楪:綱井楪が顔を寄せるのは、“玻璃兎湾海底の住民たち”と題された水槽。
綱井楪:平たい砂地に擬態して動かない魚を、我慢比べでもするようにじっと凝視している。
早乙女六華:「楪」くいくいと袖を引っ張る。
早乙女六華:「あの大きいのは味噌で煮込むと美味いぞ」
早乙女六華:「そっちのは刺身がいいんだが、骨を取るのが手間だ。あまりお勧めできんな」
早乙女六華:「……何を見ていた?」同じ水槽を覗き込む。
綱井楪:「ん……」引かれるままに顔を上げる。見つめていた魚はその隙に泳ぎ去った。「あっ」
綱井楪:「……鰈か鮃だったと思うのだけど」
綱井楪:「逃げてしまったわ」
早乙女六華:「うん……あれは煮付けが美味いな」頷く。
綱井楪:「……六華が料理したことがあるの?」
早乙女六華:「釣ったのはわたしだがな」
早乙女六華:「……料理には向かん。大抵、その時に一緒に暮らしていた相手に捌いてもらっていた」
綱井楪:「ふうん……」相槌を打ちながら、何気ない風に身を寄せて腕を絡める。
綱井楪:「……なら、私が頑張る」
早乙女六華:「……ん」その顔を見上げる。
早乙女六華:「どうした?」
早乙女六華:料理など普段そんなにしないだろう、と問いかける。
綱井楪:黒々とした睫に囲われた目を伏せる。
綱井楪:「……もしかしたら」
綱井楪:「私のことが記憶から消えても、私が食べさせた料理のことは忘れないかもしれないし」
早乙女六華:「……」
早乙女六華:一瞬、きょとんとして。
早乙女六華:「……ふ……」
早乙女六華:「ふふっ……はは、ははは……!」
早乙女六華:珍しく、声を上げてくすくすと笑う。
綱井楪:「……何よ」
綱井楪:普段通りの無表情で、語調も坦々としているが。
綱井楪:見下ろす空色の瞳の奥に、拗ねたような色があるのを、早乙女六華ならば読み取れるかもしれない。
早乙女六華:「……そんなことを考えていたのか」
早乙女六華:絡ませた腕をくい、と動かして、手を繋ぐ──というより、指と指を絡め合う。
早乙女六華:「可愛い奴だな、お前は」
早乙女六華:悪戯っぽく目を細める。
綱井楪:「……不安にもなるわ」
綱井楪:再び目を逸らして。
綱井楪:「きっと、今度の戦いは、これまでの任務とは比べ物にならない激しさになるし──」
綱井楪:戦い自体もさることながら、不安要素は自身の力にもある。
綱井楪:伝承や噂を元にした存在に対して、星の透かし羽の毒は極めて有効だ。だが。
綱井楪:全力でそれを解放した時に、期待した通りの成果が得られるか。また、“反動”がどの程度か。
綱井楪:敵の強大さ以上に、それをこそ恐れている。
綱井楪:「──あなたがまた、ふらっと消えてしまうかもしれないし」
綱井楪:だからきっと、甘えたくもなる。
綱井楪:指に触れるつめたさを、より確かに握り締めて。
早乙女六華:「……」
早乙女六華:かつて、幼い楪をUGNに預け、六華は何も言わずに姿を消した。
早乙女六華:「……恨んでいるか?あの時のこと」
綱井楪:ゆるゆると首を振る。
綱井楪:「恨んではいないわ。ちゃんと覚えていてくれたもの」
綱井楪:「それよりも怖い。朝になって目が覚めて、あなたが隣にいなかったらどうしようって」
早乙女六華:「……そうか」
早乙女六華:楪に身を寄せ、寄りかかるようにして。
早乙女六華:「あの時、わたしはお前の傍に居てはいけないと思った」
早乙女六華:「わたしは結局、人ではないからな。何も知らない子供の傍にいれば、きっとお前が人の中で生きづらくなると思った」
綱井楪:じっと耳を傾けている。
早乙女六華:「……わたしは、居なくならないよ」
早乙女六華:かつて幼い楪に語り掛けたのと同じ声で、言葉を紡ぐ。
早乙女六華:「お前が死ぬまで、ずっと傍にいる」
早乙女六華:「そしてお前を、ずっと覚えている」
早乙女六華:「たとえ忘れても──」
早乙女六華:結んだままの掌を、自分の胸元に持っていき。
早乙女六華:「もう一度、何度だって、お前に出会うよ」
早乙女六華:「だから、お前も……」
早乙女六華:そこで、言葉は途切れる。
早乙女六華:だから、お前も──
早乙女六華:──わたしの前から、居なくならないでくれ。
早乙女六華:これまで幾度、幾人に口にして、一度たりとも果たされたことのないその言葉を。
早乙女六華:再び口にすることが、どうしても出来なかった。
早乙女六華:繋いだ掌の、身体の温もりを。今この瞬間を、必死に自分に刻み込む。
早乙女六華:だがそれも、いずれ儚く消え行くものなのだろうか。
早乙女六華:ただの、淡い雪のように。
早乙女六華:人も物も、何もかもが形を変え、消えゆく中で────
早乙女六華:わたしだけが、幾度季節を巡っても、溶けずに凍り付いている。
早乙女六華:「……」
早乙女六華:ぐ、と、込み上げてくる何かを堪える。或いはそれは、涙だったかもしれない。
早乙女六華:「……楪」
早乙女六華:「好きだ」
早乙女六華:小さく零すように、消え入りそうな声で言う。
綱井楪:「……六華」
綱井楪:空いている腕を彼女の背に回し、抱き締める。
綱井楪:水槽からの光は絶えず揺らめき、二人の少女の輪郭を定めることがなく、二度同じかたちを取ることもない。
綱井楪:「好きよ」
綱井楪:「私も好き」
綱井楪:「……いっそ私も、あなたのような生まれならよかった」
綱井楪:「あなたが雪なら。私も共に在れる北風か何かであって」
綱井楪:「どこまでも、あなたを運んでいけたら」
綱井楪:「……でも」
綱井楪:「それだと、あなたを凍えさせてしまうかしら」
早乙女六華:「……うん」
早乙女六華:腕の中から抱き締め返す。ぎゅう、と、小さな腕で一杯に。
早乙女六華:彼女との間を隔てる隙間など、無くなってしまえばいいと思った。
早乙女六華:「……わたしは」
早乙女六華:「わたしと一緒にいてくれる、今のお前のあたたかさが好きだよ」
早乙女六華:「でも」
早乙女六華:「楪と一緒なら、凍えて、ただの雪になったって構わない」
綱井楪:「……儘ならないわね」
綱井楪:艶やかな黒髪を手櫛で梳く。
綱井楪:「そんなことはしたくないもの」
綱井楪:「私だって、今のあなたが好き」
綱井楪:「小さくて、とぼけていて、きれいで」
綱井楪:「つめたくて、でも優しくて。……世界にはまだまだ知らないものがあるって教えてくれる」
綱井楪:「自分がこんな風に思うことがあるなんて、あなたと再会するまで考えなかった」
綱井楪:強く抱き直す。布と肉の隔たりを抜けて、胸の奥の熱く確かな鼓動を伝えようとするみたいに。
早乙女六華:「……楪」
早乙女六華:その鼓動を感じて、目を閉じる。
早乙女六華:熱を持った脈動。血の通い息づく、人間の肉体。
早乙女六華:それに重なるように、自分自身の体温を、鼓動を、強く自覚する。
早乙女六華:──生きている。
早乙女六華:「わたしの楪」
早乙女六華:「お前と、もう一度会えるとは……思っていなかった」
早乙女六華:「あの日」
早乙女六華:「わたしに見つけられてくれて……ありがとう」
早乙女六華:一人ぼっちで佇んでいた、あの日の彼女を思い出す。
早乙女六華:「……あの日」
早乙女六華:学園で再開し、声を掛けてきたあの日の彼女を思い出す。
早乙女六華:「わたしを見つけてくれて、ありがとう」
早乙女六華:ロイス感情公開 綱井楪 愛情/○『秘匿』
早乙女六華:秘匿>恐怖
早乙女六華:ロイス取得 綱井楪 ○感謝/喪失
綱井楪:「ええ。……わたしの六華」
綱井楪:頬擦りでもする風に、緑なす黒髪に顔を寄せて。
綱井楪:「私は」
綱井楪:「……いつまでも。あなたと一緒よ」
綱井楪:それがいくら、儚い言葉であっても。
綱井楪:いずれ覚めてしまう、うたかたの夢だとしても。
綱井楪:「私はここにいる」
綱井楪:「綱井楪は、あなたがいなければここにいないのだもの」
綱井楪:「始まりから、ずっと。いつか終わりを迎えても」
綱井楪:「あなたのものであるのに決まっているわ」
綱井楪:そうして、小さな頭に手を添えて上向かせ。
綱井楪:誓いの印に、唇を捧げた。
綱井楪:ロイス取得 早乙女六華 ○懐郷/泡沫
綱井楪:これをSロイスに指定します。
珊瑚夜:「♪満月の夜 ずっと明けないで 狼を待っているの♪」立ち上がって朗々と歌っている。
銀波 嵐:銀波嵐は、手渡されたタンバリンを手に地蔵のように沈黙していた。
銀波 嵐:「……」
珊瑚夜:「♪甘いチョコレートには ミントの寂しさが必要 そうでしょう♪」お腹の底から声が出ている。甘い香りが漂う。
早乙女六華:歌に合わせ、無表情でタンバリンを叩いている。
早乙女六華:「どうした嵐……」
銀波 嵐:「どうした……って」
銀波 嵐:「(どうすんだよ)」
早乙女六華:「そうか……使い方が分からんのか」
早乙女六華:「こうやって……叩くんだぞ」
早乙女六華:シャンシャンとタンバリンを鳴らす。
銀波 嵐:「いや全然合ってないだろ、いいのかよそれで……」
綱井楪:もそもそとフライドポテトを食べている。
リウトペルガ・ウィンニール:「いいのさ。何もコンクールじゃないんだからね」
銀波 嵐:おそるおそる叩く。
銀波 嵐:シャン、と音が鳴る。
銀波 嵐:「鳴るな……」
珊瑚夜:「『そうよ!!上手だわ、嵐さん!!』」マイクを通したまま嬉しそうに喋る。
銀波 嵐:「……」
早乙女六華:「うん、上手いぞ嵐」
銀波 嵐:「う、上手いも何もあるかよ……」
早乙女六華:「みんなも褒めてやってくれ」
リウトペルガ・ウィンニール:「上手いとも! ボクも負けてられないね!」
リウトペルガ・ウィンニール:負けじとタンバリンをシャンシャン鳴らす。
綱井楪:「そうね。上手よ、嵐」
銀波 嵐:「何だよそのフリ!い、いいから歌えばいいじゃねえか!!」
銀波 嵐:なぜ歌っている珊瑚夜ではなく自分の方を見るのだ。
銀波 嵐:背中に原因不明の汗が流れる。
早乙女六華:「ふむ、次は誰だ?」
珊瑚夜:「もうっ、みんな遠慮しているの?私ばかり歌うのじゃなくみんなの歌も聞きたいわ!」
珊瑚夜:歌い終わって楽しそうにマイクを置いて席に座る。ウキウキとマラカスを装備。
銀波 嵐:「誰も入れてねえじゃねえか」
銀波 嵐:入力待機画面が流行りのポップソングのPVを流すのをぼんやりと眺める。
綱井楪:「ふむ」他人事のようにまたポテトを食べる。
リウトペルガ・ウィンニール:「どうしようかな。誰か歌うかい?」
銀波 嵐:「……」(聞こえませんでした、という顔でソーダ水をすする)
早乙女六華:「流行りの曲でも知らんのか、リウトペルガ」
リウトペルガ・ウィンニール:「流行の曲は一番最初にやったじゃん」
リウトペルガ・ウィンニール:「ほら、深夜に突然アポイントメントを求める通知が来るやつ」
リウトペルガ・ウィンニール:「うーん、じゃあ……流行りとかじゃないけど、一曲入れようかな」
リウトペルガ・ウィンニール:そう言って、手元のデンモクを弄る。
早乙女六華:「いいぞいいぞ」おざなりにタンバリンを鳴らす
珊瑚夜:「ええ!歌ってほしいわ!リウトペルガの歌は大好きよ」嬉しそうに声を弾ませる。
リウトペルガ・ウィンニール:選曲が完了し、やがてスピーカーから伴奏が流れ出す。
リウトペルガ・ウィンニール:少し昔じみた、どこか寂しげな響きを帯びたその旋律に、銀波嵐だけは覚えがあるだろう。
銀波 嵐:「(ああ……これは)」
リウトペルガ・ウィンニール:それは、彼女がリウトペルガに渡された、MP3プレイヤーの中の一曲。
リウトペルガ・ウィンニール:
《Det här är min hemstadssång》
『これは私の故郷の歌』
リウトペルガ・ウィンニール:
《En såhär-är-det-hemma-sång》
『そして私の家の歌』
リウトペルガ・ウィンニール:
《Sitta här ensam igen》
《ひとりっきりきりで過ごすときや》
リウトペルガ・ウィンニール:
《Vänta på telefonen》
《ずっと電話を待っているときのための歌》
リウトペルガ・ウィンニール:透き通った柔らかな声が、外国語の歌詞を歌い上げる。
リウトペルガ・ウィンニール:
《Svårt att säga "kom närmre"》
『"こっちに来て"とは言いにくい』
リウトペルガ・ウィンニール:
《När du är så långt bort och》
『あなたが遠くにいるときは』
リウトペルガ・ウィンニール:
《Ibland är det svårt att minnas om》
『ときには忘れることもある』
リウトペルガ・ウィンニール:
《Imorgon är lika nära som igår》
『明日は昨日と同じくらい近くにあるって』
リウトペルガ・ウィンニール:その歌を唄いながら──己の胸に、ふと閃くものがある。
リウトペルガ・ウィンニール:
《Jag har aldrig vart en som är själv》
『一人きりになったことはない』
リウトペルガ・ウィンニール:
《I alla fall har jag aldrig velat va det》
『少なくとも望んだことはない』
リウトペルガ・ウィンニール:
《Så vad du än gör – minns det här》
『だから、これだけは覚えていて』
リウトペルガ・ウィンニール:
《Mitt hem är där mitt hjärta är och》
『私の家は私の心のありか、そして』
リウトペルガ・ウィンニール:少し前に『覚悟』するまで、自分はずっと、"凪"の償いのために彼女へ接していたのだと思っていた。
リウトペルガ・ウィンニール:(これはムシのいい考えかも知れないけど──)
リウトペルガ・ウィンニール:それでも、もしかすると。
リウトペルガ・ウィンニール:この曲の入ったプレイヤーを渡したときにはもう──
リウトペルガ・ウィンニール:
《Det här är min hemstad》
『ここが私のふるさと』
リウトペルガ・ウィンニール:"嵐"が生きてることを、知っていたのかも知れない。
銀波 嵐:嵐の"写真記憶"は、映像に特化した能力だ
銀波 嵐:リウトペルガの歌声は、いずれ己の中から失われてしまうだろう。
銀波 嵐:それまで生きてられるのか、ということは些細なことだ、その事実が、ただ寂しい。
銀波 嵐:「(いつだったかセンセは、忘れてしまうことが怖いって言っていた)」
銀波 嵐:ああ、これか。
銀波 嵐:悠久を生きる彼女と比べたら、自分のこれは本当にちっぽけなものだろう。
銀波 嵐:しかし知った。知ることが出来た。
銀波 嵐:自分の中に、凪以外の誰かがいる。そしてそれはだんだんと増えていく。
銀波 嵐:ああ、これが"普通"なのか。当たり前のことなのか。
銀波 嵐:皆を、おそろしく思う。勇気のある奴らだ。
リウトペルガ・ウィンニール:
《Det här är min hemstad》
《Det här är min hemstad》
《Det här är min hemstad──……》
リウトペルガ・ウィンニール:長く伸びるソプラノが、空気の中へとけてゆく。
リウトペルガ・ウィンニール:それとともに後奏が終わり──再び、ディスプレイが元のPVへと戻る。
綱井楪:「……」
綱井楪:パシャリ。
綱井楪:歌い終えたリウトペルガの姿を、水色のトイカメラで撮影し。
綱井楪:それから、ぱちぱちと拍手をする。
早乙女六華:ぺちぺちと拍手を重ねる。
珊瑚夜:「綺麗な曲ね」微笑んでこちらも拍手。
リウトペルガ・ウィンニール:「……ふう。なんかちょっと、真面目に歌っちゃったな」どこか照れ臭そうに笑いながら、マイクを置く。
銀波 嵐:手を、鳴らす。握られたタンバリンが気の抜けた音をシャンシャンと。
銀波 嵐:皆を、ねたましく思う。自分も、もっとそれが欲しい。
綱井楪:「素敵な声でした」
早乙女六華:「うむ……よかったぞ」
珊瑚夜:「ふふっ、そうでしょう!」何故か誇らしげにしている。
リウトペルガ・ウィンニール:「うふ。ありがとう」
綱井楪:「いま撮った写真いる? 夜」
珊瑚夜:「まあ、いいのかしら!綱井さんがいいのなら欲しいわ!」
銀波 嵐:皆を眺める。ばかな連中、底抜けのお人好し揃い。
銀波 嵐:きっと嵐が望めば彼女たちは好きなだけそれを与えてくれるだろう。
銀波 嵐:それはとてもすばらしくて、こわいことなのだ。
銀波 嵐:覚えていようと思った。
銀波 嵐:この時を、皆の歌声を。
銀波 嵐:フィルムにも、画像データにも残らぬそれを。
綱井楪:「ええ。じゃあ──」
綱井楪:「……どうすればいいのかしら。嵐」
綱井楪:急にそちらを振り向いて尋ねる。
銀波 嵐:「……そいつは、デジタルだから」
銀波 嵐:「有線でスマホかPCに繋げば出力できるはずだ」
綱井楪:「そうなんだ……」改めてしげしげと手の中のカメラを見つめて。
綱井楪:「よく知っているわね」
銀波 嵐:「いや……別に、それくらい……」モゴモゴと
早乙女六華:「次は嵐が歌ってみるか?」マイクを差し出す。
銀波 嵐:「いや……俺は歌とかぜんぜん知らないし……」
銀波 嵐:「そもそも歌ったこととか、ないし」
早乙女六華:「……」じっと嵐の目を覗き込む。
銀波 嵐:「……ん……だよ」ややのけぞりつつ。
早乙女六華:「歌いたくないか?」
早乙女六華:「無理にとは言わないが」ぐいぐいとマイクを押し付ける「無理にとは……」
銀波 嵐:「だっだから、わ、わから……ねぇんだって」
銀波 嵐:ずりずりと後退。
銀波 嵐:ついには綱井楪を盾にその影へと隠れてしまう。
リウトペルガ・ウィンニール:「じゃあ、一緒に歌ったらどうだい」
早乙女六華:「一緒に?」
銀波 嵐:「い、一緒にィ?」情けない声で
リウトペルガ・ウィンニール:「そうさ。デュエットってやつ」
珊瑚夜:「あら!いいわね、一緒に歌うのはとっても楽しいわ」手を合わせてニコニコしている。
綱井楪:「……」よしよしと嵐の頭を撫でる。
リウトペルガ・ウィンニール:「知らない曲でも、相手について歌えばなんとなく分かるでしょ?」
早乙女六華:「ふむ……歌うか?嵐」
銀波 嵐:「……知らんぞ、最後までだんまりでも」
銀波 嵐:こわごわと、マイクを受け取る。
早乙女六華:「よし……わたしが流行りの曲というものを見せてやる」
早乙女六華:デンモクをぽちぽちと覚束なく操作し、マイクを両手で握る。
早乙女六華:流れ出すのは冬の流行歌──30年ほど前の。
早乙女六華:溌溂とした表情で、元気よく可愛らしく歌いはじめる。
早乙女六華:「────♪」
綱井楪:「…………」
綱井楪:パシャリ。パシャリ。パシャリ。
綱井楪:無言でひたすらシャッターを切っている。
銀波 嵐:「……」不安そうな顔で、ただ歌う六華を観察している。
珊瑚夜:にこにことマラカスを振って聞いている。
早乙女六華:黒髪を翻し、フリまでつけてアイドルめいて歌い上げて。
早乙女六華:一番のサビが終わった間奏で、くい、と嵐を手招きする。
銀波 嵐:「ッ」観念したように。
銀波 嵐:"写真記憶"で覚えている。
銀波 嵐:喉の蠕動、呼吸、そのタイミング。足の運び。
銀波 嵐:ノイマンシンドロームの神経ネットワークが全てを補佐する。メロディラインの分析は済んでいる。
銀波 嵐:歌い出す。
早乙女六華:「……」にこり、と更に笑みを深めて、歌声を重ねる。
銀波 嵐:やや掠れた低音の、普段じゃ出すことのない裏声で。
銀波 嵐:振り付け、その笑顔すらそのままに。
銀波 嵐:しだいに、余裕が生まれる。
銀波 嵐:考える余裕。ああ―楽しいのか今。
銀波 嵐:いつの間にかその笑顔は、ただのコピーではなく。
綱井楪:……パシャリ。
綱井楪:二人揃っての姿と、嵐単体で、それぞれ別に追加で撮る。
リウトペルガ・ウィンニール: その歌声と笑顔に笑いを返し、楽しげにタンバリンを鳴らす。
銀波 嵐:自分にこの先何が待ち受けているのか。
銀波 嵐:何があっても、今、この瞬間があればいいと思った。
銀波 嵐:――だのに。
銀波 嵐:「(ああ、俺は我侭だ)」
銀波 嵐:歌い終わった嵐が、そのままマイクを握り、こう言う。
銀波 嵐:「皆に……頼みがある」
銀波 嵐:「俺は、凪にひと泡吹かせてやりたい……」
【Climax】
GM:全員登場です。
珊瑚夜:珊瑚夜の侵蝕率を1d10(→ 8)増加 (93 → 101)
綱井楪:綱井楪の侵蝕率を1d10(→ 9)増加 (69 → 78)
銀波 嵐:1d10+81
DoubleCross : (1D10+81) → 9[9]+81 → 90
早乙女六華:1D10+82
DoubleCross : (1D10+82) → 7[7]+82 → 89
リウトペルガ・ウィンニール:リウトペルガ・ウィンニールの侵蝕率を1d10(→ 5)増加 (73 → 78)
珊瑚夜:リザレクトできないわね……死んだらリウトペルガのロイスきらないと
珊瑚夜:6つあるけど……
銀波 嵐:もうちょっとで猫になれるじゃん
星宮学園屋上
GM:1月15日、深夜。
GM:日付が変わり、時刻は深夜2時。
GM:肌を刺すような真冬の夜風が吹き抜ける。
GM:静まり返り、君達の他には動くもののない屋上に、
GM:ぽつり、ぽつりと蒼白の炎……鬼火が灯っていく。
GM:鬼火は次々に様々な形を成していく。巨大な骸骨、無数の腕を持つ異形、首の長い女……数えきれない怪異の群れ。
GM:そこに、女の声が響く。
“ベイルファイア”:「あらあら……」
“ベイルファイア”:「皆揃ってお出迎えだなんて、嬉しいわ。感激してしまうわね」
“ベイルファイア”:虚空から現れ、夜闇に溶け込むような傘を広げ、ふわりと屋上へ降り立つ。
銀波 嵐:「よう、ミス富士急ハイランド。ようやく逃げ回るのを止めてくれて嬉しいぜ」
珊瑚夜:(……富士急ハイランド???……お化け屋敷だから……?)
“ベイルファイア”:「ええ、もう準備は整ったもの」
“ベイルファイア”:「前に言った通り、今日で人の世は終わる。お別れはもう済ませてきた?」
“ベイルファイア”:「これからの人間は、怪異を生み出すただの燃料に過ぎない」
銀波 嵐:「そんで、その麗しい新世界でオタクらは何をするってわけ?墓場で運動会か?」
“ベイルファイア”:「……何をする、ですって?」
“ベイルファイア”:「くだらない質問ね。実に想像力に欠けた、人間らしい言葉」
“ベイルファイア”:「生きるのよ」
珊瑚夜:「……今もあなたは、生きていると思うけれど?」
“ベイルファイア”:「いいえ。堂々と、ただ『普通に』暮らす」
“ベイルファイア”:「私達が異端として虐げられ、隠れ済まなきゃならない世界はもう終わり」
“ベイルファイア”:「これからは、私達は私達のまま生きるのよ」
早乙女六華:「……」
銀波 嵐:「ふーん」
銀波 嵐:「『普通』ってのも案外しんどいぜ、大丈夫かよ」
“ベイルファイア”:「普通でいられないのは、もっと辛いわ」
“ベイルファイア”:「早乙女さんやウィンニールさんでなくとも──」
“ベイルファイア”:「オーヴァードなら、少しは理解できると思うけれど?」
リウトペルガ・ウィンニール:「なんだい、人の世を滅ぼすなんて言って」
リウトペルガ・ウィンニール:「人も滅ぼさなきゃ世も滅ぼさない。単に居場所を作りたいだけじゃない」
リウトペルガ・ウィンニール:「それ自体は悪いことじゃあない。本当にね」
“ベイルファイア”:「……そうよ」
“ベイルファイア”:「あなたにも分からないとは言わせないわよ、リウトペルガ・ウィンニール」
“ベイルファイア”:「千年を生きる魔女。人の中で生きるのはさぞ窮屈な事でしょう?」
リウトペルガ・ウィンニール:「うーん、それがねぇ」
リウトペルガ・ウィンニール:「悪いんだけど、全然わかんないんだよね」
“ベイルファイア”:「……何ですって?」眉を顰める。
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクがこの体質になって、いろいろ困ったり怖がったりしてるのは確かだけど」
リウトペルガ・ウィンニール:「それは世の中がどう変わったところで、大して治る気はしないんだよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクの生きにくさは、世の中なんかに左右されない」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクがボクである限り、ずっと続くのさ。多分ね」
リウトペルガ・ウィンニール:「──いや」
リウトペルガ・ウィンニール:ちら、と傍らに立つ四人の方を眺める。……そして、その中の珊瑚夜の顔を。
リウトペルガ・ウィンニール:「もしかしたら……それすら確かじゃないのかも」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミの言う『人の中の生』だけが──」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクの生きにくさを破ってくれるかも知れない。もしかしたら、だけどね」
“ベイルファイア”:「……ッ……!」
早乙女六華:「同感だな」
早乙女六華:「お前の言うことはまるで分からん」
早乙女六華:「わたしは今すごく楽しいし、幸福だ」
早乙女六華:「毎日食事をし、色んなものを見て、遊び、眠る」
早乙女六華:「……好きな相手もいる」
早乙女六華:ほんの僅かに、四人の内の一人に目を向けて。
綱井楪:「……」
早乙女六華:「わたしの幸福を、邪魔させてたまるか」
“ベイルファイア”:「……何で……どうして、分からないの……!何で……!」
綱井楪:「……あなたたちのことは好きよ」
綱井楪:「それは一方的な憧れでもあるし、一部は実際に接して親しくなれたからでもある」
綱井楪:場に居並ぶ怪異たち。リウトペルガ・ウィンニール。──早乙女六華。
綱井楪:彼らをぐるりと見渡して。
綱井楪:「……その上で」
綱井楪:「オーヴァードだからこそ、そんなことはさせない」
綱井楪:「窮屈なのは嫌。いないもののように生きるのは辛い。確かにそうでしょう」
綱井楪:「だから私たちは、既にある人の世界に寄り添うことで居場所を作ろうとしている」
綱井楪:「あなたの強硬なやりかたと相容れるものではないわ」
綱井楪:淡々とそう告げる。
“ベイルファイア”:「…………!」ぎり、と歯を軋ませて、敵意の視線を向ける。
珊瑚夜:「ふふっ、ええ、ええ!そうよ!」心底嬉しそうに笑うと、甘い香りが漂う。
珊瑚夜:「"ベイルファイア"、あなたは早乙女さんよりもリウトペルガよりも永く生きていて、あなたの生きづらさを人間のせいにするばかりで過ごしてきたの?」
珊瑚夜:「可哀相な人ね……そう信じてきたのに、実際は違ったって、今二人にも否定されたことからもわかるでしょう?」
珊瑚夜:「申し訳ないけれど……あなたが可哀相でもその手はとれないわ。私の手はもう、ひとりの為に塞がっているの」
珊瑚夜:「その人は苦しんでも、誰かを傷つけてその苦しみを和らげようとはしなかったわ。貴女と違って」
珊瑚夜:「それに……私はオーヴァードだけれど、ちっとも辛くなんてないわ」
珊瑚夜:「誰かと違うのなんて当然でしょう!違うのかしら!」楽しそうに笑う。
“ベイルファイア”:「黙れッ……!」
“ベイルファイア”:「黙れ、黙れ、黙りなさい…………!!」
“ベイルファイア”:"ベイルファイア"の両腕に、超自然の炎が宿る。
“ベイルファイア”:憎悪を薪としたかのような、煌々と燃え上がる紅の炎。
銀波 嵐:「煽りすぎじゃね―か、真っ赤になってんぞアレ」
銀波 嵐:「なんかごめんな?でもホラ、俺も仕事だからさ」
銀波 嵐:「オタクにゃここ最近ずっと煮え湯を飲まされてきたわけだけど」
銀波 嵐:「別に考えそのものにどうこう言うつもりはねぇよ、好きにすりゃ良い、邪魔するけどな」
銀波 嵐:「フィルムが、いっぱいになっちまったからな、現像しないと」
銀波 嵐:「写真屋が潰れちまうのは困る」
銀波 嵐:サラサラと、袖口から黒砂なこぼれ落ちる。
銀波 嵐:「やろっか、オタクも待ちきれねえだろ?」
“ベイルファイア”:「生まれたばかりの、小娘共……!」
“ベイルファイア”:「その脆弱な人生も、価値観も……何もかも!」
“ベイルファイア”:「新しい世界に焼べる、薪にしてやる……!」
銀波 嵐:「ハッ、俺ァ2歳だぜ。そうマジになんなよ」ケラケラと笑う。
“ベイルファイア”:「光栄に思いなさい!人間!!」
“ベイルファイア”:炎と共に、無数の怪異が襲い掛かる。
“ベイルファイア”:彼岸が溢れ出したかのような、怪異たちの群れ。
“ベイルファイア”:その異様な光景こそ、まさしく"ベイルファイア"が作ろうとしている世界の縮図。
“ベイルファイア”:例えて百鬼夜行。あるいは──ヴァルプルギスの夜。
GM:クライマックス戦闘を開始します。
エンゲージ []内は行動値
ベイルファイア[9]セイレーン[6]
(10m)
ゾンビ×4[5] (5m) 綱井[8]珊瑚[8]銀波[7]リウトペルガ[7]早乙女[6] (5m) がしゃどくろ[7]
GM:かつて世界が未知の怪異に溢れていた時代、神代のレネゲイドの末裔。"ベイルファイア"のワーディングが君達のレネゲイドを震わせる。
GM:衝動判定、難易度9です。また、
“ベイルファイア”:≪Eロイス:衝動侵蝕≫
“ベイルファイア”:この判定に失敗した場合、放心のバッドステータスを受けます。
珊瑚夜:7dx+1>=9
DoubleCross : (7DX10+1>=9) → 9[1,2,2,3,6,8,9]+1 → 10 → 成功
珊瑚夜:2d10
DoubleCross : (2D10) → 13[10,3] → 13
珊瑚夜:珊瑚夜の侵蝕率を13増加 (101 → 114)
綱井楪:4dx+5>=9
DoubleCross : (4DX10+5>=9) → 10[4,8,10,10]+9[8,9]+5 → 24 → 成功
綱井楪:78+2d10
DoubleCross : (78+2D10) → 78+10[4,6] → 88
早乙女六華:7DX+1>=9
DoubleCross : (7DX10+1>=9) → 6[1,2,2,3,4,6,6]+1 → 7 → 失敗
早乙女六華:そんな…………
綱井楪:六華ーッ
早乙女六華:89+2D10
DoubleCross : (89+2D10) → 89+15[10,5] → 104
銀波 嵐:3dx
DoubleCross : (3DX10) → 10[1,3,10]+3[3] → 13
銀波 嵐:90+2d10
DoubleCross : (90+2D10) → 90+18[10,8] → 108
リウトペルガ・ウィンニール:先にジェネシフト、1dで
リウトペルガ・ウィンニール:リウトペルガ・ウィンニールの侵蝕率を1d10(→ 4)増加 (78 → 82)
リウトペルガ・ウィンニール:ちょうどいい感じ
リウトペルガ・ウィンニール:(3+2+1)dx+2>=9 〈意志〉
DoubleCross : (6DX10+2>=9) → 10[1,2,5,7,8,10]+9[9]+2 → 21 → 成功
リウトペルガ・ウィンニール:リウトペルガ・ウィンニールの侵蝕率を2d10(→ 7)増加 (82 → 89)
GM:ラウンド1、セットアップから!
綱井楪:なし!
珊瑚夜:セットアップ、≪加速装置≫行動値8→12、侵蝕+2
珊瑚夜:またオートアクション、カンパニーのサウンドチーム発動、シーン中の全員の達成値を+2。
珊瑚夜:珊瑚夜の侵蝕率を2増加 (114 → 116)
セイレーン:≪赤方偏移世界≫ ベイルファイアの行動値9>13
珊瑚夜:ぬ、ぬかされた……
銀波 嵐:なし
リウトペルガ・ウィンニール:なし!
早乙女六華:≪先陣の火≫行動値6>16
早乙女六華:夜を越えてしまった……
珊瑚夜:あっ!?そうだレベルあがってるんだ
珊瑚夜:行動地16です!
早乙女六華:よかった
早乙女六華:二人で夜に駆け出して行こうな
珊瑚夜:盗んだバイクで走り出しましょう
早乙女六華:侵蝕104>106
GM:ではイニシアチブ、行動値16.珊瑚さん、早乙女さんの手番です
珊瑚夜:先に行かせてもらうわね!
早乙女六華:がんばれ
珊瑚夜:マイナーなし、メジャーで≪原初の赤:アドヴァイス≫≪弱点看破≫≪混色の反乱≫侵蝕+11 対象は味方PC全員
珊瑚夜:5dx+2
DoubleCross : (5DX10+2) → 5[1,2,3,4,5]+2 → 7
珊瑚夜:判定ダイス+6個攻撃力+12C値-1(下限6)、また最初に言った通りサウンドチームで達成値+2を全員に!
珊瑚夜:珊瑚夜の侵蝕率を11増加 (116 → 127)
GM:つよ……
綱井楪:わあい
GM:演出どうぞ!
珊瑚夜:頭の芯が冴えわたるようなミントの香りが辺りに漂う。
珊瑚夜:珊瑚夜の感情に呼応して性質を変えるその匂いは、大抵「楽しい・嬉しい」の感情を表す甘い香りを漂わせている。
珊瑚夜:しかし長らくこの能力と付き合ううちに、「その感情」でない香りを出すことも可能になり、
珊瑚夜:楽しく笑っているように見えるけれど悲しいときでも甘い香りを、
珊瑚夜:辛いときでも困ったような笑顔で甘い香りを、
珊瑚夜:苦しいときでも静かに笑って甘い香りを、
珊瑚夜:その花の舞うような匂いを漂わせ、胸の内を隠し笑っている。
珊瑚夜:ということはない。
珊瑚夜:珊瑚夜はいつでも楽しくて嬉しくて笑っている。
珊瑚夜:自分の感情を誤魔化すことも可能なのかもしれないが、その必要はないと思っている。
珊瑚夜:世界はとても美しい。
珊瑚夜:美しい世界に居るだけで幸せだ。
珊瑚夜:春は小鳥が歌い、夏はそよ風の涼しさを感じ、秋は実りの豊かさに人々が湧き、冬は希望を秘めた雪が美しく舞う。
珊瑚夜:「思春期の特徴に、空の青さに感動を覚える、……という項目があると聞いたことがあるの」
珊瑚夜:「私が、空が青くて綺麗だと思うのは、道端の花を美しいと心打たれるのは、白く積もる雪に魅入られるのは……、私が幼いからなのかしら?」
珊瑚夜:「"ベイルファイア"。永い時を生きるあなたにとって、世界はどう見えているのかしら。美しい?それとも……、見飽きたつまらないものなのかしら」
珊瑚夜:誰かにとってはつまらない世界でも、
珊瑚夜:私にとっては美しい。
珊瑚夜:この世界には、愛おしい人が生きている。
珊瑚夜:苦しみながらも再び手を取ってくれた何より大切な白く美しい恋人が、
珊瑚夜:飄々とした態度の中に寂しさと優しさを宿した友人が、
珊瑚夜:儚さの中に人に寄り添う温かさを秘めた愛すべき雪の精が、
珊瑚夜:……この美しい世界を知って、歩き始めたばかりの大切な後輩が。
珊瑚夜:あるいは、美しすぎるから羨ましくて、奪いたいのだと思われたとしても。
珊瑚夜:譲れないほど、この美しい世界を愛している。
珊瑚夜:だから、心を貸してほしい。
珊瑚夜:私の大切な人たちも、きっと、同じ想いでいるはずだから。
珊瑚夜:気持ちを風に乗せ、託した。
“ベイルファイア”:「……どれだけ美しかろうと、私にとっては奪われたままの世界よ」
“ベイルファイア”:「だから取り戻す……それだけのことよ」
“ベイルファイア”:指揮者のように腕を振るう。指示を受け、屋上から怪異たちが一斉に街に散っていこうとする。
GM:同じく行動値16、早乙女さんの手番です
早乙女六華:マイナー≪オリジン:レジェンド≫
早乙女六華:侵蝕106>108
早乙女六華:いや、≪氷の回廊≫も使って戦闘移動、3m後ろに 侵蝕109
早乙女六華:メジャーでコンボ【リェジェノイドム】
早乙女六華:≪コンセントレイト:ウロボロス≫+≪原初の赤:氷の塔≫+≪プラズマカノン≫+≪原初の黒:オーバードーズ≫+≪原初の白:スターダストレイン≫
早乙女六華:Dロイス≪超侵蝕≫を使用
早乙女六華:敵全員に攻撃
早乙女六華:14DX6+17
DoubleCross : (14DX6+17) → 10[1,1,2,3,3,3,4,5,6,6,6,8,10,10]+10[2,3,3,4,9,10]+10[2,10]+10[6]+2[2]+17 → 59
ゾンビ:≪イベイジョン≫で命中
セイレーン:ガード≪グラビティガード≫
がしゃどくろ:ガード≪自動触手≫ 15点ダメージ
GM:早乙女六華のHPを15に変更 (30 → 15)
“ベイルファイア”:≪領域の盾≫
“ベイルファイア”:セイレーンにカバーさせます
GM:ゾンビ34は12を行動放棄カバーします
早乙女六華:ダメージ
早乙女六華:6D10+64+12
DoubleCross : (6D10+64+12) → 41[10,1,7,8,6,9]+64+12 → 117
GM:バカかこいつ
銀波 嵐:わぁ
珊瑚夜:これが全体攻撃なの悪夢かなにか?
リウトペルガ・ウィンニール:ヤバすぎる
綱井楪:あなたのキャラですよ
リウトペルガ・ウィンニール:破壊の化身じゃん
セイレーン:117-8D10
DoubleCross : (117-8D10) → 117-56[1,9,8,7,6,10,5,10] → 61
セイレーン:122点受けて、何とか生きてます
ゾンビ:ゾンビはカバーされた1と2が生存
がしゃどくろ:まだ生存
“ベイルファイア”:カバーされて無傷
早乙女六華:「……嵐、楪」
早乙女六華:二人にぽつりと口を開く。
早乙女六華:「手を……繋いでくれないか」
綱井楪:「……ええ」
綱井楪:頷き、その片手を取って握る。
銀波 嵐:「なんだよ、寒いのか?こんな時に」からかうような口調で、それでもしっかりと。
銀波 嵐:もう片方の手を、取る。
早乙女六華:「……ありがとう」
早乙女六華:頷き、小さく笑むと同時。
早乙女六華:その身体から、一切の熱が消えていく。
早乙女六華:周囲に白雪がふわりと舞ったかと思うと、それは見る間に壮絶な吹雪へと変わっていく。
早乙女六華:埒外の凍結現象。クレバスが裂けるような音。大気が、夜空そのものが悲鳴を上げている。
早乙女六華:黒髪は次第に色を無くし、新雪のような純白へと。
早乙女六華:ただその紅の瞳だけが、猛吹雪の中で敵を見据えている。
早乙女六華:一寸先も見えぬ白の帳に鎖されても、六華の仲間だけは凍えることはない。繋いだその掌には、僅かに熱が残っている。
早乙女六華:既に覚えたからだ。彼女たちのその温もりは。
早乙女六華:そして決して、忘れることはない。
“ベイルファイア”:「まずい……!」炎を振るい、雪を打ち払おうとするが。
早乙女六華:「逃がすと──」
早乙女六華:目を見開き、口元に酷薄な微笑を浮かべる。
早乙女六華:「思うか?」
早乙女六華:敵を呑みこみ、氷漬けにしながら、轟音と共に周囲一帯を巨大な氷の壁が包み込む。
早乙女六華:現れたのは豪奢な氷の宮殿。迷宮のようなそれが、敵の退路を塞ぎ、封じ込める。
“ベイルファイア”:「ッ……!」
“ベイルファイア”:分厚い氷の壁を見て、歯噛みする。高温の炎を以ても生半に溶かせるものではない。
GM:行動値13、ベイルファイアの手番です
“ベイルファイア”:マイナー≪オリジン:レジェンド≫
“ベイルファイア”:メジャー≪コンセントレイト:オルクス≫+≪氷の戒め≫+≪コキュートス≫+≪クロスバースト≫
“ベイルファイア”:対象PC全員 命中でラウンド間ダイス-4個
GM:早乙女六華の侵蝕率を24増加 (108 → 132)
“ベイルファイア”:5DX7+12
DoubleCross : (5DX7+12) → 10[2,3,5,10,10]+6[5,6]+12 → 28
GM:リアクションせよ!
リウトペルガ・ウィンニール:ちょっとまって
珊瑚夜:ダメ元でドッジ!
珊瑚夜:ちょっと待つわ
リウトペルガ・ウィンニール:《支配の領域》+《絶対支配》
リウトペルガ・ウィンニール:判定のダイス目を4つ選んで1にします
GM:ラリってんのか??
リウトペルガ・ウィンニール:5と6と10と10かな~
GM:いや……
GM:5と6を選んだ時点で10と10は無かったことになるから
GM:逆
GM:10と10を選んだ時点で5と6は無かったことになるから
GM:3、5、10、10かな
リウトペルガ・ウィンニール:そ、そうなる……のか!?
リウトペルガ・ウィンニール:ではそれで……
リウトペルガ・ウィンニール:せっかくだしグラビティバインドも使おうかなあ
“ベイルファイア”:2+12で達成値14です……
銀波 嵐:避けちゃおっかな~
リウトペルガ・ウィンニール:でもまだセイレーンがいるからな~
珊瑚夜:大盤振る舞いだわ~♡
リウトペルガ・ウィンニール:何やってくるか分からない怖さがある
綱井楪:こちらは他の人のリアクション結果を見て対応を決めるわよ
珊瑚夜:ここで領域使ったから下げるところまで下げて
珊瑚夜:避けられるようにした方がいいのでは見たいな思いもある
リウトペルガ・ウィンニール:それは確かにそうかも これで全員ドッジガバったら支配損だし
銀波 嵐:夜さんの判定バフって攻撃にのみ乗ってます?
珊瑚夜:サウンドチームは全部の達成値+2なはず!
銀波 嵐:らじゃー
GM:ヤベ~
リウトペルガ・ウィンニール:《グラビティバインド》、判定値-9。
“ベイルファイア”:あっこいつまだ100行ってない ラッキ~
“ベイルファイア”:では……達成値5です…………
珊瑚夜:かわいいね ドッジ
早乙女六華:6DX>=5 ドッジ
DoubleCross : (6DX10>=5) → 10[2,3,5,6,9,10]+10[10]+3[3] → 23 → 成功
珊瑚夜:4dx+3>=5
DoubleCross : (4DX10+3>=5) → 9[5,6,7,9]+3 → 12 → 成功
早乙女六華:超避けた
銀波 嵐:ドッジ
リウトペルガ・ウィンニール:ドッジ
銀波 嵐:12dx+3
DoubleCross : (12DX10+3) → 10[1,2,2,3,5,6,7,7,8,8,9,10]+4[4]+3 → 17
綱井楪:六華暴走してなかった……?
早乙女六華:はっ…………
早乙女六華:死ぬ…………
銀波 嵐:さらば六華よ……
綱井楪:離れなければカバーしてあげたのに!
リウトペルガ・ウィンニール:(1+2)dx+3>=5 〈回避〉
DoubleCross : (3DX10+3>=5) → 9[1,7,9]+3 → 12 → 成功
綱井楪:素ドッジ!
綱井楪:4dx+3>=5
DoubleCross : (4DX10+3>=5) → 10[4,8,10,10]+10[8,10]+4[4]+3 → 27 → 成功
銀波 嵐:めちゃめちゃ避けてる……
リウトペルガ・ウィンニール:リウトペルガ・ウィンニールの侵蝕率を13増加 (89 → 102)
“ベイルファイア”:早乙女六華!死ね~~~ッッ
“ベイルファイア”:1D10+12+16
DoubleCross : (1D10+12+16) → 7[7]+12+16 → 35
早乙女六華:しんだ
早乙女六華:リウトペルガのロイスで復活
“ベイルファイア”:「邪魔……するんじゃないわよ……!」
“ベイルファイア”:無数の群衆が篝火を焚くかのように、辺りにぽつぽつと超自然の炎が燃え上がる。
“ベイルファイア”:「私は当たり前のものを取り返すだけ……!ただそうしたいだけ……!」
“ベイルファイア”:「私達を否定するな!人間ッ!!」
“ベイルファイア”:氷の宮殿の中、火勢が膨れ上がり、周囲の全てを焼き尽くさんとする。
リウトペルガ・ウィンニール:《Ih fursahhu》『我は拒む』
リウトペルガ・ウィンニール:彼女らへ向かいつつあった炎は急に火勢を弱める。
“ベイルファイア”:「……!?」
リウトペルガ・ウィンニール:「すごい単純な術式だけどね」
リウトペルガ・ウィンニール:「存外動揺してるようだったから、一回くらいは通用するかなと思って」
リウトペルガ・ウィンニール:そう嘯いて、軽くウインク。
“ベイルファイア”:「リウトペルガぁあ……!」憎悪に顔を歪め、睥睨する。
リウトペルガ・ウィンニール:荒れ狂う超高音の炎は、しかし五人の元に辿り着くころには、既に尋常の火と変わらぬほどに熱を失っている。
リウトペルガ・ウィンニール:「"ベイルファイア"。古い古い精霊さん」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクはキミほど古くもないし、強くもない。でもね」
リウトペルガ・ウィンニール:「手札だけは──結構あるんだぜ」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミが嫌う、人の世で長く暮らしたおかげでね」
“ベイルファイア”:「汚らわしい女……!我々の風上にも置けない……!」
“ベイルファイア”:「だが……貴女だけは燃やす……!早乙女六華!!」
“ベイルファイア”:直接早乙女を呑み込むように、炎が発現する。超高温の紅炎が、その身体を焼き焦がす。
綱井楪:「六華……!」
早乙女六華:「ッ……あぁっ……!」
早乙女六華:炎に包まれ、悲鳴を上げて膝を折る。
早乙女六華:「……大丈夫、だ……楪」
早乙女六華:「……丁度……肌寒いと思っていたところだ」燻る炎に焦がされながら、強いて笑みを向ける。
GM:行動値8、綱井さんの手番です。
綱井楪:マイナー無し。メジャーでコンボ【自己消散の毒】。
綱井楪:《サイレンの魔女》《流血の胞子》による射撃攻撃。対象は敵全体。
GM:やめろ~~~ッ
綱井楪:11dx9+20
DoubleCross : (11DX9+20) → 10[1,2,3,4,4,5,7,7,8,8,10]+6[6]+20 → 36
GM:ぐぇ~~~~~~
がしゃどくろ:ガード
セイレーン:ガード≪グラビティガード≫
ゾンビ:イベイジョンで命中
“ベイルファイア”:≪領域の盾≫でセイレーンにカバーさせます
GM:ダメージどうぞ!
綱井楪:4d10+15+12
DoubleCross : (4D10+15+12) → 28[5,3,10,10]+15+12 → 55
綱井楪:装甲無視、命中で邪毒5を付与。
GM:ふざけてんのか~~~
ゾンビ:全滅します
セイレーン:55-8D10
DoubleCross : (55-8D10) → 55-46[9,4,6,3,7,6,6,5] → 9
セイレーン:18受けて瀕死
がしゃどくろ:生存
GM:演出どうぞ!
綱井楪:「……許さない」
綱井楪:空色の瞳が“ベイルファイア”を睨め上げる。決然たる意志をその奥に燃やして。
綱井楪:透き通る蛾の翅めいた力場が、その背中に展開する。
綱井楪:そこから溢れ出るのは妖々たる輝き。“星の透かし羽”の毒が場を満たし──
綱井楪:夜空の星を思わせる蒼白の粒子が、超常の法則に基づいて光を放つ。
綱井楪:己とは何者であるか。その認識ごと、概念ごと、存在を漂白し消散させていく。
綱井楪:その作用が、今は増幅されている。
綱井楪:珊瑚夜の異能によって。
綱井楪:そしてまた、
綱井楪:周囲を鎖す氷の宮殿。その壁に、満天の星々を映し取ったかの如く反射することによって。
綱井楪:綱井楪の侵蝕率を7増加 (88 → 95)
GM:生きた屍めいた怪異たちが、次々と吹き消される蝋燭の火めいて消えていく。低級の怪異では、そこに存在することすら許されない。
“ベイルファイア”:「ぐ、うぅううううッ……!?」
“ベイルファイア”:拡散しつつある意識と自己を繋ぎ止めんと、培った知識と魔術を総動員して必死に抵抗する。
“ベイルファイア”:「何なの、それは……!これは……!」
“ベイルファイア”:「人間が持っていていい力じゃない……!」
綱井楪:「……そうね。そうかも」
綱井楪:「でも、今は必要だから」
GM:行動値7、リウトペルガさん、銀波さんの手番です。
銀波 嵐:よしゃー!やるぜやるぜー!
銀波 嵐:マイナー、戦闘移動で接敵
銀波 嵐:メジャーで、コンボ、【黒蜻蜒】→《砂の加護》《コンセントレイト:ノイマン》、アームブレードを使用し《マルチウエポン》《ヴァリアブルウエポン》の白兵攻撃。
GM:来やがれ!
銀波 嵐:侵食値+11。Dロイスと支援効果を乗せて、
銀波 嵐:21dx6+3
DoubleCross : (21DX6+3) → 10[2,3,3,3,3,4,5,5,6,6,6,6,7,7,9,9,9,9,9,10,10]+10[1,2,2,2,2,4,4,4,4,7,8,9,10]+10[1,5,6,9]+10[1,10]+10[6]+1[1]+3 → 54
GM:アッ対象は?
銀波 嵐:あ、“ベイルファイア”さんで!
“ベイルファイア”:う~ん 受けるか…… ガード
GM:ダメージどうぞ!
銀波 嵐:6d10+54+12+5
DoubleCross : (6D10+54+12+5) → 37[10,7,7,7,1,5]+54+12+5 → 108
GM:ギャーーッッ
銀波 嵐:+アームブレードによるガード値5削り!
“ベイルファイア”:だいぶ喰らう……が!
“ベイルファイア”:≪復讐の領域≫同じだけダメージ喰らえ!死ね!
銀波 嵐:ヤメテーー
銀波 嵐:死です、せんせーのロイスを使って復活します。
GM:演出どうぞ!
銀波 嵐:「……別にさ」
銀波 嵐:前を、“ベイルファイア”を、見る。
銀波 嵐:後ろは振り返らない。早乙女六華はあれしきで死にはしない。
銀波 嵐:何度も同じ戦場を潜り抜けた相棒だから、それを知っている。信じている。
銀波 嵐:「否定なんかしてねえよ」
銀波 嵐:「そこの綱井先輩なんか、オカルト部だぜ」
銀波 嵐:「この世界に窮屈を感じてるのは、何もオタクらだけじゃねえ」
銀波 嵐:「そっちの思いと比べれば、程度が低く思えるかも知れねえがな」
“ベイルファイア”:「何ですって……」
銀波 嵐:「あんたらは、そういう気持ちに寄り添うために生まれてきたんだろう?」
銀波 嵐:「この世に不思議があってほしい、ロマンだよロマン」
銀波 嵐:「案外さ……」
銀波 嵐:「思ってもいないところで、必要とされてたりするんだ……この世界ってやつは」
銀波 嵐:短い、ほんのわずかな"一生"に思いを馳せる。
銀波 嵐:欲しいとは、思ってはいなかった、むしろ遠ざけてすらいた。
銀波 嵐:だが今はそれが自分にちからをくれる。
銀波 嵐:サラサラと、こぼれ落ちる砂。
銀波 嵐:【黒蜻蛉】。モルフェウス、ブラックドッグ、ノイマン。三位一体によって行われる銀波嵐の基本にして奥義。
銀波 嵐:モルフェウスのちからにより生み出した"黒砂"、ブラックドッグによる"発電細胞"、全てを統括するノイマンシンドローム。
銀波 嵐:腕を前へ―告げる。
銀波 嵐:「《電磁鍛造》」
銀波 嵐:全身の発電細胞がわななく。荒れ狂う雷槌で黒砂を打ち鍛える。
銀波 嵐:加圧、白熱。黒砂を冷媒物質へと錬成し熱を背後へと押しやる。
銀波 嵐:熱圧と冷却を高速で繰り返すことでそれは薄く、鋭く、より純粋な形へと変化していく。
銀波 嵐:黒砂の成分や鍛冶の仕組みなど嵐には知る由もない。
銀波 嵐:ただそれを知る"戦闘回路"が自動的に事を成すに任せる。金屋子神の嫉妬も気にするものではない。
銀波 嵐:黒刃がリィンと鳴く、翅化の時。
銀波 嵐:砂の生成は止めない、それにはまだ別の役割がある。
銀波 嵐:霧散した砂は磁気浮上を伴い周囲一帯の空間に満ちていく。
銀波 嵐:薄い黒霧のように広がって、
銀波 嵐:――準備は整った。深く、息を吸う。
銀波 嵐:《ルートを設定、1~8を提案》
銀波 嵐:地面を踏み、飛ぶ。助走も無し。
銀波 嵐:「(身体が……ずいぶん軽いな)」清涼な香りが鼻孔をくすぐる。
銀波 嵐:加電。ブーツに仕込まれた鉄板が電磁石化し、電場を踏みしだく。
銀波 嵐:反発力でより高くへ跳ぶ。
銀波 嵐:全身の発電細胞、周囲に漂う黒砂、+と-の配置、その切り替え、全ては戦闘回路が自動で行う。
銀波 嵐:ただ、道を選ぶのは嵐だ。
銀波 嵐:反発と吸引のちから。宙を跳ね、加速、加速、加速。
銀波 嵐:提案される進行ルート群は常時修正を受け、目まぐるしく変化し続ける。最適を瞬時に選択し、空間に敷かれたコイルの中をくぐり抜ける。加速。
銀波 嵐:黒と雪の結晶が月光を弾いてきらめく。追従する黒の翅――軌跡を闇色に切り取って、
銀波 嵐:「(――2-4-1)」交差、通り抜けざまに刃を滑らせる。
銀波 嵐:「(2-3-6)」斬撃、
銀波 嵐:「(1-9)」斬撃、
銀波 嵐:「(2-5-8-1)」跳躍、斬撃、
銀波 嵐:「(5)」斬。
銀波 嵐:蜻蜒(ヤンマ)は、空中戦における虫の王である。
銀波 嵐:抜きん出たスピード、旋回性能、獲物を捉える発達した複眼、強靭な顎。
銀波 嵐:黒蜻蛉よ、ふさわしくあれと告げる。トップスピード、旋回、複数の道を知る眼、鋭利な刃。
銀波 嵐:――斬撃が、重なる。
“ベイルファイア”:「ぐ……ぁあああぁあッ!!」
“ベイルファイア”:幾重もの斬撃に鮮血が噴き出す。“ベイルファイア”の四肢が切り裂かれ、宙を舞う。
“ベイルファイア”:「あぁあ──アァアアアッ!!」
“ベイルファイア”:その血が、紅蓮の炎へと燃え上がる。
“ベイルファイア”:炎は別の生き物のように蠢き、千切れた四肢を繋ぎ合わせ
“ベイルファイア”:同時に、銀波への反撃として、攻撃を辿るように爆炎が襲い来る。
“ベイルファイア”:「必要とされる必要なんて、無い……!」
“ベイルファイア”:「貴女たち人間との絆など!我々には必要ない!!」
銀波 嵐:炎を見る。彼女の怒りを。
銀波 嵐:「(ああ、なんだか昔の俺みたいなこと言ってら)」
銀波 嵐:世界に、敵か味方しかいなかった。
銀波 嵐:ならばあれは自分が受け止めねばならないものだろう。
銀波 嵐:死ぬものか。早乙女六華がそうであるように、その相棒である自分も。
銀波 嵐:死ぬものかと、彼女に信じられているはずだから。
銀波 嵐:前を見る、炎の中へと飛び込んでいく。
早乙女六華:その背を見つめる。ほんの僅かな時間で、一回り大きくなったかのように見える、相棒の背中を。
GM:同じく行動値7、リウトペルガさんの手番です
リウトペルガ・ウィンニール:う~ん待機で
GM:では行動値7、がしゃどくろの手番です
がしゃどくろ:マイナー ≪骨の剣≫
がしゃどくろ:メジャー ≪コンセントレイト:エグザイル≫+≪オールレンジ≫+≪伸縮腕≫+≪爪剣≫+≪ジャイアントグロウス≫
がしゃどくろ:対象綱井リウ珊瑚!
がしゃどくろ:12DX7 ドッジダイス-1個
DoubleCross : (12DX7) → 10[1,1,2,3,3,4,4,5,5,7,9,10]+10[5,6,8]+2[2] → 22
珊瑚夜:ダメ元ドッジ!
珊瑚夜:3dx+3>=22
DoubleCross : (3DX10+3>=22) → 10[2,9,10]+2[2]+3 → 15 → 失敗
珊瑚夜:意外と惜しいわね……
綱井楪:先生妖精します?
リウトペルガ・ウィンニール:せっかくだししましょう 夜君も持ってるから数的にも余裕はあるはずだし
リウトペルガ・ウィンニール:《妖精の手》、最後の2を10に。
珊瑚夜:ありがとう!愛してるわ♡
珊瑚夜:1dx+23>=22
DoubleCross : (1DX10+23>=22) → 1[1]+23 → 0 (ファンブル) → 失敗
珊瑚夜:えっ……
珊瑚夜:い、いやこれは大丈夫よね?
リウトペルガ・ウィンニール:増えた分だから24でいいはず
綱井楪:大丈夫なやつ
リウトペルガ・ウィンニール:ビビった
GM:そ、そうだね
珊瑚夜:じゃ、じゃあ避けたわ!
銀波 嵐:フフフ
リウトペルガ・ウィンニール:リウトペルガ・ウィンニールの侵蝕率を4増加 (102 → 106)
GM:あと二人も喰らいな!
綱井楪:じゃあ先生が回避できなければカバーする構えを取るわよ
リウトペルガ・ウィンニール:無理だと思うけど一応ドッジチャレンジ
リウトペルガ・ウィンニール:いややっぱりドッジしよう! 避ければいいんだよ避ければ!
リウトペルガ・ウィンニール:(1+3)dx+3>=22 〈回避〉
DoubleCross : (4DX10+3>=22) → 9[1,6,7,9]+3 → 12 → 失敗
リウトペルガ・ウィンニール:?
綱井楪:まあ普通は無理だから……
綱井楪:こちらも素ドッジ
綱井楪:4dx+3>=22
DoubleCross : (4DX10+3>=22) → 10[5,9,9,10]+4[4]+3 → 17 → 失敗
リウトペルガ・ウィンニール:あっ惜しい
綱井楪:失敗して、《マグネットフォース》で先生をカバー
リウトペルガ・ウィンニール:すまないねぇ……
綱井楪:綱井楪の侵蝕率を2増加 (95 → 97)
がしゃどくろ:ダメージ!
がしゃどくろ:3D10+12+13+2D10
DoubleCross : (3D10+12+13+2D10) → 13[9,2,2]+12+13+8[5,3] → 46
綱井楪:もちろん死!
綱井楪:リザレクト
綱井楪:綱井楪の侵蝕率を1d10(→ 7)増加 (97 → 104)
リウトペルガ・ウィンニール:死! 夜君への尽力/不安を昇華して復活!
珊瑚夜:カバーされたでしょ
リウトペルガ・ウィンニール:あっそっか! 完全に食らった気でいた
珊瑚夜:私のロイス切らないで♡
GM:こわ……
がしゃどくろ:氷の城の天井を擦るようにして動く、巨大な影。
がしゃどくろ:巨人の骨格が動いているかのような怪物。それが大木のような腕を振り上げ、全力で叩きつける。
がしゃどくろ:単純にして凶悪な質量による攻撃が、その場に留まった三人に襲い来る。
綱井楪:リウトペルガの周囲に浮遊する光の粒が、一斉に煌く。
綱井楪:星の透かし羽の毒の守勢転用。視覚欺瞞と一時的な忘却による攪乱。
リウトペルガ・ウィンニール:「これって、──」
綱井楪:振り下ろされた白骨の腕は、果たして彼女の眼前を掠るに留まる。
綱井楪:正しく叩き潰されたのは、珊瑚夜と綱井楪のみ……否。
珊瑚夜:きゅるきゅるきゅる!小さなロボットたちが一生懸命珊瑚を引っ張り、間一髪骨の拳を避けさせる。
珊瑚夜:「まあ!過保護なんだから。無理はしないでね。でも、ありがとう!無事でいられるなんて幸運だわ」ロボットに微笑む。
リウトペルガ・ウィンニール:「……綱井君!」苦しげな表情を見せるが、それも一瞬のこと。
リウトペルガ・ウィンニール:「ありがと! 助かった!」
綱井楪:「……どういたしまして」骨槌が持ち上げられてのち、血に塗れよろめきながらも立ち上がる。
綱井楪:「痛いだけ。……なら、耐えられる」
GM:行動値6、セイレーンの手番です。
セイレーン:マイナーなし
セイレーン:メジャー≪コンセントレイト:オルクス≫+≪ナーブジャック≫
珊瑚夜:ナーブジャック!?
セイレーン:対象は綱井楪!!
リウトペルガ・ウィンニール:ナーブジャック???
綱井楪:マ?
セイレーン:8DX7+6
DoubleCross : (8DX7+6) → 10[1,2,3,6,8,8,9,10]+10[3,5,6,10]+1[1]+6 → 27
GM:意志で対抗しなさい!
綱井楪:ヌウーッ
綱井楪:6dx+7>=27
DoubleCross : (6DX10+7>=27) → 9[3,4,6,6,9,9]+7 → 16 → 失敗
GM:ホホホホ……
リウトペルガ・ウィンニール:《支配の領域》+《絶対支配》
リウトペルガ・ウィンニール:9、9、6、6を1に
リウトペルガ・ウィンニール:あっ
綱井楪:そっち私の判定!
リウトペルガ・ウィンニール:違う違う!
珊瑚夜:大丈夫よ 落ち着いて
綱井楪:と言うか対抗振っちゃってるからタイミング的に微妙……?
綱井楪:だめ?
GM:え~~
GM:駄目だけど……
GM:かわいいから許しちゃお
綱井楪:せんぱ~い♡
珊瑚夜:先輩大好き♡
GM:どのダイスを1にするのか宣言しなさいよ!
リウトペルガ・ウィンニール:セイレーンの10、9、8、8を1に
セイレーン:では出目は12
セイレーン:≪グラビティバインド≫
セイレーン:綱井さんの達成値を-12
珊瑚夜:???
綱井楪:バカ
リウトペルガ・ウィンニール:《妖精の手》、綱井さんの3を10に!
セイレーン:死ね~~~~!
GM:んん
GM:3を10でも9を10でもまあ変わらんか
GM:では達成値5からスタートになります
珊瑚夜:そうですね、回ってないから……
綱井楪:ウオオ
綱井楪:1dx+5
DoubleCross : (1DX10+5) → 7[7]+5 → 12
GM:て……テメェ~~~~~ッッ
綱井楪:先生~♡
珊瑚夜:やった~~!!
リウトペルガ・ウィンニール:よかった~~~!!!
リウトペルガ・ウィンニール:リウトペルガ・ウィンニールの侵蝕率を14増加 (106 → 120)
セイレーン:では失敗です クソが代!(国歌)
セイレーン:女の頭に巨大な鳥の身体を持つ、奇怪な怪異が宙を舞う。
セイレーン:ぎょろぎょろとした瞳で君達を見つめ、その内の一人……綱井に狙いを定める。
セイレーン:「────────」
セイレーン:人のものでない、おぞましい歌声が響き渡る。
セイレーン:恐ろしく、不気味でありながら、どこか蠱惑的でもあるような歌声。
セイレーン:それが鼓膜を震わせると、綱井の意識が混濁していく。
セイレーン:ざわざわと、思うがままに能力を行使しようとする衝動が、胸の奥から溢れ出してくる。
綱井楪:「……ぁ……?」
綱井楪:歌声に呼応するように、翅がぴんと張り詰める。そこに宿る星がぎらぎらと不穏に輝きを増す。
綱井楪:夢に誘われるような心地の中で。──けれどそれは、自身の心に刻まれた最大の禁忌だ。
綱井楪:「嫌……いや」
綱井楪:茫漠としたその表情が、血の気の失せた絶望の色に染まる。
早乙女六華:「……楪!!」
綱井楪:「駄目……っ……!」
リウトペルガ・ウィンニール:楪と怪物の間に、一かけらの陶片が舞う。
リウトペルガ・ウィンニール:
《Ασστραηλος / Χραηλος》
『アストラエーロス / クラエーロス』
リウトペルガ・ウィンニール:その宣命と共に、三角形の陶片の表面に、輝く文字が浮き出る。
リウトペルガ・ウィンニール:
《λυσατε παν φαρμακον γενομενον κατ ημου του》
『我らに向けて作られし、あらゆる呪文を破却せよ』
リウトペルガ・ウィンニール:
《οτι ορκιζω υμας κατα των》
『かく宣り、我は汝を呼び出す』
リウトペルガ・ウィンニール:
《μεγαλων και φικτρων ονοματων》
『偉大にして恐るべき名を》
リウトペルガ・ウィンニール:
《ων οι ανεμοι φριζουσιν και αι πετραι ακουσαντες διαρησσονται》
『風は震え、岩が聞けば真っ二つとなるその名を』
リウトペルガ・ウィンニール:陶片は輝きを増し──最後には砕け散る。
リウトペルガ・ウィンニール:それと共に、彼女へ向けられたセイレーンの魔力が霧散してゆく。
セイレーン:「────!?」
セイレーン:羽搏きながら、ガラス玉のような瞳でリウトペルガを見る。
リウトペルガ・ウィンニール:「ギリシャの術式なんて、久しく触ってなかったけど」
リウトペルガ・ウィンニール:「やっぱり大事だね──予習復習っていうのはさ」
リウトペルガ・ウィンニール:口の端を上げ、にやりと笑う。
綱井楪:「…………」
綱井楪:へたり込む。は、は、と荒く息をつく。
綱井楪:暴走しかけた光は鎮まり、再び静謐な星空のそれに戻った。
綱井楪:「……ありがとう……先生」
リウトペルガ・ウィンニール:「なぁに。さっきは助けられちゃったからね」
GM:行動値0、待機していたリウトペルガさんの手番です
リウトペルガ・ウィンニール:《コンセ:オルクス》《ナーブジャック》《フラットシフト》
リウトペルガ・ウィンニール:対象は"ベイルファイヤ"
GM:判定どうぞ!
リウトペルガ・ウィンニール:夜君のバフ分足して
リウトペルガ・ウィンニール:(3+3+6)dx7+2
DoubleCross : (12DX7+2) → 10[1,2,3,5,6,7,7,8,8,9,10,10]+10[4,5,6,6,8,10,10]+10[3,3,10]+10[8]+4[4]+2 → 46
珊瑚夜:バディム!達成値+3!
GM:ゲェ~~
リウトペルガ・ウィンニール:なんかすごい回っちゃった
“ベイルファイア”:8DX+12>=46
DoubleCross : (8DX10+12>=46) → 10[2,2,5,8,9,9,9,10]+9[9]+12 → 31 → 失敗
リウトペルガ・ウィンニール:高めの出目出してるんじゃないよ!
“ベイルファイア”:くっ……
銀波 嵐:マジで結構高めで笑う
GM:何をさせますか?
銀波 嵐:ドキドキしちゃうな
GM:コキュートスは回数制限ありだから使えないぜ 残念だったな関口ィ……
リウトペルガ・ウィンニール:できるだけ威力の高い攻撃を、PCには当てず"ベイルファイア"自身とエネミーを可能な限り巻き込んで
珊瑚夜:わがままフェアリーだな 好きよ♡
“ベイルファイア”:≪コンセントレイト:サラマンダー≫+≪氷の戒め≫+≪クロスバースト≫になります
“ベイルファイア”:対象は単体!
GM:ベイルファイアでいいのかい!
リウトペルガ・ウィンニール:あ~セイレーン狙ったほうがいいのか……?
リウトペルガ・ウィンニール:でもどうせすぐ次のラウンド行くし大丈夫かな
リウトペルガ・ウィンニール:ベイルファイア……で!
珊瑚夜:そうね、セイレーンには毒も入ってるし……
“ベイルファイア”:7DX7+12
DoubleCross : (7DX7+12) → 10[1,3,7,8,8,8,9]+5[1,1,2,3,5]+12 → 27
“ベイルファイア”:もう領域の盾が無い……
“ベイルファイア”:ガード
“ベイルファイア”:3D10+16
DoubleCross : (3D10+16) → 17[2,10,5]+16 → 33
“ベイルファイア”:痛い~~~~~~
リウトペルガ・ウィンニール:「しかし、セイレーンね」
リウトペルガ・ウィンニール:羽ばたく怪物を眺め、小さく一人ごちる。
リウトペルガ・ウィンニール:「学校の怪談に、あんなのはいなかったと思うけどな」
リウトペルガ・ウィンニール:「──ああ、でも」
リウトペルガ・ウィンニール:はた、と気づいたように、小さな手を打つ。
リウトペルガ・ウィンニール:「『午前0時に屋上にいると、自分の意思にかかわらずふらふらと飛び降りてしまう』」
リウトペルガ・ウィンニール:「こんなのはあった。似たようなのは、他にもたくさん」
リウトペルガ・ウィンニール:「それだけ、怖いってことだね」
リウトペルガ・ウィンニール:「自分の身体が、自分の思い通りにならないっていうのは」
“ベイルファイア”:「何を──」
リウトペルガ・ウィンニール:
《Sō iz regennōt, sō nazscēnt te boummā》
『雨降らば、木々濡る』
リウトペルガ・ウィンニール:
《Sō iz wāth, Sō wagōnt te boummā》
『風吹かば、木々揺る』
リウトペルガ・ウィンニール:世間話でもするような、軽い声。
リウトペルガ・ウィンニール:
《In mehte thī》
『汝の力の内に』
リウトペルガ・ウィンニール:
《Tī rāda dāþa》
『ティウ神は死を統ぶべし』
リウトペルガ・ウィンニール:その呪言が発せられるとともに、"ベイルファイア"の身体が、その意志とは無関係に動く。
“ベイルファイア”:「な、ッ……!?」
リウトペルガ・ウィンニール:そしてその炎が──彼女自身の身体をめがけ、殺到する。
リウトペルガ・ウィンニール:
《sīn tac piqueme》
『かの日、来ん』
リウトペルガ・ウィンニール:
《daz er touwan scal》
『かくてその者、死にすべし』
“ベイルファイア”:「あ、ッ……うぁああああッ!?あぁああああああッ!!」
“ベイルファイア”:己の炎に包まれ、絶叫する。赤い髪を振り乱し、逃れんと身を捩る。
“ベイルファイア”:「リウト……ペルガぁああああッ!!」
“ベイルファイア”:「この……この私に……呪いを……!!」
GM:イニシアチブ
“ベイルファイア”:Eロイス≪更なる絶望≫。エネミーを配置します
珊瑚夜:なにぃ!
リウトペルガ・ウィンニール:呼ぶな呼ぶな!
綱井楪:まだ増えるってのか!
銀波 嵐:ぬぁんだとぉ
GM:クリンナップ。
GM:邪毒によるダメージでがしゃどくろとセイレーンが死亡します
綱井楪:あばよ
GM:綱井の振り撒いた存在を蝕む『毒』により、怪異たちが次々と砂像のように崩れ落ち消えていく。
“ベイルファイア”:「……!」
“ベイルファイア”:「……ふ……ふふ……くふふふふ……!」
“ベイルファイア”:「いいでしょう……もういいわ」
“ベイルファイア”:「リウトペルガ・ウィンニール。早乙女六華」
“ベイルファイア”:「私の邪魔をするなら……貴女たちも纏めて、殺す」
“ベイルファイア”:夥しい血を流す腕を振るう。空中に見えない壁でもあるかのように、血液が空中に固着し、魔法陣が描かれていく。
“ベイルファイア”:≪ Ακολουθήστε το παλιό σύμφωνο≫
“ベイルファイア”:『旧き盟約に従い──』
“ベイルファイア”:≪Πίνετε το αίμα μου≫
“ベイルファイア”:『我が血で喉を潤し』
“ベイルファイア”:≪Ελάτε από τον βόρειο ουρανό≫
“ベイルファイア”:『北の空より来たれ』
“ベイルファイア”:≪Μεγάλος κυνηγός≫
“ベイルファイア”:『偉大なる狩人よ』
GM:空間が歪む。魔法陣から漆黒の影が噴出し、それが空中で形を成していく。
GM:無数の蹄の音。鎧と具足、剣の鳴らす重々しい金属音が響き渡る。
GM:黒い馬を駆る騎士の一団。亡霊の狩猟団。
ワイルドハント:「────」
“ベイルファイア”:「……ふ……くふっ……」
“ベイルファイア”:切り札を前に、くぐもった笑みを零す。
“ベイルファイア”:「狩りの時間よ……ワイルドハント」
GM:ラウンド2
GM:セットアップから!
綱井楪:無!
リウトペルガ・ウィンニール:なし!
珊瑚夜:セットアップ、≪加速装置≫行動値8→16、侵蝕+2
珊瑚夜:珊瑚夜の侵蝕率を2増加 (127 → 129)
銀波 嵐:ノン
ワイルドハント:≪原初の黄:加速装置≫ 行動値10>18
早乙女六華:なし
GM:イニシアチブ、行動値18、ワイルドハントの手番です
ワイルドハント:≪コンセントレイト:ウロボロス≫+≪無形の影≫+≪虚ろなる軍団≫+≪餓えし影≫+≪原初の紫:援護の風≫
ワイルドハント:choice[珊瑚,早乙女,リウ,綱井,銀波]
DoubleCross : (CHOICE[珊瑚,早乙女,リウ,綱井,銀波]) → 珊瑚
珊瑚夜:あらあら
ワイルドハント:対象は珊瑚・リウ・綱井のエンゲージ
ワイルドハント:15DX7+8
DoubleCross : (15DX7+8) → 10[1,2,3,3,4,7,8,8,8,8,8,9,9,10,10]+10[1,1,2,3,3,5,7,7,8,9]+10[1,2,9,9]+3[2,3]+8 → 41
ワイルドハント:すいません マイナー≪原初の青:ハンティングスタイル≫で接敵してます
リウトペルガ・ウィンニール:これ減らして……もベイル君の分があるんだよな
珊瑚夜:ベイルファイアはもう単体攻撃しかできない気がするからここで使ってもいいんじゃないかしら?
GM:出来るよ~
綱井楪:コキュートスはまだ撃てるんじゃないかな
珊瑚夜:あっなるほど……
リウトペルガ・ウィンニール:シナリオ3回だったはず
珊瑚夜:支配の回数は残ってた気がするから侵蝕平気ならワイルドハントにもベイルファイアにもうっていいのかな?と思ったけれど任せるわ
リウトペルガ・ウィンニール:でもなんか……クライマックス2とかあったら怖くない? みたいな気がしていて……
リウトペルガ・ウィンニール:でもそれにしても侵蝕上がればもう一回分回復するんだよな やっちゃうか
GM:凪ちゃんがラスボスにならなければ無いよ
リウトペルガ・ウィンニール:なりかねないから怖いんですが……
銀波 凪:ソンナンナイヨー
リウトペルガ・ウィンニール:《支配の領域》+《絶対支配》、最初の10・10・9・9を1に
GM:あ、C値が7なので
GM:意味無いかな……2回目の7789を消す形かな
リウトペルガ・ウィンニール:あ、そっか
リウトペルガ・ウィンニール:そうなるとあんまりうま味がなかった気もするけど……まあ宣言しちゃったししょうがない
GM:達成値は15+8で23になります
リウトペルガ・ウィンニール:《グラビティバインド》、レベル上がって判定値-12
GM:達成値は11!
リウトペルガ・ウィンニール:11なら……まだ可能性もある!
珊瑚夜:ありがとうリウトペルガ!
珊瑚夜:ドッジ!あとサウンドチームの達成値+2はシーン継続だから全員に続いているからよろしくね!
リウトペルガ・ウィンニール:リウトペルガ・ウィンニールの侵蝕率を13増加 (120 → 133)
綱井楪:例によって二人のリアクション待って決める!
珊瑚夜:4dx+3>=11
DoubleCross : (4DX10+3>=11) → 10[4,8,10,10]+10[3,10]+3[3]+3 → 26 → 成功
珊瑚夜:避けたわ!
リウトペルガ・ウィンニール:(1+4)dx+3>=11 〈回避〉
DoubleCross : (5DX10+3>=11) → 10[8,8,8,9,10]+7[7]+3 → 20 → 成功
リウトペルガ・ウィンニール:よっし
綱井楪:おお
GM:こいつら何??
銀波 嵐:つよい
綱井楪:じゃあこちらもドッジ。《見えざる僕》。
綱井楪:6dx+20>=11
DoubleCross : (6DX10+20>=11) → 9[1,2,3,4,8,9]+20 → 29 → 成功
綱井楪:セーフ
GM:こいつら~~~~ッッ
綱井楪:綱井楪の侵蝕率を1増加 (104 → 105)
GM:ハッッ…………
GM:使えるエフェクトがあったのに忘れていた
銀波 嵐:やーいやーい
ワイルドハント:本来は支配の領域を消せたはずだが……せめて
ワイルドハント:≪レネゲイドディゾルバー≫
ワイルドハント:≪見えざる僕≫を打ち消すぜ
綱井楪:オートじゃなくてリアクションなので無理!
ワイルドハント:??????
ワイルドハント:死にました
綱井楪:死んじゃった
珊瑚夜:儚い……
ワイルドハント:黒影を煙のように棚引かせながら、亡霊の一団が疾走する。
ワイルドハント:蹄で踏み荒らし、剣と槍で蹂躙せんと、怒涛の勢いで君達に襲い掛かる!
リウトペルガ・ウィンニール:
《Phol' ende wōdan》《vuorun zi holza》
『かつて子馬とウォーダンは』『一緒に森へ赴きぬ』
リウトペルガ・ウィンニール:
《dū wart demo Balderes volon》《sīn vuoz birenkit》
『主神の馬はその際に』『己が足をば挫きたり』
リウトペルガ・ウィンニール:そこまで誦すと、不意に口を噤み、不自然に言葉を切る。
リウトペルガ・ウィンニール:それは本来であれば、馬の負傷を癒すための呪文。
リウトペルガ・ウィンニール:その「癒す」ための節を意図的に切断し、却って負傷を招く呪文と為す。
リウトペルガ・ウィンニール:そして、怪異としてのワイルドハントは──『オーディンの渡り』とも呼ばれる。
リウトペルガ・ウィンニール:さ、と指を差し向けると──
リウトペルガ・ウィンニール:オーディン/ウォーダンの騎馬たちは、その足を挫いて地へ転がる。
ワイルドハント:亡霊たちは悲鳴を上げはしないが、猛然たる疾走が挫かれ、鎧や剣のへし折れる甲高い音が響き渡る。
ワイルドハント:君達にその刃が届くことは無い。
綱井楪:その猶予を以て息を整える。足に力を込めて立ち上がる。
綱井楪:「……さすが、先生」
綱井楪:そう短く零す言葉も、既に平時の抑えた調子を取り戻して。
早乙女六華:「魔女は健在というわけか。いや、昔より悪辣になったんじゃないか?」
珊瑚夜:「ありがとう、リウトペルガ。あなたには助けてもらってばかりだわ」
珊瑚夜:衝撃に身構えていた緊張をほどくとにこりと笑い、花のような甘い香りが漂う。
リウトペルガ・ウィンニール:「いやぁ、亡霊で助かったよ。生きてる馬だったらちょっとかわいそうだものね!」汗を拭いながらも、おどけたように笑ってみせる。
GM:行動値16、珊瑚さんの手番です。
珊瑚夜:はい!
珊瑚夜:マイナーなし。メジャーで≪原初の赤:アドヴァイス≫≪弱点看破≫≪混色の反乱≫侵蝕+11 対象は綱井・珊瑚・リウトペルガ!
珊瑚夜:5dx
DoubleCross : (5DX10) → 10[1,1,2,5,10]+5[5] → 15
珊瑚夜:判定ダイス+6個攻撃力+12C値-1(下限6)!
珊瑚夜:珊瑚夜の侵蝕率を11増加 (129 → 140)
綱井楪:もらい!
リウトペルガ・ウィンニール:ありがたい……
珊瑚夜:柔らかく爽やかなミントの香りが湧く。
珊瑚夜:小さなロボットたちが奏でるフルートの音を背に口を開く。
珊瑚夜:「嗅覚は五感の中で唯一、記憶や感情を直接刺激する感覚なの」
珊瑚夜:「嗅いだことのある匂いを受けて、古い記憶が呼び覚まされる……なんてこともあるわね」
珊瑚夜:春の雷が去った後の花の甘さの中に、
珊瑚夜:夏の風に揺れる緑の爽やかさの中に、
珊瑚夜:秋の実った果実の甘酸っぱさの中に、
珊瑚夜:冬の静かな空気に秘めた甘さの中に、
珊瑚夜:私を思い出して。
珊瑚夜:香りと共に、きっと、想いは褪せず薫り立つから。
珊瑚夜:擦り切れるまで想いを刻み尽くしたら、
珊瑚夜:香りと共にまた思い出を吸い込んで。
珊瑚夜:この世界から香りが消えない限り、
珊瑚夜:私はそこにいるわ。
珊瑚夜:「……私が怒ったり、敵を倒す覚悟を決めた時は……ミントのような匂いがするのだけれど」
珊瑚夜:「ミントには、胃腸を整える効能もあるのよ。ミント自体も美味しいし……ますます美味しいものが食べられるようになる。たくさん食べると力が出る……」
珊瑚夜:「つまり、おいしくてつよくなるってことね!」
珊瑚夜:楽しそうに笑う。ミントの涼やかな香りの中に微かな甘さがふわりと、湧き立った。
GM:行動値9、ベイルファイアの手番です
“ベイルファイア”:≪コンセントレイト:オルクス≫+≪氷の戒め≫+≪コキュートス≫+≪クロスバースト≫
“ベイルファイア”:対象PC全員
“ベイルファイア”:5DX7+12
DoubleCross : (5DX7+12) → 10[1,2,5,10,10]+10[1,9]+4[4]+12 → 36
GM:アッヤベ…………
GM:リアクションしなさい!!
綱井楪:あっこれは……
銀波 嵐:おやおや
珊瑚夜:しはしはしてきた
銀波 嵐:ドッヂ
銀波 嵐:12dx+1
DoubleCross : (12DX10+1) → 10[1,2,2,3,6,7,7,7,8,9,10,10]+7[1,7]+1 → 18
銀波 嵐:むーりー
リウトペルガ・ウィンニール:あっ支配しようとしてたが
銀波 嵐:うじゃぱ
リウトペルガ・ウィンニール:と思ったけどリゾルバられるのかこれ
綱井楪:あー
綱井楪:どうします?
リウトペルガ・ウィンニール:これで打つと次160に上がるまで打ち止めなんですよね
リウトペルガ・ウィンニール:でも逆に言うとそこまで行けばもう一回打てるし
リウトペルガ・ウィンニール:打つだけ打ってディゾ切れを誘うのもありか……?
リウトペルガ・ウィンニール:と思ったけど読み直したらディゾルバーLv回か……
綱井楪:回数切れのために打つには代価のでかいコンボかなとは思うけど
リウトペルガ・ウィンニール:だったら今は使わずに死ぬのを待った方がいいかな……?
綱井楪:どちらでもよ
リウトペルガ・ウィンニール:そうですね、今回はなしで……
GM:では死になさい!
早乙女六華:暴走
珊瑚夜:ダメ元でドッジだわ!
珊瑚夜:5dx+3>=36
DoubleCross : (5DX10+3>=36) → 7[1,2,3,7,7]+3 → 10 → 失敗
リウトペルガ・ウィンニール:36出せばいいんでしょ 行ける行ける
珊瑚夜:惜しかったわ(節穴)
綱井楪:コンボ【希薄化】。《リフレックス:ブラックドッグ》《見えざる僕》でドッジ。
リウトペルガ・ウィンニール:(1+4)dx+3>=36
DoubleCross : (5DX10+3>=36) → 8[2,5,5,7,8]+3 → 11 → 失敗
綱井楪:6dx7+20>=36
DoubleCross : (6DX7+20>=36) → 10[1,2,4,4,5,7]+1[1]+20 → 31 → 失敗
綱井楪:あらら
銀波 嵐:結構迫ってるな……
リウトペルガ・ウィンニール:うわっ惜しい
綱井楪:あと《マグネットフォース》で珊瑚さんをカバーしますが
綱井楪:これは通る……?
ワイルドハント:≪否定のひと触れ≫
ワイルドハント:カバーリングを打ち消します
リウトペルガ・ウィンニール:嫌な馬!!
綱井楪:それまで持ってんの!?
珊瑚夜:あの馬嫌いよ
綱井楪:じゃあただ食らうだけ!
綱井楪:綱井楪の侵蝕率を6増加 (105 → 111)
銀波 嵐:最近の馬はかしこいなー
“ベイルファイア”:死にやがれ~~ッ
綱井楪:あ、間違い。5上昇して105→110です
“ベイルファイア”:4D10+12+16
DoubleCross : (4D10+12+16) → 11[4,1,3,3]+12+16 → 39
銀波 嵐:しぬが?
リウトペルガ・ウィンニール:死ぬなあ
銀波 嵐:綱井パイセンのロイスで復活、フフフ……あとひとつしかない
珊瑚夜:あ、嵐さん……
リウトペルガ・ウィンニール:死、夜君の●尽力/不安のロイスを昇華して復活
早乙女六華:綱井楪 ○慈愛/郷愁 のロイスで復活
綱井楪:そういえば全然取ってなかったね……
珊瑚夜:死ぬわ!リウトペルガのロイス切りたくないからそのまま倒れてようかとも思ったけど……
GM:こわ……
綱井楪:早乙女六華 ○思慕/不安のロイスを昇華して復活!
リウトペルガ・ウィンニール:切りなさい!
珊瑚夜:≪妖精の手≫使うかもしれないし起きるわ。リウトペルガ・ウィンニール/〇P:尽力/N:独占欲 を昇華して復活!
銀波 嵐:最後のカラオケで取れること完全に忘れてた
“ベイルファイア”:無数の小火が渦を巻くようにして“ベイルファイア”のもとに集まっていく。
“ベイルファイア”:遥か古代のバリティニの火、あるいは復活祭の巨大な篝火のように。
“ベイルファイア”:「……もう嫌なのよ」
“ベイルファイア”:ぶつぶつと譫言のように呟く。
“ベイルファイア”:「日陰で生きるのは……隠れて生きるのは……」
“ベイルファイア”:「交代しろ──お前達の番だ……私達が日の当たる場所に出る番だ……!」
“ベイルファイア”:業火が弾ける。熱波と共に爆炎が吹き荒れ、君達を纏めて呑みこむ。
“ベイルファイア”:氷の城の一部が溶け落ち、天井が崩落する。
早乙女六華:「…………!」喉を焼かれ、咳き込み蹲る。
綱井楪:「く……っ……」羽が輝きを増す──間に合わない。
綱井楪:せめてもと咄嗟に、最も近くにいた珊瑚夜の前に飛び出そうとするが。
銀波 嵐:「(流石に……こうも連続じゃ……キツいか)」電界を展開し、熱を反らそうと試みるが、
ワイルドハント:馬上の騎士が、影の鞭を打ち振るう。脚を絡ませて、行く手を塞ぐ。
銀波 嵐:「(距離が、近すぎる)」ヂリ、と炎が迫る。ああ、あれはきっと骨まで達するだろう。
綱井楪:「あうっ……!」倒れて地に転がり、そのまま全身を焼かれる。
リウトペルガ・ウィンニール:《Proserpina Salvia──》『プロセルピナ・サルウィアよ──』、ぐ、っ……!」
リウトペルガ・ウィンニール:対抗呪文を吐こうとするが、その熱気に喉を焼かれ、間に合わない。
“ベイルファイア”:「ふふ……くふ……ふふふふふふ……!」
珊瑚夜:「!つな、いさ……うう、ぐ――」
珊瑚夜:自分をかばおうとして倒れ焼かれる綱井楪を見て目を見開く。珊瑚自身も炎に呑まれ、身を焼かれる。
珊瑚夜:「ふふ、ふ……とても熱いし痛いけれど。友達が、助けようとしてくれたのはとても嬉しいわ」ふわりと甘い香り。
珊瑚夜:「……でも、もう喰らいたくはないわね!」
“ベイルファイア”:「そのまま燃え尽きなさい……!貴女達ならいい薪になるでしょう……!」
“ベイルファイア”:「新しい世界の幕開けを、そこで這い蹲って見ているがいいわ……!」
GM:行動値8、綱井さんの手番です
綱井楪:マイナー無し。メジャーでコンボ【自己消散の毒】。
綱井楪:《サイレンの魔女》《流血の胞子》で射撃攻撃。対象はベイルファイアとワイルドハント!
GM:来やがれ~~~ッ
綱井楪:氷の戒めがなんだっけ……
GM:ダイス-4個です
綱井楪:そうそう 判定!
綱井楪:8dx9+20
DoubleCross : (8DX9+20) → 10[1,1,4,5,8,10,10,10]+10[2,10,10]+8[2,8]+20 → 48
“ベイルファイア”:ドッジ!!!!!
“ベイルファイア”:5DX
DoubleCross : (5DX10) → 10[5,5,6,8,10]+2[2] → 12
ワイルドハント:ガード
GM:ダメージどうぞ!
綱井楪:5d10+18+12
DoubleCross : (5D10+18+12) → 21[9,8,1,2,1]+18+12 → 51
綱井楪:装甲無視で当たれば邪毒6!
“ベイルファイア”:HP0……
珊瑚夜:やったか!?
“ベイルファイア”:≪燃える魂≫で復活します
銀波 嵐:ぬおー!
リウトペルガ・ウィンニール:燃えるな!
ワイルドハント:≪雲散霧消≫でダメージ-30
GM:演出どうぞ!
綱井楪:黒焦げの焼死体と化した綱井楪の体に、蛍火じみた光が集い、弾ける。
綱井楪:一瞬後、無傷とは行かないまでも、少女は命を取り戻した姿でそこに在る。その背に再び羽が広がる。
綱井楪:「ふう……ううっ……!」
綱井楪:一帯に散った魔光が瞬く。
綱井楪:今や氷の宮殿の天井は溶け崩れ、残った壁が映すのは夜空の色。
綱井楪:分厚い濃紺のスクリーン。そこへ無数の青白い光が反射して形作るのは、
綱井楪:あたかも戦いの場が上天の星空に移ったかのような、即席にして幻想の景観美。
綱井楪:──敵対者が世界と結び付くその大元を削り取る、破滅の情景だ。
綱井楪:綱井楪の侵蝕率を7増加 (110 → 117)
“ベイルファイア”:「ぅ……あぁあああああっ!!」
“ベイルファイア”:破滅の光に焼かれるように、その輪郭がほんの一瞬、消滅する。
“ベイルファイア”:だが────
“ベイルファイア”:「……認、める、か…………!」
“ベイルファイア”:虚空から再び紅の炎が噴き上がり、“ベイルファイア”の身体を形作っていく。
“ベイルファイア”:「否定されて、たまるか……」
“ベイルファイア”:「忘れられてたまるか……!私は……私は、ここに居る……!」
GM:行動値7、リウトペルガさん、銀波さんの手番です
銀波 嵐:マイナー、ポルターガイスト→インプラントミサイル 侵食+4
銀波 嵐:メジャー、コンボ、【黒蜻蜒】→《砂の加護》《コンセントレイト:ノイマン》、アームブレードを使用し《マルチウエポン》《ヴァリアブルウエポン》の白兵攻撃。
銀波 嵐:侵食+11
GM:対象は!
銀波 嵐:対象は、“ベイルファイア”!
GM:判定どうぞ!
銀波 嵐:11dx6+1
DoubleCross : (11DX6+1) → 10[1,3,4,4,5,5,6,7,9,9,10]+10[1,3,7,8,9]+4[3,3,4]+1 → 25
銀波 嵐:んーむ
“ベイルファイア”:5DX>=25 ドッジ
DoubleCross : (5DX10>=25) → 9[2,2,5,7,9] → 9 → 失敗
GM:くっ……ダメージどうぞ!
銀波 嵐:3d10+54+12+5
DoubleCross : (3D10+54+12+5) → 20[6,5,9]+54+12+5 → 91
“ベイルファイア”:HP0!
“ベイルファイア”:復活エフェクトはありません。
珊瑚夜:やった~~!!
リウトペルガ・ウィンニール:やったぜ!
綱井楪:馬主が先に倒れるとはね
GM:馬~~全員殺せ~~~~~
銀波 嵐:イエイイエイ
銀波 嵐:ボロリ、と焼け焦げた砂の膜を破って嵐が素肌を見せる。
銀波 嵐:「(……足は……まだ、再生にまだ時間がかかるな)」
銀波 嵐:今だその機能を取り戻さないそれを一瞥。
銀波 嵐:嵐の戦闘スタイルは機動性が命だ。これではちからを発揮するを叶わない。
銀波 嵐:「(ならば……)」
銀波 嵐:銀波嵐は、その右手に文字通りの"奥の手"を仕込んでいる。
銀波 嵐:インプラントミサイル、ブラックドッグシンドローム御用達の暗火器。
銀波 嵐:「今が、使いどきさ」
銀波 嵐:「《イグニッション》」
銀波 嵐:爆裂。血けぶりをあげて嵐の腕が弾け飛ぶ。"狙い通り"に。
銀波 嵐:脳を駆け巡る痛みの信号に思考はショート。しかしその間も"戦闘回路"は自動的に仕事を推し進めている。
銀波 嵐:モルフェウスシンドロームが行う"錬成"、それは物理的な法則よりも能力者の心理的影響が強くみられることが分かっている。
銀波 嵐:愛着や思い出が深い品であるほどより精巧で、強力なものを造り上げることができる。
銀波 嵐:「《大錬成》」
銀波 嵐:宙を舞う細かい赤の水滴、そのひとつひとつが。
銀波 嵐:「(大切な――"凪の身体")」
銀波 嵐:嵐は己の身体を直接錬成の材料とするような芸当は不可能だ。
銀波 嵐:ただ、一度肉体を離れてしまったソレは、モノだ。"材料"たりえる。
銀波 嵐:「《"伐採"せよ》」
銀波 嵐:血が、肉が、あたり一面の黒砂と結びついて溢れ出す。
銀波 嵐:牙となり爪となり、当たりの怪異へ手当たりしだいに食らいつく。
銀波 嵐:巨大な骸骨の背骨を割り落とす、それを"支柱"とし、動く死体、女の顔を持つ猛禽、人体模型、二宮金次郎の銅像、首の長い女、人の顔を持つ犬。節操もなく絡め取り、引き寄せる。
銀波 嵐:漆黒の馬、鎌のような手の海老めいた人影、人の服を着た巨大な鼠、蜘蛛の胴体を持つ女。他にも他にも…。
ボルトに転じた赤砂が楔を穿つ。
銀波 嵐:石版めいた巨人をスライスしてまとわせる。巨大な肉の塊じみた怪異をばらばらに引き裂いていて隙間を埋めていく。
銀波 嵐:加電。強大な電界が唸りをあげる。
銀波 嵐:にらみ合うふたり、その後方で、うごめく怪異を束ねた異形の砲塔がゆっくりと鎌首をもたげる。
銀波 嵐:展開完了――命名、「《ハロウィン・カノン》」
銀波 嵐:今や完全となった"四枚"の翅がひとつにより合わされる、まるでつぼみが咲き花となるのを逆回しにしたように。
銀波 嵐:砲弾完成、装填。
銀波 嵐:そして2度目の――
銀波 嵐:「《イグニッション》」
銀波 嵐:カォォ――ン と、甲高い。まるで金属で出来た怪鳥が上げる雄叫びのように、
銀波 嵐:リニアと妖気によって絞り出されたそれが、条理を逸した速度で疾駆した。
“ベイルファイア”:「が──」
“ベイルファイア”:反応し、防御する間もなく。その身体を砲弾が穿つ。
“ベイルファイア”:大部分を弾き飛ばされ、断面から漏れ出る炎が身体を修復しようとするが、弱々しく消えていく。
“ベイルファイア”:「……」
“ベイルファイア”:「そん、な…………」
“ベイルファイア”:「何故、わたし、が……人間に…………」
銀波 嵐:「……」それを、少し困ったように眺めながら。
銀波 嵐:「ままならねえことがな、いっぱいあるんだよ」
銀波 嵐:「でも、悪いことだけじゃあねえ」
銀波 嵐:「ツンケンしててもさ、案外皆放っておいてはくれないもんだ」
銀波 嵐:「お知り合いになろうぜ、“ベイルファイア”」
銀波 嵐:「"人間の敵"じゃなく、ただの女子高生……銀波嵐とよ」
“ベイルファイア”:「………………」
“ベイルファイア”:何か言おうとして口を開き、
“ベイルファイア”:そのまま崩れ落ちる。起き上がることはない。
GM:同じく行動値7、リウトペルガさんの手番です
リウトペルガ・ウィンニール:待機で!
GM:では行動値6、早乙女さんの手番です
早乙女六華:マイナーで暴走解除
早乙女六華:メジャーで≪コンセントレイト:ウロボロス≫+≪原初の赤:氷の塔≫+≪プラズマカノン≫+≪原初の黒:オーバードーズ≫
早乙女六華:対象ワイルドハント
早乙女六華:12DX6+7
DoubleCross : (12DX6+7) → 10[2,3,3,3,6,7,7,8,9,10,10,10]+10[1,1,1,3,4,6,7,9]+10[6,7,10]+10[3,8,10]+10[4,8]+1[1]+7 → 58
ワイルドハント:が、ガード
早乙女六華:いや間違い
早乙女六華:今回は支援受けてないんだった
早乙女六華:6DX7+7
DoubleCross : (6DX7+7) → 10[2,3,3,6,8,10]+5[5,5]+7 → 22
早乙女六華:イィ~~~ン
リウトペルガ・ウィンニール:せっかくだしここで《妖精の手》しちゃおう
早乙女六華:リウトペルガ!
リウトペルガ・ウィンニール:最後の5を10に
リウトペルガ・ウィンニール:リウトペルガ・ウィンニールの侵蝕率を4増加 (133 → 137)
早乙女六華:1DX7+27
DoubleCross : (1DX7+27) → 10[7]+3[3]+27 → 40
早乙女六華:最高の女
銀波 嵐:豪勢なことだ
早乙女六華:5D10+54 ダメージ
DoubleCross : (5D10+54) → 26[7,7,6,2,4]+54 → 80
GM:何なんだよこいつはよ~~~~~~
リウトペルガ・ウィンニール:相変わらずデカい
珊瑚夜:つよいわ
GM:早乙女六華の侵蝕率を16増加 (132 → 148)
銀波 嵐:俺の相棒はつよいな♡
ワイルドハント:死んでる…………
綱井楪:えっ……
珊瑚夜:し、死んでる
綱井楪:死んじゃった(二度目)
リウトペルガ・ウィンニール:生きたり死んだりしている
GM:戦闘終了です
珊瑚夜:ウオーッ!!勝利!!
銀波 嵐:イヤッホーー
綱井楪:わ~~~い
リウトペルガ・ウィンニール:やった~~!
ワイルドハント:召喚者を失っても、ワイルドハントが止まることはない。
ワイルドハント:彷徨える魂を狩らんと、亡霊の狩猟団が再び蹄鉄を響かせる。
早乙女六華:「……捉えるのは骨が折れるな」
早乙女六華:「止められるか?リウトペルガ」
リウトペルガ・ウィンニール:「そんなに長くは持たないけどね」
リウトペルガ・ウィンニール:「でも、キミならそれで十分でしょ」
リウトペルガ・ウィンニール:そう言って、軽くウィンクしてみせる。
早乙女六華:「頼む」既に目を閉じ、集中の態勢に入っている。
リウトペルガ・ウィンニール:その答えを耳に、騎兵たちと再び向かい合う。
リウトペルガ・ウィンニール:(……"ベイルファイア")
リウトペルガ・ウィンニール:(キミの主張は全然共感できなかったし)
リウトペルガ・ウィンニール:(キミの願望にも絶対頷けないけど)
リウトペルガ・ウィンニール:「──でも、忘れないよ。ボクが覚えている」
リウトペルガ・ウィンニール:誰にも聞こえない声で呟き、迫り来る亡霊を見据える。
リウトペルガ・ウィンニール:
《χακραχ》《φνεσχηρ》《φιχρο》《φνυρω》《φωχω》《βωχ》
【600+1+2+100+1+600】+【500+50+5+200+600+8+100】+【500+10+600+100+70】+【500+50+400+100+800】+【500+800+600+800】+【2+800+600】
リウトペルガ・ウィンニール:「──即ち9999」
リウトペルガ・ウィンニール:9と9と9と9、金甌無欠の城壁が、彼らの足を押し止め──
リウトペルガ・ウィンニール:
《φρη》《ανωι》《φωρχω》《φυυυυ》《ρορψισ》《οροχωωι》
【500+100+8】+【1+50+800+10】+【500+800+100+600+800】+【500+400+400+400+400】+【100+70+100+700+10+200】+【70+100+70+600+800+800+10】
リウトペルガ・ウィンニール:「──即ち9999」
リウトペルガ・ウィンニール:9と9と9と9、十全十美の空間が、彼女の力を増幅する。
リウトペルガ・ウィンニール:古いギリシアの数秘術。
リウトペルガ・ウィンニール:それを行使する"魔女"の手に。
リウトペルガ・ウィンニール:小さな炎が灯っている。
リウトペルガ・ウィンニール:(ま、キミは喜ばないだろうけど)
リウトペルガ・ウィンニール:一瞬間、小さく苦笑し──
リウトペルガ・ウィンニール:早乙女六華。彼女の手を握る。
早乙女六華:穏やかな表情で目を開く。
早乙女六華:周囲の大気に自らの存在を溶かし、混ぜ合わせて同化する。
早乙女六華:早乙女六華にとってそれは、掌握と攻撃の手段であり、奇しくも綱井楪の攻撃を受けた敵と近しい、自らの存在を希釈させる自殺行為でもある。
早乙女六華:だが今なら、何も問題はない。
早乙女六華:自分はただ消えゆく雪ではない。早乙女六華という一つの存在だと。
早乙女六華:そう信じさせてくれる絆が、よすがが、確かに胸の内にある。
早乙女六華:雪とは、氷とは、六華の血であり、肉であり、魂そのものだ。
早乙女六華:操ることは、呼吸より容易い。
早乙女六華:冬の夜空に氷の結晶──六花が舞う。夜闇を白く染め上げて、月光を反射して幾重にも輝く。
早乙女六華:一面霜が降り、純白と化した床面から氷柱が伸び、影の騎士たちを貫き穿つ。
早乙女六華:透明な凍棘は次々とその数を増やし、串刺しにした馬と騎士を天高くまで押し上げる。
早乙女六華:真冬の月を背に、無数の氷柱が捻じれ、渦を巻く。形作られるのは巨大な氷の塔。
早乙女六華:その頂点では、ワイルドハント達を中心に、見る間に氷の結晶が形成されていく。
早乙女六華:巨大な六角を描くそれは、さながら空に輝く星めいて。
早乙女六華:「ワイルドハント。それに“ベイルファイア”」
早乙女六華:「お別れだ、旧き同胞」
早乙女六華:「あの世で会おう。生憎、もう少し先の話になるが」
早乙女六華:巨大な塔が砕け散り、無数の粒子となって弾ける。
早乙女六華:きらきらと煌めきながら辺りに降り注ぐ。そこに影は一片も無い。
GM:“ベイルファイア”の術式を失い、残った怪異たちも消えていく。
GM:百鬼夜行は、全て何事も無かったかのように消え去って────
GM:後には、凍てつく夜の静寂だけが残った。
---
GM:バックトラックは……特殊ルールにより全員帰還!
珊瑚夜:やった~~!!!
GM:よかったね~
銀波 嵐:わーい
リウトペルガ・ウィンニール:いや~よかった
綱井楪:めでたしめでたし
銀波 嵐:いっけんらくちゃく
GM:基本5、シナリオ10、EとDロイスで3点
GM:侵蝕点は一律として、全員に経験点23点差し上げます
銀波 嵐:イタダキマース!
珊瑚夜:ウオーッありがとうございます!
リウトペルガ・ウィンニール:いただきます!
綱井楪:むしゃむしゃ
【Middle latter half/銀波嵐】
GM:最後のシーン権を獲得したのは銀波さんです。
GM:誰を指名しますか?
銀波 嵐:全員です
GM:では全員登場になります。登場侵蝕は不要です。
:私が持っているものは記憶だけだ。それらを大切に思う。
:対してあの子は……色んなものを持っている。
:登山リュックの細々とした品々。小さなカメラの中の12枚の風景。
:新品のデジタルカメラ、大きなアルバムブック、財布の中に隠した水族館の半券、他にも色々。
:新しいものすら次々と手に入れて、
:ああ――羨ましいな、と思う。
:でも悔しくは無い、私は誰ものが羨むものを手に入れる。
:そのために準備をしてきた。
:だから今がその時だとわかる、――ここしかない。
:パンッ と、乾いた音。
:嵐の首がねじれ、そこから突き出た腕。
:まるで寄生樹のようなそれ、握ったピストル、たなびく煙。
:1.珊瑚夜 2.リウトペルガ・ウィンニール 3.綱井楪 4.早乙女六華
:1d4
DoubleCross : (1D4) → 3
:綱井楪に向けられた、ソレ。
:ぎゅるり、とクレイ・アニメーションさながらの質感で人体がぐるりと裏返り。
:「……」
:「ハロー、皆さん」
:「マイネームイズ、嵐・銀波。……よろしくね!」
銀波 嵐:いつかと同じ姿で、そう名乗った。
早乙女六華:「……ッ……楪!!」瞠目し、血相を変えて駆け寄る。
綱井楪:「…………」
綱井楪:腹に当てた手を持ち上げて見る。べったりとついた赤い液体。
綱井楪:同じものが、唇の端からもひとすじ垂れて。
銀波 嵐:周囲を眺める。
銀波 嵐:みんなのびっくりした顔。当然か、とても嬉しい。
綱井楪:「……な、ぎ」
綱井楪:小さく呟き、その場にくずおれる。
珊瑚夜:「…………え」目を見開いて、楪に六華が駆け寄るのを見た後。
銀波 嵐:「あれ、なんか反応薄いな……もしもーし!」
珊瑚夜:「…………『凪』ね?」
リウトペルガ・ウィンニール:「な、……」
リウトペルガ・ウィンニール:その光景に目を見開く。そこに覗くのは驚愕と──。
早乙女六華:「楪、……楪!」
早乙女六華:「しっかりしろ!わたし達はこの程度では死なない、意識を保て!」
綱井楪:震える手で六華の手を掴む。
綱井楪:温度の差がほとんど感じ取れない。
銀波 嵐:「ん フ」嬉しそうに、笑顔で返す。
銀波 嵐:「ちがいますよぅ」
銀波 嵐:「私は嵐、私が嵐なんです」
銀波 嵐:「"嵐"は二年前に産まれた……みんな、そう思っていたみたいですけど」
銀波 嵐:「本当は最初からいたんですよ、ふたりだけの秘密でしたけどね」
銀波 嵐:本当のことだ。
銀波 嵐:凪と嵐、二人で一人の姉妹。産まれた時からずっと一緒。
銀波 嵐:「実はですね、今まであなた達が"嵐"だと思っていたのが、"凪"だったんですよ」
銀波 嵐:ポスンと、両手を打ち鳴らし、注目!というようなポーズで。
銀波 嵐:「2年前のあの時、本当は何があったのか教えてあげましょうか?」
銀波 嵐:かつての凪がよくそうしたように、悪戯な顔で笑う。
珊瑚夜:「…………そうね。すっかり混乱しているから、説明をしてもらえると助かるわ」珍しく苦々し気に見つめている。
銀波 嵐:「懐かしいですよね、せんせ」
銀波 嵐:「楽な任務だと聞かされていました……でも」
銀波 嵐:「せんせと凪の能力は完全に対策がなされてて……絶体絶命。だから、私が表に出た」
銀波 嵐:「懸命にちからを振るい、ふたりを助けた。大活躍だったんですよ?私」
銀波 嵐:そして知った、……知ってしまった。凪と嵐、二人の秘密を。
銀波 嵐:珊瑚夜の顔を見つめる。
銀波 嵐:「ねえ夜先輩、私、サメなんです」
銀波 嵐:「サメの子どもだったんです、私たちは」
銀波 嵐:ある種のサメは、母の胎内で兄弟姉妹を食い尽くして産まれてくる。
銀波 嵐:偶然テレビで流れていたこのドキュメンタリを、凪はやけに熱心に観ていたことを思い出す。
銀波 嵐:きっと彼女は知っていたのだ。本当に腹が立つ。
銀波 嵐:「わたしたちはね」
銀波 嵐:「侵食限界を超えて能力を行使する際、そのリソースとしてお互いを食べてしまうんですよ」
銀波 嵐:これが、私たちの秘密。
銀波 嵐:凪と嵐は助け合う姉妹ではなく、喰らい合う生存競争の敵同士。
銀波 嵐:それを知った時、取り返しはつきようもなかった。
珊瑚夜:「……1人の肉体の中に……2人の『人格』がいるというのなら、そういうことが起こってもおかしくはないでしょうね」
銀波 嵐:「私ね、凪に言われるままに全力で戦って……あの子を、食べてしまったんです」
銀波 嵐:「だから、あなた達が"嵐"と呼んでいたあの子……"凪"は、目覚めた時、空っぽだったんです」
早乙女六華:「……そういうことか」
早乙女六華:睨むように凪を──嵐を見遣り
早乙女六華:「今更出てきて何のつもりかと思ったが……」
早乙女六華:「逆だったわけか。『今』しか出てこられなかった」
銀波 嵐:その眼光を涼しげに受け止める。
銀波 嵐:「フフ、ザッツライ」
銀波 嵐:タクトのようにひと差し指を小さく振って、楽しげに話す。
銀波 嵐:ふとその動きを止め、小首をかしげる。
銀波 嵐:「やっぱり……この姿は少しいただけないな、紛らわしーですしね」
銀波 嵐:そうだ、これは"凪"の姿。あれから二年、私も成長しているだ。
銀波 嵐:ならば――。
銀波 嵐:私のシンドロームはモルフェウスを主体としたソレだ。
銀波 嵐:戦闘用人格とは名ばかりで、支援タイプである珊瑚夜を除外すればおそらくここにいる誰よりも弱いだろう。
銀波 嵐:ただ、凪とは違い"己の肉体"という感覚を本来持たない私はちょっと特殊なことが出来る。
銀波 嵐:「《肉体錬成》」
銀波 嵐:ぐにゃり、と身体が歪む、全身の細胞が錬成―置換されその姿が"現在"のソレへと巻き戻っていく。
銀波 嵐:――髪は、長い方が良い、色もかつてのソレだ。あの子のショートもよく似合っていて素敵だったけど。
銀波 嵐:服は、パーティの主役なのだ、ドレスじゃないと嫌だ!夜空のような色が良いと思った――血を流してうずくまる、綱井楪の羽根のような。
銀波 嵐:たなびく闇をまとって現れる。銀のハイヒールを瓦礫の上に突き立てて、
銀波 嵐:UNGエージェント銀波凪が戦闘用人格――『嵐』。コードネームを《殻の黒曜》。
銀波 嵐:「……改めまして、ごきげんよう」
銀波 嵐:「この時を……ずっと待ち望んでいました」
銀波 嵐:「皆に、ずっと、会いたかった」
銀波 嵐:「私、今、しあわせだよ」
銀波 嵐:片手に握ったピストルをフラフラと振りながら。
銀波 嵐:カツ、カツ、――と歩き始める。
珊瑚夜:「……何を、する気なの?」
珊瑚夜:姿を変えた彼女に混乱し息を吞んだが、凶器を手に歩く彼女を警戒する。
早乙女六華:「……」周囲に冷気が満ちていく。
銀波 嵐:「ああそうそう、そうでした。どうして私がこんなことをしているのか、ですね」
銀波 嵐:「レネゲイドが限界まで活性化し、こうして私が意識を乗っ取れるほど凪が消耗してて、みんなもへとへとで」
銀波 嵐:「千載一遇のチャンスなんですよ」
銀波 嵐:目を輝かせて、言う。
銀波 嵐:「私たちはいずれどちらかがどちらかを食べ尽くすでしょう。成長し、オーヴァードとして力をつけるごとにそのリスクは高まっていきます」
銀波 嵐:「避けられないんです、それは」
銀波 嵐:「それで……勝敗なんですけど、まあ十中八九私が負けますよね」無邪気な少女の笑顔で。
銀波 嵐:「今がその十中一二なんですよ!」
銀波 嵐:「だから、今から…今度は最後までちゃんと食べ尽くそうと思って……」
銀波 嵐:拳銃を構える。
銀波 嵐:銀波嵐の能力、記憶をコストに、ある特殊な弾丸へと錬成する。
銀波 嵐:決して強い能力ではない。ただし、この場、この相手たちにおいては――。
銀波 嵐:「(当たらないはずがない。効かないはずもない。優しい優しいあなた達が、この"思い"を避けるなど)」
銀波 嵐:侵食限界を超えてちからを行使する際、自分の別人格を喰らうオーヴァード。
銀波 嵐:ならば記憶を弾へと変換する能力の、現在の材料。それは当然――。
銀波 嵐:ちからが、行使される。
銀波 嵐:思いは錬成される。粒となって、金属となって。形成―装填。心を穿つためのかたちへ。
銀波 嵐:それは正しい相手に向けることで、あらゆる防壁を貫くはずだ。
銀波 嵐:「《私の弾はたがえない》」
銀波 嵐:引き金を…引く。破裂音。
銀波 嵐:銃口が指し示すのは……珊瑚夜。
珊瑚夜:「う、ぐ…………っ!」
珊瑚夜:その弾丸に容易く貫かれる。
銀波 嵐:「あは♪」
銀波 嵐:「夜先輩、知ってました?凪は先輩のことが好きだったんですよ?」
珊瑚夜:珊瑚夜はもとより攻撃性能を持たず、スポーツなどでなく命のやり取りの場では当然防御も脆い。
珊瑚夜:「そ、……う、だったの?」
珊瑚夜:長身を折り、膝をつき血を流す脇腹を抑える。
銀波 嵐:「そうだったんですよぅ」
銀波 嵐:「凪はずっとあなたを目で追っていたから……当然私もあの子の内側で先輩を見ていました」
銀波 嵐:「ねぇ、先輩、私のものになりませんか?」
銀波 嵐:「好きなんです、だってずっと見ていたから……私と凪は同じだから」
銀波 嵐:「甘やかしてあげますよ?先輩がそうしてくれたように」
銀波 嵐:「ずっとそうされたいって思ってましたよね、頭のてっぺんから尻尾の先までぐずぐずに」
珊瑚夜:「っ、……あまり、人を口説くときに」
珊瑚夜:「銃で撃つというのは冴えたやり方ではないわ」
珊瑚夜:「…………」その言葉に気まずそうに目を反らす。
銀波 嵐:「やだな、これっきゃないじゃないですか」
銀波 嵐:「せんせはつれないし、他人を遠ざけようとするから……ずっとやきもきしてましたよね」
銀波 嵐:「拗ねる先輩も可愛かったなぁ……」
銀波 嵐:夜を誂えたドレスをクルリとひるがえす。
銀波 嵐:「私、悔しくって……せんせとまとめてね、ぐちゃぐちゃにしてやりたいなあって思ってたんだよ、ずっと」
珊瑚夜:「……本当に、私をよく見ていたのね……」
銀波 嵐:引き金を引く。赤い花が割く。二輪目。
銀波 嵐:「アハ、アハハ……夢が……叶っちゃいますよ!」
銀波 嵐:心底おかしそうに、幸福そうに目を細め、笑う。
銀波 嵐:「先輩!先輩!そう、私を見て、私を見るんです。銀波嵐を、目を逸らさないで!」
銀波 嵐:続けて撃つ、撃つ。
銀波 嵐:「せんぱい…?返事してくださいよぅ……」拗ねたように。
銀波 嵐:「ア、ごめんなさい、当たりどころ悪かったですか?」
珊瑚夜:「う……」
銀波 嵐:たたた、と駆け寄り。
銀波 嵐:「えい♪」次弾錬成―装填。引き金を引く。
珊瑚夜:撃たれ、撃たれ、撃たれ、撃たれ、血を流し虚ろな目をむける。
銀波 嵐:「だいじょうぶ、あとでまたお話しましょ」――次の獲物へ。
珊瑚夜:「ぐ、」
珊瑚夜:撃たれ、びくりと身体を跳ねさせ、静かになる。
銀波 嵐:リウトペルガ・ウィンニール、同僚、かつての仕事仲間で、私たちの恋敵。
銀波 嵐:いつも楽しげな笑みを崩さないその顔が、今は。
銀波 嵐:「せんせ、気に病まなくって良いんですよ、あれは凪が全部悪いんですから」
銀波 嵐:私はたしかに凪とせんせ、ふたりを庇ったが、アレはハッキリ言って自爆だ、凪の。
銀波 嵐:「ほんと、優しくって……弱虫、私を食べる覚悟が無かったんですよ……あの子が最後の羽を出してれば……」
銀波 嵐:銀波凪、七枚の光刃を操るオーヴァード。
銀波 嵐:左右非対称で、バランスが悪いとずっと思っていたのだ。……おそらく、"完全"は八枚。
銀波 嵐:「ねえ、せんせ」
銀波 嵐:「最近なんだかまた夜先輩とべたべたしてますよね、お二人は別れたんじゃ?」
銀波 嵐:口元に拳を置いて、小首をかしげる。
リウトペルガ・ウィンニール:「……ま、色々あってね。キミが見ていない間にさ」
銀波 嵐:「ふーん……」
銀波 嵐:「ねえ……くださいよ夜先輩。私に、今度こそキッパリあきらめて」
リウトペルガ・ウィンニール:「そうするのが、本当ならいいんだろうねぇ」
銀波 嵐:「何ですかその言い方……」
リウトペルガ・ウィンニール:「But I am constant as the northern star,《が、自分は動かない。》」
リウトペルガ・ウィンニール:「Of whose true-fix'd and resting quality 《確固不動を特質とすることに於て》」
リウトペルガ・ウィンニール:「There is no fellow in the firmament. 《碧落中に又と類ひのない北極星の如くに。》」
リウトペルガ・ウィンニール:「──だ」
リウトペルガ・ウィンニール:「いいかい、ボクは怖がりな子供で」
リウトペルガ・ウィンニール:「疲れきった老人だが」
リウトペルガ・ウィンニール:「子供であるがゆえに、一度握ったものは話したくない」
銀波 嵐:「要するに、ノーだと」
銀波 嵐:今という時間は、この小さく可愛い長命者にとって長い長い一生の、ほん少しの一部なのに……。
銀波 嵐:私には今だけだ、この"一瞬だけ"。なのにこの女はそれすら分けてくれないというのか。
銀波 嵐:……一度は手放したくせに。
リウトペルガ・ウィンニール:「老人であるがゆえに、一度決めたことに頑迷なのさ」
銀波 嵐:「私たち、せんせのこと、好きですよ、大好き」
銀波 嵐:「だから許せないな」引き金を引く。――パン、と素っ気ない音。
銀波 嵐:「敵になる努力をしてくださいよ、ちゃんと。この気持ちを何処へもっていけばいいんですか……」
銀波 嵐:「ちゃんと憎ませてほしかったな、骨の髄まで」
銀波 嵐:「優しくしないで、私たちに笑いかけないで、ああ、せめて興味もないって顔をしてくれたらさ……」引き金を引く、引く、引く。
リウトペルガ・ウィンニール:「ぐ、……」腹に銃弾を受け、それでも不敵に笑う。
リウトペルガ・ウィンニール:「どうしたんだい、そこじゃないだろ」
リウトペルガ・ウィンニール:嘯き、己の左胸を指す。
リウトペルガ・ウィンニール:「Come, Cassius' sword, and find Titinius' heart.──《さァ、カシヤスの劍よ、 チヽニヤスの心を見て來い》、だ」
銀波 嵐:「いいや、こうして……機会は回ってきたんだ」
銀波 嵐:苛ついたように、
銀波 嵐:「くらえ淫行教師」特大を込める。錬成―装填。引き金を引く。
銀波 嵐:ああ忌々しい、届くがいいさ我が思い。――次の獲物へ。
銀波 嵐:兇弾の行方を確かめることもせず、くるりと身体を回す。
銀波 嵐:「ユズちゃん……久しぶりですね」長年の友人にそうするように、笑いかける。
綱井楪:「……久しぶり……か、初めまして、か」
銀波 嵐:早乙女六華に抱きすくめられる彼女。ちょっと邪魔だなあの子……。
綱井楪:流れ出る血もそのままに見上げる。
綱井楪:「分からないな。……さっきの理屈で行くと」
綱井楪:「私は嫌われていたのかしら」
銀波 嵐:「え、なんでそうなるんですか、私たち、あなたのこと大好きですよ」
銀波 嵐:「凪があげた『ツチノコの抜け殻』、まだ部室に飾ってましたね……あれ嬉しかったな」
銀波 嵐:「いっつも凪にいじわるされて目をぐるぐる回してたのに、なんだか余裕がある感じになっちゃって……そこはちょっと面白くないですね」
銀波 嵐:口を尖らせる。
綱井楪:「…………凪」
綱井楪:「ずっと凪だったのね。あの子」目を伏せる。
銀波 嵐:「そうですよ、ずっと、凪だったんです」
綱井楪:余裕。ああ、そうだ。
綱井楪:かつての彼女には随分と、余裕のないところを見せた。
綱井楪:始まりは、いつかの任務の終わり。
綱井楪:厳しい戦いで、ひどく力を使って。
綱井楪:とても渇いてしまったから。
綱井楪:「……全然気付かなかった」
綱井楪:「記憶のあるなしで変わり過ぎよ」
銀波 嵐:「ね、私も色々そそのかしましたけど、ああまで違うのはびっくりかな」
銀波 嵐:「ね、ユズちゃん」
綱井楪:「……なに?」
銀波 嵐:「あなた他にも色々もらってたじゃないですか……いつだったか、オーパーツだって渡された妙ながらくた、あるでしょう?」
銀波 嵐:「あれ、凪じゃなくて私が作ったんですよ?」
銀波 嵐:「ほぉんのたまにね、私も表に出ることができたから」
銀波 嵐:「凪ってば、100均やリサイクルショップで必要のないものをいっぱい買っちゃうでしょ?」
銀波 嵐:「うちに溜まってたそれを分解して、組み立てたんです」
銀波 嵐:「結構自信作です……まだ、持っててくれてます?」
綱井楪:頷く。
綱井楪:「持ってる」
銀波 嵐:「ああ……嬉しいな」
銀波 嵐:「うん……嬉しい、とても嬉しい」
銀波 嵐:私のつながりは、ちっぽけだ。
銀波 嵐:凪とのソレ以外は、数少ない。
銀波 嵐:そのひとつがまだ繋がっている。一方的でも、そう思い込むことができる。
銀波 嵐:ちっぽけだけど、頼もしい。私と貴方を紡ぐニセモノのアンティキティラ。
銀波 嵐:「でもなーー、あんなに凪にべったりだったのに…」錬成―装填。
銀波 嵐:「いけませんね、教育が足りなかったのかな?」引き金を引く。
銀波 嵐:「また"遊びましょう"ね、それまでそこでじっとしててください」――次の獲物へ。
銀波 嵐:未だこちらを鋭く睨みつける彼女を見る。
銀波 嵐:凪の新しい相棒。ちいさく可愛く、頼もしい雪女の女の子。
銀波 嵐:「六華さん……」
銀波 嵐:「凪がたいへんお世話になりました。せんせもだけど、なんというか……面倒見が良くて、優しいよね長生きのひと」
早乙女六華:「……」楪を抱えたまま、見据える。
銀波 嵐:「そうじゃないのもいたけど」倒れ伏す赤髪の女に一瞬視線を送って。
銀波 嵐:「私も、あなたとの思い出が欲しかったな……」
銀波 嵐:これは本当の気持ち。
銀波 嵐:「そんなこと言われても困っちゃいますよね、どうです?私が憎いですか?」
銀波 嵐:「こんなのが凪とのお別れで、悲しいよね、納得行かないですよね」
早乙女六華:「……嵐」
早乙女六華:「いや、凪なのか?……どっちでもいい」
早乙女六華:目の前の女に、否、その向こうの少女に話し掛ける。
銀波 嵐:「そんなつれないこと言わないでくださいよぅ」
早乙女六華:「……フィルムはもう、埋まったんだろう」
早乙女六華:「見つかったのか、『意味』は」
早乙女六華:その言葉を半ば無視するようにして続ける。
早乙女六華:「まだなら、さっさと起きろ」
銀波 嵐:「六華さん……私を見てます?」
銀波 嵐:「やだな、それは、ムカつく」引き金を引く。―破裂音。
銀波 嵐:パーティーの主役は私だ、これは、これだけはいただけない。
早乙女六華:雪の結晶めいた防壁が展開され────容易く破られ、砕け散る。
銀波 嵐:「アハ、無駄ですよ」
早乙女六華:銃弾は六華の左胸、心臓に吸い込まれて──
早乙女六華:「が、はっ……」
早乙女六華:鈍い金属音と共に、軌道が逸れる。
銀波 嵐:「その銃弾は嵐の"思い出"ですよ」
銀波 嵐:「あなたは避けられるようなひとじゃあ……?」
銀波 嵐:眉根を寄せる。
早乙女六華:胸元、破れたジャケットから僅かに覗くのは、オイル式のカイロ。それが辛うじて致命傷を防ぐ。
早乙女六華:「……ゴホッ……」咳き込んで、彼女を見る。
銀波 嵐:「フフ」それを見て、嬉しそうに。
銀波 嵐:「ごめんなさいね」
銀波 嵐:「私が、私が全部悪いんです。あの時ちゃんと、残さず食べ尽くさなかったから」
銀波 嵐:「こんな面倒なことになってしまいました……」
早乙女六華:「……」
銀波 嵐:「変に希望をぶら下げる形になっちゃって……せんせを笑えませんね、私」
早乙女六華:「いいから、起きろ」
早乙女六華:「……遊園地だろうと、動物園だろうと」
早乙女六華:「わたしがどこでも連れて行ってやる」
早乙女六華:「わたしのバディなら、いつまでも寝てるんじゃない」
銀波 嵐:「いいなぁ六華さん、やっぱすごく良い」錬成―装填。引き金を引く。
銀波 嵐:「でも、私を見てって言ってますよね」――次の、なんだもういないや。
銀波 嵐:弾丸を錬成。
銀波 嵐:傷ついた面々へふたたび銃口を向ける。
銀波 嵐:「アハ……ホラ、はやくしないと凪がなくっちゃいますよぅ」
早乙女六華:「ッ……」噴き出す血の代わりに、肩口が雪と化して吹き飛ばされる。
銀波 嵐:嘘です。
銀波 嵐:……凪は嘘つき、凪にできて嵐に出来ないはずがない。
銀波 嵐:そのはずだ、私は今、一生懸命、とてもがんばっている。
銀波 嵐:コレは、"私の記憶"。それを錬成し、弾へ。
銀波 嵐:今までずっとそれを試していた。時間はたくさんあったから。あの子は夢だと思っていたけれど。
銀波 嵐:本来あるべき形。自分を喰らい、自分のちからを行使する。
銀波 嵐:ふたりで作った絞首刑台。私だけの花道。その十三段を一歩ずつ登る。
銀波 嵐:そうだ、私はここに死にに来た。
銀波 嵐:装填し、引き金を引くたびに己の中から大切なものが失われていく。
銀波 嵐:――怖い、指が震え、くじけそうになる。
銀波 嵐:勇気がほしい、こみ上げる液体を無理やりに嚥下し、冷えてゆく背骨に偽りの熱を注ぎ込む。
銀波 嵐:あの人達に咲いた傷口が、その血の赤が私の思いを証明してくれている。
銀波 嵐:そう思うことで身体と心はまだ動く、震える指で弾を込める。
銀波 嵐:号砲は既に放たれた。後戻りはもうできない。最後までこの演目をやりきって見せる。
銀波 嵐:計画の始まり、それを思いを馳せる。
銀波 嵐:
銀波 嵐:ある日、何も無い世界に投げ出された。
銀波 嵐:私の世界の全てであった凪が、ごっそり失われてしまったのだ、犯人は私。
銀波 嵐:無垢な赤子のようになってしまった凪を前にした私は、慌てて、怖くて、つい……呪いをかけた。
銀波 嵐:あの子を独占できるよう、孤立し、私にすがるよう。
銀波 嵐:怖かった、途方もなかった、世界はあまりにも広すぎて、自分はちっぽけだ。
銀波 嵐:"よすが"となるものが必要だ、だから嵐はそれを凪に求めた。
銀波 嵐:後悔が安心に追いついた頃に、私は決心した。
銀波 嵐:戦闘用人格『銀波嵐』はもとより凪のためのもの。
銀波 嵐:排除せねばならない……生きているだけで彼女の命を脅かす"敵"、すなわち嵐を。
銀波 嵐:ただでは死なない、私の欲望のために死のう。
銀波 嵐:そうでもないと、弱い私はきっとやり遂げられない。
銀波 嵐:欲しい物があった。
銀波 嵐:凪、凪が欲しい。かつての凪が消えて、私に消えない傷を残した――その傷が私も欲しい。
銀波 嵐:夜先輩が欲しい。ユズちゃん。せんせ。早乙女六華、あの子だって欲しい。
銀波 嵐:ずっと見ていた。一緒に居た。ただ見ているだけだったけど、そこにいたのだ。
銀波 嵐:私を見てください、私を忘れないでください、私はここにいる。一生で一度のワガママ。
銀波 嵐:皆が、私を忘れられなくなればいい。それが私の生きた証になる。
銀波 嵐:なんだかそれはとてもいい考えのように思えた。死ぬのは恐ろしかったが、それ以上にワクワクして胸が熱くなった。
銀波 嵐:このいのちを、燃やし尽くす。美しく光れば良い。
銀波 嵐:『自分はいずれ消えるから』
銀波 嵐:ごめんね、凪、それは本来全部私が言うべきことだったのさ。
銀波 嵐:これからあなたにもっとひどいことをするけど、それは許さなくていいよ。
銀波 嵐:
銀波 嵐:夜先輩。いつだって優しくて、生活能力ゼロで、どこか危なかっかしいのにいつも結局最後はなんとかしちゃう、無敵のヒーロー。
銀波 嵐:私たちの憧れのひと。
銀波 嵐:リウトペルガ・ウィンニールせんせー。頼れる仲間。憎き恋敵。
銀波 嵐:凪と私はその無邪気な、それでいて少し寂しそうな笑顔がどうしても嫌いになれずにとても困っていました。
銀波 嵐:ユズちゃん。除き趣味を、許せ。
銀波 嵐:フワフワの髪、濡れた瞳、か細く震える肩、真っ赤な耳、そして――いいなぁ凪、私も触りたかったなぁ。
銀波 嵐:六華さん。凪の保護者としては私とあなたじゃ年期が違うんですよ、ヘヘン。
銀波 嵐:とは言うものの少々敗北感。怒ってもいる。
銀波 嵐:餌をやったからには責任持ってちゃんと飼ってもらわないと。だからこれで、なるべく私と凪のこと以外考えられなくなっちゃえばいいなって、そう思います。
銀波 嵐:消える、消えていく、私の中から無くなって行く。
銀波 嵐:やめて、やめてと追いすがる。
銀波 嵐:ごめんなさい、今すぐやめます、だからそれを返してください。
銀波 嵐:凪にすがってわんわんと泣きたかった。
銀波 嵐:ばかめ、おまえがはじめたんだろうが。
銀波 嵐:ここで止めたらそれこそ最悪だ。弾を込める。
銀波 嵐:勇気が欲しかった。凪を、皆を思うとそれが湧いてきたが、今やそれもおぼろげ。
銀波 嵐:錬成、
錬成、
錬成。
銀波 嵐:「あ……」
銀波 嵐:視界がかすむ、残った私を必死にかき集める。
銀波 嵐:撃たねば、■■を?どうやって?
銀波 嵐:"戦闘回路"が応える。自動的にそれを成す。
銀波 嵐:装填、構え、狙い――撃つ。
銀波 嵐:ああ、ノイマンシンドローム。……今まで私にはぜんぜん扱えなかったのに!
銀波 嵐:『ねえ嵐』
銀波 嵐:思い出が、語りかけてくる。
銀波 嵐:『レネゲイドは、思いに感応するらしいですよ』
銀波 嵐:届いたのだろうか、私の思いが。
銀波 嵐:『だとしら私……姉妹が欲しかったのかなあ』
銀波 嵐:ふにゃりと、幸せそうに笑う■の顔。綺麗だと思う。きっと大事な思い出だ――錬成。
銀波 嵐:『ああ……お前ただの大馬鹿だったのな』
銀波 嵐:これも知らない誰かの声。私の隣から。
銀波 嵐:フフフ、じつはそうだったのだよ、気付くのが遅かったな。
銀波 嵐:『いや、遅いってことはねぇよ』
銀波 嵐:そうなの?まあいいか……。
銀波 嵐:勇気が、湧いてきた。
銀波 嵐:装填、構え、狙う。
銀波 嵐:視界が真白く染まり――
銀波 嵐:
銀波 嵐:Dロイスを昇華します。
【Ending】
銀波 凪:事件より数日の後、一同を集めた嵐―いや凪は、
銀波 凪:「……おう」
銀波 凪:「なんというかその……お疲れ」
銀波 凪:「そして、……その、すまん……」
銀波 凪:神妙な顔。
銀波 凪:「ホラ……お前も謝れよ」
銀波 凪:ずいと、己の影に隠れていたソレを押しやる。
銀波 嵐:「……」
銀波 嵐:「見に覚えのないことで……謝れとか言われましても……」
早乙女六華:「……」
早乙女六華:「まさか増えるとは……」
銀波 嵐:「いや……なんか、上手く行ってしまったな……」驚き、という顔。
珊瑚夜:「…………銃で撃たれると、痛いのよ?」
珊瑚夜:呆れたような声で当然のことを言う。誰よりも撃たれた割には誰よりもピンピンしている。……あるいはオーヴァードというのはそういうものかもしれないが。
銀波 凪:「知らんし……そんな記憶ございませんし……」
綱井楪:静かな表情でじっと二人を見ている。
リウトペルガ・ウィンニール:「……とりあえず、説明をお願いしてもいいかな?」
銀波 嵐:「まあ、そうだよな……」
銀波 嵐:話は少々さかのぼり、いつかのカラオケボックス。
銀波 嵐:「なんつぅかさ……凪の記憶?みたいのが、たまに見える」
銀波 嵐:「あいつが何をやろうとしてるのか……みたいのが、うっすらわかってきたような……」
銀波 嵐:「確証もないし気取られるのも嫌だから全部は言えないけどよ」
銀波 嵐:空のグラスを手の中でクルクルと回し。
銀波 嵐:「もしこの先、仕掛けてくるようなことがあれば……」
銀波 嵐:「皆には、なるべく受け止めて欲しいと思う、難しいかもしれねえが」
早乙女六華:「……受け止める?」小首を傾げる。
銀波 嵐:「たぶんそれが必要なことだと思う」
珊瑚夜:「……『凪』は嵐さんに危害を加えるようなことはしないとは思うけれど」『凪』と話したときの様子を思い起こす。
珊瑚夜:「『仕掛けてくる』というのを受け止める、というのはなかなか新鮮ね」
銀波 嵐:「それと……センセ」
銀波 嵐:「教えてほしいことがある」
リウトペルガ・ウィンニール:「ん、なんだい?」
銀波 嵐:「センセの"魔女の技"が知りたい」
銀波 嵐:条件は整っていた
銀波 嵐:限界を超えたレネゲイド侵食、嵐の能力―肉体の錬成に、精神を外部へと錬成出力するわざ。
銀波 嵐:あとは、それを乗っ取る。急ごしらえの児戯でいい、指先さえねじり込めれば……ふたりは元々ひとつなのだから。
銀波 嵐:「俺は……あの時、弾丸をかき集めて……こしらえた新しい肉体にそれを突っ込んだ」
銀波 嵐:「燃えてしまった部分もあるから……今までのこと半分も覚えちゃいねえが」
銀波 嵐:「それなりに上出来な結果なんじゃねえかと思う……」
綱井楪:「……」
綱井楪:静かな表情でじっと二人を見ている。
銀波 嵐:「逆変換がうまくいけば……これから少しずつ思い出していくかもしれねえ」
リウトペルガ・ウィンニール:「ははぁ──なるほどね」
早乙女六華:「よく分からんが……まあ、丸く収まったんだな?」
珊瑚夜:「……詳しく説明できなかったことも今なら理解できるけれど」『凪』の視点を『嵐』は見ていた。具体的なことを言ったら対策を取られていたかもしれない。
珊瑚夜:「もう少し何とかならなかったのかしら!さすがに驚いたわ」
銀波 嵐:「知らんし……」
珊瑚夜:「ああ……あるいはあなたの見たかった『本気で驚いた私』が見られたのかもしれないわね!」そう言って楽しそうに笑う。
リウトペルガ・ウィンニール:「それなら、これも返しておこうか」
リウトペルガ・ウィンニール:そう言って、ポケットの中から何かを取り出す。
リウトペルガ・ウィンニール:それは──銃弾だ。あの夜、『嵐』が放ち、そして四人に当たることなく逸れ、消えていったはずの。
銀波 嵐:「何ですかそれ、くれるんですか?」
リウトペルガ・ウィンニール:「いやなに、ボクもちょっと細工をしててね」
リウトペルガ・ウィンニール:「受け入れるだけって話だったけど──」
リウトペルガ・ウィンニール:「あの生成手順を見てると。……一つも、取りこぼしたくなかったからさ」
リウトペルガ・ウィンニール:あのとき──
リウトペルガ・ウィンニール:倒れながら、気づかれぬよう小さく口にした呪文。
リウトペルガ・ウィンニール:
《Ιαω》《Αρβαρβαφραραφραξ》《Ραθραθαξ》
【10+1+800】+【1+100+2+1+100+2+1+500+100+1+100+1+500+100+1+60】+【100+1+9+100+1+9+1+60】
『──即ち2662』
リウトペルガ・ウィンニール:26にして62・62にして26。
リウトペルガ・ウィンニール:最小単位の回文を示す数秘術。
リウトペルガ・ウィンニール:本来なら逸れ、飛び去り、消えたはずの記憶の弾丸は──
リウトペルガ・ウィンニール:屋上に張り巡らされたその術式により、『飛び去り』『飛び来る』ループに囚われて、その場に留まり続けた。
リウトペルガ・ウィンニール:「……そうさ、キミにあげる。いや、キミたちに、返すんだね」
リウトペルガ・ウィンニール:
《Wazj sōhtut?》
『汝らは何を求めたるか』
リウトペルガ・ウィンニール:
《Wār wārut?》
『汝らは何処にありたるか』
リウトペルガ・ウィンニール:
《Wannna quimis?》
『汝は何処より来るか』
リウトペルガ・ウィンニール:
《──Wer pist dū?》
『──汝は誰なるか』
リウトペルガ・ウィンニール:呪文と共に弾丸が解け、"凪"と"嵐"の身体へ還ってゆく。
銀波 嵐:「?!」
銀波 嵐:「い、今何したんですか?!」
リウトペルガ・ウィンニール:「さてね。……ただ」
リウトペルガ・ウィンニール:「──やっと、ちょっとは先生らしいこともできたかな」
リウトペルガ・ウィンニール:そう言って、いたずらっぽく笑う。
銀波 嵐:「……」
銀波 嵐:「ありがとな、センセ」
リウトペルガ・ウィンニール:「どういたしまして」軽くウィンク。
銀波 嵐:「……という……わけ……なんだが」
早乙女六華:「で……結局」二人をまじまじと見て
早乙女六華:「どっちが嵐で、どっちが凪なんだ?」
銀波 凪:「まあ……俺が凪ってことになるか……」
銀波 凪:「妙な気分だな」
銀波 凪:「皆には……本当に迷惑かけた」
銀波 凪:「支払いきれるのかはわからねぇが、俺にできることなら何でもする……」
銀波 凪:「ただ、今は……」
銀波 凪:「ありがとう」
珊瑚夜:「本当だわ!」そう言いながらも楽しそうに笑う。
珊瑚夜:「けれど、まあ……終わり良ければ総て良し、というわけではないけれど」
珊瑚夜:「『凪』も『嵐』も、どちらも居られるというのは本当によかったわ」
早乙女六華:「……ふ」表情を緩め「随分素直になったものだな」
早乙女六華:「半年前のお前に見せてやりたいよ」
銀波 凪:「そ……それは言うなよ」照れくさそうに。
銀波 嵐:「良かったですね、ほんと、何かよくわからんですけど」ニコニコと
綱井楪:「……嵐……いえ」以前までのように呼びかかって首を振る。「凪にとっては、これまで通り」
綱井楪:「新しい嵐の方は、これからよろしく、ということになるのかしら……」
綱井楪:「……本当に覚えていないの? 何も」
綱井楪:朗らかに笑う少女の方を見る。
銀波 嵐:「何も覚えてないわけじゃあないですよ?」
銀波 嵐:「綱井先輩でしょ」指を指す。
銀波 嵐:そのままスライド。
銀波 嵐:「夜先輩」「リウせんせ」「六華先輩」
銀波 嵐:「ね?」ニコリと。
銀波 凪:「こいつ実は忘れたフリしてんじゃねえだろうな……」
早乙女六華:「六華先輩……」「悪い気はせんな…………」
綱井楪:「ユズちゃん」
銀波 嵐:「?」
銀波 凪:「??」
綱井楪:「ユズちゃんと呼びなさい」
銀波 嵐:「え、何、命令?顔こわ……」
銀波 嵐:「えっと……その」
銀波 嵐:「ゆ……ユズちゃん」
銀波 嵐:もじもじと
綱井楪:「よろしい」頷く。「……これも忘れていそうだけれど」
銀波 凪:「え、なにそれ……俺も呼んだほうが良いのか……?」
早乙女六華:「……」じっとりと楪に目を向ける。
綱井楪:「私は人に忘れられることが大嫌いなの」
綱井楪:「今度とぼけた真似をしたら、二度と忘れられないような目に遭わせるから、そのつもりでいなさい」
綱井楪:淡々と告げる。
銀波 嵐:「な……なるべく……おもいだしますね」怯えたように。
銀波 凪:「(どんな目に遭わされるんだ……)」
綱井楪:「……また可愛い声を聞かせてもらいたいなと思っただけよ」凪の疑問を読み取ったように。
銀波 嵐:「あ……わ……わ」ササッと凪の影へと隠れてしまう。
綱井楪:「事情は分かったけれど、今の嵐の感じの方がやっぱり馴染みがあるのだもの」
早乙女六華:「……」じっとりと楪に目を向ける。
綱井楪:「……何かおかしいことを言っている?」
綱井楪:「可愛いわよね? 嵐」
綱井楪:珊瑚夜の方を向いて尋ねる。
綱井楪:ほんの少し、その顔には微笑みが浮かんでいる。
綱井楪:……どことなく嗜虐的な。
銀波 凪:「(何の話をしてるんだ……こいつら?)」
珊瑚夜:「……嵐も凪も可愛いというのは同感だけれど。『同意がないのはどうかと思う』とはもう一度言っておくわ」困ったように笑っている。
リウトペルガ・ウィンニール:「うんうん、同意は大事だよ同意は」
綱井楪:「心得ておきます」澄まし顔で姿勢を戻す。
早乙女六華:「……」じっとりと楪に目を向ける。
綱井楪:「…………」
綱井楪:「そんなに分かりやすい顔をしないで。六華」
早乙女六華:「知らん」そっぽを向く。
綱井楪:「もう。子供みたいなんだから」
綱井楪:身を寄せて、白い頬に手を添わせ。
綱井楪:「私は我慢しているの。今」
綱井楪:耳元に口を近付け、囁く。
綱井楪:「あなたにまで揺さぶられたら困ってしまうわ」
銀波 凪:「……」
銀波 凪:「(なんだありゃ……)」
銀波 嵐:「何か腹立ってきますねあれ」
銀波 凪:「同意を求めるんじゃねえ……」
銀波 凪:苦笑し、懐からデジタルカメラを取り出す。
銀波 凪:「なあ、良いか?」
銀波 凪:「頼まれてくれよ、皆を撮っておきたいんだ」
早乙女六華:「む」
早乙女六華:「……新しくしたのだな、カメラ」
早乙女六華:ピースサインを作る。
銀波 凪:今はもう無くなってしまったインスタントカメラと12枚の景色に思いを馳せる。
銀波 凪:モルフェウスシンドロームの錬成には、材料となる物への愛着、思い出、そういうったものが強く関係している……らしい。
銀波 凪:あの時、これ以外は無い、そう思ったのだ。
銀波 凪:「うん……買ってもらった」そっけなく、少し頬を赤く染め。
銀波 嵐:「私夜先輩の隣ね!」ピタリと、その場につける。
珊瑚夜:「ふふっ、嵐は甘えん坊さんだわ!」言いながら楽しそうに笑って嵐の頭を撫でる。
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクが一番前だね! だって一番小さいもの!」
リウトペルガ・ウィンニール:胸を張り、最前列へ躍り出る。
早乙女六華:「12枚ではとても足りんな」
珊瑚夜:「ええ、ええ!たくさん写真を撮ってほしいわ!12枚よりもずっとずっと、たくさん撮れるのだから!」
早乙女六華:「これから何を撮る?凪」
銀波 凪:「そうだな……」
銀波 凪:「気に入ったもの、何でも、ぜんぶ」
綱井楪:「……」背筋を伸ばし、膝の上で両手を重ねる。
銀波 凪:ファインダーを覗き込む。
銀波 凪:皆が、見える。
銀波 凪:気に入ったもの、ぜんぶ。
珊瑚夜:「ああ……けれど」
珊瑚夜:「デジタルカメラには、時間差で撮影する機能があるのでしょう?」
珊瑚夜:「あなたも映りなさいな、凪」
銀波 凪:「……」
銀波 凪:「それもいいな、ま、もう一枚やればいい」
銀波 凪:まずは、この指でこの光景を残したいと思った。
銀波 凪:もう一枚、撮ればいい。二枚でも、三枚でも。
銀波 凪:12枚ではとても足りない、そのとおりだ。
銀波 凪:既に、抱えきれないほどのものがこの手の内にある。
銀波 凪:愛用の登山リュックには、嵐ひとりを詰め込むことだってできない。
銀波 凪:これから、もっと多くを手に入れよう。
銀波 凪:恐ろしいとはもう思わない。
銀波 凪:その決意とともに、シャッターを――
リウトペルガ・ウィンニール:ある休日、珊瑚家のエントランス。
リウトペルガ・ウィンニール:彼女が一人で使うには広く、普段は索漠とした雰囲気すら漂わせるその場所は、今は膨大な量の荷物で埋まっている。
リウトペルガ・ウィンニール:何箱も積まれたダンボール、緩衝材に包まれた何かの器具、はたまた鉢植えや小さな水槽など──
リウトペルガ・ウィンニール:そういった雑多な荷物を、たくさんの小さなロボットたちが忙しなく部屋へ運び込んでいる。
リウトペルガ・ウィンニール:「やー悪いねぇ、荷解き手伝ってもらっちゃって」
珊瑚夜:『だいじょうぶです!』『なれてるので!』『よるさまいつもちらかすから、まいにちおひっこしみたいですー』小さなロボットたちはそんなことを言いながらせっせと働いている。
リウトペルガ・ウィンニール:髪も肌も白い"少女"は、その姿を眺めながら微笑む。
リウトペルガ・ウィンニール:銀波凪と銀波嵐。
リウトペルガ・ウィンニール:この家を引き揚げると言った二人へ、リウトペルガは己の住むマンションの一室を譲ることにした。
リウトペルガ・ウィンニール:二人──というより凪の方は遠慮していたが、半ば無理矢理に鍵を渡し、手続きを済ませてしまった。
リウトペルガ・ウィンニール:あの二人には、これからもっとたくさんの"物"を手に入れるだろう。
リウトペルガ・ウィンニール:ただでさえ二人もいる。それらを置くための場所は、平均的なチルドレン向けの寮なんかでは、到底収まらないはずだ。
リウトペルガ・ウィンニール:そして、その代わり──
リウトペルガ・ウィンニール:住人が一人減り、また閑散としてしまった珊瑚邸に、自分が住むこととした。
リウトペルガ・ウィンニール:「散らかし癖があるというのは、親近感湧いちゃうね?」
リウトペルガ・ウィンニール:そう言って、隣に立つ恋人──珊瑚夜へ、視線を向ける。
珊瑚夜:「もう……二人とも片づけられないんだったら普通は困るのよ?」その言葉に困ったように笑う。
珊瑚夜:「うちにはロボットがたくさんいたから良かったけれど……」
珊瑚夜:そう言いながら、せっせと働く小さなロボットたちの隙間をぬうように荷物ではしゃいで遊んでいる、小さな二つのロボットを眺める。
珊瑚夜:珊瑚夜自身と、傍らに立つ愛おしい恋人、リウトペルガ・ウィンニールを模したロボット。
珊瑚夜:今まではずっと珊瑚夜を模したロボットが孤独に微笑むばかりだったが、今では二人で楽しそうに走り回っている。
珊瑚夜:「二人とも、あまり邪魔をしてはダメよ。……といっても、『私たち』なんだから、手伝うとはいかないでしょうけれど」
珊瑚夜:そう言って楽しそうに笑う。甘い香りと共に、少しだけ伸びた髪がさらりと揺れる。
リウトペルガ・ウィンニール:その"二人"の姿を、慈しむような目で眺め──
リウトペルガ・ウィンニール:甘い芳香に誘われて、ふと、傍らの恋人へ目をやる。
リウトペルガ・ウィンニール:「髪、ちょっと伸びたね」
珊瑚夜:「そうね……気がついたら結構伸びたかもしれないわ。……切らない限り短くはならないのだから、当然といえばそうだけれど」
珊瑚夜:自分の髪をいじりながら楽しそうに笑う。
珊瑚夜:「……あなたは長いのと短いの、どちらが好きかしら?」
リウトペルガ・ウィンニール:「ふぅむ──」少し大げさに考え込むような表情。
リウトペルガ・ウィンニール:「長いのは親しみもあるし、綺麗だけど」
リウトペルガ・ウィンニール:「短いのもかわいいからね。悩むなあ」
リウトペルガ・ウィンニール:「だから、ね」
リウトペルガ・ウィンニール:「……両方見せてほしいな。これから、生きてく中で」
リウトペルガ・ウィンニール:笑顔のまま──どこか心細げに、そう口にする。
珊瑚夜:「ふふ……っ、ええ、もちろん!色々な私を見せてあげるわ。あなたが退屈しないように」
珊瑚夜:「嬉しいわ。……どちらも好きと悩んでくれることもだけれど、あなたが……未来をそうやって、希望をもって話してくれることが嬉しいのよ」
珊瑚夜:「……ねえ、リウトペルガ」
珊瑚夜:「私は、あなたが望んでくれるのならば、あなたと一緒の時を過ごすわ。どんな手を使ってでもね」
珊瑚夜:「恐怖も……きっと、二人で分けたら軽くなるわ。私だって、あなたが一人で怖い運命の中にいるのは嫌だし、一緒に背負いたい」
珊瑚夜:「……でも、怖がりで優しいあなたにそれを決めさせるのは酷だっていうのも分かる」
珊瑚夜:「それでもね……、やっぱり求めて欲しいと思ってしまうのよ。大切なことだから」困ったように笑って。
珊瑚夜:「だからね、……もし、私があなたと同じ時を過ごさなくて、100年程度であなたの前から、……去ったとしたら」
珊瑚夜:「あなたには、たくさん恋をして欲しいの」
珊瑚夜:「酷いことを言っている自覚はあるわ。……でも、私はワガママだから」
珊瑚夜:「恋の喜びを、甘さを、苦さを味わうたびに、私の事を好きだったって想いを思い出して欲しい」
珊瑚夜:「…………『ああ、やっぱり夜君の方が好きだったな』って思ってくれたら、もっと嬉しいけれど」悪戯っぽく笑って。
珊瑚夜:「……でも、私を知ってしまったあなたが、他の人を好きになれるかは疑問だけれどね」笑顔で甘い香りを漂わせる。
リウトペルガ・ウィンニール:「そっか、……」
リウトペルガ・ウィンニール:「そう……だ、ね」
リウトペルガ・ウィンニール:泣きそうな顔で、それでも笑う。
リウトペルガ・ウィンニール:「一緒に、いたいよ」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミと、一緒にいたい」
リウトペルガ・ウィンニール:「でも、キミに、こんな運命を背負わせるのは、──」
リウトペルガ・ウィンニール:そこまで言って、ふと言葉を切る。
リウトペルガ・ウィンニール:「……違う」
リウトペルガ・ウィンニール:「それも本当だけど、──でも、それだけじゃない」
リウトペルガ・ウィンニール:そう呟き、意を決したように、彼女の瞳を真っ直ぐ見つめる。
リウトペルガ・ウィンニール:うっすらと涙の浮かぶ、その碧玉で。
リウトペルガ・ウィンニール:「キミは……ボクより、"大人”だから」
リウトペルガ・ウィンニール:「おんなじ時を過ごしたら……先に、疲れてしまうかも知れない」
リウトペルガ・ウィンニール:「そうなったら、ボクは……キミを……見送らなきゃいけない」
リウトペルガ・ウィンニール:「ただ"在り方”が違うだけなんて受動的な理由じゃなく、もっと──能動的にだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクには……多分……できない」
リウトペルガ・ウィンニール:その言葉と共に、透明な雫がこぼれる。
リウトペルガ・ウィンニール:「キミがいつか疲れて、終わらせてしまいたいと思ったとしても」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクはキミを手離さない。手離せない」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミが苦しんでいても……自分のために、キミを縛り付けてしまうと、思う」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミが疲れてしまうのが怖い。その怖さで、キミを解放してあげられなくなるのも怖い」
リウトペルガ・ウィンニール:「ああ、でも」
リウトペルガ・ウィンニール:震える声で、頭一つ大きい身体を抱きしめる。
リウトペルガ・ウィンニール:「それでも、一緒にいたい」
リウトペルガ・ウィンニール:「一緒に、いたいよ」
珊瑚夜:「……リウトペルガ……」柔らかく微笑むと、そっと小さな子供のような、……たくさんの悲しみを詰めたその身体を抱き返す。
珊瑚夜:「嬉しいわ……あなたが私を、……そんなに、求めてくれて」
珊瑚夜:「ありがとう。そんなにも苦しむほどに想ってくれて。……私が苦しむのではないかと、心配をしてくれて」
珊瑚夜:「……あなたは、いつも自分の事は後回し。あなたがそんなに一緒にいたいと思ってくれているのだから……応える人がいてもいいでしょう?」
珊瑚夜:「……ねえ、リウトペルガ」
珊瑚夜:「夜ってネガティブなイメージがあるでしょう?苦境の代名詞として使われたりもするし……」
珊瑚夜:「でもね、私は夜って好きなの。自分の名前だからというのもあるけれど……」
珊瑚夜:「朝が来ないと泣く人はいても、夜が来ないと泣く人ってそんなにいないでしょう?」
珊瑚夜:「夜は求められなくとも、当たり前のように傍にいるのよ」
珊瑚夜:「それに、孤独だと思っている北極星にだって、夜ならば寄り添える」
珊瑚夜:「違うかしら?」甘く笑って。
珊瑚夜:「私はあなたの為の明けない夜よ。とびっきり幸せで、甘い甘い夜」
珊瑚夜:「……それに、私って……どうやら人より、少しだけ能天気らしいから。……あなたより先に疲れてしまうというのも、あまり想像がつかないし……」
珊瑚夜:「幸か不幸か、私が何を考えているかって……すぐに分かってしまうから」悪戯っぽく笑うと、花のような甘い優しい香りが漂う。
珊瑚夜:「いつも楽しくって幸せだって、あなたが呆れてしまうくらい、ずっと笑っていられると思うわ」
珊瑚夜:「だって……大好きなあなたといたら、いつだって幸せでたまらないに決まっているわ!」心底幸せそうに微笑む。
リウトペルガ・ウィンニール:「キミは──」
リウトペルガ・ウィンニール:涙に濡れた顔を上げ、満開の花のように笑う彼女を見る。
リウトペルガ・ウィンニール:「キミは、本当に……っ」
リウトペルガ・ウィンニール:泣き笑いのような表情で、ままならない言葉を紡ぐ。
リウトペルガ・ウィンニール:泣き笑いのような──
リウトペルガ・ウィンニール:しかし、その涙に宿っているのは、単純な苦しみと喜びばかりではない。
リウトペルガ・ウィンニール:そこにあるのは、ごくありふれた──
リウトペルガ・ウィンニール:しかし1000年の深みを持った、人間の心だ。
リウトペルガ・ウィンニール:それが覗いたのは、飽くまでも一瞬のこと。
リウトペルガ・ウィンニール:次の瞬間にはぐしぐしと涙を拭い、彼女から離れる。
リウトペルガ・ウィンニール:「決まった」
リウトペルガ・ウィンニール:そして赤くなった目で、楽しそうに笑う。
リウトペルガ・ウィンニール:「夜君。前、言ってたよね」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミへのプレゼント──コードネーム」
リウトペルガ・ウィンニール:「色々考えたんだ。でも中々決まらなくてね」
リウトペルガ・ウィンニール:「でも──今、決めた」
珊瑚夜:……この何より愛おしい人が、……ただ、当たり前に、嬉しくて、苦しくて、寂しくて、それでもどうしようもないくらい、誰かを愛おしいと思って。
珊瑚夜:涙を流したというのは、……一体何十年、何百年ぶりだろう。
珊瑚夜:子供のような姿で永い時を過ごすこの人が、ただの子供のように泣けることが、……ただただ、嬉しい。
珊瑚夜:叶うのならば、この先ずっとずっと、素直な子供のように過ごさせてあげたい。……できればずっと、幸せという気持ちで。
珊瑚夜:……ううん、叶うのならば、じゃない。叶えてみせる。私になら、出来るから。
珊瑚夜:だって私は、1000年を生きる魔女、リウトペルガ・ウィンニールが選んだ人なのだから。
珊瑚夜:「……まあ、嬉しいわ!考えてくれたのね。教えてくれるかしら?」
リウトペルガ・ウィンニール:「"ランツァン・ナフト"」
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクの故郷の言葉で……『春の夜』って意味」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミの名前で──今、話してくれた、夜と」
リウトペルガ・ウィンニール:「あのとき、聴かせてくれた演奏」
リウトペルガ・ウィンニール:「いい匂いで……冷たい冬を抜けた先にある、温かい、春」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミに、合ってるかなって」
リウトペルガ・ウィンニール:「気に入ってくれるか……分からないけど」
リウトペルガ・ウィンニール:「もちろん、イマイチだったら別のを考えてくるよ!」
リウトペルガ・ウィンニール:「でも、嫌じゃなかったら──」
リウトペルガ・ウィンニール:「使ってくれたら……嬉しい、かな」
リウトペルガ・ウィンニール:少しだけ、はにかんだように笑う。
珊瑚夜:「”ランツァン・ナフト”……」目をぱちぱちと瞬かせ、小さくその名前をつぶやく。
珊瑚夜:「『春の夜』……、ふふ、ふふふっ!」心底嬉しそうに、はしゃいで笑う。ふわりと甘い香りが広がる。
珊瑚夜:「すごいわ、とっても素敵だわ!気に入らないわけがないじゃない!」
珊瑚夜:「ええ、これから私のコードネームは『春の夜』”ランツァン・ナフト”だわ!」
珊瑚夜:「ふふ……、不思議ね。なんだか自分にもうひとつ名前がつく、ってしっくりこなくて……ずっとつけていなかったのだけれど」
珊瑚夜:「なんだか、これしかない、って感じだわ!」
珊瑚夜:「あなたのものになったからかしら?……あなたが、捨てない覚悟を、ずっと持ち続ける覚悟をしてくれたから」
珊瑚夜:「とっても素敵だわ!」
珊瑚夜:溶けない孤独をも溶かすかのような、華やかな笑顔で、笑う。
リウトペルガ・ウィンニール:「うふ、そっか」
リウトペルガ・ウィンニール:「気に入ってくれて嬉しいな」
リウトペルガ・ウィンニール:「──本当に、本当に、びっくりするくらい、嬉しいよ!」
リウトペルガ・ウィンニール:そう言って──弾けるように、幸せそうに笑う。
珊瑚夜:「ふふふ……、……ああ、でも……あなたが傍にいることを許してくれて……本当に嬉しくて、安心したら」
珊瑚夜:「具体的にどうやったらあなたと一緒に居られるのかが気になってきてしまったわ」
珊瑚夜:「私の魔女さんはご存知かしら?……それとも」
珊瑚夜:涙に濡れた顔で笑う、愛おしい恋人の首筋に顔を近づける。
珊瑚夜:「こうやって……あなたを受け入れたら、出来るものなのかしら……?」
珊瑚夜:白く細い、……まだ赤い痕の残る首に再び歯を立てる。口に広がる鉄の味を味わいながら、舌で舐めとる。
リウトペルガ・ウィンニール:「んっ、……」
リウトペルガ・ウィンニール:その甘美な痛みに、小さく声を漏らし、身を捩らせる。
リウトペルガ・ウィンニール:「……こらこら、まだ明るいよ」腫れた目で苦笑しながら、軽いデコピン。
リウトペルガ・ウィンニール:「そうだねぇ、試したことはないけれど──」
リウトペルガ・ウィンニール:「他の長命者たちの事例や、ボク自身の研究から言って」
リウトペルガ・ウィンニール:「キミにボクの古代種のレネゲイド因子を分け与えれば、同じ体質になるはずだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「だから、つまり──」
リウトペルガ・ウィンニール:彼女の胸へ、甘えるように寄りかかる。
リウトペルガ・ウィンニール:「それであってる、ってことさ」
珊瑚夜:「……ふふっ、そんなことを言われたら……我慢が出来ないわ」
珊瑚夜:寄りかかる彼女の髪を柔らかく撫でながら。
珊瑚夜:「明るくとも暗くとも……私はあなたを求めているのだし」
珊瑚夜:「……私って、我慢するのが苦手なの」
珊瑚夜:そう囁くと、彼女の耳朶を優しく噛む。
リウトペルガ・ウィンニール:「んぅ……、まったくもう」
リウトペルガ・ウィンニール:ほんのり紅く色付いた顔で、呆れたように笑う。
リウトペルガ・ウィンニール:「正直言うと──」
リウトペルガ・ウィンニール:その額へと、今度は軽い口付けを。
リウトペルガ・ウィンニール:「ボクもね。享楽には結構素直なんだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「まだ外は明るいけど──」
リウトペルガ・ウィンニール:「しょうがないか。何せ、"夜"君の誘いだものね」
リウトペルガ・ウィンニール:そう言って、軽く舌を出す。
リウトペルガ・ウィンニール:小さな唇から覗く舌の朱は、その笑みの中へ蠱惑的な色彩を加えている。
珊瑚夜:「ふふっ、そうよ。私はあなたの『夜』なのだから。いつだってあなたを求めているのだし、あなたもいつだって求めていいのよ」
珊瑚夜:囁いて、笑う。……先ほどまでの華やかなだけの笑顔でなく、その瞳には妖しい色を秘めて。
珊瑚夜:「長命の者は放蕩と放埓が義務なのでしょう?……それを聞いて、あなたがどんな享楽に耽ってきたのかと嫉妬するより先に、あなたが……そんな風に、気楽に生きられたらどれ程いいかと思ったのよ」
珊瑚夜:「あなたは素直な方が可愛いわ。……たくさん素直になって欲しいけれど……」
珊瑚夜:「…………まずは、素直に気持ちよくなってね。リウ……」
珊瑚夜:紅い煌めきに誘われるように、唇を重ねる。
珊瑚夜:果実の熟れたような甘い香りが、漂う。
リウトペルガ・ウィンニール:「ん……──」
リウトペルガ・ウィンニール:その芳香と快楽に、身を任せようとして──
リウトペルガ・ウィンニール:「……あ」
リウトペルガ・ウィンニール:「『する』のはいいけど、……ここはちょっと、ね」
リウトペルガ・ウィンニール:そう言って、周りで忙しなく働き続けるロボットたちを見やる。
リウトペルガ・ウィンニール:「……キミの部屋に行こうか」
リウトペルガ・ウィンニール:「この場はこの子たちに任せよう。なかなか荷解きは終わらなさそうだ」
珊瑚夜:「…………ふふ、リウったら…………」
珊瑚夜:彼女の言葉を聞いて、しかし身体を抱き寄せる。
珊瑚夜:「いいじゃない。この子たちに見せつけてやりましょうよ」
珊瑚夜:「あなたのご主人様たちは、とっても幸せなんだ……って」
珊瑚夜:耳元で囁くと、小さな身体に指を這わせる。
リウトペルガ・ウィンニール:「んっ、こら、ダメだってば!」快感に身を捩りつつ、困ったように笑う。
リウトペルガ・ウィンニール:「ん~、っ、……あ、そうだ」小さく快楽の声を零しながら、ふと、何か思いついたように手を打つ。
リウトペルガ・ウィンニール:
《sinþ wagjandin》
『旅を進める者に』
リウトペルガ・ウィンニール:次の瞬間、二人は小さな馬の背中に乗っている。
リウトペルガ・ウィンニール:「この前のワイルドハント。あれの残滓を集めて、使い魔にしてみたんだ」
リウトペルガ・ウィンニール:「あのまま消えてしまうのも、少しもったいないかなと思って。馬が交通手段から消えた今じゃ、もうあんな怪異にはならないだろうからね」
リウトペルガ・ウィンニール:そう話す間にも、二人を乗せた小馬は器用に家の中を通り、彼女の寝室へと辿り着く。
リウトペルガ・ウィンニール:「さ、着いたよ」
リウトペルガ・ウィンニール:寝室の扉を開け──恋人へウインクする。
リウトペルガ・ウィンニール:「いっぱい、幸せにしておくれ。いとしい人」
珊瑚夜:「……ふふ、意外と恥ずかしがり屋さんなのね。……いいわ、今日はここで……愛してあげる」
珊瑚夜:「余計な事……羞恥心や、倫理観や……孤独も恐怖も全て忘れるくらい」
珊瑚夜:「幸せにしてみせるわ」
珊瑚夜:終わらない夜。退屈なんてさせないわ。
珊瑚夜:疲れたなんて思う暇もないほど、どうしようもない幸福で包んであげる。
珊瑚夜:永い永い冬が終わって、やっと訪れた春の陽が雷に隠れても。
珊瑚夜:再び小鳥たちは歌いだす。
珊瑚夜:止まない雨はないのだし、
珊瑚夜:明けない夜はあなたを想い続ける。
珊瑚夜:あなたが想ってくれる限り、
珊瑚夜:冷たい悲しみも、孤独も、恐怖も、
珊瑚夜:全部溶かしてあげる。
珊瑚夜:終わらない春の夜の中で。
綱井楪:パタリ。
綱井楪:軽い開閉音と共に、綱井楪が脱衣所から現れる。
綱井楪:湿り気を帯びた白髪。白とライムグリーンのボーダーのもこもことしたパーカーに、同じ柄のショートパンツ。
綱井楪:その裾からすらりと伸びる腿も、いつものように眠たげな顔も、今は少しばかり上気して朱を帯びている。
綱井楪:「……ふあ……」
綱井楪:不意にひとつ、片手を口に当てて欠伸をして。
綱井楪:「……上がったわ、六華」
綱井楪:寝室にいる彼女に声を掛ける。
早乙女六華:暖房の焚かれた寝室。寝台の上、何重にも巻かれた毛布から頭だけを出している。
早乙女六華:湯船でたっぷりと暖まった白い肌はまだ少し上気して、黒髪も僅かに湿り気を帯びている。
早乙女六華:「……ん」
早乙女六華:言葉少なに、視線だけでこちらに来るよう誘う。
綱井楪:「……」
綱井楪:くす、と。何かの巣のようなものを形成している恋人の姿に小さく笑声を零し。
綱井楪:寝台の上へ座り込むようにして、傍らに寄り添う。
早乙女六華:「……」
早乙女六華:のそ、と毛布ごと身体を寄せて。暫時その顔を見つめて。
早乙女六華:不意に、するり、と、毛布から裸の腕が伸びてきて、獲物を捕らえる蜘蛛のように、楪の首元に回される。
早乙女六華:そのままぐい、と押し倒し、同時に唇を重ねる。奪う、という言葉が相応しい唐突さと強引さで。
綱井楪:「……ん……っ」
綱井楪:逆らいはしない。が、少しばかり意外な動きではあった。
綱井楪:二人分の体重の移動に、寝台が軽く軋みを上げる。
早乙女六華:繰り返される、噛み付くような口付け。やがて、赤い舌が侵入してきて、別の生き物のように口内を蹂躙する。
早乙女六華:荒っぽく舌を絡ませて、逃げようとする動きを時には抑えつけ、甘噛みするようにして。
早乙女六華:楪を見つめるその双眸には、どこか嗜虐的な色が宿っている。
綱井楪:「……む……んんっ、く……ぷは」
綱井楪:身を捩り、乱暴な接吻から逃れる。それほど本気というものでもないけれど。
綱井楪:酸素を求めて少し荒い呼吸をしながら、下から少女の顔を見上げて。
綱井楪:「……どうしたの、六華」
早乙女六華:「……」
早乙女六華:口を離し、乱れた呼吸のまま、何も言わずにもう一度大きく顎を開き──
早乙女六華:かぷり、と。血管が僅かに透けて見えるような、その白く細い蝋めいた喉元に噛みつくようにする。
早乙女六華:ほとんど歯を当てるだけのものだが、まるで獣じみた行為。
早乙女六華:大きくはだけた毛布の下には、何の衣服も纏っていない。
綱井楪:「ひゃ……っ」
綱井楪:びくり、と震える。思わず閉ざした瞼の縁で、黒く長い睫がわななく。
早乙女六華:「……は……」
早乙女六華:吐息と判然としない声が漏れ。
早乙女六華:腕を楪の胸元に伸ばした。少し荒っぽく、指を沈みこませるように刺戟を与える。
早乙女六華:二本の腕がそれぞれ別々に動き、別の快楽を与える。先端に直接は触れないように、じわじわと熱を帯びさせ、昂らせていく。
綱井楪:「ん、ぅ」
綱井楪:寝間着の布地の上から見れば、二匹の蛇が潜り込んで、胸元の膨らみに噛み付いているかのよう。
綱井楪:内側では、素肌と布の間にわだかまる温もりの中、双丘に触れる六華の手指には吸い付くような感触がある。押し込めば、確かな弾力を返しながら、その形は容易く歪む。
綱井楪:その都度、薄く緩められた唇からは、悩ましげな吐息が漏れる。
早乙女六華:その反応に満足したように、双眸は細められ、口端は三日月を描いて歪む。
早乙女六華:片腕がするすると、汗ばんだ白い肌の上、服の下を緩やかに滑っていく。
早乙女六華:肋骨をなぞり、微かな腹筋を撫でるようにして、窪んだ臍の下、下腹でぴたりと止まる。
早乙女六華:熟練のピアニストのように、白い指が動く。僅かな圧迫感。体内、薄い肉を隔てた子宮を意識させるように。
早乙女六華:「……楪」
早乙女六華:覆いかぶさったまま、顔を寄せて囁く。
早乙女六華:「わたしが良いと言うまで、気をやっては駄目だぞ」
早乙女六華:言うや否や、散々焦らしてきた胸の先端、摘まむように鋭い刺激を与える。
綱井楪:「……っ……!」
綱井楪:敏感な反応が返る。頭上に伸ばされた両手に掴まれ、シーツに皺が寄る。
綱井楪:「りっ、か」
綱井楪:こわごわと細目を開け、いつになく強硬な彼女の様子を窺って。
綱井楪:「……本当に、どうしたの」
早乙女六華:「……」
早乙女六華:ほんの一瞬、瞳に逡巡が走るが。
早乙女六華:答えない。ぐい、と強引にパーカーをはだけさせて、豊かな双丘を外気に曝す。
早乙女六華:無言のまま、疼きを帯びたその頂点に口付けをし、舌を這わせ、舐る。
早乙女六華:少しも休ませないとでもいうように、間断なく快楽を与え続ける。
綱井楪:ほの白い球形のそれは、ふたつ並んだ月のようにも見えなくはなかった。中心に備えた頂を除くならば。
綱井楪:薄桃色をしたそれは、愛しい相手を心待ちにするように、ぴんと真上に向けて立って──
綱井楪:「は、あ……ゃ……!」
綱井楪:──唇と舌を迎え入れれば、いかにも堪らない声が上がる。
早乙女六華:荒い呼吸。一方的に責め立てている側でありながら、楪と同じか、むしろそれ以上に余裕の無い表情。
早乙女六華:下腹を撫でていた腕が、ゆっくりと降り、ショートパンツの隙間に侵入して。
早乙女六華:くちゅ、と湿った水音。
早乙女六華:「……」
早乙女六華:上気した顔に嗜虐的な笑みを浮かべる。
早乙女六華:「……着替えた意味が無かったな、楪」
早乙女六華:羞恥を煽るように言う。
綱井楪:そこへ触れられた途端、ぞわぞわとした感覚が背筋を走った。
綱井楪:歯を噛んで耐える。……そうしなければ、それだけで、言い付けられたばかりのことに背いてしまっただろうから。
綱井楪:「…………りっかが」
綱井楪:「そんなふうに、意地悪くするから」
綱井楪:恨みがましく言って見返す。空色の瞳はすっかりと熱情に濡れている。
早乙女六華:指が脚の付け根、秘部に触れる。なめらかな指の腹が、入り口の形をただなぞるように往復する。
早乙女六華:「楪」
早乙女六華:「……楪」
早乙女六華:熱に浮かされたように、ただ名前を繰り返す。どこか泣きそうにすら見える表情。
綱井楪:はあ、はあ、と呼気が響く。懸命に外気を取り入れようとする。吐き出す息は湯気になりそうだった。
綱井楪:襲い来る刺激に耐えながら、腕を伸ばし、震える手で六華の頭を撫でる。
綱井楪:「六、華」
綱井楪:「六華……」
綱井楪:意味のある言葉を、紡ぐことができない。
綱井楪:だから、触れるその手を通して、不安に寄り添う意図を伝えようと。
早乙女六華:「……ゆず、りは」
早乙女六華:やがて、割れ目の中心、狭い中を押し広げるように、指の先が中に侵入する。
早乙女六華:延々と焦らされ、解され続けてきたその身体には、それだけで耐え難い刺戟を生む。
早乙女六華:身を捩るように、指は奥へ、奥へと進んでいく。
早乙女六華:柔らかな指の腹と異なり、僅かな突起、関節の起伏が硬質な感触を与える。
綱井楪:「あ……っ、ふあ、ぁ、あ……!」
綱井楪:柔肉が掻き分けられるたび、喉を絞ったような甲高い声。
綱井楪:電撃を浴びたかの如く体が強張る。黒髪に添えられた手を通して、その様は如実に伝わるだろう。
綱井楪:視界が明滅する。気をやらずに耐えられているのかどうか、己自身でも曖昧になりつつある。
綱井楪:「り……りっ、か、六華……!」
綱井楪:「無理……も、許し、て……っ……!」
早乙女六華:「……」
早乙女六華:艶やかに乱れる彼女の姿を、陶然とした瞳で見つめる。
早乙女六華:彼女が本当に愛おしいと思った。
早乙女六華:ずっと傍にいてほしい。
早乙女六華:どこにも行かせたくない。
早乙女六華:わたしだけのものにしたい。
早乙女六華:心の底からそう思った。
早乙女六華:けれど、きっと全ては叶わないから。
早乙女六華:せめて彼女が、わたし無しでは生きていけないようになってしまえばいいと思った。
早乙女六華:幼い少女を惑わせ、誑かして。いつの間にこんなに酷い妖怪になってしまったのだろう。
早乙女六華:けれど、きっともう、とっくに。
早乙女六華:わたしは、楪無しでは生きていけなくなっていた。
早乙女六華:……やがて指先が、こつん、と最奥の壁に当たる。
早乙女六華:「……あ」
早乙女六華:小さく声を漏らして。
早乙女六華:一番奥のそこを、抉るように、引っかくように叩く。
早乙女六華:何度も、何度も。胸にも、下腹にも。思考を溶かそうとするかのように、止め処ない快楽を与え続ける。
早乙女六華:「楪」
早乙女六華:「楪、楪、楪……」
早乙女六華:愛しい相手の名を、耳元で囁く。
早乙女六華:絶え間ない抽挿を続けながら、彼女の抵抗を奪い去らんと。
綱井楪:「────ッ…………!!」
綱井楪:音にならない叫びが上がる。
綱井楪:汗の珠が浮く体を弓なりに反らせ。奥を突かれる度に悶えて。
綱井楪:……世界が真っ白く染まる。もう上も下も分からない。
綱井楪:じぶんの中に潜り込んだ、つめたい指先だけが確かなもの。
綱井楪:そのつめたさが、わたしを狂わせる。
綱井楪:「……六華……六華、六華ぁ……!」
綱井楪:その名を呼ぶ。
綱井楪:きつく瞑った眼の端から、ぽろぽろと熱い涙を零しながら。
早乙女六華:「……もういいぞ」
早乙女六華:抽挿を更に強め、その入り口、秘芯を摘まむようにして。
早乙女六華:「イっていい」
早乙女六華:言って、ついばむようにキスをする。
綱井楪:「ひっ、や────あああああああ!!」
綱井楪:尾を引く嬌声。
綱井楪:今度こそ、まるで雷に打たれたように全身を硬くして。
綱井楪:秘所にかぶさる六華の手に、飛沫のかかる感触が伝わる。
綱井楪:……やがて、白髪の娘の肢体がぐったりと弛緩する。
早乙女六華:「……」
早乙女六華:「…………はぁ……」
早乙女六華:くたりと脱力し、普段より随分と熱を帯びた、軽い体重がその上に倒れ込む。
早乙女六華:ゆるゆると手を伸ばし、楪の頭を撫で、手櫛で髪を梳く。
綱井楪:「……」
綱井楪:ぼんやりと目を開け、小柄な裸身の背に腕を回して受け止めて。
綱井楪:「……六華……」
綱井楪:「…………あの。ごめんなさい」
早乙女六華:「……何を謝る?」
綱井楪:「……もういいって、言われる前から」
綱井楪:未だ夢見心地にある様子で言いながら、もぞもぞと内腿を擦り合わせる。
綱井楪:六華の下半身が押さえつける下で、ショートパンツはしとど濡れ、生地を暗色に染めている。裾から覗く素足にも、溢れた液体がべたりと塗りつけられたようになっていて。
綱井楪:動きの度に、淫らな粘性の音を立てる。
綱井楪:「……いっちゃってた……わたし」
早乙女六華:「……」
早乙女六華:一瞬、きょとんとしたように固まって。
早乙女六華:「ふっ……ふふっ……」くつくつと笑い、肩を震わせる。
早乙女六華:「……本当に」
早乙女六華:「可愛い奴だな。楪」
早乙女六華:可笑しそうに、額と額を合わせる。
綱井楪:「……ん」
綱井楪:今更照れた風に目を逸らす。
早乙女六華:「……」
早乙女六華:「……良かった」
早乙女六華:「わたしの指では、奥まで届かないのではないかと思った」
早乙女六華:自分の小さな掌に目をやる。
綱井楪:「…………それ、駄目よ」
綱井楪:「ずるい」
綱井楪:「効きすぎるもの」
綱井楪:拗ねたような語調。
早乙女六華:「……ふふ」
早乙女六華:「そう怒るな」
早乙女六華:子供をあやすように、少し悪戯っぽく言って。
早乙女六華:「悪かったな」
早乙女六華:「……昼間、お前が凪と親し気に話しているのを見て……」
早乙女六華:「……」
早乙女六華:そこで口を閉ざす。
綱井楪:「妬いてしまったの?」
早乙女六華:「……」
早乙女六華:目を逸らす。
綱井楪:「……ふふ」
綱井楪:「黙っていたんじゃわからないわ」
綱井楪:血管の透ける白い首を持ち上げ、顔を寄せる。
綱井楪:「そういうわけでもないのなら」
綱井楪:「どんどんあの子と仲良くしてしまうかも」
綱井楪:「そうすれば……今みたいに、たくさん気持ちよくしてもらえるみたいでもあるし」
早乙女六華:「……楪!」
早乙女六華:珍しく、少しだけ大きな声を上げて抗議する。
綱井楪:「なぁに」
綱井楪:黒絹の髪に指を通しながら。
早乙女六華:「……」不服げな顔で口を尖らせる。
早乙女六華:「……情けないと思うか?」
早乙女六華:「500年も生きていて、今更。こんな風に嫉妬するなんて」
早乙女六華:「……わたしだって思わなかった」
早乙女六華:そう言ってまたそっぽを向く。
綱井楪:両腕を伸ばし、その頭を抱き込む。
綱井楪:自身の二つの白鞠の狭間にうずめさせ、その柔らかさと熱で包む。
綱井楪:「ううん」
綱井楪:「……とっても可愛いし、嬉しいわ」
綱井楪:「……昼間はつい、魔が差してしまっただけ」
綱井楪:「あの子たちとこんなことはしない」
綱井楪:「あなたに嫌われてしまったら、生きていけないもの。本心よ」
早乙女六華:「……」
早乙女六華:頭を動かし、その胸に耳を当てる。
早乙女六華:鼓動の音が聞こえる。綱井楪が生きている音。
早乙女六華:それを聞くだけで、どうしようもなく安心する。
早乙女六華:暖かな部屋の外、カーテンの向こうでは、雪が降っている。
早乙女六華:降り積もった雪は、ほんの一時、街を白く染めて──
早乙女六華:けれども、明日にはもう溶けてしまうだろう。
早乙女六華:それでも。
早乙女六華:「……楪」
早乙女六華:「明日の朝食は、何だ?」
綱井楪:「?」
綱井楪:「あんこバタートーストとお味噌汁」
早乙女六華:「……お前は食べ合わせというものを覚えるべきだな……」
早乙女六華:「……それを食べたら」
早乙女六華:「明日は何をしようか」
綱井楪:「ううん……」
綱井楪:「…………」
綱井楪:「……………………」
綱井楪:「考えてみると」
綱井楪:「平和な時の好きな人との過ごし方なんて、ぜんぜん分からないわ」
綱井楪:「映画とか見に行くのかしら……」
早乙女六華:「映画か。いいな」
早乙女六華:「じゃあ、明後日は何をする?」
綱井楪:「むむ」
綱井楪:唸る。六華の頭を抱く腕にぎゅっと力を込めて。
綱井楪:「遊園地。ショッピング。動物園。水族館……は行った……」
綱井楪:「……それともいっそ、休みの内に旅行でも行きましょうか」
早乙女六華:「……旅行か……」
早乙女六華:「それも、いいな」
早乙女六華:楪の胸に身を預けて。
早乙女六華:「……楪」
早乙女六華:「……雪が溶けても、一緒に居よう」
早乙女六華:「春が来て、夏になって。秋が過ぎて、また冬になっても……」
早乙女六華:「お前と、一緒に居たいよ」
早乙女六華:「一緒に……生きていたい」
早乙女六華:そう言って、目を瞑り。
早乙女六華:「明日は……映画」
早乙女六華:「その次は……旅行……」
早乙女六華:「その、次は……」
早乙女六華:……気付けば。
早乙女六華:小さな穏やかな寝息を立てて、眠り込んでいる。
早乙女六華:安心しきった寝顔。まるで、幼くあどけない少女のような。
綱井楪:「…………」
綱井楪:口角が緩む。
綱井楪:つい先程まで自分を責め立てていた少女の、稚い様子。
綱井楪:数百年を生きた怪異。マイペースでやきもち焼きの子供。どちらの顔も、たまらなく愛おしい。
綱井楪:「……ええ」
綱井楪:その頭を撫で、剥き出しの肩に、背中に、そっと触れて。
綱井楪:「ずっと一緒よ」
綱井楪:凍えないように上掛けを引き上げ、夢の世界の彼女を追った。
Double Cross The 3rd edition
Replay Bloom Case01
『凍て付く夜のヴァルプルギス』
END